説明

副甲状腺ホルモンの粘膜送達を増強するための組成物及び方法

【課題】
【解決手段】
哺乳動物被験体(好ましくは、ヒト)の骨粗鬆症又は骨減少症の治療又は防止のための少なくとも副甲状腺ホルモンペプチド(PTH)、好ましくはPTH1−34及びPTHの鼻粘膜送達の増強のための1つ又はそれ以上の粘膜送達増強剤を含む薬学的組成物及び方法を記載する。
【選択図面】なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
骨粗鬆症を、低骨量、骨組織の微小構造(microarchitectural)の破壊、並びに骨の脆弱性及び骨折に対する感受性の増加によって特徴付けられる全身性骨疾患と定義することができる。骨粗鬆症は、高齢者、主に閉経後の女性が最も多く罹患する。
【0002】
骨粗鬆症の罹患は、一連の健康上の問題を引き起こす。国立骨粗鬆症財団は、4400万人が骨粗鬆症又は骨減少症の影響を経験していると推定している。2010年までに、骨粗鬆症患者は5200万人以上に達し、2020年までに6100万人以上に達するであろう。骨粗鬆症の有病率は、アフリカ系アメリカ人よりも白色人種及びアジア人で高く、おそらく、アフリカ系アメリカ人の最大骨量がより高いためである。女性は男性よりも多数罹患し、これは、男性が最大骨密度がより高いためである。更に、女性は加齢と共に骨の代謝回転率が増加し、その結果、閉経後のエストロゲンの欠如によって骨量減少が加速する。
【0003】
骨粗鬆症の薬理学的治療の目的は、骨の強度を維持又は増加させること、患者の生涯を通じて骨折を防止すること、並びに骨折リスクの安全な減少によって骨粗鬆症に関連する罹患率及び死亡率を最小にすることである。骨粗鬆症を治療するために最も一般に使用されている薬物には、カルシウム、及びビタミンD、エストロゲン(プロゲスチンを含むと含まないとに関わらず)、ビスホネート、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)、及びカルシトニンが含まれる。
【0004】
副甲状腺ホルモン(PTH)は、最近、一般的な骨粗鬆症治療として浮上している。骨吸収を減少する他の治療と異なり、PTHは骨量を増加させ、それにより、骨密度(BMD)がより高くなる。PTHは、骨に対して多数の作用を有し、直接的作用と間接的作用がある。PTHは、骨から血液へのカルシウム放出率を増加させる。PTHの慢性効果は、骨細胞(骨芽細胞及び破骨細胞の両方)の数を増加させること及び骨の再造形を増加させることである。これらの効果は、PTH投与から数時間以内に明らかとなり、PTH投与の中止から数時間持続する。骨粗鬆症患者に投与したPTHは、特に脊椎及び臀部の海綿骨での正味の骨形成を刺激し、それにより、非常に有意に骨折が減少する。骨形成は、骨芽細胞がPTH受容体を有する場合、PTHによる骨芽細胞の刺激によって引き起こされると考えられる。
【0005】
副甲状腺ホルモン(PTH)は、アミノ酸配列Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly− Lys−His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg−Val−Glu−Trp−Leu−Arg−Lys−Lys−Leu−Gln−Asp−Val− His−Asn−Phe Val Ala Leu Gly Ala Pro Leu Ala Pro Arg Asp Ala Gly Ser Gln Arg Pro Arg Lys Lys Glu Asp Asn Val Leu Val Glu Ser His Glu Lys Ser Leu Gly Glu Ala Asp Lys Ala Asn Val Asp Val Leu Thr Lys Ala Lys Ser Gln(配列番号1)を有する分泌性の84アミノ酸残基のポリペプチドである。一定のPTH形態を使用したヒトでの研究により、骨の同化作用が証明されており、骨粗鬆症及び関連骨障害の治療のためのその使用に対する関心が高まっている。
【0006】
例えば、文献においても全長ホルモンと生物学的に等価であると考えられているウシ及びヒトのホルモンのN末端の34アミノ酸Ser−Val−Ser−Glu−Ile−Gln−Leu−Met−His−Asn−Leu−Gly−Lys−His−Leu−Asn−Ser−Met−Glu−Arg−Val−Glu−Trp−Leu−Arg−Lys−Lys−Leu−Gln−Asp−Val−His−Asn−Phe(配列番号2)を使用して、特に皮下経路によって脈動的様式で投与された場合に、副甲状腺ホルモンが骨成長を増強することがヒトで証明されている。PTHのわずかに異なる形態であるヒトPTH(1〜38)で類似の結果が示されている。
【0007】
PTH調製物は、新鮮なホルモン又は凍結乾燥したホルモンから再構成し、種々の形態の担体、賦形剤、及び溶剤を組み込む。ほとんどを、生理食塩水又は典型的にはホルモンを可溶化するために酢酸で酸性化した水などの水ベースの溶剤中で調製する。報告された処方物の大部分はまた、安定剤としてアルブミンが組み込まれている(例えば、Reeve et al.,Br.Med.J.,280:6228;(1980)Reeve et al.,Lancet,1:1035(1976);Reeve et al.,Calcif Tissue Res.,21:469(1976);Hodsman et al.,Bone Miner;9(2):137(1990);Tsai et al.,J.Clin.Endocrinol Metab.,69(5):1024(1989);Isaac et al.,Horm.Metab.Res.,12(9):487(1980);Lawet al.,J.Clin Invest.72(3):1106(1983);and Hulter,J.Clin Hypertens,2(4):360(1986)を参照)。他の報告された処方物は、凍結乾燥ホルモン又は再構成用溶剤のいずれかと共に存在するマンニトールなどの賦形剤が組み込まれている。
【0008】
テリパラチドとも呼ばれるPTH1−34は、現在、骨折リスクの高い骨粗鬆症の閉経後女性の治療のために、商品名FORTEO(登録商標)(Eli Lilly,Indianapolis,Indiana)として市販されている。この薬物を、酢酸緩衝液、マンニトール、及びm−クレゾールを含む20μgの水溶液(pH4)として1日1回皮下注射によって投与する。しかし、多くの患者は注射を拒み、それにより、PTHの規定服用量が順守されなくなる。したがって、骨粗鬆症又は骨減少症の治療に有効な血中治療レベルを達成することができるように、適切な生物学的利用能を有する副甲状腺ホルモンペプチドの鼻腔内処方物を開発する必要がある。FORTEO(登録商標)は、大腸菌株を使用した組換えDNAテクノロジーによって製造されている。PTH1−34の分子量は、4117.87ダルトンである。公開されているPTH1−34及びその臨床についての概説(例えば、Brixen et al,2004;Dobnig,2004;Eriksen and Robins,2004;Quattrocchi and Kourlas 2004が含まれる)は、本明細書中で参考として援用される。Forsteoは、米国(FORTEO(登録商標)として)及び欧州で現在認可されている。テリパラチドの安全性は、短期臨床試験における1日あたり5〜100μgの範囲の投薬量で2800を超える患者で評価されている。長期臨床試験において40μg/日の用量が2年間まで投与されている。Forsteoに関連する副作用は、通常穏やかであり、一般に、治療の中断は必要ない。最も一般的に報告されている副作用は、めまい、脚の痙攣、吐気、嘔吐、及び頭痛である。Forsteoで軽度一過性高カルシウム血症が報告されているが、通常、6時間以内に自己制御される。
【0009】
テリパラチドは、ある研究では、500μg/日までの用量で7日間ヒトに鼻腔内投与されており(Suntory News Release.Suntory Establishes Large Scale Production of recombinant human PTH1−34 and obtains promising results from Phase 1 Clinical Trials using a Nasal Formulation.February 1999.http://www.suntory.com/news/1999−02.html accessed 15 April 2004)、別の研究では、1,000μg/日までを3ヶ月間被験体に投与している(Matsumoto et al.Daily Nasal Spray of hPTH1−34 for 3 Months Increases Bone Mass In Osteoporotic Subjects.(ASBMR 2004 presentation 1171 October 4,2004,Seattle WA.)。この経路には安全上の注意は払われていない。
【0010】
現在、Forsteoは、皮下注射として毎日投与される。非注射投与経路(鼻腔内、口腔、胃腸、及び真皮が含まれる)が利用可能な場合、患者は受け入れやすいので好ましいであろう。
【発明の開示】
【0011】
好ましくは、副甲状腺ホルモン及び哺乳動物はヒトである。最も好ましい実施形態では、副甲状腺ホルモンペプチド(PTH1−34)は、テリパラチドとしても公知である。Tregearの、米国特許第4,086,196号は、ヒトPTH類似体を記載し、in vitro細胞アッセイにおいて最初の27〜34アミノ酸がアデニリルシクラーゼの刺激に関して最も有効であることを主張している。1993年4月15日公開のPang et alのW093/06845号は、Arg25、Lys26、Lys27が多数のアミノ酸(アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、又はバリンが含まれる)との置換されたhPTHの類似体が記載されている。他のPTH類似体は、以下の特許(本明細書中で参考として援用される)に開示されている:米国特許第5,317,010号;米国特許第4,822,609号;米国特許第5,693.616号;米国特許第5,589,452号;米国特許第4,833,125号;米国特許第5,607,915号;米国特許第5,556,940号;米国特許第5,382,658号;米国特許第5,407,911号;米国特許第6,583,114号;米国特許第6,541,450号;米国特許第6,376,502号;米国特許第5,955,425号;米国特許第6,316,410号;米国特許第6,110,892号;米国特許第6,051,686号;米国特許第5,695,955号;米国特許第4,771,124号;及び米国特許第6,376,502号。
【0012】
PTHは、2つの第2のメッセンジャー系(G−タンパク質活性化アデニリルシクラーゼ(AC)及びG−タンパク質活性化ホスホリパーゼCβ)の活性化によって操作する。後者により、膜結合タンパク質キナーゼCs(PKC)活性が刺激される。PKC活性は、PTH残基29〜32が必要であることが示されている(Jouishomme et al(1994)J.Bone Mineral Res.9,(1179−1189)。骨成長の増加(すなわち、骨粗鬆症治療で有用な効果)とペプチド配列のAC活性を増加させる能力との組み合わせが確立されている。未変性のPTH配列は、これらの活性の全てを有することが示されている。hPTH−(1−34)配列は、典型的には、以下のように示される:
Ser Val Ser Glu Ile Gln Leu Met His Asn Leu Gly Lys His Leu Asn Ser Met Glu Arg Val Glu Trp Leu Arg Lys Lys Leu Gln Asp Val His Asn Phe(配列番号2)。
【0013】
以下の線状類似体(hPTH1−31NH)はAC刺激活性のみを示し、卵巣切除ラットモデルにおいて骨量減少の修復に完全に活性であることが示されている[Rixon,R.H.et al.,J.Bone Miner.Res.9:1179−1189(1994));Whitfield et al.,Calcified Tissue Int.58:81−87(1996)];Willick et alの米国特許第5,556,940号(本明細書中で参考として援用される):
Ser Val Ser Glu Ile Gln Leu Met His Asn Leu Gly Lys His Leu Asn Ser Met Glu Arg Val Glu Trp Leu Arg Lys Lys Leu Gln Asp Val(配列番号3)。
【0014】
上記分子(配列番号3)及び配列番号2のLeu27が置換されたその対応物は、アミド末端のかわりに遊離カルボキシル末端を有することができる。別のPTH類似体は、[Leu27]シクロ(Glu22−Lys26)PTH1−31である。
【0015】
本発明の他の実施形態では、PTH組成物を、定量された比が1〜2(最も長い軸と最も短い軸との長さの比)の楕円を有する円錐形の噴霧(spray plume)を形成する作動装置から出射する液滴、定量された比が1〜1.3(最も長い軸と最も短い軸との長さの比)の楕円を有する円錐形の噴霧(spray plume)を形成する作動装置から出射する液滴であって、体積についての液滴サイズの中央値が10ミクロンと1000ミクロンとの間(10<Dv,50<1000)(式中、Dv,50は30ミクロンと300ミクロンとの間である)であり、直径が10ミクロン又はそれ未満の液滴の比率が10%又はそれ未満であり、直径10ミクロン又はそれ未満の液滴の比率が1%又はそれ未満である液滴で投与する。
【0016】
本発明はまた、処方物を安定化するタンパク質又はポリペプチドを実質的に含まないPTHアゴニストの鼻腔内処方物に関する。特に、好ましい処方物は、アルブミンなどタンパク質及びゼラチンなどのコラーゲン誘導タンパク質を含まない。
【0017】
本発明の他の態様では、経粘膜PTHペプチド処方物は、PTHペプチド、水、及びの可溶化剤(pH3〜6.5)から構成される。好ましい実施形態では、可溶化剤はシクロデキストリンである。
【0018】
本発明の別の実施形態では、経粘膜PTHペプチド処方物は、PTHペプチド、水、可溶化剤(好ましくは、シクロデキストリン)、及び少なくとも1つのポリオール(好ましくは2つのポリオール)から構成される。別の実施形態では、処方物は、1つ又は全ての以下を含み得る:キレート剤、界面活性剤、及び緩衝化剤。
【0019】
本発明の別の実施形態では、処方物は、PTHペプチド、水、キレート剤、及び可溶化剤から構成される。
【0020】
本発明の別の実施形態では、処方物は、PTHペプチド、水、及びキレート剤(pH3〜6.5)から構成される。
【0021】
本発明の別の実施形態では、経粘膜PTHペプチド処方物は、PTHペプチド、水、キレート剤、及び少なくとも1つのポリオール(好ましくは2つのポリオール)から構成される。さらなる実施形態は、1つ又はそれ以上の以下を含み得る:界面活性剤、可溶化剤、及び緩衝化剤。
【0022】
本発明の別の実施形態では、処方物は、PTHペプチド、水、及び少なくとも2つのポリオール(ラクトース及びソルビトールなど)から構成される。処方物に添加することができるさらなる薬剤には、可溶化剤、キレート剤、1つ又はそれ以上の緩衝化剤、及び界面活性剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
本発明の方法及び組成物によるPTHペプチドアゴニストの鼻腔内送達の増強により、哺乳動物被験体における種々の疾患及び容態の治療にこれらの薬剤を薬学的に有効に使用可能である。
【0024】
本発明は、ポリペプチド又はタンパク質である安定剤を実質的に含まない液体又は脱水PTHペプチド処方物の提供によってこの要求を満たす。液体副甲状腺ホルモン処方物は、水、副甲状腺ホルモン、並びにポリオール、界面活性剤、可溶化剤、及びキレート剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加物から構成される。処方物のpHは、好ましくは3〜約7、好ましくは4.5〜約6.0、最も好ましくは約5.0±0.3である。
【0025】
本発明の別の実施形態は、水、PTHペプチド、ポリオール、及び界面活性剤から構成される水性PTH処方物であって、前記処方物のpHが約3〜約6.5であり、前記処方物がタンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない、水性PTH処方物である。
【0026】
本発明の別の実施形態は、水、PTHペプチド、ポリオール、及び可溶化剤から構成される水性PTH処方物であって、前記処方物のpHが約3.0〜約6.5であり、前記処方物がタンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない、水性PTH処方物である。
【0027】
本発明の別の実施形態は、水、PTHペプチド、可溶化剤、及び界面活性剤から構成される水性PTH処方物であって、前記処方物のpHが約3.0〜約6.5であり、前記処方物がタンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない、水性PTH処方物である。
【0028】
本発明の別の実施形態は、水、PTHペプチド、可溶化剤、ポリオール、及び界面活性剤から構成される水性PTH処方物であって、前記処方物のpHが約3.0〜約6.5であり、前記処方物がタンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない、水性PTH処方物である。
【0029】
本発明の別の態様では、安定な水性処方物を脱水して、PTHペプチド、並びにポリオール、界面活性剤、可溶化剤、及びキレート剤から成る群から選択される少なくとも1つの添加物から構成され、アルブミン、コラーゲン、ゼラチンなどのコラーゲン由来タンパク質などのタンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない、脱水PTHペプチド処方物を生成する。凍結乾燥、噴霧乾燥、塩誘導沈殿及び乾燥、真空乾燥、回転蒸発、又は超臨界CO沈殿などの種々の手段によって脱水することができる。
【0030】
1つの実施形態では、脱水PTHペプチドは、PTHペプチド、ポリオール、及び可溶化剤から構成され、前記処方物は、タンパク質である安定剤を実質的に含まない。
【0031】
別の実施形態では、脱水PTHペプチド処方物は、PTHペプチド、ポリオール、及び可溶化剤から構成され、前記PTHペプチド処方物は、タンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない。
【0032】
別の実施形態では、脱水PTHペプチド処方物は、PTHペプチド、界面活性剤、及び可溶化剤から構成され、前記PTHペプチド処方物は、タンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない。
【0033】
別の実施形態では、脱水PTHペプチド処方物は、PTHペプチド、ポリオール、界面活性剤、及び可溶化剤から構成され、前記PTHペプチド処方物は、タンパク質又はポリペプチドである安定剤を実質的に含まない。
【0034】
本発明の別の態様は、溶液のエアゾールを得ることができる作動装置内に含まれる鼻腔内PTHペプチド処方物であって、作動装置の先端から0.5cmと10cmとの間の距離における高さで測定した場合、前記エアゾールの噴霧パターンの楕円率が1.00と1.40との間であり、好ましくは楕円率が1.00と1.30との間であり、作動あたり20マイクロリットルと200マイクロリットルとの間のエアゾールが得られる、鼻腔内PTHペプチド処方物である。
【0035】
別の実施形態では、鼻腔内PTHペプチド溶液は、前記溶液のエアゾールを生成する作動装置中に存在し、前記作動装置の先端から0.5cmと10cmとの間の距離における高さで測定した場合、前記エアゾールの噴霧パターンの長軸及び短軸が10mmと50mmとの間である。別の実施形態では、PTHペプチド水溶液は、生成された液滴の10%未満が10ミクロン未満のサイズであり、PTHペプチドを含むエアゾールが作動装置あたり20マイクロリットルと200マイクロリットルとの間の溶液を含む溶液のエアゾールが生成されるように作動装置に取り付けられている。別の実施形態では、PTHペプチド溶液は、作動の際に生成された液滴のエアゾールが25ミクロンと700ミクロンとの間の液滴を有するように作動装置に取り付けられた容器中に存在する。
【0036】
任意の可溶化剤を使用することができるが、好ましい可溶化剤は、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストラン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストラン、メチル−β−シクロデキストリン、及びキトサンから成る群から選択される。
【0037】
一般に、ポリオールは、ラクトース、ソルビトール、トレハロース、スクロース、マンノース、及びマルトース、並びにその誘導体及びホモログから成る群から選択される。
【0038】
一般に、十分な界面活性剤は、L−α−ホスファチジルコリンジデカノイル(DDPC)、ポリソルベート20(Tween20)、ポリソルベート80(Tween80)、ポリエチレングリコール(PEG)、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ラノリンアルコール、及びソルビタンモノオレエートから成る群から選択される。
【0039】
好ましい処方物では、PTHペプチド処方物はまた、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はエチレングリコール四酢酸(EGTA)などのキレート剤から構成される。クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、フェノール、又はオルトクレゾール、メタクレゾール、若しくはパラクレゾールなどの防腐剤も含む。
【0040】
pHは、一般に、クエン酸ナトリウムとクエン酸との緩衝液及び酢酸ナトリウムと酢酸との緩衝液を使用して調節する。別の緩衝液は、酢酸と酢酸ナトリウムとの緩衝液又はコハク酸と水酸化ナトリウムとの緩衝液であろう。
【0041】
本発明はまた、PTHペプチドの濃度が0.1〜15.0mg/mL、好ましくは1.0〜2mg/mLであり、水溶液のpHが3.0〜6.5、好ましくは約5.0±0.3である処方物を理解する。
【0042】
本発明は、更に、ポリオール濃度が約0.1%と10%(w/v)との間であり、更に、ポリオール濃度が約0.1%〜約3%(w/v)の範囲であるPTHペプチド処方物を含む。
【0043】
本発明はまた、界面活性剤濃度が約0.00001%と約5%(w/v)との間であり、界面活性剤濃度が約0.0002%と約0.1%(w/v)との間である処方物を含む。
【0044】
本発明はまた、可溶化剤濃度が1%〜10%(w/v)であり、可溶化剤濃度が2%〜5%(w/v)である処方物を含む。
【0045】
完成した溶液を、濾過し、当業者に周知の方法を使用し、且つ凍結乾燥機の製造者の説明書にしたがってフリーズドライ(凍結乾燥)することができる。これにより、タンパク質である可溶化剤を実質的に含まない脱水PTHペプチド処方物が得られる。
【0046】
本発明の別の実施形態では、PTHペプチド処方物は、PTHペプチド及び薬学的に許容可能な担体から構成され、実施例2及び7に示す経上皮電気抵抗アッセイによって測定したところ、PTH結合ペプチド処方物は、水、塩化ナトリウム、緩衝液、及びPTHペプチドから成るコントロール処方物よりもin vitro組織透過アッセイにおいて透過性が少なくとも1%、好ましくは3%、最も好ましくは少なくとも6%高い。好ましい実施形態では、PTH処方物は、更に、界面活性剤、可溶化剤、ポリオール、及びキレート剤から成る群から選択される少なくとも1つの賦形剤から構成される。
【0047】
例示的実施形態では、本発明の送達増強方法及び組成物により、哺乳動物被験体における骨粗鬆症又は骨減少症の防止又は治療のためにPTHペプチドアゴニストが治療に有効に粘膜送達される。本発明の1つの態様では、本明細書中に記載の治療有効量のPTHペプチド及び1つ又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤を含む鼻腔内投与に適切な薬学的処方物であって、前記処方物が哺乳動物被験体における骨粗鬆症又は骨減少症の発症又は進行を防止するための本発明の鼻粘膜送達法で有効である、薬学的処方物を提供する。治療有効量のPTHペプチドアゴニスト及び1つ又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤の鼻粘膜送達により、被験体中のPTHペプチドアゴニストの治療レベルが上昇し、個体内の骨量の増加が促進される。
【0048】
本発明の送達増強方法及び組成物により、哺乳動物被験体における骨粗鬆症又は骨減少症の防止又は治療のためにPTHペプチドが治療に有効に粘膜送達される。PTHペプチドを、種々の粘膜経路(例えば、PTHペプチドを鼻粘膜上皮、気管支粘膜上皮又は肺粘膜上皮、口腔頬側面、又は口腔粘膜表面、及び小腸粘膜表面に接触させることによる)を介して投与することができる。例示的実施形態では、方法及び組成物は、鼻腔内送達(例えば、鼻粘膜送達又は鼻腔内粘膜送達)を対象とするか、鼻腔内送達のために処方する。
【0049】
本発明の1つの態様では、本明細書中に記載の治療有効量のPTHペプチドアゴニスト及び1つ又はそれ以上の鼻腔内送達増強剤を含む鼻腔内投与に適切な薬学的処方物であって、前記処方物が骨粗鬆症を防止又は治療するための本発明の鼻粘膜送達法で有効である、薬学的処方物を提供する。
【0050】
本発明の別の実施形態では、カルシウム、ビタミンD、ビスホスホネート、カルシトニン、及び骨形成タンパク質と組み合わせたPTHペプチドアゴニストの投与を対象とする。米国特許第5,616,560号及び米国特許第5,700,774号(本明細書中で参考として援用される)を参照。
【0051】
本発明の上記粘膜PTHペプチド処方物並びに調製及び送達方法により、哺乳動物被験体へのPTHペプチドの粘膜送達が改善される。これらの組成物及び方法は、1つ又はそれ以上のPTHペプチドと1つ又はそれ以上の粘膜送達増強剤との組み合わせ処方物又は調和的(coordinate)投与を含み得る。これらの処方物及び方法を達成するために選択されるべき粘膜送達増強剤は、(A)可溶化剤、(B)電荷調整剤、(C)pH調節剤、(D)分解酵素インヒビター、(E)粘液溶解剤又は粘液除去剤、(F)繊毛抑制剤(ciliostatic agent)、(G)膜透過増強剤(例えば、(i)界面活性剤、(ii)胆汁塩、(iii)リン脂質若しくは脂肪酸添加物、混合ミセル、リポソーム、若しくは担体、(iv)アルコール、(v)エナミン、(iv)NO供与化合物、(vii)長鎖両親媒性分子、(viii)小疎水性透過増強剤、(ix)ナトリウム若しくはサリチル酸誘導体、(x)アセト酢酸のグリセロールエステル、(xi)シクロデキストリン若しくはβ−シクロデキストリン誘導体、(xii)中鎖脂肪酸、(xiii)キレート剤、(xiv)アミノ酸若しくはその塩、(xv)N−アセチルアミノ酸若しくはその塩、(xvi)選択された膜成分の分解酵素、(xvii)脂肪酸合成のインヒビター、(xviii)コレステロール合成のインヒビター、又は(xiv)(i)〜(xviii)の膜透過増強剤の任意の組み合わせ)、(H)上皮接合部の生理学的性質の調整剤(一酸化窒素(NO)刺激物質、キトサン、及びキトサン誘導体など)、(I)血管拡張剤、(J)選択輸送増強剤、(K)粘膜送達の増強のために活性成分を安定化するために、PTHペプチドが、有効に組み合わせされているか、会合されているか、含まれているか、カプセル化されているか、結合している、安定化輸送賦形剤、担体、支持体(support)、若しくは複合体形成種(complex forming species)、及び(L)エタノールなどのアルコールである。
【0052】
本発明の種々の実施形態では、PTHペプチドを、1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の上記の(A)〜(K)に列挙した粘膜送達増強剤と組み合わせる。これらの粘膜送達増強剤は単独又はPTHペプチドと混合するか、薬学的に許容可能な処方物又は送達賦形剤中で組み合わせることができる。本明細書中に記載の教示によるPTHペプチドと1つ又はそれ以上の粘膜送達増強剤との処方物(選択的に、上記(A)〜(K)から選択される2つ又はそれ以上の粘膜送達増強剤の任意の組み合わせが含まれる)により、その送達後に哺乳動物被験体の粘膜表面に対するPTHペプチドの生物学的利用能が増大する。
【0053】
したがって、本発明は、50μgのPTHを哺乳動物に経粘膜投与した場合に、哺乳動物のPTHペプチドの血漿濃度が、血漿1リットルあたり少なくとも5pmol、好ましくは少なくとも10pmol増加するように、PTHペプチドから構成される処方物を経粘膜投与する工程を含む、哺乳動物における骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法である。
【0054】
PTHの鼻粘膜表面内又は鼻粘膜表面を通過する送達を増強する鼻腔内送達増強剤を使用する。受動的に吸収される薬物のために、薬物輸送への傍細胞経路及び経細胞経路の相対的寄与は、薬物のpKa、分配係数、分子半径、電荷、薬物が送達される管腔環境のpH、及び吸収の表面積に依存する。本発明の鼻腔内送達増強剤は、pH調節剤であり得る。本発明の薬学的処方物のpHは、薬物輸送の傍細胞経路及び経細胞経路を介したPTHの吸収に影響を与える要因である。1つの実施形態では、本発明の薬学的処方物のpHを、約pH3.0〜6.5に調整する。さらなる実施形態では、本発明の薬学的処方物のpHを、約pH3.0と5.0との間に調整する。さらなる実施形態では、本発明の薬学的処方物のpHを、約pH4.0と5.0との間に調整する。一般に、pHは5.0±0.3である。
【0055】
上記のように、本発明は、骨粗鬆症又は骨粗鬆症の治療又は予防のための哺乳動物被験体へのPTHペプチドの粘膜送達のための改良された方法及び組成物を提供する。本発明の方法による治療及び予防のための適切な哺乳動物被験体の例には、ヒト及び非ヒト霊長類、家畜(ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギなど)、並びに実験動物及びペット(domestic species)(イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、及びウサギが含まれる)が含まれるが、これらに限定されない。
【0056】
本発明をより深く理解するために、以下の定義を記載する。
【0057】
本発明によれば、副甲状腺ホルモンペプチドには、遊離塩基、酸付加塩、又は金属塩(ペプチドのカリウム塩又はナトリウム塩など)、並びにアミド化、グリコシル化、アシル化、硫酸化、リン酸化、アセチル化、環化、及び他の周知の共有結合修飾方法などのプロセスによって修飾されている副甲状腺ホルモンペプチドも含まれる。
【0058】
骨減少症は、骨の石灰化又は骨密度の減少であり、容態が記載されている全骨格系に適用可能な用語である。
【0059】
「粘膜送達増強剤」を、水、塩、及び/又は一般的な緩衝液及びPTHペプチド(コントロール処方物)を含む処方物に添加した場合、時間に対する濃度のプロットにおける最大血液濃度、最大血清濃度、又は最大脳脊髄液濃度(Cmax)又は濃度曲線下面積(AUC)によって測定した粘膜を通過するPTHペプチド輸送が有意に増加する処方物が生成される化学物質及び他の賦形剤と定義する。粘膜には、鼻、口腔、腸、頬側、気管支肺、膣、及び直腸の粘膜表面が含まれ、実際、外部と通じている全ての体腔又は経路を内張りしている全ての粘膜分泌膜が含まれる。粘膜送達増強剤は、しばしば担体と呼ばれる。
【0060】
「非注入投与」は、動脈又は静脈への直接注射を含まない任意の送達方法、(典型的には、流動物を)ある場所(something)に押し込めるか向かわせる方法、詳細には、ニードル、シリンジ、若しくは他の浸襲的方法を用いて身体の一部に導入する方法を意味する。非注入投与には、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、及び粘膜への非注入送達方法が含まれる。
【0061】
上記のように、本発明は、哺乳動物被験体における骨粗鬆症又は骨減少症を防止又は治療するためのPTHペプチドの鼻粘膜送達のための改良された有用な方法及び組成物を提供する。本明細書中で使用されるように、骨粗鬆症又は骨減少症の防止及び治療は、患者の骨量増加の減少、骨吸収の減少、又は骨折発生率の減少による臨床骨粗鬆症の発症の防止又は発生率若しくは重症度の低下を意味する。
【0062】
PTHペプチドを、ビスホネート、カルシウム、ビタミンD、エストロゲン又はエストロゲン−受容体結合化合物、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERMs)、骨形成タンパク質、又はカルシトニンなどの他の治療薬と組み合わせて投与することもできる。
【0063】
哺乳動物被験体へのPTHペプチドの粘膜投与のための改良された方法及び組成物により、PTHペプチドの投与計画が最適化される。本発明は、PTHペプチド調剤の放出が実質的に標準化されており、及び/又はPTHペプチド放出の有効な送達期間が粘膜投与から約0.1〜2.0時間後、0.4〜1.5時間後、0.7〜1.5時間後、又は0.8〜1.0時間後の範囲で維持される、1つ又はそれ以上の粘膜送達増強剤を処方したPTHペプチドの粘膜送達を提供する。達成されるPTHペプチド放出の維持を、本発明の方法及び組成物を使用した外因性PTHペプチドの反復投与によって容易にすることができる。
【0064】
哺乳動物被験体へのPTHペプチドの粘膜投与のための改良された組成物及び方法により、PTHペプチドの投与計画が最適化される。本発明は、1つ又はそれ以上の粘膜送達増強剤及び最適な徐放増強剤と組み合わせてPTHペプチドを含む処方物の改良された粘膜(例えば、鼻粘膜)送達を提供する。本発明の粘膜送達増強剤により、送達が有効に増加し(例えば、最大血漿濃度(Cmax)が増加し)、粘膜投与されたPTHペプチドの治療活性が増強される。血漿及びCNS中のPTHペプチドの治療活性に影響を与える第2の要因は、滞留時間(RT)である。鼻腔内送達増強剤と組み合わせた徐放増強剤により、PTHペプチドのCmaxが増加し、滞留時間(RT)が増加する。徐放増強処方物(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))が得られる本発明のポリマー送達賦形剤及び他の薬剤並びに方法を本明細書中に開示する。本発明は、哺乳動物被験体の骨粗鬆症又は骨減少症の治療又は防止のための改良されたPTHペプチドの送達方法及び投薬形態を提供する。
【0065】
本発明の粘膜送達処方物及び方法の範囲内で、グルコース調節ペプチドを、頻繁に粘膜送達に適切な担体又は賦形剤と組み合わせるか調和的に投与する。本明細書中で使用される、用語「担体」は、薬学的に許容可能な固体又は液体の充填剤、希釈剤、又はカプセル化材料を意味する。含水液体担体は、酸性化剤、アルカリ化剤、抗菌防腐剤、抗酸化剤、緩衝剤、キレート剤、錯化剤、可溶化剤、保湿剤、溶媒、懸濁剤及び/又は増粘剤、等張化剤、湿潤剤、又は他の生体適合性物質などの薬学的に許容可能な添加物を含み得る。上記カテゴリーによって列挙された成分の一覧表を、U.S.Pharmacopeia National Formulary,1857−1859,(1990)に見出すことができる。薬学的に許容可能な担体として役立ち得る材料のいくつかの例は、ラクトース、グルコース、及びスクロースなどの糖;トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース並びにカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、及び酢酸セルロースなどのセルロース誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;ココアバター及び座剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、ベニバナ油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、及び大豆油などの油;ポリエチレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトール、及びポリエチレングリコールなどポリオール;オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱性物質除去蒸留水(pyrogen free water);等張食塩水;リンゲル液、エチルアルコール、及びリン酸緩衝液、並びに薬学的処方物で使用される他の非毒性適合物質である。処方者(formulator)の希望にしたがって、湿潤剤、乳化剤、及び潤滑剤(ラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウムなど)、並びに着色料、放出剤、コーティング剤、甘味料、香味物質、香料、防腐剤、及び抗酸化剤も組成物中に存在し得る。薬学的に許容可能な抗酸化剤の例には、アスコルビン酸、塩酸システイン、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、及び亜硫酸ナトリウムなどの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、及びα−トコフェロールなどの脂溶性抗酸化剤;クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、及びリン酸などの金属キレート剤が含まれる。単回投薬形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる有効成分の量は、特定の投与様式によって変化する。
【0066】
本発明の粘膜送達組成物及び方法の範囲内で、粘膜表面内又は粘膜表面を通過するPTHペプチドの送達を増強する種々の送達増強剤を使用する。これに関して、粘膜上皮を通過するPTHペプチドの送達は、「経細胞的」又は「傍細胞的」に起こり得る。これらの経路がPTHペプチドの全流動及び生物学的利用能に寄与する範囲は、粘膜の環境、活性成分の物理化学的性質、及び粘膜上皮の性質に依存する。特定の輸送が受動拡散のみを含むのに対して、経細胞輸送は、受動的、促進的、又は能動的過程によって起こり得る。一般に、親水性で受動輸送される極性溶質は、傍細胞経路を介して拡散する一方で、より親油性の高い溶質は経細胞経路を使用する。本発明の範囲内の任意の選択されたPTHペプチドについて、傍細胞送達成分及び経細胞送達成分から見た多様な受動的及び能動的に吸収される溶質の吸収及び生物学的利用能(例えば、透過係数又は生理学的アッセイを反映する)を、容易に評価することができる。受動的に吸収される薬物について、薬物輸送に対する傍細胞経路及び経細胞経路分布の相対的寄与は、薬物のpKa、分配係数、分子半径、電荷、薬物が送達される管腔環境のpH、及び吸収の表面積に依存する。傍細胞経路は、鼻粘膜上皮の接近可能な表面領域の比較的小さな画分を示す。大まかに言えば、細胞膜は、傍細胞の空間を占める領域の1000倍の粘膜表面領域を占めると報告されている。従って、より小さな接触可能領域並びに高分子透過に対するサイズ及び電荷ベースの識別により、一般的に、薬物輸送について傍細胞経路は経細胞送達よりも好ましくないことが示唆されるであろう。驚いたことに、本発明の方法及び組成物は、傍細胞経路を介して粘膜上皮内及び粘膜上皮を通過する生物治療薬の輸送を有意に増強する。したがって、本発明の方法及び組成物(又は単一の方法若しくは組成物)は、傍細胞経路及び経細胞経路の両方又はいずれかを首尾よくターゲティングする。
【0067】
本明細書中で使用される、「粘膜送達増強剤」は、PTHペプチド又は他の生物活性化合物の(例えば、処方物送達賦形剤からの)放出若しくは溶解性、拡散速度、透過能力及びタイミング、取り込み、滞留時間、安定性、有効半減期、ピーク若しくは持続的濃度レベル、クリアランス、並びに他の所望の粘膜送達特性(例えば、送達部位又は血流若しくは中枢神経系などの選択された活性の標的部位で測定)を増強する薬剤を含む。したがって、種々の機構のいずれかによって(例えば、PTHペプチドの拡散、輸送、持続、又は安定性の増加、膜流動性の増加、細胞内又は傍細胞等かを調節するカルシウム及び他のイオンの利用可能性又は作用の調整、粘膜成分(例えば、脂質)の安定化、粘膜組織中の非タンパク質及びタンパク質のスルフヒドリルレベルの変化、粘膜表面を通過する水分流動の増加、上皮接合部の生理学的性質の調整、粘膜上皮に重なった粘液の粘度の減少、粘膜繊毛クリアランス率の減少、並びに他の機構によって)粘膜送達を増強することができる。
【0068】
本明細書中で使用される、「粘膜有効量のPTHペプチド」は、種々の送達経路又は移行経路を含み得る被験体の薬物活性についての標的部位へのPTHペプチドの有効な粘膜送達を意図する。例えば、所与の活性成分は、粘膜細胞の間のその隙間を介してその経路を見出して隣接する血管壁に到達することができる一方で、別の経路により、薬剤を、受動的又は能動的に粘膜細胞に取り込んで細胞内で作用するか、細胞から放出又は輸送されて全身循環などの二次標的部位に到達させることができる。本発明の方法及び組成物は、1つ又はそれ以上のこのような別の経路に沿った活性成分の転位置を促進することができるか、直接粘膜組織又は近接脈管組織に作用して活性成分の吸収又は透過を促進することができる。この状況における吸収又は透過の促進は、これらの機構に制限されない。
【0069】
本明細書中で使用される、「血漿中のPTHペプチドのピーク濃度(Cmax)」、「血漿中のPTHペプチドの濃度−時間曲線下領面積(AUC)」、「血漿中のPTHペプチドの最大血漿濃度に達するまでの時間(tmax)」は、当業者に公知の薬物動態学的パラメーターである。Laursen et al.,Eur.J.Endocrinologv,135:309−315,1996。「濃度−時間曲線」は、鼻腔内、筋肉内、皮下、又は他の非経口投与経路による被験体への一定投薬量のPTHペプチドの投与後の時間に対する被験体の血清中のPTHペプチド濃度を測定する。「Cmax」は、被験体へのPTHペプチドの単回投与後の被験体の血清中のPTHペプチドの最大濃度である。「tmax」は、被験体へのPTHペプチドの単回投与後の被験体の血清中のPTHペプチドが最大濃度に到達するための時間である。
【0070】
吸収促進機構が、異なる本発明の粘膜送達増強剤によって変化し得る一方で、この状況で有用な試薬は、粘膜組織に実質的に悪影響を与えず、特定のPTHペプチド又は他の活性成分若しくは送達増強剤の物理化学的特徴によって選択される。この状況では、粘膜組織の透過又は透過性を増大させる送達増強剤により、しばしば、粘膜の防御透過障壁がいくらか変化する。本発明の範囲内で有益なこのような送達増強剤について、一般に、粘膜透過性の任意の有意な変化が薬物送達の望ましい持続時間に適切な時間枠内で可逆性であることが望ましい。更に、長期使用に伴う粘膜障壁の特性で誘導される実質的な毒性の蓄積やいかなる永続的悪化もあるべきではない。
【0071】
本発明の一定の態様の範囲内で、本発明のPTHペプチドとの調和的投与又は組み合わせ処方物のための吸収促進剤は、小疎水性分子(ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド、エタノール、プロピレングリコール、及び2−ピロリドンが含まれるが、これらに限定されない)から選択される。あるいは、長鎖両親媒性分子(例えば、デアシルメチルスルホキシド、アゾン(azone)、ラウリル硫酸ナトリウム、オレイン酸、及び胆汁塩)を使用して、PTHペプチドの粘膜透過を増強することができる。さらなる態様では、界面活性剤(例えば、ポリソルベート)を、PTHペプチドの鼻腔内送達を増強するための付加化合物、処理剤(processing agent)、又は処方添加物として使用する。DMSO、ポリエチレングリコール、及びエタノールなどの薬剤は、(例えば、前投与又は治療処方物への組み込みによって)送達環境で十分に高い濃度で存在する場合、粘膜の水相に侵入してその溶解特性が変化し、それにより、賦形剤から粘膜へのPTHペプチドの分配を増強することができる。
【0072】
本発明の調和的投与及び処理方法並びに組み合わせ処方物の範囲内で有用な、さらなる粘膜送達増強剤には、混合ミセル;エナミン;一酸化窒素供与体(例えば、S−ニトロソ−N−アセチル−DL−ペニシラミン、NOR1、NOR4(カルボキシ−PITO又はドクロフェナック(doclofenac)ナトリウム)などのNOスカベンジャーと同時投与することが好ましい);サリチル酸ナトリウム;アセト酢酸のグリセロールエステル(例えば、グリセリル−1,3−ジアセトアセテート又は1,2−イソプロピルデングリセリン−3−アセトアセテート);及び生理学的に粘膜送達に適合する他の放出−拡散又は上皮内若しくは経上皮透過促進剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の吸収促進剤は、PTHペプチドの粘膜送達、安定性、活性、又は経上皮透過を増強する種々の担体、基剤、及び賦形剤から選択される。これらには、特に、シクロデキストリン及びβ−シクロデキストリン誘導体(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン及びヘプタキス(2,6−ジ−O−メチル−β−シクロデキストリン))が挙げられる。選択的に、1つ又はそれ以上の成分と接合され、更に、選択的に油性基剤中に処方されたこれらの化合物により、本発明の粘膜処方物の生物学的利用能が増強される。粘膜送達に適合した、なおさらなる吸収増強剤には、中鎖脂肪酸(モノグリセリド及びジグリセリド(例えば、カプリン酸ナトリウム−ココナッツオイルの抽出物(カプムル))、及びトリグリセリド(例えば、アミロデキストリン、Estaram299、Miglyol 810)が含まれる)が挙げられる。
【0073】
本発明の粘膜治療組成物及び粘膜予防組成物に、粘膜障壁を通過するPTHペプチドの吸収、拡散、又は透過を容易にする任意の適切な透過促進剤を補うことができる。透過促進剤は、薬学的に許容可能な任意のプロモーターであり得る。したがって、本発明のより詳細な態様では、サリチル酸ナトリウム及びサリチル酸誘導体(サリチル酸アセチル、サリチル酸コリン、サリチルアミドなど);アミノ酸及びその塩(例えば、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのモノアミノカルボン酸);セリンなどのヒドロキシアミノ酸;アスパラギン酸、グルタミン酸などの酸性アミノ酸;リジンなどの塩基性アミノ酸(そのアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩が含まれる);並びにN−アセチルアミノ酸(N−アセチルアラニン、N−アセチルフェニルアラニン、N−アセチルセリン、N−アセチルグリシン、N−アセチルリジン、N−アセチルグルタミン酸、N−アセチルプロリン、N−アセチルヒドロキシプロリンなど)及びその塩(アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩)から選択される1つ又はそれ以上の透過促進剤を組み込んだ組成物を提供する。本発明の方法及び組成物の範囲内の透過促進剤として、一般に乳化剤として使用される物質(例えば、オレイリン酸ナトリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステルなど)、カプロン酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及びそのアルカリ金属塩、ピロリドンカルボン酸、アルキルピロリドンカルボン酸エステル、N−アルキルピロリドン、プロリンアシルエステルなども提供する。
【0074】
本発明の種々の態様の範囲内では、投与部位と選択された標的部位との間の粘膜障壁を通過して本発明の範囲内のPTHペプチド及び他の治療薬を送達可能な改良された粘膜送達処方物及び方法を提供する。一定の処方物を、特に、選択された標的細胞、組織、若しくは器官、更に特定の病状に適合させる。他の態様では、処方物及び方法により、定義した細胞内経路又は細胞間経路に沿って特異的に進むPTHペプチドの有効な選択的エンドサイトーシス又はトランスサイトーシスが起こる。典型的には、PTHペプチドは、担体又は他の送達賦形剤中に有効濃度レベルで有効に負荷され、例えば、鼻粘膜及び/又は細胞内区画及び細胞内膜を介した離れた薬物作用の標的部位(例えば、血流又は定義された組織、器官、又は細胞外区画)への通過中に安定化形態で送達及び維持される。PTHペプチドを、送達賦形剤中に提供するか修飾することができ(例えば、プロドラッグの形態)、それによりPTHペプチドの放出又は活性化が、生理学的刺激(例えば、pHの変化、リソソーム酵素など)によって誘発される。しばしば、PTHペプチドは、その活性標的部位に送達するまで薬理学的に不活性である。ほとんどの場合、PTHペプチド及び他の処方物の成分は、無毒且つ非免疫原性を示す。この状況では、担体及び他の処方物の成分は、一般に、生理学的条件下で迅速に分解及び排出される能力について選択される。同時に、処方物は、有効に保存するための投薬形態で化学的及び物理的に安定である。
【0075】
天然又は合成の治療的又は予防的に活性なペプチド(2つ又はそれ以上の共有結合したアミノ酸から構成される)、タンパク質、ペプチド又はタンパク質のフラグメント、ペプチド又はタンパク質の類似体、及び活性なペプチド又はタンパク質の化学修飾された誘導体又は塩は、本発明の範囲内で使用される生物活性ペプチド及びタンパク質の定義の範囲内に含まれる。PTHペプチドの広範な種々の有用な類似体及び模倣体は、本発明の範囲内での使用を意図し、公知の方法に従って生成され、生物活性について試験することができる。しばしば、本発明の範囲内の使用されるPTHペプチドのペプチド若しくはタンパク質又は他の生物活性ペプチド若しくはタンパク質は、天然に存在するか未変性の(例えば、野生型、天然に存在する変異体、又は対立遺伝子変異型)ペプチド又はタンパク質配列の範囲内のアミノ酸の部分的置換、付加、又は欠失によって容易に得ることができるムテインである。更に、未変性ペプチド又はタンパク質の生物活性フラグメントも含まれる。このような変異誘導体(mutant derivative)及びフラグメントは、未変性のペプチド又はタンパク質の所望の生物活性を実質的に保持している。炭水化物鎖を有するペプチド又はタンパク質の場合、これらの炭水化物種の変化によって特徴付けられた生物活性変異型も本発明の範囲内に含まれる。
【0076】
本明細書中で使用される、用語「保存的アミノ酸置換」は、類似の側鎖を有するアミノ酸残基の一般的な交換可能性をいう。例えば、一般に交換可能な脂肪族側鎖を有するアミノ酸群は、アラニン、バリン、ロイシン、及びイソロイシンであり、脂肪族水酸基側鎖を有するアミノ酸群は、セリン及びトレオニンであり、アミド含有側鎖を有するアミノ酸群は、アスパラギン及びグルタミンであり、芳香族側鎖を有するアミノ酸群は、フェニルアラニン、チロシン、及びトリプトファンであり、塩基性側鎖を有するアミノ酸群は、リジン、アルギニン、及びヒスチジンであり、硫黄含有側鎖を有するアミノ酸群は、システイン及びメチオニンである。保存的置換の例には、イソロイシン、バリン、ロイシン、又はメチオニンなどの非極性(疎水性)残基の別の残基への置換が含まれる。同様に、本発明は、アルギニンとリジンとの間、グルタミンとアスパラギンとの間、及びトレオニンとセリンとの間などの極性(親水性)残基の置換を意図する。更に、リジン、アルギニン、又はヒスチジンなどの塩基性残基の別の残基への置換又はアスパラギン酸又はグルタミン酸などの酸性残基の別の残基への置換も意図される。例示的な保存的アミノ酸置換基は以下である:バリン−ロイシン−イソロイシン、フェニルアラニン−チロシン、リジン−アルギニン、アラニン−バリン、及びアスパラギン−グルタミン。選択された生物活性を決定するためのペプチド又はタンパク質類似体の対応する未変性のペプチド又はタンパク質への至適なアラインメント及び適切なアッセイ(例えば、接着タンパク質又は受容体結合アッセイ)の使用により、本発明の方法及び組成物の範囲内での使用のための操作可能なペプチド及びタンパク質類似体を容易に同定することができる。操作可能なペプチド及びタンパク質類似体は、典型的には、対応する未変性のペプチド及びタンパク質に対して惹起される抗体と特異的免疫反応性を示す。
【0077】
本発明の固体タンパク質処方物の安定化のためのアプローチは、精製(例えば、凍結乾燥)タンパク質の物理的安定性を増加させることである。これは、疎水性相互作用及びタンパク質の展開につれて増加し得る共有結合経路を介した凝集を阻害する。この状況における処方物の安定化には、しばしば、ポリマーベースの処方物(例えば、生分解性ヒドロゲル処方物/送達系)が含まれる。上記のように、タンパク質の構造、機能、及び安定性における水の重要な役割は周知である。典型的には、タンパク質は、大部分の水を除去した固体状態で比較的安定である。しかし、固体治療タンパク質処方物は、高湿度での保存時又は徐放性組成物若しくはデバイスからの送達の間に水和され得る。一般に、水和の増加につれてタンパク質の安定性は低下する。水はまた、例えば、タンパク質の柔軟性の増加による反応基との接触可能性の増加、反応物質の移動相への移動、及びβ脱離及び加水分解などのいくつかの有害な過程における反応物質としての作用によって固体タンパク質凝集において有意な役割を果たし得る。
【0078】
約6%と28%との間の水を含むタンパク質調製物は、最も不安定である。このレベル未満では、結合水及びタンパク質内部運動の移動性は低い。このレベルを超えると、水の移動性及びタンパク質の運動は、完全な水和に近づく。ある程度までは、水和の増加に伴う固相凝集に対する感受性の増加がいくつかの系で認められている。しかし、より高い含水率では、希釈効果による凝集の低下が認められる。
【0079】
これらの原理により、粘膜送達のための固体状態の凝集に対するペプチド及びタンパク質の有効な安定化方法は、固体処方物中の含水量を調節し、処方物中の水分活性を至適レベルに維持することである。このレベルは、タンパク質の性質に依存するが、一般に、その「単分子層」の水被覆未満に維持されたタンパク質は、優れた固体状態の安定性を示す。
【0080】
タンパク質の安定性を向上させるために含水量を有効に調節する種々の添加物、希釈剤、基剤、及び送達賦形剤を本発明で提供する。この意味における抗凝集剤として有効なこれらの試薬及び担体材料には、例えば、種々の機能のポリマー(ポリエチレングリコール、デキストラン、ジエチルアミノエチルデキストラン、及びカルボキシメチルセルロースなど)が含まれ、これらと混合又は結合したペプチド及びタンパク質の安定性が有意に増加し、固相凝集が減少する。いくつかの例では、タンパク質の活性又は物理的安定性を、ペプチド薬又はタンパク質薬の水溶液に対する種々の添加物によって増強することもできる。例えば、ポリオール(糖が含まれる)、アミノ酸、コラーゲン及びゼラチンなどのタンパク質、並びに種々の塩などの添加物を使用することができる。
【0081】
一定の添加物、特に糖及び他のポリオールはまた、乾燥(例えば、凍結乾燥)タンパク質に有意な物理的安定性を付与する。これらの添加物を、本発明の範囲内で使用して、凍結乾燥時のみでなく乾燥状態での保存時にも凝集からタンパク質を保護することもできる。例えば、スクロース及びFicoll 70(スクロース単位を有するポリマー)は、種々の条件下での固相インキュベーション時のペプチド又はタンパク質凝集を有意に保護する。これらの添加物はまた、ポリマーマトリクス内に包埋された固体タンパク質の安定性を向上することができる。
【0082】
なおさらなる添加物(例えば、スクロース)は、本発明の一定の徐放性処方物で起こり得る高温湿潤下での固相凝集に対してタンパク質を安定化させる。ゼラチン及びコラーゲンなどのタンパク質はまた、この状況で不安定なタンパク質の変性及び凝集を減少させるための安定剤又は増量剤として役立つ。これらの添加物を、本発明の範囲内のポリマー融解過程及び組成物に組み込むことができる。例えば、上記の種々の安定化添加物を含む溶液の簡潔な凍結乾燥又は噴霧乾燥によってポリペプチド微粒子を調製することができる。これにより、非凝集ペプチド及びタンパク質を長期間にわたり徐放することができる。
【0083】
可溶化剤を使用して実質的に純粋な非凝集形態にペプチド又はタンパク質を安定化させる、凝集傾向のあるペプチド及びタンパク質の粘膜送達のための処方物が得られる種々のさらなる調製成分及び方法並びに特定の処方添加物を本明細書中に提供する。成分及び添加物の範囲は、これらの方法及び処方物の範囲内での使用を意図する。これらの可溶化剤の例は、ポリペプチドの疎水性側鎖に選択的に結合するシクロデキストリン(CD)である。これらのCDは、凝集を有意に阻害する様式でタンパク質の疎水性パッチに結合することが見出されている。この阻害は、関与するCD及びタンパク質の両方に関して選択的である。このようなタンパク質凝集の選択的阻害により、本発明の鼻腔内送達方法及び組成物の範囲内でさらなる利点が得られる。この状況で用いるさらなる添加物には、ペプチド及びタンパク質の凝集を特異的に遮断するリンカーによって制御された種々の幾何学的性質を有するCD二量体、三量体、及び四量体が含まれる。それにもかかわらず、本発明の範囲内の可溶化剤及び組み込み方法は、タンパク質−タンパク質相互作用を選択的に遮断するためのペプチド及びペプチド模倣体の使用を含む。1つの態様では、CD多量体について報告された疎水性側鎖の特異的結合は、タンパク質凝集を同様に遮断するペプチド及びペプチド模倣体の使用を介してタンパク質に及ぶ。広範な適切な方法及び抗凝集剤は、本発明の組成物及び手順の範囲内で組み込みに利用可能である。
【0084】
疎水性粘膜障壁を通過する送達の増強のための生物活性剤(PTHペプチド、他の活性なペプチド及びタンパク質、並びに高分子薬及び小分子薬が含まれる)の輸送特性を改良するために、本発明はまた、本明細書中に記載の選択された生物活性剤又は送達増強剤の電荷調整のための技術及び試薬を提供する。これに関して、高分子の相対的透過性は、一般に、その分配係数に関連する。分子のpK及び粘膜表面のpHに依存する分子のイオン化度も分子の透過性に影響を与える。粘膜送達についての生物活性剤(本発明のPTHペプチド及び類似体が含まれる)の透過及び分配を、例えば、荷電官能基の改変、活性成分が送達される送達賦形剤若しくは溶液のpHの調整、又は電荷若しくはpH改変試薬の活性成分との調和的投与によって達成される活性成分又は透過剤の電荷の変更又は電荷の拡大(spreading)によって容易にすることができる。
【0085】
これらの一般的教示と一致して、活性成分を実質的にイオン化されていないか中性の電荷状態で粘膜表面に送達させた場合、本発明の方法及び組成物の範囲内の荷電高分子種(PTHペプチド並びに他の生物活性ペプチド及びタンパク質が含まれる)の粘膜送達が実質的に改良される。
【0086】
本発明の範囲内で使用される粘膜処方物の一定のPTHペプチド及び他の生物活性ペプチド及びタンパク質成分の電荷を調整し、それによりペプチド又はタンパク質の正電荷密度を増加させる。これらの調整はまた、本明細書中に開示されているペプチド及びタンパク質の接合体、担体、及び他の形態のカチオン化に及ぶ。カチオン化により、本発明の範囲内のタンパク質及び高分子の生体分布及び輸送特性の都合の良い改変手段が得られる。活性成分の生物活性を実質的に保護し、副作用(組織の損傷及び毒性が含まれる)を潜在的に制限する様式でカチオン化が起こる。
【0087】
鼻腔内投与を介した生物治療薬の有効な送達には、粘液層の糖タンパク質への結合に起因する薬物の喪失に加えて鼻粘膜の防御粘液上皮を通過する薬物の輸送速度の減少を考慮しなければならない。正常な粘液は、水、電解質、ムチン、高分子、及び脱落上皮細胞から成る粘弾性のゲル様物質である。これは、主に、下にある粘膜組織の細胞保護及び潤滑のための被膜として役立つ。粘液は、鼻上皮及び他の粘膜上皮に存在する無作為に分布した分泌細胞によって分泌される。粘液の構造単位はムチンである。この糖タンパク質は、主に、粘液の粘弾性を担うが、他の高分子もこの性質に寄与し得る。気道粘液では、このような高分子には、局所生成された分泌性IgA、IgM、IgE、リゾチーム、及び気管支トランスフェリンが含まれ、これらは宿主防御機構においても重要な役割を果たす。
【0088】
本発明の調和的投与方法は、選択的に、鼻腔内投与した生物治療薬の吸収を促進するために鼻腔内粘膜表面から粘液を分解するか、薄くするか、除去するように働く有効な粘液溶解剤又は粘液除去剤を組み込む。これらの方法の範囲内で、粘液溶解剤又は粘液除去剤を、生物活性成分の鼻腔内送達を増強するための付加化合物として調和的に投与する。あるいは、有効量の粘液溶解剤又は粘液除去剤を、本発明の多重処理方法においける処理剤としてか本発明の組み合わせ処方物内の添加物として組み込み、それにより鼻腔内粘液の障壁効果の減少によって生体治療化合物の鼻腔内送達を増強する改良された処方物が得られる。
【0089】
種々の粘液溶解剤又は粘液除去剤は、本発明の方法及び組成物の範囲内の組み込みに利用可能である。その作用機構に基づいて、粘液溶解剤又は粘液除去剤を、しばしば、以下の群に分類することができる:ムチン糖タンパク質のタンパク質コアを切断するプロテアーゼ(例えば、プロナーゼ、パパイン);ムコタンパク質のジスルフィド結合を分割するスルフヒドリル化合物;及び粘液中の非共有結合を破壊する洗浄剤(例えば、TritonX−100、Tween20)。この状況におけるさらなる化合物には、胆汁塩及び界面活性剤(例えば、デオキシコール酸ナトリウム、タウロデオキシコール酸ナトリウム、グリココール酸ナトリウム、及びリソホスファチジルコリン)が含まれるが、これらに限定されない。
【0090】
粘膜の構造破壊における胆汁塩の有効性は、デオキシコール酸塩>タウロコール酸塩>グリココール酸塩の順である。本発明の方法よる鼻腔内送達を増強するための粘液の粘性又は接着を減少させる他の有効な薬剤には、例えば、単鎖脂肪酸並びにキレート化によって作用する粘液溶解剤(N−アシルコラーゲンペプチド、胆汁酸、及びサポニン(後者は、粘液層構造の維持で重要な役割を果たすCa2+及び/又はMg2+のキレート化によって一部機能する)など)が含まれる。
【0091】
本発明の方法及び組成物の範囲内で使用されるさらなる粘液溶解剤には、N−アセチル−L−システイン(ACS)(気管支肺粘液の粘度及び接着の両方を減少させ、麻酔ラットにおいてヒト成長ホルモンの鼻生物学的利用能を穏やかに増加させる(7.5〜12.2%)ことが報告されている強力な粘液溶解剤)が含まれる。これら及び他の粘液溶解剤又は粘液除去剤を、典型的には、生物活性剤投与と調和的させた約0.2〜20mMの濃度範囲で鼻粘膜と接触させて鼻腔内粘液の極性、粘度、及び/又は弾力性を減少させる。
【0092】
更に他の粘液溶解剤又は粘液除去剤を、粘液糖タンパク質内のグリコシド結合を切断することができる一定範囲のグリコシダーゼ酵素から選択することができる。α−アミラーゼ及びβ−アミラーゼはこの酵素クラスの代表であるにもかかわらず、その粘液溶解効果は限られ得る。対照的に、細菌グリコシダーゼにより、これらの微生物がその宿主の粘液層を透過させることが可能である。
【0093】
本発明の範囲内の最も生物学的に活性な薬剤(ペプチド及びタンパク質治療薬が含まれる)との組み合わせ使用のために、一般に、非イオン性洗浄剤は、粘液溶解剤又は粘液除去剤として有用である。これらの薬剤は、典型的には、治療ポリペプチド活性を改変も実質的に妨害もしない。
【0094】
繊毛浄化による一定の粘膜組織(例えば、鼻粘膜組織)の自浄能力が(例えば、粉塵、アレルゲン、及び細菌を除去するための)防御機能として必要であるので、一般に、この機能は粘膜薬物治療によって実質的に障害を受けてはならないと考えられている。気道における粘膜繊毛輸送は、感染に対する特に重要な防御機構である。この機能を達成するために、鼻腔及び気道の繊毛の運動(beat)により、粘液層が粘膜に沿って移動して吸い込んだ粒子及び微生物を除去する。
【0095】
繊毛抑制剤は、本発明の方法及び組成物の範囲内で、本明細書中に開示されている粘膜(例えば、鼻腔内)投与したPTHペプチド、類似体、及び模倣体、ならびの他の生物活性剤の滞留時間を増大させるために使用する。特に、本発明の方法及び組成物の範囲内のこれらの薬剤の送達は、一定の態様で、粘膜細胞の繊毛活動を可逆的に阻害し、粘膜投与した活性成分の滞留時間を一過性に可逆的に増加させるように機能する1つ又はそれ以上の繊毛抑制剤の調和的投与又は組み合わせ処方物によって有意に増強される。本発明のこれらの態様の範囲内での使用のために、その活性が特異的又は間接的である上記繊毛抑制因子は、許容できない副作用が起こることなく本明細書中に開示されているPTHペプチド、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤の送達を増強するための粘膜投与部位で粘膜繊毛浄化を一過性に(すなわち、可逆的に)減少又は停止させるような適量(濃度、持続時間、及び送達様式に依存する)で繊毛抑制剤として首尾よく使用するための全候補である。
【0096】
より詳細な態様の範囲内で、特異的繊毛抑制因子を、1つ又はそれ以上の本明細書中に開示されているPTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体、並びに/又は他の生物活性剤との組み合わせ処方物又は調和的投与プロトコールで使用する。文献で単離及び特徴付けられた種々の細菌繊毛抑制因子を、本発明のこれらの実施例の範囲内で使用することができる。緑膿菌由来の繊毛抑制因子には、フェナジン誘導体、パイオ化合物(pyo compound)(2−アルキル−4−ヒドロキシキノリン)、及びラムノ脂質(rhamnolipid)(溶血素としても公知)が含まれる。パイオ化合物は、50μg/mlの濃度で明確な超微細構造の病変も伴わずに繊毛を抑制する。実質的により高い濃度(400μg/ml)であるにもかかわらず、フェナジン誘導体も繊毛運動性を阻害するが、幾らか膜を破壊した。気管支外植片のラムノ脂質への制限された曝露によって繊毛が抑制され、これは繊毛膜の変化と関連していた。より広範なラムノ脂質への曝露は、軸糸からのダイニン腕の除去に関連していた。
【0097】
本発明のより詳細な態様の範囲内で、1つ又はそれ以上の膜透過増強剤を、本発明の粘膜送達法又は処方物の範囲内で使用して、本明細書中に開示されているPTHペプチド、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤の粘膜送達を増強することができる。この状況における膜透過増強剤を、以下から選択することができる:(i)界面活性剤、(ii)胆汁塩、(iii)リン脂質添加物、混合ミセル、リポソーム、若しくは担体、(iv)アルコール、(v)エナミン、(vi)NO供与化合物、(vii)長鎖両親媒性分子、(viii)小疎水性透過増強剤、(ix)ナトリウム若しくはサリチル酸誘導体、(x)アセト酢酸のグリセロールエステル、(xi)シクロデキストリン若しくはβ−シクロデキストリン誘導体、(xii)中鎖脂肪酸、(xiii)キレート剤、(xiv)アミノ酸若しくはその塩、(xv)N−アセチルアミノ酸若しくはその塩、(xvi)選択された膜成分の分解酵素、(xvii)脂肪酸合成のインヒビター、(xviii)コレステロール合成のインヒビター、又は(xix)(i)〜(xix)に列挙した膜透過増強剤の任意の組み合わせ。
【0098】
一定の表面活性剤は、粘膜吸収増強剤として本発明の粘膜送達処方物及び方法に容易に組み込まれる。本明細書中に開示されているPTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤と調和的に投与するか組み合せて処方することができるこれらの薬剤を、公知の界面活性剤の広範な集団から選択することができる。界面活性剤は、一般に、以下の3つのクラスに分類される:(1)非イオン性ポリオキシエチレンエステル;(2)グリコール酸ナトリウム(SGC)及びデオキシコレート(DOC)などの胆汁塩;及び(3)タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム(STDHF)などのフシジン酸誘導体。これらの種々の表面活性剤クラスの作用機構には、典型的には、生物活性剤の可溶化が含まれる。しばしば凝集体を形成するタンパク質及びペプチドのために、これらの吸収促進剤の表面活性特性により、界面活性剤コーティング単量体などのより小さな単位を溶液中により容易に維持することができるようにタンパク質と相互作用することができる。他の表面活性剤の例は、L−α−ホスファチジルコリンジデカノイル(DDPC)、ポリソルベート80、及びポリソルベート20である。これらの単量体は、推定上、凝集体よりも輸送性の高い単位である。第2の潜在的な機構は、粘膜環境下でのプロテアーゼによるタンパク質分解からのペプチド又はタンパク質の防御である。胆汁塩及びいくつかのフシジン酸誘導体は、報告によれば、タンパク質吸収の増強に必要な濃度よりも低い濃度での鼻ホモジネートによってタンパク質分解を阻害する。このプロテアーゼ阻害は、生物学的半減期の短いペプチドに特に重要であり得る。
【0099】
本発明は、粘膜送達のために薬学的調製物に処方した本明細書中に開示されている粘膜送達増強剤と組み合わせた1つ又はそれ以上のPTHペプチド、類似体、若しくは模倣体、及び/又は他の生物活性剤を含む薬学的組成物を提供する。
【0100】
透過剤は、典型的には、被験体の粘膜上皮表面の上皮接合部の構造及び/又は生理学の調整によって粘膜上皮傍細胞輸送を可逆的に増強する。この効果は、典型的には、近接上皮細胞の上皮膜接着タンパク質間のホモタイプ又はヘテロタイプの結合の透過剤による阻害を含む。ホモタイプ又はヘテロタイプの結合のこの遮断のための標的タンパク質を、種々の関連する接合部接着分子(JAM)、オクルディン、又はクラウディンから選択することができる。この例は、これらのタンパク質の細胞外ドメインに結合する抗体、抗体フラグメント、又は単鎖抗体である。
【0101】
なおさらなる詳細な実施形態では、本発明は、粘膜上皮傍細胞輸送の増強のための透過ペプチド、ペプチド類似体、及び模倣体を提供する。本ペプチド、ペプチド類似体、及び模倣体は、典型的には、哺乳動物被験体における上皮接合部の構造及び/又は生理学的性質の調整によって本発明の組成物及び方法の範囲内で作用する。一定の実施形態では、ペプチド、ペプチド類似体、及び模倣体は、接合部接着分子(JAM)、オクルディン、又はクラウディンから選択される上皮膜接着タンパク質のホモタイプ及び/又はヘテロタイプの結合を有効に阻害する。
【0102】
広く研究されている1つのこのような薬剤は、「閉鎖帯毒素」(ZOT)として公知のコレラ菌由来の細菌毒素である。この毒素は、腸粘膜透過性の増加を媒介し、感染被験体で病徴(下痢が含まれる)を引き起す。Fasano et al,Proc.Nat.Acad.Sci.,U.S.A.,8:5242−5246(1991)。ウサギ回腸粘膜に対して試験した場合、ZOTは、細胞内の強固な接合部構造の調整によって腸透過性を増加させた。より最近では、ZOTが腸粘膜中の強固な接合部を可逆的に開くことができることが見出された。ZOTが鼻粘膜中の強固な接合部を可逆的に開くことができることも報告されている。米国特許第590,825号。
【0103】
本発明の処方物及び方法の範囲内で、ZOT並びにZOT活性のアゴニスト又はアンタゴニストとして機能するZOTの種々の類似体及び模倣体は、鼻粘膜中及び鼻粘膜を通過する傍細胞吸収の増加による生物活性剤の鼻腔内送達の増強に有用である。この状況では、ZOTは、典型的には、接合部タンパク質ZO1の局在化の変化によって特徴付けられた強固な接合部構造の再組織化によって作用する。本発明のこれらの態様の範囲内で、ZOTを、実質的に副作用を起こすことなく鼻粘膜透過性を可逆的に増加することによって活性成分の吸収を有意に増強するための有効量で生物活性剤と調和的に投与するか組み合せて処方する。
【0104】
本発明の組成物及び送達方法は、選択的に、1つ又はそれ以上の生物活性剤の輸送を容易にする選択的輸送選択的輸送増強剤を組み込む。これらの輸送増強剤を、本明細書中に開示されている1つ又はそれ以上のPTHペプチド、類似体、及び模倣体との組み合わせ処方物又は調和的投与プロトコールで使用し、それにより、粘膜輸送障壁を通過する1つ又はそれ以上のさらなる生物活性剤の送達を調和的に増強し、活性成分の粘膜送達を増強して被験体中の標的組織又は区画(例えば、粘膜上皮、肝臓、CNS組織又は流動物若しくは血漿)に到達させることができる。あるいは、輸送増強剤を組み合わせ処方物又は調和的投与プロトコールで使用し、それにより、さらなる生物活性剤の送達の増強を伴うか伴わずに1つ又はそれ以上のPTHペプチド、類似体、及び模倣体の粘膜送達を直接増強することができる。
【0105】
本発明のこの態様の範囲内で使用される例示的な選択的輸送増強剤には、上皮輸送障壁成分と特異的に相互作用することが公知のグリコシド、糖含有分子、及びレクチン結合剤などの結合剤が含まれるが、これらに限定されない。例えば、受容体媒介性相互作用による細胞表面糖部分に結合する特異的「生体接着」リガンド(種々の植物及び細菌のレクチンが含まれる)を、本発明の範囲内の生物活性剤の粘膜(例えば、鼻粘膜)送達の増強のための担体又は接合輸送メディエーターとして使用することができる。本発明の範囲内で使用される一定の生体接着リガンドは、上皮標的細胞への生体信号の伝達を媒介し、特定の細胞輸送過程(エンドサイトーシス又はトランスサイトーシス)による接着リガンドの選択的取り込みを誘発する。したがって、これらの輸送メディエーターを、1つ又はそれ以上のPTHペプチド、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤の粘膜上皮中及び/又は粘膜上皮を通過する選択的取り込みを刺激するか仕向けるための「担体系」として使用することができる。これら及び他の選択的輸送増強剤は、本発明の範囲内の高分子生物医薬品(特に、ペプチド、タンパク質、オリゴヌクレオチド、及びポリヌクレオチドベクター)の粘膜送達を有意に増強する。レクチンは、真核細胞の糖タンパク質及び糖脂質の表面上に見出される特定の糖に結合する植物タンパク質である。レクチンの濃縮液は、「粘液牽引(mucotractive)」効果を有し、種々の研究により、粘膜表面を通過するレクチン及びレクチン接合体(例えば、コロイド金粒子と接合したコンカナバリンA)の迅速な受容体媒介性エンドサイトーシス(RME)が証明されている。さらなる研究により、レクチンの取り込み機構をin vivoでの腸薬物ターゲティングのために使用することができることが報告されている。これらの一定の研究では、ポリスチレンナノ粒子(500nm)をトマトレクチンに共有結合し、ラットへの経口投与後に全身取り込みが改良されることが報告された。
【0106】
植物レクチンに加えて、微生物の接着因子及び侵入因子は、本発明の粘膜送達方法及び組成物の範囲内での接着/選択的輸送担体として使用するための豊富な候補の供給源を提供する。2つの成分は、細菌接着過程、細菌「付着因子」(接着因子又はコロニー形成因子)、及び宿主細胞表面上の受容体に必要である。粘膜感染を引き起す細菌は、細菌自体が上皮表面に付着する前に粘液層を透過することが必要である。この付着は、通常、細菌の線毛又は線毛構造によって媒介されるが、他の細胞表面の構成要素もこの過程の一部を担い得る。接着細菌は、増殖及びシグナル伝達機構(毒素の補助を伴うか伴わない)を介した標的細胞内の一連の生化学反応の開始によって粘膜上皮にコロニーを形成する。これらの侵入機構に関連して、種々の細菌及びウイルスによって最初に産生された広範な種々の生体接着タンパク質(例えば、インベイシン、インターナリン(internalin))は公知である。これらにより、このような微生物が、宿主の種、更に詳細には標的組織に対して優れた選択性で細胞外に付着する。このような受容体−リガンド相互作用によって伝達されたシグナルにより、エンドサイトーシス過程及びトランスサイトーシス過程によって上皮細胞中、最終的には上皮細胞を通過するインタクトな生きた微生物の輸送が誘発される。このような天然に存在する現象を、粘膜上皮及び/又は他の指定の薬物作用の標的部位中又はこれらを通過する生物活性化合物の送達を増強するために本明細書中に記載の教示に従って(例えば、PTHペプチドなどの生物活性剤と付着因子との複合体化によって)活用することができる。
【0107】
特定のレクチン様様式で上皮表面に結合する種々の細菌及び植物毒素はまた、本発明の方法及び組成物の範囲内で有用である。例えば、ジフテリア毒素(DT)は、RMEによって迅速に宿主細胞に侵入する。同様に、大腸菌熱不安定性毒素のBサブユニットは、高度に特異的なレクチン様様式で腸上皮細胞の刷子縁に結合する。この毒素の取り込み及び腸細胞の基底膜側へのトランスサイトーシスが、in vivo及びin vitroで報告されている。他の研究者は、マルトース結合融合タンパク質としての大腸菌のジフテリア毒素の膜貫通ドメインを示しており、これは、高分子量ポリ−L−リジンに化学的にカップリングする。得られた複合体は、in vitroでのレポーター遺伝子の内在化を媒介するために首尾よく使用された。これらの例に加えて、黄色ブドウ球菌は、超抗原及び毒素の両方として作用する一連のタンパク質(例えば、ブドウ球菌エンテロトキシンA(SEA)、SEB、有毒毒素性ショック症候群毒素1(TSST−1))を産生する。これらのタンパク質に関する研究により、Caco−2細胞におけるSEB及びTSST−1の用量依存性のトランスサイトーシスの促進が報告されている。
【0108】
ウイルス血球凝集素は、本発明の方法及び組成物の範囲内の生物活性剤の粘膜送達を容易にするための別の型の輸送因子を含む。多数のウイルス感染の最初の工程は、表面タンパク質(血球凝集素)の粘膜細胞への結合である。これらの結合タンパク質は、ほとんどのウイルスで同定されており、ロタウイルス、水疱・帯状疱疹ウイルス、セムリキ森林ウイルス、アデノウイルス、ジャガイモ葉巻ウイルス、及びレオウイルスが含まれる。これら及び他の例示的なウイルス血球凝集素を、本明細書中に開示されている1つ又はそれ以上のPTHペプチド、類似体、及び模倣体との組み合わせ処方物(例えば、混合物又は接合体の形成)又は調和的投与プロトコールで使用し、それにより、1つ又はそれ以上のさらなる生物活性剤の粘膜送達を調和的に増強することができる。あるいは、ウイルス血球凝集素を、組み合わせ処方物又は調和的投与プロトコールで使用し、それにより、さらなる生物活性剤の送達の増強を伴うか伴わずに1つ又はそれ以上のPTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体の粘膜送達を直接増強することができる。
【0109】
種々の内因性の選択的輸送媒介因子も本発明の範囲内で利用可能である。哺乳動物細胞により、定義された区画への特異的基質及び標的の内在化を促進するための機構の取り合わせが開発されている。集合的に、これらの膜変形過程を、「エンドサイトーシス」といい、貪食作用、細胞吸水作用、受容体媒介性エンドサイトーシス(クラスリン媒介性RME)、及び細胞飲水作用(非クラスリン媒介性RME)を含む。RMEは、その名称が意味するように、種々のリガンドが細胞表面受容体に結合し、その後内在化し、細胞内に輸送される高度に特異的な細胞生物学的過程である。多数の細胞では、エンドサイトーシス過程は非常に活発なので、全膜表面が内在化されて30分未満で置換される。その細胞膜中の配向に基づいて2つの受容体クラスが提案されており、I型受容体のアミノ末端が膜の細胞外側に存在する一方で、II型受容体は細胞内環境にこの同一のタンパク質を有する。
【0110】
本発明の更に他の実施形態は、粘膜送達された生物活性剤のRMEの担体又は刺激物質としてトランスフェリンを使用する。トランスフェリン(80kDaの鉄輸送糖タンパク質)は、RMEによって細胞に有効に取り込まれる。トランスフェリン受容体は、ほとんどの増殖細胞の表面上に見出され、赤芽球及び種々の腫瘍上では多数見出される。トランスフェリン(Tf)及びトランスフェリン接合体のトランスサイトーシスは、ブレフェルジンA(BFA)(真菌の代謝産物)の存在下で増強されることが報告されている。他の研究では、BFA処置により、MDCK細胞においてリシン及びHRPの頂端側のエンドサイトーシスを急速の増加させることが報告されている。したがって、受容体媒介性輸送を刺激するBFA及び他の薬剤を本発明の方法の範囲内で組み合わせで処方した(例えば、接合した)薬剤及び/又は調和的に投与した薬剤として使用し、それにより、生物活性剤(PTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体が含まれる)の受容体媒介性輸送を増強することができる。
【0111】
本発明の一定の態様では、本明細書中の組み合わせ処方物及び/又は調和的投与方法は、荷電ガラスへ接着させることによりコンテナ中の有効濃度を減少させることができる有効量のペプチド及びタンパク質を組み込む。ポリペプチド又はタンパク質のガラスコンテナへの吸着を減少させるために、シラン化コンテナ(例えば、シラン化ガラスコンテナ)を使用して最終生成物を保存する。
【0112】
本発明のなおさらなる態様では、哺乳動物被験体の治療キットは、哺乳動物被験体の粘膜送達のために処方した1つ又はそれ以上のPTHペプチド化合物の安定な薬学的組成物を含み、組成物は骨粗鬆症又は骨減少症を治療又は防止するのに有効である。キットは、更に、1つ又はそれ以上のPTHペプチド化合物を含むための薬学的試薬バイアルを含む。薬学的試薬バイアルは、医薬品グレードのポリマー、ガラス、又は他の適切な材料から構成される。薬学的試薬バイアルは、例えば、シラン化ガラスバイアルである。キットは、更に、組成物を被験体の瓶粘膜表面に送達させるための開口部を含む。送達開口部は、医薬品グレードのポリマー、ガラス、又は他の適切な材料から構成される。送達開口部は、例えば、シラン化ガラスである。
【0113】
シラン化技術は、シラン化すべき表面の特殊クリーニング技術と低圧でのシラン化過程とを組み合わせる。シランは気相であり、高温で表面がシラン化される。この方法により、単層に特徴的な安定で均一な機能的シランを有する再現性のある表面が得られる。シラン化表面は、本発明のポリペプチド又は粘膜送達増強剤のガラスへの結合を防止する。
【0114】
この手順は、本発明のPTHペプチド組成物を保持するためのシラン化薬学的試薬バイアルを調製するのに有用である。使用前に2回蒸留水(ddHO)でのリンスによってガラストレイをクリーニングする。次いで、シラントレイを、95%EtOHでリンスし、アセトントレイをアセトンでリンスする。薬学的試薬バイアルを、アセトン中で10分間超音波処理する。アセトン超音波処理後、試薬バイアルをddHOトレイ中に少なくとも2回浸漬する。試薬バイアルを、0.1M NaOH中で10分間超音波処理する。試薬バイアルをNaOH中で超音波処理し、フード中でシラン溶液を作製する。(シラン溶液:800mLの95%エタノール;96Lの氷酢酸;25mLのグリシドキシプロピルトリメトキシシラン)。NaOH超音波処理後、試薬バイアルをddHOトレイ中に少なくとも2回浸漬する。試薬バイアルをシラン溶液中で3〜5分間シラン化する。試薬バイアルを、100%EtOHトレイ中に浸漬する。試薬バイアルを、予備精製したNガスで乾燥させ、使用前に100℃のオーブンで少なくとも2時間保存する。
【0115】
本発明の一定の態様では、本明細書中の組み合わせ処方物及び/又は調和投与方法は、1つ又はそれ以上の生物活性剤の粘膜送達を増強するための付加化合物又は担体として有効量の非毒性生体接着剤を組み込む。この状況での生体接着剤は、1つ又はそれ以上の化合物又は標的粘膜の表面への一般的又は特異的接着を示す。生体接着剤は、粘膜上皮中又は粘膜上皮を通過する巨大分子(例えば、ペプチド及びタンパク質)の透過さえも確実にするために粘膜中又は粘膜を通過する生物活性剤の所望の濃度勾配を保持する。典型的には、本発明の方法及び組成物の範囲内の生体接着剤の使用により、粘膜上皮中又は粘膜上皮を通過するペプチド及びタンパク質の透過性を2倍〜5倍、しばしば、5倍〜10倍増加させる。この上皮透過の増強により、しばしば、例えば、鼻上皮の基底部分又は隣接細胞外区画若しくは血漿又はCNS組織若しくは流動物中に高分子が有効に経粘膜送達される。
【0116】
この増強された送達により、生体活性ペプチド、タンパク質、及び他の高分子治療種の有効な送達が非常に改良される。これらの結果は、化合物の親水性に一部依存し、それにより、水不溶性化合物と比較して親水性種を使用してより高い透過性が得られる。これらの効果に加えて、粘膜表面での薬物の持続性を増強するための生体接着剤の使用により、薬物送達を持続させるためのリザーバ機構を誘発することができ、それにより、化合物が粘膜組織を介して透過するだけでなく、一旦表面上の材料が枯渇すると、粘膜表面に逆拡散する。
【0117】
経口投与分野の種々の適切な生体接着剤は、米国特許第3,972,995号;同第4,259,314号;同第4,680,323号;同第4,740,365号;同第4,573,996号;同第4,292,299号;同第4,715,369号;同第4,876,092号;同第4,855,142号;同第4,250,163号;同第4,226,848号;同第4,948,580号;米国特許再発行第33,093号(本明細書中で参考として援用される)に開示されており、本発明の新規の方法及び組成物で適用される。本発明の方法及び組成物の範囲内の粘膜(例えば、鼻粘膜)送達プラットフォームとしての種々の生体接着ポリマーの能力を、PTHペプチドを保持して放出する能力の決定及び活性成分の組み込み後の粘膜表面と相互作用する能力によって容易に評価することができる。更に、周知の方法を適用して、粘膜投与部位の組織との選択されたポリマーの生体適合性を決定する。標的粘膜が粘液で覆われている場合(すなわち、粘液溶解処置又は粘液除去処置を行わない)、下にある粘膜上皮に繋がる接続物(connecting)として役立ち得る。したがって、本明細書中で使用される、用語「生体接着剤」はまた、本発明の範囲内の生物活性剤の粘膜送達の増強に有用な粘膜接着化合物を対象とする。しかし、粘液ゲル層への接着を介して媒介される粘膜組織との接着性の接触を、急速な粘液浄化が起こる粘液層とその下にある組織(特に、鼻腔面)との間の不完全又は一過性の付着によって制限することができる。これに関して、ムチン糖タンパク質が継続的に分泌され、細胞又は腺からのその放出直後に、粘弾性ゲルが形成される。しかし、接着性ゲル層の管腔表面は、機械的作用、酵素的作用、及び/又は繊毛作用によって継続的に破壊される。このような活性がより顕著な場合又はより長い接着時間が望ましい場合、本発明の調和的投与方法及び組み合わせ処方方法は、上記の本明細書中に開示されている粘液溶解及び/又は繊毛抑制のための方法又は薬剤を更に組み込むことができる。
【0118】
典型的には、本発明の範囲内で使用される粘膜接着ポリマーは、複雑であるが特異的ではない機構によって湿った粘膜組織表面に接着する天然又は合成の高分子である。これらの粘膜接着ポリマーに加えて、本発明はまた、特異的相互作用(受容体媒介性相互作用が含まれる)による粘液よりもむしろ細胞表面に直接接着する生体接着剤を組み込む方法及び組成物を提供する。この特異的様式で機能する生体接着剤の1つの例は、レクチンとして公知の化合物群である。これらは、糖分子(例えば、糖タンパク質又は糖脂質)を特異的に認識して結合する能力を有する糖タンパク質であり、この糖タンパク質は鼻腔内上皮細胞膜の一部を形成し、「レクチン受容体」として見なすことができる。
【0119】
本発明の一定の態様では、生物活性剤の鼻腔内送達の増強のための生体接着材料は、湿った粘膜表面に接着することができる親水性(例えば、水溶性又は水膨潤性)ポリマー又はポリマー混合物のマトリクスを含む。これらの接着剤を、軟膏、ヒドロゲル(上記を参照)、薄膜、及び他の適用形態として処方することができる。しばしば、これらの接着剤は、活性成分の遅延放出又は局所送達を達成するために混合された生物活性剤を有する。鼻粘膜を通過する(例えば、個体の循環系への)活性成分の透過を促進するためのさらなる成分で処方されているものもある。
【0120】
種々のポリマー(天然及び合成の両方)は、生理学的条件下での粘液及び/又は粘膜上皮表面への有意な結合を示す。この相互作用の強度を、機械的剥離(peel)試験又は剪断試験によって容易に測定することができる。湿った粘膜表面に適用する場合、多くの乾燥材料が少なくとも僅かに自発的に接着する。このような最初の接触後、いくつかの親水性材料が吸着、膨潤、又は毛管力によって水に付着し始め、この水がその下に存在する基質又はポリマー−組織接触面から吸収される場合、接着は、生物活性剤の粘膜吸収を増強する目的を達成するのに十分であり得る。このような「水和による接着」は、非常に強力であり得るが、この機構を使用するように適合させた処方物は、投薬量が水和粘液に変換するように膨潤し続けなければならない。前水和状態で適用した場合に一般に非接着性を示す本発明の範囲内で有用な多数のヒドロコロイド(特に、いくつかのセルロース誘導体)のためにこれを計画する。それにもかかわらず、粘膜投与のための生体接着剤送達系は、このような材料を乾燥ポリマー粉末、ミクロスフェア、又はフィルムタイプの送達形態で適用した場合に本発明の範囲内で有用である。
【0121】
他のポリマーは、乾燥状態で適用した場合だけでなく、完全に水和した状態、及び過剰量の水の存在下でも粘膜表面に接着する。したがって、粘膜接着剤の選択には、組織に接触して維持される条件(生理学的条件及び物理化学的条件)を十分に考慮する必要がある。特に、意図する接着部位に通常存在する水又は湿気の量及び一般的なpHは、異なるポリマーの粘膜接着結合強度に大きな影響を与えることが公知である。
【0122】
いくつかのポリマー生体接着剤送達系は、過去20年間に作製及び研究されているが、常に成功しているわけではない。しかし、種々のこのような担体は、現在、臨床応用(歯科、整形外科、眼科、及び外科での使用が含まれる)で使用されている。例えば、生体接着デバイスのためにアクリル酸塩ベースのヒドロゲルが広範に使用されている。アクリル酸塩ベースのヒドロゲルは、部分的膨潤状態での接触した組織に生じる損傷を減少させるその柔軟性及び磨耗防止特性のために生体接着剤として十分に適している。更に、膨潤状態でのその透過性の高さにより、未反応の単量体、非架橋ポリマー鎖、及び開始剤を、重合後にマトリクスから浸漬することが可能であり、このことは、本発明の範囲内で使用される生体接着材料の選択のための重要な特徴である。アクリル酸塩ベースのポリマーデバイスは、非常に高い接着結合強度を示す。ペプチド薬及びタンパク質薬の粘膜送達の制御のために、本発明の方法及び組成物は、選択的に、タンパク質分解性の破壊から生物活性剤を保護するように一部機能する担体(例えば、ポリマー送達賦形剤)の使用を含むと同時に、鼻粘膜中又は鼻粘膜を通過するペプチド又はタンパク質の透過を増強する。この状況では、生体接着ポリマーは、経口薬物送達を増強する十分な能力が証明されている。例として、粘膜接着性ポリ(アクリル酸)誘導体であるポリカルボフィルの1%(w/v)生理食塩水分散液と共にラットに十二指腸内投与した9−デスグリシンアミド、8−アルギニンバソプレシン(DGAVP)の生物学的利用能は、このポリマーを含まないペプチド薬の水溶液と比較して3〜5倍増した。
【0123】
ポリ(アクリル酸)型の粘膜接着ポリマーは、いくつかの腸プロテアーゼの強力なインヒビターである。酵素阻害機構は、金属プロテアーゼ(トリプシン及びキモトリプシンなど)の不可欠な補因子である2価の陽イオン(カルシウム及び亜鉛など)に対するこのポリマークラスの強い親和性によって説明される。ポリ(アクリル酸)によるその補因子からのプロテアーゼの枯渇は、酵素活性の喪失によって達成される酵素タンパク質の不可逆的な構造の変化を誘導することが報告された。同時に、他の粘膜接着ポリマー(例えば、いくつかのセルロース誘導体及びキトサン)は、一定の条件下でタンパク質分解酵素を阻害することができない。本発明の範囲内での使用が意図される比較的小分子である他の酵素インヒビター(例えば、アプロチニン、ベスタチン)と対照的に、阻害ポリマーの経鼻吸収は、これらの分子のサイズに関してごく僅かである可能性が高く、それにより、副作用の可能性が排除される。したがって、特に、ポリ(アクリル酸)型の粘膜接着ポリマーは、特に、安全性を考慮する場合にペプチド薬及びタンパク質薬の制御送達を増強するための吸収促進接着剤及び酵素保護剤の両方として役立ち得る。
【0124】
酵素分解に対する保護に加えて、本発明の範囲内で使用される生体接着剤及び他のポリマー若しくは非ポリマー吸収促進剤は、生物活性剤に対する粘膜透過性を直接増加させることができる。鼻上皮障壁を通過する巨大且つ疎水性の分子(ペプチド及びタンパク質など)の輸送を容易にするために、粘膜接着ポリマー及び他の薬剤は、送達系の前粘膜(premucosal)滞留時間の延長によって説明される効果を超える透過効果の増強が仮定される。薬物血漿濃度の経時変化により、生体接着ミクロスフェアが急速であるが一過性の鼻粘膜を通過するインスリン透過性を増加させることが示唆されることが報告されている。本発明の範囲内で使用される他の粘膜接着ポリマー(例えば、キトサン)は、水溶液又はゲルとして適用した場合でさえも一定の粘膜上皮の透過性を増強することが報告されている。上皮透過性に直接影響を与えることが報告されている別の粘膜接着ポリマーは、ヒアルロン酸及びそのエステル誘導体である。本発明の調和的投与並びに/又は組み合わせ処方方法及び組成物の範囲内の特に有用な生体接着剤は、キトサン並びにその類似体及び誘導体である。キトサンは、低毒性及び良好な生体適合性を示す好ましい性質のために、薬学的及び医学的適用のために広く使用されている非毒性の生体適合性且つ生分解性のポリマーである。キトサンは、アルカリでのN脱アセチルによってキチンから調製される天然のポリアミノサッカリドである。本発明の方法及び組成物の範囲内で使用される場合、キトサンは、適用した粘膜部位での本明細書中に開示されているPTHペプチド、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤の保持を増加させる。この投与様式はまた、患者の服薬遵守及び受理を改善することができる。本明細書中で更に提供するように、本発明の方法及び組成物は、選択的に、新規のキトサン誘導体又はキトサンの化学修飾形態を含む。本発明の範囲内で使用される1つのこのような新規の誘導体を、β−[1→4]−2−グアニジノ−2−デオキシ−D−グルコースポリマー(ポリ−GuD)と示す。キトサンは、キトサンのN脱アセチル生成物であり、経口及び鼻腔内処方物のためのミクロスフェアを調製するために広く使用されている天然に存在するポリマーである。キトサンポリマーはまた、非経口薬物送達のための可溶性担体としても提案されている。本発明の1つの態様の範囲内で、o−メチルイソ尿素を使用して、キトサンアミドをそのグアニジニウム部分に変換する。グアニジニウム化合物を、例えば、pH8.0超でのキトサンの等規定液(equi−normal solution)とo−メチルイソ尿素との反応によって調製する。
【0125】
グアニジニウム生成物は、−[14]−グアニジノ−2−デオキシ−D−グルコースポリマーである。本文脈では、これを、Poly−GuDと略す(キトサン中のアミン単量体の式量=161;Poly−GuD中のグアニジニウム単量体の式量=203)。
【0126】
本発明の範囲内で使用される生体接着剤として分類されるさらなる化合物は、典型的には、生体接着化合物の相補的構造と粘膜上皮表面成分との間の「受容体−リガンド相互作用」として分類される特異的相互作用の媒介によって作用する。多くの天然物の例は、レクチン−糖相互作用によって例示されるこの特異的結合生体接着剤の形態を説明する。レクチンは、ポリサッカリド又は複合糖質に結合する非免疫起源の(糖)タンパク質である。
【0127】
いくつかの植物レクチンは、可能な薬学的吸収促進剤として調査されている。1つの植物レクチン(インゲンマメ血球凝集素(PHA))は、ラットへの給餌後に10%を超える高い経口生物学的利用能を示す。トマト(リコペルシカム・エスキュレンタム)レクチン(TL)は、種々の投与様式で安全なようである。
【0128】
まとめると、上記生体接着剤は、選択的に、1つ又はそれ以上のPTHペプチド、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤の持続性を延長するか粘膜吸着を増加させる有効量及び有効形態の生体接着剤を組み込んだ本発明の組み合わせ処方物及び調和的投与方法で有用である。生体接着剤を、本発明の組み合わせ処方物内の付加化合物又は添加物として調和的に投与することができる。一定の実施形態では、生体接着剤は、「薬学的接着剤」として作用するのに対して、他の実施形態では、ある場合には、上皮細胞「受容体」との特異的受容体−リガンド相互作用の促進により、別の場合には、送達標的部位(例えば、肝臓、血漿、又はCNS組織若しくは流動物)で測定される薬物濃度勾配を有意に増加させるための上皮透過性の増加により、生体接着剤の付加送達又は組み合わせ処方物は、生物活性剤と鼻粘膜との接触を強化するように働く。本発明の範囲内で使用されるなおさらなる生体接着剤は、生体接着剤と調和的に送達されるか組合わせ処方物中の粘膜投与生体治療薬の安定性を増強するための酵素(例えば、プロテアーゼ)インヒビターとして作用する。
【0129】
本発明の調和的送達方法及び組み合わせ処方物は、選択的に、PTHペプチド、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤の粘膜送達のために改良された処方物を得るために、有効な脂質又は脂肪酸ベースの担体、処理剤、又は送達賦形剤を組み込む。例えば、粘膜送達時に(例えば、タンパク質分解、化学修飾、及び/又は変性に対する感受性の減少によって)生物活性剤の化学的及び物理的安定性を増強し、半減期を増加させるためのリポソーム、混合ミセル担体、又は乳濁液と混合されているか、カプセル化されているか、共に調和的に投与された、1つ又はそれ以上のこれらの活性成分(ペプチド又はタンパク質など)を含む粘膜送達のための種々の処方物及び方法を提供する。
【0130】
本発明の一定の態様の範囲内で、生物活性剤の特定された送達経路は、リポソームとして公知の脂質小胞を含む。これらを、典型的には、天然、生分解性、非毒性、及び非免疫原性脂質分子から作製し、薬物分子(ペプチド及びタンパク質が含まれる)をその膜中又は膜上に有効に捕捉又は結合させることができる。カプセル化されたタンパク質が小胞内のその好ましい水性環境下に維持することができる一方で、リポソーム膜がタンパク質分解及び他の不安定化因子からタンパク質を保護するという事実によって本発明の範囲内のペプチド及びタンパク質送達系としてのリポソームの魅力が増す。公知の全てのリポソーム調製方法がその固有の物理的及び化学的性質のためにペプチド及びタンパク質のカプセル化を実現可能なわけではないが、いくつかの方法により、実質的に失活することなくこれらの高分子をカプセル化可能である。
【0131】
種々の方法が本発明の範囲内で使用されるリポソームの調製に利用可能である(米国特許第4,235,871号、同第4,501,728号、及び同第4,837,028号(本明細書中で参考として援用される))。リポソーム送達と共に使用するために、生物活性剤を、典型的には、リポソーム又は脂質小胞内に捕捉するか、小胞の外側に結合させる。
【0132】
リポソームのように、粘膜吸収を増加させる能力も有する不飽和長鎖脂肪酸は、二重層様構造(いわゆる、「ウファソーム(ufasome)」)を有する閉じた小胞を形成することができる。これらを、例えば、本発明の範囲内の粘膜(例えば、鼻腔内)送達のための生物活性ペプチド及びタンパク質を捕捉するためにオレイン酸を使用して形成することができる。
【0133】
本発明の範囲内で使用される他の送達系は、天然ポリマーであるフィブリンの内部へのカプセル化などの両小胞の有利な性質を組み合わせるためのポリマー及びリポソームの使用を組み合わせる。更に、この送達系からの生体治療化合物の放出を、共有結合性の架橋の使用及びフィブリンポリマーへの抗フィブリン溶解剤の添加によって制御可能である。
【0134】
本発明の範囲内で使用されるより単純化した送達系には、脂質担体とタンパク質及びポリアニオン性核酸などの荷電生物活性剤との間の静電相互作用を得るために有効に使用することができる送達小胞又は担体としてのカチオン性脂質の使用が含まれる。これにより、薬物が粘膜投与及び/又はその後の全身区画への送達に適切な形態に有効にパッケージングされる。
【0135】
本発明の範囲内で使用されるさらなる送達賦形剤には、長鎖及び中鎖脂肪酸並びに脂肪酸を含む界面活性剤混合ミセルが含まれる。エステル形態のほとんどの天然に存在する脂質は、粘膜表面を通過する脂質自体の輸送に関して重要な意味を持つ。遊離脂肪酸及び極性基が結合したモノグリセリドは、混合ミセルの形態で、透過増強剤として腸障壁で作用することが証明された。遊離脂肪酸(12〜20炭素原子の鎖長のカルボン酸)及びその極性誘導体の障壁改変機能のこの発見により、粘膜吸収増強剤としてのこれらの薬剤の適用に関する広範な研究が促されている。
【0136】
本発明の方法の範囲内で使用するために、長鎖脂肪酸、特に、膜融合性脂質(オレイン酸、リノール酸、リノール酸、モノオレインなどの不飽和脂肪酸及びモノグリセリド)により、本明細書中に開示されているPTHペプチド、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤の粘膜送達を増強するための有用な担体が得られる。中鎖脂肪酸(C6〜C12)及びモノグリセリドはまた、腸薬物吸収活性の増強を示し、本発明の粘膜送達処方物及び方法での使用に適応することができる。更に、中鎖及び長鎖脂肪酸のナトリウム塩は、本発明の範囲内での生物活性剤の粘膜送達のための有効な送達賦形剤及び吸収増強剤である。したがって、脂肪酸を、ナトリウム塩の可溶化形態で使用するか、非毒性界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、タウロコール酸ナトリウムなど)に添加して使用することができる。本発明の範囲内で有用な他の脂肪酸及び混合ミセル調製物には、選択的に胆汁塩と組み合わせた(グリコール酸塩及びタウロコール酸塩など)カプリル酸ナトリウム(C8)、カプリン酸ナトリウム(C10)、ラウリン酸ナトリウム(C12)、又はオレイン酸ナトリウム(C18)が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
本発明の範囲内で提供されるさらなる方法及び組成物は、ポリマー材料(例えば、デキストラン、ポリビニルピロリドン、糖ペプチド、ポリエチレングリコール、及びポリアミノ酸)の共有結合による生物活性ペプチド及びタンパク質の化学修飾を含む。得られた接合ペプチド及びタンパク質は、粘膜投与のためのその生物活性及び溶解性を保持している。別の実施形態では、PTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性ペプチド及びタンパク質を、ポリアルキレンオキシドポリマー、特にポリエチレングリコール(PEG)に接合する。米国特許第4,179,337号(本明細書中で参考として援用される)。
【0138】
当該分野で説明されているように、ペプチドを、PEGに直接結合することができる。PEGは、分子量範囲が300と60,000との間の分子であり得る。種々のPEG分子(直鎖、分枝、1つの部分又は複数の結合部位でペプチドに結合しているPEG分子が含まれる)も含まれる。本発明の範囲内で使用されるアミン反応性PEGポリマーには、分子量が2000、5000、10000、12000、及び20000のSC−PEG、U−PEG−10000、NHS−PEG−3400−ビオチン、T−PEG−5000、T−PEG−12000、及びTPC−PEG−5000が含まれる。生物活性ペプチド及びタンパク質のPEG化を、カルボキシ部位(例えば、カルボキシル末端に加えてアスパラギン酸基又はグルタミン酸基)の修飾によって行うことができる。酸性条件下でのカルボジイミド活性化タンパク質カルボキシル基の選択的修飾におけるPEG−ヒドラジンの有用性が記載されている。あるいは、生物活性ペプチド及びタンパク質の二官能性PEG修飾を使用することができる。いくつかの手順では、荷電アミノ酸残基(リジン、アスパラギン酸、及びグルタミン酸が含まれる)は、タンパク質表面上に溶媒が接近可能な傾向が顕著である。
【0139】
PEG化に加えて、本発明の範囲内で使用されるペプチド及びタンパク質などの生物活性剤を、他の公知の保護化合物又は安定化化合物への接合を介した活性成分の保護(例えば、1つ又はそれ以上の担体タンパク質(1つ又はそれ以上の免疫グロブリン鎖など)に連結した活性なペプチド、タンパク質、類似体、又は模倣体との融合タンパク質の作製)によって循環半減期を増強するために修飾することができる。
【0140】
本発明の粘膜送達処方物は、典型的に、1つ又はそれ以上の薬学的に許容可能な担体及び選択的に他の治療成分と組み合わせたPTHペプチド、類似体、及び模倣体を含む。担体は、処方物の他の成分と適合し、且つ被験体が望ましくない副作用を引き起さないという意味で「薬学的に許容可能」でなければならない。このような担体は、本明細書中に記載されているか、薬理学分野の当業者に周知である。望ましくは、処方物は、投与すべき生物活性剤に適合しないことが公知の酵素又は酸化剤などの物質を含むべきではない。処方物を、薬学分野で周知の任意の方法によって調製することができる。
【0141】
本発明の組成物及び方法の範囲内で、本明細書中に開示されているPTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤を、種々の粘膜投与様式(経口、直腸、膣、鼻腔内、肺内、若しくは経皮への送達、又は眼、耳、皮膚、若しくは他の粘膜表面への局所送達が含まれる)によって被験体に投与することができる。選択的に、本明細書中に開示されているPTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤を、非粘膜経路(筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、関節内、腹腔内、又は非経口経路が含まれる)によって調和的又は補助的に投与することができる。他の実施形態では、生物活性剤を、例えば、適切な液体又は固体担体中に生物活性剤を含むex vivo組織又は器官治療処方物の成分として、哺乳動物被験体由来の細胞、組織、又は器官への直接曝露によってex vivoで投与することができる。
【0142】
本発明の組成物を、しばしば、鼻噴霧又は肺噴霧(pulmonary spray)として水溶液を投与し、当業者に公知の種々の方法によって噴霧形態で投薬することができる。鼻噴霧としての液体の好ましい投薬系は、米国特許第4,511,069号(本明細書中で参考として援用される)に開示されている。処方物は、複数回投与コンテナ、例えば、米国特許第4,511,069号に開示されている密封投薬システムに存在し得る。さらなるエアゾール送達形態には、例えば、薬学的溶媒(例えば、水、エタノール、又はこれらの混合物)中に溶解又は分散させた生物活性剤を送達する圧縮空気ネブライザー、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、及び電圧ネブライザーが含まれ得る。
【0143】
本発明の鼻及び肺噴霧溶液は、典型的には、選択的に表面活性剤(非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80)など)及び1つ又はそれ以上の緩衝液を用いて処方した薬物又は送達すべき薬物を含む。本発明のいくつかの実施形態では、鼻噴霧溶液は、噴射剤を更に含む。鼻噴霧溶液のpHは、選択的に約pH3.0とpH6.0との間、好ましくはpH5.0±0.3である。これらの組成物の範囲内で使用される適切な緩衝液は上記の通りであるか、当該分野で公知である。化学的安定性を増強又は維持するために、他の成分(防腐剤、界面活性剤、分散剤、又はガスが含まれる)を添加することができる。適切な防腐剤には、フェノール、メチルパラベン、パラベン、m−クレゾール、チオメルザール(thiomersal)、クロロブタノール、及び塩化ベンザルコニウムなどが含まれるが、これらに限定されない。適切な界面活性剤には、オレイン酸、トリオレイン酸ソルビタン、ポリソルベート、レシチン、ホスファチジルコリン、並びに種々の長鎖ジグリセリド及びリン脂質が含まれるが、これらに限定されない。適切な分散剤には、エチレンジアミン四酢酸などが含まれるが、これらに限定されない。適切なガスには、窒素、ヘリウム、クロロフルオロカーボン(CFC)、ヒドロフルオロカーボン(HFC)、及び二酸化炭素などが含まれるがこれらに限定されない。
【0144】
別の実施形態の範囲内で、粘膜処方物を、鼻腔内投与に適切な粒子サイズ又は適切な粒子サイズ範囲内の乾燥(通常、凍結乾燥)形態の生物活性剤を含む乾燥粉末処方物として投与する。鼻腔又は肺経路内での蓄積に適切な最小粒子サイズは、しばしば、0.5μの分子量中位等価(mass median equivalent)空気動力学的直径(MMEAD)、一般に、約1μMMEAD、より典型的には、約2μMMEADである。鼻腔内蓄積に適切な最大粒子サイズは、しばしば、約10μMMEAD、一般に、約8μMMEAD、より典型的には、約4μMMEADである。これらのサイズ範囲内の鼻腔内呼吸用粉末を、種々の従来の技術(ジェット製粉(millingg)、噴霧乾燥、溶媒沈殿、及び超臨界流体濃縮など)によって生成することができる。適切なMMEADのこれらの乾燥粉末を、従来の乾燥粉末吸入器(DPI)によって患者に投与することができ、この吸入器は、肺吸入又は鼻吸入の際に粉末をエアゾール化された量に分散させるために患者の呼吸に依存する。あるいは、粉末をエアゾール化された量に分散するための外部電源(例えば、ピストンポンプ)を使用する空気圧補助デバイスを介して乾燥粉末を投与することができる。
【0145】
乾燥粉末デバイスは、典型的には、単回エアゾール化用量(「パフ」)を得るために約1mg〜20mgの範囲の粉末質量が必要である。生物活性剤の必要用量又は所望の用量がこの量よりも少ない場合、粉末化活性成分を、典型的には、薬学的乾燥充填粉末と組み合わせて、必要な総粉末質量を得る。好ましい乾燥充填粉末には、スクロース、ラクトース、デキストロース、マンニトール、グリシン、トレハロース、ヒト血清アルブミン(HSA)、及びデンプンが含まれる。他の適切な乾燥充填粉末には、セロビオース、デキストラン、マルトトリオース、ペクチン、クエン酸ナトリウム、及びアスコルビン酸ナトリウムなどが含まれる。
【0146】
本発明の範囲内の粘膜送達のための組成物を処方するために、生物活性剤を、種々の薬学的に許容可能な添加物及び活性成分の分散のための基剤又は担体と組み合わせることができる。所望の添加物には、pH調節剤(アルギニン、水酸化ナトリウム、グリシン、塩酸、クエン酸など)が含まれるが、これらに限定されない。更に、局所麻酔薬(例えば、ベンジルアルコール)、等張化剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール)、吸着インヒビター(例えば、Tween80)、溶解増強剤(例えば、シクロデキストリン及びその誘導体)、安定剤(例えば、血清アルブミン)、及び還元剤(例えば、グルタチオン)を含めることができる。粘膜送達用組成物が液体である場合、処方物の張度を、単位として用いた生理食塩水の張度(0.9%(w/v))を基準として測定したところ、典型的には、投与部位の鼻粘膜で実質的に不可逆的な組織損傷が誘導されない値に調整する。一般に、溶液の張度を、約1/3〜3、より典型的には1/2〜2、最も頻繁には3/4〜1.7の値に調整する。
【0147】
生物活性剤を、活性成分及び任意の所望の添加物を分散する能力を有する親水性化合物を含み得る基剤又は賦形剤に分散することができる。基剤を、広範な適切な担体(ポリカルボン酸又はその塩、無水カルボン酸(例えば、無水マレイン酸)と他の単量体(例えば、メチル(メタ)アクリレート、アクリル酸など)とのコポリマー、親水性ビニルポリマー(ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなど)、セルロース誘導体(ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなど)、天然ポリマー(キトサン、コラーゲン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン、ヒアルロン酸、及びその非毒性金属塩など)が含まれるが、これらに限定されない)から選択することができる。しばしば、生分解性ポリマー(例えば、ポリ乳酸、ポリ(乳酸−グリコール酸)コポリマー、ポリヒドロキシブチル酪酸、ポリ(ヒドロキシ酪酸−グリコール酸)コポリマー、及びこれらの混合物)を、基剤又は担体として選択する。あるいは又は更に、合成脂肪酸エステル(ポリグリセリン脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステルなど)を、担体として使用することができる。親水性ポリマー及び他の担体を、単独又は組み合わせて使用することができ、部分的結晶化、イオン結合、及び架橋などによって担体の構造完全性を高めることができる。鼻粘膜への直接適用のための種々の形態(流動物又は粘性溶液、ゲル、ペースト、粉末、ミクロスフェア、及びフィルムが含まれる)で担体を提供することができる。この状況での選択された担体の使用により、生物活性剤の吸収を促進することができる。
【0148】
生物活性剤を、種々の方法にしたがって基剤又は担体と組み合わせることができ、活性成分を、担体の拡散、崩壊、水チャネルの関連処方物(associated formulation)によって放出することができる。いくつかの環境では、活性成分を、適切なポリマー(例えば、イソブチル2−シアノアシレート)から調製したマイクロカプセル(ミクロスフェア)又はナノカプセル(ナノスフェア)中に分散させ、鼻粘膜に適用される生体適合性分散媒中に分散させ、それにより長期間にわたり送達及び生物活性が持続する。
【0149】
本発明の範囲内の薬物の粘膜送達を更に増強するために、活性成分を含む処方物はまた、基剤又は賦形剤として親水性低分子量化合物を含み得る。このような親水性低分子量化合物により、水溶性活性成分(生理活性ペプチド又はタンパク質など)が基剤を介して体表に拡散して活性成分を吸収することができる経路媒体(passage medium)が得られる。親水性低分子量化合物は、選択的に、粘膜又は投与環境由来の水分を吸収し、水溶性活性ペプチドが溶解する。親水性低分子量化合物の分子量は、一般に、せいぜい10000、このましくはせいぜい3000である。例示的な親水性低分子量化合物には、ポリオール化合物(オリゴサッカリド、ジサッカリド、及びモノサッカリド(スクロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、L−アラビノース、D−エリトロース、D−リボース、D−キシロース、D−マンノース、トレハロース、D−ガラクトース、ラクツロース、セロビオース、ゲンチビオース、グリセリン、及びポリエチレングリコールなど)など)が含まれる。本発明の範囲内の担体として有用な親水性低分子量化合物の他の例には、N−メチルピロリドン及びアルコール(例えば、オリゴビニルアルコール、エタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなど)が含まれる。これらの親水性低分子量化合物を、単独又は互いに組み合わせるか鼻腔内処方物の他の活性又は不活性成分と組み合わせて使用することができる。
【0150】
あるいは、本発明の組成物は、必要に応じて生理学的条件に近づけるための薬学的に許容可能な担体物質(pH調整剤、緩衝剤、張度調整剤、及び湿潤剤など)(例えば、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミンなど)を含み得る。固体組成物について、従来の非毒性の薬学的に許容可能な担体(例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、滑石、セルロース、グルコース、スクロース、及び炭酸マグネシウムなどが含まれる)を使用することができる。
【0151】
生物活性剤の投与のための治療組成物を、高濃度の有効成分に適切な溶液、マイクロエマルジョン、又は他の規則正しい構造として処方することもできる。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び脂質ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒であり得る。溶液に適切な流動性を、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散性処方物の場合の所望の粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって維持することができる。多くの場合、組成物中に等張化剤(例えば、糖、多価アルコール(マンニトール、ソルビトールなど)、又は塩化ナトリウム)を含むことが望ましい。組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸塩及びゼラチン)を含めることによって、生物活性剤の吸収を延長することができる。
【0152】
本発明の一定の実施形態では、生物活性剤を、持続放出処方物(例えば、遅延放出ポリマーを含む組成物)中で投与する。急速な放出を防止する担体(例えば、ポリマー、マイクロカプセル化送達系、又は生体接着ゲルなどの制御放出賦形剤)を用いて活性成分を調製することができる。本発明の種々の組成物中の活性成分の送達を、組成物中に吸収を遅延させる薬剤(例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ヒドロゲル、及びゼラチン)を含めることによって延長することができる。生物活性剤の制御放出処方物が望ましい場合、本発明での使用に適切な制御放出結合剤には、活性成分に対して不活性であり、且つ生物活性剤を組み込むことができる任意の生体適合性制御放出材料が含まれる。多数のこのような材料は当該分野で公知である。有用な制御放出結合剤は、鼻腔内送達(例えば、鼻粘膜表面)後の生理学的条件下又は経粘膜送達後の体液の存在下でゆっくり代謝される材料である。適切な結合剤には、当該分野において徐放性処方物で以前に使用されている生体適合性ポリマー及びコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。このような生体適合性化合物は周囲の組織に対して非毒性且つ不活性であり、鼻腔の刺激、免疫応答、又は炎症などの有意な副作用を誘発しない。これらは、代謝産物に代謝され、この代謝産物も生体適合性を示し、体内から容易に排出される。
【0153】
この状況で使用される例示的ポリマー材料には、加水分解性エステル結合を有するコポリマー及びホモポリマーのポリエステル由来のポリマーマトリクスが含まれるが、これらに限定されない。これらの多数は、生分解性を示し、毒性が全くないか毒性が低い分解産物が得られることが当該分野で公知である。例示的ポリマーには、ポリグリコール酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ(DL−乳酸−コ−グリコール酸)(DL PLGA)、ポリ(D−酪酸−コグリコール酸)(D PLGA)、及びポリ(L−乳酸−コ−グリコール酸)(L PLGA)が含まれる。他の有用な生分解性又は生体浸食性(bioerodable)ポリマーには、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(ε−アプロラクトン−CO−酪酸)、ポリ(ε−アプロラクトン−CO−グリコール酸)、ポリ(β−ヒドロキシ酪酸)、ポリ(アルキル−2−シアノアクリレート)、ヒドロゲル(ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)など)、ポリアミド、ポリ(アミノ酸)(すなわち、L−ロイシン、グルタミン酸、L−アスパラギン酸など)、ポリ(エステル尿素)、ポリ(2−ヒドロキシDL−アスパルタミド)、ポリアセタールポリマー、ポリオルトエステル、ポリカーボネート、ポリマレアミド、ポリサッカリド、及びこれらのコポリマーなどのポリマーが含まれるが、これらに限定されない。このような処方物の多数の調製方法は、一般に、当業者に公知である。他の有用な処方物には、制御放出組成物(例えば、マイクロカプセル)(米国特許第4,652,441号及び同第4,917,893号)、マクロカプセル及び他の処方物の作製に有用な乳酸−グリコール酸コポリマー(米国特許第4,677,191号及び同第4,728,721号)、及び水溶性ペプチド用の徐放性組成物(米国特許第4,675,189号(全特許が本明細書中で参考として援用される))が含まれる。
【0154】
必要量の活性化合物を含む適切な溶媒への上記列挙の成分の1つ又は組み合わせの組み込み、必要に応じたその後の濾過滅菌によって滅菌溶液を調製することができる。一般に、上記列挙の基剤となる分散媒及び必要な他の成分を含む滅菌賦形剤への活性化合物の組み込みによって分散液を調製する。滅菌粉末の場合、調製方法には、前に濾過滅菌した溶液から有効成分及び任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる真空乾燥及びフリーズドライが含まれる。種々の抗菌薬及び抗真菌薬(例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、及びチメロサールなど)によって微生物作用を防止することができる。
【0155】
投与及び副作用を制御及びモニタリングするための十分な予防手段が整っているならば、本発明の粘膜投与により、患者により有効な自己投与治療が行える。粘膜投与はまた、痛みがあり、患者を感染の危険性にさらし、薬物生物学的利用能の問題が存在し得る注射などの他の投薬形態の一定の欠点を克服する。鼻送達及び肺送達のために、噴霧としての液体治療薬の制御されたエアゾール投薬のためのシステムは周知である。1つの実施形態では、定量の活性成分を、特別に構築した機械ポンプ弁によって送達させる。米国特許第4,511,069号。
【0156】
予防及び治療目的のために、本明細書中に開示されている生物活性剤を、被験体に1日1回投与することができる。この状況のために、治療有効用量のPTHペプチドは、骨粗鬆症又は骨減少症を緩和又は防止する臨床的に有意な結果が得られる長期予防又は治療計画の範囲内での反復投与を含み得る。この状況における有効投薬量の決定は、典型的には、動物モデル研究及びその後のヒト臨床試験に基づき、この決定は、被験体の標的された疾患の症状又は容態の発症又は重症度を有意に減少させる有効投薬量及び投与プロトコールによって導かれる。これに関する適切なモデルには、例えば、マウス、ラット、ブタ、ネコ、非ヒト霊長類、及び当該分野で公知の他の許容される動物モデル被験体が含まれる。あるいは、有効投薬量を、in vitroモデル(例えば、免疫アッセイ及び組織病理学アッセイ)を使用して決定することができる。このようなモデルを使用して、典型的には、治療有効量の生物活性剤の適切な濃度及び投与量(例えば、所望の応答を誘発するための鼻腔内、経皮、静脈内、又は筋肉内で有効な量)を決定するために通常の計算及び調整のみが必要である。
【0157】
生物活性剤の実際の投薬量は、勿論、被験体の疾患の兆候及び特定の状態(例えば、被験体の年齢、サイズ、健康状態、症状の範囲、感受性因子など)、投与時間及び投与経路、同時に投与されている他の薬物又は治療、並びに被験体の所望の活性又は生物学的反応を誘発するための生物活性剤の特定の薬理学的性質などの要因によって変化する。至適な予防反応又は治療反応を得るために投薬計画を調整することができる。治療有効量はまた、臨床時の生物活性剤の治療に有益な効果が任意の毒作用又は副作用を超える量である。本発明の方法及び処方物内のPTHペプチドの非限定的な治療有効量の範囲は、0.7μg/kg〜約25μg/kgである。骨粗鬆症又は骨減少症を治療するために、骨量増加の促進に非常に十分であるが、吐気などの任意の望ましくない副作用を誘導しないPTHペプチドの鼻腔内用量で投与する。副甲状腺ホルモン1−34の好ましい鼻腔内用量は、患者の体重1kgあたり約1μg〜10μg、最も好ましくは患者の体重1kgあたり約1.5μg〜約3μgである。標準用量では、50μg〜1600μg、より好ましくはおよそ75μgと800μgとの間、最も好ましくは100μg、150μg、200μg〜約400μgを患者に投与する。あるいは、本発明の方法及び処方物内の生物活性剤の非限定的な治療有効量の範囲は、患者の体重1kgあたり約0.001pmolと約100pmolとの間、患者の体重1kgあたり約0.01pmolと約10pmolとの間、患者の体重1kgあたり約0.1pmolと約5pmolとの間、又は患者の体重1kgあたり約0.5pmolと約1.0pmolとの間である。投与あたり、平均的なヒト被験体に対して少なくとも1μgの生物活性剤(例えば、1つ又はそれ以上のPTHペプチドタンパク質、類似体、及び模倣体、並びに他の生物活性剤)、より典型的には約10μgと5.0mgとの間、一定の実施形態では、約100μgと1.0又は2.0mgtの間を投与することが望ましい。一定の経口適用について、適切な血漿レベルを達成するために0.5mg/kg体重もの用量が必要であり得る。それぞれの特定の被験体のために、特定の投薬計画を評価し、個体の要求及び透過ペプチド及び他の生物活性剤を投与するか投与を監督する者の専門的判断従って長期にわたり調整すべきであることを更に留意すべきである。副甲状腺ホルモンの鼻腔内用量は、50μg〜1600μgの副甲状腺ホルモン、好ましくは75μg〜800μg、より好ましくは100μg〜400μgの範囲であり、最も好ましい用量は、100μgと200μgとの間であり、150μgが最も有効と考えられる用量である。投与間隔が約0.1〜24時間、好ましくは投与間隔が0.5時間と24.0時間との間の範囲の投薬計画による本発明の処方物の反復鼻腔内投与により、臨床上の利点を最大にする一方で過剰な曝露及び副作用のリスクを最小にするPTHペプチドの標準化され、基準化された治療レベルが維持される。目的は、骨量の増加を促進するための個体の血漿PTHペプチド濃度の上昇に十分なPTHペプチド量を粘膜送達することである。
【0158】
市販の投薬形態で自己投与する場合、副甲状腺ホルモンなどのPTHアゴニストの投薬量を、標的部位での所望の濃度を維持するために関与する臨床家又は患者によって変化させることができる。
【0159】
別の実施形態では、本発明は、PTHペプチドの鼻腔内送達のための組成物及び方法であって、長期投与期間中に治療に有効な増減する拍動レベル(pulsatile level)のPTHペプチドを維持するために毎日又は毎週のスケジュールでのPTHペプチドの被験体への複数回投与を含む鼻腔内有効投薬計画によってPTHペプチドを反復投与する、組成物及び方法を提供する。組成物及び方法により、鼻腔処方物として8時間〜24時間の長期投与期間中に治療に有効な増減する拍動レベルのPTHペプチドを維持するために毎日1回〜6回被験体によって自己投与されるPTHペプチド化合物が得られる。
【0160】
本発明はまた、哺乳動物被験体の疾患及び他の容態の予防及び治療で用いる上記の薬学的組成物、有効成分、及び/又はこれらの投与手段を含むキット、パッケージ、及び多コンテナユニットを含む。簡単に述べれば、これらのキットは、粘膜送達のために薬学的調製物中に処方された本明細書中に開示されている粘膜送達増強剤と組み合わせた1つ又はそれ以上のPTHペプチドタンパク質、類似体、若しくは模倣体、及び/又は他の生物活性剤を含むコンテナ又は処方物を含む。
【0161】
本発明の鼻腔内処方物を、任意の噴霧ボトル又はシリンジを使用して投与することができる。鼻腔噴霧ボトルの例は、1噴出あたり0.1mLの用量を送達し、ディプチューブ(diptube)の長さが36.05mmである"Nasal Spray Pump w/Safety Clip,Pfeiffer SAP #60548である。これを、Pfeiffer of America of Princeton,NJから購入することができる。副甲状腺ホルモンなどのPTHペプチドの鼻腔内用量は、0.1μg/kg〜約1500μg/kgの範囲であり得る。鼻腔噴霧で投与する場合、噴霧の粒子サイズは10〜100μm(ミクロン)のサイズ、好ましくは20〜100μmのサイズであることが好ましい。
【0162】
本発明者らは、副甲状腺ホルモンペプチドを鼻噴霧又はエアゾールを使用して鼻腔内投与することができることを発見した。多くのタンパク質及びペプチドが、噴霧又はエアゾールの生成における作動装置によって発生する機械力によって剪断又は変性されることが示されているので、これは驚くべきことである。この領域では、以下の定義が有用である。
1.エアゾール−加圧下でパッケージングされ、適切なバルブシステムの作動の際に放出される治療有効成分を含む製品。
2.定量エアゾール−それぞれの作動の際に一定量の噴霧が送達される定量バルブから構成される加圧投与形態。
3.粉末エアゾール−加圧下でパッケージングされ、適切なバルブシステムの作動の際に放出される粉末形態の治療有効成分を含む製品。
4.噴霧エアゾール−湿った噴霧として製品を放出するのに必要な力を得るための噴射剤として加圧ガスを使用したエアゾール製品。一般に、薬剤を含む水性溶媒の溶液に利用可能である。
5.噴霧−空気又は上記のジェットによって細かく分割された液体。鼻噴霧製剤は、非加圧分注器中の溶液又は混合物に溶解又は懸濁された治療有効成分を含む。
6.定量噴霧−各作動時に規定量の噴霧が投薬されるバルブから成る非加圧投薬形態。
7.懸濁液噴霧−液体賦形剤中及び粗い(course)液滴形態中に分散されているか、微粉化固体として固体粒子を含む液体調製物。
【0163】
薬物送達デバイス(「DDD」)として定量鼻噴霧ポンプによって放出されるエアゾール噴霧の流体力学的特徴。噴霧の特徴は、新規及び既存の鼻噴霧ポンプについての研究開発、品質保証、及び安定性試験の食品医薬品局(「FDA」)承認に必要な提出書類の不可欠な部分である。
【0164】
噴霧の幾何学的性質の完全な特徴付けは、鼻噴霧ポンプの全性能の最良の指標であることが見出された。特に、デバイスから出射する噴霧の発散角度(円錐形の噴出)の測定;噴霧の断面楕円率、均一性、及び粒子/液滴の分布(噴霧パターン);並びに得られた噴霧の時間発展(time evolution)により、鼻噴霧ポンプの特徴において最も代表的な性能品質であることが見出された。品質保証試験及び安定性試験の間、円錐形の幾何学的性質及び噴霧パターンの測定は、鼻噴霧ポンプについての承認されたデータ基準を使用した一貫性及び画一性の評価のための重要な識別子である。
【0165】
定義
円錐形の高さ−作動装置の先端から直線流の崩壊のために円錐形の角度が直線でなくなるポイントまでの測定値。デジタル画像の目視検査に基づき、且つ噴霧パターンの最も遠い測定点と一致する幅についての測定点を確立するために、本研究では高さ30mmと定義する。
【0166】
長軸−基本単位中のCOMwを通過する合わせた噴霧パターン内に描くことができる最も大きなコード(mm)。
【0167】
短軸−基本単位中のCOMwを通過する合わせた噴霧パターン内に描くことができる最も小さなコード(mm)。
【0168】
楕円率−短軸に対する長軸の比。
【0169】
10−サンプルの全液体体積の10%が最小直径の液滴から成る液滴の直径(μm)。
【0170】
50−質量中位経としても公知のサンプルの全液体体積の50%が最小直径の液滴から成る液滴の直径(μm)。
【0171】
90−サンプルの全液体体積の90%が最小直径の液滴から成る液滴の直径(μm)。
【0172】
スパン−分布幅の測定値。値が小さいほど、分布が狭くなる。スパンは、
(D90−D10
50
として計算する。
【0173】
RSD率−相対標準偏差率。標準偏差を級数で割り、100を掛ける。%CVとしても公知である。
【0174】
鼻内噴霧デバイスを、産業で何が習慣化され、保健規制当局によって許可可能であるかどうかにしたがって選択することができる。適切なデバイスの一例は、米国特許出願10/869,649号(S.Quay and G.Brandt:Compositions and methods for enhanced mucosal delivery of Y2 receptor−binding peptides and methods for treating and preventing obesity,filed June 16,2004)に記載されている。
【0175】
骨粗鬆症又は骨減少症を治療するために、骨量増加の促進に非常に十分であるが、吐気などの任意の望ましくない副作用を誘導しないPTHペプチドの鼻腔内用量で投与する。副甲状腺ホルモン(1−34)などのPTHペプチドの好ましい鼻腔内用量は、患者の体重1kgあたり約3μg〜10μg、最も好ましくは患者の体重1kgあたり約6μgである。標準用量では、50μg〜800μg、より好ましくはおよそ100μgと400μgとの間、最も好ましくは150μg〜200μgを患者に投与する。副甲状腺ホルモン(1−34)などのPTHペプチドを、1日1回投与することが好ましい。
【0176】
以下の実施例を例示のために示すが、本発明を制限しない。
【実施例1】
【0177】
本明細書の教示にしたがってPTHの鼻粘膜送達の増強のための例示的処方物を調整し、表1に示すように評価する。
【実施例2】
【0178】
鼻粘膜送達−透過動態学及び細胞傷害性
以下の方法は、一般に、本発明の処方物及び方法内のPTHの鼻粘膜送達のパラメーター、動態学、及び副作用の評価、並びにPTHとの組み合わせ処方物又は調和的投与のための本明細書中に開示されている種々の鼻腔内送達増強剤の効率及び特徴の決定に有用である。
【0179】
透過動態学及び細胞傷害性はまた、粘膜送達増強剤との組み合わせ処方物又は調和的投与のための本明細書中に開示されている種々の粘膜送達増強剤の効率及び特徴の決定に有用である。1つの例示的プロトコールでは、生物活性剤(例えば、PTH)と組み合わせた上記開示されている鼻腔内送達増強剤についての透過動態学及び許容不可能な細胞傷害性の欠如を証明する。
【0180】
気道を裏打ちしている多列上皮モデルとして、EpiAirway系がMatTek Corp(Ashland,MA)によって開発された。上皮細胞は、空気−液体境界での底が多孔質膜の細胞培養インサート上で成長し、それにより、細胞が高度に偏向した形態に分化する。先端面は、微繊毛超構造を有する繊毛を有し、上皮は粘液を生成する(免疫ブロッティングによってムチンの存在が確認されている)。インサート(insert)の直径は0.875cmであり、表面積は0.6cmである。出荷約3週間前に細胞を工場でインサート上にプレートする。
【0181】
到着時に、ユニットを6ウェルマイクロプレート中の滅菌支持体上に置く。各ウェルに、5mLの専用培養培地を入れる。このDMEMベース培地は無血清であるが、上皮成長因子及び他の因子を補っている。培地を、鼻腔内送達されると考えられる任意のサイトカイン又は成長因子の内因性レベルについて常に試験したが、インスリンを除いて今まで研究されている全てのサイトカイン及び因子は含まれなかった。5mLという体積は、そのスタンド上のユニットの底に接触するのにちょうど十分であるが、上皮の先端面は空気と直接接触したままにすることが可能である。この工程及びその後の全工程(ユニットの底と培地との間に確実に空気が捕捉されないようにするための液体含有ウェルへのユニットの移動を含む)で滅菌ツイーザーを使用する。
【0182】
そのプレート中のユニットを、5%COを含む大気下でのインキュベーター中にて37℃で24時間維持する。終了後、培地を新鮮な培地と交換し、ユニットを更に24時間インキュベートに戻す。
【0183】
24個のEpiAirwayユニットの「キット」を、5つの異なる処方物(それぞれ、4連のウェルに適用する)の評価に日常的に使用することができる。各ウェルを、透過動態学(4つの測定点)、経上皮抵抗、MTT還元によって測定されるミトコンドリアリダクターゼ活性、及びLDH放出によって測定される細胞融解の決定のために使用する。さらなるウェル組を、透過動態学の決定時に処置されるが、経上皮抵抗及び生存度の決定のために試験サンプル含有ユニットと同様に取り扱われる偽物(sham)であるコントロールとして使用する。4連のユニットに対して日常的にコントロールを決定するが、場合によっては、コントロールとして3連のユニットを使用し、且つキット中の残りの4つのユニットを未処置単位の経上皮抵抗及び生存度の測定のために使用するか、100%細胞融解の基準としての役割を果たすための総LDHレベルの決定のためにユニットを凍結融解した。
【0184】
全実験では、研究すべき鼻粘膜送達処方物を、全先端面を被覆するのに十分な100μLの体積で各ユニットの先端面に適用する。適切な体積(一般に、100μLしか必要でない)の先端面に適用される濃度の試験処方物を、ELISA又は他の指定のアッセイによる活性物質の濃度のその後の決定のために用意する。
【0185】
ユニットを、実験のためにスタンドを持たない6ウェルプレートに入れる:各ウェルは、ユニットの多孔質膜の底に接触するのに十分であるが、ユニット上にいかなる有意な上方静水圧も生じない0.9mLの培地を含む。
【0186】
エラー発生の可能性を最小にし、いかなる濃度勾配も形成も回避するために、研究の各測定点で、ユニットを一方の0.9mLを含むウェルから他方に移す。100μLの試験材料を先端面に適用した時間0に基づいて、以下の測定点でこれらの移動を行う:15分、30分、60分、及び120分。
【0187】
測定点の間に、その位置におけるユニットを、37℃のインキュベーターで保持する。滅菌鉗子を使用したプレートを取り出してユニットを一方のウェルから他方のウェルに移すわずかな時間の温度変化が最小になるように0.9mL/ウェルの培地を含むプレートもインキュベーターで維持する。
【0188】
各測定点での完了後、各ユニットを移動させた培地をウェルから除去し、透過した試験材料の濃度の決定、試験材料が細胞傷害性である事象では、上皮からの細胞質内酵素(乳酸デヒドロゲナーゼ)の放出のために、2つのチューブ(一方のチューブに700μLを添加し、他方に200μLを添加する)に等分する。アッセイを24時間以内に行う場合はこれらのサンプルを冷蔵室に保持するか、アッセイのために1回解凍されるまで、サンプルを更に等分し、─80℃での凍結状態を保持する。凍結融解サイクルの反復は回避すべきである。
【0189】
エラーを最小にするために、全てのチューブ、プレート、及びウェルを実験開始前に予めラベルを付ける。
【0190】
120分後、ユニットを、残りの0.9mL含有ウェルからウェルあたり0.3mLの培地を含む24ウェルマイクロプレートに移す。この体積は、ユニットの底に接触するのに十分でもあるが、ユニット上に上方静水圧を生じない。経上皮抵抗の測定前にユニットをインキュベーターに戻す。
【0191】
呼吸気道上皮細胞は、in vivo及びin vitroで強固に接合し、組織間の溶質の流れを制限する。これらの接合は、切除した気道組織で数百Ω×cmの経上皮抵抗を付与し、MatTek EpiAirwayユニットでは、製造者は、経上皮抵抗(TER)が日常的に約1000Ω×cmであると主張している。本発明者らは、一連の透過研究工程で偽曝露されたコントロールEpiAirwayユニットのTER幾らか低いが(700〜800Ω×cm)、小分子の透過はTERの逆数に比例するので、この値は依然として透過に対するおもな障壁であるのに十分に高いことを見出した。逆に、細胞を含まない底が多孔質膜であるユニットの膜貫通抵抗は最小でしかない(5〜20Ω×cm)。
【0192】
正確なTERの決定には、オーム計の電極が膜の上下の有効表面積に配置され、膜からの電極の距離を再現可能に制御することが必要である。MatTekによって推奨され、且つ本明細書中に記載の全事件で使用したTERの決定方法は、World Precision Instruments,Inc.,Sarasota,FLの「EVOM」(商標)上皮ボルトオーム計(voltohmmeter)及び「ENDOHM」(商標)組織抵抗測定室を使用する。
【0193】
電極を平衡化するために、室を、TER決定前に、最初にDulbeccoリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で少なくとも20分間充填する。
【0194】
1.5mLのPBSを含む室を使用してTERを決定し、350μLのPBSを含む底が膜のユニットを測定する。上の電極が、細胞を含まない(しかし、350μLのPBSを含む)ユニットの膜のちょうど上に配置されるように調整し、次いで、確実に再現可能に配置されるように固定する。無細胞ユニットの抵抗は、典型的には、5〜20Ω×cm(「バックグラウンド抵抗」)である。
【0195】
一旦室を調製し、バックグラウンド抵抗を記録すると、透過決定でちょうど使用した24ウェルプレート中のユニットをインキュベーターから取り出し、TERの決定のためにそれぞれ室に入れる。
【0196】
各ユニットを、膜の底を確実に湿らせるために最初にPBSを含むペトリ皿に移す。350μL PBSのアリコートをユニットに添加し、次いで、ラベルを貼ったチューブに慎重に吸引して先端面をリンスする。ユニットに対して350μL PBSでの第2の洗浄を行い、同一の回収チューブに吸引する。
【0197】
過剰なPBS(新鮮な1.5mLアリコートのPBSを含む)を含まないユニットを、室に配置する前にのみその外面上にブロッティングする。上の電極を室に入れる前に350μLのPBSのアリコートをユニットに添加し、EVOM計でTERを読み取る。
【0198】
ENDOHM室中でユニットのTERを読み取った後、ユニットを取り出し、PBSを吸引して確保し、先端面上に空気界面を有するユニットを、ウェルあたり0.3mLの培地を含む24ウェルプレートに戻す。
【0199】
ユニットを以下の順序で読み取る:全偽処置コントロール、全処方物処置サンプル、各偽処置コントロールの第2のTERの読み取り。全TERの決定の完了後、24ウェルマイクロプレート中のユニットを、MTT還元による生存度の決定のためにインキュベーターに戻す。
【0200】
MTTは、インタクトなミトコンドリア機能を有する生存細胞により不溶性の有色ホルマザンに対するミトコンドリアデヒドロゲナーゼ活性又は呼吸性バーストを引き起こすことができる細胞由来の非ミトコンドリアNAD(P)Hデヒドロゲナーゼ活性によって還元される細胞透過性テトラゾリウム塩である。ホルマザンの形成は、上皮細胞が有意な呼吸性バーストを引き起こさないので、上皮細胞の生存度の良好な指標である。本発明者らは、生存度を評価するためにMatTek Corpによってそのユニットのために調製されたMTT試薬キットを使用した。
【0201】
MTT試薬は濃縮物として供給されており、生存度をアッセイする当日(典型的には、透過動態学及びTERを午前中に決定した日の午後)に専用のDMEMベースの希釈剤で希釈する。使用前に短時間の遠心分離によって不溶性試薬を除去する。最終MTT濃度は、1mg/mLである。
【0202】
最終MTT溶液を、ウェルあたり300μLの体積で24ウェルマイクロプレートのウェルに添加する。上記で留意されるように、この体積は、EpiAirwayユニットの膜への接触に十分であるが、細胞上に有意な正の静水圧を与えない。
【0203】
ユニットをTER測定後にユニットを入れた24ウェルプレートから取り出し、ユニット外面のいかなる過剰な液体も除去した後、ユニットをMTT試薬を含むプレートに移す。次いで、プレート中のユニットを、5%COを含む大気下のインキュベーター中に37℃で3時間入れる。
【0204】
3時間のインキュベーション後、生存細胞を含むユニットは視覚可能な紫色に変色する。MTTの還元範囲を定量するために、不溶性ホルマザンをそのユニット中の細胞から抽出しなければならない。前述同様にユニット外面から過剰な液体を除去した後にウェルあたり2mLの抽出液を含む24ウェルマイクロプレートにユニットを移すことによってホルマザンを抽出する。この体積は、ユニットの膜及び先端面の両方を完全に被覆するのに十分である。遮光室中にて室温で一晩抽出を進行させる。MTT抽出物は、伝統的に、高濃度の界面活性剤を含み、細胞を破壊する。
【0205】
抽出後、各ユニット内の流動物及びその周辺のウェル中の流動物を合わせ、その後の96ウェルマイクロプレート(200μLアリコートが最適である)への等分及びVMaxマルチウェルマイクロプレート分光光度計による570nmの吸光度の決定のためにチューブに移す。抽出されたユニットからもたらされるデブリ由来の濁度が確実に吸光度に寄与しないようにするために、VMaxにて各ウェルの650nmの吸光度も決定し、570nmの吸光度から自動的に差し引く。ホルマザン吸光度決定のための「ブランク」は、ユニットが曝露されていない200μLアリコートの抽出物である。この吸光度値は、生存度ゼロを構成すると見なされる。
【0206】
24のEpiAirwayユニットの各キット由来の2つのユニットを、透過動態学及びTERの決定時に未処置のままにする。これらのユニットを、100%細胞生存についての正の対照として使用する。本発明者らが実施した全研究では、これらの未処置ユニット中の細胞と、透過動態学のために偽処置し、TER決定を行ったコントロールユニット中の細胞との間に生存度の統計的有意差は認められなかった。試験処方物で処置した全ユニットの吸光度を、MTTとのインキュベーション時のユニット中の細胞の生存率と正比例すると見なす。典型的には、先端面への試験材料の導入から4時間後にすぐこのアッセイを行い、その後にTER決定時にユニットの先端面をリンスすることに留意すべきである。
【0207】
MTT還元によるミトコンドリアリダクターゼ活性の測定が細胞生存度の感度の高いプローブである一方で、アッセイは必ずしも細胞を破壊しないので、各研究の終了後にのみアッセイを実施することができる。細胞が壊死性の溶解を受ける場合、その細胞質内容物が周辺の培地に浸出し、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)などの細胞質内酵素をこの培地中で検出することができる。2時間の透過動態学決定の時点で取り出した培地サンプルに対して培地中のLDHをアッセイすることができる。したがって、気道上皮への最初の数分間の曝露によって細胞溶解を誘導する処方物の効果と同様に有意な時間が経過するまで生じない処方物の細胞傷害効果を検出することができる。
【0208】
EpiAirwayユニットの細胞溶解の評価のために推奨されるLDHアッセイは、NADからのNADHの生成に伴う乳酸塩からピルビン酸塩への変換に基づく。次いで、粗「ジアフォラーゼ」調製によって触媒されるテトラゾリウム塩INTの同時還元に伴ってNADHを再酸化される。INTの還元によって形成されたホルマザンは不溶性であるので、LDH活性の全アッセイを、乳酸塩、NAD、ジアフォラーゼ、及びINTを含む均一な水性媒体中で行うことができる。
【0209】
LDH活性のアッセイを、EpiAirwayユニット周囲の「上清」培地サンプル由来の50μLアリコートで行い、各測定点で回収する。これらのサンプルを、24時間未満の場合冷蔵室に保存するか、回収後数時間以内に凍結後に融解した。各EpiAirwayユニットから、試験材料の適用から15分後、30分後、1時間後、及び2時間後に回収した上清培地のサンプルが得られる。全アリコートを96ウェルマイクロプレートに移す。
【0210】
ユニットに曝露しなかった50μLアリコートは、0%細胞傷害性の「ブランク」又は負の対照として役立つ。本発明者らは、非曝露培地とのアッセイ試薬混合物の反応後に存在する見掛け上の「内因性」LDHレベルが透過動態学研究の実施に必要な2時間の全時間的経過にわたる全偽処置コントロールによって放出された見掛け上のLDHレベルと実験誤差の範囲内で同一であることを見出した。したがって、実験誤差の範囲内で、これらの偽処置ユニットは、透過動態学測定の時間的経過にわたって上皮細胞の細胞溶解を示さない。
【0211】
ユニット中の100%の細胞が溶解した後に放出されるLDHレベルを反映する上清培地サンプルを調製するために、いかなる事前操作にも供していないユニットを、透過動態学の決定のためのプロトコールにしたがって0.9mLの培地を含む6ウェルマイクロプレートのウェルに添加し、ユニットを含むプレートを−80℃で凍結し、ウェルの内容物を融解する。この凍結融解サイクルによって細胞が効率的に溶解し、その細胞質内容物(LDHが含まれる)が上清培地に放出される。100%細胞傷害性を反映する正の対照として、50μLアリコートの凍結融解細胞由来の培地を96ウェルプレートに添加する。
【0212】
上清培地のアリコートを含む各ウェルに、50μLアリコートのLDHアッセイ試薬を添加する。次いで、プレートを、暗所で30分間インキュベートする。
【0213】
1M酢酸の「停止」溶液の添加によって反応を停止させ、停止溶液の添加から1時間以内に、プレートの490nmにおける吸光度を決定する。
【0214】
細胞融解率の計算は、吸光度と細胞溶解(0%細胞溶解の基準として役立つ培地のみから得られる吸光度及び100%細胞溶解の基準として役立つ凍結融解ユニット周囲から得られる吸光度)との間に比例関係があるという仮定に基づく。
【0215】
本発明の粘膜送達増強剤又は組み合わせ処方物の調和的投与と組み合わせた活性剤(active agent)の透過の増強を評価するための試験材料としての、生物活性剤濃度の決定手順は、一般に、上に記載されており、それぞれの特定のアッセイのために使用される公知の方法及びELISAキットの特定の製造者の説明書に従う。生物活性剤の透過動態学を、一般に、生物活性剤を上皮細胞先端面と接触させた後(粘膜送達増強剤への細胞先端面の曝露と同時又は曝露後であり得る)の複数の測定点(例えば、15分、30分、60分、及び120分)での測定によって決定する。
【0216】
血清、中枢神経系(CNS)の組織若しくは流動物、脳脊髄液(CSF)、又は哺乳動物被験体の他の組織、若しくは流動物中のPTHペプチド濃度の決定手順を、PTHの免疫アッセイによって決定することができる。本発明の粘膜送達増強剤又は組み合わせ処方物の調和的投与と組み合わせた活性剤(active agent)の透過の増強を評価するための試験材料としてのPTH濃度の決定手順は、一般に、上に記載されており、公知の方法並びに放射免疫アッセイ(RIA)、酵素免疫アッセイ(EIA)についての製造者の説明書、及びPTHペプチドの免疫組織化学又は免疫蛍光のための抗体試薬に従う。Bachem AG(King of Prussia,PA)。
【0217】
EpiAirway(商標)組織膜をフェノールレッド及び無ヒドロコルチゾン培地(MatTek Corp.,Ashland,MA)中で培養する。組織膜を、37℃で48時間培養して組織を平衡化する。各組織膜を、0.9mLの無血清培地を含む6ウェルプレートの各ウェルに入れる。100μLの処方物(試験サンプル又はコントロール)を、膜の先端面に適用する。各試験サンプル(生物活性剤(PTH)と組み合わせた粘膜送達増強剤)及びコントロール(生物活性剤(PTH)のみ)の3連及び4連のサンプルを各アッセイで評価する。各測定点(15、30、60、及び120分)で、組織膜を新鮮な培地を含む新規のウェルに移す。底にある0.9mLの培地サンプルを各測定点で採取し、ELISA及び乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)アッセイで使用するために4℃で保存する。
【0218】
ELISAキットは、典型的には、以下の2工程のサンドイッチELISAである:研究される薬剤の免疫反応形態を、96ウェルマイクロプレート上に固定した抗体によって最初に「捕捉」し、ウェルからの非結合材料の洗浄後、「検出」抗体を結合免疫反応薬と反応させる。この検出抗体を、典型的には酵素(ほとんどの場合、西洋ワサビペルオキシダーゼ)に接合し、免疫複合体中のプレートに結合した酵素量を、発色試薬とのその活性によるアッセイによって測定する。透過動態学研究における各測定点で回収した上清培地サンプルに加えて、動態学研究の開始時にユニットの先端面に適用した処方物(すなわち、本発明の生物活性試験薬を含む)の適切に希釈したサンプルも、製造者が提供する標準組に加えてELISAプレートでアッセイする。各上清培地サンプルを、一般に、ELISAによって2連のウェルでアッセイする(透過動態学の決定において各処方物あたり4連のユニットを使用し、それにより、4つ全ての測定点で回収した上清培養物のサンプルが全部で16作製される)。
【0219】
ユニットの先端面に適用した材料の上清培地サンプル中又は希釈サンプル中の試験活性剤の見掛け上の濃度がELISAの完了後の標準の濃度範囲外であることは珍しいことではない。実験サンプル中に存在する材料の濃度を、標準の濃度を超える外挿によって決定せず、むしろ、サンプルを適切に再希釈して、反復ELISAにおける標準間の内挿によってより正確に決定することができる試験材料濃度を得る。
【0220】
生物活性試験薬(例えば、PTH)のELISAは、そのデザイン及び推奨されるプロトコールが独特である。ほとんどのキットと異なり、ELISAは、2つのモノクローナル抗体(一方は捕捉用であり、他方は検出抗体(この抗体を西洋ワサビペルオキシダーゼと接合する)として生物活性試験薬(例えば、PTH)のための非重複決定基に指向する)を使用する。実験サンプル中のPTH濃度がアッセイ上限未満である限り、ELISAプレート上でサンプルを同時に存在する両抗体とインキュベートさせる製造者の説明書通りのアッセイプロトコールを使用することができる。サンプル中のPTHレベルがこの上限より有意に高い場合、免疫反応性PTHレベルは、インキュベーション混合物中の抗体量を超える可能性があり、結合した検出抗体を持たないPTHがプレート上に捕捉される場合がある一方で、結合した検出抗体を有するPTHを捕捉できない可能性がある。これにより、サンプル中のPTHレベルが深刻に過小評価される(このようなサンプル中のPTHレベルがアッセイの上限を有意に下回るようである)。この可能性を排除するために、アッセイプロトコールを修正した。
【0221】
希釈サンプルを、最初に、いかなる検出抗体の非存在下で固定化捕捉抗体を含むELISAプレート上で1時間インキュベートする。1時間のインキュベーション後、ウェルから非結合材料を洗い流す。
【0222】
検出抗体を、プレートと1時間インキュベートして全ての捕捉抗原との免疫複合体を形成させる。検出抗体濃度は、捕捉抗体と結合した最大レベルのPTHとの反応に十分である。次いで、プレートを再度洗浄して任意の非結合検出抗体を除去する。
【0223】
ペルオキシダーゼ基質をプレートに添加し、15分間インキュベートして発色させる。
【0224】
「停止」溶液をプレートに添加し、VMaxマイクロプレート分光光度計で450nm及び490nmの吸光度を読み取る。有色生成物の490nmの吸光度は、450nmの吸光度よりもはるかに低いが、各波長での吸光度は依然として生成物の濃度に比例する。2つの読み取りにより、吸光度は、VMax装置の作業範囲にわたって結合PTH量と直線的に関連することが確認される(本発明者らは、日常的に0〜2.5のOD範囲に制限するが、装置は0〜3.0のOD範囲にわたって正確であることが報告されている)。サンプル中のPTH量を、ELISA中に含まれる異なる標準について得られたOD値の間の内挿によって決定する。ODの読み取が標準について得られた範囲外のサンプルを再希釈し、反復ELISAで使用する。
【0225】
TERアッセイによる経上皮抵抗の測定:最終アッセイ後、膜を0.3mLの無菌培地を含む24ウェル培養プレートの各ウェルに入れ、EVOM上皮ボルトオーム計及びEndohm室(World Precision Instruments,Sarasota,FL)を使用して経上皮電気抵抗(TER)を測定する。上の電極を膜の上面に近づけるが、接触しないように調整する。その各ウェルから組織を一度に除去し、無機PBSへの浸漬によって基底面をリンスする。先端面を、PBSで2回穏やかにリンスした。組織ユニットをEndohm室に入れ、250μLのPBSをインサートに添加し、上の電極を交換し、抵抗を測定し、記録する。測定後、PBSをデキャンし、組織インサートを培養プレートに戻す。全TER値を、組織の表面積の関数として報告する。
【0226】
最終的な数値を、以下のように計算する:
細胞膜のTER=(膜を有するインサートの抵抗(R)−ブランクインサートのR)×膜面積(0.6cm)。
【実施例3】
【0227】
実施例3:タンパク質である安定剤を含まない副甲状腺ホルモン処方物の調製
タンパク質である安定剤を実質的に含まない副甲状腺ホルモンの鼻腔内投与に適切な副甲状腺ホルモン処方物(以下に列挙した処方物を有する)を調製した。約3/4の水をビーカーに添加し、撹拌プレート上の撹拌棒で撹拌し、クエン酸ナトリウムを添加し、完全に溶解させた。次いで、EDTAを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、クエン酸を添加し、完全に溶解するまで撹拌した。メチル−β−シクロデキストリンを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、DDPCを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、ラクトースを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、ソルビトールを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。次いで、クロロブタノールを添加し、完全に溶解するまで撹拌した。副甲状腺ホルモン1−34を添加し、溶解するまで穏やかに撹拌した。HCl又はNaOHの添加によってpHを5.0±0.25に調整した。水を最終体積まで添加した。
【実施例4】
【0228】
実施例4:ヒト軟骨細胞に対するPTH及び増強剤(enhancer)の効果
ヒト軟骨細胞に対する鼻腔内PTH1−34処方物の効果をin vitroで測定し、詳細には、軟骨細胞の増殖に対する透過増強剤の効果及びカルシトニンよびIGF−1と比較したコラーゲンの産生を測定した。
【0229】
使用細胞株は、ヒト関節軟骨に由来した。関節軟骨細胞は、鼻軟骨細胞と表現型が非常に類似しており(Shikani et al.,2004)、それにより、本研究の良好なモデルが得られる。細胞を2つの異なる形態(第1の形態は単層(増殖モデル)であり、第2の形態はアルギン酸ビーズ中にカプセル化された細胞(再分化モデル)である)で得た。
【0230】
細胞単層モデルを使用して、細胞増殖を試験した。目的は、単純な処方物(クエン酸緩衝液)又は処方物の増強剤を含む処方物中のPTH1−34の存在下での細胞増殖を試験し、次いで、これらのデータを正の対照(抗生物質、インスリン、TGF−β、及びIGF−1を含む培地)及び負の対照(いかなる細胞成長成分も欠く培地)についての細胞増殖と比較することであった。ペプチド含有処方物の作製のたのために使用した偽薬溶液を、表3に記載する。所望の濃度を得るために、この溶液にペプチドを添加した。使用したPTH1−34及びサケカルシトニンは、Nastechから入手した。IGF−1を、Sigmaから購入した。
【0231】
正常なヒト軟骨由来の軟骨細胞単層(Cell Applications,Inc.,SanDiego,CA)を、24ウェルプレートに接着させ、最初の倍増後に出荷した。細胞受取り時に約16000細胞/ウェルと予想された。2つのプレートを、PTH1−34及び適切なコントロールサンプルで完全に同一であるように処置した。対照は、正の対照については軟骨細胞成長培地(Cell Applications)で処置した細胞を含み、負の対照については基礎培地(Cell Applications)で処置した細胞を含んでいた。一旦処置されると、2つのプレートのうちの1つを、細胞生存度(t=0サンプル)について分析した。第2のプレートを、5%COのインキュベーターに37℃で4日間置き、その後、プレートをMTTアッセイを使用して分析した。
【0232】
MTT分析(Cell Applications)のために、100μLのMTT濃縮液を、1000μLサンプルを含む各ウェルに添加した。プレートに播種し、37℃で4時間置いた。各プレートを、37℃で4時間のインキュベーションから取り出し、ベンチトップに置いた。各ウェル由来の上清を慎重に除去し、破棄した。各ウェル中のプレート物(plated)の底に付着した紫色の結晶が認められた。次いで、500μLの抽出溶液を各ウェルに添加した。抽出溶液の添加直後にプレートをパラフィルムで密封し、振動及び/又は回転させて紫色の結晶を溶解させた。570nmの吸光度を読み取った。
【0233】
アルギン酸ビーズ中にカプセル化した約300万個のヒト軟骨細胞(Cell Applications)に、全体積が25mLの再分化培地を添加した。軟骨細胞がその表現型の特徴を喪失して線維芽細胞様細胞に脱分化する単層培地中と異なり(Kuettmer et al.,1982;Jennings et al.,1983;Kato et al.,1984)、アルギン酸ビーズ中のヒト軟骨細胞は、アグレカン及びII型コラーゲンなどの表現型マーカーを産生する(Benya et al.,1982;Guo et al.,1982;Kato et al.,1984)。PTH1−34投与の結果としてのII型コラーゲン発現を評価し、それにより、任意の軟骨成長の指標とするためにアルギン酸ベースの細胞系を購入した。
【0234】
細胞含有アルギン酸ビーズ懸濁液を、細胞培養フラスコから50mLのコニカルチューブに移した。24ウェルプレートのウェルあたり500μL(約62500細胞/ウェル)の懸濁液を分注した。各ウェルにサンプルを添加し、適切な成長培地で最終体積を1mlにした。コントロールは、正の対照については再分化培地(Cell Applications)で処置した細胞を含み、負の対照については基礎培地(Cell Applications)で処置した細胞を含んでいた。
【0235】
プレートを穏やかに回転させて各サンプルを均一な混合物にした。プレートを、37℃、5%COのインキュベーターに入れた。ヒト軟骨細胞を、12日間まで成長させた。2日毎又は3日毎に適切な成長培地と交換した。実験最終日にII型コラーゲン抽出のためのアルギン酸ビーズを調製し、抽出されたコラーゲンを、Native Type II Collagen Detection Kit(Chondrex Inc.,Redmond WA)を使用して定量した。捕捉ELISAキット(Chondrex)を使用して、未変性II型コラーゲンを測定した。キット(Accurate Chemical & Scientific Corp)によって、グリコサミノグリカンを測定した。
【0236】
MTTアッセイを使用して、細胞増殖を試験した。MTTアッセイは、細胞生存度を測定し、MTTアッセイ値の増減は、生存細胞集団の増減を反映する。軟骨細胞成長の刺激について試験するために、PTH1−34を含む種々の試験溶液を軟骨細胞単層の先端側に適用し、37℃/5%COでのインキュベーションの開始時及び4日後にMTTアッセイを行った。結果は、PTH1−34が、単純な溶液としてか透過増強剤の存在下で処方した軟骨細胞の成長を刺激しないことを示した。
【0237】
細胞をアルギン酸ビーズ中にカプセル化した形態で細胞を調製した軟骨成長モデルを試験した。この形態では、軟骨細胞がその表現型の特徴を喪失して線維芽細胞様細胞に脱分化する単層培地中と異なり(Kuettmer et al.,1982;Jennings et al.,1983;Kato et al.,1984)、ヒト軟骨細胞は、アグレカン及びII型コラーゲンなどの表現型マーカーを示す(Benya et al.,1982;Guo et al.,1982;Kato et al.,1984)。このアルギン酸ベースの細胞系を使用して軟骨成長の指標としてのII型服用したPTH1−34 の影響によるコラーゲン発現を評価した。
【0238】
PTH1−3を、軟骨生成のために軟骨細胞を刺激する能力について試験した。細胞含有アルギン酸ビーズを、種々の試験溶液の存在下にて37℃、5%COで12日間インキュベートした。インキュベーション後、II型コラーゲン(鼻軟骨の細胞外基質の主成分(Shikani et al.,2004))の産生を定量するための抽出法を使用してアルギン酸ビーズを処理した。
【0239】
正の対照(再分化培地)及び負の対照(成長培地)並びに20μg又は200μgのPTH1−34への細胞の曝露効果におけるII型コラーゲンの産生を測定した。再分化培地の存在下では低レベルのII型コラーゲンが産生されたが、成長培地では産生されなかった。20mgのPTH1−34の適用では、クエン酸緩衝液又は透過増強剤のいずれにおいても軟骨細胞からII型コラーゲンは産生されなかった。200mgのPTH1−34を単純な処方物中の細胞培養物に適用した場合、II型コラーゲンの産生は増加した。驚いたことに、同量のペプチドを、透過増強剤を含む処方物中に与えた場合、細胞はII型コラーゲンを産生しなかった。コントロールとして、細胞系を試験で確認し、5mgのIGF−1との培養によってII型コラーゲンの産生が増加することが示された。
【0240】
これらの結果は、PTH1−34の局所活性の遮断におけるメチル−b−シクロデキストリン及び/又はDDPCなどの透過増強剤の役割と一致する。
【実施例5】
【0241】
実施例:ウサギにおけるPTH1−34のPK研究
本研究の目的は、ウサギへの鼻腔内投与又は皮下投与後のPTH1−34の血漿薬物動態学及び相対的な鼻腔内及び皮下の生物学的利用能を決定することである。更に、皮下組換え及び合成PTH1−34の吸収プロフィールを評価した。
【0242】
これは、群あたり4匹の動物から成る4つの群における無作為化した単回処置並行研究であった。投与後、周縁耳静脈の直接静脈穿刺によって各動物から連続血液サンプルを得た。連続血液サンプル(それぞれ2mL)を、周縁耳静脈から抗凝固剤としてEDTAを含む採血チューブへの直接静脈穿刺によって採取した。採血後、凝固防止のために直ちにチューブを穏やかに数回振動させる。100μLのアプロチニンを採血チューブに添加した。投与から0、5、10、20、30、45、60、120、及び240分後に血液サンプルを採取した。少なくとも1日1回及び採血時に臨床的に観察した。
【0243】
用量は、最も最近記録された体重に基づいた。鼻腔内投与及び皮下投与のために、動物に50μl/kg及び5μl/kgをそれぞれ投与した。用量の倍率(dose multiple)は、ウサギ及びヒトの鼻腔面の測定に基づいた。ヒトと比較したウサギの鼻腔面の用量の倍率は、ウサギ及びヒトの片側の鼻腔の表面積がそれぞれ30cm及び80cmであることに基づいて、本研究では約2倍である。用量の群を表4に示す。
【0244】
群1、2、3、及び4のための鼻腔及び皮下処方物は、上記方法にしたがう。ウサギ血清中のヒトPTH1−34濃度を測定するための酵素免疫アッセイを構築した。プロテアーゼインヒビター(アプロチニン)を使用してサンプルを採取し、凍結した。サンプル、標準、及び品質管理サンプルを、修正ヒト生物活性PTH1−34ELISAキットを使用してアッセイした。標準、サンプル、及び品質管理サンプルを、2連のストレプトアビジンコーティングしたストリップウェルに添加する。次いで、これらのサンプルを、ビオチン化ヒトPTH1−34抗体とHRP接合ヒトPTH1−34抗体との混合物とインキュベートする。プレートをキットの洗浄液で洗浄し、TMB基質溶液を各ウェルに添加する。10分間発色させ、その後に各ウェルに溶液を添加する。吸光度プレートリーダーでODを測定する。検量線の内挿によって濃度を計算し、アッセイパフォーマンスを、品質管理サンプルを使用して調節する。ノンコンパートメントモデルを使用したWinNonLinソフトウェア(Pharsight Corporation,Version 4.0,Mountain View,CA)を使用して薬物動態学の計算を行った。
【0245】
群1及び2に、鼻腔内経路によって50μg/kgの有効成分としてBachemの合成PTHを投与した。群1はForteo(登録商標)処方物であり、群2はNastechの処方物であった。群3及び4に、皮下経路によって5μg/kgの組換えPTH及び合成PTHをそれぞれ投与した。両群で皮下経路のために使用した賦形剤は、Forteo(登録商標)として市販の製品と同一であった。
【0246】
群1、2、3、及び4の平均Cmaxは、それぞれ、1,921.13、2,559.28、1,538.10、及び2,526.43pg/mLであった。群1、2、3、及び4の平均Tmaxは、それぞれ35、20、20、及び10分であった。群2のCmaxは1.3倍、1.7倍であり、群1、3、及び4と比較してほぼ同一であった。しかし、群2の用量は、群3及び4の10倍であった。用量を補正したCmaxについての群2の相対生物学的利用能は、群3及び4と比較してそれぞれ16.6%及び10.0%であった。群2のCmaxは、群1の1.3倍であった。皮下経路のCmaxと比較した相対生物学的利用能は、群4と比較して群3で61%であった。
【0247】
群1、2、3、及び4の平均AUClastは、それぞれ111,850.81、123,498.63、173,992.88、及び194,895.25分*pg/mLであった。群1、2、3、及び4の平均AUCinfは、それぞれ118,022.48、130,377.44、177,755.35、及び206,317.05であった。用量を補正したAUCinfについての群2の相対生物学的利用能は、群3及び4と比較してそれぞれ7.3%及び6.3%であった。群2のAUClastは、群1の1.1倍であった。皮下経路のAUClastと比較した相対生物学的利用能は、群4と比較して群3で89.3%であった。皮下経路のAUCinfと比較した相対生物学的利用能は、群4と比較して群3で86.2%であった。
【0248】
20μgの用量の承認された皮下Forteo(登録商標)を試験したヒト薬物動態学データに基づいて、Cmax、AUClast、及びAUCinfについての群2に関する全身曝露のヒト用量の倍率は、それぞれ、約20倍、8.4倍、及び7.4倍である。ウサギの平均体重が2.5kgであること及びウサギ及びヒトの鼻腔表面積がそれぞれ30cm及び80cmであることに基づいて、本研究における鼻曝露は約2倍である。
【0249】
PTH1−34のt1/2は、全群で約43〜55分の範囲である。群1、2、3、及び4の平均tmaxは、それぞれ35分、20分、20分、及び10分であった。群1、2、3、及び4のKelは、それぞれ、0.018、0.017、0.016、及び0.014であった。いかなる処方物の投与後においても不都合な臨床的徴候は認められなかった。
【0250】
max及びAUCに基づいて、本発明の処方物の相対的生物学的利用能は、約10%であった。類似の処方物マトリクス(formulation matrix)を有する有効成分としてPYY3−36を使用してウサギで実施した他の鼻腔内研究でも約19%の生物学的利用能を有し、ヒトで試験した場合、類似の生物学的利用能が得られた。したがって、20μgのFORTEO(登録商標)皮下用量と対照的に、ヒト鼻腔内用量は200μgである。
【0251】
本発明の処方物のCmax、AUCがより高く、且つTmaxがより速いにもかかわらず、群1は、群2、3、及び4と比較して予想外に高い吸収率を有しており、これはin vitro研究と一致していた。
【0252】
皮下経路によって投与された合成PTH1−34の吸収率は、組換えPTH1−34よりも高かった。処方物を使用した本研究で到達したレベルは、20μgのヒト用量に基づいて、Cmax及びAUClastについて約20倍及び8.4倍である。鼻腔面に基づいて、本研究で試験した用量は、約2倍である。したがって、50μg及び250μgで14日間の毒性研究で選択した用量を、鼻曝露及び全身曝露についてヒトの用量と適切に比較する。
【実施例6】
【0253】
実施例6:PTH1−34のPK研究
ウサギの鼻腔内投与後の選択された処方物中のテリパラチド(ヒト副甲状腺ホルモン1−34(hPTH1−34))の薬物動態学プロフィールを決定するために本研究を行った。
【0254】
全研究デザインを、表5に示す。鼻腔内点滴注入によって投与したテリパラチドを使用した以前の研究に基づいて用量レベルを選択した。
【0255】
各動物の左の鼻腔への鼻腔内点滴注入によって投与した。投与前、投与後5分、10分、20分、30分、45分並びに1時間(60分)、2時間(120分)、及び4時間(240分)に周縁耳静脈から血液サンプルを採取した。血液のサンプル採取及び取り扱いをプロトコール毎に実施し、サンプルの質に影響を与えると考えられる逸脱は存在しなかった。プロテアーゼインヒビター(アプロチニン)を使用して血液サンプルを採取し、血清及び血漿の採取のために処理し、凍結し、分析まで−70℃で凍結して保存した。
【0256】
5つのテリパラチドの鼻処方物を、本研究で評価した。各処方物のための賦形剤の組成を表6に示す。本発明の鼻処方物は、Nastech Pharmaceutical Company Inc.(Bothell,WA)で製造されている。
【0257】
酵素免疫アッセイを構築し(血清及び血漿)、ウサギ由来の血液サンプル中のヒトPTH1−34濃度を測定するために(血清を)確認した。研究サンプル、標準、及び品質管理サンプルを、修正ヒト生物活性PTH1−34ELISAキットを使用してアッセイした。標準、サンプル、及び品質管理サンプルを、ストレプトアビジンコーティングしたストリップウェルに添加し、各サンプルを2連で分析した。サンプルを、ビオチン化ヒトPTH1−34抗体とHRP接合抗ヒトPTH1−34抗体との混合物とインキュベートする。プレートをキットの洗浄液で洗浄し、TMB基質溶液を各ウェルに添加する。10分間発色させ、その後に各ウェルへの1M硫酸の添加によって反応を停止させた。吸光度プレートリーダーで各ウェルのOD450を測定し、検量線の内挿によって濃度を計算した。アッセイパフォーマンスを、品質管理サンプルを使用してモニタリングする。標準分析物としてのヒトPTH1−34、正常なウサギの血清又は血漿を使用して、アッセイの定量下限値(LLOQ)を7.8pg/mLと割り出した。
【0258】
ウサギとヒトとの間の副甲状腺ホルモンの種類似性のために、アッセイにより内因性(すなわち、ウサギ)副甲状腺ホルモン及びウサギPTH1−34が検出されると予想された。薬物動態学を上記のように計算した。
【0259】
血清中又は血漿中のPTHの投与前濃度(ウサギ副甲状腺ホルモン又はそのフラグメントを示すと予想される)は、一般に、100pg/mL未満であり、いくつかのサンプルでは、62.4pg/mLと割り出された。サンプル体積を制限して、最終的な結果又はアッセイLLOQを得るための分析の反復を排除した。得られた値は、さらなる分析が不可能な最も低い値(又は推定値)である。
【0260】
各動物の血清中及び血漿中のテリパラチド値は、5〜60分の測定点で100pg/mLを超えた。最終測定点で(特に、240分)、ほとんどの動物のテリパラチド濃度は31.2pg/mL未満であった(サンプル体積がさらなる評価に不十分である最後の時点)。したがって、テリパラチドの吸収期及び排出期を、本研究のために使用した時間枠のサンプリングによって得た。
【0261】
処方物1/群1:群1動物の血清及び血漿についてのCmax、t1/2、及びAUClastの結果は、用量レベルに基づいた予想値をはるかに超えた。群1の4匹の各動物についての投与前の値は、予想範囲内であり、動物の内因性レベルがこの所見における要因ではないことを示した。動物番号931の5分及び10分の血清中及び血漿中のテリパラチド値は予想範囲内であった。動物番号932の5分の測定点では予想範囲内である一方で、投与10分後の血漿についてのアッセイ値は250,000pg/mLを超えていた。両動物についてのその後の測定点の血清又は血漿中の濃度が30,000pg/mLを超えることが見出された。動物番号933及び934について、全投与後測定点で、血清及び血漿のテリパラチド濃度が30,000pg/mLを超えることが見出された。結果として、ほとんどの動物のCmaxは45,000pg/mL超であり、t1/2は300分超であった。平均AUClastは、7,000,000分*pg/mL超であった。
【0262】
血清及び血漿の平均Tmaxがそれぞれ29分及び20分であることは、鼻腔内投与の予想範囲と一致した。しかし、Cmaxの測定値が30,000〜ほぼ50,000pg/mLであったことは、3000〜5000pg/mLの推定最大濃度よりもはるかに高かった。
【0263】
処方物2/群2:血清では、群平均Cmax及びTmaxは、それぞれ4396pg/mL及び36分であった。群平均t1/2は70.7であったが、これは、動物番号935のt1/2の計算値が198分であることに影響を受けており、他の3匹の動物のt1/2は37.7分、22.7分、及び24.6分であった。平均AUClastは、307213分*pg/mLであった。血漿における平均Cmax及びAUClastは、それぞれ3819pg/mL及び105144分*pg/mLであった。Tmaxは9分であり、t1/2は66.9分と推定された。
【0264】
処方物3/群3:血清におけるCmax、Tmax、t1/2、及びAUClastは、それぞれ1224pg/mL、9分、53分、及び35111分*pg/mLであった。血漿におけるCmax、Tmax、及びAUClastは、それぞれ1102pg/mL、8分、及び53283分*pg/mLであった。平均t1/2は99.7であったが、これは、動物番号939の長いt1/2(216.6分)に起因した。
【0265】
処方物4/群4:血清におけるCmax、Tmax、t1/2、及びAUClastは、それぞれ653pg/mL、35分、22.3分、及び30807分*pg/mLであった。血漿におけるこれらのパラメーターは、それぞれ915pg/mL、35分、73.9分、及び56383分*pg/mLであった。
【0266】
処方物5/群5:血清におけるCmax、Tmax、t1/2、及びAUClastは、それぞれ549pg/mL、45分、57.6分、及び41489分*pg/mLであった。血漿における血清と同一のこれらのパラメーターは、それぞれ734pg/mL、41分、、48.8分、及び23710.9分*pg/mLであった。
【0267】
群1についての投与後データは、予想外に濃度が高く、且つ明確な排出期が存在しないことが証明された。これは、採取手順における共通の溶液の汚染及び投与に無関係の濃度と一致するであろう。
【0268】
群3及び5について、投与後の各測定点でのテリパラチドの平均濃度は、血清と血漿で類似していた。濃度対時間曲線の形状も血清と血漿で類似していた。群2では、テリパラチドのピーク濃度は血清と血漿で類似していたが、血清濃度は後の測定点でより高かった。群4について、テリパラチドの血漿濃度は、血清濃度と比較して後の測定点でより高かった。投与後の初期の測定点では血清及び血漿で類似の濃度が認められた。全体として、これらの結果により、血漿又は血清は、投与後のテリパラチド濃度の決定に適切な基質であり得ることが示唆される。
【0269】
処方物1/群1のデータは、他の処方物についての比較生物学的利用能の計算に使用される組であることが意図されるが、この群について得られたデータを考慮して、任意の比較に適切であるとは見なされなかった。代替法として、以前の研究由来のデータ(上記)を編集してCmax及びAUClastについての値を得た。これらの研究のための処方物の成分は僅かに異なるが、主な成分−メチル−β−シクロデキストリン、ホスファチジルコリンジデカノイル、エデト酸二ナトリウム、及び安息香酸ナトリウム−は、処方物1と類似の濃度で存在していた。
【0270】
編集したCmax及びAUClastの値を使用して、各鼻腔内処方物/群についてのテリパラチドの比較生物学的利用能を計算した。処方物2/群2についてのCmax及びAUClastは、編集した値とほぼ同一(血清)又はわずかに高く(血漿)、類似の生物学的利用能を示す。処方物2の主な相違は、ホスファチジルコリンジデカノイル濃度が(1.0mg/mLから)0.1mg/mLに減少したことであった。
【0271】
処方物3に用量の半分を投与したが、同一の総用量を得るために6.6mg/mLのテリパラチドを含んでいた。メチル−β−シクロデキストリン、ホスファチジルコリンジデカノイル、及びエデト酸二ナトリウム濃度が増加し、安息香酸ナトリウムは同一濃度に維持された。血清及び血漿についての処方物3の比較生物学的利用能は共に約40%であった。
【0272】
処方物4は、FORTEO(登録商標)(テリパラチドの皮下送達形態)について列挙された濃度の成分を含む。
【0273】
処方物5は、m−クレゾールが除去されたこの処方物であった。血清又は血漿についての群4(処方物4)及び群5(処方物5)に対する相対的生物学的利用能は、約30%〜35%であった。データにより、m−クレゾールの存在がテリパラチドの生物学的利用能に有意な影響を与えなかったことが示唆される。
【0274】
これらの結果は、生物学的利用能を有意に減少させることなくホスファチジルコリンジデカノイル濃度を1.0mg/mLから0.1mg/mLに減少させることができることを示す。テリパラチド及び吸収増強剤濃度の増加は、生物学的利用能に明らかに負の影響を与えた。この低下の原因は、体積の減少に起因する鼻粘膜との接触表面積の減少に関係し得る。吸収増強剤の非存在下で、相対的生物学的利用能は更に低下した。この生物学的利用能の減少は、任意の特異的透過増強剤が存在しないことに起因すると予想され、これは、in vitro透過データとも一致する。皮下注射は、テリパラチドを使用した非臨床研究で最もよく使用されている投与経路であり、臨床用途で承認されている唯一の経路である。群2について、5〜17%の範囲の相対的生物学的利用能は、以前の推定値(6〜10%)に矛盾しない。テリパラチド及び吸収増強剤の濃度の増加(群3)により、相対的生物学的利用能が2〜5%に減少した。吸収増強剤の非存在下では(群4及び群5)、テリパラチドの相対的生物学的利用能は約2〜3%であった。
【実施例7】
【0275】
実施例7:ヒトにおけるPTH1−34のPK研究
本研究の主な目的は、2つの用量レベルでの鼻内噴霧における本発明の3つの処方物の吸収を評価すること、2つの用量レベルでのこれらの処方物の安全性を評価すること、及び2つの用量レベルでのこれらの処方物と皮下投与されたForsteoの生物学的利用能を比較することである。
【0276】
これは、6人の健康な男性ボランティア及び6人の健康な女性ボランティアを含む第1相の交差用量範囲研究である。5つの研究期間を以下に示す。
【0277】
期間1:12人の被験体全員に20μgのForsteoを皮下投与する。
【0278】
期間2:6人(男性3人及び女性3人)の被験体に500μgの処方物番号2を投与し、6人(男性3人及び女性3人)の被験体に500μgの処方物番号3を投与する。投与4時間後に得られた総カルシウムレベルの結果を使用して、以下に記載のように、期間4及び5の間に投与されるべきこれらの処方物の用量を決定する。
【0279】
処方物を投与された6人の被験体の投与から4時間後の総カルシウムレベルが3mmol/L(12.0mg/dL)以上でない場合、期間4又は5におけるこの処方物の総用量は1000μgである。
【0280】
処方物を投与された6人の被験体のうちの1人の投与から4時間後の総カルシウムレベルが3mmol/L(12.0mg/dL)以上である場合、期間4又は5の間に500μgの処方物番号2及び3のみを被験体に投与する。
【0281】
処方物を投与された6人の被験体のうちの2人又はそれを超える被験体の投与から4時間後の総カルシウムレベルが3mmol/L(12.0mg/dL)以上である場合、被験体全員に期間4又は5の間に500μgの処方物を投与する。
【0282】
期間3:被験体全員に100μgの処方物番号1を投与する。
【0283】
期間4:上記のように、被験体全員に500μg又は100μgの処方物番号2を投与する。
【0284】
期間5:上記のように、被験体全員に500μg又は1000μgの処方物番号3を投与する。
【0285】
被験体を、第1日目から投与5日目に全研究活動が完了するまで研究センターに収容する。安全性評価は、生命徴候、臨床検査室での評価、鼻の許容範囲、及び副作用を含む。
【0286】
テリパラチドレベルのPK研究のための血液サンプルを、留置カテーテル及び/又は直接静脈穿刺によって採取する。これらのサンプルを、投与から0(すなわち、最初の投与前)、5分、10分、15分、30分、45分、60分、90分、並びに4時間後に採取する。
【0287】
各測定点で、7mLの血液を採取する。テリパラチドの血漿濃度を、有効な分析手順を使用して決定する。
【0288】
上記発明は理解を明確にするための例示を目的として詳細に記載されているが、開示によって一定の変更形態及び修正形態が理解され、添付の特許請求の範囲の範囲内で過剰に実験することなく実施することができ、本発明はこの例示に制限されないことが当業者に自明である。
【0289】

【0290】

【0291】

TAP=pH調整のため、*=1.022g/mLの実験で決定した希釈密度を使用する
【0292】

【0293】

【0294】

TAP=最終pH調整のため

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PTHと増強剤(enhancer)との混合物を含む粘膜細胞層を介したPTH送達のための処方物であって、前記増強剤が強固な細胞接合の障壁機能を調整することができることを特徴とする、PTH送達のための処方物。
【請求項2】
前記混合物が、軟骨細胞中のPTHの活性を遮断することができる分子を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項3】
前記増強剤が、シクロデキストラン、ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストラン、スルホブチルエーテル−β−シクロデキストラン、及びメチル−β−シクロデキストリンから成る群から選択される可溶化剤から構成されることを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項4】
前記増強剤が、エチレンジアミン四酢酸及びエチレングリコール四酢酸から成る群から選択されるキレート剤から構成されることを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項5】
前記増強剤が、1つ又はそれ以上のポリオールから構成されることを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項6】
前記ポリオールが、スクロース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、L−アラビノース、D−エリスロース、D−リボース、D−キシロース、D−マンノース、トレハロース、D−ガラクトース、ラクツロース、セロビオース、ゲンチビオース、グリセリン、及びポリエチレングリコールから成る群から選択されることを特徴とする、請求項5に記載のPTH処方物。
【請求項7】
前記ポリオールがラクトース及びソルビトールであることを特徴とする、請求項6に記載のPTH処方物。
【請求項8】
1つ又はそれ以上の界面活性剤を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項9】
前記界面活性剤が、非イオン性ポリオキシエチレンエーテル、胆汁塩、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸、フシジン酸及びその誘導体、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、L−α−ホスファチジルコリンジデカノイル、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ラノリンアルコール、及びソルビタンモノオレエートから成る群から選択されることを特徴とする、請求項8に記載のPTH処方物。
【請求項10】
前記界面活性剤がL−α−ホスファチジルコリンジデカノイルであることを特徴とする、請求項9に記載のPTH処方物。
【請求項11】
前記増強剤が、PN159又はPN159の類似体であることを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項12】
前記混合物が、水、及びクロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、フェノール、又はオルトクレゾール、メタクレゾール、若しくはパラクレゾールから成る群から選択される防腐剤を更に含むことを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項13】
前記処方物のpHが約3〜約6であることを特徴とする、請求項12に記載のPTH処方物。
【請求項14】
前記PTH分子が、配列番号1、配列番号2、配列番号3、及び類似体又は模倣体から成る群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載のPTH処方物。
【請求項15】
前記PTH分子が、1つ又はそれ以上のポリアルキレンオキシドポリマーに接合していることを特徴とする、請求項14に記載のPTH処方物。
【請求項16】
前記ポリアルキレンオキシドポリマーがポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項15に記載のPTH処方物。
【請求項17】
ポリエチレングリコールの分子量が0.3キロダルトンと60キロダルトンとの間であることを特徴とする、請求項16に記載のPTH処方物。
【請求項18】
PTHと増強剤との混合物を粘膜細胞層に曝露する工程を含み、前記増強剤が強固な細胞接合の障壁機能を調整できることを特徴とする、ヒトへのPTHの送達方法。
【請求項19】
前記方法が、非経口投与を使用することを特徴とする、請求項18に記載のPTHの送達方法。
【請求項20】
前記投与方法が、鼻腔内、口腔、胃腸、膣、及び経皮から成る群から選択されることを特徴とする、請求項19に記載のPTHの送達方法。
【請求項21】
前記方法が鼻腔内投与であることを特徴とする、請求項20に記載のPTHの送達方法。
【請求項22】
前記鼻腔内投与が、1ミクロンと700ミクロンとの間のサイズの液滴を含むエアゾールを送達させる工程を含むことを特徴とする、請求項21に記載のPTHの送達方法。
【請求項23】
前記鼻腔内投与が、患者の体重1kgあたり約0.7〜約25μgのPTHを含むエアゾールを送達させる工程を含むことを特徴とする、請求項21に記載のPTHの送達方法。
【請求項24】
前記鼻腔内投与が、50〜800μgのPTHを含むエアゾールを送達させる工程を含むことを特徴とする、請求項23に記載のPTHの送達方法。
【請求項25】
前記方法が経口送達であることを特徴とする、請求項19に記載のPTHの送達方法。
【請求項26】
前記経口送達を、Tmaxが、放出から40分未満の放出制御送達であることを特徴とする、請求項25に記載のPTHの送達方法。
【請求項27】
PTHと増強剤との混合物を投与する工程を含み、前記増強剤が、強固な細胞接合の障壁機能を調整できることを特徴とする、ヒトの骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項28】
前記投与方法が、鼻腔内、口腔、胃腸、膣、及び経皮から成る群から選択されることを特徴とする、請求項27に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項29】
前記投与により、PTH血清レベルが、40分未満のTmaxになることを特徴とする、請求項27に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項30】
前記投与により、PTH血清レベルが、4時間未満でバックグラウンドを超えることを特徴とする、請求項27に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項31】
前記投与が、鼻腔内であることを特徴とする、請求項27に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項32】
前記鼻腔内投与が、患者の体重1kgあたり約0.3〜約30μgのPTHを含むエアゾールを送達させる工程を含むことを特徴とする、請求項31に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項33】
前記鼻腔内投与が、溶液0.1mlあたり0.5〜1.0mgのPTHを含むエアゾールを送達させる工程を含むことを特徴とする、請求項31に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項34】
前記鼻腔内投与の投薬頻度が、0.1時間と24時間との間であることを特徴とする、請求項33に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項35】
前記鼻腔内投与が:
(a)鼻内噴霧ポンプユニットにPTH溶液を充填する工程と;
(b)前記噴霧ユニットを準備する工程と;
(c)前記噴霧ユニットの外側に存在する噴霧液滴を除去する工程と;
(d)前記噴霧ユニットが鼻道に対して一直線になるまで傾ける工程と;
(e)前記溶液を鼻道に噴霧する工程と;
を含むことを特徴とする、請求項33に記載の骨粗鬆症又は骨減少症の治療方法。
【請求項36】
(a)治療有効血漿濃度を得るのに十分な濃度のPTHペプチド水溶液と;
(b)組成物を入れる容器と;
(c)作動させた場合に溶液の先端から噴霧されるエアゾールを得ることができるように前記容器に流動的に接続された作動装置と、前記作動装置の先端から0.5cmと10cmとの間の距離における高さで測定した場合、前記エアゾールの噴霧パターンの楕円率が1.00と1.40との間であることと;
を含むことを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項37】
前記作動装置が、楕円率が1.00と1.30との間のエアゾールを生成することを特徴とする、請求項36に記載の組成物。
【請求項38】
前記エアゾールが、作動装置あたり20マイクロリットルと200マイクロリットルとの間の溶液から構成されることを特徴とする、請求項36に記載の組成物。
【請求項39】
(a)容器中に存在するPTHペプチド水溶液と;
(b)作動装置の先端から前記溶液のエアゾールを生成するために前記容器に流動的に接続された作動装置と、前記作動装置の先端から約0.5cmと10cmとの間の距離における高さで測定した場合、前記エアゾールの噴霧パターンの長軸及び短軸が10mmと50mmとの間であることと;
を含むことを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項40】
前記エアゾールが、作動装置あたり20マイクロリットルと200マイクロリットルとの間の溶液から構成されることを特徴とする、請求項39に記載の組成物。
【請求項41】
(a)容器内に含まれる治療有効血漿濃度を得るのに十分な濃度のPTHペプチド水溶液と;
(b)作動の際に前記溶液のエアゾールを得ることができるように前記容器に流動的に接続された作動装置と、前記エアゾールが、PTH溶液の液滴から構成され、前記液滴の10%未満が10ミクロン未満のサイズであることと;
を含むことを特徴とする、薬学的組成物。
【請求項42】
前記作動装置の作動によって生成されるエアゾールが、20マイクロリットルと200マイクロリットルとの間の溶液から構成されることを特徴とする、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
(a)容器中のPTHペプチド水溶液の処方物と;
前記容器に流動的に接続された作動装置と、作動の際に前記溶液のエアゾールが前記作動装置の先端から生成されることと、前記エアゾールが前記溶液の液滴から構成されることと、前記液滴が25ミクロンと700ミクロンとの間のサイズであることと;
を含むことを特徴とする、薬学的組成物。

【公表番号】特表2007−537274(P2007−537274A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513324(P2007−513324)
【出願日】平成17年5月10日(2005.5.10)
【国際出願番号】PCT/US2005/016530
【国際公開番号】WO2005/115441
【国際公開日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(506049851)ナステック ファーマスーティカル カンパニー インク. (6)
【Fターム(参考)】