力検出装置
【課題】 容量素子を用いた閉ループ式の力検出装置において、単純な制御系を用いつつ、高精度な検出結果を得る。
【解決手段】 筐体内に可撓性接続部材を介して導電性の作用体310を変位自在に取り付ける。上方固定電極E1との間の静電容量値C1と、下方固定電極E2との間の静電容量値C2と、を測定する。制御ユニット50は、電極E1に電圧V1を印加したり、電極E2に電圧V2を印加したりして、作用体310に上下方向へのクーロン力を作用させる。このとき、容量差ΔC=C1−C2が0になるように、印加電圧差ΔV=V2−V1を調整するフィードバック制御を行い、作用体310を基準位置d0近傍に維持する。所定時点におけるΔVとΔCとを用いて、D(α)=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算で得られた値D(α)を、上下方向に作用した力(加速度)の検出値として出力する。
【解決手段】 筐体内に可撓性接続部材を介して導電性の作用体310を変位自在に取り付ける。上方固定電極E1との間の静電容量値C1と、下方固定電極E2との間の静電容量値C2と、を測定する。制御ユニット50は、電極E1に電圧V1を印加したり、電極E2に電圧V2を印加したりして、作用体310に上下方向へのクーロン力を作用させる。このとき、容量差ΔC=C1−C2が0になるように、印加電圧差ΔV=V2−V1を調整するフィードバック制御を行い、作用体310を基準位置d0近傍に維持する。所定時点におけるΔVとΔCとを用いて、D(α)=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算で得られた値D(α)を、上下方向に作用した力(加速度)の検出値として出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、力検出装置に関し、特に、力の作用を受ける作用体の変位を、容量素子の静電容量値に基づいて検出する原理を利用した力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
力は非常に基本的な物理量であり、これを正確に測定するための力検出装置は、様々な産業分野での需要が見込まれている。たとえば、この力検出装置を、各種ロボットの間接部分に取り付ければ、アームに加わっている荷重を測定することができるし、人間の指先から加えられる力の検出に利用すれば、人間から与えられた何らかの操作量を電気信号に変換する入力装置としての機能を果たすこともできる。
【0003】
また、作用した加速度に起因して生じる力を測定するようにすれば、力検出装置を加速度センサとして利用することが可能になる。あるいは、力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加し、作用体が周期運動しているときに受けるコリオリ力を測定すれば、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサとして利用することも可能である。このように、力検出装置は、純然たる力という物理量の検出に利用されるだけでなく、加速度や角速度などの検出にも利用される汎用性のある検出装置であり、その産業上の利用分野は極めて広範にわたっている。
【0004】
このため、できるだけ単純な構造を有し、量産化に適する力検出装置として、静電容量素子(以下、単に容量素子という)を用いたタイプの力検出装置が実用化されている。たとえば、下記の特許文献1〜3には、外力に基づいて生じた作用体の変位を容量素子を利用して検出することにより、各座標軸方向に作用した力をそれぞれ独立して検出することが可能な多次元力検出装置が開示されている。また、下記の特許文献4,5には、外力に基づいて生じた複数の柱状体の傾斜や変位を、容量素子を利用してそれぞれ別個独立して検出することにより、XYZ軸方向に作用した力とともに、XYZ軸まわりに作用したモーメントを検出することが可能な6軸成分用の力検出装置が開示されている。
【0005】
一方、下記の特許文献6には、容量素子を用いたタイプの力検出装置において、作用体の変位を抑制するようなフィードバック制御を行い、作用体の位置を基準位置に維持するために要した電気エネルギーに基づいて、作用した外力の大きさを測定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平4−148833号公報
【特許文献2】特開2001−165790号公報
【特許文献3】国際公開第WO89/09927号公報
【特許文献4】特開2004−325367号公報
【特許文献5】特開2004−354049号公報
【特許文献6】米国特許第4941354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量素子を用いたタイプの力検出装置の基本原理は、筐体内に可撓性接続部材を介して変位自在に収容した作用体に外力を作用させ、その変位を容量素子の静電容量値に基づいて検出することにより、作用した外力の大きさを求める、というものである。ここで、作用した外力と作用体の変位との関係や変位と静電容量値との関係が線形関係を維持していれば、得られた静電容量値は外力に比例し、正確な力の検出値を示すものになる。
【0007】
しかしながら、作用体を可撓性接続部材を介して筐体に接続する構造をとると、一般に、変位が大きくなるに従って、外力と変位との関係に線形性が維持できなくなる。また、変位(電極間隔)と静電容量値との間にも線形性は成り立たない。このため、検出対象となる力が比較的小さく、作用体の変位が線形領域内に維持されている限り、ある程度正確な検出値が得られるとしても、検出対象となる力が大きくなると、作用体の変位が線形領域を外れ、その検出値の精度は低下せざるを得ない。
【0008】
このような問題を解消するために、前掲の特許文献6などには、作用体の変位を抑制するようなフィードバック制御を行う閉ループ式(サーボ式)の力検出装置が開示されている。閉ループ式の力検出装置では、外力によって作用体が変位しようとした場合、当該外力に対する抗力を作用させて作用体の位置を基準位置に維持させる制御が行われる。そして、作用体を基準位置に維持させるための抗力発生に要した電気エネルギーの大きさを、作用した外力の大きさとして検出する方法がとられる。
【0009】
この閉ループ式の力検出装置では、作用体の変位が常に0となるような制御が行われるため、作用体は常に所定の基準位置に維持されることになる。したがって、作用した外力の大小にかかわらず、測定は、常に変位0の状態で行われることになり、非線形性に起因する検出誤差の問題は解消する。しかしながら、正確な検出値を得るためには、作用体を常に基準位置に正確に維持するための制御が必要になる。このため、検出精度を高めようとすればするほど、より高度で複雑な制御系が必要になり、それだけ製造コストも高騰せざるを得ない。
【0010】
そこで本発明は、容量素子を用いた閉ループ式の力検出装置において、比較的単純な制御系を用いながら、高精度な検出結果を得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の第1の態様は、正負が定義された所定の検出軸方向に作用した力を検出する力検出装置において、
検出対象となる力を作用させるための作用体と、
作用体を収容する筐体と、
作用体を筐体に対して接続する可撓性接続部材と、
作用体に固定された変位電極と筐体に固定された固定電極とによって構成され、作用体が検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる正側容量素子と、
作用体に固定された変位電極と筐体に固定された固定電極とによって構成され、作用体が検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる負側容量素子と、
正側容量素子の静電容量値C1と負側容量素子の静電容量値C2とを検出する検出手段と、
正側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V1を印加してクーロン力を作用させる機能と、負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V2を印加してクーロン力を作用させる機能と、を有する駆動手段と、
容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う機能を有し、所定時点におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを作用体に作用した力を示す検出値として出力する制御手段と、
を設けるようにしたものである。
【0012】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、各サンプリング時に、予め設定された正の基準レベルL1と負の基準レベルL2とを参照して、
(処理A)ΔC>L1の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御を行う、
(処理B)ΔC<L2の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御を行う、
(処理C)L2≦ΔC≦L1の場合には、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは予め定められた定数)なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する、
のいずれかの処理を実行するようにしたものである。
【0013】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第2の態様に係る力検出装置において、
印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係が、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域を線形領域と定め、基準レベルL1〜L2の範囲がこの線形領域内に収まるように、基準レベルL1,L2を設定するようにしたものである。
【0014】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、
所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、ΔC>0の場合には印加電圧差ΔVを増加させ、ΔC<0の場合には印加電圧差ΔVを減少させるフィードバック制御を行い、
正の容量差ΔCが得られた時点Qでの当該容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、負の容量差ΔCが得られた時点Rでの当該容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で比例係数kを決定し、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)なる演算
によって、検出値Vαを求めるようにしたものである。
【0015】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))/(ΔC(Q)−ΔC(R))なる演算で得られた値Vαを検出値として出力するようにしたものである。
【0016】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第4または第5の態様に係る力検出装置において、
容量差ΔCの符号が正から負に反転したときに、反転直前の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、反転直後の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、
容量差ΔCの符号が負から正に反転したときに、反転直前の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、反転直後の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とするようにしたものである。
【0017】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係る力検出装置において、
各容量素子を構成する電極のうち、変位電極が共通の接地電位に維持され、駆動手段が、個々の固定電極に所定の駆動電圧を印加することにより、クーロン力を作用させるようにしたものである。
【0018】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係る力検出装置において、
駆動手段が、正側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V1(V1≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、負側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V2(V2≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、を有し、
制御手段が、ΔC>0の場合には、駆動電圧V1を減少させて、駆動電圧V2を増加させ、ΔC<0の場合には、駆動電圧V2を減少させて、駆動電圧V1を増加させる制御を行う機能を有するようにしたものである。
【0019】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る力検出装置において、
検出手段が、静電容量値を電圧に変換するC/V変換回路と、このC/V変換回路で変換されたアナログ検出電圧をデジタル検出信号に変換するA/D変換回路と、を有し、
制御手段が、このデジタル検出信号に基づいて、所定の駆動電圧を示すデジタル駆動信号を出力するデジタル処理装置を有し、
駆動手段が、このデジタル駆動信号をアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路と、このアナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧を電極に印加するドライバ回路と、を有するようにしたものである。
【0020】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第9の態様に係る力検出装置において、
正側容量素子もしくは負側容量素子に、検出手段と駆動手段との双方が接続されており、
検出手段が、カップリング用容量素子を介して正側容量素子もしくは負側容量素子に接続され、
駆動手段が、抵抗素子を介して正側容量素子もしくは負側容量素子に接続されるようにしたものである。
【0021】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第9の態様に係る力検出装置において、
正側容量素子が検出用正側容量素子と駆動用正側容量素子とによって構成されており、
負側容量素子が検出用負側容量素子と駆動用負側容量素子とによって構成されており、
検出手段は、検出用正側容量素子および検出用負側容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、駆動用正側容量素子および駆動用負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにしたものである。
【0022】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第9の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成されており、このプログラムに基づいて、演算および制御が実行されるようにしたものである。
【0023】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第1〜第12の態様に係る力検出装置において、
作用体が板状部材から構成されており、
可撓性接続部がこの板状部材の側面の一部もしくは全部を筐体に対して接続し、
この板状部材の上面に対向して配置された上方基板と、この板状部材の下面に対向して配置された下方基板とが、筐体の一部をなし、
この板状部材の上面および下面に変位電極が形成され、上方基板の下面および下方基板の上面に固定電極が形成されているようにしたものである。
【0024】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第13の態様に係る力検出装置において、
板状部材からなる作用体の重心位置に原点Oをもち、XY平面がこの板状部材の上面に平行となるように、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
X軸の正領域の上方に第1の上方容量素子が配置され、X軸の正領域の下方に第1の下方容量素子が配置され、X軸の負領域の上方に第2の上方容量素子が配置され、X軸の負領域の下方に第2の下方容量素子が配置され、
Y軸の正領域の上方に第3の上方容量素子が配置され、Y軸の正領域の下方に第3の下方容量素子が配置され、Y軸の負領域の上方に第4の上方容量素子が配置され、Y軸の負領域の下方に第4の下方容量素子が配置され、
Z軸の正領域を中心とした位置に第5の上方容量素子が配置され、Z軸の負領域を中心とした位置に第5の下方容量素子が配置され、
第1の上方容量素子および第2の下方容量素子を正側容量素子とし、第1の下方容量素子および第2の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、X軸方向に作用した力の検出が行われ、
第3の上方容量素子および第4の下方容量素子を正側容量素子とし、第3の下方容量素子および第4の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、Y軸方向に作用した力の検出が行われ、
第5の上方容量素子を正側容量素子とし、第5の下方容量素子を負側容量素子とすることにより、Z軸方向に作用した力の検出が行われ、
X軸,Y軸,Z軸の3軸方向に作用した力をそれぞれ独立した検出値として出力するようにしたものである。
【0025】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第14の態様に係る力検出装置において、
第1〜第5の上方容量素子および第1〜第5の下方容量素子のそれぞれが、検出用容量素子と駆動用容量素子との一対の容量素子によって構成されており、
検出手段は、各検出用容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、各駆動用容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにしたものである。
【0026】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第14または第15の態様に係る力検出装置において、
第1の上方容量素子,第1の下方容量素子,第2の上方容量素子,第2の下方容量素子が、いずれもXZ平面に関して対称となる形状をなし、第1の上方容量素子と第2の上方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第1の下方容量素子と第2の下方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第3の上方容量素子,第3の下方容量素子,第4の上方容量素子,第4の下方容量素子が、いずれもYZ平面に関して対称となる形状をなし、第3の上方容量素子と第4の上方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第3の下方容量素子と第4の下方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第5の上方容量素子および第5の下方容量素子が、いずれもXZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となる形状をなし、かつ、第5の上方容量素子と第5の下方容量素子とはXY平面に関して互いに対称となる形状をなし互いに対称となる位置に配置されているようにしたものである。
【0027】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
X軸およびY軸をXY平面上で45°回転させた軸をそれぞれX′軸およびY′軸と定義したときに、X′軸の正領域に平行な橋梁部、X′軸の負領域に平行な橋梁部、Y′軸の正領域に平行な橋梁部、Y′軸の負領域に平行な橋梁部によって、可撓性接続部材が構成されているようにしたものである。
【0028】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第17の態様に係る力検出装置において、
X軸の正領域に配置された第1の翼状部と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部と、原点Oに配置され、この4組の翼状部を相互に接合する中央部と、を有する板状部材によって作用体が構成され、
4本の橋梁部は、中央部に接続されており、
第1の翼状部の上面に第1の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第1の翼状部の下面に第1の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、第2の翼状部の上面に第2の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第2の翼状部の下面に第2の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、第3の翼状部の上面に第3の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第3の翼状部の下面に第3の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、第4の翼状部の上面に第4の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第4の翼状部の下面に第4の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、中央部の上面に第5の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、中央部の下面に第5の下方容量素子を構成する変位電極が形成されているようにしたものである。
【0029】
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第1〜第18の態様に係る力検出装置において、
作用体を導電性材料で構成し、この作用体の表層における個々の固定電極に対する対向領域が個々の変位電極を形成するようにしたものである。
【0030】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第1〜第19の態様に係る力検出装置において、作用した加速度に起因して作用体に生じる力を求めることにより、加速度の検出を行う加速度センサを実現するようにしたものである。
【0031】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第1〜第19の態様に係る力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加し、作用体が周期運動しているときに、力検出装置の力の検出軸方向に加わるコリオリ力を求めることにより、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサを実現するようにしたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の力検出装置では、外力に対する抗力(作用体の位置を基準位置に維持させるための抗力)の大きさを示す印加電圧差ΔVを、粗い精度をもった検出値として利用し、作用体の基準位置からのずれ量を示す容量差ΔCを、密な精度をもった検出値として利用し、ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる和として、力の検出値が求められる。このため、本発明に係る力検出装置は、容量素子を用いた閉ループ式の力検出装置であるにもかかわらず、その検出原理上、作用体の位置を基準位置に正確に維持する必要はなく、そのような正確な制御を行う必要はない。もちろん、粗い制御を行うと、測定時には、作用体が基準位置からずれてしまっているかもしれないが、当該ずれ量は、容量差ΔCとして正確に測定され、粗い精度をもった検出値ΔVに、k・ΔCなる形の補正項として加えられることになる。したがって、比較的単純な制御系を用いながら、高精度な検出結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0034】
<<< §1. 基本的実施形態の主要構造部 >>>
はじめに、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置の主要構造部の説明を行う。図1は、この主要構造部の側断面図である。図示のとおり、この主要構造部は、上方基板100と下方基板200との間に、中間基板300を介挿させた構造を有している。上方基板100および下方基板200は、単純な板状の基板であるが、中間基板300は、図示のとおり、若干複雑な形態をしている。
【0035】
すなわち、中間基板300は、中央部に配置された板状部材310と、その周囲を取り囲む台座320と、両者を接続する4本の橋梁部331〜334(図1には、331,333のみが現れている)によって構成されている。板状部材310は、検出対象となる外力を作用させるための物体であるため、以下、作用体310と呼ぶことにする。ここに示す実施形態は、本発明に係る力検出装置を用いて加速度センサを構成した例であり、作用体310に対して実際に作用する力は、加速度に起因して生じる力ということになる。
【0036】
ここでは、説明の便宜上、図示のとおり、この作用体310の重心位置に座標系の原点Oをとり、図の横方向にX軸(右方が正方向)、縦方向にZ軸(上方が正方向)、紙面に対して垂直方向にY軸(奥が正方向)をとり、XYZ三次元直交座標系を定義する。上方基板100および下方基板200、ならびに作用体310の上下両面は、いずれも、この座標系におけるXY平面に平行な平面をなしており、その中心位置にZ軸が直交することになる。図1は、この主要構造部をXZ平面で切断した側断面図ということになる。
【0037】
図2は、図1に示す主要構造部の上方基板100の下面図である。この上方基板100の下面には、図示のとおり、5枚の電極E11〜E15が形成されている。これらの電極は、上方基板100に固定されているため、ここでは、固定電極と呼ぶことにする。第1の固定電極E11は、X軸の正領域上方に位置し、第2の固定電極E12は、X軸の負領域上方に位置し、第3の固定電極E13は、Y軸の正領域上方に位置し、第4の固定電極E14は、Y軸の負領域上方に位置し、第5の固定電極E15は、Z軸の正領域に位置している。これら各電極の形状および配置は、図示のとおり、XZ平面もしくはYZ平面、またはその双方について対称性を有している。
【0038】
この5枚の固定電極E11〜E15は、互いに電気的に独立している必要がある。そこで、ここに示す実施形態の場合、上方基板100をガラスやセラミックなどの絶縁性材料によって構成し、その表面に、銅やアルミニウムからなる固定電極を形成している。
【0039】
一方、中間基板300の構造は、図3〜図5を参照すれば、容易に理解できよう。図3は、図1に示す主要構造部の中間基板300の上面図であり、この主要構造部から上方基板100を取り去った状態を上方から観察した状態を示している。また、図4は、この主要構造部を切断線4に沿って切った断面を示す横断面図であり、図5は、XY平面に沿って切った断面を示す横断面図である。
【0040】
作用体310は、図1に示すような板状部材であるが、その平面形状は、図5に示すように、扇風機の羽根に似た形状をしている。すなわち、X軸の正領域に配置された第1の翼状部311と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部312と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部313と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部314と、原点Oに配置され、4組の翼状部311〜314を相互に接合する中央部315と、を有している。この作用体310を取り囲むように、フレーム状の台座320が設けられている。
【0041】
図5に示すように、作用体310の大まかな平面外郭形状は正方形をなしているが、X軸およびY軸をXY平面上で45°回転させた軸をそれぞれX′軸およびY′軸と定義すれば、このX′軸およびY′軸に沿った4カ所の部分(正方形の対角線に対応する部分)に切り欠きが設けられている。これは、図4に示すように、この4カ所の切り欠き部分に、それぞれ橋梁部331〜334を配置し、これら4本の橋梁部331〜334によって、中央部315を支持するためである。
【0042】
すなわち、図4に示すように、作用体310は、X′軸の正領域に平行な橋梁部331、X′軸の負領域に平行な橋梁部332、Y′軸の正領域に平行な橋梁部333、Y′軸の負領域に平行な橋梁部334によって支持されることになる。各橋梁部331〜334の内側端は中央部315に接続され、外側端は台座320に接続されている。各橋梁部331〜334は、細長いビーム構造を有しているため、可撓性をもった接続部材として機能する。
【0043】
結局、図1において、検出対象となる力を作用させるための作用体310は、上方基板100,下方基板200,台座320によって構成される筐体内に収容されており、可撓性接続部材(橋梁部331〜334)によって、当該筐体に対して接続されていることになる。作用体310に外力が作用すると、可撓性をもった橋梁部331〜334に撓みが生じ、作用体310は筐体内で変位する。
【0044】
図6は、図1に示す主要構造部の下方基板200の上面図である。この下方基板200の上面には、図示のとおり、5枚の電極E21〜E25が形成されている。これらの電極は、下方基板200に固定されているため、やはり固定電極と呼ぶことにする。第1の固定電極E21は、X軸の正領域下方に位置し、第2の固定電極E22は、X軸の負領域下方に位置し、第3の固定電極E23は、Y軸の正領域下方に位置し、第4の固定電極E24は、Y軸の負領域下方に位置し、第5の固定電極E25は、Z軸の負領域に位置している。これら各電極の形状および配置は、図示のとおり、XZ平面もしくはYZ平面、またはその双方について対称性を有している。
【0045】
この5枚の固定電極E21〜E25も、互いに電気的に独立している必要があるので、ここに示す実施形態の場合、上方基板100と同様に、下方基板200も、ガラスやセラミックなどの絶縁性材料によって構成し、その表面に、銅やアルミニウムからなる固定電極を形成している。実際には、固定電極E11〜E15を含めた上方基板100と、固定電極E21〜E25を含めた下方基板200とは、物理的には全く同一の構成要素であり、図1において、固定電極E11〜E15と固定電極E21〜E25とは、XY平面に関して対称になる。
【0046】
一方、ここに示す実施形態の場合、中間基板300は導電性材料で構成されており(たとえば、シリコン基板や金属板を加工して、中間基板300を構成すればよい)、作用体310は、それ自体が導電性物体となる。したがって、この作用体310に対向するように、固定電極E11〜E15,E21〜E25を配置すると、作用体310の表層における個々の固定電極に対する対向領域が個々の電極として機能し、容量素子が構成されることになる。
【0047】
たとえば、図2に示す固定電極E11〜E14は、それぞれ図3に示す作用体310の翼状部311〜314の上面に対向し、図2に示す固定電極E15は、図3に示す作用体310の中央部315の上面に対向する。したがって、固定電極E11と、翼状部311の上面部分によって、1つの容量素子C11が形成される。また、固定電極E12,E13,E14と、翼状部312,313,314の上面部分によって、それぞれ容量素子C12,C13,C14が形成され、固定電極E15と、中央部315の上面部分によって、容量素子C15が形成される。
【0048】
同様に、図6に示す固定電極E21〜E24は、それぞれ図3に示す作用体310の翼状部311〜314の下面に対向し、図6に示す固定電極E25は、図3に示す作用体310の中央部315の下面に対向する。したがって、固定電極E21と、翼状部311の下面部分によって、1つの容量素子C21が形成される。また、固定電極E22,E23,E24と、翼状部312,313,314の下面部分によって、それぞれ容量素子C22,C23,C24が形成され、固定電極E25と、中央部315の下面部分によって、容量素子C25が形成される。
【0049】
結局、合計10枚の固定電極E11〜E25について、それぞれ作用体310の表層における対向する領域が対向電極として機能し、合計10個の容量素子C11〜C25が形成されることになる。ここでは、この作用体310の表層側に形成される対向電極を変位電極と呼ぶことにする。固定電極E11〜E25は、筐体に固定された電極であるが、これらに対向する変位電極は、作用体310とともに変位する電極ということになる。
【0050】
なお、作用体310を絶縁材料によって構成した場合は、その表面に(10枚の固定電極E11〜E25にそれぞれ対向する部分に)、導電性材料からなる変位電極を別途設けるようにすればよい。ここに示す実施形態のように、作用体310を導電性材料で構成しておけば(少なくとも、その表層部分を導電性材料で構成しておけば)、その表層部分が、それぞれ個々の変位電極として機能するので、個々の変位電極を別体として設ける必要がなくなり、実用上は好ましい。
【0051】
<<< §2. 開ループ式検出の基本原理 >>>
本発明は、基本的には、閉ループ式(サーボ式)の力検出装置に係るものであるが、その検出原理の一部に、開ループ式(オープンループ式)の検出原理も取り込んでいる。そこで、この§2では、図1に示す主要構造部を用いた開ループ式の検出原理を述べておく。
【0052】
まず、X軸を検出軸として、このX軸の正もしくは負方向に作用した力を検出する原理を説明する。図7は、図1に示す主要構造部の作用体310に、X軸正方向の力+Fxが作用した状態を示す側断面図である。実際には、作用体310にX軸正方向への加速度+αxが作用し、この加速度に基づいて、力+Fxが加わることになる。力+Fxの作用により、作用体310は図の右方向へ移動しようとするが、上面近傍を可撓性をもった4本の橋梁部331〜334によって支持されているため、これら橋梁部に撓みが生じることになる。結局、作用体310は、その重心をX軸正方向に移動しつつ、図示のように傾斜する。
【0053】
すると、固定電極E11とこれに対向する変位電極(翼状部311の上面)との距離および固定電極E22とこれに対向する変位電極(翼状部312の下面)との距離は小さくなり、固定電極E12とこれに対向する変位電極(翼状部312の上面)との距離および固定電極E21とこれに対向する変位電極(翼状部311の下面)との距離は大きくなる。そのため、容量素子C11,C22の静電容量値は大きくなり、容量素子C12,C21の静電容量値は小さくなる。このとき、他の容量素子は、その電極間隔が、一部分は小さくなるが、他の一部分は大きくなるので、静電容量値には変化は生じない。したがって、X軸方向に作用した力が、後述するY軸もしくはZ軸方向に作用した力として検出されることはない。
【0054】
一方、作用体310に、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、上記各容量素子の静電容量値の増減は逆転する。したがって、各容量素子C11〜C25の静電容量値を、同じ符号C11〜C25で表せば、容量差ΔC=(C11+C22)−(C12+C21)は、X軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。すなわち、容量差ΔCが正の場合には、X軸正方向に力が作用していることを示し、容量差ΔCが負の場合には、X軸負方向に力が作用していることを示し、容量差ΔCの絶対値は、作用している力の大きさを示すものになる。
【0055】
次に、Y軸を検出軸として、このY軸の正もしくは負方向に作用した力を検出する原理を考えよう。図2〜図6の幾何学的な配置から明らかなように、X軸とY軸は相互に入れ換えても、基本的構造上の変化は生じないので、Y軸に関する検出には、上述したX軸に関する検出原理と全く同じ原理を適用できる。したがって、容量差ΔC=(C13+C24)−(C14+C23)は、Y軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。
【0056】
続いて、Z軸を検出軸として、このZ軸の正もしくは負方向に作用した力を検出する原理を説明する。図8は、図1に示す主要構造部の作用体310に、Z軸正方向の力+Fzが作用した状態を示す側断面図である。実際には、作用体310にZ軸正方向への加速度+αzが作用し、この加速度に基づいて、力+Fzが加わることになる。力+Fzが作用すると、4本の橋梁部331〜334に撓みが生じ,作用体310は図示のように上方向へ移動する。
【0057】
すると、固定電極E15とこれに対向する変位電極(中央部315の上面)との距離は小さくなり、固定電極E25とこれに対向する変位電極(中央部315の下面)との距離は大きくなる。そのため、容量素子C15の静電容量値は大きくなり、容量素子C25の静電容量値は小さくなる。一方、作用体310に、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合は、上記各容量素子の静電容量値の増減は逆転する。
【0058】
したがって、容量差ΔC=C15−C25を求めれば、Z軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。すなわち、上記容量差ΔCが正の場合には、Z軸正方向に力が作用していることを示し、上記容量差ΔCが負の場合には、Z軸負方向に力が作用していることを示し、上記容量差ΔCの絶対値は、作用している力の大きさを示すものになる。
【0059】
なお、Z軸の正もしくは負方向のみに力が作用し、作用体が図の上下方向に変位した場合、前述したX軸方向に関する力の検出値を示す容量差ΔC=(C11+C22)−(C12+C21)や、Y軸方向に関する力の検出値を示す容量差ΔC=(C13+C24)−(C14+C23)は0になる。したがって、Z軸方向に作用した力が、前述したX軸もしくはY軸方向に作用した力として検出されることはない。
【0060】
かくして、作用体310に作用した各座標軸方向の力Fx,Fy,Fz(各座標軸方向の加速度αx,αy,αz)を別個独立して検出することが可能になる。
【0061】
<<< §3. 開ループ式検出回路 >>>
図9は、上述した開ループ式検出を行うための検出回路の一例を示す回路図である。この回路図の左端において、符号「E11〜E25」が付された構成要素は、図2および図6に示した各固定電極E11〜E25であり、符号「310」が付された構成要素は、図1に示す導電性の作用体310である。図示のとおり、この作用体310は接地されており、その表面(個々の変位電極)は接地電位に維持されている(中間基板300全体を導電性材料で構成しておけば、図1に示す台座320を接地すれば、作用体310全体が接地電位に維持される)。既に述べたとおり、各固定電極E11〜E25と、作用体310の対向面(変位電極)とによって、それぞれ容量素子C11〜C25が形成される。図9の左端に示された符号「C11〜C25」は、これらの容量素子を示している。
【0062】
図示のとおり、容量素子C11,C22は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路411に接続されている。C/V変換回路411は、並列接続された容量素子C11,C22の静電容量値(容量素子C11の静電容量値C11と容量素子C22の静電容量値C22との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路421によってデジタル検出信号D(X+)に変換される。
【0063】
同様に、容量素子C12,C21は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路412に接続されている。C/V変換回路412は、並列接続された容量素子C12,C21の静電容量値(容量素子C12の静電容量値C12と容量素子C21の静電容量値C21との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路422によってデジタル検出信号D(X−)に変換される。
【0064】
ここで、X軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fxを受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子を正側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C11,C22は、いずれも正側容量素子であり、デジタル検出信号D(X+)は、正側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0065】
逆に、X軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fxを受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子を負側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C12,C21は、いずれも負側容量素子であり、デジタル検出信号D(X−)は、負側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0066】
制御ユニット500は、ここに示す例の場合、マイクロコンピュータによって構成されており、デジタル検出信号D(X+)とD(X−)との差を求める演算「D(αx)=D(X+)−D(X−)」を行う。演算で得られた差D(αx)は、結局、容量差ΔC=(C11+C22)−(C12+C21)を示すものになり、これは上述したとおり、X軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。そこで、制御ユニット500は、得られた差D(αx)をX軸方向に作用した力の検出値として出力する。
【0067】
一方、容量素子C13,C24は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路413に接続されている。C/V変換回路413は、並列接続された容量素子C13,C24の静電容量値(容量素子C13の静電容量値C13と容量素子C24の静電容量値C24との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路423によってデジタル検出信号D(Y+)に変換される。
【0068】
同様に、容量素子C14,C23は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路414に接続されている。C/V変換回路414は、並列接続された容量素子C14,C23の静電容量値(容量素子C14の静電容量値C14と容量素子C23の静電容量値C23との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路424によってデジタル検出信号D(Y−)に変換される。
【0069】
ここで、Y軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fyを受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子を正側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C13,C24は、いずれも正側容量素子であり、デジタル検出信号D(Y+)は、正側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0070】
逆に、Y軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fyを受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子を負側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C14,C23は、いずれも負側容量素子であり、デジタル検出信号D(Y−)は、負側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0071】
制御ユニット500は、デジタル検出信号D(Y+)とD(Y−)との差を求める演算「D(αy)=D(Y+)−D(Y−)」を行う。演算で得られた差D(αy)は、結局、容量差ΔC=(C13+C24)−(C14+C23)を示すものになり、これは上述したとおり、Y軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。そこで、制御ユニット500は、得られた差D(αy)をY軸方向に作用した力の検出値として出力する。
【0072】
また、容量素子C15の固定電極はC/V変換回路415に接続されている。C/V変換回路415は、容量素子C15の静電容量値C15をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路425によってデジタル検出信号D(Z+)に変換される。
【0073】
同様に、容量素子C25の固定電極はC/V変換回路416に接続されている。C/V変換回路416は、容量素子C25の静電容量値C25をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路426によってデジタル検出信号D(Z−)に変換される。
【0074】
ここで、Z軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fzを受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子を正側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C15は正側容量素子であり、デジタル検出信号D(Z+)は、正側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0075】
逆に、Z軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fzを受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子を負側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C25は負側容量素子であり、デジタル検出信号D(Z−)は、負側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0076】
制御ユニット500は、デジタル検出信号D(Z+)とD(Z−)との差を求める演算「D(αz)=D(Z+)−D(Z−)」を行う。演算で得られた差D(αz)は、結局、容量差ΔC=C15−C25を示すものになり、これは上述したとおり、Z軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。そこで、制御ユニット500は、得られた差D(αz)をZ軸方向に作用した力の検出値として出力する。
【0077】
かくして、図1に示す主要構造部に、図9に示す開ループ検出回路を付加すれば、開ループ式検出を行う力検出装置を実現することができる。
【0078】
<<< §4. 閉ループ式検出の基本原理 >>>
さて、§2で説明した開ループ式検出では、作用体310に対する変位制御は全く行わず、外力によって生じた作用体310の変位をそのまま力の検出値として出力することになる。しかしながら、この開ループ式力検出には、検出対象となる力が比較的小さく、作用体の変位が線形領域内に維持されている限り正確な検出値が得られるが、検出対象となる力が大きくなると、作用体の変位が線形領域を外れ、検出精度が低下する問題があることは、既に述べたとおりである。
【0079】
図10は、図1に示す主要構造部の作用体310に作用した加速度αと変位dとの関係を示すグラフである。作用体310に作用した加速度αと、この加速度αに起因して作用体310に加わる力Fとの間には、作用体310の質量をmとして、F=mαなる関係が成り立つので、作用体310の質量mが一定である限り、力Fは加速度αに比例した値になり、実質的に、力Fは加速度αと等価な物理量として取り扱うことができる。
【0080】
そして、作用体310に力Fが作用すると、可撓性接続部材として機能する4本の橋梁部331〜334が撓みを生じ、作用体310が変位を生じることになる。ここで、仮に橋梁部331〜334が完全にバネとして機能し、その伸びがフックの法則に従うとしても、図7や図8に示す変位状態を見ればわかるとおり、作用体310の各座標軸方向の変位は、橋梁部331〜334の伸びに線形対応するものではない。したがって、所定の検出軸方向に作用した加速度αと、この加速度αに起因した力Fによって作用体310に生じる当該検出軸方向の変位dとの間には、正確な線形関係が維持されるものではない。
【0081】
ただ、図10のグラフに示すように、加速度αの絶対値が小さい領域、別言すれば、変位dの絶対値が小さい領域では、所定の検出精度において、加速度αと変位dとの間に線形関係がある取り扱いを行うことができる。図10に示す例の場合、加速度αが、α2<α<α1の範囲内(α2は負の加速度)、別言すれば、変位dが、d2<d<d1の範囲内(d2は負の変位)が、線形領域(線形関係があるとする取り扱いを行うことができる領域)となっている。したがって、図示の例では、α2<α<α1の範囲内の加速度αを検出する上では、§2で説明した開ループ式検出を適用しても、所定の検出精度をもった検出結果を得ることができるが、加速度αの絶対値がそれ以上大きくなると、非線形領域に入るため、検出精度は低下せざるを得ない。
【0082】
容量素子を利用して作用体の変位検出を行うタイプの装置では、更に、別な問題が加わってくる。すなわち、容量素子の静電容量値は、電極間隔に反比例するため、容量差ΔCと変位dとの間にも、線形関係は得られない。ただ、変位dが小さい領域では、近似的に両者間に線形関係があるとする取り扱いを行うことができる。
【0083】
このような事情から、図9に示す制御ユニット500から出力される検出値D(αx),D(αy),D(αz)は、加速度の値αx,αy,αzが大きくなればなるほど、誤差を含んだ不正確な値にならざるを得ない。
【0084】
このような問題を解消するために、前掲の特許文献6などには、閉ループ式(サーボ式)検出の手法が開示されている。この閉ループ式の検出では、作用体310の変位が常に0となるようなフィードバック制御が行われる。すなわち、外力によって作用体310が変位しようとした場合、当該外力に対する抗力を作用させて作用体310の位置を基準位置に維持させる制御が行われる。そして、作用体を基準位置に維持させるための抗力発生に要した電気エネルギーの大きさが、作用した外力の大きさとして検出される。
【0085】
たとえば、図10に示すグラフにおいて、加速度α1が作用した場合、フィードバック制御を行わないと、作用体310は変位d1を生じる位置まで移動することになる。閉ループ式の検出では、この場合、作用体310を基準位置(変位d=0の位置)まで押し戻す抗力を加えるフィードバック制御を行い、作用体310が基準位置を維持するようにし、そのとき加えた抗力を測定し、この抗力の大きさを、作用した加速度α1の大きさを示す検出値として出力することになる。
【0086】
<<< §5. 閉ループ式検出回路 >>>
図11は、このような閉ループ式の検出を行うために利用されるフィードバック制御回路の基本構成を示す回路図である。この図11では、説明の便宜上、図の縦方向を唯一の検出軸とした一次元の力検出装置の例を示してある。図の左側には、導電性の作用体310と、上方に設けられた固定電極E1と、下方に設けられた固定電極E2とが描かれている。導電性の作用体310は接地電位に維持されており、固定電極E1と作用体310の上面部分(変位電極)とによって、正側容量素子C1が構成され、固定電極E2と作用体310の下面部分(変位電極)とによって、負側容量素子C2が構成されている。
【0087】
ここで、正側容量素子C1は、作用体310に固定された変位電極(実際には、作用体310の上面部分)と筐体に固定された固定電極E1とによって構成され、作用体310が検出軸の正方向(図11の上方向)への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向(図11の下方向)への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子である。また、負側容量素子C2は、作用体310に固定された変位電極(実際には、作用体310の下面部分)と筐体に固定された固定電極E2とによって構成され、作用体310が検出軸の正方向(図11の上方向)への力を受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向(図11の下方向)への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子である。
【0088】
図11において、作用体310の中心に示されている点Gは、この作用体の重心を示しており、図には、この重心Gが基準位置d0に維持されている状態が示されている。基準位置d0は、この力検出装置に何ら外力が作用していない状態における作用体の重心Gの位置であり、ここに示す実施形態の場合、固定電極E1,E2の中間点に基準位置d0が設定されている。したがって、作用体310(の重心G)が、この基準位置d0にある状態では、正側容量素子C1の静電容量値C1と負側容量素子C2の静電容量値C2とは等しくなり、容量差をΔC=C1−C2と定義した場合、ΔC=0になる。
【0089】
図1に示す主要構造部は、X,Y,Zの3軸をそれぞれ独立した検出軸とする三次元力検出装置に利用されるものであるが、各座標軸方向の検出原理は、いずれも図11に示す一次元力検出装置の検出原理と同じである。
【0090】
すなわち、X軸を検出軸とする場合、図9の回路図でも説明したとおり、容量素子C11,C22が正側容量素子として図11の容量素子C1に対応し、容量素子C12,C21が負側容量素子として図11の容量素子C2に対応する。図1に示す主要構造部の場合、X軸方向の力が作用した場合、作用体310は図7に示すように傾斜することになるが、X軸正方向への力を受けると正側容量素子の電極間隔が狭くなり、負側容量素子の電極間隔が広くなり、X軸負方向への力を受けると、正側容量素子の電極間隔が広くなり、負側容量素子の電極間隔が狭くなる、という基本原理に変わりはない。
【0091】
一方、Y軸を検出軸とする場合、図9の回路図でも説明したとおり、容量素子C13,C24が正側容量素子として図11の容量素子C1に対応し、容量素子C14,C23が負側容量素子として図11の容量素子C2に対応する。この場合も、やはりY軸正方向への力を受けると正側容量素子の電極間隔が狭くなり、負側容量素子の電極間隔が広くなり、Y軸負方向への力を受けると、正側容量素子の電極間隔が広くなり、負側容量素子の電極間隔が狭くなる、という基本原理に変わりはない。
【0092】
また、Z軸を検出軸とする場合、図9の回路図でも説明したとおり、容量素子C15が正側容量素子として図11の容量素子C1に対応し、容量素子C25が負側容量素子として図11の容量素子C2に対応する。この場合も、やはりZ軸正方向への力を受けると正側容量素子の電極間隔が狭くなり、負側容量素子の電極間隔が広くなり、Z軸負方向への力を受けると、正側容量素子の電極間隔が広くなり、負側容量素子の電極間隔が狭くなる、という基本原理に変わりはない。
【0093】
図11に示すとおり、固定電極E1はカップリング用容量素子C41を介してC/V変換回路41に接続されている。C/V変換回路41は、容量素子C1の静電容量値(同じ符号C1で示す)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路42によってデジタル検出信号D(+)に変換される。同様に、固定電極E2はカップリング用容量素子C45を介してC/V変換回路45に接続されている。C/V変換回路45は、容量素子C2の静電容量値(同じ符号C2で示す)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路46によってデジタル検出信号D(−)に変換される。
【0094】
制御ユニット50は、ここに示す例の場合、マイクロコンピュータによって構成されており、デジタル検出信号D(+)とD(−)との差を求める演算を行う。求めた差は、容量素子C1の静電容量値C1と容量素子C2の静電容量値C2との差、すなわち、容量差ΔC=C1−C2を示すものになる。この容量差ΔCは符号をもった量であり、図11に示す例のように、図の上下方向に検出軸を設定した場合であれば、ΔC>0は、作用体310が基準位置d0よりも上方に変位していることを示し、ΔC<0は、作用体310が基準位置d0よりも下方に変位していることを示し、ΔC=0は、作用体310が基準位置d0にあることを示す(図1に示す主要構造部において、X軸もしくはY軸を検出軸とした場合、ΔCは作用体310の重心GのX軸もしくはY軸に関する変位を示すことになる)。
【0095】
また、制御ユニット50は、この容量差ΔCに基づいて、所定の駆動電圧を示すデジタル駆動信号E(+),E(−)を出力する制御処理を行う。図示のとおり、デジタル駆動信号E(+)は、これをアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路43に与えられ、変換後のアナログ駆動信号は、ドライバ回路44に与えられる。ドライバ回路44は、このアナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧V1を固定電極E1に印加する。同様に、デジタル駆動信号E(−)は、これをアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路47に与えられ、変換後のアナログ駆動信号は、ドライバ回路48に与えられる。ドライバ回路48は、このアナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧V2を固定電極E2に印加する。
【0096】
結局、図11に示す回路において、C/V変換回路41およびA/D変換回路42は、正側容量素子C1の静電容量値C1をデジタル検出信号D(+)として検出する検出手段として機能し、D/A変換回路43およびドライバ回路44は、正側容量素子C1を構成する電極間に駆動電圧V1を印加してクーロン力を作用させる駆動手段として機能する。同様に、C/V変換回路45およびA/D変換回路46は、負側容量素子C2の静電容量値C2をデジタル検出信号D(−)として検出する検出手段として機能し、D/A変換回路47およびドライバ回路48は、負側容量素子C2を構成する電極間に駆動電圧V2を印加してクーロン力を作用させる駆動手段として機能する。
【0097】
ここに示す例の場合、各容量素子C1,C2の変位電極(作用体310の表面)が共通の接地電位に維持されているため、駆動手段は、個々の固定電極E1,E2にそれぞれ駆動電圧V1,V2を印加することにより、個々の容量素子C1,C2を構成する電極間にクーロン力を作用させるための電圧V1,V2を生じさせることができる。もちろん、原理的には、変位電極は必ずしも接地電位に固定する必要はない。各容量素子C1,C2を構成する電極間に何らかの電位差を生じさせてクーロン力を作用させることができれば、個々の変位電極や個々の固定電極の電位は任意に設定することができる。ただ、実用上は、図11に示す例のように、各変位電極を共通の接地電位に固定し、個々の固定電極に、それぞれ必要な電圧を印加するような回路を用いるのが好ましい。
【0098】
なお、図11に示す回路において、検出手段41,42,45,46をカップリング用容量素子C41,C45を介して容量素子C1,C2に接続し、駆動手段43,44,47,48を抵抗素子R44,R48を介して容量素子C1,C2に接続しているのは、検出手段を構成する回路と駆動手段を構成する回路とを電気的に分離するためである。すなわち、正側容量素子C1および負側容量素子C2には、それぞれ検出手段と駆動手段との双方が接続されることになるが、検出手段を、カップリング用容量素子C41,C45を介して正側容量素子C1,負側容量素子C2に接続し、駆動手段を、抵抗素子R44,R48を介して正側容量素子C1,負側容量素子C2に接続することにより、検出手段は、駆動手段が印加した駆動電圧V1,V2とは無関係に、容量素子C1,C2の静電容量値を測定することができ、また、駆動手段は、検出手段の検出動作とは無関係に、固定電極E1,E2に所望の駆動電圧V1,V2を印加することができる。
【0099】
制御ユニット50は、容量差ΔC=C1−C2(具体的には、デジタル検出信号の差D(+)−D(−))に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0100】
容量差ΔCは、「ΔC=C1(正側容量素子の静電容量値)−C2(負側容量素子の静電容量値)」として定義される符号をもった量であるから、作用体310が検出軸正方向に変位するとΔC>0になり、検出軸負方向に変位するとΔC<0になる。このような点で、容量差ΔCの符号は検出軸の符号と一致し、ΔCが正なら検出軸正方向への変位を示し、ΔCが負なら検出軸負方向への変位を示すことになる。
【0101】
一方、印加電圧差ΔVも、「ΔV=V2(負側容量素子の電極間に印加する電圧)−V1(正側容量素子の電極間に印加する電圧)」として定義される符号をもった量であり、作用体310に対して加える力の方向を示す量になる。すなわち、印加電圧差ΔV>0の場合には、V2>V1ということになるので、図11において、下方に向けたクーロン力の方が上方に向けたクーロン力よりも大きくなり、作用体310には、下方へ移動させる力が加わることになる。逆に、印加電圧差ΔV<0の場合には、V1>V2ということになるので、図11において、上方に向けたクーロン力の方が下方に向けたクーロン力よりも大きくなり、作用体310には、上方へ移動させる力が加わることになる。このような点で、印加電圧差ΔVの符号は検出軸の符号と逆になり、ΔVが正なら検出軸負方向への力が加えられることを示し、ΔVが負なら検出軸正方向への力が加えられることを示すことになる。
【0102】
このように、本願における容量差ΔCおよび印加電圧差ΔVは、いずれも正および負の符号をもった量であり、これらの量についての「増加」もしくは「減少」とは、その絶対値の増減を意味するものではなく、符号を考慮した量の増減を意味するものである。たとえば、「+3から+8への変化は増加」であるが、「+3から−8への変化は減少」である。
【0103】
制御ユニット50によるフィードバック制御は、上述したように、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させる制御になる。これは、図11における作用体310が上方に変位していた場合に、下方へ移動させる力を加える制御ということになる。逆に、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させる制御になるが、これは、図11における作用体310が下方に変位していた場合に、上方へ移動させる力を加える制御ということになる。結局、制御ユニット50によるフィードバック制御は、作用体310が外力の作用を受けて基準位置d0から変位しようとしたら、作用体310を基準位置d0に維持させるための抗力を加える制御ということになる。
【0104】
なお、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させる制御としては、電圧V2を増加させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(−)を増加させる制御)を行ってもよいし、逆に、電圧V1を減少させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(+)を減少させる制御)を行ってもよい。同様に、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させる制御としては、電圧V2を減少させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(−)を減少させる制御)を行ってもよいし、逆に、電圧V1を増加させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(+)を増加させる制御)を行ってもよい。
【0105】
このように、図11に示す駆動手段43,44は、正側容量素子C1を構成する固定電極E1に駆動電圧V1(V1≧0)を印加して、作用体310に対して図の上方へのクーロン引力を作用させる機能を有し、駆動手段47,48は、負側容量素子C2を構成する固定電極E2に駆動電圧V2(V2≧0)を印加して、作用体310に対して図の下方へのクーロン引力を作用させる機能を有している。そして、上述したように、駆動電圧V1,V2を同時に作用させることも可能である。この場合、作用体310は、図の上下両方向に作用するクーロン力によって綱引きされることになり、その差し引きの結果として、より大きな駆動電圧が供給された固定電極に向かう方向の力が加わることになる。
【0106】
このように、上下両方向にクーロン力を作用させて綱引きさせると、エネルギー効率は低下するが、より安定した制御系を実現できる。制御ユニット50は、ΔC>0の場合には、駆動電圧V1を減少させて(但し、下限は0)、駆動電圧V2を増加させ、ΔC<0の場合には、駆動電圧V2を減少させて(但し、下限は0)、駆動電圧V1を増加させる制御を行うようにすればよい。
【0107】
制御ユニット50が行う上述の制御は、作用体310に作用している外力に等しい抗力を逆向きに加え、変位(容量差ΔC)が常に0になるようにする制御ということになる。したがって、このような制御が正確に行われれば、印加電圧差ΔVの大きさ(加えた抗力の大きさ)は、作用した外力の大きさを示すことになり、印加電圧差ΔVの符号は、作用した外力の向きを示すことになる。そこで、制御ユニット50は、この印加電圧差ΔVを、作用した外力(この例の場合、検出軸方向の加速度α)のデジタル検出値D(α)として出力することができる。以上が、この図11に示す閉ループ式検出回路における制御ユニット50の基本的な動作である(実際には、§7,§8で述べるように、本発明では、若干異なる動作が行われる)。
【0108】
続いて、この図11に示す一次元の力検出装置用の検出回路を、三次元の力検出装置に適用した例を図12に示す。図12は、図1に示す主要構造部に適用可能な閉ループ式検出回路の一例を示す回路図であり、基本的には、図9に示す開ループ式検出回路に、駆動手段を付加した形態をとる。そこで、以下、図9に示す回路との相違点のみを述べることにする。
【0109】
まず、X軸を検出軸とする正側容量素子C11,C22の固定電極E11,E22に、デジタル駆動信号E(X+)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路431およびドライバ回路441が付加され、負側容量素子C12,C21の固定電極E12,E21に、デジタル駆動信号E(X−)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路432およびドライバ回路442が付加されている。
【0110】
ここで、検出手段と駆動手段とを回路上で分離するために、固定電極E11,E22は、カップリング用容量素子C411を介してC/V変換回路411に接続され、また、抵抗素子R441を介してドライバ回路441に接続されている。同様に、固定電極E12,E21は、カップリング用容量素子C412を介してC/V変換回路412に接続され、また、抵抗素子R442を介してドライバ回路442に接続されている。
【0111】
一方、Y軸を検出軸とする正側容量素子C13,C24の固定電極E13,E24に、デジタル駆動信号E(Y+)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路433およびドライバ回路443が付加され、負側容量素子C14,C23の固定電極E14,E23に、デジタル駆動信号E(Y−)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路434およびドライバ回路444が付加されている。
【0112】
ここで、検出手段と駆動手段とを回路上で分離するために、固定電極E13,E24は、カップリング用容量素子C413を介してC/V変換回路413に接続され、また、抵抗素子R443を介してドライバ回路443に接続されている。同様に、固定電極E14,E23は、カップリング用容量素子C414を介してC/V変換回路414に接続され、また、抵抗素子R444を介してドライバ回路444に接続されている。
【0113】
更に、Z軸を検出軸とする正側容量素子C15の固定電極E15に、デジタル駆動信号E(Z+)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路435およびドライバ回路445が付加され、負側容量素子C25の固定電極E25に、デジタル駆動信号E(Z−)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路436およびドライバ回路446が付加されている。
【0114】
ここで、検出手段と駆動手段とを回路上で分離するために、固定電極E15は、カップリング用容量素子C415を介してC/V変換回路415に接続され、また、抵抗素子R445を介してドライバ回路445に接続されている。同様に、固定電極E25は、カップリング用容量素子C416を介してC/V変換回路416に接続され、また、抵抗素子R446を介してドライバ回路446に接続されている。
【0115】
なお、この実施形態の場合、制御ユニット500は、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成されており、当該プログラムに基づいて、所定の制御処理を実行する。
【0116】
図12に示す制御ユニット500が行う基本的な処理は、図11に示す制御ユニット50が行う基本的な処理と同じである。すなわち、X軸を検出軸とする検出処理として、X軸に関する容量差ΔCを、デジタル検出信号D(X+),D(X−)を用いて、「ΔC=D(X+)−D(X−)」なる演算によって求め、ΔC>0の場合には、X軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、X軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0117】
ここで、X軸に関する印加電圧差ΔVは、デジタル駆動信号E(X+),E(X−)を用いて、「ΔV=E(X−)−E(X+)」なる演算で定まる量になるので、前述したとおり、E(X+),E(X−)を増減することにより任意に設定できる。そして、このX軸に関する印加電圧差ΔVを、作用したX軸方向の外力(この例の場合、X軸方向の加速度αx)のデジタル検出値D(αx)として出力できる(実際には、§7,§8で述べるように、本発明における検出値は若干異なる方法で決定される)。
【0118】
同様に、Y軸を検出軸とする検出処理として、Y軸に関する容量差ΔCを、デジタル検出信号D(Y+),D(Y−)を用いて、「ΔC=D(Y+)−D(Y−)」なる演算によって求め、ΔC>0の場合には、Y軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、Y軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0119】
ここで、Y軸に関する印加電圧差ΔVは、デジタル駆動信号E(Y+),E(Y−)を用いて、「ΔV=E(Y−)−E(Y+)」なる演算で定まる量になるので、前述したとおり、E(Y+),E(Y−)を増減することにより任意に設定できる。そして、このY軸に関する印加電圧差ΔVを、作用したY軸方向の外力(この例の場合、Y方向の加速度αy)のデジタル検出値D(αy)として出力できる(実際には、§7,§8で述べるように、本発明における検出値は若干異なる方法で決定される)。
【0120】
更に、Z軸を検出軸とする検出処理として、Z軸に関する容量差ΔCを、デジタル検出信号D(Z+),D(Z−)を用いて、「ΔC=D(Z+)−D(Z−)」なる演算によって求め、ΔC>0の場合には、Z軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、Z軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0121】
ここで、Z軸に関する印加電圧差ΔVは、デジタル駆動信号E(Z+),E(Z−)を用いて、「ΔV=E(Z−)−E(Z+)」なる演算で定まる量になるので、前述したとおり、E(Z+),E(Z−)を増減することにより任意に設定できる。そして、このZ軸に関する印加電圧差ΔVを、作用したZ軸方向の外力(この例の場合、Z方向の加速度αz)のデジタル検出値D(αz)として出力できる(実際には、§7,§8で述べるように、本発明における検出値は若干異なる方法で決定される)。
【0122】
<<< §6. 従来の閉ループ式検出方法 >>>
上述した§5では、図11に示す制御ユニット50による検出軸方向に作用した力の検出処理および図12に示す制御ユニット500によるX軸,Y軸,Z軸のそれぞれの方向に作用した力の検出処理について説明した。この§5で説明した検出方法は、従来から知られている一般的な閉ループ式検出方法に基づくものであり、作用した外力の大小にかかわらず、常に変位0の状態で測定を行うことを前提としている。そのため、§2で述べた開ループ式検出方法において問題となった非線形性に起因する検出誤差は解消することになる。
【0123】
しかしながら、正確な検出値を得るためには、作用体を常に基準位置に正確に維持する正確な制御が必要になり、検出精度は、フィードバック制御の精度に依存したものになる。ここでは、まず、この点を具体的なグラフを用いて説明しよう。
【0124】
図13は、従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第1のグラフである。ここでは、説明の便宜上、図11に示す制御ユニット50による検出軸方向に作用した力の検出処理を例にとって説明を行う。この図13に示すグラフの縦軸は容量差ΔC(単位fF)、横軸は印加電圧差ΔV(単位Volt)を示している。
【0125】
容量差ΔCは、既に述べたとおり、正側容量素子C1の静電容量値C1と、負側容量素子C2の静電容量値C2との差「ΔC=C1−C2」で定義される符号をもった量であり、作用体の基準位置からの変位を示している。このグラフにおいて、ΔC=0の位置は、作用体が基準位置d0にある状態を示し、ΔC>0の領域は作用体が基準位置d0より上方に変位している状態を示し、ΔC<0の領域は作用体が基準位置d0より下方に変位している状態を示す。
【0126】
一方、印加電圧差ΔVは、既に述べたとおり、正側容量素子C1を構成する電極間に印加する電圧V1と負側容量素子C2を構成する電極間に印加する電圧V2とについて、「ΔV=V2−V1」なる式で定義される差であり、やはり符号をもった量になる。この印加電圧差ΔVは、作用体に加えている抗力(クーロン力)の向きと大きさとを示す。このグラフにおいて、ΔV=0の位置は、作用体に何ら抗力を加えていない状態を示し、ΔV>0の領域は作用体に負側容量素子の電極間隔を狭くさせる抗力が作用している状態を示し、ΔV<0の領域(図13には示されていない)は作用体に正側容量素子の電極間隔を狭くさせる抗力が作用している状態を示す。
【0127】
いま、作用体に何ら抗力を加えない場合に、容量差ΔC=4fFが検出される場合を考えてみよう。これは、図11に示す例において、作用体310に対して、上方向に所定の加速度α1が作用した結果、作用体310が上方向に変位した場合に対応する。§2で述べた開ループ式検出を行うのであれば、容量差ΔCを検出し、これを作用した加速度α1を示す検出値として出力することになる。この場合、4fFに対応する値が加速度α1を示す検出値として出力される。しかしながら、この開ループ式検出では、加速度α1の絶対値が大きくなればなるほど、非線形性に基づく誤差が大きくなることは、既に述べたとおりである。
【0128】
そこで、閉ループ式検出では、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われる。図示の例の場合、ΔC>0であるから、ΔVを増加させる制御(V2を増加させるか、V1を減少させる制御)が行われることになる。たとえば、加速度α1が作用している環境において、印加電圧を、初期状態「V1=0,V2=0」から、V1=0を維持しつつ、V2を徐々に増加させてゆくと、ΔVは0から徐々に増加してゆくことになる。その結果、図11に示す例において、作用体310に対する下方向への抗力が増加してゆき、作用体310の位置は下方向へ修正されることになる。これにより、容量差ΔCは減少してゆく。
【0129】
このように、ΔVを0から徐々に増加させてゆくと、図13のグラフG1に示すように、容量差ΔCは4fFから徐々に減少してゆき、やがて点P1に到達し、ΔC=0になる。ここで、もし、ΔVを更に増加させてゆくと、容量差ΔCはグラフG1に示すとおり負の値をとることになる。もちろん、容量差ΔCが負の値になった場合には、今度はΔVを減少させる制御が行われることになるので、容量差ΔCは徐々に増加してゆき、結局、点P1に到達することになる。
【0130】
ここで、点P1に到達した時点、すなわち、ΔC=0になった時点における印加電圧差ΔVを、図示のとおりVα1とすれば、このVα1は加速度α1に起因して生じた力を示す検出値になる。なぜなら、ΔC=0になった時点で、作用体310は基準位置d0に位置することになるので、この状態において、加速度α1に起因して生じた力と、印加電圧差Vα1に起因して生じた抗力とが拮抗しているからである。
【0131】
結局、制御ユニット50が行うフィードバック制御は、図13のグラフG1に沿って、制御系を点P1の状態へもってゆく処理ということになり、制御系が点P1の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα1)が、作用した加速度α1の検出値として出力されることになる。そこで、以下、点P1を検出点と呼ぶことにする。
【0132】
なお、ここでは説明の便宜上、グラフG1を直線で示しているが、クーロン力は印加電圧の2乗に比例する量であり、また、加えたクーロン力と変位との間にも必ずしも線形関係は維持されず、更に変位と静電容量値との間にも線形関係は成り立たないので、実際には、グラフG1は直線にはならない(後述するグラフG2〜G4についても同様)。
【0133】
図14は、図11に示す例において、作用体310に対して、上方向に所定の加速度α2(α1よりも絶対値が大きい加速度)が作用しているときに、制御ユニット50によって行われるフィードバック制御動作を示すグラフである。図示のとおり、ΔV=0におけるグラフG2の容量差はΔC=5fFになっているが、これは作用した加速度α2の絶対値が、図13に示す場合の加速度α1の絶対値よりも大きいことを示している。
【0134】
この場合も、制御ユニット50によって、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われ、制御系を検出点P2の状態へもってゆく処理がなされる。そして、制御系が検出点P2の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα2)が、作用した加速度α2の検出値として出力される。この例では、α2>α1であるので、Vα2>Vα1となり、図13に示す検出点P1に比べて、図14に示す検出点P2は、横軸上でより右側に位置する点になっている。
【0135】
一方、図15は、図11に示す例において、作用体310に対して、下方向に所定の加速度α3(α1と絶対値が等しく向きが逆の加速度)が作用しているときに、制御ユニット50によって行われるフィードバック制御動作を示すグラフである。下方向の加速度α3は、検出軸負方向を向いた加速度であるので、α3は負の値をとり、ΔV=0におけるグラフG3の容量差はΔC=−4fFになる。
【0136】
この場合も、制御ユニット50によって、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われ、制御系を検出点P3の状態へもってゆく処理がなされる。ただ、ΔV=0における容量差ΔCが負の値をとっているので、制御系を検出点P3の状態へもってゆくためには、印加電圧差ΔVも負にする必要がある(すなわち、V1>V2にする必要がある)。そして、制御系が検出点P3の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα3)が、作用した加速度α3の検出値として出力される。ここで、Vα3は負の値をとる。
【0137】
更に、図16は、図11に示す例において、作用体310に対して、下方向に所定の加速度α4(α2と絶対値が等しく向きが逆の加速度)が作用しているときに、制御ユニット50によって行われるフィードバック制御動作を示すグラフである。下方向の加速度α4は、検出軸負方向を向いた加速度であるので、α4は負の値をとり、ΔV=0におけるグラフG3の容量差はΔC=−5fFになる。
【0138】
この場合も、制御ユニット50によって、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われ、制御系を検出点P4の状態へもってゆく処理がなされる。やはり、ΔV=0における容量差ΔCが負の値をとっているので、制御系を検出点P4の状態へもってゆくためには、印加電圧差ΔVも負にする必要がある。そして、制御系が検出点P4の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα4)が、作用した加速度α4の検出値として出力される。ここで、Vα4は負の値をとる。
【0139】
このように、従来の閉ループ式検出方法は、フィードバック制御により、常に作用体の変位が0の状態で測定を行うことが前提となっている。たとえば、図13〜図16のグラフG1〜G4に示す具体的な事例の場合、常に、制御系を検出点P1〜P4の状態にもってゆき、この状態での印加電圧差Vα1〜Vα4を検出値として出力することが前提となっている。別言すれば、理想的なフィードバック制御が行われなかったために、制御系を検出点P1〜P4の位置に正確にもってゆくことができなかった場合(ΔCが正確に0にはならなかった場合)、検出値として出力された印加電圧差ΔVは誤差を含んだものになる。このように、検出精度は、フィードバック制御の精度に依存したものになってしまう。
【0140】
もちろん、図11に示す制御ユニット50や、図12に示す制御ユニット500に、より高精度のフィードバック制御機能をもたせておけば、より高精度の検出値を得ることは可能である。しかしながら、高精度のフィードバック制御機能を実現するためには、より高度で複雑な制御系が必要になり、それだけ製造コストも高騰せざるを得ない。一般に、フィードバック制御系において、性能を高めるために制御ゲインを上げると、制御系が発振する弊害が知られている。このため、安定した制御系を設計するためには、高度の技術が必要とされ、また、複雑なハードウエアが要求される。
【0141】
本発明は、上述したような容量素子を用いた閉ループ式の力検出装置において、比較的単純な制御系を用いながら、高精度な検出結果を得ることができる技術を提供することを目的とするものである。続いて、本発明の基本概念を、§7および§8で説明する。
【0142】
<<< §7. 本発明の閉ループ式検出方法(その1) >>>
上述したとおり、従来の閉ループ式検出方法は、「作用体の変位が0の状態で測定を行う」ことが前提となっているため、検出精度を高めるためには、制御精度も高める必要が生じる。これに対して、本発明の基本概念は、「作用体の変位が0の状態で測定を行う」という前提には捕われない検出を行う点にある。この§7で述べる第1の方法では、「作用体の変位が、必要とされる検出精度に応じた所定の線形領域内であれば測定を行う」という方針をとる。したがって、従来の閉ループ式検出方法のように、作用体の位置を正確に基準位置に維持させるような高精度な制御を行う必要がなくなり、比較的単純な制御系を用いた装置を実現できる。
【0143】
もちろん、作用体の位置が基準位置からずれている状態では、印加電圧差ΔVは正確な検出値にはならないので、このときの印加電圧差ΔVをそのまま検出値として出力するのは不適切である。そこで、本発明では、このときの印加電圧差ΔVと容量値ΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを作用体に作用した力を示す検出値として出力するのである。ここで、ΔVは、検出値の粗い成分に相当し、k・ΔCは、検出値の密な成分に相当する。kは、印加電圧のスケールと容量値のスケールとを調整する比例係数である。
【0144】
続いて、図17〜図20のグラフを参照しながら、本発明の基本原理を、具体例に即して説明する。図17〜図20に示すグラフG1〜G4は、図13〜図16に示すグラフG1〜G4に対応するものであり、図11に示す例において、作用体310に加速度α1,α2,α3,α4が作用しているときの本発明に係る検出原理を示している。
【0145】
まず、図17を参照しながら、加速度α1が作用しているときの検出原理を説明する。加速度α1は正の加速度であり、この加速度α1の作用を受け、作用体310は図11の上方に変位することになる。そこで、この変位を0にするようなフィードバック制御を行えば、制御系の状態が、グラフG1に沿って遷移することは、既に述べたとおりである。このとき、従来の閉ループ式検出方法では、制御系の状態を正確に検出点P1へもってゆく制御を行うことになるが、ここで述べる本発明に係る方法では、図に一点鎖線で示す正の基準レベルL1と負の基準レベルL2との間(以下、検出可能帯と呼ぶ)へもってゆく制御が行われれば十分である。
【0146】
たとえば、図17において、グラフG1上のサンプル点Q1は、検出可能帯に位置する点であるので、制御系の状態が、当該サンプル点Q1にある場合、その時点で測定を行うことができる。制御系の状態が検出可能帯にあるか否かは、その時点で検出手段によって検出された容量差ΔCが、L2≦ΔC≦L1の範囲内にあるか否かによって判定することができる。
【0147】
制御系の状態が、サンプル点Q1にある場合の検出処理は、次のようにして行われる。まず、この時点における容量差ΔC(Q1)と印加電圧差ΔV(Q1)を求める。ここで、容量差ΔC(Q1)は、図11に示す制御ユニット50に、この時点で入力されているデジタル検出信号D(+)とD(−)との差「D(+)−D(−)」として求めることができ、印加電圧差ΔV(Q1)は、図11に示す制御ユニット50が、この時点で出力しているデジタル駆動信号E(+)とE(−)との差「E(−)−E(+)」として求めることができる。
【0148】
こうして求められた印加電圧差ΔV(Q1)は、図17に示すように、サンプル点Q1の横座標値であるから、作用している角速度α1の正確な検出値にはならない(正確な検出値は、検出点P1の横座標値Vα1である)。ただ、検出可能帯内のグラフG1が直線であると仮定すると、その誤差(Vα1−ΔV(Q1))は、ΔC(Q1)に比例した値になる。この比例係数をkとすれば、正確な検出値Vα1は、図17の右下に示すとおり、Vα1=ΔV(Q1)+k・ΔC(Q1)なる演算によって求まる。ここで、比例係数kは、グラフG1の傾きに応じて定まる値である。
【0149】
同様に、正の加速度α2が作用している場合、図18において、グラフG2上のサンプル点Q2は、検出可能帯に位置する点であるので、制御系の状態が、当該サンプル点Q2にある場合、その時点で測定を行うことができる。具体的には、この時点における容量差ΔC(Q2)と印加電圧差ΔV(Q2)を求めれば、正確な検出値Vα2は、検出可能帯内のグラフG2が直線であるとの仮定の下で、図18の右下に示すとおり、Vα2=ΔV(Q2)+k・ΔC(Q2)なる演算によって求まる。ここで、比例係数kは、グラフG2の傾きに応じて定まる値である。
【0150】
続いて、負の加速度α3が作用している場合を考えよう。この場合、図19において、グラフG3上のサンプル点R3は、検出可能帯に位置する点である(ここでは説明の便宜上、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点をQを冠した符号で示し、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点をRを冠した符号で示すことにする)。したがって、制御系の状態が、当該サンプル点R3にある場合、その時点で測定を行うことができる。具体的には、まず、この時点における容量差ΔC(R3)と印加電圧差ΔV(R3)を求める。図示の例の場合、容量差ΔC(R3)および印加電圧差ΔV(R3)は、いずれも負の値になる。次に、正確な検出値Vα3(負の値をとる)を、検出可能帯内のグラフG3が直線であるとの仮定の下で、図19の左上に示すとおり、Vα3=ΔV(R3)+k・ΔC(R3)なる演算によって求めればよい。ここで、比例係数kは、グラフG3の傾きに応じて定まる値である。
【0151】
負の加速度α4が作用している場合は、図20のようになる。図20に示されているグラフG4上のサンプル点R4は、検出可能帯に位置する点であるので、制御系の状態が、当該サンプル点R4にある場合、その時点で測定を行うことができる。具体的には、まず、この時点における容量差ΔC(R4)と印加電圧差ΔV(R4)を求める。図示の例の場合、容量差ΔC(R4)および印加電圧差ΔV(R4)は、いずれも負の値になる。次に、正確な検出値Vα4(負の値をとる)を、検出可能帯内のグラフG4が直線であるとの仮定の下で、図20の左上に示すとおり、Vα4=ΔV(R4)+k・ΔC(R4)なる演算によって求めればよい。ここで、比例係数kは、グラフG4の傾きに応じて定まる値である。
【0152】
以上、図17,図18に示す例では、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点Q1,Q2を用いた検出動作を説明し、図19,図20に示す例では、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点R3,R4を用いた検出動作を説明したが、いずれの場合も、検出動作に利用するサンプル点は、検出可能帯内の点であれば、その縦座標値の符号は不問である。
【0153】
たとえば、図17に示す例において、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点Q1の代わりに、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点R1を用いた場合でも、サンプル点R1が検出可能帯内の点であれば、Vα1=ΔV(R1)+k・ΔC(R1)なる演算によって正確な検出値Vα1を得ることができる。この場合、ΔV(R1)>Vα1になるが、ΔC(R1)が負の値をとるので、正しい検出値Vα1が得られる。同様に、図19に示す例において、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点R3の代わりに、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点Q3を用いた場合でも、サンプル点Q3が検出可能帯内の点であれば、Vα3=ΔV(Q3)+k・ΔC(Q3)なる演算によって正確な検出値Vα3を得ることができる。この場合、ΔV(R3)<Vα3になるが(いずれも負の値をとる)、ΔC(Q3)が正の値をとるので、正しい検出値Vα3が得られる。
【0154】
結局、図17〜図20のいずれの場合も、制御ユニット50は、サンプル点が検出可能帯内にある所定時点において(別言すれば、容量差ΔCが、L2≦ΔC≦L1の範囲内にある所定時点において)、容量差ΔCと印加電圧差ΔVを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを作用体に作用した力を示す検出値として出力する処理を行えばよい。
【0155】
ここで、容量差ΔCに関する正の基準レベルL1と負の基準レベルL2は、検出可能帯を定める役割を果たすので、用途が異なる個々の力検出装置ごとに、それぞれ適当なレベルを予め定めておくようにする。上述の検出原理では、検出可能帯内のグラフG1〜G4が直線であるとの仮定が必要である。そこで、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係が、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域を線形領域と定め、基準レベルL1〜L2の範囲が当該線形領域内に収まるように、基準レベルL1,L2を設定すればよい。
【0156】
前述したとおり、図13〜図20では、グラフG1〜G4は、便宜上、直線のグラフとして描かれているが、クーロン力は印加電圧の2乗に比例する量であり、また、加えたクーロン力と変位との間にも必ずしも線形関係は維持されず、しかも変位(電極間隔)と静電容量値との間にも線形関係は成り立たないので、実際には、各グラフG1〜G4は直線にはならない。しかしながら、作用体の位置が基準位置d0に近くなればなるほど(すなわち、変位が0に近くなればなるほど)、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係は線形関係に近似してくる。すなわち、図13〜図20に示すグラフG1〜G4の場合、検出点P1〜P4に近い部分ほど、直線に近いグラフが得られることになる。そこで、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域内に検出可能帯が定義されるように、基準レベルL1,L2を設定すればよい。
【0157】
具体的には、より高い精度が要求される力検出装置の場合は、正の基準レベルL1をなるべく低く、負の基準レベルL2をなるべく高く設定し、検出可能帯を狭くすればよい。そうすれば、検出可能帯内のグラフG1〜G4の線形性はより高まり、より正確な検出値を得ることができる。但し、検出を行うためには、容量差ΔCが検出可能帯に入るようなフィードバック制御を行う必要があるので、検出可能帯を狭く設定すればするほど、より高精度の制御を行う必要が生じる。それでも、容量差ΔC=0を目標とする従来の閉ループ式制御に比べれば、制御系の負担は大幅に軽減される。
【0158】
逆に、それほど高い精度が要求されない力検出装置の場合は、正の基準レベルL1をなるべく高く、負の基準レベルL2をなるべく低く設定し、検出可能帯を広くすればよい。そうすれば、容量差ΔCが検出可能帯に入るようなフィードバック制御の負担は軽減され、比較的単純な制御系で対応できる。もっとも、検出可能帯を広くすると、検出可能帯内のグラフG1〜G4の線形性は低下し、得られる検出値の精度は落ちることになる。それでも、§2で述べた従来の開ループ式制御に比べれば、より精度の高い検出値を得ることができる。
【0159】
なお、サンプル点が検出可能帯内に入っていない場合には(すなわち、L2≦ΔC≦L1を満足する容量差ΔCが得られていない場合には)、検出可能帯内のサンプル点が得られるようなフィードバック制御が行われる。このようなフィードバック制御は、既に、§5,§6で述べたとおりである。要するに、容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させる制御を行えばよい。
【0160】
ところで、図11に示す例の場合、制御ユニット50は、容量差ΔCを求めるための値D(+),D(−)をデジタルデータとして入力し、印加電圧差ΔVを定める値E(+),E(−)をデジタルデータとして出力する機能を有しており、上述したフィードバック制御や検出処理は、クロック信号に同期したデジタル処理として実行されることになる。このようなデジタル処理を行うためには、具体的には、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、各サンプリング時に、予め設定された正の基準レベルL1と負の基準レベルL2とを参照して、
(処理A)ΔC>L1の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御を行う、
(処理B)ΔC<L2の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御を行う、
(処理C)L2≦ΔC≦L1の場合には、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、「Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは予め定められた定数)」なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する、
のいずれかの処理を実行すればよい。
【0161】
図21は、上記デジタル処理の手順を示す流れ図である。まず、ステップS11において、容量差ΔC(ΔC=C1−C2)が正の基準レベルL1と比較される。ここで、ΔC>L1であった場合は、ステップS12へと進み、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御が行われる(上記処理A)。ここで、ΔV=V2−V1であるから、ΔVを増加させる制御は、V2を増加させてもよいし、V1を減少させてもよい。
【0162】
一方、ステップS11において、ΔC≦L1であった場合は、ステップS13へと進み、容量差ΔCが負の基準レベルL2と比較される。ここで、ΔC<L2であった場合は、ステップS14へと進み、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御が行われる(上記処理B)。ここで、ΔV=V2−V1であるから、ΔVを減少させる制御は、V2を減少させてもよいし、V1を増加させてもよい。
【0163】
ステップS13において、ΔC≧L2であった場合は、L2≦ΔC≦L1なる条件を満足し、検出可能帯内に入っていることになるので、ステップS15へと進み、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、「Vα=ΔV+k・ΔC」なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する(上記処理C)。
【0164】
なお、上記「Vα=ΔV+k・ΔC」なる演算で用いる比例定数kは、前述したとおり、グラフG1〜G4の傾きに基づいて決定される定数であり、予め所定の定数として設定しておくことができる。
【0165】
図13〜図20に示されているグラフG1〜G4は、いずれも同じ傾きをもった直線として描かれているが、前述したとおり、厳密に言えば、これらのグラフは直線にはならない。ただ、検出可能帯内では、ほぼ直線とみなすことができるので、定数kは、この近似的な直線の傾きに基づいて決定すればよい。もちろん、厳密には、この近似直線の傾きも、グラフG1〜G4について同一にはならないが、試作品の装置を利用して予め平均的な傾きを求め、この平均的な傾きに基づいて、所定の定数kを設定すればよい。
【0166】
このように、L2≦ΔC≦L1なる条件を満足し、検出可能帯内に入っている場合は、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行う必要はないので、制御系の負担は大幅に軽減される。別言すれば、検出可能帯に入るまでは、上記処理Aまたは処理Bによって、検出可能帯に入る方向へのフィードバック制御が行われるが、一旦、検出可能帯に入ってしまえば、検出可能帯から出るまでは、印加電圧差ΔVの増減は行われないことになる。このような制御は、常にΔC=0とするためのフィードバック制御(従来の閉ループ式検出の制御)に比べると、極めて負担の軽い制御であり、比較的単純な制御系を用いても、安定した制御動作が実現できる。
【0167】
制御ユニット50を、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成した場合、図21の流れ図に示す手順は、プログラムとして記述される。プロセッサは、このプログラムに基づいて、必要な演算および制御を実行する。
【0168】
以上、図11に示す一次元の力検出装置用の制御ユニット50の動作を説明したが、図12に示す三次元の力検出装置用の制御ユニット500の動作も全く同様である。すなわち、制御ユニット500は、X軸に関する検出動作、Y軸に関する検出動作、Z軸に関する検出動作を別個独立して実行する機能を有し、個々の軸に関する検出動作は、制御ユニット50の検出動作と全く同様である。
【0169】
<<< §8. 本発明の閉ループ式検出方法(その2) >>>
続いて、本発明に係る閉ループ式検出の第2の方法を説明する。この第2の方法も、§7で述べた第1の方法と同様に、「作用体の変位が0の状態で測定を行う」という前提には捕われない検出方法を採る。したがって、従来の閉ループ式検出方法のように、作用体の位置を正確に基準位置に維持させるような高精度な制御を行う必要がなくなり、比較的単純な制御系を用いた装置を実現できる。
【0170】
この第2の方法の重要な特徴は、正の容量差ΔCが得られる第1のサンプル点と、負の容量差ΔCが得られる第2のサンプル点と、の2点を利用する点にある。これを図22および図23のグラフを参照して説明しよう。
【0171】
図22に示すグラフG1は、図17に示すグラフG1と同じものであり、図11に示す例において、作用体310に上方向の加速度α1が作用しているときのフィードバック制御動作を示している。加速度α1は正の加速度であり、この加速度α1の作用を受け、作用体310は図11の上方に変位することになる。そこで、この変位を0にするようなフィードバック制御を行えば、制御系の状態は、グラフG1に沿って遷移する。
【0172】
従来の閉ループ式検出方法では、制御系の状態を正確に検出点P1へもってゆく制御を行うことになるが、ここで述べる方法では、正の容量差ΔC(Q1)をもつサンプル点Q1と、負の容量差ΔC(R1)をもつサンプル点R1とが得られれば、作用した加速度α1の検出が可能になる。また、ここで述べる方法の場合、§7で述べた方法で利用した基準レベルL1,L2の設定は不要である。
【0173】
いま、図22に示すグラフG1上のサンプル点Q1の縦座標値ΔC(Q1)および横座標値ΔV(Q1)が求まり、更に、サンプル点R1の縦座標値ΔC(R1)および横座標値ΔV(R1)が求まったとしよう(ΔC(R1)は負の値、他は正の値になる)。ここで、グラフG1の少なくとも2点Q1,R1間が直線であると仮定すれば、検出点P1の横座標値Vα1(正確な検出値)は、2点Q1,R1の座標値から幾何学的に求めることができる。
【0174】
一方、図23に示すグラフG3は、図19に示すグラフG3と同じものであり、図11に示す例において、作用体310に下方向の加速度α3が作用しているときのフィードバック制御動作を示している。加速度α3は負の加速度であり、この加速度α3の作用を受け、作用体310は図11の下方に変位することになる。そこで、この変位を0にするようなフィードバック制御を行えば、制御系の状態は、グラフG3に沿って遷移する。
【0175】
この場合も、正の容量差ΔC(Q3)をもつサンプル点Q3と、負の容量差ΔC(R3)をもつサンプル点R3とが得られれば、作用した加速度α3の検出が可能になる。すなわち、図23に示すグラフG3上のサンプル点Q3の縦座標値ΔC(Q3)および横座標値ΔV(Q3)が求まり、更に、サンプル点R3の縦座標値ΔC(R3)および横座標値ΔV(R3)が求まったとしよう(ΔC(Q3)は正の値、他は負の値になる)。ここで、グラフG3の少なくとも2点Q3,R3間が直線であると仮定すれば、検出点P3の横座標値Vα3(正確な検出値)は、2点Q3,R3の座標値から幾何学的に求めることができる。
【0176】
図24は、この幾何学的な演算式を算出するためのグラフであり、図25は、このグラフを利用して算出された演算式を示す図である。ここで、図24に示すように、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係を示すグラフGが直線をなすものとし、グラフG上の点Qの縦座標値をΔC(Q)、横座標値をΔV(Q)、グラフG上の点Pの縦座標値を0、横座標値をVα、グラフG上の点Rの縦座標値をΔC(R)、横座標値をΔV(R)とする。図示のとおり、直角三角形T1,T2は相似形なので、辺MPの長さが、辺MQの長さ(ΔC(Q)の絶対値)のk倍であるとすると、辺NPの長さは、辺NRの長さ(ΔC(R)の絶対値)のk倍になる。
【0177】
ここで、2点MN間の距離を、辺MPの長さと辺NPの長さの和として表すと、k・ΔC(Q)−k・ΔC(R)=k・(ΔC(Q)−ΔC(R))になる(ΔC(R)は負の値をとるので、絶対値は−ΔC(R)になる)。一方、この2点MN間の距離は、ΔV(R)−ΔV(Q)と表すこともできるので、図25に示すとおり、
k・(ΔC(Q)−ΔC(R))=ΔV(R)−ΔV(Q)
が成り立ち、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
が得られる。
【0178】
ここで、正しい検出値Vαは、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)
なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)
なる演算によって求めることができるので、結局、図25の下段に示すとおり、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))
/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で求められる。
【0179】
上記演算式には、比例係数kは含まれていない。これは、2点Q,Rの座標値に、比例係数kに関する情報が含まれているためである。§7で述べた第1の方法では、比例係数kの値を近似的な直線の傾きに基づいて予め決定しておき、近似的な定数として取り扱うことになるが、ここで述べる第2の方法では、そのような必要はない。したがって、図13〜図20に示されているグラフG1〜G4が、それぞれ異なる傾きをもった直線になったとしても、各直線の傾きの情報は、2点Q,Rの座標値として正確に反映されることになる。
【0180】
この第2の方法を制御ユニット50や制御ユニット500で実行する場合、やはりクロック信号に同期したデジタル処理として実行することになる。このようなデジタル処理を行うには、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、ΔC>0の場合には印加電圧差ΔVを増加させ、ΔC<0の場合には印加電圧差ΔVを減少させるフィードバック制御を行えばよい。そして、正の容量差ΔCが得られた時点Qでの当該容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、負の容量差ΔCが得られた時点Rでの当該容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で比例係数kを決定し、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)なる演算
によって、検出値Vαを求める演算処理を行えばよい。
【0181】
具体的には、図25に示すように、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))
/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する処理を行えばよい。
【0182】
なお、上述の演算式を導出するためには、図24に示すグラフGが、2点Q,R間で直線をなす、という前提が必要であった。しかしながら、既に述べたとおり、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係を示すグラフGは、厳密には直線にはならず、検出点Pの近傍において近似的に直線とみなすことができるにすぎない。したがって、上述の演算式によって求めた検出値Vαの精度をより高めるためには、2点Q,Rはできるだけ近接しているのが好ましい。
【0183】
そこで、実用上は、容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行い、このフィードバック制御の過程において、容量差ΔCの符号が正から負に反転したときには、反転直前の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、反転直後の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、容量差ΔCの符号が負から正に反転したときには、反転直前の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、反転直後の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とするのが好ましい。
【0184】
図26は、上記デジタル処理の手順を示す流れ図である。まず、ステップS21において、所定のサンプリングタイミングで求めた容量差ΔCの符号判定が行われる。ここで、ΔC>0であった場合は、ステップS31へと進み、現サンプリング時の容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)として記憶する処理が行われる。そして、ステップS32へ進み、印加電圧差ΔVを増加させる処理を行う。その結果、容量差ΔCは減少することになる。続くステップS33では、次のサンプリングタイミングで求めた容量差ΔCの符号が調べられる。ここで、容量差ΔCの符号反転が生じているかどうかが判定され、符号反転が生じていない場合にはステップS31からの処理が繰り返される。
【0185】
こうして、ΔCの符号が、正から負に反転すると、ステップS33からステップS34に進むことになり、現サンプリング時(反転直後)の容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として記憶する処理が行われる。その結果、反転直前の容量差がΔC(Q)、印加電圧差がΔV(Q)として記憶され(S31)、反転直後の容量差がΔC(R)、印加電圧差がΔV(R)として記憶される(S34)ことになる。そこで、ステップS35へ進み、図25に示す演算式を用いて検出値Vαを求め、これを出力する処理が実行された後、再び、ステップS21からの処理が繰り返される。
【0186】
一方、ステップS21において、ΔC<0であった場合は、ステップS41へと進み、現サンプリング時の容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として記憶する処理が行われる。そして、ステップS42へ進み、印加電圧差ΔVを減少させる処理を行う。その結果、容量差ΔCは増加することになる。続くステップS43では、次のサンプリングタイミングで求めた容量差ΔCの符号が調べられる。ここで、容量差ΔCの符号反転が生じているかどうかが判定され、符号反転が生じていない場合にはステップS41からの処理が繰り返される。
【0187】
こうして、ΔCの符号が、負から正に反転すると、ステップS43からステップS44に進むことになり、現サンプリング時(反転直後)の容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)として記憶する処理が行われる。その結果、反転直前の容量差がΔC(R)、印加電圧差がΔV(R)として記憶され(S41)、反転直後の容量差がΔC(Q)、印加電圧差がΔV(Q)として記憶される(S44)ことになる。そこで、ステップS45へ進み、図25に示す演算式を用いて検出値Vαを求め、これを出力する処理が実行された後、再び、ステップS21からの処理が繰り返される。
【0188】
なお、ステップS21において、ΔC=0と判定された場合は、ステップS22へと進み、印加電圧差ΔVを増加または減少させる制御(どちらでもかまわない)が行われ、再び、ステップS21からの処理が繰り返される。
【0189】
この図26の流れ図に基づく処理を実行すれば、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCの値を繰り返し求めてゆき、その符号が反転した直前および直後のサンプル点を用いて、図25の演算式に基づく演算を行うことができる。このように、符号反転の直前および直後のサンプル点の間は、グラフGの直線近似度が非常に高くなるので、得られる検出値Vαも精度の高いものになる。
【0190】
制御ユニット50を、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成した場合、図26の流れ図に示す手順は、プログラムとして記述される。プロセッサは、このプログラムに基づいて、必要な演算および制御を実行する。
【0191】
以上、この第2の方法についても、図11に示す一次元の力検出装置用の制御ユニット50の動作を説明したが、図12に示す三次元の力検出装置用の制御ユニット500の動作も全く同様である。すなわち、制御ユニット500は、X軸に関する検出動作、Y軸に関する検出動作、Z軸に関する検出動作を別個独立して実行する機能を有し、個々の軸に関する検出動作は、制御ユニット50の検出動作と全く同様である。
【0192】
<<< §9. 図1に示す主要構造部の特徴 >>>
ここでは、図1に示す主要構造部の特徴とそのメリットを述べておく。既に述べたとおり、この主要構造部を構成する作用体310は、板状部材から構成されており、可撓性接続部として機能する橋梁部331〜334は、この板状部材からなる作用体310の側面の一部を筐体に対して接続している。なお、可撓性接続部を橋梁部で構成する代わりに、作用体310の側面全部を筐体に対して接続するダイアフラム部によって構成してもかまわない。
【0193】
また、この板状部材からなる作用体310の上面に対向して上方基板100が配置されており、下面に対向して下方基板200が配置されている。これら上方基板100および下方基板200は、作用体310を収容する筐体の一部をなしている。そして、上方基板100の下面および下方基板200の上面には、それぞれ固定電極E11〜E25が形成されており、板状部材からなる作用体310は、導電性材料によって構成されているため、その上面および下面が変位電極として機能する。主要構造部をこのような構成にすることにより、極めて単純な構造の装置が実現でき、また、半導体基板などの加工技術を利用して装置の製造を行うことが可能になる。
【0194】
また、図1に示す主要構造部における容量素子C11〜C25の配置は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力を独立して検出するのに適した配置となっている。すなわち、板状部材からなる作用体310の重心位置に原点Oをもち、XY平面がこの板状部材の上面に平行となるように、XYZ三次元直交座標系を定義すれば、各容量素子の配置は次のようになっている。
【0195】
まず、X軸の正領域の上方に第1の上方容量素子C11が配置され、X軸の正領域の下方に第1の下方容量素子C21が配置され、X軸の負領域の上方に第2の上方容量素子C12が配置され、X軸の負領域の下方に第2の下方容量素子C22が配置されている。また、Y軸の正領域の上方に第3の上方容量素子C13が配置され、Y軸の正領域の下方に第3の下方容量素子X23が配置され、Y軸の負領域の上方に第4の上方容量素子C14が配置され、Y軸の負領域の下方に第4の下方容量素子C24が配置されている。更に、Z軸の正領域を中心とした位置に第5の上方容量素子が配置され、Z軸の負領域を中心とした位置に第5の下方容量素子が配置されている。
【0196】
このような配置を行えば、第1の上方容量素子C11および第2の下方容量素子C22を正側容量素子とし、第1の下方容量素子C21および第2の上方容量素子C12を負側容量素子とすることにより、X軸方向に作用した力の検出を行うことができる。また、第3の上方容量素子C13および第4の下方容量素子C24を正側容量素子とし、第3の下方容量素子C23および第4の上方容量素子C14を負側容量素子とすることにより、Y軸方向に作用した力の検出を行うことができる。更に、第5の上方容量素子C15を正側容量素子とし、第5の下方容量素子C25を負側容量素子とすることにより、Z軸方向に作用した力の検出を行うことができる。かくして、X軸,Y軸,Z軸の3軸方向に作用した力をそれぞれ独立した検出値として出力することが可能になる。
【0197】
また、各容量素子の形状および配置が対称性を有している点も重要である。このような対称性を確保することにより、他軸成分の干渉を抑制し、各座標軸方向の力をそれぞれ独立して検出することが可能になる。
【0198】
すなわち、第1の上方容量素子C11,第1の下方容量素子C21,第2の上方容量素子C12,第2の下方容量素子C22は、いずれもXZ平面に関して対称となる形状をなし、第1の上方容量素子C11と第2の上方容量素子C12とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第1の下方容量素子C21と第2の下方容量素子C22とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置されている。
【0199】
また、第3の上方容量素子C13,第3の下方容量素子C23,第4の上方容量素子C14,第4の下方容量素子C24は、いずれもYZ平面に関して対称となる形状をなし、第3の上方容量素子C13と第4の上方容量素子C14とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第3の下方容量素子C23と第4の下方容量素子C24とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置されている。
【0200】
更に、第5の上方容量素子C15および第5の下方容量素子C25は、いずれもXZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となる形状をなし、かつ、第5の上方容量素子C15と第5の下方容量素子C25とはXY平面に関して互いに対称となる形状をなし互いに対称となる位置に配置されている。
【0201】
また、図3に示すように、この主要構造部を構成する作用体310は、X軸の正領域に配置された第1の翼状部311と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部312と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部313と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部314と、原点Oに配置され4組の翼状部を相互に接合する中央部315と、を有する板状部材によって構成されており、4本の橋梁部331〜334が、中央部315に接続されている。
【0202】
このような平面形状をもった作用体310を用いれば、第1の翼状部311の上面に第1の上方容量素子C11を構成する変位電極を形成し、第1の翼状部311の下面に第1の下方容量素子C21を構成する変位電極を形成し、第2の翼状部312の上面に第2の上方容量素子C12を構成する変位電極を形成し、第2の翼状部312の下面に第2の下方容量素子C22を構成する変位電極を形成し、第3の翼状部313の上面に第3の上方容量素子C13を構成する変位電極を形成し、第3の翼状部313の下面に第3の下方容量素子C23を構成する変位電極を形成し、第4の翼状部314の上面に第4の上方容量素子C14を構成する変位電極を形成し、第4の翼状部314の下面に第4の下方容量素子C24を構成する変位電極を形成し、中央部315の上面に第5の上方容量素子C15を構成する変位電極を形成し、中央部315の下面に第5の下方容量素子C25を構成する変位電極を形成することができる。
【0203】
<<< §10. 本発明の変形例 >>>
最後に、本発明に係る力検出装置の変形例をいくつか述べておく。
【0204】
(1)検出用容量素子と駆動用容量素子との分離
これまで述べた実施形態では、1つの容量素子を検出用容量素子として利用するとともに、駆動用容量素子としても利用していた。たとえば、図12において、10組の容量素子C11〜C25は、いずれも静電容量値を検出するための検出用容量素子と、クーロン力を作用させるための駆動用容量素子とを兼ねている。
【0205】
これに対して、検出用容量素子と駆動用容量素子とをそれぞれ別個独立した容量素子によって構成することも可能である。すなわち、正側容量素子を、検出用正側容量素子と駆動用正側容量素子とによって構成し、負側容量素子を検出用負側容量素子と駆動用負側容量素子とによって構成し、検出手段は、検出用正側容量素子および検出用負側容量素子の静電容量値を検出するようにし、駆動手段は、駆動用正側容量素子および駆動用負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにすればよい。
【0206】
たとえば、10組の容量素子C11〜C25を用いる場合でも、第1〜第5の上方容量素子C11〜C15および第1〜第5の下方容量素子C21〜C25のそれぞれを、検出用容量素子と駆動用容量素子との一対の容量素子によって構成するようにし、検出手段は、各検出用容量素子の静電容量値を検出し、駆動手段は、各駆動用容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにすればよい。
【0207】
具体的には、図2に示す上方基板100の代わりに、図27に示す上方基板150を用い、図6に示す下方基板200の代わりに、図28に示す下方基板250を用いて、主要構造部を構成すればよい。なお、図27および図28におけるハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない。
【0208】
図27に示す上方基板150には、10枚の固定電極が形成されている。ここで、固定電極E11A〜E15Aは検出用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の上面)とによって、それぞれ検出用容量素子C11A〜C15Aが形成される。一方、固定電極E11B〜E15Bは駆動用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の上面)とによって、それぞれ駆動用容量素子C11B〜C15Bが形成される。
【0209】
同様に、図28に示す下方基板250にも、10枚の固定電極が形成されている。ここで、固定電極E21A〜E25Aは検出用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の下面)とによって、それぞれ検出用容量素子C21A〜C25Aが形成される。一方、固定電極E21B〜E25Bは駆動用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の下面)とによって、それぞれ駆動用容量素子C21B〜C25Bが形成される。
【0210】
このように、検出用容量素子と駆動用容量素子とをそれぞれ別個独立した容量素子によって構成すれば、検出手段や駆動手段を直接接続することが可能になり、カップリング用容量素子や抵抗素子を用いる必要がなくなる。
【0211】
図29は、このような変形例に係る力検出装置に用いる閉ループ式検出回路の一例を示す回路図である。図29の回路図を図12の回路図と比較すれば、その特徴が理解できよう。すなわち、両回路の基本的な処理機能は同じであるが、図29の回路図の場合、各容量素子が検出用容量素子(符号末尾にAが付されている)と駆動用容量素子と(符号末尾にBが付されている)とに分けられているため、図12の回路図に示されているカップリング用容量素子C411〜C416や、抵抗素子R441〜R446は、図29の回路図では省略されている。
【0212】
(2)制御ユニットの構成
これまで述べた実施形態では、制御ユニットをマイクロコンピュータで構成した例を示したが、制御ユニットは必ずしもマイクロコンピュータで構成する必要はない。たとえば、ハードウエアからなる論理素子を組み合わせて、制御ユニットを構成してもよいし、アナログ制御回路によって制御ユニットを構成してもかまわない。アナログ制御回路を用いた場合、制御動作は、アナログ信号によって行われることになるため、A/D変換回路やD/A変換回路は不要になる。
【0213】
(3)加速度センサや角速度センサへの利用
本発明は、直接的には力検出装置に係る発明であるが、加速度に起因して作用体に生じる力を求めることにより、加速度の検出を行う機能を有する加速度センサにも適用することが可能である。実際、これまで述べた実施形態は、本発明を加速度センサに利用した実施例になっている
【0214】
また、本発明に係る力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加すれば、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサを実現することも可能である。たとえば、XYZ三次元直交座標系において、作用体を第1の座標軸に沿って振動させた状態とし、このときに第2の座標軸方向に加わるコリオリ力を本発明に係る力検出装置によって検出すれば、当該検出値は、第3の座標軸まわりの角速度を示す値になる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置の主要構造部の側断面図である。
【図2】図1に示す主要構造部の上方基板100の下面図である。
【図3】図1に示す主要構造部の中間基板300の上面図である。
【図4】図1に示す主要構造部を切断線4に沿って切った断面を示す横断面図である。
【図5】図1に示す主要構造部をXY平面に沿って切った断面を示す横断面図である。
【図6】図1に示す主要構造部の下方基板200の上面図である。
【図7】図1に示す主要構造部の作用体310にX軸正方向の力+Fxが作用した状態を示す側断面図である。
【図8】図1に示す主要構造部の作用体310にZ軸正方向の力+Fzが作用した状態を示す側断面図である。
【図9】図1に示す主要構造部に適用可能な開ループ式検出回路の一例を示す回路図である。
【図10】図1に示す主要構造部の作用体310に作用した加速度αと変位dとの関係を示すグラフである。
【図11】閉ループ式の検出を行うために利用されるフィードバック制御回路の基本構成を示す回路図である。
【図12】図1に示す主要構造部に適用可能な閉ループ式検出回路の一例を示す回路図である。
【図13】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第1のグラフである。
【図14】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第2のグラフである。
【図15】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第3のグラフである。
【図16】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第4のグラフである。
【図17】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第1のグラフである。
【図18】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第2のグラフである。
【図19】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第3のグラフである。
【図20】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第4のグラフである。
【図21】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の手順を示す流れ図である。
【図22】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法の原理を示す第1のグラフである。
【図23】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法の原理を示す第2のグラフである。
【図24】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法に利用する演算式を算出するためのグラフである。
【図25】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法に利用する演算式を示す図である。
【図26】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法の手順を示す流れ図である。
【図27】本発明の変形例に係る力検出装置の主要構造部を構成する上方基板150の下面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図28】本発明の変形例に係る力検出装置の主要構造部を構成する下方基板250の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図29】本発明の変形例に係る力検出装置に用いる閉ループ式検出回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0216】
4:切断線
41,45:C/V変換回路
42,46:A/D変換回路
43,47:D/A変換回路
44,48:ドライバ回路
50:制御ユニット
100,150:上方基板
200,250:下方基板
300:中間基板
310:作用体(板状部材)
311〜314:翼状部
315:中央部
320:台座
331〜334:橋梁部(可撓性接続部材)
411〜416:C/V変換回路
421〜426:A/D変換回路
431〜436:D/A変換回路
441〜446:ドライバ回路
500:制御ユニット(マイクロコンピュータ)
C1,C2,C11〜C25:容量素子(静電容量値)
C11A〜C25A:検出用容量素子
C11B〜C25B:駆動用容量素子
C41,C45,C411〜C416:カップリング用容量素子
D(+),D(−):デジタル検出信号
D(X+),D(X−),D(Y+),D(Y−),D(Z+),D(Z−):デジタル検出信号
D(α),D(αx),D(αy),D(αz):力の検出値
d,d1,d2:変位
d0:基準位置
E1,E2,E11〜E25:固定電極
E11A〜E25A,E11B〜E25B:固定電極
E(+),E(−):デジタル駆動信号
E(X+),E(X−),E(Y+),E(Y−),E(Z+),E(Z−):デジタル駆動信号
Fx,Fz:座標軸方向に作用した力
G:作用体の重心
G,G1〜G4:グラフ
k:比例係数
L1,L2:基準レベル
M,N:直角三角形の頂点
O:座標系の原点
P,P1〜P4:検出点
Q,Q1〜Q3:正のサンプル点
R,R1〜R4:負のサンプル点
R44,R48,R441〜R446:抵抗素子
S11〜S45:流れ図の各ステップ
T1,T2:直角三角形
V1,V2:駆動電圧
Vα,Vα1〜Vα4:力の検出値
X,Y,Z:三次元直交座標系の各座標軸(力の検出軸)
X′,Y′:X,Yを45°回転させた座標軸
α,α1〜α4:加速度
ΔC:容量差(C1−C2)
ΔC(Q),ΔC(R):各サンプル点の縦座標値
ΔC(Q1)〜ΔC(Q3):各サンプル点の縦座標値
ΔC(R1)〜ΔC(R4):各サンプル点の縦座標値
ΔV:印加電圧差(V2−V1)
ΔV(Q),ΔV(R):各サンプル点の横座標値
ΔV(Q1)〜ΔV(Q3):各サンプル点の横座標値
ΔV(R1)〜ΔV(R4):各サンプル点の横座標値
【技術分野】
【0001】
本発明は、力検出装置に関し、特に、力の作用を受ける作用体の変位を、容量素子の静電容量値に基づいて検出する原理を利用した力検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
力は非常に基本的な物理量であり、これを正確に測定するための力検出装置は、様々な産業分野での需要が見込まれている。たとえば、この力検出装置を、各種ロボットの間接部分に取り付ければ、アームに加わっている荷重を測定することができるし、人間の指先から加えられる力の検出に利用すれば、人間から与えられた何らかの操作量を電気信号に変換する入力装置としての機能を果たすこともできる。
【0003】
また、作用した加速度に起因して生じる力を測定するようにすれば、力検出装置を加速度センサとして利用することが可能になる。あるいは、力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加し、作用体が周期運動しているときに受けるコリオリ力を測定すれば、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサとして利用することも可能である。このように、力検出装置は、純然たる力という物理量の検出に利用されるだけでなく、加速度や角速度などの検出にも利用される汎用性のある検出装置であり、その産業上の利用分野は極めて広範にわたっている。
【0004】
このため、できるだけ単純な構造を有し、量産化に適する力検出装置として、静電容量素子(以下、単に容量素子という)を用いたタイプの力検出装置が実用化されている。たとえば、下記の特許文献1〜3には、外力に基づいて生じた作用体の変位を容量素子を利用して検出することにより、各座標軸方向に作用した力をそれぞれ独立して検出することが可能な多次元力検出装置が開示されている。また、下記の特許文献4,5には、外力に基づいて生じた複数の柱状体の傾斜や変位を、容量素子を利用してそれぞれ別個独立して検出することにより、XYZ軸方向に作用した力とともに、XYZ軸まわりに作用したモーメントを検出することが可能な6軸成分用の力検出装置が開示されている。
【0005】
一方、下記の特許文献6には、容量素子を用いたタイプの力検出装置において、作用体の変位を抑制するようなフィードバック制御を行い、作用体の位置を基準位置に維持するために要した電気エネルギーに基づいて、作用した外力の大きさを測定する技術が開示されている。
【特許文献1】特開平4−148833号公報
【特許文献2】特開2001−165790号公報
【特許文献3】国際公開第WO89/09927号公報
【特許文献4】特開2004−325367号公報
【特許文献5】特開2004−354049号公報
【特許文献6】米国特許第4941354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
容量素子を用いたタイプの力検出装置の基本原理は、筐体内に可撓性接続部材を介して変位自在に収容した作用体に外力を作用させ、その変位を容量素子の静電容量値に基づいて検出することにより、作用した外力の大きさを求める、というものである。ここで、作用した外力と作用体の変位との関係や変位と静電容量値との関係が線形関係を維持していれば、得られた静電容量値は外力に比例し、正確な力の検出値を示すものになる。
【0007】
しかしながら、作用体を可撓性接続部材を介して筐体に接続する構造をとると、一般に、変位が大きくなるに従って、外力と変位との関係に線形性が維持できなくなる。また、変位(電極間隔)と静電容量値との間にも線形性は成り立たない。このため、検出対象となる力が比較的小さく、作用体の変位が線形領域内に維持されている限り、ある程度正確な検出値が得られるとしても、検出対象となる力が大きくなると、作用体の変位が線形領域を外れ、その検出値の精度は低下せざるを得ない。
【0008】
このような問題を解消するために、前掲の特許文献6などには、作用体の変位を抑制するようなフィードバック制御を行う閉ループ式(サーボ式)の力検出装置が開示されている。閉ループ式の力検出装置では、外力によって作用体が変位しようとした場合、当該外力に対する抗力を作用させて作用体の位置を基準位置に維持させる制御が行われる。そして、作用体を基準位置に維持させるための抗力発生に要した電気エネルギーの大きさを、作用した外力の大きさとして検出する方法がとられる。
【0009】
この閉ループ式の力検出装置では、作用体の変位が常に0となるような制御が行われるため、作用体は常に所定の基準位置に維持されることになる。したがって、作用した外力の大小にかかわらず、測定は、常に変位0の状態で行われることになり、非線形性に起因する検出誤差の問題は解消する。しかしながら、正確な検出値を得るためには、作用体を常に基準位置に正確に維持するための制御が必要になる。このため、検出精度を高めようとすればするほど、より高度で複雑な制御系が必要になり、それだけ製造コストも高騰せざるを得ない。
【0010】
そこで本発明は、容量素子を用いた閉ループ式の力検出装置において、比較的単純な制御系を用いながら、高精度な検出結果を得ることができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1) 本発明の第1の態様は、正負が定義された所定の検出軸方向に作用した力を検出する力検出装置において、
検出対象となる力を作用させるための作用体と、
作用体を収容する筐体と、
作用体を筐体に対して接続する可撓性接続部材と、
作用体に固定された変位電極と筐体に固定された固定電極とによって構成され、作用体が検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる正側容量素子と、
作用体に固定された変位電極と筐体に固定された固定電極とによって構成され、作用体が検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる負側容量素子と、
正側容量素子の静電容量値C1と負側容量素子の静電容量値C2とを検出する検出手段と、
正側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V1を印加してクーロン力を作用させる機能と、負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V2を印加してクーロン力を作用させる機能と、を有する駆動手段と、
容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う機能を有し、所定時点におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを作用体に作用した力を示す検出値として出力する制御手段と、
を設けるようにしたものである。
【0012】
(2) 本発明の第2の態様は、上述した第1の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、各サンプリング時に、予め設定された正の基準レベルL1と負の基準レベルL2とを参照して、
(処理A)ΔC>L1の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御を行う、
(処理B)ΔC<L2の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御を行う、
(処理C)L2≦ΔC≦L1の場合には、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは予め定められた定数)なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する、
のいずれかの処理を実行するようにしたものである。
【0013】
(3) 本発明の第3の態様は、上述した第2の態様に係る力検出装置において、
印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係が、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域を線形領域と定め、基準レベルL1〜L2の範囲がこの線形領域内に収まるように、基準レベルL1,L2を設定するようにしたものである。
【0014】
(4) 本発明の第4の態様は、上述した第1の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、
所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、ΔC>0の場合には印加電圧差ΔVを増加させ、ΔC<0の場合には印加電圧差ΔVを減少させるフィードバック制御を行い、
正の容量差ΔCが得られた時点Qでの当該容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、負の容量差ΔCが得られた時点Rでの当該容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で比例係数kを決定し、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)なる演算
によって、検出値Vαを求めるようにしたものである。
【0015】
(5) 本発明の第5の態様は、上述した第4の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))/(ΔC(Q)−ΔC(R))なる演算で得られた値Vαを検出値として出力するようにしたものである。
【0016】
(6) 本発明の第6の態様は、上述した第4または第5の態様に係る力検出装置において、
容量差ΔCの符号が正から負に反転したときに、反転直前の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、反転直後の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、
容量差ΔCの符号が負から正に反転したときに、反転直前の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、反転直後の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とするようにしたものである。
【0017】
(7) 本発明の第7の態様は、上述した第1〜第6の態様に係る力検出装置において、
各容量素子を構成する電極のうち、変位電極が共通の接地電位に維持され、駆動手段が、個々の固定電極に所定の駆動電圧を印加することにより、クーロン力を作用させるようにしたものである。
【0018】
(8) 本発明の第8の態様は、上述した第7の態様に係る力検出装置において、
駆動手段が、正側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V1(V1≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、負側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V2(V2≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、を有し、
制御手段が、ΔC>0の場合には、駆動電圧V1を減少させて、駆動電圧V2を増加させ、ΔC<0の場合には、駆動電圧V2を減少させて、駆動電圧V1を増加させる制御を行う機能を有するようにしたものである。
【0019】
(9) 本発明の第9の態様は、上述した第1〜第8の態様に係る力検出装置において、
検出手段が、静電容量値を電圧に変換するC/V変換回路と、このC/V変換回路で変換されたアナログ検出電圧をデジタル検出信号に変換するA/D変換回路と、を有し、
制御手段が、このデジタル検出信号に基づいて、所定の駆動電圧を示すデジタル駆動信号を出力するデジタル処理装置を有し、
駆動手段が、このデジタル駆動信号をアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路と、このアナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧を電極に印加するドライバ回路と、を有するようにしたものである。
【0020】
(10) 本発明の第10の態様は、上述した第9の態様に係る力検出装置において、
正側容量素子もしくは負側容量素子に、検出手段と駆動手段との双方が接続されており、
検出手段が、カップリング用容量素子を介して正側容量素子もしくは負側容量素子に接続され、
駆動手段が、抵抗素子を介して正側容量素子もしくは負側容量素子に接続されるようにしたものである。
【0021】
(11) 本発明の第11の態様は、上述した第9の態様に係る力検出装置において、
正側容量素子が検出用正側容量素子と駆動用正側容量素子とによって構成されており、
負側容量素子が検出用負側容量素子と駆動用負側容量素子とによって構成されており、
検出手段は、検出用正側容量素子および検出用負側容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、駆動用正側容量素子および駆動用負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにしたものである。
【0022】
(12) 本発明の第12の態様は、上述した第9の態様に係る力検出装置において、
制御手段が、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成されており、このプログラムに基づいて、演算および制御が実行されるようにしたものである。
【0023】
(13) 本発明の第13の態様は、上述した第1〜第12の態様に係る力検出装置において、
作用体が板状部材から構成されており、
可撓性接続部がこの板状部材の側面の一部もしくは全部を筐体に対して接続し、
この板状部材の上面に対向して配置された上方基板と、この板状部材の下面に対向して配置された下方基板とが、筐体の一部をなし、
この板状部材の上面および下面に変位電極が形成され、上方基板の下面および下方基板の上面に固定電極が形成されているようにしたものである。
【0024】
(14) 本発明の第14の態様は、上述した第13の態様に係る力検出装置において、
板状部材からなる作用体の重心位置に原点Oをもち、XY平面がこの板状部材の上面に平行となるように、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
X軸の正領域の上方に第1の上方容量素子が配置され、X軸の正領域の下方に第1の下方容量素子が配置され、X軸の負領域の上方に第2の上方容量素子が配置され、X軸の負領域の下方に第2の下方容量素子が配置され、
Y軸の正領域の上方に第3の上方容量素子が配置され、Y軸の正領域の下方に第3の下方容量素子が配置され、Y軸の負領域の上方に第4の上方容量素子が配置され、Y軸の負領域の下方に第4の下方容量素子が配置され、
Z軸の正領域を中心とした位置に第5の上方容量素子が配置され、Z軸の負領域を中心とした位置に第5の下方容量素子が配置され、
第1の上方容量素子および第2の下方容量素子を正側容量素子とし、第1の下方容量素子および第2の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、X軸方向に作用した力の検出が行われ、
第3の上方容量素子および第4の下方容量素子を正側容量素子とし、第3の下方容量素子および第4の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、Y軸方向に作用した力の検出が行われ、
第5の上方容量素子を正側容量素子とし、第5の下方容量素子を負側容量素子とすることにより、Z軸方向に作用した力の検出が行われ、
X軸,Y軸,Z軸の3軸方向に作用した力をそれぞれ独立した検出値として出力するようにしたものである。
【0025】
(15) 本発明の第15の態様は、上述した第14の態様に係る力検出装置において、
第1〜第5の上方容量素子および第1〜第5の下方容量素子のそれぞれが、検出用容量素子と駆動用容量素子との一対の容量素子によって構成されており、
検出手段は、各検出用容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、各駆動用容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにしたものである。
【0026】
(16) 本発明の第16の態様は、上述した第14または第15の態様に係る力検出装置において、
第1の上方容量素子,第1の下方容量素子,第2の上方容量素子,第2の下方容量素子が、いずれもXZ平面に関して対称となる形状をなし、第1の上方容量素子と第2の上方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第1の下方容量素子と第2の下方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第3の上方容量素子,第3の下方容量素子,第4の上方容量素子,第4の下方容量素子が、いずれもYZ平面に関して対称となる形状をなし、第3の上方容量素子と第4の上方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第3の下方容量素子と第4の下方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第5の上方容量素子および第5の下方容量素子が、いずれもXZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となる形状をなし、かつ、第5の上方容量素子と第5の下方容量素子とはXY平面に関して互いに対称となる形状をなし互いに対称となる位置に配置されているようにしたものである。
【0027】
(17) 本発明の第17の態様は、上述した第14〜第16の態様に係る力検出装置において、
X軸およびY軸をXY平面上で45°回転させた軸をそれぞれX′軸およびY′軸と定義したときに、X′軸の正領域に平行な橋梁部、X′軸の負領域に平行な橋梁部、Y′軸の正領域に平行な橋梁部、Y′軸の負領域に平行な橋梁部によって、可撓性接続部材が構成されているようにしたものである。
【0028】
(18) 本発明の第18の態様は、上述した第17の態様に係る力検出装置において、
X軸の正領域に配置された第1の翼状部と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部と、原点Oに配置され、この4組の翼状部を相互に接合する中央部と、を有する板状部材によって作用体が構成され、
4本の橋梁部は、中央部に接続されており、
第1の翼状部の上面に第1の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第1の翼状部の下面に第1の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、第2の翼状部の上面に第2の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第2の翼状部の下面に第2の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、第3の翼状部の上面に第3の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第3の翼状部の下面に第3の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、第4の翼状部の上面に第4の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、第4の翼状部の下面に第4の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、中央部の上面に第5の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、中央部の下面に第5の下方容量素子を構成する変位電極が形成されているようにしたものである。
【0029】
(19) 本発明の第19の態様は、上述した第1〜第18の態様に係る力検出装置において、
作用体を導電性材料で構成し、この作用体の表層における個々の固定電極に対する対向領域が個々の変位電極を形成するようにしたものである。
【0030】
(20) 本発明の第20の態様は、上述した第1〜第19の態様に係る力検出装置において、作用した加速度に起因して作用体に生じる力を求めることにより、加速度の検出を行う加速度センサを実現するようにしたものである。
【0031】
(21) 本発明の第21の態様は、上述した第1〜第19の態様に係る力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加し、作用体が周期運動しているときに、力検出装置の力の検出軸方向に加わるコリオリ力を求めることにより、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサを実現するようにしたものである。
【発明の効果】
【0032】
本発明の力検出装置では、外力に対する抗力(作用体の位置を基準位置に維持させるための抗力)の大きさを示す印加電圧差ΔVを、粗い精度をもった検出値として利用し、作用体の基準位置からのずれ量を示す容量差ΔCを、密な精度をもった検出値として利用し、ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる和として、力の検出値が求められる。このため、本発明に係る力検出装置は、容量素子を用いた閉ループ式の力検出装置であるにもかかわらず、その検出原理上、作用体の位置を基準位置に正確に維持する必要はなく、そのような正確な制御を行う必要はない。もちろん、粗い制御を行うと、測定時には、作用体が基準位置からずれてしまっているかもしれないが、当該ずれ量は、容量差ΔCとして正確に測定され、粗い精度をもった検出値ΔVに、k・ΔCなる形の補正項として加えられることになる。したがって、比較的単純な制御系を用いながら、高精度な検出結果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明を図示する実施形態に基づいて説明する。
【0034】
<<< §1. 基本的実施形態の主要構造部 >>>
はじめに、本発明の基本的実施形態に係る力検出装置の主要構造部の説明を行う。図1は、この主要構造部の側断面図である。図示のとおり、この主要構造部は、上方基板100と下方基板200との間に、中間基板300を介挿させた構造を有している。上方基板100および下方基板200は、単純な板状の基板であるが、中間基板300は、図示のとおり、若干複雑な形態をしている。
【0035】
すなわち、中間基板300は、中央部に配置された板状部材310と、その周囲を取り囲む台座320と、両者を接続する4本の橋梁部331〜334(図1には、331,333のみが現れている)によって構成されている。板状部材310は、検出対象となる外力を作用させるための物体であるため、以下、作用体310と呼ぶことにする。ここに示す実施形態は、本発明に係る力検出装置を用いて加速度センサを構成した例であり、作用体310に対して実際に作用する力は、加速度に起因して生じる力ということになる。
【0036】
ここでは、説明の便宜上、図示のとおり、この作用体310の重心位置に座標系の原点Oをとり、図の横方向にX軸(右方が正方向)、縦方向にZ軸(上方が正方向)、紙面に対して垂直方向にY軸(奥が正方向)をとり、XYZ三次元直交座標系を定義する。上方基板100および下方基板200、ならびに作用体310の上下両面は、いずれも、この座標系におけるXY平面に平行な平面をなしており、その中心位置にZ軸が直交することになる。図1は、この主要構造部をXZ平面で切断した側断面図ということになる。
【0037】
図2は、図1に示す主要構造部の上方基板100の下面図である。この上方基板100の下面には、図示のとおり、5枚の電極E11〜E15が形成されている。これらの電極は、上方基板100に固定されているため、ここでは、固定電極と呼ぶことにする。第1の固定電極E11は、X軸の正領域上方に位置し、第2の固定電極E12は、X軸の負領域上方に位置し、第3の固定電極E13は、Y軸の正領域上方に位置し、第4の固定電極E14は、Y軸の負領域上方に位置し、第5の固定電極E15は、Z軸の正領域に位置している。これら各電極の形状および配置は、図示のとおり、XZ平面もしくはYZ平面、またはその双方について対称性を有している。
【0038】
この5枚の固定電極E11〜E15は、互いに電気的に独立している必要がある。そこで、ここに示す実施形態の場合、上方基板100をガラスやセラミックなどの絶縁性材料によって構成し、その表面に、銅やアルミニウムからなる固定電極を形成している。
【0039】
一方、中間基板300の構造は、図3〜図5を参照すれば、容易に理解できよう。図3は、図1に示す主要構造部の中間基板300の上面図であり、この主要構造部から上方基板100を取り去った状態を上方から観察した状態を示している。また、図4は、この主要構造部を切断線4に沿って切った断面を示す横断面図であり、図5は、XY平面に沿って切った断面を示す横断面図である。
【0040】
作用体310は、図1に示すような板状部材であるが、その平面形状は、図5に示すように、扇風機の羽根に似た形状をしている。すなわち、X軸の正領域に配置された第1の翼状部311と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部312と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部313と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部314と、原点Oに配置され、4組の翼状部311〜314を相互に接合する中央部315と、を有している。この作用体310を取り囲むように、フレーム状の台座320が設けられている。
【0041】
図5に示すように、作用体310の大まかな平面外郭形状は正方形をなしているが、X軸およびY軸をXY平面上で45°回転させた軸をそれぞれX′軸およびY′軸と定義すれば、このX′軸およびY′軸に沿った4カ所の部分(正方形の対角線に対応する部分)に切り欠きが設けられている。これは、図4に示すように、この4カ所の切り欠き部分に、それぞれ橋梁部331〜334を配置し、これら4本の橋梁部331〜334によって、中央部315を支持するためである。
【0042】
すなわち、図4に示すように、作用体310は、X′軸の正領域に平行な橋梁部331、X′軸の負領域に平行な橋梁部332、Y′軸の正領域に平行な橋梁部333、Y′軸の負領域に平行な橋梁部334によって支持されることになる。各橋梁部331〜334の内側端は中央部315に接続され、外側端は台座320に接続されている。各橋梁部331〜334は、細長いビーム構造を有しているため、可撓性をもった接続部材として機能する。
【0043】
結局、図1において、検出対象となる力を作用させるための作用体310は、上方基板100,下方基板200,台座320によって構成される筐体内に収容されており、可撓性接続部材(橋梁部331〜334)によって、当該筐体に対して接続されていることになる。作用体310に外力が作用すると、可撓性をもった橋梁部331〜334に撓みが生じ、作用体310は筐体内で変位する。
【0044】
図6は、図1に示す主要構造部の下方基板200の上面図である。この下方基板200の上面には、図示のとおり、5枚の電極E21〜E25が形成されている。これらの電極は、下方基板200に固定されているため、やはり固定電極と呼ぶことにする。第1の固定電極E21は、X軸の正領域下方に位置し、第2の固定電極E22は、X軸の負領域下方に位置し、第3の固定電極E23は、Y軸の正領域下方に位置し、第4の固定電極E24は、Y軸の負領域下方に位置し、第5の固定電極E25は、Z軸の負領域に位置している。これら各電極の形状および配置は、図示のとおり、XZ平面もしくはYZ平面、またはその双方について対称性を有している。
【0045】
この5枚の固定電極E21〜E25も、互いに電気的に独立している必要があるので、ここに示す実施形態の場合、上方基板100と同様に、下方基板200も、ガラスやセラミックなどの絶縁性材料によって構成し、その表面に、銅やアルミニウムからなる固定電極を形成している。実際には、固定電極E11〜E15を含めた上方基板100と、固定電極E21〜E25を含めた下方基板200とは、物理的には全く同一の構成要素であり、図1において、固定電極E11〜E15と固定電極E21〜E25とは、XY平面に関して対称になる。
【0046】
一方、ここに示す実施形態の場合、中間基板300は導電性材料で構成されており(たとえば、シリコン基板や金属板を加工して、中間基板300を構成すればよい)、作用体310は、それ自体が導電性物体となる。したがって、この作用体310に対向するように、固定電極E11〜E15,E21〜E25を配置すると、作用体310の表層における個々の固定電極に対する対向領域が個々の電極として機能し、容量素子が構成されることになる。
【0047】
たとえば、図2に示す固定電極E11〜E14は、それぞれ図3に示す作用体310の翼状部311〜314の上面に対向し、図2に示す固定電極E15は、図3に示す作用体310の中央部315の上面に対向する。したがって、固定電極E11と、翼状部311の上面部分によって、1つの容量素子C11が形成される。また、固定電極E12,E13,E14と、翼状部312,313,314の上面部分によって、それぞれ容量素子C12,C13,C14が形成され、固定電極E15と、中央部315の上面部分によって、容量素子C15が形成される。
【0048】
同様に、図6に示す固定電極E21〜E24は、それぞれ図3に示す作用体310の翼状部311〜314の下面に対向し、図6に示す固定電極E25は、図3に示す作用体310の中央部315の下面に対向する。したがって、固定電極E21と、翼状部311の下面部分によって、1つの容量素子C21が形成される。また、固定電極E22,E23,E24と、翼状部312,313,314の下面部分によって、それぞれ容量素子C22,C23,C24が形成され、固定電極E25と、中央部315の下面部分によって、容量素子C25が形成される。
【0049】
結局、合計10枚の固定電極E11〜E25について、それぞれ作用体310の表層における対向する領域が対向電極として機能し、合計10個の容量素子C11〜C25が形成されることになる。ここでは、この作用体310の表層側に形成される対向電極を変位電極と呼ぶことにする。固定電極E11〜E25は、筐体に固定された電極であるが、これらに対向する変位電極は、作用体310とともに変位する電極ということになる。
【0050】
なお、作用体310を絶縁材料によって構成した場合は、その表面に(10枚の固定電極E11〜E25にそれぞれ対向する部分に)、導電性材料からなる変位電極を別途設けるようにすればよい。ここに示す実施形態のように、作用体310を導電性材料で構成しておけば(少なくとも、その表層部分を導電性材料で構成しておけば)、その表層部分が、それぞれ個々の変位電極として機能するので、個々の変位電極を別体として設ける必要がなくなり、実用上は好ましい。
【0051】
<<< §2. 開ループ式検出の基本原理 >>>
本発明は、基本的には、閉ループ式(サーボ式)の力検出装置に係るものであるが、その検出原理の一部に、開ループ式(オープンループ式)の検出原理も取り込んでいる。そこで、この§2では、図1に示す主要構造部を用いた開ループ式の検出原理を述べておく。
【0052】
まず、X軸を検出軸として、このX軸の正もしくは負方向に作用した力を検出する原理を説明する。図7は、図1に示す主要構造部の作用体310に、X軸正方向の力+Fxが作用した状態を示す側断面図である。実際には、作用体310にX軸正方向への加速度+αxが作用し、この加速度に基づいて、力+Fxが加わることになる。力+Fxの作用により、作用体310は図の右方向へ移動しようとするが、上面近傍を可撓性をもった4本の橋梁部331〜334によって支持されているため、これら橋梁部に撓みが生じることになる。結局、作用体310は、その重心をX軸正方向に移動しつつ、図示のように傾斜する。
【0053】
すると、固定電極E11とこれに対向する変位電極(翼状部311の上面)との距離および固定電極E22とこれに対向する変位電極(翼状部312の下面)との距離は小さくなり、固定電極E12とこれに対向する変位電極(翼状部312の上面)との距離および固定電極E21とこれに対向する変位電極(翼状部311の下面)との距離は大きくなる。そのため、容量素子C11,C22の静電容量値は大きくなり、容量素子C12,C21の静電容量値は小さくなる。このとき、他の容量素子は、その電極間隔が、一部分は小さくなるが、他の一部分は大きくなるので、静電容量値には変化は生じない。したがって、X軸方向に作用した力が、後述するY軸もしくはZ軸方向に作用した力として検出されることはない。
【0054】
一方、作用体310に、X軸負方向の力−Fxが作用した場合は、上記各容量素子の静電容量値の増減は逆転する。したがって、各容量素子C11〜C25の静電容量値を、同じ符号C11〜C25で表せば、容量差ΔC=(C11+C22)−(C12+C21)は、X軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。すなわち、容量差ΔCが正の場合には、X軸正方向に力が作用していることを示し、容量差ΔCが負の場合には、X軸負方向に力が作用していることを示し、容量差ΔCの絶対値は、作用している力の大きさを示すものになる。
【0055】
次に、Y軸を検出軸として、このY軸の正もしくは負方向に作用した力を検出する原理を考えよう。図2〜図6の幾何学的な配置から明らかなように、X軸とY軸は相互に入れ換えても、基本的構造上の変化は生じないので、Y軸に関する検出には、上述したX軸に関する検出原理と全く同じ原理を適用できる。したがって、容量差ΔC=(C13+C24)−(C14+C23)は、Y軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。
【0056】
続いて、Z軸を検出軸として、このZ軸の正もしくは負方向に作用した力を検出する原理を説明する。図8は、図1に示す主要構造部の作用体310に、Z軸正方向の力+Fzが作用した状態を示す側断面図である。実際には、作用体310にZ軸正方向への加速度+αzが作用し、この加速度に基づいて、力+Fzが加わることになる。力+Fzが作用すると、4本の橋梁部331〜334に撓みが生じ,作用体310は図示のように上方向へ移動する。
【0057】
すると、固定電極E15とこれに対向する変位電極(中央部315の上面)との距離は小さくなり、固定電極E25とこれに対向する変位電極(中央部315の下面)との距離は大きくなる。そのため、容量素子C15の静電容量値は大きくなり、容量素子C25の静電容量値は小さくなる。一方、作用体310に、Z軸負方向の力−Fzが作用した場合は、上記各容量素子の静電容量値の増減は逆転する。
【0058】
したがって、容量差ΔC=C15−C25を求めれば、Z軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。すなわち、上記容量差ΔCが正の場合には、Z軸正方向に力が作用していることを示し、上記容量差ΔCが負の場合には、Z軸負方向に力が作用していることを示し、上記容量差ΔCの絶対値は、作用している力の大きさを示すものになる。
【0059】
なお、Z軸の正もしくは負方向のみに力が作用し、作用体が図の上下方向に変位した場合、前述したX軸方向に関する力の検出値を示す容量差ΔC=(C11+C22)−(C12+C21)や、Y軸方向に関する力の検出値を示す容量差ΔC=(C13+C24)−(C14+C23)は0になる。したがって、Z軸方向に作用した力が、前述したX軸もしくはY軸方向に作用した力として検出されることはない。
【0060】
かくして、作用体310に作用した各座標軸方向の力Fx,Fy,Fz(各座標軸方向の加速度αx,αy,αz)を別個独立して検出することが可能になる。
【0061】
<<< §3. 開ループ式検出回路 >>>
図9は、上述した開ループ式検出を行うための検出回路の一例を示す回路図である。この回路図の左端において、符号「E11〜E25」が付された構成要素は、図2および図6に示した各固定電極E11〜E25であり、符号「310」が付された構成要素は、図1に示す導電性の作用体310である。図示のとおり、この作用体310は接地されており、その表面(個々の変位電極)は接地電位に維持されている(中間基板300全体を導電性材料で構成しておけば、図1に示す台座320を接地すれば、作用体310全体が接地電位に維持される)。既に述べたとおり、各固定電極E11〜E25と、作用体310の対向面(変位電極)とによって、それぞれ容量素子C11〜C25が形成される。図9の左端に示された符号「C11〜C25」は、これらの容量素子を示している。
【0062】
図示のとおり、容量素子C11,C22は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路411に接続されている。C/V変換回路411は、並列接続された容量素子C11,C22の静電容量値(容量素子C11の静電容量値C11と容量素子C22の静電容量値C22との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路421によってデジタル検出信号D(X+)に変換される。
【0063】
同様に、容量素子C12,C21は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路412に接続されている。C/V変換回路412は、並列接続された容量素子C12,C21の静電容量値(容量素子C12の静電容量値C12と容量素子C21の静電容量値C21との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路422によってデジタル検出信号D(X−)に変換される。
【0064】
ここで、X軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fxを受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子を正側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C11,C22は、いずれも正側容量素子であり、デジタル検出信号D(X+)は、正側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0065】
逆に、X軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fxを受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子を負側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C12,C21は、いずれも負側容量素子であり、デジタル検出信号D(X−)は、負側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0066】
制御ユニット500は、ここに示す例の場合、マイクロコンピュータによって構成されており、デジタル検出信号D(X+)とD(X−)との差を求める演算「D(αx)=D(X+)−D(X−)」を行う。演算で得られた差D(αx)は、結局、容量差ΔC=(C11+C22)−(C12+C21)を示すものになり、これは上述したとおり、X軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。そこで、制御ユニット500は、得られた差D(αx)をX軸方向に作用した力の検出値として出力する。
【0067】
一方、容量素子C13,C24は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路413に接続されている。C/V変換回路413は、並列接続された容量素子C13,C24の静電容量値(容量素子C13の静電容量値C13と容量素子C24の静電容量値C24との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路423によってデジタル検出信号D(Y+)に変換される。
【0068】
同様に、容量素子C14,C23は並列接続され、これらの固定電極はC/V変換回路414に接続されている。C/V変換回路414は、並列接続された容量素子C14,C23の静電容量値(容量素子C14の静電容量値C14と容量素子C23の静電容量値C23との和)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路424によってデジタル検出信号D(Y−)に変換される。
【0069】
ここで、Y軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fyを受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子を正側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C13,C24は、いずれも正側容量素子であり、デジタル検出信号D(Y+)は、正側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0070】
逆に、Y軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fyを受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子を負側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C14,C23は、いずれも負側容量素子であり、デジタル検出信号D(Y−)は、負側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0071】
制御ユニット500は、デジタル検出信号D(Y+)とD(Y−)との差を求める演算「D(αy)=D(Y+)−D(Y−)」を行う。演算で得られた差D(αy)は、結局、容量差ΔC=(C13+C24)−(C14+C23)を示すものになり、これは上述したとおり、Y軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。そこで、制御ユニット500は、得られた差D(αy)をY軸方向に作用した力の検出値として出力する。
【0072】
また、容量素子C15の固定電極はC/V変換回路415に接続されている。C/V変換回路415は、容量素子C15の静電容量値C15をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路425によってデジタル検出信号D(Z+)に変換される。
【0073】
同様に、容量素子C25の固定電極はC/V変換回路416に接続されている。C/V変換回路416は、容量素子C25の静電容量値C25をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路426によってデジタル検出信号D(Z−)に変換される。
【0074】
ここで、Z軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fzを受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子を正側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C15は正側容量素子であり、デジタル検出信号D(Z+)は、正側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0075】
逆に、Z軸を検出軸として、作用体310が検出軸の正方向への力+Fzを受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子を負側容量素子と呼ぶことにすれば、容量素子C25は負側容量素子であり、デジタル検出信号D(Z−)は、負側容量素子の静電容量値を示す信号になる。
【0076】
制御ユニット500は、デジタル検出信号D(Z+)とD(Z−)との差を求める演算「D(αz)=D(Z+)−D(Z−)」を行う。演算で得られた差D(αz)は、結局、容量差ΔC=C15−C25を示すものになり、これは上述したとおり、Z軸を検出軸とする力の検出値を示すものになる。そこで、制御ユニット500は、得られた差D(αz)をZ軸方向に作用した力の検出値として出力する。
【0077】
かくして、図1に示す主要構造部に、図9に示す開ループ検出回路を付加すれば、開ループ式検出を行う力検出装置を実現することができる。
【0078】
<<< §4. 閉ループ式検出の基本原理 >>>
さて、§2で説明した開ループ式検出では、作用体310に対する変位制御は全く行わず、外力によって生じた作用体310の変位をそのまま力の検出値として出力することになる。しかしながら、この開ループ式力検出には、検出対象となる力が比較的小さく、作用体の変位が線形領域内に維持されている限り正確な検出値が得られるが、検出対象となる力が大きくなると、作用体の変位が線形領域を外れ、検出精度が低下する問題があることは、既に述べたとおりである。
【0079】
図10は、図1に示す主要構造部の作用体310に作用した加速度αと変位dとの関係を示すグラフである。作用体310に作用した加速度αと、この加速度αに起因して作用体310に加わる力Fとの間には、作用体310の質量をmとして、F=mαなる関係が成り立つので、作用体310の質量mが一定である限り、力Fは加速度αに比例した値になり、実質的に、力Fは加速度αと等価な物理量として取り扱うことができる。
【0080】
そして、作用体310に力Fが作用すると、可撓性接続部材として機能する4本の橋梁部331〜334が撓みを生じ、作用体310が変位を生じることになる。ここで、仮に橋梁部331〜334が完全にバネとして機能し、その伸びがフックの法則に従うとしても、図7や図8に示す変位状態を見ればわかるとおり、作用体310の各座標軸方向の変位は、橋梁部331〜334の伸びに線形対応するものではない。したがって、所定の検出軸方向に作用した加速度αと、この加速度αに起因した力Fによって作用体310に生じる当該検出軸方向の変位dとの間には、正確な線形関係が維持されるものではない。
【0081】
ただ、図10のグラフに示すように、加速度αの絶対値が小さい領域、別言すれば、変位dの絶対値が小さい領域では、所定の検出精度において、加速度αと変位dとの間に線形関係がある取り扱いを行うことができる。図10に示す例の場合、加速度αが、α2<α<α1の範囲内(α2は負の加速度)、別言すれば、変位dが、d2<d<d1の範囲内(d2は負の変位)が、線形領域(線形関係があるとする取り扱いを行うことができる領域)となっている。したがって、図示の例では、α2<α<α1の範囲内の加速度αを検出する上では、§2で説明した開ループ式検出を適用しても、所定の検出精度をもった検出結果を得ることができるが、加速度αの絶対値がそれ以上大きくなると、非線形領域に入るため、検出精度は低下せざるを得ない。
【0082】
容量素子を利用して作用体の変位検出を行うタイプの装置では、更に、別な問題が加わってくる。すなわち、容量素子の静電容量値は、電極間隔に反比例するため、容量差ΔCと変位dとの間にも、線形関係は得られない。ただ、変位dが小さい領域では、近似的に両者間に線形関係があるとする取り扱いを行うことができる。
【0083】
このような事情から、図9に示す制御ユニット500から出力される検出値D(αx),D(αy),D(αz)は、加速度の値αx,αy,αzが大きくなればなるほど、誤差を含んだ不正確な値にならざるを得ない。
【0084】
このような問題を解消するために、前掲の特許文献6などには、閉ループ式(サーボ式)検出の手法が開示されている。この閉ループ式の検出では、作用体310の変位が常に0となるようなフィードバック制御が行われる。すなわち、外力によって作用体310が変位しようとした場合、当該外力に対する抗力を作用させて作用体310の位置を基準位置に維持させる制御が行われる。そして、作用体を基準位置に維持させるための抗力発生に要した電気エネルギーの大きさが、作用した外力の大きさとして検出される。
【0085】
たとえば、図10に示すグラフにおいて、加速度α1が作用した場合、フィードバック制御を行わないと、作用体310は変位d1を生じる位置まで移動することになる。閉ループ式の検出では、この場合、作用体310を基準位置(変位d=0の位置)まで押し戻す抗力を加えるフィードバック制御を行い、作用体310が基準位置を維持するようにし、そのとき加えた抗力を測定し、この抗力の大きさを、作用した加速度α1の大きさを示す検出値として出力することになる。
【0086】
<<< §5. 閉ループ式検出回路 >>>
図11は、このような閉ループ式の検出を行うために利用されるフィードバック制御回路の基本構成を示す回路図である。この図11では、説明の便宜上、図の縦方向を唯一の検出軸とした一次元の力検出装置の例を示してある。図の左側には、導電性の作用体310と、上方に設けられた固定電極E1と、下方に設けられた固定電極E2とが描かれている。導電性の作用体310は接地電位に維持されており、固定電極E1と作用体310の上面部分(変位電極)とによって、正側容量素子C1が構成され、固定電極E2と作用体310の下面部分(変位電極)とによって、負側容量素子C2が構成されている。
【0087】
ここで、正側容量素子C1は、作用体310に固定された変位電極(実際には、作用体310の上面部分)と筐体に固定された固定電極E1とによって構成され、作用体310が検出軸の正方向(図11の上方向)への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向(図11の下方向)への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる容量素子である。また、負側容量素子C2は、作用体310に固定された変位電極(実際には、作用体310の下面部分)と筐体に固定された固定電極E2とによって構成され、作用体310が検出軸の正方向(図11の上方向)への力を受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向(図11の下方向)への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる容量素子である。
【0088】
図11において、作用体310の中心に示されている点Gは、この作用体の重心を示しており、図には、この重心Gが基準位置d0に維持されている状態が示されている。基準位置d0は、この力検出装置に何ら外力が作用していない状態における作用体の重心Gの位置であり、ここに示す実施形態の場合、固定電極E1,E2の中間点に基準位置d0が設定されている。したがって、作用体310(の重心G)が、この基準位置d0にある状態では、正側容量素子C1の静電容量値C1と負側容量素子C2の静電容量値C2とは等しくなり、容量差をΔC=C1−C2と定義した場合、ΔC=0になる。
【0089】
図1に示す主要構造部は、X,Y,Zの3軸をそれぞれ独立した検出軸とする三次元力検出装置に利用されるものであるが、各座標軸方向の検出原理は、いずれも図11に示す一次元力検出装置の検出原理と同じである。
【0090】
すなわち、X軸を検出軸とする場合、図9の回路図でも説明したとおり、容量素子C11,C22が正側容量素子として図11の容量素子C1に対応し、容量素子C12,C21が負側容量素子として図11の容量素子C2に対応する。図1に示す主要構造部の場合、X軸方向の力が作用した場合、作用体310は図7に示すように傾斜することになるが、X軸正方向への力を受けると正側容量素子の電極間隔が狭くなり、負側容量素子の電極間隔が広くなり、X軸負方向への力を受けると、正側容量素子の電極間隔が広くなり、負側容量素子の電極間隔が狭くなる、という基本原理に変わりはない。
【0091】
一方、Y軸を検出軸とする場合、図9の回路図でも説明したとおり、容量素子C13,C24が正側容量素子として図11の容量素子C1に対応し、容量素子C14,C23が負側容量素子として図11の容量素子C2に対応する。この場合も、やはりY軸正方向への力を受けると正側容量素子の電極間隔が狭くなり、負側容量素子の電極間隔が広くなり、Y軸負方向への力を受けると、正側容量素子の電極間隔が広くなり、負側容量素子の電極間隔が狭くなる、という基本原理に変わりはない。
【0092】
また、Z軸を検出軸とする場合、図9の回路図でも説明したとおり、容量素子C15が正側容量素子として図11の容量素子C1に対応し、容量素子C25が負側容量素子として図11の容量素子C2に対応する。この場合も、やはりZ軸正方向への力を受けると正側容量素子の電極間隔が狭くなり、負側容量素子の電極間隔が広くなり、Z軸負方向への力を受けると、正側容量素子の電極間隔が広くなり、負側容量素子の電極間隔が狭くなる、という基本原理に変わりはない。
【0093】
図11に示すとおり、固定電極E1はカップリング用容量素子C41を介してC/V変換回路41に接続されている。C/V変換回路41は、容量素子C1の静電容量値(同じ符号C1で示す)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路42によってデジタル検出信号D(+)に変換される。同様に、固定電極E2はカップリング用容量素子C45を介してC/V変換回路45に接続されている。C/V変換回路45は、容量素子C2の静電容量値(同じ符号C2で示す)をアナログ検出電圧に変換する回路である。このアナログ検出電圧は、A/D変換回路46によってデジタル検出信号D(−)に変換される。
【0094】
制御ユニット50は、ここに示す例の場合、マイクロコンピュータによって構成されており、デジタル検出信号D(+)とD(−)との差を求める演算を行う。求めた差は、容量素子C1の静電容量値C1と容量素子C2の静電容量値C2との差、すなわち、容量差ΔC=C1−C2を示すものになる。この容量差ΔCは符号をもった量であり、図11に示す例のように、図の上下方向に検出軸を設定した場合であれば、ΔC>0は、作用体310が基準位置d0よりも上方に変位していることを示し、ΔC<0は、作用体310が基準位置d0よりも下方に変位していることを示し、ΔC=0は、作用体310が基準位置d0にあることを示す(図1に示す主要構造部において、X軸もしくはY軸を検出軸とした場合、ΔCは作用体310の重心GのX軸もしくはY軸に関する変位を示すことになる)。
【0095】
また、制御ユニット50は、この容量差ΔCに基づいて、所定の駆動電圧を示すデジタル駆動信号E(+),E(−)を出力する制御処理を行う。図示のとおり、デジタル駆動信号E(+)は、これをアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路43に与えられ、変換後のアナログ駆動信号は、ドライバ回路44に与えられる。ドライバ回路44は、このアナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧V1を固定電極E1に印加する。同様に、デジタル駆動信号E(−)は、これをアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路47に与えられ、変換後のアナログ駆動信号は、ドライバ回路48に与えられる。ドライバ回路48は、このアナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧V2を固定電極E2に印加する。
【0096】
結局、図11に示す回路において、C/V変換回路41およびA/D変換回路42は、正側容量素子C1の静電容量値C1をデジタル検出信号D(+)として検出する検出手段として機能し、D/A変換回路43およびドライバ回路44は、正側容量素子C1を構成する電極間に駆動電圧V1を印加してクーロン力を作用させる駆動手段として機能する。同様に、C/V変換回路45およびA/D変換回路46は、負側容量素子C2の静電容量値C2をデジタル検出信号D(−)として検出する検出手段として機能し、D/A変換回路47およびドライバ回路48は、負側容量素子C2を構成する電極間に駆動電圧V2を印加してクーロン力を作用させる駆動手段として機能する。
【0097】
ここに示す例の場合、各容量素子C1,C2の変位電極(作用体310の表面)が共通の接地電位に維持されているため、駆動手段は、個々の固定電極E1,E2にそれぞれ駆動電圧V1,V2を印加することにより、個々の容量素子C1,C2を構成する電極間にクーロン力を作用させるための電圧V1,V2を生じさせることができる。もちろん、原理的には、変位電極は必ずしも接地電位に固定する必要はない。各容量素子C1,C2を構成する電極間に何らかの電位差を生じさせてクーロン力を作用させることができれば、個々の変位電極や個々の固定電極の電位は任意に設定することができる。ただ、実用上は、図11に示す例のように、各変位電極を共通の接地電位に固定し、個々の固定電極に、それぞれ必要な電圧を印加するような回路を用いるのが好ましい。
【0098】
なお、図11に示す回路において、検出手段41,42,45,46をカップリング用容量素子C41,C45を介して容量素子C1,C2に接続し、駆動手段43,44,47,48を抵抗素子R44,R48を介して容量素子C1,C2に接続しているのは、検出手段を構成する回路と駆動手段を構成する回路とを電気的に分離するためである。すなわち、正側容量素子C1および負側容量素子C2には、それぞれ検出手段と駆動手段との双方が接続されることになるが、検出手段を、カップリング用容量素子C41,C45を介して正側容量素子C1,負側容量素子C2に接続し、駆動手段を、抵抗素子R44,R48を介して正側容量素子C1,負側容量素子C2に接続することにより、検出手段は、駆動手段が印加した駆動電圧V1,V2とは無関係に、容量素子C1,C2の静電容量値を測定することができ、また、駆動手段は、検出手段の検出動作とは無関係に、固定電極E1,E2に所望の駆動電圧V1,V2を印加することができる。
【0099】
制御ユニット50は、容量差ΔC=C1−C2(具体的には、デジタル検出信号の差D(+)−D(−))に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0100】
容量差ΔCは、「ΔC=C1(正側容量素子の静電容量値)−C2(負側容量素子の静電容量値)」として定義される符号をもった量であるから、作用体310が検出軸正方向に変位するとΔC>0になり、検出軸負方向に変位するとΔC<0になる。このような点で、容量差ΔCの符号は検出軸の符号と一致し、ΔCが正なら検出軸正方向への変位を示し、ΔCが負なら検出軸負方向への変位を示すことになる。
【0101】
一方、印加電圧差ΔVも、「ΔV=V2(負側容量素子の電極間に印加する電圧)−V1(正側容量素子の電極間に印加する電圧)」として定義される符号をもった量であり、作用体310に対して加える力の方向を示す量になる。すなわち、印加電圧差ΔV>0の場合には、V2>V1ということになるので、図11において、下方に向けたクーロン力の方が上方に向けたクーロン力よりも大きくなり、作用体310には、下方へ移動させる力が加わることになる。逆に、印加電圧差ΔV<0の場合には、V1>V2ということになるので、図11において、上方に向けたクーロン力の方が下方に向けたクーロン力よりも大きくなり、作用体310には、上方へ移動させる力が加わることになる。このような点で、印加電圧差ΔVの符号は検出軸の符号と逆になり、ΔVが正なら検出軸負方向への力が加えられることを示し、ΔVが負なら検出軸正方向への力が加えられることを示すことになる。
【0102】
このように、本願における容量差ΔCおよび印加電圧差ΔVは、いずれも正および負の符号をもった量であり、これらの量についての「増加」もしくは「減少」とは、その絶対値の増減を意味するものではなく、符号を考慮した量の増減を意味するものである。たとえば、「+3から+8への変化は増加」であるが、「+3から−8への変化は減少」である。
【0103】
制御ユニット50によるフィードバック制御は、上述したように、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させる制御になる。これは、図11における作用体310が上方に変位していた場合に、下方へ移動させる力を加える制御ということになる。逆に、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させる制御になるが、これは、図11における作用体310が下方に変位していた場合に、上方へ移動させる力を加える制御ということになる。結局、制御ユニット50によるフィードバック制御は、作用体310が外力の作用を受けて基準位置d0から変位しようとしたら、作用体310を基準位置d0に維持させるための抗力を加える制御ということになる。
【0104】
なお、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させる制御としては、電圧V2を増加させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(−)を増加させる制御)を行ってもよいし、逆に、電圧V1を減少させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(+)を減少させる制御)を行ってもよい。同様に、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させる制御としては、電圧V2を減少させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(−)を減少させる制御)を行ってもよいし、逆に、電圧V1を増加させる制御(制御ユニット50の動作としては、デジタル駆動信号E(+)を増加させる制御)を行ってもよい。
【0105】
このように、図11に示す駆動手段43,44は、正側容量素子C1を構成する固定電極E1に駆動電圧V1(V1≧0)を印加して、作用体310に対して図の上方へのクーロン引力を作用させる機能を有し、駆動手段47,48は、負側容量素子C2を構成する固定電極E2に駆動電圧V2(V2≧0)を印加して、作用体310に対して図の下方へのクーロン引力を作用させる機能を有している。そして、上述したように、駆動電圧V1,V2を同時に作用させることも可能である。この場合、作用体310は、図の上下両方向に作用するクーロン力によって綱引きされることになり、その差し引きの結果として、より大きな駆動電圧が供給された固定電極に向かう方向の力が加わることになる。
【0106】
このように、上下両方向にクーロン力を作用させて綱引きさせると、エネルギー効率は低下するが、より安定した制御系を実現できる。制御ユニット50は、ΔC>0の場合には、駆動電圧V1を減少させて(但し、下限は0)、駆動電圧V2を増加させ、ΔC<0の場合には、駆動電圧V2を減少させて(但し、下限は0)、駆動電圧V1を増加させる制御を行うようにすればよい。
【0107】
制御ユニット50が行う上述の制御は、作用体310に作用している外力に等しい抗力を逆向きに加え、変位(容量差ΔC)が常に0になるようにする制御ということになる。したがって、このような制御が正確に行われれば、印加電圧差ΔVの大きさ(加えた抗力の大きさ)は、作用した外力の大きさを示すことになり、印加電圧差ΔVの符号は、作用した外力の向きを示すことになる。そこで、制御ユニット50は、この印加電圧差ΔVを、作用した外力(この例の場合、検出軸方向の加速度α)のデジタル検出値D(α)として出力することができる。以上が、この図11に示す閉ループ式検出回路における制御ユニット50の基本的な動作である(実際には、§7,§8で述べるように、本発明では、若干異なる動作が行われる)。
【0108】
続いて、この図11に示す一次元の力検出装置用の検出回路を、三次元の力検出装置に適用した例を図12に示す。図12は、図1に示す主要構造部に適用可能な閉ループ式検出回路の一例を示す回路図であり、基本的には、図9に示す開ループ式検出回路に、駆動手段を付加した形態をとる。そこで、以下、図9に示す回路との相違点のみを述べることにする。
【0109】
まず、X軸を検出軸とする正側容量素子C11,C22の固定電極E11,E22に、デジタル駆動信号E(X+)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路431およびドライバ回路441が付加され、負側容量素子C12,C21の固定電極E12,E21に、デジタル駆動信号E(X−)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路432およびドライバ回路442が付加されている。
【0110】
ここで、検出手段と駆動手段とを回路上で分離するために、固定電極E11,E22は、カップリング用容量素子C411を介してC/V変換回路411に接続され、また、抵抗素子R441を介してドライバ回路441に接続されている。同様に、固定電極E12,E21は、カップリング用容量素子C412を介してC/V変換回路412に接続され、また、抵抗素子R442を介してドライバ回路442に接続されている。
【0111】
一方、Y軸を検出軸とする正側容量素子C13,C24の固定電極E13,E24に、デジタル駆動信号E(Y+)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路433およびドライバ回路443が付加され、負側容量素子C14,C23の固定電極E14,E23に、デジタル駆動信号E(Y−)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路434およびドライバ回路444が付加されている。
【0112】
ここで、検出手段と駆動手段とを回路上で分離するために、固定電極E13,E24は、カップリング用容量素子C413を介してC/V変換回路413に接続され、また、抵抗素子R443を介してドライバ回路443に接続されている。同様に、固定電極E14,E23は、カップリング用容量素子C414を介してC/V変換回路414に接続され、また、抵抗素子R444を介してドライバ回路444に接続されている。
【0113】
更に、Z軸を検出軸とする正側容量素子C15の固定電極E15に、デジタル駆動信号E(Z+)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路435およびドライバ回路445が付加され、負側容量素子C25の固定電極E25に、デジタル駆動信号E(Z−)に基づく所定の駆動電圧を印加する駆動手段として、D/A変換回路436およびドライバ回路446が付加されている。
【0114】
ここで、検出手段と駆動手段とを回路上で分離するために、固定電極E15は、カップリング用容量素子C415を介してC/V変換回路415に接続され、また、抵抗素子R445を介してドライバ回路445に接続されている。同様に、固定電極E25は、カップリング用容量素子C416を介してC/V変換回路416に接続され、また、抵抗素子R446を介してドライバ回路446に接続されている。
【0115】
なお、この実施形態の場合、制御ユニット500は、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成されており、当該プログラムに基づいて、所定の制御処理を実行する。
【0116】
図12に示す制御ユニット500が行う基本的な処理は、図11に示す制御ユニット50が行う基本的な処理と同じである。すなわち、X軸を検出軸とする検出処理として、X軸に関する容量差ΔCを、デジタル検出信号D(X+),D(X−)を用いて、「ΔC=D(X+)−D(X−)」なる演算によって求め、ΔC>0の場合には、X軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、X軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0117】
ここで、X軸に関する印加電圧差ΔVは、デジタル駆動信号E(X+),E(X−)を用いて、「ΔV=E(X−)−E(X+)」なる演算で定まる量になるので、前述したとおり、E(X+),E(X−)を増減することにより任意に設定できる。そして、このX軸に関する印加電圧差ΔVを、作用したX軸方向の外力(この例の場合、X軸方向の加速度αx)のデジタル検出値D(αx)として出力できる(実際には、§7,§8で述べるように、本発明における検出値は若干異なる方法で決定される)。
【0118】
同様に、Y軸を検出軸とする検出処理として、Y軸に関する容量差ΔCを、デジタル検出信号D(Y+),D(Y−)を用いて、「ΔC=D(Y+)−D(Y−)」なる演算によって求め、ΔC>0の場合には、Y軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、Y軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0119】
ここで、Y軸に関する印加電圧差ΔVは、デジタル駆動信号E(Y+),E(Y−)を用いて、「ΔV=E(Y−)−E(Y+)」なる演算で定まる量になるので、前述したとおり、E(Y+),E(Y−)を増減することにより任意に設定できる。そして、このY軸に関する印加電圧差ΔVを、作用したY軸方向の外力(この例の場合、Y方向の加速度αy)のデジタル検出値D(αy)として出力できる(実際には、§7,§8で述べるように、本発明における検出値は若干異なる方法で決定される)。
【0120】
更に、Z軸を検出軸とする検出処理として、Z軸に関する容量差ΔCを、デジタル検出信号D(Z+),D(Z−)を用いて、「ΔC=D(Z+)−D(Z−)」なる演算によって求め、ΔC>0の場合には、Z軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、Z軸に関する印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う。
【0121】
ここで、Z軸に関する印加電圧差ΔVは、デジタル駆動信号E(Z+),E(Z−)を用いて、「ΔV=E(Z−)−E(Z+)」なる演算で定まる量になるので、前述したとおり、E(Z+),E(Z−)を増減することにより任意に設定できる。そして、このZ軸に関する印加電圧差ΔVを、作用したZ軸方向の外力(この例の場合、Z方向の加速度αz)のデジタル検出値D(αz)として出力できる(実際には、§7,§8で述べるように、本発明における検出値は若干異なる方法で決定される)。
【0122】
<<< §6. 従来の閉ループ式検出方法 >>>
上述した§5では、図11に示す制御ユニット50による検出軸方向に作用した力の検出処理および図12に示す制御ユニット500によるX軸,Y軸,Z軸のそれぞれの方向に作用した力の検出処理について説明した。この§5で説明した検出方法は、従来から知られている一般的な閉ループ式検出方法に基づくものであり、作用した外力の大小にかかわらず、常に変位0の状態で測定を行うことを前提としている。そのため、§2で述べた開ループ式検出方法において問題となった非線形性に起因する検出誤差は解消することになる。
【0123】
しかしながら、正確な検出値を得るためには、作用体を常に基準位置に正確に維持する正確な制御が必要になり、検出精度は、フィードバック制御の精度に依存したものになる。ここでは、まず、この点を具体的なグラフを用いて説明しよう。
【0124】
図13は、従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第1のグラフである。ここでは、説明の便宜上、図11に示す制御ユニット50による検出軸方向に作用した力の検出処理を例にとって説明を行う。この図13に示すグラフの縦軸は容量差ΔC(単位fF)、横軸は印加電圧差ΔV(単位Volt)を示している。
【0125】
容量差ΔCは、既に述べたとおり、正側容量素子C1の静電容量値C1と、負側容量素子C2の静電容量値C2との差「ΔC=C1−C2」で定義される符号をもった量であり、作用体の基準位置からの変位を示している。このグラフにおいて、ΔC=0の位置は、作用体が基準位置d0にある状態を示し、ΔC>0の領域は作用体が基準位置d0より上方に変位している状態を示し、ΔC<0の領域は作用体が基準位置d0より下方に変位している状態を示す。
【0126】
一方、印加電圧差ΔVは、既に述べたとおり、正側容量素子C1を構成する電極間に印加する電圧V1と負側容量素子C2を構成する電極間に印加する電圧V2とについて、「ΔV=V2−V1」なる式で定義される差であり、やはり符号をもった量になる。この印加電圧差ΔVは、作用体に加えている抗力(クーロン力)の向きと大きさとを示す。このグラフにおいて、ΔV=0の位置は、作用体に何ら抗力を加えていない状態を示し、ΔV>0の領域は作用体に負側容量素子の電極間隔を狭くさせる抗力が作用している状態を示し、ΔV<0の領域(図13には示されていない)は作用体に正側容量素子の電極間隔を狭くさせる抗力が作用している状態を示す。
【0127】
いま、作用体に何ら抗力を加えない場合に、容量差ΔC=4fFが検出される場合を考えてみよう。これは、図11に示す例において、作用体310に対して、上方向に所定の加速度α1が作用した結果、作用体310が上方向に変位した場合に対応する。§2で述べた開ループ式検出を行うのであれば、容量差ΔCを検出し、これを作用した加速度α1を示す検出値として出力することになる。この場合、4fFに対応する値が加速度α1を示す検出値として出力される。しかしながら、この開ループ式検出では、加速度α1の絶対値が大きくなればなるほど、非線形性に基づく誤差が大きくなることは、既に述べたとおりである。
【0128】
そこで、閉ループ式検出では、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われる。図示の例の場合、ΔC>0であるから、ΔVを増加させる制御(V2を増加させるか、V1を減少させる制御)が行われることになる。たとえば、加速度α1が作用している環境において、印加電圧を、初期状態「V1=0,V2=0」から、V1=0を維持しつつ、V2を徐々に増加させてゆくと、ΔVは0から徐々に増加してゆくことになる。その結果、図11に示す例において、作用体310に対する下方向への抗力が増加してゆき、作用体310の位置は下方向へ修正されることになる。これにより、容量差ΔCは減少してゆく。
【0129】
このように、ΔVを0から徐々に増加させてゆくと、図13のグラフG1に示すように、容量差ΔCは4fFから徐々に減少してゆき、やがて点P1に到達し、ΔC=0になる。ここで、もし、ΔVを更に増加させてゆくと、容量差ΔCはグラフG1に示すとおり負の値をとることになる。もちろん、容量差ΔCが負の値になった場合には、今度はΔVを減少させる制御が行われることになるので、容量差ΔCは徐々に増加してゆき、結局、点P1に到達することになる。
【0130】
ここで、点P1に到達した時点、すなわち、ΔC=0になった時点における印加電圧差ΔVを、図示のとおりVα1とすれば、このVα1は加速度α1に起因して生じた力を示す検出値になる。なぜなら、ΔC=0になった時点で、作用体310は基準位置d0に位置することになるので、この状態において、加速度α1に起因して生じた力と、印加電圧差Vα1に起因して生じた抗力とが拮抗しているからである。
【0131】
結局、制御ユニット50が行うフィードバック制御は、図13のグラフG1に沿って、制御系を点P1の状態へもってゆく処理ということになり、制御系が点P1の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα1)が、作用した加速度α1の検出値として出力されることになる。そこで、以下、点P1を検出点と呼ぶことにする。
【0132】
なお、ここでは説明の便宜上、グラフG1を直線で示しているが、クーロン力は印加電圧の2乗に比例する量であり、また、加えたクーロン力と変位との間にも必ずしも線形関係は維持されず、更に変位と静電容量値との間にも線形関係は成り立たないので、実際には、グラフG1は直線にはならない(後述するグラフG2〜G4についても同様)。
【0133】
図14は、図11に示す例において、作用体310に対して、上方向に所定の加速度α2(α1よりも絶対値が大きい加速度)が作用しているときに、制御ユニット50によって行われるフィードバック制御動作を示すグラフである。図示のとおり、ΔV=0におけるグラフG2の容量差はΔC=5fFになっているが、これは作用した加速度α2の絶対値が、図13に示す場合の加速度α1の絶対値よりも大きいことを示している。
【0134】
この場合も、制御ユニット50によって、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われ、制御系を検出点P2の状態へもってゆく処理がなされる。そして、制御系が検出点P2の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα2)が、作用した加速度α2の検出値として出力される。この例では、α2>α1であるので、Vα2>Vα1となり、図13に示す検出点P1に比べて、図14に示す検出点P2は、横軸上でより右側に位置する点になっている。
【0135】
一方、図15は、図11に示す例において、作用体310に対して、下方向に所定の加速度α3(α1と絶対値が等しく向きが逆の加速度)が作用しているときに、制御ユニット50によって行われるフィードバック制御動作を示すグラフである。下方向の加速度α3は、検出軸負方向を向いた加速度であるので、α3は負の値をとり、ΔV=0におけるグラフG3の容量差はΔC=−4fFになる。
【0136】
この場合も、制御ユニット50によって、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われ、制御系を検出点P3の状態へもってゆく処理がなされる。ただ、ΔV=0における容量差ΔCが負の値をとっているので、制御系を検出点P3の状態へもってゆくためには、印加電圧差ΔVも負にする必要がある(すなわち、V1>V2にする必要がある)。そして、制御系が検出点P3の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα3)が、作用した加速度α3の検出値として出力される。ここで、Vα3は負の値をとる。
【0137】
更に、図16は、図11に示す例において、作用体310に対して、下方向に所定の加速度α4(α2と絶対値が等しく向きが逆の加速度)が作用しているときに、制御ユニット50によって行われるフィードバック制御動作を示すグラフである。下方向の加速度α4は、検出軸負方向を向いた加速度であるので、α4は負の値をとり、ΔV=0におけるグラフG3の容量差はΔC=−5fFになる。
【0138】
この場合も、制御ユニット50によって、容量差ΔCを0に維持するフィードバック制御が行われ、制御系を検出点P4の状態へもってゆく処理がなされる。やはり、ΔV=0における容量差ΔCが負の値をとっているので、制御系を検出点P4の状態へもってゆくためには、印加電圧差ΔVも負にする必要がある。そして、制御系が検出点P4の状態となったときの印加電圧差ΔV(=Vα4)が、作用した加速度α4の検出値として出力される。ここで、Vα4は負の値をとる。
【0139】
このように、従来の閉ループ式検出方法は、フィードバック制御により、常に作用体の変位が0の状態で測定を行うことが前提となっている。たとえば、図13〜図16のグラフG1〜G4に示す具体的な事例の場合、常に、制御系を検出点P1〜P4の状態にもってゆき、この状態での印加電圧差Vα1〜Vα4を検出値として出力することが前提となっている。別言すれば、理想的なフィードバック制御が行われなかったために、制御系を検出点P1〜P4の位置に正確にもってゆくことができなかった場合(ΔCが正確に0にはならなかった場合)、検出値として出力された印加電圧差ΔVは誤差を含んだものになる。このように、検出精度は、フィードバック制御の精度に依存したものになってしまう。
【0140】
もちろん、図11に示す制御ユニット50や、図12に示す制御ユニット500に、より高精度のフィードバック制御機能をもたせておけば、より高精度の検出値を得ることは可能である。しかしながら、高精度のフィードバック制御機能を実現するためには、より高度で複雑な制御系が必要になり、それだけ製造コストも高騰せざるを得ない。一般に、フィードバック制御系において、性能を高めるために制御ゲインを上げると、制御系が発振する弊害が知られている。このため、安定した制御系を設計するためには、高度の技術が必要とされ、また、複雑なハードウエアが要求される。
【0141】
本発明は、上述したような容量素子を用いた閉ループ式の力検出装置において、比較的単純な制御系を用いながら、高精度な検出結果を得ることができる技術を提供することを目的とするものである。続いて、本発明の基本概念を、§7および§8で説明する。
【0142】
<<< §7. 本発明の閉ループ式検出方法(その1) >>>
上述したとおり、従来の閉ループ式検出方法は、「作用体の変位が0の状態で測定を行う」ことが前提となっているため、検出精度を高めるためには、制御精度も高める必要が生じる。これに対して、本発明の基本概念は、「作用体の変位が0の状態で測定を行う」という前提には捕われない検出を行う点にある。この§7で述べる第1の方法では、「作用体の変位が、必要とされる検出精度に応じた所定の線形領域内であれば測定を行う」という方針をとる。したがって、従来の閉ループ式検出方法のように、作用体の位置を正確に基準位置に維持させるような高精度な制御を行う必要がなくなり、比較的単純な制御系を用いた装置を実現できる。
【0143】
もちろん、作用体の位置が基準位置からずれている状態では、印加電圧差ΔVは正確な検出値にはならないので、このときの印加電圧差ΔVをそのまま検出値として出力するのは不適切である。そこで、本発明では、このときの印加電圧差ΔVと容量値ΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを作用体に作用した力を示す検出値として出力するのである。ここで、ΔVは、検出値の粗い成分に相当し、k・ΔCは、検出値の密な成分に相当する。kは、印加電圧のスケールと容量値のスケールとを調整する比例係数である。
【0144】
続いて、図17〜図20のグラフを参照しながら、本発明の基本原理を、具体例に即して説明する。図17〜図20に示すグラフG1〜G4は、図13〜図16に示すグラフG1〜G4に対応するものであり、図11に示す例において、作用体310に加速度α1,α2,α3,α4が作用しているときの本発明に係る検出原理を示している。
【0145】
まず、図17を参照しながら、加速度α1が作用しているときの検出原理を説明する。加速度α1は正の加速度であり、この加速度α1の作用を受け、作用体310は図11の上方に変位することになる。そこで、この変位を0にするようなフィードバック制御を行えば、制御系の状態が、グラフG1に沿って遷移することは、既に述べたとおりである。このとき、従来の閉ループ式検出方法では、制御系の状態を正確に検出点P1へもってゆく制御を行うことになるが、ここで述べる本発明に係る方法では、図に一点鎖線で示す正の基準レベルL1と負の基準レベルL2との間(以下、検出可能帯と呼ぶ)へもってゆく制御が行われれば十分である。
【0146】
たとえば、図17において、グラフG1上のサンプル点Q1は、検出可能帯に位置する点であるので、制御系の状態が、当該サンプル点Q1にある場合、その時点で測定を行うことができる。制御系の状態が検出可能帯にあるか否かは、その時点で検出手段によって検出された容量差ΔCが、L2≦ΔC≦L1の範囲内にあるか否かによって判定することができる。
【0147】
制御系の状態が、サンプル点Q1にある場合の検出処理は、次のようにして行われる。まず、この時点における容量差ΔC(Q1)と印加電圧差ΔV(Q1)を求める。ここで、容量差ΔC(Q1)は、図11に示す制御ユニット50に、この時点で入力されているデジタル検出信号D(+)とD(−)との差「D(+)−D(−)」として求めることができ、印加電圧差ΔV(Q1)は、図11に示す制御ユニット50が、この時点で出力しているデジタル駆動信号E(+)とE(−)との差「E(−)−E(+)」として求めることができる。
【0148】
こうして求められた印加電圧差ΔV(Q1)は、図17に示すように、サンプル点Q1の横座標値であるから、作用している角速度α1の正確な検出値にはならない(正確な検出値は、検出点P1の横座標値Vα1である)。ただ、検出可能帯内のグラフG1が直線であると仮定すると、その誤差(Vα1−ΔV(Q1))は、ΔC(Q1)に比例した値になる。この比例係数をkとすれば、正確な検出値Vα1は、図17の右下に示すとおり、Vα1=ΔV(Q1)+k・ΔC(Q1)なる演算によって求まる。ここで、比例係数kは、グラフG1の傾きに応じて定まる値である。
【0149】
同様に、正の加速度α2が作用している場合、図18において、グラフG2上のサンプル点Q2は、検出可能帯に位置する点であるので、制御系の状態が、当該サンプル点Q2にある場合、その時点で測定を行うことができる。具体的には、この時点における容量差ΔC(Q2)と印加電圧差ΔV(Q2)を求めれば、正確な検出値Vα2は、検出可能帯内のグラフG2が直線であるとの仮定の下で、図18の右下に示すとおり、Vα2=ΔV(Q2)+k・ΔC(Q2)なる演算によって求まる。ここで、比例係数kは、グラフG2の傾きに応じて定まる値である。
【0150】
続いて、負の加速度α3が作用している場合を考えよう。この場合、図19において、グラフG3上のサンプル点R3は、検出可能帯に位置する点である(ここでは説明の便宜上、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点をQを冠した符号で示し、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点をRを冠した符号で示すことにする)。したがって、制御系の状態が、当該サンプル点R3にある場合、その時点で測定を行うことができる。具体的には、まず、この時点における容量差ΔC(R3)と印加電圧差ΔV(R3)を求める。図示の例の場合、容量差ΔC(R3)および印加電圧差ΔV(R3)は、いずれも負の値になる。次に、正確な検出値Vα3(負の値をとる)を、検出可能帯内のグラフG3が直線であるとの仮定の下で、図19の左上に示すとおり、Vα3=ΔV(R3)+k・ΔC(R3)なる演算によって求めればよい。ここで、比例係数kは、グラフG3の傾きに応じて定まる値である。
【0151】
負の加速度α4が作用している場合は、図20のようになる。図20に示されているグラフG4上のサンプル点R4は、検出可能帯に位置する点であるので、制御系の状態が、当該サンプル点R4にある場合、その時点で測定を行うことができる。具体的には、まず、この時点における容量差ΔC(R4)と印加電圧差ΔV(R4)を求める。図示の例の場合、容量差ΔC(R4)および印加電圧差ΔV(R4)は、いずれも負の値になる。次に、正確な検出値Vα4(負の値をとる)を、検出可能帯内のグラフG4が直線であるとの仮定の下で、図20の左上に示すとおり、Vα4=ΔV(R4)+k・ΔC(R4)なる演算によって求めればよい。ここで、比例係数kは、グラフG4の傾きに応じて定まる値である。
【0152】
以上、図17,図18に示す例では、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点Q1,Q2を用いた検出動作を説明し、図19,図20に示す例では、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点R3,R4を用いた検出動作を説明したが、いずれの場合も、検出動作に利用するサンプル点は、検出可能帯内の点であれば、その縦座標値の符号は不問である。
【0153】
たとえば、図17に示す例において、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点Q1の代わりに、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点R1を用いた場合でも、サンプル点R1が検出可能帯内の点であれば、Vα1=ΔV(R1)+k・ΔC(R1)なる演算によって正確な検出値Vα1を得ることができる。この場合、ΔV(R1)>Vα1になるが、ΔC(R1)が負の値をとるので、正しい検出値Vα1が得られる。同様に、図19に示す例において、ΔC<0なる縦座標値をもったサンプル点R3の代わりに、ΔC>0なる縦座標値をもったサンプル点Q3を用いた場合でも、サンプル点Q3が検出可能帯内の点であれば、Vα3=ΔV(Q3)+k・ΔC(Q3)なる演算によって正確な検出値Vα3を得ることができる。この場合、ΔV(R3)<Vα3になるが(いずれも負の値をとる)、ΔC(Q3)が正の値をとるので、正しい検出値Vα3が得られる。
【0154】
結局、図17〜図20のいずれの場合も、制御ユニット50は、サンプル点が検出可能帯内にある所定時点において(別言すれば、容量差ΔCが、L2≦ΔC≦L1の範囲内にある所定時点において)、容量差ΔCと印加電圧差ΔVを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを作用体に作用した力を示す検出値として出力する処理を行えばよい。
【0155】
ここで、容量差ΔCに関する正の基準レベルL1と負の基準レベルL2は、検出可能帯を定める役割を果たすので、用途が異なる個々の力検出装置ごとに、それぞれ適当なレベルを予め定めておくようにする。上述の検出原理では、検出可能帯内のグラフG1〜G4が直線であるとの仮定が必要である。そこで、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係が、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域を線形領域と定め、基準レベルL1〜L2の範囲が当該線形領域内に収まるように、基準レベルL1,L2を設定すればよい。
【0156】
前述したとおり、図13〜図20では、グラフG1〜G4は、便宜上、直線のグラフとして描かれているが、クーロン力は印加電圧の2乗に比例する量であり、また、加えたクーロン力と変位との間にも必ずしも線形関係は維持されず、しかも変位(電極間隔)と静電容量値との間にも線形関係は成り立たないので、実際には、各グラフG1〜G4は直線にはならない。しかしながら、作用体の位置が基準位置d0に近くなればなるほど(すなわち、変位が0に近くなればなるほど)、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係は線形関係に近似してくる。すなわち、図13〜図20に示すグラフG1〜G4の場合、検出点P1〜P4に近い部分ほど、直線に近いグラフが得られることになる。そこで、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域内に検出可能帯が定義されるように、基準レベルL1,L2を設定すればよい。
【0157】
具体的には、より高い精度が要求される力検出装置の場合は、正の基準レベルL1をなるべく低く、負の基準レベルL2をなるべく高く設定し、検出可能帯を狭くすればよい。そうすれば、検出可能帯内のグラフG1〜G4の線形性はより高まり、より正確な検出値を得ることができる。但し、検出を行うためには、容量差ΔCが検出可能帯に入るようなフィードバック制御を行う必要があるので、検出可能帯を狭く設定すればするほど、より高精度の制御を行う必要が生じる。それでも、容量差ΔC=0を目標とする従来の閉ループ式制御に比べれば、制御系の負担は大幅に軽減される。
【0158】
逆に、それほど高い精度が要求されない力検出装置の場合は、正の基準レベルL1をなるべく高く、負の基準レベルL2をなるべく低く設定し、検出可能帯を広くすればよい。そうすれば、容量差ΔCが検出可能帯に入るようなフィードバック制御の負担は軽減され、比較的単純な制御系で対応できる。もっとも、検出可能帯を広くすると、検出可能帯内のグラフG1〜G4の線形性は低下し、得られる検出値の精度は落ちることになる。それでも、§2で述べた従来の開ループ式制御に比べれば、より精度の高い検出値を得ることができる。
【0159】
なお、サンプル点が検出可能帯内に入っていない場合には(すなわち、L2≦ΔC≦L1を満足する容量差ΔCが得られていない場合には)、検出可能帯内のサンプル点が得られるようなフィードバック制御が行われる。このようなフィードバック制御は、既に、§5,§6で述べたとおりである。要するに、容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させる制御を行えばよい。
【0160】
ところで、図11に示す例の場合、制御ユニット50は、容量差ΔCを求めるための値D(+),D(−)をデジタルデータとして入力し、印加電圧差ΔVを定める値E(+),E(−)をデジタルデータとして出力する機能を有しており、上述したフィードバック制御や検出処理は、クロック信号に同期したデジタル処理として実行されることになる。このようなデジタル処理を行うためには、具体的には、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、各サンプリング時に、予め設定された正の基準レベルL1と負の基準レベルL2とを参照して、
(処理A)ΔC>L1の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御を行う、
(処理B)ΔC<L2の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御を行う、
(処理C)L2≦ΔC≦L1の場合には、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、「Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは予め定められた定数)」なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する、
のいずれかの処理を実行すればよい。
【0161】
図21は、上記デジタル処理の手順を示す流れ図である。まず、ステップS11において、容量差ΔC(ΔC=C1−C2)が正の基準レベルL1と比較される。ここで、ΔC>L1であった場合は、ステップS12へと進み、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御が行われる(上記処理A)。ここで、ΔV=V2−V1であるから、ΔVを増加させる制御は、V2を増加させてもよいし、V1を減少させてもよい。
【0162】
一方、ステップS11において、ΔC≦L1であった場合は、ステップS13へと進み、容量差ΔCが負の基準レベルL2と比較される。ここで、ΔC<L2であった場合は、ステップS14へと進み、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御が行われる(上記処理B)。ここで、ΔV=V2−V1であるから、ΔVを減少させる制御は、V2を減少させてもよいし、V1を増加させてもよい。
【0163】
ステップS13において、ΔC≧L2であった場合は、L2≦ΔC≦L1なる条件を満足し、検出可能帯内に入っていることになるので、ステップS15へと進み、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、「Vα=ΔV+k・ΔC」なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する(上記処理C)。
【0164】
なお、上記「Vα=ΔV+k・ΔC」なる演算で用いる比例定数kは、前述したとおり、グラフG1〜G4の傾きに基づいて決定される定数であり、予め所定の定数として設定しておくことができる。
【0165】
図13〜図20に示されているグラフG1〜G4は、いずれも同じ傾きをもった直線として描かれているが、前述したとおり、厳密に言えば、これらのグラフは直線にはならない。ただ、検出可能帯内では、ほぼ直線とみなすことができるので、定数kは、この近似的な直線の傾きに基づいて決定すればよい。もちろん、厳密には、この近似直線の傾きも、グラフG1〜G4について同一にはならないが、試作品の装置を利用して予め平均的な傾きを求め、この平均的な傾きに基づいて、所定の定数kを設定すればよい。
【0166】
このように、L2≦ΔC≦L1なる条件を満足し、検出可能帯内に入っている場合は、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行う必要はないので、制御系の負担は大幅に軽減される。別言すれば、検出可能帯に入るまでは、上記処理Aまたは処理Bによって、検出可能帯に入る方向へのフィードバック制御が行われるが、一旦、検出可能帯に入ってしまえば、検出可能帯から出るまでは、印加電圧差ΔVの増減は行われないことになる。このような制御は、常にΔC=0とするためのフィードバック制御(従来の閉ループ式検出の制御)に比べると、極めて負担の軽い制御であり、比較的単純な制御系を用いても、安定した制御動作が実現できる。
【0167】
制御ユニット50を、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成した場合、図21の流れ図に示す手順は、プログラムとして記述される。プロセッサは、このプログラムに基づいて、必要な演算および制御を実行する。
【0168】
以上、図11に示す一次元の力検出装置用の制御ユニット50の動作を説明したが、図12に示す三次元の力検出装置用の制御ユニット500の動作も全く同様である。すなわち、制御ユニット500は、X軸に関する検出動作、Y軸に関する検出動作、Z軸に関する検出動作を別個独立して実行する機能を有し、個々の軸に関する検出動作は、制御ユニット50の検出動作と全く同様である。
【0169】
<<< §8. 本発明の閉ループ式検出方法(その2) >>>
続いて、本発明に係る閉ループ式検出の第2の方法を説明する。この第2の方法も、§7で述べた第1の方法と同様に、「作用体の変位が0の状態で測定を行う」という前提には捕われない検出方法を採る。したがって、従来の閉ループ式検出方法のように、作用体の位置を正確に基準位置に維持させるような高精度な制御を行う必要がなくなり、比較的単純な制御系を用いた装置を実現できる。
【0170】
この第2の方法の重要な特徴は、正の容量差ΔCが得られる第1のサンプル点と、負の容量差ΔCが得られる第2のサンプル点と、の2点を利用する点にある。これを図22および図23のグラフを参照して説明しよう。
【0171】
図22に示すグラフG1は、図17に示すグラフG1と同じものであり、図11に示す例において、作用体310に上方向の加速度α1が作用しているときのフィードバック制御動作を示している。加速度α1は正の加速度であり、この加速度α1の作用を受け、作用体310は図11の上方に変位することになる。そこで、この変位を0にするようなフィードバック制御を行えば、制御系の状態は、グラフG1に沿って遷移する。
【0172】
従来の閉ループ式検出方法では、制御系の状態を正確に検出点P1へもってゆく制御を行うことになるが、ここで述べる方法では、正の容量差ΔC(Q1)をもつサンプル点Q1と、負の容量差ΔC(R1)をもつサンプル点R1とが得られれば、作用した加速度α1の検出が可能になる。また、ここで述べる方法の場合、§7で述べた方法で利用した基準レベルL1,L2の設定は不要である。
【0173】
いま、図22に示すグラフG1上のサンプル点Q1の縦座標値ΔC(Q1)および横座標値ΔV(Q1)が求まり、更に、サンプル点R1の縦座標値ΔC(R1)および横座標値ΔV(R1)が求まったとしよう(ΔC(R1)は負の値、他は正の値になる)。ここで、グラフG1の少なくとも2点Q1,R1間が直線であると仮定すれば、検出点P1の横座標値Vα1(正確な検出値)は、2点Q1,R1の座標値から幾何学的に求めることができる。
【0174】
一方、図23に示すグラフG3は、図19に示すグラフG3と同じものであり、図11に示す例において、作用体310に下方向の加速度α3が作用しているときのフィードバック制御動作を示している。加速度α3は負の加速度であり、この加速度α3の作用を受け、作用体310は図11の下方に変位することになる。そこで、この変位を0にするようなフィードバック制御を行えば、制御系の状態は、グラフG3に沿って遷移する。
【0175】
この場合も、正の容量差ΔC(Q3)をもつサンプル点Q3と、負の容量差ΔC(R3)をもつサンプル点R3とが得られれば、作用した加速度α3の検出が可能になる。すなわち、図23に示すグラフG3上のサンプル点Q3の縦座標値ΔC(Q3)および横座標値ΔV(Q3)が求まり、更に、サンプル点R3の縦座標値ΔC(R3)および横座標値ΔV(R3)が求まったとしよう(ΔC(Q3)は正の値、他は負の値になる)。ここで、グラフG3の少なくとも2点Q3,R3間が直線であると仮定すれば、検出点P3の横座標値Vα3(正確な検出値)は、2点Q3,R3の座標値から幾何学的に求めることができる。
【0176】
図24は、この幾何学的な演算式を算出するためのグラフであり、図25は、このグラフを利用して算出された演算式を示す図である。ここで、図24に示すように、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係を示すグラフGが直線をなすものとし、グラフG上の点Qの縦座標値をΔC(Q)、横座標値をΔV(Q)、グラフG上の点Pの縦座標値を0、横座標値をVα、グラフG上の点Rの縦座標値をΔC(R)、横座標値をΔV(R)とする。図示のとおり、直角三角形T1,T2は相似形なので、辺MPの長さが、辺MQの長さ(ΔC(Q)の絶対値)のk倍であるとすると、辺NPの長さは、辺NRの長さ(ΔC(R)の絶対値)のk倍になる。
【0177】
ここで、2点MN間の距離を、辺MPの長さと辺NPの長さの和として表すと、k・ΔC(Q)−k・ΔC(R)=k・(ΔC(Q)−ΔC(R))になる(ΔC(R)は負の値をとるので、絶対値は−ΔC(R)になる)。一方、この2点MN間の距離は、ΔV(R)−ΔV(Q)と表すこともできるので、図25に示すとおり、
k・(ΔC(Q)−ΔC(R))=ΔV(R)−ΔV(Q)
が成り立ち、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
が得られる。
【0178】
ここで、正しい検出値Vαは、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)
なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)
なる演算によって求めることができるので、結局、図25の下段に示すとおり、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))
/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で求められる。
【0179】
上記演算式には、比例係数kは含まれていない。これは、2点Q,Rの座標値に、比例係数kに関する情報が含まれているためである。§7で述べた第1の方法では、比例係数kの値を近似的な直線の傾きに基づいて予め決定しておき、近似的な定数として取り扱うことになるが、ここで述べる第2の方法では、そのような必要はない。したがって、図13〜図20に示されているグラフG1〜G4が、それぞれ異なる傾きをもった直線になったとしても、各直線の傾きの情報は、2点Q,Rの座標値として正確に反映されることになる。
【0180】
この第2の方法を制御ユニット50や制御ユニット500で実行する場合、やはりクロック信号に同期したデジタル処理として実行することになる。このようなデジタル処理を行うには、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、ΔC>0の場合には印加電圧差ΔVを増加させ、ΔC<0の場合には印加電圧差ΔVを減少させるフィードバック制御を行えばよい。そして、正の容量差ΔCが得られた時点Qでの当該容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、負の容量差ΔCが得られた時点Rでの当該容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で比例係数kを決定し、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)なる演算
によって、検出値Vαを求める演算処理を行えばよい。
【0181】
具体的には、図25に示すように、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))
/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する処理を行えばよい。
【0182】
なお、上述の演算式を導出するためには、図24に示すグラフGが、2点Q,R間で直線をなす、という前提が必要であった。しかしながら、既に述べたとおり、印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係を示すグラフGは、厳密には直線にはならず、検出点Pの近傍において近似的に直線とみなすことができるにすぎない。したがって、上述の演算式によって求めた検出値Vαの精度をより高めるためには、2点Q,Rはできるだけ近接しているのが好ましい。
【0183】
そこで、実用上は、容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行い、このフィードバック制御の過程において、容量差ΔCの符号が正から負に反転したときには、反転直前の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、反転直後の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、容量差ΔCの符号が負から正に反転したときには、反転直前の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、反転直後の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とするのが好ましい。
【0184】
図26は、上記デジタル処理の手順を示す流れ図である。まず、ステップS21において、所定のサンプリングタイミングで求めた容量差ΔCの符号判定が行われる。ここで、ΔC>0であった場合は、ステップS31へと進み、現サンプリング時の容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)として記憶する処理が行われる。そして、ステップS32へ進み、印加電圧差ΔVを増加させる処理を行う。その結果、容量差ΔCは減少することになる。続くステップS33では、次のサンプリングタイミングで求めた容量差ΔCの符号が調べられる。ここで、容量差ΔCの符号反転が生じているかどうかが判定され、符号反転が生じていない場合にはステップS31からの処理が繰り返される。
【0185】
こうして、ΔCの符号が、正から負に反転すると、ステップS33からステップS34に進むことになり、現サンプリング時(反転直後)の容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として記憶する処理が行われる。その結果、反転直前の容量差がΔC(Q)、印加電圧差がΔV(Q)として記憶され(S31)、反転直後の容量差がΔC(R)、印加電圧差がΔV(R)として記憶される(S34)ことになる。そこで、ステップS35へ進み、図25に示す演算式を用いて検出値Vαを求め、これを出力する処理が実行された後、再び、ステップS21からの処理が繰り返される。
【0186】
一方、ステップS21において、ΔC<0であった場合は、ステップS41へと進み、現サンプリング時の容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として記憶する処理が行われる。そして、ステップS42へ進み、印加電圧差ΔVを減少させる処理を行う。その結果、容量差ΔCは増加することになる。続くステップS43では、次のサンプリングタイミングで求めた容量差ΔCの符号が調べられる。ここで、容量差ΔCの符号反転が生じているかどうかが判定され、符号反転が生じていない場合にはステップS41からの処理が繰り返される。
【0187】
こうして、ΔCの符号が、負から正に反転すると、ステップS43からステップS44に進むことになり、現サンプリング時(反転直後)の容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)として記憶する処理が行われる。その結果、反転直前の容量差がΔC(R)、印加電圧差がΔV(R)として記憶され(S41)、反転直後の容量差がΔC(Q)、印加電圧差がΔV(Q)として記憶される(S44)ことになる。そこで、ステップS45へ進み、図25に示す演算式を用いて検出値Vαを求め、これを出力する処理が実行された後、再び、ステップS21からの処理が繰り返される。
【0188】
なお、ステップS21において、ΔC=0と判定された場合は、ステップS22へと進み、印加電圧差ΔVを増加または減少させる制御(どちらでもかまわない)が行われ、再び、ステップS21からの処理が繰り返される。
【0189】
この図26の流れ図に基づく処理を実行すれば、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCの値を繰り返し求めてゆき、その符号が反転した直前および直後のサンプル点を用いて、図25の演算式に基づく演算を行うことができる。このように、符号反転の直前および直後のサンプル点の間は、グラフGの直線近似度が非常に高くなるので、得られる検出値Vαも精度の高いものになる。
【0190】
制御ユニット50を、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成した場合、図26の流れ図に示す手順は、プログラムとして記述される。プロセッサは、このプログラムに基づいて、必要な演算および制御を実行する。
【0191】
以上、この第2の方法についても、図11に示す一次元の力検出装置用の制御ユニット50の動作を説明したが、図12に示す三次元の力検出装置用の制御ユニット500の動作も全く同様である。すなわち、制御ユニット500は、X軸に関する検出動作、Y軸に関する検出動作、Z軸に関する検出動作を別個独立して実行する機能を有し、個々の軸に関する検出動作は、制御ユニット50の検出動作と全く同様である。
【0192】
<<< §9. 図1に示す主要構造部の特徴 >>>
ここでは、図1に示す主要構造部の特徴とそのメリットを述べておく。既に述べたとおり、この主要構造部を構成する作用体310は、板状部材から構成されており、可撓性接続部として機能する橋梁部331〜334は、この板状部材からなる作用体310の側面の一部を筐体に対して接続している。なお、可撓性接続部を橋梁部で構成する代わりに、作用体310の側面全部を筐体に対して接続するダイアフラム部によって構成してもかまわない。
【0193】
また、この板状部材からなる作用体310の上面に対向して上方基板100が配置されており、下面に対向して下方基板200が配置されている。これら上方基板100および下方基板200は、作用体310を収容する筐体の一部をなしている。そして、上方基板100の下面および下方基板200の上面には、それぞれ固定電極E11〜E25が形成されており、板状部材からなる作用体310は、導電性材料によって構成されているため、その上面および下面が変位電極として機能する。主要構造部をこのような構成にすることにより、極めて単純な構造の装置が実現でき、また、半導体基板などの加工技術を利用して装置の製造を行うことが可能になる。
【0194】
また、図1に示す主要構造部における容量素子C11〜C25の配置は、XYZ三次元座標系における各座標軸方向の力を独立して検出するのに適した配置となっている。すなわち、板状部材からなる作用体310の重心位置に原点Oをもち、XY平面がこの板状部材の上面に平行となるように、XYZ三次元直交座標系を定義すれば、各容量素子の配置は次のようになっている。
【0195】
まず、X軸の正領域の上方に第1の上方容量素子C11が配置され、X軸の正領域の下方に第1の下方容量素子C21が配置され、X軸の負領域の上方に第2の上方容量素子C12が配置され、X軸の負領域の下方に第2の下方容量素子C22が配置されている。また、Y軸の正領域の上方に第3の上方容量素子C13が配置され、Y軸の正領域の下方に第3の下方容量素子X23が配置され、Y軸の負領域の上方に第4の上方容量素子C14が配置され、Y軸の負領域の下方に第4の下方容量素子C24が配置されている。更に、Z軸の正領域を中心とした位置に第5の上方容量素子が配置され、Z軸の負領域を中心とした位置に第5の下方容量素子が配置されている。
【0196】
このような配置を行えば、第1の上方容量素子C11および第2の下方容量素子C22を正側容量素子とし、第1の下方容量素子C21および第2の上方容量素子C12を負側容量素子とすることにより、X軸方向に作用した力の検出を行うことができる。また、第3の上方容量素子C13および第4の下方容量素子C24を正側容量素子とし、第3の下方容量素子C23および第4の上方容量素子C14を負側容量素子とすることにより、Y軸方向に作用した力の検出を行うことができる。更に、第5の上方容量素子C15を正側容量素子とし、第5の下方容量素子C25を負側容量素子とすることにより、Z軸方向に作用した力の検出を行うことができる。かくして、X軸,Y軸,Z軸の3軸方向に作用した力をそれぞれ独立した検出値として出力することが可能になる。
【0197】
また、各容量素子の形状および配置が対称性を有している点も重要である。このような対称性を確保することにより、他軸成分の干渉を抑制し、各座標軸方向の力をそれぞれ独立して検出することが可能になる。
【0198】
すなわち、第1の上方容量素子C11,第1の下方容量素子C21,第2の上方容量素子C12,第2の下方容量素子C22は、いずれもXZ平面に関して対称となる形状をなし、第1の上方容量素子C11と第2の上方容量素子C12とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第1の下方容量素子C21と第2の下方容量素子C22とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置されている。
【0199】
また、第3の上方容量素子C13,第3の下方容量素子C23,第4の上方容量素子C14,第4の下方容量素子C24は、いずれもYZ平面に関して対称となる形状をなし、第3の上方容量素子C13と第4の上方容量素子C14とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第3の下方容量素子C23と第4の下方容量素子C24とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置されている。
【0200】
更に、第5の上方容量素子C15および第5の下方容量素子C25は、いずれもXZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となる形状をなし、かつ、第5の上方容量素子C15と第5の下方容量素子C25とはXY平面に関して互いに対称となる形状をなし互いに対称となる位置に配置されている。
【0201】
また、図3に示すように、この主要構造部を構成する作用体310は、X軸の正領域に配置された第1の翼状部311と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部312と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部313と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部314と、原点Oに配置され4組の翼状部を相互に接合する中央部315と、を有する板状部材によって構成されており、4本の橋梁部331〜334が、中央部315に接続されている。
【0202】
このような平面形状をもった作用体310を用いれば、第1の翼状部311の上面に第1の上方容量素子C11を構成する変位電極を形成し、第1の翼状部311の下面に第1の下方容量素子C21を構成する変位電極を形成し、第2の翼状部312の上面に第2の上方容量素子C12を構成する変位電極を形成し、第2の翼状部312の下面に第2の下方容量素子C22を構成する変位電極を形成し、第3の翼状部313の上面に第3の上方容量素子C13を構成する変位電極を形成し、第3の翼状部313の下面に第3の下方容量素子C23を構成する変位電極を形成し、第4の翼状部314の上面に第4の上方容量素子C14を構成する変位電極を形成し、第4の翼状部314の下面に第4の下方容量素子C24を構成する変位電極を形成し、中央部315の上面に第5の上方容量素子C15を構成する変位電極を形成し、中央部315の下面に第5の下方容量素子C25を構成する変位電極を形成することができる。
【0203】
<<< §10. 本発明の変形例 >>>
最後に、本発明に係る力検出装置の変形例をいくつか述べておく。
【0204】
(1)検出用容量素子と駆動用容量素子との分離
これまで述べた実施形態では、1つの容量素子を検出用容量素子として利用するとともに、駆動用容量素子としても利用していた。たとえば、図12において、10組の容量素子C11〜C25は、いずれも静電容量値を検出するための検出用容量素子と、クーロン力を作用させるための駆動用容量素子とを兼ねている。
【0205】
これに対して、検出用容量素子と駆動用容量素子とをそれぞれ別個独立した容量素子によって構成することも可能である。すなわち、正側容量素子を、検出用正側容量素子と駆動用正側容量素子とによって構成し、負側容量素子を検出用負側容量素子と駆動用負側容量素子とによって構成し、検出手段は、検出用正側容量素子および検出用負側容量素子の静電容量値を検出するようにし、駆動手段は、駆動用正側容量素子および駆動用負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにすればよい。
【0206】
たとえば、10組の容量素子C11〜C25を用いる場合でも、第1〜第5の上方容量素子C11〜C15および第1〜第5の下方容量素子C21〜C25のそれぞれを、検出用容量素子と駆動用容量素子との一対の容量素子によって構成するようにし、検出手段は、各検出用容量素子の静電容量値を検出し、駆動手段は、各駆動用容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させるようにすればよい。
【0207】
具体的には、図2に示す上方基板100の代わりに、図27に示す上方基板150を用い、図6に示す下方基板200の代わりに、図28に示す下方基板250を用いて、主要構造部を構成すればよい。なお、図27および図28におけるハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない。
【0208】
図27に示す上方基板150には、10枚の固定電極が形成されている。ここで、固定電極E11A〜E15Aは検出用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の上面)とによって、それぞれ検出用容量素子C11A〜C15Aが形成される。一方、固定電極E11B〜E15Bは駆動用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の上面)とによって、それぞれ駆動用容量素子C11B〜C15Bが形成される。
【0209】
同様に、図28に示す下方基板250にも、10枚の固定電極が形成されている。ここで、固定電極E21A〜E25Aは検出用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の下面)とによって、それぞれ検出用容量素子C21A〜C25Aが形成される。一方、固定電極E21B〜E25Bは駆動用固定電極であり、対向する変位電極(作用体310の下面)とによって、それぞれ駆動用容量素子C21B〜C25Bが形成される。
【0210】
このように、検出用容量素子と駆動用容量素子とをそれぞれ別個独立した容量素子によって構成すれば、検出手段や駆動手段を直接接続することが可能になり、カップリング用容量素子や抵抗素子を用いる必要がなくなる。
【0211】
図29は、このような変形例に係る力検出装置に用いる閉ループ式検出回路の一例を示す回路図である。図29の回路図を図12の回路図と比較すれば、その特徴が理解できよう。すなわち、両回路の基本的な処理機能は同じであるが、図29の回路図の場合、各容量素子が検出用容量素子(符号末尾にAが付されている)と駆動用容量素子と(符号末尾にBが付されている)とに分けられているため、図12の回路図に示されているカップリング用容量素子C411〜C416や、抵抗素子R441〜R446は、図29の回路図では省略されている。
【0212】
(2)制御ユニットの構成
これまで述べた実施形態では、制御ユニットをマイクロコンピュータで構成した例を示したが、制御ユニットは必ずしもマイクロコンピュータで構成する必要はない。たとえば、ハードウエアからなる論理素子を組み合わせて、制御ユニットを構成してもよいし、アナログ制御回路によって制御ユニットを構成してもかまわない。アナログ制御回路を用いた場合、制御動作は、アナログ信号によって行われることになるため、A/D変換回路やD/A変換回路は不要になる。
【0213】
(3)加速度センサや角速度センサへの利用
本発明は、直接的には力検出装置に係る発明であるが、加速度に起因して作用体に生じる力を求めることにより、加速度の検出を行う機能を有する加速度センサにも適用することが可能である。実際、これまで述べた実施形態は、本発明を加速度センサに利用した実施例になっている
【0214】
また、本発明に係る力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加すれば、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサを実現することも可能である。たとえば、XYZ三次元直交座標系において、作用体を第1の座標軸に沿って振動させた状態とし、このときに第2の座標軸方向に加わるコリオリ力を本発明に係る力検出装置によって検出すれば、当該検出値は、第3の座標軸まわりの角速度を示す値になる。
【図面の簡単な説明】
【0215】
【図1】本発明の基本的実施形態に係る力検出装置の主要構造部の側断面図である。
【図2】図1に示す主要構造部の上方基板100の下面図である。
【図3】図1に示す主要構造部の中間基板300の上面図である。
【図4】図1に示す主要構造部を切断線4に沿って切った断面を示す横断面図である。
【図5】図1に示す主要構造部をXY平面に沿って切った断面を示す横断面図である。
【図6】図1に示す主要構造部の下方基板200の上面図である。
【図7】図1に示す主要構造部の作用体310にX軸正方向の力+Fxが作用した状態を示す側断面図である。
【図8】図1に示す主要構造部の作用体310にZ軸正方向の力+Fzが作用した状態を示す側断面図である。
【図9】図1に示す主要構造部に適用可能な開ループ式検出回路の一例を示す回路図である。
【図10】図1に示す主要構造部の作用体310に作用した加速度αと変位dとの関係を示すグラフである。
【図11】閉ループ式の検出を行うために利用されるフィードバック制御回路の基本構成を示す回路図である。
【図12】図1に示す主要構造部に適用可能な閉ループ式検出回路の一例を示す回路図である。
【図13】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第1のグラフである。
【図14】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第2のグラフである。
【図15】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第3のグラフである。
【図16】従来の一般的な閉ループ式検出方法によるフィードバック制御動作を示す第4のグラフである。
【図17】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第1のグラフである。
【図18】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第2のグラフである。
【図19】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第3のグラフである。
【図20】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の原理を示す第4のグラフである。
【図21】本発明に係る第1の閉ループ式検出方法の手順を示す流れ図である。
【図22】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法の原理を示す第1のグラフである。
【図23】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法の原理を示す第2のグラフである。
【図24】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法に利用する演算式を算出するためのグラフである。
【図25】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法に利用する演算式を示す図である。
【図26】本発明に係る第2の閉ループ式検出方法の手順を示す流れ図である。
【図27】本発明の変形例に係る力検出装置の主要構造部を構成する上方基板150の下面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図28】本発明の変形例に係る力検出装置の主要構造部を構成する下方基板250の上面図である(ハッチングは電極形状を示すためのものであり、断面を示すものではない)。
【図29】本発明の変形例に係る力検出装置に用いる閉ループ式検出回路の一例を示す回路図である。
【符号の説明】
【0216】
4:切断線
41,45:C/V変換回路
42,46:A/D変換回路
43,47:D/A変換回路
44,48:ドライバ回路
50:制御ユニット
100,150:上方基板
200,250:下方基板
300:中間基板
310:作用体(板状部材)
311〜314:翼状部
315:中央部
320:台座
331〜334:橋梁部(可撓性接続部材)
411〜416:C/V変換回路
421〜426:A/D変換回路
431〜436:D/A変換回路
441〜446:ドライバ回路
500:制御ユニット(マイクロコンピュータ)
C1,C2,C11〜C25:容量素子(静電容量値)
C11A〜C25A:検出用容量素子
C11B〜C25B:駆動用容量素子
C41,C45,C411〜C416:カップリング用容量素子
D(+),D(−):デジタル検出信号
D(X+),D(X−),D(Y+),D(Y−),D(Z+),D(Z−):デジタル検出信号
D(α),D(αx),D(αy),D(αz):力の検出値
d,d1,d2:変位
d0:基準位置
E1,E2,E11〜E25:固定電極
E11A〜E25A,E11B〜E25B:固定電極
E(+),E(−):デジタル駆動信号
E(X+),E(X−),E(Y+),E(Y−),E(Z+),E(Z−):デジタル駆動信号
Fx,Fz:座標軸方向に作用した力
G:作用体の重心
G,G1〜G4:グラフ
k:比例係数
L1,L2:基準レベル
M,N:直角三角形の頂点
O:座標系の原点
P,P1〜P4:検出点
Q,Q1〜Q3:正のサンプル点
R,R1〜R4:負のサンプル点
R44,R48,R441〜R446:抵抗素子
S11〜S45:流れ図の各ステップ
T1,T2:直角三角形
V1,V2:駆動電圧
Vα,Vα1〜Vα4:力の検出値
X,Y,Z:三次元直交座標系の各座標軸(力の検出軸)
X′,Y′:X,Yを45°回転させた座標軸
α,α1〜α4:加速度
ΔC:容量差(C1−C2)
ΔC(Q),ΔC(R):各サンプル点の縦座標値
ΔC(Q1)〜ΔC(Q3):各サンプル点の縦座標値
ΔC(R1)〜ΔC(R4):各サンプル点の縦座標値
ΔV:印加電圧差(V2−V1)
ΔV(Q),ΔV(R):各サンプル点の横座標値
ΔV(Q1)〜ΔV(Q3):各サンプル点の横座標値
ΔV(R1)〜ΔV(R4):各サンプル点の横座標値
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正負が定義された所定の検出軸方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を作用させるための作用体と、
前記作用体を収容する筐体と、
前記作用体を前記筐体に対して接続する可撓性接続部材と、
前記作用体に固定された変位電極と前記筐体に固定された固定電極とによって構成され、前記作用体が前記検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる正側容量素子と、
前記作用体に固定された変位電極と前記筐体に固定された固定電極とによって構成され、前記作用体が前記検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる負側容量素子と、
前記正側容量素子の静電容量値C1と前記負側容量素子の静電容量値C2とを検出する検出手段と、
前記正側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V1を印加してクーロン力を作用させる機能と、前記負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V2を印加してクーロン力を作用させる機能と、を有する駆動手段と、
容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う機能を有し、所定時点におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを前記作用体に作用した力を示す検出値として出力する制御手段と、
を備えることを特徴とする力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力検出装置において、
制御手段が、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、各サンプリング時に、予め設定された正の基準レベルL1と負の基準レベルL2とを参照して、
(処理A)ΔC>L1の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御を行う、
(処理B)ΔC<L2の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御を行う、
(処理C)L2≦ΔC≦L1の場合には、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは予め定められた定数)なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する、
のいずれかの処理を実行することを特徴とする力検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の力検出装置において、
印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係が、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域を線形領域と定め、基準レベルL1〜L2の範囲が前記線形領域内に収まるように、基準レベルL1,L2が設定されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の力検出装置において、
制御手段が、
所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、ΔC>0の場合には印加電圧差ΔVを増加させ、ΔC<0の場合には印加電圧差ΔVを減少させるフィードバック制御を行い、
正の容量差ΔCが得られた時点Qでの当該容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、負の容量差ΔCが得られた時点Rでの当該容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で比例係数kを決定し、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)なる演算
によって、検出値Vαを求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の力検出装置において、
制御手段が、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))/(ΔC(Q)−ΔC(R))なる演算で得られた値Vαを検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の力検出装置において、
容量差ΔCの符号が正から負に反転したときに、反転直前の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、反転直後の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、
容量差ΔCの符号が負から正に反転したときに、反転直前の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、反転直後の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とすることを特徴とする力検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の力検出装置において、
各容量素子を構成する電極のうち、変位電極が共通の接地電位に維持され、駆動手段が、個々の固定電極に所定の駆動電圧を印加することにより、クーロン力を作用させることを特徴とする力検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力検出装置において、
駆動手段が、正側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V1(V1≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、負側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V2(V2≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、を有し、
制御手段が、ΔC>0の場合には、駆動電圧V1を減少させて、駆動電圧V2を増加させ、ΔC<0の場合には、駆動電圧V2を減少させて、駆動電圧V1を増加させる制御を行う機能を有することを特徴とする力検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の力検出装置において、
検出手段が、静電容量値を電圧に変換するC/V変換回路と、このC/V変換回路で変換されたアナログ検出電圧をデジタル検出信号に変換するA/D変換回路と、を有し、
制御手段が、前記デジタル検出信号に基づいて、所定の駆動電圧を示すデジタル駆動信号を出力するデジタル処理装置を有し、
駆動手段が、前記デジタル駆動信号をアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路と、前記アナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧を電極に印加するドライバ回路と、を有することを特徴とする力検出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の力検出装置において、
正側容量素子もしくは負側容量素子に、検出手段と駆動手段との双方が接続されており、
前記検出手段は、カップリング用容量素子を介して前記正側容量素子もしくは負側容量素子に接続され、
前記駆動手段は、抵抗素子を介して前記正側容量素子もしくは負側容量素子に接続されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項11】
請求項9に記載の力検出装置において、
正側容量素子が検出用正側容量素子と駆動用正側容量素子とによって構成されており、
負側容量素子が検出用負側容量素子と駆動用負側容量素子とによって構成されており、
検出手段は、前記検出用正側容量素子および前記検出用負側容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、前記駆動用正側容量素子および前記駆動用負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させることを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項9に記載の力検出装置において、
制御手段が、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成されており、前記プログラムに基づいて、演算および制御が実行されることを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の力検出装置において、
作用体が板状部材から構成されており、
可撓性接続部が前記板状部材の側面の一部もしくは全部を筐体に対して接続し、
前記板状部材の上面に対向して配置された上方基板と、前記板状部材の下面に対向して配置された下方基板とが、筐体の一部をなし、
前記板状部材の上面および下面に変位電極が形成され、前記上方基板の下面および前記下方基板の上面に固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の力検出装置において、
板状部材からなる作用体の重心位置に原点Oをもち、XY平面が前記板状部材の上面に平行となるように、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
X軸の正領域の上方に第1の上方容量素子が配置され、X軸の正領域の下方に第1の下方容量素子が配置され、X軸の負領域の上方に第2の上方容量素子が配置され、X軸の負領域の下方に第2の下方容量素子が配置され、
Y軸の正領域の上方に第3の上方容量素子が配置され、Y軸の正領域の下方に第3の下方容量素子が配置され、Y軸の負領域の上方に第4の上方容量素子が配置され、Y軸の負領域の下方に第4の下方容量素子が配置され、
Z軸の正領域を中心とした位置に第5の上方容量素子が配置され、Z軸の負領域を中心とした位置に第5の下方容量素子が配置され、
前記第1の上方容量素子および前記第2の下方容量素子を正側容量素子とし、前記第1の下方容量素子および前記第2の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、X軸方向に作用した力の検出が行われ、
前記第3の上方容量素子および前記第4の下方容量素子を正側容量素子とし、前記第3の下方容量素子および前記第4の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、Y軸方向に作用した力の検出が行われ、
前記第5の上方容量素子を正側容量素子とし、前記第5の下方容量素子を負側容量素子とすることにより、Z軸方向に作用した力の検出が行われ、
X軸,Y軸,Z軸の3軸方向に作用した力をそれぞれ独立した検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の力検出装置において、
第1〜第5の上方容量素子および第1〜第5の下方容量素子のそれぞれが、検出用容量素子と駆動用容量素子との一対の容量素子によって構成されており、
検出手段は、各検出用容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、各駆動用容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させることを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の力検出装置において、
第1の上方容量素子,第1の下方容量素子,第2の上方容量素子,第2の下方容量素子が、いずれもXZ平面に関して対称となる形状をなし、第1の上方容量素子と第2の上方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第1の下方容量素子と第2の下方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第3の上方容量素子,第3の下方容量素子,第4の上方容量素子,第4の下方容量素子が、いずれもYZ平面に関して対称となる形状をなし、第3の上方容量素子と第4の上方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第3の下方容量素子と第4の下方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第5の上方容量素子および第5の下方容量素子が、いずれもXZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となる形状をなし、かつ、第5の上方容量素子と第5の下方容量素子とはXY平面に関して互いに対称となる形状をなし互いに対称となる位置に配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
X軸およびY軸をXY平面上で45°回転させた軸をそれぞれX′軸およびY′軸と定義したときに、X′軸の正領域に平行な橋梁部、X′軸の負領域に平行な橋梁部、Y′軸の正領域に平行な橋梁部、Y′軸の負領域に平行な橋梁部によって、可撓性接続部材が構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項17に記載の力検出装置において、
X軸の正領域に配置された第1の翼状部と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部と、原点Oに配置され前記4組の翼状部を相互に接合する中央部と、を有する板状部材によって作用体が構成され、
4本の橋梁部は、前記中央部に接続されており、
前記第1の翼状部の上面に第1の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第1の翼状部の下面に第1の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第2の翼状部の上面に第2の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第2の翼状部の下面に第2の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第3の翼状部の上面に第3の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第3の翼状部の下面に第3の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第4の翼状部の上面に第4の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第4の翼状部の下面に第4の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記中央部の上面に第5の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記中央部の下面に第5の下方容量素子を構成する変位電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の力検出装置において、
作用体が導電性材料で構成されており、この作用体の表層における個々の固定電極に対する対向領域が個々の変位電極を形成することを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の力検出装置を含み、作用した加速度に起因して作用体に生じる力を求めることにより、加速度の検出を行う機能を有する加速度センサ。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載の力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加し、作用体が前記周期運動しているときに、前記力検出装置の力の検出軸方向に加わるコリオリ力を求めることにより、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサ。
【請求項1】
正負が定義された所定の検出軸方向に作用した力を検出する力検出装置であって、
検出対象となる力を作用させるための作用体と、
前記作用体を収容する筐体と、
前記作用体を前記筐体に対して接続する可撓性接続部材と、
前記作用体に固定された変位電極と前記筐体に固定された固定電極とによって構成され、前記作用体が前記検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなる正側容量素子と、
前記作用体に固定された変位電極と前記筐体に固定された固定電極とによって構成され、前記作用体が前記検出軸の正方向への力を受けて変位すると電極間隔が広くなり、負方向への力を受けて変位すると電極間隔が狭くなる負側容量素子と、
前記正側容量素子の静電容量値C1と前記負側容量素子の静電容量値C2とを検出する検出手段と、
前記正側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V1を印加してクーロン力を作用させる機能と、前記負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧V2を印加してクーロン力を作用させる機能と、を有する駆動手段と、
容量差ΔC=C1−C2に基づいて、ΔC>0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を増加させ、ΔC<0の場合には、印加電圧差ΔV=V2−V1を減少させるフィードバック制御を行う機能を有し、所定時点におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは比例係数)なる演算を行い、得られた値Vαを前記作用体に作用した力を示す検出値として出力する制御手段と、
を備えることを特徴とする力検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の力検出装置において、
制御手段が、所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、各サンプリング時に、予め設定された正の基準レベルL1と負の基準レベルL2とを参照して、
(処理A)ΔC>L1の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを増加させる制御を行う、
(処理B)ΔC<L2の場合には、ΔC=0となるように、印加電圧差ΔVを減少させる制御を行う、
(処理C)L2≦ΔC≦L1の場合には、印加電圧差ΔVを増減させる制御を行わずに前サンプリング時におけるΔVをそのまま維持させ、現サンプリング時におけるΔVとΔCとを用いて、Vα=ΔV+k・ΔC(但し、kは予め定められた定数)なる演算で得られた値Vαを検出値として出力する、
のいずれかの処理を実行することを特徴とする力検出装置。
【請求項3】
請求項2に記載の力検出装置において、
印加電圧差ΔVと容量差ΔCとの関係が、検出に必要な精度の範囲内で線形性を維持するとみなせる領域を線形領域と定め、基準レベルL1〜L2の範囲が前記線形領域内に収まるように、基準レベルL1,L2が設定されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項4】
請求項1に記載の力検出装置において、
制御手段が、
所定のサンプリングタイミングで容量差ΔCを繰り返し求め、ΔC>0の場合には印加電圧差ΔVを増加させ、ΔC<0の場合には印加電圧差ΔVを減少させるフィードバック制御を行い、
正の容量差ΔCが得られた時点Qでの当該容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、負の容量差ΔCが得られた時点Rでの当該容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)として、
k=(ΔV(R)−ΔV(Q))/(ΔC(Q)−ΔC(R))
なる演算で比例係数kを決定し、
Vα=ΔV(Q)+k・ΔC(Q)なる演算、もしくは、
Vα=ΔV(R)+k・ΔC(R)なる演算
によって、検出値Vαを求めることを特徴とする力検出装置。
【請求項5】
請求項4に記載の力検出装置において、
制御手段が、
Vα=(ΔV(R)・ΔC(Q)−ΔV(Q)・ΔC(R))/(ΔC(Q)−ΔC(R))なる演算で得られた値Vαを検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の力検出装置において、
容量差ΔCの符号が正から負に反転したときに、反転直前の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とし、反転直後の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、
容量差ΔCの符号が負から正に反転したときに、反転直前の時点Rでの容量差をΔC(R)、印加電圧差をΔV(R)とし、反転直後の時点Qでの容量差をΔC(Q)、印加電圧差をΔV(Q)とすることを特徴とする力検出装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の力検出装置において、
各容量素子を構成する電極のうち、変位電極が共通の接地電位に維持され、駆動手段が、個々の固定電極に所定の駆動電圧を印加することにより、クーロン力を作用させることを特徴とする力検出装置。
【請求項8】
請求項7に記載の力検出装置において、
駆動手段が、正側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V1(V1≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、負側容量素子を構成する固定電極に駆動電圧V2(V2≧0)を印加してクーロン引力を作用させる機能と、を有し、
制御手段が、ΔC>0の場合には、駆動電圧V1を減少させて、駆動電圧V2を増加させ、ΔC<0の場合には、駆動電圧V2を減少させて、駆動電圧V1を増加させる制御を行う機能を有することを特徴とする力検出装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の力検出装置において、
検出手段が、静電容量値を電圧に変換するC/V変換回路と、このC/V変換回路で変換されたアナログ検出電圧をデジタル検出信号に変換するA/D変換回路と、を有し、
制御手段が、前記デジタル検出信号に基づいて、所定の駆動電圧を示すデジタル駆動信号を出力するデジタル処理装置を有し、
駆動手段が、前記デジタル駆動信号をアナログ駆動信号に変換するD/A変換回路と、前記アナログ駆動信号に基づく所定の駆動電圧を電極に印加するドライバ回路と、を有することを特徴とする力検出装置。
【請求項10】
請求項9に記載の力検出装置において、
正側容量素子もしくは負側容量素子に、検出手段と駆動手段との双方が接続されており、
前記検出手段は、カップリング用容量素子を介して前記正側容量素子もしくは負側容量素子に接続され、
前記駆動手段は、抵抗素子を介して前記正側容量素子もしくは負側容量素子に接続されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項11】
請求項9に記載の力検出装置において、
正側容量素子が検出用正側容量素子と駆動用正側容量素子とによって構成されており、
負側容量素子が検出用負側容量素子と駆動用負側容量素子とによって構成されており、
検出手段は、前記検出用正側容量素子および前記検出用負側容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、前記駆動用正側容量素子および前記駆動用負側容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させることを特徴とする力検出装置。
【請求項12】
請求項9に記載の力検出装置において、
制御手段が、プロセッサと、このプロセッサに実行させるべきプログラムが格納されたメモリと、を有するマイクロコンピュータによって構成されており、前記プログラムに基づいて、演算および制御が実行されることを特徴とする力検出装置。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の力検出装置において、
作用体が板状部材から構成されており、
可撓性接続部が前記板状部材の側面の一部もしくは全部を筐体に対して接続し、
前記板状部材の上面に対向して配置された上方基板と、前記板状部材の下面に対向して配置された下方基板とが、筐体の一部をなし、
前記板状部材の上面および下面に変位電極が形成され、前記上方基板の下面および前記下方基板の上面に固定電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項14】
請求項13に記載の力検出装置において、
板状部材からなる作用体の重心位置に原点Oをもち、XY平面が前記板状部材の上面に平行となるように、XYZ三次元直交座標系を定義したときに、
X軸の正領域の上方に第1の上方容量素子が配置され、X軸の正領域の下方に第1の下方容量素子が配置され、X軸の負領域の上方に第2の上方容量素子が配置され、X軸の負領域の下方に第2の下方容量素子が配置され、
Y軸の正領域の上方に第3の上方容量素子が配置され、Y軸の正領域の下方に第3の下方容量素子が配置され、Y軸の負領域の上方に第4の上方容量素子が配置され、Y軸の負領域の下方に第4の下方容量素子が配置され、
Z軸の正領域を中心とした位置に第5の上方容量素子が配置され、Z軸の負領域を中心とした位置に第5の下方容量素子が配置され、
前記第1の上方容量素子および前記第2の下方容量素子を正側容量素子とし、前記第1の下方容量素子および前記第2の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、X軸方向に作用した力の検出が行われ、
前記第3の上方容量素子および前記第4の下方容量素子を正側容量素子とし、前記第3の下方容量素子および前記第4の上方容量素子を負側容量素子とすることにより、Y軸方向に作用した力の検出が行われ、
前記第5の上方容量素子を正側容量素子とし、前記第5の下方容量素子を負側容量素子とすることにより、Z軸方向に作用した力の検出が行われ、
X軸,Y軸,Z軸の3軸方向に作用した力をそれぞれ独立した検出値として出力することを特徴とする力検出装置。
【請求項15】
請求項14に記載の力検出装置において、
第1〜第5の上方容量素子および第1〜第5の下方容量素子のそれぞれが、検出用容量素子と駆動用容量素子との一対の容量素子によって構成されており、
検出手段は、各検出用容量素子の静電容量値を検出し、
駆動手段は、各駆動用容量素子を構成する電極間に駆動電圧を印加してクーロン力を作用させることを特徴とする力検出装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の力検出装置において、
第1の上方容量素子,第1の下方容量素子,第2の上方容量素子,第2の下方容量素子が、いずれもXZ平面に関して対称となる形状をなし、第1の上方容量素子と第2の上方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第1の下方容量素子と第2の下方容量素子とはYZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第3の上方容量素子,第3の下方容量素子,第4の上方容量素子,第4の下方容量素子が、いずれもYZ平面に関して対称となる形状をなし、第3の上方容量素子と第4の上方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、第3の下方容量素子と第4の下方容量素子とはXZ平面に関して互いに対称となる位置に配置され、
第5の上方容量素子および第5の下方容量素子が、いずれもXZ平面およびYZ平面の双方に関して対称となる形状をなし、かつ、第5の上方容量素子と第5の下方容量素子とはXY平面に関して互いに対称となる形状をなし互いに対称となる位置に配置されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載の力検出装置において、
X軸およびY軸をXY平面上で45°回転させた軸をそれぞれX′軸およびY′軸と定義したときに、X′軸の正領域に平行な橋梁部、X′軸の負領域に平行な橋梁部、Y′軸の正領域に平行な橋梁部、Y′軸の負領域に平行な橋梁部によって、可撓性接続部材が構成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項18】
請求項17に記載の力検出装置において、
X軸の正領域に配置された第1の翼状部と、X軸の負領域に配置された第2の翼状部と、Y軸の正領域に配置された第3の翼状部と、Y軸の負領域に配置された第4の翼状部と、原点Oに配置され前記4組の翼状部を相互に接合する中央部と、を有する板状部材によって作用体が構成され、
4本の橋梁部は、前記中央部に接続されており、
前記第1の翼状部の上面に第1の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第1の翼状部の下面に第1の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第2の翼状部の上面に第2の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第2の翼状部の下面に第2の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第3の翼状部の上面に第3の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第3の翼状部の下面に第3の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第4の翼状部の上面に第4の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記第4の翼状部の下面に第4の下方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記中央部の上面に第5の上方容量素子を構成する変位電極が形成され、前記中央部の下面に第5の下方容量素子を構成する変位電極が形成されていることを特徴とする力検出装置。
【請求項19】
請求項1〜18のいずれかに記載の力検出装置において、
作用体が導電性材料で構成されており、この作用体の表層における個々の固定電極に対する対向領域が個々の変位電極を形成することを特徴とする力検出装置。
【請求項20】
請求項1〜19のいずれかに記載の力検出装置を含み、作用した加速度に起因して作用体に生じる力を求めることにより、加速度の検出を行う機能を有する加速度センサ。
【請求項21】
請求項1〜19のいずれかに記載の力検出装置に、作用体を所定の運動軌跡に沿って周期運動させる運動手段を付加し、作用体が前記周期運動しているときに、前記力検出装置の力の検出軸方向に加わるコリオリ力を求めることにより、角速度の検出を行う機能を有する角速度センサ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
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【図18】
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【図26】
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【図28】
【図29】
【公開番号】特開2010−25840(P2010−25840A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−189563(P2008−189563)
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年7月23日(2008.7.23)
【出願人】(390013343)株式会社ワコー (34)
【Fターム(参考)】
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