説明

加圧浮上装置

【課題】凝集処理及び浮上分離処理をいずれも効率的に行うことができ、水質の良好な浮上分離処理水を得ることができる加圧浮上装置を提供する。
【解決手段】凝集槽10からのpH5〜7の凝集処理水は、流出口16及び上昇流路27を通って混合室20に流入する。浮上分離室30内の下部から配管21を介して水を取り出し、加圧水製造装置22にて浮上槽4からのガスを加圧溶解させて加圧水とし、この加圧水をノズル23へ供給する。混合室20にはアルカリ剤が添加されてpH7〜9とされる。凝集処理水と加圧水とが十分に混合され、凝集フロックに対し加圧水から生じた微細な気泡が十分に付着する。フロック含有水が浮上分離室30へ供給され、フロックが効率よく浮上分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は懸濁物質(SS)を含んだ水から該SSを加圧浮上分離処理する装置に係り、特に凝集槽からの凝集処理水と加圧水とを混合して浮上槽に導入するようにした加圧浮上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
SSを含んだ水の処理装置として、原水と加圧水とを混合して浮上槽に供給し、槽内で原水中のSSを水面に浮上させる加圧浮上装置が周知である。この加圧浮上装置の原水として凝集水が用いられることも公知である(例えば下記特許文献1,2)。
【特許文献1】特開2006−218381号
【特許文献2】特開2008−29957号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特にCOD成分や色度成分を除去することを目的とする凝集処理において、COD成分や色度成分の捕集率が高いpH5〜pH7程度の酸性条件で凝集反応を行い、加圧水と混合して浮上分離しようとすると、酸性条件下では、微細気泡とフロックの付着が悪いため、浮上槽でフロックが浮上分離せずに沈降してしまい、浮上処理水にフロックが流出してしまう場合がある。
【0004】
凝集反応を微細気泡とフロックの付着に都合の良いアルカリ条件下で行うと、浮上槽におけるフロックの分離効率は良くなる。しかしながら、凝集処理槽において、フロックに捕集されないCOD成分や色度成分の量が多くなり、その結果、この凝集処理水を浮上分離処理した処理水中のCOD濃度や色度が高くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記従来の問題点を解決し、凝集処理及び浮上分離処理をいずれも効率的に行うことができ、水質の良好な浮上分離処理水を得ることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の加圧浮上装置は、凝集槽からの凝集処理水と加圧水とを混合し、この混合水を浮上槽内に導入して浮上分離処理するよう構成された加圧浮上装置において、該浮上槽に導入される混合水のpHを調整するpH調整手段を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
請求項2の加圧浮上装置は、請求項1において、前記pH調整手段は、凝集処理水と加圧水とを混合する混合室にpH調整剤を添加するものであることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3の加圧浮上装置は、請求項1において、前記pH調整手段は、凝集処理水及び加圧水の少なくとも一方にpH調整剤を添加するものであることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4の加圧浮上装置は、請求項1ないし3のいずれか1項において、pH調整剤はアルカリであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5の加圧浮上装置は、請求項4において、凝集処理水のpHが5〜7であり、浮上槽に導入される混合水のpHが7〜9であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加圧浮上装置にあっては、浮上槽に導入される混合水のpHを調整するようにしたので、凝集処理については凝集処理に適したpHにて行い、その後、浮上分離に適したpHに調整した混合水を浮上槽に導入して浮上分離処理することができる。これにより、凝集処理及び浮上分離をいずれも効率よく行うことができる。
【0012】
浮上槽に導入される混合水のpHを調整するには、凝集処理水と加圧水とを混合する混合室にpH調整剤を添加してもよく、混合前の凝集処理水及び加圧水の少なくとも一方にpH調整剤を添加してもよい。
【0013】
本発明では、凝集処理をpH5〜7より好ましくはpH5〜6で行い、浮上分離をpH7〜9で行うことにより、凝集処理効率及び浮上分離効率がいずれも高くなり、好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。第1図は実施の形態に係る加圧浮上分離装置の長手方向の縦断面図である。
【0015】
平面視形状が略長方形の槽体3内が、仕切壁1及び隔壁2によって区画されることにより、凝集槽10、混合室20及び浮上分離室30がこの順に形成されている。この実施の形態では、この混合室20及び浮上分離室30によって浮上槽4が構成されている。仕切壁1及び隔壁2は槽体3の短手方向すなわち幅方向に延設されている。
【0016】
仕切壁1の下部に、凝集処理水の流出口16が形成されている。仕切壁1の上端は、槽体3及び凝集槽10の水面より上方に延出している。
【0017】
隔壁2は、槽体3の底面から立設され、その上端は槽体3の水面よりも下位となっている。
【0018】
各壁1,2は槽体3の両側面に連なっている。
【0019】
凝集槽10へは、原水配管11を介して原水が導入されると共に、凝集剤及びアルカリ剤が各々の供給配管12,13を介して供給可能とされている。凝集槽10内の水のpHを検知するためのpH計(図示略)が設置され、このpH計の検出値が所定範囲好ましくはpH5〜7となるようにアルカリ剤薬注ポンプ(図示略)が作動される。
【0020】
凝集剤としてはPAC等の無機凝集剤の他、各種の有機凝集剤も用いることができ、2種以上の凝集剤を併用してもよい。凝集剤は、凝集剤薬注ポンプ(図示略)によって所定量添加される。凝集槽10内の水は撹拌機15によって静かに撹拌され、凝集処理される。
【0021】
凝集処理水は、流出口16及び上昇流路17を通って混合室20に流入する。混合室20内には、上昇流路17の上方において仕切壁1から隔壁2へ向って張り出すガイド板18が設けられている。そのため、凝集処理水は、このガイド板18によって流れ方向を略水平方向に変更され、該混合室20内を槽体3の底面に沿って流れる。この槽体3の底面のうち、幅方向中央かつ隔壁2に比較的近接して、加圧水吐出用のノズル23が設けられている。ノズル23の先端は、槽体3の底面から若干突出しているが、これに限定されるものではない。
【0022】
この実施の形態では、浮上分離室30内の下部から配管21を介して水を取り出し、加圧水製造装置22にて浮上槽4からのガスを加圧溶解させて加圧水とし、この加圧水をノズル23へ供給する。ここでは、浮上分離室30内の下部から加圧水用の水を取り出しているが、工水や後述の配管35からの清浄水を取り出して用いてもよく、特に限定されるものではない。
【0023】
この実施の形態では、ノズル23は、後述する傾斜した隔壁上部2bの鉛直下方領域に配置されている。また、この実施の形態では、ノズル23は槽体3の底面の幅方向の中央に1個のみ設けられているが、複数個設けられてもよい。
【0024】
この実施の形態では、この混合室20内にアルカリ剤を薬注するようにアルカリの供給配管25が設けられている。この配管25には薬注ポンプ(図示略)が設けられている。この混合室20にはpH計(図示略)が設けられており、混合室20内のpHが好ましくは7〜9となるようにアルカリ剤の薬注が行われる。
【0025】
凝集槽10からの凝集処理水とノズル23からの加圧水とは混ざり合いながら主として隔壁2の幅方向中央付近に沿って上昇する。隔壁2は、上部2bを除き略鉛直な(好ましくは、鉛直面に対し±10゜以内の)鉛直部2aとなっており、該上部2bは仕切壁1側へ傾斜している。
【0026】
上記上昇流は、隔壁2の鉛直部2aに沿って略鉛直上方へ向って流れる。この上昇流は、次いで、傾斜した隔壁上部2bに案内されて仕切壁1側へ流れ方向を変え、仕切壁1の近傍に到ると該隔壁1に沿って下降する下降流となる。隔壁1の下部にまで流れてきた下降流は、凝集槽10からの凝集処理水と合流しながら槽体3の底面を隔壁2へ向って流れる。このようにして、混合室20内に上下方向の循環流が形成される。そして、循環している間に、凝集処理水、加圧水及びアルカリ剤が十分に混合され、凝集フロックに対し加圧水から生じた微細な気泡が十分に付着したpH7〜9の混合水となる。
【0027】
このようにフロックに気泡が十分に付着すると共にpH調整された後、フロック含有混合水が浮上分離室30へ供給され、フロックが効率よく浮上分離される。
【0028】
浮上したフロックは、スキマーやスクレーバ等のかき取り機31によってスラッジ受入室32へ排出され、排出管33を介して取り出される。
【0029】
なお、浮上分離室30内で沈降したスラッジは、配管34を介して排出される。
【0030】
清浄水は、浮上分離室30の上下方向の途中から配管35によって抜き出され、水位調整槽36及び取出配管37を介して取り出される。この水位調整槽36は、槽体3内の水位を調整するためのものである。
【0031】
この実施の形態では、凝集槽10内のpHを5〜7としているので、効率よく凝集処理が行われ、COD成分が十分にフロックに付着する。また、混合室20から浮上分離室30に導入される混合水のpHが7〜9であるので、浮上分離室30内のフロックの浮上分離も効率よく行われ、フロックが十分に分離された処理水が配管35を介して取り出される。
【0032】
第1図の実施の形態では、混合室20にアルカリ剤を薬注しているが、第2図のように加圧水をアルカリ性としたり、第3図のように上昇流路17等において凝集処理水にアルカリ剤を添加し、これによって混合室20内の混合水のpHを7〜9に調整するようにしてもよい。
【0033】
なお、第2図では加圧水製造装置22へ浮上分離処理水を導くための配管21にアルカリ剤を添加するようにしているが、この配管21内の水圧はノズル23側よりも低いので、アルカリ剤の添加に好適である。
【0034】
第3図では上昇流路17にアルカリ剤を添加しているが、第4図のように凝集槽10Aの下段室10cに添加するようにしてもよい。
【0035】
なお、凝集槽10Aは棚板状の水平板材19によって複数の小室(この実施の形態では上段小室10a、中段小室10b、下段小室10cの3室)に区画されている。板材19はその中央が開放しており、この開放した部分に撹拌機15の攪拌軸が挿通されている。各小室10a、10b、10cは、この中央部の開放口を介して相互に連通している。原水は上段小室10aに導入され、中段小室10bを経て下段小室10cに到る。
【0036】
小室10a、10bのpHを5〜7とすることにより、効率よく凝集処理が行われる。下段小室10c内の凝集処理水が流出口16から上昇流路17へ流出する。
【0037】
下段小室10cにアルカリ剤を添加することにより、凝集処理水のpHが上昇し、その結果、混合室20から浮上分離室30に導入される混合水のpHが7〜9となる。
【0038】
第5図(a)は本発明の異なる実施の形態に係る加圧浮上装置の縦断面図、第5図(b)はこの加圧浮上装置の平面図(ただしスカムレーキは図示略)である。
【0039】
この加圧浮上装置では、浮上槽50の円形の槽体51の内周に沿って内槽52が設けられ、槽体51と内槽52との間を処理水が上昇可能となっている。この槽体51の中心部にフィードウェル60が立設されており、このフィードウェル60の下部に原水流入管53が接線方向に接続され、この原水流入管53に加圧水流入管54が接続されている。
【0040】
このフィードウェル60内にアルカリ剤を添加するように薬注配管61が接続されている。フィードウェル60内にはpHセンサ(図示略)が設置されており、フィードウェル60内の混合水のpHが7〜9となるようにアルカリ剤が配管61及び薬注ポンプ(図示略)を介してフィードウェル60内に添加されるよう構成されている。なお、アルカリ剤はフィードウェル60ではなく(又はフィードウェル60と共に)流入管53,54のうちの少なくとも一方に添加されてもよい。
【0041】
原水と加圧水は流入管53,54よりフィードウェル60内に流入し、アルカリ剤が添加される。そして、該フィードウェル60内を上昇する。この混合水は、フィードウェル60の上端とトップ部材70との間を通って内槽52内に流入して浮上分離が行われる。処理水は内槽52の下端を回り込んで内槽52と槽体51との間を上昇し、処理水トラフ55より排出される。一方、浮上スカムはスカムレーキ(スキマー)56により掻き寄せられてスカムボックス58に落とし込まれ、排出口(図示せず。)から排出される。57はスカムレーキ56の駆動用のモータを示す。
【0042】
フィードウェル60の上側に設置されたトップ部材70は、フィードウェル60の中心(軸心)に向って凸となる円錐形の凸部71を有する。この実施の形態では、凸部71の下端はフィードウェル60内の上部に差し込まれている。
【0043】
なお、凸部71は円錐形ではなく角錐形であってもよいが、流出部からの流れを等方的とするために円錐形であることが好ましい。
【0044】
このトップ部材70は、細い支柱を介してフィードウェル60の上端に支持されてもよく、スカムレーキ56に吊支されてもよい。
【0045】
なお、この実施の形態では、トップ部材70の上面側は円錐形の凹所となっており、この凹所が上方に向って開放しているが、この凹所は蓋で閉鎖されてもよい。また、凹所内を充填物で埋めてもよい。凸部71の下部に、凹所内から堆積物を取り出すための開閉式の取出口を設けてもよい。
【0046】
トップ部材70は、その平面視において外周側がフィードウェル60と重なるか、それよりも外方に張り出している。即ち、トップ部材70の直径はフィードウェル60の直径と等しいかそれよりも大である。
【0047】
この実施の形態では、フィードウェル60の上端とトップ部材70との間の流出間隙を取り巻くように、円環状のバッフル80が同軸状に複数本設けられている。
【0048】
このバッフル80は、支持部材を介してフィードウェル60又はスカムレーキ56に支持されている。
【0049】
この実施の形態では、バッフル80は、いずれも円環形であり、同心円状に複数列かつ上下多段に配置されている。
【0050】
この実施の形態では、バッフル80は千鳥配列となっている。
【0051】
この千鳥配列の場合、フィードウェル60とトップ部材70との間の流出間隙から放射方向に向って流れる水とバッフル80との接触頻度が高く、フロックに対し微細気泡が効率よく付着し、また、混合水が短絡的に槽外に流出することも防止され、十分に浮上分離処理を行うことができる。
【0052】
なお、原水流入管がフィードウェルに対して接線方向に流入する加圧浮上装置では、フィードウェル内の流れの影響で、浮上槽内の流れに偏流が生じてしまう。環状バッフルは、フィードウェルから浮上槽への水の流れを一様化させる効果があり、偏流を弱めることができるため、このような加圧浮上装置においては、その効果が顕著である。
【0053】
この実施の形態におけるバッフル80の本数は一例であり、これに限定されるものではない。バッフル80の列の数は2〜10特に3〜5程度が好適である。1つの列におけるバッフル80の上下方向の数は2〜10程度が好適である。フィードウェル60に最も近い最内周列におけるバッフル80の数は2〜4程度が好適であり、第2列以降ではそれよりも0〜8本程度多く又は少なくするのが好ましい。
【0054】
なお、バッフル80は円形断面形状のパイプ又は中実棒状体よりなることが好ましい。バッフル80の太さ(直径)は10〜100mm特に20〜60mm程度が好適である。パイプ又は棒よりなるバッフル80の断面形状は、円形に限定されるものではなく、長方形、正方形、菱形、三角形、多角形(例えば六角形)や、楕円形などであってもよい。
【0055】
本発明において、加圧水製造装置としては、例えば、渦流ポンプ方式やコンプレッサ方式など各種のものを採用することができる。
【0056】
なお、本発明では加圧水製造装置にオゾンガスを導入してオゾン含有加圧水としてもよい。このようにすれば、原水や浮上スカムから異常な臭気を発生するような場合においても臭気成分を分解し、臭気を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】第1の実施の形態に係る加圧浮上装置の縦断面図である。
【図2】第2の実施の形態に係る加圧浮上装置の縦断面図である。
【図3】第3の実施の形態に係る加圧浮上装置の縦断面図である。
【図4】第4の実施の形態に係る加圧浮上装置の縦断面図である。
【図5】第5の実施の形態に係る加圧浮上装置の縦断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1 仕切壁
2 隔壁
3 槽体
4 浮上槽
10 凝集反応室
15 撹拌機
16 流出口
20 混合室
22 加圧水製造装置
23 ノズル
25 薬注用配管
30 浮上室
31 かき取り機
50 浮上槽
51 槽体
52 内槽
53 原水流入管
54 加圧水流入管
55 処理水トラフ
56 スカムレーキ(スキマー)
58 スカムボックス
60 フィードウェル
61 薬注用配管
70 トップ部材
80 バッフル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集槽からの凝集処理水と加圧水とを混合し、この混合水を浮上槽内に導入して浮上分離処理するよう構成された加圧浮上装置において、
該浮上槽に導入される混合水のpHを調整するpH調整手段を備えたことを特徴とする加圧浮上装置。
【請求項2】
請求項1において、前記pH調整手段は、凝集処理水と加圧水とを混合する混合室にpH調整剤を添加するものであることを特徴とする加圧浮上装置。
【請求項3】
請求項1において、前記pH調整手段は、凝集処理水及び加圧水の少なくとも一方にpH調整剤を添加するものであることを特徴とする加圧浮上装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、pH調整剤はアルカリであることを特徴とする加圧浮上装置。
【請求項5】
請求項4において、凝集処理水のpHが5〜7であり、浮上槽に導入される混合水のpHが7〜9であることを特徴とする加圧浮上装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−58066(P2010−58066A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227225(P2008−227225)
【出願日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】