説明

加圧浸出、直接電解採取および溶媒/溶液抽出を用いる、銅含有物質からの銅回収のための方法

【課題】加圧浸出、直接電解採取および溶媒/溶液抽出を用いる、銅含有物質からの銅回収のための方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、一般的には、銅および他の金属分を金属含有鉱石、濃縮物、またはその他金属物質から、加圧浸出および直接電解採取を用いて回収する工程に関する。より具体的には、本発明は、加圧浸出および直接電解採取を、浸出、溶媒/溶液抽出、および電解採取操作と組み合わせて用い、黄銅鉱含有鉱石から銅を回収するための実質的な酸の自己生産工程に関する。前記操作の一つの局面によれば、加圧浸出操作からの残留物の少なくとも一部は、ヒープ浸出、ストックパイル浸出、または他の浸出操作に向けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は一般的には、加圧浸出および直接電解採取を用いて、金属含有物質から銅および他の金属分を回収するための工程に関する。より具体的には、本発明は、微粉砕、加圧浸出、および溶媒/溶液抽出と組み合わせた直接電解採取を用い、金属含有物質から金属を回収する工程に関する。
【背景技術】
【0002】
(背景技術)
銅鉱石、銅含有濃縮物、および他の銅含有物質といった銅含有物質の湿式冶金処理は、長年の間にしっかりと確立されてきた。しかしながら銅含有物質、特に黄銅鉱および輝銅鉱のような硫化銅から銅を回収するための効果的かつ効率的な方法であって、従来の処理技術に比べ低いコストで高い銅の回収できる方法には利点がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
(発明の概要)
一般的には、本発明の様々な局面によれば、銅含有物質から銅および他の金属分を回収するための工程は、様々な物理的コンディショニング、反応、および回収の工程を含む。例えば、本発明の様々な態様によれば、中温または高温(以下に定義するように)加圧浸出のような反応的な処理を行う前に金属含有物質を微粉砕することで、従来技術の金属回収工程に比べ金属分の回収を高め、様々なその他の利点を得る。更には、適切なコンディショニングにより、中間の溶媒/溶液抽出工程を用いずに、加圧浸出生成物流から直接銅を電解採取できるようになる。更には、工程流中の少なくとも不純物および過剰な酸の一部は、貧電解質液流出流を用いることによって電解採取物から除去され、それらは溶媒/溶液抽出および電解採取操作の中で更に処理することもできる。
【0004】
本発明の一つの例示的態様によれば、銅含有物質から銅を回収する工程は、(i)銅含有物質を含む供給流を提供する工程:(ii)銅含有供給流を、制御された微粉砕に供する工程;(iii)銅含有供給流を加圧浸出して、銅含有溶液を産生する工程;(iv)銅含有溶液からカソード銅を回収する工程;(v)銅回収工程からの貧電解質液流の少なくとも一部を溶媒/溶液抽出・電解採取操作で処理する工程;(vi)貧電解質液流の少なくとも一部を加圧浸出工程に再循環し、加圧浸出操作の必要な酸の一部または全てを提供する工程;および(vii)加圧浸出残留物の少なくとも一部を、ヒープ浸出、ストックパイル浸出、または他の浸出操作に向ける工程を含む。
【0005】
本明細書で使用する場合、用語「加圧浸出」は、金属を高温・高圧条件下で酸性溶液および酸素と接触させる金属回収工程を指すものとする。
【0006】
本発明の例示的態様の別の局面によれば、電解採取工程からの貧電解質流出流は、金属回収工程からの過剰酸の少なくとも一部と、その中に含まれる不純物も同時に好都合に除去し、そのような不純物が工程中に有害なレベルまで蓄積し、製造効率および製造物(例えば銅カソード)の品質に悪影響を及ぼさないようにする。本発明の一つの態様によれば、貧電解質流出流中に除去された過剰酸は、他の銅抽出工程に用いるこができるか、または該酸は、例えば低級銅鉱石、採鉱廃棄物生成物、および/または石灰石、白雲石、長石等のような、酸中和物質を含有する他の岩石生成物のような適切な物質を用いることによって消費することができる。
【0007】
本発明の例示的態様の別の局面によれば、加圧浸出および電解採取工程で発生した酸は、加圧浸出工程に再循環され、銅の効率的な浸出に必要な酸を提供する。この様に、濃硫酸ではなく再循環された酸含有溶液を使用することは、経済的に有利である。
【0008】
本発明の例示的態様の別の局面によれば、過圧浸出工程から出る残留固形物は、ヒープ(破砕された、または未破砕の)浸出、粗鉱ダンプ浸出、ストックパイル浸出、他の浸出操作等に用いられる。
本発明の様々な局面に従った工程のこれらの利点、および他の利点は、添付する図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読み、かつ理解することによって当業者には明らかになるだろう。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
銅含有物質から銅を回収する方法であって:
(a)銅含有物質を含む供給流を提供する工程;
(b)該供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する工程;
(c)流入液流の少なくとも一部を、酸化環境内で、高温・高圧で加圧浸出し、銅含有溶液および残留物を含む生成物スラリーを生ずる工程;
(d)該生成物スラリーを、溶液/溶媒抽出技術を用いずにコンディショニングし、電解採取向けの銅含有溶液を生ずる工程;
(e)該銅含有溶液から銅を電解採取して、カソード銅および銅含有貧電解質液流を生じる工程;
(f)該貧電解質液流を該加圧浸出工程に再循環する工程;
(g)該貧電解質液流の少なくとも一部を、溶媒/溶液抽出技術を用いて処理する工程;ならびに
(h)該加圧浸出工程からの残留物の少なくとも一部をヒープ浸出、ストックパイル浸出、または他の浸出操作に向ける工程、
を含む方法。
(項目2)
加圧浸出工程からの残留物の少なくとも一部をヒープ浸出、ストックパイル浸出、または他の浸出操作に向ける前記工程(h)が、イオウ含有物質を含む残留物をこのような操作に移すことを含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
銅含有物質を含む供給流を提供する前記工程は、黄銅鉱、輝銅鉱、斑銅鉱、銅藍、ダイジェナイト、および硫砒銅鉱、またはそれらの混合物もしくは組合せを少なくとも一つ含む供給流を提供することを含む、項目1に記載の方法。
(項目4)
銅含有物質を含む供給流を提供する前記工程が、銅含有物質を含む供給流ならびに銅および酸を含む溶液流を提供することを含む、項目1に記載の方法。
(項目5)
前記供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する前記工程が、該供給流の粒子サイズを、該供給流中の実質的に全ての粒子が加圧浸出の間に実質的に完全に反応する粒子サイズまで小さくすることを含む、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する前記工程が、該供給流の粒子サイズを約25ミクロン未満のP80まで小さくすることを含む、項目5に記載の方法。
(項目7)
前記供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する前記工程が、該供給流の粒子サイズを約13〜約20ミクロンのP80まで小さくすることを含む、項目5に記載の方法。
(項目8)
前記供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する前記工程は、該供給流の粒子サイズを約25ミクロン未満のP98まで小さくすることを含む、項目5に記載の方法。
(項目9)
前記供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する前記工程が、該供給流の粒子サイズを約10〜約23ミクロンのP98まで小さくすることを含む、項目5に記載の方法。
(項目10)
前記供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する前記工程が、該供給流の粒子サイズを約13〜約15ミクロンのP98まで小さくすることを含む、項目5に記載の方法。
(項目11)
前記浸出工程が、前記供給流の少なくとも一部を、約140℃〜約230℃の温度、および約100psi〜約750psiの合計操作圧力の加圧浸出容器内で浸出することを含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記工程(h)は、前記残留物をヒープ浸出、ストックパイル浸出、または他の浸出操作に向けることを含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記工程(h)は、前記残留物を、前記ヒープ浸出、ストックパイル浸出、または他の浸出操作で使用する鉱石物質と前記残留物から凝集塊を形成させることにより向けることを含む、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記供給流を加圧浸出する前記工程は、リグニン誘導体、オルトフェニレンジアミン、アルキルスルホナート、およびそれらの混合物から成る群より選択される界面活性剤存在下で前記供給流を加圧浸出することを含む、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記コンディショニング工程は、前記生成物スラリーの少なくとも一部を固体−液体分離に供することを含み、ここで前記銅含有溶液の少なくとも一部が前記残留物から分離される、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記コンディショニング工程は、前記銅含有溶液の少なくとも一部を、一つまたは複数の銅含有液流の少なくとも一部と混合し、前記銅含有溶液において約15グラム/リットル〜約80グラム/リットルの銅濃度を達成することを更に含む、項目15に記載の方法。
(項目17)
前記銅含有溶液の一部が工程(c)に再循環される、項目15に記載の方法。
(項目18)
前記コンディショニング工程は、前記生成物スラリーの少なくとも一部を濾過に供することを含み、ここで前記銅含有溶液の少なくとも一部が前記残留物から分離される、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記コンディショニング工程は、前記残留物の少なくとも一部を、前記生成物スラリー中の前記銅含有溶液から分離することを含み、かつ前記残留物の少なくとも一部を工程(c)で種剤として使用することを更に含む、項目1に記載の方法。
(項目20)
浸出操作に前記貧電解質液流の一部を用いる工程(i)を更に含む、項目1に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0009】
(図面の簡単な説明)
本発明の課題は、明細書の結論部分に具体的に指摘し、かつ明瞭に請求されている。しかしながら本発明は、詳細な説明を、類似の要素に同様の数値を印した図面と関連付けながら熟慮することによって、より完全に理解できるだろう。
【図1】図1は、本発明の一つの例示的態様による銅回収工程の流れ図である。
【図1A】図1Aは、本発明の例示的態様による、ある局面の流れ図である。
【図2】図2は、本発明の例示的態様による銅回収工程の様々な局面の流れ図である。
【図3】図3は、本発明の例示的態様の様々な局面による、加圧浸出残留物中の銅濃度を酸付加関数としてプロットしたグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(例示的態様の詳細な説明)
本発明の様々な態様は、従来技術の工程に比し、特に銅の回収および処理の効率に関して大きな進歩を示す。本発明の例示的態様によれば、銅含有物質から銅を回収するための工程は:(i)銅含有物質を含む供給流を提供する工程:(ii)銅含有供給流の少なくとも一部を制御された微粉砕に供する工程;(iii)銅含有供給流を加圧浸出して、銅含有溶液を産生する工程;(iv)銅含有溶液から、電解採取によってカソード銅を回収する工程;(v)銅回収工程からの貧電解質液流の少なくとも一部を溶媒/溶液抽出、続いて電解採取操作で処理する工程;(vi)貧電解質液流の少なくとも一部を加圧浸出工程に再循環する工程;および(vii)加圧浸出残留物の少なくとも一部を、ヒープまたは他の浸出操作に向ける工程を含む。
【0011】
本明細書で使用する場合、用語「加圧浸出」は、物質を高温・高圧条件下で酸性溶液および酸素に接触させる金属回収工程を指すものとする。
【0012】
大気圧または加圧浸出、溶媒/溶液抽出、および電解工程の工程を利用する既存の銅回収工程は、多くの場合、本発明が提供する多くの商業的便益を得ることができるように容易に改良できる。黄銅鉱向けの中または高温加圧浸出工程は、一般的には約120℃から約190℃、または220℃までの温度で運転する工程と考えられる。
【0013】
まず図面1を参照すると、本発明の様々な局面に従って、金属含有物質101は処理を受けるために提供される。金属含有物質101は、そこから銅および/または他の金属分が回収できる鉱石、濃縮物、沈殿物、または任意のその他の物質でよい。例えば銅、金、銀、白金族金属、ニッケル、コバルト、モリブデン、レニウム、ウラン、希土類金属等のような金属分は、本発明の様々な態様に従って金属含有物質から回収できる。しかしながら本発明の様々な局面および態様は、例えば黄銅鉱(CuFeS)、輝銅鉱(CuS)、斑銅鉱(CuFeS)、銅藍(CuS)、硫砒銅鉱(CuAsS)、ダイジェナイト(Cu)、およびそれらの混合物を含有する鉱石、および/または濃縮物、および/または沈殿物のような銅含有硫化鉱からの銅の回収に関係して特に有利である。かくして、金属含有物質101は、好ましくは銅の鉱石、濃縮物、または沈殿物であり、より好ましくは銅含有の硫化鉱、濃縮物、または沈殿物である。本発明の更に別の局面によれば、銅含有物質101は、浮遊濃縮物またはその沈殿物ではない濃縮物を含んでよい。議論を容易にするために、以下の本発明の様々な例示的態様の説明は、一般的に黄銅鉱含有鉱石または濃縮物から所望の金属分の回収に焦点を当てているが、適切な金属含有物質はどれも利用できる。
【0014】
本発明の例示的態様によれば、銅は硫酸銅濃縮物のような金属含有物質から回収される金属である。本例示的態様の一つの局面は、フロス浮遊選鉱より生成した硫酸銅濃縮物の使用を含む。フロス浮遊選鉱の調製では、金属含有物質供給流は、脈石物質から鉱物含有粒子を遊離させるのに適した粒子サイズに粉砕される。しかしながら、上記したように他の濃縮物も利用できる。
【0015】
金属含有物質101の状態は、処理操作の全体的な有効性および効率に影響することから、金属含有物質101の状態を、選択した処理方法に適したものにする任意の様式で、金属含有物質101は金属回収処理のために調製され得る。例えば、粒子サイズ、組成、および成分濃度のような供給流の条件は、例えば大気圧浸出または加圧浸出のような下流の処理操作の全体的な有効性および効率に影響することがある。所望の組成および成分濃度パラメータは、様々な化学的および/または物理的処理工程を通して達成され、その選択は、選択した処理のスキームの運転パラメータ、装置コスト、および物質の仕様に依存する。
【0016】
湿式冶金工程、特に加圧浸出工程は、粒子サイズに敏感であることが一般的に知られている。そのため抽出を目的とする湿式冶金領域では、加圧浸出によって処理する前に、鉱物種を微細に分割、粉砕、および/または細粉化して粒子サイズを小さくすることは広く行われる操作である。例えば硫化銅のような鉱物種の粒子サイズを小さくすることにより、極端でない圧力および温度条件下での加圧浸出によって、高温・高圧条件下で達成されたのと同じ金属抽出が達成できるようになる。粒子サイズ分布は、例えば酸濃度および酸素過剰圧力のような他の浸出条件にもまた影響し得る。
【0017】
現在、ボールミル、タワーミル、超微粒子粉砕ミル、アトリションミル、攪拌ミル、水平ミル等の、金属含有物質の粒子サイズを小さくするための様々な許容可能な技術および装置が利用可能であり、処理対象となる物質の表面積を大きくするという所望の結果を達成できる更なる技術が今後開発され得る。
【0018】
例えば金属含有物質101は、制御された微粉砕によって、金属回収処理向けに調製できる。好ましくは、工程流中の金属含有物質粒子のサイズを小さくするだけでなく、粗悪粒子の重量比の最小化を保証すると好都合である。処理効率および銅回収での大きな利点は、実質的に全ての粒子を実質的に完全に反応可能にすることによって手に入れることができる。
【0019】
本発明の一つの態様によれば、かつ図1および図1Aを参照すると、制御された微粉砕には現在知られているあらゆる方法論または今後考案される方法論を利用することができるが、一般的には、粉砕工程1010は、制御された微粉砕工程1010A、任意選択的なサイズ分類工程1010B、および固体液体分離工程1010Cを含む。本発明のこの局面に従った粉砕は、段階的または閉鎖巡回様式で進められるのが好ましい。即ち、金属含有物質101の粗粒子は所望レベルまで適切に粉砕されるが、既に所望レベル以下にある粒子は追加の粉砕を殆ど、または全く受けないことが好ましい。このようにすれば、粉砕操作に関係するコストを節減できると同時に、粗粒子のサイズおよび重量比を制限できる。しかしながら、開放巡回式の粉砕でも許容可能な生成物を生成できる。
【0020】
引き続き図1Aを参照すると、例えばサイクロンまたはミニサイクロンの使用のような、サイクロン技術を利用して比較的粗な物質を比較的微細な物質から分離することによってサイズ分類工程1010Bを容易にすることが好ましい。換言すると、物質101を制御された微粉砕工程1010Aで粉砕した後、粗物質10は微細物質12から適切に分離され、粗物質10は、図1Aに示すように液流11の中で更に粉砕されるだろう。同様に、選択した粉砕方法および機器が液体処理剤(例えばプロセス水のような)を利用して超微粉砕工程1010での粉砕を促進する本発明の例示的一つの局面では、任意選択的な固体−液体分離工程1010Cを利用して加圧浸出前に過剰な工程液13を工程流102から取り除き、過剰の工程液13を再使用するために超微粉砕工程1010Aに再循環するのが好ましい。粉砕機器の構成によって、固体−液体分離工程1010Cは必要な場合も必要でない場合もある。しかしながら、超微粉砕1010の前またはその最中に銅含有物質101に工程液を加えるならば、加えた工程液の少なくとも一部は、加圧浸出操作1030の前に銅含有物質流102から取り除かれ、スラリー密度を最適化することが望ましい。
【0021】
粉砕工程1010は、物質110を、処理される物質の粒子サイズが、実質的に全ての粒子が加圧浸出中に実質的に完全に反応するまで小さくなるように微細に粉砕することが好ましい。
【0022】
様々なサイズおよび粒子サイズの分布が、本発明の様々な局面に従って好都合に用いることができる。例えば、本発明の一つの局面によれば、粉砕工程1010は物質110を、約25ミクロン未満の大きさのP80まで、好ましくは約13〜20ミクロンの間のP80の大きさまで微細に粉砕する。
【0023】
本発明の別の局面によれば、銅含有物質は約250ミクロン未満のP80、好ましくは約75〜約150ミクロンのP80、およびより好ましくは約5〜約75ミクロンの大きさのp80を有する。
【0024】
本発明の更に別の局面によれば、約98パーセントが約25ミクロンを通過する粒子サイズ分布が好ましく、金属含有物質流は約98パーセントが約10〜約23ミクロン、最適には約13〜約15ミクロンを通過する粒子サイズ分布を有するのがより好ましい。
【0025】
上記したように、粉砕工程1010は、任意の様式で実施できるが、十分に制御された微粉砕は微粉砕機器、例えばバッフルを備えた攪拌水平シャフトミルまたはバッフル無しの垂直攪拌ミルを用いて達成できる。このような例示的機器としては、Mount Isa Mines(MIM)、AustraliaとNetzsch Feinmahltechnick、Germanyが共同開発したIsamill、およびMetso Minerals、Finlandが製造しているSMDまたはDetritorミルが挙げられる。水平ミルを利用するならば、粉砕媒体はOglebay Norton Industrial Sands Inc.、Colorado Springs、Coloradoから入手できる1.2/2.4mmまたは2.4/4.8mm Colorado砂が好ましいだろう。しかしながら、所望の粒子サイズ分布が得られるようにできるあらゆる粉砕媒体を用いることができ、そのタイプおよびサイズは選択された用途、所望される生成物のサイズ、粉砕機器製造元の仕様に依存し得る。例示の媒体としては、例えば砂、ケイ酸、金属ビーズ、セラミックビーズ、およびセラミックボールが挙げられる。
【0026】
微粉砕した金属含有物質は、反応処理工程1030(以下に説明する)に入れる前に、液体と混合できる。使用する場合は、液体は水を含むことが好ましいが、例えばラフィネート、含浸出液、または貧電解質液のような適切な液体を用いることもできる。例えば、直接電解採取工程(例えば、液流119)からの貧電解質液の一部を、微粉砕された金属含有物質と混合し、反応的処理工程1030に送り込むための金属含有物質流103を形成させることができる。この方法では、酸は工程流に再循環され、それは反応性の処理工程1030の酸要求を満たすために役立つ。
【0027】
液体と金属含有物質の混合は、様々な技術および機器の任意の一つまたは複数、例えばインライン混合法、または混合タンクもしくは他の適切な容器を用いて達成できる。本発明の態様の例示的局面によれば、物質流中の固体の金属含有物質の濃度(即ちスラリー密度)は物質流の約50重量パーセント未満のオーダーであり、好ましくは物質流の約40重量パーセントである。しかしながら、輸送およびその後の処理に適した他のスラリー密度を用いることもある。
【0028】
本発明の一つの局面によれば、電解採取からの貧電解質の再循環流中の銅を酸から分離すること、および、金属回収工程に回される循環流中の混入物の量を減らすことも望まれる。このような分離工程では、再循環された貧電解質液流から除去される酸は、少なくとも金属混入物の一部、ならびに銅含有供給流および再循環貧電解質液流からのその他可溶性不純物と共に、工程回路から排除される。多くの通常または今後考案される分離工程および技術は、供給流中の酸からの銅の分離を達成する上で有用であろう。例えば、沈殿、低温加圧浸出、酸溶媒抽出/イオン交換、膜分離、拡散浸透、減圧、硫化、および/または遊離セルの使用は、この目的に関して有用であろう。
【0029】
本発明の好ましい態様の分離局面は、結果として生じた銅画分含有量の比較的小さな酸流を提供し、該酸流は浸出、pH制御、または他の用途に用いることができる。更には、本発明のこの局面に従った分離工程の利用は、それにより銅含有物質流から未精製銅含有物質流由来の混入物が除去できるようになり、そして生じた酸流内に組み入れることが可能となる点で特に有益であろう。こうして生じた酸流は、全てまとめて金属回収工程から除去されて遠隔操作で利用されるか、廃棄されるか、または中和されることが好ましいことから、その中に含まれる混入物は同様に金属回収工程から除去され、その結果、工程流中への蓄積は防止される。このような混入物、特に金属混入物が、典型的には、所望の金属回収工程の有効性および効率に有害な影響を有することから、このことは極めて有益であり得る。例えば、工程流中の金属混入物および他の不純物は、注意深く制御および/または最小化されていない場合、電解採取により生成されたカソード銅の物理的および/化学的特性を損なうことがあり、その結果、銅生成物の品質を下げその経済的価値を減じることがある。
【0030】
再度図1を参照すると、本発明の好ましい態様の一つの局面に従い、銅含有物質流101は、例えば、例示の工程では銅含有物質流中の固体粒子の表面上に、再循環した貧電解質液流からの可溶化銅を沈殿させる働きをする沈殿工程にかけられる。上に詳しく論じたようにこの局面は、そうでなければ失われるか、または回収に追加の処理が必要となる、貧電解質液流からの銅回収を可能にし、結果として大きな経済的利益をもたらす可能性があるという点で重要な利点を提供する。
【0031】
本発明の、この好ましい局面では、適当な処理容器内で、沈殿工程は銅含有物質流を二酸化硫黄(SO)流109および貧電解質液流108と混合することを含む。例えば、図1に描かれた態様では、貧電解質液流108は、操作中に発生した再循環された酸性の硫酸銅流を含むだろう。しかしながら、他の液流、好ましくは銅に富む液流も用いてよい。沈殿は、貧電解質液流から銅が、少なくとも一部は、液流101内の、未反応の銅含有物質粒子の表面上に、例えばCuSのような硫化銅の形で沈殿することが好ましい。
【0032】
本発明の好ましい局面に従えば、銅分離工程1010は、約70℃〜約180℃の、好ましくは約80℃〜約100℃の、および最も好ましくは約90℃の温度のような若干高い温度で実施される。必要であれば、電気加熱コイル、電気毛布、工程流熱交換器、および現在知られている、もしくは今後開発される他の方法のような任意の通常の手段を通して遂行され得る。例示の工程では、液流は別の工程領域で作り出し得、銅分離工程1010において処理容器に送り、沈殿工程を促進するのに望まれる熱を提供する。銅沈殿工程に関する滞留時間は、処理容器の運転温度および銅含有物質の組成のような要因に応じて、典型的には約30分から約6時間の範囲で変わり得る。好ましくは、条件は、有意な量の銅が沈殿するように選ばれる。例えば、約90℃に、約4時間維持された処理容器内では、約98%のオーダーの沈殿率が達成されている。
【0033】
図1を参照すると、金属含有物質流103は、制御された微粉砕、液体付加、ならびに任意の他の物理的および/または化学的コンディショニング工程によって処理に合わせて適切に調製された後、例えば加圧浸出を介した金属抽出である反応処理工程1030に供される。本発明の一つの態様によれば、反応処理工程1030は、加圧浸出を含む。反応処理工程1030は、約140℃〜約230℃の範囲の温度で作動する中温加圧浸出工程であるのが好ましい。一つの態様によれば、加圧浸出は、約140℃〜約180℃の範囲で、一般的には160℃より高い範囲で、より好ましくは約160℃〜約170℃の範囲で実施されるのが好ましい。別の態様によれば、加圧浸出は180℃より高い、好ましくは約180℃〜220℃の範囲内、より好ましくは約190℃〜約210℃の範囲の温度で実施される。
【0034】
本発明の様々な局面によれば、操作に選択される最適温度の範囲は、銅および他の金属の抽出を最大化し、イオウ元素(S)の生成を最適化し、新しい酸の消費を最小化し、それによって補給酸の要求量の最小化につながる。酸およびイオウは、次の反応に従って硫化物の酸化により作られる:
4CuFeS+17O+4HO→2Fe+4Cu2++8H+8SO2− (1)
4CuFeS+8H+5O→2Fe+4Cu2++8S゜+4HO (2)
本発明によれば、加圧浸出工程の条件(温度、酸濃度)は、反応(1)と(2)の間の有利なバランスがとれるように適切に選択されるが、しかし銅抽出量を大きく犠牲にすることなく補給酸の消費を減らすか無くし、それにより酸補給に関連する経費を減らすか無くすように選択される傾向がある。
【0035】
加圧浸出容器内に持ち込まれる酸の量は反応パラメータ、特に反応温度、鉄溶解、銅抽出、および硫化物酸化に依存して変わる。補給酸は、新鮮酸または同じ回収工程もしくは別の工程から再循環された酸の形で加圧浸出容器内に持ち込まれる。ある例では、補給酸は、濃縮物1トン当たり約300〜約650キログラムのオーダー、またはそれより少なく持ち込まれるが、温度が高いほど必要な補給酸は少なくなる。
【0036】
本発明者らは、本発明の金属回収工程の運転パラメータを最適化し、数多くの経済上の目的、処理能力上の目的、または製造に関する目的が達成できることを発見した。一般的には、例えば一定の酸循環速度では、加圧浸出工程の温度を上げれば、酸素消費量は多くなり、生成される酸は増え、産生されるイオウ元素は少なくなる。鉄溶解は、高温では、液流119から再循環される酸を減らすことで制御できる。更には、他の全てのパラメータを一定に保ちながら加圧浸出工程の温度を上げれば、銅の回収を最大化し得る。こうすれば、高温および固定した酸再循環速度において、加圧浸出中により多くの酸が生成され(即ち消費しなければならない量より多い酸)、かつより多くの酸素が消費されるものの、より多くの銅が回収できるだろう。より低い温度(例えば140〜150℃)では、加圧浸出操作は、より多くの再循環酸が必要となり、かつ銅回収量は減るだろうが、酸素の要求は減り、過剰酸の消費のコストは下がる。しかしながら約150℃〜約170℃の温度範囲内では、酸の自己生産工程−即ち、加圧浸出操作が必要とする酸をほぼ産生し得る−が可能であろう。このようにして、許容可能な銅回収と適度な酸素消費を実現しながら、同時に補給酸および酸減量のコストを下げるか、または無くすことができるだろう。しかしながら、本発明の一つの態様によれば、より高い温度を利用することができる。例えば、約200〜約210℃のオーダーでは、銅回収を上げる傾向にあり得る。
【0037】
上記のシナリオは、特定の状況下において妥当であることを記しておく。即ち、外的要因−電力および原料コストまたは銅および/もしくはその他回収可能な金属分の市場価格等−は、加圧浸出操作を、より低い温度で(例えば酸減量のコストが酸購入コストより高い場合、酸素が高価な場合、電力コストが高い場合、および/または銅価格が低い場合)、あるいはより高い温度で(例えば酸減量のコストが酸を購入するより低いか、酸が他所で有利に使用できるか、酸素が安価であるか、電力コストが低いか、および/または銅価格が高い場合)で行うかいずれが最も経済的に望ましいかに影響し得る。
【0038】
中温度条件(即ち約140℃〜約180℃)では、溶液中の鉄イオンは加圧浸出容器内で加水分解し、次の反応によってヘマタイトと硫酸を形成する:
Fe(SO(水溶液)+3HO(液体)→Fe(固体)+3HSO(水溶液)
加圧浸出容器内の鉄濃度が上昇すると、富電解質液流(即ち加圧浸出放出液)の鉄濃度も上昇する。加圧浸出放出物中の鉄濃度の上昇は、続く電解採取操作において電流効率に好ましくない低下をもたらす。電解採取での電流効率の低下は、電解採取を通して回収される銅の単位当たりのコストを上昇させる。
【0039】
加圧浸出工程に加えられる酸の合計量は(溶液中の遊離酸に溶液の鉄当量酸含有物を加えたもの)、銅抽出(残留物中の銅によって表される)および富電解質物中の鉄を、直接に合わせて最適化するように制御されるのが好ましい。一般的には、残留銅含有量は加圧浸出工程に加えられる酸の合計量が増えると減少し、一方溶液中の鉄の量は加えられる酸の合計量が増えると増加する。
【0040】
本発明の例示的態様によれば、銅含有物質から銅を回収する工程は、それを超えても残留銅含有量に対しほとんど、または全く追加の利益がない、最高の合計酸量が加圧浸出容器に加えられるように運転される。本発明の一つの態様によれば、加圧浸出容器へ加えられる合計酸量は、約400〜約500kg/トンの範囲内である。
【0041】
再度図1に目を向けると、反応処理工程1030は、必要条件である加圧浸出滞留時間、所望の温度および圧力条件で加圧浸出混合物を封じ込めるのに適切に設計された加圧浸出容器内で起こってもよい。本発明の例示的態様の一つの局面によれば、処理工程1030で使用する加圧浸出容器は、攪拌式の、マルチコンパートメント型の水平加圧浸出容器である。しかしながら、金属含有物質流103が銅回収に合わせて適切に調製できるどのような加圧浸出容器も本発明の範囲内で利用出来ることを認識しなければならない。
【0042】
反応処理工程1030の間、銅および/または他の金属分は、その後の回収工程に向けて調製物中に可溶化されるか、さもなければ放出される。金属分の可溶化−およびその結果として放出を−を補助し、その結果として金属含有物質からの金属分の放出を補助できる物質はどれでも用いることができる。例えば、銅が回収対象金属の場合、硫酸のような酸を銅含有物質に接触させて、後の回収工程のために銅を放出させてもよい。しかしながら、後の金属回収工程に合わせて金属分を調製物中に放出させるどのような適切な方法も、本発明の範囲内で利用できることを認識しなければならない。
【0043】
例えば硫酸のような銅の可溶化を補助できる任意の作用物質は、例えば中温度加圧浸出のような反応処理工程1030に、様々な形で加えることができる。例えば、このような酸は、電解採取工程1070からの貧電解質119を再循環させることによって提供される冷却流中に加えることができる。しかしながら、銅を可溶化するために提供される方法はどれも本発明の範囲内であることを認識しなければならない。加圧浸出中に加えられる酸の量は、銅抽出を最適化し、望ましい場合には、実質的に酸の自己生産工程を達成するのに必要な酸に基づきバランスをとることが好ましい。
【0044】
本発明の様々な局面によれば、加圧浸出工程は、実質的に完全な銅の可溶化を促進するように適切に設計された様式で行われるが、追加の物質を加えて加圧浸出工程を促進することが望まれる場合もある。本発明の一つの局面によれば、加圧浸出容器内で加圧浸出している間、容器内に十分な酸素105が注入され、酸素分圧を約50〜約250psig、好ましくは約75〜約220psig、最も好ましくは約150〜約200psigに保つ。さらに、中温加圧浸出の性質から、加圧浸出容器内の全運転圧(酸素分圧を含む)は、一般的には大気圧より高く、好ましくは約100〜約750psig、より好ましくは約250〜約400psig、最も好ましくは約270psig〜約350psigである。
【0045】
加圧浸出の滞留時間は、例えば銅含有物質の特性ならびに加圧浸出容器の運転圧および温度といった要因に依存して変わり得る。本発明の例示的態様の一つの局面では、中温加圧浸出の滞留時間は、約30〜約180分、より好ましくは約60〜約150分の範囲、最も好ましくは約80〜約120分のオーダーである。
【0046】
加圧浸出工程の制御は、加圧浸出容器内の温度の制御を含め、通常または今後考案されるいずれかの方法で達成できる。例えば、温度制御に関しては、加圧浸出容器はフィードバック温度制御機構を具備することが好ましい。例えば、本発明の一つの局面によれば、加圧浸出容器の温度は、約140℃〜約180℃、より好ましくは約150℃〜約175℃の範囲の温度に維持される。本発明の別の局面によれば、温度は、約180℃より高く、より好ましくは約180℃から約220℃の範囲内になるよう選択されるのが適切である。このように、本発明の様々な局面に関係して、広い範囲の温度が有用である。
【0047】
金属硫化物の加圧浸出が発熱性であることから、中温加圧浸出で発生する熱は、一般的には、供給流を所望の運転温度に加熱するのに必要なものより高い。それ故に、好ましい加圧浸出温度を維持するために、加圧浸出中に、加圧浸出容器内に冷却液106を送り込み得る。本発明の態様の一つの局面によれば、冷却液106は、加圧浸出中に、加圧浸出容器内で供給流と接触するのが好ましい。冷却液106は、補給水を含んでよいが、生成物スラリーから再循環された液体、貧電解質液、または冷却液の混合物のような、工程内からの、または外部供給源からの任意の適切な冷却液でよい。冷却液106は、スラリーを供給するのと同じ入口から加圧浸出容器内に、または供給されたスラリーを冷却する何れかの様式によって導入できる。加圧進出中に供給スラリーに加えられる冷却液106の量は、冷却液の銅濃度および酸濃度、供給スラリー中の硫化鉱物の量、および供給スラリーのパルプ密度、ならびに加圧浸出工程のその他パラメータに依存して変わり得る。本発明のこの態様の例示的局面では、十分量の冷却液が加圧浸出容器内に加えられ、生成物流108中の固体含有量は固体の約50重量%未満のオーダー、より好ましくは固体の約3〜約35重量%、最も好ましくは固体の約6〜約15重量%の範囲となる。本発明の一つの態様によれば冷却液は貧電解質液に加えられ、これは放出スラリー中の酸、鉄および銅の濃度を効果的に制御する。
【0048】
本発明の例示的局面によれば、液流103の加圧浸出は、分散剤126存在下で実施される。本発明のこの局面による、有用な適切な分散剤としては、リグニン誘導体(例えば、リグノスルホナートカルシウムおよびリグノスルホナートナトリウム)のような有機化合物、例えばケブラコのようなタンニン化合物、オルトフェニレンジアミン(OPD)、例えばアルキルベンゼンスルホナートナトリウムのようなアルキルスルホナート、および上記の組合せが挙げられる。分散剤126は、中温加圧浸出の温度範囲(即ち約140℃〜約180℃)において、中温加圧浸出工程中に生成されるイオウ元素を分散させるのに十分な長さ分解に耐え、銅抽出を低下させ得る銅分の不動態化からイオウ元素を保護して所望の結果を達成する任意の化合物でよい。分散剤126は、所望する結果を達成するのに十分な量および/または濃度で加圧浸出容器内に持ち込まれ得る。本発明の例示的態様の一つの局面では、好都合な結果は、黄銅鉱濃縮物1トン当たり約2〜約20キログラム、より好ましくは1トン当たり約4〜約12キログラム、更に好ましくは1トン当たり約6〜約10キログラムの量のリグノスルホナートカルシウムを用いて、黄銅鉱を加圧浸出する間に達成できる。
【0049】
本発明の別の例示的態様によれば、反応処理工程1030に種剤を持ち込むことができる。適切な種剤は、固体種の結晶化および/または成長のための核部位を形成できる任意の物質を含み得る。従って、種剤は、粒子の蓄積および/または沈殿のための部位として働く任意の粒子でよく、金属回収工程の他の工程からの再循環物質に由来しても、金属回収工程にとって異物である物質を加えることで提供してもよい。いくつかの例では、種剤は、他例では所望の金属分(例えば銅および金)を部分的または完全に封入して、一般的には所望の金属分が浸出溶液に接近できなくするか、接近しにくくする不要物質−例えば銅回収の好ましい例ではヘマタイト、脈石等−の結晶化、沈殿、および/または成長を促進する任意の物質を含んでよい。
【0050】
この例示的態様の局面によって有用である適切な種剤の一つの供給源は、加圧浸出容器放出物中に見出すことができる物質であり、これら物質は種形成の目的で再循環できる。再循環された加圧浸出容器放出物を使用することは経済的理由から望ましく、加圧浸出工程スラリー中の不要粒子に類似または同一である種剤は、不要物質の蓄積を促進する傾向があり得る。例えば、ヘマタイトのような不要物質が金属含有物質中に存在しているか、または副産物として生成される金属回収工程では、前工程の加圧浸出工程から再循環されたヘマタイト含有残留物は、新たに形成されたかまたは放出されたヘマタイトに好ましい核部位を提供する傾向があるだろう。この核部位が無い場合は、未反応の粒子は該金属分の表面に沈殿して所望金属分の可溶化を妨げ、金属分を回収不能にし得る。それ故に、種剤を導入してこのような妨害を防止することは、よりよい金属回収の提供を補助し得る。図1に描かれた例示的態様によれば、固体−液体分離工程1040からの固体残留物流110の一部は、反応処理工程1030に適切な種物質を提供する。
【0051】
金属含有流103が反応処理工程1030にかけられた後、反応工程で入手可能となった銅および/または他金属分は一つまたは複数の様々な金属回収工程にかけられる。再度図1を参照すると、金属回収工程1070(本明細書のなかで以下に論ずる)は、銅および/または他金属分を回収するための工程であって、任意の数の調製工程またはコンディショニング工程を含み得る。例えば、一つまたは複数の化学的および/または物理的処理工程を経て、金属の回収向けの銅含有溶液が調製およびコンディショニングされ得る。反応処理工程1030からの生成物流は、組成、成分濃度、固体含有量、容積、温度、圧力、および/または他の物理的もしくは化学的パラメータを所望の値に調節し、そして適切な銅含有溶液を形成するためにコンディショニングされる。一般的には、適切にコンディショニングされた銅含有溶液は、例えば硫酸塩溶液中に、可溶性の銅を比較的高濃度含有し、好ましくは不純物をほとんど含まない。しかしながら本発明の例示的態様の一つの局面によれば、コンディショニングされた銅含有溶液中の不純物は、分離溶媒/溶液抽出工程を用いることによって最終的に減らし得、これは図2に描かれた態様と関連して論じられる。更には、銅含有溶液の状態は、最終的に回収される銅生成物の品質および均一性を高めるために実質的に一定に保たれることが好ましい。
【0052】
本発明の例示的態様の一つの局面では、電解採取回路での銅回収を目的とした金属含有溶液のコンディショニングは、反応処理工程からの生成物スラリーの特定の物理的パラメータを調節することから始まる。本発明のこの態様の例示的局面では、生成物スラリーの温度および圧力をおおよそ大気条件にまで下げることが望ましい。中温加圧浸出工程からの金属含有生成物スラリーの温度および圧力特性をこのように調節する例示的な方法は、大気フラッシング(図1に示す大気フラッシング工程1035のような)である。更には、フラッシュした気体、固体、溶液、および液流は、任意選択的に、例えば水を回収でき、有害物質の環境への侵入を防止できるベンチュリースクラバーを用い、適切に処理し得る。
【0053】
この好ましい態様の更なる局面によれば、生成物スラリーを、例えばフラッシュタンクを用いて大気フラッシングにかけ、圧力および温度をほぼ大気条件にした後、生成物スラリーは、後続の金属分回収工程に備えて更にコンディショニングし得る。例えば、一つまたは複数の固相−液相分離工程(図1に描かれた固体−液体分離工程1040のような)を用いて、可溶化した金属溶液を固体粒子から分離できる。これは、濾過システム、向流デカンテーション(CCD)回路、沈降濃縮機の使用等を含む、任意の通常の方法で達成できるだろう。図1に描かれるように、本発明の一つの態様によれば、金属回収を目的とした生成物スラリーのコンディショニングは、固体−液体分離工程1040、および、例えば濾過のような、生成液111を更にコンディショニングして、例えばケイ酸および/またはケイ酸含有物質のような微細な固体粒子およびコロイド物質を除去する、任意選択的な電解質処理工程1050を含む。固体−液体分離機器の中にCCD回路を使用するか、一つまたは複数の沈降濃縮機を使うか、一つまたは複数のフィルターを使用するか、および/または他の適切な装置もしくは装置の組合せを使用するかの決定には、工程物質のバランス、環境の制御、残留物の組成、経済的な配慮等のような様々な要因が影響し得る。しかしながら、後の金属分回収のための生成物スラリーをコンディショニングする技術は全て本発明の範囲内であることを了解しなければならない。
【0054】
以下に更に論じるように、分離された固体は更に、シアン化または他の技術、例えば金、銀、白金族金属、モリブデン、亜鉛、ニッケル、コバルト、ウラン、レニウム、希土類金属等の回収のような、貴金属または他の金属分の回収を含む後続処理工程にかけてもよい。後続処理工程は、分離された固体から他の鉱物成分を除去または回収する処理工程を含んでもよい。あるいは、分離された固体は封じ込めても廃棄してもよく、または先に記載したように、分離された固体の一部は反応処理工程に種剤として持ち込むこともできる。
【0055】
かくして図1に描く態様の例示的局面によれば、反応処理工程1030からの生成物スラリー107は、一つもしくは複数の大気フラッシュタンクの中で大気フラッシング1035に供されるか、または他の適切な大気システムにかけられて、液流の放出を通して圧力を下げ、蒸発によって生成物スラリー107を冷却して、フラッシュ生成物スラリー108を形成する。フラッシュ生成物スラリーは、約90℃〜約101℃の範囲の温度であり、約40〜約120グラム/リットルの銅濃度、約16〜約50グラム/リットルの酸濃度であることが好ましい。本発明の例示的態様によれば、フラッシュ生成物スラリー108の一部(図1の液流123)は、加圧浸出工程1030に再循環される。
【0056】
フラッシュ生成物スラリー108は、例えば加圧浸出物の副産物である酸化鉄、イオウ元素、および他の副産物、電解採取回路への供給流にとって望ましくない貴金属およびその他成分を含有する粒子状の固体残留物を含むことがある。かくして、上に論じたのと同じ原理により、フラッシュ生成物スラリーを固体−液体分離工程にかけ、スラリーの液体部分−所望の銅を含有する溶液−をスラリーの固体部分−不要の残留物から分離することが望ましいことがある。
【0057】
更に図1を参照すると、発明の例示の態様では、フラッシュ生成物スラリー108は、CCD回路のような固体−液体分離工程1040に向けられる。本発明の別の態様では、固体−液体分離工程1040は、例えば沈降濃縮機、または一つもしくは複数のフィルターを含むだろう。本発明の例示的態様の一つの局面では、CCD回路は、洗浄水109を使った通常の残留物流の向流洗浄を用いて、浸出した銅を銅含有溶液生成物に回収し、貴金属回収工程に進むか、または廃棄残留物となる可溶性の銅の量を最小限にとどめる。大きな洗浄比率および/または複数のCCD工程を利用し、固体−液体分離工程1040の効果を高める−即ち、CCD回路の中で比較的大量の洗浄水109を残留物に加え、かつ/または複数のCCD工程を用いるのが好ましい。残留スラリー流の溶液部分は、CCD回路の中で、洗浄水109によって残留物流110の溶液部分の銅濃度が約5〜約200ppmに希釈されることが好ましい。本発明の例示的態様の別の局面によれば、液体/固体分離工程1040への化学薬品を加えて、工程流から有害成分を除去することが望まれる場合がある。例えばポリエチレンオキサイドを加えて、沈殿によってケイ酸を除去し得、または他の凝集剤および/もしくは凝固剤を利用して、工程流から他の不要種を除くことができる。このような適切な化学薬品の一つは、Dow Chemicalから販売されているPOLYOX(商標)WSR−301である。
【0058】
その組成によっては、液体/固体分離工程1040からの残留物流110は、中和、封じ込め、廃棄、あるいは、例えば貴金属回収、他の金属分を回収するための処理、懸念される金属を弱毒化もしくは修正するための処理、または液流から他の鉱物成分を回収もしくは除去するためのその他処理のような更なる処理に供し得る。例えば、残留物流110が経済的に有意な量の金、銀、および/または他の貴金属を含有しているならば、シアン化工程または他の適切な回収工程を通してこの金分画を回収することが望まれるだろう。もしシアン化技術によって残留流110から金または他の貴金属を回収するのであれば、該液流の中の、イオウ元素、非結晶鉄沈殿物、未反応銅鉱物、および溶解した銅のような混入物の含有量は最低限にとどめることが好ましい。このような物質は、シアン化工程において、高価な試薬の消費を増加させ、その結果貴金属回収操作にかかる費用を上昇させる。先に記載したように、それ故に、後続の貴金属回収の条件を最適化するためには、固体−液体分離工程中に大量の洗浄水もしくは他の希釈液、または複数の工程を使って固体含有残留物流中の銅および酸のレベルを低く保つことが好ましい。
【0059】
図1に本発明の一つの例示的態様の局面として描かれているように、一つまたは複数の、例えば濾過、沈降濃縮、向流デカンテーション等のような追加の電解質処理工程1050を任意選択的に利用して、固体−液体分離工程1040からの工程流111を更にコンディショニングおよび/または精製することもできる。更には、工程流111の一部(図1の液流122)は、加圧浸出工程1030に直接、または貧電解質再循環流119(例示のように)および/もしくは加圧採取操作に加わる他の適切な工程流と一緒に再循環してもよい。例示的態様によれば、電解質処理工程1050からの残留物流114は更なる処理1080にかけられ、そこで、残留物流114の状態に応じて、該液流の全てもしくは一部は上記したように中和され、封じ込められ、廃棄され、または更なる処理を受ける。
【0060】
本発明の一つの態様によれば、かつ同時に図2を参照すると、残留物流108、残留物流110、および/または残留物流114は、ヒープまたはダンプ浸出工程の促進に使用され得、その
PLSは、以下に記載するように各溶液抽出工程2010、ストリッピング工程2015、および電解採取工程2030と関連させて処理できる。電解質処理工程1050からの銅含有溶液流113は次に、銅回収にかけられるのが好ましい;しかしながら、例示的態様の一つの局面では、銅含有溶液流113の一部(図1の液流120)は、加圧浸出工程1030に再循環してもよい。
【0061】
再度図1を参照すると、本発明の態様の一つの態様では、電解質処理工程1050からの銅含有溶液流113は、電解質再循環タンク1060に送られる。電解質再循環タンク1060は、以下により詳細に論ずるように、電解採取回路1070の工程制御を適切に促進する。銅含有溶液流113は、電解質再循環タンク1060内で貧電解質液流121と生成物液流115を生ずるのに適切な比で混合されるのがこのましく、この条件は、電解採取回路1070で生ずる生成物が最適になるように選ぶことができる。
【0062】
引き続き図1を参照すると、生成物液流115由来の銅は、適切に電解採取されて、純粋なカソード銅生成物(液流116)を生ずる。本発明の様々な局面によれば、銅含有溶液を適切にコンディショニングすることによって、電解採取回路に入れる前に銅含有溶液を溶媒/溶液抽出工程にかけることなしに、高品質の、均一にメッキされたカソード銅生成物116を実現できる工程が提供される。
【0063】
当業者は、銅および他の金属分の電解採取向けに様々な方法および機器が入手でき、選択した方法または機器に必須である工程パラメータが満たされているのであれば、どのものでも本発明による使用に適切であることを承知している。便宜および本発明の広い理解を目的として、本発明の様々な態様との関係で有用である電解採取回路は、通常の様式で運転するように組み立て、および形作られた電解採取回路を含み得る。電解採取回路は、その中に鉛合金製のアノード板と銅製の平板カソードが、平行に交互に懸架されたものがタンクの長軸に垂直に配置されている、細長い長方形のタンクとして組み立てられた電解採取槽を含み得る。銅含有浸出溶液は、タンクに、例えばその一端から入れられ、平行なアノードとカソードの平面に対し垂直方向に流れ(全体の流れのパターンを指す)、電流を流すと銅はカソードに沈積され、水はアノードで酸素と陽子に電気分解される。別の電解質分布と流れのプロフィールを用いることができる。
【0064】
酸溶液からの銅の電解採取の一次電気化学反応は次の通りと信じられている:
2CuSO+2HO→2Cu゜+2HSO+O
カソード半反応:Cu2++2e→Cu゜
アノード半反応:2HO→4H+O+4e
再び図1に戻ると、本発明の好ましい態様では、生成物液流115は電荷質再循環タンク1060から電解採取回路1070に向けられ、回路は一つまたは複数の通常の電解取得槽を含む。しかしながら、現在知られている、または今後考案される、酸溶液からの銅の電解取得に適切ないずれの方法および/または機器は、先に参照した反応または別の反応に関して、本発明の範囲内にあることを理解しなければならない。
【0065】
本発明の好ましい局面によれば、電解採取回路1070は、カソード銅生成物116、場合によっては排気ガス流(未表示)、および本明細書では貧電解質液流117として示される銅含有酸溶液を比較的大量に生ずる。上で論じたように、本発明の例示の態様では、貧電解質液流117の一部(図1の貧電解質再循環液流119)は、加圧浸出工程1030および/または電解質再循環タンク1060に再循環されるのが好ましい。任意に、電解質処理工程1050からの銅含有溶液流113の一部(図1の液流120)は、貧電解質再循環液流119と一緒にされ、加圧浸出工程1030に再循環される。更には、本発明の例示的態様の一つの局面によれば、貧電解質液流117の一部(図1の貧電解質流出流118)は、例えば図2に描かれているように、不純物および酸の除去、ならびに/または銅回収操作のために工程100から除去される。
【0066】
貧電解質再循環液流119は、少なくとも約50重量パーセントの貧電解質液流117、より好ましくは約60〜約95重量パーセントの貧電解質液流117を、更に好ましくは約80〜約90重量パーセントの貧電解質液流117を含むのが好ましい。貧電解質流出流118は、約50重量パーセント未満の貧電解質液流118、より好ましくは約5〜約40重量パーセントの貧電解質液流117、および更に好ましくは約10〜約20重量パーセントの貧電解質液流117を含むのが好ましい。
【0067】
金属含有生成物液流115からの銅分は、電解採取工程1070中に取り除かれ、純粋な、カソード銅生成物を生ずる。本発明の様々な局面によれば、金属含有溶液を適切にコンディショニングすることによって、電解採取に入れる前に金属含有溶液を溶媒/溶液抽出にかけることなく、高品質の、均一にメッキされたカソード銅生成物を得ることができることを認識しなければならない。先に記したように、金属含有溶液を電解採取回路に入れる条件を注意深く制御することで−特に液流中の銅組成を実質的に一定に保つことによって−とりわけ、カソード上に銅を均一にメッキすることができ、銅生成物を劣化し、その結果その経済的価値を減ずることがあるカソード銅表面の孔形成を回避することによって、電解採取された銅の品質を高めることができる。本発明のこの局面によれば、このような工程制御は、選択したシステムおよび/または方法が電解採取回路への供給流を実質的に一定に維持する限りは、いずれの様々な技術および装置配置を用いても達成し得る。当業者は承知するように、銅および他の金属分の電解採取には様々な方法および機器が利用でき、選択した方法または機器に必須の工程パラメータが満たされているかぎりは、どのようなものも本発明による使用に適切である。
【0068】
図2に描かれた本発明の例示的態様によれば、電解採取ユニット1070(図1)からの貧電解質流出流118は、溶媒/溶液抽出工程2010に送られる。本発明の一つの態様によれば、溶媒/溶液抽出工程2010は、大気圧および/または加圧浸出操作2020からの物質、ならびに貧電解質流出流118を処理するように構成されている。浸出操作2020は、たとえばヒープ浸出、ストックパイル浸出(当該技術分野では「ダンプ浸出」と呼ばれることもある)、バット浸出、タンク浸出、攪拌タンク浸出、インサイチュー浸出、加圧浸出、またはその他工程を含む、通常または今後開発される任意の大気圧または加圧浸出法を利用できる。本発明の好ましい態様の一つの局面によれば、浸出操作2020は通常の酸消費ヒープ浸出操作であるが、ここで低級鉱石201は酸含有液流202、および任意の溶媒/溶液抽出ユニット2010からのラフィネート流205のような他の工程液流と接触させられる。浸出操作2020では、酸は鉱石ヒープを下向きに浸透して、銅含有鉱石中の銅を硫酸銅の形に可溶化し、銅に富む含浸出液(PLS)流203を形成する。本発明の好ましい態様の一つの局面によればヒープ浸出操作2020からのPLS203は、溶媒/溶液抽出工程2010に工程液流204として入る前に貧電解質流出流118と混合させられる。
【0069】
先に論じたように、更に図2を参照すると、浸出操作2020は、加圧浸出残留物を加えることによって促進できる。本発明のこの観点の様々な例示的態様によれば、加圧浸出残留物の全てまたは一部は鉱物と凝集塊を形成させても、または凝集塊形成前、形成中、および/もしくは形成後にヒープ供給物質に加えても、または浸出操作2020に用いられる鉱石もしくは他の浸出物質に加えてもよい。
【0070】
前記にかかわらず、浸出操作2020への残留物の付加は、任意の現在知られている方法、または今後考案される方法で実施できる。このように、加圧浸出残留物は、前処理を受け、加工され、または任意の適切な方法で扱われ、例えば浮遊選鉱を用いることによって、残留物のイオウ含有量を高めることができる。残留物の付加は、浸出操作2020の性能パラメータを高めると考えられる。
【0071】
本発明のこの態様の更なる局面によれば、既に簡単に述べた通り、貧電解質流出流118は、工程、例えば電解採取工程から不純物を好都合に除去できる。このような不純物としては、制限はないが、鉄、アルミニウム、ケイ酸、セレニウム、マグネシウム、マンガン、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。除去しない場合は、このような不純物は有害レベルにまで蓄積することがあり、それは生産効率および生成物(例えば銅カソード)の品質に悪影響を及ぼすことがある。このような不純物が貧電解質流出流118中に存在することは、一般的には、前述した貧電解質流出流118の取り扱いに悪影響を及ぼすことはない。
【0072】
以下に更に詳細に論じるように、本発明の更なる態様では、不純物は、沈殿または他の工程のような、任意の適切な手段を通じて加圧浸出前に除去できる。
【0073】
図2を更に参照すると、溶媒/溶液抽出工程2010および溶液抜取り工程2015は、二つのユニット操作−複数の工程があることもある抽出操作、およびそれに続く抜取り操作の中で、銅含有工程液流204を精製する。抽出工程では、工程流204は、銅選択試薬(即ち抽出剤)が混合された希釈液から成る有機相と接触させられる。溶液を接触させると、有機抽出剤は液流204から銅を取り除き、銅除去水溶性ラフィネート流を形成する。続いて沈殿器の中でラフィネート液および有機液流が分離される。沈殿器内で有機相と水相を分離した後、水相の一部(液流205)は、典型的には、大気圧浸出の鉱石由来の銅が再充填される一つまたは複数の浸出操作に戻されてPLSを形成するか、他の工程領域に再循環されても、または適切に廃棄されてもよい。有機液流は溶媒/溶液抽出工程の二番目のユニット操作、抜取り操作に進む。抜取り操作では、有機液流は強酸性の電解質と接触させられる。酸性溶液は、抽出物から銅を「抜取り」、有機相は実質的に銅が枯渇した状態になる。充填した抜取り溶液の水相(液流206)の少なくとも一部は、電解採取設備2030に「富」銅溶液として送られる。水性液流206は電解採取設備2030で処理され、カソード銅207および銅含有貧電解質液流208を生じ、該貧電解質液流は、本発明の好ましい態様の一つの局面では、一部を溶媒/溶出抽出ユニット2010および/または加圧浸出工程1030(図1の液流209)および/または他の工程領域に再循環できる。
【0074】
本発明の一つの別の局面では、水性液流206は溶媒/溶液抽出ユニットを離れた直後には電解採取に供されず、それに代わって他の銅含有工程液流と混合され、そして生じた液流を電解採取ユニットに送ることができる。例えば、水性液流206の全てまたは一部は、銅含有溶液流(未表示)および貧電解質液流(未表示)と電解質再循環タンク1060(図1より)内で混合し、電解採取回路での電解採取に適切な終局生成物液流を形成できる。このような例では、溶媒/溶液抽出2010で用いる抜取り溶液は、電解採取回路1070(図1より)からの使用済み電解質から構成される見込みがある。
【0075】
不純物の除去は、加圧浸出の前に、例えば上記の分離および/または沈殿工程によるような適切な処理によって更に促進できる。前述したような本発明のこの更なる局面によれば不純物は工程(例えば電解採取工程)から除去されると好都合である。このような不純物としては、制限はないが、鉄、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられ、硫化物として存在することが多い。除去を行わない場合、このような不純物は有害なレベルにまで蓄積し、そうして生産効率および生成物(例えば銅カソード)の品質に悪影響を及ぼし得る。
【0076】
以下に記載する実施例は本発明の好ましい態様の様々な局面の例示である。ここに記した工程条件およびパラメータは、本発明の様々な局面を例示することを意図したものであり、請求する発明の範囲を制限しようとするものではない。
【実施例】
【0077】
(実施例1)
銅を本発明の例示的態様に従って、黄銅鉱含有濃縮物から連続中温加圧採取および直接電解採取を用いて回収した。表1は、用いた工程条件および操作パラメータを示す。
【0078】
【表1A】

【0079】
【表1B】

ここでは、通常の処理技術に比べて低いコストで高い銅回収を可能にする、金属含有物質から銅を回収する、特に黄銅鉱のような硫化銅からの銅を回収する有効かつ効率的な方法を示した。本発明によれば、中温加圧浸出の様々な、重要な経済的便益を実現し、かつ従来からの中温加圧浸出に伴った処理問題を回避すると同時に、約96〜約98パーセントを超える銅の回収を達成することができる。更に本発明は、加圧浸出および直接電解採取と大気圧浸出、溶媒/溶液抽出、および電解採取工程を組み合わせて用いる、黄銅鉱含有鉱石からの銅を回収するための、実質的な酸の自己生産工程を提供する。
【0080】
本発明は、多くの例示的態様および実施例への参照とともに記載した。本明細書に示し、記載した具体的な態様は本発明およびその最良の態様の例示であり、いかなる形でも本発明の範囲を制限するものではない。本開示を読んだ当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、例示の態様を変更および改良できることを認識するだろう。更には、本明細書では例示的な態様として本発明の特定の好ましい局面が記載されているが、本発明のこのような局面は、現在知られている、またはこれから考案される、多くの適切な手段を通して達成できるだろう。それ故に、これらおよび他の変更または改良は、本発明の範囲内に含まれるものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図1A】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−214906(P2012−214906A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−144053(P2012−144053)
【出願日】平成24年6月27日(2012.6.27)
【分割の表示】特願2009−510033(P2009−510033)の分割
【原出願日】平成19年5月1日(2007.5.1)
【出願人】(503036221)フェルプス ドッジ コーポレイション (8)
【Fターム(参考)】