説明

加圧装置、その加圧方法、ポンプ装置及び培養装置

【課題】液体等を圧力伝達媒体に用いる加圧装置に関し、加圧側と被加圧側とを分離し、受圧側の汚染を防止することにある。
【解決手段】圧力を圧力伝達媒体(例えば、水50)により受圧側に伝達する加圧装置(2)であって、前記圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部(46)と、圧力を受ける受圧側空間部(16)と、前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜(34)と、前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部(70)と、前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストン(64)とを備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達し、前記受圧側空間部側を加圧する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体やゲル等を圧力伝達媒体に用いる加圧装置の構造やその加圧方法、ポンプ装置及び培養装置に関する。本発明の加圧装置は、材料や部品の耐圧測定に用いる耐圧耐久装置、深海生物等の高圧下での飼育実験装置、生体細胞や生体組織を培養する培養装置等に広く用いられる。
【背景技術】
【0002】
生体細胞の培養は、培養皿の中で大気圧の圧力下で行われてきたが、近年、体内を模倣した環境下で培養することが提唱され、体内で圧力や荷重のかかる関節軟骨や骨を圧力下で培養することが試みられている。とりわけ、再生医療では、治療に使われるためには、圧力チャンバや流体の通路となる部分を使い捨てにし、他人の遺伝子の汚染や感染症の病原体による汚染を防ぐことが重要である。このことは、微生物や生物の飼育でも、高純度の物質や他の物質の接触を嫌うような材料の試験でも同様のことが言える。そのためには、構造はできるだけ単純化し、かつコスト低減が要請されている。
【0003】
ところで、高圧を作り出すには、タービンポンプ、ギヤポンプ、プランジャポンプ等を使用するとともに、流体を注入した耐圧容器を閉塞し、その容器内を高圧にするのが一般的である。特許文献1、2には加圧装置が開示されている。
【0004】
生物を高圧下で飼育するには、海水や淡水を入れた水槽に、外部から海水や淡水を注入し、水槽内の圧力を高める。例えば、特許文献3に開示された技術がそれである。
【0005】
また、再生医療等に用いられる生体細胞や生体組織の培養では、体内を模倣して加圧しながら培養することが、表現型の維持や最発現、分化誘導、増殖、細胞移動、物質移動に良い効果をもたらすことが言われ、加圧培養装置(特許文献4、5)が提案されている。
【特許文献1】特開平7−327676号公報
【特許文献2】特開平9−151903号公報
【特許文献3】特開2005−6547号公報
【特許文献4】特開2001−238663号公報
【特許文献5】特表2004−512031号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1又は特許文献2の耐圧・耐久装置や、特許文献3の飼育実験装置では、圧力を受けさせる物の周囲の液体をタービンの回転やプランジャの往復運動、ギアモータの回転等によって圧力を高め、加圧している。この際、タービンの回転やプランジャの往復運動、ギアモータの回転等を円滑に行うための潤滑油や漏れを防止するためのシール材料が液体に溶け込み、又は混入することがある。シール材料の流出や混入はその用途を制限することになる。
【0007】
特許文献5に開示されている生体細胞や生体組織の培養では、培養液中への他の物質の混入を避けるため、ポンプで加圧した加圧チャンバの水の中に細胞を入れて密閉したシールバッグを入れている。このようなシールバッグを用いても、培養液の交換や、他のシールバッグへの移し替えには雑菌等の侵入のおそれがあり、その作業は細心の注意が必要であり、面倒である。
【0008】
特許文献4に開示されている培養装置では、加圧機構と培養チャンバとが隔離され、加圧用液体と培養液とが直接接触することがない点で汚染防止に優れている。しかしながら、加圧機構が複雑である場合には製造コストが高くなる。また、培養液を送る送液装置において、シール部(Oリング)の磨耗で微細粉を生じるおそれがある。
【0009】
このような課題について、特許文献1〜5にはその開示はなく、それを解決する手段も開示されていない。
【0010】
そこで、本発明の第1の目的は、液体等を圧力伝達媒体に用いる加圧装置に関し、加圧側と受圧側とを分離し、受圧側の汚染を防止することにある。
【0011】
斯かる目的を具体的に述べれば、外部の雑菌の侵入を防ぎ、不純物の混入を防ぎつつ、単純な加圧機構で、安価な加圧培養等に適用できる加圧装置を実現することにある。
【0012】
また、本発明の第2の目的は、受圧側の汚染を防止した加圧装置の加圧方法を提供することにある。
【0013】
また、本発明の第3の目的は、既述の加圧装置を用いて流体を圧送させるポンプ装置を実現することにある。
【0014】
また、本発明の第4の目的は、生体細胞や生体組織を培養する培養装置に関し、既述の加圧装置やポンプ装置の何れか一方又は双方を用いた培養装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
そこで、上記第1の目的を達成するため、本発明の第1の側面は、圧力を圧力伝達媒体により受圧側に伝達する加圧装置であって、前記圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、圧力を受ける受圧側空間部と、前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンとを備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達し、前記受圧側空間部側を加圧する構成である。斯かる構成により、上記目的を達成できる。
【0016】
上記第1の目的を達成するためには、上記加圧装置において、好ましくは、前記圧力伝達媒体は液体又はゲルである構成としてもよい。
【0017】
上記第1の目的を達成するためには、上記加圧装置において、好ましくは、前記シリンダ部に設置され、前記加圧ピストンによって移動可能な従動ピストンを備える構成としてもよい。
【0018】
上記第1の目的を達成するためには、上記加圧装置において、好ましくは、前記シリンダ部と前記加圧ピストンとの間を封止膜又は封止環により封止する構成としてもよい。
【0019】
上記第1の目的を達成するためには、上記加圧装置において、好ましくは、前記圧力伝達媒体に液体を用いる場合、該液体を収容した前記加圧側空間部を封止する栓を備える構成としてもよい。
【0020】
上記第2の目的を達成するため、本発明の第2の側面は、圧力を圧力伝達媒体により受圧側に伝達する加圧装置の加圧方法であって、受圧膜を備える加圧側空間部に前記圧力伝達媒体を入れる工程と、前記圧力伝達媒体を入れた前記加圧側空間部とシリンダ部とを連結する工程と、前記シリンダ部内に加圧ピストンを摺動させ、該加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達し、受圧側空間部を加圧可能にする工程とを含む構成である。斯かる構成により、上記目的を達成できる。
【0021】
上記第2の目的を達成するためには、上記加圧装置の加圧方法において、好ましくは、前記圧力伝達媒体は液体又はゲルである構成としてもよい。
【0022】
上記第2の目的を達成するためには、上記加圧装置の加圧方法において、好ましくは、前記圧力伝達媒体に液体を用いる場合、該液体を収容した前記加圧側空間部を封止する栓を備えるとともに、前記シリンダ部に前記加圧ピストンによって移動可能な従動ピストンを備え、該従動ピストンを前記栓に当てて開栓する工程を含む構成としてもよい。
【0023】
上記第3の目的を達成するため、本発明の第3の側面は、外部圧力に応じて被移送流体を移送するポンプ装置であって、圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、圧力を受け、前記被移送流体を流す受圧側空間部と、前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンとを備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達させて前記受圧側空間部側を減圧又は加圧状態にし、減圧時、前記受圧側空間部に前記被移送流体を流し込み、加圧時、前記受圧側空間部から前記被移送流体を流出させる構成である。斯かる構成により、上記目的を達成できる。
【0024】
上記第3の目的を達成するためには、上記ポンプ装置において、好ましくは、前記受圧側空間部には、出口部に加圧時に開くバルブ、入口部に減圧時に開くバルブを備える構成としてもよい。
【0025】
上記第4の目的を達成するため、本発明の第4の側面は、圧力を圧力伝達媒体により受圧側に伝達する加圧装置を備える培養装置であって、前記加圧装置が、前記圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、圧力を受ける受圧側空間部と、前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンとを備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達し、前記受圧側空間部側を加圧する構成である。斯かる構成により、上記目的を達成できる。
【0026】
上記第4の目的を達成するため、本発明の第5の側面は、外部圧力に応じて培養液を移送するポンプ装置を備える培養装置であって、前記ポンプ装置が、圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、圧力を受け、前記培養液を流す受圧側空間部と、前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンとを備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達流体により前記受圧膜に伝達させて前記受圧側空間部側を減圧又は加圧状態にし、減圧時、前記受圧側空間部に前記培養液を流し込み、加圧時、前記受圧側空間部から前記培養液を流出させる構成である。斯かる構成により、上記目的を達成できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、次の効果が得られる。
【0028】
(1) 加圧側と受圧側とを分離でき、加圧側で有害物質や汚染物質が発生しても、受圧側に影響を及ぼすことがない。
【0029】
(2) 圧力伝達媒体に液体を用いる場合、空気の混入を防止でき、圧力伝達性を高めることができる。
【0030】
(3) 空気の残留を最小限にすることができるので、加圧機構側の移動距離を小さくしても、高圧力の加圧が得られる。
【0031】
(4) 圧力チャンバ側の培養液等の液体を加圧側と無関係に交換又は補充することができる。
【0032】
(5) 加圧機構側の構造を簡略化でき、製造コストの低減が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
〔第1の実施の形態〕
【0034】
本発明の第1の実施の形態について、図1ないし図12を参照して説明する。図1は、第1の実施の形態に係る加圧装置を示す図、図2は、加圧装置及びバルブを示す分解斜視図、図3及び図4は、圧力チャンバ部の筒状部及びプラグを示す図、図5は、圧力センサの一例を示す図、図6は、加圧ピストン部分を示す断面図、図7は、加圧ピストン側のダイヤフラムを示す図、図8は、圧力チャンバ部の加圧側空間部の封止方法を示す図、図9は、初期状態の加圧装置を示す図、図10は、圧力チャンバ部の加圧側空間部の封止解除を示す図、図11は、加圧解除状態にある加圧装置を示す図、図12は、加圧状態にある加圧装置を示す図である。
【0035】
この加圧装置2は、図1及び図2に示すように、加圧側から加えられた圧力を圧力伝達媒体により受圧側に伝達する手段であって、圧力チャンバ部4と、加圧機構部6とを備えており、これら圧力チャンバ部4と加圧機構部6とは着脱可能である。圧力チャンバ部4は培養庫8の内部に設置され、加圧機構部6は培養庫8の外部に設置される。
【0036】
〔圧力チャンバ部4の構成〕
【0037】
圧力チャンバ部4は、本体部10を挟んで結合部12及び蓋部14を備えている。本体部10には結合部12側からの圧力を受ける受圧側空間部として例えば、空間部16が形成され、この空間部16には、流体として例えば、培養液18を溜め、試験片として例えば、被培養物20が収容される。この場合、被培養物20は、生体細胞、生体組織、培養基材に細胞が播種された細胞構成体の何れかである。また、本体部10には、培養液18を空間部16に流入させるための入側ポート22、空間部16から培養液18を流出させるための出側ポート24が形成され、入側ポート22に接続された管路26には第1のバルブ28、出側ポート24に接続された管路30には第2のバルブ32が設置されている。これらバルブ28、32は、圧力チャンバ部4に加えられる圧力に耐えられる耐力を備える必要がある。バルブ28、32を開き、培養液18を空間部16に循環させて満たし、バルブ28、32を閉じることによって空間部16内に培養液18を閉じ込め、この状態で培養液18及び被培養物20を加圧することができる。
【0038】
本体部10と結合部12との間には伸縮性のあるプラスチックフィルムやその他の薄膜等で形成された受圧膜34が設置され、この受圧膜34の周囲部にはOリング部36が一体に形成されている。このOリング部36によって本体部10と結合部12との間がシールされている。また、本体部10と蓋部14とは、本体部10側の立壁38を蓋部14側の溝部40に噛み合わせ、立壁38の内外にあるOリング42、44を以てシールされている。
【0039】
結合部12側には加圧側空間部として空間部46が形成されているとともに、筒状部48が形成されている。空間部46は、結合部12と受圧膜34との間及び筒状部48の内部に至る空間であり、圧力伝達媒体として液体例えば、水50で満たされる。筒状部48には図3の(A)に示すように、中間に段差51を設けて径大部52と径小部54とを備えている。この筒状部48の径小部54側を開閉するための栓として円柱体のプラグ56(図1)が設置される。
【0040】
このプラグ56は、図3の(B)に示すように構成されており、その直径が径小部54及び径大部52の内径より小さく設定され、その中間部に形成された溝部58に取り付けられたOリング60の外面径が径小部54の内径より大きく設定されている。また、筒状部48の先端部には、その外側に加圧機構部6側との密着接合を図るため、Oリング66が取り付けられ、また、その内側にテーパ面68が形成されている。
【0041】
筒状部48の径小部54側にプラグ56がOリング60を以て嵌入されることにより、プラグ56によって筒状部48が閉止され(図1)、プラグ56が径大部52側に外されると、図4に示すように、そのプラグ56の外面部と径大部52の内壁部との間にスペース62が形成され、水50が流動することになる。空間部46は、加圧機構部6側の加圧ピストン64の最大突出幅より大きく設定されている。
【0042】
〔加圧機構部6の構成〕
【0043】
加圧機構部6は、図1に示すように、シリンダ部70と、連結部72と、ピストン機構部74とを備えている。シリンダ部70には連結部72が固定手段として例えば、複数のねじ76によって固定されているとともに、培養庫8の壁部78に固定手段として例えば、ねじ80によって固定されている。また、連結部72は、圧力チャンバ部4とシリンダ部70とを連結をするための手段である。この実施の形態では、培養庫8の壁部78に形成された貫通孔82に貫通させた連結部72が庫内に挿入されている。この連結部72には、シリンダ部70に通ずる連結孔84を備えた連結筒部86が形成され、この連結筒部86には圧力チャンバ部4側の筒状部48が挿入され、圧力チャンバ部4が連結される。
【0044】
シリンダ部70には、加圧ピストン64に従動する従動ピストン88が挿入され、従動ピストン88とシリンダ部70の内壁部90との間には、水50を流動させるとともに従動ピストン88の移動を許容するスペース92が形成されている。従動ピストン88は、内壁部90の容積を狭めるための手段であって、軽量の剛体であり例えば、合成樹脂で形成された円柱体である。この場合、従動ピストン88の直径は、内壁部90の内径より小さく形成されている。
【0045】
従動ピストン88は、プラグ56と加圧ピストン64との間に形成されたスペースを埋めてスペース92内の空気を排除するための容積狭小化部材であるとともに、プラグ56を開栓するための手段である。スペース92内に従動ピストン88とシリンダ部70との間にできるクリアランスは、従動ピストン88の自由移動を許容し、加圧ピストン64からの圧力を伝達できる範囲で最小にする。この場合、クリアランス即ち、スペース92は小さいので、不要な空気の残留を抑制でき、シリンダ部70内を昇圧し、高圧化に寄与する。
【0046】
また、シリンダ部70には内壁部90の内部に加えられる圧力を検出する圧力センサ94が取り付けられ、この圧力センサ94のセンサ部96にはシリンダ部70に形成された検出孔98を通してシリンダ部70内の圧力が作用している。圧力センサ94は、検出圧力を電気信号に変換して出力する。圧力センサ94は例えば、図5に示すように、センサ部96及びセンサ回路97が備えられており、センサ部96に生じた検出圧力に対する物理変化として例えば、抵抗変化をセンサ回路97により電気信号Vに変換する。この電気信号Vは出力端子99から出力される。
【0047】
シリンダ部70の背面側には固定手段である複数のねじ100によってピストン機構部74が固定され、このピストン機構部74は支持筒部102と、加圧ピストン64とを備えている。支持筒部102には軸支持部104が取り付けられ、この軸支持部104には加圧ピストン64の軸部106が摺動可能に支持されている。加圧ピストン64と支持筒部102との間には、伸縮膜であるダイヤフラム108とともに、作動突部としてのダイヤフラムリテーナ109が設置され、ダイヤフラム108は、シリンダ部70を密封するとともに、加圧ピストン64の移動を許容する。軸部106の後部にはフランジ部110が取り付けられ、このフランジ部110と軸支持部104との間には、弾性部材としてコイルスプリング112が設置され、このコイルスプリング112の復元力が加えられている。フランジ部110の中心部には加圧ポイント113が形成され、この加圧ポイント113には、駆動手段としてアクチュエータ114から押力が付与される。このアクチュエータ114から加圧ポイント113を通して軸部106に例えば、断続的に加圧力が付与される。
【0048】
〔加圧ピストン64の構成〕
【0049】
加圧ピストン64には図6に示すように、軸部106側にフランジ部116が形成されており、このフランジ部116に対し、支持筒部102の内側にストッパ環118が形成されているので、このストッパ環118にフランジ部116が当たることにより、加圧ピストン64の後退位置が決定されている。
【0050】
この加圧ピストン64の先端部にはダイヤフラム108が接着材等の固定手段によって固定されるとともに、このダイヤフラム108を挟んで円柱状のダイヤフラムリテーナ109が固定されている。ダイヤフラム108の周縁部にはOリング部120が一体に形成され、このOリング部120はダイヤフラム108の固定手段であるとともに、シリンダ部70の気密保持手段を兼用している。そこで、支持筒部102の前端面部には、貫通孔122と同心円状の凹部124が形成され、この凹部124に挿入して保持させたOリング部120を支持筒部102とシリンダ部70との間に介在させ、ねじ100で支持筒部102とシリンダ部70との間を固定することにより、両者間にOリング部120を密着させ、封止している。
【0051】
このように、ダイヤフラム108は、その周囲部を支持筒部102側に固定され、その中央部が加圧ピストン64側に固定されており、その中間部は、ダイヤフラムリテーナ109の周囲部から加圧ピストン64の前端側を覆うように屈曲させ、ダイヤフラムリテーナ109及び加圧ピストン64の周囲部と支持筒部102との間に移動可能に配置されている。
【0052】
ダイヤフラム108は図7に示すように、伸縮性材料で形成されてドーム状を成しており、膜部126を有するとともに、その中心部には加圧ピストン64及びダイヤフラムリテーナ109を固定するためのボス部128が形成され、膜部126の縁部には湾曲部130を介在させてOリング部120が形成されている。
【0053】
次に、この加圧装置2の加圧方法を説明する。この加圧方法には、加圧装置2の組立て時における初期設定と、稼働時の加圧動作とが含まれる。
【0054】
〔初期設定〕
【0055】
図1及び図2に示す加圧装置2の各部品を製造した後、図8の(A)に示すように、本体部10と結合部12との間に受圧膜34を挟み込み、受圧膜34の周囲部にあるOリング部36を本体部10と結合部12との間に介在させてシールする。この状態では、プラグ56が装着されていない。100〔℃〕以上の蒸気滅菌(オートクレーブ)をする場合には、ここで蒸気滅菌を行えばよい。
【0056】
図8の(B)に示すように、筒状部48に水50を満たし、プラグ56を取り付けることにより、筒状部48を封止する。図1は、筒状部48に水50を満たし、プラグ56で封止された状態を示している。電子線滅菌又はγ線により滅菌を行う場合には、ここで滅菌を行えばよい。
【0057】
クリーンベンチ内で蓋部14を開け、圧力チャンバ部4の空間部16に培養液18と被培養物20を入れ、空間部16に空気が残留しないようにし、本体部10と蓋部14との間にもOリング42、44を挟み込み、本体部10に蓋部14を取り付け、圧力チャンバ部4の本体部10側をシールする。
【0058】
図9に示すように、連結部72に圧力チャンバ部4を取り付け、シリンダ部70と圧力チャンバ部4とを連結する。そこで、図10に示すように、フランジ部110をコイルスプリング112の圧縮方向に移動させ、加圧ピストン64をシリンダ部70側に移動させると、この加圧ピストン64が従動ピストン88に当たり、加圧ピストン64とともに従動ピストン88が筒状部48側に移動する。
【0059】
筒状部48側に移動した従動ピストン88がプラグ56に当たり、従動ピストン88の移動に従い、プラグ56が筒状部48の径大部52側に移動し、筒状部48の封止が解除される。プラグ56の封止によって筒状部48内に保持されていた水50は、プラグ56の封止が解かれることにより、筒状部48から連結部72を経てシリンダ部70側に流れ、シリンダ部70の内壁部90と従動ピストン88との間にあるスペース92内に移動する。このとき、圧力チャンバ部4内の圧力は上昇しているが、加圧ピストン64の位置を後退させると、大気圧と同じ圧力に復帰する。
【0060】
加圧ピストン64の有効断面積をS〔m2 〕、加圧ピストン64に加える力をF(N、ニュートン) とすると、圧力Pは、
P(Pa、パスカル)=F/S ・・・(1)
となる。この圧力は圧力センサ94で検出される。
【0061】
〔稼働時の加圧動作〕
【0062】
この加圧装置2において、アクチュエータ114からの加圧力を解除し、コイルスプリング112の復元力により加圧ピストン64を後退させると、図11に示す状態となる。図11は、加圧ピストン64を引き、圧力降下点(0〔MPa〕)の状態を示している。この場合、バルブ28を逆止弁とし、バルブ32を加圧ピストン64が後退した時点で閉に切り換えれば、圧力チャンバ部4の空間部16に培養液18が溜められることになる。
【0063】
この状態から、図12に示すように、設定圧力例えば、0.5〔MPa〕となるように加圧ピストン64をシリンダ部70側に移動させると、シリンダ部70及び連結部72のスペース92の水50が受圧膜34側に移動し、受圧膜34が膨張する。この受圧膜34の変化により、圧力チャンバ部4内の空間部16にある培養液18が加圧され、同時に、被培養物20も加圧されることになる。
【0064】
このような加圧状態(図12)と、その解除状態(図11)とを交互に繰り返すことにより、周期的、断続的又は連続的な加圧を行うことができる。
【0065】
そして、予め、必要な力を加圧ピストン64に加えて移動させ、圧力センサ94の出力を用いて加圧ピストン64に力を加えるアクチュエータ114側にフィードバックし、その力の制御を行えば、圧力チャンバ部4の圧力を正確な圧力に上昇させ、維持させることができる。
【0066】
圧力の上昇と下降の変化を二次元的或いは三角関数的に変化させ、これを繰り返し行えば、圧力の変化が近似的にサインカーブで変化する繰返し圧力を作り出すことも可能である。
【0067】
培養時間が経過すると、圧力チャンバ部4を加圧機構部6から外し、クリーンベンチに移動し、クリーンベンチ内で被培養物20を取り出す。被培養物20は、再生医療として使う場合には患者に移植すればよいし、その他の場合には培養状態、組織形成等の試験研究に用いることができる。
【0068】
以上のように、生体細胞や生体組織の培養例を挙げたが、被培養物20には他の生物を用いてもよい。例えば、培養液18を海水や淡水にし、被培養物20を深海生物に置き換えれば、深海生物の飼育に適用できる。また、培養液18を水や使用環境の液体に置き換え、被培養物20に代えて耐圧性テストサンプルとしての部品を用いれば、その部品の耐圧試験に適用することもできる。
【0069】
〔シリンダ部70内の残留空気の影響と従動ピストン88の機能〕
【0070】
この加圧装置2における残留空気の影響について、数式を使って説明する。加圧時の水の圧縮率は、温度が0〔℃〕から40〔℃〕の範囲で、圧力が100気圧以下の場合、4.95×10-5〔cm2 /kg〕から4.35×10-5〔cm2 /kg〕である。例えば、100〔cm3 〕の水が10〔kg/cm2 〕の圧力を受けたときの圧縮量は、約0.045〔cm3 〕、(=約45μリットル)であるから、無視できる程度である。
【0071】
これに対して、残留空気の場合には、
P×V=P1 ×V1 =一定 ・・・(2)
である。但し、Pは圧力、Vは体積、P1 は元の圧力、V1 は元の容積とする。例えば、絶対圧力が1〔kg/cm2 〕のとき、100〔cm3 〕の体積だった空気Vは、絶対圧力が10〔kg/cm2 〕では、10〔cm3 〕と10分の1の体積となり、大きく体積が減少する。
【0072】
水と空気が混在しているシリンダ部70に加圧ピストン64で圧力をかける場合、空気を圧縮させる分だけ、加圧ピストン64を移動させなければ、所望の圧力は得られない。よって、圧力をかけようとするシリンダ部70中には、空気が極力少ないことが望ましい。
【0073】
具体例を挙げると、計算条件は以下の通りである。
【0074】
圧力チャンバ部4の空間部16の内容積:100,000〔mm3 〕(=100〔cm3 〕)
加圧ピストン64の有効直径:13.5〔mm〕
ダイヤフラム108を含む加圧ピストン64の有効受圧面積(Ap):143〔mm2
加圧ピストン64の可動ストローク(Lmax):14〔mm〕
従動ピストン88の直径:14.8〔mm〕
加圧ピストン64のシリンダ部70の内径:15〔mm〕
シリンダ部70の長さ:70〔mm〕
筒状部48の径大部52の径:16.5〔mm〕
筒状部48の径大部52の長さ:16〔mm〕
この場合、シリンダ部70の長さは、加圧ピストン64がぶつからないよう、加圧ピストン64のストロークより長くする必要がある。
加圧圧力:1.47〔MPa〕=15〔kg/cm2
大気圧:Po=1〔kg/cm2 〕とする。
圧力チャンバ部4の残存空気の容積:600〔mm3 〕と仮定する。(直径20〔mm〕、高さ2〔mm〕相当の残留空気を仮定)
【0075】
A)シリンダ部70に従動ピストン88が設置されない場合であって、空間部46に水50を入れない場合:
【0076】
この場合、加圧ピストン64が圧縮可能な容積Vpは、
Vp=Ap×Lmax ・・・(3)
から、2,002〔mm3 〕となる。シリンダ部70のスペースの空気容積Vnは12,370〔mm3 〕、空間部46の空気容積Vsは3,421〔mm3 〕となる。圧力チャンバ部4の残存空気の容積Vmは600〔mm3 〕と仮定すると、シリンダ部70内に閉じ込められる空気の総容積Voは、
Vo=Vn+Vs+Vm ・・・(4)
から、16,391〔mm3 〕となる。総容積Voを加圧ピストン64で圧縮すると、圧縮後の容積Vcは、
Vc=Vo−Vp ・・・(5)
から、14,389〔mm3 〕となる。(液体も収縮するが、空気に比べると非常に小さく無視できるため、空気の収縮のみ計算する。)このときの圧力Pcは、
Po×Vo=Pc×Vc ・・・(6)
Pc=Po×Vo/Vc ・・・(7)
から、1.14〔kg/cm2 〕、この圧力Pcは絶対圧であるので、相対圧にすると、0.14〔kg/cm2 〕となる。
【0077】
このことから、国際単位で、0.014〔MPa〕となり、加圧部分に空気を保有している場合は、殆ど昇圧できないことを意味する。
【0078】
B)シリンダ部70に従動ピストン88を設置した場合であって、空間部46に水50を入れた場合:
【0079】
加圧ピストン64が圧縮可能な容積Vpを2,002〔mm3 〕とすると、従動ピストン88とシリンダ部70のスペース92に存在する空気の容積Vnは327〔mm3 〕となる。
【0080】
空間部46の空気容積Vsは、空間部46に水50を入れると、理論的にはVs=0となるが、実際には僅かな空気が、受圧膜34と結合部12の隙間に気泡となって残存することが予想される。この残存空気の容積Vsを600〔mm3 〕と仮定する。
【0081】
圧力チャンバ部4の残留空気の容積Vmは600〔mm3 〕となる。シリンダ部70内に閉じ込められる空気の総容積Voは、式(4)より1,527〔mm3 〕となる。この場合の空気容積Voは、加圧ピストン64が圧縮可能な容積Vpより小さくなり、十分な加圧ないし昇圧をすることができる。
【0082】
C)残留空気として2,500〔mm3 〕程度が存在する場合
【0083】
この場合、既述のB)の条件に973〔mm3 〕の空気が追加されることになり、973〔mm3 〕の容積の水が減少することを意味する。
【0084】
圧力を15〔kg/cm2 〕(絶対圧で16〔kg/cm2 〕)として考えると、空気の大気圧中の容積Voは2,500〔mm3 〕、式(6)より収縮後の容積Vcは、
Vc=Po×Vo/Pc ・・・(8)
から、156〔mm3 〕となる。収縮量Vadは、
Vad=Vo−Vc ・・・(9)
から、2,344〔mm3 〕となる。これは、空気の収縮のみでも加圧ピストン64の圧縮可能な容積2,002〔mm3 〕より大であるから、1.5〔MPa〕の加圧はできないことになる。
【0085】
しかしながら、3〔kg/cm2 〕(絶対圧4〔kg/cm2 〕)程度の加圧は可能である。空気の大気圧中の容積Voは、上記と同様に2,500〔mm3 〕とする。収縮後の容積Vcは、式(8)より625〔mm3 〕、収縮量Vadは、式(9)より1,875〔mm3 〕、圧力チャンバ部4内の水50の容積Vwは101,848〔mm3 〕、水50の収縮量Vwdは19〔mm3 〕、総収縮量Vtdは1,894〔mm3 〕となり、加圧ピストン64の圧縮可能な容積2,002〔mm3 〕より小であるから、3〔kg/cm2 〕の加圧は可能となる。このように、高い圧力では不可能でも低い圧力なら加圧ができることもある。この圧力で水50を加圧すると、圧力チャンバ部4中の空気は、圧力チャンバ部4内の水50に徐々に溶け込み、空気の影響が低下する。空気は、高圧中では、水に溶け込み易い性質がある(ヘンリーの法則)。
【0086】
この圧力で15分から2時間程度加圧するとともに、シリンダ部70内の空気が水に溶け込んで容積が減った分、水50又は培養液18を少しずつ供給し、或いは入れ替えれば、圧力チャンバ部4の内壁や、被培養物20に付着している空気は、気体として存在がなくなるので、高圧力の加圧が可能になる。
【0087】
このように、高圧力を加えるのではなく、一旦、低い圧力で一定時間加圧した後、高い圧力を加えれば、加圧しようとする水に空気が混入しても、その水50への溶込みにより、空気の影響を回避でき、十分な強さの圧力を得ることができる。
【0088】
上記実施の形態から特徴事項等を抽出して列挙すれば次の通りである。。
【0089】
(1) 圧力チャンバ部4の受圧側の空間部16が加圧側とは受圧膜34で仕切られているので、受圧側の汚染を防止できる。加圧機構部6側で有害物質、汚染物質が発生しても、圧力チャンバ部4や試験片への影響はない。
【0090】
(2) 圧力チャンバ部4に連結されるシリンダ部70とピストン機構部74とがダイアフラム108で仕切られているので、シリンダ部70の内部空間の汚染も防止できる。
【0091】
(3) 加圧ピストン64の可動範囲である空間に、圧力上昇にとって弊害となる気体を排除するために、水50等の液体が封入され、圧力チャンバ部4の筒状部48はプラグ56によって封止されている。
【0092】
(4) 加圧機構部6側の空間容積が可能な限り小さく設定されている。空間が生じる場合は、その空間に、液体又は固体(従動ピストン88)を入れて、空気(気体)を極力排除している。
【0093】
(5) 圧力チャンバ部4と加圧機構部6とを結合させた後、プラグ56のシールを解除し、圧力チャンバ部4の空間と加圧機構部6の空間の二つの空間を一つの空間に統合させている。
【0094】
(6) 低めの加圧を行い、不要な空気(気体)を液中に溶け込ませ、その後、目的の圧力まで圧力を上昇させるというように二段階で圧力を上げている。
【0095】
(7) 加圧装置2は、圧力チャンバ部4に入側ポート22、出側ポート24を備え、ポンプ機能を持っているので、圧力チャンバ部4内の液体を交換できる。
【0096】
(8) 加圧ピストン64の動作スペースには圧力伝達媒体として水50が満たされ、空気を排除するので、圧力伝達性が向上している。加圧ピストン64が動作する空間に水を溜めて加圧に障害となる空気を排除でき、加圧機構部6に接続するまで空間部46にはプラグ56によって水50を保持しておくことができる。また、水50には高圧下で空気を吸収させることができ、その結果、空気の残留を最小限にできるので、加圧ピストン64は小さな移動距離で高い圧力上昇が得られる。
【0097】
(9) 加圧機構部6に接続した後、プラグ56で仕切られていた二つの空間が一つの空間に統合するので、加圧ピストン64の作動によって、圧力チャンバ部4に圧力を伝達できるとともに、圧力センサ94で正確な圧力検出が可能である。
【0098】
(10) 加圧機構部6や、圧力チャンバ部4に空気混入があっても、段階的に加圧値を上昇させることができ、高い圧力の加圧が可能である。
【0099】
(11) 自動で圧力チャンバ部4内の液体を交換又は補充することができる。
【0100】
(12) 複雑な加圧機構部6は不要であり、加圧装置2のコスト低減が図れる。
【0101】
〔第2の実施の形態〕
【0102】
次に、本発明の第2の実施の形態について、図13を参照して説明する。図13は、第2の実施の形態に係る加圧装置を示す図である。図13において、図1と同一部分には同一符号を付してある。
【0103】
第1の実施の形態では、圧力伝達媒体である液体の一例として水50を用いたが、ゲルを用いてもよく、第2の実施の形態は、圧力伝達媒体にゲルを用いた場合である。ゲルは液体と固体との中間の形態を持つ物質であって、柔軟性と弾力性を兼ね備えた性質を有する。ゲルの殆どは多量の水分を含む含水ゲル(ハイドロゲル)であって、水分を吸収する性質を有する。第1の実施の形態で述べたように、水50が高圧下で水分を吸収する現象は、ゲルにおいても同様に生じ得る。ゲルはある形状を保っているが、その力は弱く、簡単に分子鎖を破ることができ、流動し得る。
【0104】
そこで、図13に示すように、水50(図1)に代え、ゼラチン等をゾル状態で空間部46に注入し、冷却する等の方法でゲル化すればよい。このようにして圧力チャンバ部4の結合部12側の空間部46に注入されたゲル150では、水50(図1)の場合に必要としていたプラグ56は不要となる。ゲル150はある形状を保っているので、プラグ56の機能を果たす。また、ゲル150の形状の保持力は弱く、加圧ピストン64の摺動による加圧によって簡単に破ることができ、流動する。即ち、ゲル150は、プラグ56と水50(図1)との機能を果たし、ゲル150の分子鎖が破壊されることによって液体と同様に圧力伝達媒体としての機能を果たす。
【0105】
また、ゲル150には混入した空気が溶け込み、空間部46の空気を実質的に排除する機能を果たすので、水50(図1)と同様の圧力伝達機能を果たす。その他の動作は、第1の実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0106】
〔第3の実施の形態〕
【0107】
次に、本発明の第3の実施の形態について、図14ないし図21を参照して説明する。図14は、第3の実施の形態に係るプランジャポンプを示す図、図15及び図16は、圧力チャンバ部を示す図、図17は、圧力チャンバ部の加圧側空間部及びその閉止を示す図、図18は、圧力チャンバ部の加圧側空間部の閉止解除を示す図、図19は、圧力チャンバ部の受圧側空間部の減圧状態を示す図、図20は、圧力チャンバ部の受圧側空間部の加圧状態を示す図、図21は、結合部側の変形例を示す図である。
【0108】
このプランジャポンプ200は、ポンプ装置の一例であって、第1の実施の形態の加圧装置2と同様の機構を備えており、ピストン機構を活用し、ピストン機構の往復動に応じて被移送流体の送液を可能にしたものである。
【0109】
このプランジャポンプ200について、第1の実施の形態の加圧装置2とを比較すると、プランジャポンプ200では、圧力チャンバ部208の圧力の昇降に応じて、入口部202から被移送流体である液体204を流入させ、出口部206から液体204を排出させる。圧力の昇降は、正確に管理する必要はないので、圧力センサ94(図1)は不要であり、また、従動ピストン88(図1)も不要である。
【0110】
このプランジャポンプ200では、高圧となっている空間に液体204を引き込む場合には、その高圧に打ち勝って、加圧ピストン256の移動容積と同等の量をより正確に引き込む必要があるので、加圧部の残留空気(気体)を極力少なくしなければならない。これは、加圧装置2と同様である。そこで、このプランジャポンプ200は、圧力チャンバ部208と加圧機構部210とを備えており、これらは着脱可能である。
【0111】
〔圧力チャンバ部208の構成〕
【0112】
圧力チャンバ部208は、本体部212と結合部214とを備えている。本体部212には受圧側空間部として空間部216が形成され、この空間部216には入口部202から吸引された液体204が溜められ、その液体204が出口部206から流出される。また、入口部202にはバルブとしての逆止弁218、出口部206にはバルブとしての逆止弁220が設置されている。逆止弁218には通路222を開閉するボール224が設置され、このボール224にはスプリング226の復元力が加えられている。同様に、逆止弁220には通路228を開閉するボール230が設置され、このボール230にはスプリング232の復元力が加えられている。即ち、逆止弁218は減圧時の吸引力によって開かれ、逆止弁220は昇圧時の加圧力によって開かれる。
【0113】
本体部212と結合部214との間には伸縮性のあるプラスチックフィルムやその他の薄膜等で形成された受圧膜234が設置され、この受圧膜234の周囲部にはOリング部236が一体に形成されている。このOリング部236によって本体部212と結合部214との間にシールが施されている。
【0114】
結合部214側には図14及び図15に示すように、加圧側空間部として空間部238が形成されているとともに、筒状部240が形成されている。空間部238は、結合部214と受圧膜234との間及び筒状部240の内部に至る空間であり、圧力伝達媒体として液体例えば、水258で満たされる。この筒状部240には中間に段差242を設けて径大部244と径小部246とを備えている。また、この筒状部240を開閉するための栓として円柱体のプラグ248が設置されている。プラグ248は、図3の(B)に示したものと同様である。このプラグ248の直径は径小部246及び径大部244の内径より小さく設定され、プラグ248の中間部に形成された溝部250に取り付けられたOリング252の外面径が径小部246の内径より大きく設定されている。そこで、径小部246側にプラグ248がOリング252を以て嵌入されることにより、プラグ248によって筒状部240が閉止される。また、プラグ248が外れると、図16に示すように、スペース254が形成されて水258が流動する。空間部238は、加圧機構部210側の加圧ピストン256の最大突出幅より大きく設定されている。
【0115】
また、筒状部240の先端部には、その外側に加圧機構部210側との密着接合を図るため、Oリング260が取り付けられ、また、その内側にテーパ面262が形成されている。
【0116】
〔加圧機構部210の構成〕
【0117】
加圧機構部210は、図14に示すように、シリンダ部264とピストン機構部266とを備えている。シリンダ部264は、筒状部240に嵌合させて取り付けられ、ピストン機構部266の加圧ピストン256が挿入されている。シリンダ部264と筒状部240との間には、既述のOリング260が設置され、このOリング260によって封止されている。また、シリンダ部264には、Oリング268が設置されるとともに、ガイド環270、272が取り付けられ、シリンダ部264の内壁側と加圧ピストン256の外面との間の摺動性及び気密性が保持されている。
【0118】
シリンダ部264には、加圧ピストン256の外側を包囲する機構部カバー274が取り付けられ、この機構部カバー274の後部側に突出させたガイド筒276には、加圧ピストン256の軸部278が摺動可能に支持されている。加圧ピストン256の軸部278にはフランジ部280が取り付けられ、このフランジ部280が加圧ピストン256の後方移動を阻止するストッパを構成している。このフランジ部280とシリンダ部264の外壁部との間にはコイルスプリング282が設置され、このコイルスプリング282の復元力が加えられている。従って、加圧ピストン256はその復元力により、フランジ部280が機構部カバー274に当接する位置で停止状態に置かれている。加圧ピストン256を受圧膜234側に移動させるには、コイルスプリング282の復元力を超える加圧力が必要である。そこで、加圧ピストン256の軸部278の後方には、加圧ピストン256を前後動させるための力を加えるアクチュエータ284が設置されている。
【0119】
次に、このプランジャポンプ200の加圧方法について説明する。
【0120】
加圧機構部210の各部品を組み立てた後、図17の(A)に示すように、受圧膜234を本体部212と結合部214とで挟み、受圧膜234のOリング部236を以て本体部212と結合部214との間をシールする。100〔℃〕以上の蒸気滅菌(オートクレーブ)をする場合は、プラグ248にて栓をする前に圧力チャンバ部208のみ蒸気滅菌を行えばよい。
【0121】
図17の(B)に示すように、結合部214の筒状部240の空間部238に水258を満たした後、筒状部240をプラグ248で封止する。電子線滅菌又はγ線によって滅菌を行う場合にはここで圧力チャンバ部208のみ滅菌を行う。
【0122】
圧力チャンバ部208を加圧機構部210に取り付け、図14に示すように、両者を連結する。
【0123】
この状態で、図18に示すように、加圧ピストン256を受圧膜234側に移動させることにより、筒状部240の封止が解除される。加圧ピストン256に押され、径大部244側にプラグ248が移動すると、筒状部240のシールは解除され、筒状部240の空間部238内にプラグ248が移動する。このとき、筒状部240内の水258の一部が加圧ピストン256をシールしているOリング268側に達する。
【0124】
加圧ピストン256に加えられている力を解除すると、図19に示すように、コイルスプリング282の復元力がシリンダ部264とフランジ部280との間に作用し、その復元力によって加圧ピストン256はフランジ部280が機構部カバー274に衝突する位置に戻る。この状態が圧力チャンバ部208の内部圧力が最も低下し、加圧状態にあった圧力チャンバ部208の空間部216は減圧状態に移行し、逆止弁218が開状態となる。このとき、圧力チャンバ部208の空間部216内に入口部202から液体204が流入する。
【0125】
そこで、図20に示すように、加圧ピストン256を押し込むと、圧力チャンバ部208の内圧が高まり、逆止弁220が開状態となり、圧力チャンバ部208内の液体204は出口部206から流出する。このように加圧ピストン256を往復動させることにより、液体204を循環させることができる。
【0126】
加圧ピストン256とOリング268等のシール材の一部やシール材に塗布したオイルが加圧ピストン256の摺動により、水258に混ざりこんでも、受圧膜234で仕切られているので、培養液等の液体204には全く影響を及ぼさず、液体204が汚染されることはない。
【0127】
加圧ピストン256が加圧するスペースや圧力チャンバ部208は液体で満たされ、空気等の気体が含まれなければ、収縮は無視できるほど小さいので、加圧ピストン256の断面積をSp、ストロークLpとすれば、供給(循環)液量Qは、
Q=Sp×Lp ・・・(10)
と見做すことができ、動作ストロークによって供給(循環)液量が算定でき、流量センサ等が不要となる。
【0128】
なお、この実施の形態において、筒状部240の径大部244の形成に代え、図21の(A)、(B)及び(C)に示すように、一対の溝部286を形成してもよい。このような構成にすれば、プラグ248が筒状部240中でも保持され、且つ、空間内の水258は、加圧ピストン256側と連通させることができる。図21の(A)は、結合部214を示す平面図、図21の(B)は、図21の(A)のXXIB−XXIB線断面図であって、封止解除前のプラグ位置を示し、図21の(C)は、図21の(A)のXXIC−XXIC線断面図であって、封止解除後の状態を示す図である。
【0129】
なお、この実施の形態においても、圧力伝達媒体としての水258はゲル150で構成してもよい。
【0130】
〔第4の実施の形態〕
【0131】
次に、本発明の第4の実施の形態について、図22を参照して説明する。図22は、第4の実施の形態に係る加圧装置を示す図である。図22において、図1又は図14と同一部分には同一符号を付してある。
【0132】
第1の実施の形態では、加圧機構部6にシリンダ部70、連結部72及びピストン機構部74を備え、ピストン機構部74にはダイヤフラム108で封止された加圧ピストン64が用いられているが、加圧装置2に第3の実施の形態のプランジャポンプ200(図14)の加圧機構部210を用いたものである。
【0133】
斯かる構成では、プランジャポンプ200と同様にシリンダ部264が設置され、シリンダ部264と加圧ピストン256との間がOリング268を用いて封止されている。その封止構造は、第1の実施の形態の加圧装置2(図1)に比較して簡略化され、ダイヤフラム108を用いた場合に比較し、Oリング268では耐圧性が向上している。しかも、従動ピストン88が省略されており、加圧ピストン256によってプラグ56の開栓が可能になっている。その他の動作は第1の実施の形態と同一であるので、その説明を省略する。
【0134】
なお、この実施の形態においても、圧力伝達媒体としての水50はゲル150で構成してもよい。
【0135】
〔第5の実施の形態〕
【0136】
次に、本発明の第5の実施の形態について、図23ないし図27を参照して説明する。図23は、第5の実施の形態に係る培養装置を示す図、図24は、培養装置の加圧装置、プランジャポンプ及び閉止バルブを示す斜視図、図25は、培養ユニットの組立てから培養完了までの工程を示すフローチャート、図26及び図27は、培養処理を示すフローチャートである。図21及び図22において、図1及び図2又は図14と同一部分には同一符号を付してある。
【0137】
この培養装置300は、図23及び図24に示すように、加圧装置2(図1)とプランジャポンプ200(図14)を組み合わせ、加圧と送液を可能にした培養液供給・加圧装置を構成している。
【0138】
この培養装置300には、培養庫302、機構部304及び制御装置306が備えられている。培養庫302には加圧装置2の圧力チャンバ部4、プランジャポンプ200の圧力チャンバ部208、培養液タンク308、閉止バルブ310及び廃液槽312が設置され、培養液タンク308、プランジャポンプ200、加圧装置2及び閉止バルブ310がチューブ314で直列に接続され、培養液タンク308からプランジャポンプ200、加圧装置2及び閉止バルブ310に流れた培養液316が廃液槽312に流れる。
【0139】
この場合、図24に示すように、加圧装置2の圧力チャンバ部4の入側ポート22にはプランジャポンプ200の出口部206が連結され、圧力チャンバ部4の出側ポート24には閉止バルブ310の入口部318が連結される。これらは、培養ユニット部320を構成する。圧力チャンバ部4は、受圧膜34で封止されているので、加圧機構部6と分離し、空間部16の密封性が低下することはないが、加圧機構部6を培養ユニット320と一体化して移動させてもよい。
【0140】
また、この実施の形態の変形例として、閉止バルブ310を通過した培養液316を培養液タンク308に戻し、培養液316を循環する構成としてもよい。
【0141】
機構部304は、加圧装置2の加圧機構部6、圧力センサ94、そのアクチュエータ114、プランジャポンプ200の加圧機構部210、そのアクチュエータ284、閉止バルブ310の駆動部322が設置されている。
【0142】
そして、制御装置306はコンピュータで構成され、入力に応じて運転を制御する制御部324と、運転スイッチ326と、圧力の強さ、加圧周期、加圧時間、液の供給量、供給周期等の設定を入力する入力部328と、入力したものや実際の圧力値等を表示する表示装置330とを備えている。
【0143】
〔培養液供給・加圧等、運転手順〕
【0144】
図25に示すように、培養ユニット320の組立てを行う(ステップS1)。即ち、圧力チャンバ部4にプランジャポンプ200及び閉止バルブ310を連結し、培養ユニット320を組み立てる。圧力がかかる部分であるので耐圧性能の十分な材料で構成し、シールする。プランジャポンプ200にはチューブ314によって培養液タンク308を接続する。閉止バルブ310の出口側にもチューブ314を接続し、廃液槽312に排液が導かれるように設定する。接続済みの培養ユニット320は滅菌処理を行う(ステップS2)。
【0145】
培養液タンク308に培養液316を入れ(ステップS3)、圧力チャンバ部4の空間部16に被培養物20を設置する(ステップS4)。被培養物20は例えば、生体細胞又は生体組織等である。蓋部14を取り付け(ステップS5)、圧力チャンバ部4の空間部46をプラグ56で封止し、外気とを遮断する(ステップS6)。ステップS3〜ステップS6の処理は、クリーンベンチ内で行う。
【0146】
培養ユニット320を機構部304に接続し、即ち、圧力チャンバ部4を加圧機構部6に取り付け、プランジャポンプ200の圧力チャンバ部208を加圧機構部210に接続し固定するとともに、閉止バルブ310を駆動部322に接続する(ステップS7)。プラグ56の封止を解き(ステップS8)、加圧ピストン64により加減圧させるとともに、閉止バルブ310を開け、アクチュエータ284を作動させ、培養液316を圧力チャンバ部4に送り込む(ステップS9)。培養液316は、被培養物20を入れた時点で充填しておいても良い。プランジャポンプ200から閉止バルブ310まで培養液316で満たされ、空気の残留が殆ど無くなったら、閉止バルブ310を閉じる。加圧機構部6のアクチュエータ114を動作させ、設定した圧力に加圧する。周期的に圧力を加える場合には、アクチュエータ114により加圧ピストン64を往復運動させ、設定した圧力の間を設定した周期で繰り返し変化させる。また、設定周期で圧力チャンバ部4の空間部16内に培養液316を供給し、循環させ又は交換する。培養のための設定期間の加圧が終了したら(ステップS10)、培養ユニット320を機構部304から取り外す(ステップS11)。ステップS7〜ステップS11の処理は、培養装置300内で行う。
【0147】
クリーンベンチ内で圧力チャンバ部4の蓋部14を開け、被培養物20を取り出す(ステップS12)。培養状態を検査し(ステップS13)、被培養物20が移植等のための条件を充足していれば合格とし(ステップS14)、移植用の細胞・組織の場合にはは、雑菌の侵入がないように容器に収納し、又は、圧力チャンバ部4に再度戻して蓋部14を閉じ、手術室に送り、移植(ステップS15)等の処理に供される。
【0148】
次に、このような培養装置300の培養処理の加圧装置2、プランジャポンプ200及び閉止バルブ310について、図26及び図27を参照して説明する。図26及び図27において、符号A、B及びCはフローチャート間の連結部分を示している。
【0149】
この培養装置300の処理は次の通りである。図26に示すように、電源入(ステップS21)、設定表示(ステップS22)、培養ユニット320を機構部304に設置(ステップS23)、培養条件の入力(圧力パターン圧力値、圧力周期、送液量、培養時間)(ステップS24)、設定値の表示(ステップS25)、運転スイッチ326を入(ステップS26)、閉止バルブ310を開(ステップS27)、圧力チャンバ部4とプランジャポンプ200のアクチュエータ114、284が加圧方向へ動作(ステップS28)、圧力チャンバ部4とプランジャポンプ200のプラグ56、248の封止が解除(ステップS29)、アクチュエータ114、284が減圧方向へ動作(ステップS30)、アクチュエータ114、284の停止(ステップS31)、閉止バルブ310の閉(ステップS32)を経て、設定された圧力パターンが判定される(ステップS33)。継続的な加圧ではアクチュエータ114が加圧位置で停止(ステップS34)、周期的な加圧ではアクチュエータ114が往復運動(ステップS35)、断続的な加圧ではアクチュエータ114が断続的な往復(ステップS36)が実行される。
【0150】
図27に示すように、圧力値が正常か否かの判定(ステップS37)、一定時間が経過すると(ステップS38)、加圧動作の停止(ステップS39)、閉止バルブ310を開(ステップS40)、送液量に応じてアクチュエータ284が動作(ステップS41)、送液(ステップS42)、運転状態の表示(圧力値、送液量、時間経過等)(ステップS43)、圧力値、モータ等の駆動部322に対する負荷、制御装置306等の運転状態が正常か否かの判定(ステップS44)、培養運転時間が経過すると(ステップS45)、アクチュエータ114を圧力=0位置(ステップS46)、アクチュエータ284を原点位置(ステップS47)、閉止バルブ310を閉(ステップS48)、培養終了の表示(ステップS49)、電源切(ステップS50)で処理が完了する。
【0151】
ところで、ステップS37の判定において、圧力値が正常でない場合には所定回数として例えば、3回目以内か否かの判定が行われ(ステップS51)、3回目以内の場合には、アクチュエータ114による圧力補正が行われ(ステップS52)、その後、ステップS37に戻る。
【0152】
ステップS51の判定において、所定回数として例えば3回目以内でない場合には、加圧動作停止、圧力:0位置でアクチュエータ114を停止、閉止バルブ310を開(ステップS53)、警報(ステップS54)、警告音発報(ステップS55)を行う。
【0153】
また、ステップS44の判定において、異常と判定された場合には、運転停止(ステップS56)、警報(ステップS57)、警告音発報(ステップS58)を行う。
【0154】
この培養装置300及びこの培養装置300を用いた培養方法の特徴事項を列挙すれば次の通りである。
【0155】
(1) 被培養物20の汚染防止を図ることができるとともに、圧力チャンバ部4、208の昇圧が容易である。シンプルな構成で、コストの低減が図られる。空気の排除の確実性が増す。
【0156】
(2) 水50、258に代え、ゲル150を使えば、液体と同等な機能を保持しつつ、栓の役割を果たす。また、ゲルであれば、容易にシールを解除できる。
【0157】
(3) 加圧ピストン64の力を圧力として圧力チャンバ部4に伝えることができ、高圧の加圧が容易である。
【0158】
(その他の実施の形態)
【0159】
上記実施の形態では、圧力伝達媒体としての液体に水50、258又はゲル150を用いたが、油を用いてもよい。
【0160】
第5の実施の形態において、圧力伝達媒体にゲルを用いた場合には、加圧装置2又はプランジャポンプ200のプラグの封止が不要になるので、フローチャート(図25)において、プラグの封止解除(ステップS8)、フローチャート(図26)において、プラグの封止解除(ステップS29)は不要となる。
【0161】
以上説明したように、本発明の最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は明細書に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明は、液体を圧力伝達媒体に用いる加圧装置に関し、加圧側と受圧側とを分離し、受圧側の汚染を防止することができ、外部の雑菌の侵入を防ぎ、不純物の混入を防ぎつつ、単純な加圧機構で、安価な加圧培養等に適用でき、受圧側の汚染を防止した加圧装置の加圧方法、加圧装置を用いて流体を圧送させるポンプ装置、生体細胞や生体組織を培養する培養装置に関し、既述の加圧装置やポンプ装置の何れか一方又は双方を用いた培養装置を提供でき、有用である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】第1の実施の形態に係る加圧装置を示す図である。
【図2】加圧装置及びバルブを示す分解斜視図である。
【図3】圧力チャンバ部の筒状部及びプラグを示す図である。
【図4】圧力チャンバ部の筒状部及びプラグを示す図である。
【図5】圧力センサの一例を示す図である。
【図6】加圧ピストン部分を示す断面図である。
【図7】加圧ピストン側のダイヤフラムを示す図である。
【図8】圧力チャンバ部とプラグを示す図である。
【図9】シリンダ部と圧力チャンバ部との連結を示す図である。
【図10】加圧ピストンのシリンダ部への移動を示す図である。
【図11】加圧ピストンを後退させた状態を示す図である。
【図12】加圧状態を示す図である。
【図13】第2の実施の形態に係る加圧装置を示す図である。
【図14】第3の実施の形態に係るプランジャポンプを示す図である。
【図15】圧力チャンバ部を示す図である。
【図16】圧力チャンバ部を示す図である。
【図17】圧力チャンバ部の加圧側空間部及びその閉止を示す図である。
【図18】圧力チャンバ部の加圧側空間部の閉止解除を示す図である。
【図19】圧力チャンバ部の受圧側空間部の減圧状態を示す図である。
【図20】圧力チャンバ部の受圧側空間部の加圧状態を示す図である。
【図21】圧力チャンバ部の結合部側の変形例を示す図である。
【図22】第4の実施の形態に係る加圧装置を示す図である。
【図23】第5の実施の形態に係る培養装置を示す図である。
【図24】培養装置の加圧装置、プランジャポンプ及び閉止バルブを示す分解斜視図である。
【図25】培養装置の組立から培養完了までの工程を示すフローチャートである。
【図26】培養処理を示すフローチャートである。
【図27】培養処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0164】
2 加圧装置
4 圧力チャンバ部
6 加圧機構部
16 空間部(受圧側空間部)
46 空間部(加圧側空間部)
34、234 受圧膜
50、258 水
56、248 プラグ
64、256 加圧ピストン
70、264 シリンダ部
88 従動ピストン
200 プランジャポンプ
300 培養装置
18、316 培養液
320 培養ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力を圧力伝達媒体により受圧側に伝達する加圧装置であって、
前記圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、
圧力を受ける受圧側空間部と、
前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、
前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、
前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンと、
を備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達し、前記受圧側空間部側を加圧することを特徴とする加圧装置。
【請求項2】
請求項1の加圧装置において、
前記圧力伝達媒体は液体又はゲルであることを特徴とする加圧装置。
【請求項3】
請求項1の加圧装置において、
前記シリンダ部に設置され、前記加圧ピストンによって移動可能な従動ピストンを備えることを特徴とする加圧装置。
【請求項4】
請求項1の加圧装置において、
前記シリンダ部と前記加圧ピストンとの間を封止膜又は封止環により封止する構成としたことを特徴とする加圧装置。
【請求項5】
請求項1又は2の加圧装置において、
前記圧力伝達媒体に液体を用いる場合、該液体を収容した前記加圧側空間部を封止する栓を備えることを特徴とする加圧装置。
【請求項6】
圧力を圧力伝達媒体により受圧側に伝達する加圧装置の加圧方法であって、
受圧膜を備える加圧側空間部に前記圧力伝達媒体を入れる工程と、
前記圧力伝達媒体を入れた前記加圧側空間部とシリンダ部とを連結する工程と、
前記シリンダ部内に加圧ピストンを摺動させ、該加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達し、受圧側空間部を加圧可能にする工程と、
を含むことを特徴とする加圧装置の加圧方法。
【請求項7】
請求項6の加圧装置の加圧方法において、
前記圧力伝達媒体は液体又はゲルであることを特徴とする加圧装置の加圧方法。
【請求項8】
請求項6の加圧装置の加圧方法において、
前記圧力伝達媒体に液体を用いる場合、該液体を収容した前記加圧側空間部を封止する栓を備えるとともに、前記シリンダ部に前記加圧ピストンによって移動可能な従動ピストンを備え、該従動ピストンを前記栓に当てて開栓する工程を含むことを特徴とする加圧装置の加圧方法。
【請求項9】
外部圧力に応じて被移送流体を移送するポンプ装置であって、
圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、
圧力を受け、前記被移送流体を流す受圧側空間部と、
前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、
前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、
前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンと、
を備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達させて前記受圧側空間部側を減圧又は加圧状態にし、減圧時、前記受圧側空間部に前記被移送流体を流し込み、加圧時、前記受圧側空間部から前記被移送流体を流出させることを特徴とするポンプ装置。
【請求項10】
請求項9のポンプ装置において、
前記受圧側空間部には、出口部に加圧時に開くバルブ、入口部に減圧時に開くバルブを備えることを特徴とするポンプ装置。
【請求項11】
圧力を圧力伝達媒体により受圧側に伝達する加圧装置を備える培養装置であって、前記加圧装置が、
前記圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、
圧力を受ける受圧側空間部と、
前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、
前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、
前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンと、
を備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達媒体により前記受圧膜に伝達し、前記受圧側空間部側を加圧する構成であることを特徴とする培養装置。
【請求項12】
外部圧力に応じて培養液を移送するポンプ装置を備える培養装置であって、前記ポンプ装置が、
圧力伝達媒体が収容される加圧側空間部と、
圧力を受け、前記培養液を流す受圧側空間部と、
前記加圧側空間部と前記受圧側空間部との間に設置され、前記圧力伝達媒体に応じて変形可能な受圧膜と、
前記加圧側空間部に連結されるシリンダ部と、
前記シリンダ部内を摺動させる加圧ピストンと、
を備え、前記加圧ピストンの移動を前記圧力伝達流体により前記受圧膜に伝達させて前記受圧側空間部側を減圧又は加圧状態にし、減圧時、前記受圧側空間部に前記培養液を流し込み、加圧時、前記受圧側空間部から前記培養液を流出させる構成であることを特徴とする培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2008−151012(P2008−151012A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−338920(P2006−338920)
【出願日】平成18年12月15日(2006.12.15)
【出願人】(000170130)高木産業株式会社 (87)
【Fターム(参考)】