説明

加工助剤及び成形用組成物

【課題】メルトフラクチャーの発生抑制、押出圧力の低減などの成形性を向上させる効果が高い加工助剤、及び該加工助剤を含有する成形用組成物等を提供する。
【解決手段】アルカリ金属無機塩又はアルカリ土類金属無機塩、特にアルカリ金属硝酸塩を加えて熱処理した含フッ素エラストマーを加工助剤として用いる。また、該加工助剤と溶融加工性樹脂からなる加工助剤用マスターバッチを用いる。溶融加工性樹脂はポリオレフィン樹脂が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工助剤、成形用組成物、加工助剤用マスターバッチ及び成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
溶融加工可能なフルオロポリマー樹脂を安定化及び増白する方法としてアルカリ金属硝酸塩の存在下に押出する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
溶融加工性樹脂の押出成形性を改良する方法として、含フッ素エラストマーを加工助剤として溶融加工性樹脂に加える方法も知られている。含フッ素エラストマーは、メルトフラクチャーの発生抑制、押出圧力の低減等の成形性を向上させる効果があるものの、その効果を更に高めることが望まれている。
【特許文献1】特開平10−292054号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、成形性を向上させる効果が高い加工助剤及び該加工助剤を含有する成形用組成物等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、アルカリ金属無機塩又はアルカリ土類金属無機塩を加えて熱処理した含フッ素エラストマーを用いてなることを特徴とする加工助剤である。
本発明は、溶融加工性樹脂と加工助剤とからなる成形用組成物であって、上記加工助剤は、上記本発明の加工助剤からなることを特徴とする成形用組成物である。
本発明は、溶融加工性樹脂(A)と、上記本発明の加工助剤とからなることを特徴とする加工助剤用マスターバッチである。
本発明は、上記成形用組成物を成形してなることを特徴とする成形品である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0006】
本発明の加工助剤における含フッ素エラストマーは、炭素原子に結合しているフッ素原子を有し且つゴム弾性を有する非晶質の含フッ素重合体であれば、特に限定されず、公知のものであってよい。
上記含フッ素エラストマーは、一般に30〜80質量%の第1単量体の共重合単位を有するものである。
本明細書において、上記「第1単量体」とは、含フッ素エラストマーの分子構造において、全共重合単位のうち最多質量を占める共重合単位を構成することとなった単量体を意味する。
本明細書において、上記共重合単位は、含フッ素エラストマーの分子構造上の一部分であって、対応する単量体に由来する部分を意味する。例えば、ビニリデンフルオライド〔VDF〕単位は、VDF系共重合体の分子構造上の一部分であって、VDFに由来する部分であり、−(CH−CF)−で表される。上記「全共重合単位」は、含フッ素エラストマーの分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。
上記共重合単位の含有量は、F19−NMRを測定して得られる。
【0007】
本発明における含フッ素エラストマーは、上記第1単量体以外の単量体に由来する共重合単位が、上記第1単量体と共重合可能な単量体の何れか1種のみに由来するものであってもよいし、第1単量体と共重合可能な単量体の2種以上に由来するものであってもよい。
【0008】
上記第1単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、フッ素含有オレフィン、フッ素含有ビニルエーテル及び炭化水素オレフィンが挙げられる。
【0009】
上記フッ素含有オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、VDF、テトラフルオロエチレン〔TFE〕、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、1,2,3,3,3−ペンタフルオロプロペン、クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕、フッ化ビニル〔VF〕等が挙げられる。
【0010】
上記フッ素含有ビニルエーテルとしては、例えば、パーフルオロ(ビニルエーテル)が挙げられる。
上記パーフルオロ(ビニルエーテル)としては、例えば、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕等が挙げられる。
上記PAVEとしては、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕等、炭素数1〜6のパーフルオロアルキル基を有するものが好ましい。
上記含フッ素エラストマーは、PAVE単位を有する場合、PAVE単位が全共重合体単位の20〜40質量%であることが好ましい。
【0011】
上記炭化水素オレフィンとしては、特に限定されないが、例えば、エチレン、プロペン等が挙げられるが、プロペンが好ましい。
上記含フッ素エラストマーは、炭化水素オレフィン単位を有する場合、炭化水素オレフィン単位が全共重合体単位の4〜20質量%であることが好ましい。
【0012】
上記含フッ素エラストマーとしては、例えば、TFE/パーフルオロ(ビニルエーテル)系共重合体、VDF/HFP系共重合体、VDF/CTFE系共重合体、VDF/TFE共重合体、VDF/HFP/TFE系共重合体、VDF/CTFE/TFE系共重合体、TFE/プロピレン系共重合体、TFE/プロピレン/VDF系共重合体、エチレン/HFP系共重合体等の含フッ素共重合体等が挙げられ、なかでも、第1単量体がVDFであるVDF系共重合体、又は、第1単量体がTFEであるTFE系共重合体であることが好ましく、上記VDF系共重合体がより好ましい。
上記含フッ素エラストマーとしては、なかでも、VDF/HFP共重合体、VDF/TFE/HFP共重合体がより好ましく、VDF/HFP共重合体が更に好ましい。
本発明の加工助剤は、1種の含フッ素エラストマーのみからなるものであってもよいし、2種以上の含フッ素エラストマーからなるものであってもよい。
【0013】
上記含フッ素エラストマーは、数平均分子量〔Mn〕が、一般に13000〜470000である。
上記Mnの好ましい下限は、15000であり、好ましい上限が320000である。
本明細書において、数平均分子量は、後述のゲル浸透クロマトグラフィーを行い測定したものである。
【0014】
本発明の加工助剤は、アルカリ金属無機塩又はアルカリ土類金属無機塩(以下、「特定金属無機塩」ということがある。)を添加して熱処理した含フッ素エラストマーを用いてなるものである。
上記含フッ素エラストマーは、特定金属無機塩を添加して熱処理すること以外は、従来公知の方法で調製することができ、上記熱処理以外の工程としては、例えば、上述のフッ素含有モノマー及び必要に応じて添加するフッ素非含有モノマーの重合、必要に応じて行う、得られた含フッ素エラストマー水性分散液の後処理(希釈、濃縮、精製等)、該含フッ素エラストマー水性分散液又は該後処理後の分散液の凝析、該凝析により得られる含フッ素エラストマー凝析物(クラム〔crumb〕ともいうことがある。)の乾燥、該乾燥により得られる含フッ素ゴムの粉砕等が挙げられるが、各工程の条件は、使用する各材料及び所望の含フッ素エラストマーの種類、量等に応じて適宜選択することができる。
【0015】
上記特定金属無機塩を構成する金属としては、例えば、マグネシウムの他、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウム等が挙げられる。
上記特定金属無機塩としては、特に限定されないが、アルカリ金属硝酸塩又はアルカリ土類金属硝酸塩が好ましく、なかでも、アルカリ金属硝酸塩がより好ましい。
上記アルカリ金属硝酸塩としては、例えば、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム等が挙げられ、上記アルカリ土類金属硝酸塩としては、例えば、硝酸マグネシウムが挙げられる。
【0016】
上記特定金属無機塩は、熱処理時において、一般に、質量が、含フッ素エラストマーの20〜2000ppmに相当する量となるよう加えることが好ましい。
上記添加量は、好ましい下限が含フッ素エラストマーの100ppmに相当する量であり、好ましい上限が含フッ素エラストマーの1000ppmに相当する量である。
上記特定金属無機塩は、固体のまま添加してもよいが、均一分散の点で、水溶液の形態で添加することが好ましい。
【0017】
上記特定金属無機塩の添加は、本発明における熱処理を行う時点で該特定金属無機塩が含フッ素エラストマーと共存するように行えばよい。上記添加は、該特定金属無機塩が電解質である場合、上記含フッ素エラストマーを調製する工程において、上述のフッ素含有モノマー及び必要に応じて添加するフッ素非含有モノマーを重合した後が好ましいと考えられるが、(1)該重合により得られた含フッ素エラストマー水性分散液に対して行ってもよいし、(2)必要に応じ、該含フッ素エラストマー水性分散液を希釈、濃縮、精製等の後処理を行う際に行うものであってもよいし、(3)該含フッ素エラストマー水性分散液又は該後処理後の分散液を凝析する際に行うものであってもよいし、(4)該凝析後に得られる凝析物を乾燥する際に行うものであってもよいし、(5)乾燥後のゴムに練り込んで行うものであってもよいし、(6)該乾燥後のフッ素ゴムを用いて後述の加工助剤用マスターバッチを調製する際に行うものであってもよい。
本発明において特定金属無機塩の添加は、なかでも、上記(4)の乾燥時、上記(5)の練り込み、又は、上記(6)の加工助剤用マスターバッチ調製に際して行うことが好ましく、熱処理を充分に行う点で、上記(4)の乾燥時に行うことがより好ましい。
上記(4)の時点で添加する場合、特定金属無機塩を均一に分散させる点で、後述の含フッ素エラストマー凝析物を乾燥する途中に連続的に行うことが好ましい。
【0018】
本発明における熱処理は、上記特定金属無機塩の添加と同時又は該添加後であれば、上述の(1)〜(6)の何れの時点に行ってもよいが、操作上の便宜の点で、上記(4)の乾燥時又は上記(6)の加工助剤用マスターバッチ調製に際して行うことが好ましい。
上記熱処理を上記(5)の時点で行う場合、乾燥を行った後に粉砕機で粉砕を行い、無機塩を添加した後、溶融混練することが好ましい。
【0019】
上記(6)の加工助剤用マスターバッチ調製においては、フッ素ゴムの分散性向上の点で、上記乾燥後のフッ素ゴムを予め粉砕してなる粉砕物に特定金属無機塩を添加したのち、ホストポリマーである溶融加工性樹脂と溶融混練することが好ましい。
上記粉砕物としては、平均粒子径が5μm〜5mmであることが好ましい。上記平均粒子径は、より好ましい下限が200μmであり、より好ましい上限が3mmである。
本明細書において、上記平均粒子径は、JIS K 6891−1995に準拠して測定した値である。上記平均粒子径(d50)は、JIS K 6891−1995に準拠して行った粒度分布の測定結果から、ふるいの目開き(μm)と分級して得られた粒子の重量の累積百分率(%)を対数グラフにプロットし、累積百分率:50%の粒子径を読み取ったもの、あるいは、最少二乗法により直線を求め、50%の粒子径を計算したものである。
【0020】
本発明における熱処理は、一般に、加熱と混練等を行うことにより剪断力を加えるものである。
上記熱処理において剪断力を加えることにより、含フッ素エラストマー中に特定金属無機塩が充分に練り込まれ、含フッ素エラストマー中に均一に分散することとなり、溶融加工性樹脂への分散性に優れた加工助剤を得ることができ、成形性向上効果をより大きくすることができると考えられる。
上記混練による剪断力は、例えば、2軸押出機等の押出機に投入して、押出を行うことにより与えることができる。
上記熱と剪断力を加える操作は、例えば、上述の含フッ素エラストマーの凝析後における乾燥工程を押出機を用いて行う場合、該押出機内での含フッ素エラストマーの混練時に、特定金属無機塩を添加しながら行うことができるし、また、後述のマスターバッチ作製のため2軸押出機等の押出機内での含フッ素エラストマーの混練時に特定金属無機塩を一緒に混練することにより行うこともできる。
各操作の条件は熱処理対象となる分散液又は凝析物の組成、量等に応じて適宜設定することができる。
上記熱処理の温度は、一般に、含フッ素エラストマーの熱劣化を生じない温度範囲内であればよいが、好ましくは、120〜200℃である。上記温度は、より好ましい下限が140℃であり、より好ましい上限が180℃である。
上記熱処理は、一般に2〜20分間、好ましくは5〜10分間行う。
【0021】
本発明の加工助剤は、上述の熱処理を経た含フッ素エラストマーに加え、更に、固着防止剤等の添加剤を含有するものであってもよい。
上記固着防止剤としては、特に限定されず、例えば、ジオクチルフタレート、ジグレシルフタレート等の可塑剤;タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、グラファイト、シリカ等の充填剤;酸化チタン、酸化鉄、酸化モリブデン等の着色剤;酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化鉛等の受酸剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の熱安定剤;ポリエチレングリコール、ポリカプロラクトン等の界面剤;等が挙げられる。
上記固着防止剤としては、充填剤が好ましく、タルク、炭酸カルシウム等がより好ましい。
【0022】
本発明の加工助剤において、上記固着防止剤の量は、使用する含フッ素エラストマーの種類、量等に応じて適宜設定することができるが、一般に、含フッ素エラストマー100質量部に対し1〜15質量部であり、より少ない量であることが好ましい。
上記固着防止剤としての最低限必要な効果を得るための量は、含フッ素エラストマー100質量部に対し2質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることが更に好ましく、10質量部以下であることがより好ましい。
【0023】
本発明の加工助剤は、溶融加工性樹脂への分散性に優れており、例えば溶融加工性樹脂の成形時において、該加工助剤を1mm〜5mmの粗粉砕物とした場合であっても、溶融加工性樹脂中に平均粒子径2μm程度の含フッ素エラストマー粒子として分散することができるが、10μm以上、1000μm未満の微粉砕物とした場合、溶融加工性樹脂中に平均粒子径1μm程度の加工助剤粒子として分散することができるので、後者の微粉砕物とすることが好ましい。
一方、上述の熱処理を経ていない含フッ素エラストマーは、微粉砕物であっても、押出機の能力によっては平均粒子径3〜10μm程度の含フッ素エラストマー粒子が溶融加工性樹脂中に分散することがある。
このため、本発明の加工助剤は、従来の加工助剤と比べ、含フッ素エラストマーが本来有する成形性向上効果を充分に発揮し易いと考えられる。
本発明の加工助剤は、上述の熱処理を経た含フッ素エラストマーを用いてなるものであるので、従来の加工助剤より溶融加工性樹脂の成形性を向上させる効果に優れており、例えば、押出加工する場合、共重合組成が同じ含フッ素エラストマーからなるものであって上記無機塩を加えないものと比べて、押出圧力を低下させ、メルトフラクチャーを短時間で無くすことができる。
このため、本発明の加工助剤は、成形用組成物や加工助剤用マスターバッチの材料として非常に有用である。
【0024】
本発明の成形用組成物は、溶融加工性樹脂と、上述の本発明の加工助剤とからなるものである。
本明細書において、溶融加工性樹脂とは、ASTM D−1238及びD−2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローを測定できるポリマーを意味する。
上記溶融加工性樹脂としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロンMXD6等のポリアミド〔PA〕樹脂;ポリエチレンテレフタレート〔PET〕、ポリブチレンテレフタレート〔PBT〕、ポリアリレート、芳香族系ポリエステル(液晶ポリエステルを含む)、ポリカーボネート〔PC〕等のポリエステル;ポリアセタール〔POM〕樹脂;ポリフェニレンオキシド〔PPO〕、変性ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン〔PEEK〕等のポリエーテル樹脂;ポリアミノビスマレイミド等のポリアミドイミド〔PAI〕樹脂;ポリスルホン〔PSF〕、ポリエーテルスルホン〔PES〕等のポリスルホン系樹脂;ABS樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1(TPX樹脂)等のビニル重合体のほか、ポリフェニレンスルフィド〔PPS〕、ポリケトンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリイミド〔PI〕等が挙げられる。上記ナイロンMXD6は、メタキシレンジアミン〔MXD〕とアジピン酸とから得られる結晶性重縮合体である。
上記溶融加工性樹脂としては、なかでも、ポリオレフィン樹脂、PA樹脂が好ましく、ポリオレフィン樹脂がより好ましい。
上記成形用組成物における溶融加工性樹脂は、溶融成形し易い点で、熱可塑性樹脂であることが好ましい。
本発明の成形用組成物において、上記溶融加工性樹脂は、1種又は2種以上を用いることができる。
上記溶融加工性樹脂は、溶融加工温度が100〜350℃であるものが好ましい。また、上記溶融加工性樹脂は、結晶性を有するものであってもよいし、結晶性を有しないものであってもよい。
上記溶融加工性樹脂は、結晶性を有するものである場合、融点が80〜300℃であるものが好ましく、融点が100〜200℃であるものがより好ましい。
結晶性を有しない溶融加工性樹脂は、結晶性で融点範囲が示されている溶融加工性樹脂とほぼ同等の加工温度を有するものが好ましい。
上記溶融加工性樹脂は、各種類に応じ、従来公知の方法等により合成することができる。
上記溶融加工性樹脂は、粉末、顆粒、ペレット等であってよいが、得られる成形用組成物において、上記溶融加工性樹脂を効率的に溶融させ、加工助剤を分散させることができる点で、ペレットであることが好ましい。
【0025】
本発明の成形用組成物において、上述の本発明における含フッ素エラストマーを熱処理したフッ素ゴムは、溶融加工性樹脂の総質量及び上記含フッ素エラストマーの質量の合計の0.001〜5質量%であることが好ましい。
上記フッ素ゴムは、上記溶融加工性樹脂の総質量及び上記フッ素ゴムの質量の合計の0.01質量%以上であることがより好ましく、また、0.5質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
上記成形用組成物は、本発明の加工助剤そのものを上記溶融加工性樹脂に加えて調製したものであってもよいし、後述の加工助剤用マスターバッチとして上記溶融加工性樹脂に加えて調製したものであってもよい。
本発明の成形用組成物は、上記加工助剤及び上記溶融加工性樹脂とともに、必要に応じて、その他の成分を配合したものであってもよい。
上記その他の成分としては特に限定されず、例えば、ガラス繊維、ガラス粉末等の補強材;ミネラル、フレーク等の安定剤;シリコーンオイル、二硫化モリブデン等の潤滑剤;顔料;カーボンブラック等の導電剤;ゴム等の耐衝撃性向上剤;その他のポリオレフィン等衛生協議会で自主基準として制定されているポジティブリストに記載の添加剤等を用いることができる。
【0027】
本発明の加工助剤用マスターバッチは、溶融加工性樹脂(A)と、上述の本発明の加工助剤とからなるものである。
上記溶融加工性樹脂(A)としては、先述の溶融加工性樹脂と同様のものを挙げることができ、なかでも、ポリオレフィン樹脂であることが好ましく、ポリエチレンであることがより好ましい。
上記加工助剤用マスターバッチにおける加工助剤粒子は、平均粒子径が一般に0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることがより好ましい。
【0028】
本発明の加工助剤用マスターバッチは、粉末、顆粒、ペレット等の形態の別を問わないものであるが、含フッ素エラストマーを熱処理したフッ素ゴムが溶融加工性樹脂(A)中で微分散された状態で保持される点で、溶融混練によるペレットであることが好ましい。
本発明の加工助剤用マスターバッチにおいて、上記含フッ素エラストマーは、後述の溶融成形が容易となる点で、上記溶融加工性樹脂(A)の質量及び上記含フッ素エラストマーの質量の合計の0.5質量%を超え、且つ、20質量%以下であることが好ましい。
上記含フッ素エラストマーは、上記質量の合計の1質量%がより好ましい下限であり、2質量%が更に好ましい下限であり、10質量%がより好ましい上限である。
【0029】
本発明の加工助剤用マスターバッチは、上記加工助剤及び上記溶融加工性樹脂(A)とともに、必要に応じて、その他の成分を配合してなるものであってもよい。
上記その他の成分としては特に限定されず、例えば、本発明の成形用組成物において説明したものが挙げられる。
【0030】
本発明の加工助剤用マスターバッチは、該加工助剤を構成するフッ素ゴム、上述の無機塩及び所望により固着防止剤等を溶融加工性樹脂(A)に添加したものを、100〜350℃の温度下に混練することにより得ることもできるが、フッ素ゴムの分散性の点で、予め作製した上述の加工助剤を溶融加工性樹脂(A)に添加したものを該温度下に混練することにより得られるものが好ましい。
上記加工助剤用マスターバッチは、溶融加工性樹脂中に分散しやすいので、得られる成形加工品が均質であり、例えば、フラットフィルムやインフレーションフィルム中にゲル状の塊等の外観不良を生じにくい。
【0031】
本発明の成形品は、上述の本発明の成形用組成物を成形してなるものである。
上記成形は、本発明の成形用組成物を予め調製して成形機に投入し、溶融、押出等を行うものであってもよいし、上述の加工助剤と溶融加工性樹脂とを成形機に同時に投入し、溶融、押出等を行うものであってもよいし、上述の加工助剤用マスターバッチと溶融加工性樹脂とを成形機に同時に投入し、溶融、押出等を行うものであってもよい。
【0032】
上記成形用組成物の成形としては、特に限定されず、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形等が挙げられるが、なかでも、上記成形加工性を効果的に発揮させるためには、押出成形が好ましい。
上記成形に関する各種条件としては特に限定されず、使用する成形用組成物の組成や量、所望の成形品の形状、サイズ等に応じて適宜設定することができる。
上記成形温度は、一般に、成形用組成物における溶融加工性樹脂の融点以上、且つ、上記加工助剤及び上記溶融加工性樹脂の各分解温度のうち低い方の温度未満の温度で行い、100〜350℃の範囲である。
上記成形温度は、押出成形の場合、押出温度ということがある。
【0033】
本発明の成形体は、例えば、シート状;フィルム状;ロッド状;パイプ状;繊維状等の種々の形状にすることができる。
上記成形体の用途としては特に限定されず、用いる溶融加工性樹脂の種類によるが、例えば、機械的性質をはじめとする力学的性質や表面性を主として強く要求されるもの等に好適に用いられる。
上記成形体の用途としては、例えば、各種フィルム、袋、被覆材、飲料用容器等の食器類、ケーブル、パイプ、繊維、ボトル、ガソリンタンク、その他の各種産業用成形品等が挙げられる。
【発明の効果】
【0034】
本発明の加工助剤及び加工助剤用マスターバッチは、上述の構成よりなるので、押出圧力の低減、メルトフラクチャーの抑制等、成形加工性を向上させる効果が従来のものより高い。本発明の成形用組成物は、上記加工助剤からなるものなので、成形加工性に優れており、本発明の成形品は、上記成形用組成物を成形してなるものであるので、機械的性質等の力学的性質に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に実施例及び比較例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例及び比較例にのみに限定されるものではない。
各実施例及び各比較例における組成物の量は、特に断りがない場合は、質量基準である。
【0036】
各実施例及び各比較例に記載の各測定値は、以下の方法により求めた値である。
1.共重合組成
19F−NMR(Bruker社製AC300P型)を用いて測定した。
2.数平均分子量
下記条件にてゲル浸透クロマトグラフィーを行い測定した。
測定装置:LS−8000(東ソー社製)
カラム:TSK guard column HXL−H(TSK gel G4000HXL、TSK gel G3000HXL、TSK gel GMHXL−H)
・検出器:示差屈折率計
・展開溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:35℃
・試料濃度:5g/L
・標準試料:単分散ポリスチレン各種=1.14(Max)、TSK standard POLYSTYRENE、東ソー社製
3.押出圧力
後述の押出条件において圧力測定機(日本ダイニスコ社製)を用いて測定した。
4.メルトフラクチャー
メルトフラクチャーは下記手順により、発生率を求めた。
・各観測時間のインフレーションしたフィルムをサンプリングし、1ヶ所を切り開いてフラットのフィルムとする。
・インフレーションの径方向に全面にメルトフラクチャーが発生している状態を100%の幅として、各時間のメルトフラクチャーが発生している幅をメジャーを用いて計測し、100%の幅との比率から発生率を求める。
メルトフラクチャーの発生率が0%にはじめてなった時間を完全に消えた時間とした。
【0037】
実施例1
フッ素ゴム〔FKM〕(ビニリデンフルオライド〔VDF〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体、共重合組成(モル比);VDF/HFP=79/21、数平均分子量83000)を重合し、凝析して得られたクラムを2軸押出機(TEM75;東芝機械社製)に移送して、下記条件にて押出することにより乾燥を行った。
(押出条件)
(1)温度:シリンダ温度150〜180℃、ダイ温度150℃
(2)スクリュ回転数:100rpm
この乾燥途中にKNOの20%水溶液を押出機に供給し、FKM/KNO複合物を得た。KNO処理濃度は、乾燥後FKMの質量の400ppmに相当する量であった。
【0038】
得られたFKM/KNO複合物をカッター式粗粉砕機(Rapid R1528、カワタ社製)にて粉砕して、平均粒径1〜3mmのFKM粗粉砕物を得た。
上記FKM粗粉砕物40gにタルク4gをまぶし、FKM量が樹脂の2質量%の量となるように低密度ポリエチレン〔LDPE〕(LDPEスミカセンG201 MFR=2 住友ポリエチレン製)1956gとタンブリングして混合し、2軸押出機(KZW15TW−60MG テクノベル社製)に投入して、加工助剤用マスターバッチを作製した。
(押出条件)
(1)温度:シリンダ温度180〜210℃、ダイ温度210℃
(2)スクリュ回転数:600rpm
(3)L/D: 60
【0039】
加工助剤用マスターバッチ中の含フッ素エラストマーは、平均粒径1〜2μmの粒子として分散していた(図1参照)。
更に、上記加工助剤用マスターバッチについて、インフレーションフィルム押出評価を以下の手順で行った。
1.短軸押出機(田辺プラスチックス社製 VS30−26型押出機、L/D:26、スクリュ径:30mm)にインフレーションダイ(田辺プラスチックス社製 ダイ径60mm、ダイギャップ0.5mm)を組付け、メタロセン触媒による直鎖状低密度ポリエチレン〔メタロセンLLDPE〕(製品名:Evolue SP2520、プライムポリマー社製)を投入して、下記押出条件にて約1時間連続で押出を行い、押出圧力が38MPa前後で安定し、変化がなく、押出されたフィルム表面の全体にメルトフラクチャーが発生していることを確認した。
(押出条件)
(1)温度:シリンダ温度C1(120℃)、C2(130℃)、C3(130℃)、C4(140℃)、ダイ温度(150℃)
(2)スクリュ回転数:50rpm
(3)引取速度:5m/分
2.続いて、上記メタロセンLLDPEと上記加工助剤用マスターバッチとを、混合後のFKM量が500ppmとなるよう計量し配合して、ポリエチレン製の袋に入れタンブリングして混合して、得られた成形用組成物を上記押出機のホッパーに投入した。押出圧力の変化の観察は、上記成形用組成物の投入直後から開始した。
押出機内に滞留するメタロセンLLDPEが排出される時間は上記投入開始後約5分であり、上記投入開始より約5分後から、押出圧力が低下し始め、メルトフラクチャーが減少し始めた。投入開始から20分後にはメルトフラクチャーは完全に消え、押出圧力は38.0MPaから36.0MPaにまで低下した。
押出圧力の観察は、連続で40分間行った。
図2にメルトフラクチャーの測定結果を示す。
・なお、上記押出機は、上記押出評価後、上記メタロセンLLDPEとタルク1質量%の混合物でパージし、次いで上記メタロセンLLDPEを単独で投入してパージを行った。各パージは上記押出評価と同条件にて、約4時間連続で押出し、押出圧力が元の状態に戻ったことを確認して終了した。
【0040】
実施例2
フッ素ゴム〔FKM〕(ビニリデンフルオライド〔VDF〕/ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕共重合体、共重合組成(モル比);VDF/HFP=78/22、数平均分子量64000)に、処理濃度がFKMの250ppmに相当する量となるようKNOを添加し、実施例1と同様の条件で押出乾燥を行うことにより熱処理を加え、FKM/KNO複合物を得た。得られたFKM/KNO複合物をカッター式粗粉砕機(Rapid R1528、カワタ社製)にて粉砕して、平均粒子径1〜3mmのFKM粗粉砕物を得た。該FKM粗粉砕物をディスク式微粉砕機で更に粉砕し、平均粒子径500μmのFKM粉体物とし、該FKM粉体物100部に対し10部の割合でタルクをまぶした。
上記以外は実施例1と同様にして加工助剤用マスターバッチを作製し、押出評価を行った。成形用組成物の投入開始より約6分後から、押出圧力が低下し始め、メルトフラクチャーが減少し始めた。上記投入開始より15分後にはメルトフラクチャーは完全に消え、押出圧力は38.2MPaから35.6MPaにまで低下した。
表1に押出圧力とメルトフラクチャーの測定結果を示す。
加工助剤用マスターバッチ中の含フッ素エラストマーは、平均粒径約1μmの粒子として分散していた(図3参照)。
【0041】
実施例3
実施例1で用いたFKMのクラムを、KNOを加えずに押出機に移送し、乾燥させた。このFKMをカッター式粗粉砕機(Rapid R1528、カワタ社製)にて粉砕して、平均粒子径1〜3mmのFKM粗粉砕物を得た。このFKM粗粉砕物50gと、KNO0.025gを純水2mlに溶かした溶液とをガラス容器(混合機の付属容器)に入れた。混合機(ミルサーIFN−300DG;IWATANI社製)を組付け、該ガラス容器内で常温(23℃)下で1分間混合し、KNOをFKMの表面にコーティングした。
得られたKNO処理FKM40gにタルク4gをまぶし、FKM量が2質量%なるようにLDPE(LDPEスミカセンG201 MFR=2、住友ポリエチレン製)1956gとタンブリングして混合し、高せん断スクリュを組み込んだ2軸押出機(2D−25S、東洋精機社製)に投入して、加工助剤用マスターバッチを作製した。
(押出条件)
(1)温度:シリンダ温度170〜200℃、ダイ温度200℃
(2)スクリュ回転数:100rpm
(3)L/D: 25
【0042】
得られた加工助剤用マスターバッチを、FKM量が500ppmとなるよう計量して、メタロセンLLDPE(製品名:Evolue SP2520、プライムポリマー社製)に配合して成形用組成物を調製し、該成形用組成物を上記押出機のホッパーに投入し、実施例1と同様にして押出評価を行った。
押出圧力の変化の観察は、上記成形用組成物の投入直後から開始した。投入直後の押出圧力は38.4MPaであり、投入開始後約10分で、押出圧力が低下し始め、投入開始時より16分後には37.3MPaまで低下したが、この時点から投入開始30分後まで、押出圧力の変化は殆ど生じなかった。また、メルトフラクチャーも減少するが、完全には消えない状態だったので、投入開始30分後に、混合後のFKM量が750ppmとなるよう計量して、加工助剤用マスターバッチを投入した。追加投入後21分(最初の投入時から51分)後にはメルトフラクチャーは完全に消え、押出圧力は36.5MPaにまで低下した。
【0043】
実施例4
実施例2で用いたフッ素ゴムをカッター式粗粉砕機(Rapid R1528、カワタ社製)にて粉砕して、平均粒子径1〜3mmのFKM粗粉砕物を得た。このFKM粗粉砕物50gと、KNO0.025gを純水2mlに溶かした溶液とをガラス容器(混合機の付属容器)に入れた。混合機(ミルサーIFN−300DG;IWATANI社製)を組付け、該ガラス容器内で1分間混合し、KNOをFKMの表面にコーティングした。
得られたKNO処理FKMをミキサー(R−60;東洋精機社製)に入れ、170℃で10分間混練した。得られたFKM/KNO(KNO添加濃度:500ppm)混練物を再度カッター式粉砕機で粉砕して、FKM微粉砕物を得た。
得られたFKM微粉砕物を、実施例3のKNO処理FKMと同様にして加工助剤用マスターバッチを作製した。
得られた加工助剤用マスターバッチを用いて、インフレーションフィルム押出評価を実施例1と同様に行った。
投入直後の押出圧力は38.0MPaであり、投入後15分にはメルトフラクチャーは完全に消え、押出圧力は35.2MPaまで低下した。
【0044】
実施例5
KNOの添加量をFKMの100ppmに相当する量とした以外は、実施例4と同様にして、押出評価を行った。メルトフラクチャーは投入後15分に消失したが、投入後20分で再度発生し、投入後30分で完全に消えた。押出圧力は、38.0MPaから35.6MPaまで低下した。
【0045】
実施例6
KNOの添加量をFKMの1000ppmに相当する量とした以外は、実施例4と同様にして、押出評価を開始した。成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、メルトフラクチャーは30分後たっても完全には消えず、FKM量を750ppmに増やし、さらに評価を継続したところ28分(トータルの押出時間は58分)で完全に消えた。押出圧力は、成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、37.9MPaから36.4MPaまで低下し、同FKM量を750ppmに増やすことで36.0MPaまで低下した。
【0046】
実施例7
KNOに変えNaNOを用いた以外は、実施例4と同様にして加工助剤用マスターバッチを作製し、押出評価を行った。
成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、メルトフラクチャーは30分後たっても完全には消えず、同FKM量を750ppmに増やし、さらに評価を継続したところ19分(トータルの押出時間は49分)で完全に消えた。押出圧力は、成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、37.4MPaから36.3MPaまで低下し、同FKM量を750ppmに増やすことで35.5MPaまで低下した。
【0047】
実施例8
KNOに変えKCOを用いた以外は、実施例4と同様にして加工助剤用マスターバッチを作製し、押出評価を行った。
成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、メルトフラクチャーは30分後たっても完全には消えず、同FKM量を750ppmに増やし、さらに評価を継続したところ30分(トータルの押出時間は60分)で完全に消えた。押出圧力は、成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、36.9MPaから36.0MPaまで低下し、同FKM量を750ppmに増やすことで35.9MPaまで低下した。
【0048】
実施例9
KNOに変えMg(NOを用いた以外は、実施例4と同様にして加工助剤用マスターバッチを作製し、押出評価を行った。
成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、メルトフラクチャーは30分後たっても完全には消えず、同FKM量を750ppmに増やし、さらに評価を継続したところ24分(トータルの押出時間は54分)で完全に消えた。押出圧力は、成形用組成物におけるFKM量を500ppmとしたとき、37.1MPaから36.0MPaまで低下し、同FKM量を750ppmに増やすことで35.4MPaまで低下した。
【0049】
比較例1
KNOを加えず押出し、乾燥する以外は実施例1と同様にして、加工助剤用マスターバッチを作製した。
得られた加工助剤用マスターバッチ中の含フッ素エラストマーは、平均粒径約1〜7μmの粒子として分散していた(図4参照)。
上記加工助剤用マスターバッチを用いて実施例1と同様に押出を行った。
成形用組成物の投入開始後約10分経過した時から、押出圧力が低下し始め、メルトフラクチャーが減少し始めた。投入開始後30分経過しても、メルトフラクチャーは消えず、押出圧力は38.3MPaから37.0MPaにまでしか低下しなかった。
また、メルトフラクチャーも減少はしたが完全には消えない状態であるので、成形用組成物の投入開始後35分経過した時に、混合後のFKM量が成形用組成物の1000ppmに相当する量となるよう計量して、上記加工助剤用マスターバッチを追加投入した。追加投入後10分(最初の投入開始後45分)の時点でメルトフラクチャーは完全に消え、押出圧力は36.3MPaにまで低下した。図2にメルトフラクチャーの測定結果を示す。
また、KNOを加えて熱処理を行った加工助剤を含有する実施例1の成形用組成物は、該熱処理せずに得られた加工助剤を含有する比較例1の成形用組成物に比べ、約半分の添加量で押出圧力を約36MPaに低減できることが分かった。
【0050】
比較例2
KNOを加えず、乾燥及び粉砕を行った以外は実施例2と同様にして、加工助剤用マスターバッチを作製した。
得られた加工助剤用マスターバッチ中の含フッ素エラストマーは、平均粒径約1〜4μmの粒子として分散していた(図5)。
上記加工助剤用マスターバッチを用いて実施例1と同様に押出を行った。
成形用組成物の投入開始後約10分から、押出圧力が低下し始め、メルトフラクチャーが減少し始めた。上記投入開始後30分経過してもメルトフラクチャーは消えず、押出圧力も38.3MPaから37.3MPaにまでしか低下しなかった。
更に、KNOを加えて熱処理を行った加工助剤を含有する実施例2の成形用組成物は投入開始後約15〜20分で完全にメルトフラクチャーを消すことができるが、該熱処理せずに得られた加工助剤を含有する比較例2の成形用組成物は、1時間経過してもメルトフラクチャーが約37%残存したことが分かった。
【0051】
比較例3
KNO処理を行わない以外は実施例3と同様にして加工助剤用マスターバッチを作製した。
得られた加工助剤用マスターバッチを用いて実施例1と同様に押出を行った。
成形用組成物の投入開始から約10分後、押出圧力が低下し始め、メルトフラクチャーが減少し始めた。上記投入開始後30分経過してもメルトフラクチャーは消えず、押出圧力も38.2MPaから37.4MPaにまでしか低下しなかった。このため、実施例3と同様に、投入開始後30分経過した時点で、混合後のFKM量が成形用組成物の750ppmに相当する量となるよう計量して加工助剤用マスターバッチを追加投入した。追加投入後30分(投入開始後60分)になっても、メルトフラクチャーは完全には消えず、押出圧力は37.2MPaにまでしか低下しなかった。
【0052】
比較例4 (G701BPマスターバッチへのKNO塗布品)
比較例1で作製した加工助剤用マスターバッチに、KNOのコーティング量がFKM量の500ppmに相当する量となるように20%KNO水溶液を噴霧し、タンブリング後、100℃×1時間で乾燥させた。得られたKNO塗布G701BP加工助剤用マスターバッチを実施例1と同様にインフレーション成形を行った。
成形用組成物の投入開始約10分後から、押出圧力が低下し始め、メルトフラクチャーが減少し始めたが、該投入開始後60分経過してもメルトフラクチャーは消えず、押出圧力も38.3から37.3MPaにまでしか低下しなかった。
各実施例及び各比較例における測定結果を、それぞれ表1及び表2に示す。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の加工助剤及び加工助剤用マスターバッチは、上述の構成よりなるので、押出圧力の低減、メルトフラクチャーの抑制等、成形加工性を向上させる効果が従来のものより高い。本発明の成形用組成物は、上記加工助剤からなるものなので、成形加工性に優れており、本発明の成形品は、上記成形用組成物を成形してなるものであるので、機械的性質等の力学的性質に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】実施例1における加工助剤用マスターバッチ中の加工助剤の分散状態を表す。
【図2】実施例1及び比較例1におけるメルトフラクチャーの測定結果を表す。
【図3】実施例2における加工助剤用マスターバッチ中の加工助剤の分散状態を表す。
【図4】比較例1における加工助剤用マスターバッチ中の加工助剤の分散状態を表す。
【図5】比較例2における加工助剤用マスターバッチ中の加工助剤の分散状態を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属無機塩又はアルカリ土類金属無機塩を添加して熱処理した含フッ素エラストマーを用いてなる
ことを特徴とする加工助剤。
【請求項2】
アルカリ金属無機塩又はアルカリ土類金属無機塩は、アルカリ金属硝酸塩である請求項1記載の加工助剤。
【請求項3】
熱処理は、加熱と混練とを行うものである請求項1又は2記載の加工助剤。
【請求項4】
含フッ素エラストマーは、ビニリデンフルオライド/ヘキサフルオロプロピレン共重合体である請求項1、2又は3記載の加工助剤。
【請求項5】
溶融加工性樹脂と加工助剤とからなる成形用組成物であって、
前記加工助剤は、請求項1、2、3又は4記載の加工助剤からなる
ことを特徴とする成形用組成物。
【請求項6】
加工助剤に含まれる含フッ素エラストマーは、溶融加工性樹脂の総質量及び前記含フッ素エラストマーの質量の合計の0.001〜5質量%である請求項5記載の成形用組成物。
【請求項7】
溶融加工性樹脂は、ポリオレフィン樹脂である請求項5又は6記載の成形用組成物。
【請求項8】
溶融加工性樹脂(A)と、請求項1、2、3又は4記載の加工助剤とからなる
ことを特徴とする加工助剤用マスターバッチ。
【請求項9】
加工助剤に含まれる含フッ素エラストマーは、溶融加工性樹脂(A)の質量及び前記含フッ素エラストマーの質量の合計の0.5質量%を超え、且つ、20質量%以下である請求項8記載の加工助剤用マスターバッチ。
【請求項10】
溶融加工性樹脂(A)は、ポリオレフィン樹脂である請求項8又は9記載の加工助剤用マスターバッチ。
【請求項11】
請求項5、6又は7記載の成形用組成物を成形してなる
ことを特徴とする成形品。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−155357(P2009−155357A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−114921(P2006−114921)
【出願日】平成18年4月18日(2006.4.18)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】