説明

加工状態に基づき加工液量を調節するワイヤ放電加工機

【課題】ワイヤ電極と被加工物の極間の加工屑の偏在を解消することで高精度加工を実現するワイヤ放電加工機を提供する。
【解決手段】ワイヤ電極1と被加工物2との極間に電圧を印加して放電を起こし、極間電圧検出装置9は極間の極間電圧を検出し、放電パルス電流判別装置10は有効放電パルスと無効放電パルスを判別し、放電パルス数計数装置11は所定時間毎に前記判別した無効放電パルス数を計数し、放電位置検出装置12は電流センサを用いて上,下給電線6a,6bに流れる各々の電流値を所定時間毎に測定し、この電流値の差異から放電位置を検出し、加工屑偏在状態判別装置13は、放電パルス数計数装置11からの出力と放電位置検出装置12によって得られた放電位置から加工屑20の偏在状態を判別し、加工液量調節装置14は、上,下加工液供給装置40a,40bから供給する加工液の加工液量のバランスを調整し加工屑20の偏在状態を解消する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工状態に基づき加工液量を調節するワイヤ放電加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤ放電加工機は、ワイヤ電極と被加工物との極間に電圧を印加して放電を起こすと同時に、サーボモータでワイヤ電極と被加工物の相対位置を変化させ、極間に加工液を供給しつつ、被加工物を所望の形状に加工する。
ワイヤ電極と被加工物の極間電圧とワイヤ電極と被加工物のギャップ(間隙の距離)に相関関係があることは周知である。したがって、極間電圧が一定となるように制御を行うことで高精度加工が可能となり、被加工物に均一な加工面が得られる。
【0003】
しかし、ワイヤ電極と被加工物の極間が不安定な加工状態の時、極間電圧はワイヤ電極と被加工物の正確なギャップを示さない場合がある。
図1は、ワイヤ電極と被加工物の極間の加工状態モデルである。ワイヤ電極1と被加工物2との極間電圧Vavgは、ワイヤ電極1と被加工物2のギャップ(間隙の距離)Tdに(数1)に示されるように相関関係がある。
【0004】
(極間電圧:Vavg)∝(ギャップ:Td) (数1)
しかし、ワイヤ電極1と被加工物2の極間が不安定な加工状態の時、つまり加工屑20が偏在している状態では、極間電圧Vavgはワイヤ電極1と被加工物2の正確なギャップを示さない。例えば、被加工物2の板厚が大きい場合、被加工物2への加工液供給状況が悪く、さらにワイヤ電極1の振動・撓みの影響が大きくなることで、局所的に放電が起こり、図1に図示されるように加工屑20が偏在することが考えられる。この場合、加工屑20が少ない場合の極間電圧Va、加工屑がない場合の極間電圧Vb、加工屑20が多い場合の極間電圧Vcの値は異なり、この状態での極間電圧Vavg(平均値)からワイヤ電極1と被加工物2の正確なギャップTdを把握するのは困難である。なお、極間電圧Vavgはワイヤ電極1と被加工物2の間の電圧を測定することによって得られる。極間電圧Vavgを測定する手段は公知のワイヤ放電加工機に備わっている。
【0005】
加工状態が不安定になる要素として、加工屑20の排出状況が悪い、加工液の供給状態が悪い、などが考えられる。一般に、加工液は上,下加工液供給装置40a,40bから被加工物2の上下に供給されるため、特に被加工物2の板厚が大きい場合に、加工状態が不安定になる傾向が顕著である。被加工物2の板厚が大きい場合、被加工物中央部への加工液供給状況が悪くなるのは明白であり、さらにワイヤ電極1の振動・撓みの影響が大きくなるので、局所的に放電が起こり、加工屑20がワイヤ電極1と被加工物2との間のワイヤ電極1の走行方向に偏在することが考えられる。なお、被加工物2を加工中、ワイヤ電極1は上ワイヤガイド4a側から下ワイヤガイド4b側に向かって走行する。
【0006】
従来技術として、特許文献1、特許文献2には、通電経路の電流値または電圧値から放電位置を求め、放電位置の分布から加工領域を認識し、加工条件を変更制御する方法が開示されている。特許文献3には、加工状態を、「開放」、「リーク」、「放電」、「即放電」、「短絡」の状態に分類し、状態判定データと予め設定した基準値を比較し、ワイヤ電極送り、休止時間、加工液流量、印加電圧を変更することが開示されている。また、特許文献4には、加工液の圧力値があらかじめ指令した圧力値に追従するように、上下ノズルに加工液を供給するポンプを独立して制御する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平3−111121号公報
【特許文献2】特開平7−60548号公報
【特許文献3】特開2010−280046号公報
【特許文献4】特開平4−261713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1,2に開示された方法は放電点の偏在を加工屑の偏在と認識し、加工屑の偏在による集中放電を回避しようとするものであるので、加工状態が変化している場面で加工条件調整を行った場合、調整過多が生じてしまう可能性がある。例えば、被加工物の未加工部が偏在する場面で、放電点は偏在することになるが、放電が被加工物の加工に寄与しているものか否かを判断する術がなく、また正常な放電が行えているときに不要な加工条件調節を行うと、正常な放電加工の阻害にもなりかねない。
【0009】
特許文献3には、「リーク状態」が増加すれば、加工屑が滞留している可能性が高いので、加工液の供給を増加して加工屑の排出を促進することが開示されている。加工状態を判別することによって加工屑の滞留を判別し、滞留した加工屑の排出を促進することができるが、ここで、さらに、ワイヤ電極と被加工物の極間のどの位置で上記加工状態になっているか、またどの位置に加工屑が存在しているかを判別することで、加工条件を適切に調節することができるため、改善の余地がある。また、特許文献4に開示される方法において、加工屑を適切に排出できるようにするためには、加工屑の偏在を認識して、加工液量または加工液圧を調節する必要がある。
【0010】
そこで本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、ワイヤ電極と被加工物の極間の加工屑の偏在状態を解消することで高精度加工を実現するワイヤ放電加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の請求項1に係る発明は、上,下ワイヤガイドにワイヤ電極を張架し、該ワイヤ電極と被加工物との極間に電圧を印加して放電を発生させ、該ワイヤ電極と該被加工物の相対位置を変化させ、前記上,下ワイヤガイドに設けた上,下加工液供給装置から該極間に加工液を供給しつつ、該被加工物の加工を行うワイヤ放電加工機において、前記被加工物の加工に寄与する有効放電パルスと寄与しない無効放電パルスに判別する放電パルス電流判別部と、前記判別した無効放電パルス数を所定時間毎に計数する放電パルス数計数部と、前記ワイヤ電極と前記被加工物との極間に設けられた複数の通電経路から所定時間毎に電流値を測定し、該測定された各々の電流値を比較し、放電位置を検出する放電位置検出部と、前記計数した無効放電パルス数と前記検出した放電位置に基づいて加工屑偏在状態を判別する加工屑偏在状態判別部と、前記判別した加工屑偏在状態に基づき加工屑の偏在状態を解消するように前記上,下加工液供給装置から供給される加工液量または加工液圧のバランスを調整する加工液量調節部と、を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工機である。
請求項2に係る発明は、前記放電パルス電流判別部は、極間電圧または極間電圧の印加時間に閾値を設けて前記有効放電パルスと前記無効放電パルスに判別することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機である。
請求項3に係る発明は、前記加工屑偏在状態判別部は、前記無効放電パルス数が所定基準値より多くなったときに加工状態が悪いと判別し、かつ前記放電位置検出部から入力される前記放電位置に基づき加工屑偏在状態を判別することを特徴とする請求項1または2の何れか1つに記載のワイヤ放電加工機である。
請求項4に係る発明は、前記加工液量調節部は、前記加工屑偏在状態判別部から得られた前記ワイヤ電極と前記被加工物との極間の加工屑偏在状態を解消するように、加工屑の偏在位置が前記被加工物の厚さ方向でその中点より前記上ワイヤガイド側の場合は、前記上加工液供給装置からの加工液供給量を増やし、前記下ワイヤガイド側の場合は、前記下加工液供給装置からの加工液供給量を増やすことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載のワイヤ放電加工機である。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、ワイヤ電極と被加工物の極間の加工屑の偏在状態を解消することで高精度加工を実現するワイヤ放電加工機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】ワイヤ電極と被加工物の極間の加工状態モデルを説明する図である。
【図2】ワイヤ放電加工機の概略構成図である。
【図3】放電パルス電流判別方法を説明する図である。
【図4】本発明のワイヤ放電加工機の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面と共に説明する。
図2は、本発明の一実施形態であるワイヤ放電加工機の構成概略図である。ワイヤ電極1は上ワイヤガイド4aと下ワイヤガイド4bとの間に張架される。上ワイヤガイド4aはワイヤ電極1の位置ずれを拘束するダイスガイド(図示しない)および加工時に加工液を吐出する上加工液供給装置(上ノズル)40aを備えている。また、下ワイヤガイド4bはワイヤ電極1の位置ずれを拘束するダイスガイド(図示しない)と加工時に加工液を吐出する下加工液供給装置(下ノズル)40bを備えている。
加工電源5は、同軸ケーブルで構成される上,下給電線6a,6bに接続され、上,下給電線6a,6bの一方の極はワイヤ電極1に摺動して給電する上,下給電部7a,7b、他方は被加工物2に接続され、ワイヤ電極1と被加工物2との極間に電圧を印加して放電を起こし、加工電源5から放電パルス電流を供給する。
【0015】
極間電圧検出装置9は、ワイヤ電極1と被加工物2の極間の電圧を検出し、極間電圧が一定となるように、サーボモータ3a,3bを駆動制御する。サーボモータ3a,3bは被加工物2をワイヤ電極1に対して相対的に移動させる駆動手段である。放電パルス電流判別装置10は、正常に放電し被加工物2の加工に大きく寄与した放電パルス(有効放電パルス)と、加工屑20(図1参照)あるいは加工屑20を介して被加工物2に放電した放電パルス(無効放電パルス)を判別する。放電パルス数計数装置11は、所定時間毎に前記判別した無効放電パルス数を計数する。放電位置検出装置12は、電流センサ8a,8bを用いて上,下給電線6a,6bに流れる各々の電流値を所定時間毎に測定し、この電流値の差異から放電位置を検出する。
加工屑偏在状態判別装置13は、放電パルス数計数装置11が計数した無効放電パルス数が多くなってきた時に、加工屑20が多くなっているため加工状態が悪いと判別し、かつ、放電位置検出装置12によって得られた放電位置から加工屑20の偏在を判別する。加工液量調節装置14は、加工屑偏在状態判別装置13が判別した加工屑20の偏在を解消するように、上,下ワイヤガイド4a,4bに設けた上加工液供給装置(上ノズル)40a,下加工液供給装置(下ノズル)40bから放電加工部に供給される加工液の加工液量または加工液圧のバランスを調整する。
【0016】
図3は、放電パルス電流判別方法を説明する図である。ワイヤ放電加工機は、ワイヤ電極1と被加工物2の極間に電圧を印加しつつ放電パルス電流を投入して放電加工を行うので、極間電圧と放電パルス電流の関係から放電パルス数を計数することができる(極間電圧検出装置9,放電パルス電流判別装置10,放電パルス数計数装置11)。放電パルス電流は、正常に放電し被加工物2の加工に大きく寄与した放電パルス(有効放電パルス)と、加工屑20あるいは加工屑20を介して被加工物2に放電した放電パルス(無効放電パルス)に分類できる。
ワイヤ電極1と被加工物2の極間に加工屑20が存在する場合は、極間電圧が上昇する途中段階で放電が起きることから、極間電圧あるいは極間電圧の印加時間に閾値を設けて無効放電パルス数を計数することができる(図3(2)の(a),(b))。極間電圧が判定レベルAthrに達しないで放電した放電パルス電流は無効放電パルスである(図3(2)(a),(b))。そして、極間電圧が判定レベルAthrに達し、正常に放電した放電パルス電流は有効放電パルスである(図3(2)(c),(d))。また、判定レベルAthrに達したにもかかわらず、極間電圧の印加1サイクルの間に放電しない場合もある(図3(2)(e))。または、極間電圧の印加時間に判定レベルBthrを設けて無効放電パルス数を計数することもできる。
【0017】
ここで、放電パルス電流判別装置10で判別される無効放電パルス数が多くなるにしたがい、加工屑20が多くなっていると考えることができるので、無効放電パルス数は極間の加工状態の良し悪しを示す指標となる。また、放電位置検出装置12は、各通電部(上給電部7a,下給電部7b)に流れる電流値を電流センサ8a,8bを用いて検出し、検出された各通電部に流れる電流値に基づいて放電位置を検出する。そして、加工屑偏在状態判別装置13は、放電パルス数計数装置11からの出力と放電位置検出装置12からの出力に基づいて、無効放電パルスが発生した放電位置に加工屑20が存在することを特定できる。なお、放電位置検出装置12として、例えば特開平1−121127号公報には、ワイヤ電極1と被加工物2との極間に設けられた複数の通電経路(上給電部7a,下給電部7b)において電流値を測定し、無効放電パルスが流れる放電位置を検出する技術が開示されている。
【0018】
以上のことから、無効放電パルス数が多くなってきた時、加工屑20が偏在している部分に加工液を供給することで加工屑20を排出し、加工屑20の偏在状態を解消することができる。具体的に、放電位置(加工屑20の偏在位置)が上ワイヤガイド4aの方に近い場合(被加工物2の厚さ方向の中間点より上ワイヤガイド側)は、上加工液供給装置(上ノズル)40aからの加工液供給量を増やし、放電位置(加工屑の偏在位置)が下ワイヤガイドの方に近い場合(被加工物2の厚さ方向の中間点より下ワイヤガイド側)は、下加工液供給装置(下ノズル)40bからの加工液供給量を増やすことで加工屑20の偏在を解消できる。なお、この偏在が解消された状態は、ワイヤ電極1の走行方向において、ワイヤ電極1と被加工物2との極間に滞留する加工屑20が被加工物2の厚さ方向から一様に排除された状態である。
【0019】
加工液調節方法として、上述した加工液量のほか加工液圧があるが、目的は同様である。この他の加工液調整方法を下記に述べる。上,下に設けられた加工液供給装置40a,40bにおいて、一方からの加工液供給を停止し、他方のみ加工液供給量を可変にする。また、一方からの加工液供給量を一定にし、他方を可変にする。これらの調整量は、被加工物2の加工結果、或いは加工中の加工屑発生状況をみて変更できるように自由度を持たせておくとよい。
その他、一時的に加工液の停止と吐出を繰り返したり、加工液量の増減や加工液圧の強弱を行うことで、所定位置に加工屑20が停滞することを防止する手段も設けてもよい。
加工形状が入り組んでいる場合、加工形状によっては加工屑20の滞留が一方に偏ることがある。この場合、上記調整量を逆転させる。つまり、放電位置(加工屑20の偏在位置)が上ワイヤガイド4aの方に近い場合(被加工物2の厚さ方向の中間点より上ワイヤガイド側)は、下加工液供給装置(下ノズル)40bからの加工液供給量を増やし、放電位置(加工屑の偏在位置)が下ワイヤガイド4bの方に近い場合(被加工物2の厚さ方向の中間点より下ワイヤガイド側)は、上加工液供給装置(上ノズル)40aからの加工液供給量を増やす。加工屑20の偏在位置と逆方向の加工液供給量を増やすことで、所定位置に加工屑20が滞留することを防止する。さらに、被加工物2の外側に加工液の流れを作ることができるので加工屑20の排出促進になる。
【0020】
よって、加工状態に基づき加工液量を調節することで、局所的な放電加工が回避でき、ワイヤ電極1と被加工物2のギャップを均一に保つことができる。つまり、高精度加工が実現できる。さらには、加工液量を適切に調節することで、ワイヤ電極1と被加工物2の極間にある加工屑の排出促進につながるので、高効率の加工が可能となる。
【0021】
図4は本発明のワイヤ放電加工機の実施形態を説明する図である。ワイヤ放電加工機30の機構部32に加工槽33が設けられている。加工槽33内には放電加工部が設けられている。放電加工部は、機構部32に設けられたテーブルに被加工物が載置され取り付けられるように構成され、該被加工物と図示していないワイヤ電極1(図2参照)間に電圧を印加し放電を発生させながら被加工物2とワイヤ電極1を相対的に移動させることによって被加工物2に放電加工を行う。
【0022】
上ワイヤガイド4aに備わった上加工液供給装置(上ノズル)40aに供給される加工液は、清水槽35からポンプ39によって汲み上げられ、配管L2を経由して噴流として供給される。また、下ワイヤガイド4bに備わった下加工液供給装置(下ノズル)40bに供給される加工液は、清水槽35からポンプ40によって汲み上げられ、配管L3を経由して噴流として供給される。
【0023】
加工液は、常時、被加工物2とワイヤ電極1の間の放電加工作用部において安定した量が供給されるように、ポンプ39及びポンプ40によって加工液供給作用を制御する機能が備わっている。本発明の実施形態においては、加工屑20の偏在状態を解消するために、上加工液供給装置(上ノズル)40aと下加工液供給装置(下ノズル)40bから供給される加工液量の供給作用を制御するため、上加工液供給装置(上ノズル)40aから供給される加工液の液圧を検出する圧力センサ(図示せず)あるいは流量を検出する流量計(図示せず)、下加工液供給装置(下ノズル)40bから供給される加工液の液圧を検出する圧力センサ(図示せず)あるいは流量を検出する流量計(図示せず)を、それぞれの供給口路に配設する。制御装置31は、得られた圧力あるいは流量といった物理量に基づいてフィードバック制御を行い加工液の供給を制御する。そして、本発明の実施形態では、加工屑偏在状態判別装置13(図2参照)によって判別された加工屑20の偏在状態に応じてポンプ39、40の駆動を行う。
【0024】
加工槽33には、加工液が供給され溜められている。この加工槽33内の加工液は放電によって生じた加工屑などが混ざっており、この加工液は符号36に示されるように汚水槽34に流出するように構成されている。汚水槽34に回収・貯留された加工液は、フィルタ用ポンプ37によって汲み上げられ、フィルタ38に通されて濾過され、加工屑が取り除かれて後、清水槽35に供給される。冷却装置42は、ポンプ41によって汲み上げられた加工液を、ワイヤ放電加工機30の制御装置31から指令信号を受けて冷却し、加工液帰還路L4cを介して加工液を清水槽35に戻す。また、加工槽33内の加工液の温度を一定にするために、清水槽35からポンプ41によって汲み上げられた加工液の一部は加工槽33に供給される。
【符号の説明】
【0025】
1 ワイヤ電極
2 被加工物
3a,3b サーボモータ
4a 上ワイヤガイド
4b 下ワイヤガイド
40a 上加工液供給装置(上ノズル)
40b 下加工液供給装置(下ノズル)
5 加工電源
6a 上給電線
6b 下給電線
7a 上給電部
7b 下給電部
8a,8b 電流センサ
9 極間電圧検出装置
10 放電パルス電流判別装置
11 放電パルス数計数装置
12 放電位置検出装置
13 加工屑偏在状態判別装置
14 加工液量調節装置

20 加工屑

30 ワイヤ放電加工機
31 制御装置
32 機構部
33 加工槽
34 汚水槽
35 清水槽

37,39,40,41 ポンプ
38 フィルタ
42 冷却装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上,下ワイヤガイドにワイヤ電極を張架し、該ワイヤ電極と被加工物との極間に電圧を印加して放電を発生させ、該ワイヤ電極と該被加工物の相対位置を変化させ、前記上,下ワイヤガイドに設けた上,下加工液供給装置から該極間に加工液を供給しつつ、該被加工物の加工を行うワイヤ放電加工機において、
前記被加工物の加工に寄与する有効放電パルスと寄与しない無効放電パルスに判別する放電パルス電流判別部と、
前記判別した無効放電パルス数を所定時間毎に計数する放電パルス数計数部と、
前記ワイヤ電極と前記被加工物との極間に設けられた複数の通電経路から所定時間毎に電流値を測定し、該測定された各々の電流値を比較し、放電位置を検出する放電位置検出部と、
前記計数した無効放電パルス数と前記検出した放電位置に基づいて加工屑偏在状態を判別する加工屑偏在状態判別部と、
前記判別した加工屑偏在状態に基づき加工屑の偏在状態を解消するように前記上,下加工液供給装置から供給される加工液量または加工液圧のバランスを調整する加工液量調節部と、
を備えたことを特徴とするワイヤ放電加工機。
【請求項2】
前記放電パルス電流判別部は、極間電圧または極間電圧の印加時間に閾値を設けて前記有効放電パルスと前記無効放電パルスに判別することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
【請求項3】
前記加工屑偏在状態判別部は、前記無効放電パルス数が所定基準値より多くなったときに加工状態が悪いと判別し、かつ前記放電位置検出部から入力される前記放電位置に基づき加工屑偏在状態を判別することを特徴とする請求項1または2の何れか1つに記載のワイヤ放電加工機。
【請求項4】
前記加工液量調節部は、前記加工屑偏在状態判別部から得られた前記ワイヤ電極と前記被加工物との極間の加工屑偏在状態を解消するように、加工屑の偏在位置が前記被加工物の厚さ方向でその中点より前記上ワイヤガイド側の場合は、前記上加工液供給装置からの加工液供給量を増やし、前記下ワイヤガイド側の場合は、前記下加工液供給装置からの加工液供給量を増やすことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載のワイヤ放電加工機。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−86190(P2013−86190A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226001(P2011−226001)
【出願日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【特許番号】特許第5166586号(P5166586)
【特許公報発行日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【Fターム(参考)】