説明

加工装置

【課題】被加工対象に対する加工から検査までを迅速に行うことができる加工装置を提供すること。
【解決手段】11エリアから1Nエリアの加工が終了すると、加工ヘッドを基準位置に移動すると共に、その基準位置に移動した加工ヘッドと対向する位置に2Nエリアの中心が位置するように基板Pを−X方向にt1移動させ、2Nエリアの加工と、1Nエリアの検査とを並行して行う。そして、再び、加工ヘッドを基準位置に移動すると共に、その基準位置に移動した加工ヘッドと対向する位置に2(N−1)エリアの中心が位置するように基板Pを−Y方向にt2移動させ、2(N−1)エリアの加工と、1(N−1)エリアの検査とを並行して行う。即ち、X方向に隣設する2つのエリアの加工と、検査とが並行して行われるので、基板Pに対する加工から検査までを迅速に行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工装置に関し、特に、被加工対象に対する加工から検査までを迅速に行うことができる加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水平面内で移動する加工テーブル2上の基板5に対してレーザーを照射するレーザー加工ヘッド3を設け、そのレーザー加工ヘッド3に計測部4が固定されているレーザー加工装置1が記載されている。
【0003】
このレーザー加工装置1によれば、レーザー加工ヘッド3からレーザーを照射して基板5を加工し、その加工跡を加工テーブル2によって計測部4と対向する検査位置に移動する。そして、その検査位置に移動した加工跡を計測部4によって検査することで、基板5を加工テーブル2から取り外すことなく加工跡を検査することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−121279(段落第「0015」,「0016」、図1等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した特許文献1に記載されているレーザー加工装置1は、計測部4がレーザー加工ヘッド3に固定され、両者の位置関係が固定されているので、所定の加工跡を検査位置に移動する場合には、次の加工位置に基板5を移動することができなかった。また、次の加工位置に基板5を移動する場合には、先の加工跡を検査位置に移動することができなかった。即ち、かかるレーザー加工装置1では、加工と検査とを別々に行う必要があり、全ての加工と検査とを完了するまでに長時間を要するという問題点があった。
【0006】
本発明は、上述した問題点を解決するためになされたものであり、被加工対象に対する加工から検査までを迅速に行うことができるレーザー加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
この目的を達成するために請求項1記載の加工装置によれば、被加工対象を固定装置に固定した状態で、加工制御手段は、加工パターン記憶手段に記憶されている加工パターンに従って、加工ヘッドと移動装置とを制御して、区画されたエリア毎に被加工対象を加工する。加工制御手段により被加工対象の1のエリアが加工されると、撮像制御手段が、撮像装置と移動装置とを制御して、その1の加工済みエリアを撮像する。その加工済みエリアが正常に加工されたかの検査は、撮像制御手段によって撮像された1の加工済みエリアの画像とその加工済みエリアの加工パターンとに基づいて、検査手段によって行われるが、かかる検査は、加工制御手段による他のエリアの加工と並行して行われる。よって、新たな加工と、加工跡の検査とを並行して行うことができるので、被加工対象に対する加工から検査までを迅速に行うことができるという効果がある。
【0008】
請求項2記載の加工装置によれば、請求項1の奏する効果に加え、撮像制御手段は、加工制御手段によって被加工対象の1のエリアが加工されると、ラインセンサを被加工対象に対してX方向またはY方向に相対移動させつつ加工済みエリアを撮像する。このラインセンサによる加工済みエリアの撮像が終了すると、加工ヘッドが次の加工前エリアへ位置するように配設されている。即ち、ラインセンサで加工済みエリアを撮像するための移動を利用して、加工ヘッドを次の加工前エリアへ移動させることができるので、被加工対象に対する加工から検査までを一層迅速に行うことができるという効果がある。
【0009】
請求項3記載の加工装置によれば、請求項1の奏する効果に加え、加工パターン記憶手段に記憶される加工パターンは、エリアセンサの撮像範囲よりも狭小なエリアに区画されている。よって、1の加工済みエリアを1回で撮像できるので、撮像処理を迅速に行うことができるという効果がある。
【0010】
請求項4記載の加工装置によれば、請求項3の奏する効果に加え、エリアセンサは、その撮像範囲の中心が加工ヘッドに対してX方向に第1長さ離間して配設されており、撮像制御手段は、加工制御手段によって被加工対象の1のエリアが加工されると、エリアセンサを被加工対象に対してX方向に第1長さ移動させた後で加工済みエリアを撮像する。よって、X方向の中心ピッチが第1長さでX方向に2以上連設して加工エリアが形成される場合には、一端のエリアの中心を加工範囲の中心に移動する場合と、他端のエリアの中心を撮像範囲の中心に移動する場合とを除き、X方向に隣設する2つのエリアのうち、加工済エリアの中心を撮像範囲の中心に移動すると共に、加工前エリアの中心を加工範囲の中心に移動することができる。よって、かかる2つのエリアの加工と検査とを並行して行うことができるので、X方向に2以上連設するエリアの各々に対する加工から検査までを迅速に行うことができるという効果がある。
【0011】
請求項5記載の加工装置によれば、請求項3の奏する効果に加え、エリアセンサは、その撮像範囲の中心が加工ヘッドに対してX方向に第1長さ離間して配設されており、撮像制御手段は、加工制御手段によって被加工対象の1のエリアが加工される毎に、X方向移動またはY方向移動を1回行った後で加工済みエリアを撮像する。ここで、X方向移動は、エリアセンサを被加工対象に対してX方向に第1長さ移動するものであり、Y方向移動は、エリアセンサを被加工対象に対してY方向に第2長さ移動するものである。かかるX方向移動は、Y方向移動を複数回行った後に1回行われる。
【0012】
よって、被加工対象を区画して形成されるエリアが、X方向の中心ピッチが第1長さ、Y方向の中心ピッチが第2長さで升目状に連設して形成される場合には、X方向の一端でY方向に連設する各エリアの中心を加工範囲の中心に移動する場合と、X方向の他端でY方向に連設する各エリアの中心を撮像範囲の中心に移動する場合とを除き、Y方向移動とX方向移動とを交互に繰り返すことで、X方向に隣設する2つのエリアのうち、加工済エリアの中心を撮像範囲の中心に移動すると共に、加工前エリアの中心を加工範囲の中心に移動することができる。従って、かかる2つのエリアの加工と検査とを並行して行うことができ、升目状に連設するエリアの各々に対する加工から検査までを迅速に行うことができるという効果がある。
【0013】
請求項6記載の加工装置によれば、請求項1から5のいずれかの加工装置の奏する効果に加え、被加工対象に対する全ての検査が終了したことが判断手段によって判断された場合、未加工箇所を示す未加工情報に基づいて未加工箇所が加工パターンに従って再加工手段によって再加工される。このように、被加工対象に対して一通りの加工、検査が終了した後に再加工をすることで、加工、検査を中断する必要がなく、後から未加工箇所だけを連続して再加工することができる。よって、再加工を含め、被加工対象に対する加工から検査までを迅速に行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)はレーザー加工装置の外観側面図であり、(b)は図1(a)の矢印Ib方向視におけるレーザー加工装置の外観平面図である。
【図2】レーザー加工装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】基板の平面図であり、基板を加工、検査する工程を説明するための図である。
【図4】加工検査処理を示すフローチャートである。
【図5】(a)は図4のフローチャートに示すY方向処理を示すフローチャート、(b)は図4のフローチャートに示すX方向処理を示すフローチャートである。
【図6】図4のフローチャートに示す再加工検査処理を示すフローチャートである。
【図7】(a)は、第2実施形態のレーザー加工装置の外観側面図であり、(b)は、その電気的構成を示すブロック図である。
【図8】基板の平面図であり、基板を加工、検査するための第2実施形態の工程を説明するための図である。
【図9】第2実施形態の加工検査処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の加工装置の一例であるレーザー加工装置1の外観側面図であり、図1(b)は図1(a)の矢印Ib方向視におけるレーザー加工装置1の外観平面図である。尚、図1(b)では、ベース4、アーム7の図示は省略してある。また、図1(a)では、鉛直方向をZ方向(図中上下方向)、Z方向と直交する方向をX方向(図中左右方向)とし、図1(b)では、X方向(図中左右方向)とし、X方向と直交する方向をY方向(図中上下方向)とする。
【0016】
レーザー加工装置1は、被加工対象としての基板Pにレーザーを照射して基板Pを所定の加工パターンで加工するものであって、特に、基板Pに対する加工と検査とを迅速に行うことができるものである。
【0017】
レーザー加工装置1は、主に、ベース4に連結されている第1移動装置5と、その第1移動装置5に連結されている固定装置6と、ベース4から立設して固定装置6と対向する位置に延出するアーム7の先端に連結されている第2移動装置8と、その第2移動装置8に連結されている加工ヘッド9と、その加工ヘッド9と並設してアーム7に固定されているCCDカメラ10とによって構成されている。
【0018】
第1移動装置5は、固定装置6と一体に基板PをXY方向に移動するものであり、ベース4に連結されているX軸移動装置5aと、そのX軸移動装置5aと前記固定装置6とに連結されているY軸移動装置5bとによって構成されている。
【0019】
X軸移動装置5aは、X方向に延びる図示しないボールネジ駆動機構によってX方向に往復移動可能に構成されており、Y軸移動装置5bと固定装置6とは、X軸移動装置5aの移動に伴ってX方向に移動することができる。
【0020】
Y軸移動装置5bは、Y方向に延びる図示しないボールネジ駆動機構によってX軸移動装置5aとは別にY方向に往復移動可能に構成されており、固定装置6は、Y軸移動装置5bの移動に伴ってY方向に移動することができる。よって、第1移動装置5によって固定装置6に固定されている基板PをXY方向に移動することができる。
【0021】
固定装置6は、基板PをXY平面上(Z方向と直交する平面上)に固定するものであり枠状に形成されており、その固定装置6に基板Pを設置し、図示しない挟持装置によって基板Pの周縁部を挟持して基板PをXY平面上に固定することができる。
【0022】
第2移動装置8は、加工ヘッド9をXY方向に移動するものであり、図示しないX軸移動装置と、Y軸移動装置とによって構成されている。第1移動装置5は、ボールネジ駆動機構によってX方向、Y方向に往復移動可能に構成されているが、この第2移動装置8は、リニアモータ駆動機構によってX方向、Y方向に往復移動可能に構成されている。
【0023】
リニアモータ駆動機構は、ボールネジ駆動機構と比べ振動が少なく、リニアモータ駆動機構を第2移動装置8に採用することで、加工ヘッド9に振動が伝播されるのが抑制され、高品質な加工をすることができる。
【0024】
加工ヘッド9は、基板Pに向けてレーザーおよび加工ガスを照射するものであり、フォーカスレンズ、コリメーションレンズ等の光学系レンズを内蔵した周知の加工ヘッドである。レーザー加工装置1には、図示しないレーザー発振器および図示しない加工ガス供給装置が搭載されており、このレーザー発振器からレーザー、加工ガス供給装置から加工ガスが加工ヘッド9に供給され、加工ヘッド9からレーザーおよび加工ガスが照射される。また、加工ヘッド9には首振り機構が搭載され、所定の範囲内でレーザーを照射することができる。
【0025】
CCDカメラ10は、加工ヘッド9によって加工された加工済エリアを撮像するものであり、撮像素子としてのCCD素子、画像処理プロセッサ等が内蔵されている。CCD素子は、光を受光する感光部が2次元に配置されたエリアセンサとして構成されている。CCDカメラ10は、CCD素子から出力されるアナログデータをA/D変換した後、画像処理プロセッサによって様々な処理を行い、デジタルデータに変換する。
【0026】
CCDカメラ10によって撮像されたデジタルデータとしての加工済エリアの画像は、後述する加工パターンメモリ13a(図2参照)に記憶されている加工パターンと比較され、加工済エリアが加工パターンに従って正常に加工されたかが検査される。よって、加工された基板Pを固定装置6から取り外すことなく、加工結果を検査することができる。
【0027】
その他、レーザー加工装置1には、アーム7のベース4から立設する部分にLCD15と、操作キー14とを含む操作パネルが取り付けられており、この操作パネルのLCD15に加工跡を検査した検査結果等の各種情報を表示したり、操作キー14を介して各種指令を入力することができる。
【0028】
図2は、レーザー加工装置1の電気的構成を示すブロック図である。図2に示すように、レーザー加工装置1は、主に、CPU11、ROM12、RAM13、操作キー14、LCD15、第1,第2駆動ドライバ16,18、加工ヘッド9、CCDカメラ10、によって構成されている。
【0029】
CPU11、ROM12、及び、RAM13は、バスラインを介して互いに接続されている。また、操作キー14、LCD15、第1,第2駆動ドライバ16,18、加工ヘッド9、CCDカメラ10、バスラインの各々は、入出力ポート20を介して互いに接続されている。
【0030】
CPU11は、ROM12やRAM13に記憶される固定値やプログラムに従って、レーザー加工装置1が有している各機能の制御や、入出力ポート20と接続された各部を制御するものである。
【0031】
ROM12は、レーザー加工装置1で実行される制御プログラムなどを格納した書換不能なメモリであり、後述する図4乃至6のフローチャートに示す各処理を実行する加工検査プログラム12aが格納されている。
【0032】
RAM13は、書換可能な揮発性のメモリであり、レーザー加工装置1の各操作の実行時に各種のデータを一時的に記憶するためのメモリであり、RAM13には、加工パターンメモリ13aと、検査結果メモリ13bと、未加工フラグ13cとが割当てられている。
【0033】
加工パターンメモリ13aには、基板Pに加工する加工パターンが複数のエリアに区画して記憶されている。基板Pは、この加工パターンメモリ13aに記憶されている加工パターンに従ってエリア毎に加工される。検査結果メモリ13bには、各加工箇所毎に、その検査結果が記憶されている。未加工フラグ13cは、未加工箇所を示す情報であり、加工箇所毎に加工済である場合には「OFF」、未加工な場合には「ON」に設定されている。
【0034】
第1駆動ドライバ16は、第1移動装置5を駆動する第1モータ17と接続されており、第1モータ17を制御することで第1移動装置5を所定の位置に移動する。尚、実際には、第1移動装置5のX軸移動装置5aと、Y軸移動装置5bとの各々に、第1駆動ドライバ16、第1モータ17が、それぞれ接続されている。
【0035】
第2駆動ドライバ18は、第2移動装置8を駆動する第2モータ19と接続されており、第2モータ19を制御することで第2移動装置8を所定の位置に移動する。尚、実際には、第2移動装置8のX軸移動装置と、Y軸移動装置との各々に、第2駆動ドライバ18、第2モータ19が、それぞれ接続されている。
【0036】
図3は、基板Pの平面図であり、基板Pを加工し、検査する工程を説明するための図である。尚、図3では、Z方向と直交する方向をX方向(図中左右方向)とし、そのX方向と直交する方向をY方向(図中上下方向)とする。また、図中の矢印Kは第1移動装置5によって移動する基板P上に描かれる加工ヘッド9の軌跡を示している。
【0037】
レーザー加工装置1は、基板Pを升目状に区画して形成されるエリア単位で、基板Pを加工し、検査を行う。図3では、基板PをM列×N行の升目状に区画して形成される各エリア(図中二点鎖線Gで囲まれる矩形エリア)を加工、検査する場合について説明する。尚、本実施形態では、各エリアを便宜上、「(列番号)(行番号)エリア」と称す。即ち、11エリア、12エリア、・・・1Nエリア、21エリア・・・MNエリア、等と称す。
【0038】
各エリアは、均一な大きさで構成されており、X方向に隣設するエリアの中心のピッチはt1で、Y方向に隣設するエリアの中心のピッチはt2で、それぞれ構成されている。また、各エリアは、第2移動装置8と加工ヘッド9とによって加工可能な加工範囲と、CCDカメラ10によって撮像可能な撮像範囲との各々よりも狭小なエリアで構成されている。
【0039】
基板Pを加工、検査する場合には、初期処理として、第2移動装置8によって加工ヘッド9を基準位置(第2移動装置8と加工ヘッド9とによって加工可能な加工範囲の中心)に移動し、その基準位置に移動した加工ヘッド9と対向する位置に11エリアの中心が位置するように第1移動装置5によって基板Pを移動する。尚、この場合、CCDカメラ10の中心は(撮像範囲の中心)、11エリアの中心からX方向にt1離間した所に位置することになる。この状態で第2移動装置8と加工ヘッド9とを制御して11エリアを加工パターンに従って加工する。尚、各エリア内を加工した加工跡は加工跡Hとして図示してある。
【0040】
11エリアの加工が終了すると、第2移動装置8によって加工ヘッド9を基準位置に移動すると共に、その基準位置に移動した加工ヘッド9と対向する位置に12エリアの中心が位置するように第1移動装置5によって基板Pを+Y方向にt2だけ移動する。そして、12エリアを加工する。こうした操作を繰り返し、11エリアから+Y方向に連設する1Nエリアまでの各エリアを加工する。
【0041】
そして、1Nエリアの加工が終了すると、第2移動装置8によって加工ヘッドを基準位置に移動すると共に、その基準位置に移動した加工ヘッド9と対向する位置に2Nエリアの中心が位置するように第1移動装置5によって基板Pを−X方向にt1だけ移動する。
【0042】
基板Pを−X方向にt1だけ移動すると、撮像範囲の中心は基準位置に位置する加工ヘッド9から+X方向にt1離間しているので、1Nエリアの中心が撮像範囲の中心に移動することになる。即ち、加工範囲の中心に加工前エリアである2Nエリアの中心が、撮像範囲の中心に加工済エリアである1Nエリアの中心が、それぞれ移動することになる。よって、この状態で2Nエリアの加工と、1Nエリアの検査とを並行して行うことができる。各エリアは、第2移動装置8と加工ヘッド9とによって加工可能な加工範囲と、CCDカメラ10によって撮像可能な撮像範囲との各々よりも狭小なエリアで構成されているからである。
【0043】
2Nエリアの加工が終了すると、第2移動装置8によって加工ヘッドを基準位置に移動すると共に、その基準位置に移動した加工ヘッド9と対向する位置に2(N−1)エリアの中心が位置するように第1移動装置5によって基板Pを−Y方向にt2だけ移動する。よって、この場合には、加工範囲の中心に加工前エリアである2(N−1)エリアの中心が、撮像範囲の中心に加工済エリアである1(N−1)エリアの中心が、それぞれ移動することになる。従って、この状態で、2(N−1)エリアの加工と、1(N−1)エリアの検査とを並行して行うことができる。こうした操作を繰り返し、2Nエリアから−Y方向に連設する21エリアの各エリアを加工すると共に、1Nエリアから−Y方向に連設する11エリアの各エリアを検査する。
【0044】
以降は、上述したのと同様な操作を繰り返すことで、全エリアの加工、検査を行うことができる。即ち、このように、基板Pを加工、検査することで、1列目(11エリアから1Nエリア)を加工する場合と、M列目(M1エリアからMNエリア)を検査する場合とを除き、X方向に隣設する2つのエリアのうち、加工済エリアの中心を撮像範囲の中心に移動すると共に、加工前エリアの中心を加工範囲の中心に移動することができる。よって、かかる2つのエリアの加工と、検査とを並行して行うことができ、升目状に連設するエリアの各々に対する加工から検査までを迅速に行うことができる。
【0045】
図3には、上記の加工および検査の様子が図示されている。具体的には、加工済みエリアでは加工跡Hが実線で図示され(11エリアから26エリア)、加工中のエリアでは加工跡Hが点線で図示されている(25エリア)。また、検査済みエリアは細かい網掛けで図示され(1Nエリアから16エリア)、検査中のエリアは粗い網掛けで図示されている(15エリア)。即ち、図3の状態は、26エリアの加工と16エリアの検査とが終了した後であって、25エリアの加工と15エリアの検査とが実行中である状態を図示している。
【0046】
次に、図4乃至図6を参照してレーザー加工装置1に搭載されているCPU11によって実行される加工検査処理について説明する。図4は、加工検査処理を示すフローチャートである。図5(a)は、図4のフローチャートに示すY方向処理を示すフローチャート、図5(b)は、図4のフローチャートに示すX方向処理を示すフローチャートである。図6は、図4のフローチャートに示す再加工検査処理を示すフローチャートである。
【0047】
この加工検査処理は、所定の加工パターンに従って基板Pを加工、検査する処理であり、ユーザーから指示された場合に実行される。尚、本実施形態では、図3で示したように、基板PをX方向にM個(M列)、Y方向にN個(N行)の升目状に区画して形成される各エリア単位で加工、検査する場合について説明し、X方向に連設するエリアに関する変数をi、Y方向に連設するエリアに関する変数をjとして説明する。
【0048】
図4に示すように、この処理では、まず、初期処理を行う(S1)。この初期処理(S1)では、変数iを「1」、変数jを「1」にそれぞれ設定し、11エリアの中心が基準位置にある加工ヘッド9と対向するように第1移動装置5によって基板Pを移動する。こうして初期処理が終了すると(S1)、各エリアを加工するエリア加工処理を行う(S2)。
【0049】
エリア加工処理(S2)は、各エリアに対応する加工パターンで各エリアを加工する処理である。このエリア加工処理(S2)では、対応するエリアの加工パターンを、RAM13の加工パターンメモリ13aから読み込み、その加工パターンに従って第2移動装置8と、加工ヘッド9とによって各エリアを加工する。このエリア加工処理(S2)によって、各エリアを加工パターンに従って加工することができる。
【0050】
一つのエリアの加工が終了すると、変数jに「1」を加算し(S3)、その「1」を加算した変数jがN以下かを判断する(S4)。変数jがN以下であれば(S4:Yes)、Y方向処理に移行する(S5)。
【0051】
ここで、図5(a)を参照して、Y方向処理について説明する(S5)。このY方向処理は(S5)、主に、奇数列Nエリア(X方向において奇数番目、Y方向においてN番目のエリア)と、偶数列1エリア(X方向において偶数番目、Y方向において1番目のエリア)とを除くエリアが、加工パターンに従って正常に加工されたかを検査する処理である。
【0052】
このY方向処理では、まず、処理しているエリアが、奇数列に属するかを判断し(S501)、奇数列に属すると判断した場合には(S501:Yes)、所定距離(t2)だけ+Y方向(図3参照)に基板Pを移動し(S502)、偶数列に属すると判断した場合には(S501:No)、所定距離(t2)だけ−Y方向に基板Pを移動する(S503)。S501の処理によって基板Pは、1列毎に+Y方向と、−Y方向とに交互に移動することになる。
【0053】
次に、変数iが「2」以上かを判断し(S504)、変数iが「2」より小さい場合は(S504:No)、撮像処理(S505)、検査処理(S506)を行うことなく、本処理を終了する。即ち、変数iが「2」以下(変数i=1)ならば、加工エリアは1列目に属する。かかる場合には、撮像範囲の中心はエリア外にあるので、撮像処理(S505)、検査処理(S506)を行うことなく、本処理を終了する。
【0054】
一方、変数iが「2」以上の場合には(S504:Yes)、後述する撮像処理(S505)を行い、その後、検査処理(S506)を開始して、このY方向処理(S5)を終了する。なお、実行を開始した検査処理(S506)は、この後に実行されるエリア加工処理(S2)と並行して実行されるので、基板Pの加工検査処理を迅速に行うことができる。撮像処理(S505,S803)と検査処理(S506,S804)の詳細は後述する。
【0055】
図4に戻り、説明を続ける。Y方向処理を終了すると(S5)、加工ヘッド9が対向しているエリアについて、前述したエリア加工処理(S2)を実行する。そして、Y方向処理(S5)で実行された検査処理(S506)と、このエリア加工処理(S2)とが終了すると、S3およびS4の処理へ移行する。S4において変数jがNよりも大きくなるまで(S4:No)、S2〜S5の処理を繰り返す。即ち、1列分の各エリアについてS2〜S5の処理を実行する。
【0056】
よって、1列目に属するエリアの場合には、Y方向処理において(S5)、撮像処理(S505)、検査処理(S506)が行われることなく、エリア加工処理(S2)だけが行われる。一方、2列目以降に属するエリアの場合には、Y方向処理において(S5)、撮像処理(S505)が行われ、検査処理(S506)の実行が開始される。その場合には、検査処理(S506)の実行中に、エリア加工処理(S2)が実行開始され、両処理(S2,S506)が並行して実行される。そして、両処理が終了すると、S3の処理へ移行する。
【0057】
そして、S4で変数jがNよりも大きいと判断すると(S4:No)、1列分のエリアについてY方向処理が終了したとして、加工するエリアを次列に移行すべく、変数iに「1」を加算する(S6)。加算後、変数iがM以下かを判断し(S7)、変数iがM以下であれば(S7:Yes)、X方向処理を実行する(S8)。
【0058】
ここで、図5(b)のフローチャートを参照して、このX方向処理(S8)を説明する。X方向処理(S8)は、主に、上述したY方向処理(S5)では検査されないエリア、即ち、奇数列Nエリア(X方向において奇数番目、Y方向においてN番目のエリア)と、偶数列1エリア(X方向において偶数番目、Y方向において1番目のエリア)とが加工パターンに従って正常に加工されたかを検査する処理である。
【0059】
このX方向処理では、まず、基板Pを所定距離(t1)だけ−X方向に移動する(S801)。このS801の処理によって、加工前エリアである偶数列Nエリア(X方向において偶数番目、Y方向においてN番目のエリア)、または、奇数列1エリア(X方向において奇数番目、Y方向において1番目のエリア)の中心が加工範囲の中心に移動すると共に、加工済エリアである奇数列Nエリアの中心、または、偶数列1エリアの中心が撮像範囲の中心に移動する。そして、変数jを「1」に再設定した後(S802)、撮像範囲に移動したエリアについて撮像処理(S803)を行い、その後、検査処理(S804)を開始して、このX方向処理(S8)を終了する。
【0060】
ここで、撮像処理(S505,S803)は、撮像範囲内に移動した加工済エリアをCCDカメラ10によって撮像する処理である。また、検査処理(S506,S804)は、撮像処理(S505,S803)によって撮像された加工済エリアの画像と、その加工済エリアに対応する加工パターンとを画像マッチングし、加工済エリアが加工パターンに従って正常に加工されたかを検査する処理である。検査処理(506,S804)は、エリア加工処理(S2)と同様に、その実行に時間を要すが、前述した通り、この後に実行されるエリア加工処理(S2)と並行して実行されるので、エリア加工処理(S2)の実行時間を使って検査処理(S506,S804)を実行することができる。その結果、基板Pの加工検査処理を迅速に行うことができる。
【0061】
また、この検査処理(S506,S804)では、検査した検査結果を各加工箇所毎に検査結果メモリ13bに記憶すると共に、検査した結果が未加工であった場合には、未加工箇所に対応つけて未加工フラグ13cを「ON」に設定する。
【0062】
例えば、1列目に属するエリア(11エリアから1Nエリア)の加工が上述したS2乃至S5の処理によって終了すると、基板PはS801の処理によって所定距離(t1)だけ−X方向に移動する。すると、加工前エリアである2Nエリアの中心が加工範囲の中心に、加工済エリアである1Nエリアの中心が撮像範囲の中心に、それぞれ移動する。
【0063】
そして、撮像範囲の中心に移動した1Nエリアの状態が撮像処理(S803)によって撮像された後、検査処理(S804)によってその撮像結果の検査が開始される。一方、加工範囲に移動した2Nエリアは、エリア加工処理(S2)によって、加工パターンに従って加工される。この2Nエリアの加工と、1Nエリアの検査とが並行して行われるので、基板Pの加工検査処理を迅速に行うことができる。
【0064】
再び図4に戻り、説明を続ける。S8のX方向処理が終了すると(S8)、再びS2からの処理を実行し、S4において変数jがNよりも大きくなるまで(S4:No)、再びS2〜S5の処理を繰り返す。即ち、再び1列分の各エリアについてS2〜S5の処理を実行する。
【0065】
例えば、2Nエリアの加工が終了すると、Y方向処理に移行し(S5)、基板Pを所定距離(t2)だけ−Y方向に移動する。これにより、加工前エリアである2(N−1)エリアの中心が加工範囲の中心に、加工済エリアである1(N−1)エリアが撮像範囲の中心に、それぞれ移動する。そして、撮像範囲の中心に移動した1(N−1)エリアの状態が撮像処理(S505)によって撮像された後、検査処理(S506)によってその撮像結果の検査が開始される。一方、加工範囲に移動した2(N−1)エリアは、エリア加工処理(S2)によって、加工パターンに従って加工される。この2(N−1)エリアの加工と、1(N−1)エリアの検査とが並行して行われるので、基板Pの加工検査処理を迅速に行うことができる。
【0066】
そして、S4で変数jがNよりも大きいと判断すると(S4:No)、1列分のエリアについてY方向処理が終了したとして(S5)、変数iに「1」を加算し(S6)、変数iがM以下かを判断する(S7)。判断の結果、変数iがM以下であれば(S7:Yes)、再び、X方向処理を実行する(S8)。こうして再び、X方向処理を実行し(S8)、S7の処理において変数iがMよりも大きくなるまで(S7:No)、S2〜S8までの処理を繰り返し実行する。これにより、全エリアの加工と、M−1列目までのエリアの検査とをすることができる。
【0067】
一方、S7の処理によって、変数iがMよりも大きくなると(S7:No)、変数iがM+1以下かを判断する(S9)。その結果、変数iがM+1以下であれば(即ち、変数i=M+1であれば)(S9:Yes)、M列目に属するエリア(M1からMNまでのエリア)の検査を行うべく、S10〜S13の処理を実行する。
【0068】
具体的には、まず、X方向処理を実行する(S10)。このX方向処理(S10)は、上述したX方向処理(S8)と同様な処理であり、M列目に属するエリアのうち、M1エリア(Mが奇数の場合)、または、MNエリア(Mが偶数の場合)が加工パターンに従って正常に加工されたかを検査する処理である。
【0069】
X方向処理を終了すると(S10)、変数jに「1」を加算する(S11)。加算後の変数jがN以下かを判断し(S12)、変数jがNより大きくなるまで(S12:Yes)、Y方向処理を繰り返す(S13)。このY方向処理(S13)は、上述したY方向処理と同様な処理であり(S5)、M列目に属するエリアのうち、M1エリア(Mが奇数の場合)、または、MNエリア(Mが偶数の場合)を除くエリアが加工パターンに従って正常に加工されたかを検査する処理である。
【0070】
そして、変数jがNより大きいと判断された場合には(S12:No)、全てのエリアの加工、検査が終了したとして、再加工検査処理を行った後で(S14)、本処理を終了する。
【0071】
ここで、図6を参照して、再加工検査処理について説明する(S14)。この再加工検査処理(S14)は、主に、上述した処理では加工されなかった未加工箇所を、再加工、再検査する処理である。
【0072】
この処理では、まず検査結果メモリ13bに記憶されている検査結果をLCD15に表示する。検査結果をLCD15に表示する場合には、各エリア毎に検査結果を表示する。これにより、各エリアの加工状況の傾向を把握することができる。
【0073】
次に、操作キー14を介して再加工の指示が入力されたかを判断し(S142)、再加工の指示があった場合には(S142:Yes)、再加工処理(S143)、再検査処理(S144)を行う。再加工処理(S143)は、未加工箇所を含むエリアの中心が加工範囲の中心に位置するように第1移動装置5によって基板Pを移動し、加工ヘッド9によって未加工箇所を加工パターンに従って再加工する。再検査処理(S144)は、再加工された箇所を含むエリアの中心が撮像範囲の中心に位置するように第1移動装置5によって基板Pを移動し、その再加工されたエリアを撮像し、再検査する。
【0074】
そして、再検査処理(S144)の結果がOKか、即ち、加工パターンに従って正常に加工されたかが判断される(S145)。判断の結果、依然として加工されていなければ(S145:No)、S147の処理に移行し、加工パターンに従って正常に加工されていれば(S145:Yes)、未加工フラグ13cを「OFF」に設定した後(S146)、S147の処理に移行する。
【0075】
そして、S147の処理では、全ての未加工箇所について再加工処理(S143)、再検査処理(S144)を終了したかを判断し(S147)、終了していなければ(S147:No)、再びS143からの処理を繰り返す。一方、終了していれば(S147:Yes)、再びS141からの処理を繰り返す。なお、かかる終了の判断は、再加工対象エリアについて、未加工フラグ13cがすべて「OFF」された場合に終了と判断される。
【0076】
検査結果を再表示した後(S141)、S142の処理において、再加工の指示が入力されなかった場合(S142:No)、本処理を終了する。
【0077】
このように、上述した加工検査処理によれば、1列目(11エリアから1Nエリア)を加工する場合と、M列目(M1エリアからMNエリア)を検査する場合とを除き、X方向に隣設する2つのエリアのうち、加工済エリアの中心を撮像範囲の中心に移動すると共に、加工前エリアの中心を加工範囲の中心に移動するので、かかる2つのエリアの加工と、検査とを並行して行うことができる。よって、M列×N行で升目状に連設する各々のエリアに対する加工から検査までを迅速に行うことができる。
【0078】
次に、図7乃至図9を参照して、第2実施形態のレーザー加工装置30について説明する。第2実施形態のレーザー加工装置30は、撮像装置としてのCCDカメラ10に代えて、ラインセンサカメラ31を用いている。以下、前述した第1実施形態と同一の部分には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0079】
図7(a)は、第2実施形態のレーザー加工装置30の外観側面図である。レーザー加工装置30は、撮像装置としてのラインセンサカメラ31が、加工ヘッド9と並設してアーム7に固定されている。ラインセンサカメラ31は、加工ヘッド9によって加工された加工済エリアを撮像するものであり、撮像素子としてのCCD素子、画像処理プロセッサ等が内蔵されている。CCD素子は、光を受光する感光部が1列に配置されたラインセンサとして構成されている。ラインセンサカメラ31は、CCD素子から出力されるアナログデータをA/D変換した後、画像処理プロセッサによって様々な処理を行い、デジタルデータに変換する。ラインセンサカメラ31によって撮像されたデジタルデータとしての加工済エリアの画像は、加工パターンメモリ13aに記憶されている加工パターンと比較され、加工済エリアが加工パターンに従って正常に加工されたかが検査される。
【0080】
また第2実施形態の加工ヘッド9は、第1実施形態とは異なり、アーム7の先端に固定具32を介して固定されている。即ち第2実施形態では、第1実施形態の第2移動装置8を有さない。よって、加工ヘッド9はアーム7に固定された状態で基板Pの加工が行われる。このため第2実施形態では、加工エリアの移動を始め、加工位置の調整は、すべて第1移動装置5によって行われる。
【0081】
図7(b)は、第2実施形態のレーザー加工装置30の電気的構成を示すブロック図である。ラインセンサカメラ31は、入出力ポート20を介してCPU11などと接続されている。また前述した通り、第2実施形態では、第2移動装置8を有さないので、第2駆動ドライバ18も、第2モータ19も無い。
【0082】
図8は、基板Pの平面図であり、基板Pを加工し、検査する工程を説明するための図である。なお、図中の矢印Kは、基板Pへ加工を行う場合の加工ヘッド9の軌跡を示している。一点鎖線の部分では、基板Pへの加工処理や撮像処理は行われず、加工ヘッド9の移動のみが行われる。
【0083】
レーザー加工装置30は、基板PをM列×N行の升目状に区画して形成されるエリア単位で、基板Pを加工し、検査を行う。各エリアは、均一な大きさで構成されており、X方向に隣設するエリアの中心のピッチはt1で、Y方向に隣設するエリアの中心のピッチはt2で、それぞれ構成されている。また、ラインセンサカメラ31はX軸方向と並行に配設されており、各エリアのX方向の幅は、ラインセンサカメラ31によって撮像可能な撮像範囲よりも小さく設定されている。図8中、11エリアと、1Nエリアの上方と、23エリアとに、位置関係を示すべく、加工ヘッド9とラインセンサカメラ31とを図示している。
【0084】
基板Pを加工、検査する場合には、初期処理として、加工ヘッド9が11エリアの中心に位置するように、第1移動装置5によって基板Pを移動する。この場合、ラインセンサカメラ31は、11エリアの中心からY方向にt2/2離間した所に位置する。図8の11エリアには、この状態の位置関係を加工ヘッド9とラインセンサカメラ31とで図示している。
【0085】
この状態から、加工ヘッド9と第1移動装置5とを制御して、11エリアを加工パターンに従って加工する。11エリアの加工が終了すると、第1移動装置5によって加工ヘッド9を11エリアの中心に一旦戻す。その状態から、第1移動装置5によって基板Pを+Y方向にt2だけ移動する。この移動の間に、ラインセンサカメラ31で、加工が済んだ11エリアを撮像する。かかる移動が終了すると、ラインセンサカメラ31による11エリアの撮像が完了し、且つ、加工ヘッド9が次の12エリアの中心に位置するので、12エリアの加工を開始する。12エリアの加工中に、ラインセンサカメラ31で撮像した11エリアの加工結果の検査が並行して実行される。かかる操作を繰り返して、11エリアから+Y方向に連設する1Nエリアまでの各エリアを加工し、検査する。
【0086】
1Nエリアの加工が終了すると、第1移動装置5によって加工ヘッド9を1Nエリアの中心に一旦戻す。その状態から、第1移動装置5によって基板Pを+Y方向にt2だけ移動する。この移動の間に、ラインセンサカメラ31で、加工が済んだ1Nエリアを撮像する。図8の1Nエリアの上方には、この移動後の位置関係を加工ヘッド9とラインセンサカメラ31とで図示している。
【0087】
かかる移動が終了すると、第1移動装置5によって、加工ヘッド9を次の21エリアの中心に移動し、12エリアの加工を開始する。21エリアへの加工ヘッド9の移動中および12エリアの加工中に、ラインセンサカメラ31で撮像した1Nエリアの加工結果の検査が並行して実行される。かかる操作を繰り返して、MNエリアまでの各エリアを加工し、検査する。
【0088】
MNエリアの加工が終了すると、第1移動装置5によって加工ヘッド9をMNエリアの中心に一旦戻す。その状態から、第1移動装置5によって基板Pを+Y方向にt2だけ移動する。この移動の間に、ラインセンサカメラ31で、加工が済んだMNエリアを撮像する。かかる移動が終了すると、第1移動装置5によって、加工ヘッド9を初期位置である11エリアの中心に移動する。この11エリアへの移動と並行して、ラインセンサカメラ31で撮像したMNエリアの加工結果の検査が実行される。
【0089】
図8には、上記の加工および検査の様子が図示されている。具体的には、加工済みエリアでは加工跡Hが実線で図示され(11エリアから22エリア)、加工中のエリアでは加工跡Hが点線で図示されている(23エリア)。また、検査済みエリアは細かい網掛けで図示され(1Nエリアから21エリア)、検査中のエリアは粗い網掛けで図示されている(22エリア)。即ち、図8の状態は、22エリアの加工と21エリアの検査とが終了した後であって、23エリアの加工と22エリアの検査とが実行中である状態を図示している。図8の23エリアには、この状態の位置関係を加工ヘッド9とラインセンサカメラ31とで図示している。
【0090】
次に、図9を参照して、第2実施形態の加工検査処理について説明する。図9は、加工検査処理を示すフローチャートである。加工検査処理は、所定の加工パターンに従って基板Pを加工、検査する処理であり、ユーザーからの指示によって実行される。尚、本実施形態では、図8で示したように、基板PをX方向にM個(M列)、Y方向にN個(N行)の升目状に区画して形成される各エリア単位で加工、検査する場合について説明する。また、X方向に連設するエリアに関する変数をi、Y方向に連設するエリアに関する変数をjとして説明する。
【0091】
この処理では、まず、初期処理を行う(S31)。この初期処理(S31)では、変数iを「1」、変数jを「1」にそれぞれ設定し、11エリアの中心に加工ヘッド9が位置するように第1移動装置5によって基板Pを移動する。こうして初期処理が終了すると(S31)、各エリアを加工するエリア加工処理を行う(S32)。
【0092】
エリア加工処理(S32)は、各エリアに対応する加工パターンで各エリアを加工する処理である。このエリア加工処理(S32)では、対応するエリアの加工パターンを、RAM13の加工パターンメモリ13aから読み込み、その加工パターンに従って第1移動装置5と、加工ヘッド9とによって各エリアを加工する。このエリア加工処理(S32)によって、各エリアを加工パターンに従って加工できる。
【0093】
一つのエリアの加工が終了すると(S33:Yes)、その加工したエリアの中心位置に加工ヘッド9を一旦戻す。その状態から+Y方向へt2だけ移動する。この移動の間にラインセンサカメラ31によって、加工が済んだエリアを撮像する(S34)。+Y方向へt2移動すると、加工ヘッド9は次の加工エリア(例えば12エリア)の中心に位置する。その後、S34の処理で撮像した加工済みエリア(例えば11エリア)の検査処理を開始する(S35)。この検査処理(S35)では、検査した検査結果を各加工箇所毎に検査結果メモリ13bに記憶すると共に、検査した結果が未加工であった場合には、未加工箇所に対応つけて未加工フラグ13cを「ON」に設定する。
【0094】
検査処理の開始後、変数jに「1」を加算する(S36)。加算後の変数jがNより大きいかを判断し(S37)、変数jがNより大きくなければ、即ちN以下であれば(S37:No)、その列のエリア加工処理は未だ終了していないので、処理をS32へ移行し、次のエリアについてエリア加工処理を開始する(S32)。このエリア加工処理(S32)は、前のエリアの検査処理(S35)と並行して実行される。よって、基板Pの加工検査処理を迅速に行うことができる。
【0095】
かかる検査処理とエリア加工処理とが共に終了するまで(S33:No)、処理をループする。一方、両処理(S32,S35)が終了すれば(S33:Yes)、前述したS34からS37の処理を繰り返す。そして、S37の処理において、加算後の変数jがNより大きければ(S37:Yes)、その列のエリア加工処理はすべて終了したので、次の列のエリアを加工するために、変数iに「1」を加算する(S38)。
【0096】
加算後の変数iがMより大きいかを判断し(S39)、変数iがMより大きくなければ、即ちM以下であれば(S39:No)、未加工の列があるので、変数jを「1」に戻し(S40)、変数ijで示されるi列j行エリアへ第1移動装置5を駆動して加工ヘッド9を移動する(S41)。なお、この移動の間にも、S35の検査処理は実行されている。よって、処理時間に長時間を要す検査処理を、他の処理の実行中に行うことで、加工検査処理の全体に要す時間を短縮できる。即ち基板Pの加工検査処理を迅速に行うことができる。
【0097】
その後は、上述したS32からS41の各処理を繰り返し実行する。S39の処理において、加算後の変数iがMより大きければ(S39:Yes)、基板PのM列N行のすべてのエリアについてエリア加工処理(S32)は終了したので、加工ヘッド9を初期位置である11エリアの中心に移動する(S42)。この移動は第1移動装置5を駆動して行われ、この移動の間にも、最後に加工処理したMNエリアの検査処理は並行して実行される。加工ヘッド9を11エリアへ移動した後、MNエリアの検査処理の終了を待つ(S43:No)。そして、MNエリアの検査処理が終了すれば(S43:Yes)、前述した図6の再加工検査処理(S44)を実行して、この加工検査処理を終了する。以上の通り、エリア加工処理(S32)と検査処理(S35)とが並行して実行されるので、基板Pの加工検査処理を迅速に行うことができる。
【0098】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変更が可能であることは容易に推察できるものである。
【0099】
例えば、上述した第1実施形態では、基板Pを第1移動装置5、加工ヘッド9を第2移動装置8によって、それぞれ移動可能に構成したが、第2実施形態のように、第2移動装置8を削除して加工ヘッド9はアーム7に固定し、基板Pのみを第1移動装置5によって移動可能に構成しても良い。逆に、第2実施形態では、第2移動装置を新たに加え、基板Pを第1移動装置5で移動させるだけでなく、加工ヘッド9をも第2移動装置によって移動可能に構成しても良い。
【0100】
更に、CCDカメラ10やラインセンサカメラ31を、アーム7に固定するのではなく、加工ヘッド9や基板Pに対して独立して移動可能に構成しても良い。この場合には、加工位置と検査位置とを自由に設定できるので、加工と検査とを一層効率よく実行して、全体の処理を迅速に行うことができる。
【0101】
また、上述した実施形態では、X方向に複数、Y方向に複数連設する升目状に基板Pを区画して各エリア単位で加工、検査する場合について説明したが、X方向だけに複数連設するように基板Pを区画して各エリア単位で加工、検査するように構成しても良い。この場合には、X方向一端のエリアの加工と、X方向他端のエリアの検査とをする場合を除き、X方向に隣設する2つのエリアの加工と、検査とを並行して行うことができる。
【0102】
上述した実施形態ではレーザーによって基板Pを加工する場合について説明したが、上述した加工ヘッド9に代えて、Z方向にドリルを保持し、Z方向に往復移動可能な加工ヘッドであれば、上述したのと同様に、ドリルによって基板Pを加工、検査することができる。更に、上述した実施形態では、各エリアを同じ加工パターンで加工する場合について説明したが、各エリア毎に異なるパターンであっても加工、検査することもできる。
【符号の説明】
【0103】
1,30 レーザー加工装置(加工装置)
4 ベース
5 第1移動装置(移動装置)
6 固定装置
7 アーム
8 第2移動装置(移動装置)
9 加工ヘッド
10 CCDカメラ(撮像装置、エリアセンサ)
13a 加工パターンメモリ(加工パターン記憶手段)
13c 未加工フラグ(未加工情報記憶手段)
31 ラインセンサカメラ(撮像装置、ラインセンサ)
P 基板(被加工対象)
S2,S32 加工制御手段
S12,S39 判断手段
S14,S44 再加工手段
S35,S506,S804 検査手段
S34,S502,S503,S801 撮像制御手段



【特許請求の範囲】
【請求項1】
Z方向にドリルを保持またはZ方向にレーザーを照射する加工ヘッドと、
その加工ヘッドと対向配置され、前記Z方向と直交するXY平面上に板状の被加工対象を固定する固定装置と、
その固定装置に固定された被加工対象と対向配置され、その被加工対象の加工結果を撮像する撮像装置と、
その撮像装置または前記加工ヘッドに対して、前記固定装置に固定された被加工対象を前記XY方向へ相対的に移動させる移動装置と、
前記固定装置に固定されている被加工対象に施す加工パターンを複数のエリアに区画して記憶する加工パターン記憶手段と、
その加工パターン記憶手段に記憶されている加工パターンに従って前記加工ヘッドと前記移動装置とを制御して、区画されたエリア毎に被加工対象を加工する加工制御手段と、
その加工制御手段によって被加工対象に加工された1の加工済みエリアを、前記撮像装置と前記移動装置とを制御して撮像する撮像制御手段と、
その撮像制御手段によって撮像された1の加工済みエリアの画像とその加工済みエリアの加工パターンとに基づいて、その加工済みエリアが正常に加工されたかの検査を、前記加工制御手段による他のエリアの加工と並行して行う検査手段とを備えていることを特徴とする加工装置。
【請求項2】
前記撮像装置は、光を受光する感光部が1列に配置されたラインセンサを有し、
前記撮像制御手段は、前記加工制御手段によって被加工対象の1のエリアが加工されると、前記ラインセンサを被加工対象に対して前記X方向またはY方向に相対移動させつつ前記加工済みエリアを撮像するものであり、
前記加工ヘッドは、前記ラインセンサによる前記加工済みエリアの撮像が終了した場合に、次の加工前エリアへ位置するように配設されていることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、光を受光する感光部が2次元に配置されたエリアセンサを有し、
前記加工パターン記憶手段に記憶される加工パターンは、そのエリアセンサの撮像範囲よりも狭小なエリアに区画されていることを特徴とする請求項1記載の加工装置。
【請求項4】
前記エリアセンサは、その撮像範囲の中心が前記加工ヘッドに対して前記X方向に第1長さ離間して配設され、
前記撮像制御手段は、前記加工制御手段によって被加工対象の1のエリアが加工されると、前記エリアセンサを被加工対象に対して前記X方向に第1長さ移動させた後で前記加工済みエリアを撮像するものであることを特徴とする請求項3記載の加工装置。
【請求項5】
前記エリアセンサは、その撮像範囲の中心が前記加工ヘッドに対して前記X方向に第1長さ離間して配設され、
前記撮像制御手段は、前記エリアセンサを被加工対象に対して前記X方向に第1長さ移動するX方向移動と前記Y方向に第2長さ移動するY方向移動とを有し、前記加工制御手段によって被加工対象の1のエリアが加工される毎に、前記X方向移動またはY方向移動を1回行った後で前記加工済みエリアを撮像するものであり、
前記X方向移動は、前記Y方向移動を複数回行った後に1回行われるものであることを特徴とする請求項3記載の加工装置。
【請求項6】
前記検査手段による検査結果として未加工箇所を示す未加工情報を記憶する未加工情報記憶手段と、
前記検査手段によって前記被加工対象に対する全ての検査が終了したかを判断する判断手段と、
その判断手段によって全ての検査が終了したと判断された場合に、前記未加工情報記憶手段に記憶されている未加工情報に基づいて、未加工箇所を前記加工パターンに従って再加工する再加工手段とを備えていることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の加工装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−264508(P2010−264508A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89922(P2010−89922)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】