説明

加水分解処理装置

【課題】有機系廃棄物(加工品残渣)を効率よく大量処理でき、しかも、弱毒化も容易で、液肥等の有価物も得易い加水分解処理装置を提供すること。
【解決手段】有機系廃棄物(被処理物)を加水分解させるための加水分解処理装置。加熱ジャケット18と、内部にスクリュー等の攪拌機21を備えるとともに、排気配管と接続された処理容器17とで形成された加水分解処理器15と、加熱ジャケット18内に熱媒を供給可能に接続される熱媒ボイラー23と、処理容器17内に水蒸気を供給可能に接続される水蒸気ボイラー22とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機系廃棄物(通常、加水分解点を有する。)の加水分解処理装置に関する。特に、食物連鎖の結果、重金属、農薬さらにはダイオキシン類等の有害物質の生物濃縮が発生し易い湖沼、海における底生生物(ベントス)の水産加工現場で発生する内臓・アラ等の残渣(有機系廃棄物)の加水分解処理に好適な加水分解処理装置に係る発明である。
【0002】
ここでは、有機系廃棄物として、イカやホタテ等の底生生物の水産物加工品残渣を主として例に採り説明するが、他の魚介類内臓・あら等の他の水産加工品残渣は勿論、下記のような有機系廃棄物の加水分解処理にも勿論適用可能である。
【0003】
・各種汚泥・・・下水活性汚泥、食品工場排水汚泥、グリーストラップ引抜汚泥等、
・農作物及び農作物加工品残渣・・・過剰生産による廃棄野菜、野菜クズ、カット野菜クズ、おから、街路樹の伐採枝葉、間伐材、おが屑、麦わら、稲わら、籾殻等、
・酒造、醸造、及び飲料品残渣・・・焼酎絞り粕、清酒絞り粕、ワイン等果実酒絞り粕、醤油絞り粕、茶葉、果実ジュース絞り粕等、
・その他・・・感染性医療残渣、廃プラスチック等。
【背景技術】
【0004】
上記イカやホタテ等の底生生物の水産加工品残渣は、
1) 加工工場が集中(東北北部から北海道の周辺)している。
【0005】
2)イカやホタテ等の底生生物の漁獲時期が3〜6ヶ月と時期的にも集中する。
【0006】
このため、一定の時期に大量の水産加工品残渣が発生する。
【0007】
さらに、底生生物の水産加工品(特に内臓)は、生物濃縮により有毒物質であるCd、As等を多量に含んでいることが知られている。
【0008】
このため、それらの水産加工品残渣を処理する場合、
1)短時間に大量の処理をする必要がある。
【0009】
2)処理後、Cd、As等の有害金属の溶解分離をして残渣を弱毒化する必要がある。
【0010】
等の条件を満足する必要がある。
【0011】
しかし、上記のような条件を容易に満足させる処理方法は、本発明者らは寡聞にして知らない。
【0012】
即ち、これらの水産加工品残渣は、従来、焼却・埋立又は乾燥等の方法で処理していた。しかし、それらの方法は下記のような問題点があった。
【0013】
1)焼却の場合は、大型の焼却設備が必要であり、エネルギーコストも嵩み、さらには、最近の地球温暖化抑制の見地から削減の要請が強い、CO2を大量に発生する。
【0014】
2)埋立(残渣そのまま)をする場合は、地域的に集中しているため廃棄場所の確保が非常に困難である。
【0015】
3)乾燥の場合は、常圧/減圧乾燥機を用いた乾燥では、水分が除去されるだけで、乾燥機内の有害物質は、残存したままである。このため、リサイクル(肥料化、飼料化)は、不可能で、乾燥物は焼却・埋め立てしか処理方法がなかった。
【0016】
なお、本発明の特許性に影響を与えるものではないが、特許文献1には、容器内雰囲気の初期的昇温・昇圧のための熱負荷及び加圧負荷を軽減するとともに、反応容器を大型化することなく、残渣処理量を増大させる目的で下記構成の廃棄物処理装置(加水分解処理装置)が提案されている(請求項1参照)。
【0017】
「固形物を含む有機性残渣を高温・高圧の容器内領域で加水分解して微細化又は微粉化する廃棄物処理装置において、
有機性残渣を導入可能な高温・高圧の容器内領域を備え、前記残渣を該容器内領域で攪拌して加水分解させる第1容器と、
該第1容器の容器内領域の圧力よりも低い圧力を有する高温・低圧の容器内領域を備え、
前記第1容器内で加水分解した前記残渣を高温・低圧の容器内領域で乾燥させる第2容器と、
前記第1容器内の雰囲気を解放せずに前記残渣を前記第1容器の容器内領域に導入する残渣供給装置と、
前記第1容器内の雰囲気を解放せずに前記第1容器内の前記残渣を前記第2容器の容器内領域に移動させる残渣移動装置とを有することを特徴とする廃棄物処理装置。」
【0018】
さらに、上記特許文献1の<背景技術>の項に、加水分解装置に係る先行技術文献として、特許文献2・3が紹介されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開2008−246300号公報
【特許文献2】特開2003−306825号公報
【特許文献3】特開2003−47409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、上記にかんがみて、有機系廃棄物(加工品残渣)を効率よく大量処理でき、しかも、弱毒毒化も容易で、液肥等の有価物も得易い加水分解処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をした結果、下記構成の加水分解処理装置に想到した。
【0022】
有機系廃棄物(被処理物)を加水分解させるための加水分解処理装置であって、
加熱ジャケットと、内部に攪拌手段を備えるとともに排気配管と接続された処理容器とで形成された加水分解処理器を備え、
前記加熱ジャケット内に熱媒を供給可能に熱媒ボイラーが接続されているとともに、前記処理容器内に蒸気を供給可能に水蒸気ボイラーが接続されている、
を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の加水分解処理装置でイカ、ホタテ等の底生生物の水産加工に際して発生する残渣を処理した場合、
1)1回の処理時間が短い。
【0024】
2)Cd、As等の有害金属の分離が容易である。
【0025】
3)有価資源(肥料、燃料等)に変換可能である。
【0026】
等の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の加水分解処理装置を用いた高分子残渣の加水分解処理方法を示すフローシートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1のフロー図に従い、本発明の加水分解処理装置および加水分解処理方法について説明する。
【0029】
原料(処理物)の状態により破砕が必要な場合は、破砕機11を用いて、破砕する。破砕物の大きさとしては、各辺100mm以下、好ましくは10mm以下とする。
【0030】
破砕機11は、慣用のものを使用できる。イカ内臓やホタテ内臓等の水産加工物残渣を原料(被処理物)とする場合、柔らかいため、一軸回転破砕機で十分である。
【0031】
破砕された原料は、原料投入サイロ13で加水分解処理器15の処理容器17の内容積に合せ、1回分を定量的に計測、一時保存される。原料投入サイロ13の大きさ(内容積)は、処理容器17の内容積に依存し、通常、処理容器17の好ましくは1.1〜1.2倍とする。ここで、処理容器17の内容積は、後述の如く、10m3以下、望ましくは1〜10m3の範囲から適宜設定する。
【0032】
水産加工品残渣は、酸性、塩基性物質が含まれている場合が多い。このため、原料投入サイロ13は、耐腐食性を持つことが好ましい。材質としては、鋼材(SS400等)の構造体内側を、ステンレス(SUS316)等の耐食性金属やシリコーン系やフッ素系の耐薬品性高分子でライニングしたものが好ましい。
【0033】
また、加水分解処理器15の処理容器17は、処理容器17内を後述の如く高圧とするため第1種圧力容器の認定を受ける必要がある。
【0034】
加水分解処理器15は、竪型、横型のいずれでもよいが、操作性、加水分解器製造の容易性等の見地から横型とする。
【0035】
加水分解処理器15の処理容器17の内容積、直径、板厚、材質は、前記第1種圧力容器の要件で規定される。規定を満たす組合せを処理物の量に応じて決定、設計することができる。しかし、第1種圧力容器は認定工場で組立てた状態で現地まで輸送する必要がある。輸送コストを考慮すると、加水分解器の内容積は、10m3以下が好ましい。
【0036】
処理容器17の耐圧性能は、高ければ高いほど様々な可能性を持っている。しかし、残渣を処理する場合、実用性と経済性を重視する必要がある。そのため、処理容器の耐圧性能は、通常、2〜10MPa、好ましくは、3〜8MPaとする。
【0037】
加水分解処理器15の処理容器17で残渣を処理する場合、高温、高圧かつ強酸性、強塩基性条件化で処理する場合が多い。このため、原料投入サイロ13と同様に、処理容器17は、内面を耐圧構造体内側を耐薬品性ステンレス(SUS316)やフッ素系やシリコーン系の高分子材の薄板でライニングしたものが好ましい。
【0038】
処理容器17が図例の横型の場合、加水分解処理器15の原料投入口19は、上部が好ましい。通常、原料投入と同時に攪拌を開始する場合に、処理容器17側面からの投入では、攪拌機21が邪魔になり、投入が困難である。
【0039】
原料投入口19は、耐圧バルブ20で開閉する必要がある。原料投入口19の閉鎖時、内圧が開口部にもかかるため、耐圧バルブ20は、5MPa以上であることが好ましい。
【0040】
原料投入口19の開口径は、処理容器17の内径の制約を受ける。該開口径は、処理容器17の内径の0.5〜0.9倍、好ましくは、0.7〜0.9倍とする。例えば、処理容器17の内径を100cmとしたとき、原料投入口19の開口径は70〜90cmとする。
【0041】
なお、感染性医療残渣等破砕前処理が困難なものはそのまま投入可能な様に投入口の大きさを変更する必要がある。と同時に、開口径が確保できるように、処理容器17の内径を相対的に大きくする必要がある。
【0042】
処理容器17内に配設する攪拌機(解砕混合手段)21は、公知の形態のものが使用可能である。中でもパドル式又はスクリュー式、特に、スクリュー式が好ましい。これらの攪拌機は、処理容器内の高粘度・高重量原料である水産加工品残渣を解砕しながら攪拌し、かつ、均一化できる。さらに、横型の処理容器17内に、スクリュー式の攪拌機21を配設した場合、製品(処理済み品:反応生成物)を、一端原料排出口15aへ容易に搬送可能なためである。
【0043】
例えば、内径:100cm、内側全長:250cmの処理容器にスクリュー式の攪拌機21を配設する場合の仕様は、攪拌羽根の外径:95〜98cm、ピッチ:5〜8回転(30〜50cm)、羽根形状:扇型乃至パドル型とする。
【0044】
攪拌機21の回転速度は、スクリュー式の場合、0.1〜50rpm、好ましくは0.5〜10rpmの範囲で原料の形態に応じて適宜設定する。これは、攪拌混合と同時に破砕、せん断を行うためである。即ち、攪拌速度より攪拌トルクを重視するためである。
【0045】
攪拌は、原料投入と同時に開始することが好ましい。攪拌は原料の状態によって、加水分解処理器15の反応時間内であれば、攪拌運転の開始時・完了時は適宜設定でき、攪拌運転は連続・間欠のいずれでもよい。なお、攪拌運転は、所定時間ずつ正・逆回転(例えば、5〜8回毎)するように、回転方向を、正・逆をタイマーで制御して行なうことが望ましい。一定方向のみ回転させると、原料が一方に偏り、攪拌による均一の解砕・混合が困難となるためである。
【0046】
なお、原料の含水率(湿量基準:以下同じ。)は、通常、50%以上と高いため、水分調整材を原料と同時に投入する。水分調整材としては、吸水性とともに、加水分解で溶出させた有害金属イオン(Cd2+、As3+)等を吸着可能な吸着剤を使用することが望ましい。吸着剤としては、無機系吸着剤でもよいが、有機系吸着剤が望ましい。有機系吸着剤は、産業廃棄物を利用できるとともに加水分解でき、さらに、加水分解処理後の固液分離により生成する固形分の焼却処分が容易なためである。有機系吸着剤としては、例えば、おが屑、籾殻、木材チップ、麦わら、稲わら等が適当である。また、無機系吸着剤としては、消石灰、ゼオライト、軽石等が適当である。
【0047】
水分調整材の含水率は、30%以下、好ましくは15%以下とする。
【0048】
原料及び水分調整材投入後、処理容器17内に貫流ボイラー(水蒸気ボイラー)22から蒸気を送り、処理容器内部を所定圧及び温度に加圧・昇温後、貫流ボイラー22からの該処理容器17内への蒸気供給を停止する(予備加熱加圧工程)。そのときの条件は、例えば、0.198〜1.55MPa×120〜200℃とする。
【0049】
貫流ボイラー22は、蛇腹管を加熱源内を貫通させて蒸気を発生させる水管ボイラーの一つで、各種タイプのボイラーを使用可能である。該処理容器17内を前記内圧・温度に調整できる能力を備えて入るものなら特に限定されない。なお、貫流ボイラー22の能力は、処理容器17の容量及び昇温時間に依存する。好ましくは、発生蒸気量が1ton/時間以上とする。なお、水蒸気ボイラーは図例の如く、付設させてもよいが、高能力を有すれば工場用ボイラーから直接的に導入することも可能である。
【0050】
次いで、加熱ジャケット18に熱媒ボイラー23から熱媒を送入して、処理容器17内を200〜300℃×1.55〜8.59MPa(望ましくは220〜280℃×2.32〜6.41MPa)に昇温させる(本加熱加圧工程)。熱媒の設定温度は250℃以上、好ましくは300℃以上とする。外部からの間接加熱により、処理容器17内を短時間(例えば、30分以内)に所定温度、所定圧まで達成させることが可能となる。
【0051】
熱媒ボイラー23に用いる熱媒は、慣用のものが使用可能である。沸点200℃以上、好ましくは250℃以上、更に好ましくは沸点300℃以上の熱媒である。具体的には、ビフェニル・ジフェニルエーテル系、アルキルビフェニル、アルキルナフタレン、シリコーン油等を主成分とするものを挙げることができる。
【0052】
前述の如く、処理容器17内は、200℃以上、望ましくは220℃以上とする必要があるため、熱媒は、設定温度以上に加温する必要がある。このとき、熱媒の沸点以下であれば、輸送圧以外の圧力が加水分解処理器15のジャケット18に負荷されることが無い。このため、ジャケットの耐圧性能は、1MPa以下で設計、製造可能となる。これは、該容器製造コストを大きく低減することになる。
【0053】
該加熱ジャケット18は、上記理由から、処理容器17の如く、第1種圧力容器の規格を満たす必要は無い。しかし、熱媒循環に必要な気密性及び耐圧性の確保は必要である。
【0054】
該加熱ジャケット18の内容積は、処理容器17の内容積の0.1〜20倍とする。好ましくは0.8〜5倍とする。加熱ジャケット18の内容積が小さいと、供給熱量が不足し、該容器を所定温度に昇温するための時間が長くなる問題点が発生し易い。他方、加熱ジャケット18の内容積が大きくなると、加熱ジャケット18の外径が大きくなって、加水分解処理器15自体が大きくなるため、必要な熱量を供給可能な範囲で可及的に加熱ジャケット18の内容積は小さいことが望ましい。
【0055】
熱媒を加熱する熱媒ボイラー23は、既存のものが使用可能である。熱媒ボイラーの発生熱量能力は、加水分解器の容量によって異なるが、400,000kcal以上の能力を持つものが好ましい。
【0056】
処理容器17内は、所定温度・圧(例えば200℃×1.55MPa)に到達後、熱媒の加熱ジャケット18への供給を一旦停止した後、熱媒(例えば250℃)を間欠供給して前述の設定温度、設定圧力に30〜120分間維持する。
【0057】
こうして、加水分解処理を終了する。当該加水分解処理により、原料は加水分解されて(水分調整材が有機系の場合は、水分調整材も)、Cd、As等は液成分中に溶出するが、未加水分解の吸着剤に吸着されて固形分側に移動する。このため、液成分は弱毒化されて液肥として有価物となる。
【0058】
加水分解処理終了後、30〜60分かけて、処理容器17内の圧力を、排気口17bに接続された排気配管26を介して常圧(0.1MPa)まで解放する。解放蒸気は、一部飛沫同伴的に粉塵も搬送する。このため、排気系の途中で、遠心分離式であるサイクロン(凝集体/気体分離器)24で凝集体(凝集液体および粉塵)の回収を行った後、必要に応じ、脱臭器25による脱臭を行い、蒸気のまま外部に放出する。なお、サイクロン24の外周は加熱しておけば、凝集液体は蒸気化してサイクロン24下部から回収されるのは殆ど粉状固体物(粉塵)である。
【0059】
なお、サイクロンは、通常、構造が簡単な接線型サイクロンを用いるが、軸流サイクロンでもよい。また、サイクロンを並列してマルチクロンとしてもよい。
【0060】
サイクロン(凝集体/気体分離器)24は、230℃×2.79MPaの蒸気を150℃×0.476MPa程度まで減圧できる能力を備えている必要がある。このため、圧力解放容量は、該処理容器17の容量の0.5〜1.5倍が好ましい。これは、該減圧能力を持つために必要な容量である。
【0061】
脱臭器25は、吸着型の既存装置を使用することができる。吸着材としては、活性炭、石灰、ゼオライト等、臭いの成分に応じて、選択する。
【0062】
製品(反応生成物)は、処理容器17の前部の製品取出し開口部の取出し蓋部17aから攪拌機(スクリュー)21を逆回転させ、搬出する(製品回収工程)。
【0063】
反応生成物(製品)が固液混合系の場合は、汎用の固液分離手段で、固液分離をする。固液分離手段としては、例えば、浮上・沈降分離、フィルタープレス、遠心分離等がある。
【0064】
該固形分は、水分調整材が有機系の場合は、焼却処分後の灰分を、無機系の場合は、そのまま、管理型最終処分場に埋め立て廃棄する。
【0065】
処理済み物の残水分量が多い場合、加熱ジャケット18に熱媒を送入、加温することにより、処理容器17内で乾燥することができる。
【0066】
また、原料の水分が低く、原料投入時に水分調整材として吸着剤を投入しない場合は、加水分解生成物は殆ど実質的に液分のみとなる。この場合、液分中に有害重金属が溶解していると考えられるため、前述に例示した吸着剤を投入して、有害重金属を吸着剤に吸着分離後、固液分離手段(浮上・沈降分離、フィルタープレス、遠心分離等)により固液分離して、液分を弱毒化して、液肥等として使用可能とすることができる。
【実施例】
【0067】
本発明をさらに理解するために行なった実施例1・2について、以下に説明する。
【0068】
<実施例1>
加熱ジャケット18を備えた加水分解処理器15の処理容器(容量200dm3)17に、イカ内臓(原料)70kg(70 dm3)とおが屑70kg(100 dm3)を攪拌しながら、投入した。投入後、該処理容器17内に、貫流ボイラー(油焚き、発生蒸気2ton/時間)22から蒸気を送入し、処理容器17内を0.9MPa、170℃とした。ついで、熱媒ボイラー23から加熱ジャケット18に熱媒(280℃)を送入し、処理容器17内を加熱した。処理容器17内が200℃(1.55MPa)に達した時点で、加熱ジャケット18への熱媒供給を一旦停止した。その後は、熱媒(250℃)を間欠供給して、処理容器17内温度を220℃に維持した。加水分解反応保持時間は、30分間とした。加水分解処理(反応終了)後、該処理容器17内を大気圧まで減圧し、製品(処理済み品、反応生成物)を取り出した。
【0069】
製品(反応生成物)として、固形分(湿量基準含水率:30%)90kg、液分50kgが得られた。得られた固形分・液分についてCd、As含量を測定したところ、大部分は固形分から検出され、液分からは検出不能であった。
【0070】
固形分は、燃焼試験を行ったところ、約3000kcal/kgの燃焼熱を持ち、自燃性が認められた。補助燃料として、有用であると考えられる。
【0071】
液体は、大量にイカ内臓の加水分解物を含んでおり、液肥として有用であると考えられる。
【0072】
<実施例2>
実施例1におけるのと同じ加水分解処理装置を用いて、処理容器17に、イカ内臓(原料)70kg(70 dm3)と消石灰70kg(70 dm3)を攪拌しながら、投入した。なお、消石灰は、顆粒状(平均粒径:0.5mm)のものを用いた。投入後、実施例1と同様の条件で昇温、加圧して加水分解処理を行った。加水分解処理後、該処理容器17内を大気圧まで減圧し、製品(処理済み品、反応物)を取り出した。
【0073】
反応物は、固形分(湿量基準含水率:20%)100kg、液分40kgが得られた。得られた固形分・液分について、Cd、As含量を測定したところ、大部分は固形分から検出され、液分からは検出不能であった。
【0074】
固形分は、燃焼試験を行ったところ、約3000kcal/kgの燃焼熱を持ち、自燃性が認められた。補助燃料として、有用であると考えられる。
【0075】
液体は、大量にイカ内臓の加水分解物を含んでおり、液肥として有用であると考えられる。
【符号の説明】
【0076】
11 破砕機
13 原料投入サイロ
15 加水分解処理器
17 処理容器
18 加熱ジャケット
19 原料投入口
21 攪拌機(破砕混合手段)
23 サイクロン(凝集体/気体分離器)
25 脱臭器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系廃棄物(原料)を加水分解させるための加水分解処理装置であって、
加熱ジャケットと、内部に攪拌手段を備えるとともに排気配管と接続された処理容器とで形成された加水分解処理器を備え、
前記加熱ジャケット内に熱媒を供給可能に熱媒ボイラーが接続されるとともに、前記処理容器内に蒸気を供給可能に水蒸気ボイラーが接続されている、
ことを特徴とする加水分解処理装置。
【請求項2】
前記熱媒ボイラーが沸点200℃以上の高温用熱媒を循環させるものであることを特徴とする請求項1記載の加水分解処理装置。
【請求項3】
前記攪拌手段がスクリュー式攪拌機であることを特徴とする請求項1又は2記載の加水分解処理装置。
【請求項4】
前記排気配管が集塵装置を備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の加水分解処理装置。
【請求項5】
前記処理容器の原料投入口に、破砕機と接続された原料投入サイロが接続されてなることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一記載の加水分解処理装置。
【請求項6】
前記排気配管が凝集体/気体分離器を備えて脱臭器を介して排気可能とされていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一記載の加水分解処理装置。
【請求項7】
前記凝集体/気体分離器がサイクロン式であることを特徴とする請求項6記載加水分解処理装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一記載の加水分解処理装置を用いて有機系廃棄物(原料)を加水分解処理する方法であって、
1)前記原料(被処理物)を前記処理容器内に投入して、該処理容器内を密閉状態とする原料投入工程、
2)該処理容器内に蒸気を送入して、温度120〜200℃×圧力0.198〜1.55MPaに昇温・加圧する予備加熱加圧工程、
3)該予備加熱・加圧工程に連続して、前記加熱ジャケット内を200℃以上の高温熱媒を循環させて、前記処理容器内を温度200〜300℃×圧力1.55〜8.59MPaに昇温加圧する本加熱加圧工程、
4)該本加熱加圧工程後、処理容器内の水蒸気を排出後、製品(処理済物)を排出する製品回収工程、
の各工程を含み、前記原料投入工程、予備加熱加圧工程および前記本加熱加圧工程のいずれか一工程以上において、前記被処理物の解砕混合を行うことを特徴とする有機系廃棄物の加水分解処理方法。
【請求項9】
前記原料投入工程において、前記原料の含水率(湿量基準;以下同じ。)50%以下になるように水分調整材として吸着剤を投入して調整することを特徴とする請求項8記載の有機系廃棄物の加水分解処理方法。
【請求項10】
前記製品回収工程に先立ち、前記処理容器の水蒸気排出状態を維持して、前記ジャケットに前記高温熱媒を循環させて乾燥する工程を経ることを特徴とする請求項8又は9記載の有機系廃棄物の加水分解処理方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−11129(P2011−11129A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−156188(P2009−156188)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(505200611)株式会社 伸光テクノ (3)
【Fターム(参考)】