説明

加熱ローラ、加熱ローラの製造方法、被記録媒体加熱装置、及び画像形成装置

【課題】肉厚等が大きい場合でも、両端近傍の熱容量を減少して、全体の熱容量を均一化して高品質の被記録媒体や被記録媒体に高品質の記録画像を形成する加熱ローラ、及びその加熱ローラの製造方法、その加熱ローラを備える被記録媒体加熱装置、並びに画像形成装置を提供する。
【解決手段】被記録媒体に直接または間接的に当接して加熱する中空円筒形状の芯金の胴部1と、前記胴部1の外径より細いジャーナル部2と、前記ジャーナル部2を形成する絞り加工で前記胴部1の端部に形成される厚肉部3と、前記厚肉部3の外側に形成される外側端面4と、前記外側端面4を回動軸7の内側方向に向かって所定の深さと半径方向の幅を削除して形成する溝5を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被記録媒体を加熱する加熱ローラ、およびその加熱ローラの製造方法、その加熱ローラで被記録媒体を加熱して乾燥して皴の消去や形成画像の熱定着を行う被記録媒体加熱装置、並びに被記録媒体を加熱ローラで加熱して記録画像を形成する複写機、ファクシミリ装置、プリンタあるいはこれらの複合機等の電子写真式の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ装置などにおいては、未定着トナーを被記録媒体に熱定着させるための被記録媒体加熱装置としての熱定着装置が装備され、熱定着装置内には定着ローラとしての加熱ローラを始め、コピー用紙を加熱ローラに押し付けるための加圧ローラ等が組み込まれている(特許文献3を参照)。
該熱定着装置を構成する加熱ローラとしては鉄系材料やアルミニウム合金等の金属製の芯金が多く用いられており、形状は大きく分けて胴部とジャーナル部が同一外径のストレートタイプと、ジャーナル部が胴部よりも細いジャーナルタイプに分類できる。
通常、20cpm程度までの低速機種にはストレートタイプが、それ以上の中速、高速機種にはジャーナルタイプが用いられることが多く、ジャーナルタイプの芯金は素管を金型で絞り加工した一体構造のものが普通である。
【0003】
定着ローラとしての加熱ローラは、金属製芯金の表面にPFAやPTFE等のフッ素樹脂を、あるいはプライマー層を下地としてその上にフッ素樹脂を離型層として形成している。熱定着装置内では、該離型層の表面温度を制御するための温度センサーが、離型層に接触もしくは非接触で配設されている。
加熱ローラ内部には、軸方向位置により偏光可能であるハロゲンヒーターを2本以上配設し、加熱ローラの表面温度を軸方向で極力均一になるようフィードバック制御を行っている。
中空円筒状の加熱ローラの一端が全周に亘って折り曲げられた折曲部を有するようにして、肉薄の加熱ローラを使用しても、加熱ローラが、その駆動手段との係合部において破損することがなく、加熱ローラのつぶれを防止して加熱ローラの安定した回転を行うことができる加熱装置及び定着装置も提案されている(特許文献1を参照)。
【0004】
電子写真装置に使用する他の構成の熱定着ユニットとして、加熱ローラとしての定着ローラとヒートローラとの間にベルトが設けられ、定着ローラと加圧ローラとの間に所定の加重がかけられており、ベルトと加圧ローラとの間にニップが形成されて、ヒートローラの内部にはヒータが設けられ、外面に温度センサーが配置されることも知られている(特許文献2を参照)。
更に熱定着ロールと、該熱定着ロールに押圧する加圧ロールと、該加圧ロールの外周に捲着され熱定着ロールとの間に挟持されて移動する耐熱ベルトと、該耐熱ベルトを張架するベルト張架部材とを備え、シート材に形成した未定着トナー像を定着する定着装置または画像形成装置であって、熱定着ロールは、表面に弾性体を被覆したロール基材に加熱源を内蔵し、通紙領域外の軸方向両端のロール基材の内周に加熱源からの熱線を遮断するリフレクタを設け、リフレクタにより熱定着ロールの端部が加熱されず温度が上昇するのを防ぎ、端部の温度上昇による画質の低下、生産性の低下を防ぐことも提案されている(特許文献4を参照)。
【0005】
しかしながら、上記のように、ジャーナル部を絞り加工する際に、素管の肉厚、あるいは素管の外径と絞った後のジャーナル径との比率、いわゆる塑性加工のリダクション率が、これらの数値によって絞り加工後の胴部、ジャーナル部の肉厚や形状が異なるのが一般的であり、特に素管が厚い場合などは、絞りの回数を増やし、その度ごとに軸方向に挫屈を繰り返し、胴部の端面はもともとの素管肉厚よりも厚くなる場合が多い。
さらに、胴部は芯金として外径精度を得るために切削加工を施す。相対的に胴部の肉厚は、塑性加工による変形を受けた胴部の端面の肉厚よりも遥かに薄くなる。100cpm程度以上の高速複写機の場合、定着ローラの設定肉厚は。例えば5mmから10mmくらいになるものもあり、そのための素管を絞り加工してできた胴部の端面の肉厚と、切削後の外径部の肉厚とでは、その差が10mm以上に達するものもある。
【0006】
定着ローラは定着装置内で、その表面温度が一定になるようサーミスタ温度計などで制御しているが、前述したような胴部と胴部端面とで大きな肉厚差がある場合は、その温度設定や制御が難しくなり、場合によっては胴部の中央と、胴部の端面に近い胴部の両端で著しく温度差が生じることがある。
定着ローラの内部にハロゲンヒーターを2本以上配設していて、胴部中央と両端とで極力均一な温度になるように偏光制御が行われている。このような制御が行われているのだが、肉厚や肉厚差が余りにも大きい場合、胴部の中央と両端付近において熱容量に大きな差が発生し、適切な温度制御が行われなくなってしまう。
【0007】
そうした場合、結果的に被記録媒体や被記録媒体に形成される画像の品質上において、加熱ローラ表面温度差に起因する被記録媒体や被記録媒体に形成される記録画像の定着性の品質の差が生じる。最悪状態になると記録画像の濃度むらや定着不良なども誘発し、複写機等の電子写真装置として重大な不具合を引き起こしていた。
従って、加熱ローラの素管の肉厚等が大きい場合には、加熱ローラの胴部の中央と両端付近において熱容量に大きな差が発生し、適切な温度制御が行われなくなって被記録媒体や被記録媒体に形成される記録画像の品質も低下すると言う不具合が生じている。
【特許文献1】特開2000−137400公報
【特許文献2】特開2002−40712公報
【特許文献3】特開2003−29444公報
【特許文献4】特開2005−156672公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような問題点を解決するものである。即ち、肉厚等が大きい場合でも、両端近傍の熱容量を減少して、全体の熱容量を均一化して高品質の被記録媒体や被記録媒体に高品質の記録画像を形成する加熱ローラ、及びその加熱ローラの製造方法、その加熱ローラを備える被記録媒体加熱装置、並びに画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の本発明は、被記録媒体を加熱する加熱ローラにおいて、被記録媒体に直接または間接的に当接して加熱する中空円筒形状の芯金の胴部と、前記胴部の外径より細いジャーナル部と、前記ジャーナル部を形成する絞り加工で前記胴部の端部に形成される厚肉部と、前記厚肉部の外側に形成される外側端面と、前記外側端面を回動軸の内側方向に向かって所定の深さと半径方向の幅を削除して形成する溝を備える加熱ローラであることを特徴とする。
又は、請求項2に記載の本発明は、請求項1に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、アルミニュウム合金または鉄系材料で6mm以上の肉厚を備えている加熱ローラであることを特徴とする。
又は、請求項3に記載の本発明は、請求項1または2に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、外周面上に離型層を備える加熱ローラであることを特徴とする。
又は、請求項4に記載の本発明は、請求項3に記載の加熱ローラにおいて、前記離型層は、フッ素樹脂を備える加熱ローラであることを特徴とする。
【0010】
又は、請求項5に記載の本発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、表面温度を回動軸の方向で所定温度に均一化する1個または複数個のヒータを内部に配置して備える加熱ローラであることを特徴とする。
又は、請求項6に記載の本発明は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、外周面に接触または非接触して、表面温度を制御するための温度センサーを備える加熱ローラであることを特徴とする。
又は、請求項7に記載の本発明は、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記ジャーナル部およびジャーナル根元部は、肉厚を前記胴部の肉厚と同等に備える加熱ローラであることを特徴とする。
【0011】
又は、請求項8に記載の本発明は、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記ジャーナル部は、回転駆動部材との空転止めを行う空転止形状部を備える加熱ローラであることを特徴とする。
又は、請求項9に記載の本発明は、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記厚肉部は、前記胴部と同等の肉厚を備える加熱ローラであることを特徴とする。
又は、請求項10に記載の本発明は、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記溝は、前記厚肉部の内側端面6に倣って形成する加熱ローラであることを特徴とする。
【0012】
又は、請求項11に記載の本発明は、被記録媒体を加熱する加熱ローラの製造方法において、まず請求項1乃至10のいずれか一項に記載の前記加熱ローラの芯金となるアルミニュウム合金または鉄系材料からなる中空円筒形状の素管をスウエージング加工機にセットする素管セットと、前記素管の前記ジャーナル部を絞り、前記ジャーナル部の所定のジャーナル径になるまで絞り加工を繰り返すスウエージング加工と、前記スウエージング加工の絞りの終了後に前記胴部、前記ジャーナル部、前記外側端面を形成すために切削する切削加工と、前記切削加工で形成した前記外側端面を回動軸の内側方向に向かって所定の深さと半径方向の幅を削除して溝を形成する溝形成加工と、前記溝形成加工を終了した後の後処理をする後処理加工を備える加熱ローラの製造方法であることを特徴とする。
【0013】
又は、請求項12に記載の本発明は、請求項11に記載の加熱ローラの製造方法において、前記溝形成加工は、前記溝を切削加工で形成する加熱ローラの製造方法であることを特徴とする。
又は、請求項13に記載の本発明は、請求項11または12に記載の加熱ローラの製造方法において、前記溝形成加工は、切削加工で前記胴部の外径の仕上げ切削加工と同時チャックで、NC旋盤で切削加工する加熱ローラの製造方法であることを特徴とする。
【0014】
又は、請求項14に記載の本発明は、被記録媒体を加熱ローラで加熱する被記録媒体加熱装置において、回動可能に保持されて記録画像が形成される前記被記録媒体を加熱する上記請求項1乃至10のいずれか一項に記載の前記加熱ローラを備える被記録媒体加熱装置であることを特徴とする。
又は、請求項15に記載の本発明は、被記録媒体を加熱ローラで加熱して記録画像を形成する画像形成装置において、前記被記録媒体に記録画像を形成する画像形成ユニットと、上記請求項1乃至10のいずれか一項に記載の前記加熱ローラを備える画像形成装置であることを特徴とする。
又は、請求項16に記載の本発明は、請求項15に記載の画像形成装置において、前記画像形成ユニットは、電子写真方法のプロセスで前記被記録媒体上にトナーの記録画像を形成する画像形成装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、肉厚等が大きい場合でも、両端近傍の熱容量を減少して、全体の熱容量を均一化して高品質の被記録媒体や被記録媒体に高品質の記録画像を形成する加熱ローラ、及びその加熱ローラの製造方法、その加熱ローラを備える被記録媒体加熱装置、並びに画像形成装置を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10と加熱ローラ10を備える被記録媒体加熱装置200の基本構成の正面図である。
図2は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10と加熱ローラ10を備える被記録媒体加熱装置200の基本構成の側面図である。
図1と図2において、ジャーナル部2が胴部1よりも細いジャーナルタイプの加熱ローラ10とその加熱ローラ10を備える被記録媒体加熱装置200の基本構成を説明する。被記録媒体加熱装置200である熱定着装置315は、被記録媒体(P)としての記録用紙上に形成された未定着のトナーの記録画像を加熱して定着する。回動可能に保持されて記録画像が形成された被記録媒体と被記録媒体上の未定着のトナーの記録画像を加熱して加熱定着する加熱ローラ10である定着ローラ201や図示しない加熱ローラ10で加熱される加熱定着ベルト、被記録媒体上に形成されたトナーの記録画像を加圧定着する加圧ローラ202と、案内部材203、分離部材204等を備えている。
【0017】
画像形成装置300の画像形成ユニット301内で図示の矢印(A)方向から搬送されて案内部材203に案内されて来る被記録媒体(P)は、図示の矢印(B)方向に回動する加熱ローラ10である定着ローラ201、又は、図示しない加熱定着ベルト、図示の矢印(C)方向に回動する加圧ローラ202によって形成されるニップ部(N)で加熱、加圧されて、被記録媒体(P)上に電子写真方法のプロセスで高速、高品質で形成される未定着のトナーの記録画像を熱定着させるようになっている。
この時、加熱ローラ10である定着ローラ201は、内部に配置する1個または複数個のヒータ12で加熱されて表面温度を回動軸7の方向で所定温度に均一化される。又、その時には、ヒータ12は、定着ローラ201または加圧ローラ202とは別に存在する構成にすることも出来る。外周面に接触または非接触の温度センサー13によって、加熱ローラ10である定着ローラ201の温度検知が行われて、その表面温度の制御を行って、適正な所定の加熱温度が保持されるようになっている。
【0018】
定着ローラ201と加圧ローラ202が接し、加圧スプリング205によって与えられた加圧力が加わるニップ部(N)を抜けた被記録媒体(P)は、分離部材204で定着ローラ201と加圧ローラ202への巻きつきを防止して図示の矢印(D)方向の搬送方向に案内されて搬送される。
定着ローラ201は、さらに回動して、表面に付着したトナー塊などをクリーニング手段206によって除去して、次の被記録媒体(P)上に形成される未定着のトナーの記録画像の熱定着に備える。
被記録媒体(P)を加熱する加熱ローラ10は、被記録媒体に直接または間接的に当接して加熱する中空円筒形状の芯金の胴部1と、胴部1の外径より細いジャーナル部2と、ジャーナル部2を形成する絞り加工で胴部1の端部に形成される厚肉部3と、厚肉部3の外側に形成される外側端面4と、外側端面4を回動軸7の図示の矢印(E)方向の内側方向に向かって所定の深さと半径方向の幅を削除して形成する溝5を備えている。
【0019】
加熱ローラ10は、胴部1の芯金の外周面上にプライマーを塗布した後、その上にPFAやPTFEといったにフッ素樹脂からなる離型層11を備え、アルミニュウム合金または鉄系材料で6mm以上の肉厚もあり、離型性にも優れて、100cpmの高速複写機にも搭載されるものである。
従って、加熱ローラ10は、両端面に溝5を形成して胴部1の端面の肉厚を削除することによって、胴部1の両端近傍の熱容量を低減し、胴部1の全体の熱容量を均一化することができる。
さらに加熱ローラ10は、溝50を厚肉部3の内側端面6に倣って形成して、ジャーナル部2、ジャーナル根元部20および厚肉部3の肉厚は胴部1の肉厚と同等であるから、胴部1とその端面の肉厚を均一化することができ、その結果ジャーナル根元部20から胴部1にかけて均一な剛性が得られ、応力集中に対して信頼性も高くなっている。
【0020】
ジャーナル部2には、空転止形状部21の小判カット部が形成されて回転駆動部材207の駆動歯車との空転止めを行って確実に回転駆動されるようになっている。
従って、加熱ローラ10を熱定着装置315に組み込んで搭載することで、素管肉厚の厚い高速タイプの加熱ローラ10でも胴部1の回動軸7方向において、熱容量に起因する定着性にばらつきのない、良好な被記録媒体(P)や良好な画像品質を有する低コストの被記録媒体加熱装置200である熱定着装置315を提供することが出来る。
【0021】
図3は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10の加工手順を示すフローチャートである。
図4は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10の素管セット101での正面図である。
図5は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10の肉厚が比較的薄い場合のスウエージング加工102終了後の部分断面図である。
図6は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10の肉厚が比較的厚い場合のスウエージング加工102終了後の部分断面図である。
図7は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10の切削加工103終了後の溝形成加工104での部分断面図である。
図8は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10の切削加工103終了後の溝5を厚肉部3の内側端面6に倣って形成する溝形成加工104での部分断面図である。
図9は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10の後処理加工105での正面図である。
【0022】
図3において、被記録媒体を加熱する加熱ローラ10の製造方法は、スタートで、まず請求項1乃至10のいずれか一項に記載の加熱ローラ10の芯金となるアルミニュウム合金または鉄系材料からなる中空円筒形状の素管100をスウエージング加工機にセットする素管セット101を行い(図4を参照)、素管100のジャーナル部2を絞り、ジャーナル部2の所定のジャーナル径になるまで絞り加工を繰り返すスウエージング加工102をして(図5、図6を参照)、スウエージング加工102の絞りの終了後に胴部1、ジャーナル部2、外側端面4を形成ために所定の切削ライン110まで切削する切削加工103をして(図6を参照)、切削加工103で形成した外側端面4を回動軸7の内側方向に向かって所定の深さと半径方向の幅を削除して溝5を形成する溝形成加工104をして(図7、図8を参照)と、溝形成加工104を終了した後に胴部1の外周面上に離型層11を形成する等の後処理加工105をして(図9を参照)、エンドで加熱ローラ10が完成する。
従って、素管100の肉厚等が大きい場合でも、胴部1の両端近傍の熱容量を減少して、胴部1の全体の熱容量を均一化して高品質の被記録媒体や被記録媒体上に高品質の記録画像を形成する加熱ローラ10を製造することが出来る。
図4と図5において、加熱ローラ10に通常多用されるアルミ製の芯金は、ジャーナル部2をスウェージング加工102等で絞るため、その断面形状は素管セット101でセットされる素管100の肉厚などにより様々である。
【0023】
加熱ローラ10のスウェージング加工102で肉厚が比較的薄い場合の絞り加工後の部分断面図を図5に示す。
素管100の肉厚が2mm〜5mm程度と比較的薄い場合や、素管100の外径と絞り加工後のジャーナル部2の径の差が小さい場合、要するに塑性加工のリダクション率が小さい場合は、もともとの素管100の肉厚と、胴部1の端面の肉厚およびジャーナル部2の肉厚がおおむね均一に加工できる。すなわち、図5に示したような形状を有する。
【0024】
図6において、一方、肉厚が8mmや10mm以上といった厚い素管100を絞った場合、当然素管100の剛性が高いため変形が容易ではなく、所望のジャーナル部2の径を得るまでに、絞り回数を多くしなくてはならない。これは、リダクション率が大きい場合も同じことが言える。
絞り回数を多くしていくと、その加工条件にもよるが、回動軸7の方向における素管100の坐屈を繰り返すため、その部分の回動軸7の方向の厚さ、すなわち胴部1の端面の厚肉部3が増量していく。しかも、胴部1の外径とジャーナル部2の外径は所望の寸法に仕上げるため、切削ライン110まで切削するために、ますます胴部1の端面の厚肉部3は周囲近傍の肉厚よりも相対的に厚くなっていく。
【0025】
このように、胴部1の端面の厚肉部3の肉厚が周囲よりも大きいと、前述したように回動軸7の方向の位置により、熱容量差が生じ、熱的に不均一な加熱ローラ10となる。そのため、加熱ローラ10の表面温度を均一に保てない場合は、被記録媒体や被記録媒体上に熱定着して形成する画像品質を低下させる不具合を引き起こすことになる。
以下に、これらの問題を解決するための手段を述べる。
【0026】
図6に記したような、素管100の肉厚が8mm前後ある厚肉芯金の場合、切削ライン110まで切削した後の完成品の加熱ローラ10は、胴部1の肉厚がおおむね6mm〜7mm前後、ジャーナル部2の肉厚が4mm〜5mm程度であるのに対して、胴部1の端面の厚肉部3においては、15mm以上にもなってしまう場合がある。その分、胴部1の端面部は多くの熱容量を有することになるのであるから、相当分の熱容量を除去すべく、図7に図示する該当部分の肉を削ぎ落として溝5を形成すれば良い。
胴部1の端面の内側端面6は現実的に除去加工することは困難であるから、具体的には端面の外側を相当量除去加工してやればよい。
【0027】
除去加工の方法としては、加熱ローラ10の芯金を製作する際、絞り加工のスウェージング加工102後に胴部1とジャーナル部2と外側端面4を形成するために、どのみち切削ライン110まで切削する切削加工103を入れるので、切削加工103の終了後に溝形成加工104の切削で行うのが最も簡易であり、効率的でもある。
もちろん、普通旋盤でも可能ではあるが、溝5の幅や深さなどの断面形状を任意に設定、変更でき、胴部1の外径の仕上げ切削と同時チャックで切削加工できるため、NC旋盤による加工が最も理想的である。
【0028】
図7において、次に、具体的な形状について説明する。
例えば、加熱ローラ10の胴部1の外径が80mmで、ジャーナル部2の外径が30mmである場合、胴部1の外側端面4は25mmの平坦な幅を有する。その部分に、半径方向の幅が12mm〜15mm程度、深さが6mm程度の、加熱ローラ10の回動軸7と同心円状の溝切削ライン111まで切削して溝5を形成する。
加熱ローラ10がアルミニウム芯金の場合、この程度の形状の溝5でも芯金としては70g前後も軽量化される。しかも、肉厚が大きかった胴部1の端面近傍でこれだけの質量を削除してしまうわけで、胴部1の中央付近と両端部での熱容量差を解消することに貢献できる。
【0029】
図8において、さらに、加熱ローラ10の溝5の形状は、NC旋盤であれば自由に設定できるので、以下のような形状を有する溝50の形成も可能になる。
胴部1の内側端面6は、絞り加工を行った後の形状を任意に制御できないことが多い。そのため、溝50の形成は、その内側端面6の断面形状の曲線に合わせて、厚肉部3の肉厚を胴部1と同等で端面近傍が略均一な肉厚になる溝切削ライン111となるように、NC制御のプログラムを設定して行う。内側端面6の断面形状は、芯金を切断して観察、数値化すればよい。
【0030】
普通、図1、2に図示する被記録媒体加熱装置200である熱定着装置315内においては、加熱ローラ10である定着ローラ201に対向した位置に、平行に加圧ローラ202が配設される。高速タイプの熱定着装置315では、該加圧ローラ202の加圧力は500N以上もあり、場合によっては1000N以上のものもある。
この場合、加熱ローラ10である定着ローラ201は、ベアリング208を介して加圧力を受け、その加重はジャーナル部2のジャーナル根元部20の部分に最も応力が集中する。このため、ジャーナル根元部20は必要最低限の肉厚を要求される。
おおむねジャーナル部2の肉厚は、胴部1よりも薄い。したがって、例えば、ジャーナル根元部20の最小肉厚部分をジャーナル部2の肉厚と同一とし、ジャーナル根元部20から胴部1の両端部にかけて、上述したような手段で端面肉厚を胴部1の肉厚と略同一にすれば、脆弱な部分がなく、かつ一定以上の強度を有する耐久性にも優れ低コストの加熱ローラ10である定着ローラ201を製作することができる。
【0031】
図9において、加熱ローラ10は、溝形成加工104を終了した後に胴部1の外周面上に離型層11を形成する等の後処理加工105を行い完成する。
以上のように、NC旋削により、厚肉の素管100から製作する加熱ローラ10である定着ローラ201の胴部1の端面に肉厚除去用の溝5、50を形成することで、胴部1の端部近傍の熱容量を低減し、かつ胴部1の全体的に均一化を図ることができ、被記録媒体加熱装置200である熱定着装置315等に搭載したときに、定着性等のむらのない画像品質の良い加熱ローラ10である定着ローラ201を簡易に生産し、耐久性にも優れ低コストで供給することが可能となる。
【0032】
図10は、本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラ10を備える画像形成装置300の基本構成図である。
図10において、画像形成装置300は、画像を形成する画像形成ユニット301と、画像形成ユニット301の上部に原稿画像読み取りユニット302が載置されている。画像形成ユニット301は被記録媒体給送ユニット303上に保持されている。
画像形成ユニット301は、電子写真方式の作像プロセスで利便性や汎用性に優れ高速で高品質のトナーの記録画像を被記録媒体上に形成するようになっている。
原稿画像読み取りユニット302の原稿台320に載置される原稿(O)は、光源321が図示の矢印(F)方向の右方向に移動し、このとき、原稿画像面が光源321により照明され、原稿画像が読み取り光学系322で読み取られる。
【0033】
読み取り光学系322で読み取られる原稿画像は、画像形成ユニット301の書き込みユニット312によってドラム形状の感光体ドラム310上に書き込まれる。
感光体ドラム310は、図示の矢印(G)方向の時計方向に回転し、この時帯電器311によって表面を一様に帯電され、その帯電面に書き込みユニット312により原稿画像が書き込まれる。これによって感光体ドラム310上に静電潜像が形成され、この潜像は現像ユニット313によってトナーの記録画像として可視像化される。
【0034】
一方、被記録媒体給送ユニット303から被記録媒体が感光体ドラム310に向けて給送され、転写器314によって感光体ドラム310上のトナーの記録画像が被記録媒体上に転写される。
この被記録媒体上に転写される未定着のトナーの記録画像は、熱定着装置315の加熱ローラ10である定着ローラ201と加圧ローラ202よって与えられる加熱と加圧力が加わるニップ部(N)を抜け、熱容量に起因する定着性にばらつきのない、被記録媒体に皺なども無く、良好なトナーの記録画像が形成される。
ついで良好なトナーの記録画像が形成された被記録媒体は、装置の外に排出されて排出トレイ316に収納される。
【0035】
感光体ドラム310上に残留するトナーは、クリーニングユニット317によって除去されて次工程に備えられる。
従って、肉厚等が大きい場合でも、両端近傍の熱容量を減少して、全体の熱容量を均一化して高品質の被記録媒体や被記録媒体上に高品質の記録画像を形成する加熱ローラ10を備える画像形成装置300を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラと加熱ローラを備える被記録媒体加熱装置の基本構成の正面図である。
【図2】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラと加熱ローラを備える被記録媒体加熱装置の基本構成の側面図である。
【図3】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラの加工手順を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラの素管セットでの正面図である。
【図5】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラの素管の肉厚が比較的薄い場合のスウエージング加工後の拡大部分断面図である。
【図6】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラの素管の肉厚が比較的厚い場合のスウエージング加工終了後の拡大部分断面図である。
【図7】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラの切削加工終了後の溝形成加工での拡大部分断面図である。
【図8】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラの切削加工終了後の溝を厚肉部の内側端面に倣って形成する溝形成加工での拡大部分断面図である。
【図9】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラの後処理加工での正面図である。
【図10】本発明の実施の形態例にかかる加熱ローラを備える画像形成装置の基本構成図である。
【符号の説明】
【0037】
1 胴部
2 ジャーナル部
3 厚肉部
4 外側端面
5 溝
6 内側端面
7 回動軸
10 加熱ローラ
11 離型層
12 ヒータ
13 温度センサー
20 ジャーナル根元部
21 空転止形状部
50 溝
100 素管
101 素管セット
102 スウエージング加工
103 切削加工
104 溝形成加工
105 後処理加工
110 切削ライン
111 溝切削ライン
200 被記録媒体加熱装置
201 定着ローラ
202 加圧ローラ
203 案内部材
204 分離部材
205 加圧スプリング
206 クリーニング手段
207 回転駆動部材
208 ベアリング
300 画像形成装置
301 画像形成ユニット
302 原稿画像読み取りユニット
303 被記録媒体給送ユニット
310 感光体ドラム
311 帯電器
312 書き込みユニット
313 現像ユニット
314 転写器
315 熱定着装置
316 排出トレイ
317 クリーニングユニット
320 原稿台
321 光源
322 読み取り光学系



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被記録媒体を加熱する加熱ローラにおいて、被記録媒体に直接または間接的に当接して加熱する中空円筒形状の芯金の胴部と、前記胴部の外径より細いジャーナル部と、前記ジャーナル部を形成する絞り加工で前記胴部の端部に形成される厚肉部と、前記厚肉部の外側に形成される外側端面と、前記外側端面を回動軸の内側方向に向かって所定の深さと半径方向の幅を削除して形成する溝と、を備えることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、アルミニュウム合金または鉄系材料で6mm以上の肉厚を備えていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、外周面上に離型層を備えていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱ローラにおいて、前記離型層は、フッ素樹脂を備えることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、表面温度を回動軸の方向で所定温度に均一化する1個または複数個のヒータを内部に配置して備えることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記胴部は、外周面に接触または非接触して、表面温度を制御するための温度センサーを備えることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記ジャーナル部およびジャーナル根元部の肉厚は、前記胴部の肉厚と同等であることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記ジャーナル部は、回転駆動部材との空転止めを行う空転止形状部を備えることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記厚肉部は、前記胴部と同等の肉厚を備えることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の加熱ローラにおいて、前記溝は、前記厚肉部の内側端面に倣って形成することを特徴とする加熱ローラ。
【請求項11】
被記録媒体を加熱する加熱ローラの製造方法において、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の前記加熱ローラの芯金となるアルミニュウム合金または鉄系材料からなる中空円筒形状の素管をスウエージング加工機にセットする素管セット工程と、前記素管の前記ジャーナル部を絞り、前記ジャーナル部の所定のジャーナル径になるまで絞り加工を繰り返すスウエージング加工工程と、前記スウエージング加工の絞りの終了後に前記胴部、前記ジャーナル部、前記外側端面を形成すために切削する切削加工工程と、前記切削加工で形成した前記外側端面を回動軸の内側方向に向かって所定の深さと半径方向の幅を削除して溝を形成する溝形成加工工程と、前記溝形成加工を終了した後の後処理をする後処理加工工程と、を備えることを特徴とする加熱ローラの製造方法。
【請求項12】
請求項11に記載の加熱ローラの製造方法において、前記溝形成加工工程では、前記溝を切削加工で形成することを特徴とする加熱ローラの製造方法。
【請求項13】
請求項11または12に記載の加熱ローラの製造方法において、前記溝形成加工工程では、切削加工で前記胴部の外径の仕上げ切削加工と同時チャックで、NC旋盤で切削加工することを特徴とする加熱ローラの製造方法。
【請求項14】
被記録媒体を加熱ローラで加熱する被記録媒体加熱装置において、回動可能に保持されて記録画像が形成される前記被記録媒体を加熱する上記請求項1乃至10のいずれか一項に記載の前記加熱ローラを備えることを特徴とする被記録媒体加熱装置。
【請求項15】
被記録媒体を加熱ローラで加熱して記録画像を形成する画像形成装置において、前記被記録媒体に記録画像を形成する画像形成ユニットと、上記請求項1乃至10のいずれか一項に記載の前記加熱ローラを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項16】
請求項15に記載の画像形成装置において、前記画像形成ユニットは、電子写真方法のプロセスで前記被記録媒体上にトナーの記録画像を形成することを特徴とする画像形成装置。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−286282(P2007−286282A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112733(P2006−112733)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】