加熱ローラ、定着装置、画像形成装置及び加熱定着方法
【課題】自己発電装置の発電によって得られる熱を高効率で活用するとともに、自己発電装置の小型化、ひいては定着装置又は画像形成装置のコンパクト化に寄与する。
【解決手段】感光体ドラム2上に形成されたトナー画像は転写装置6により用紙Pに転写される。画像を転写された用紙Pは、定着装置8に送られ、熱と圧力によりトナー画像を定着される。定着装置8の定着ローラ8aと加圧ローラ8bは共に、内部に自己発電装置としての燃料電池を内蔵した構成を有している。燃料電池の発電作用によって生じる熱はローラを直に加熱し、伝熱ロスを来たすことなく定着温度を得るための熱量となる。
【解決手段】感光体ドラム2上に形成されたトナー画像は転写装置6により用紙Pに転写される。画像を転写された用紙Pは、定着装置8に送られ、熱と圧力によりトナー画像を定着される。定着装置8の定着ローラ8aと加圧ローラ8bは共に、内部に自己発電装置としての燃料電池を内蔵した構成を有している。燃料電池の発電作用によって生じる熱はローラを直に加熱し、伝熱ロスを来たすことなく定着温度を得るための熱量となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ローラ、該加熱ローラを有する定着装置、該定着装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置及び加熱定着方法に関し、詳しくは、自己発電装置の発電時に生じる熱を利用する加熱ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどや、これらを備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置では、画像品質や動作速度を上げるために一時的に多くの電気エネルギーを消費し、かつ、その機能を維持するため恒常的に待機時に電気エネルギーを消費している。
さらには、電気エネルギーを使用して高度な機能や使いやすさを重視する結果、動作状態によっては、機能発揮以外の場合でも電気エネルギーを消費することが多くなっている。
特に、加熱定着装置(以下単に「定着装置」という)は、転写紙(以下「用紙」ともいう)に転写された現像剤を溶融定着させるため、定着ローラを170℃前後の高温に加熱するのに、数百W〜数kWの膨大な電気エネルギーを必要とする。また、高速印刷に対応するためには短時間で温度を上げなければならず、大量の電力が必要となる。
それは、電源オン時から印刷時、場合によっては、待機時においても必要となり、消費電力量を増加させる原因となっている。
【0003】
近年、地球環境問題が世界的に注目され、特にオゾン層破壊による地球温暖化を防止するため、その原因となるCO2(二酸化炭素)の排出を削減する働きかけが世界中の企業や地域団体で行われている。
地球温暖化防止の観点から脱石油、脱化石燃料の動きもでており、原子力や火力に大きく依存しないエネルギー供給体系の構築が世界的な目標となっている。
画像形成装置は、その製品の性格上、電源を投入したままにして使用することが多く、昨今の地球環境問題の影響も強く、消費電力量の低減が課題となっている。
そのため電子・電気部品の使用電力の消費を減らすことで、CO2の削減も狙えることから、省電力機器の開発や自己発電システムの開発を進めている。
【0004】
その代表的なものとして、極力商用電源(AC100V)から供給される電力使用を避けるため、蓄電装置や燃料電池などの自己発電装置を設け、定着装置の使用電力量を抑える提案や、燃料電池によって電力を得る際に発生する熱エネルギーを利用した画像形成装置の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、定着熱量が記録媒体に奪われることによる定着不良問題に対処すべく、燃料電池の発電で生じる電気エネルギーを定着装置の加熱源へ供給するとともに、熱エネルギーを定着前のレジストローラ対のニップ部で記録媒体に与えて記録媒体が定着部位で熱を奪うことを抑制する技術が記載されている。
特許文献2には、燃料電池の発電によって得られる電力と熱とを活用して、画像形成装置の総消費電力量を低減させるとともに、燃料電池の小型化に寄与する目的の下、発電によって生じる熱エネルギーを用紙収容部(給紙部)に供給して用紙を温め、定着部には燃料電池及び商用電源から電気エネルギーを供給し、用紙の昇温による定着部への電気エネルギーの低量化によって画像形成装置の総消費電力量を抑える技術が記載されている。
特許文献3には、燃料電池の発電によって生じる熱エネルギーを、円筒状の定着フィルム内にヒートパイプを設けてなる定着装置の該ヒートパイプに供給する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方式では、電気エネルギーが発生する際に生成される水(H2O)や窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の副生成物(特定の成分又は物質)の全て、又は、これらの一部が、発電部からレジストローラの軸を貫通する循環経路へ流入して熱を運搬することになっているため、
(1)循環経路を通過している間に冷やされてしまう虞があり、水の温度も変化するため、一定の熱を運搬することができない。
(2)発電量によって熱伝達温度が変化するので、記録媒体を暖め過ぎてしまう場合もある。
また、記録媒体を定着前に温めるとしているが、特許文献1の図1から明らかなように、転写部の上流側に伝熱手段が設けられている。つまり記録媒体に現像剤(トナー)が転写される前に記録媒体を温めることになる。この場合、
(3)温めたことによって、記録媒体の水分が低下し、抵抗値が上昇することにより、現像剤が正常に転写されないなどの画像品質不良が発生する虞がある。
(4)温度が高い状態で転写紙が転写部を通過した場合、転写時点で現像剤が溶融してしまい、正常に転写できなくなる他、転写ローラに現像剤が溶融固着して転写ローラに傷を付ける等、装置不良の原因となる虞もある。
など、多くの問題が発生することが考えられ、安全性や信頼性に欠ける懸念があった。
従って、定着前に記録媒体を温めることなく、効率良く熱を伝える方法が必要となる。
【0006】
特許文献2においても、転写部上流、つまり転写前に記録媒体を加熱する手段を備えているので、特許文献1と同様に上記(3)、(4)の問題が発生することが考えられる。
また、用紙収納部を断熱材で覆われた構成としているため、いくら排気ファンを設けたとしても記録材の水分状態や周囲の環境温度によっては、収納部が高温化することが考えられる。その状態で記録材を交換した場合、例えば、水分状態の高い記録材が収納された場合、一気に記録材内の水分が蒸発し、収納部に水滴となって付着する結露状態となってしまう虞があり、水滴によって装置の電気系統が短絡したり、水滴が記録材に付着して記録材の強度(腰)が弱くなり、搬送不良を引き起こしたりする虞もある。
従って、転写前や収納部において用紙を温める行為をすることなく、効率良く熱を利用する方法が必要となる。
特許文献3に記載の方式では、定着部が良好に定着処理を行うだけの電力を燃料電池から供給するためには、必然的に大型の燃料電池が必要となる。この場合、画像形成装置の小型化が妨げられるとともに、画像形成装置の製造やメンテナンスに要するコストも高くなってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、自己発電装置の発電によって得られる熱を高効率で活用できるとともに、自己発電装置の小型化、ひいては定着装置、画像形成装置のコンパクト化に寄与することを、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、請求項1に記載の発明は、筒体の内部に加熱手段を備え、前記筒体の外周面に接触する部材を加熱するのに用いられる加熱ローラにおいて、前記加熱手段が自己発電装置であり、前記筒体は前記自己発電装置による発電時に生じる熱エネルギーによって昇温することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する構成を有する燃料電池であり、その発電部となる電極が前記筒体内に軸方向に直列に複数配設されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置は固体高分子形燃料電池であり、前記電極は、固体高分子電解質膜と燃料極及び空気極からなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置の発電を促進させる補助加熱手段を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の加熱ローラにおいて、前記補助加熱手段が、電磁誘導の原理による誘導加熱を利用してジュール熱を発生させる構成を有し、前記筒体内にローラ中心部を軸方向に貫通するように設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを蓄える蓄電手段を有していることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の加熱ローラにおいて、前記蓄電手段に蓄えられた電気エネルギーを前記補助加熱手段に供給することを特徴とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、画像が転写された転写材の画像面に接触して画像を熱により溶融定着する定着ローラと、該定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有する定着装置において、前記定着ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、定着ローラと、加熱ローラと、これらのローラ間に掛け回された定着ベルトと、前記定着ベルトを挟んで前記定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有し、画像が転写された転写材を前記定着ニップに通して定着を行う定着装置において、前記加熱ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の定着装置において、前記加熱ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項11に記載の発明は、請求項8〜10のいずれか1つに記載の定着装置において、前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを、該定着装置を構成する電機部品を動作させるエネルギーとして利用することを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項8〜11のいずれか1つに記載の定着装置において、前記定着ローラの表面近傍に設けられた温度検知手段と、該温度検知手段により検知された値に応じて前記自己発電装置の発電量を変えることで前記定着ローラの表面の温度を制御する制御手段とを有していることを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、請求項8〜12のいずれか1つに記載の定着装置において、前記自己発電装置の発電により生じる水成分を、前記定着ニップを通過した転写材の表面にミスト状に噴霧する噴霧手段を有していることを特徴とする。
請求項14に記載の発明は、画像形成装置において、請求項8〜14のいずれか1つに記載の定着装置を有することを特徴とする。
請求項15に記載の発明は、加熱定着方法において、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラを用い、該加熱ローラからの熱により、転写材に転写された画像を定着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自己発電装置の発電によって得られる熱を高効率で活用できるとともに、自己発電装置の小型化、ひいては定着装置、画像形成装置のコンパクト化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図2】制御ブロック図である。
【図3】燃料電池を構成する単セルを示す分解斜視図である。
【図4】加熱ローラとしての定着ローラ、加圧ローラの一部切り欠きの斜視図である。
【図5】補助加熱手段の一部切り欠きの斜視図である。
【図6】定着装置の電力消費に対する温度変化推移を示す図で、(a)は従来例の場合を、(b)は本発明の場合を示す図である。
【図7】画像形成装置の電源オンから待機モードに移行するまでの制御動作を示すフローチャートである。
【図8】画像形成装置の待機モードから印刷モードに移行するまでの制御動作を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態における定着装置の概要構成図である。
【図10】水蒸気を噴霧している状態を示す定着装置の斜視図である。
【図11】第3の実施形態における定着装置の制御ブロック図である。
【図12】第5の実施形態における定着装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。まず、図1乃至図8に基づいて第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置(例えば、電子写真方式の複写機)を示す概略構成図である。
画像形成装置1における像担持体としての感光体ドラム2の周囲には、時計回り方向に順に、帯電装置3、書き込み装置(露光装置)4、現像装置5、転写装置6、クリーニング装置7が配置され、転写装置6の用紙搬送方向下流側には定着装置8が配置されている。
画像形成装置1の画像形成動作時においては、所定のプロセススピードで回転駆動される感光体ドラム2の表面を帯電装置3により一様に帯電させ、読取り装置(不図示)で読取った原稿の画像情報に応じて書き込み装置4により露光を行って静電潜像を形成した後、現像装置5のトナー(現像剤)で現像を行うことにより、トナー像が感光体ドラム2上に形成される。
【0016】
給紙カセット9から所定のタイミングで用紙搬送路10を通して転写部位(感光体ドラム2と転写装置6との間)に搬送される用紙Pに、転写装置6により感光体ドラム2上に担持されているトナー像が転写される。
トナー像が転写された用紙Pは定着装置8に搬送されて、定着ローラ8aと加圧ローラ8bとの間の定着ニップで挟持搬送されながら加熱・加圧されることにより、用紙P上にトナー像が溶融定着される。トナー像が定着された用紙Pは、排紙ローラ対(不図示)により外部に排出される。
感光体ドラム2上のトナー像が用紙Pに転写された後に感光体ドラム2の表面はクリーニング装置7のクリーニングブレード7aにより残トナーが除去されて、次の作像に供される。
【0017】
定着装置8の定着ローラ8aと加圧ローラ8bは、それぞれ内部に自己発電装置としての固体高分子形の燃料電池及び補助加熱手段を内蔵した構成を有している。燃料電池及び補助加熱手段の構成の詳細については後述する。
前述した通り、従来においては、自己発電装置(燃料電池)で生じた熱をヒートパイプや循環経路を介して定着装置へ伝える技術思想に基づいている。これは、画像形成装置において、自己発電装置を他の部品とは独立した装置部品として捉えているからである。
このため、定着装置に熱を伝えるまでに時間が掛かり過ぎてしまい、熱伝導経路が存在することによる伝導ロスによる弊害を避けられなかった。
本発明は、熱伝導経路を無くして伝導ロスを抑制し、熱利用効率を高めることとしたのである。
【0018】
各ローラの表面近傍には、温度検知手段としての温度センサ11a、11bがそれぞれ設置されており、温度センサ11a、11bにより検知される温度状態に応じて発電制御及び補助加熱制御を行うようになっている。温度センサは、できるだけ高速制御に対応可能なものが好ましく、例えば、白金測温抵抗体のような温度変化に応じて抵抗値が変化する温度センサや熱起電力効果を原理とした非接触型の赤外光熱電対(サーモパイル)センサなどが望ましく、これによって無駄のない発電、発熱制御ができる。
【0019】
従来、加熱定着装置を具備したカラー画像形成装置においては、画像形成の種類によって定着時の温度を変えて画像形成を行っている。最も代表的な事例で例えると、カラー印刷と白黒印刷であり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックといった4色の現像剤を用いたタンデム機と呼ばれる画像形成装置の場合、現像剤の転写量がカラー印刷時の方が多くなるためその分、定着温度も上げて処理を行う。
本実施形態に係る定着装置8では、発電量によって発熱量つまり、ローラ表面の温度が変化するので、所定の定着条件に対応するには、ローラ表面の温度を監視し、温度状態に合わせて発電量を制御する必要がある。
図1において、符号12aは給紙ローラ、12bはレジストローラ対をそれぞれ示している。
【0020】
図2は、画像形成装置1の動作を制御する制御系を示す概略ブロック図である。本発明に直接関わらない動作制御については省略する。
図2に示すように、制御部(計測手段)13は、温度センサ11a並びに11bから入力されるセンサ出力とメモリ14に予め記憶されている温度パラメータに基づいて、温度値を算出する。
画像形成装置1の動作全体を制御する制御手段としてのCPU15は、制御部13から出力される温度情報に基づいて、定着ローラ制御部16、加圧ローラ制御部20を制御し、検知された温度に応じて補助加熱制御部17、21の加熱温度、及び、発電量制御部18、22の水素並びに酸素の供給量を電気的に動作するポンプ(不図示)などを用いて、それぞれ制御する。
【0021】
図3は、燃料電池の電極、所謂セルの構成を説明するための斜視図である。「セル」とは、電解質30を燃料極(マイナス極)、空気極(プラス極)と呼ばれる2枚の電極31、32で挟み、さらにこれらをセパレーターと呼ばれる、水素及び、酸素をそれぞれの電極に供給する電気を通す樹脂材料でできた板33、34で挟み込んだ構成を有している。
燃料極31並びに空気極32には、触媒と呼ばれる層が成形され、この触媒層35、36に利用される材料は、白金や白金系合金が多く利用される。
電解質30は固体高分子電解質膜により薄いシート状に形成され、電気抵抗が小さく、発生した電気エネルギーのロスも少なくて済む。そのため、同じ大きさの電気を作るのに、ほかのタイプの燃料電池よりセルスタックを小さく軽くすることが可能である。
このセル1枚をセパレーターで挟み込んだ状態を単セルと呼び、単セル37を複数枚重ねたものをセルスタックと呼ぶ。
セルスタックは直列に接続することで、高い電圧と電力を得ることができ、重ねる枚数が多いほど、より高い電圧値を得ることができる。本発明では、定着ローラや加圧ローラの軸方向の長さに着目してセルスタックの長さを確保している。
図3では、セル形状をローラ形状に合わせて円形としているが、ローラ内に収納できればどの様な形状でも良い。
【0022】
図4は、定着装置8の定着ローラ8a及び加圧ローラ8bの構成を示す斜視図である。本実施形態における定着装置8は、定着ローラ8a、加圧ローラ8bがそれぞれ1づつ具備された構造としているが、定着ローラ8a、加圧ローラ8b共に同様の構成なので、1ローラ分の図で説明する。
また、同図は、内部構成を分かり易くするため、一部切り取った状態として示している。
図4に示すように、定着ローラ8a又は加圧ローラ8bは、円筒状の筒体38と、この筒体38の内部に収容された燃料電池39と、燃料電池39の中心部を軸方向に貫通する状態に設けられたIH(Induction Heating)方式の補助加熱手段40とを有している。
筒体38は、金属で形成された円筒部材42と、円筒部材42の両端部に固定されたリング43、43と、円筒部材42の外周面に被覆されたゴム層44とを有しており、全体としてはゴムローラとしてなる。円筒部材42は、熱伝達効率の良いアルミニウムや銅で加工された材質のものが最も好ましい。
【0023】
近年の画像形成装置は、その印刷動作が日々高速化している。そのため、印刷が完了するまでの各プロセスをできる限り短時間で完了させる必要がある。定着装置もその一プロセスで、印刷を行うための準備を短時間で完了させる必要があり、そのためローラを温めるにはできるだけ短時間で条件に合った温度に到達させる必要がある。
よって、熱効率の高い電磁誘導の原理による誘導加熱を利用してジュール熱を発生させる加熱源、いわゆるIHヒータを補助加熱手段として利用することが最も好ましい。
【0024】
燃料電池39は、軸方向両端部に円形のフレーム45、45を配置し、フレーム45、45間にセルスタック46を挟み、フレーム45及びセルスタック46を軸方向に貫通して折り返す供給路(パイプ)47、48で一体に結合された構成を有している。供給路47は図示しない酸素供給源に、供給路48は図示しない水素供給源にそれぞれ接続されている。
セルスタック46は、図3で説明したセルが複数配列され、電気的に直列に接続されている。
燃料電池39はその位置を固定され、フレーム45とリング43との間に設けられた図示しないベアリング構造によって筒体38のみがローラとして回転する。
筒体38の回転、すなわち実質的な定着ローラ又は加圧ローラの回転は、例えばいずれか一方のローラのリング43にギヤを形成して図示しない駆動モータの回転力を入力し、他方のローラを接触による連れ回り(従動回転)とすることができる。
なお、本実施形態では定着ローラ8aと加圧ローラ8bの双方共に燃料電池39を内蔵した省電力的に理想的な実施形態としているが、後述するように本発明の実施形態には、加圧ローラ8bに従来の一般の構造のもの(例えばハロゲンヒータを内蔵したもの、あるいは加熱源を有しないもの)も含まれる。この場合には加圧ローラ8bを駆動ローラとして定着ローラ8aを従動回転させ、あるいは定着ローラ8aのリング43にギヤを形成して図示しない駆動モータの回転力を入力し、加圧ローラ8bを従動回転させてもよい。
【0025】
各セルには、供給路47、48によってそれぞれ水素と酸素が電気的に動作するポンプ(不図示)によって供給される。発電を行う際はこの供給路47、48を通ってそれぞれのセルに酸素、水素が供給され、化学反応を起こして電気エネルギーが発生すると同時に熱エネルギーを発生する。
供給路47の出口47aからは内部にて残った水及び酸素が戻り、供給路48の出口48aからは水素が戻る構造としており、再び供給路入口より供給される仕組みとなっている。
【0026】
燃料電池39により発生した電気エネルギーは、電線ELを通じて定着装置8又は画像形成装置1に組み込まれた各電機部品へ接続され、電機部品の動力エネルギーとして利用される。
燃料電池39による発電作用の際、水素と酸素の化学反応によって、電気エネルギーを生み出すとともに水(H2O)が副生成物として生成される。この水の多くは、水蒸気となるため、酸素を供給する供給路47を通じて装置外へ排出することができる。排出された水蒸気は、液体となって回収、廃棄される(不図示)。
【0027】
図5に示すように、補助加熱手段40は、ローラの回転支軸を兼ねる金属製の軸50と、軸50の外周面の所定の範囲に螺旋状に巻かれたコイル51と、コイル51の外側を覆う金属壁52とを有しており、図2で示した定着装ローラ制御部16、加圧ローラ制御部20で制御可能に電気的に接続されている。軸50のコイル51が巻かれる部分は小径となっている。
コイル51に高周波電流を印加すると、磁界が発生する。その磁界に誘発され軸50及び金属壁52に渦電流が発生し、発熱する仕組みとなっている。
燃料電池39による発電処理が始まると同時に、燃料電池39の発電を促進する環境を作り出すために補助加熱手段40に通電がなされてローラ内部が暖められる。軸50及び金属壁52は、電気抵抗の高いものなら何でも良いが、磁界が誘発されやすく渦電流が発生し易いフェライト材料(磁性材料)で加工されたものが最も好ましい。
【0028】
加熱定着装置を構成する上では、従来のハロゲンヒータや、補助加熱手段40のようなIH方式の通電タイプの加熱手段のみで充分定着処理を行うことができ、従来はこれらの加熱手段で溶融定着するのが主流であった。
しかしながら、通電方式の加熱手段のみで溶融定着に必要な熱量を得るには、膨大な電力量を消費することを避けられない。
例えば、通電方式の加熱手段のみで定着温度を賄おうとすると、600〜1000w(ワット)の電力を必要とする。
これに対し、通電方式の加熱手段(補助加熱手段40)を燃料電池による発熱作用と併用すると、発熱作用にて発生した熱量の足りない分を補うだけなので、約半分程度の電力量で済むことになる。
従って、本発明では、通電方式の加熱手段を燃料電池による発電システムの補助加熱手段として利用することで、電力量の消費を抑えることを実現している。
さらに、補助加熱手段40への通電によって、セルの一部である、燃料極と空気極にある触媒層に用いられる白金属や白金系合金にも渦電流が発生し、発熱するので、発電、発熱作用を一層促進させることも可能となり、より少ない電力量で大きな熱量を得ることができる。
補助加熱手段40は従来のハロゲンヒータでもよいが、上記のようにIH方式とすれば燃料電池39の部品にも発熱作用を及ぼすことができるメリットがある。本実施形態ではIH方式の補助加熱手段40をローラ中央部に棒状に設ける構成としたがこれに限定される趣旨ではなく、円筒部材42の内面(すなわち燃料電池39の外面)にコイルを設ける構成としてもよい。
【0029】
図6は、画像形成装置の各動作モードにおける従来の定着装置の電力消費に対する温度変化推移と本発明における電力消費に対する温度変化推移の一例を表した図である。
従来の電力消費では、図6(a)に示すように、電源オン時のウォームアップ動作時に定着ローラを百数十℃まで上昇させるため、大量の電力が必要となる。次に、上昇した温度を維持する必要があるので、この間電力を消費し続ける。
印刷がすぐに実行されないと判断されると、待機モードに変わり電力消費は低下するが、一定の温度を維持する必要があるため、完全にオフされるわけではない。また、このとき加圧ローラ側の温度を上昇させるので、今度は加圧ローラ側の電力を消費することになる。
そして、実際に印刷が実行されると、再度定着ローラの加熱が必要になるので、さらに電力を消費する。従って、定着装置は全ての動作モードにおいて、常に電力を消費していることになる。
【0030】
次に、本発明の電力消費に対する温度変化推移を図6(b)に基づいて説明する。説明を解りやすくするため、従来と同様の動作モードを取った場合と仮定して説明する。
まず、電源オン時にてウォームアップ動作が行われる。このとき、補助加熱手段40による加熱動作が行われるが、発電作用を促すためなので、60℃前後になるように加熱制御を行う。このとき既に燃料電池39による発電処理は始まっており、温度が上昇するに連れて、発電が活発になり、発熱温度も上昇する。
発電作用による発熱により、内部温度も上昇しているので、補助加熱手段40の電力は完全にオフできる。その後は、発電制御を続け、温度を維持する。
待機モードでは、自己発電をしているだけで商用電源による電力を消費していないので、温度を下げる必要もなく、同様の制御を行う。
印刷モードでは、水素と酸素の供給量を上げることで、発電作用を活発化させ、発熱量を上昇させる。
このとき、印刷速度に対して発熱温度上昇速度が間に合わない場合があるため、補助加熱手段40による加熱制御を実施するが、温度が足りない分を加熱するだけなので、電力消費量は極めて少なくて済む。
【0031】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の電源オンから待機モードに移行するまでの制御方法を図7に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、装置の電源がオンされると(S1)、定着ローラ並びに加圧ローラ表面のそれぞれの温度が温度検知手段によって測定され(S2)、測定温度xが設定温度T1以上が否かが判断される(S3)。
x≧T1の場合は、ステップS8へ移行し、x<T1の場合は、水素及び酸素の供給を行い、発電を開始する(S4)。ステップS4とほぼ同じタイミングで補助加熱手段40をオンし、ローラ内部の加熱を開始して内部温度を上昇させ、発電作用を促進させる(S5)。このときの設定温度T1とは、前述した60℃前後の温度設定値である。
一定の時間間隔でローラ表面温度を測定し(S6)、測定温度xと設定温度T1の関係をステップS7にて判定する。
その結果、x≧T1の場合は、ステップS8へ移行し、補助加熱手段40の加熱制御をオフし、x<T1の場合は、ステップS6からの処理を一定時間間隔で繰り返す。
補助加熱手段40の加熱制御がオフされた後、ローラ表面温度が任意の設定温度以下にならないように、水素並びに酸素の供給量を調整して発電制御を継続し、待機状態となる(S9)。
【0032】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の待機モードから印刷モードに移行するまでの制御方法を図8に示すフローチャートを参照して説明する。
印刷処理が開始されると(S11)、定着ローラ並びに加圧ローラそれぞれの表面温度が温度検知手段によって測定され(S12)、測定温度xが設定温度T2以上か否かが判断される(S13)。
x≧T2の場合は、ステップS18へ移行し、x<T2の場合は、ステップS14に移行して、水素及び酸素の供給量を増やし、発電量を増加させると同時に発熱量を増加させる(S14)。
さらにステップS14とほぼ同じタイミングで、補助加熱手段40をオンし、ローラ内部の加熱を開始し内部温度を上昇させてローラ温度を上昇させる(S15)。このときの設定温度T2とは、溶融定着を行うのに必要な170℃前後の温度設定値である。
一定の時間間隔でローラ表面温度を測定し(S16)、測定温度xと設定温度T2の関係をステップS17で判定する。その結果、x≧T2の場合は、ステップS18へ移行し、補助加熱手段40の加熱制御をオフし(S18)、x<T2の場合は、ステップS16からの処理を一定時間間隔で繰り返す。
印刷処理が継続されるか否かが判断され(S19)、継続の場合にはステップS15からの処理を繰り返し、終了する場合は、ローラ表面温度が任意の設定温度以下にならないように水素並びに酸素の供給量を調整しながら発電制御を継続し、待機状態となる(S20)。
【0033】
図9及び図10に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、既に説明した構成上及び機能上の説明は特に必要がない限り省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図9は本実施形態に係る定着装置8’の概要断面図、図10は噴霧状態を示す斜視図である。加熱定着されたことによって用紙P内の水分が蒸発し、用紙Pの水分率が低下する。これにより、用紙Pの抵抗値が高くなってしまう。抵抗値が高くなってしまうと転写プロセスの際に、転写率が低下してしまうので、例えば、両面印刷の際、裏面印刷時の画像品質不良などが発生する確率が高くなる。
また、用紙Pが加熱されたことによって、用紙P内のパルプ繊維が収縮し、用紙P全体に反りが生じカールしてしまう。画像形成装置内でこのような現象が発生すると、用紙Pが移動する搬送路上を正常に通過することができず、ジャムとなり搬送不良を引き起こす虞がある。
【0034】
前述した通り、燃料電池39による発電作用の際、電気エネルギーとともに水(H2O)が副生成物として生成され、水の多くは水蒸気として装置外へ供給路を通じて排出される。
本実施形態では、水蒸気が通る出口側の酸素供給路47a、47aを、定着処理が完了する定着ニップの下流側において、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に延びるように配管し、用紙Pと対面する経路部分に無数の小さな穴(不図示)を設け、現像剤を溶融定着された直後の用紙P表面にミスト状に噴霧するようにしている。定着ローラ8a、加圧ローラ8bの酸素供給路47a、47aは噴霧手段としてなる。
【0035】
定着直後の用紙Pに水蒸気を噴霧するので、用紙Pの腰が弱くなり搬送不良が起きてしまう程水分を付与することもなく、また、用紙P自体が加熱定着直後で高温状態となっているので、水分を付与し過ぎた分は再蒸発してくれるので、適度な水分状態となる。
従って、加熱定着直後の転写紙(用紙P)に水分を噴霧することで、転写紙の低水分状態を緩和することができ、裏面印刷の際に発生する画像品質不良を防止することが可能となる。
噴霧された水蒸気は用紙P内に浸透するため、用紙Pに対する水蒸気の噴霧は片面でも良いが、高速機の場合には搬送速度が速いために片面だけでは適度な保湿状態とすることが困難な場合があり、この観点から本実施形態では両面噴霧構成としている。
噴霧することで、画像品質の不良防止やカール抑制ができるだけでなく、発電作用によって発生した副生成物としての水成分廃棄量を減らすことができるという利点もある。
【0036】
図11に第3の実施形態を示す。
基本制御は、図2と同様なので重複する説明及び、図は省略する。また、本実施形態に直接関わらない基本的な動作制御についても省略する。
本実施形態では、定着ローラ及び加圧ローラ内の発電部19並びに23の発電作用によって得られた電気エネルギーを、画像形成装置1の内部に設置された蓄電手段としての蓄電装置24に一時的に蓄え、制御手段としてのCPU21から要求があった場合に必要な電力を画像形成装置1の各電機部品に供給することを特徴とする。
蓄電装置24としては、電気エネルギーを蓄えることが可能な、化学反応によって電荷を蓄積する二次電池などでも良いが、物理的に電荷を蓄積できる電気二重層キャパシタの原理を利用したものが、充放電効率や安全性、信頼性が高いので最も好ましい。
これにより、必要なときに電力が供給できるので、例えば省電力設定された状態の微小な電力消費の際は、この蓄電装置24より供給された電気エネルギーで賄うことができ、より効率的な電力消費が可能となる。
【0037】
図4に二点鎖線で示すように、蓄電装置24を、定着ローラ8aの酸素等の供給側と反対側のフレーム45に一体に設け、蓄えられた電気エネルギーを補助加熱手段40やその他の定着装置8の電機部品に供給するようにしてもよい(第4の実施形態)。このようにすれば、自己発電による電力自給型の定着装置を実現できる。
上記各実施形態では、定着装置8を、定着ローラと加圧ローラが対向する熱ローラ方式として例示したが、ベルト定着方式としても同様に実施することができる(第5の実施形態)。図12にその一例を示す。
本実施形態における定着装置8”は、定着ローラ60と、上記定着ローラ8aと同様に燃料電池39を内蔵した加熱ローラ61と、定着ローラ60と加熱ローラ61とに掛け回された無端状の定着ベルト62と、定着ベルト62を挟んで定着ローラ60との間で定着ニップを形成する加圧ローラ63とを有している。加圧ローラ63も定着ローラ8aと同様の構成を有している。
【0038】
第1〜第4の実施形態においては、定着ローラ、加圧ローラ共に燃料電池39を内蔵する理想的な省電力構成としたが、いずれか一方の熱源は従来の通電ヒータとしてもよく、この場合でも従来に比べて熱効率を高めることができ、省電力を向上させることができる。
同様に、第5の実施形態における加熱ローラ61と加圧ローラ63のうちいずれか一方の熱源を従来の通電ヒータとしてもよい。
【0039】
以上の通り、本発明によれば、ローラ内に自己発電装置を一体に設ける構成としたので、伝熱ロスを低減して熱効率を高めることができ、定着に係る省電力化を実現できるとともに、良好な定着を行うことができる。
自己発電装置を別途配置する必要がないので、定着装置のコンパクト化、ひいては画像形成装置のコンパクト化を実現できる。
補助加熱手段を用いることにより、画像形成プロセス時間のロスをなくし、短時間で条件に合った温度に到達できるので効率の良い発電、発熱制御が可能となり、良好な定着温度条件に合った現像剤の溶融定着が可能となる。
転写紙の水分を補うことで、画像品質不良や搬送不良を防止することができ、装置の信頼性向上に寄与できる。
発電作用によって得られた電気エネルギーを、定着装置及び画像形成装置を構成する電機部品を動作させる動力エネルギーとして利用できるので、商用電源AC100Vからの電力消費を抑えることができ、電力消費量が極めて少ない画像形成装置を提供することが可能となる。
また、発電作用によって得られた電気エネルギーを、蓄電装置によって一時的に蓄えることによって、必要なときに必要な部分の電機部品を動作させる動力エネルギーとして利用でき、発電による電気エネルギーを有効に活用できる。
【0040】
なお、上記した各実施形態では画像形成装置の定着装置について説明したが、これ以外にも、例えば紙の抄造における乾燥工程やラミネートシート材の薄膜化工程など、回転ローラ(加熱ローラ)を用いて加熱処理される工程などの電力量を膨大に消費する工程等において、同様に本発明を適用することが可能である。
また、モノクロ機での実施例を示したが、タンデム機等のカラー画像形成装置においても同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
8、8’、8” 定着装置
8a 定着ローラ
8b 加圧ローラ
11a、11b 温度検知手段としての温度センサ
24 蓄電手段としての蓄電装置
38 筒体
39 自己発電装置としての燃料電池
40 補助加熱手段
60 定着ローラ
61 加熱ローラ
62 定着ベルト
63 加圧ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2006−106248号公報
【特許文献2】特開2008−122780号公報
【特許文献3】特開2003−270980号公報
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ローラ、該加熱ローラを有する定着装置、該定着装置を有する複写機、プリンタ、ファクシミリ、プロッタ、これらのうち少なくとも1つを備えた複合機等の画像形成装置及び加熱定着方法に関し、詳しくは、自己発電装置の発電時に生じる熱を利用する加熱ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ、ファクシミリなどや、これらを備えた複合機等の電子写真方式の画像形成装置では、画像品質や動作速度を上げるために一時的に多くの電気エネルギーを消費し、かつ、その機能を維持するため恒常的に待機時に電気エネルギーを消費している。
さらには、電気エネルギーを使用して高度な機能や使いやすさを重視する結果、動作状態によっては、機能発揮以外の場合でも電気エネルギーを消費することが多くなっている。
特に、加熱定着装置(以下単に「定着装置」という)は、転写紙(以下「用紙」ともいう)に転写された現像剤を溶融定着させるため、定着ローラを170℃前後の高温に加熱するのに、数百W〜数kWの膨大な電気エネルギーを必要とする。また、高速印刷に対応するためには短時間で温度を上げなければならず、大量の電力が必要となる。
それは、電源オン時から印刷時、場合によっては、待機時においても必要となり、消費電力量を増加させる原因となっている。
【0003】
近年、地球環境問題が世界的に注目され、特にオゾン層破壊による地球温暖化を防止するため、その原因となるCO2(二酸化炭素)の排出を削減する働きかけが世界中の企業や地域団体で行われている。
地球温暖化防止の観点から脱石油、脱化石燃料の動きもでており、原子力や火力に大きく依存しないエネルギー供給体系の構築が世界的な目標となっている。
画像形成装置は、その製品の性格上、電源を投入したままにして使用することが多く、昨今の地球環境問題の影響も強く、消費電力量の低減が課題となっている。
そのため電子・電気部品の使用電力の消費を減らすことで、CO2の削減も狙えることから、省電力機器の開発や自己発電システムの開発を進めている。
【0004】
その代表的なものとして、極力商用電源(AC100V)から供給される電力使用を避けるため、蓄電装置や燃料電池などの自己発電装置を設け、定着装置の使用電力量を抑える提案や、燃料電池によって電力を得る際に発生する熱エネルギーを利用した画像形成装置の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、定着熱量が記録媒体に奪われることによる定着不良問題に対処すべく、燃料電池の発電で生じる電気エネルギーを定着装置の加熱源へ供給するとともに、熱エネルギーを定着前のレジストローラ対のニップ部で記録媒体に与えて記録媒体が定着部位で熱を奪うことを抑制する技術が記載されている。
特許文献2には、燃料電池の発電によって得られる電力と熱とを活用して、画像形成装置の総消費電力量を低減させるとともに、燃料電池の小型化に寄与する目的の下、発電によって生じる熱エネルギーを用紙収容部(給紙部)に供給して用紙を温め、定着部には燃料電池及び商用電源から電気エネルギーを供給し、用紙の昇温による定着部への電気エネルギーの低量化によって画像形成装置の総消費電力量を抑える技術が記載されている。
特許文献3には、燃料電池の発電によって生じる熱エネルギーを、円筒状の定着フィルム内にヒートパイプを設けてなる定着装置の該ヒートパイプに供給する技術が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の方式では、電気エネルギーが発生する際に生成される水(H2O)や窒素酸化物(NOx)、硫黄酸化物(SOx)等の副生成物(特定の成分又は物質)の全て、又は、これらの一部が、発電部からレジストローラの軸を貫通する循環経路へ流入して熱を運搬することになっているため、
(1)循環経路を通過している間に冷やされてしまう虞があり、水の温度も変化するため、一定の熱を運搬することができない。
(2)発電量によって熱伝達温度が変化するので、記録媒体を暖め過ぎてしまう場合もある。
また、記録媒体を定着前に温めるとしているが、特許文献1の図1から明らかなように、転写部の上流側に伝熱手段が設けられている。つまり記録媒体に現像剤(トナー)が転写される前に記録媒体を温めることになる。この場合、
(3)温めたことによって、記録媒体の水分が低下し、抵抗値が上昇することにより、現像剤が正常に転写されないなどの画像品質不良が発生する虞がある。
(4)温度が高い状態で転写紙が転写部を通過した場合、転写時点で現像剤が溶融してしまい、正常に転写できなくなる他、転写ローラに現像剤が溶融固着して転写ローラに傷を付ける等、装置不良の原因となる虞もある。
など、多くの問題が発生することが考えられ、安全性や信頼性に欠ける懸念があった。
従って、定着前に記録媒体を温めることなく、効率良く熱を伝える方法が必要となる。
【0006】
特許文献2においても、転写部上流、つまり転写前に記録媒体を加熱する手段を備えているので、特許文献1と同様に上記(3)、(4)の問題が発生することが考えられる。
また、用紙収納部を断熱材で覆われた構成としているため、いくら排気ファンを設けたとしても記録材の水分状態や周囲の環境温度によっては、収納部が高温化することが考えられる。その状態で記録材を交換した場合、例えば、水分状態の高い記録材が収納された場合、一気に記録材内の水分が蒸発し、収納部に水滴となって付着する結露状態となってしまう虞があり、水滴によって装置の電気系統が短絡したり、水滴が記録材に付着して記録材の強度(腰)が弱くなり、搬送不良を引き起こしたりする虞もある。
従って、転写前や収納部において用紙を温める行為をすることなく、効率良く熱を利用する方法が必要となる。
特許文献3に記載の方式では、定着部が良好に定着処理を行うだけの電力を燃料電池から供給するためには、必然的に大型の燃料電池が必要となる。この場合、画像形成装置の小型化が妨げられるとともに、画像形成装置の製造やメンテナンスに要するコストも高くなってしまう。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、自己発電装置の発電によって得られる熱を高効率で活用できるとともに、自己発電装置の小型化、ひいては定着装置、画像形成装置のコンパクト化に寄与することを、その主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
具体的には、請求項1に記載の発明は、筒体の内部に加熱手段を備え、前記筒体の外周面に接触する部材を加熱するのに用いられる加熱ローラにおいて、前記加熱手段が自己発電装置であり、前記筒体は前記自己発電装置による発電時に生じる熱エネルギーによって昇温することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する構成を有する燃料電池であり、その発電部となる電極が前記筒体内に軸方向に直列に複数配設されていることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置は固体高分子形燃料電池であり、前記電極は、固体高分子電解質膜と燃料極及び空気極からなることを特徴とする。
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置の発電を促進させる補助加熱手段を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の加熱ローラにおいて、前記補助加熱手段が、電磁誘導の原理による誘導加熱を利用してジュール熱を発生させる構成を有し、前記筒体内にローラ中心部を軸方向に貫通するように設けられていることを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを蓄える蓄電手段を有していることを特徴とする。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の加熱ローラにおいて、前記蓄電手段に蓄えられた電気エネルギーを前記補助加熱手段に供給することを特徴とする。
【0011】
請求項8に記載の発明は、画像が転写された転写材の画像面に接触して画像を熱により溶融定着する定着ローラと、該定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有する定着装置において、前記定着ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする。
請求項9に記載の発明は、定着ローラと、加熱ローラと、これらのローラ間に掛け回された定着ベルトと、前記定着ベルトを挟んで前記定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有し、画像が転写された転写材を前記定着ニップに通して定着を行う定着装置において、前記加熱ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする。
請求項10に記載の発明は、請求項8又は9に記載の定着装置において、前記加熱ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする。
【0012】
請求項11に記載の発明は、請求項8〜10のいずれか1つに記載の定着装置において、前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを、該定着装置を構成する電機部品を動作させるエネルギーとして利用することを特徴とする。
請求項12に記載の発明は、請求項8〜11のいずれか1つに記載の定着装置において、前記定着ローラの表面近傍に設けられた温度検知手段と、該温度検知手段により検知された値に応じて前記自己発電装置の発電量を変えることで前記定着ローラの表面の温度を制御する制御手段とを有していることを特徴とする。
請求項13に記載の発明は、請求項8〜12のいずれか1つに記載の定着装置において、前記自己発電装置の発電により生じる水成分を、前記定着ニップを通過した転写材の表面にミスト状に噴霧する噴霧手段を有していることを特徴とする。
請求項14に記載の発明は、画像形成装置において、請求項8〜14のいずれか1つに記載の定着装置を有することを特徴とする。
請求項15に記載の発明は、加熱定着方法において、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラを用い、該加熱ローラからの熱により、転写材に転写された画像を定着することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自己発電装置の発電によって得られる熱を高効率で活用できるとともに、自己発電装置の小型化、ひいては定着装置、画像形成装置のコンパクト化に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概要構成図である。
【図2】制御ブロック図である。
【図3】燃料電池を構成する単セルを示す分解斜視図である。
【図4】加熱ローラとしての定着ローラ、加圧ローラの一部切り欠きの斜視図である。
【図5】補助加熱手段の一部切り欠きの斜視図である。
【図6】定着装置の電力消費に対する温度変化推移を示す図で、(a)は従来例の場合を、(b)は本発明の場合を示す図である。
【図7】画像形成装置の電源オンから待機モードに移行するまでの制御動作を示すフローチャートである。
【図8】画像形成装置の待機モードから印刷モードに移行するまでの制御動作を示すフローチャートである。
【図9】第2の実施形態における定着装置の概要構成図である。
【図10】水蒸気を噴霧している状態を示す定着装置の斜視図である。
【図11】第3の実施形態における定着装置の制御ブロック図である。
【図12】第5の実施形態における定着装置の概要構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図を参照して説明する。まず、図1乃至図8に基づいて第1の実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る画像形成装置(例えば、電子写真方式の複写機)を示す概略構成図である。
画像形成装置1における像担持体としての感光体ドラム2の周囲には、時計回り方向に順に、帯電装置3、書き込み装置(露光装置)4、現像装置5、転写装置6、クリーニング装置7が配置され、転写装置6の用紙搬送方向下流側には定着装置8が配置されている。
画像形成装置1の画像形成動作時においては、所定のプロセススピードで回転駆動される感光体ドラム2の表面を帯電装置3により一様に帯電させ、読取り装置(不図示)で読取った原稿の画像情報に応じて書き込み装置4により露光を行って静電潜像を形成した後、現像装置5のトナー(現像剤)で現像を行うことにより、トナー像が感光体ドラム2上に形成される。
【0016】
給紙カセット9から所定のタイミングで用紙搬送路10を通して転写部位(感光体ドラム2と転写装置6との間)に搬送される用紙Pに、転写装置6により感光体ドラム2上に担持されているトナー像が転写される。
トナー像が転写された用紙Pは定着装置8に搬送されて、定着ローラ8aと加圧ローラ8bとの間の定着ニップで挟持搬送されながら加熱・加圧されることにより、用紙P上にトナー像が溶融定着される。トナー像が定着された用紙Pは、排紙ローラ対(不図示)により外部に排出される。
感光体ドラム2上のトナー像が用紙Pに転写された後に感光体ドラム2の表面はクリーニング装置7のクリーニングブレード7aにより残トナーが除去されて、次の作像に供される。
【0017】
定着装置8の定着ローラ8aと加圧ローラ8bは、それぞれ内部に自己発電装置としての固体高分子形の燃料電池及び補助加熱手段を内蔵した構成を有している。燃料電池及び補助加熱手段の構成の詳細については後述する。
前述した通り、従来においては、自己発電装置(燃料電池)で生じた熱をヒートパイプや循環経路を介して定着装置へ伝える技術思想に基づいている。これは、画像形成装置において、自己発電装置を他の部品とは独立した装置部品として捉えているからである。
このため、定着装置に熱を伝えるまでに時間が掛かり過ぎてしまい、熱伝導経路が存在することによる伝導ロスによる弊害を避けられなかった。
本発明は、熱伝導経路を無くして伝導ロスを抑制し、熱利用効率を高めることとしたのである。
【0018】
各ローラの表面近傍には、温度検知手段としての温度センサ11a、11bがそれぞれ設置されており、温度センサ11a、11bにより検知される温度状態に応じて発電制御及び補助加熱制御を行うようになっている。温度センサは、できるだけ高速制御に対応可能なものが好ましく、例えば、白金測温抵抗体のような温度変化に応じて抵抗値が変化する温度センサや熱起電力効果を原理とした非接触型の赤外光熱電対(サーモパイル)センサなどが望ましく、これによって無駄のない発電、発熱制御ができる。
【0019】
従来、加熱定着装置を具備したカラー画像形成装置においては、画像形成の種類によって定着時の温度を変えて画像形成を行っている。最も代表的な事例で例えると、カラー印刷と白黒印刷であり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックといった4色の現像剤を用いたタンデム機と呼ばれる画像形成装置の場合、現像剤の転写量がカラー印刷時の方が多くなるためその分、定着温度も上げて処理を行う。
本実施形態に係る定着装置8では、発電量によって発熱量つまり、ローラ表面の温度が変化するので、所定の定着条件に対応するには、ローラ表面の温度を監視し、温度状態に合わせて発電量を制御する必要がある。
図1において、符号12aは給紙ローラ、12bはレジストローラ対をそれぞれ示している。
【0020】
図2は、画像形成装置1の動作を制御する制御系を示す概略ブロック図である。本発明に直接関わらない動作制御については省略する。
図2に示すように、制御部(計測手段)13は、温度センサ11a並びに11bから入力されるセンサ出力とメモリ14に予め記憶されている温度パラメータに基づいて、温度値を算出する。
画像形成装置1の動作全体を制御する制御手段としてのCPU15は、制御部13から出力される温度情報に基づいて、定着ローラ制御部16、加圧ローラ制御部20を制御し、検知された温度に応じて補助加熱制御部17、21の加熱温度、及び、発電量制御部18、22の水素並びに酸素の供給量を電気的に動作するポンプ(不図示)などを用いて、それぞれ制御する。
【0021】
図3は、燃料電池の電極、所謂セルの構成を説明するための斜視図である。「セル」とは、電解質30を燃料極(マイナス極)、空気極(プラス極)と呼ばれる2枚の電極31、32で挟み、さらにこれらをセパレーターと呼ばれる、水素及び、酸素をそれぞれの電極に供給する電気を通す樹脂材料でできた板33、34で挟み込んだ構成を有している。
燃料極31並びに空気極32には、触媒と呼ばれる層が成形され、この触媒層35、36に利用される材料は、白金や白金系合金が多く利用される。
電解質30は固体高分子電解質膜により薄いシート状に形成され、電気抵抗が小さく、発生した電気エネルギーのロスも少なくて済む。そのため、同じ大きさの電気を作るのに、ほかのタイプの燃料電池よりセルスタックを小さく軽くすることが可能である。
このセル1枚をセパレーターで挟み込んだ状態を単セルと呼び、単セル37を複数枚重ねたものをセルスタックと呼ぶ。
セルスタックは直列に接続することで、高い電圧と電力を得ることができ、重ねる枚数が多いほど、より高い電圧値を得ることができる。本発明では、定着ローラや加圧ローラの軸方向の長さに着目してセルスタックの長さを確保している。
図3では、セル形状をローラ形状に合わせて円形としているが、ローラ内に収納できればどの様な形状でも良い。
【0022】
図4は、定着装置8の定着ローラ8a及び加圧ローラ8bの構成を示す斜視図である。本実施形態における定着装置8は、定着ローラ8a、加圧ローラ8bがそれぞれ1づつ具備された構造としているが、定着ローラ8a、加圧ローラ8b共に同様の構成なので、1ローラ分の図で説明する。
また、同図は、内部構成を分かり易くするため、一部切り取った状態として示している。
図4に示すように、定着ローラ8a又は加圧ローラ8bは、円筒状の筒体38と、この筒体38の内部に収容された燃料電池39と、燃料電池39の中心部を軸方向に貫通する状態に設けられたIH(Induction Heating)方式の補助加熱手段40とを有している。
筒体38は、金属で形成された円筒部材42と、円筒部材42の両端部に固定されたリング43、43と、円筒部材42の外周面に被覆されたゴム層44とを有しており、全体としてはゴムローラとしてなる。円筒部材42は、熱伝達効率の良いアルミニウムや銅で加工された材質のものが最も好ましい。
【0023】
近年の画像形成装置は、その印刷動作が日々高速化している。そのため、印刷が完了するまでの各プロセスをできる限り短時間で完了させる必要がある。定着装置もその一プロセスで、印刷を行うための準備を短時間で完了させる必要があり、そのためローラを温めるにはできるだけ短時間で条件に合った温度に到達させる必要がある。
よって、熱効率の高い電磁誘導の原理による誘導加熱を利用してジュール熱を発生させる加熱源、いわゆるIHヒータを補助加熱手段として利用することが最も好ましい。
【0024】
燃料電池39は、軸方向両端部に円形のフレーム45、45を配置し、フレーム45、45間にセルスタック46を挟み、フレーム45及びセルスタック46を軸方向に貫通して折り返す供給路(パイプ)47、48で一体に結合された構成を有している。供給路47は図示しない酸素供給源に、供給路48は図示しない水素供給源にそれぞれ接続されている。
セルスタック46は、図3で説明したセルが複数配列され、電気的に直列に接続されている。
燃料電池39はその位置を固定され、フレーム45とリング43との間に設けられた図示しないベアリング構造によって筒体38のみがローラとして回転する。
筒体38の回転、すなわち実質的な定着ローラ又は加圧ローラの回転は、例えばいずれか一方のローラのリング43にギヤを形成して図示しない駆動モータの回転力を入力し、他方のローラを接触による連れ回り(従動回転)とすることができる。
なお、本実施形態では定着ローラ8aと加圧ローラ8bの双方共に燃料電池39を内蔵した省電力的に理想的な実施形態としているが、後述するように本発明の実施形態には、加圧ローラ8bに従来の一般の構造のもの(例えばハロゲンヒータを内蔵したもの、あるいは加熱源を有しないもの)も含まれる。この場合には加圧ローラ8bを駆動ローラとして定着ローラ8aを従動回転させ、あるいは定着ローラ8aのリング43にギヤを形成して図示しない駆動モータの回転力を入力し、加圧ローラ8bを従動回転させてもよい。
【0025】
各セルには、供給路47、48によってそれぞれ水素と酸素が電気的に動作するポンプ(不図示)によって供給される。発電を行う際はこの供給路47、48を通ってそれぞれのセルに酸素、水素が供給され、化学反応を起こして電気エネルギーが発生すると同時に熱エネルギーを発生する。
供給路47の出口47aからは内部にて残った水及び酸素が戻り、供給路48の出口48aからは水素が戻る構造としており、再び供給路入口より供給される仕組みとなっている。
【0026】
燃料電池39により発生した電気エネルギーは、電線ELを通じて定着装置8又は画像形成装置1に組み込まれた各電機部品へ接続され、電機部品の動力エネルギーとして利用される。
燃料電池39による発電作用の際、水素と酸素の化学反応によって、電気エネルギーを生み出すとともに水(H2O)が副生成物として生成される。この水の多くは、水蒸気となるため、酸素を供給する供給路47を通じて装置外へ排出することができる。排出された水蒸気は、液体となって回収、廃棄される(不図示)。
【0027】
図5に示すように、補助加熱手段40は、ローラの回転支軸を兼ねる金属製の軸50と、軸50の外周面の所定の範囲に螺旋状に巻かれたコイル51と、コイル51の外側を覆う金属壁52とを有しており、図2で示した定着装ローラ制御部16、加圧ローラ制御部20で制御可能に電気的に接続されている。軸50のコイル51が巻かれる部分は小径となっている。
コイル51に高周波電流を印加すると、磁界が発生する。その磁界に誘発され軸50及び金属壁52に渦電流が発生し、発熱する仕組みとなっている。
燃料電池39による発電処理が始まると同時に、燃料電池39の発電を促進する環境を作り出すために補助加熱手段40に通電がなされてローラ内部が暖められる。軸50及び金属壁52は、電気抵抗の高いものなら何でも良いが、磁界が誘発されやすく渦電流が発生し易いフェライト材料(磁性材料)で加工されたものが最も好ましい。
【0028】
加熱定着装置を構成する上では、従来のハロゲンヒータや、補助加熱手段40のようなIH方式の通電タイプの加熱手段のみで充分定着処理を行うことができ、従来はこれらの加熱手段で溶融定着するのが主流であった。
しかしながら、通電方式の加熱手段のみで溶融定着に必要な熱量を得るには、膨大な電力量を消費することを避けられない。
例えば、通電方式の加熱手段のみで定着温度を賄おうとすると、600〜1000w(ワット)の電力を必要とする。
これに対し、通電方式の加熱手段(補助加熱手段40)を燃料電池による発熱作用と併用すると、発熱作用にて発生した熱量の足りない分を補うだけなので、約半分程度の電力量で済むことになる。
従って、本発明では、通電方式の加熱手段を燃料電池による発電システムの補助加熱手段として利用することで、電力量の消費を抑えることを実現している。
さらに、補助加熱手段40への通電によって、セルの一部である、燃料極と空気極にある触媒層に用いられる白金属や白金系合金にも渦電流が発生し、発熱するので、発電、発熱作用を一層促進させることも可能となり、より少ない電力量で大きな熱量を得ることができる。
補助加熱手段40は従来のハロゲンヒータでもよいが、上記のようにIH方式とすれば燃料電池39の部品にも発熱作用を及ぼすことができるメリットがある。本実施形態ではIH方式の補助加熱手段40をローラ中央部に棒状に設ける構成としたがこれに限定される趣旨ではなく、円筒部材42の内面(すなわち燃料電池39の外面)にコイルを設ける構成としてもよい。
【0029】
図6は、画像形成装置の各動作モードにおける従来の定着装置の電力消費に対する温度変化推移と本発明における電力消費に対する温度変化推移の一例を表した図である。
従来の電力消費では、図6(a)に示すように、電源オン時のウォームアップ動作時に定着ローラを百数十℃まで上昇させるため、大量の電力が必要となる。次に、上昇した温度を維持する必要があるので、この間電力を消費し続ける。
印刷がすぐに実行されないと判断されると、待機モードに変わり電力消費は低下するが、一定の温度を維持する必要があるため、完全にオフされるわけではない。また、このとき加圧ローラ側の温度を上昇させるので、今度は加圧ローラ側の電力を消費することになる。
そして、実際に印刷が実行されると、再度定着ローラの加熱が必要になるので、さらに電力を消費する。従って、定着装置は全ての動作モードにおいて、常に電力を消費していることになる。
【0030】
次に、本発明の電力消費に対する温度変化推移を図6(b)に基づいて説明する。説明を解りやすくするため、従来と同様の動作モードを取った場合と仮定して説明する。
まず、電源オン時にてウォームアップ動作が行われる。このとき、補助加熱手段40による加熱動作が行われるが、発電作用を促すためなので、60℃前後になるように加熱制御を行う。このとき既に燃料電池39による発電処理は始まっており、温度が上昇するに連れて、発電が活発になり、発熱温度も上昇する。
発電作用による発熱により、内部温度も上昇しているので、補助加熱手段40の電力は完全にオフできる。その後は、発電制御を続け、温度を維持する。
待機モードでは、自己発電をしているだけで商用電源による電力を消費していないので、温度を下げる必要もなく、同様の制御を行う。
印刷モードでは、水素と酸素の供給量を上げることで、発電作用を活発化させ、発熱量を上昇させる。
このとき、印刷速度に対して発熱温度上昇速度が間に合わない場合があるため、補助加熱手段40による加熱制御を実施するが、温度が足りない分を加熱するだけなので、電力消費量は極めて少なくて済む。
【0031】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の電源オンから待機モードに移行するまでの制御方法を図7に示すフローチャートを参照して説明する。
まず、装置の電源がオンされると(S1)、定着ローラ並びに加圧ローラ表面のそれぞれの温度が温度検知手段によって測定され(S2)、測定温度xが設定温度T1以上が否かが判断される(S3)。
x≧T1の場合は、ステップS8へ移行し、x<T1の場合は、水素及び酸素の供給を行い、発電を開始する(S4)。ステップS4とほぼ同じタイミングで補助加熱手段40をオンし、ローラ内部の加熱を開始して内部温度を上昇させ、発電作用を促進させる(S5)。このときの設定温度T1とは、前述した60℃前後の温度設定値である。
一定の時間間隔でローラ表面温度を測定し(S6)、測定温度xと設定温度T1の関係をステップS7にて判定する。
その結果、x≧T1の場合は、ステップS8へ移行し、補助加熱手段40の加熱制御をオフし、x<T1の場合は、ステップS6からの処理を一定時間間隔で繰り返す。
補助加熱手段40の加熱制御がオフされた後、ローラ表面温度が任意の設定温度以下にならないように、水素並びに酸素の供給量を調整して発電制御を継続し、待機状態となる(S9)。
【0032】
次に、本実施形態に係る画像形成装置の待機モードから印刷モードに移行するまでの制御方法を図8に示すフローチャートを参照して説明する。
印刷処理が開始されると(S11)、定着ローラ並びに加圧ローラそれぞれの表面温度が温度検知手段によって測定され(S12)、測定温度xが設定温度T2以上か否かが判断される(S13)。
x≧T2の場合は、ステップS18へ移行し、x<T2の場合は、ステップS14に移行して、水素及び酸素の供給量を増やし、発電量を増加させると同時に発熱量を増加させる(S14)。
さらにステップS14とほぼ同じタイミングで、補助加熱手段40をオンし、ローラ内部の加熱を開始し内部温度を上昇させてローラ温度を上昇させる(S15)。このときの設定温度T2とは、溶融定着を行うのに必要な170℃前後の温度設定値である。
一定の時間間隔でローラ表面温度を測定し(S16)、測定温度xと設定温度T2の関係をステップS17で判定する。その結果、x≧T2の場合は、ステップS18へ移行し、補助加熱手段40の加熱制御をオフし(S18)、x<T2の場合は、ステップS16からの処理を一定時間間隔で繰り返す。
印刷処理が継続されるか否かが判断され(S19)、継続の場合にはステップS15からの処理を繰り返し、終了する場合は、ローラ表面温度が任意の設定温度以下にならないように水素並びに酸素の供給量を調整しながら発電制御を継続し、待機状態となる(S20)。
【0033】
図9及び図10に基づいて第2の実施形態を説明する。なお、上記実施形態と同一部分は同一符号で示し、既に説明した構成上及び機能上の説明は特に必要がない限り省略して要部のみ説明する(以下の他の実施形態において同じ)。
図9は本実施形態に係る定着装置8’の概要断面図、図10は噴霧状態を示す斜視図である。加熱定着されたことによって用紙P内の水分が蒸発し、用紙Pの水分率が低下する。これにより、用紙Pの抵抗値が高くなってしまう。抵抗値が高くなってしまうと転写プロセスの際に、転写率が低下してしまうので、例えば、両面印刷の際、裏面印刷時の画像品質不良などが発生する確率が高くなる。
また、用紙Pが加熱されたことによって、用紙P内のパルプ繊維が収縮し、用紙P全体に反りが生じカールしてしまう。画像形成装置内でこのような現象が発生すると、用紙Pが移動する搬送路上を正常に通過することができず、ジャムとなり搬送不良を引き起こす虞がある。
【0034】
前述した通り、燃料電池39による発電作用の際、電気エネルギーとともに水(H2O)が副生成物として生成され、水の多くは水蒸気として装置外へ供給路を通じて排出される。
本実施形態では、水蒸気が通る出口側の酸素供給路47a、47aを、定着処理が完了する定着ニップの下流側において、用紙搬送方向と直交する用紙幅方向に延びるように配管し、用紙Pと対面する経路部分に無数の小さな穴(不図示)を設け、現像剤を溶融定着された直後の用紙P表面にミスト状に噴霧するようにしている。定着ローラ8a、加圧ローラ8bの酸素供給路47a、47aは噴霧手段としてなる。
【0035】
定着直後の用紙Pに水蒸気を噴霧するので、用紙Pの腰が弱くなり搬送不良が起きてしまう程水分を付与することもなく、また、用紙P自体が加熱定着直後で高温状態となっているので、水分を付与し過ぎた分は再蒸発してくれるので、適度な水分状態となる。
従って、加熱定着直後の転写紙(用紙P)に水分を噴霧することで、転写紙の低水分状態を緩和することができ、裏面印刷の際に発生する画像品質不良を防止することが可能となる。
噴霧された水蒸気は用紙P内に浸透するため、用紙Pに対する水蒸気の噴霧は片面でも良いが、高速機の場合には搬送速度が速いために片面だけでは適度な保湿状態とすることが困難な場合があり、この観点から本実施形態では両面噴霧構成としている。
噴霧することで、画像品質の不良防止やカール抑制ができるだけでなく、発電作用によって発生した副生成物としての水成分廃棄量を減らすことができるという利点もある。
【0036】
図11に第3の実施形態を示す。
基本制御は、図2と同様なので重複する説明及び、図は省略する。また、本実施形態に直接関わらない基本的な動作制御についても省略する。
本実施形態では、定着ローラ及び加圧ローラ内の発電部19並びに23の発電作用によって得られた電気エネルギーを、画像形成装置1の内部に設置された蓄電手段としての蓄電装置24に一時的に蓄え、制御手段としてのCPU21から要求があった場合に必要な電力を画像形成装置1の各電機部品に供給することを特徴とする。
蓄電装置24としては、電気エネルギーを蓄えることが可能な、化学反応によって電荷を蓄積する二次電池などでも良いが、物理的に電荷を蓄積できる電気二重層キャパシタの原理を利用したものが、充放電効率や安全性、信頼性が高いので最も好ましい。
これにより、必要なときに電力が供給できるので、例えば省電力設定された状態の微小な電力消費の際は、この蓄電装置24より供給された電気エネルギーで賄うことができ、より効率的な電力消費が可能となる。
【0037】
図4に二点鎖線で示すように、蓄電装置24を、定着ローラ8aの酸素等の供給側と反対側のフレーム45に一体に設け、蓄えられた電気エネルギーを補助加熱手段40やその他の定着装置8の電機部品に供給するようにしてもよい(第4の実施形態)。このようにすれば、自己発電による電力自給型の定着装置を実現できる。
上記各実施形態では、定着装置8を、定着ローラと加圧ローラが対向する熱ローラ方式として例示したが、ベルト定着方式としても同様に実施することができる(第5の実施形態)。図12にその一例を示す。
本実施形態における定着装置8”は、定着ローラ60と、上記定着ローラ8aと同様に燃料電池39を内蔵した加熱ローラ61と、定着ローラ60と加熱ローラ61とに掛け回された無端状の定着ベルト62と、定着ベルト62を挟んで定着ローラ60との間で定着ニップを形成する加圧ローラ63とを有している。加圧ローラ63も定着ローラ8aと同様の構成を有している。
【0038】
第1〜第4の実施形態においては、定着ローラ、加圧ローラ共に燃料電池39を内蔵する理想的な省電力構成としたが、いずれか一方の熱源は従来の通電ヒータとしてもよく、この場合でも従来に比べて熱効率を高めることができ、省電力を向上させることができる。
同様に、第5の実施形態における加熱ローラ61と加圧ローラ63のうちいずれか一方の熱源を従来の通電ヒータとしてもよい。
【0039】
以上の通り、本発明によれば、ローラ内に自己発電装置を一体に設ける構成としたので、伝熱ロスを低減して熱効率を高めることができ、定着に係る省電力化を実現できるとともに、良好な定着を行うことができる。
自己発電装置を別途配置する必要がないので、定着装置のコンパクト化、ひいては画像形成装置のコンパクト化を実現できる。
補助加熱手段を用いることにより、画像形成プロセス時間のロスをなくし、短時間で条件に合った温度に到達できるので効率の良い発電、発熱制御が可能となり、良好な定着温度条件に合った現像剤の溶融定着が可能となる。
転写紙の水分を補うことで、画像品質不良や搬送不良を防止することができ、装置の信頼性向上に寄与できる。
発電作用によって得られた電気エネルギーを、定着装置及び画像形成装置を構成する電機部品を動作させる動力エネルギーとして利用できるので、商用電源AC100Vからの電力消費を抑えることができ、電力消費量が極めて少ない画像形成装置を提供することが可能となる。
また、発電作用によって得られた電気エネルギーを、蓄電装置によって一時的に蓄えることによって、必要なときに必要な部分の電機部品を動作させる動力エネルギーとして利用でき、発電による電気エネルギーを有効に活用できる。
【0040】
なお、上記した各実施形態では画像形成装置の定着装置について説明したが、これ以外にも、例えば紙の抄造における乾燥工程やラミネートシート材の薄膜化工程など、回転ローラ(加熱ローラ)を用いて加熱処理される工程などの電力量を膨大に消費する工程等において、同様に本発明を適用することが可能である。
また、モノクロ機での実施例を示したが、タンデム機等のカラー画像形成装置においても同様に実施することができる。
【符号の説明】
【0041】
8、8’、8” 定着装置
8a 定着ローラ
8b 加圧ローラ
11a、11b 温度検知手段としての温度センサ
24 蓄電手段としての蓄電装置
38 筒体
39 自己発電装置としての燃料電池
40 補助加熱手段
60 定着ローラ
61 加熱ローラ
62 定着ベルト
63 加圧ローラ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0042】
【特許文献1】特開2006−106248号公報
【特許文献2】特開2008−122780号公報
【特許文献3】特開2003−270980号公報
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の内部に加熱手段を備え、前記筒体の外周面に接触する部材を加熱するのに用いられる加熱ローラにおいて、
前記加熱手段が自己発電装置であり、前記筒体は前記自己発電装置による発電時に生じる熱エネルギーによって昇温することを特徴とする加熱ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する構成を有する燃料電池であり、その発電部となる電極が前記筒体内に軸方向に直列に複数配設されていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置は固体高分子形燃料電池であり、前記電極は、固体高分子電解質膜と燃料極及び空気極からなることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置の発電を促進させる補助加熱手段を有していることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱ローラにおいて、
前記補助加熱手段が、電磁誘導の原理による誘導加熱を利用してジュール熱を発生させる構成を有し、前記筒体内にローラ中心部を軸方向に貫通するように設けられていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを蓄える蓄電手段を有していることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱ローラにおいて、
前記蓄電手段に蓄えられた電気エネルギーを前記補助加熱手段に供給することを特徴とする加熱ローラ。
【請求項8】
画像が転写された転写材の画像面に接触して画像を熱により溶融定着する定着ローラと、該定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有する定着装置において、
前記定着ローラと前記加圧ローラのうち少なくとも一方が、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の定着装置において、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されているローラの表面近傍に設けられた温度検知手段と、該温度検知手段により検知された値に応じて前記自己発電装置の発電量を変えることで前記加熱ローラにより構成されているローラの表面の温度を制御する制御手段とを有していることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
定着ローラと、加熱ローラと、これらのローラ間に掛け回された定着ベルトと、前記定着ベルトを挟んで前記定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有し、画像が転写された転写材を前記定着ニップに通して定着を行う定着装置において、
前記加熱ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1つに記載の定着装置において、
前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを、該定着装置を構成する電機部品を動作させるエネルギーとして利用することを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1つに記載の定着装置において、
前記自己発電装置の発電により生じる水成分を、前記定着ニップを通過した転写材の表面にミスト状に噴霧する噴霧手段を有していることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
請求項12に記載の定着装置において、
前記噴霧手段は転写材の両面に噴霧する構成を有していることを特徴とする定着装置。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラを用い、該加熱ローラからの熱により、転写材に転写された画像を定着することを特徴とする加熱定着方法。
【請求項1】
筒体の内部に加熱手段を備え、前記筒体の外周面に接触する部材を加熱するのに用いられる加熱ローラにおいて、
前記加熱手段が自己発電装置であり、前記筒体は前記自己発電装置による発電時に生じる熱エネルギーによって昇温することを特徴とする加熱ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置は、水素と酸素の電気化学反応によって発電する構成を有する燃料電池であり、その発電部となる電極が前記筒体内に軸方向に直列に複数配設されていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置は固体高分子形燃料電池であり、前記電極は、固体高分子電解質膜と燃料極及び空気極からなることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置の発電を促進させる補助加熱手段を有していることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項5】
請求項4に記載の加熱ローラにおいて、
前記補助加熱手段が、電磁誘導の原理による誘導加熱を利用してジュール熱を発生させる構成を有し、前記筒体内にローラ中心部を軸方向に貫通するように設けられていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つに記載の加熱ローラにおいて、
前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを蓄える蓄電手段を有していることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項7】
請求項6に記載の加熱ローラにおいて、
前記蓄電手段に蓄えられた電気エネルギーを前記補助加熱手段に供給することを特徴とする加熱ローラ。
【請求項8】
画像が転写された転写材の画像面に接触して画像を熱により溶融定着する定着ローラと、該定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有する定着装置において、
前記定着ローラと前記加圧ローラのうち少なくとも一方が、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項9】
請求項8に記載の定着装置において、
請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されているローラの表面近傍に設けられた温度検知手段と、該温度検知手段により検知された値に応じて前記自己発電装置の発電量を変えることで前記加熱ローラにより構成されているローラの表面の温度を制御する制御手段とを有していることを特徴とする定着装置。
【請求項10】
定着ローラと、加熱ローラと、これらのローラ間に掛け回された定着ベルトと、前記定着ベルトを挟んで前記定着ローラとの間で定着ニップを形成する加圧ローラとを有し、画像が転写された転写材を前記定着ニップに通して定着を行う定着装置において、
前記加熱ローラが、請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラにより構成されていることを特徴とする定着装置。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1つに記載の定着装置において、
前記自己発電装置の発電により生じる電気エネルギーを、該定着装置を構成する電機部品を動作させるエネルギーとして利用することを特徴とする定着装置。
【請求項12】
請求項8〜11のいずれか1つに記載の定着装置において、
前記自己発電装置の発電により生じる水成分を、前記定着ニップを通過した転写材の表面にミスト状に噴霧する噴霧手段を有していることを特徴とする定着装置。
【請求項13】
請求項12に記載の定着装置において、
前記噴霧手段は転写材の両面に噴霧する構成を有していることを特徴とする定着装置。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか1つに記載の定着装置を有する画像形成装置。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の加熱ローラを用い、該加熱ローラからの熱により、転写材に転写された画像を定着することを特徴とする加熱定着方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−112718(P2011−112718A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266600(P2009−266600)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】
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