加熱ローラおよび加熱ローラの製造方法
【課題】円筒の内面に発熱パターン形成した安価な加熱ローラを提供する。
【解決手段】円筒の内面に金属メッキを施して発熱パターンを形成する。円筒の内面にカテーテルによって遮光マスクを密着させ、選択的に露光することで、円筒の内面にメッキにより形成した金属層をエッチング、または、円筒の内面を部分的にメッキすることで、発熱パターンを形成してもよく、円筒に挿入した筒状のブラストマスクを挿入して、円筒の内面にメッキにより形成した金属層を研磨砂で削り取ってもよい。
【解決手段】円筒の内面に金属メッキを施して発熱パターンを形成する。円筒の内面にカテーテルによって遮光マスクを密着させ、選択的に露光することで、円筒の内面にメッキにより形成した金属層をエッチング、または、円筒の内面を部分的にメッキすることで、発熱パターンを形成してもよく、円筒に挿入した筒状のブラストマスクを挿入して、円筒の内面にメッキにより形成した金属層を研磨砂で削り取ってもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ローラおよび加熱ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタのトナー定着用の加熱ローラとして、従来、内部にハロゲンランプなどの熱源を配置した金属円筒が使用されている。従来の加熱ローラは、起動時間が長く、常時予熱しておくために無駄なエネルギーを消費するという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されているように、円筒の内面に抵抗発熱体(金属)の層からなる発熱パターンを形成することで、起動時間が短く、エネルギー効率の高い加熱ローラが提案されている。
【0004】
特許文献1では、金属円筒の内面に絶縁層を形成し、絶縁層の上に導電性の塗液を塗布して焼成することで発熱層を形成している。さらに、発熱層をレーザ加工によって部分的に除去することで、所望の形状の発熱パターンを形成している。
【0005】
しかし、特許文献1の製造方法は、特殊なレーザ加工機を必要とし、製造コストが高いという問題がある。
【特許文献1】特開平11−24470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明は、円筒の内面に発熱パターン形成した安価な加熱ローラ、および、加熱ローラの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明による加熱ローラは、円筒内面に、金属メッキにより発熱パターンが形成されているものとする。
【0008】
この構成によれば、加熱ローラを安価に提供できる。
【0009】
また、本発明による加熱ローラの製造方法は、円筒の内面に金属メッキをして発熱パターンを形成するものとする。
【0010】
この方法によれば、加熱ローラを安価に製造できる。
【0011】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、前記金属層の上に感光性レジストを塗布し、遮光マスクを配置して前記感光性レジストを選択的に露光することでレジストマスクを形成し、エッチングによって前記金属層を選択的に除去することで、前記発熱パターンを形成してもよく、前記レジストマスクの形成は、前記感光性レジストを塗布して乾燥した後に、前記遮光マスクを配置して露光させることで行ってもよい。
【0012】
この方法によれば、所望の形状の発熱パターンを形成できる。
【0013】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に感光性触媒を塗布し、遮光マスクを配置して前記感光性触媒を選択的に露光することで触媒マスクを形成し、前記絶縁層の前記触媒マスクが形成されている部分を選択的に金属メッキすることで、前記発熱パターンを形成してもよく、前記金属メッキは、形成している前記発熱パターンの抵抗値をモニタしながら、前記抵抗値が所定の値に達するまで行ってもよい。
【0014】
この方法によっても、所望の発熱パターンを形成できる。
【0015】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記遮光性マスクの配置は、風船状のカテーテルを前記円筒の内部に挿入してから膨らませて前記円筒の内面に密着させることによって行い、前記遮光マスクは、前記カテーテルの表面に印刷した印刷層、または、前記カテーテルの周囲に巻き付けたシートで構成してもよい。
【0016】
この方法によれば、円筒の内面に、所望の形状の遮光マスクを容易に密着させることができ、レジストマスクや触媒マスクを安価に形成することができる。
【0017】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記カテーテルは、外管と内管とからなる2重構造を有し、前記外管と前記内管との間に空気を入れて膨らませることができ、前記内管の内部に発光体を挿入して、前記露光を行ってもよい。
【0018】
この方法によれば、カテーテルにより遮光マスクを円筒内面に密着させた状態で露光できるので、レジストマスクや触媒マスクを所定の形状に正確に形成することができる。
【0019】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、前記円筒の内径とほぼ同じ外径を有する筒状に形成され、前記発熱パターンに合致する形状を残すように開口したブラストマスクを挿入し、前記ブラストマスクの内側から研磨砂を吹き付けることで、前記金属層を選択的に削り取ってもよい。
【0020】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記金属層は、銅または銅合金のメッキ層の表面に、さらに、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhをメッキして2層に形成してもよい。
【0021】
この方法によれば、発熱パターンが錆び難く、信頼性が向上する。
【0022】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記発熱パターンの回路端部に貴金属メッキを行ってもよく、前記貴金属メッキは、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhであってもよい。
【0023】
この方法によれば、回路端部の端子を錆止めして接触不良を防止できる。
【0024】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記ブラストマスクは、前記金属層より柔らかい樹脂で形成されてもよい。
【0025】
この方法によれば、ブラストマスクの摩耗が少なく、繰り返し使用できるので、加熱ローラの製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、円筒の内面にメッキによって容易に発熱パターンを形成でき、安価な加熱ローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1および図2に、本発明の一実施形態の加熱ローラ1を示す。加熱ローラ1は、画像形成装置の定着器に用いられるものである。加熱ローラ1は、金属製の円筒管2の表面に絶縁層3が設けられ、外周の用紙が通過する範囲にゴム被覆4が取り付けられている。加熱ローラ1は、内面に、金属メッキで形成した抵抗発熱体の回路である発熱パターン5が形成され、発熱パターンの回路端部が円筒管2の端部近傍に配置され、外部回路に接続するための端子6を構成している。図3に示すように、端子6は、円筒管2の内面に径方向に対向して設けられている。また、端子6は表面がさらに貴金属メッキされている。
【0028】
続いて、図4に、加熱ローラ1の製造方法の第1実施形態を示し、その特徴を説明する。尚、本実施形態は、サブトラクト法と呼ばれるメッキ技術を円筒内面に適用可能としたものである。
【0029】
本実施形態では、先ず、ステップS01において、所定の寸法の金属円筒管2を形成し、ステップS02で円筒管2の表面にフッ素樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂で絶縁層3を形成する。そして、ステップS03において、円筒管2の内面全体に金属メッキを施して金属層5を形成する。
【0030】
ここで、円筒管2にメッキする金属は、抵抗発熱体を形成するために、銅または銅合金が用いられる。メッキは、電解メッキでも無電解メッキでもよく、その厚みは、金属の種類などに応じて1〜30μmに設定される。
【0031】
このうち、無電解メッキで金属層5を形成する場合には、まず、内面に絶縁層3を形成した円筒管2を、パラジウムなどの金属を含んだ触媒液に浸漬して、絶縁層3の樹脂表面に触媒層を形成する。その後、銅および銅合金等のメッキ液に浸漬して、この触媒層との金属置換により金属メッキ層を形成する。
【0032】
また、無電解メッキで形成した金属層の上に、さらに電解メッキで金属層を形成してもよい。これにより、厚い金属層を短時間で形成することができる。
【0033】
続いて、ステップS04で、円筒管2の内面の金属層3の表面に感光性レジストを塗布し、ステップS05で、感光性レジストを乾燥させる。
【0034】
そして、ステップS06において、図5に示すように、カテーテル6の外周にシート状の遮光マスク7を巻き付けて、円筒管2の内部に挿入する。
【0035】
図6に示すように、カテーテル6は、筒状の外管8および内管9とかからなる2重構造をしており、外管8と内管9との間が密閉空間になっており、挿気管10を通じて空気を導入して膨らませ、拡径させることができる。カテーテル6は、透光性のシリコン樹脂等で形成され、医療用に用いられるものと略同じものである。
【0036】
遮光マスク7は、透光性のフィルムに、形成しようとする発熱パターン5に対応する形状を、遮光性の塗料で描いたものである。図5に示すように、遮光マスク7は、両端が重なりあうように、カテーテル6に巻き付けた状態で、円筒管2の内部に挿入される。
【0037】
ステップS07で、挿気管10から空気を送り込み、円筒管2の中でカテーテル6を膨らませる。これによって、遮光マスク7は、円筒管2の内面の感光性レジストの上に密着する。
【0038】
続いて、ステップS08で、図7に示すように、カテーテル6の内管9に挿入した露光ランプ11を発光させることで、遮光マスク7の遮光性の塗料で覆われていない部分の感光性レジストだけを露光して感光させる。ステップS09で、感光性レジストの非硬化部分を溶かして洗い流すことで現像し、発熱パターン5を形成すべき領域を開口したレジストマスクを形成して定着させる。
【0039】
露光ランプ11は、カテーテル6を円筒管2の中で膨らませてから内管9に挿入してもよく、ステップS06で、露光ランプ11にカテーテル6を被せ、その外側に遮光マスク7を巻き付けて円筒管2に挿入してもよい。
【0040】
そして、ステップS10で、エッチングして、レジストマスクが開口している部分の金属層を除去することで、所望の発熱パターン5を形成する。
【0041】
ステップS11で、発熱パターン5の端子6の表面をNi、Ni−Au、Ni−RhまたはRhで貴金属メッキし、外部の回路と確実に接続できるようにする。代案として、ロウ付けやハンダ付けで配線材を接続して引き出してもよい。また、端子6は、円筒管2の径方向に対向するように設けることで、複数の端子6にそれぞれ当接する外部回路の電極片の圧接力を相殺することができる。
【0042】
さらに、ステップS12で発熱パターン5の抵抗値を調整すれば、所定の発熱パターン5を形成した加熱ローラ1が得られる。
【0043】
続いて、図8に、加熱ローラの製造方法の第2実施形態を示す。
本実施形態は、アディティブ法と呼ばれるメッキ技術を円筒内面に適用可能としたものである。
【0044】
本実施形態では、先ず、ステップS21において、所定の寸法の金属円筒管2を形成し、ステップS22で円筒管2の表面に絶縁層3を形成する。そして、ステップS23において、円筒管2の内面に感光性触媒を塗布し、ステップS24で、感光性レジストを乾燥させる。
【0045】
そして、ステップS25において、図9に示すように、遮光性の塗料による遮光マスク7’が外管8に直接描かれたカテーテル6’を、円筒管2の内部に挿入する。
【0046】
ステップS26で、挿気管10から空気を送り込み、円筒管2の中でカテーテル6を膨らませ、遮光マスク7’を円筒管2の内面に密着させる。
【0047】
続いて、ステップS27で、カテーテル6の内管9の中で露光ランプ11を発光させることで、遮光マスク7の遮光性の塗料で覆われていない部分の感光性触媒だけを露光して感光させる。ステップS28で、感光性触媒の非硬化部分を溶かして洗い流すことで現像し、発熱パターン5を形成すべき領域を覆う触媒マスクを形成して定着させる。
【0048】
そして、ステップS29で、メッキすることで、触媒を金属に置換する。こうして、触媒マスクが形成されていた部分だけに選択的に金属層をメッキし、所望の発熱パターン5を形成する。また、このとき、成長過程の金属層の抵抗値をモニタし、所定の抵抗値に達したところでメッキを終了するようにすることで、形成される発熱パターン5の出力を正確に調整することができる。
【0049】
さらに、図10に、加熱ローラの製造方法の第3実施形態を示す。
本実施形態は、第1実施形態のエッチングに代えて、サンドブラスト工法によって金属層を選択的に除去するものである。
【0050】
本実施形態では、先ず、ステップS31において、所定の寸法の金属円筒管2を形成し、ステップS32で円筒管2の表面に絶縁層3を形成する。そして、ステップS33において、円筒管2の内面全体に金属メッキを施して金属層を形成する。
【0051】
さらに、本実施形態では、ステップS34において円筒管2の内面全体にNi、Ni−Au、Ni−RhまたはRhで貴金属メッキを施し、金属層を銅合金と貴金属との2層構造にする。2層構造の金属層から形成する発熱パターン5は、表面が貴金属で覆われているので錆びが発生しない。
【0052】
続いて、ステップS35において、図10に示すように、円筒管2の中に、ブラストマスク12を挿入する。
【0053】
ブラストマスク12は、円筒管2に挿入可能なように、円筒管2の内径よりも僅かに小さい外径を有しており、金属層よりも柔らかい樹脂で形成されている。ブラストマスク12は、発熱パターン5を覆う部分を残すように開口が設けられている。
【0054】
そして、ステップS36において、ブラストマスク12内に研磨砂を吹き付けることで、ブラストマスク12に覆われていない部分の金属層を削り取ることで、所望の形状の発熱パターン5を形成することができる。
【0055】
研磨砂は、ブラストマスク12に挿入され、ブラストマスク12の径方向開口したノズルから吹き付けるとよい。代案として、ブラストマスク12内を螺旋状に旋回しながら通過する旋回気流を形成し、研磨砂をこの螺旋気流に乗せてブラストマスク12内に供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態の加熱ローラの斜視図。
【図2】図1の加熱ローラの部分断面斜視図。
【図3】図1の加熱ローラの側面図。
【図4】図1の加熱ローラの製造工程を示す流れ図
【図5】図4のカテーテルと遮光マスクの挿入工程を示す斜視図。
【図6】図5のカテーテルの斜視図。
【図7】図5のカテーテルの断面図。
【図8】本発明の第2実施形態の加熱ローラの製造工程を示す流れ図。
【図9】図8のカテーテルの挿入工程を示す斜視図。
【図10】本発明の第3実施形態の加熱ローラの製造工程を示す流れ図。
【図11】図10のブラストマスクの挿入工程を示す斜視図。
【符号の説明】
【0057】
1 加熱ローラ
2 円筒管
3 絶縁層
5 発熱パターン
6,6’ カテーテル
7,7’ 遮光マスク
8 外管
9 内管
10挿気管
11 露光ランプ
12 ブラストマスク
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱ローラおよび加熱ローラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機やプリンタのトナー定着用の加熱ローラとして、従来、内部にハロゲンランプなどの熱源を配置した金属円筒が使用されている。従来の加熱ローラは、起動時間が長く、常時予熱しておくために無駄なエネルギーを消費するという問題があった。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されているように、円筒の内面に抵抗発熱体(金属)の層からなる発熱パターンを形成することで、起動時間が短く、エネルギー効率の高い加熱ローラが提案されている。
【0004】
特許文献1では、金属円筒の内面に絶縁層を形成し、絶縁層の上に導電性の塗液を塗布して焼成することで発熱層を形成している。さらに、発熱層をレーザ加工によって部分的に除去することで、所望の形状の発熱パターンを形成している。
【0005】
しかし、特許文献1の製造方法は、特殊なレーザ加工機を必要とし、製造コストが高いという問題がある。
【特許文献1】特開平11−24470号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記問題点を解決するために、本発明は、円筒の内面に発熱パターン形成した安価な加熱ローラ、および、加熱ローラの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、本発明による加熱ローラは、円筒内面に、金属メッキにより発熱パターンが形成されているものとする。
【0008】
この構成によれば、加熱ローラを安価に提供できる。
【0009】
また、本発明による加熱ローラの製造方法は、円筒の内面に金属メッキをして発熱パターンを形成するものとする。
【0010】
この方法によれば、加熱ローラを安価に製造できる。
【0011】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、前記金属層の上に感光性レジストを塗布し、遮光マスクを配置して前記感光性レジストを選択的に露光することでレジストマスクを形成し、エッチングによって前記金属層を選択的に除去することで、前記発熱パターンを形成してもよく、前記レジストマスクの形成は、前記感光性レジストを塗布して乾燥した後に、前記遮光マスクを配置して露光させることで行ってもよい。
【0012】
この方法によれば、所望の形状の発熱パターンを形成できる。
【0013】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に感光性触媒を塗布し、遮光マスクを配置して前記感光性触媒を選択的に露光することで触媒マスクを形成し、前記絶縁層の前記触媒マスクが形成されている部分を選択的に金属メッキすることで、前記発熱パターンを形成してもよく、前記金属メッキは、形成している前記発熱パターンの抵抗値をモニタしながら、前記抵抗値が所定の値に達するまで行ってもよい。
【0014】
この方法によっても、所望の発熱パターンを形成できる。
【0015】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記遮光性マスクの配置は、風船状のカテーテルを前記円筒の内部に挿入してから膨らませて前記円筒の内面に密着させることによって行い、前記遮光マスクは、前記カテーテルの表面に印刷した印刷層、または、前記カテーテルの周囲に巻き付けたシートで構成してもよい。
【0016】
この方法によれば、円筒の内面に、所望の形状の遮光マスクを容易に密着させることができ、レジストマスクや触媒マスクを安価に形成することができる。
【0017】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記カテーテルは、外管と内管とからなる2重構造を有し、前記外管と前記内管との間に空気を入れて膨らませることができ、前記内管の内部に発光体を挿入して、前記露光を行ってもよい。
【0018】
この方法によれば、カテーテルにより遮光マスクを円筒内面に密着させた状態で露光できるので、レジストマスクや触媒マスクを所定の形状に正確に形成することができる。
【0019】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、前記円筒の内径とほぼ同じ外径を有する筒状に形成され、前記発熱パターンに合致する形状を残すように開口したブラストマスクを挿入し、前記ブラストマスクの内側から研磨砂を吹き付けることで、前記金属層を選択的に削り取ってもよい。
【0020】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記金属層は、銅または銅合金のメッキ層の表面に、さらに、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhをメッキして2層に形成してもよい。
【0021】
この方法によれば、発熱パターンが錆び難く、信頼性が向上する。
【0022】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記発熱パターンの回路端部に貴金属メッキを行ってもよく、前記貴金属メッキは、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhであってもよい。
【0023】
この方法によれば、回路端部の端子を錆止めして接触不良を防止できる。
【0024】
また、本発明の加熱ローラの製造方法において、前記ブラストマスクは、前記金属層より柔らかい樹脂で形成されてもよい。
【0025】
この方法によれば、ブラストマスクの摩耗が少なく、繰り返し使用できるので、加熱ローラの製造コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0026】
以上のように、本発明によれば、円筒の内面にメッキによって容易に発熱パターンを形成でき、安価な加熱ローラを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
これより、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1および図2に、本発明の一実施形態の加熱ローラ1を示す。加熱ローラ1は、画像形成装置の定着器に用いられるものである。加熱ローラ1は、金属製の円筒管2の表面に絶縁層3が設けられ、外周の用紙が通過する範囲にゴム被覆4が取り付けられている。加熱ローラ1は、内面に、金属メッキで形成した抵抗発熱体の回路である発熱パターン5が形成され、発熱パターンの回路端部が円筒管2の端部近傍に配置され、外部回路に接続するための端子6を構成している。図3に示すように、端子6は、円筒管2の内面に径方向に対向して設けられている。また、端子6は表面がさらに貴金属メッキされている。
【0028】
続いて、図4に、加熱ローラ1の製造方法の第1実施形態を示し、その特徴を説明する。尚、本実施形態は、サブトラクト法と呼ばれるメッキ技術を円筒内面に適用可能としたものである。
【0029】
本実施形態では、先ず、ステップS01において、所定の寸法の金属円筒管2を形成し、ステップS02で円筒管2の表面にフッ素樹脂、ポリイミド樹脂などの耐熱性樹脂で絶縁層3を形成する。そして、ステップS03において、円筒管2の内面全体に金属メッキを施して金属層5を形成する。
【0030】
ここで、円筒管2にメッキする金属は、抵抗発熱体を形成するために、銅または銅合金が用いられる。メッキは、電解メッキでも無電解メッキでもよく、その厚みは、金属の種類などに応じて1〜30μmに設定される。
【0031】
このうち、無電解メッキで金属層5を形成する場合には、まず、内面に絶縁層3を形成した円筒管2を、パラジウムなどの金属を含んだ触媒液に浸漬して、絶縁層3の樹脂表面に触媒層を形成する。その後、銅および銅合金等のメッキ液に浸漬して、この触媒層との金属置換により金属メッキ層を形成する。
【0032】
また、無電解メッキで形成した金属層の上に、さらに電解メッキで金属層を形成してもよい。これにより、厚い金属層を短時間で形成することができる。
【0033】
続いて、ステップS04で、円筒管2の内面の金属層3の表面に感光性レジストを塗布し、ステップS05で、感光性レジストを乾燥させる。
【0034】
そして、ステップS06において、図5に示すように、カテーテル6の外周にシート状の遮光マスク7を巻き付けて、円筒管2の内部に挿入する。
【0035】
図6に示すように、カテーテル6は、筒状の外管8および内管9とかからなる2重構造をしており、外管8と内管9との間が密閉空間になっており、挿気管10を通じて空気を導入して膨らませ、拡径させることができる。カテーテル6は、透光性のシリコン樹脂等で形成され、医療用に用いられるものと略同じものである。
【0036】
遮光マスク7は、透光性のフィルムに、形成しようとする発熱パターン5に対応する形状を、遮光性の塗料で描いたものである。図5に示すように、遮光マスク7は、両端が重なりあうように、カテーテル6に巻き付けた状態で、円筒管2の内部に挿入される。
【0037】
ステップS07で、挿気管10から空気を送り込み、円筒管2の中でカテーテル6を膨らませる。これによって、遮光マスク7は、円筒管2の内面の感光性レジストの上に密着する。
【0038】
続いて、ステップS08で、図7に示すように、カテーテル6の内管9に挿入した露光ランプ11を発光させることで、遮光マスク7の遮光性の塗料で覆われていない部分の感光性レジストだけを露光して感光させる。ステップS09で、感光性レジストの非硬化部分を溶かして洗い流すことで現像し、発熱パターン5を形成すべき領域を開口したレジストマスクを形成して定着させる。
【0039】
露光ランプ11は、カテーテル6を円筒管2の中で膨らませてから内管9に挿入してもよく、ステップS06で、露光ランプ11にカテーテル6を被せ、その外側に遮光マスク7を巻き付けて円筒管2に挿入してもよい。
【0040】
そして、ステップS10で、エッチングして、レジストマスクが開口している部分の金属層を除去することで、所望の発熱パターン5を形成する。
【0041】
ステップS11で、発熱パターン5の端子6の表面をNi、Ni−Au、Ni−RhまたはRhで貴金属メッキし、外部の回路と確実に接続できるようにする。代案として、ロウ付けやハンダ付けで配線材を接続して引き出してもよい。また、端子6は、円筒管2の径方向に対向するように設けることで、複数の端子6にそれぞれ当接する外部回路の電極片の圧接力を相殺することができる。
【0042】
さらに、ステップS12で発熱パターン5の抵抗値を調整すれば、所定の発熱パターン5を形成した加熱ローラ1が得られる。
【0043】
続いて、図8に、加熱ローラの製造方法の第2実施形態を示す。
本実施形態は、アディティブ法と呼ばれるメッキ技術を円筒内面に適用可能としたものである。
【0044】
本実施形態では、先ず、ステップS21において、所定の寸法の金属円筒管2を形成し、ステップS22で円筒管2の表面に絶縁層3を形成する。そして、ステップS23において、円筒管2の内面に感光性触媒を塗布し、ステップS24で、感光性レジストを乾燥させる。
【0045】
そして、ステップS25において、図9に示すように、遮光性の塗料による遮光マスク7’が外管8に直接描かれたカテーテル6’を、円筒管2の内部に挿入する。
【0046】
ステップS26で、挿気管10から空気を送り込み、円筒管2の中でカテーテル6を膨らませ、遮光マスク7’を円筒管2の内面に密着させる。
【0047】
続いて、ステップS27で、カテーテル6の内管9の中で露光ランプ11を発光させることで、遮光マスク7の遮光性の塗料で覆われていない部分の感光性触媒だけを露光して感光させる。ステップS28で、感光性触媒の非硬化部分を溶かして洗い流すことで現像し、発熱パターン5を形成すべき領域を覆う触媒マスクを形成して定着させる。
【0048】
そして、ステップS29で、メッキすることで、触媒を金属に置換する。こうして、触媒マスクが形成されていた部分だけに選択的に金属層をメッキし、所望の発熱パターン5を形成する。また、このとき、成長過程の金属層の抵抗値をモニタし、所定の抵抗値に達したところでメッキを終了するようにすることで、形成される発熱パターン5の出力を正確に調整することができる。
【0049】
さらに、図10に、加熱ローラの製造方法の第3実施形態を示す。
本実施形態は、第1実施形態のエッチングに代えて、サンドブラスト工法によって金属層を選択的に除去するものである。
【0050】
本実施形態では、先ず、ステップS31において、所定の寸法の金属円筒管2を形成し、ステップS32で円筒管2の表面に絶縁層3を形成する。そして、ステップS33において、円筒管2の内面全体に金属メッキを施して金属層を形成する。
【0051】
さらに、本実施形態では、ステップS34において円筒管2の内面全体にNi、Ni−Au、Ni−RhまたはRhで貴金属メッキを施し、金属層を銅合金と貴金属との2層構造にする。2層構造の金属層から形成する発熱パターン5は、表面が貴金属で覆われているので錆びが発生しない。
【0052】
続いて、ステップS35において、図10に示すように、円筒管2の中に、ブラストマスク12を挿入する。
【0053】
ブラストマスク12は、円筒管2に挿入可能なように、円筒管2の内径よりも僅かに小さい外径を有しており、金属層よりも柔らかい樹脂で形成されている。ブラストマスク12は、発熱パターン5を覆う部分を残すように開口が設けられている。
【0054】
そして、ステップS36において、ブラストマスク12内に研磨砂を吹き付けることで、ブラストマスク12に覆われていない部分の金属層を削り取ることで、所望の形状の発熱パターン5を形成することができる。
【0055】
研磨砂は、ブラストマスク12に挿入され、ブラストマスク12の径方向開口したノズルから吹き付けるとよい。代案として、ブラストマスク12内を螺旋状に旋回しながら通過する旋回気流を形成し、研磨砂をこの螺旋気流に乗せてブラストマスク12内に供給してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1実施形態の加熱ローラの斜視図。
【図2】図1の加熱ローラの部分断面斜視図。
【図3】図1の加熱ローラの側面図。
【図4】図1の加熱ローラの製造工程を示す流れ図
【図5】図4のカテーテルと遮光マスクの挿入工程を示す斜視図。
【図6】図5のカテーテルの斜視図。
【図7】図5のカテーテルの断面図。
【図8】本発明の第2実施形態の加熱ローラの製造工程を示す流れ図。
【図9】図8のカテーテルの挿入工程を示す斜視図。
【図10】本発明の第3実施形態の加熱ローラの製造工程を示す流れ図。
【図11】図10のブラストマスクの挿入工程を示す斜視図。
【符号の説明】
【0057】
1 加熱ローラ
2 円筒管
3 絶縁層
5 発熱パターン
6,6’ カテーテル
7,7’ 遮光マスク
8 外管
9 内管
10挿気管
11 露光ランプ
12 ブラストマスク
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒内面に、金属メッキにより発熱パターンが形成されていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項2】
円筒の内面に金属メッキをして発熱パターンを形成することを特徴とする加熱ローラの製造方法。
【請求項3】
前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、
前記金属層の上に感光性レジストを塗布し、
遮光マスクを配置して、前記感光性レジストを選択的に露光することでレジストマスクを形成し、
エッチングによって前記金属層を選択的に除去することで、前記発熱パターンを形成することを特徴とする請求項2に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項4】
前記レジストマスクの形成は、前記感光性レジストを塗布して乾燥した後、前記遮光マスクを密着させて露光させることを特徴とする請求項3に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項5】
前記円筒の内面に絶縁層を形成し、
前記絶縁層の上に感光性触媒を塗布して、
遮光マスクを配置して、前記感光性触媒を選択的に露光することで触媒マスクを形成し、
前記絶縁層の前記触媒マスクが形成されている部分を選択的に金属メッキすることで、前記発熱パターンを形成することを特徴とする請求項2に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項6】
前記金属メッキは、形成している前記発熱パターンの抵抗値をモニタしながら、前記抵抗値が所定の値に達するまで行うことを特徴とする請求項5に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項7】
前記遮光性マスクの配置は、風船状のカテーテルを前記円筒の内部に挿入してから膨らませて前記円筒の内面に密着させることによって行い、
前記遮光マスクは、前記カテーテルの表面に印刷した印刷層、または、前記カテーテルの周囲に巻き付けたシートで構成することを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項8】
前記カテーテルは、外管と内管とからなる2重構造を有し、
前記外管と前記内管との間に空気を入れて膨らませることができ、
前記内管の内部に発光体を挿入して、前記露光を行うことを特徴とする請求項7に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項9】
前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、
前記円筒の内径とほぼ同じ外径を有する筒状に形成され、前記発熱パターンに合致する形状を残すように開口したブラストマスクを挿入し、
前記ブラストマスクの内側から研磨砂を吹き付けることで、前記金属層を選択的に削り取ることを特徴とする請求項2に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項10】
前記金属層は、銅または銅合金のメッキ層の表面に、さらに、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhをメッキして2層に形成することを特徴とする請求項9に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項11】
前記発熱パターンの回路端部に貴金属メッキを行うことを特徴とする請求項9に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項12】
前記貴金属メッキは、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhであることを特徴とする請求項11に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項13】
前記ブラストマスクは、前記金属層より柔らかい樹脂で形成されていることを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項1】
円筒内面に、金属メッキにより発熱パターンが形成されていることを特徴とする加熱ローラ。
【請求項2】
円筒の内面に金属メッキをして発熱パターンを形成することを特徴とする加熱ローラの製造方法。
【請求項3】
前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、
前記金属層の上に感光性レジストを塗布し、
遮光マスクを配置して、前記感光性レジストを選択的に露光することでレジストマスクを形成し、
エッチングによって前記金属層を選択的に除去することで、前記発熱パターンを形成することを特徴とする請求項2に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項4】
前記レジストマスクの形成は、前記感光性レジストを塗布して乾燥した後、前記遮光マスクを密着させて露光させることを特徴とする請求項3に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項5】
前記円筒の内面に絶縁層を形成し、
前記絶縁層の上に感光性触媒を塗布して、
遮光マスクを配置して、前記感光性触媒を選択的に露光することで触媒マスクを形成し、
前記絶縁層の前記触媒マスクが形成されている部分を選択的に金属メッキすることで、前記発熱パターンを形成することを特徴とする請求項2に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項6】
前記金属メッキは、形成している前記発熱パターンの抵抗値をモニタしながら、前記抵抗値が所定の値に達するまで行うことを特徴とする請求項5に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項7】
前記遮光性マスクの配置は、風船状のカテーテルを前記円筒の内部に挿入してから膨らませて前記円筒の内面に密着させることによって行い、
前記遮光マスクは、前記カテーテルの表面に印刷した印刷層、または、前記カテーテルの周囲に巻き付けたシートで構成することを特徴とする請求項3から6のいずれかに記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項8】
前記カテーテルは、外管と内管とからなる2重構造を有し、
前記外管と前記内管との間に空気を入れて膨らませることができ、
前記内管の内部に発光体を挿入して、前記露光を行うことを特徴とする請求項7に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項9】
前記円筒の内面に絶縁層を形成した上に金属メッキにより金属層を形成し、
前記円筒の内径とほぼ同じ外径を有する筒状に形成され、前記発熱パターンに合致する形状を残すように開口したブラストマスクを挿入し、
前記ブラストマスクの内側から研磨砂を吹き付けることで、前記金属層を選択的に削り取ることを特徴とする請求項2に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項10】
前記金属層は、銅または銅合金のメッキ層の表面に、さらに、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhをメッキして2層に形成することを特徴とする請求項9に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項11】
前記発熱パターンの回路端部に貴金属メッキを行うことを特徴とする請求項9に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項12】
前記貴金属メッキは、Ni、Ni−Au、Ni−RhまたはRhであることを特徴とする請求項11に記載の加熱ローラの製造方法。
【請求項13】
前記ブラストマスクは、前記金属層より柔らかい樹脂で形成されていることを特徴とする請求項9から12のいずれかに記載の加熱ローラの製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−173059(P2007−173059A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369603(P2005−369603)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]