説明

加熱体、加熱装置及び画像形成装置

【課題】非通紙部昇温を緩和し、定着性を確保できる加熱体、加熱装置、画像形成装置の提供。
【解決手段】少なくとも、基材3bと、炭素を導電物質として利用し、少なくとも有機物を含有する原材料を非酸化雰囲気中にて熱処理し有機物を炭化させる炭素系抵抗発熱体3aと、該炭素系抵抗発熱体3aに給電する電極3c・3dからなる加熱体3において、前記基材3bは熱伝導率λ=70W/m・K以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱材を所定に加熱する加熱装置に用いられる加熱体、及び前記加熱体を具備する加熱装置に関する。特に、電子写真複写機、電子写真プリンター等の画像形成装置において、未定着トナー画像を形成担持させた記録材を加熱して画像を永久固着像として定着させる加熱定着装置として用いて好適な加熱装置に関するものである。また前記加熱装置を搭載した画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、各種の情報、映像機器等においては、その最終出力形態としても、実体の無い情報形式の画像を用紙等の記録材に具体的に実体化させる画像形成装置が用いられる。
【0003】
このような複写機等の画像形成装置においては、作図や作画したり、対象物を走査、記録したり、通信転送等によって生成した画像を、記録材に画像パターンに応じて着色剤等を定着させることにより、適正な画像を記録材上に再現するようにしている。
【0004】
また、この画像形成装置においては、着色剤として微粒子のトナー粉末を用いており、記録材上に画像パターン状に配置されたトナーを安定して定着させるためには、簡便性等から加熱方式が広く用いられている。
【0005】
従来、加熱装置としての定着装置には、熱ローラ方式の定着装置が広く用いられていたが、このような定着装置は、作動開始となるまでの時間が長かったり、消費電力が比較的に多かったりするという不都合が生じていた。
【0006】
すなわち、この定着装置は、金属製のローラ内部にハロゲンランプを配設し、このハロゲンランプを発熱させて、金属ローラ全体を加熱する構成としていることにより、金属ローラ全体が均一な温度になり動作可能になるまでに時間がかかるので、動作の立ち上げに要する時間が遅いとともに、常に比較的熱容量の大きな金属ローラ全体を加熱しているので、消費電力も多くなっていた。
【0007】
そこで、耐熱・耐久性に優れたセラミックの基材上に、直接的に抵抗発熱体のパターンを形成して加熱体を構成し、これを発熱源とするとともに、耐熱性の薄いフィルムを介して、未定着トナー画像を形成担持させた記録材に接触させることにより、記録材を均一に加熱するフィルム加熱方式の加熱装置が提案され、特許文献1に開示されている。
【0008】
また、フィルム加熱方式の加熱装置として、特許文献2に開示されているように、フィルムをフィルムガイドにルーズに外嵌させ、加圧手段としての加圧ローラを駆動することでフィルムを加圧ローラに対して従動駆動させるテンションフリータイプもある。このタイプの場合は、部品点数が少なくて済むためこの方式を採用することが多い。
【0009】
このようなフィルム加熱方式の加熱装置によれば、加熱体やフィルム自体の熱容量が小さいので、所定温度までの温度立ち上げに要する時間を短縮できるとともに、消費電力も少なくすることができる。
【0010】
特許文献3には、必要な任意の固有抵抗値と形状を有する炭素系抵抗発熱体とその製造方法が開示されている。
【0011】
特許文献4には、そのような炭素系抵抗発熱体を用いた定着装置が開示されている。
【特許文献1】特開昭63−313182号公報
【特許文献2】特開平4−44075号公報
【特許文献3】特許第3173800号公報
【特許文献4】特開2002−372880号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
一般的に画像形成装置において、記録材(以下、紙とも称す)として、装置に通紙使用可能な最大サイズ記録材(以下、大サイズ紙と記す)よりも小さな幅の記録材(以下、小サイズ紙と記す)を通紙する場合は、定着装置の温度制御は通紙部に設けられた温度検知素子の出力に基づいて行われる場合が多く、非通紙部では記録材に熱を奪われないため、非通紙部の温度が通紙部に比べて上昇する非通紙部昇温現象がある。
【0013】
近年では単位時間あたりのプリント可能枚数が大幅に増え、それに伴って小サイズ紙でのスループットも増える傾向であるため更に非通紙部昇温は厳しくなる方向である。
【0014】
特に封筒や厚紙などの小サイズ紙を通紙する場合には、通紙部では記録材に大量の熱が奪われるため、定着装置の加熱体に大量の電力が供給されて非通紙部昇温が顕著になる。その結果、加熱体・加圧ローラ等の劣化・破損に至る危険性がある。また、非通紙部昇温が大きくなると、小サイズ紙を通紙した直後に大サイズ紙を通紙した場合、端部で高温オフセットが発生する可能性がある。
【0015】
そこでこの非通紙部昇温を防止するために、負の抵抗温度特性(以下、NTC特性と称す)を持つ発熱体として炭素系抵抗発熱体を使用する方法があるが、熱伝導率の低い炭素系抵抗発熱体を使用した場合、長手方向での熱の逃げが少ないため、非通紙部昇温のレベルが悪い場合がある。
【0016】
また近年ではプリントスピードが速くなる傾向が続いているが、定着性のレベルを落とさず、定着性を確保するために定着ニップ幅を広げる方法がとられることが多い。定着ニップ内では加熱領域を広げるために発熱体の幅を広くするが、この場合定着ニップからはみ出した場合、はみ出した部分で発熱体が異常発熱を起こし熱応力による加熱体割れが発生する可能性がある。つまり定着性を確保するたには発熱体の幅を広げずに定着性を確保する必要がある。
【0017】
そこで本発明の目的は、炭素系抵抗発熱体を使用した加熱体について、非通紙部昇温を緩和し、更には炭素系抵抗発熱体の幅を広くせずに定着性を確保できる加熱体を提供することである。
【0018】
また、非通紙部昇温を緩和し、更には炭素系抵抗発熱体の幅を広くせずに定着性を確保できる加熱体を具備する加熱装置を提供することである。
【0019】
そして、非通紙部昇温を緩和し、更には炭素系抵抗発熱体の幅を広くせずに定着性を確保できる加熱体を具備する画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記目的を達成するための本発明に係る加熱体の代表的な構成は、被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、少なくとも、熱伝導率λ=70W/m・K以上である基材と、炭素を導電物質として利用し、少なくとも有機物を含有する原材料を炭素の非酸化雰囲気中にて熱処理し有機物を炭化させることで製造された炭素系抵抗発熱体と、該炭素系抵抗発熱体に給電する電極からなることを特徴とする加熱体、である。
【発明の効果】
【0021】
すなわち、炭素系抵抗発熱体を使用した加熱体の基材を熱伝導率λ=70W/m・K以上にすることにより、炭素系抵抗発熱体の非通紙部昇温部の熱を基材により加熱体長手方向すなわち通紙部側にスムーズに逃がすことが可能となり、また炭素系抵抗発熱体と基材を合わせた加熱体全域への熱の伝わりが良くなり、実質的に加熱体全体が加熱領域となる。その結果、非通紙部昇温防止、定着性確保が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
【実施例1】
【0023】
(1)画像形成装置例
図1は本発明の一実施例の画像形成装置の概略構成図である。この画像形成装置は転写式電子写真プロセスを用いたレーザービームプリンターである。
【0024】
101は像担持体としてのドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)である。例えばアルミニウム等の導電性ドラム基体の外周面に有機光導電体等の感光層を形成した有機感光ドラムである。この感光ドラム101は矢印の時計方向に所定の速度で回転駆動される。
【0025】
102は帯電手段としての帯電ローラである。この帯電ローラ102により感光ドラム面が所定の極性・電位に一様に帯電処理される。本例のプリンターでは負極性の所定の電位に一様に帯電処理される。
【0026】
103はレーザー露光装置である。このレーザー露光装置103は不図示のイメージスキャナ・コンピュータ等の外部機器(ホスト機器)から入力する画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調したレーザ光Lを出力して、感光ドラム101の一様帯電処理面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム面の露光明部の電荷が減衰または除電されて、感光ドラム面に走査露光した画像情報に対応した静電潜像が形成される。
【0027】
104は現像装置である。感光ドラム面に形成された静電潜像はこの現像装置によりトナー像として可視像化される。レーザービームプリンターの場合、一般に、静電潜像の露光明部にトナーを付着させて現像する反転現像方式が用いられる。104aは現像スリーブ、104bは現像ブレード、104cは現像バイアス印加電源、tは1成分磁性トナーである。
【0028】
107は給紙カセットであり、記録材(転写材)Pを積載収納させてある。給紙スタート信号に基いて給紙ローラ108が駆動されて給紙カセット107内の記録材Pが一枚分離給送される。その給送された記録材Pはシートパス109→レジストローラ110→トップセンサ111を通って、感光ドラム101と転写ローラ112との当接ニップ部である転写部位Tに所定の制御タイミングにて導入される。すなわち、感光ドラム101上のトナー像の先端部位が転写位置Tに到達したとき、記録材Pの先端部位も到達するタイミングとなるように、レジストローラ110で記録材Pの搬送タイミングが制御され、またトップセンサ111による記録材先端通過検知信号に基いて感光ドラム101に対する画像書き出しタイミングが制御される。
【0029】
転写部位Tに導入された記録材Pはこの転写部位Tを挟持搬送され、その間、転写ローラ112には転写バイアス印加電源112aよりトナーの帯電極性とは逆極性の所定電位の転写バイアスが印加される。これにより転写部位Tにおいて感光ドラム面側のトナー像が記録材面に順次に静電的に転写されていく。
【0030】
転写部位Tにおいて、トナー像の転写を受けた記録材Pは感光ドラム面から分離されて、シートパス113を通って加熱装置である定着装置114へ搬送導入され、トナー像の加熱定着処理を受ける。
【0031】
一方、記録材分離後(記録材に対するトナー像転写後)の感光ドラム面はクリーニング装置105のクリーニングブレード105aで転写残トナーや紙粉等の付着物の除去を受けて清浄面化され、繰り返して作像に供される。
【0032】
また、定着装置114を通った記録材Pはシートパス115を通って、排紙口116からプリンター上面の排紙トレイ117上に排紙される。
【0033】
本例のプリンターは、感光ドラム101、帯電ローラ102、現像装置104、クリーニング装置105の4つのプロセス機器について、これらを一括してプリンター本体に対して着脱・交換自在のプロセスカートリッジ106として構成してある。
【0034】
(2)定着装置114
図2は本実施例における定着装置114の要部の模式的横断面図である。図3は要部の斜視模型図である。この定着装置114は特開平4−44075〜44083号公報、同4−204980〜204984号公報等に開示のテンションレスタイプのフィルム加熱方式の加熱装置である。
【0035】
テンションレスタイプのフィルム加熱方式の加熱装置は、可撓性部材としてエンドレスベルト状もしくは円筒状の耐熱性フィルムを用い、該フィルムの周長の少なくとも一部は常にテンションフリー(テンションが加わらない状態)とし、フィルムは加圧部材の回転駆動力で回転駆動するようにした装置である。
【0036】
1は加熱体支持部材兼フィルムガイド部材としてのステーであり、記録材Pの搬送路面において記録材搬送方向aに交差する方向を長手とする、横断面略半円形樋型の耐熱樹脂製の剛性部材である。本実施例では、ステー1の材質として高耐熱性の液晶ポリマーを用いた。図4の(a)はこのステー1の正面図、(b)は下面図(底面図)である。
【0037】
3は加熱源としての加熱体であり、上記ステー1の下面にステー長手に沿って設けた溝部1a内に嵌入させて固定支持させてある。この加熱体3は炭素系抵抗発熱体を使用したものである。この加熱体3の構成等については次の(3)項で詳述する。
【0038】
2は可撓性部材としての、耐熱性に優れた円筒状のフィルムであり、上記の加熱体3を支持させたステー1に対して外嵌させてある。このフィルム2の内周長と加熱体3を含むステー1の外周長はフィルム2の方を例えば3mm程度大きくしてあり、従ってフィルム2は周長に余裕を持ってルーズに外嵌している。
【0039】
フィルム2は熱容量を小さくしてクイックスタート性を向上させるために、フィルム2の膜厚は、総厚100μm以下程度とし、耐熱性、離型性、強度、耐久性等のあるPTFE、PFA、FEPの単層、あるいは、ポリイミド、ポリアミドイミド、PEEK、PES、PPS等の外周表面にPTFE、PFA、FEP等をコーティングした複合層フィルムを使用できる。本実施例では耐熱性フィルム2としてポリイミドフィルム50μm、PTFE10μm、層厚60μmにコートしたものを使用した。フィルム2の内周面側には、摺動性を向上させるためにグリスが塗られている。
【0040】
4は横断面逆U字型の剛性を有する補強部材である。上記のステー1の内側に挿入して配設してある。図3においてはこの加圧部材4は省略してある。
【0041】
上記のステー1、加熱体3、フィルム2、補強部材4等で加熱部材(加熱アセンブリ)1Aが構成されている。
【0042】
6は加圧部材としての弾性加圧ローラである。本例の加圧ローラ6は、外径13mmの鉄、ステンレス、アルミ等の芯金6a上に、耐熱性弾性層6bとして、長さ240mm、厚さ3mmのシリコ−ン発泡体を被覆したものである。そして、上記加熱部材1A側の加熱体3との間にフィルム2を挟んで耐熱性弾性層6bの弾性に抗して所定の押圧力で圧接して、所定幅の定着ニップ部Nを形成している。ニップ幅は定着ニップ部Nの記録材搬送方向aにおける寸法である。
【0043】
この加圧ローラ6は駆動機構Mの駆動力が芯金端部に設けたドライブギアGに伝達されて矢印の反時計方向に所定の周速度で回転駆動される。加圧ローラ6の回転駆動により、定着ニップ部Nにおける該加圧ローラ6とフィルム外面との摩擦力でフィルム2に回転力が作用して、フィルム2はその内面側が定着ニップ部Nにおいて加熱体3の後述する炭素系抵抗発熱体表面に密着して摺動しながらステー1の外回りを矢印の方向に加圧ローラ6の回転周速度とほぼ同じ周速度で従動回転状態になる。ステー1は従動回転するフィルム2のガイド部材の役目もしている。
【0044】
そして、加熱体3の後述する炭素系抵抗発熱体の温度が所定に立ち上がり、かつ加圧ローラ6の回転によるフィルム2の回転周速度が定常化した状態において、フィルム2を挟んで加熱体3と加圧ローラ6とで形成される定着ニップ部Nに被加熱材としての画像定着すべき記録材Pが転写部位Tより導入される。そして、記録材Pがフィルム2と一緒に定着ニップ部Nを挟持搬送されることにより加熱体3の熱がフィルム2を介して記録材Pに付与され記録材P上の未定着顕画像(トナー画像)tが記録材P面に加熱定着される。定着ニップ部Nを通った記録材Pはフィルム2の面から分離されて搬送される。
【0045】
(3)加熱体3
図5は本実施例における加熱体3の斜視模型図と分解斜視模型図である。この加熱体3は、被加熱材としての記録材Pの搬送方向aに対して直角方向を長手とする細長の部材であり、基材3bと、炭素を導電物質として利用し、少なくとも有機物を含有する原材料を炭素の非酸化雰囲気中にて熱処理し有機物を炭化させることで製造された炭素系抵抗発熱体(以下、発熱体と略記する場合もある)3aと、該発熱体3aに給電する電極3c・3dからなる。
【0046】
本実施例の加熱体3において、発熱体3aは、塩素化塩化ビニル樹脂、黒鉛、窒化硼素を混合、分散させて、成型後に1500℃で熱処理し、長さ250mm×幅2.5mm×厚さ1mm、総抵抗値30Ωとした。このようにして作られた炭素系抵抗発熱体3aの熱伝導率はλ=50W/m・Kである。
【0047】
次に、基材(基板)3bは、炭素系抵抗発熱体3a自体の強度アップのためフィルム2と接触する反対面側に設置する。またその時に非通紙部昇温により発生した熱を長手方向に均一にならす、更には、基材全体に熱を効率良く伝え定着ニップ内で加熱領域を広げるために熱伝導率λ=70W/m・K以上の材質が好ましい。本実施例においては熱伝導率λ=70W/m・Kの窒化アルミニウムを用いた。
【0048】
発熱体3aと基材3bは、それぞれ単独で成型、焼成し、その後熱硬化性樹脂などにより接着することや、基材の材質、基材の焼成温度によっては、発熱体と基材を同時に成型、焼成し接着することが可能である。また、定着装置の構成によっては、基材上に凹型のくぼみを設けてそこに発熱体をはめ込んで接着する方法もある。
【0049】
本実施例においては、発熱体3aと基材3bをそれぞれ単独で成型し、その後基材上には炭素系抵抗発熱体が完全にはまるように凹型のくぼみ3b1を設け、厚さ5μmのエポキシ接着層を設けて接着を行っている。エポキシ接着層が5μmであれば発熱体3aから基材3bへの熱伝達は問題無いことは実験により確認されている。基材3bのサイズは長さ250mm×幅5mm×厚さ2mmであり、凹型のくぼみ3b1のサイズは発熱体3aと同じであり、長さ250mm×幅2.5mm×厚さ1mmである。
【0050】
この結果,本実施例で使用される加熱体3(3a+3b)のサイズは長さ250mm×幅5mm×厚さ2mmとなる。
【0051】
給電用電極3c、3dの形成方法あるいは装着方法は適宜の手段・方法を採択できる。本実施例においては発熱体3aの長手方向両端面部に銀パラジウムのスクリーン印刷パターンを形成して給電用電極とした。
【0052】
上記の加熱体3は発熱体3a側を外側に露呈させて、ステー1の下面の溝1a内に嵌入して固定支持させてある。図6は加熱体3を溝1a内に嵌入させて固定支持させたステー1の下面図である。加熱体3は記録材搬送方向aに対して直角方向を長手とするようにステー1に配置されている。
【0053】
5は加熱体3の炭素系抵抗発熱体3aの温度を検出する温度検知素子(検温素子)である。本実施例では、温度検知素子5として加熱体3から分離した外部当接型のサーミスタを用いている。この外部当接型サーミスタ5は、例えば支持体上に断熱層を設けその上にチップサーミスタ素子を固定し、素子を下側(発熱体裏面側)に向けて所定の加圧力により発熱体裏面に当接するような構成をとる。上記支持体として高耐熱性の液晶ポリマーを、上記断熱層としてセラミックスペーパーを積層したものを用いた。
【0054】
本実施例では、図7のように、ステ−1の加熱体嵌入溝部1aの底面に設けた貫通穴1b、及びこれに対応させて加熱体3の基材3bに設けた貫通穴3b2にサーミスタ5を嵌め入れて加熱体3の発熱体3aの裏面に直接当接させる構成にしている。
【0055】
以上の構成をとることにより、加熱体3が発熱体3aのみの場合と比較して、目標定着温度に達するまでの時間を短縮することが可能となり、クイックスタートが可能となる。
【0056】
図8は加熱体3に対する給電制御手段としての給電制御回路系のブロック図である。7・8は給電用コネクタであり、ステー1に固定支持させた加熱体3における発熱体3aの両端部側の給電用電極3c・3d部分に嵌着され、給電用電極3c・3dにそれぞれコネクタ7・8側の電気接点が接触状態になる。給電用コネクタ7・8は給電用ケーブルを介して給電部につながっている。
【0057】
発熱体3aは、商用電源(AC電源)13からトライアック12を介して電極3c・3d間に給電されることにより長手方向の有効発熱全長領域が発熱して迅速急峻に昇温する。そしてその発熱体3aの温度がサーミスタ5により検知され、サーミスタ5の出力をアナログ/デジタル変換器(A/D)10を介して給電制御部(CPU)11に取り込む。制御部11はその検知温度情報に基づいてトライアック12により加熱体3の発熱体3aに通電する電力を位相制御あるいは波数制御等により制御して発熱体3aを温調制御する。すなわち、サーミスタ5の検知温度が所定の設定温度(定着温度)より低い時は発熱体3aが昇温するように、またサーミスタ5の検知温度が所定の設定温度より高い時は発熱体3aが降温するように、発熱体3aに通電する電力を制御することで、定着時の発熱体3aの温度を所定の一定温度に保つ。なお、本実施例では位相制御により出力を0〜100%まで5%刻みの21段階で変化させている。出力100%は発熱体に全通電したときである。
【0058】
ここで、紙幅とは記録材Pの平面において記録材搬送方向aに直交する方向の記録材寸法である。本実施例のプリンターは記録材通紙を記録材中心の中央基準としており、定着装置の加熱体3の長手方向の中心が各種サイズの記録材の搬送中心となる。図8において、Oはその記録材中央通紙基準線(仮想線)である。Aはこのプリンターに通紙使用可能な最大紙幅の記録材の通紙部(最大通紙部)であり、発熱体3aの長手方向の有効発熱全長領域にほぼ対応している。Bはこのプリンターに通紙使用可能な最小紙幅の記録材の通紙部(最小通紙域)である。Cは最大紙幅の記録材よりも紙幅が小さい記録材(小サイズ紙)を通紙した時に記録材搬送路面内に生じる非通紙部である。非通紙部Cの領域幅は通紙された小サイズ紙の紙幅の大小により異なる。
【0059】
発熱体3aの温度を検出する前記のサーミスタ5は、大小どの紙幅の記録材が通紙されても記録材通紙領域となる最小通紙部Bに対応する発熱体部分内に対応させて配設してある。
【0060】
炭素系抵抗発熱体3aについて更に詳述する。炭素系抵抗発熱体3aについては、有機物を含有する原材料を炭素の非酸化雰囲気中にて所定温度で熱処理することで、炭素の酸化による分解、消滅を抑制し、原材料の炭化や黒鉛化を進行させることができ、熱処理物中の炭素を抵抗発熱体として適切な抵抗値、抵抗温度特性を有する構造にコントロールすることができる。このような炭素系抵抗発熱体を用いることで、加熱装置の非通紙部昇温を低減させることが出来る。装置の立ち上げ時間を短縮させることが出来る。これに伴い、画像形成装置のスループット、FPOTなどのスペックアップ、耐熱グレードダウン部品使用によるコストダウンを実現出来る。
【0061】
本実施例では特に炭化させる有機物としては、非酸化雰囲気中、たとえば減圧環境ないし真空中、ないし窒素ガスやアルゴンなどの不活性ガス中での焼成により5%以上の炭化収率を示す有機物質を使用するものであり、塩素化塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル−ポリ酢酸ビニル共重合体、ポリアミド等の熱可塑性樹脂、フェノール樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、リグニン、セルロース、トラガントガム、アラビアガム、糖類等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ天然高分子物質、及び前記には含有されない、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物、コプナ樹脂等の縮合多環芳香族を分子の基本構造内に持つ合成高分子物質が挙げられる。
【0062】
前記炭素の非酸化雰囲気中とは、常圧よりも減圧した雰囲気中や真空中、ないし窒素ガス中、不活性ガス中であることで、このような雰囲気中で熱処理することで、熱処理時の酸化が確実に防止でき、炭素系抵抗発熱体を安定して作ることが出来る。
【0063】
ここでいう炭化収率とは、非酸化雰囲気中の熱処理によりのこる炭化物質(黒鉛や不定形炭素などの複合体)の重量と熱処理前の有機物質の重量比のことである。またちなみに酸化雰囲気中で熱処理した場合には、使用する有機物の種類にもよるが一般に500℃から700℃の温度から酸化が始まるため炭素が分解ないし、燃焼してしまい、それ以上温度を上げられず十分な炭化が進まない(炭素以外の成分が十分に分解されない、また黒鉛化が進まない)ため、炭素を抵抗発熱体として利用できる安定した炭化物質が得られない。前記使用する組成物の種類と量は発熱体の形状により適宜選択され、一種或いは数種の混合体で使用することが可能である。
【0064】
またあらかじめ有機物中に炭素粉末を混合しておいても良い、ここでいう炭素粉末としては、カーボンブラック、黒鉛、コークス等があり、発熱体の抵抗値、形状により一種或いは数種の混合体として使用することが可能である。この場合電子は、あらかじめ混ぜておいた炭素粉末中および熱処理により炭化した有機物中を流れる。通例組成物だけを熱処理した場合には炭素を伝わって流れる電子を阻害するものが少なく、抵抗値が低くすぎ(1.0×10−3Ω・cm以下)になってしまい、電流が流れやすくなり、通電回路設計や発熱体の通電制御が難しくなる。
【0065】
その対策としては発熱体の断面積を減らし、抵抗値を上げなければならず、発熱体の形状が制限されてしまう。そのため前期有機物に対して、絶縁ないし半導電性の物質を混合した混合体を熱処理することが望ましい。絶縁、半導電物質としては金属炭化物、金属硼化物、金属珪化物、金属窒化物、金属酸化物、半金属窒化物、半金属酸化物、半金属炭化物が好ましく、発熱体の抵抗値、形状により選択され、1種或いは数種の混合体でも使用可能である。上記混合体においては炭素だけでなく炭素を伝わって流れる電子の導電阻害物質となる絶縁、半導電物質も持っているため、抵抗値を高くすることが容易にコントロール出来、発熱体のとりうる形状の自由度が広がる。
【0066】
すなわち、熱処理により炭化させる有機物と、この有機物に少なくとも絶縁性或いは半導電性の物質の一種又は数種を混合し、これを成形後、炭素の非酸化雰囲気中にて熱処理する方法により炭素系抵抗発熱体3aを作ることで、抵抗温度特性、抵抗値、および発熱体の形状などのコントロールがより容易にできるようになり、安定して非通紙部昇温の抑制が可能な加熱定着装置が提供できる。
【0067】
このような炭素系抵抗発熱体3aは、グラファイトの結晶子乃至多結晶体を用いており、結晶子どうしの接触面を除いて、少なくとも絶縁性或いは半導電性の導電阻害物質を用いて充填し、加熱装置の使用最高到達温度以下の温度域では、結晶子間の電子伝導は結晶子どうしの接点部ないし、結晶子間での電子のトンネル効果による導通が、結晶子どうしのその他の導通よりも支配的である。
【0068】
また、前記絶縁性物質或いは半導電性物質は窒化ホウ素、アルミナ、炭化珪素、炭化ホウ素等が推奨される。このような物質を用いることで発熱体の抵抗値制御が容易にできる。
【0069】
また、前記炭素系抵抗発熱体の熱処理時の熱処理温度は、850℃以上、1750℃以下であることが好ましい。上記温度にて熱処理することで、炭素系抵抗発熱体の抵抗変化率をゼロ近傍ないし、負にすることが可能となるとともに炭素系抵抗発熱体の抵抗値を実用的な抵抗値に調整することが出来、非通紙部昇温の抑制と電力の過不足がない加熱定着装置が提供できる。
【0070】
一般的にレーザービームプリンターにおけるフィルム加熱方式の加熱定着装置の発熱体の抵抗値としては、一般の家庭用電源に接続して使われることを考えると、3Ω以上、250Ω以下の範囲内にあることが望ましい。250Ω以上であると定着に必要な電力が得られにくくなり、3Ω以下であると発熱体への通電制御機構が複雑になってしまう。
【0071】
このように作られた炭素系抵抗発熱体は下記のような特徴がある。
【0072】
炭素系抵抗発熱体はある温度を境にその温度以下ではNTC特性を、その温度以上では正の抵抗温度特性(以下PTC特性と称す)を示す性質があり、その変曲点温度は700℃程度である。
【0073】
本実施例の炭素系抵抗発熱体3aの抵抗変化率は約−1000ppm/℃である。画像形成装置の待機時は加熱体の温度は常温付近になっているので、本実施例の発熱体3aの抵抗値は30Ωである。画像形成装置がプリント信号を受信すると発熱体3aに通電を開始し、定着温度付近まで温度が上昇するので、抵抗値が低くなる。定着温度を200℃とすると、発熱体3aの総抵抗は24.69Ωとなる。また仮に発熱体3aの温度が300℃になったとすると総抵抗は21.69Ωとなる。大サイズ紙を通紙しているときは、発熱体3aの中央部と端部で温度はほぼ同じであるので、中央部と端部の抵抗も同じであるが、小サイズ紙を通紙すると、前述した非通紙部昇温により端部の温度が中央部よりも高くなる。その影響で本実施例の場合は端部の抵抗は中央部の抵抗よりも低くなる。
【0074】
図9は抵抗発熱体のモデル図である。抵抗発熱体に流れる電流をIとし、中央部の抵抗をR1、端部の抵抗をR2とした場合、中央部の発熱量W1はI・R1であり、端部の発熱量W2はI・R2である(簡単のため、抵抗がR1の領域と抵抗がR2の領域の長さは同じと考える)。
【0075】
PTC発熱体において小サイズ紙を通紙した場合を考えると、R2>R1となるので、端部の発熱量W2は中央部の発熱量W1に比べて大きくなる。発熱量が大きくなると温度が上昇するので更に抵抗が高くなりまた発熱量が増えるという循環を繰り返してしまう。
【0076】
一方、NTC発熱体において小サイズ紙を通紙した場合を考えると、R2<R1となるので、端部の発熱量W2は中央部の発熱量W1に比べて小さくなる。
【0077】
いずれの場合も検温素子は中央部にあり、どちらも中央部の温度を一定にするように温度制御を行っているので、PTC発熱体の中央部の発熱量とNTC発熱体の中央部の発熱量はほぼ同じである。
【0078】
よって、NTC発熱体の端部の発熱量の方がPTC発熱体の端部の発熱量よりも小さくなり、NTC発熱体の方がPTC発熱体よりも端部の温度を低く押さえることができる。つまり炭素系抵抗発熱体は上記のような理由から端部の温度を低く抑えることが可能となるのである。
【0079】
(4)試 験
上記加熱体3を用いた定着装置114を画像形成装置であるプリンターに組み込み、com10封筒を連続で20枚連続通紙したときの封筒が通紙しない領域である非通紙部領域Cの加熱体3の裏面温度を測定した。プリンターのcom10を通紙する場合の条件は下記のようになる。
【0080】
比較例1としては、図10のように、熱伝導率λ=1.0W/m・K、材質PPSのステー1に、長さ250mm×幅2.5mm×厚さ1mmの炭素系抵抗発熱体を加熱体3´として直接組み込んだ定着装置構成にした。
【0081】
<プリンター通紙条件>
プロセススピード 120mm/s
com10 1分当たりの通紙枚数(スループット) 10ppm
定着制御温度 200℃
【0082】
【表1】

【0083】
表1が加熱体裏面の温度測定結果である。比較例1に関しては、PPS樹脂製ステー1は熱伝導率λ=1.0W/m・Kであるため非通紙部Cの熱が長手方向に伝わる速度が非常に遅いため加熱体の裏面温度は235℃まで上昇した。これに対し実施例1では加熱体裏面温度が212℃に収まっており、非通紙部昇温を抑えることが可能となる。これは基材3bの熱伝導率がλ=70W/m・Kであるため非通紙部昇温部の熱を長手方向に逃がすことが可能となるのである。
【0084】
上記に関して、非通紙部昇温のOKレベルは230℃未満、NGレベルは230℃以上である。これは加圧ローラの耐熱温度230℃が閾値となる。
【0085】
次に定着性の確認を行った。
【0086】
<定着性測定条件>
環境:15℃、10%R.H.
プロセススピード:120mm/s
通紙紙:Fox River Bond 90g紙
定着性印字パターン:印字率50%ハーフトーン、画像内で9点印字
定着装置が上記環境下で放置された状態から、1枚目の定着性測定
定着性測定方法:
印字した後に同条件でシルボンCで擦る前、擦った後の濃度を測定し、擦った後の濃度の低下率を計算した値を示す。値は9点の平均値。
【0087】
【表2】

【0088】
表2は定着性の測定結果を表している。
【0089】
定着性は、濃度低下率が20%以下がOKレベル、20%より大きい場合はNGレベルである。
【0090】
比較例1に関してはNGレベルである。これは、基材としてのステー1の熱伝導率λが低いため、ステー1への熱の伝わりが悪く、実質的に定着ニップ内の加熱領域が発熱体領域のみになってしまうため定着性レベルが低下してしまう。
【0091】
実施例1に関してはOKレベルである。これは基材3bの熱伝導率がλ=70W/m・Kであり高いため、基材3b、発熱体3aを合わせた加熱体全域への熱の伝わりが良く、実質的に加熱体全体が加熱領域になる。このため定着性も向上するのである。
【0092】
このようにして炭素系発抵抗熱体3aに熱伝導率λ=70W/m・K以上の基材3bを設けることにより、加熱体3の非通紙部昇温を抑えることが可能となる。更には定着ニップ内の加熱領域を広げることが可能となり、定着性を向上させることが可能となる。
【0093】
尚本実施例において、基材3bの材質を窒化アルミニウムとしたが、同様の効果が得られればこれに限定されることはない。例えば、炭化珪素などが挙げられる。また、炭素系抵抗発熱体の混合材質、材質比率も同様の効果が得られれば当然これに限定されない。
【0094】
ここで、基材3bの熱伝導率λの測定法は、テストピースにて、京都電子社製熱伝導率測定器QTM−500にて常温20℃で測定するものである。
【0095】
本発明において熱伝導率λを特に70W/m・K以上に特定した技術的意義は、70W/m・K以上の場合は実施例の測定条件にて、加熱体裏面の温度を230℃未満にすることが可能であるが、70W/m・K未満の場合は加熱体裏面の温度が230℃を超えてしまうことにある。230℃は加圧ローラの耐熱温度に対応する。
【実施例2】
【0096】
以下に本発明の実施例2を図5を用いて説明する。本実施例の特徴とするところは実施例1において加熱体3の基材3bの材質が金属であるアルミニウムになっている点であり、それ以外は実施例1と同様であるため全体構成、発熱体の説明、及び構成図は省略する。
【0097】
本実施例の加熱体3において、炭素系抵抗発熱体3aは、塩素化塩化ビニル樹脂、黒鉛、窒化硼素(金属化合物)を混合、分散させて、成型後に1500℃で熱処理し、長さ250mm×幅2.5mm×厚さ1mm、総抵抗値30Ωとした。
【0098】
基材3bは発熱体3a自体の強度アップのためフィルム2と接触する反対面側に設置する。またその時に、非通紙部昇温対策、定着性向上ために基材3bの熱伝導率λ=70W/m・K以上の材質が好ましい。
【0099】
本実施例においては熱伝導率λ=230W/m・Kのアルミニウムを用いた。基材3aのサイズは実施例1の基材3bのサイズと同じであり、加熱体自体は発熱体3aが基材3bに収まるような構成になっており、エポキシ樹脂接着層を5μmとして発熱体3aと基材3bを接着している。エポキシ樹脂接着層が5μmであれば発熱体3aから基材3bへの熱伝達は問題無く、更には炭素系抵抗発熱体3aと基材3bとの絶縁が確保できることも実験により確認されている。
【0100】
上記構成を用いて、次に実施例1と同じ条件で非通紙部昇温を測定したところ203℃となり、更に温度を下げることが可能となった。またcom10のスループットを紙間をつめて20ppmにしても非通紙部昇温は217℃に収まっており、com10のスループットを上げることも可能となる。これは基材3bの熱伝導率をλ=230W/m・Kとしたため、更に非通紙部で発生した熱を長手方向で上手く逃がすことが可能となったのである。
【0101】
最後に実施例1と同じ条件で定着性を測定したところ濃度低下率は13%となり、OKレベルとなった。これも基材3bの熱伝導率を上げたため実施例1と同様のメカニズムで定着性を向上させることが可能となったのである。
【0102】
このようにして炭素系抵抗発熱体3aに基材3bとして金属である熱伝導率λ=230W/m・Kのアルミニウムを設けることにより、加熱体3の非通紙部昇温を抑えることが可能となる。更には定着ニップ内の加熱領域を広げることが可能となり、定着性を向上させることが可能となる。
【0103】
尚本実施例において、基材3bの材質をアルミニウムとしたが、同様の効果が得られればこれに限定されることはない。例えば、銀、銅などが挙げられる。また、炭素系抵抗発熱体の混合材質、材質比率も同様の効果が得られれば当然これに限定されない。
【0104】
[その他]
1)加熱体3のフィルム摺動面側の炭素系抵抗発熱体面又は/及び基材面に、必要に応じて、潤滑材層などの所望の機能層を付加することができる。
【0105】
2)本発明に係る加熱体3は、実施例のフィルム加熱方式の定着装置における加熱源としての使用に限られるものではなく、被加熱材を加熱する加熱装置の加熱源として広く用いることができることは勿論である。
【0106】
3)本発明の加熱装置は、実施例の画像加熱定着装置に限られず、その他、画像を仮定着する像加熱装置、画像を担持した記録媒体を再加熱してつや等の表面性を改質する像加熱装置等としても使用できる。また、例えば紙幣等のシワ除去用の熱プレス装置、熱ラミネート装置、紙等の含水分を蒸発させる加熱乾燥装置などの加熱装置等として用いても有効であることは勿論である。
【0107】
4)加熱装置がフィルム加熱方式の加熱装置である場合において、可撓性部材であるフィルム2の駆動方式は実施例の加圧部材駆動方式に限られない。エンドレスの可撓性部材の内周面に駆動ローラを設け、可撓性性部材にテンションを加えながら駆動する装置構成であってもよいし、可撓性性部材をロール巻きの有端ウエブ状にしてこれを繰り出しながら走行移動させる装置構成にすることもできる。加圧部材6はローラ体に限られず、回動ベルト体にすることもできる。温度検知素子5はサーミスタに限られない。接触型または非接触型の各種のものを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施例1における画像形成装置の構成説明図である。
【図2】実施例1における加熱定着装置の要部の横断面模型図である。
【図3】同じく要部の斜視模型図である。
【図4】(a)はステーの正面模型図、(b)は底面模型図である。
【図5】(a)は加熱体の斜視模型図、(b)は分解斜視模型図である。
【図6】加熱体を固定支持させたステーの底面模型図である。
【図7】定着装置の定着ニップ部分の拡大横断面模型図である。
【図8】加熱体に対する給電制御回路系のブロック図である。
【図9】発熱体のモデル図である。
【図10】比較例の定着装置の定着ニップ部分の拡大横断面模型図である。
【符号の説明】
【0109】
1・・横長ステー、2・・耐熱性フィルム、3・・加熱体、3a・・炭素系抵抗発熱体、3b・・基材、3c・・電極、3d・・電極、4・・加圧部材、5・・温度検知素子(検温素子)、6・・加圧ローラ、11・・CPU、12・・トライアック、13・・AC電源、101・・有機感光ドラム、102・・帯電ローラ、103・・レーザー露光装置、104・・現像装置、105・・クリーニング装置、105a・・クリーニングブレード、1112・・転写ローラ、114・・定着装置、P・・記録材、t・・トナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱材を加熱する加熱装置に用いられる加熱体において、
少なくとも、熱伝導率λ=70W/m・K以上である基材と、炭素を導電物質として利用し、少なくとも有機物を含有する原材料を炭素の非酸化雰囲気中にて熱処理し有機物を炭化させることで製造された炭素系抵抗発熱体と、該炭素系抵抗発熱体に給電する電極からなることを特徴とする加熱体。
【請求項2】
前記炭素系抵抗発熱体は、熱処理により炭化させる有機物と、この有機物に少なくとも、絶縁性或いは半導電性の物質を一種又は数種を混合し、これを成形後、炭素の非酸化雰囲気中にて熱処理したものであることを特徴とする請求項1に記載の加熱体。
【請求項3】
前記炭素の非酸化雰囲気中とは室圧よりも減圧した雰囲気中や真空中、ないし窒素ガス中、不活性ガス中であることを特徴とする請求項1または2に記載の加熱体。
【請求項4】
前記炭素系抵抗発熱体は負の抵抗温度特性をもつことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の加熱体。
【請求項5】
前記基材は窒化アルミニウムであることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の加熱体。
【請求項6】
前記基材は金属であることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の加熱体。
【請求項7】
支持部材に固定支持された加熱体と、一面が加熱体と接触摺動し、他面が被加熱材と接触する可撓性部材とを有し、加熱体上を可撓性部材と被加熱材が一緒に移動することで加熱体の熱を可撓性部材を介して被加熱材へ伝達する加熱装置において、前記加熱体は請求項1〜6の何れかに記載の加熱体であることを特徴とする加熱装置。
【請求項8】
記録材上に画像を形成する像形成手段と、前記記録材上の画像を加熱定着する像加熱定着手段とを有する画像形成装置において、前記像加熱定着手段として請求項7に記載の加熱装置を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−134746(P2006−134746A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−323640(P2004−323640)
【出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】