説明

加熱装置およびそれを搭載した電気自動車

【課題】従来の加熱装置およびそれを搭載した電気自動車では、バッテリーを加熱するためヒータを発熱させると、常にバッテリーと床の両方が加熱され続けるという課題がある。
【解決手段】バッテリー1を後部座席足元の床19の下に装着した電気自動車16の、バッテリー1の上面と床19との間に配置する加熱装置10であって、加熱装置10は、バッテリー1に装着させるエアバッグ12と、エアバック12のバッテリー1側とは反対の面に装着した電気ヒータ12と、空気導入手段13と、空気排出手段14を備えている。これにより、エアバッグ12に空気を入れずに電気ヒータ11を発熱させて、バッテリー1と床19の双方を加熱し、エアバッグ12に空気を入れて電気ヒータ11を発熱させて、床19のみを加熱することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車のバッテリーと車内とを加熱する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の加熱装置として、バッテリーの上にPTCヒータを配置したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図4は、特許文献1に記載された従来の加熱装置およびそれを搭載した電気自動車の平面構成図である。車両床下に配置されたバッテリー1の上にPTC特性を持つ電気ヒータ2が配置されており、バッテリー1にはバッテリー温度センサ3が配置されている。バッテリー温度センサ3によりバッテリー1の温度測定を行い、バッテリー1の温度が20℃以下の低温の時には、PTCヒータ2に電力を供給してバッテリー1を加熱する。
【0004】
これは、バッテリー1として使用しているリチウムイオンバッテリーの特性として、低温になると容量が低下し、その結果、航続距離の低下を招くからである。屋内で使用される電気製品と違い、寒冷地などでは冬季の低温環境の影響が避けられないため、対策が必要となりバッテリー1を加熱する電気ヒータ2を設置している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−143609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の加熱装置およびそれを搭載した電気自動車では、バッテリー1を加熱するため電気ヒータ2を発熱させると、常にバッテリー1と床の両方が加熱され続けるという課題がある。たとえば、電池は走行による放電と充電を続けるうち自己発熱で温度が上昇するため、走行途中で加熱を止め、バッテリーを冷却する必要がある。それは、リチウムイオンバッテリーは高温条件では熱分解等の問題が発生するためである。一方車内の人は、走行中は常に寒さを感じるため、継続してヒータの加熱による暖房が必要になる。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、バッテリーと床両方を加熱することもでき、また必要に応じてバッテリーを断熱し、床のみを加熱することもできる加熱装置およびそれを搭載した電気自動車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記従来の課題を解決するために、本発明の加熱装置およびそれを搭載した電気自動車は、駆動電力を供給するためのバッテリーを後部座席足元の床の下に装着した電気自動車の、前記バッテリーの上面と前記床との間に配置する加熱装置であって、前記加熱装置は、前記バッテリーに装着させる熱伝導性の良い素材からなるエアバッグと、前記エアバックの前記バッテリー側とは反対側の面に装着した電気ヒータと、前記エアバッグに空気を導入する空気導入手段と、前記エアバッグ内の空気を抜く空気排出手段からなるものである。これにより、エアバッグから空気を抜いて電気ヒータを発熱させると、バッテリーと床の双方を加熱することができ、また、エアバッグに空気を入れて電気ヒータを発熱させることで、床のみを加熱し、バッテリーはエアバッグ内の空気による断熱作用で加熱を抑制することができる。そのため単一の電気ヒータでバッテリー1と床の両方を効率的に加
熱し、またバッテリーに熱を伝えず床のみを選択して加熱することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の加熱装置およびそれを搭載した電気自動車は、バッテリーと床の両方、もしくは床のみを選択して加熱することが可能となるため、1つのヒータでバッテリーと床の双方を加熱することができる。また、バッテリーが温まった後では、エアバッグによる空気断熱によりバッテリーへの熱を遮断して無駄な電力消費を抑えるため省エネ性能に優れかつ快適な加熱装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱装置およびそれを搭載した電気自動車の側面構成図
【図2】本発明の実施の形態1における加熱装置の要部構成図
【図3】本発明の実施の形態1における加熱装置の要部構成図
【図4】従来の加熱装置およびそれを搭載した電気自動車の平面構成図
【発明を実施するための形態】
【0011】
第1の発明は、駆動電力を供給するためのバッテリーを後部座席足元の床の下に装着した電気自動車の、バッテリーの上面と前記床との間に配置する加熱装置であって、加熱装置は、バッテリーに装着させる熱伝導性の良い素材からなるエアバッグと、エアバックのバッテリー側とは反対側の面に装着した電気ヒータと、エアバッグに空気を導入する空気導入手段と、エアバッグ内の空気を抜く空気排出手段からなる加熱装置とすることにより、エアバッグから空気を抜いて電気ヒータを発熱させると、床には直接熱が伝わる。そして、空気の抜けたエアバッグは袋の両面が密着し、素材の特性により熱が良く伝わるようになるため、バッテリーにも床同様に良く熱が伝わり、結果として、バッテリーと床の双方を加熱することがでる。また、エアバッグに空気を入れて電気ヒータを発熱させることで、床のみを加熱し、バッテリーはエアバッグ内の空気による断熱作用で加熱を遮断することができる。従って単一の電気ヒータでバッテリーと床の両方を効率的に加熱し、またバッテリーに熱を伝えず床のみを選択して加熱することが可能となり、無駄な電力消費を抑え省エネ性能に優れた加熱装置を提供することができる。
【0012】
第2の発明は、特に第1の発明に記載の加熱装置において、外気温情報を入力する外気温入力部と、電気ヒータおよび空気導入手段および空気排出手段の動作制御を行う制御手段を備え、制御手段は、外気温入力部に入力された外気温情報が所定温度以下の場合に、空気排出手段を動作させてエアバッグの空気を排出するとともに、電気ヒータに通電動作をし、バッテリーが加熱されるとともに、床を通じて後部座席足元が加熱される構成とすることにより、外気温度が低いせいでバッテリーの容量が低下し、かつ乗車する人が寒さを感じるときに、バッテリーと床の双方を加熱することとなり、電力を有効に活用して双方を加熱することができる。
【0013】
第3の発明は、特に第2の発明の加熱装置において、バッテリー温度情報を入力するバッテリー温度入力部を備え、制御手段は、バッテリーの暖気完了後には空気導入手段を動作させて前記エアバッグに空気を導入し、前記動作により、電気ヒータからバッテリーへの熱伝導が抑制され、床を通じた後部座席足元の加熱が優先される構成とすることで、バッテリーがある程度の温度になったら自己発熱により温度が維持、または上昇するので、エアバッグに空気を入れて電気ヒータを発熱させることで、床のみを加熱し、バッテリーはエアバッグ内の空気による断熱作用で加熱を遮断することとなり、無駄な電力消費を抑え省エネ性能に優れた加熱装置を提供することができる。
【0014】
第4の発明は、特に第2の発明の加熱装置において、制御手段は、外気温入力部に入力
された外気温情報が所定温度以上の場合に、空気導入手段を動作させてエアバッグに空気を導入するとともに、電気ヒータの通電動作は行わず、前記動作により、バッテリーの自己発熱による熱が床に伝導することを抑制する構成とすることで、自己発熱により温度が上昇するバッテリーはエアバッグ内の空気による断熱作用で熱を遮断されるので、床の過熱による不快感を抑制し快適性が向上する。また、乗車する人の暑さを抑えるための冷房装置の作動を抑制することができるので省エネ性能を向上させることができる。
【0015】
第5の発明は、特に第1から第4のいずれか1つの発明の加熱装置を搭載した電気自動車とすることで、冬季のような外気温の低い時期にバッテリーにも床同様に良く熱が伝わり、結果として、バッテリーと床の双方を加熱することがでる。
【0016】
同じく冬季にバッテリーがある程度の温度になったら自己発熱により温度が維持、または上昇するので、エアバッグに空気を入れて電気ヒータを発熱させ床のみを加熱することができる。
【0017】
また、夏季のような外気温の高い時期には、エアバッグ内の空気による断熱作用で、バッテリーの自己発熱による熱が床に伝わるのを抑制することとなる。従って、電力を有効に活用して、バッテリーと床の双方を加熱することができる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお本実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
本発明の第1の実施の形態における加熱装置およびそれを搭載した電気自動車について図1、図2および図3を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態における加熱装置およびそれを搭載した電気自動車の側面構成図である。図2(a)、(b)、および図3は、加熱装置の要部構成図である。
【0020】
図1において、本発明の加熱装置10は、面状のPTC特性を持つ電気ヒータ11と、
エアバッグ12と電動ポンプ(空気導入手段)13と電磁弁(空気排出手段)14と、これらを制御するマイコン(制御手段)15からなり、マイコン15は、電気自動車16に搭載されている外気温度センサ17からの信号を入力する外気温度入力ポート(外気温入力部)15Aと、バッテリー1に設置されているバッテリー温度センサ18からの信号を入力する電池温度入力ポート(バッテリー温度入力部)15Bを備えている。
【0021】
電気ヒータ11はエアバッグ12の上面に、熱融着による溶着や接着剤による接着などの方法により熱結合よく着接されている。また、エアバッグ12の一端には電動ポンプ13が中空パイプを介して接続されており、他端には電磁弁14が中空パイプを介して接続され、エアバッグ12内に空気を導入排気する。
【0022】
また、エアバッグ12の素材は熱伝導性が良いほうが好ましく、例えばシリコンゴム(熱伝導率λ=0.419W/mK前後)や、ウレタンゴム(λ=0.209W/mK前後)などが天然ゴム(λ=0.06W/mK前後)より好ましい。また、グラファイトのシート(λ=200〜600W/mK前後)をエアバッグの素材に用いればなお良い。
【0023】
ただ、流れの無い空気の熱伝導率は0.03W/mK程度なので、それ以上の熱伝導率がある素材を用いたエアバッグ12は良熱伝導としての効果が期待できる。
【0024】
このように構成された加熱装置10が、電気自動車16の後部座席足元の床19下に、電気ヒータ11を上にして床19と熱結合よく、例えばサーマルグリス等を介して設置さ
れている。
【0025】
また、図2(a)において、エアバッグ12の空気は抜かれた状態を示している。加熱装置10は、後部座席足元の床19下に、電気ヒータ11を上にして床19と熱結合よく設置されている。また、の床19の車内側にはフロアカーペット20が敷かれ、その上に電気自動車16の後部座席に搭乗した人の足21が載せられる。
【0026】
以上のように構成された加熱装置およびそれを搭載した電気自動車16について、以下その動作、作用について説明する。
【0027】
まず、冬季の早朝など外気温度が低いときの動作について図2(a)を用いて説明する。電気自動車16の主電源を投入すると、本発明の加熱装置10は、外気温度センサ17からの信号を外気温度入力ポート15Aに受け、マイコン15は予め決められた閾値(この例では0℃)以下か否かを判定する。閾値以下であったとき、電磁弁14を開きエアバッグ12内の空気を抜き、それと同時に電気ヒータ11に通電する。
【0028】
すると、電気ヒータ11の熱は床19に直接伝わりフロアカーペット20を介して人の足21を暖める。一方で電気ヒータ11の熱は、空気が抜かれて密着しているエアバッグ12を伝わりバッテリー1を暖める。電気自動車の床19は通常鋼材で作られているため熱伝導性が良く、エアバッグ12も熱伝導性の良い素材で構成されているため、単一の電気ヒータ11で双方を効率よく加熱し、電池容量の低下による航続距離の低下を防ぎ、かつ快適な加熱装置を提供することができる。尚、マイコン15の予め決められた閾値は、0℃に限定されるものではなく、例えば春秋季の平均最高気温(約20℃)を閾値として電気ヒータ11の通電、非通電を切り替えても良い。
【0029】
次に、電気自動車16をある程度連続運転しバッテリー1の暖気が終わったときの動作を、図2(b)を用いて説明する。バッテリー1はある程度走行して使用すると、自己発熱により温度が上昇するため電気ヒータ11による加熱が不要になる。バッテリー温度センサ18からバッテリー1の温度が、常にマイコン15のバッテリー温度入力ポート15Bに入力されており、バッテリー1の温度が所定の閾値(例えば20℃)以上になったときに、マイコン15は、電動ポンプ13(空気導入手段)を動作させてエアバッグ12に空気を導入する。このとき電磁弁14は閉じておきエアバッグ12内の空気が漏れ抜けないようにする。また、このとき外気温度が低ければ電気ヒータ11は継続して通電して加熱を継続する。
【0030】
すると、バッテリー1はエアバッグ12内の空気による断熱作用で電気ヒータ11による加熱が遮断され、それ以上加熱されないため自己発熱により作動に適切な温度に調整されることができる。一方床19はエアバッグ12の動作と無関係に熱が伝わるため床19を暖め続けることができる。
【0031】
従って、バッテリー1の温度が上がってからは、床19を介して人の足21を集中的に加熱し、バッテリー1はエアバッグ12内の空気による断熱作用で加熱を遮断することで、無駄な電力消費を抑え省エネ性能に優れ、なおかつ快適な加熱装置10を提供することができる。
【0032】
次に、冬季以外の季節などにおいて暖房や加熱を必要としない時期の動作について図3を用いて説明する。
【0033】
外気温度が高く、例えば20℃以上あるときは、バッテリー1は暖める必要は無い、また搭乗する人も外気温度が20℃〜25℃程度またはそれ以上あれば暖房を必要としない
ため、外気温度センサ17の信号を受けたマイコン15は電気ヒータ11には通電しない。その上で、電動ポンプ13によりエアバッグ12に空気を導入する。
【0034】
すると、エアバッグ12内の空気による断熱作用で、バッテリー1の自己発熱による熱が床19にするのを抑制するため、熱さが搭乗者の足21に伝わることが無い快適な環境を提供することができる。
【0035】
また、暑さが伝わらないことで、冷房の設定温度を上げることができるので、無駄な電力消費を抑えた省エネ性能に優れ、なおかつ快適な加熱装置10を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
以上のように、本発明にかかる加熱装置は、バッテリーと足部の双方または足部のみを適宜切り替えて加熱することのできる、省エネ性能に優れ快適な足部暖房が可能であるため、エンジンの廃熱の小さいハイブリッド自動車のエアコン暖房の効き始めの遅さを補い、快適な暖房空間を提供する装置としても応用可能である。
【符号の説明】
【0037】
1 バッテリー
10 加熱装置
11 電気ヒータ
12 エアバッグ
13 電動ポンプ(空気導入手段)
14 電磁弁(空気排出手段)
15 マイコン(制御手段)
15A 外気温度入力ポート(外気温入力部)
15B 電池温度入力ポート(バッテリー温度入力部)
19 床(後部座席足元の床)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動電力を供給するためのバッテリーを後部座席足元の床の下に装着した電気自動車の、前記バッテリーの上面と前記床との間に配置する加熱装置であって、
前記加熱装置は、
前記バッテリーに装着させる熱伝導性の良い素材からなるエアバッグと、
前記エアバックの前記バッテリー側とは反対側の面に装着した電気ヒータと、
前記エアバッグに空気を導入する空気導入手段と、
前記エアバッグ内の空気を抜く空気排出手段からなる、
加熱装置。
【請求項2】
外気温情報を入力する外気温入力部と、
前記電気ヒータおよび前記空気導入手段および前記空気排出手段の動作制御を行う制御手段を備え、
前記制御手段は、前記外気温入力部に入力された外気温情報が所定温度以下の場合に、前記空気排出手段を動作させて前記エアバッグの空気を排出するとともに、前記電気ヒータに通電動作をし、
前記動作により、前記バッテリーが加熱されるとともに、前記床を通じて前記後部座席足元が加熱される、
請求項1記載の加熱装置。
【請求項3】
バッテリー温度情報を入力するバッテリー温度入力部を備え、
前記制御手段は、前記バッテリーの暖気完了後には前記空気導入手段を動作させて前記エアバッグに空気を導入し、
前記動作により、前記電気ヒータから前記バッテリーへの熱伝導が抑制され、前記床を通じた前記後部座席足元の加熱が優先される、
請求項2記載の加熱装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記外気温入力部に入力された外気温情報が所定温度以上の場合に、前記空気導入手段を動作させて前記エアバッグに空気を導入するとともに、前記電気ヒータの通電動作は行わず、
前記動作により、前記バッテリーの自己発熱による熱が前記床に伝導することを抑制した、
請求項2記載の加熱装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の加熱装置を搭載した電気自動車。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−51538(P2011−51538A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204270(P2009−204270)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】