説明

加熱調理器用調理鍋および加熱調理器

【課題】効率的に加熱できるうえ、無駄な放熱も抑制可能な使用性の良い加熱調理器用調理鍋および加熱調理器を提供する。
【解決手段】上端を開口した有底筒状の調理鍋30を収容部13に着脱可能に収容し、調理鍋30の側面部32を収容部13の外側に配設した側部加熱手段24,51によって加熱することにより、調理鍋30内に収容した調理物を加熱する加熱調理器10およびその調理鍋30であって、調理鍋30の側面部32に、外向きに突出する被加熱部39を形成し、収容部13に、調理鍋30の被加熱部39の外側に所定間隔をもって位置するように、内向きに突出する隆起部23を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炊飯器、もちつき機および製パン機などの加熱調理器用調理鍋および加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の調理器は、調理物を収容する調理鍋が調理器本体の収容部に着脱可能に収容される。そして、予め設定されたプログラムに従って調理器本体内部に配設した加熱手段を制御することにより、調理鍋を介して内部の調理物を加熱して所定の調理を実行する。
【0003】
調理鍋の底面部を加熱する底部加熱手段としては、電流の通電により発生する高周波磁界によって調理鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルや、ヒータを内蔵した加熱板が用いられる。この底部加熱手段は、高い加熱力が得られる高出力(例えば1200W)のものが用いられる。また、調理鍋の側面部を加熱する側部加熱手段としては、ヒータを配設したバンドヒータや、調理鍋を誘導加熱する誘導加熱コイルが用いられる。この側部加熱手段は、調理物の焦げ付きを防ぐために、底部加熱手段より低い低出力(例えば50W)のものが用いられる。
【0004】
調理鍋は、鍋本体(母材)の表面に加熱手段によって加熱される被加熱層が形成されている。特許文献1には誘導加熱型炊飯器用の炊飯鍋が記載されている。この炊飯鍋は、炭素成形体である炭をプレス加工してなる鍋本体の底側表面に、アルミニウム材質の外部ボディ層を形成し、この外部ボディ層の表面に、被加熱層としてステンレススチール材質の磁性層が形成されている。また、この磁性層の表面には、磁性膜の酸化を防止するためのアルミニウム材質のカバー層が形成され、このカバー層の表面に活性樹脂材質のコーティング層が形成されている。
【0005】
このような被加熱層を設けた調理鍋を底部加熱手段および側部加熱手段を有する加熱調理器で加熱すると、鍋全体に効率よく熱を加えて調理物を調理することが可能である。
【0006】
しかしながら、側部加熱手段は収容部の外側に配設されるため、その出力に対する調理鍋の実際の加熱量は低く、加熱ロスが多いという問題がある。なお、側部加熱手段の出力が大きいものを使用すれば、必要な加熱量は得ることが可能であるが、この場合には無駄な電力消費が増大する。また、収容部の側壁と調理鍋との間には、調理鍋の着脱時の使用性を考慮して所定の隙間が形成されている。よって、側部加熱手段による加熱を停止すると、その隙間から調理鍋の熱が放出され、調理鍋内では放熱による結露が発生するという不都合がある。
【0007】
これに対して特許文献2には、収容部の中間位置に段部を設け、この段部の外部(下面)に側部加熱手段を配設した炊飯器が記載されている。この炊飯器の炊飯鍋には、段部に載置される円環状の突部が突設されている。そのため、この炊飯器では、突部を介して炊飯鍋の中間領域を効率的に加熱できる。また、段部に突部を載置した状態では、収容部の下側領域に閉塞された空間が形成されるため、側部加熱手段を停止した際の放熱を防止することができる。
【0008】
しかし、特許文献2のように、収容部内に調理鍋を受ける段部を設ける場合、収容部の構成が複雑になるだけでなく、段部の剛性および精度を考慮した設計が必要になる。しかも、調理鍋を収容部内に配置する際には、側面部から大きく突出した突部が収容部の上端開口の周縁に干渉するため、使用性が悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−167620号公報
【特許文献2】特開平9−37993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明では、効率的に加熱できるうえ、無駄な放熱も抑制可能な使用性の良い加熱調理器用調理鍋および加熱調理器を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するため、本発明の加熱調理器用調理鍋は、上端を開口した有底筒状をなし、調理器本体の収容部に着脱可能に収容され、この調理器本体内に配設した底部加熱手段および側部加熱手段によって底面部および側面部が加熱されることにより、内部に収容した調理物を加熱する加熱調理器用調理鍋であって、前記側面部に、前記側部加熱手段に対して所定間隔をもって位置し、外向きに突出する被加熱部を形成した構成としている。
【0012】
この調理鍋は、側面部に被加熱部を外向きに突出させているため、この被加熱部を側部加熱手段に近づけることができる。よって、側部加熱手段によって被加熱部を効率よく昇温させ、内部の調理物に熱を伝えることができる。また、被加熱部の形成位置では、収容部との間の隙間が小さくなるため、被加熱部の下側に放熱を抑制した断熱空間を形成することができる。よって、調理鍋内での結露を防止できるとともに、保温性能を向上することができる。
【0013】
この加熱調理器用調理鍋では、前記側部加熱手段は側部ヒータであり、前記被加熱部は熱伝導性が良い非磁性材からなることが好ましい。
または、前記側部加熱手段は側部ヒータであり、前記被加熱部は蓄熱性が高い金属からなることが好ましい。
または、前記側部加熱手段は側部誘導加熱コイルであり、前記被加熱部は渦電流の発生より誘導加熱される磁性材からなることが好ましい。
このようにすれば、側部加熱手段に応じて被加熱部を確実に昇温させることができる。
【0014】
また、側部加熱手段を側部ヒータとする場合、前記底部加熱手段は底部誘導加熱コイルであり、前記被加熱部の下端は前記底部誘導加熱コイルの上端近傍まで設けられることが好ましい。ここで、被加熱部を底部誘導加熱コイルの上端を越えて底面部近傍まで設けると、底部誘導加熱コイルで加熱された磁性材の熱が、調理鍋内だけでなく、調理鍋外表面の非磁性材にも伝わる。その結果、調理鍋内だけを効率的よく加熱することができない。そのため、被加熱部を底部誘導加熱コイルの上端近傍までとすることにより、前述のような問題が生じることを防止し、調理鍋内を効率よく加熱することができる。
【0015】
しかも、前記被加熱部は、満量の調理物を加熱する際の水位近傍に位置するように設けられることが好ましい。ここで、調理鍋に加わった熱は、上端開口に近づくに従って放熱量が増える。そのため、被加熱部の上端を満量の調理物を加熱する際の水位近傍までとすることにより、無駄な放熱を抑制して、調理鍋内を効率よく加熱できる。
【0016】
さらに、前記被加熱部は、溶射または塗装により設けられることが好ましい。このようにすれば、無端状に連続した形状、断続的な不連続形状、多数のディンプル形状、波形状、矩形状など、簡単かつ確実に希望形状の被加熱部を形成することができる。
そして、前記被加熱部を、上端開口側から前記底面部側に向けて複数設けることが好ましい。このようにすれば、側部加熱手段によって被加熱部を介して鍋本体を確実に加熱できる。
【0017】
また、本発明の加熱調理器は、上端を開口した有底筒状の調理鍋を収容部に着脱可能に収容し、この調理鍋の側面部を前記収容部の外側に配設した側部加熱手段によって加熱することにより、前記調理鍋内に収容した調理物を加熱する加熱調理器であって、前記調理鍋の側面部に、外向きに突出する被加熱部を形成し、前記収容部に、前記調理鍋の被加熱部の外側に所定間隔をもって位置するように、内向きに突出する隆起部を設けたものである。
【0018】
この加熱調理器は、隆起部を調理鍋の側面部に近づけることができるとともに、被加熱部を側部加熱手段に近づけることができる。よって、側部加熱手段によって被加熱部を効率よく昇温させ、調理鍋内の調理物に熱を伝えることができる。また、隆起部の形成位置では、調理鍋との間の隙間が小さくなるため、隆起部の下側に放熱を抑制した断熱空間を形成することができる。よって、調理鍋内での結露を防止できるとともに、保温性能を向上することができる。
【0019】
この加熱調理器では、前記収容部の隆起部は、収容した前記調理鍋の被加熱部と上下方向に一致する位置またはその近傍に設けられることが好ましい。
また、前記側部加熱手段は側部ヒータであり、前記収容部の隆起部を無端状に連続した円環形状に形成し、前記側部ヒータの少なくとも一部のヒータ線を前記隆起部に沿って配設することが好ましい。
または、前記収容部の隆起部は、ディンプル形状をなすように設けた複数の突部からなるようにしてもよい。
これらようにすれば、側部加熱手段の熱を収容部の隆起部から調理鍋の被加熱部に効率よく伝えることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、調理鍋から被加熱部を外向きに突出させ、収容部から隆起部を内向きに突出させている。そのため、側部加熱手段と調理鍋の側面部とを近づけることができる。よって、側部加熱手段によって被加熱部を効率的に昇温させ、調理鍋に伝えて調理物を加熱することができる。また、被加熱部および隆起部の形成位置では、調理鍋と収容部との間の隙間が小さくなるため、下側に放熱を抑制した断熱空間を形成することができる。よって、調理鍋内での結露を防止できるとともに、保温性能を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態の調理鍋および加熱調理器を示す断面図である。
【図2】調理鍋と収容部を示す分解斜視図である。
【図3】(A)は図1の要部拡大断面図、(B)は(A)の要部拡大断面図である。
【図4A】調理鍋および加熱調理器の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図4B】調理鍋および加熱調理器の他の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図5】調理鍋の他の変形例を示す断面図である。
【図6】調理鍋の他の変形例を示す斜視図である。
【図7】第2実施形態の調理鍋および加熱調理器を示す断面図である。
【図8】加熱調理器の他の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0023】
図1は、本発明に係る第1実施形態の加熱調理器である炊飯器10を示す。この炊飯器10は、炊飯器本体11の収容部13に加熱調理器用調理鍋(以下「炊飯鍋」と称する。)30を着脱可能に配設し、炊飯鍋30内にセットした飯米および水を誘導加熱コイル19、側部ヒータ24および蓋ヒータ(図示せず)によって加熱して調理するものである。そして、本実施形態では、炊飯鍋30に外向きに突出する被加熱部(第2被加熱層39)を設けるとともに、収容部13に内向きに突出する隆起部23を設け、加熱効率と保温効率とを向上できるようにしたものである。
【0024】
炊飯器本体11には、上部に位置する肩体12に炊飯鍋30を配置するための開口部が設けられている。この開口部の下側には、受皿状をなす保護枠14と、円筒状をなす内胴21とが配設され、これらによって炊飯鍋30の収容部13が形成されている。
【0025】
保護枠14は、図2に示すように、非導電性材料である樹脂を射出成形することにより形成される。この保護枠14の上端には、内胴21を配設するためのガイド部15が設けられている。また、保護枠14の外周部には、炊飯器本体11に連結するためのボス部16が設けられている。さらに、保護枠14には、炊飯鍋30の温度を検出する鍋用温度センサ17の検出部を貫通させる貫通孔18が設けられている。そして、保護枠14の下部外周面には、炊飯鍋30の底面部31の側を誘導加熱する底部加熱手段である誘導加熱コイル19がフェライトコア20を介して配設されている。この誘導加熱コイル19の上端は、炊飯鍋30の湾曲部33の上端、即ち、側面部32の下端より下側に位置する。
【0026】
内胴21は、鉄またはステンレスを加工して形成され、保護枠14と肩体12の開口部との間に挟み込んで配設される円筒状のものである。内胴21の上下端には、円筒状に維持するために径方向外向きにカール加工を施した補強部22が設けられている。また、内胴21には、内向きに突出するように屈曲加工を施した隆起部23が設けられている。図3(A),(B)に示すように、この隆起部23の内端部23aは、収容部13に配置した炊飯鍋30の側面部32(第2被加熱層39)に対して、所定隙間をあけて外側に位置するように設けられている。隆起部23の上端は、収容部13に炊飯鍋30を配置した状態で、満量の飯米を炊飯する際の水位(目盛35a)に位置するように設けられている。そして、内胴21の外周面には、炊飯鍋30の側面部32を加熱する側部加熱手段である側部ヒータ24が配設されている。この側部ヒータ24は、一対のヒータ線25a,25bを所定間隔をもって平行に配置したバンドヒータからなる。そのうち、下側に位置するヒータ線25bは、隆起部23に位置するように配設される。
【0027】
図1に示すように、炊飯器本体11の上部には、蓋体26が開閉可能に配設されている。この蓋体26には、炊飯鍋30の上端開口を密閉する内蓋27が配設されている。また、図示していないが、蓋体26には、炊飯鍋30内と外部を連通する排気通路と、炊飯鍋30の上部空間を加熱する上部加熱手段である蓋ヒータと、炊飯鍋30内の温度を検出する第2温度検出手段である蓋用温度センサとが配設されている。
【0028】
この炊飯器10は、制御手段であるマイコンが、各温度センサからの入力値に基づいて、予め設定されたプログラムに従って加熱手段を制御する。これにより、炊飯鍋30内にセットされた調理物である飯米と水を加熱し、予熱、中ぱっぱ、沸騰維持およびむらしなどの各工程を実行して米飯を炊き上げる(調理する)。
【0029】
炊飯鍋30は、図2に示すように、底面部31が略平坦な円板状をなし、側面部32が略円筒状をなすように上向きに延びる有底円筒状のものである。具体的には、側面部32は、略上側半分に位置する円筒部32aと、略下側半分に位置する下向きに直径が小さくなった円錐筒部32bとを有する形状をなす。底面部31と側面部32の間には、所定の曲率で湾曲させた湾曲部33が設けられている。また、炊飯鍋30の上端には、径方向外向きに屈曲した位置決めフランジ部34が設けられている。さらに、側面部32の内面側には、炊飯容量毎の加水量(位置)を示す目盛35が印刷により設けられている。
【0030】
この炊飯鍋30は、図3に示すように、鋳造、溶湯鍛造、深絞りなどの所定の方法で形成される鍋本体を備えている。本実施形態の鍋本体は、熱伝導性が良好な非磁性材であるアルミニウムからなる伝熱層36と、その外側表面に位置する磁性材であるステンレス(SUS430)からなる第1被加熱層37とを有するクラッド材を、深絞り加工することにより形成されている。そして、第1被加熱層37の表面には第2被加熱層39が設けられ、伝熱層36の内側表面には下地コート層41とフッ素コート層42とが順番に設けられている。
【0031】
第1被加熱層37は、底面部31の中心から位置決めフランジ部34にかけて設けられている。この第1被加熱層37は、誘導加熱コイル19に高周波電流を流すことで発生した磁界により、対向する底面部31から湾曲部33にかけて渦電流が流れて誘導加熱されて発熱する。
【0032】
第2被加熱層39は、収容部13への配置状態で内胴21の隆起部23の径方向内側に位置するとともに、上下方向の高さが一致するように、側面部32に設けられている。この第2被加熱層39は、側部ヒータ24の熱を効率よく受け取って昇温し、その熱を第1被加熱層37を介して伝熱層36に伝えるものである。本実施形態の第2被加熱層39は、第1被加熱層37の表面に、熱伝導性が良好な非磁性材である溶融アルミニウムを溶射(付着)することにより形成されている。また、第2被加熱層39は、無端状に連続した円環形状をなし、径方向外向きに突出するように溶射されている。そして、この第2被加熱層39の外端部39aは、収容部13に配置した状態で収容部13(隆起部23)に対して、所定隙間をあけて内側に位置するような突出量で設けられている。
【0033】
ここで、第2被加熱層39の下側領域は、第1被加熱層37が露出している。そして、ステンレス製の第1被加熱層37は熱伝導性が劣るため、側部ヒータ24の熱を効率よく受け取って伝熱層36に伝えることは困難である。一方、炊飯鍋30の側面部32の下部は、誘導加熱コイル19による磁界が届かず、誘導加熱することは困難である。そのため、本実施形態の炊飯鍋30の側面部32において、第2被加熱層39の下部(円錐筒部32b)は熱伝導のみで昇温する非加熱領域40となる。
【0034】
下地コート層41は、底面部31の中心から位置決めフランジ部34にかけた内側表面に設けられている。この下地コート層41は、下地である伝熱層36と接着する接着成分と、表面に形成されるフッ素コート層42を接着するフッ素樹脂とを混合したフッ素混合樹脂を塗布して乾燥させることにより形成される。本実施形態では、この下地コート層41の形成後に、表面にシリコンゴムパッドなどの弾力部材によってインキを付着させて目盛35をパット印刷する。そして、この印刷後に、フッ素コート層42が形成される。
【0035】
フッ素コート層42は、下地コート層41の表面に設けられている。このフッ素コート層42は、耐熱性および撥水性に優れ、内部に収容した米飯の付着を防止するためのものである。フッ素コート層42は、所定のフッ素樹脂を塗布して焼成することにより形成される。
【0036】
このように構成した炊飯器10は、炊飯鍋30から被加熱部である第2被加熱層39を外向きに突出させ、収容部13から隆起部23を内向きに突出させているため、側部ヒータ24と炊飯鍋30の側面部32とを近づけることができる。そして、本実施形態の第2被加熱層39は、熱伝導性が良い非磁性材からなるため、確実に側部ヒータ24の熱を受熱して伝熱層36に伝え、内部の水および飯米を加熱することができる。また、第2被加熱層39は、溶射によって形成されるため、簡単かつ確実に希望領域に希望形状で形成することができる。
【0037】
しかも、第2被加熱層39および隆起部23の上端は、満量の飯米を炊飯する際の水位(目盛35a)に位置するように設けている。よって、側部ヒータ24による熱量を効率よく炊飯鍋30に伝えて飯米を加熱することができる。ここで、調理鍋30に加わった熱は、上端開口に近づくに従って放熱量が増える。そのため、第2被加熱部39の上端を満量の調理物を加熱する際の水位近傍までとすることにより、無駄な放熱を抑制して、調理鍋30内を効率よく加熱することができる。
【0038】
また、第2被加熱層39および隆起部23の形成位置では、炊飯鍋30と収容部13との間の隙間が小さくなるため、下側に放熱を抑制した断熱空間を形成することができる。よって、側部ヒータ24の通電を停止した状態で、炊飯鍋30内での結露を防止できるとともに、保温性能を向上することができる。
【0039】
さらに、炊飯鍋30に形成する第2被加熱層39と収容部13に形成する隆起部23とは、所定の隙間をあけて位置する突出量であるため、炊飯鍋30を炊飯器本体11の収容部13に配置する際に、第2被加熱層39が干渉して配置の妨げになることはない。よって、使用者の使用性の向上を図ることができる。しかも、収容部13は、中間位置で炊飯鍋30を保持する必要がないため、収容部13の構成が複雑になることはないうえ、剛性や精度を考慮した設計変更が必要ない。
【0040】
なお、第2被加熱層39と隆起部23は、前記実施形態の構成に限られず、種々の変更が可能である。例えば第2被加熱層39と隆起部23の形成位置は、図4Aに示すように、上下方向に所定間隔をもって位置するように配置してもよい。この場合、図示のように、隆起部23を第2被加熱層39の上側に位置させてもよいし、隆起部23を第2被加熱層39の下側に位置させてもよい。このようにしても、前記と略同様の作用および効果を得ることができる。
【0041】
また、第2被加熱層39と隆起部23の構成は、図4Bに示すように、互いの対向面が平行に位置するように傾斜させてもよい。この場合、図示のように、炊飯鍋30の第2被加熱層39が、下向き直径が小さくなるように形成し、炊飯鍋30の配置する際の使用性を損なわないようにすることが好ましいが、逆向きに傾斜させてもよい。このようにしても、前記と同様の作用および効果を得ることができる。
【0042】
また、前記実施形態では、第2被加熱層39を側部ヒータ24の一方のヒータ線25bに対向する領域だけに設けたが、第2被加熱層39の下端は、図5に示すように、底部の誘導加熱コイル19の上端近傍(側面部32の下端)まで延びるように設けてもよい。ここで、第2被加熱部39を誘導加熱コイル19の上端を越えて底面部31近傍(誘導加熱領域)まで設けると、誘導加熱コイル19で加熱された第1被加熱部37の熱が、調理鍋30内(伝熱層36)だけでなく、調理鍋30の外表面の第2被加熱部39にも伝わる。その結果、調理鍋30内だけを効率的よく加熱することができない。そのため、第2被加熱部39を誘導加熱コイル19の上端近傍までとすることにより、前述のような問題が生じることを防止し、調理鍋30内を効率よく加熱することができる。
【0043】
さらに、前記実施形態では、炊飯鍋30に1個の第2被加熱層39を設けたが、図6に示すように、上端開口側から底面部31に向けて複数(図示では2個)設けてもよい。
【0044】
図7は第2実施形態の炊飯器10を示す。この第2実施形態では、側部加熱手段として側部誘導加熱コイル51を側部フェライトコア52を介して内胴21の外側に配設している。また、内胴21は、保護枠14と同様の非導電性材料である樹脂を射出成形することにより形成されている。さらに、第2実施形態の第2被加熱層39は、側部誘導加熱コイル51に高周波電流を流すことで発生した磁界により渦電流が流れて誘導加熱される第1被加熱層37と同様の磁性材料(ステンレス)により構成されている。
【0045】
ここで、ステンレス(SUS430)製の第2被加熱層39は、伝熱性が悪いが蓄熱性が高い。そのため、側部誘導加熱コイル51によって加熱した際には、昇温し始めるまでの時間(立ち上がり)は遅いが、昇温すると温度が低下し難い。よって、第2被加熱層39に蓄積した熱を鍋本体を構成する伝熱層36に徐々に伝えて加熱することができる。一方、1回の溶射により形成可能な第2被加熱層39の肉厚は、約0.3mmである。そのため、十分な蓄熱性能を得るには、複数回溶射して肉厚を厚くすることが好ましい。
【0046】
このように構成した第2実施形態では、第1実施形態と同様の作用および効果を得ることができる。また、この第2実施形態においても、第2被加熱層39の構成は第1実施形態と同様に種々の変更が可能である。
【0047】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、前記実施形態では、第2被加熱層39を溶融金属を溶射することにより形成したが、塗装により形成してもよい。第1実施形態のように側部加熱手段を側部ヒータ24により構成する場合、第2被加熱層39を形成するための塗料は、熱伝導性がよいカーボンまたはアルミ粒子を配合したシリコン系塗料を塗装する。第2実施形態のように側部加熱手段を側部誘導加熱コイル51により構成する場合、第2被加熱層39を形成するための塗料は、磁性材料を配合したシリコン系塗料を塗装する。なお、1回の塗装により形成可能な第2被加熱層39の肉厚は、約0.02mmである。そのため、側部加熱手段に応じた十分な肉厚を得るには、塗布工程と乾燥工程とを繰り返して、複数回重ね塗りすることが好ましい。このように塗装によって第2被加熱層39を形成しても、前記と同様の作用および効果を得ることができるうえ、溶射の場合と比較して安価に製造が可能である。
【0049】
また、前記実施形態では、隆起部23および第2被加熱層39を無端状に連続した円環状に形成したが、断続的な不連続形状、多数のディンプル形状、波形状、矩形状など、希望に応じて変更が可能である。特に、これらの構成は、非形成部分にマスキングを施して溶射または塗装することにより容易に形成できるため有効である。また、図8に示すように、隆起部23をディンプル形状をなすように設けた複数の突部からなる構成とする場合には、薄肉の金属板をディンプル形状にプレス加工し、その後に、円環状をなすように湾曲加工して内胴21を形成する。
【0050】
さらに、第1実施形態では、側部加熱手段を側部ヒータ24により構成し、第2被加熱層39を熱伝導性が良い非磁性材(アルミニウム)により構成する一方、第2実施形態では、側部加熱手段を側部誘導加熱コイル51により構成し、第2被加熱層39を蓄熱性が高い磁性材(ステンレス)により構成したが、側部加熱手段を側部ヒータ24により構成し、第2被加熱層39を蓄熱性が高い金属材料(ステンレス)により構成してもよい。このようにしても、第2実施形態と同様に、第2被加熱層39に蓄積した熱を伝熱層36に徐々に伝えて加熱できるため、炊飯鍋30の側面部32の温度差を抑制できる。
【0051】
さらにまた、前記実施形態では、底部加熱手段を誘導加熱コイル19によって構成したが、誘導加熱コイル19の代わりにヒータ線を内蔵した加熱板により構成してもよい。なお、この場合には、第1被加熱層37は設けない構成とする。
【0052】
また、前記実施形態では、第1被加熱層37の表面に直接第2被加熱層39を形成したが、第1被加熱層37の表面に耐熱塗装層を設け、その表面に第2被加熱層39を設けてもよい。または、第1被加熱層37の表面に第2被加熱層39を設け、これらの表面に耐熱塗装層を設けてもよい。
【0053】
そして、前記実施形態では、本発明の調理鍋を装着する調理炊飯器として、炊飯器10を例に挙げて説明したが、もちつき機および製パン機などの加熱調理器であれば、いずれでも適用が可能であり、同様の作用および効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0054】
10…炊飯器(加熱調理器)
11…炊飯器本体(調理器本体)
13…収容部
14…保護枠
19…誘導加熱コイル(底部加熱手段)
21…内胴
23…隆起部
23a…内端部
24…側部ヒータ(側部加熱手段)
26…蓋体
30…炊飯鍋
31…底面部
32…側面部
33…湾曲部
35a…満量水位目盛
36…伝熱層
37…第1被加熱層
39…第2被加熱層(被加熱部)
39a…外端部
40…非加熱領域
41…下地コート層
42…フッ素コート層
51…側部誘導加熱コイル(側部加熱手段)
52…側部フェライトコア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端を開口した有底筒状をなし、調理器本体の収容部に着脱可能に収容され、この調理器本体内に配設した底部加熱手段および側部加熱手段によって底面部および側面部が加熱されることにより、内部に収容した調理物を加熱する加熱調理器用調理鍋であって、
前記側面部に、前記側部加熱手段に対して所定間隔をもって位置し、外向きに突出する被加熱部を形成したことを特徴とする加熱調理器用調理鍋。
【請求項2】
前記側部加熱手段は側部ヒータであり、前記被加熱部は熱伝導性が良い非磁性材からなることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器用調理鍋。
【請求項3】
前記側部加熱手段は側部ヒータであり、前記被加熱部は蓄熱性が高い金属からなることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器用調理鍋。
【請求項4】
前記側部加熱手段は側部誘導加熱コイルであり、前記被加熱部は渦電流の発生より誘導加熱される磁性材からなることを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器用調理鍋。
【請求項5】
前記底部加熱手段は底部誘導加熱コイルであり、前記被加熱部の下端は前記底部誘導加熱コイルの上端近傍まで設けられることを特徴とする請求項2に記載の加熱調理器用調理鍋。
【請求項6】
前記被加熱部は、満量の調理物を加熱する際の水位近傍に位置するように設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の加熱調理器用調理鍋。
【請求項7】
前記被加熱部は、溶射または塗装により設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の加熱調理器用調理鍋。
【請求項8】
前記被加熱部を、上端開口側から前記底面部側に向けて複数設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の加熱調理器用調理鍋。
【請求項9】
上端を開口した有底筒状の調理鍋を収容部に着脱可能に収容し、この調理鍋の側面部を前記収容部の外側に配設した側部加熱手段によって加熱することにより、前記調理鍋内に収容した調理物を加熱する加熱調理器であって、
前記調理鍋の側面部に、外向きに突出する被加熱部を形成し、
前記収容部に、前記調理鍋の被加熱部の外側に所定間隔をもって位置するように、内向きに突出する隆起部を設けた
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項10】
前記収容部の隆起部は、収容した前記調理鍋の被加熱部と上下方向に一致する位置またはその近傍に設けられることを特徴とする請求項9に記載の加熱調理器。
【請求項11】
前記側部加熱手段は側部ヒータであり、前記収容部の隆起部を無端状に連続した円環形状に形成し、前記側部ヒータの少なくとも一部のヒータ線を前記隆起部に沿って配設したことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の加熱調理器。
【請求項12】
前記収容部の隆起部は、ディンプル形状をなすように設けた複数の突部からなることを特徴とする請求項9または請求項10に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−254276(P2012−254276A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207878(P2011−207878)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000002473)象印マホービン株式会社 (440)
【Fターム(参考)】