説明

加熱調理器

【課題】使用者が、一時的に通常使用できる火力よりも大きな火力で調理できるようにして使い勝手を向上させたガスバーナーを使って加熱調理する加熱調理器を提供する。
【解決手段】通常使用可能な発熱量よりも強い火力が必要となった場合には、随時ブーストスイッチ9を操作することで電磁弁28が開弁してブースト管27からもバーナ3へ燃料ガスを供給でき、バーナ3への燃料ガス供給量を通常の供給可能量よりも増加できるため、一時的に大火力が得られ、種々の使い方に利用でき使い勝手が向上する。例えば、グリル調理において、魚の中身を乾燥させることなく表面に適度な焦げ目をつけることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバーナを使って加熱調理する加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガスコンロ、ガスグリルといった加熱調理器では、バーナで燃料ガスを燃焼して被調理物を加熱するが、バーナへのガス供給量(単位時間当たりの燃料ガス供給量)は予め設定された規定値以下に制限されており、この範囲内でガス量調整を行って加熱調理が可能となっている。(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)
一般に、ガスコンロでは、発熱量が0.49kW〜4.2kWで火力調節されるようにコンロバーナへのガス供給量が設定され、ガスグリルでは、発熱量が1.89kW〜2.0kWで火力調節されるようにグリルバーナのガス供給量が設定されている。尚、バーナの種類により、この火力調整範囲は異なる。
【0003】
【特許文献1】特開2003−130358号公報
【特許文献2】特開2003−130343号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした加熱調理器においては、発熱量の制限により良好な調理が出来ない場合が生じる。
例えば、ガスグリルで魚焼料理をするとき、焼色(焦げ目)を適度に付けたい場合が有る。加熱調理時間を長くすれば、焼色はつくものの、魚の中身まで乾燥してしまい美味しさが失われてしまう。こうした場合、加熱調理の途中で一時的に火力調整範囲を越えるほどの強火にすれば、魚の種類によっては中身を乾燥させることなく適度な焼色をつけることができるのであるが、ガスバーナの発熱量の制限により実現できない。
また、ガスコンロにおいても、中華鍋を使った焼飯、野菜炒めといった調理においては、家庭用のコンロの発熱量では良好に調理できない。かといって、コンロバーナ自体を大能力タイプのものにすれば、今まで行えていたとろ火調理が出来なくなってしまう。
【0005】
そこで、本発明は、使用者が、一時的に通常使用できる火力よりも大きな火力で調理できるようにして使い勝手を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、
所定発熱量以下で燃焼するように燃料ガス供給量が制限されて被調理物を加熱するバーナを備えた加熱調理器において、
上記バーナを一時的に上記所定発熱量を越える発熱量で燃焼させるように上記燃料ガス供給量を増大させるブースト手段と、
上記被調理物への加熱力を増大するために、使用者が上記ブースト手段の作動を随時指示可能な操作手段と
を備えたことを要旨とする。
【0007】
上記目的を達成するために、請求項2の発明は、請求項1の発明において、
上記バーナは、加熱調理時に常に燃料ガスが供給されて燃焼する主バーナと、上記ブースト手段の作動指示を受けたときにのみ燃料ガスが供給されて燃焼する補助バーナとから構成されることを要旨とする。
【0008】
上記目的を達成するために、請求項3の発明は、請求項1の発明において、
上記ブースト手段が作動しているときにのみ、上記バーナに燃焼用空気を供給するファンを備えたことを要旨とする。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項4の発明は、請求項1の発明において、
上記ブースト手段が作動しているときにのみ、上記バーナの炎口面積を増大させることを要旨とする。
【0010】
上記目的を達成するために、請求項5の発明は、請求項1ないし4の何れかの発明において、
上記ブースト手段の作動を所定の制限期間以内に制限する期間制限手段を備えたことを要旨とする。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項6の発明は、請求項1ないし5の何れかの発明において、
上記ブースト手段を作動させた場合であっても、燃焼動作の終了後の次回点火時には上記ブースト手段が作動しないようにリセットするリセット手段を備えたことを要旨とする。
【0012】
上記目的を達成するために、請求項7の発明は、請求項1ないし5の何れかの発明において、
上記バーナの点火動作に連動して上記ブースト手段を作動させることを要旨とする。
【0013】
上記目的を達成するために、請求項8の発明は、請求項7の発明において、
上記ブースト手段の動作を上記バーナの点火動作に連動させるモードと連動させないモードとを選択するモード選択手段を備えたことを要旨とする。
【0014】
上記目的を達成するために、請求項9の発明は、請求項7または8の発明において、
上記点火動作に連動して上記ブースト手段を作動させたときの上記制限期間に比べて、上記バーナの燃焼中の途中から上記ブースト手段を作動させたときの上記制限期間を短くしたことを要旨とする。
【0015】
上記目的を達成するために、請求項10の発明は、請求項1ないし9の何れかの発明において、
ガスコンロに適用したことを要旨とする。
【0016】
上記目的を達成するために、請求項11の発明は、請求項1ないし10の何れかの発明において、
ガスグリルに適用したことを要旨とする。
【0017】
上記目的を達成するために、請求項12の発明は、請求項11の発明において、
上記操作手段は、グリル庫内で調理する被調理物に焼色を付けるように操作指示する焼色付け指示手段であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0018】
請求項1の発明によれば、通常使用可能な発熱量よりも強い火力が必要となった場合には、その都度、操作手段を操作することでブースト手段が作動し、バーナへの燃料ガス供給量が通常の使用範囲よりも増加するため、一時的に大火力が得られ、種々の使い方に利用でき使い勝手が向上する。
従って、火力にあまり制約されることなく料理方法に適した加熱調理が可能となり、調理性能も向上する。
しかも、ブースト作動させない通常時においては、従来通りの火力が得られるため、絞り性能も維持できる。
【0019】
請求項2の発明によれば、ブースト作動時は、補助バーナで調理加熱を補助するため、通常の調理加熱に使用する主バーナの負担が軽く、燃焼不良を生じない。従って、特に、燃料ガス供給の増大により炎口負荷が増大して燃焼不良が懸念されるバーナでは有効なものとなる。
【0020】
請求項3の発明によれば、ブースト作動時には、ファンが回転してバーナに燃焼用空気を供給するため、燃料ガス供給量の増大に伴って燃焼用空気供給も充分に供給されるため、良好な燃焼を維持できる。
一般に、バーナの燃料供給口にガスノズルを臨ませ、燃料ガスの噴出力でノズルの周囲から燃焼用空気を吸引するものでは、ノズルのガス供給圧力を増大すれば、それに伴って燃焼用空気の吸入も増大されるが、ガス供給圧力を増大させずにガス供給量を増大させる場合には燃焼用空気の吸入量が増大しないため、こうした後者のタイプでは特に有効なものとなる。
【0021】
請求項4の発明によれば、ブースト作動時には、バーナの炎口面積が増大するため、炎口負荷の増大を抑えることができ燃焼不良が防止される。
【0022】
請求項5の発明によれば、ブースト手段の作動を一定期間内に制限するため、必要以上に強い火力で燃焼し続けることが無く、器具への過熱や被調理物への過熱を防止し安全である。
また、一般に、強火力で調理した場合には、熱効率が低下するが、この期間が制限されるため熱効率の低下による燃料消費量の増大も抑制できる。
【0023】
請求項6の発明によれば、前回の使用時にブースト動作を行っていても、次回の点火時にはブースト作動が開始されないため、使用者の意志に反して点火時にブースト動作が行われてしまうといった不具合が無く安全である。
【0024】
請求項7の発明によれば、バーナの点火動作に連動してブースト手段が作動するため、なんら特別な操作無しに常に早い立ち上がり(調理容器、調理室、被調理物、の早い温度上昇)が得られ便利である。
特に、点火時は、調理容器や調理室等が冷えているため、例えばグリルの場合には調理開始するまでの予加熱(グリル庫内の加熱)時間が短縮され、また、コンロの場合では、鍋のお湯を短時間で沸す場合に適している。
【0025】
請求項8の発明によれば、ブースト作動を点火動作に連動させるか連動させないかを選択できるため、使用者の好みや用途に合せることができ、一層使い勝手がよくなる。
【0026】
請求項9の発明によれば、点火動作に連動してブースト手段を作動させたときの制限期間に比べて、バーナの燃焼の途中からブースト手段を作動させたときの制限時間を短くする。つまり、燃焼途中でブースト作動するときは、器体自体がすでに高温になっているため、冷えた点火時に比べては制限時間を短くすることで器体の過熱が防止しされ安全性が向上する。
【0027】
請求項10の発明によれば、一時的な強火力と、従来通りのとろ火とが得られるため、調理の幅が広がり、調理性能が向上する。
例えば、たまに中華鍋を使って炒め料理をする場合には、日頃使う火力よりも強い火力で調理できるため、良好な調理が可能となる。
【0028】
請求項11の発明によれば、グリル庫の予加熱時間を短くすることがで結果的に調理時間を短くすることが出来る。この場合、点火と連動させると一層使い勝手が良くなる。
また、調理の途中からブースト作動させることで、魚自身を乾燥させてしまうこと無く、適度な焦げ目(焼け色)を付けることが出来る。
【0029】
請求項12の発明によれば、グリル庫の被調理物に焼色(焦げ目)を付けるための焼色付け指示手段を備えているため、使用者はこれを操作するだけで簡単に魚に焼色を付けることができ、しかも魚の調理状態を悪化させずに所望の焦げ目を付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以上説明した本発明の構成・作用を一層明らかにするために、以下本発明の加熱調理器の好適な実施例について説明する。
【実施例1】
【0031】
図1は、加熱調理器の一実施例としての家庭用ガスグリル付きビルトインコンロの概略斜視図であり、図2は、そのグリル部の側断面概略構成図である。
図1に示すビルトインコンロ1は、キッチンカウンターに組み込まれるもので、トッププレート2の左右の開口からコンロバーナ3L,3Rに臨ませた二組のコンロ部4L,4Rと、本体の中央に設けられるグリル5とを備える。
本体正面には、魚等の被調理物Fを出し入れするグリル扉6を中央に備え、更にその両側には、二組のコンロバーナ3L,3Rをそれぞれ点火/消火操作するための点消火ボタン7L,7Rと、グリル5のグリルバーナ3Gを点火/消火するための点消火ボタン7Gとを備える。尚、それぞれのバーナ3L,3R,3G及び点消火ボタン7L,7R,7Gを区別しない時には単にバーナ3及び点消火ボタン7と呼ぶ。
各点消火ボタン7は、その上方にそれぞれのバーナ3の火力を通常の火力調節範囲で調節する火力調節レバー8を備える。本実施例では、この火力調節レバー8によりコンロバーナ3は0.49kW〜4.2kWの範囲に調節され、グリルバーナ3は1.89kW〜2.0kWの範囲に調節される。尚、本発明の所定発熱量以下とは、火力調節レバー8等の通常の火力調節器で調節可能な最大発熱量以下を意味する。
【0032】
また、各点消火ボタン7は、その下方にそれぞれのバーナ3を火力調節レバー8で調節可能な最大発熱量(定格発熱量)よりも大きな発熱量以上となるように一時的にバーナ3への供給ガス圧を増大させる(ブーストアップさせる)ための指示操作を行なうブーストスイッチ9を備える。各ブーストスイッチ9の横には、ブーストスイッチ9が押されて、一時的に火力が強くなっている状態(以下、ブースト状態と呼ぶ)のときに点灯するブーストランプ10が設けられる。このブーストスイッチ9は、押すたびにオン/オフ状態が切り替わる。
器体の前面パネルの右下には、ブースト状態の継続時間を設定するためのタイマー調節レバー11(図3参照)が設けられる。ブースト状態は、最大2分以下に制限され、0〜2分の間で調節可能となっている。
また、点火時から自動的にブースト状態でスタートする点火ブーストモードと、通常の火力で点火されるノーマルモードとに切替え可能で、そのモードを切り替えるモード切替スイッチ12が器体の前面パネルの右上に設けられる。
尚、ブーストモードが設定されている時の点火時のブースト状態は上述したタイマー調節レバー11による調節時間に関係なく所定時間(T1:例えば3分)だけ常に継続される。言い換えれば、タイマー調節レバー11は、調理中に使用者がブーストスイッチ9を操作した時のブースト状態の継続時間(T2)を調節するものである。また、モード切替スイッチ12とタイマー調節レバー11とは、コンロ部4L,4Rとグリル5とに共通して使用される。
【0033】
グリル5は、図2に示すように、被調理物Fを収納して燃焼空間を形成するグリル庫13と、グリル庫13の上下段の左右両側に設けられ被調理物Fを加熱するグリルバーナ3Gと、グリル庫13の中段で被調理物Fを載置する焼網14と、焼網14を支持するとともに被調理物Fから落下する油汁を受ける汁受皿15と、グリル扉6の下部で汁受皿15を連結したグリル取手16とを備える。
【0034】
グリル庫13の後方には、グリル庫13背面の下部で連通し排気を器具外に排出するための排気ダクト17が設けられる。この排気ダクト17は、グリル庫13の背部で縦方向に形成される縦ダクト18と、縦ダクト18の上端から後方に上向き傾斜した傾斜ダクト19を備え、その後端に排気口20が形成される。
尚、図中において符号21は、排気口20に装着され、ゴミ等の侵入を防止する排気キャップである。
【0035】
次に、ビルトインコンロ1のシステム構成について図4を用いて説明する。尚、コンロバーナ3L,3R及びグリルバーナ3Gの点火/消火を司る構成は、同一構成であるから同じ符号を用いて一括して説明する。図中では、左コンロバーナ3L用の構成部材については末尾にLを、グリルバーナ3G用の構成部材については末尾にGを付して区別するとともに、右コンロバーナ3R用の構成部材については左コンロバーナ3L用の構成部材と同一となるため省略している。
器具内に配設されるガス配管22(破線にて示す)には、その上流側からバーナ3の燃焼時のみ開弁保持される電磁安全弁23と、点火/消火操作に伴ってガス供給路を開閉する主弁24と、火力調節レバー8により調節されガス供給圧を調整してバーナ3の火力を調整するガス量調整弁25と、バーナ3への最大ガス供給圧を制限して供給ガス圧を定格ガス圧以下に制限するオリフィス26と、ガス量調整弁25及びオリフィス26を迂回するブースト管27と、このブースト管27を開閉する電磁弁28とが備えられる。
ガス配管22のバーナ3側の先端にはガスノズル32が設けられる。ガスノズル32の開口径は、オリフィス26の通路径よりも大きく、通常使用時においては最大ガス供給圧はこのオリフィス26で制限され、後述する電磁弁28を開弁したブースト状態では最大ガス供給圧はこのガスノズル32の開口径で制限される。バーナ3の燃焼用一次空気は、ガスノズル32の周囲に設けられた空気吸入口からの燃料ガスの噴出に伴って吸引される。この際の空気吸入量は、ガス供給圧に依存するため、本実施例のようにガス供給圧を増大させてガス供給量を増大させる構成であると、空気吸入量も燃料ガス供給量の増大とともに増大する。従って、ブースト状態においても燃焼用空気は十分に供給され、燃焼不良となることはない。
【0036】
電磁安全弁23と主弁24とは、周知のプッシュプッシュ機構により開閉されるもので、点消火ボタン7の押し操作により両弁が機械的に押されて開弁し、点消火ボタン7から手を離すことにより主弁24が開弁位置に係止されるとともに電磁安全弁23が閉弁可能状態に置かれるものの電磁コイル29への通電により開弁状態が維持され、消火時には、点消火ボタン7を再度押し操作して手を離すことにより主弁24の開弁係止が解除されて主弁24が閉弁するように構成される。
また、プッシュプッシュ機構の進退動を利用して、点消火ボタン7が押されて主弁24が開弁している時にONするコックスイッチ30が設けられる。
【0037】
また、図示しないが、各バーナ3には燃料ガスに火花放電を行って点火する点火器と、燃焼状態(失火状態)を検出する熱電対を用いた炎検知器とが設けられる。
器体本体内には、バーナ3の燃焼を制御するコントローラ31が設けられる。
このコントローラ31は、マイコンを主要部とし、各種制御プログラムを記憶するメモリやソフトウェアタイマー等を備えるとともに、上述した点火器、炎検知器、電磁安全弁23の電磁コイル29、電磁弁28、コックスイッチ30が接続されるとともに、器体前面パネルに設けたブーストスイッチ9、ブーストランプ10、タイマー調節レバー11、モード切替スイッチ12が接続される。
また、炎検出器から発生する熱起電力が所定値以上になった時に着火ありと判断して電磁安全弁23の電磁コイル29に通電し、所定値以下の時には失火(不着火及び途中失火)したと判断して通電を停止する駆動回路を備える。
尚、ブーストスイッチ9、ブーストランプ10は、それぞれ3組がコントローラ31に接続されるが、図4においては1組のみを記載して他は省略している。
【0038】
次に、コントローラ31が実施するブースト制御処理について、図5のフローチャートに基づいて説明する。このフローチャートに示す処理は、コンロ部4L,4Rとグリル5とに共通に実行されるもので点火操作により起動する。
点火操作が行われると、まず、点火ブーストモードか否かを判断する(S1)。本体正面に設けた操作部のモード切替スイッチ12により予め点火ブーストモードが選択されているときには(S1:YES)、電磁弁28を開弁しブーストランプ10を点灯する(S2)。これと同時に第1タイマーの計時をスタートさせる(S3)。
一方、点火ブーストモードが選択されていない場合には(S1:NO)、こうした処理を省略する。
そして、点火動作を行う(S4)。つまり、点火器を作動させるとともに、電磁安全弁23に通電して開弁保持する。この電磁安全弁23は、炎検知器により炎有りと検知されているときに通電維持されるもので、立ち消え安全装置として働く。
【0039】
点火ブーストモードでは、電磁弁28が開弁しているため、バーナ3へのガス供給圧を制限するオリフィス26とパラレルに設けたブースト管27からも燃料ガスがバーナ3に供給されるため、通常のガス供給圧よりも大きなガス供給圧となる。このブースト状態では、バーナ3の燃料供給口に臨むガスノズル32の径(>オリフィス26の径)の大きさによりガス供給量が制御される。
続いて、ブーストスイッチ9の操作が行われたか否かを判断し(S5)、ブーストスイッチ9操作があった場合には(S5:YES)、現在ブースト動作中でなければ(S6:YES)、ブースト状態に切り替えるために電磁弁28を開弁しブーストランプ10を点灯する(S7)。同時に第2タイマーの計時をスタートさせる(S8)。このとき、バーナ3へのガス供給量はオリフィス26による制限が解除されて増大する。
一方、現在ブースト動作中であれば(S6:NO)、ブースト動作を停止させるために、電磁弁28を閉弁しブーストランプ10を消灯する(S9)。同時に第1タイマーおよび第2タイマーの計時を停止し、リセットしておく(S10)。こうして、バーナ3の燃焼量は定格量以下に制限され、通常の燃焼状態に戻る。
また、ブーストスイッチ9の操作が行われない場合は、これらの処理を飛ばして次のステップに進む。
【0040】
続くステップにおいては、第1タイマー、第2タイマーが予め設定された設定時間T1,T2(T1>T2)に達したか否かを判断し、いずれかのタイマーがタイムアップした場合には(S11:YES)、ブースト動作を終了するために電磁弁28を閉弁してブーストランプ10を消灯する(S12)。こうして、バーナ3の定格燃焼量を越える燃焼が停止され、通常の火力による燃焼に切り替わる。つまり、点火からのブースト作動時間を第1タイマーにて制限し、燃焼途中から開始されたブースト作動時間を第2タイマーにて制限する。
こうした処理は、点火から消火まで常時繰り返し行われ、消火操作を検知すると(S13:YES)、電磁弁28の閉弁、ブーストランプ10の消灯(S14)、各タイマーのリセットを行い(S15)、消火処理(電磁安全弁23への通電停止)を実行して(S16)本ルーチンを終了する。
【0041】
以上説明した本実施例のガスグリル付きコンロでは、以下の効果を奏する。
加熱調理中に、通常の火力調整範囲を越える強火力が必要となった時、使用者が随時ブーストスイッチ9を操作することで、一時的に強火力が得られるため、例えば、グリル調理において、魚の中身を乾燥させることなく表面に適度な焦げ目をつけることができる。また、コンロ部4においても、中華鍋を利用した強火力の必要な料理でも良好に調理することが出来る。また、お湯をいち早く沸したい時などにも便利である。
また、点火ブーストモードを選択した場合には、点火時から通常の火力調整範囲を越える強火力で燃焼開始するため、特にグリル5では庫内温度の立ち上がりが早くなって、調理開始までの待ち時間も短くなる。つまり、グリル調理の場合、点火時にはグリル庫13内が冷えているため、グリル庫13内が調理可能な温度になるまでかなり時間を要していたが、このブースト機能で早く庫内が適温になりトータルとして調理時間が短くなる。
【0042】
また、ブースト動作は、使用者がブーストスイッチ9を押すだけで所定時間継続されるため、ブースト期間中ずっと押し操作している必要がなく調理に専念でき使い勝手がよい。
しかも、所定時間継続するとかならず、通常の火力に戻るため、器具への過熱や被調理物への過熱も防止され安全である。また、一般に、強火力で調理した場合には、熱効率が低下するが、この期間が制限されるため熱効率の低下による燃料消費量の増大も抑制できる。
また、点火ブーストモードを選択していない場合は、前回の使用時にブースト動作を行っていても、その消火時にブースト動作を停止して次回の点火時にブースト動作が開始されないようにリセットするため(S14,S15)、使用者の意志に反して点火時にブースト動作が開始されないため安全である。
また、点火ブーストモードを選択できるため、使用者の好みにも対応できる。つまり、常に点火時には強火力を望む使用者も、点火時には通常の火力を望む使用者にも使えるものである。
更に、点火時からのブースト動作の制限時間(T1)よりも、燃焼途中から開始するブースト動作の制限時間(T2)を短くしているため、一層安全である。つまり、燃焼途中でブースト動作するときは、器体自体がすでに高温になっているため、冷えた点火時に比べては制限時間を短くすることで器体の過熱を防止して安全性を向上するのである。
また、バーナ自体を大型化して能力アップを図るものではないため、それに伴うコストアップも生じず、ローコストで実施でき、しかも従来通りのとろ火調理も可能である。
【0043】
上述した第1実施例のように、ブーストスイッチ9を押した時に単にバーナ3への供給ガス量を増大させるだけの構成の場合には、供給ガス量と燃焼用空気量のバランスがくずれたり、炎口負荷(供給ガス量/炎口面積)が大きくなりすぎたりして良好な燃焼性能を維持できなくなる場合がある。このような場合には、次に示す別の実施例のようにして燃焼性能の改善を図るようにしてもよい。
【実施例2】
【0044】
第2実施例について、図6を用いて説明する。尚、第1実施例と異なる部分について説明し、重複する部分に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。第2実施例のビルトインコンロは、ブーストアップ時にバーナへファンにより強制的に燃焼用空気を供給する点が第1実施例と基本的に異なる。
【0045】
第2実施例のビルトインコンロ201は、図6に示すように、ガスノズル32の後方からバーナ3の空気吸入口に燃焼用一次空気を供給する送風ファン33を左右のコンロ部4L,4Rとグリル5とにそれぞれ備える。この送風ファン33は、コントローラ31に接続され、ブーストアップ時のみ動作してバーナ3への燃焼用空気を補給するように制御される。
すなわち、図5に示したブースト制御フロー(第1実施例のフローチャート)のステップ2及びステップ7で電磁弁28を開弁してバーナ3への供給ガス量を増大させるブーストアップ時に送風ファン33を同時に駆動してバーナ3への供給空気量も増大させ、ステップ9,12,14で電磁弁28を閉弁してバーナ3へのガス供給を通常状態に戻すときに、同時に送風ファン33の作動を止める。従って、ブーストアップ時にバーナ3への供給ガス量が通常時の供給ガス量よりも増えても、その増量分に応じて供給空気量も増加させることができるため、バーナ3に十分な量の燃焼用空気を供給することができ、バーナ3の燃焼性能を良好に維持できる。
【実施例3】
【0046】
次に、第3実施例について、図7を用いて説明する。尚、第1実施例と異なる部分について説明し、重複する部分に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。第3実施例のビルトインコンロは、バーナを主バーナと補助バーナとで構成し、ブーストアップ時には主バーナに加え、補助バーナにも燃料ガスを供給することにより火力を強くする点が第1実施例と基本的に異なる。
【0047】
第3実施例のビルトインコンロ301は、図7に示すように、左右のコンロバーナ3L,3Rとグリルバーナ3Gとは、加熱調理中に常に燃料ガスが供給される主バーナ3mL,3mR,3mG(以下、これらを区別しないときは単に主バーナ3mと呼ぶ)と、ブーストアップ時のみ燃料ガスが供給される補助バーナ3hL,3hR,3hG(以下、これらを区別しないときは単に補助バーナ3hと呼ぶ)とから構成される。主バーナ3mと補助バーナ3hは、それぞれガスノズル32m,32hを備え、ガスノズル32m,32hの周りには、燃料ガスの噴出に伴って燃焼用空気を吸引する空気吸入口がそれぞれ設けられる。すなわち、主バーナ3mと補助バーナ3hは、それぞれガスノズル32m,32hと空気吸入口とを備えるため、それぞれのバーナ3m,3hがともに良好な燃料ガスと燃焼用空気とのバランスを維持することができ、良好な燃焼性能が保たれる。
【0048】
ガス配管22は、主弁24とガス量調整弁25との間で主ガス配管22mと補助ガス配管22hとに分岐しており、ガス量調整弁25を経る主ガス配管22mは主バーナ3m側のガスノズル32mに接続され、ガス量調整弁25を経ない補助ガス配管22hは補助バーナ3h側のガスノズル32hに接続される。各バーナ3m,3hの最大ガス供給量はガスノズル32m,32hにより制限される。そして、補助ガス管22hには、ガス通路を開閉する補助電磁弁34が設けられ、補助電磁弁34はコントローラ31に接続される。補助電磁弁34は、ブーストアップ時のみ開弁して補助バーナ3hに燃料ガスを供給するように制御される。
つまり、第1実施例の電磁弁28の開閉動作(S2,S7,S9,S12,S14)に代えてこの補助電磁弁34を開閉する。従って、ブーストアップ時には、主バーナ3mとは別に設けた補助バーナ3hで加熱料理を補助するため、通常の加熱調理に使用する主バーナ3mの負担が軽く、燃焼不良を生じない。
【実施例4】
【0049】
第4実施例について、図8及び図9を用いて説明する。尚、第1実施例と異なる部分について説明し、重複する部分に関しては同一の符号を付してその説明を省略する。第4実施例のビルトインコンロは、ブーストアップ時にバーナの炎口面積が増大する点が第1実施例と基本的に異なる。
【0050】
第4実施例のビルトインコンロ401では、図8及び図9に示すように、コンロバーナ3L,3Rは、燃料ガスと燃焼用空気との混合気が吸引される環状の混合気室を形成したバーナ本体35L,35Rと、バーナ本体35L,35Rの上に載置されることによりその外周上に多数の炎口36が形成されるバーナヘッド37L,37Rとを備える。バーナヘッド37は、円盤状に形成され、下面周縁に多数のくし歯状のスリット溝38を備え、このスリット溝38が炎口36となる。
バーナ本体35は、その外周の内面側に全周にわたって内側に突出した段差部43が設けられており、この段差部43がバーナヘッド37の載置部となる。バーナヘッド37は、段差部43にスリット溝38を形成している外周リングの下端が当接することによってバーナ本体35上に載置される。従って、スリット溝38の内、バーナ本体35の上面よりも上方に露出している部分が炎口36となり、バーナ本体35内にかくれている部分は炎口36とはならない。尚、図9中においては、炎口部にもハッチングを施している。
また、バーナ本体35の中央を貫通する貫通穴39には、バーナヘッド37の中央部の下面に当接しバーナヘッド37を上下動させる連動棒40が設けられる。従って、連動棒40が上方へ動くとバーナヘッド37も上方へ押されて動き炎口面積は増大する(図9参照)。
連動棒40の下端にはラックギア41が形成され、このラックギア41と噛み合うピニオンギア42が設けられる。すなわち、ピニオンギア42が回転すると、ラックギア41が上下に移動するいわゆるラックアンドピニオン構造を形成している。また、ピニオンギア42は図示しないモータに接続される。このモータはコントローラ31に接続され、ブーストスイッチ9を操作したブーストアップ時のみ動作してバーナヘッド37を上方へ持ち上げバーナ3の炎口面積を増大するように制御される。
すなわち、図5に示したブースト制御フロー(第1実施例のフローチャート)のステップ2及びステップ7で電磁弁28を開弁してバーナ3への供給ガス量を増大させるブーストアップ時にモータを同時に駆動させてバーナヘッド37を持ち上げ炎口面積を増大させ、ステップ9,12,14で電磁弁28を閉弁してバーナ3へのガス供給を通常状態に戻すときに、同時にモータを逆向きに駆動させてバーナヘッド37を通常位置に下げて、炎口面積を元に戻す。
従って、ブーストアップ時にバーナ3への供給ガス量が通常時の供給ガス量よりも増えても、その増量分に応じて炎口面積を増大させるため、炎口負荷の増大を抑えることができ、バーナ3の燃焼性能を良好に維持できる。
尚、グリルバーナについてもコンロバーナと同様にブーストアップ時に炎口面積を増大させるようにしてもよい。例えば、複数の開口を形成した2枚のプレートを重ね合わせ、開口の重なり部分を炎口とした炎口形成プレートを用い、プレートの相対位置関係をずらして炎口面積を調節するようにしてもよい。
【0051】
以上いくつかの実施形態のガスグリル付きコンロについて説明したが、本発明はこうした実施形態になんら限定されるものではなく様々な形態で実施できるものである。
例えば、ガス供給圧を制限する手段として本実施例ではオリフィス26を用いているが、ガスガバナを用いてもよい。
また、ブースト動作の期間制限は、タイマーで行ったが、例えば、グリル庫13内の温度を検出する温度センサを設け、グリル庫13内の温度が所定温度に達した時にブースト動作を終了するようにして、時間だけでなく他の物理現象を捉らえて行ってもよい。
また、本実施例では、点火ブーストモードをコンロバーナとグリルバーナの両方に適用しているが、グリルバーナのみあるいはコンロバーナのみに適用するようにしてもよい。あるいは、適用する方を選択できるように選択手段を設けてもよい。
また、グリル5のブーストスイッチ9あるいはその近傍に「焼色付け」といった操作案内を印刷等で表示することにより、このスイッチを操作することによってグリル庫13内の被調理物に焦げ目(焼色)をつけることができるということを使用者に分かりやすく示すことも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、ガスコンロやガスグリルだけでなく、ガス炊飯器等、ガスバーナを備えた加熱調理器全般に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】実施例1としてのビルトインコンロの概略斜視図である。
【図2】実施例1としてのグリル部の側断面概略構成図である。
【図3】実施例1としてのタイマー調節レバーの拡大図である。
【図4】実施例1としてのビルトインコンロのシステム構成図である。
【図5】実施例1としてのブースト制御処理を表わすフローチャートである。
【図6】実施例2としてのビルトインコンロのシステム構成図である。
【図7】実施例3としてのビルトインコンロのシステム構成図である。
【図8】実施例4としてのビルトインコンロのシステム構成図である。
【図9】実施例4としてのバーナ部の動作説明図である。
【符号の説明】
【0054】
1,201,301,401 ビルトインコンロ
3L,3R コンロバーナ
3G グリルバーナ
5 グリル
9 ブーストスイッチ
11 タイマー調節スイッチ
12 モード切替スイッチ
25 ガス量調整弁
26 オリフィス
27 ブースト管
28 電磁弁
31 コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定発熱量以下で燃焼するように燃料ガス供給量が制限されて被調理物を加熱するバーナを備えた加熱調理器において、
上記バーナを一時的に上記所定発熱量を越える発熱量で燃焼させるように上記燃料ガス供給量を増大させるブースト手段と、
上記被調理物への加熱力を増大するために、使用者が上記ブースト手段の作動を随時指示可能な操作手段と
を備えたことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
上記バーナは、加熱調理時に常に燃料ガスが供給されて燃焼する主バーナと、上記ブースト手段の作動指示を受けたときにのみ燃料ガスが供給されて燃焼する補助バーナとから構成されることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
上記ブースト手段が作動しているときにのみ、上記バーナに燃焼用空気を供給するファンを備えたことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項4】
上記ブースト手段が作動しているときにのみ、上記バーナの炎口面積を増大させることを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項5】
上記ブースト手段の作動を所定の制限期間以内に制限する期間制限手段を備えたことを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項6】
上記ブースト手段を作動させた場合であっても、燃焼動作の終了後の次回点火時には上記ブースト手段が作動しないようにリセットするリセット手段を備えたことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
上記バーナの点火動作に連動して上記ブースト手段を作動させることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項8】
上記ブースト手段の動作を上記バーナの点火動作に連動させるモードと連動させないモードとを選択するモード選択手段を備えたことを特徴とする請求項7記載の加熱調理器。
【請求項9】
上記点火動作に連動して上記ブースト手段を作動させたときの上記制限期間に比べて、上記バーナの燃焼中の途中から上記ブースト手段を作動させたときの上記制限期間を短くしたことを特徴とする請求項7または8記載の加熱調理器。
【請求項10】
ガスコンロに適用したことを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項11】
ガスグリルに適用したことを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項12】
上記操作手段は、グリル庫内で調理する被調理物に焼色を付けるように操作指示する焼色付け指示手段であることを特徴とする請求項11記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−162203(P2006−162203A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−357546(P2004−357546)
【出願日】平成16年12月10日(2004.12.10)
【出願人】(000112015)パロマ工業株式会社 (298)
【Fターム(参考)】