説明

加熱調理器

【課題】加熱開始の前に水槽内の水の状態を確認し、水の交換が必要な場合にはその旨をユーザに報知する加熱調理器を提供する。
【解決手段】炊飯器本体1の底部上面に水槽7の設置を検知する水槽検知部9を配置し、水槽7の側面側には、少なくとも下限水位検知部10、初期満水検知部11及び温度検出部13をそれぞれ配置し、水槽検知部9により水槽が検知されなかったとき水槽7の設置を報知し、温度検出部13の検出温度が第1温度より高いとき水槽7の水交換を報知し、初期満水検知部11により満水が検知されなかったときは水槽7の水位調整を報知し、下限水位検知部10により下限水位が検知されなかったときは水槽7の水補給を報知する制御部14を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば炊飯器に係わり、特に炊飯中に発生する蒸気を回収する加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の炊飯器は、炊飯器本体内に着脱自在に収納され、水槽を有する容器と、一端が内釜の内蓋を貫通して取り付けられ、他端が容器に装着された蒸気導入管とを備え、炊飯中に発生する内釜内の蒸気を蒸気導入管を通して容器内に導き、その蒸気を水槽内に案内して冷却水で凝縮させる構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭60−106532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した従来の炊飯器では、炊飯開始の前に容器の水槽内にどの程度の水が入っているのかを確認しなければならず、水槽内に蒸気を凝縮させるのに最低限必要な水量が入っていない場合には、水槽内の水温は短時間で上昇し、蒸気回収が困難になり、また、満水に近い状態で炊飯を行った場合、蒸気凝縮水のすべてを水槽内に蓄えることができずに、炊飯途中で水槽から水が漏れる恐れがある。また、内釜内に規定水量よりも多く加水して炊飯した場合には水槽内に「おねば」が進入する可能性があり、さらに水槽の洗浄が不十分で、且つ炊飯終了後に長い間水槽を放置した場合には水槽内で菌が繁殖する可能性があることから、衛生面でも課題がある。
【0005】
本発明は、前記のような課題を解決するためになされたもので、加熱開始の前に水槽内の水の状態を確認し、水の交換が必要な場合にはその旨をユーザに報知することのできる加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る加熱調理器は、加熱調理中に発生する容器内の蒸気を案内する蒸気導管と、該蒸気導管により案内された蒸気を回収して水にする水槽と、該水槽の初期満水を検知するための初期満水検知手段と、調理開始の操作を検知した際に、前記初期満水検知手段により初期満水が検知されているかどうかを判定し、初期満水が検知されているときは前記水槽の水位調整を報知する制御手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明においては、初期満水の検知の際、水(水量)の調整を促すようにしているので、炊飯中に満水検知で加熱停止ということが殆どなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る加熱調理器の例えば炊飯器の内部を示す側面図である。
【図2】実施の形態に係る炊飯器の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の実施の形態に係る加熱調理器の例えば炊飯器の内部を示す側面図である。
図において、炊飯器本体1の内部に炊飯釜2が着脱可能に収納され、炊飯器本体1の上部に一端が開閉自在に軸支された蓋体3が取り付けられている。この蓋体3には内蓋4が着脱可能に取り付けられている。また、蓋体3には、一端が内蓋4の中央部に着脱可能に装着された蒸気導管6が配設されている。内蓋4は、蓋体3が本体1の上面開口部を覆った際に、炊飯釜2の上面開口部を塞いで内部を密閉状態にする。炊飯器本体1の底部上方には炊飯釜2を加熱するための加熱体5が配置され、炊飯釜2の脇には水槽7が着脱可能に設置されている。
【0010】
この水槽7は、例えば熱伝導が良くプラスチックなどの絶縁物で構成され、上面開口部を着脱可能に覆う水槽蓋7aと、上端が水槽蓋7aに固着された蒸気導入管7bとを有している。この蒸気導入管7bの上端は、蓋体3に配設された蒸気導管6の他端と着脱可能に連結される。つまり、蓋体3が開けられたとき蒸気導管6が蒸気導入管7bから離れ、蓋体3が閉じられたときに蒸気導管6と蒸気導入管7bとが密閉状態で連結される。蒸気導管6と蒸気導入管7bは、炊飯中に発生する炊飯釜2内の蒸気を水槽7内に導くためのものであり、水槽7は、蒸気導入管7bに流入した蒸気を水で凝縮させ、回収水9として貯留するためのものである。
【0011】
炊飯器本体1の底部上面に水槽検知部9が配置され、水槽7の側面側には、下限水位検知部10、初期満水検知部11、満水検知部12及び温度検出部13がそれぞれ配置されている。前述した水槽検知部9は、炊飯器本体1内に水槽7が設置されたときにONする例えばタクトスイッチからなっている。下限水位検知部10、初期満水検知部11及び満水検知部12は、例えば静電容量センサからなり、その検出電極は、水槽7の側面に近接して配置され、仮想GNDとの間の静電容量に比例した電圧を生成する。つまり、水槽7内の回収水8の水位が高くなるに従って電圧が上がる。
【0012】
本実施の形態においては、下限水位時の電圧を第1の電圧値として、初期満水時の電圧を第2の電圧値として、また、満水時の電圧を第3の電圧値としてそれぞれ制御部14に設定されている。温度検出部13は、炊飯器本体1内に水槽7が設置されたときに、その水槽7の側面に接触するように配置されている。水槽7の下限水位は、蒸気を水で凝縮させるのに必要な最低限の水位であり、初期満水は、炊飯時の発生蒸気を全て凝縮しても水槽7の水が漏れない限界の水位であり、満水は、水槽7の水が漏れない限界の水位である。満水は、初期満水より高い位置に設定され、炊飯中に回収水8がその水位に達したときに加熱体5への通電を遮断し、一時的に加熱を停止させるための水位である。
【0013】
制御部14は、例えばマイコンからなり、前述した第1の電圧値、第2の電圧値及び第3の電圧値をデータとして有すると共に、第1温度及び第1温度より高い第2温度をデータとして有し、また、動作説明時に詳述するが、本発明の制御手段及び水槽7の設置時刻を計測する設置時刻計測手段を備えている。設置時刻とは炊飯終了時の時刻t1のことで、その炊飯終了時から次の炊飯開始までの間に水槽7が取り外されるとその時刻t1はゼロとなる。前記の第1の電圧値は、第2及び第3の電圧値より低く、第2の電圧値は、第3の電圧値よりも低い値である。
【0014】
次に、前記のように構成された炊飯器の動作について図2を用いて説明する。図2は実施の形態に係る炊飯器の動作を示すフローチャートである。
制御部14は、炊飯スイッチ(図示せず)のON操作を検知すると、炊飯スイッチON時の時刻t2を計測し、次いで、水槽検知部9により水槽7が検知されているかどうかを判定する(S1)。水槽7の設置が検知されなかったときは、例えば液晶表示部とブザー(図示せず)を通して水槽7の設置を報知し(S11)、水槽7の設置が検知されたときは、先に計測した時刻t2から前回の炊飯終了時に測定した時刻t1を減算して水槽設置の経過時間t2−t1を算出し、その経過時間が所定時間T未満かどうかを判定する(S2)。
【0015】
経過時間が所定時間T以上のときは、液晶表示部とブザーを通して水槽7の水交換を報知し(S12)、経過時間が所定時間T未満のときは、温度検出部13により検出された水槽7の温度が第1温度より高いかどうかを判定する(S3)。水槽7の温度が第1温度より高いときは、液晶表示部とブザーを通して水槽7の水交換を報知し(S13)、水槽7の温度が第1温度以下のときは、初期満水検知部11により初期満水が検知されているかどうかを初期満水検知部11の出力電圧とデータの第2の電圧値とを比較して判定する(S4)。
【0016】
初期満水が検知されているときは、液晶表示部とブザーを通して水槽7の水位調整、即ち水槽7内の水の排出を報知し(S14)、初期満水が検知されていないときは、下限水位検知部10により下限水位が検知されているかどうかを下限水位検知部10の出力電圧とデータの第1の電圧値とを比較して判定する(S5)。下限水位が検知されていないときは、液晶表示部とブザーを通して水槽7への水補給を報知し(S15)、下限水位が検知されているときは、炊飯スイッチのON操作に基づく炊飯開始を実行する(S6)。つまり、水槽7の設置を検知し、水槽設置の経過時間t2−t1が所定時間T未満で、水槽7の温度が第1温度以下で、水槽7内の水8が下限水位以上で初期満水未満のときに炊飯の開始を実行する。
【0017】
S11〜S15の何れかで報知を行ったときは、炊飯スイッチのON操作に基づく炊飯開始を無効にし(S18)、動作を終了する。ユーザにより、報知に従って処置され、再び炊飯スイッチのON操作がなされると、制御部14は、炊飯スイッチON時の時刻t2を再び測定し、水槽7が設置されているかどうかの判定に入る(S1)。各ステップ(S1〜S5)において報知することなく順に条件を満たしているときは、炊飯スイッチのON操作に基づく炊飯開始を実行する(S6)。なお、S11において水槽7の設置を報知した後に、炊飯スイッチのON操作を検知した場合におけるS2での判定は、前回の炊飯終了時に計測した時刻t1は、水槽7が炊飯器本体1から取り外されたときにゼロにしており、このため、水槽7の設置の経過時間はゼロとなり、所定時間T未満と判定される。
【0018】
S1における判定は、水槽7が設置されることなく炊飯が行われた場合に発生する蒸気導管6からの蒸気放出を防止するためである。蒸気が放出された場合、炊飯器本体1内への結露や、火傷の危険性があるので、水槽7の設置が検知されなかったとき、S11において水槽7の設置を報知するようにしている。
【0019】
S2における判定は、回収水8の入った水槽7を所定時間T以上、炊飯器本体1内に放置させないようにするためである。つまり、炊飯釜2内に規定水量よりも多く加水して炊飯した場合には水槽7内に「おねば」が進入する可能性があり、さらに水槽7の洗浄が不十分で、且つ炊飯終了後に長い間水槽7を放置した場合には水槽7内で菌が繁殖する可能性があることから、そのような状態になる前にS12において水の交換を促すようにしている。その判断基準が所定時間Tである。
【0020】
S3における判定は、水槽7内に案内された蒸気を効率よく冷やして凝縮させるようにするためである。水槽7の温度が第1温度より高い場合、即ち水槽7内の水温が高いと、蒸気凝縮率が低下し蒸気を十分に回収することができず、一部蒸気が水槽7外部へ漏れてしまう。これを防止するためにS13において水槽7の水交換を報知するようにしている。
【0021】
S5における判定は、水槽7内の水8が下限水位より低いとき、蒸気回収時に水温が上昇してしまい蒸気凝縮率が低下し蒸気を十分に回収することができず、一部蒸気が水槽7外部へ漏れてしまうのを防止するためである。よって、S15において水の補給を報知するようにしている。
【0022】
炊飯を開始した後は(S6)、満水検知部12により満水が検知されたかどうかを満水検知部12の出力電圧とデータの第3の電圧値とを比較して判定し(S7)、満水が検知されていないときは炊飯が終了したかどうかを判定する(S8)。炊飯が終了する前に満水が検知されたときは、加熱体5への通電を遮断して炊飯釜2の加熱を一時的に停止し(S16)、液晶表示部とブザーを通して水槽7の満水を報知し(S17)、加熱制御の動作を終了する。この状態は、炊飯開始前の水槽7内の水位が初期満水寸前のときに炊飯を行った場合で、このような場合は、ユーザが水槽7内の回収水8を排出してその水槽7を炊飯器本体1内に設置し、そして、炊飯スイッチをONすると、制御部14は、炊飯開始を再開して加熱体5に通電し、中断したところから実行するようになっている。
【0023】
また、満水が検知されることなく炊飯が終了したときは、温度検出部13により検出された水槽7の温度が第2温度より高いかどうかを判定し(S9)、水槽7の温度が第2温度より高いときは、液晶表示部とブザーを通して水槽7が高温である注意を報知し(S10)、前述した一連の動作を終了する。一方、水槽7の温度が第2温度以下のときは、高温注意を報知することなく一連の動作を終了する。
【0024】
以上のように実施の形態によれば、水槽7の設置を検知し、水槽設置の経過時間t2−t1が所定時間T未満で、水槽7の温度が第1温度以下で、水槽7内の水8が下限水位以上で初期満水未満のときに炊飯の開始を実行するようにしているので、水槽7の設置忘れによる炊飯器本体1内の蒸気放出による結露や火傷などの危険性がなくなり、炊飯終了後の水槽7を長時間放置することによる回収水8の腐食や菌の繁殖を防ぐことができ、衛生性が損なわれることを防ぐ効果がある。また、水槽7内の水温が高い状態で、しかも下限水位より低い水位で炊飯を行うことがなくなるので、蒸気凝縮率が低下し蒸気を十分に回収することができずに一部蒸気が水槽7外部へ漏れることを防止することができ、また、初期満水の検知の際、水(水量)の調整を促すようにしているので、炊飯中に満水検知で加熱停止ということが殆どなくなる。さらに、炊飯終了後に、水槽7の温度が第2温度より高いと判断したとき高温注意を報知するようにしているので、高い安全性が得られるという効果がある。
【0025】
なお、実施の形態では、温度検知部13を炊飯器本体1に設けて、水槽設置時に水槽7の側面に接触するようにしたが、温度検知部を水槽内に設け、温度データを非接触で制御部14に通信するようにしても良い。また、水槽7に熱伝導の良い素材を用いたことを述べたが、前述の如く水槽7内に温度検知部を配置する構成とした場合、水槽7に熱伝導の悪い素材を用いても良い。また、温度検知部13を炊飯器本体1に設けて、水槽設置時に水槽7の側面に接触するようにし、温度検知部13に接触する水槽部分に熱伝導の良い素材を用い、それ以外の水槽部分を熱伝導の悪い素材を用いるようにしても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 炊飯器本体、2 炊飯釜、3 蓋体、4 内蓋、5 加熱体、6 蒸気導管、
7 水槽、7a 水槽蓋、7b 蒸気導入管、8 水(回収水)、9 水槽検知部、
10 下限水位検知部、11 初期満水検知部、12 満水検知部、13 温度検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理中に発生する容器内の蒸気を案内する蒸気導管と、
該蒸気導管により案内された蒸気を回収して水にする水槽と、
該水槽の初期満水を検知するための初期満水検知手段と、
調理開始の操作を検知した際に、前記初期満水検知手段により初期満水が検知されているかどうかを判定し、初期満水が検知されているときは前記水槽の水位調整を報知する制御手段と、を備えた
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記制御手段は、
前記水槽の水位調整を報知した後に調理開始を無効にする
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記水槽の有無を検知する水槽検知手段を備え、
前記制御手段は、
調理開始の操作を検知した際に、前記水槽検知手段により前記水槽が検知されているかどうかを判定し、前記水槽が検知されていないときは前記水槽の設置を報知すると共に調理開始を無効にする
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記水槽の設置時間を計測する設置時間計測手段を備え、
前記制御手段は、
調理開始の操作を検知した際に、前記設置時間計測手段により計測された設置時間からの経過時間が所定時間未満かどうかを判定し、経過時間が所定時間以上のときは前記水槽の水交換を報知すると共に調理開始を無効にする
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記水槽の満水を検知するための満水検知手段を備え、
前記制御手段は、
調理開始を行ったときに、前記満水検知手段により満水が検知されているかどうかを判定し、満水が検知されているときは加熱調理を停止すると共に前記水槽の満水を報知する ことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−207638(P2010−207638A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148607(P2010−148607)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2008−20793(P2008−20793)の分割
【原出願日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】