説明

加熱調理器

【課題】弁孔を開放した状態であっても、蓋体の開放を不可能とすることができる加熱調理器を得る。
【解決手段】蓋体10の蒸気通路34の途中に設けた弁孔89を開閉する調圧ボール91と、蓋体10に設けられ、調圧ボール91を移動させて弁孔89を開閉させる弁孔開閉装置40と、蓋体10に設けられ蓋体10を本体ケースにロックするフック55と、蓋体10に設けられフック55のロックを解除する蓋開閉ボタン23とを備え、弁孔開閉装置40は、作動時に調圧ボール91を弁孔89上に移動させて弁孔89を閉塞すると共に、蓋開閉ボタン23をロックし、非作動時に調圧ボール91を弁孔89上から移動させて弁孔89を開放し、蓋開閉ボタン23のロックを保持するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧力をかけて調理を行う加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱調理器として例えば炊飯器において、水や米などが入れられた内釜内の圧力を高めて炊飯を行うことはよく知られている。このような炊飯器においては、炊飯中になんらかの理由で蓋開閉ボタンが圧下されて蓋体が開放されてしまうと、内釜内の圧力が低下して炊飯できなくなることがある。このような問題を回避するために、炊飯中は蓋体をロックして開放できないようにする技術が提案されている。
【0003】
従来の炊飯器においては、例えば、「蓋の蒸気通路の途中に弁孔を設け、その弁孔上に載せた調圧ボールにより該弁孔を閉塞し、上記調圧ボールを弁孔上から移動せしめて弁孔を開放させる開放手段を備えてなる炊飯ジャーにおいて、上記弁孔のまわりに上記調圧ボールに沿って立上がった弁座を形成し、その弁座の一部に前記弁孔から炊飯ジャーの最も傾き難い方向に他の弁座部分より低い立上がりを有するボール逃げ部を形成したことを特徴とする炊飯ジャー。」が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3151135号公報(請求項1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の加熱調理器では、蓋体の蒸気通路の途中に設けた弁孔に調圧ボールを載せ、ソレノイドの作動時に調圧ボールにより弁孔を閉塞し、ソレノイドの非作動時に調圧ボールを移動させて弁孔を開放する。また、このソレノイドの動作に連動して動くロック片を設け、弁孔が閉塞状態のときには、ロック片を蓋フックに係合して蓋体の開放を不可能とし、弁孔が開放状態のときには、ロック片を蓋フックから放して蓋体の開放を可能にするようにしている。
【0006】
しかしながら、従来の技術では、弁孔の開放と同時に蓋体の開放が可能となる。このため、弁孔を開放した後、内釜内の圧力が十分低下する前に、蓋体の開放が可能となってしまう、という問題点があった。
【0007】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、弁孔を開放した状態であっても、蓋体の開放を不可能とすることができる加熱調理器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明に係る加熱調理器は、
上部が開口した本体ケースと、
前記本体ケースの上部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記蓋体の蒸気通路の途中に設けた弁孔を開閉する調圧ボールと、
前記蓋体に設けられ前記調圧ボールを移動させて前記弁孔を開閉させる弁孔開閉装置と、
前記蓋体に設けられ該蓋体を前記本体ケースにロックするフックと、
前記蓋体に設けられ前記フックのロックを解除する蓋開閉ボタンと
を備え、
前記弁孔開閉装置は、
作動時に前記調圧ボールを前記弁孔上に移動させて前記弁孔を閉塞すると共に、前記蓋開閉ボタンをロックし、
非作動時に前記調圧ボールを前記弁孔上から移動させて前記弁孔を開放し、前記蓋開閉ボタンのロックを保持する
ものである。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、弁孔開閉装置の非作動時に調圧ボールを弁孔上から移動させて弁孔を開放し、蓋開閉ボタンのロックを保持するので、弁孔を開放した状態であっても、蓋の開放を不可能とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】この発明の実施の形態1に係る炊飯器の縦断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る炊飯器の蓋体部分の縦断面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る炊飯器の制御ブロック図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る弁孔開閉装置の動作を説明する図である。
【図5】この発明の実施の形態1に係る弁孔開閉装置の動作を説明する図である。
【図6】この発明の実施の形態1に係る弁孔開閉装置の動作を説明する図である。
【図7】この発明の実施の形態1に係る炊飯工程を説明する図である。
【図8】この発明の実施の形態2に係る炊飯器の蓋体部分の縦断面図である。
【図9】この発明の実施の形態2に係る炊飯器の制御ブロック図である。
【図10】この発明の実施の形態3に係る調理動作を示すフローチャートである。
【図11】この発明の実施の形態4に係る炊飯器の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
以下、加熱調理器の一例として炊飯器について説明する。
なお、この発明はこれに限定されるものではない。炊飯に限らず、蒸し物、煮物、シチュー等各種の調理が可能な加熱調理器に適用することができる。
【0012】
[構成]
図1はこの発明の実施の形態1に係る炊飯器の縦断面図である。
図2はこの発明の実施の形態1に係る炊飯器の蓋体部分の縦断面図である。
なお、以下の説明では、図1及び図2の左側を「前」、右側を「後」という。
【0013】
図1及び図2において、本実施の形態における炊飯器は、炊飯器本体1と蓋体10を備える。
上部が開口した炊飯器本体1には、一端が後部側に設けたヒンジ部2に枢支され、一部に金属板を有する合成樹脂製の蓋体10が、炊飯器本体1の上部開口部を開閉自在に覆うように設けられている。
【0014】
なお、「炊飯器本体1」は、この発明における「本体ケース」に相当する。
【0015】
炊飯器本体1内の下部には、ほぼ深皿状のコイル台3が設置されている。
コイル台3の下面及びコーナ面には、電磁誘導コイル4が配設されている。
5は温度センサーである。温度センサー5は、コイル台3の底部中央部付近に設けられている。この温度センサー5は、ばねに付勢されてコイル台3の底部から上方に突出している。
【0016】
6は内釜である。内釜6は、上部開口部の外周に設けたフランジ6aが炊飯器本体1に係止して炊飯器本体1内に収容される。この内釜6の下部は、コイル台3に近接して位置し、その底面にはばねに付勢された温度センサー5が当接する。
【0017】
7は制御基板である。制御基板7は、炊飯器本体1内において前面側に設けられ、制御部100(後述)を備える。
8は操作部である。操作部8は、炊飯器本体1の前面に設けられる。この操作部8は、操作パネルであり、ボタンなどによる入力操作を受け付けることで、炊飯、予約炊飯、保温などを実行、炊飯の種類の変更などの設定を制御部100に入力する。
8aは表示部である。表示部8a、例えば液晶パネルなどにより構成される。この表示部8aは、設定状態や運転状態、及び蓋体10が開放不可である旨(後述)を表示することで、使用者が状態を確認できる。
【0018】
なお、この表示部8aとしては、これに限らず、発光素子による表示など他の手段を用いても良い。また、表示に限らずスピーカやブザーなどにより、音声により報知する用にしても良い。
【0019】
なお、「表示部8a」は、この発明における「報知手段」に相当する。
【0020】
9は係合部である。係合部9は、炊飯器本体1の上部開口部の前面側に設けられ、後述の蓋体10のフック55が係止される。
【0021】
蓋体10は、上蓋11と、中蓋12と、内蓋13とにより構成されている。
中蓋12は、上蓋11の下面に配設されている。中蓋12の下面には、金属板からなる中蓋中間部材14が固定されている。
内蓋13は、金属板からなり、中蓋12の下面に着脱可能に装着されて内釜6の上部開口部を覆う。
上蓋11の後部側には、開口部16を有し、後端部が開口された凹部15が設けられている。この凹部15には、下部に有底の筒状部18が設けられたカートリッジ17が、筒状部18を開口部16に着脱可能に挿入することにより収容されている。
19は通気孔である。通気孔19は、筒状部18の底部に設けられている。
20は蒸気口である。蒸気口20は、カートリッジ17の上壁に設けられている。
【0022】
上蓋11の前部側に設けられた凹部21内には、蓋開閉ボタン23が配設されている。この蓋開閉ボタン23は上蓋11の凹部21内に挿入され、使用者により押し下げられることにより、フック55に設けられた押圧部22を下方に押し下げる。
これにより、蓋開閉ボタン23は、蓋体10に設けられフック55のロックを解除する。
【0023】
中蓋12の上面のほぼ中央部には、下部が開口し、前面側に開口部31を有するドーム状の弁室30が設けられている。
開口部31は、中央部に弾性体33が設けられたリング状のシール部材32により閉塞されている。
34は蒸気通路である。蒸気通路34は、弁室30の下部とカートリッジ17の通気孔19とを連通する。
【0024】
中蓋12に設けた弁室30の直下の内蓋13には、開口部85が設けられている。
開口部85には、有天円筒状で、その天面が弁室30の上下方向のほぼ中間部に位置する内筒86が装着されている。
また、内筒86の天板の中心部には、弁孔89が設けられ、天板の上面の弁孔89の外周には、後部側が上方に傾斜した弁座90が形成されている。
91は調圧ボールである。調圧ボール91は、弁座90上に位置する。
この調圧ボール91は、弁孔開閉装置40(後述)により移動され、蓋体10の蒸気通路34の途中に設けた弁孔89を開閉する。
【0025】
55はフックである。フック55は、中蓋12の上面の前端部近傍に設けられ、ほぼL字状に形成されている。このフック55は、当該蓋体10を炊飯器本体1にロックする。
フック55の水平片56には、蓋開閉ボタン23と対向する押圧部22が設けられている。また、フック55の垂直片57には、炊飯器本体1に設けた係合部9に係止する係止爪が設けられている。
このフック55は、支持軸58により支持され、図示しないばねにより、当該フック55を常時付勢する。そして、押圧部22が蓋開閉ボタン23により押し下げられると、支持軸58を中心に回動して係止爪が係合部9から離脱する。
【0026】
40は弁孔開閉装置である。弁孔開閉装置40は、作動時に調圧ボール91を弁孔89上に移動させて弁孔89を閉塞すると共に、蓋開閉ボタン23をロックし、非作動時に調圧ボール91を弁孔89上から移動させて弁孔89を開放し、蓋開閉ボタン23のロックを保持する。動作の詳細は後述する。
【0027】
弁孔開閉装置40は、ソレノイド50と、スライド部材41と、プッシュロック機構60と、ロック片26aとを備える。
【0028】
なお、「スライド部材41」は、この発明における「作動部材」に相当する。
【0029】
ソレノイド50は、蓋体10の中蓋12に固定されている。そして、ソレノイド50の可動鉄心52は、スライド部材41に連結されており、非通電状態においては、図1及び図2に示すように前進状態(後部側に吐出状態)にある。
53は復帰ばねである。復帰ばね53は、ソレノイド50のケースとスライド部材41との間において、可動鉄心52に介装されており、スライド部材41を後部側に付勢している。
これにより、ソレノイド50が通電状態においては可動鉄心52が収縮し、非導通状態においては復帰ばね53の付勢力により伸張する。
【0030】
スライド部材41は、後部側にはソレノイド50の可動鉄心52により押圧される突部47が設けられている。また、前部側にはプッシュロック機構60が連結されている。
このスライド部材41は、ソレノイド50に連結され、ソレノイド50の作動時には調圧ボール91を弁孔89上に移動させて弁孔89を閉塞し、非作動時には調圧ボール91を弁孔89上から移動させて弁孔89を開放する。
【0031】
プッシュロック機構60は、スライド部材41に連結され、ソレノイド50の作動時には、前部側に移動したスライド部材41と、中蓋12に形成された押止部12aとにより、圧縮力が加えられる。
プッシュロック機構60は、圧縮力を加えることにより収縮した状態でロックがかかり収縮状態を保持し、再び圧縮力を加えることにより該ロックが解除されて伸張し伸張状態を保持する。
【0032】
プッシュロック機構60は、移動体62と、収縮状態において移動体62を収納するケース体61と、移動体62を伸張方向へ付勢する圧縮ばね63とを備える。
このプッシュロック機構60は、例えば、移動体62に形成されたハートカムと、ケース体61に形成され、ハートカムに圧接するロックピンとの係合により移動体62の位置をロックするいわゆるプッシュロック式のハートカム機構からなる。
これにより、プッシュロック機構60は、移動体62が圧縮ばね63の付勢力に抗して圧縮されると、移動体62がケース体61内に退避した状態でロックがかかり収縮状態となる。そして、再び、移動体62が圧縮されるとロックが解除され、圧縮ばね63の付勢力により移動体62がケース体61から突出した伸張状態となる。
【0033】
ロック片26aは、プッシュロック機構60の移動体62に連結される。
このロック片26aは、フック55の水平片56の下方に移動されたとき、フック55の回動を阻止して、蓋開閉ボタン23をロックする。
【0034】
図3はこの発明の実施の形態1に係る炊飯器の制御ブロック図である。
図3において、制御部100は、マイコンなどにより構成される。制御部100は、操作部8からの設定情報や温度センサー5等からの検知情報が入力され、これらの情報に基づき、インバータ回路(図示せず)を駆動制御して、電磁誘導コイル4への通電を制御することで炊飯工程を実施する。
また、制御部100は、例えば炊飯工程に関する情報など、運転状態や設定状態の情報を表示部8aに表示させる。
また、制御部100は、所定時間(後述)の経過を計測するタイマー110を備える。
さらに、制御部100は、ソレノイド50への通電を制御して、ソレノイド50の可動鉄心52の伸縮動作を制御する。
【0035】
[動作]
図4〜図6はこの発明の実施の形態1に係る弁孔開閉装置の動作を説明する図である。
図7はこの発明の実施の形態1に係る炊飯工程を説明する図である。
以下、本実施の形態における炊飯器により炊飯する場合の蓋体10の動作を、図4〜図6に基づき、図7を参照しながら説明する。
【0036】
初期状態においては、ソレノイド50は非通電状態であり、プッシュロック機構60は収縮状態であるとする。
この状態で蓋体10を閉じると、図4(a)に示すように、フック55の垂直片57が係合部9の係止爪に係止され、蓋体10は、炊飯器本体1の上部開口部を閉塞してロックする。
このとき、ソレノイド50は非通電状態であるため、ソレノイド50の可動鉄心52は、復帰ばね53の付勢力により伸張する。そして、ソレノイド50に連結されたスライド部材41も後部側にスライドし、その突部47が弁室30の開口部31に設けた弾性体33を押圧して弾性変形させ、調圧ボール91を弁座90の後部側に移動させて弁孔89を開放している。
また、プッシュロック機構60は、収縮状態である。このとき、プッシュロック機構60に連結されたロック片26aは、図4(a)に示すように、フック55の水平片56より後部側に位置する。
【0037】
そして、この状態で蓋開閉ボタン23を圧下すると、図4(b)に示すように、押圧部22が水平片56を圧下してフック55を回動させ、垂直片57の係止爪が係合部9から離脱するので、蓋体10はヒンジ部2を軸に開放することができる。
【0038】
次に、使用者は、炊飯を行う場合、所定の米と水が入れられた内釜6を炊飯器本体1内にセットし、蓋体10を閉じる(図4(a))。
そして、使用者は、操作部8を操作して炊飯工程を開始させる。
図7に示すように、制御部100は、予熱工程において、温度センサー5の検知温度に基づいて、電磁誘導コイル4への通電を制御して内釜6が所定の時間、所定の温度となるように制御する。この予熱工程においては、ソレノイド50は非通電状態(0V)とする。
【0039】
次に、炊飯工程において、制御部100は、ソレノイド50に通電(作動)し、ソレノイド50の可動鉄心52を収縮させる。
そして、図5(c)に示すように、ソレノイド50に連結されたスライド部材41は、前部側に移動して、調圧ボール91は自重により移動して弁孔89を閉じる。
また、プッシュロック機構60は、スライド部材41に連動して前部側に移動し、押止部12aにより押止されて圧縮力が加えられる。これによりプッシュロック機構60のロックが解除されるが、スライド部材41からの押圧力により収縮状態を維持する。
【0040】
このとき、図5(c)に示すように、前部側に移動したプッシュロック機構60に連結されたロック片26aは、フック55の水平片56の下に移動し、フック55の回動を阻止する。これにより、蓋開閉ボタン23はロックされ、蓋体10を開放することができない。
【0041】
また、図7に示すように、制御部100は炊飯工程において、温度センサー5の検知温度に基づいて、電磁誘導コイル4への通電を制御して内釜6が所定の炊飯温度となるように制御する。
炊飯中は、内筒86の弁孔89が閉鎖されているため、内釜6内に発生した蒸気が漏れることがないので内釜6内の圧力が上昇し、高圧のもとで炊飯が行われる。
この炊飯工程においては、ソレノイド50は通電状態を維持する。
これにより、炊飯工程中は、蓋開閉ボタン23のロックが維持される。
【0042】
なお、ソレノイド50への通電は、可動鉄心52を収縮させる駆動力を与える場合には例えば100Vを印加し、収縮状態を保持する場合は所定の電圧(例えば50V)を印可する。
【0043】
なお、「炊飯工程」は、この発明における「圧力工程」に相当する。
【0044】
次に、制御部100は、炊飯工程が終了する直前にソレノイド50への通電を停止する(非作動)。ソレノイド50の可動鉄心52は、復帰ばね53の付勢力により伸張する。
そして、図5(d)に示すように、スライド部材41は後部側に移動し、突部47により調圧ボール91を押圧することで、調圧ボールを弁孔89上から移動させ、弁孔89を開放する。
これにより、内釜6内の高圧蒸気は、内筒86の弁孔89から弁室30を通って、蒸気通路34、カートリッジ17の通気孔19を経て蒸気口20から外部に放出される。
【0045】
このとき、図5(d)に示すように、プッシュロック機構60は、スライド部材41からの押圧力が開放され、圧縮ばね63の付勢力により移動体62がケース体61から突出した伸張状態となる。
このため、ロック片26aは、フック55の水平片56の下に位置し、フック55の回動を阻止する。
これにより、ソレノイド50を非作動とした状態においても、蓋開閉ボタン23はロックされ、蓋体10を開放することができない。
【0046】
次に、むらし工程において、制御部100のタイマー110により、ソレノイド50を非作動とした後、所定時間の経過を計測する。この所定時間としては、内釜6内の圧力が十分低下するのに必要な時間を設定する。例えば20〜30秒に設定する。
所定時間が経過した後、制御部100は、ソレノイド50を作動させる。
そして、図6(e)に示すように、スライド部材41及びプッシュロック機構60は、前部側に移動する。
このとき、プッシュロック機構60は、押止部12aにより押止されて、再び、圧縮力が加えられ、収縮した状態でロックがかかり収縮状態を保持する。
【0047】
制御部100は、所定時間(例えば2〜3秒)経過した後、ソレノイド50を非作動とする。
これにより、図6(f)に示すように、スライド部材41及びプッシュロック機構60は、再び、後部側に移動する。
そして、プッシュロック機構60は、収縮状態を維持したまま、スライド部材41に連動して後部側に移動する。このとき、プッシュロック機構60に連結されたロック片26aは、フック55の水平片56より後部側に移動する。
これにより、蓋開閉ボタン23のロックが解除されるので、蓋体10を開放することができる。
【0048】
[効果]
以上のように本実施の形態においては、弁孔開閉装置40の作動時に調圧ボール91を弁孔89上に移動させて弁孔89を閉塞すると共に、蓋開閉ボタン23をロックし、非作動時に調圧ボール91を弁孔89上から移動させて弁孔89を開放し、蓋開閉ボタン23のロックを保持する。
このため、弁孔89を開放した状態であっても、蓋体10の開放を不可能とすることができる。
したがって、例えば、炊飯工程の終了直後や、停電や使用者の操作により炊飯工程が停止された直後など、弁孔89を開放した状態であっても内釜6内の圧力が上昇した場合において、蓋体10が開放されることを防止することができる。
【0049】
また、ソレノイド50の作動時には、プッシュロック機構60に圧縮力を加えると共に、ロック片26aにより蓋開閉ボタン23をロックする。また、ソレノイド50の非作動時であって、プッシュロック機構60が伸張状態のとき、ロック片26aにより蓋開閉ボタン23をロックし、プッシュロック機構60が収縮状態のとき、ロック片26aによる蓋開閉ボタン23のロックを解除する。
このため、プッシュロック機構60を設ける簡易な構成で、弁孔89を開放した状態であっても、蓋体10の開放を不可能とすることができる。
【0050】
また、炊飯工程時にソレノイド50を作動させて弁孔89を閉塞させる。また、炊飯工程終了後、ソレノイド50を非作動として弁孔89を開放させ、所定時間が経過した後、ソレノイド50を所定時間作動させ、プッシュロック機構60に圧縮力を加えて収縮状態を保持させ、ロック片26aによる蓋開閉ボタン23のロックを解除する。
このため、炊飯工程時には弁孔89を閉塞して内釜6内の圧力を上昇させ、蓋体10の開放を不可能とすることができる。
また、炊飯工程終了後、弁孔89を開放して、内釜6内の圧力が低下するまでの所定時間の間、蓋体10の開放を不可能とすることができる。
また、所定時間の経過後、蓋開閉ボタン23のロックを解除して、蓋体10の開放を可能とすることができる。
【0051】
なお、本実施の形態1では、ロック片26aを、プッシュロック機構60に連結し、このロック片26aにより、フック55の動作を阻止することで、蓋開閉ボタン23をロックする形態について説明したが、この発明はこれに限るものではない。
例えば、プッシュロック機構60がロック片26aを兼ねるようにしても良い。
即ち、ソレノイド50の作動時には、プッシュロック機構60に圧縮力を加えると共に、プッシュロック機構60により蓋開閉ボタン23をロックする。また、ソレノイド50の非作動時であって、プッシュロック機構60が伸張状態のとき、プッシュロック機構60により蓋開閉ボタン23をロックし、プッシュロック機構60が収縮状態のとき、プッシュロック機構60による蓋開閉ボタン23のロックを解除するようにしても良い。
【0052】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2に係る炊飯器の蓋体部分の縦断面図である。
図8に示すように、本実施の形態における炊飯器は、上記実施の形態1の構成に加え、プッシュロック機構60の位置を検出するマイクロスイッチ70を備える。
なお、その他の構成は、上記実施の形態1と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0053】
このマイクロスイッチ70は、例えば、機械的な接点スイッチにより構成される。
マイクロスイッチ70は、プッシュロック機構60に連結されたロック片26aが、フック55の水平片56の下方に位置するか否かを検出する。即ち、蓋開閉ボタン23のロック状態を検知する。
なお、本実施の形態では、機械的な接点を用いて蓋開閉ボタン23のロック状態を検知するが、この発明はこれに限るものではなく、蓋開閉ボタン23のロック状態を検知できるものであれば良い。例えば、赤外線位置センサーなどにより、ロック片26a又はプッシュロック機構60の位置を検出するようにしても良い。
【0054】
なお、「マイクロスイッチ70」は、この発明における「ロック状態検知手段」に相当する。
【0055】
図9はこの発明の実施の形態2に係る炊飯器の制御ブロック図である。
本実施の形態における制御部100は、マイクロスイッチ70の検知状態に基づき、蓋開閉ボタン23がロック状態のとき、蓋体10が開放不可である旨を表示部8aに表示させる。例えば「圧力が高いので蓋を開放できません。」などと表示する。
なお、表示部8aを用いた表示に限らず、例えばスピーカやブザーなどにより、音により報知する用にしても良い。
【0056】
[効果]
以上のように本実施の形態においては、蓋開閉ボタン23がロック状態のとき、蓋体10が開放不可である旨を報知する。
このため、使用者に対して蓋開閉ボタン23がロック状態である旨を報知することができる。
例えば、炊飯工程が終了した後、蓋開閉ボタン23がロック状態のとき、使用者は、なぜ蓋体10が開放できないのかを知ることができる。
【0057】
実施の形態3.
本実施の形態3では、例えば停電などにより当該炊飯器への交流電力の供給が停止し、例えば停電の復旧などにより該交流電力の供給が復帰した後、蓋開閉ボタン23がロック状態でない場合、蓋開閉ボタン23をロックさせる形態について説明する。
なお、本実施の形態における炊飯器の構成は、上記実施の形態2と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0058】
本実施の形態における制御部100は、上記実施の形態1及び2の動作に加え、マイクロスイッチ70の検知状態に応じて、ソレノイド50を作動させる。
【0059】
図10はこの発明の実施の形態3に係る調理動作を示すフローチャートである。
以下、本実施の形態における調理動作を、図10の各ステップに基づき説明する。
【0060】
(S101)
まず、制御部100は、使用者による操作部8の操作により、上述した実施の形態1と同様に調理工程を開始する。
そして、制御部100は、当該炊飯器に供給される交流電力の停電発生の有無を検知する。この停電発生の有無は、当該炊飯器への交流電力の供給が停止し、再び、交流電力の供給が復帰した場合、停電が発生したと検知する。
停電の発生を検知しない場合は、ステップS105へ進む。
【0061】
(S102)
制御部100は、停電の発生を検知したとき、マイクロスイッチ70の検知状態に基づき、蓋開閉ボタン23がロック状態であるか否かを判断する。
蓋開閉ボタン23がロック状態である場合は、ステップS104へ進む。
【0062】
(S103)
一方、蓋開閉ボタン23がロック状態でないとき、制御部100は、ソレノイド50を作動させ、蓋開閉ボタン23をロックする。このロック動作は上記実施の形態1と同様である。
【0063】
(S104)
次に、制御部100は、調理動作を継続するか否かを判断する。この判断は、例えば調理工程の進捗状態などにより判断する。
調理動作を継続しないと判断した場合、ステップS106へ進む。
【0064】
(S105)
一方、ステップS104で調理動作を継続すると判断した場合、及びステップS102で蓋開閉ボタン23がロック状態である場合、制御部100は、炊飯工程が終了したか否かを判断する。
炊飯工程が継続中である場合、ステップS101へ戻り、再び停電発生の有無を検知する。
【0065】
(S106)
一方、ステップ105で炊飯工程が終了したと判断した場合、及びステップS104で調理動作を継続しないと判断した場合、制御部100は、ソレノイド50を非作動とし、弁孔89を開放させる。このとき、上記実施の形態1と同様に、ソレノイド50を非作動とした状態においても、蓋開閉ボタン23はロックされ、蓋体10を開放することができない。
【0066】
(S107)
次に、制御部100は、上記実施の形態1と同様に、内釜6内の圧力が十分低下するのに必要な時間が経過した後、再び、ソレノイド50を作動させ、蓋開閉ボタン23のロックを解除する。
【0067】
[効果]
以上のように本実施の形態においては、当該炊飯器への交流電力の供給が停止し、交流電力の供給が復帰した後、蓋開閉ボタン23がロック状態か否かを判断し、蓋開閉ボタン23がロック状態でない場合、ソレノイド50を作動させて蓋開閉ボタン23をロックさせる。
このため、例えば停電の復旧などにより交流電力の供給が復帰した後、蓋開閉ボタン23がロック状態でない場合、蓋開閉ボタン23をロックさせることができる。
【0068】
また、交流電力の供給が復帰した後、調理動作を継続しない場合、弁孔89を開放し所定時間経過後、ソレノイド50を作動させて蓋開閉ボタン23のロックを解除する。
このため、内釜6内の圧力が上昇した場合において、蓋体10が開放されることを防止することができると共に、内釜6内の圧力が十分低下した状態で蓋体10の開放を可能とすることができる。
【0069】
実施の形態4.
図11はこの発明の実施の形態4に係る炊飯器の縦断面図である。
図11に示すように、本実施の形態における炊飯器は、当該炊飯器への交流電力の供給が停止したとき、少なくとも表示部8aの駆動電力を供給するバッテリー200を備える。
なお、その他の構成は、上記実施の形態2と同様であり、同一部分には同一の符号を付する。
【0070】
このような構成により、例えば停電などにより、当該炊飯器への交流電力の供給が停止したときであっても、表示部8aはバッテリー200からの電力により駆動する。
そして、上記実施の形態2と同様に、表示部8aは、蓋開閉ボタン23がロック状態のとき、蓋体10が開放不可である旨を表示する。
【0071】
[効果]
以上のように本実施の形態においては、バッテリー200を備えるので、当該炊飯器への交流電力の供給が停止したとき、使用者に対して蓋開閉ボタン23がロック状態である旨を報知することができる。
例えば停電中に、蓋開閉ボタン23がロック状態のとき、使用者は、なぜ蓋体10が開放できないのかを知ることができる。
【0072】
なお、上記説明では表示部8aを用いて報知する場合を説明したが、これに限らず、例えばスピーカやブザーなどにより、音により報知する用にしても良い。
【符号の説明】
【0073】
1 炊飯器本体、2 ヒンジ部、3 コイル台、4 電磁誘導コイル、5 温度センサー、6 内釜、6a フランジ、7 制御基板、8 操作部、8a 表示部、9 係合部、10 蓋体、11 上蓋、12 中蓋、12a 押止部、13 内蓋、14 中蓋中間部材、15 凹部、16 開口部、17 カートリッジ、18 筒状部、19 通気孔、20 蒸気口、21 凹部、22 押圧部、23 蓋開閉ボタン、26a ロック片、30 弁室、31 開口部、32 シール部材、33 弾性体、34 蒸気通路、40 弁孔開閉装置、41 スライド部材、47 突部、50 ソレノイド、52 可動鉄心、55 フック、56 水平片、57 垂直片、58 支持軸、60 プッシュロック機構、61 ケース体、62 移動体、63 圧縮ばね、70 マイクロスイッチ、85 開口部、86 内筒、89 弁孔、90 弁座、91 調圧ボール、100 制御部、110 タイマー、200 バッテリー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部が開口した本体ケースと、
前記本体ケースの上部を開閉自在に覆う蓋体と、
前記蓋体の蒸気通路の途中に設けた弁孔を開閉する調圧ボールと、
前記蓋体に設けられ前記調圧ボールを移動させて前記弁孔を開閉させる弁孔開閉装置と、
前記蓋体に設けられ該蓋体を前記本体ケースにロックするフックと、
前記蓋体に設けられ前記フックのロックを解除する蓋開閉ボタンと
を備え、
前記弁孔開閉装置は、
作動時に前記調圧ボールを前記弁孔上に移動させて前記弁孔を閉塞すると共に、前記蓋開閉ボタンをロックし、
非作動時に前記調圧ボールを前記弁孔上から移動させて前記弁孔を開放し、前記蓋開閉ボタンのロックを保持する
ことを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記弁孔開閉装置は、
前記蓋体に固定され、伸縮動作するソレノイドと、
該ソレノイドに連結され、当該ソレノイドの作動時には前記調圧ボールを前記弁孔上に移動させて前記弁孔を閉塞し、非作動時には前記調圧ボールを前記弁孔上から移動させて前記弁孔を開放する作動部材と、
該作動部材に連結され、圧縮力を加えることにより収縮した状態でロックがかかり収縮状態を保持し、再び圧縮力を加えることにより該ロックが解除されて伸張し伸張状態を保持するプッシュロック機構と、
該プッシュロック機構に連結され、前記蓋開閉ボタンをロックするロック片と
を備え、
前記ソレノイドの作動時には、前記プッシュロック機構に圧縮力を加えると共に、前記ロック片により前記蓋開閉ボタンをロックし、
前記ソレノイドの非作動時であって、前記プッシュロック機構が伸張状態のとき、前記ロック片により前記蓋開閉ボタンをロックし、前記プッシュロック機構が収縮状態のとき、前記ロック片による前記蓋開閉ボタンのロックを解除する
ことを特徴とする請求項1記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記ソレノイドの動作を制御する制御部を備え、
前記制御部は、
圧力工程時に前記ソレノイドを作動させて前記弁孔を閉塞させ、
前記圧力工程終了後、前記ソレノイドを非作動として前記弁孔を開放させ、所定時間が経過した後、前記ソレノイドを所定時間作動させ、前記プッシュロック機構に圧縮力を加えて収縮状態を保持させ、前記ロック片による前記蓋開閉ボタンのロックを解除する
ことを特徴とする請求項2記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記蓋開閉ボタンのロック状態を検知するロック状態検知手段を備え、
前記制御部は、
前記ロック状態検知手段の検知状態に応じて、前記ソレノイドを作動させる
ことを特徴とする請求項3記載の加熱調理器。
【請求項5】
前記制御部は、
当該加熱調理器への交流電力の供給が停止し、該交流電力の供給が復帰した後、前記蓋開閉ボタンがロック状態か否かを判断し、
前記蓋開閉ボタンがロック状態でない場合、前記ソレノイドを作動させて前記ロック片により前記蓋開閉ボタンをロックさせる
ことを特徴とする請求項4記載の加熱調理器。
【請求項6】
前記蓋開閉ボタンがロック状態のとき、前記蓋体が開放不可である旨を報知する報知手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の加熱調理器。
【請求項7】
当該加熱調理器への交流電力の供給が停止したとき、少なくとも前記報知手段の駆動電力を供給するバッテリーを備えた
ことを特徴とする請求項6記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−5004(P2011−5004A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−152039(P2009−152039)
【出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】