説明

加熱調理器

【課題】上面に発熱体、周囲に弾性体を備えたフタと、下面に発熱体を備えた調理皿から構成される調理容器を使用することで、加熱調理中のスパークを防止して食品の両面を高温に加熱して焼き色をつけることができる、安全性が高く加熱調理性能の高い加熱調理器を提供できる。
【解決手段】食品を収納する加熱室と、前記食品を収納する調理容器と、該調理容器を載置するテーブルプレートと、前記食品を加熱するマイクロ波を発生するマグネトロンと、を設け、前記調理容器は、金属製の調理皿と金属製のフタを備え、加熱調理時には前記調理皿と前記フタの両者が食品と接触するように構成されており、前記調理皿はマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を下面に備え、前記フタはマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を上面に備え、前記フタの周囲に樹脂製で上下方向に変形可能なフランジ形状の弾性体を備え、前記フタと前記調理皿が前記弾性体を介して接触する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品を加熱する加熱手段として、マイクロ波を発生するマグネトロンを備えた加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的な食品は180℃以上で焼き色、焦げ目がつくが、マイクロ波を用いた食品加熱では、食品中の水分を加熱するので食品の温度は水の沸点温度の100℃以上にならず、マイクロ波加熱では食品に焼き色をつけることはできなかった。そこで、ヒータとマグネトロンを備えたオーブンレンジにおいて、食品に焼き色をつける調理を行う際には、上面ヒータを用いて輻射加熱で加熱していた。しかし、上面ヒータの輻射加熱で食品を加熱する場合は、食品の両面を一度に加熱することができなかった。
【0003】
そこで、マイクロ波を吸収して発熱する発熱体を食品に接触させることで、食品表面を高温に加熱する加熱調理器が開発されている。例えば、マイクロ波を吸収して発熱する発熱体を備えた調理皿に食品を載置し、調理皿に接触する食品の下面をマイクロ波で、食品の上面をヒータによる輻射加熱で加熱する加熱調理器が提案されている。
【0004】
また、食品の両面を加熱調理する方法として、以下の特許文献に開示される技術が知られている。
【0005】
特許文献1では、セラミック焼結体から構成された発熱板と、耐熱性合成樹脂とマイクロ波遮蔽層から構成された、内部に偏平な被加熱食品を収容する内部スペースを有した浅箱状の容器にマイクロ波吸収発熱板を設けることで、マイクロ波によりマイクロ波吸収発熱板を発熱させ、発熱板に接する食品の表面を高温に加熱する加熱調理器具が開示されている。
【0006】
特許文献2では、複数の平板状のマイクロ波吸収発熱体が互いに向かい合うような位置関係で立設配置されていることによって、調理物を発熱体で立てて挟んだ状態で加熱調理を行うことで、マイクロ波がどの方向から照射されても、複数の発熱体と調理物に均等にマイクロ波が吸収される構造の電子レンジ用調理器具が開示されている。
【0007】
特許文献3では、金属製の芯材によって網目状に形成された基材の表面に発熱層を形成した発熱体2枚を、回動可能な支点を介して接続した構造で、被調理物の表面を発熱体で、内部をマイクロ波で、それぞれ加熱する高周波加熱装置用発熱体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6−193887号公報
【特許文献2】特開平9−126474号公報
【特許文献3】特開平11−167985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
マイクロ波を吸収して発熱する発熱体を備えた調理皿に食品を載置して、食品の下面をマイクロ波で、食品の上面をヒータで加熱する従来の加熱調理器では、調理皿に載置した食品にマイクロ波を照射するため、加熱調理中に食品内部が乾燥し、仕上がりがパサパサになることがあった。
【0010】
また、加熱調理器が同時に使用できる電力量には限りがあるため、食品の表面を高温にするための高出力ヒータとマグネトロンの高出力は同時に使用できず、ヒータとマグネトロンを交互動作させなければならないのでエネルギーロスが大きく熱効率が良好でない。
【0011】
また、食品の下面を調理皿に接触させ、食品の上面を開放していることから、食品の上面と下面で焼き色のつき方が異なることがあった。
【0012】
特許文献1では、セラミック混合の発熱体を使用しており、セラミックにもマイクロ波が吸収されるため発熱体の発熱量が少なく、食品表面の温度を上げるために長い時間がかかるため、食品に焦げ目をつけにくい。また、食品の厚さが容器全体の厚さよりも厚い場合には、容器間が開放され、食品が密閉されず、発熱体を通過したマイクロ波が食品に吸収されて食品内部の水分が放出される。また、食品の厚さが下容器の厚さよりも薄い場合には、食品と発熱板が接触せず、食品両面に焦げ目をつけられない。また、食品に上容器の自重がかかるため、食品が圧縮されて仕上がりが悪くなる。また、容器表面のマイクロ波遮蔽層は薄い金属のフィルムで構成されているため、マイクロ波遮蔽層の端部にマイクロ波が集中しやすく、マイクロ波遮蔽層の端部と遮蔽層の間で放電(スパーク)が発生する。
【0013】
特許文献2では、発熱体の間隔が固定されており、食品の厚さが発熱体間隔と異なる場合は発熱体と食品が接触せず、食品の表面に焦げ目をつけることができない。また、食品を立てて設置するため、ある程度硬さのある食品には対応できるものの、立てると変形する柔らかい食品は加熱調理を行うことができない。
【0014】
特許文献3では、食品が発熱体2枚で強制的に挟まれるため、食品の厚さや種類によっては食品が押しつぶされて変形し、食品の外観と食感が損なわれる。また、食品表面のみに焼き色をつけたい場合は、予め予備運転により予熱を行った後に発熱体に食品を挟む必要があるが、予熱後に食品を挟む際に高温の発熱体を使用者が触ることになり、火傷などの危険性がある。また、食品がホットケーキやクレープの生地など液体状の柔らかい食品の場合や、小さい場合は、網目状の発熱体が食品にくいこんだり、網目の間から食品がこぼれたりして、加熱調理ができない。
【0015】
本発明は、以上の課題の少なくとも一つを解決するものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上記の課題を解決するためになされるものであり、請求項1では、食品を収納する加熱室と、前記食品を収納する調理容器と、該調理容器を載置するテーブルプレートと、前記食品を加熱するマイクロ波を発生するマグネトロンと、を設け、前記調理容器は、金属製の調理皿と金属製のフタを備え、加熱調理時には前記調理皿と前記フタの両者が食品と接触するように構成されており、前記調理皿はマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を下面に備え、前記フタはマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を上面に備え、前記フタの周囲に樹脂製で上下方向に変形可能なフランジ形状の弾性体を備え、前記フタと前記調理皿が前記弾性体を介して接触する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、食品の両面に接触させた金属板を高温に加熱し、食品の厚さによらず、食品の内部を過剰に乾燥させることなく、両面を一度に加熱して焦げ目を付ける調理ができる加熱調理器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の調理容器を上面側から見た斜視部分断面部品展開図。
【図2】実施例1の調理容器を下面側から見た斜視図。
【図3】実施例1において、厚さが厚い食品を調理する場合の調理容器を前面側から見た断面図。
【図4】実施例1において、厚さが薄い食品を調理する場合の調理容器を前面側から見た断面図。
【図5】実施例1の調理容器を収納した加熱調理器の斜視図。
【図6】実施例2の調理容器を上面側から見た斜視部分断面図。
【図7】実施例2の調理容器を収納した加熱調理器の斜視図。
【図8】実施例3の調理容器を上面側から見た斜視部分断面図。
【図9】実施例3の調理容器を収納した加熱調理器の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の加熱調理器を、マグネトロンによるマイクロ波加熱とともに、ヒータによるオーブン加熱機能を備えたオーブン機能付き電子レンジを例にとって説明する。なお、本発明の適用対象となる加熱調理器は、マイクロ波加熱のためのマグネトロンを備える限り、オーブン機能は無くても良く、また、マイクロ波加熱、オーブン加熱に加え、過熱水蒸気加熱ができるものであっても良い。
【実施例1】
【0020】
図1は実施例1の調理容器を上面側から見た斜視部分断面部品展開図、図2は下面側から見た斜視図である。図3は実施例1の調理容器を用いて厚さが厚い食品を調理する場合の調理容器を前面側から見た断面図である。図4は実施例1の調理容器を用いて厚さが薄い食品を調理する場合の調理容器を前面側から見た断面図である。図5は実施例1の調理容器を収納した加熱調理器の斜視図である。
【0021】
まず、図1と図2を用いて、本実施例の調理容器5の構成について説明する。
【0022】
本実施例の調理容器5は、図に示すように、フタ51と調理皿53を備えており、調理皿53上に食品50を載置し、この食品50の上にフタ51を載置して使用する構造である。フタ51には、上側にフタの発熱体52と取っ手56、周囲に弾性体55を備えており、調理皿53には、下側に調理皿の発熱体54、支持具58と金属脚57を備えている。
【0023】
フタ51の下面と調理皿53の上面はそれぞれ食品50に接触しており、食品50に接触しているフタ51と調理皿53は、熱伝導率の高い素材、例えばステンレス(SUS)やアルミ等の金属製である。フタの発熱体52と調理皿の発熱体54はマイクロ波を吸収して発熱する素材、例えばフェライト粉末を混入したシリコン樹脂製である。つまり、フタ51と調理皿53は片面が食品50に接触し、食品50に接触しない面にそれぞれ発熱体を備えている。
【0024】
また、フタ51の取っ手56は熱伝導率が低くマイクロ波により加熱されにくい素材、例えばポリフェニレンスルファイド(PPS)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の樹脂製である。ここで、本実施例では、取っ手56はフタ51の左右両サイドに2個取り付けられているが、取っ手56の取り付け位置や数は任意に設定可能であり、フタ51の中心部分などに1個設けても良い。
【0025】
また、調理皿53の下方には支持具58を介して金属脚57が配置されており、金属脚57を介して底面に載置することで、調理皿53を適切な高さに設置することが可能である。支持具58は導電率が低く耐熱性の高い樹脂、例えばPPS等の樹脂製である。ここで、本実施例での金属脚57は金属製であるが、耐熱性と強度の高い樹脂製でも良い。
【0026】
ここで、本実施例の調理容器5では、フタ51の周囲にフランジ形状の弾性体55が取り付けられており、調理皿53とフタ51は間に弾性体55を介して接触する構造である。弾性体55は耐熱性が高く、マイクロ波を吸収しにくく、水蒸気を透過させず、変形可能な素材、例えばシリコンなどの樹脂製であり、上下方向に弾性変形できるベローズ構造である。また、弾性体55は、調理皿53に接触する箇所で、調理皿53周囲のフランジ上面と側面壁面に合わせることができるフランジ形状である。
【0027】
図3と図4を用いて弾性体55の変形形状を説明する。前述したように、調理容器5は、発熱体54を備えた調理皿53上に食品50を接触させて載置し、フタ発熱体52を備えたフタ51を食品50上に接触させて載置する構造である。
【0028】
ここで、図3に示すように、調理皿53の深さdよりも食品50の厚さhが大きい場合には、調理皿53上に食品50を載置し、フタ51を食品50上に接触させて載置した後、フタ51を食品50上に固定したままで弾性体55を持って上下方向に延ばすことで、弾性体55のフランジ部分55aと調理皿53のフランジ部分53aを接触させることができる。
【0029】
また、図4に示すように、調理皿53の深さdよりも食品50の厚さhが小さい場合には、調理皿53上に食品50を載置し、弾性体55を調理皿53に沿わせるようにフタ51を設置した後、調理皿53のフランジ部分53aに弾性体のフランジ部分55aが当接したままで、フタ51の上に外力を掛けて弾性体55を上下方向に縮めてフタ51を押し下げることで、食品50の上面にフタ51を接触させることができる。
【0030】
ここで、例えば調理皿53の深さdが10〜20mm程度であり、食品厚さhが20mm以上の食パンのような食品でも、食品厚さhが10mm以下のせんべいのような食品でも、フタ51と調理皿53は食品50の両面に接触させ、フタ51と調理皿53は弾性体55を介して接触できる。
【0031】
以上が本実施例の調理容器5の構成であり、次に本実施例の効果を説明する。
【0032】
本実施例の調理容器5に食品50を収納してマイクロ波を照射することによって、フタの発熱体52と調理皿の発熱体54が加熱され、その熱が伝導することで食品50に接触しているフタ51と調理皿53が高温に加熱され、食品50の両面を高温に加熱できる。
【0033】
ここで、図3、図4で説明したように、食品50の厚さに関わらず、フタ51と調理皿53を食品50に接触させることが可能であり、マイクロ波を照射して各発熱体を発熱させることで、短時間で食品50の両面を高温に加熱し、両面同時に焦げ目をつけることができる。また、食品50の厚さに関わらず、フタ51と調理皿53と間に介在する弾性体55により食品50を調理容器5内に密閉できるので、加熱調理中の食品50からの水分の蒸発を抑制できる。
【0034】
さらに、弾性体55は、調理皿53に接触する箇所で、調理皿53周囲のフランジ53aの上面と側面壁面に合わせることができるフランジ55aを備えていることから、フタ51は弾性体55を調理皿53に合わせて載置することで、調理皿53に対して容易に位置合わせが可能であり、食品50を密閉できる。なお、調理皿53のフランジ53aの角部のRは、当接する弾性体55のフランジ55aの角部Rよりも小さくするとより位置合わせが容易である。
【0035】
また、フタ51と調理皿53の間隔がマイクロ波波長(12cm)よりも十分小さければ、外部からマイクロ波を照射した場合でも、フタ51と調理皿53の間隙からマイクロ波は調理容器5の内部に侵入しにくい。よって、水蒸気が蒸発しないように周囲を密閉し、マイクロ波を吸収させないことによって、加熱調理中の食品50の過度な乾燥を防止できる。つまり、本実施例の調理容器5を用いることで、食品50の厚さに関わらず、食品50の内部の乾燥を防止し食品50両面に焦げ目をつける加熱調理が可能である。
【0036】
また、弾性体55により、フタ51と調理皿53の間隔を任意の距離に調整することが可能であるため、フタ51と調理皿53間でのスパークを防止できる。
【0037】
また、食品50に外力をかけないため、食品50が食パンなどの柔らかい場合でも、食品50を押しつぶしたり、過度な変形をさせることなく加熱調理が可能である。
【0038】
また、オーブン調理と異なり、加熱調理前に予熱が必要なく、取っ手56がマイクロ波で加熱されにくく熱伝導率の低い樹脂製であることから、加熱調理後にフタ発熱体52やフタ51が高温になった場合にも取っ手56を持つことで安全にフタ51を取り外すことができ、安全に取り扱うことができる。
【0039】
また、調理皿53が金属製の皿形状であるため、食品50がお好み焼きなどの液体状や柔らかい状態であっても、食品50がこぼれることがない。
【0040】
以上が本実施例の効果である。
【0041】
次に、図5を用いて本実施例の加熱調理器1の構成と、加熱調理器1で調理容器5を使用して加熱調理を行う場合の構成と効果を説明する。
【0042】
まず、本実施例の加熱調理器1では、図に示すように、電子レンジの本体1の外殻をなすキャビネット10の内側に、食品を収納する加熱室3が設けられており、加熱室3の正面には開閉式のドア2が回動可能に設けられる。
【0043】
ドア2は、加熱室3に食品や調理容器5を出し入れするときに開閉するもので、ドア2を閉めることで加熱室3を密閉状態にし、食品のマイクロ波加熱時に使用する高周波の漏洩を防止するとともに、オーブン加熱時にヒータの熱を封じ込め、効率良く加熱することを可能とする。
【0044】
加熱室3の底面には、それに近い大きさかつ形状で取り外し自在のテーブルプレート30が配置され、庫内を高温に保持して食品をオーブン加熱する加熱手段として、ヒータ(図示せず)が備えられており、熱風による対流加熱や放射加熱により、加熱室3内に収納した食品を焼成することが可能である。
【0045】
また、加熱室3の下方の空間は機械室4であり、周波数約2450MHzのマイクロ波を生成するマグネトロン41、マイクロ波を加熱室3内に照射する回転アンテナ42、加熱手段や加熱時間などを制御する制御回路(図示せず)などが組み込まれている。マグネトロン41で生成されたマイクロ波は回転アンテナ42に伝送され、回転アンテナ42の回転駆動によって加熱室3内に拡散放射される。
【0046】
また、機械室4の上側には、複数個の重量センサ43が設けられ、加熱室3内に貫通した支持軸で取り外し自在のテーブルプレート30を支持しており、テーブルプレート30に食品を載置すると、複数の重量センサ43によって食品の重量を検出することができる。
【0047】
本実施例の調理容器5を用いて加熱調理を行う場合、まず調理容器5の調理皿53上に食品50を載置する。その後、弾性体55が調理皿53に合うようにフタ51を調理皿53上に配置する。その場合、食品50の厚みが厚い場合にはフタ51が食品50の上面に接触し、弾性体55と調理皿53が離れた状態になるので、調理皿53が接触するまで弾性体55を上下方向に伸長させる。また、食品50の厚みが薄い場合には弾性体55が調理皿53に接触し、フタ51と食品50が離れた状態になるので、弾性体55を上下方向に縮めてフタ51を下方に下げ、フタ51と食品50の上面を接触させる。
【0048】
以上により食品50を収納した調理容器5を、加熱調理器1の加熱室3内に入れ、テーブルプレート30上に載置する。ドア2を閉めて調理内容を指示すると、テーブルプレート30を介して重量センサ43が調理容器5と食品50の重量と位置を計測し、それに応じた適切な調理時間を制御手段により自動的に設定し、設定した調理時間の間マグネトロン41や回転アンテナ42を動作させることで、加熱室3内にマイクロ波を照射する。
【0049】
加熱室3内に照射されたマイクロ波は、調理容器5のフタの発熱体52や調理皿の発熱体54に吸収されるため、フタ51と調理皿53が高温に加熱される。フタ51と調理皿53は食品50と接触していることから、食品50の上面はフタ51から、下面は調理皿53からそれぞれ高温に加熱され、食品50の両面に焼き色を付ける。また、調理容器5の内部にマイクロ波は侵入しにくく、食品50は調理皿53とフタ51と弾性体55によって囲まれているため、加熱調理中の食品50は乾燥しにくく、食品50の内部に水分を保持したままで、食品50の両面に焦げ目を付けることができる。
【0050】
また、フタ51と調理皿53の間に弾性体55が介在し、弾性体55と調理皿53の位置合わせが容易であることから、フタ51と調理皿53の水平方向の間隔を適切な間隔(概ね5mm以上)に維持しており、食品50が薄すぎる場合や、フタ51に必要以上の外力が加えられた場合でも、調理皿53とフタ51の垂直方向の間隔を適切な間隔(概ね5mm以上)に維持するため、調理皿53とフタ51の接触とスパークを防止できる。
【0051】
またここで、フタ51の外形が調理皿53の外形よりも大きければフタ51は調理皿53周囲のフランジに引っ掛かるためフタ51と調理皿53の距離を調理皿53の深さdよりも小さくできないが、本実施例では、フタ51の外形が調理皿53の外形よりも小さいことで、調理皿53の深さdよりも食品厚みhが薄い食品50を加熱する場合でも、フタ51と食品50の上面を接触させることが可能である。
【0052】
また、弾性体55がフタ51の自重で変形するほど変形しやすい材質や構造であれば、調理皿53上に載置した食品50上にフタ51を載置すると、フタ51の自重で弾性体55が自動的に変形するため、前述したような作業者による弾性体55を上下方向に伸縮させる作業を必要とせず、フタ51を食品50の上に載置するだけで、フタ51と食品50弾性体55と調理皿53を自動的に接触させることも可能である。また、フタ51が自重で変形する場合でも、フタ51と調理皿53の間隔を適切な間隔(概ね5mm以上)に保ち、調理皿53とフタ51の接触とスパークを防止できる。
【0053】
また、フタ51の端面では、コの字形状の弾性体55がフタ51を挟み、弾性体55自身の弾性でフタ51に弾性体55が固定支持されている構造である。弾性体55はフタ51から取り外すことが可能であり、取り外して清掃することで、フタ51と弾性体55を清潔に保つことができる。
【0054】
また、金属製のフタ51と調理皿53を、同種の金属あるいは線膨張係数の近い金属で構成することによって、加熱されることで調理容器5が高温になり熱膨張しても、フタ51と調理皿53の位置関係がずれることなく、フタ51の浮き上がりや、フタ51と調理皿53間でのスパークを防止できる。
【0055】
よって本実施例の加熱調理器1と調理容器5により、食品50の厚さがある程度以上であれば食品50の厚さに関わらず、食品50内部の過度な乾燥を防止し、食品50の両面を高温に加熱して焦げ目をつける加熱調理を、スパークを発生させずに安全に行うことができる加熱調理器を提供できる。
【実施例2】
【0056】
図6は実施例2の調理容器を上面側から見た斜視部分断面図である。図7は実施例2の調理容器を収納した加熱調理器の斜視図である。なお、本実施例2は実施例1と同様の加熱調理器1を用いており、共通する構成については説明を省略する。
【0057】
図6を用いて、本実施例の調理容器5の構成について説明する。
【0058】
本実施例の調理容器5は、上側にフタの発熱体52と取っ手56を、周囲に弾性体55を備えたフタ51と、下側に調理皿発熱体(図示せず)を、周囲に支持具58を備えた調理皿53によって構成されている。支持具58は調理皿53の左右両端に備えられており、マイクロ波を吸収しにくく耐熱性の高い素材、例えばPPSなどの樹脂製である。
【0059】
以上の構成により、本実施例の調理容器5は、実施例1と同様に、フタ51と調理皿53の間に食品を挟んで加熱調理器1でマイクロ波を照射して加熱調理を行うことで、食品の乾燥を防止しながら食品の両面を高温に加熱して焦げ目をつけることが可能である。
【0060】
図7を用いて、本実施例の調理容器5を用いて加熱調理器1で加熱調理する場合の構成を説明する。
【0061】
加熱調理器1の内部の加熱室3の壁面には、棚31が設置されている。
【0062】
本実施例では調理容器5の調理皿53の左右両端に樹脂製の支持具58を備えていることから、加熱室3壁面の棚31上に支持具58を接触させ、棚31上に調理容器5を載置することが可能である。
【0063】
ここで、棚31は加熱室3の壁面と同じく金属製であり、支持具58は樹脂製であることから、支持具58が調理皿53と加熱室3壁面との間隔を適切(概ね5mm以上)に保つため、調理皿53と加熱室3壁面間でスパークが発生せず、本実施例の調理容器5は加熱室3内部の棚31に接触して載置することが可能である。
【0064】
また、図に示すように加熱室3の壁面に高さが異なる複数の棚31を備えていれば、調理に応じて調理容器5の高さ(加熱室底面からの距離)を変えて加熱調理することも可能である。
【0065】
本実施例では加熱室3底面のテーブルプレート30の下方の回転アンテナ42からマイクロ波が照射されるため、回転アンテナ42と調理容器5の距離を変えることで、各発熱体に吸収されるマイクロ波量を調整し、仕上がり状態を変えることができる。
【0066】
例えば、食パンのトーストやお好み焼きのように食品の両面に同じような焼き色を付けた加熱調理を行いたい場合と、魚の干物やお焼きなど食品の片面の焼き色を濃く片面の焼き色を薄くしたい場合では、食品の上面と下面の加熱バランスが異なる。本実施例の調理容器5では、高い棚31を使用し、調理容器5の高さを高く設定して加熱調理を行うことでフタ51と調理皿53の温度を同じように上昇させて両面に同等の焼き色を付け、調理容器5の高さを低く設定して加熱調理を行うことで、調理皿53の温度をフタ51の温度よりも高くして食品の下面の焼き色を濃くすることができる。
【実施例3】
【0067】
図8は実施例3の調理容器を上面側から見た斜視部分断面図である。図9は実施例3の調理容器を収納した加熱調理器の斜視図である。なお、本実施例3は実施例1と同様の加熱調理器1を用いており、共通する構成については説明を省略する。
【0068】
図8を用いて、本実施例の調理容器5の構成について説明する。
【0069】
本実施例の調理容器5は、上側にフタ発熱体52と取っ手56を、周囲に弾性体55を備えたフタ51と、下側に調理皿発熱体(図示せず)と樹脂脚59と金属脚57を備えた調理皿53によって構成されており、フタ51と調理皿53の間に食品を挟んで加熱調理することで、食品の両面を高温に加熱して焼き色をつけることが可能である。
【0070】
樹脂脚59は、マイクロ波を吸収しにくく耐熱性の高い素材、例えばPPSなどの樹脂製であり、調理皿53の下部に固定されている。また、金属脚57は調理皿53の下部に回動可能に取り付けられており、金属脚57を広げた状態では実施例1と同様に金属脚57を介して調理容器5を底面に載置でき、金属脚57を折りたたんだ状態では本実施例で示すように樹脂脚59を介して調理容器5を底面に載置できる。よって、本実施例の調理容器5では、金属脚57の折りたたみ方によって底面に接触する脚を変えることによって、調理容器5の高さを2段階に調整することが可能である。
【0071】
図9を用いて、本実施例の調理容器5を用いて加熱調理器1で加熱調理する場合の構成を説明する。
【0072】
本実施例の調理容器5は、金属脚57を折りたたんだ場合には図9に示すように樹脂脚59を介してテーブルプレート30上に載置することができる。よって、テーブルプレート30を重量センサ(図示せず)で支持している構造では、調理容器5の重量をテーブルプレート30を介して測定することができる。
【0073】
また、実施例2と同様に、テーブルプレート30の下に回転アンテナ42を備えて回転アンテナ42からマイクロ波を照射する加熱調理器の場合は、調理容器5の回転アンテナ42からの距離を変えて配置することで、フタ発熱体52と調理皿発熱体54に吸収されるマイクロ波量に比率を調整できるため、フタ51と調理皿53の温度を同程度にしたい場合や、フタ51と調理皿53の温度に差をつけたい場合など、食品の仕上がり状況を変えた加熱調理が可能となる。
【符号の説明】
【0074】
1 本体
2 ドア
3 加熱室
4 機械室
5 調理容器
10 キャビネット
30 テーブルプレート
41 マグネトロン
42 回転アンテナ
43 重量センサ
50 食品
51 フタ
51a フタのフランジ部分
52 フタ発熱体
53 調理皿
53a 調理皿フランジ部分
54 調理皿発熱体
55 弾性体
56 取っ手
57 金属脚
58 支持具
59 樹脂脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品を収納する加熱室と、
前記食品を収納する調理容器と、
該調理容器を載置するテーブルプレートと、
前記食品を加熱するマイクロ波を発生するマグネトロンと、を設け、
前記調理容器は、金属製の調理皿と金属製のフタを備え、加熱調理時には前記調理皿と前記フタの両者が食品と接触するように構成されており、
前記調理皿はマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を下面に備え、
前記フタはマイクロ波を吸収して発熱する発熱体を上面に備え、
前記フタの周囲に樹脂製で上下方向に変形可能なフランジ形状の弾性体を備え、前記フタと前記調理皿が前記弾性体を介して接触することを特徴とする加熱調理器。
【請求項2】
前記テーブルプレートを支持する重量センサを備えたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項3】
前記加熱室の壁面に前記調理容器を載置する棚を備えたことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理器。
【請求項4】
前記調理容器において、前記フタの弾性体を除く金属部の外形は前記調理皿の外形よりも小さいことを特徴とする請求項1から3何れか一項に記載の加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−24539(P2013−24539A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162757(P2011−162757)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】