説明

加熱調理装置

【課題】ランプヒータがマイクロ波により異常発光するのを防止して使用者に不安感を与えることなく安心して使用できる加熱調理装置を提供する。
【解決手段】水蒸気を透過する波長域の赤外線ランプヒータ17を設け、この赤外線ランプヒータ17はサポートリングの間隔が不等ピッチでマイクロ波固有の波長の略1/4より長く、サポートリングの位置が加熱室全長の略1/3もしくは略1/4もしくは略1/5の間隔から外れた位置に設けた構成としてあり、サポートリングから発生する異常発光を防止すると共に、食品11の表面にパリッと感を出すことができ、効率のよい加熱をすることで省エネルギー性能の優れた加熱調理装置を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加熱体を電波加熱やグリル加熱やオーブン加熱する加熱調理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
代表的な加熱調理装置としてオーブン電子レンジがある。このオーブン電子レンジは電波や熱風や水蒸気により加熱調理するもので、被加熱体である食品を一つの加熱装置で加熱できるので、なべや釜や蒸し器等を準備する必要がない簡便さにより生活上の不可欠な機器になっている。
【0003】
また、オーブン電子レンジは食品を加湿器で発生した水蒸気で加湿しながらヒータ等で均一に加熱する構成となっており、水蒸気が過熱水蒸気になるまでヒータで加熱し食品に凝縮潜熱を与えかつ食品表面に結露した水で塩分や油分を滴下させた後マイカ等の面状ヒータや光ランプヒータで加熱し表面を温めヘルシーな調理が出来るようになっていた(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第2897645号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図8に示す従来の加熱調理装置の構成は、被加熱体1を加熱するオーブン庫2と、水を加熱し水蒸気にする蒸発皿3と蒸気発生手段4と、2.5μm以上3μm以下の範囲に存在する一つの波長の赤外線を中心にオーブン庫内2へ輻射する赤外線発生手段5を持つ構造をしている。
【0005】
上記構成によるとオーブン庫内2へ十分な量の水蒸気を供給して加熱を行うことができ、オーブン庫2が過熱水蒸気で覆われ食品表面では過熱水蒸気が凝縮し結露水で覆われ、脱油、減塩調理を行うことができる。この時、オーブン庫内2へマイクロ波を加えることが可能であると、赤外線発生手段5であるアルゴンガス等の不活性ガスが異常発光して使用者に不安感を与えるという課題がある。
【0006】
また、光の波長が水蒸気を透過しにくく被加熱体1の内部に浸透しやすい2.5μm以上3μm以下の領域であるため、食品表面に焦げ色を付けにくく、光の波長切り替えや他の加熱方式に切り替えることができないため、被加熱体の違いによる最適な加熱を行うことができないという課題があった。
【0007】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、マイクロ波による赤外線発生手段の異常発光を防止することを第1の目的とし、水蒸気に吸収されにくい赤外線を輻射することで、食品内部を素早く均一に加熱し食品表面もパリッとできる加熱調理装置を提供することを第2の目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記従来の課題を解決するために、本発明の第1の加熱調理装置は、被加熱体を加熱する加熱室と、前記被加熱体を加熱するマイクロ波発生手段と、前記加熱室の上部に設け赤外線を発生する赤外線発生手段とを備え、前記赤外線発生手段は石英管で形成され、内部に不活性ガスを封入し、コイルもしくは線状の発光体を有し、前記発光体が前記石英管の内面に不等ピッチで配置されたサポートリングで保持される構成としている。
【0009】
これによって、マイクロ波固有の波長によりサポートリングから発生する異常発光と加熱室内部寸法に起因する定在波によるサポートリングから発生する異常発光を防止することができる。
【0010】
また本発明の第2の加熱調理装置は、赤外線発生手段が水蒸気を透過しやすい波長の赤外線を発生する構成としてあり、水蒸気に吸収されにくい波長の赤外線が、加熱室に置かれた被加熱体の内部と表面を素早く均一に加熱でき食品表面もパリッと仕上がり焦げ目も素早くつけることが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の加熱調理装置によれば、加熱室内部に存在する赤外線発生手段のマイクロ波による異常発光を防止することができ、使用者に不安感を与えることなく安心して使用できるものとなる。
【0012】
また、本発明の加熱調理装置は、水蒸気に吸収されにくい波長の赤外線を輻射することで、食品表面のパリッと感を出すことができる。また、加熱室内部に加熱元が存在することで温度の立ち上がり速度が非常に速いため効率のよい加熱をすることができる。すなわち、省エネルギー性能の優れた加熱調理装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
第1の発明の加熱調理装置は、被加熱体を加熱する加熱室と、前記被加熱体を加熱するマイクロ波発生手段と、前記加熱室の上部に設け赤外線を発生する赤外線発生手段とを備え、前記赤外線発生手段は石英管で形成され、内部に不活性ガスを封入し、コイルもしくは線状の発光体を有し、前記発光体が自重で石英管内面に接触するのを防ぐリング状の同一線材で前記石英管の内面に不等ピッチで配置されたサポートリングで保持され被加熱体を加熱し調理を行う構成としてあり、遠赤外線発生手段から発生する赤外線が食品の温度を素早く上昇させ、省エネルギー性能の優れた加熱調理装置を提供できる。
【0014】
第2の発明の加熱調理装置は、特に第1の発明において、赤外線発生手段の石英管内面に保持されるサポートリングの間隔が、マイクロ波発生手段から発生する電波波長の略1/4と異なる等ピッチとなるようにして設ける構成としてあり、加熱室内部に存在する赤外線発生手段のサポートリングの間隔がマイクロ波固有の波長の略1/4より長いことから、サポートリングの数を少なくし、サポートリングから発生する異常発光を防止することができる。また、遠赤外線発生手段から発生する赤外線が食品の温度を素早く上昇させ、省エネルギー性能の優れた加熱調理装置を提供できる。
【0015】
第3の発明の加熱調理装置は、特に第2の発明において、石英管の内面に保持されるサポートリングの位置が、石英管挿入方向の加熱室全長の略1/3もしくは略1/4もしくは略1/5の間隔から外れた位置に設ける構成としてあり、加熱室内部に存在する赤外線発生手段のサポートリングの間隔が加熱室内部寸法に起因して発生する定在波(庫内寸法の略1/3、略1/4、略1/5)の腹の位置から外すことで、サポートリングの数を少なくし、サポートリングから発生する異常発光を防止することができる。また、遠赤外線発生手段から発生する赤外線が食品の温度を素早く上昇させ、省エネルギー性能の優れた加熱調理装置を提供できる。
【0016】
第4の発明の加熱調理装置は、第1から第3の発明において、赤外線発生手段が水蒸気を透過しやすい波長の赤外線を発生する構成としている。
【0017】
これによって、蒸気発生手段から発生する水蒸気や、被加熱体が加熱されるにつれ被加熱体自身から発生する水蒸気で加熱室が蒸気で充満する。このとき赤外線発生手段から発
生した赤外線が水蒸気に吸収されにくいことから、食品に直接赤外線を輻射することができ、食品内部の温度を素早く上昇させることで、食感をパリッと仕上げることが可能となり、省エネルギー性能の優れた加熱調理装置を提供できる。
【0018】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施形態によって本発明が限定されるものではない。
【0019】
(実施の形態1)
図1〜図6は実施の形態1におけるオーブン電子レンジを示し、図1は庫内側面からみた断面構成図、図2は庫内正面から見た断面構成図、図3は赤外線発生手段の構成図、図4から図6は定在波が発生した時の庫内正面から見た断面構成図で、図7は光の波長に対する水蒸気の光を吸収する割合を示す図である(関信弘 伝熱工学 森北出版株式会社1988.5.20. P178 図6.21より)。
【0020】
本実施の形態は、二つのアンテナを回転させる方式を用いたオーブン電子レンジであり、被加熱体である食品11を置く載置台12よりも下側からマイクロ波を供給するために、代表的なマイクロ波発生手段であるマグネトロン13を右側に設けた例であり、マグネトロン13から発生したマイクロ波を加熱室14内に導く導波管15と、電波を加熱室14へ発生させる回転アンテ16を二つ設けている。
【0021】
特に本実施の形態は赤外線発生手段であるランプヒータ17と、ランプヒータ17の両側に平行に設けた遠赤外線発生手段である2本のミラクロンヒータ18と、マグネトロン13の駆動と、ランプヒータ17とミラクロンヒータ18のオンオフ等を制御する制御手段19とを備えている。そして、前記ランプヒータ17は石英管20の内部に不活性ガスであるアルゴンガス21を封入し、主にコイル状にした発光体であるタングステン線材22を有していて、そのコイル状のタングステン線材22が自重により石英管20内部に接触しないよう保持するサポートリング23を複数個、不等ピッチの間隔で設けている。
【0022】
マグネトロン13から発生する電波はμ=2.45GHzであり、1波長がλ=c/μ≒122mmとなる。図3に示すように、サポートリング23の間隔がL=λ/4=30.5mmよりも長くなるような不等ピッチの間隔P3>P1>P2としている。さらに、加熱室14のランプヒータ17を挿入している方向の加熱室全長である庫内長さをLTとすると、このLTの略1/3、略1/4、略1/5の長さで電波による定在波が発生する場合があるが、図4に示すLT/3、図5に示すLT/4、図6に示すLT/5の長さの節部にサポートリング23が位置しないように設けている。
【0023】
さらに、この実施の形態のものは、ランプヒータ17が食品自身より発生した水蒸気に吸収されにくい波長の赤外線を輻射し、加熱室14内に存在する水蒸気を透過して食品11に輻射して調理を行う構成としている。ランプヒータ17が発生する赤外線の波長が図7に示す水蒸気吸収率が低い領域の波長である1.5μm以上1.8μm以下にピークを有する波長を発生し、ミラクロンヒータ18が略3μmより長い波長の領域にピークを持つ構成としている。
【0024】
上記構成において、この様な構成のオーブン電子レンジの特徴を説明する。まず、サポートリング23の間隔をλ/4=30.5mmよりも長くなるような不等ピッチ間隔P3>P1>P2としていることで、電波固有の振動数によるサポートリング23の異常発光を防止できる。すなわち、サポートリング23の間隔をλ/4=30.5mmよりも長くなるような不等ピッチ間隔としたことによりサポートリング23に電波が集中するのを抑制でき、その結果電波集中により起こるサポートリング23の発光を防止することができるのである。
【0025】
さらに、加熱室全長である庫内長さLTの略1/3、略1/4、略1/5の長さで電波による定在波が発生する場合でも、節部にサポートリング23が位置しないようになっているから、サポートリング23の異常発光を防止できる。すなわち、節部にサポートリング23が位置しないから上記同様サポートリング23に電波が集中するのを抑制でき、その結果電波集中により起こるサポートリング23の発光を防止することができるのである。
【0026】
また、水蒸気を透過する1本のランプヒータ17から赤外線が加熱室14へ輻射されることから、加熱室14に置かれた食品11を直接より素早く均一に加熱でき、赤外線が食品11表面に直接輻射され食品内部にまで素早く温度が伝わり、更にランプヒータ17の両側に設けた2本のミラクロンヒータ18から遠赤外線が輻射され食品11表面がパリッと仕上がり焦げ目を素早く付けることが可能となる。
【0027】
以上本実施の形態では、二つのアンテナ6を回転させてマイクロ波を放射させる構成としているが、一つのアンテナ6を回転させてマイクロ波を放射させる構成でも同様の効果を発揮することが出来る。また、マイクロ波が発生しない構成であっても、上からのランプヒータ17の赤外線、ミラクロンヒータ18の遠赤外線による加熱効果に関しては同様の効果を発揮できる。ランプヒータ17の波長を1.5μm以上1.8μm以下にピークを持つものとし、両側のミラクロンヒータ18の波長を略3.0μmより長い波長を輻射することで、波長域の違う遠赤外線効果の差が生じ焦げの濃淡を調整でき、同様の効果を発揮することができる。
【0028】
また、サポートリングの不等ピッチ間隔をP3>P1>P2とした例で説明したが、不等ピッチ間隔P3>P2>P1、P2>P1>P3、P2>P3>P1、P1>P2>P3、P1>P3>P2としても同様の効果を発揮できる。
【0029】
更に、サポートリングの間隔をλ/4より長い場合について説明したが、短くした場合であっても、重量が重くコストが高くなるが同様の効果を発揮できる。よってサポートリングの間隔はλ/4と異なるようにすればよいものである。
【0030】
さらにまた、ランプヒータ17を1.5μm以上1.8μm以下にピークを持つ波長としたが、波長が2.0μm以上2.3μm以下もしくは、3.4μm以上4.5μm以下の波長を輻射するランプヒータ16としても同様の効果を発揮することができる。
【0031】
また、1本のランプヒータ17と2本のミラクロンヒータ18を用いた場合について説明したが、2本以上のランプヒータ17と3本以上のミラクロンヒータ18を用いる構成としても同様の効果を発揮することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上のように本発明によれば、水蒸気を透過する赤外線、遠赤外線領域の波長を輻射し被加熱体を均一に加熱することができるので、マイクロ波を使用する調理器具としての電子レンジ、オーブンレンジ、各種誘電体の加熱、解凍装置であるとか、乾燥装置などの工業分野での加熱装置、陶芸加熱、焼結あるいは生体化学反応等の用途に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施の形態1における加熱調理装置を側面から見た断面構成図
【図2】同加熱調理装置を正面から見た断面構成図
【図3】同加熱調理装置の赤外線発生装置の構成図
【図4】同加熱調理装置を正面からみた断面構成図
【図5】同加熱調理装置を正面からみた断面構成図
【図6】同加熱調理装置を正面からみた断面構成図
【図7】光波長に対する水蒸気の吸収率を表す図
【図8】従来の加熱調理装置の側面から見た断面図
【符号の説明】
【0034】
11 被加熱体
13 マイクロ波発生手段
14 加熱室
17 赤外線発生手段
20 石英管
21 不活性ガス
22 発光体
23 サポートリング
24 加熱室全長LT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱体を加熱する加熱室と、前記被加熱体を加熱するマイクロ波発生手段と、前記加熱室の上部に設け赤外線を発生する赤外線発生手段とを備え、前記赤外線発生手段は石英管で形成され、内部に不活性ガスを封入し、コイルもしくは線状の発光体を有し、前記発光体が前記石英管の内面に不等ピッチで配置したサポートリングで保持される加熱調理装置。
【請求項2】
石英管の内面に保持されるサポートリングの間隔が、マイクロ波発生手段から発生する電波波長の略1/4と異なる等ピッチとなるようにして設けた請求項1記載の加熱調理装置。
【請求項3】
石英管の内面に保持されるサポートリングの位置が、前記石英管挿入方向の加熱室全長の略1/3もしくは略1/4もしくは略1/5の間隔から外れた位置に設けた請求項2記載の加熱調理装置。
【請求項4】
赤外線発生手段が水蒸気を透過しやすい波長の赤外線を発生する請求項1から請求項3のいずれか1項記載の加熱調理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−97823(P2009−97823A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−271149(P2007−271149)
【出願日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】