説明

加硫モールドの分解組立装置および、それの使用方法

【課題】割りモールドと称される加硫モールドの、加硫機外で行う分解および組立作業を、モールドへの損傷のおそれなしに、容易にかつ短時間で行うことができ、加硫モールドの分解および組立の作業性を大きく向上させることのできる、加硫モールドの分解組立装置および、それの使用方法を提供する。
【解決手段】この発明の加硫モールドの分解組立装置は、支持台1と、支持台1上に設けられて、配置された加硫モールド20を昇降変位させる昇降テーブル2と、昇降テーブル2の周囲に配設されて、セクターモールド21を外周側から支持して該セクターモールド21を拡縮径変位させるモールド拡縮手段3とを具えてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、上下一対のサイドモールドの外周側に、周方向に分割された複数のセクターピースからなるセクターモールドを配設してなる、割りモールドと称される加硫モールドの分解および組立を行う装置ならびに、それの使用方法に関するものであり、とくに、加硫機外でのモールドの分解および組立作業に伴う、モールドへの損傷の発生を防止しつつ、かかる作業に要する時間の短縮および労力の軽減を図り、加硫モールドの分解および組立の作業性を大きく向上させる技術を提案するものである。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤを製造するに際し、たとえば成型ドラム上で成型した生タイヤを加硫モールド内に配置して加硫成形する工程では、加硫モールドの上サイドモールドの上方に配設されて、上下方向に変位可能な上ホルダと、下サイドモールドに間接的に当接して加硫モールドを支持する下ホルダと、セクターモールドの周囲を取り囲む複数のセグメントと、上ホルダに取り付けられて、セグメントとの係合下でセクターモールドを拡縮径変位させるアウターリングとを有する加硫機の内部に、加硫モールドを取り付けて、この加硫機の作動によって加硫モールドの型開きおよび型締めを行うことが一般的である。
【0003】
ところで、生タイヤの加硫成形工程では、製造しようとするタイヤのサイズおよび種類に対応する内面形状を有する加硫モールドを用いる必要があるため、従来は、異なるサイズないしは種類のタイヤを製造する度に、加硫機内に加硫モールドを取り付けてなる加硫装置から、加硫モールドと、加硫機の一部をなす上下それぞれのホルダと、複数のセグメントおよびアウターリングとを相互に連結した状態で取り出すとともに、次に製造するタイヤのサイズ等に適合するそれらの部材を組付けて加硫装置とすることで、加硫モールドのみならず、重量の大きい上下のホルダ、複数のセグメントおよびアウターリングをも一体的に交換することとしていたため、交換作業に多くの時間および労力を要し、近年のように、タイヤの種類等が増加している状況下にあっては、加硫成形工程での上記の交換作業に起因する、タイヤの生産能率の低下が余儀なくされていた。
【0004】
これに対し、特許文献1〜3では、加硫モールドだけの交換を可能にした加硫装置が提案されており、たとえば特許文献1には、「上、下ホルダと、下ホルダに載置された下サイドモールドと、上ホルダに上プレートを介して取り付けられた上サイドモールドと、主としてタイヤトレッド部を型付けする多数個分割のトレッド要素を含むセクターモールドと、該セクターモールドの外周側でこれらにロックされた多数個のセグメントと、上ホルダに取付けられ各セグメントを放射方向に移動させるアウターリングとを備えたタイヤ加硫装置において、前記上サイドモールドを前記上プレートに対し着脱自在に固定する1台のクランプ手段と、上サイドモールドを上プレートと固定の状態で前記上ホルダに対し接近あるいは離隔させる接離手段と、を備えている」ものが記載されている。
【0005】
このような加硫装置によれば、従来の交換作業で、加硫モールドとともに交換していた上下のホルダ、複数のセグメントおよびアウターリングを、加硫機内に残したまま、加硫モールドだけを交換することができるので、製造するタイヤのサイズ等の変更に伴うモールド交換作業が容易なものとなって、タイヤの生産能率を高めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4007714号公報
【特許文献2】特許第3865503号公報
【特許文献3】特許第3865500号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1〜3に記載された加硫装置において加硫モールドを交換するに当っては、加硫モールドの、相互に嵌め合わされた上下のサイドモールドおよびセクターモールドを、セクターモールドの外周側からモールドバンドで締め付けることによって相互に一体化させた状態で、加硫モールドをクレーン等で吊り上げて加硫機から取り出した後、熟練者が、周囲をモールドバンドで締め付けられたセクターモールドを僅かに拡径させて、セクターモールドと上下サイドモールドとの間に隙間を形成しつつ、セクターモールドから上下のそれぞれのサイドモールドを取り外すことにより、加硫モールドを分解していた。
【0008】
そして、次に加硫機内に配置する加硫モールドの組立は、熟練者が、下サイドモールド上に、上端側の周縁に保管リングを取り付けられて相互に連結された複数のセクターピースからなるセクターモールドを配置し、セクターモールドを外周側からモールドバンドで締め付けるとともに保管リングを取り外した後、セクターモールドを僅かに拡径させつつ、セクターモールドの下方側から、下サイドモールドを嵌め合わせるとともに、上方側から上サイドモールドを嵌め合わせることにより行っていた。
【0009】
しかるに、加硫機から取り出した加硫モールドの分解および、次に加硫機に取り付ける加硫モールドの組立を、上述したような手作業によって行う場合は、作業者に高い技能が必要となるとともに、分解・組立作業に要する時間の増大を招くことから、タイヤの生産能率を十分に向上させることができず、また、上下のサイドモールドを、セクターモールドから取り外す際や、セクターモールドに嵌め合わせる際等に、モールドを損傷させるおそれがあり、それ故に、製品タイヤの高い品質を十分に担保できないという問題があった。
【0010】
この発明は、従来技術が抱えるこのような問題を解決することを課題とするものであり、それの目的とするところは、加硫機外で行う加硫モールドの分解および組立作業を、モールドへの損傷の発生のおそれなしに、容易にかつ短時間で行うことができ、加硫モールドの分解および組立の作業性を大きく向上させることのできる加硫モールドの分解組立装置および、それの使用方法を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明の加硫モールドの分解組立装置は、互いに対向して位置する上下一対のサイドモールドの外周側に、該サイドモールドを取り囲む姿勢で、周方向に分割された複数のセクターピースからなるセクターモールドを配設してなる装置であって、支持台と、支持台に設けられて、配置された加硫モールドを昇降変位させる昇降テーブルと、昇降テーブルの周囲に配設されて、セクターモールドを外周側から支持して該セクターモールドを拡縮径変位させるモールド拡縮手段とを具えてなるものである。
【0012】
ここで、前記のモールド拡縮手段は、セクターモールドの各セクターピースの外周面に突設したピンに掛合する掛合爪と、掛合爪のそれぞれを相互の同期下でセクターモールドの半径方向に移動させる進退駆動機構とで構成することが好ましい。
【0013】
また、この発明の、加硫モールドの分解組立装置の使用方法は、上記のいずれかの分解組立装置を使用して、加硫モールドを組み立てるに当り、
昇降テーブル上に下サイドモールドを配置して昇降テーブルを下降させた後、モールド拡径手段上にセクターモールドを配置するとともに、モールド拡縮手段によってセクターモールドを外周側から支持させ、
次いで、モールド拡縮手段によりセクターモールドを拡径変位させた状態で、下サイドモールドを上昇させて該下サイドモールドをセクターモールドの下方側から嵌め合わせるとともに、上サイドモールドを、セクターモールドの上方側から嵌め合わせ、しかる後、モールド拡縮手段によりセクターモールドを縮径変位させて、セクターモールドを上下一対のサイドモールドの外周側に嵌め合わせるにある。
【0014】
そしてまた、この発明の、加硫モールドの分解組立装置の他の使用方法は、上記いずれかの分解組立装置を使用して、加硫モールドを分解するに当り、
上昇姿勢の昇降テーブル上に、加硫モールドを配置するとともに、昇降テーブルを、加硫モールドとともに下降させて、モールド拡縮手段によってセクターモールドを外周側から位置決め支持させ、
次いで、前記モールド拡縮手段によりセクターモールドを拡径変位させた状態で、上サイドモールドを取り外すとともに、セクターモールドの高さはそのままに、下サイドモールドを、昇降テーブルの作動に基いて下降させて下サイドモールドを取り外し、しかる後、モールド拡縮手段によりセクターモールドを縮径変位させるにある。
【発明の効果】
【0015】
この発明の、加硫モールドの分解組立装置によれば、支持台に設けられて、加硫モールドの昇降変位をもたらす昇降テーブルと、昇降テーブルの周囲に設けられて、セクターモールドを外周側から支持してセクターモールドを拡縮径変位させるモールド拡縮手段とのそれぞれの作動により、上述した、分解組立装置の使用方法のように、加硫機から取り出した加硫モールドの分解作業および、次に加硫機に配置する加硫モールドの組立作業を、作業者の熟練度合のいかんにかかわらず容易かつ確実に、しかも短時間で行うことができるので、加硫モールドの分解・組立の作業性を大きく高めることができ、その結果として、タイヤの生産能率の向上に寄与することができる。
またこの装置では、とくに、昇降テーブルの周囲に、セクターモールドを支持した状態でセクターモールドを拡縮径変位させるモールド拡縮手段を設けたことにより、上下のそれぞれのサイドモールドの、セクターモールドへの嵌め合わせおよび、セクターモールドからの取り外しを容易にしつつ、上下のサイドモールドを嵌め合わせる際や取り外す際に発生し易い、モールドへの損傷の発生のおそれを十分に取り除くことができる。
【0016】
ここで、モールド拡縮手段を、セクターモールドの、それぞれのセクターピースの外周面に突設したピンに掛合する掛合爪と、掛合爪のそれぞれを相互の同期下でセクターモールドの半径方向に移動させる進退駆動機構とで構成したときは、加硫機内に配置したセクターモールドの拡縮径変位をもたらすセグメントとの連結部分として、セクターピースの外周面に設けられる前記ピンを、加硫モールドの分解・組立に際し、セクターモールドを拡縮径変位させるための、前記掛合爪との掛合部分としても機能させることができるので、既存の加硫モールドに手を加えることなしに、加硫モールドの分解・組立作業を行うことができる。
【0017】
そして、この発明の、加硫モールドの分解組立装置の使用方法によれば、上述したように、昇降テーブルおよびモールド拡縮手段のそれぞれの作動によって、加硫モールドの分解・組立作業を容易に行うとともに、分解・組立作業に要する時間の短縮および労力の軽減を実現し、また、上下それぞれのサイドモールドの、セクターモールドへの嵌め合わせ、セクターモールドからの取り外しを、モールド拡縮手段によるセクターモールドの拡径変位の下で行うことにより、モールドへの損傷の発生のおそれを十分に取り除くことができるので、モールドの損傷に起因する、製品タイヤの品質の低下を有効に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の、加硫モールドの分解組立装置の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1の装置に加硫モールドを配置した状態を示す斜視図である。
【図3】図1の装置を、支持台の半部を破断除去して示す略線縦断面図である。
【図4】図1に示す装置の概略側面図である。
【図5】図1の装置の回動リングを示す、図4のA−A線に沿う図である。
【図6】回動リングに設けた傾斜長孔および、積層板の上側平板部材に設けたガイド孔の相対関係を示す図である。
【図7】図1の装置を用いて加硫モールドを分解する工程を示す縦断面図である。
【図8】図7に続く工程を示す断面図である。
【図9】図1の装置を用いて加硫モールドを組み立てる工程を示す縦断面図である。
【図10】図9に続く工程を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に図面を参照しつつ、この発明の実施の形態について説明する。
図1に例示するモールド分解組立装置は、図に示すところでは、平面視で方形状をなす積層板1aの四隅に脚部を設けた支持台1と、支持台1上に配設されて、図2に示すように配置される加硫モールド20を昇降変位させる昇降テーブル2と、昇降テーブル2の周囲に配設されて、加硫モールド20のセクターモールド21を外周側から支持してセクターモールド21を拡縮径変位させるモールド拡縮手段3とを具えてなる。
なおここで、支持台1の積層板1aは、図3に、支持台の半部を破断除去して示すように、いずれもほぼ中央域に貫通孔を有する二枚の上側および下側の平板部材1b,1cを、相互に所要の間隔をおいて重ね合わせて配置してなるものである。
【0020】
そしてこの装置では、昇降テーブル2を、図3に示すように、積層板1aの貫通孔内に配設した円板4の下面にねじジャッキ5を配設するとともに、このねじジャッキ5に駆動力を付与するサーボモータ6を設けて構成することで、ねじジャッキ5およびサーボモータ6の作動によって、円板4を、その上に配置される加硫モールド20とともに所要に応じて昇降変位させることができる。
なお、図に示すところでは、昇降変位する円板4のストロークガイドとして、ねじジャッキ5の周囲の三箇所に、円板4の下面に取り付けたシャフト7の上下変位を案内するリニアブッシュ8を、支持台1の積層板1aの下面から延在させた支持アーム9に取り付けている。
【0021】
また、図示の実施形態では、モールド拡縮手段3を、昇降テーブル2の周囲に配設されて、図では上端部分にU字状の切り欠き部9aを形成してなるプレート状の複数の掛合爪9と、支持台1上に配置されて、上面に掛合爪9を二個ずつ取り付けた複数の移動台10と、掛合爪9、より直接的には移動台10のそれぞれを相互の同期下で昇降テーブル2に対して進退出変位させる、図4に側面図で示すような進退駆動機構11とで構成する。
【0022】
このようなモールド拡縮手段3によれば、図2に示すように、移動台10を複数の掛合爪9とともに、昇降テーブル2に向けて進出変位させた状態で、昇降テーブル2上に配置される加硫モールド20のセクターピース22の外周面に突設したピン22aのそれぞれに、掛合爪9のそれぞれを切り欠き部9aをもって掛合させるとともに、進退駆動機構11によって掛合爪9を移動台10とともに進退出変位させることにより、セクターモールド21を拡縮径変位させることができる。
なお、モールド拡縮手段3にセクターモールド21を支持させるに当り、セクターピース22のピン22aを掛合爪9に強固に掛合させるため、図2に示すように、セクターピース22のピン22aに、掛合爪9の切り欠き部9aに嵌め込まれる小径の括れ部22bを設けることが好ましい。
【0023】
図3,4に示すところでは、進退駆動機構11は、積層板1aの前記二枚の平板部材1b,1cの相互間に、平面視で昇降テーブル2の中心周りに回動可能に設けた回動リング12および、この回動リング12に駆動連結されて、回動リング12の、周方向への一定量の回動変位をもたらす並進駆動手段、たとえばパワーシリンダ13からなる。
なお、このパワーシリンダ13は、ブラケットを介して下側の平板部材1cに連結固定されている。
【0024】
ここで、円環状をなす回動リング12の周方向の複数個所には、図5に示すように、周方向に対して傾斜する向きで直線状に延びる傾斜長孔12aを形成する。
またここでは、積層板1aの上側平板部材1bに、図6に示すように、回動リング12の前記傾斜長孔12aのそれぞれの形成箇所に対応する位置で、回動リング12のほぼ半径方向に延びる複数のガイド孔1dを形成する。
【0025】
そして、掛合爪9を取り付けた移動台10のそれぞれから垂下固定したそれぞれの摺動ロッド14を、前記傾斜長穴12aおよびガイド孔1dの双方に挿入した状態で、移動台10を上側平板部材1b上に配置することにより、パワーシリンダ13によって駆動力を付与された回動リング12の回動変位に基き、摺動ロッド14が、傾斜長穴12a内で一端側から他端側へ変位するに伴って、該摺動ロッド14は、ガイド孔1dに誘導されつつ、移動台10とともに回動リング12の半径方向に変位されるので、移動台10および掛合爪9は、昇降テーブル2の半径方向に進退変位することができる。
【0026】
なお、このような掛合爪9の進退出変位を円滑に行わせるため、上側平板部材1bと各移動台10との間には、図1,2に示すような、レール部材およびガイド部材からなる直動ガイド15を設けることができ、また、摺動ロッド14の下端側部分には、摺動ロッド14の、傾斜長孔12a内での円滑な摺動をもたらすベアリングを取り付けることができる。
【0027】
以上に述べた装置を使用することにより、互いに対向して位置する上下一対のサイドモールドの外周側に、それらのサイドモールドを取り囲む姿勢で、周方向に分割された複数のセクターピース22からなるセクターモールド21を設けてなる、図2に示すような加硫モールド20の、図示しない加硫機から取り出した後の分解および、加硫機に取り付ける前の組立てを、容易かつ迅速に行うことができる。
【0028】
上述したモールド分解組立装置を使用して加硫モールドを分解するには、はじめに、図7(a)に示すように、図示しないクレーン等を掛合させるための吊下げ部材30および、セクターモールドの外周側を取り囲むモールドバンド31によって一体化された加硫モールド20を、上昇姿勢の昇降テーブル2上に配置し、進退駆動機構11によって、掛合爪9を移動台10とともに、昇降テーブル2に向けて進出変位させた状態で、セクターピース22の外周面のピン22aと掛合爪9との位置合わせを行う。
なおここでは、加硫モールド20は、上サイドモールド23の中央域に貫通して上下のサイドモールド23,24の相互を連結する吊下げ部材30を取り付けるとともに、モールドバンド31によってセクターモールド21を外周側から締め付けることで、上下のサイドモールド23,24とセクターモールド21とを一体化させている。
【0029】
次いで、昇降テーブル2の作動に基き、図7(b)に示すように、加硫モールド20を円板4とともに下降させて、セクターピース22のピン22aに設けた小径の括れ部22bを、掛合爪9の切欠き部9aに嵌め込んで、それぞれのピン22aを、対応するそれぞれの掛合爪9に掛合させるとともに、各セクターピース22の下端部を、それぞれの移動台10の上面に当接させることで、モールド拡縮手段3によってセクターモールド21を外周側から位置決め支持した後、吊下げ部材30およびセクターバンド31を加硫モールド20から取り外す。
【0030】
そしてその後、進退駆動機構11の作動、すなわち、パワーシリンダ13による回動リング12の回動変位に基いて、掛合爪9に掛合させたセクターモールド21を、図8(a)に示すように僅かに拡径変形させることで、セクターモールド21と上下のサイドモールド23,24との間に小さな隙間を形成した状態で、図8(b)に示すように、上サイドモールド23を、クレーン等を用いて吊り上げてセクターモールド21から取り外すとともに、モールド拡縮手段3に支持させたセクターモールド21の高さを維持しつつ、昇降テーブル2を、下サイドモールド24とともに下降させて、セクターモールド21から下サイドモールド24を取り外す。
【0031】
しかる後は、図8(c)に示すように、モールド拡縮手段3によって、セクターモールド21を縮径変形させて、複数のセクターピース22を相互に接触させた姿勢で、セクターモールド21の上端部に保管リング32を装着し、セクターモールド21をクレーン等で吊下げて装置から取り外す。
なおこのとき、保管リング32の装着を容易に行うとの観点からは、セクターモールド21を縮径変形させるに先立って、図示は省略するが、昇降テーブル2を下サイドモールド24とともに上昇させて、下サイドモールド24をセクターモールド21の下端側に一旦嵌め合わせ、掛合爪9および移動台10に支持されて拡縮径変形されるセクターモールド21の、それぞれのセクターピース22の、内側への倒込みその他の配置姿勢の乱れを防ぐことが好ましい。
【0032】
また、モールド分解組立装置を使用して加硫モールドを組み立てるには、はじめに、図示しないクレーン等を用いて、たとえば上昇姿勢の昇降テーブル2上に下サイドモールド24を配置した後、図9(a)に示すように、昇降テーブル2を下降させる。
【0033】
次いで、保管リング32によって相互に連結させた複数のセクターピース22からなるセクターモールド21を、これもまたクレーン等を用いて、セクターピース22の外周面のピン22aと掛合爪9との位置合わせを行いつつ下降させて、図9(b)に示すように、それぞれのピン22aの括れ部22bを、掛合爪9の切欠き部9aに嵌め込んで、それぞれのピン22aを、対応するそれぞれの掛合爪9に掛合させるとともに、各セクターピース22の下端部を、それぞれの移動台10の上面に当接させることで、縮径変形下のモールド拡縮手段3によって、セクターモールド21を外周側から位置決め支持させた後、保管リング32を取り外す。
【0034】
続いて、進退駆動機構11の作動に基き、モールド拡縮手段3によって支持されたセクターモールド21を、図10(a)に示すように僅かに拡径変形させた状態で、図10(b)に示すように、昇降テーブル2によって下サイドモールド24を上昇させて、下サイドモールド24を、セクターモールド21の下方側から嵌め合わせるとともに、上サイドモールド23を、セクターモールド21の上方側から嵌め合わせる。
なおここで、上サイドモールド23に先立って、下サイドモールド24をセクターモールド21に嵌め合わせたときは、下サイドモールド24の、セクターモールド21の下端側への嵌め合わせによって、モールド拡縮手段3で支持されたセクターモールド21の各セクターピース22の配置姿勢が適正なものとなって、その後の上サイドモールド23の嵌め合わせが容易となる。
【0035】
しかる後は、図10(c)に示すように、モールド拡縮手段3によって、セクターモールド21を縮径変形させて、セクターモールド21を上下一対のサイドモールド23,24の外周側に嵌め合わせた後、たとえば、モールドバンド31や吊下げ部材30を取り付けて、これをクレーン等で吊下げて装置から取り外す。
【実施例】
【0036】
この発明の、加硫モールドの分解組立装置を試作して、加硫モールドの分解および組立を行ったところ、装置を使用した場合は、分解・組立に要した時間がそれぞれ20分、25分であったのに対し、装置を使用せずに手作業で行った場合はそれぞれ40分、45分であった。
従って、この発明のモールド分解組立装置によれば、分解・組立に要する時間を、手作業で行う場合に比して半分程度にまで短縮できることが解かった。
【符号の説明】
【0037】
1 支持台
1a 積層板
1b 上側平板部材
1c 下側平板部材
1d ガイド孔
2 昇降テーブル
3 モールド拡縮手段
4 円板
5 ねじジャッキ
6 サーボモータ
7 シャフト
8 リニアブッシュ
9 支持アーム
10 移動台
11 進退駆動機構
12 回動リング
13 パワーシリンダ
14 摺動ロッド
15 リニアガイド
20 加硫モールド
21 セクターモールド
22 セクターピース
22a ピン
22b 括れ部
23 上サイドモールド
24 下サイドモールド
30 吊下げ部材
31 セクターバンド
32 保管リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して位置する上下一対のサイドモールドの外周側に、該サイドモールドを取り囲む姿勢で、周方向に分割された複数のセクターピースからなるセクターモールドを配設してなる加硫モールドの分解および組立を行う装置であって、
支持台と、支持台に設けられて、配置された加硫モールドを昇降変位させる昇降テーブルと、昇降テーブルの周囲に配設されて、セクターモールドを外周側から支持して該セクターモールドを拡縮径変位させるモールド拡縮手段とを具えてなる、加硫モールドの分解組立装置。
【請求項2】
モールド拡縮手段を、セクターモールドの各セクターピースの外周面に突設したピンに掛合する掛合爪と、掛合爪のそれぞれを相互の同期下でセクターモールドの半径方向に移動させる進退駆動機構とで構成してなる請求項1に記載の、加硫モールドの分解組立装置。
【請求項3】
請求項1もしくは2に記載の、加硫モールドの分解組立装置を使用して、加硫モールドを組み立てるに当り、
昇降テーブル上に下サイドモールドを配置して昇降テーブルを下降させた後、モールド拡径手段上にセクターモールドを配置するとともに、モールド拡縮手段によってセクターモールドを外周側から支持させ、
次いで、モールド拡縮手段によりセクターモールドを拡径変位させた状態で、下サイドモールドを上昇させて該下サイドモールドをセクターモールドの下方側から嵌め合わせるとともに、上サイドモールドを、セクターモールドの上方側から嵌め合わせ、しかる後、モールド拡縮手段によりセクターモールドを縮径変位させて、セクターモールドを上下一対のサイドモールドの外周側に嵌め合わせる、加硫モールドの分解組立装置の使用方法。
【請求項4】
請求項1もしくは2に記載の、加硫モールドの分解組立装置を使用して、加硫モールドを分解するに当り、
上昇姿勢の昇降テーブル上に、加硫モールドを配置するとともに、昇降テーブルを、加硫モールドとともに下降させて、モールド拡縮手段によってセクターモールドを外周側から位置決め支持させ、
次いで、前記モールド拡縮手段によりセクターモールドを拡径変位させた状態で、上サイドモールドを取り外すとともに、セクターモールドの高さはそのままに、下サイドモールドを、昇降テーブルの作動に基いて下降させて下サイドモールドを取り外し、しかる後、モールド拡縮手段によりセクターモールドを縮径変位させる、加硫モールドの分解組立装置の使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−31966(P2013−31966A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169444(P2011−169444)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】