説明

加飾パネル及びその製造装置

【課題】真空成形方式と異なりシート基材を固定するために従来の加飾シートの何倍もの面積を無駄にせずに済む、生産性の良い加飾パネル及びその製造装置を提供する。
【解決手段】プラスチックの型成形技術によって形成され、表面か裏面の何れか一面又は両面に加飾部12を有する加飾パネルについて、プラスチック製のシート基材から成り、かつ、型成形によってシート基材が立体的形状に形成されているパネル本体11と、パネル本体の表面又は裏面の何れか一面又は両面に設けられているインク、塗料又は微粒子の何れかより成る上記加飾部12とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体的形状を有する加飾パネル及び雌雄一対の金型を用いて、立体的形状を有する加飾パネルを型成形により製造するための装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
主としてプラスチック成形製品で構成される装飾において、製品表面の装飾に加飾シートを貼り合わせて一体化する技術があり、ゲーム機器や自動車部品(内装、外装)、家電製品、建材用装飾部品その他装飾部品などとして多くの分野の商品に適用されている。加飾シートは、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、或いは蒸着などの方法で加飾されたシートを射出成形金型にセットし、シート材質と適合した樹脂を用いて射出成形することにより製造され、成形製品から剥離してインクを成形製品に転写するものと、成形製品に加飾シートをそのまま一体化するものとがある。
【0003】
このような加飾シートを、立体構造を有する成形製品に適用する場合には、加飾シートもその形態に合わせて立体的に形成されたものである必要がある。立体的な加飾シートを製造するには、平面から成るシート基材を何らかの手段、方法を用いて加工する必要があり、例えば射出成形などの金型を用いる場合には、あらゆる立体形状を正確に賦形することができる。これに対して、従来の加飾シートは真空成形方式によって作成するケースが少なくない。しかし、真空成形方式の場合には、実際の加飾シートの仕上がり寸法以外に加飾シートを固定する部分が必要であるため、実際の加飾シートに使用する面積(仕上がり寸法)よりも相当大きなシート基材を使用する必要がある。
【0004】
なお、特開平6‐344377号は加飾成形品を生産するインモールド成形方法を開示しており、その参照図面には加飾シートを真空吸引によって固定した状態が図示されているが、その発明における加飾シートは未成形のシート基材を含む意味であり、立体的な最終製品を指す本発明における意味と異なるが、図2からも明らかなように、シート基材に必要な大きさに対して加飾シートは極く一部が使用されているに過ぎないことが分かる。上記図面をそのまま信ずることは適当でないとしても、シート基材に必要な大きさに対する加飾シートの大きさは半分にも満たない程度であり、残りは廃棄されるから、無駄が大きく、コスト高の原因の一つとなっている。上記の例では1個取りが示されているだけであるが、数個取りの場合にも、隣接のシート基材同士が成形時に相互干渉を起こさないように、各々の加飾部分同士の間隔を大きく取る必要あるから、シート基材の無駄は1個取りの場合とあまり変化せず、生産性が良くないことは変わらない。
【0005】
このように、プラスチック成形製品で構成される装飾においては、射出成形金型に挿入する加飾シートをあらかじめ真空成形方式等の手段で所望の形状に賦形しておかなければならない上、シート基材の種類も限られ、安易に選定することはできない。何故なら、加飾シートを真空成形方式で形成する場合、真空成形方式に適したシート基材の材質を選ぶ必要があり、このシート基材の材質つまり樹脂の種類と射出成形品の仕様や物性、条件などによって決まる樹脂の種類が同じか或いは親和性を有するものである必要もあるからである。シート基材として選定可能な樹脂の種類が限られ、インサート成形される樹種が限られるので、コストや効率によって多業種に採用される確率も低下することになる。また、真空成形方式で立体的な加飾パネルの形状を作成するときには、加飾シートの全体を高温度に加熱し軟化させるので、デザイン上の寸法精度を保って成形できず、デザイン通りに配置したい場合などには不向きである。
【0006】
【特許文献1】特開平6‐344377号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、真空成形方式と異なりシート基材を固定するために、従来の加飾シートの何倍もの面積を無駄にせずに済む、生産性の良い加飾パネル及びその製造装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、加飾パネルとして安価な物であっても高価な物であっても制約なく選ぶことができるものとし、加飾パネルに用いるシート基材を、設計仕様や目的に応じて、自由に選定できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は、プラスチックの型成形技術によって形成され、かつ、加飾部を有する加飾パネルとして、シート基材から成り、かつ、型成形によってシート基材が立体的形状に形成されているパネル本体と、パネル本体の表面又は裏面の何れか一面又は両面に付着しているインク、塗料又は微粒子の何れかより成る加飾部とを備えて構成するという手段を講じたものである。
そしてこのような加飾パネルは、雌雄一対の金型を用いて、立体的形状を有する加飾パネルを型成形により製造するための装置として、雌雄一対の金型は、加飾パネルを型成形するための雌型部と雄型部から成る成形型部を複数個有しており、かつ、それら複数個の成形型部は互いに最密的に配置されていること、雌雄一対の金型は、一対の金型間に加飾シートを配置して型成形を行うために型締めされた状態において、雌型部と雄型部の間に目的製造物である加飾シートの厚み分のクリアランスを保持していること、各成形型部の周囲には、雌雄一対の金型の間に挿入した加飾シートと係合して動かないように固定するシート固定手段を有していることを主要な要件とする製造装置によって製造することができる。
【0009】
ここで、本発明において使用する用語について説明しておくと、シート基材とは加飾シートを製造するための原材料であるシートを意味しており、加飾シートはこのシート基材に加飾を施した段階の中間製品である。また、加飾シートを型成形によって立体的な形状に形成したものが加飾パネルである。加飾パネルは、本発明における目的製造物としての条件をすべて備えているので最終製品であるが、必要であれば、さらに工程を追加することも可能である。なお、加飾は印刷、蒸着、塗装等の手段によって行われ、パネル本体の表面か裏面の何れか一面又は両面に設けられる。
【0010】
加飾パネルの製造装置の前提要件の冒頭に記載したとおり、本発明は雌雄一対の金型を用いて、立体的形状を有する加飾パネルを型成形により製造するための装置である。型成形は、射出成形方法の技術とその関連技術及び隣接技術などのプラスチックの型成形技術を利用して行うものであり、それらの技術にはインサート成形やインモールド成形などの成型方法も含まれる。つまり、本発明の加飾パネルは、シート基材が立体的に形成されているものから成るもの(単一加飾パネル)と、シート基材が立体的に形成されたものにインサート成形等によって形成された別のプラスチック成形体が付加されているもの(複合加飾パネル)、を含む。
【0011】
雌雄一対の金型は、加飾パネルを型成形するための雌型部と雄型部から成る成形型部を複数個有しており、かつ、それら複数個の成形型部は互いに最密的に配置されていることが必要である。従来はシート基材の大きさの割に加飾パネルの大きさが半分にも満たない程度と極端に小さく相当部分が廃棄される無駄の多い方式であったので、本発明は無駄をできる限り小さくすることを目的とするものである。そのために成形型部を複数個有することと、それら複数個の成形型部が互いに最密的に配置されることが必要な要件になる。最密とは成形型部が隣接することを言うと理解されるが、それでは隣接成形型部間にスペースが全く存在しないことになるので、隣接成形型部間に最小限度のスペースの存在を許容したものを最密的というものである。この隣接成形型部間の最小限度のスペースを利用して、後述するシート固定手段が設けられる。
【0012】
また、上記雌雄一対の金型は、一対の金型間に加飾シートを配置して型成形を行うために型締めされた状態において、雌型部と雄型部の間に目的製造物である加飾パネルの厚み分のクリアランスを保持していることを必要とする。このクリアランスは、加飾シートを配置して成形する部分であり、例えば射出成形でいえば樹脂の射出されるキャビティに相当する部分であって、本発明では成形時に負荷がかからないように設けられている。
【0013】
そして、各成形型部の周囲には、雌雄一対の金型の間に挿入した加飾シートと係合して動かないように固定するシート固定手段を有していることが、本発明において不可欠の要素になる。シート固定手段は、加飾シートに対する型成形工程において型締めに伴い加飾シートに働く、成形型部内方への引っ張り力に対抗して加飾シートを所定の位置関係に固定しておくもので、これによってデザイン上の寸法精度を保って成形したり、デザイン通りに配置したりすることができるようになる。シート固定手段は、雌雄一対の金型の間に挿入した加飾シートを貫通する、例えばピンなどの凸部と、この凸部が嵌合する、例えばピンが嵌合するピン穴などの凹部から成るものであることが望まれる。
【0014】
加飾パネルを型成形するための雌型部と雄型部から成る複数個の成形型部は、雌型部側を下位に配置する一方雄型部側を上位に配置すること及び加飾シートの加熱温度を調節する温度調節手段を雄型部と雌型部に設けることが望ましい。雄型部を上位に配置することによって、加飾シートには雄型部から接近し、かつ、雄型部が主導して型成形が実行されることになる。また、加飾シートが設計者の意図したとおりの加飾パネルとして型成形されるためには、加飾シート全体として均一のないしは所定の温度分布条件を保持していることが必要であり、この温度条件を改善するために成形型部の全体に温度調節手段を設置するものである。この場合、加飾シートに先に接近する雄型部に温度調節手段を配置するとともに、加飾シートを受け入れる雌型部にも温度調節手段を設置し、加熱作用を加飾シートに対して内外からより的確かつ効果的に及ぼす構成とする。
なお、本発明の製造装置はプレス機的構成を有するということも可能であるが、ゆっくりと作動できることと、型締め途中で停止できることが必要であり、これ下降速度や加圧調整などが一般的なダイカットプレスとは異なり、どちらかといえばホットスタンプ機に近い仕様のものである。上記のとおり、上型(雄型部)、下型(雌型部)には夫々温度調節を行うこととし、加熱温度は加飾されたシートの基材によって異なるが、大体100度から300度の調節範囲と見込んでおけば十分であるが、具体的には樹種等に応じて変更する。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、最密的に配置された複数個の成形型部によって、真空成形方式のようにシート基材を固定するために加飾パネルの何倍もの面積を無駄にせずに済む、生産性の良い加飾パネルの製造装置を提供することができる。また、本発明によれば、加飾パネルとして安価な物であっても高価な物であっても制約なく選ぶことができるようになり、加飾パネルのシート基材を設計仕様や目的に応じて、自由に選定することができるようになるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。図1は、本発明の立体的形状を有する加飾パネル10を示すもので、図示の例の場合は照明付きの銘鈑として使用可能な、扁平な角皿状の形態を有するものである。図示した加飾パネル10はプラスチック製のシート基材から成り、かつ、型成形によってシート基材が立体的形状に形成されているパネル本体11と、パネル本体11の裏面に付着しているインク、塗料又は微粒子の何れかより成る加飾部12とを備えて構成されている。本例ではパネル本体11の裏面に加飾部12を備えており、かつ、パネル本体11の正面から裏面の加飾部12を透視する構成を持つものであり、パネル本体を構成する樹脂には、通常、透明なプラスチックが選ばれる。
【0017】
上記シート基材11の材質としては、用途に応じてあらゆる種類の樹脂を使用することができる。即ち、例えばゲーム機などアミューズメント業界などで使用する加飾パネル用のシート基材として設計する場合には、デザイン性や表現の自由度の高いことが、耐熱
性、耐衝撃性、耐摩耗性などの条件よりも重要視されるので、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂等から構成されている樹脂基材を使用すると、コストメリットが大きい。また、例えば自動車の内装部品に本発明の加飾パネルを使用する場合には、耐熱性、耐衝撃性、耐摩耗性などに対応するために、加飾パネルのシート基材としてポリカーボネート(PC)樹脂やアクリル樹脂等から構成されている樹脂より成るシート基材を使用することが必要になる。ポリカーボネート樹脂は高価で、熱可塑性樹脂の中でも融点が高く、扱いにくい樹脂の一つであり、この樹脂を真空成形方式で立体形状にすることは非常に困難なことであるが、本発明の加飾パネルの製造装置をもちいることで、何の問題もなく型成形可能である。
【0018】
加飾パネル10の裏面に設けられている加飾部12は、上記のポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂やアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)樹脂、或いはポリカーボネート(PC)樹脂やアクリル樹脂などから成るシート基材に、印刷等の手段によって設けられている。加飾方法は印刷、蒸着、塗装等の方法を適用することができ、そのうち、印刷ではグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷等基材の種類や仕様、諸条件に応じて使い分けることができる。蒸着、塗装等の方法についても適用条件に応じて使い分けるのは当然に行えることである。本発明の加飾パネル10は、上記の如く構成され、それによって、真空成形方式によって形成する従来品には期待できない微細な成形や表現が可能であるという特徴を有するものである。
【0019】
上記の加飾パネル10は、雌雄一対の金型13、14が、加飾パネル10を型成形するための雌型部15と雄型部16から成る成形型部17を複数個有しており、かつ、それら複数個の成形型部17は互いに最密的に配置されていること、雌雄一対の金型13、14は、一対の金型間に加飾シート18を配置して型成形を行うために、型締めされた状態において、雌型部15と雄型部16の間に目的製造物となる加飾シート18の厚み分のクリアランス31を保持していること(図5参照)、各成形型部17の周囲には、雌雄一対の金型13、14の間に挿入した加飾シート18を貫通する凸部19と、この凸部19が嵌合する凹部21から成り、シートを所定の位置関係に固定するシート固定手段20を有していることを要件とする製造装置によって型成形される。即ち、平面状の加飾シート18が本製造装置によって立体的形状を有するものとなる。
【0020】
図2は、3列の雌型部15と雄型部16を有する本発明の製造装置を示すものであり、下型(14)を固定側の型板に設置し、上型(13)を可動側の型板に設置している。それらの雌型部15と雄型部16から成る成形型部17は、図3に示したように隣接成形型部間に最小限度のスペースのみが存在する最密的な配置をもって設置され、上記隣接成形型部間の最小限度のスペース部分には、ピンとして示した凸部19と、ピンの嵌合が可能な凹部21が設けられている(図4参照)。なお、上記凸部19によって位置決めされる加飾シート18には、あらかじめピンの通過が可能な透孔を抜いておくものとする。大まかな比較ではあるが、図3に示した成形型部17に占める凸部(16)の大きさが実際を反映したものである場合、従来の真空成形方式の装置では4個の成形型部を設けるのが精一杯というところであり、これに対して本発明の製造装置では15個の成形型部を設けることができるから、生産効率を4倍近くまで上げられることが分かる。
【0021】
上記加飾シートを型成形するための雌型部15と雄型部16から成る複数個の成形型部17は、雌型部側を下位に配置する、その一方雄型部側を上位に配置し、かつ、加飾シートの加熱温度を調節する温度調節手段22、23を雄型部15と雌型部16に設けた構成を有している。雄型部側の温度調節手段22は立体的形状のパネル本体11の内側のほぼ全体を加熱可能であり、雌型部側の温度調節手段23は立体的形状であるパネル本体11の外側のほぼ全体を加熱可能であるように取り囲む配置形態で設けられている(図2及び図5参照)。この配置形態は一例に過ぎないが、立体的形状のパネル本体11の全体を均等に加熱可能な例として示されている。なお、本発明の製造装置は、図示しないが型の開閉、型成形ないし成形品の取り出しに至る一連の加飾パネルの製造工程の実施に必要な全ての機構を備えているものとする。
【0022】
このように構成されている本発明についてその作用を次に説明する。図7は図外の型開閉機構によって雄型部16が雌型部15に対して上昇し、両型部間にスペース24を生じた型開き状態を示している。この状態において両型部間のスペース24に加飾シート18を配置する(図8)。加飾シート18はプラスチック製のシート基材の一面に印刷手段によって加飾部12を印刷した段階のものである。印刷方法はグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷などの公知の印刷方法をシート基材の種類や仕様、諸条件によって使い分けることができる。
【0023】
上記加飾シート18には、複数個の成形型部17の位置に合わせて加飾部18aとして複数個の印刷パターンが印刷されており、この加飾部18aが上向きになるようにつまり雄型部16に面する関係をもって配置する。加飾シート18を雌雄一対の金型13、14から成る成形型部17に配置する段階ではシート面を貫通する位置決め孔25が加飾シート18に形成されており、位置決め孔25が凸部19と嵌合することによって加飾シート18が位置決め固定される。加飾シート18が凸部19と凹部21の嵌合によって所定の位置関係を保持して固定される結果、デザイン上の寸法精度を保持した正確な加飾パネル10を成形することができ、かつ、複数個の加飾パネル10を組み合わせるときにも、デザイン通りの配置が可能になる。
【0024】
上記加飾シート18として、特に厚いシート基材を使用する場合は、あらかじめ加熱しておくことで加工時間を短縮し、全面的に均等な型成形を実行することができる。また、加飾部18aが各種印刷で表現される場合には注意を要する。加飾されたシート基材18の一面(加飾部18a)と上型である雄型部16の金型が高温(100度から300度)のときには、下型である雌型部15との間で行われる型成形において金型面に加圧され密着する恐れがあり、そこで、このように加飾部18aが各種印刷で表現される場合は、成形型部17における雄型部16と、加飾シート18の上記加飾部18aが設けられている一面の間に10ミクロンから20ミクロン程度のフィルム18bを事前に配置することが望まれる(図6)。これによって、加飾部18の印刷インクが上型である雄型部16の金型に転写されないようになる。射出成形にてインサート成形を行う場合には可塑性樹脂との相性の良い接着剤を塗布(印刷)する必要があるので、上型である雄型部16の温度が接着剤の融点より高いときは、特に適切な加熱が効果的である。なお、加飾部12を加飾シート18の裏側ではなく表側に設けた場合には、成形型部17における雌型部15と、加飾シート18の上記加飾部18aが設けられている表側との間に上記のフィルム18bを事前に配置することになる。
【0025】
以上のような成形条件のもとで、図外の型開閉機構によって雄型部16が雌型部15に対して下降し、加飾シート18に対する型成形工程に入る(図9)。雄型部16は、その凹部21に凸部19が嵌合するかしないかの位置まで下降すると、雄型部16の型面が加飾シート18に触れる直前に一旦停止し、そのほぼ全体を取り囲むように配置された温度調節手段22、23によって加飾シート18が加熱される。必要な加熱を受けた後、或いは加熱を受けながら、再び雄型部16が下降を開始して型締め状態になり、雄型部16と雌型部15で加飾シート18を挟んだ状態でまた一旦停止し、その後、雄型部16が上昇し型開きする。一旦停止の時間や加熱温度、下降速度については、加飾されたシートの基材の種類や厚みにより設定は異なる。型開き後、成形型部17から型成形品(加飾パネル10)を取り出すが、得られた加飾パネル10は図1に示したような立体形状を有し、その内面側に加飾部18aを有する目的通りの透明性の高いものであった。
【0026】
加飾シート18に加飾部18aとして設けられた凹凸形状が複雑な場合や鋭利な形状の場合は、下型である雌型部15の複雑な形状又は鋭利な形状の部分に、その形状に応じた孔径(例えば1ミリ未満から数ミリ程度)を有する吸出孔26を数箇所金型内部から金型外部に通じるように開け(図10参照)、加飾シート18と下型である雌型部15の間を真空状態にして、加飾シート18に破れや裂け目などが発生するのを防ぐ方法を講ずる。その際、同時に、または単独で上型である雄型部16に同様の注入孔27を開け、空気を注入し圧空状態にして同様の効果を得ること、或いは、空気の吸出と注入を並行して行うことも可能であり、複雑化するが、精密な成形にはより効果的である。
【0027】
また、上型である雄型部16と下型である雌型部15の外周部分に、夫々刃物状の切断刃28とその受け入れ部29を設けることで、型締め完了と同時に加飾シート18の余分な耳18cを切り落とす構成を設けることができる(図11参照)。図中、符号30は切断線を示す。なお、図6に示したように雄型部16と、加飾シート18の上記加飾部18aが設けられている一面の間にフィルム18bを配置した場合において、フィルム18bは事後取り外して良いがフィルムは加飾パネル10の裏面であるので取り外す必要のないこともある。
【0028】
本発明の加飾パネル10はこのようにして形成され、ゲーム機器や自動車部品(内装、外装)、家電製品、建材用装飾部品その他装飾部品などとして多くの分野の商品に適用される可能性を持っている。ここに説明した本発明の加飾パネルの例は、シート基材が立体的に形成されているものから成るパネル(単一加飾パネル)である。しかし、シート基材が立体的に形成されたものにインサート成形等によって形成された別のプラスチック成形体が付加されているもの(複合加飾パネル)、を含むことは既に述べたとおりである。複合加飾パネルを製造するには、上記本発明の単一加飾パネル10を用いてインサート成形或いはインモールド成形を行えば良く、その具体的方法は当業者にとって自明に属する事項である。
【0029】
前述の実施形態は、本発明を、照明によって照らされる加飾部分を有する、ライティングパネルと通称されるものを例とした実施形態であり、従って、パネル本体11の裏側の加飾部12を表側から見るので、パネル本体11の材質は透明である必要があるわけである。しかしながら、加飾部12をパネル本体11の表側に設けることは当然に本発明の範囲内でなし得ることであり、用途についてもライティングパネルは勿論のこと、その他のあらゆる加飾パネルに適用することができるものであるから、パネル本体11の材質として透明材に限られないのは言うまでもないことである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る加飾パネルの一例を示すもので、Aは正面図、Bは図1AのIB−IB線断面図である。
【図2】本発明に係る加飾パネルの製造装置の一例を示す説明図である。
【図3】同上装置における雄型部の平面説明図である。
【図4】同じく図3のIV部分の拡大説明図である。
【図5】同じく本発明の装置の部分断面図である。
【図6】同じく本発明の装置の変形例の説明図である。
【図7】本発明の装置の作用を示すもので、型開き状態の説明図である。
【図8】図7から成形型部のスペースに加飾シートを配置した状態の説明図である。
【図9】同様に型締め状態を示す説明図である。
【図10】本発明の装置に吸引手段等を設けた例を示す断面説明図である。
【図11】本発明の装置に切り落とし手段を設けた例を示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0031】
10 加飾パネル
11 パネル本体
12 加飾部
13、14 金型
15 雌型部
16 雄型部
17 成形型部
18 加飾シート
19 凸部
20 シート固定手段
21 凹部
22、23 温度調節手段
24 スペース
25 位置決め孔
26 吸出孔
27 注入孔
28 切断刃
29 受け入れ部
30 切断線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックの型成形技術によって形成された、加飾部を有する加飾パネルであって、
プラスチック製のシート基材から成り、かつ、型成形によってシート基材が立体的形状に形成されているパネル本体と、パネル本体の表面又は裏面の何れか一面又は両面に設けられているインク、塗料又は微粒子の何れかより成る加飾部とを備えて構成された
加飾パネル。
【請求項2】
雌雄一対の金型を用いて、立体的形状を有する加飾パネルをプラスチックの型成形技術によって製造するための装置であって、
雌雄一対の金型は、加飾パネルを型成形するための雌型部と雄型部から成る成形型部を複数個有しており、かつ、それら複数個の成形型部は互いに最密的に配置されていること、雌雄一対の金型は、一対の金型間に加飾シートを配置して型成形を行うために型締めされた状態において、雌型部と雄型部の間に目的製造物となる加飾シートの厚み分のクリアランスを保持していること、
各成形型部の周囲には、雌雄一対の金型の間に挿入した加飾シートと係合して動かないように固定するシート固定手段を有していること
を特徴とする加飾パネルの製造装置。
【請求項3】
加飾シートを型成形するための雌型部と雄型部から成る複数個の成形型部は、雌型部側を下位に配置する、一方雄型部側を上位に配置し、かつ、加飾シートの加熱温度を調節する温度調節手段を雄型部と雌型部に設けた構成を有する請求項2記載の加飾パネルの製造装置。
【請求項4】
シート固定手段は、加飾シートを貫通する凸部と、この凸部が嵌合する凹部から成る請求項2記載の加飾パネルの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−274579(P2010−274579A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130648(P2009−130648)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(301049733)株式会社プラネット (6)
【Fターム(参考)】