説明

加飾成形品の成形方法および成形装置

【課題】コア材の周縁部が加飾材で覆われている加飾成形品の成形方法を提供する。
【解決手段】加飾素材(KS)を賦形する賦形工程と、インサートした加飾材(K)の裏面と金型(22)の表面との間に構成されるキャビティにコア材を充填する射出充填工程とから構成する。賦形工程時には加飾材(K)の周縁部が所定量だけ裏面側へ折り返された折返部(R)を有するように賦形する。射出充填工程時には、折返部(R)が形成されている加飾材(K)の裏面と金型(22)の表面(23)との間に構成されるキャビティ(CA)に射出充填する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、織布、不織布、編み物、起毛材、薄肉金属板等の加飾素材を所定形状に賦形する賦形工程と、前記賦形工程により所定形状に賦形された加飾材を一対の金型間にインサートして型締し、型締めすることにより前記加飾材の裏面と前記金型みら表面との間に構成されるキャビティにコア材となる溶融樹脂を射出する射出充填工程とから、前記コア材の表面に前記加飾材の裏面が張り合わされた加飾成形品を得る成形方法、この成形方法の実施により得られる加飾成形品および加飾成形品の成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂製の成形品は、一般に手触り感触、クッション性、装飾性等において繊維製品に比較して劣る。そこで、樹脂成形品の表面に織布、不織布、編み物、起毛材、薄肉金属板等の加飾材を貼り合わせた加飾成形品が提案されている。この加飾成形品は、加飾材は織布、起毛材等からなり、本体であるコア材は合成樹脂からなるので、コア材を射出成形するときに加飾材を一体的に貼り合わせる成形方法により製造することができる。すなわち、一対の金型を開いて賦形されていない加装素材をインサートして型締めし、型締めすることにより加装素材の裏面と金型のコアの表面との間に構成されるキャビティに溶融樹脂を射出充填して、コア材の表面に加装素材が一体的に張り合わされた加装成形品を製造あるいは成形することができる。このような貼合わせ成形方法あるいは加装材インサート成形方法は、特許文献1、2等により色々提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2001−30292
【特許文献2】特開2000−25044
【0004】
特許文献1に示されている貼合わせ成形方法の実施に使用される成形装置は、図5の(ア)に示されているように、一対の金型100、101と加熱ヒータとから構成されている。したがって、一対の金型101を開き、加飾層となる表皮材102をインサートし、加熱ヒータにより表皮材102を局部的に暖めてから型締めすると、表皮材102の裏面と金型100のコア面とによりキャビテイが構成される。このキャビテイにコア材104となる溶融樹脂を射出充填すると、コア材104の表面に表皮材102が張り合わされた加飾成形品が得られる。特許文献2には、図5の(イ)に示されているように、コア111が設けられている固定金型110と、このコア111と対をなす凹部を構成している可動プレー112、113、114とを備えた貼合わせ成形用金型が示されている。この貼合わせ成形用金型により次のようにして加飾成形品を成形することができる。すなわち、可動金型115を開いて可動プレー112、113、114により構成される凹部に表皮材120をインサートして型締めする。そうすると、表皮材120の裏面と固定金型110のコア111との間にキャビテイが構成される。このキャビテイにコア材121となる溶融樹脂を射出充填すると、コア材121の表面に表皮材120が貼合わされた加飾成形品が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の発明によると、プリフォームされていない表皮材102が使用されているにも拘わらず、型締めする前にセットされた表皮材が加熱ヒータにより部分的に加熱されるので、表皮材102が絞り部で破れることはない。また、絞り部以外でシワが発生することもないという特徴も有する。しかしながら、プリフォームすなわち賦形されていない表皮材102が適用されているので、金型内で局所的に加熱しなければならず、射出成形工程が複雑になっている。特に、図5の(ア)に示されているように、コア材104の周縁部は表皮材102で覆われることなく露出しているので加飾効果あるいは商品価値は必ずしも高くはない。高級感を出し商品価値を高めるために、コア材104の周縁部を表皮材102で折り返して被覆することはできる。しかしながら、周縁部を覆うためには、金型100、101から一旦取り出し、手作業により接着剤あるいは縫製によらなければならず、コスト高になるとう、別の問題が生じる。また、手作業によると、個人差により商品にバラツキが生じるという欠点もある。さらには、接着剤により貼り合わせると接着強度が落ち、表皮材が厚いと縫製できないという問題もある。特許文献2に記載の発明によると、可動プレート113、114により、周辺部にフランジ部を有する加飾成形品を成形することはできるが、コア材121の、符号Xで示されている周縁部は、表皮材120で覆われることなく、露出している。したがって、前述したような欠点あるいは問題点がある。
【0006】
本発明は、上記したような問題点を解消した加飾成形品の成形方法および成形装置を提供することを目的としている。具体的には、加飾材を局所的に加熱しなくてもシワのない加飾成形品を成形することができると共に、特にコア材の周縁部が折り返された状態で張合わされている加飾成形品を成形することができる加飾成形品の成形方法、この成形方法の実施により得られる加飾成形品および加飾成形品の成形方法の実施に使用される成形装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、加飾素材を所定形状に賦形する賦形工程あるいは賦形装置と、賦形された加飾材をインサートして、インサートした加飾材の裏面と金型の表面との間にコア材を充填する射出充填工程あるいは射出成形機とから構成される。特に、賦形工程時には加飾材の周縁部が所定量だけ裏面側へ折り返された折返部を有するように賦形し、射出充填工程時には、コア材を、加飾材の折返部が形成されている裏面と金型の表面との間に構成されるキャビティに射出充填するように構成される。
【0008】
すなわち、請求項1に記載の発明は、上記目的を達成するために、織布、不織布、編み物、起毛材、薄肉金属板等の加飾素材を所定形状に賦形する賦形工程と、前記賦形工程により所定形状に賦形された加飾材を一対の金型間にインサートして型締し、型締めすることにより前記加飾材の裏面と前記金型の表面との間に構成されるキャビティにコア材となる溶融樹脂を射出する射出充填工程とから、前記コア材の表面に前記加飾材の裏面が張り合わされた加飾成形品を得る成形方法であって、前記賦形工程時には、前記加飾材の周縁部が所定量だけ裏面側へ折り返された折返部を有するように賦形し、前記射出充填工程時には、前記コア材を、前記加飾材の折返部が形成されている裏面と前記金型の表面との間に構成されるキャビティに射出充填し、これによって、前記加飾材は前記コア材に、その周縁部を裏側へ越えて貼り合わされるように構成される。請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の成形方法において、前記賦形工程時には加飾素材は加熱手段により加熱されるように構成され、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の成形方法の実施により得られる加飾成形品のように構成される。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1または2の成形方法の、前記賦形工程の実施に使用される賦形装置と、前記射出充填工程の実施に使用される射出成形機とからなる加飾成形品の成形装置であって、前記賦形装置は、賦形雌型と、該賦形雌形と共働して加飾素材を所定形状に賦形する賦形雄型と、前記賦形雌型に残っている加飾素材の周縁部を内側へ折り返すように折り曲げる複数本の賦形ロールとからなり、前記賦形ロールは、前記賦形雌型の周縁部から内側へ移動する水平動作と、この水平動作後に下方へ移動する下降動作とを採るように構成され、前記射出成形機は、固定側金型と、該固定側金型に対して型開閉される可動側金型とからなり、これらの金型のパーティング面の間に賦形された加飾材がインサートされ、そして型締めされると、前記加飾材の裏面と前記金型の表面との間にコア材充填用のキャビティが構成されるようになっている。請求項5に記載の発明は、請求項1または2の成形方法の、前記賦形工程の実施に使用される賦形装置と、前記射出充填工程の実施に使用される射出成形機とからなる加飾成形品の成形装置であって、前記賦形装置は、賦形雌型と、該賦形雌形と共働して加飾素材を所定形状に賦形する賦形雄型と、加飾素材に対して熱風を吹き付ける熱風吹き付けけ手段と、前記賦形雌型に残っている加飾素材の周縁部を内側へ折り返すように折り曲げる複数本の賦形ロールとからなり、前記賦形ロールは、前記賦形雌型の周縁部から内側へ移動する水平動作を採るように構成され、前記射出成形機は、固定側金型と、該固定側金型に対して型開閉される可動側金型とからなり、これらの金型のパーティング面の間に賦形された加飾材がインサートされ、そして型締めされると、前記加飾材の裏面と前記金型の表面との間にコア材充填用のキャビティが構成されるようになっている。請求項6に記載の発明は、請求項4または5に記載の成形装置において、前記賦形装置の前記賦形雌型と前記賦形雄型の少なくとも一方の型は加熱手段により加熱あるいは温調されるように構成される。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明によると、加飾素材を所定形状に賦形する賦形工程と、前記賦形工程により所定形状に賦形された加飾材を一対の金型間にインサートして型締し、型締めすることにより前記加飾材の裏面と前記金型の表面との間に構成されるキャビティにコア材となる溶融樹脂を射出する射出充填工程とから構成され、前記賦形工程時には、前記加飾材の周縁部が所定量だけ裏面側へ折り返された折返部を有するように賦形し、前記射出充填工程時には、前記コア材を、前記加飾材の折返部が形成されている裏面と前記金型の表面との間に構成されるキャビティに射出充填するので、前記加飾材を前記コア材の周縁部を裏側へ越えて貼り合わせることができるという効果が得られる。すなわち、手触り感触、クッション性、装飾性等における付加価値を、格別にコストをかけることなく、高めることができるという本発明に特有の効果が得られる。また、前記射出充填工程時には、前記コア材を、前記加飾材の折返部が形成されている裏面と前記金型の表面との間に構成されるキャビティに射出充填するので、加飾材は充填圧力により半径外方への力を受け、引っ張られた状態でコア材に貼り合わされる。したがって、シワ等のない加飾成形品を得ることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図1〜4により本発明の実施の形態を説明する。図1および図2には、本発明の賦形工程の実施に使用される賦形装置の第1の実施の形態が示され、図3には賦形装置の第2の実施の形態が示され、そして図4には本発明の射出充填工程の実施に使用される射出成形機の実施の形態が示されている。第1の実施の形態に係る賦形装置1は、概略的には、図1の(ア)に示されているように賦形雌型2と、この賦形雌型2と対をなす賦形雄型6と、複数本の賦形ロール11、12、…とからなっている。
【0012】
賦形雌型2の上面3には、断面形状が略台形を呈する比較的深い賦形凹部4が形成されている。賦形雄型6は、賦形雌型2の賦形凹部4よりも後述する加飾素材の厚みより小さく、該賦形凹部4と相似形をしている。そして、本実施の形態によると賦形雄型6の周縁部からは上方へ立ち上がった所定厚Dの立上り縁部7、7、…が形成されている。この立上り縁部7、7、…により、織布、不織布、編み物、起毛材、薄肉金属板等からなる加飾素材に、後述する折返部が成形されることになる。この賦形雄型6には操作桿8が取り付けられ、賦形雄型6は操作桿8を介してアクチュエータ9により賦形位置と待避位置とを採るように上下方向に駆動されるようになっている。このように構成されている賦形雌型2と賦形雄型6の、少なくとも一方の型2、6はヒータのような加熱手段により加熱されるようになっているが、第1の実施の形態では賦形雄型6の方が加熱板から構成されている。
【0013】
本実施の形態によると、加飾成形品の平面形状あるいは賦形雌型2の賦形凹部4の平面形上は、図2の(ア)に示されているように、矩形をしているので、賦形ロールは第1、2の二対の4本の賦形ロール11、12、…からなっている。これらの4本の賦形ロール11、12、…は、軸方向に所定長さを有し、賦形雌型2の賦形凹部4の4辺の縁部近傍に配置されている。そして、図2の(ア)において矢印Aで示されているように、互いに接近する方向と、互いに離間する方向とに水平方向に駆動されるようになっている。また、図1の(ア)において矢印Bで示されているように、上下方向にも駆動されるようになっている。図1の(ア)には、第1の一対の賦形ロール11、11のみが、それぞれの支持部材13、13により支持された状態で模式的に示され、他の賦形ロール12、12の支持部材、駆動装置等は示されていない。
【0014】
次に、上記賦形装置1により賦形する例について説明する。図1の(ア)に示されている位置から第1の一対の賦形ロール11、11を互いに離間する方向に駆動して待避させる。同様に第2の二対の賦形ロール12、12も待避させる。織布、不織布、編み物、起毛材、薄肉金属板等からなる、所定大きさに裁断された加飾素材KSは、図1の(ア)では浮いているように示されているが、この加飾素材SKを賦形雌型2の上面3にセットする。そうして、アクチュエータ9により賦形雄型6を下方へ駆動する。あるいは、賦形雄型6の下面に真空等により吸着させておいて下方へ駆動する。駆動すると、賦形雄型6の立上り縁部7、7、…の上面が賦形雌型2の上面3と略等しくなる。賦形雌型2の賦形凹部4と、賦形雄型6の外周面とにより、加飾材Kの本体部が賦形される。この状態が図1の(イ)に示されている。
【0015】
第1、2の二対の賦形ロール11、12、…を、賦形雌型2の上面3に沿って互いに接近する水平方向に所定の荷重をかけて駆動する。図1の(ウ)に、第1の一対の賦形ロール11、11が駆動されている途中の状態が示されている。例えば、第2の一対の賦形ロール12、12の動作が、第1の一対の賦形ロール11、11と干渉するときは、タイミングをずらして駆動する。この水平方向の駆動により、加飾素材KSの周縁部は内側へ曲げられる。さらに駆動を続けると、第1、2の二対の賦形ロール11、12、…は、賦形雄型6の立上り縁部7、7、…を越える。そうすると、第1、2の二対の賦形ロール11、12、…は、支持を失い下降する。この下降により、加飾素材KSの周縁部は下側へ曲げられる。第1の一対の賦形ロール11、11が下降している状態が図1の(エ)に示されている。第1、2の二対の賦形ロール11、12、…の水平方向の駆動と、引き続く下方への駆動とにより、加飾素材KSの周縁部に折返部Rが成形され、略カップ状を呈する加飾材Kが得られる。
【0016】
第1、2の二対の賦形ロール11、12、…を互いに離間する水平方向に駆動して待避させる。そして、アクチュエータ9により加飾材Kが付いた賦形雄型6を賦形雌型2の賦形凹部4から取り出す。賦形ロール11、12、…が待避した状態が図1の(オ)に、そして賦形雄型6を上方へ引き上げた状態が図1の(カ)にそれぞれ示されている。加飾材Kを賦形雄型6から取り外す。取り外した加飾材Kが、図2の(イ)に示されている。加飾材Kの折返部Rの溝Mの幅は、立上り縁部7の厚さDになっている。以下同様にして周縁部に折返部Rが形成されたカップ状の加飾材Kを成形し、次の射出工程に供給する。
【0017】
次に、賦形装置の第2の実施の形態を、図3により説明する。第1の実施の形態の構成要素と同じような要素には、同じ参照数字あるいは文字にダッシュ「’」を付けて重複説明はしない。第2の実施の形態によると、賦形雌型2’は、温度調節あるいは加熱されるようになっている。また、賦形雌型2’の賦形凹部4’は、比較的浅く形成されている。したがって、板状の加飾材K’が形成されることになる。さらには、賦形雌型2’の上方には、下方へ熱風を吹き出す加熱装置15が設けられている。
【0018】
第2の実施の形態に係る賦形装置1’によっても、略同様にして加飾材K’を得ることができる。すなわち、第1、2の二対の賦形ロール11’、12’、…を待避させて、加飾素材KS’を賦形雌型2’の上面3’にセットして、賦形雄型6’を下方へ駆動する。あるいは、賦形雄型6’の下面に加飾素材KS’を例えば真空吸着しておいて、下方へ駆動する。これにより、賦形雌型2’の賦形凹部4’と賦形雄型6’の外周面とにより加飾材K’の本体部が形成される。このとき、賦形雌型2’の賦形凹部4’は浅いので、加飾素材KS’の周縁部は立ち上がっている。次いで、第1、2の二対の賦形ロール11’、12’、…を互いに接近する方向に駆動する。これにより、立ち上がっている部分が内側へ折り曲げられて折返部R’が形成される。加熱装置15から熱風を吹き付けて折り曲げ形成作用を助ける。第1、2の二対の賦形ロール11’、12’、…を待避させて、加飾材K’を前述したようにして取り出す。
【0019】
次に、図4により、射出充填工程の実施に使用される射出成形機の実施の形態を説明する。本実施の形態に係る射出成形機20は、固定盤21に取り付けられている固定側金型22と、固定盤21に対して型開閉方向に駆動される可動盤31に取り付けられている可動側金型32とを備えている。固定側金型21のパーティング面Pには、可動側金型32の方へ突き出た所定大きさのコア23が形成されている。コア23の周囲には加飾成形品を剥がすストリッパープレート24、24が設けられ、このストリッパープレート24、24にはプラロック25、25が設けられている。このように構成されているコア23の頂面には、複数個、本実施の形態では2個のゲート26、26が開口し、これらのゲート26、26はホットランナを介して1本のスプル27に連通している。スプル27には、従来周知のようにロケートリングを介して射出ノズル28がタッチするようになっている。
【0020】
可動側金型32のパーティング面Pには、固定側金型22のコア23と対をなす凹部33が形成されている。この凹部33に、前述した賦形された加飾材Kがインサートされ、コア材が成形されることになる。また、パーティング面Pにはプラロック25と対をなすロック用穴35、35が設けられている。
【0021】
最後に、上記射出成形機20を使用した加飾成形品KHの成形例について説明する。可動側金型32を、図4の(ア)に示されているように開く。そうして、前述したようにして賦形された加飾材Kをインサートする。加飾材Kは、可動側金型32の凹部33にインサートしても良いが、図示の実施の形態では固定側金型22のコア23の方にインサートするようになっている。すなわち、加飾材Kの、折返部が形成されている裏面KRがコア23の表面側に来るようにしてインサートする。このとき、例えばコア23の頂面近くの周面部に加飾材Kの厚さよりも低い複数個のピン状突起を設けて、摩擦力を高めておき、この摩擦力で加飾材Kの折返部Rの折返片により加飾材Kを一時的に保持する。図4の(ア)に、加飾材Kが折返片によりを一時的に保持されている状態が示されている。
【0022】
そうして、可動側金型32を固定側金型22に対して予備型締めする。そうすると、図4の(イ)に示されているように、可動側金型32の凹部33の内面と加飾材Kの表面KYとの間に空間が生じた状態で型締めされる。加飾材Kの折返部R、裏面KR、表面KY等の符号は、図が複雑化するのを避けるために、図4の(ア)、(イ)においては示されていないが、これらの符号は図2の(イ)に示されている。可動側金型32の凹部33の内面と加飾材Kの表面KYとの間の空間あるいは隙間を、真空引きする。そうして、型締めする。そうすると、加飾材Kの表面KYは可動側金型32の凹部33の内面に密着し、加飾材Kの裏面と固定側金型22のコア23の頂面との間に、コア材成形用のキャビティCAが構成される。この状態が図4の(ウ)に示されている。また、このようにキャビティCAが構成された状態が図4の(ア)に拡大して模式的に示されている。キャビティCAは、加飾材Kの折返部Rの溝Mまで及んでいる。
【0023】
コア材成形用の溶融樹脂を射出ノズル28から射出する。溶融樹脂は、スプル27からランナおよびゲート26、26を介してキャビティCAに充填される。このとき、溶融樹脂は溝部Mにも達する。すなわち溝部Mも充填される。これにより、コア材Cの周辺部は加飾材Kにより折り返された状態で被覆される。上記のようにして、キャビティCAに充填するとき、溝部Mに充填される射出圧力は、加飾材Kの半径外方にも作用する。これにより、加飾材Kは半径外方に引っ張られ、シワのない状態でコア材Cと一体化される。冷却固化を待って可動側金型32を開く。ストリッパープレート24、24が突き出て、コア材Cの表面に加飾材Kの裏面が貼合わされた加飾成形品KHが取り出される。可動側金型32を開いた状態が、図4の(エ)に示され、取り出された加飾成形品KHが、図4の(オ)に示されている。加飾成形品KHの周辺部は、加飾材Kにより折り返された状態で完全に被覆されている。以下、同様にして成形する。
【0024】
第2の実施の形態により賦形される加飾材K’をインサートして、同様にして加飾成形品を得ることができることは明らかである。賦形ロール11、12、11’、12’については加熱する旨の説明はないが、賦形雌型2、2’あるいは賦形雄型6、6’と同様に、加熱された賦形ロールにより折返部R、Rを成形するように実施できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の、第1の実施の形態に係る賦形装置を示す図で、その(ア)は全体を模式的に示す断面図、その(イ)〜(カ)は、その各作用段階の要部を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の、第1の実施の形態に係る賦形装置を示す図で、その(ア)は図1の(イ)の上面図に相当する模式的平面図、その(イ)は第1の実施の形態により得られた加飾材を示す断面図である。
【図3】本発明の、第2の実施の形態に係る賦形装置を示す図で、その(ア)は全体を模式的に示す断面図、その(イ)はその作用の途中の段階の要部を模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の、射出成形機の実施の形態を示す図で、その(ア)は全体を模式的に示す断面図、その(イ)〜(エ)は、その各作用段階の要部を模式的に示す断面図、その(オ)は本実施の形態により得られた加飾成形品を示す断面図である。
【図5】従来例を模式的に示す断面図で、その(ア)、(イ)はそれぞれ異なる従来の加飾成形品の成形装置を示す断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1、1’ 賦形装置 2、2’ 賦形雌形
4、4’ 賦形凹部 6、6’ 賦形雄型
11、12 賦形ロール
20 射出成形機 22 固定側金型
23 コア 32 可動側金型
33 凹部
KS 加飾素材 K 加飾材
R 折返部 CA コア材成形用のキャビティ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布、不織布、編み物、起毛材、薄肉金属板等の加飾素材を所定形状に賦形する賦形工程と、前記賦形工程により所定形状に賦形された加飾材を一対の金型間にインサートして型締し、型締めすることにより前記加飾材の裏面と前記金型の表面との間に構成されるキャビティにコア材となる溶融樹脂を射出する射出充填工程とから、前記コア材の表面に前記加飾材の裏面が張り合わされた加飾成形品を得る成形方法であって、
前記賦形工程時には、前記加飾材の周縁部が所定量だけ裏面側へ折り返された折返部を有するように賦形し、
前記射出充填工程時には、前記コア材を、前記加飾材の折返部が形成されている裏面と前記金型の表面との間に構成されるキャビテイに射出充填し、これによって、前記加飾材は前記コア材に、その周縁部を裏側へ越えて貼り合わされることを特徴とする加飾成形品の成形方法。
【請求項2】
請求項1に記載の成形方法において、前記賦形工程時には加飾素材は加熱手段により加熱されるようになっていることを特徴とする加飾成形品の成形方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の成形方法の実施により得られる加飾成形品。
【請求項4】
請求項1または2の成形方法の、前記賦形工程の実施に使用される賦形装置と、前記射出充填工程の実施に使用される射出成形機とからなる加飾成形品の成形装置であって、
前記賦形装置は、賦形雌型と、該賦形雌形と共働して加飾素材を所定形状に賦形する賦形雄型と、前記賦形雌型に残っている加飾素材の周縁部を内側へ折り返すように折り曲げる複数本の賦形ロールとからなり、
前記賦形ロールは、前記賦形雌型の周縁部から内側へ移動する水平動作と、この水平動作後に下方へ移動する下降動作とを採るように構成され、
前記射出成形機は、固定側金型と、該固定側金型に対して型開閉される可動側金型とからなり、これらの金型のパーティング面の間に賦形された加飾材がインサートされ、そして型締めされると、前記加飾材の裏面と前記金型の表面との間にコア材充填用のキャビティが構成されることを特徴とする加飾成形品の成形装置。
【請求項5】
請求項1または2の成形方法の、前記賦形工程の実施に使用される賦形装置と、前記射出充填工程の実施に使用される射出成形機とからなる加飾成形品の成形装置であって、
前記賦形装置は、賦形雌型と、該賦形雌形と共働して加飾素材を所定形状に賦形する賦形雄型と、加飾素材に対して熱風を吹き付ける熱風吹き付けけ手段と、前記賦形雌型に残っている加飾素材の周縁部を内側へ折り返すように折り曲げる複数本の賦形ロールとからなり、
前記賦形ロールは、前記賦形雌型の周縁部から内側へ移動する水平動作を採るように構成され、
前記射出成形機は、固定側金型と、該固定側金型に対して型開閉される可動側金型とからなり、これらの金型のパーティング面の間に賦形された加飾材がインサートされ、そして型締めされると、前記加飾材の裏面と前記金型の表面との間にコア材充填用のキャビティが構成されることを特徴とする加飾成形品の成形装置。
【請求項6】
請求項4または5に記載の成形装置において、前記賦形装置の前記賦形雌型と前記賦形雄型の少なくとも一方の型は加熱手段により加熱あるいは温調されるようになっていることを特徴とする加飾成形品の成形用賦形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−255406(P2009−255406A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107544(P2008−107544)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000004215)株式会社日本製鋼所 (840)
【Fターム(参考)】