説明

励磁突入電流抑制装置付開閉器

【課題】配電回線に設置された変圧器を電力系統に投入する際、配電回線に過渡的な大電流が流れるいわゆる変圧器励磁突入電流を抑制する開閉器で、小型、長寿命で大電流定格の励磁突入電流抑制装置付開閉器を提供する。
【解決手段】第1の主接点1と、投入抵抗接点3と投入抵抗4とを設けた抵抗回路3aを並列接続し第1の主接点1と並列接続する第2の主接点2を備え、第2の主接点2、投入抵抗接点3の可動接触子が機械的に連結、同一駆動源で駆動され、電力系統投入時の各接点1、2、3の動作が投入抵抗接点3の閉路→第2の主接点2の閉路→第1の主接点1の閉路→投入抵抗接点3の開路→第2の主接点2の開路の順になされて常時通電状態となり、遮断時は第1の主接点1の開路によってなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、開閉器を用いて配電回線に設置された変圧器を電力系統に投入する際、配電回線に過渡的な大電流が流れるいわゆる突入電流を抑制する励磁突入電流抑制装置付開閉器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
変圧器を電力系統に投入する際は、投入位相にもよるが、変圧器定格電流の数倍〜数十倍の励磁突入電流が流れ、その後定常状態になるという過渡現象が生じることが知られている。励磁突入電流の大きさは投入位相以外に変圧器鉄心の残留磁束によっても影響される。
この励磁突入電流により系統電圧が一時的に低下し、特に電力系統に接続されている電子機器の機能が損なわれたり変圧器の保護装置の誤動作の誘発、さらには周辺電力系統の電圧変動に大きな影響を与える。
また、過大な励磁突入電流は変圧器自体にも電磁力によりダメージを与える。励磁突入電流は通常の使用状態下で発生するものであるので、繰り返しの過大励磁突入電流は、変圧器の故障発生の要因ともなり得る。
【0003】
一方、省エネルギ対策として、例えば負荷のなくなる夜間は変圧器を切り離しておき、負荷の大きくなる時刻に変圧器を投入するような系統運転が増加するにつれて、変圧器の投入、開放の回数の増加による過大励磁突入電流発生に伴う悪影響を防止することが要請されてきている。
【0004】
このような情勢下において、励磁突入電流低減対策として、2つの主遮断器を単相変圧器の両端子と交流電源間に接続し、前記主遮断器のいずれか一方の主遮断器と並列に、抵抗体付き遮断器を接続し、遮断器投入動作の際に抵抗体付き遮断器の投入接点を主遮断器よりも早期に接触させるよう、抵抗体付き遮断器の固定接点と可動接点間の接点距離を、主遮断器の接点距離よりも短くし、ストローク量を短く設定した構成の励磁突入電流抑制装置付きガス遮断器が示されている(特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−075145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献1に示された技術は、単相の変圧器を対象としたものであり、仮に、この技術を三相の変圧器に適用しようとすると3台の機器が必要となり、装置の大型化、設置スペースの拡大化、さらにはコスト高となる問題点がある。また、この特許文献1の技術では装置の小型化要請に対応することは難しいという問題点もある。
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、三相変圧器のみならず単相変圧器であっても小型で、かつ大電流定格での励磁突入電流を抑制した開閉器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る励磁突入電流抑制装置付開閉器は、電力系統と電気機器間に設置され、第1の主接点と、投入抵抗接点と投入抵抗とが設けられ励磁突入電流を抑制する抵抗回路を並列に接続するとともに第1の主接点に並列接続された第2の主接点とを備え、第2の主接点および投入抵抗接点はそれぞれに固定接触子と可動接触子とを有するとともに、第2の主接点および投入抵抗接点の可動接触子は、機械的につながった同一駆動機構で駆動されて、それぞれの接点の開閉路動作がなされるものであり、電力系統に電気機器を投入時の各接点の動作が、投入抵抗接点の閉路→第2の主接点の閉路→第1の主接点の閉路→投入抵抗接点の開路→第2の主接点の開路の順になされて電気機器が通常通電状態に達するとともに、通常通電状態の遮断は第1の主接点の開路によってなされるものである。
【発明の効果】
【0008】
このため投入抵抗接点と第2の主接点の投入タイミングが精度良く設定可能となり、投入抵抗に通電される時間が設定値のとおり確保できるので、マージンを少なくし、かつ励磁突入電流を精度よく抑制した装置の提供が可能となり、その結果従来と比較してより大電流定格の励磁突入電流抑制装置付開閉器を提供できる。
また、従来、現地サイトにて実施されていた人手による諸機器の投入タイミング調整作業が低減され低コスト化がはかれる。さらに、通常通電状態の遮断が第1の主接点で行われるので、第2の主接点は第1の主接点が投入されるまでの間に通電される短時間電流値に適合した接点容量を採用すればよく、装置の小型化とともに、長寿命化がはかれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
実施の形態1.
実施の形態1を図に基づいて説明する。
図1は励磁突入電流抑制装置付開閉器100を示す回路図である。図1において励磁突入電流抑制装置付開閉器100(以下、開閉器100と略す)は、電力系統6と電気機器、この場合変圧器5との間に設置されている。この開閉器100は主通電回路母線である第1の母線1aに設置された第1の主接点1と、この第1の母線1aに並列接続された第2の母線2aに設置される第2の主接点2と、この第2の母線2aに並列に抵抗回路3aが接続されており、この抵抗回路3aには、投入抵抗接点3と投入抵抗4が直列に設けられている。
上記第2の主接点2と抵抗回路3aとで励磁突入電流抑制装置50を構成している。なお、この励磁突入電流抑制装置50は一体的にユニット化されている。
【0010】
第1の主接点1、第2の主接点2および投入抵抗接点3は、それぞれに図示省略の固定接触子と可動接触子とで構成され、可動接触子が移動して固定接触子に挿入されて接点閉路とし、可動接触子が固定接触子から離脱することで接点開路とする。
前記第2の主接点2の可動接触子と投入抵抗接点3の可動接触子とは、機械的に連結された同一駆動機構で連動される。この駆動は図示省略した制御装置からの信号を受信する駆動源によってなされる。ここで第2の主接点2の可動接触子のストローク量は、投入抵抗接点3の可動接触子のストローク量に比較して大きい。つまり、接点閉路とする場合、投入抵抗接点3の方が第2の主接点2より前記ストローク量の差分だけ時間的に早く閉路となる。
【0011】
次に開閉器100の閉路動作を図2(a)〜図2(f)で、開路動作を図3(a)〜図3(b)に基づいて説明する。
図2(a)は電力系統6から開閉器100を介して変圧器5への通電が行われてない状態を示す。なお図2(b)〜図2(f)まで符号の記入は省略している。
【0012】
図2(b)は、変圧器5への投入信号を受けた開閉器100の励磁突入電流抑制装置50の図示省略した駆動源は、第2の主接点2の可動接触子、投入抵抗接点3の可動接触子の同一駆動機構を動作させる。前述のように投入抵抗接点3の可動接触子のストロークが第2の主接点2のそれに比較して短いので、第2の主接点2より先に投入抵抗接点3が閉路となる。この状態で電力系統6から投入抵抗4を介してこの投入抵抗4で規定される電流値で変圧器5が励磁されるので励磁突入電流が抑制されている。
【0013】
変圧器5の励磁突入電流は投入抵抗4によって抑制されるとともに励磁突入電流を減衰させる。この励磁電流減衰は所定の時間内投入抵抗4に電流を流さなければならない。この時間を抵抗挿入時間と称し、前記投入抵抗接点3と第2の主接点2の可動接触子のストローク差によって決まる。この実施の形態1のように投入抵抗接点3の可動接触子と第2の主接点2の可動接触子とが機械的に連結されて同一の投入駆動されるので、抵抗挿入時間設定の信頼性が向上する。すなわち、投入抵抗接点3と第2の主接点2の投入動作を別駆動とした場合、抵抗挿入時間のばらつきが発生しやすく、仮に抵抗挿入時間が短くなると変圧器5への励磁突入電流を十分に抑制できず、一方抵抗挿入時間に余裕を持たせて長くすると、投入抵抗4の通電時間が増加し、投入抵抗4の容量を大きくするという問題点をこの実施の形態1ではなくしている。
【0014】
図2(c)は前記ストローク差の時間分遅れて第2の主接点2が投入され、引き続き変圧器5の励磁を行う。この時点では変圧器5への励磁突入電流は十分に減衰されている。
【0015】
図2(d)にて、第1の主接点1が励磁突入電流抑制装置50とは別駆動源によって閉路となる。
【0016】
図2(e)にて、励磁突入電流抑制装置50の駆動源によって、投入抵抗接点3が開路となる。
【0017】
引き続き図2(f)にて第2の主接点2がストローク差の時間分遅れて開路となり、第1の主接点1を介して電力系統6から変圧器5への通常通電状態に移行する。
【0018】
次に開閉器100の開路動作を図3(a)、図3(b)に基づいて説明する。
図3(a)は前述した図2(f)と同じであり、変圧器5への通常通電状態を示す。符号省略した図3(b)は第1の主接点1が遮断動作指令を受けて、第1の主接点1を開路とする。このように通常通電状態からの電源遮断は第1の主接点1のみを介して行われるので、第2の主接点2は電力系統投入時における第1の主接点が投入されるまでの間に通電される短時間電流値に適合した接点容量を有するものでよく、従って小型の接点の採用が可能である。
【0019】
このようにこの実施の形態1による励磁突入電流抑制装置付開閉器100は、変圧器5の主通電回路1aに設置された第1の主接点1と並列に、励磁突入電流抑制装置50を接続しているので、励磁突入電流が抑制できる。また同一駆動機構で第2の主接点2、投入抵抗接点3が投入されるので、投入駆動の時間調整作業が不要となり、信頼性が向上し、その結果大電流通電可能となりさらに励磁突入電流抑制装置50をユニット化しているので、通電電流容量に応じた仕様を有する第1の主接点1の選定と、励磁突入電流抑制装置50の組み合わせが可能となる。このユニット化された励磁突入電流抑制装置50は現地サイトでの配電盤上に搭載可能であり省スペース化がはかれ、また既設プラント等における変圧器の改造増設工事時においても、その改造工事が簡素化されコスト低減がはかれる。
【0020】
実施の形態2.
図4に示すようにこの実施の形態2は、前述した実施の形態1の図1にヒューズ7を設けたものである。
ヒューズ7は第2の母線2a上に第2の主接点2と変圧器5との間に設けられている。このようにヒューズ7を設けた開閉器100は、現地プラントにおいて点検時などに負荷側を接地した状態で間違って励磁突入電流抑制装置50を投入して短絡したとしても、ヒューズ7が動作するので安全である。なおこのヒューズ7は低定格電流値の安価なものが選定できる。
【0021】
なお、上記実施の形態1,2では電気機器として変圧器の例を示したがこれに限らず励磁突入電流の抑制を必要とする電気機器ならば適用できることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
この発明は、電力系統の設置された電気機器において、電力系統投入時の励磁突入電流の抑制が必要とされる電気機器に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施の形態1の励磁突入電流抑制装置付開閉器を示す図である。
【図2】実施の形態1の励磁突入電流抑制装置付開閉器の閉路動作を説明する図である。
【図3】実施の形態1の励磁突入電流抑制装置付開閉器の開路動作を説明する図である。
【図4】実施の形態2の励磁突入電流抑制装置付開閉器を示す回路図である。
【符号の説明】
【0024】
1 第1の主接点、2 第2の主接点、3 投入抵抗接点、3a 抵抗回路、
4 投入抵抗、5 変圧器、6 電力系統、7 ヒューズ、
50 励磁突入電流抑制装置、100 励磁突入電流抑制装置付開閉器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と電気機器間に設置された励磁突入電流抑制装置付開閉器であって、第1の主接点と、投入抵抗接点と投入抵抗とが設けられ励磁突入電流を抑制する抵抗回路を並列に接続するとともに前記第1の主接点に並列接続された第2の主接点とを備え、前記第2の主接点および投入抵抗接点はそれぞれに固定接触子と可動接触子とを有するとともに、前記第2の主接点および投入抵抗接点の可動接触子は、機械的につながった同一駆動機構で駆動されて、それぞれの接点の開閉路動作がなされるものであり、前記電力系統に前記電気機器を投入時の前記各接点の動作が、前記投入抵抗接点の閉路→第2の主接点の閉路→第1の主接点の閉路→投入抵抗接点の開路→第2の主接点の開路の順になされて前記電気機器が通常通電状態に達するとともに、前記通常通電状態の遮断は前記第1の主接点の開路によってなされることを特徴とする励磁突入電流抑制装置付開閉器。
【請求項2】
前記固定接触子に対する前記可動接触子のストローク量が、前記投入抵抗接点より前記第2の主接点の方が大きいことを特徴とする請求項1に記載の励磁突入電流抑制装置付開閉器。
【請求項3】
前記抵抗回路と前記第2の主接点とが一体的にユニット化されていることを特徴とする請求項1、2のいずれか1項に記載の励磁突入電流抑制装置付開閉器。
【請求項4】
前記第1の主接点と並列接続された第2の主接点と、前記電気機器との間にヒューズが設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の励磁突入電流抑制装置付開閉器。
【請求項5】
前記電気機器が変圧器であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の励磁突入電流抑制装置付開閉器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−177958(P2009−177958A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−14333(P2008−14333)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(593180402)東洋電機株式会社 (6)
【Fターム(参考)】