説明

効率的なエネルギー回収が可能な芳香族カルボン酸の製造法

【解決課題】発熱酸化反応からエネルギーを効率的に回収することができる芳香族化合物供給原料の発熱液相酸化反応による芳香族カルボン酸の製造法を提供する。
【解決手段】a)水、低分子量モノカルボン酸溶媒、重金属酸化触媒、および分子状酸素源を含む液相反応混合物中、0kg/cm2〜35kg/cm2の圧力及び150℃〜240℃の温度にて、芳香族化合物供給原料を酸化して、水、ガス状副生物およびガス状低分子量モノカルボン酸溶媒を含むガス状高圧オーバーヘッド流を生成する工程;b)ガス状高圧オーバーヘッド流を、少なくとも95重量%の低分子量モノカルボン酸をガス状高圧オーバーヘッド流から取り除くように低分子量カルボン酸から水を分離する高効率分離装置に送り、酸化反応時に形成される水およびガス状副生物を含む第2の高圧オーバーヘッド流を形成させる工程;およびc)工程(b)からの第2の高圧オーバーヘッド流を、第2の高圧オーバーヘッド流からエネルギーを回収するエキスパンダーに直接または間接に送る工程;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物供給原料の発熱液相酸化(exothermic,liquid-phase oxidation)による芳香族カルボン酸の製造法に関する。さらに詳細には、本発明は、前記発熱酸化によって生成するエネルギーを効率的に回収する、芳香族化合物供給原料の発熱液相酸化による芳香族カルボン酸の製造法に関する。本発明はさらに、芳香族カルボン酸の製造時に生成する廃水の効率的な処理法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族カルボン酸は有用な化合物であり、多種多様な製造物品に対する原料である。例えばテレフタル酸(TA)は、世界中において年間10億ポンドを越える量で製造されている。単一の製造プラントで、年間100,000〜750,000トンを越える量を製造することができる。TA は、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)(織物用のポリエステル繊維、および包装材料用や容器用のポリエステルフィルムを製造するための原料)を製造するのに使用されている。TAは、空気または他の分子状酸素供給源をオキシダントとして使用して、適切な芳香族化合物供給原料(例えばパラキシレン)を液相酸化にて高圧発熱酸化させることによって生成させることができ、また1種以上の重金属化合物および1種以上の促進剤化合物によって触媒させることができる。このような液相酸化を使用してパラキシレンや他の芳香族化合物を酸化する方法は、当業界においてよく知られている。例えば、サファー(Saffer)による米国特許第2,833,816号は、芳香族化合物供給原料を対応する芳香族カルボン酸に酸化する方法を開示している。芳香族カルボン酸を製造するこれらの方法に対して主流となっているのは、低分子量カルボン酸(例えば酢酸)を反応溶媒の一部として使用して液相反応を利用するという方法である。酸化反応溶媒中に特定量の水も存在しており、水はさらに酸化反応の結果としても形成される。酸化反応はさらに、一般には、二酸化炭素や一酸化炭素を含み、そして使用する促進剤によっては臭化メチルを含むことのある反応排ガスを生成する。さらに、空気を分子状酸素供給源として使用すると、反応排ガスは窒素ガスと未反応酸素を含有する。種々の手段を使用して高発熱酸化反応(highly exothermic oxidation reaction)の温度を制御することができるけれども、一般には、酸化反応中に溶媒を気化(すわわち沸騰)させることによって熱を除去するのが最も適切である。従来は、気化させた溶媒(通常は水と低分子量カルボン酸との混合物)を1つ以上のオーバーヘッド凝縮器装置中で凝縮させ、この凝縮液を反応混合物に戻している。しかしながら水も存在しているので、凝縮液の少なくとも一部を通常は分離装置(一般には蒸留塔)に送って低分子量脂肪酸溶媒から水を分離し、これによって反応器中の水濃度を一定のレベルに保持する。凝縮されなかった排ガスは、一般には排出するか、あるいはオキシダイザー(oxidizer)に通して副生物を燃焼させて環境面から許容しうる流出物を形成させる。
【0003】
高圧の排ガスは相当量のエネルギーを含有している。従来技術の方法は、排ガスを例えばエキスパンダーまたはタービンに通すことによって、排ガス中に含まれているエネルギーの一部をある程度は利用しているけれども、高圧排ガスにおいて得られるエネルギーを充分に利用しているとは言えない。従来技術の方法においては、反応混合物からの熱の除去は、反応オーバーヘッド蒸気の一部を凝縮させて中圧スチーム(moderate pressure steam)を生成させることにより行った。この中圧スチームの一部を使用して蒸気タービンによりエネルギーを回収し、また一部を使用して蒸留によって酢酸から水を分離した。
【0004】
したがって当業界では、高発熱の高圧酸化反応によって生成するエネルギーを経済的・効率的に回収できるような(実際、正味のエネルギー発生器として作用しうるような)、芳香族カルボン酸を製造するための改良された方法が要望されている。本発明は、このような改良された方法を提供する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
芳香族化合物供給原料の発熱液相酸化反応(このとき発熱液相酸化反応からエネルギーを効率的に回収する)によって芳香族カルボン酸を製造するための連続法は、
a)水、低分子量カルボン酸溶媒、重金属酸化触媒、および分子状酸素供給源を含んだ液相反応混合物において、水、ガス状副生物、およびガス状低分子量カルボン酸溶媒を含んだガス状高圧オーバーヘッド流れを生成するような反応条件下で、芳香族化合物供給原料を芳香族カルボン酸に酸化する工程;
b)高効率の分離装置において、前記オーバーヘッド流れから低分子量カルボン酸の少なくとも約95重量%を除去して、低分子量カルボン酸溶媒とを実質的に含まず、水と酸化反応時に形成されるガス状副生物とを含んだ第2の高圧オーバーヘッド混合物を形成させる工程;および
c)第2の高圧オーバーヘッド混合物を、第2の高圧オーバーヘッド混合物からエネルギーを回収するための手段に送る工程;
を含む。
【0006】
高効率分離装置(例えば蒸留塔)を使用すると、芳香族化合物供給原料の発熱酸化によって生成するエネルギーの効率的な回収が可能となるだけでなく、高効率分離装置は、粗製芳香族カルボン酸の精製用に通常使用される水を酸化反応器に再循環するための手段としても機能する。このような水は、蒸留塔への還流物として再循環させることができる。これによって、水中に残留している芳香族カルボン酸および酸化反応中間体が酸化反応器に戻され、有用な生成物として回収される。さらに、精製用水をこのように再循環すると、水を廃水処理施設で処理する必要性が少なくなるか、もしくは全く処理しなくてもよくなる。したがって、廃水処理施設に対する負荷が大幅に減少する。したがって本発明はさらに、芳香族化合物供給原料の発熱液相酸化反応によって芳香族カルボン酸を製造する方法であって、このとき前記方法は、水、低分子量カルボン酸溶媒、重金属酸化触媒、および分子状酸素供給源を含んだ液相反応混合物において、水、ガス状副生物、およびガス状低分子量カルボン酸溶媒を含んだガス状オーバーヘッド流れを生成するような反応条件下で、芳香族化合物供給原料を芳香族カルボン酸に酸化する工程;高効率の蒸留塔において、前記オーバーヘッド流れから低分子量カルボン酸の少なくとも約95重量%を除去して、水と酸化反応時に形成されるガス状副生物とを含んだ第2の高圧オーバーヘッド流れを形成させる工程;液相酸化反応混合物中に生成される反応母液から工程(a)において形成される芳香族カルボン酸を分離して、粗製芳香族カルボン酸を形成させる工程;水を含んだ精製用溶媒中にて粗製芳香族カルボン酸を高温・高圧で精製して、精製された芳香族カルボン酸と水を含んだ精製用母液(purification mother liquor)との混合物を形成させる工程;および工程(d)において形成される精製用母液から精製芳香族カルボン酸を分離し、精製用母液の少なくとも一部を高効率蒸留塔に再循環させる工程;を含む。
【0007】
本発明はさらに、低分子量脂肪族カルボン酸と水とを含んだ反応混合物において、芳香族化合物供給原料の液相酸化によって芳香族化合物供給原料を芳香族カルボン酸に転化させるのに適した、そして酸化反応によって生成するエネルギーの効率的な回収をもたらすのに適した反応器装置であって、このとき前記反応器装置は、芳香族化合物供給原料の液相酸化を高温で行うのに適した反応器容器(reactor vessel)、酢酸と水との混合物を、蒸留塔を出ていく蒸気が約1.0重量%以下の酢酸含量となるよう分離することのできる高効率蒸留塔、および反応器中での液相酸化によって生成する蒸気を蒸留塔に送るための手段を含む。
【0008】
本発明の方法においては、芳香族化合物供給原料が発熱液相酸化反応混合物中にて芳香族カルボン酸に酸化され、この高発熱酸化によって生成するエネルギーが効率的に回収され、例えば、電気または他の形態の有用かつ伝送可能なエネルギーを発生させるのに使用される。
【0009】
本発明の方法において有用な芳香族化合物供給原料は、酸化してカルボン酸基にすることのできる酸化可能な置換基を有する芳香族化合物であればいかなる芳香族化合物でもよい。例えば酸化可能な置換基は、メチル基、エチル基、またはイヒプロピル基等のアルキル基でもよい。さらに、アルコール基、アルデヒド基、またはケトン基等の部分酸化されたアルキル基でもよい。芳香族化合物供給原料の芳香核部分(aromatic portion)はベンゼン核であってもよいし、あるいは二環式でも多環式でもよい(例えばナフタレン核)。芳香族化合物供給原料の芳香核部分上の酸化可能な置換基の数は、芳香族化合物供給原料の芳香核部分上の利用可能な部位の数に等しくてもよいが、一般にはそれより少なく、好ましくは1〜約4、さらに好ましくは2または3である。従って、本発明の方法に対する適切な芳香族化合物供給原料の例としては、トルエン、エチルベンゼン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、1-ホルミル-4-メチルベンゼン、1-ヒドロキシメチル-4-メチルベンゼン、1,2,4-トリメチルベンゼン、1-ホルミル-2,4-ジメチルベンゼン、1,2,4,5-テトラメチルベンゼン、アルキル置換、ヒドロキシメチル置換、ホルミル置換、およびアシル置換のナフタレン化合物(例えば2,6-ジメチルナフタレン、2,7-ジメチルナフタレン、2-アシル-6-メチルナフタレン、2-ホルミル-6-メチルナフタレン、2-メチル-6-エチルナフタレン、2,6-ジエチルナフタレン、およびこれらの類似物)などがある。
【0010】
例えば、パラキシレンを酸化するとテレフタル酸が得られ、メタキシレンを酸化するとイソフタル酸が得られ、2,6-ジメチルナフタレンを酸化すると2,6-ナフタレンジカルボン酸が得られる。
【0011】
前述したように、重金属触媒による液相酸化反応を使用して芳香族供給原料を対応する芳香族カルボン酸に酸化する方法は、当業界においてよく知られている。例えば、サファーらによる米国特許第2,833,816号はこのような方法を開示している。他の方法が、米国特許第3,870,754; 4,933,491; 4,950,786;及び5,292,934号各明細書に開示されている。2,6-ジメチルナフタレンを2,6-ナフタレンジカルボン酸に酸化するための特に好ましい方法が、米国特許第5,183,933号に開示されている。しかしながら一般には、適切な重金属酸化触媒は約21〜約82の原子番号を有する金属であり、コバルトとマンガンの混合物が好ましい。好ましい酸化溶媒は、2〜約6個の炭素原子を有する低分子量脂肪族モノカルボン酸、またはこれらのモノカルボン酸と水との混合物である。好ましいのは酢酸または酢酸と水との混合物である。反応温度は約145℃〜約235℃が一般的であり、また反応圧力は、反応混合物が液相状態にあるような圧力である。促進剤(例えば、2〜約6個の炭素原子を有する低分子量ケトンや1〜約6個の炭素原子を有する低分子量アルデヒド)も使用することができる。当業界に公知の臭素促進剤化合物(例えば臭化水素、分子状臭素、臭化ナトリウム、およびこれらの類似物)も使用することができる。分子状酸素供給源も必要とされ、これは一般には空気である。パラキシレンのテレフタル酸への転化に際しては、分子状酸素供給源は、分子状酸素含量が10%のものから酸素ガスまで使用可能である。好ましい分子状酸素供給源は空気である。爆発性混合物の形成を避けるためには、反応器へ供給する酸素含有ガスが、0.5〜8容量%の酸素(溶媒を含まない形で測定)を含有した廃ガス−蒸気混合物となるようでなければならない。例えば、メチル基1個当たり1.5〜2.8モルの量の酸素を与えるに足る酸素含有ガスの供給速度であれば、オーバーヘッドガス−蒸気混合物中に0.5〜8容量%の酸素(溶媒を含まない形で測定)を供給する。
【0012】
粗製テレフタル酸を製造するための酸化工程において使用する触媒は、コバルト、マンガン、および臭素等の成分を含むのが好ましく、さらに当業界に公知の促進剤を含んでもよい。液相酸化における、触媒のコバルト成分中のコバルト(コバルト元素として算出)とp-キシレンとの比率は、p-キシレン1グラム分子当たり約0.2〜約10ミリグラム原子(mga)の範囲が適切である。液相酸化における、触媒のマンガン成分中のマンガン(マンガン元素として算出)と、触媒のコバルト成分中のコバルト(コバルト元素として算出)との比率は、コバルト1mga当たり約0.2〜約10mgaの範囲が適切である。液相酸化における、触媒の臭素成分中の臭素(臭素元素として算出)と、触媒のコバルト・マンガン成分中の〔コバルト+マンガン〕(コバルト元素およびマンガン元素として算出)との重量比は、〔コバルト+マンガン〕の1mga当たり約0.2〜約1.5mgaの範囲が適切である。
【0013】
コバルト成分とマンガン成分のそれぞれは、反応器中の溶媒に対してコバルト、マンガン、および臭素の可溶形態物を与えるようないかなる公知のイオン形(ionic form)または結合形(combined form)で供給してもよい。例えば、溶媒が酢酸媒体である場合、コバルトおよび/またはマンガンの炭酸塩、酢酸塩四水和物、および/または臭素を使用することができる。適切な臭素供給源を使用することによって、0.2:1.0〜1.5:1.0という臭素/〔コバルト+マンガン〕のミリグラム原子比が得られる。このような臭素供給源としては、臭素元素(Br2)、イオン性臭素(例えば、HBr,NaBr,KBr,NH4Br等)、または酸化の操作温度において臭化物イオンを生成することが知られている有機臭化物(例えば、臭化ベンジル、モノブロモ酢酸、ジブロモ酢酸、臭化ブロモアセチル、テトラブロモエタン、二臭化エチレン等)がある。分子状臭素とイオン性臭化物(ionic bromide)との全部の臭素を使用して、臭素元素と〔コバルト+マンガン〕とのミリグラム原子比が0.2:1〜1.5:1.0になるようにする。酸化操作条件下にて有機臭化物から放出される臭素イオンは、公知の分析手段によって容易に測定することができる。
【0014】
パラキシレンのテレフタル酸への酸化の場合、酸化反応器において保持される最小圧力は通常、p−キシレンと溶媒とを実質的な液相状態に保持する圧力である。溶媒が酢酸-水混合物の場合、酸化反応器中の適切な反応ゲージ圧力の範囲は約0kg/cm2〜約35kg/cm2であり、一般には約10kg/cm2〜約20kg/cm2である。酸化反応器内の温度範囲は、一般には約120℃〜約240℃、好ましくは約150℃〜約230℃である。酸化反応器中の溶媒滞留時間は、一般には約20〜約150分であり、好ましくは約30〜約120分である。
【0015】
パラキシレンをテレフタル酸に酸化するための上記プロセス条件は、メタキシレンをイソフタル酸に酸化するときにも使用することができる。
2,6−ジメチルナフタレンの2,6−ナフタレンジカルボン酸への酸化に対しては、モノカルボン酸溶媒と2,6−ジメチルナフタレンとの重量比が好ましくは約2:1〜約12:1であり、マンガンとコバルトとの mga比が約5:1〜約0.3:1であり、臭素と〔コバルト+マンガン〕との mga比が約0.3:1〜約0.8:1であり、〔コバルト+マンガン〕(コバルト元素およびマンガン元素として算出)が溶媒の重量を基準として少なくとも約0.40重量%であり、そして酸化反応温度が約185℃〜約220℃である。2,6−ジメチルナフタレンの酸化に対する最も適切な溶媒は酢酸である。
【0016】
芳香族化合物供給原料の芳香族カルボン酸への液相酸化を行うのに使用する反応器容器(reactor vessel)は、液相酸化反応に対して適用される反応条件において作動するよう設計された反応器容器である。一般には、これらの反応器はチタン等の不活性材料で造られているか、あるいはガラスやチタン等の不活性材料でライニングされている。酸化反応を高圧で行う場合、反応器は酸化反応に対して使用される圧力に耐えるよう造られていなければならない。反応器にはさらに、1つ以上の攪拌機を取り付けることができる。一般には、反応器は円筒状の設計物であり、垂直状に配置する。
【0017】
前述したように、液相酸化時に生成する熱は、反応溶媒を、反応混合物中に存在する水と共に反応混合物から気化させることによって消散させる。液体が沸騰する温度は圧力に関係するので、酸化反応の温度は、反応圧力を調節することによって制御することができる。約7〜約21kg/cm2の反応圧力では、酢酸を溶媒として使用している反応混合物、およびそれから生成される蒸気の温度は約170℃〜約210℃である。したがって、液相酸化反応によって生成される高温・高圧の蒸気はかなりのエネルギー源となり、特に年間200,000〜750,000トンの芳香族カルボン酸を製造する大規模工業プラントにおいて生成されるこうした蒸気の量を考慮すると相当のエネルギー源となることがわかる。
【0018】
本発明の方法においては、気化させた反応溶媒を、酸化反応時に生成した水から溶媒(一般には低分子量脂肪族カルボン酸)を分離することのできる装置(例えば高効率蒸留塔)に送る。理由に関しては後で詳細に説明するが、溶媒から水を分離するのに使用する装置は、酸化反応蒸気流れ中の低分子量カルボン酸溶媒の少なくとも約95重量%、さらに好ましくは少なくとも約98重量%、そして最も好ましくは少なくとも約99重量%が除去されるよう分離操作ができるような装置でなければならない。したがって、分離装置を出たガス流れは、かなり低レベルの反応溶媒しか含まず、炭素酸化物、窒素ガス、酸素ガス、および副生物を除けば、このガス流れは主として高圧スチームである。例えば、反応溶媒が低分子量カルボン酸(例えば酢酸)である場合、分離装置に入る蒸気は酢酸と水との混合物(このとき酢酸と水との重量比は約20:1〜約3:1である)を含み、分離装置を出る蒸気は、一般には約0.5重量%の未満の酢酸を、さらに好ましくは約0.1重量%未満の酢酸を、そして最も好ましくは約0.05重量%未満の酢酸を含む。
【0019】
この分離を行うのに使用する装置は、反応溶媒から水を分離できる装置であればいかなる装置であってもよいが、このような分離を行うための好ましい装置または手段は蒸留塔であり、好ましいのは高効率蒸留塔である。いかなる高効率蒸留塔も使用することができるが、好ましい蒸留塔は、高効率充填物〔例えばコッホ-フレキシパック(Koch Flexipac)やその類似物〕を収容した蒸留塔、あるいは網目バルブトレイや泡鐘トレイを収容した蒸留塔である。蒸留塔は、少なくとも30の理論段を有するのが好ましく、少なくとも50の理論段を有するのがさらに好ましい。蒸留塔は、オーバーヘッド酸化反応蒸気流れ中の低分子量カルボン酸溶媒の少なくとも95重量%、さらに好ましくは少なくとも約98重量%、そして最も好ましくは少なくとも約99重量%が除去されるよう分離操作ができるような装置でなければならない。前述したように、これらのオーバーヘッド流れにおいては、低分子量モノカルボン酸(例えば酢酸)と水との重量比は、一般には約20:1〜約2:1である。
【0020】
分離装置は、高圧にて反応溶媒を水から分離するよう設計されているのが好ましい。分離装置は、液相酸化反応の圧力に等しい圧力、あるいは液相酸化反応の圧力よりやや低い圧力で運転するのが好ましい。
【0021】
液相酸化反応によって生成する蒸気を分離装置に送るには、いかなる手段も使用することができる。例えば、パイプや他の適切な導管を使用することができる。さらに、液相酸化反応を行うのに使用する反応器容器に分離装置(例えば蒸留塔)を直接連結することもできる。
【0022】
このように、液相酸化反応によって生成される蒸気を、酸化の結果形成される副生物ガス、酸化時に形成される炭素酸化物、および分子状酸素の供給源として空気を使用した場合には窒素ガス、とともに分離装置に通して、反応溶媒のほとんどを除去する。したがって、分離装置を出たガスは通常、水(スチーム)、炭素酸化物、窒素ガス、未消費の分子状酸素、および酸化反応の副生物(例えば臭化メチル)を含む。留意すべきことに、分離装置を出たガスは高圧のままであり、したがって有用なエネルギー源となる。分離装置からのこの排ガスはエネルギーを回収するための手段(例えばエキスパンダー)に送ることができるが、先ず最初にこの高圧排ガスから腐食性および/または燃焼性の副生物質を除去してから、エキスパンダーや他のエネルギー回収手段に送るのが好ましい。排ガスから燃焼性物質を除去するためのいかなる手段も適切であるが(例えば熱酸化装置)、好ましい方法は、空気または他の分子状酸素供給源の存在下にて高温・高圧で排ガスを適切な触媒物質と接触させ、排ガス中の腐食性・燃焼性副生物を環境上許容しうる物質へ触媒作用により酸化させる、という接触酸化(catalytic oxidation)装置を使用する方法である。このような接触酸化ユニットは、酸化によって、排ガス中に存在している酸化反応残留溶媒を減少もしくは完全に除去することができ、また臭化メチル等の副生物を酸化することができる。しかしながら本発明の方法においては、使用する分離装置により、反応排ガスから反応溶媒のほとんどが除去される。したがって、排ガス接触酸化ユニットにはいる排ガスは低レベルの反応溶媒しか含まず、このため接触酸化ユニットに及ぼす負荷が小さい。これとは異なって、排ガス接触酸化ユニットに及ぼす反応溶媒の負荷が大きいと、接触酸化ユニット中の温度上昇が大きくなりすぎる。さらに、反応溶媒を燃焼させることは大きな経済的損失となる。なぜなら、できるだけ多くの酸化反応溶媒を残存させ再循環させるのが望ましいからである。一般には、接触酸化ユニットからの流出物をスクラバーに送って、酸性物質や無機物質(例えば、臭素や臭化水素)を除去する。臭素と臭化水素は、臭化メチルの接触酸化によって形成される。このような排ガス酸化のための酸化触媒は、例えばエンゲルハルト社(Engelhard Corp.)またはアライドシグナル社(Allied Signal Inc.)から市販されている。
【0023】
接触酸化ユニットおよびスクラバーからのガス状高圧流出物を予備加熱器に送って排ガスの温度を上昇させ、これによって存在している凝縮水をスチームに転化させるのが好ましい。予備加熱器を出た乾燥高圧ガス流れを、エキスパンダーまたは高圧ガス流れからエネルギーを回収するための他の手段に送る。
【0024】
高圧排ガスからエネルギーを回収するための手段(例えばエキスパンダー)は、発電機および/または機械的仕事を必要とする他の装置(例えば圧縮機)に連結するのが適切である。発電機によって生成される電気エネルギーを使用して、芳香族カルボン酸製造プラントで使用される装置を駆動させることができる。例えば、電気エネルギーを使用して、空気を液相酸化反応に加えるための圧縮機を作動させることができ、また過剰の電気エネルギーを特定の場所の電力施設に伝送することもできる。パラキシレン供給原料からテレフタル酸を製造する場合、本発明の方法において回収されるエネルギーの量は、生成されるテレフタル酸の1ポンド当たり少なくとも約0.3キロワット時、さらに好ましくは少なくとも約0.35キロワット時である。
【0025】
排ガスはエキスパンダーを出た後に凝縮され、こうして得られる水は製造プラント内の他のプロセスに対して有用である。この水は比較的高純度であり、ごく少量の溶解ガスしか含有していない。例えば、凝縮水は、高効率分離装置として使用される蒸留塔に対する還流物として使用することができる。排ガスの凝縮によって得られる水は精製工程用の溶媒としても使用することができ、この精製工程においては、粗製芳香族カルボン酸を処理して精製芳香族カルボン酸を形成させる。したがって反応排ガスから凝縮によって形成される水は、再結晶用の溶媒として、あるいは粗製芳香族カルボン酸に対して1つ以上の化学的および/または物理的処理を施すための溶媒として使用することができる。このような精製法の1つは、粗製芳香族カルボン酸の水溶液またはスラリーと水素とを、水素化触媒の存在下で高温・高圧にて接触させることを含む。このような方法については、メイヤー(Meyer)による米国特許第3,584,039号に開示されている。テレフタル酸の精製を例として、この精製手順が、固定触媒床で高温・高圧にて施されている。ダウンフロー反応器もアップフロー反応器も使用することができる。精製しようとする粗製テレフタル酸を、水または水と数種の他の極性溶媒(例えばC1〜C4脂肪族カルボン酸)との混合物中に溶解する。
【0026】
精製時の反応器の温度、したがってテレフタル酸溶液の温度は約100℃〜約350℃の範囲である。約275℃〜約300℃の範囲の温度が好ましい。
反応器の圧力条件は主として、精製プロセスを施す温度によって異なる。実際量の低純度テレフタル酸を溶解させることのできる温度が溶媒の通常の沸点より実質的に高い限り、プロセス圧力は必ず、水溶液を液相状態に保持するために大気圧よりかなり高い。一般には、水素化反応時の反応器圧力は1平方インチゲージ当たり約200〜約1500ポンド(psig)の範囲であり、通常は約900psig〜約1,200psigの範囲である。水素の分圧は通常、約30psig〜約200psigの範囲である。
【0027】
この精製工程に使用する触媒は、1種以上の活性水素化金属(例えばルテニウム、ロジウム、パラジウム、または白金)を支持体(例えば、炭素またはチタニア)に担持させた形で含む。適切な支持体は活性炭〔通常はココヤシチャコール(coconut charcoal)から、600m2/g〜1500m2/gの表面積を有するグラニュールの形態で得られる〕である。キャリヤーに対する金属の装填量は約0.01重量%〜約2重量%が適切である。粗製芳香族カルボン酸から精製芳香族カルボン酸を製造するための適切な物質が、シッケンガ(Sikkenga)らによる米国特許第5,256,817号およびシュローダー(Schroeder)らによる米国特許第出願第029,037号(1993年3月10日付け出願:米国特許第5,362,908号明細書)に開示されている。
【0028】
芳香族カルボン酸を精製するための反応器を通した後、芳香族カルボン酸の水性溶媒溶液を冷却して精製芳香族カルボン酸を析出沈殿させる。溶液を冷却する温度は、精製芳香族カルボン酸のほとんどが結晶化するような温度である。結晶化・精製した芳香族カルボン酸を、適切な固液分離装置(例えば、遠心分離器や濾過器)を使用して水性母液から分離する。精製芳香族カルボン酸のケークを純水で洗浄し、乾燥し、そして貯蔵施設に送るか、もしくは包装して出荷する。
【0029】
遠心分離器または濾過器によって分離される水性母液は、種々の不純物や反応中間体を含有しており、さらに懸濁状態の芳香族カルボン酸と溶解状態の芳香族カルボン酸を含有している。従来の方法では、この流れを廃棄物処理設備に送る。しかしながら、本発明の方法においては、この母液の主要部分を、酸化反応時に生成される水から酸化反応溶媒を分離するのに使用される分離装置に向けて送ることができる。したがって、不純物、反応中間体、および芳香族カルボン酸生成物が酸化反応混合物に戻される。不純物をさらに酸化し、中間体を有用な生成物に転化させ、そして芳香族カルボン酸を再循環して回収する。このように水素化反応からの母液を再循環することは、酸化反応溶媒から水を分離するのに使用される分離装置が蒸留塔である場合に特に有用である。蒸留塔に戻された再循環水性母液は、蒸留塔に対する還流物として作用するだけでなく、こうした再循環が、精製プロセスからの母液を酸化反応混合物に加えるための効果的な方法として作用する。したがって本発明の方法により、主要な廃棄物流れ(従来法では、廃棄物処理施設に送られる流れ)をなくすことができる。母液流れを蒸留塔に再循環させる前に、懸濁物質(存在する場合)を除去するよう処理することができる。例えば、濾過または遠心分離によって処理することもできるし、あるいはハイドロクローン(hydroclone)に通して懸濁物質を除去することもできる。懸濁物質を除去するためのこうした処理を施す前に、母液を、例えば冷却することによって処理し、蒸留塔を汚染するおそれのある溶解化合物を除去することができる。
【好ましい実施形態】
【0030】
図1は、本発明の方法を実施するための好ましい実施態様を示した概略図である。攪拌機付きの酸化反応器10において、酢酸と水(酸化溶媒として)、コバルト・マンガン酸化反応用金属、および酸化反応促進剤としての1種以上の臭素化合物(例えば臭化水素)の存在下にて、パラキシレンと空気とを反応させる。約170℃〜約210℃の温度、および約7〜約21kg/cm2の圧力にて酸化反応を行う。発熱酸化反応によって生成する熱により、反応器中の溶媒が沸騰する。気化した溶媒が、ガス状副生物(炭素酸化物、酸化反応用に導入された空気からの窒素、および未反応酸素)と共にパイプ12を通って、約45の理論段を有する高圧蒸留塔20に進む。蒸留塔においては、酢酸溶媒が反応オーバーヘッドまたは排ガスから分離される。蒸留塔は、酢酸の少なくとも99%がオーバーヘッドガスから除去されるよう設計されており、そのように操作される。蒸留塔の底部からの酢酸溶媒を、パイプ25を介してサージドラム30に送る。サージドラム30から、パイプ35を介して酢酸溶媒(幾らかの水を含有していてもよい)を反応器10に戻す。戻す溶媒の量は、酸化反応器中に適切な量の反応溶媒が保持されるように調節する。
【0031】
パイプ38を介して蒸留塔20の頂部から出た反応オーバーヘッドまたは排ガスは、約0.1重量%未満の酢酸を含有し、主として水(スチーム)であるが、さらに窒素、炭素酸化物、未反応酸素、およびガス状酸化副生物(例えば臭化メチル)を含有している。パイプ38からの排ガスを接触酸化ユニット40において処理し、このとき排ガス中の副生物(例えば臭化メチル)や残留酢酸が接触酸化される。
【0032】
接触酸化ユニット40にはさらに、接触酸化ユニットを出る排ガス中の臭素を除去するための水性スクラバー(aqueous scrubber)が取り付けられている。酸化反応オーバーヘッドから酢酸が効率的に除去されていない場合は、接触酸化ユニットにおいて酢酸が酸化され、この結果、経済的損失を引き起こす。接触酸化ユニット40を出た排ガスはパイプ42を進む。排ガスの一部がパイプ42からパイプ43に向けられ、次いで凝縮器45へ進み、そこで排ガスから水が凝縮する。冷却された排ガスがパイプ46を介してノックアウトドラム50に進む。水低含量ガス(water depleted gas)が、パイプ51を介して系外へ出る。ノックアウトドラム50からの水が、PTAスラリー容器110に進む。
【0033】
排ガス(主として水)が、パイプ42からパイプ55を介して予備加熱器60に進む。予備加熱器60においては、排ガスを、約200℃〜約235℃の温度で、且つエキスパンダー70における酢酸低含量排ガスの凝縮を防止するに足る温度に加熱する。
【0034】
予備加熱された反応器排ガスが、パイプ65を介してエキスパンダー70に入る。エキスパンダー70(反応器排ガスからエネルギーを回収する)が圧縮機75を駆動し、これによってパイプ76を介して圧縮空気が酸化反応器10に進む。エキスパンダー75はさらに発電機80も駆動し、これによってTA製造プラント内で使用するための電力が供給され、また電気を特定の場所の電力施設に伝送することもできる。
【0035】
膨張させた反応器排ガスがパイプ72を介してエキスパンダー70を出て凝縮器90に入り、ここで膨張排ガス中の水が凝縮される。凝縮器90からの凝縮水が、パイプ92を介して還流ドラム100に進む。ドラム100からの水が、パイプ102と200を介して高圧蒸留塔20に進む。塔に戻されるこのような水は、塔に対する還流物として作用する。ドラム100からの水はさらに、パイプ105を介してスラリー容器(ドラム)110に進む。
【0036】
粗製テレフタル酸、水、酢酸、触媒金属、酸化反応中間体、および副生物を含んだ反応混合物スラリーが、パイプ115を介して酸化反応器10を出て容器120に進み、そこで酸化反応混合物の温度を低下させて、溶解しているテレフタル酸を結晶化させる。容器120には、必要に応じて、酸化反応を継続させるためのエア・スパージャー(air sprager)が取り付けられている。容器120からのオーバーヘッドガスが、パイプ125を介して約45の理論段を有する高圧蒸留塔20に進む。容器120からの酸化反応スラリーが、パイプ128を介して容器130に進み、このときテレフタル酸のさらなる冷却と結晶化が行われる。容器130からの酸化反応混合物スラリーが、パイプ 132を介して分離装置135に入る。分離装置135は通常、1つ以上の遠心分離器または濾過器である。分離装置135において、粗製テレフタル酸が酸化反応母液から分離される。酸化反応母液が、パイプ138を介して分離装置135から出て、母液ドラム140に入る。触媒と酢酸を含有した母液の主要部分を、ライン145を介して酸化反応器10に再循環させる。母液の他の部分を、パイプ148を介してストリッパー150に送り、そこで酢酸を除去し、ライン152を介して容器130に送る。ストリッパー150からの残液を、パイプ154を介して廃棄処理設備に送る。
【0037】
スラリー容器(ドラム)110からの粗製テレフタル酸と水とのスラリーが、パイプ158を介して水素化反応器160に進む。反応器160においては、水中に溶解している粗製テレフタル酸を高温(例えば約260℃〜約290℃)高圧にて水素で処理して、例えば4−カルボキシベンズアルデヒドのレベルを低下させることによって粗製テレフタル酸を精製する。水素化反応器160からの反応混合物が、パイプ165を介して結晶化容器170に入る。容器170で形成された精製テレフタル酸と水とのスラリーが、パイプ175を介して分離装置180に進む。精製テレフタル酸が、パイプ190を介して分離装置180を出る。分離装置180は通常、遠心分離器または回転真空濾過器である。水、溶解・懸濁した精製テレフタル酸、ならびに種々の中間体および副生物化合物を含んだ分離装置180からの母液を、パイプ200を介して高圧蒸留塔20の頂部に再循環させる。分離装置180からの母液を高圧蒸留塔20に戻すことにより、母液中の中間体と副生物の酸化反応器への再循環が可能となり(このときこれらの物質は酸化されるか、あるいはテレフタル酸に転化される)、本発明の方法でなければ廃棄物処理施設に送られるか、あるいは回収するにはコストのかかる手順を必要とする有用なテレフタル酸の再循環が可能となり、そして廃棄物処理施設における大量の廃水処理が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の実施態様を示した概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)水、低分子量モノカルボン酸溶媒、重金属酸化触媒、および分子状酸素源を含む液相反応混合物中、0kg/cm2〜35kg/cm2の圧力及び150℃〜240℃の温度にて、芳香族化合物供給原料を酸化して、水、ガス状副生物およびガス状低分子量モノカルボン酸溶媒を含むガス状高圧オーバーヘッド流を生成する工程;
b)前記ガス状高圧オーバーヘッド流を、少なくとも95重量%の低分子量モノカルボン酸を前記ガス状高圧オーバーヘッド流から取り除くように低分子量カルボン酸から水を分離する高効率分離装置に送り、酸化反応時に形成される水およびガス状副生物を含む第2の高圧オーバーヘッド流を形成させる工程;および
c)前記工程(b)からの第2の高圧オーバーヘッド流を、前記第2の高圧オーバーヘッド流からエネルギーを回収するエキスパンダーに直接または間接に送る工程;
を含む、発熱液相酸化反応からエネルギーを効率的に回収する、芳香族化合物供給原料の発熱液相酸化反応による芳香族カルボン酸の連続製造法。
【請求項2】
前記高効率分離装置は、少なくとも30の理論段を有する高効率蒸留塔である、請求項1に記載の製造法。
【請求項3】
前記工程(b)において形成される水およびガス状副生物を含む第2の高圧オーバーヘッド流は、前記エキスパンダーに送られる前に、腐食性および/または燃焼性の副生物質を除去するように処理される、請求項1に記載の製造法。
【請求項4】
前記腐食性および/または燃焼性の副生物質は、前記エキスパンダーに送られる前に、前記工程(b)において形成される水およびガス状副生物を含む第2の高圧オーバーヘッド流から接触酸化により除去されて、ガス状高圧流出物を形成する、請求項3に記載の製造法。
【請求項5】
前記ガス状高圧流出物は、前記エキスパンダーに送られる前に、予備加熱器に送られる、請求項4に記載の製造法。
【請求項6】
前記エキスパンダーは発電機に接続されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項7】
d)液相酸化反応中に生成される反応母液から、工程(a)において形成される芳香族カルボン酸を分離して、粗製芳香族カルボン酸を形成させる工程;
e)前記粗製芳香族カルボン酸を、水を含んだ精製用溶媒中で高温・高圧にて精製して、精製芳香族カルボン酸と水を含んだ精製用母液との混合物を形成させる工程;および
f)工程(d)において形成される精製用母液から精製芳香族カルボン酸を分離し、前記精製用母液の少なくとも一部を前記高効率分離装置に再循環させる工程;
をさらに含む、請求項1に記載の製造法。
【請求項8】
前記芳香族化合物供給原料がパラキシレンであり、前記芳香族カルボン酸がテレフタル酸である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造法。
【請求項9】
アルキル芳香族化合物供給原料を、酢酸反応溶媒および水を含んだ反応混合物中にて、前記芳香族化合物供給原料の液相酸化によって芳香族カルボン酸に転化させるための請求項1に記載の製造法で使用するに適し、酸化反応によって生成されるエネルギーを効率的に回収する反応器装置であって、
芳香族化合物供給原料の液相酸化を高温にて行うのに適した反応容器;
酢酸と水との混合物を、高効率蒸留塔から出る蒸気中の酢酸含量が約0.5重量%未満となるよう分離することのできる高効率蒸留塔;
酸化反応器内での液相酸化反応によって生成される蒸気を前記高効率蒸留塔に送るための手段;および
前記高効率蒸留塔から出る蒸気からエネルギーを回収するためのエキスパンダー;
を含む前記反応器装置。
【請求項10】
前記高効率蒸留塔は、該高効率蒸留塔に送られる酢酸と水との混合物中の酢酸の少なくとも約99重量%が分離され、該高効率蒸留塔の頂部からの流出物中に存在しないように、水から酢酸を分離することができるものである、請求項9に記載の反応装置。
【請求項11】
前記エキスパンダーに接続された発電機をさらに含む、請求項9に記載の反応器装置。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2006−249106(P2006−249106A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177622(P2006−177622)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【分割の表示】特願平8−513236の分割
【原出願日】平成7年9月22日(1995.9.22)
【出願人】(503259381)ビーピー・コーポレーション・ノース・アメリカ・インコーポレーテッド (84)
【Fターム(参考)】