効率的アスピリンプロドラッグ
アスピリンは、炎症、疼痛および発熱の処置に最も広く使用されている薬剤の1つである。ごく最近、心臓発作および脳卒中の予防での用途が見出され、癌の化学的予防薬として研究されている。その有用性にも関わらず、アスピリンは、胃出血を生じるので充分に活用されていない。開発中の技術は、おそらくこの問題を取り除く。それは、薬剤と腸管内層との接触を減少させるように設計される。これによりイソソルビドアスピリネートプロドラッグ化合物が提供される。該化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有し、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿分および胃腸管の内腔で遭遇する条件に対して安定であるが、吸収の間および後に急速に分解して、アスピリンおよび/または一酸化窒素(NO)を放出する、強力なアスピリンプロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
アスピリンは、世界で最も広く使用されている薬剤の1つである。通常の使用は、全ての心臓血管リスク群における死亡リスクの低下に関連している。アスピリンは抗炎症性、鎮痛性および解熱性の薬剤であり、心臓血管疾患の治療に使用されており、結腸直腸癌、食道癌、胃癌および肺癌(例えば、Chan 2005)ならびに脳卒中、アルツハイマー病(Etminanら、2003)および他の形態の認知症を予防することにおいて役割を有することが予測される。いくつかのモデルは、50才より上の人々による毎日のアスピリン消費が、90才代まで生きる可能性を2倍にすると予測している(Morgan,2003)。
【0003】
アスピリン使用に関連した主要副作用は、胃腸管系である。アスピリンは、全患者のほぼ半数において消化不良を生じ、胃腸出血のリスクを3倍にする。内視鏡管理下試験は、心筋梗塞(MI)の予防に使用される全アスピリン用量において高い出血リスクを示し、比較的低用量でさえも示す。1つの試験において、低用量アスピリン(10〜300mg/日)の患者の10%が、12週間後に内視鏡検査による潰瘍を有し、1つの症例は10mg/日で生じた(Cryer & Feldman,1999、Cryer 2002)。いくつかの試験は、出血が治療の開始後5〜30日で始まっていることを示しており、これは適応が生じていないことを示す。重要なことに、胃腸副作用のリスクは、アスピリンの使用を、血栓性事象の高可能性を有する患者グループに限定した:ランダム集団において、重度胃腸損傷のリスクは、アスピリンで予防できる死のリスクより高い。現在のところ、癌におけるアスピリンの予防的使用について信頼できる用量関連データが存在しないが、心臓発作の予防における確立された役割に必要とされる至適用量より高いと考えられ、従って、より高い胃腸毒性の高いリスクの可能性がある。絶対リスクは低い(1〜2%)が、その広範囲かつ急速に増加する消費により、アスピリン誘発胃腸毒性は公衆衛生上の関心事になっている(Morgan,2003;Laheij 2001;Newtonら、2004)。
【0004】
アスピリン胃腸毒性の多くの原因が認識されている。消化管壁は、保護層によって、刺激の強い管腔内容物から保護されている。このバリヤーは、2つのシクロオキシゲナーゼ酵素(COX−1およびCOX−2)によって部分的に維持されている。アスピリンの心臓血管保護作用は、血小板シクロオキシゲナーゼ酵素COX−1の阻害から生じるが、その細胞保護作用は、アラキドン酸を癌プロモーターであるPGE2から癌サプレッサーであるHETEに向かわせるシクロオキシゲナーゼ酵素COX−2をアセチル化するその特有の能力に起因すると考えられる。COX−2は、GITにおける創傷治癒においても役割を担っている。アスピリンは、吸収の間に消化管を通過する際に、これらの酵素を阻害し、それによってそれらの保護機能を減少させる。従って、毒性の生化学的側面は、アスピリンによるCOX−1およびCOX−2の局所阻害に起因し、これは、胃酸分泌および血流を正常に調節するプロスタグランジン(PGE2、PGI2)の抑制を生じる。アスピリン毒性の明らかな化学的側面も存在する。アスピリンは疎水性酸(pKa3.5)である。アスピリンは、低いpH値において脂溶性であり、上皮を覆っている疎水層を崩壊させることができ、それによって、管腔内容物の接近を可能にし、刺激を引き起こし、最終的に潰瘍化を生じる。これは、生化学成分より重大な毒性原因となりうる。最近の1つの研究において、ラットへの経口アスピリン投与は胃病変を生じたが、薬剤を皮下投与した場合は、両経路からのCOXの阻害の形跡にも関わらず、胃損傷がなかった(Mahita,2006)。薬剤誘発胃腸毒性は、極めて複雑であり、頻繁に矛盾する研究結果を有する問題であるが、この特定の研究は、化学毒性が有意であることを示している。
【0005】
胃腸毒性の問題は、長年にわたり薬学的関心の的となっているが、内視鏡的試験は、従来の解決策、例えば、腸溶コーティングまた緩衝化が、充分ではないことを示している(Kellyら、1996、Walkerら、2007)。従って、アスピリンを送達する、またはその胃腸作用に対処する、新しい方法を確立することは、公衆衛生上の重要事であり、有意な商機である。
【0006】
この問題の潜在的に有用な解決策は、血漿に吸収された後まで、胃腸管でのアスピリン放出を遅らせることができるアスピリン誘導体の設計である。そのような誘導体は、正確には、プロドラッグと称すべきである。プロドラッグは、それ自体は不活性であるが、代謝時に活性剤を形成する治療薬である(Albert,1958)。アスピリンプロドラッグは、その胃毒性を抑制する手段として、長年にわたり調査されている(Jones,1985)。
【0007】
初期のアスピリンプロドラッグ理論は、例えばエステルによって、アスピリンカルボン酸をブロッキングすることが、アスピリンカルボン酸と胃粘膜との直接接触によって生じる胃毒性の化学的側面を有効に排除しうることを提示している。このモデルが正しければ、胃腸管上皮を通過する間に活性化されるアスピリンエステルは、薬剤放出が上皮細胞内で起こる場合でも、極めて低い胃毒性を示すと予測される。
【0008】
アスピリン毒性の生化学成分がより広く理解されるようになった際に、このプロドラッグ理論は洗練された。アスピリンと対照的に、そのエステルは、COXを阻害する能力を有していない。従って、それらは、消化管壁を通過する間に、保護的なプロスタグランジンの合成を妨げない。次に、吸収後に、血中のエステラーゼがエステルを分解し、アスピリンを放出させる。後に、薬剤が、体循環によって消化管に到達するが、かなり低い濃度で到達する;アスピリンは、体内で急速に代謝され、たった20分間の半減期を有する。COX依存性粘膜防御システムの有効な遮断は、かなり高濃度のアスピリンを必要とすると考えられる。これは、アスピリンが、一方のCOX酵素(COX−1)の弱い阻害物質であり、もう一方(COX−2)の極めて弱い阻害物質であるからである。言い換えれば、アスピリンは、吸収段階の間に両方の保護酵素を阻害するが、吸収後の全身への分布後に両酵素をブロックするのに必要とされる濃度に達する可能性は低い(同様の薬物動態学議論は、心臓における内皮プロスタサイクリンより血小板トロンボキサンA2に対するアスピリンの選択的阻害を説明している(Pedersen A.K.& FitzGerald G.A.1984)。
【0009】
従って、アスピリンプロドラッグエステルは、局所刺激を生じないので、低い胃腸毒性を有すると推測され、高濃度でのアスピリンの胃腸の第一通過が回避され、第二分布は、COX−2依存性保護機能を損なわずに維持する濃度における分布である可能性がある。そのようなアスピリンエステルプロドラッグの着想は、プロドラッグが保護バリヤーの通過の間は酸性でなく、それを崩壊させないので、魅力的である。さらに、それらは、上皮において活性化されるか、特にその後に血流に入った後に活性されるかに関係なく、バリヤーを調節する生化学的機構に対して小さい影響を有することも予想される。これは、アスピリン関連の有害な胃腸作用が回避されるという利点を有する。薬剤は、胃腸管を通過し終えるまで活性化されないので、より安全である(図1)。
【0010】
臨床的観点からのアスピリンの他の問題は、湿分に対して不安定であり、従って、液剤に配合できないことである。アスピリンの水溶液は、小児および老人用の医薬において特に望ましい。アスピリンの不安定性の主要原因の1つは、JencksおよびPierre(1958)によって最初に記載された自己媒触反応の形態である。アスピリンは、カルボン酸基およびアセチル基を有する。カルボン酸基は、近くの水分子を活性化して水酸化物を生成する能力を有し、該水酸化物はアセチル基を攻撃する。アスピリンのエステルを形成することによって、カルボン酸基はマスクされ、自己触媒反応に係わることができない。アスピリンエステルは、通常、アスピリンより安定であり、従って、アスピリンに適用できない種々の有用な方法で配合される可能性を有する。アスピリンエステルのこの第二の利点は、実験的に充分に確認されている。
【0011】
一方、アスピリン毒性の除去の仮定理論は、好適なアスピリンエステルプロドラッグ候補が存在しなかったので、試験されていない。これは、アスピリンエステルプロドラッグを設計するのが極めて困難だからである。パラセタモール−ベノリレートというアスピリンエステルは、ヒトへのその投与量がアスピリン放出を生じないことが明らかになるまで、約30年間にわたって市販されていた(Williamsら、1989)。
【0012】
アスピリンエステルおよび関連誘導体に関する問題は、代謝の問題である。アスピリンエステルは、体内で、アスピリンではなくサリチル酸に変換される(Nielsen & Bundgaard,1989)。アスピリンエステルは、ヒト組織および血液中で、図2に示されている可能経路によって代謝される。有効なアスピリンプロドラッグは、吸収後にアスピリンを遊離する担体基において、開裂されるべきである。アスピリンエステルの急速な加水分解は、血液および血漿中で起こる(t1/2<1分)が、所望のアスピリン−担体エステル結合(図2のB位置)においてではない。その代わりに、アセチル基が開裂し(図2のA)、得られる生成物は、サリチル酸エステル、最終的にはサリチル酸である。この生化学経路はアスピリンを生成することができない。サリチレート対アスピリンの比率は、担体基がなんであろうと、通常、99:1より大きい(カルボン酸薬剤を有するエステルを形成するのに使用されるプロドラッグのアルコール成分は、プロドラッグの専門用語においては担体として既知である)。エステルを酸薬剤から形成する場合、結合させる部分は、酸化学をブロックするが、それは、新しい存在物上に、いくつかのそれ自身の物理化学的性質をも与える(図2参照)。この問題は、製薬上の難題および商機の両方として、関心を集めている。この分野において、かなり多くの学術的文献および特許文献が存在する(Gilmerら、2002およびその中の参考文献を参照)。しかし、文献においてアスピリンプロドラッグと呼ばれている大多数の化合物は、実際は、生体外または生体内においてアスピリンプロドラッグとして機能せず、その代わりに、対応するサリチル酸エステルを放出する(Nielsen & Bundgaard,1989)。
【0013】
アスピリンエステルがプロドラッグとして機能するために、血液中での加水分解、開裂は、担体エステル結合において起こらなければならない。設計上の問題は、アスピリンをエステル化することによって、ヒト血漿の存在下において誤ったエステル基が加水分解することである。この問題は、Nielsen & Bundgaard,1989によって最初に説明された。アスピリンが血流に入った際に、そのアセチル基が、ヒト血漿における主要エステラーゼ酵素−ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)によって加水分解されて、サリチル酸の生成が生じる。アスピリンは、血液pHにおいて負に荷電され、ブチリルコリンエステラーゼは、負に荷電された基質を処理する際、実際には最も有効ではない。アスピリンをエステル化することによって、負電荷(代謝を抑制する)が除去され、アセチル基が、ブチリルコリンエステラーゼにかなりよく適した基質になる。従って、新しいエステル基の導入は、既存のアセチルエステルの代謝速度をかなり促進させる。例えば、アスピリンは、希薄血漿中で約1時間の半減期を有するが、アスピリンエステルは同じ脱アセチル過程を1分未満の半減期で受ける:中性フェニルアセテート、例えばアスピリンエステルは、ブチリルコリンエステラーゼの、最も効果的に加水分解される基質型に含まれる。基礎酵素学の観点からこれを解釈すれば、アスピリンエステルは、アスピリン自体より、その酵素に適合する。代謝が正確な位置で起こるようにするために、担体基がアセチル基に競合する相補性構造を有さなければならず、即ち、担体基が少なくともアセチル基と同様にBuChE酵素に対して誘引性の基質でなければならないことを、Bundgaardは認識していた。それ自体の加水分解を促進するが、同時に、近接アセチル基の加水分解を抑制するさらに適した担体基が考えられる。ブチリルコリンエステラーゼ酵素は、コリンのエステルの加水分解におけるその有効性から名前を取っている。NeilsenおよびBungaardは、アスピリンのグリコールアミドエステルについて研究し、それにおいて、担体基がコリンに似るように設計し、その分離がアセチル基加水分解とうまく競合できるようにした。グリコールアミドは部分的に成功しているにすぎず、大部分の成功例は、所望方向および非生産的方向の両方において(図2の経路AおよびB)約50%加水分解された。NeilsenおよびBungaardの研究は、成功のアスピリンプロドラッグが、アセチル基への優先度を超えるように、ヒト血漿エステラーゼに適合する担体基を必要とするという重要な原理を確立した。これは、極めて厳しい条件であることが分かり、該条件に対するそれらの反応は部分的に適切であるにすぎなかった。しかし、本明細書中に記載した技術は別にして、グリコールアミドは、部分的にでも、真のアスピリンプロドラッグとして記載することができる唯一の既知化合物である。
【0014】
随時採用されている別の方法は、エステラーゼがアセチル基を攻撃しうる前に分解するように、アスピリン−担体結合が不安定なエステルを設計することである。このアプローチの問題点は、アスピリンが、水に対して、およびそのアセチル基における他の求核物質による加水分解に対して、すでにかなり不安定なことである。第二の化学的に活性なエステルの導入は、アセチル基の反応性を高める作用(および、別の不安定位置を付加する作用)を有する。水のような化学刺激によって開裂を受けることが計画的に意図されたアスピリンエステルは、貯蔵の間にそのような刺激に遭遇する可能性が高く、それによって貯蔵時に分解を受けやすいという明らかな欠点を有する。これは、第一に、アスピリンエステルプロドラッグの利点の1つ(それらは湿分に対してアスピリンより安定である)を無効にする。一般的な化学刺激に反応して開裂するように設計されたプロドラッグも、それらが吸収前に出会うGITに見られる条件下において、分解する傾向がある。
【0015】
アスピリンプロドラッグ分野における関心は、いわゆる一酸化窒素(NO)−アスピリンの出現と共に高まっており、それはアスピリンエステルの一種であるが、NO−放出成分が担体基に結合している。NO−アスピリンの開発の主要な理論的根拠は、NOが粘膜防御を促進し、アスピリンによって生じた損傷を相殺することである(Fiorucci and Del Soldato,2003)。この概念は、現在、生医学界において充分に受け入れられている。一酸化窒素およびアスピリンは、相補的および時に相乗的な薬理学的作用も有し、それによって、その組合せは、アスピリン単独より広い範囲の薬理学的作用を示すと予想される。NO放出は、血流を促進し、白血球粘着を減少させることによって、アスピリン誘発胃糜爛から胃を保護するが、GMP経路によるその抗血栓特性は、アスピリンによるCOX−1阻害から生じる抗血小板作用を高める。従って、アスピリンおよび一酸化窒素の相互プロドラッグを生成するために、それらをエステルとして結合させることは合理的であると考えられる。NCX−4016(NicOx SA、France)は、NO−アスピリン薬剤の原型化合物である(特許文献1、特許文献2、特許文献2、特許文献3)。それは、生体内でNOを生成し、抗血小板作用を有する。NCX−4016は、いくつかの動物モデル(modes)において、アスピリンより高い胃耐容性を示す。NCX−4016は、1996年に前臨床開発が開始され、2002年から、心臓血管障害(例えば、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)(第II期))の処置、大腸癌予防(第I期)および癌疼痛において評価が行なわれている。
【0016】
NCX−4016は、過去10年間で最も広く推奨されている医薬開発の1つであり、重要な生物医学的進歩と考えられた(例えばLevin,2004参照)。しかし、NO−アスピリンプロドラッグとして、NCX−4016は重大な設計上の欠点を有するとみられる。アスピリンエステルプロドラッグの主要試験は、それがヒト血漿または血液中でインキュベートされた場合に、それがアスピリンまたはそのサリチル酸エステルに加水分解されるかどうかということである。NCX−4016は、置換フェノールのアスピリンエステルである。ヒト血漿におけるNCX−4016の加水分解パターンに関する公表データは存在しないが、類似のエステルであるパラセタモールというアスピリンエステル(ベノリレート、Williamsら、1989)、グイカオールというアスピリンエステル(Quら、1990)、およびフェノールのアスピリンエステル(Nielsen & Bundgaard,1989;表8も参照)については存在する。これらの化合物のいずれもが、関連生物学的マトリックス中でインキュベートされた場合に、0.5%より多いアスピリンを生成しなかった。従って、NCX−4016がアスピリンを生成することができる、または生成するはずであるという直接的根拠がない。該化合物に関する生体内試験および生体内代謝試験は、サリチレート代謝産物のみに言及している(Cariniら、2002)。さらに、NCX−4016によるCOX阻害は、アスピリンにおける場合ほど大きくない。これは重大な欠陥であり、なぜなら、血小板COX阻害は、ヒト血小板凝集を予防するためにかなり完全である必要があるからである。別の最近の研究は、NCX−4016が、アスピリンを放出せずに、その標的に直接的に作用しうることを示唆している(Corazziら、2005)。最近、ヒト組織においてアスピリンおよび一酸化窒素の両方を遊離することができる化合物を設計するために他の多くの努力がなされている。結果は、失望させるものであった。報告されている全ての化合物は、典型的なサリチレート経路によって加水分解を受け、有意量のアスピリンを遊離することができないが、それらは潜在的に一酸化窒素を放出することができる(Gilmerら、2007;Valezquezら、2005;Cenaら、2003)。
【0017】
特許文献4は、臨床的に使用されているイソソルビドニトレートであるISMNのサリチル酸エステルを記載している。記載された該化合物は、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)であり、その経皮貼布での使用可能性が議論されている。
【0018】
【化1】
【0019】
該化合物は、その抗狭心症特性および血小板洗浄特性について有用であると記載されている。化学的加水分解試験は、イソソルビド−モノ−ニトレート(ISMN)、サリチル酸、ならびに血小板洗浄活性および抗狭心症活性を示すアスピリンの生成を伴う分解を示すと報告された。しかし、ISMNAが実行可能なアスピリンプロドラッグとして作用しうるとは予想されない。なぜなら、グリコールアミド以外に他のアスピリンエステルがアスピリンプロドラッグとして作用することが示されておらず、また、これらは血漿BuChEと相補性になるように極めて意図的に設計されているからである。しかし、ISMNAは、生体外のウサギ組織において、血小板凝集の強力な阻害剤であることが分かり、後に、ISMNAがウサギ血漿エステラーゼによってアスピリンに効果的に変換されることが示された。それは、イヌにおける経口試験で試験され、該試験において、それは、下記の2つのアスピリンの薬理学的特徴において、アスピリンと比較された:トロンボキサン(血小板を刺激して凝集させる生化学物質)の生合成の阻害、および血小板凝集の機能阻害。ISMNAは、両マーカーに対して弱い作用を示し、これは、イヌにおいて少量のアスピリンを放出したにすぎないことを示している。ISMNAをイヌ血液中でインキュベートし、その加水分解を監視することによって、本発明者らは、イヌおよびウサギの血液中のエステラーゼの違いにより、それがイヌエステラーゼによってアスピリンに効果的に変換されないことを示すことができた。後に、ISMNAがヒト血漿においても生産的に加水分解されないことが明らかになった。生体外のヒト血漿溶液およびヒト血液中において、ISMNAは、>90%サリチレートおよび<10%アスピリンを生成する。同様に、ISMNAは、ヒト全血およびヒト血小板に富む血漿における血小板凝集の阻害剤として、アスピリンよりかなり低い効力である(そのIC50は、血小板に富む血漿中のアラキドン酸に対するヒト血小板凝集において、アスピリンの5μMと比較して85μMである)。その結果は、アスピリンのエステルに関して、血小板凝集またはトロンボキサン合成を阻害する能力が、アスピリンを生成する能力と相関関係にあることを教示している:非効率なプロドラッグは、血小板凝集の非有効阻害剤になる。低レベルのアスピリン放出および効力の不足は、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)がヒト用の実行可能な薬剤候補になるのを妨げる。
【0020】
特許文献5は、イソソルビドのジ−アスピリネート、およびイソソルビドの2つのモノ−アスピリネートエステル、即ち、イソソルビド−2−アスピリネートおよびイソソルビド−5−アスピリネートを開示している。特許文献5の主要な対象物であるイソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)は、試験された他の多くの以前のエステルプロドラッグ候補物質と表面上はなんら変わりはなかった。
【0021】
【化2】
【0022】
さらに、当業者は、イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)が実行可能なアスピリンプロドラッグとして機能することを予想しておらず、そして、加水分解が、アセチル基開裂、最終的にはサリチル酸以外のものを生じうると考えられる化学的または生化学的根拠を有していなかった。従って、本発明者らが本発明者ら自身の実験室において、ISDAがウサギ血小板に富む血漿中で血小板凝集を阻害することを示せたことは、極めて驚きであった。それは、イヌのグループへの経口投与後に、トロンボキサン合成に対する阻害作用も有していた(Gilmerら、2003)。アスピリン様特性は、血漿中でのISDAの加水分解がいくらかのアスピリンを生じることを示した。ISDAは、燐酸緩衝ヒト血漿溶液中でインキュベートした場合に、急速な加水分解を受けて約60%のアスピリンを生じることが示された(Gilmerら、2002)。残り40%の化合物は、非生産的サリチレート経路に沿って加水分解された。その研究は、ヒト血漿に存在する特定酵素が、イソソルビドジアスピリネート(ISDA)からのアスピリン放出を触媒することを示した。ブチリルコリンエステラーゼが、関与しているヒト血漿酵素であることが確認された。緊密に関係しているウマ血漿ブチリルコリンエステラーゼは、たった11%のアスピリンを生じた。Gilmerら(2001、2002)、は、さらに、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)およびイソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)の加水分解特性および生物学的作用も記載している。
【0023】
ジアスピリネートエステルISDAならびにNielsenおよびBungaardのグリコールアミドエステルは、ヒト血漿中でアスピリンドラッグとして有意な程度に作用することができる化学文献中の唯一のエステルである。アスピリンを加水分解生成物として生成しない化合物は、サリチル酸プロドラッグとしてより適切に分類される。これに関連して、例えば、ISMNAはウサギ組織においてのみアスピリンプロドラッグであるが、ヒト血液中ではサリチル酸プロドラッグである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開公報第95/030641号
【特許文献2】国際公開公報第97/16405号
【特許文献3】国際公開公報第00/44705号
【特許文献4】国際公開公報第94/03421号
【特許文献5】国際公開公報第98/17673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本質的な治療的潜在能力により、そして、アスピリンおよび一酸化窒素の両方を放出できる化合物への要求により、よりすぐれたアスピリンプロドラッグ化合物が緊急に必要とされている。一酸化窒素を放出するアスピリンエステルは、第一に、主要な血漿加水分解モデルにおいて、アスピリンへの変換を受けることができるエステルでなければならない。特に、水性加水分解およびα−キモトリプシンに抵抗し、しかも、ヒト血漿の存在下において急速な加水分解を受けて、アスピリンおよび潜在的に他の薬理学的活性成分、特に一酸化窒素を遊離する、アスピリンプロドラッグ化合物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明により、一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物を提供する:
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環である]。
【0029】
本発明は、本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩および/または水和物にも関する。
【0030】
本明細書に使用される「アルキル」という用語は、一般式RC(O)R、またはより具体的には−OC(O)CnH2n+1のあらゆる一連の一価の基を包含し、それは脂肪族炭化水素から誘導されるエステルである。アルキルエステル鎖のアルキル鎖は、直鎖または分岐鎖であってよく、それにおいて、メチル基(−CH3)はC1アルキル基を表わし、エチル(−C2H5)はC2アルキル基を表わし、プロピル(−C3H7)はC3アルキル基を表わし、ブチル(−C4H9)はC4アルキル基を表わし、フェニル(−C5H7)はC5アルキル基を表わす。
【0031】
「アルコキシエステル」という用語は、一般式RC(O)OR、またはより具体的には−OC(O)OCnH2n+1を有する基を包含し、ここで、CnH2n+1は直鎖または分岐鎖であってよいアルキル鎖であり、それにおいて、メチル基(−CH3)はC1アルキル基を表わし、エチル(−C2H5)はC2アルキル基を表わし、プロピル(−C3H7)はC3アルキル基を表わし、ブチル(−C4H9)はC4アルキル基を表わし、フェニル(−C5H7)はC5アルキル基を表わす。
【0032】
「シクロアルキルエステル」という用語は、前記の式のCnH2n+1基が、環式アルキル基、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン等であることを意味する。
【0033】
「アリールエステル」という用語は、RC(O)Arを意味し、ここで、Arは、単純芳香族環から誘導される任意の官能基または置換基、例えば、ベンゼン環、トルエン、キシレン、安息香酸、ベンゾエート、ニコチネート、クロロベンゼンまたは他のハロベンゼン基を表わす。
【0034】
「5員複素環のエステル」という用語は、−C(O)ORringによって表わされる任意のエステル官能基を表わし、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環である。好適には、Rringは下記から成る群から選択されうる:チオフェン、チアジアゾリン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、ピラゾール、4,5−ジヒドロピロール、イミダゾリジン−2−オン、ピラジン、4,5−ジヒドロチオフェンおよびイミダゾリジン−2−チオン。好ましいRringは、下記の複素環である:
【0035】
【化4】
【0036】
本発明の好ましい−C(O)ORring基は、イソ−オキサゾールオエート、オキサゾールオエート、またはチアジアゾールオエートである。
【0037】
好適には、全てのこれらの化合物は、ヒト血漿において、ある程度、アスピリンを活発に放出する。ある化合物は、他の化合物より高い活性を有することが示されているが、ある化合物はYとして選択される置換基の性質に依存してより低い活性を有する。ある化合物は、アスピリンの他にNOを放出する。
【0038】
好適には、好ましい本発明化合物は、ヒト血漿中で放出される15%アスピリンより高いか、またはそれに等しい活性を有する。
【0039】
本発明化合物の一酸化窒素放出基は、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステル、またはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含みうる。
【0040】
1つの実施形態において、イソソルビドアスピリネート化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有する:
【0041】
【化5】
【0042】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、C1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、アリールエステルまたはC1〜C8アルキルアリールエステル(それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい)である]。
【0043】
しかし、最も好ましいのは、オキサゾールオエート、イソキサゾールエートおよびチアジアゾールオエートから成る群から選択されうる5員複素環を含むエステルを有する化合物である。
【0044】
好ましい実施形態において、イソソルビドアスピリネート化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有する:
【0045】
【化6】
【0046】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0047】
本発明により、一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物を提供する:
【0048】
【化7】
【0049】
[式中、Yは、
−C(O)ORringであり、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい]。
【0050】
好ましい実施形態において、一酸化窒素放出基は、下記から成る群から選択されうる:−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2。
【0051】
特に、好ましい化合物は、一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物を包含する:
【0052】
【化8】
【0053】
[式中、Yは、
【0054】
【化9】
【0055】
であり、ここで、XおよびYは独立に、O、SおよびNから選択される]。
【0056】
他の実施形態において、一般式(I)で示される一般構造を有する化合物を提供する:
【0057】
【化10】
【0058】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0059】
他の好ましい化合物は、一般式(I)で示される一般構造によって示される:
【0060】
【化11】
【0061】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0062】
他の好ましい化合物は、一般式(I)で示される一般構造によって示される:
【0063】
【化12】
【0064】
[式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0065】
さらに他の好ましい化合物は、一般式(I)で示される一般構造によって示される:
【0066】
【化13】
【0067】
[式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0068】
好ましい実施形態において、イソソルビドアスピリネート化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0069】
【化14】
【0070】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。ベンジルオキシ置換基がアリール環上に使用される場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0071】
特に好ましい実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0072】
【化15】
【0073】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。ベンジルオキシ置換基がアリール環上に使用される場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0074】
さらに他の実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0075】
【化16】
【0076】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−(CH2)nONO2(n=1〜8)、C3〜C10シクロアルキルエステルまたはハロアルキルエステルのうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。ベンジルオキシ置換基が化合物上に存在する場合、それはo−ベンジルオキシであるのが好ましい。
【0077】
好適には、本発明化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0078】
【化17】
【0079】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ(alkyoxy)、o−ベンジルオキシ、−(CH2)nONO2(n=1〜8)、C3〜C10シクロアルキルエステルまたはハロアルキルエステルのうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。
【0080】
ハロアルキルエステル基が化合物の一部分である場合、ハロ置換基は、Cl、BrまたはFであってよい。
【0081】
化合物がハロアルキルエステルを含む実施形態において、ハロ置換基は、好適には、Cl、BrまたはFである。塩素および臭素が最も好ましい置換基である。しかし、Br置換基を有するハロアルキルエステルが特に好ましい。
【0082】
好適には、本発明化合物は、ヒトカルボキシエステラーゼの活性部位に高度の相補性を有し、それによって理想的経路に沿って加水分解を進め、アスピリンを遊離する。
【0083】
好都合には、該化合物は、2つ以上のヒト酵素によって特異的に活性化でき、なぜなら、患者が、一方に関して異常酵素機能を有する場合、おそらく他方が補われ、アスピリンを放出するからである。
【0084】
さらにアスピリンプロドラッグ化合物は、胃腸管の内腔に見出される条件下において安定であるが、血流への吸収後にアスピリンに急速に分解される。
【0085】
他の利点がこれらの化合物から得られ、なぜなら、それらは湿分に対して安定であり、従って、湿分に遭遇しうる配合において成功裡に使用できるからである。湿分安定性アスピリンプロドラッグは、溶液および経皮形態における配合の可能性を包含する多くの理由から有利である。アスピリンの経皮送達に関する問題の1つは、皮膚からの湿分が、貼付剤中のアスピリン貯留物の加水分解を生じることである。好適には、湿分安定性化合物は、貯蔵のために保護防湿性薬学的包装を必要としない。
【0086】
好ましい実施形態において、基Yは、下記から成る群から選択されうる:
【0087】
【化18】
【0088】
本発明化合物は、一般式(I)におけるYがこれらの特定構造のいずれかによって表わされる場合、ヒト血漿において、幾分それぞれ異なる程度にアスピリンを放出し、従って、全て活性である。
【0089】
しかし、下記から成る群:
【0090】
【化19】
【0091】
から選択されるY置換基を有する化合物が特に好ましく、なぜなら、これらの基のいずれかを含む化合物は、ヒト血漿において15%アスピリン放出より高いか、またはそれに等しい活性を示すからである。
【0092】
他の好ましい実施形態において、本発明化合物は、15%レベルより高いかまたはそれに等しいアスピリン放出活性を有する化合物を含み、該レベルは、37℃、pH7.4(燐酸緩衝液)の緩衝ヒト血漿への候補エステルの添加後に、ピークアスピリン生成においてHPCLによって測定される初期エステル濃度(モル)のパーセンテージとしてのアスピリンの量に基づく。
【0093】
特定の実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0094】
【化20】
【0095】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、メチル、ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−OAc、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。ベンジルオキシ置換基をアリール環上に使用する場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0096】
特定の実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0097】
【化21】
【0098】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、−Cl、メチル、ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。ベンジルオキシ置換基をアリール環上に使用する場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0099】
最も好ましいイソソルビドアスピリネート化合物は、下記の構造の1つを有する:
【0100】
【化22】
【0101】
【化23】
【0102】
または、イソソルビドアスピリネート化合物は、下記から成る群から選択される任意の1つの構造を有しうる:
【0103】
【化24】
【0104】
本発明の他の態様において、一般式(II)で示される一般構造を有する薬剤用担体化合物を提供する:
【0105】
【化25】
【0106】
[式中、
Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり;
Xは、薬剤分子である]。
【0107】
この態様において、好ましい実施形態は、一般式(II)で示される一般構造を有する薬剤用担体化合物を提供する:
【0108】
【化26】
【0109】
[式中、
Yは、C1〜C8アルキルエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、またはC1〜C8アルキルアリールエステルであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく;
Xは、薬剤分子である]。
【0110】
本発明の好ましい担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0111】
【化27】
【0112】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0113】
他の実施形態において、本発明の担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0114】
【化28】
【0115】
[式中、Yは、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
ハロアルキルエステル官能基を含む化合物において、ハロ置換基は、Cl、BrまたはFであってよいが、Brが特に好ましい。
【0116】
好都合にも、本発明のアスピリンプロドラッグ化合物は、水性加水分解およびα−キモトリプシンに抵抗し、しかも、ヒト血漿の存在下に急速加水分解を受けて、アスピリンおよび潜在的に他の薬理学的活性成分を遊離する。好ましい本発明化合物は、アスピリンの他に、一酸化窒素を遊離する。
【0117】
従って、この態様において、本発明化合物は、より適したアスピリンプロドラッグ化合物、特に、アスピリンおよび一酸化窒素の両方を放出することができるプロドラッグ化合物を提供するので有利である。アスピリンおよび一酸化窒素(nitrous oxide)(NO)の両方を放出することができるプロドラッグデバイスが特に有利である。そのような化合物は、それらの個別成分より低い毒性であるが、より広い範囲の薬理学的作用および効能を有する可能性が高く、なぜなら、アスピリンおよび一酸化窒素は、心臓血管疾患および癌用途において相乗効果を有するからである。
【0118】
一酸化窒素放出アスピリンエステルは、まず第一に、主要血漿加水分解モデルまたは類似の生物学的関連モデルにおいて、アスピリンへの変換を受けることができるエステルでなければならない。本発明の担体は、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステルまたはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含む一酸化窒素放出基を有しうる。
【0119】
本発明のプロドラッグが、典型的な消化プロテアーゼの存在下において、および粘膜CACO−2細胞に見られる酵素に対して、安定であるが、ヒトエステラーゼ、特にBuChEおよびCE−2によって、アスピリンに加水分解しうるという事実により、さらなる利点が得られる。この態様において、担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0120】
【化29】
【0121】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10であり;
Xは、薬剤分子である]。
【0122】
好適には、本発明の担体は、それらのヒトエステラーゼ活性部位との相補性により、加水分解を正確な位置に向ける。
【0123】
特に好ましい実施形態において、本発明の担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0124】
【化30】
【0125】
[式中、Yは、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
ハロアルキルエステル官能基を含む好ましい化合物において、ハロ置換基は、Cl、BrまたはFであってよいが、Brが特に好ましい置換基である。
【0126】
他の有利な実施形態において、担体化合物は、下記から成る群から選択されうる:
【0127】
【化31】
【0128】
[式中、Xは、プロドラッグ形態で運搬される薬剤分子である]。
【0129】
本発明の他の態様において、本明細書に記載されている担体化合物を含んで成る薬剤化合物を提供する。
【0130】
さらに他の態様において、本発明は、先に記載した化合物、および少なくとも1つの医薬的に許容される担体または賦形剤を含んで成る医薬組成物を提供する。
【0131】
特定の態様において、本発明の化合物および/または組成物を生体内または生体外で使用して、アスピリンが作用を有しないレベルで構成的血小板グリコール−タンパク質発現を減少させうる。
【0132】
本発明の化合物および/または組成物を、生体内または生体外で使用して、アスピリン様作用を誘発することもできる。アスピリン様作用は、例えば、抗血小板活性の減少、またはCOX生成物、例えば、トロンボキサンA2またはマロンジアルデヒドの阻害である。好都合には、好ましい本発明化合物は、アスピリン自体より強力であり、ヒト血小板凝集のより優れた阻害剤であり、COX下流生成物(例えば、トロンボキサンA2およびマロンジアルデヒド)ならびに構成的血小板グリコ−タンパク質発現のより優れた阻害剤である。
【0133】
他の態様において、本発明化合物は、心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症を包含する疾患または症状または徴候の処置のための医薬の製造に使用できる。
【0134】
アスピリンは、吸収の間に腸壁の細胞を化学的に刺激することによって、およびその保護バリヤーの分泌を妨げることによって、胃出血を生じる。この問題の解決法は、吸収過程において後に除去されるマスキング基を化学的に結合させることによって、アスピリンを一時的に不活性にして、胃腸管の脆弱面から離すことである。この技術の開発における主要課題は、血液中で予想通り正確に除去されるマスキング基を見出すことであり、これは他に誰も克服できていない障害であった。本質的に、本発明は、体によって活性化されるアスピリンの不活性形態を提供する。
【0135】
設計をさらに改良して、一酸化窒素先駆物質を担体基に組み込んで、アスピリンと共にNOを放出することができるさらなる化合物を提供する。従って、そのような二重プロドラッグは、潜在的に、2つの異なるレベルで病理学的過程を妨げる。ニトロ−アスピリン法は広く受け入れられつつあるが、本明細書に記載されている方法は、ヒト組織においてアスピリンおよびNOの両方を立証可能に生成する唯一の方法である。
【0136】
ヒト血液中におけるイソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA、表2の16)の加水分解を、それがどのようにアスピリンを生成するかを見出すために調査した。
【0137】
イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA、16)は4つのエステル基を有し、1つは、2個の各アスピリン成分上に位置し、もう1つは、これらの各成分をイソソルビドコアに結合させている。そのアスピリン生成データの直接的解釈は、位置2または5における2個のアスピリネートエステルの1つが、エステラーゼによって直接的にISDAから分離して、アスピリンを遊離するということであった。これは部分的に真実であるが、実際のメカニズムはより興味深く、予期しないものであることが明らかになった。ISDAにおける4個のエステル基は、潜在的に複雑な一連のエステル代謝産物を伴うエステラーゼによる加水分解を受けやすい。最終的に、これらの全てがイソソルビドおよびサリチル酸に加水分解される。加水分解カスケードをクロマトグラフィーによって追跡することができ、それは、代謝産物が発生し、崩壊するのに伴って、各代謝産物の分離および測定を可能にする。多くの実験を行ない、該実験において、ISDAを生物学的培地に導入し、反応を連続的時点で停止し、代謝産物混合物をHPLCによって測定した。時間経過に伴うこのデータのプロットを、加水分解プログレス曲線と称する。ISDAのプログレス曲線を、図3Aおよび3Bに示す。曲線は、時間の経過に伴うISDAの消失およびアスピリンの出現を示す。これらの曲線の注意深い調査は、次の2つのことを示している:親ISDAが消失した後に、アスピリン濃度が増加し続けた;および、第二に、そのピークが、他の代謝産物の増加および消失後に現れた。これは意外かつ極めて重大な発見であり、なぜなら、それは、ISDAがヒト血漿に添加された後に現れるアスピリンが、IDSA自体からではなくISDAの代謝産物から放出されることを示したからである。従って、ISDAの潜在的代謝産物の全てが独立に合成され、それらを血漿中でインキュベートし、HPLCによってそれらの加水分解を追跡することによって、HPLCによりアスピリンプロドラッグとして評価された。これらの1つであるイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)は、主要ヒト血漿モデルにおいて現在までに知られている最も有効なプロドラッグであることがわかった(図4AおよびB)。ヒト血漿において、それは、担体イソソルビド−5−サリチレートと共に、大部分がアスピリンに変換される。それは、精製BuChE溶液中で、ほぼ排他的にこの経路に沿って、加水分解される(図4B)。
【0138】
これらの結果は全体的に、イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA、16)が、真アスピリンプロドラッグ、その代謝産物イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)の、先駆物質として作用することを示した。
【0139】
ヒト血漿BuChEが、先ず、イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)のアスピリネートのアセチル基(位置5に結合している)を選択的に除去し、それによってイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)を生成することが見出された。次に、ヒトBuChEは、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)からアスピリンを効果的に分離する。ISDAは、他の並行経路に沿った加水分解を受け(図5は、明快にするための、これの概略版である)、それはイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)ほど効果的にアスピリンに代謝されず、生物学的アッセイにおいても強力でないことがわかった。ISASは、血漿中で85%のアスピリン放出率(t1/2 2分)を有するが、ISDAは、アスピリン経路に沿って約60%加水分解され、残りの40%は非生産的サリチレート経路に沿って進む。実際には、ISDAは結合した2個のアスピリン分子を有するので、その全体的歩留まりは厳密には30%である。特定の酵素阻害剤および精製酵素溶液を使用して、我々は、ISASの独特に正確な活性化に関与しているヒト血漿中の酵素を、ブチリルコリンエステラーゼとして明解に確定することができた(例えば、図5)。
【0140】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)は、特許文献5に記載されていない。それは潜在的代謝産物であるが、それがプロドラッグになることは誰も予想できなかった。ISDAの他の実際のまたは潜在的な代謝産物(例えば、5−アスピリネート、2−アスピリネートまたは2−サリチレート−5−アスピリネート)をそれぞれ合成し、特性決定した。これらはいずれも、ヒト血漿においてアスピリンプロドラッグとして作用しなかった。
【0141】
好都合には、ISAS(2)は、コラーゲン(図6)、ADPおよびアラキドン酸によって誘発されるヒト血小板凝集の阻害剤としてアスピリンより有意に強力であり、従って、トロンボキサンA2およびマロンジアルデヒドを包含するCOX下流生成物を阻害する。それは、さらに、アスピリンが作用を有しない濃度における構成的グリコ−タンパク質発現を減少させる。イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)のアスピリンより高い効力は、薬剤開発の点から望ましいが、困惑させるものであり、継続的調査の対象である。さらに、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)は、その薬理学的作用を発揮するために、エステラーゼによって活性化される必要があることも示され、それは内因性生物学的活性を有さず、従って、プロドラッグである。ISASはヒト血液中で加水分解を受け、<2分の半減期を有するが、それは、典型的な消化プロテアーゼの存在下において、およびCACO−2細胞に見られるエステラーゼに対して安定である。それは、ヒト全血中においてアラキドン酸に対して血小板凝集を阻害し(インピーダンス法)、17μMのIC50を有する。この方法におけるアスピリンのIC50は、25μMである。ISASは、生体内でのTXA2合成(TXB2/全血)および洗浄血小板によるMDA合成を妨げるのにも有効である。
【0142】
酵素試験は、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)が、次の2つのヒト酵素によって特に活性されることを示している:ヒト血漿中のBuChE、および、それほど急速でないが同じ経路A/B比を有し、腸管上皮ミクロソームに存在するヒトカルボキシエステラーゼ−2(CE−2)。2つの酵素がイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)からアスピリンを放出できるという観察は、臨床的に重要性を持ち、有利である:患者が一方に対して異常酵素機能を有する場合、他方が補ってアスピリンを放出する可能性が高い。設計に関する他の利点は、化合物が胃腸管の内腔に見られる条件下に安定であるが、吸収後に、充分に特性決定された代謝産物(サリチル酸、イソソルビド、そして当然アスピリン)に急速に分解することである。(これに関して、CE−2およびBuChEによる基質選択性の類似は、極めて意外である。)化合物の他の利点は、その担体が最終的にサリチル酸およびイソソルビド(無害の、または医薬的に充分に特性決定された化合物)に代謝されることである。ISASはそれ自体で有意な医薬的長所を有するが、その発見はより一般的に価値のあるものを示す。ISASの発見、および血漿におけるその生成およびアスピリン放出についての動態モデルが、我々の最近のレポート(Moriartyら、2008)に記載されている。
【0143】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)は、アスピリンプロドラッグとして作用し、なぜなら、プロドラッグ分子のイソソルビド−5−サリチレート部分が、ヒトカルボキシエステラーゼの活性部位に高度の相補性を有するからである。それが極めて急速な加水分解を受けるのはこのためである。ISASのイソソルビド−5−サリチレート部分または担体基は、アスピリンからのその分離をうまく促進し、それと同時にアスピリンアセチル基の加水分解を抑制する。それは、新しい極めて有効な担体型を、アスピリンおよび潜在的に他のカルボン酸薬剤に導入する。これは、本発明に重要な洞察である。
【0144】
【化32】
【0145】
イソソルビド−5−サリチレート構造を、そのエステラーゼ相補性を維持しながら、向上した医薬特性のために変えることができるかどうかという疑問が生じた。さらに、ISMNA(それにおいて、5−サリチレートがニトレートで置き換えられている)はヒト血漿においてアスピリンプロドラッグではないので、5位置での置換のパターンがアスピリン放出に重大な意味を持つという根拠があった。結論は、5−ニトレートが生産的ヒトエステラーゼ結合に適合性でないということである。約25の化合物を調製し、それらにおいて、5位置を意図的に変化させて、担体基のアスピリン放出特性における5−基の影響を試験した(図7および表2)。新規アスピリンエステルを、ヒト血漿溶液中でインキュベートし、血漿溶液に添加した化合物のモル量に対して生成されたアスピリンの量を測定することによって試験した。エステルは、特徴的に急速な加水分解を、AおよびB経路に沿って種々の程度に受け、あるものはISASの生産性に近い放出率を有していた(表2および図7)。
【0146】
一連の25のエステルのアスピリン放出特性を表2に示し、構造式としてのいくつかの選択例をアスピリン放出(%)と共に図7に示す。5位置の基が、加水分解の方向に顕著に影響を与えることが示された(図8、および図9中の例)。
【0147】
【化33】
【0148】
非置換化合物(イソソルビド−2−アスピリネート、17)はアスピリンプロドラッグではなく、5−置換がアスピリン放出に必要とされることを示している。一般に、有意なアスピリン放出が、5−ベンゾエートおよびニコチネートエステルによって生じることが見出された。脂肪族エステルで置換された化合物の場合の優性加水分解部位は、通常のアセチルエステルであった(表2の化合物4、5、23参照)。フェニル基が2位および3位で置換されたアリールエステルが、最も生産的であることとも見出された。例えば、化合物1は生産的アスピリン経路に沿って約60%に加水分解を受ける。
【0149】
【化34】
【0150】
見出された最も有効な化合物はISASであり、それは精製ブチリルコリンエステラーゼの存在下にアスピリンへのほぼ完全な変換を受け、ヒト血液中で約80%であった。
【0151】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)、ISDAの代謝産物は、ヒトエステラーゼの存在下にアスピリンプロドラッグとして作用する置換5−芳香族エステル化合物の新しいファミリーに属する。オルトまたはメタ位でさらに置換されたベンゾエート化合物がそのように成功している理由は不明であるが、酵素の活性部位における好都合な配置による可能性が高い。酵素攻撃の位置のこの種の遠隔制御は異例である。
【0152】
【化35】
【0153】
このように、特定のイソソルビド系担体基は、正確な位置で加水分解を促進し、ヒト血液中でのアスピリン遊離を生じることが見出された(上記b)。特定の置換イソソルビド化合物は、ヒト血液中でインキュベートした場合に、アスピリンを有意量で放出する。選択的加水分解は、担体基と、血漿に存在するヒトブチリルコリンエステラーゼ、および腸管上皮におけるCE−2との、極めて特異的な相互作用によって生じる。
【0154】
アスピリンのイソソルビドエステルが、アスピリンプロドラッグとして作用しうることが認識されたことによって、5位置が適切に置換されることが本発明に極めて重要であることが分かった。最も有効な置換基は5−アリールエステルであり、それはベンゼン環の−2または−3位置でさらに置換されている。そのような基は、アセチル基加水分解ではなく、遠隔イソソルビド−2位置でのアスピリン放出を促進する。化合物2は、最も有効であり、プロドラッグについて最も研究され、それは、アスピリンプロドラッグ用の新しい有効担体種の同定に導いている。しかし、本発明は、5位置において異なる置換がなされているが、血漿酵素の存在下に等しく効果的にアスピリンに変換される他の化合物も包含し、予期している。特に、アスピリンおよび一酸化窒素NOの両方を放出することができるプロドラッグに、強い商業的および学術的関心が持たれている。
【0155】
生産的加水分解のための構造的必要条件(またはエステラーゼ部位内の指向)が同定されたので、アスピリンおよび一酸化窒素の両方のプロドラッグを設計する努力が続けられている。SARは、イソソルビド−5−ベンゾエート担体基が、その加水分解指向特性に影響を与えずに、ベンゼン環上で硝酸エステルでのさらなる置換を許容しうることを示唆した。残念なことに、芳香族硝酸エステルは、オルト−ニトロフェノールに容易に不均化を起こす不安定なフェノールの硝酸エステルである。それに代わって、下記のパターンに適合するイソソルビド−2−アスピリネート−5−ベンゾエートの多くのニトロキシメチル誘導体が生成された。これらは、表2の化合物20〜23を包含する。
【0156】
【化36】
【0157】
これらは、主要ヒト血漿加水分解モデルにおいて、ヒト血漿中でアスピリンを生成する能力について試験された。前記のパターンと一致して、オルト−およびメタ−置換ニトロキシメチル化合物は、ヒト血漿においてアスピリンを遊離することが見出された。パラ置換化合物からのアスピリン放出はなかった。成功している化合物は、明らかにCE−2酵素に媒介されて、ヒト腸ミクロソームの存在下においても有意量のアスピリンを放出し、最も重要なISASと同じパターンに従っていた(図9)。これの利点は、患者が低BuChE活性を有している場合に、CE−2が一酸化窒素供与成分と共にアスピリンを放出しうることである。化合物20は、生体外で、コラーゲン誘発血小板凝集について試験され、凝集の阻害においてアスピリンより強力であることが見出された。それは、PRPにおけるADP誘発血小板凝集の、より強力な阻害剤でもある。しかし、それはNOも遊離するので、アスピリンが作用を有しない病理学的刺激に対する凝集を阻害すると予想される。アスピリンは、トロンボキサン依存性凝集、即ち、ただ1つの刺激に対する血小板凝集だけを阻害する。それは、高用量コラーゲン凝集、またはADPに対する凝集において、ほとんど作用を有しない。一酸化窒素は、アスピリンの胃毒性を減少させ、潰瘍治癒を促進することが示されている。アスピリンおよび一酸化窒素の両方を遊離することができる化合物は、癌予防、治療、および心臓血管疾患処置において、有意な潜在能力を有する。糖タンパク質インテグリン受容体GPIIb/IIIaの活性化は、血小板凝集が生じるのに極めて重要である。さらに、α顆粒から血小板表面膜へのP−セレクチンの移動は、それぞれ、血小板接着の基礎となる。我々は、種々の濃度の化合物を使用して、凝集時のこれらの受容体を測定した。図32〜36は、pro−asaおよびニトロ−asaが、GPIIb/IIIaの活性化およびP−セレクチンの移動を有意に減少させたことを示している。GPIIb/IIIaの活性化は、凝集を刺激するかまたは阻害する経路の被制御動的相互作用である。一酸化窒素は、主要阻害剤経路を媒介し、GPIIb/IIIa機能を調節する。アスピリンは、ISAS(2)または硝酸エステル化合物31〜32と同じ濃度において、血小板活性化を阻害できなかった。
【0158】
本発明は、本発明化合物を含んで成る医薬組成物も提供し、該組成物は、経口投与用に、カプセル剤または錠剤として、または経皮投与用に、例えば皮膚貼付剤の形態に適合させうる。該組成物は、坐剤または水性配合物の形態であってもよい。
【0159】
本発明は、抗血小板活性および/または他のアスピリン型活性、例えば、解熱および/または抗炎症活性を達成する化合物の使用も提供する。
【0160】
本発明の特に好ましい実施形態において、組成物は、他の医薬的存在物、特に、治療用油、一般に魚油、例えばタラ肝油、または植物油、例えばイヴニングプリムローズ油を含有する。この場合、組成物は、活性成分を含む充填剤を含有する保持シェルを有するカプセルの形態でありうる。充填剤は、懸濁化剤、例えば、1つまたはそれ以上のコロイド状二酸化珪素、水素化植物油(任意に、蜜蝋との組合せ)、高融点部分グリセリド、および/またはレシチンから選択されるような懸濁化剤を包含しうる。充填剤は、抗酸化剤、例えば、1つまたはそれ以上のD−アルファトコフェロール、D−アルファトコフェロールアセテート、混合トコフェロールおよびアスコルビン酸から選択される抗酸化剤も包含しうる。シェルはゼラチンシェルであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、アスピリン毒性除去理論を示す。
【図2】図2は、成功のアスピリンプロドラッグが、エステルBにおいて、O−アセチル基Aより高い率で加水分解を受けなければならないことを示す。
【図3】図3Aは、10%ヒト血漿(pH7.4、37℃)におけるISDAの加水分解についてのプログレス曲線を示す:連続的時点においてHPLCによって測定された親およびいくつかのその代謝産物の濃度を示す:ISDA(●)、アスピリン( )、サリチル酸(○)、イソソルビド−2/5−アスピリネート−2/5−サリチレート(□)、イソソルビドジサリチレート(◇)およびイソソルビド−5−サリチレート(△)。最大アスピリンは親ISDAの消失に関して遅延し、代謝産物がその生成に関与していることを示す。図3Bは、ISDA曲線を除いてプロットを再度示す。
【図4】図4Aは、50%ヒト血漿(pH7.4)中、37℃におけるイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレートISAS(2)の加水分解についてのプログレス曲線を示す:ISAS(□)、イソソルビドジサリチレート(◇)、イソソルビド−5−サリチレート(△)、アスピリン( )およびサリチル酸(○)。図4Bは、精製ヒト血清BuChE、pH7.4および37℃での、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレートISASの加水分解についてのプログレス曲線を示す:イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(□)、イソソルビド−5−サリチレート(△)、アスピリン( )、サリチル酸(○)およびイソソルビドジサリチレート(◇)。
【図5】図5は、ISDAが、先ず、5−アスピリネートのアセチル基において加水分解を受け(70%)て、ISAS(2)を放出し、これが、主にアスピリンおよびイソソルビド−5−サリチレートへの加水分解を受けることを示す。血漿コリンエステラーゼ(BuChE)による生産的介入の主要点が、赤で示されている。これはエステラーゼに対して比較的安定であることに注目すべきである。ISDAの加水分解は、非生産的並行経路に沿っても進み(30%)、該経路はアスピリンを放出せず、その代わりにイソソルビドおよびサリチル酸を放出する。
【図6A】図6Aは、生体外でのISAS(2)およびアスピリン(ASA)による、コラーゲン誘発ヒト血小板凝集の阻害を示す濃度反応曲線を示す。凝集を50%阻害する薬剤濃度(IC50)も示されている。ISASは、凝集においてASAより有意に強力である(データは平均±SD、p<0.01、n=4)。
【図6B】図6Bは、ISAS(2)、一酸化窒素放出プロドラッグ31、32、33およびアスピリンについての相対阻害曲線を示す。
【図6C】図6は、ISAS、化合物31〜33またはアスピリンと共にインキュベーションした後の、PRPの%凝集を示す。この図は、5つの化合物、アスピリン、ISASおよび3つの異性硝酸塩31、32、33の、異なる3つの濃度での、コラーゲンに対する凝集のパーセント阻害ではなくコラーゲンに対するパーセント凝集を示す(***P<0.05)。
【図7】図7は、表2からの、ヒト血漿溶液中でインキュベートした選択的5−エステルの例を示す。%値は、サリチル酸エステルを遊離する部位A、およびアスピリンを遊離する部位Bで生じた加水分解の量を表わす。この図は、遠隔位置5のエステル構造への、位置2でのアスピリン放出依存性を示す。
【図8】図8は、5−置換基「R」が加水分解経路に決定的に影響を及ぼすことを示す。
【図9】図9は、ヒト腸管上皮からのミクロソームの存在下にインキュベーションした後の、イソソルビド−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)−ベンゾエートの消失、ならびに、アスピリン、サリチル酸、およびニトレート置換イソソルビド担体の遊離を示す。
【図10】図10は、保護サリチル酸へのカップリング、次に脱ベンジル化による、ISMNからのISASの合成を示す。
【図11】図11は、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート21の調製ための合成経路を示す。
【図12】図12は、2−クロロメチルベンゾイルクロリドの調製ための合成経路を示す。
【図13】図13は、ニトレート置換5−エステルの直接合成を示す。
【図14】図14は、クロロメチルベンゾエートでのエステル化、およびハライドの硝酸銀との交換による、イソソルビド−2−アスピリネートの3−ニトロキシベンゾエートエステルの合成を示す。
【図15】図15は、HLM中のIs−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)を示す。9.4μMのアスピリンが生成された。
【図16】図16は、HIM中のIs−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)(1.04×10−4M)を示す。27μMのアスピリンが生成された。
【図17】図17は、Is−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)を添加する前に、強力BChE阻害剤と共に5分間インキュベートされたHLMを示す。16μMのアスピリンが生成された。
【図18】図18は、HLMおよびiso−OMPA(10μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)(1.1×10−4M)を示す。8.5μMのアスピリンが生成された。
【図19】図19は、HIMおよびBNPP(14μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)(1.04×10−4M)を示す。
【図20】図20は、50%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(2.5×10−4M)を示す。26μMのアスピリンが生成された。
【図21】図21は、80%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1×10−4M)を示す。21μMのアスピリンが生成された。
【図22】図22は、HLMおよびiso−OMPA(14.4μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1×10−4M)を示す。1.4μMのアスピリンが生成された。
【図23】図23は、HIM中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1.05×10−4M)を示す。20μMのアスピリンが生成された。
【図24】図24は、HIMおよびiso−OMPA(14μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1.1×10−4M)を示す。12.7μMのアスピリンが生成された。
【図25】図25は、50%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(2−ニトロキシメチル)ベンゾエート(20)(1×10−4M)を示す。10.3μMのアスピリンが生成された。
【図26】図26は、HIM中の、Is−2−アスピリネート−5−(2−ニトロキシメチル)ベンゾエート(20)(1×10−4M)を示す。21.7μMのアスピリンが生成された。
【図27】図27は、50%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート(22)(1×10−4M)を示す。2μMのアスピリンが生成された。
【図28】図28は、HIM中の、Is−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート(22)(1×10−4M)を示す。9.97μMのアスピリンが生成された。
【図29】図29は、HIM(40μg/mL)中の、2−アセトキシ安息香酸フェニルエステル(アスピリンのフェノールエステル)(1.09×10−4M)を示す。7.7μMのアスピリンが生成された。
【図30】図30は、HIM(20μg/mL)中の、2−アセトキシ安息香酸フェニルエステル(1.09×10−4M)を示す。5.3μMのアスピリンが生成された。
【図31】図31は、異なる3つの濃度での、5つの試験化合物による、生体外でのADPに反応した血小板凝集の阻害を示す。ゼロ濃度は、賦形剤、DMSOによる阻害である。
【図32】図32は、試験化合物2、31〜33、アスピリンで処理した洗浄血小板における、コラーゲンに反応したPAC−1発現を示す。この図は、洗浄血小板における、パーセントPAC−1糖たんぱく質発現を示す。この調製物においてエステラーゼがほとんど存在せず、従って、データは、本発明のプロドラッグのエステラーゼ活性化が、生体外での血小板機能の阻害前に必要とされることを示す。
【図33】図33は、試験化合物2、31〜33、アスピリンを使用した、血小板に富む血漿におけるコラーゲンに反応したPAC−1発現を示す。この図は、血小板に富む血漿における糖タンパク質発現の程度を示す。糖タンパク質発現は、完全凝集における血小板の架橋に必要とされ、データは、本発明化合物が、血漿調製物におけるこの発現を抑制することにおいて、アスピリンより強力であることを示す。
【図34】図34は、試験化合物2、31〜33、アスピリンを使用した、血小板に富む血漿におけるコラーゲンに対するP−セレクチン発現を示す。P−セレクチンは別の糖タンパク質であり、その発現は血小板活性化と相関する。本発明化合物は、血漿調製物における血小板活性化を阻害することにおいて、アスピリンよりはるかに強力である。
【図35】図35は、試験化合物2、31〜33、アスピリンを使用した、洗浄血小板におけるコラーゲンに対するP−セレクチン発現を示す。ここでも再び、洗浄血小板において、糖タンパク質発現の幾分かの減少が見られる(コラーゲンとの有意な差(***P<0.001))。しかし、エステラーゼが欠乏している洗浄血小板懸濁液において、該化合物はアスピリンほど有効ではない。
【発明を実施するための形態】
【0162】
一般実験法:材料
5−ISMNは、Sifa Ltd.から得た。精製ヒト血清ブチリルコリンエステラーゼ(EC3.1.1.8)、ウサギ肝臓カルボキシルエステラーゼ(EC3.1.1.1)、BNPP(ビス−4−ニトロフェニルホスフェート)、iso−OMPA(テトライソプロピルピロホスホラミド)、プールヒト肝臓ミクロソーム、3−クロロメチルベンゾイルクロリド、4−クロロメチルベンゾイルクロリド、硝酸銀、フタリド、ジクロロトリフェニルホスホラン、およびHPLC用溶媒は、Sigma−Aldricから得た。コラーゲンおよびADPは、Chronolog(Havertown、PA、U.S.A.)から得た。高親和性GPIIb/IIIaに対するアロフィコシアニン(APC)接合モノクローナル抗体(PAC−1−APC)、およびヒト血小板Pセレクチンに対するAPC接合モノクローナル抗体(CD62P)は、BD Biosciences(Oxford、UK)から購入した。
【0163】
他の全ての溶媒および試薬は、分析用であった。プールヒト腸ミクロソームは、UKのBD Gentestから得た。
【0164】
本発明化合物は、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)から容易に調製され、それ自体は、Gilmerら、2001に従って、イソソルビド−モノ−ニトレート(ISMN)のアセチルサリチル(salicoyl)クロリドでのエステル化によって調製される。ニトレートは、水素の雰囲気下に、炭素上パラジウムでの処理によって選択的に除去されて、主要中間体イソソルビド−2−アスピリネートを生じる。該化合物は、イソソルビドの選択的5−エステル化、次に、2位におけるアスピリネート基の結合によっても得られる(イソソルビドにおける5位置は、エンドであるにもかかわらず、アシル化に対して2−エキソ位置より反応性であり、なぜなら、5−OHは分子内H結合によって活性化されるからである)。
【0165】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)の場合、サリチル酸での直接アシル化は、サリチレート−OHとイソソルビド−OHとの競合によって難しくなる。従って、ベンジル−エーテル保護サリチル酸を、先ず、標準DCCカップリング法によって導入し、ベンジル保護を還元条件下に除去する(図10)。
【0166】
本発明の他のエステル化合物は、DCCカップリングを使用するか、またはトリエチルアミンのような第三級塩基の存在下に適切な酸塩化物で処理することによる、直接アシル化によって調製できる。ニトロキシ置換エステルは、適切に置換された酸に直接的に結合させることによって調製しうる。または、ニトロキシ置換化合物は、クロリドまたはブロミドを有する酸で先ずエステル化することによっても得られ、次に、それをアセトニトリル中においてAgNO3で処理することによってニトレートと置きかえることができる。
【実施例】
【0167】
実験例:イソソルビド−2−アスピリネート−5−エステルの合成:分子式は図2に示されている。
【0168】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[2−メチルベンゾエート] 1
ジクロロメタン(15mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.11mL、0.98mmol)および2−トルオイルクロリド(0.09mL、0.72mmol)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次に、水(2×25mL)、HCl(1M、25mL)およびNaHCO3飽和水溶液で洗浄し、次に、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を真空除去して、粗生成物0.41gを褐色油状物として得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を溶離剤として使用)によって精製して、生成物を黄色油状物として得た。これをエタノールで再結晶して、化合物1を白色固形物として得た(0.11g、39.6%)。
融点104〜106℃。IRvmax(KBr):2987.1および2922.8(C−H、伸縮)、1762.0および1718.1(C=O)、1259.5および1199.8(C(O)OR、芳香族)、1072.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:449.1212(M++23)、実測値:449.1238(M++23)。
【0169】
【化37】
【0170】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート、ISAS、2
2−ベンジルオキシ安息香酸(364.8mg=1.6mmol)を、無水DCM(20mL)に溶解し、撹拌した。Is−2−asp−5−OH(500mg=1.6mmol)および10% DMAPを添加した。フラスコを0℃に冷却し、DCC(340mg、1.6mmol)を添加した。撹拌を5分間継続し、温度を室温にし、一晩撹拌した。反応物を濾過し、濾液を0.1M HCl、5% NaHCO3および水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させて、油状物を得た。これを、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1))によって精製して、白色生成物を得た(Rf=0.4、228mg)。これをメタノール/酢酸エチル(1:1)に溶解させた。Pd/Cを添加し、反応物を水素下に一晩撹拌した。反応物を濾過し、濃縮した。油状物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(1:1)を使用)によって精製して、白色固形物を得た(107mg、Rf=0.67)。
【0171】
【化38】
【0172】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[3−メチルベンゾエート] 3
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DCC(0.13g、0.65mmol)およびDMAP(0.08g、0.07mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、3−トルイル酸(0.09g)を添加し、24時間撹拌した。HCl(30mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)、飽和ブライン溶液(30mL)および水(3×30mL)で洗浄した後、反応混合物を無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、粗生成物を透明油状物として得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:2)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物3を白色結晶として得た(0.12g、43.2%)。
融点96〜98℃。IRvmax(KBr):2987.1および2922.8(C−H、伸縮)、1762.0および1718.1(C=O)、1259.5および1199.8(C(O)OR、芳香族)、1072.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:449.1212(M++23)、実測値:449.1234)(M++23)。
【0173】
【化39】
【0174】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−アセテート 4
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.09mL、0.65mmol)および無水酢酸(0.06mL、0.65mmol)を添加した。反応器を室温で24時間撹拌し、次に、水(2×20mL)、HCl(1M、30mL)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を回転蒸発によって除去して、粗生成物0.52gを得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:2)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物4を白色結晶性物質として得た(0.1g、43.8%)。
融点96〜98℃。IRvmax(KBr):2966.9および2928.6(C−H、伸縮)、1751.6および1734.0(C=O)、1607.8(C=C、伸縮)、1262.0および1193.9(C(O)OR、芳香族)、1082.5(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:373.0899(M++23)、実測値:373.0877(M++23)。
【0175】
【化40】
【0176】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−プロピオネート 5
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.3g、0.98mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、無水プロピオン酸(0.14mL、1.07mmol)およびトリエチルアミン(0.09mL、1.07mmol)をそれに添加した。これを室温で24時間撹拌し、次に、HCl(30mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)および水(2×30mL)で洗浄した。反応物を無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、粗生成物を黄色油状物として得た(0.19g)。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(5:2)を溶離剤として使用)によって精製して、生成物を白色結晶として得た(0.3g、84.3%)。
融点54〜56℃。IRvmax(KBr):2989.0および2933.0(C−H、伸縮)、1764.0および1734.5(C=O)、1606.3(C=C、伸縮)、1254.3および1193.6(C(O)OR、芳香族)、1080.6(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:387.1056(M++23)、実測値:387.1069(M++23)。
【0177】
【化41】
【0178】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−ベンゾエート 6
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(1.0g、3.25mmol)の溶液に、安息香酸(0.59g、4.88mmol)、DCC(1.34g、6.49mmol)およびDMAP(0.38g、3.11mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次に、沈殿物を濾過によって除去し、濾液をHCl(30mL、1M)、Na2HCO3飽和水溶液(30mL)および水(3×30mL)で洗浄した。それを無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、無色油状物を得、これをエタノールで再結晶して、生成物を白色結晶として得た(1.13g、84.3%)。
融点80〜82℃。IRvmax(KBr):2991.1および2932.9(C−H、伸縮)、1762.9および1720.6(C=O)、1275.5および1199.1(C(O)OR、芳香族)、1078.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:435.1056(M++23)、実測値:435.1043(M++23)。
【0179】
【化42】
【0180】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−ニコチネート 7
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.3g、0.98mmol)を、0℃で、DCC(0.2g、0.98mmol)およびDMAP(0.12g、0.98mmol)の存在下に、10分間撹拌した。反応器を室温にもどし、ニコチン酸(0.12g、0.98mmol)を添加し、24時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た(0.95g)。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンおよび酢酸エチル(95:5)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物7を白色結晶として得た(0.12g、29.7%)。
融点94〜96℃。IRvmax(KBr):3327.6(N=C)、2929.6(C−H、伸縮)、1731.7および1718.7(C=O)、1654.4(C=C、伸縮)、180.7および1195.9(C(O)OR、芳香族)、1090.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:436.1008(M++23)、実測値:436.1011(M++23)。
【0181】
【化43】
【0182】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[イソ−ニコチネート] 8
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、ジクロロメタン(20mL)に0℃で溶解し、DCC(0.13g、0.65mmol)およびDMAP(0.08g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、イソ−ニコチン酸(0.08g、0.65mmol)を添加し、24時間撹拌した。反応物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、水(3×20mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、化合物8を白色粉末として得た(0.17g、63.1%)。
融点86〜88℃。IRvmax(KBr):3327.8(N=C)、2929.3(C−H、伸縮)、1751.8および1710.7(C=O)、1628.0(C=C、伸縮)、1249.0および1194.1(C(O)OR、芳香族)、1082.8(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:436.1008(M++23)、実測値:436.1004(M++23)。
【0183】
【化44】
【0184】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−ベンジルオキシベンゾエート 9
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.27g、0.87mmol)の溶液に、ベンジルオキシ安息香酸(0.20g、0.87mmol)、DCC(0.18g、0.87mmol)およびDMAP(0.01g、0.09mmol)を添加した。反応器を室温で24時間撹拌し、次に、濾過し、濾液をHCl(30mL、0.1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)および水(2×30mL)で洗浄した。無水Na2SO4で乾燥した後、ジクロロメタンを真空除去して、粗生成物0.7gを無色油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を溶離剤として使用)によって精製して、0.19gの化合物9を白色結晶として得た(41.5%)。
融点76〜78℃。IRvmax(KBr):1772.7および1726.2(C=O)、1276.6(C(O)OR、芳香族)、1078.1(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:541.1457(M++23)、実測値:541.1460(M++23)。
【0185】
【化45】
【0186】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(2−アミノベンゾエート) 10
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.69g、2.2mmol)をDCM(20mL)に溶解し、DCC(0.44g、2.2mmol)およびDMAP(0.05g、0.22mmol)をそれに添加し、反応器を0℃で10分間撹拌した。室温にもどした後、アントラニル酸(0.29g、2.2mmol)を添加し、3時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(2×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗黄色油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(4:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物10を黄色固形物として得た(0.39g、41.5%)。生成物を、試験に必要になるまで0〜4℃で保存した。
融点150〜152℃。IRvmax(KBr):3443.4(N−H、伸縮)、2920.5(C−H、伸縮)、1742.7(C=O)、1548.0(N−H、変角)、1220.9および1158.6(C(O)OR、芳香族)、1047.4(C−O−C)cm−1。
【0187】
【化46】
【0188】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[2’−メトキシ]−ベンゾエート 11
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DMAP(0.08g、0.65mmol)およびDCC(0.13g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、2−アニス酸(2−メトキシ安息香酸、0.10g、0.65mmol)を添加し、12時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物11を白色結晶として得た(0.23g、79.8%)。
融点132〜134℃。IRvmax(KBr):2920.5(C−H、伸縮)、1764.9および1720.4(C=O)、1253.2(C(O)OR、芳香族)、1075.2(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:465.1162(M++23)、実測値:465.1131(M++23)。
【0189】
【化47】
【0190】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[3’−メトキシ]−ベンゾエート 12
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DMAP(0.08g、0.65mmol)およびDCC(0.13g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、3−アニス酸(3−メトキシ安息香酸)(0.10g、0.65mmol)を添加し、12時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物12を白色結晶として得た(0.23g、79.8%)。
融点125〜128℃。IRvmax(KBr):2980.9(C−H、伸縮)、1768.3および1723.8(C=O)、1298.5および1253.5(C(O)OR、芳香族)、1075.9(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:465.1162(M++23)、実測値:465.1168(M++23)。
【0191】
【化48】
【0192】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[4−メトキシ]−ベンゾエート 13
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DMAP(0.08g、0.65mmol)およびDCC(0.13g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、4−アニス酸(4−メトキシ安息香酸)(0.10g、0.65mmol)を添加し、12時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を溶離剤として使用)によって精製して、生成物を白色結晶として得た(0.17g、58.9%)。
融点141〜144℃。IRvmax(KBr):2994.1および2936.7(C−H、伸縮)、1764.および724.9(C=))、1605.8(C=C、伸縮)、1260.5(C(O)OR、芳香族)、1078.6(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:465.1162(M++23)、実測値:465.1157(M++23)。
【0193】
【化49】
【0194】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[4−メチルベンゾエート] 14
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエンに0℃で溶解し、トリエチルアミン(0.13mL、0.98mmol)および4−トルオイルクロリド(0.93mL、0.78mmol)を添加した。反応器を室温にもどし、10分間撹拌し、次に、HCl(30mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)、水(3×30mL)およびNaCl飽和溶液(30mL)で洗浄した。反応物を無水Na2SO4で乾燥し、酢酸エチルを補助溶媒として使用して溶媒を真空除去して、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(9:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物14を白色結晶として得た(0.1g、35.99%)。
融点102〜104℃。IRvmax(KBr):2982.7および2923.6(C−H、伸縮)、1763.9および1717.8(C=O)、1608.5(C=C)、1275.4および1202.0(C(O)OR)、1100.3(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:449.1212(M++23)、実測値:449.1229(M++23)。
【0195】
【化50】
【0196】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(4−ニトロベンゾエート) 15
(化合物16は、この記載に含まれないことに注意)
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、DCM(10mL)に室温で溶解させた。その反応器に4−ニトロベンゾイルクロリド(0.15g、0.78mmol)およびトリエチルアミン(1.12mL、0.78mmol)を添加した。反応物を室温で48時間撹拌し、次に、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(25mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(2×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗黄色油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:2)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物15を無色油状物として得、これをエタノールで再結晶した際に、生成物を白色結晶として生じた(0.15g、50.5%)。
融点66〜68℃。IRvmax(KBr):1772.7および1726.2(C=O)、1276.6(C(O)OR、芳香族)、1078.1(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:480.0907(M++23)、実測値:480.0922(M++23)。
【0197】
【化51】
【0198】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−OH 17
ジクロロメタン(160mL)中のアセチルサリチロイルクロリド(分子量198.60g/mol、10.9g=54.9mmol)の撹拌溶液を、トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、9.1mL=65.4mmol)で処理した。混合物を0℃に冷却し、5−ISMN(分子量191.12g/mol、10g=52.3mmol)を添加した。そのフラスコを室温で一晩撹拌し、光から保護した。混合物を、HCl(2M)、5% NaHCO3、および水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、油状物を得た。これを、熱いエタノール(結晶化を極めて遅くすることができる)で再結晶して、黄色結晶10gを得た。これをメタノール/酢酸エチル(1:1)に溶解し、Pd/Cを添加し、水素バルーンを取り付けた。一晩撹拌し、TLC(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)によって監視して、反応の終了を確認した。混合物を濾過し、溶媒を除去した。いくらかのジクロロメタンを添加し、濃縮し、ジエチルエーテルを添加し、10〜15分間静置し、濃縮して、白色結晶を得た(7.4g)。
【0199】
【化52】
【0200】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(3−(2−ブロモ−アセトキシ))−ベンゾエート 18
ジクロロメタン(5mL)中の、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(0.15g、0.35mmol)およびDBU(0.052mL、0.35mmol)の溶液に、ブロモアセチルクロリド(0.03mL、0.35mmol)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。反応物を水(2×5mL)で洗浄し、溶媒を真空除去して、化合物18を無色油状物として得た(0.13g)。
IRvmax(フィルム)cm−1:1765.6および1724.3(C=O)、1608.1(C=O)、1288.4および1251.4(C(O)OR)、1196.9および1135.6(C−O−C)、732.6(C−Br)。HRMS:計算値:531.1013(M+)、実測値:570.4453(M++23)。
【0201】
【化53】
【0202】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−シクロプロパノエート 19
シクロプロパンカルボニルクロリド(分子量104.54g/mol、d=1.152g/mL、250μL=2mmol)を、DCM(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(500μL=6mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。イソソルビド−2−アスピリネート 17(506.2mg=1.6mmol)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。2M HCl(10mL)、5% NaHCO3(10mL)および水(10mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)Rf=0.3によって精製して、油状物396mgを得た。
【0203】
【化54】
【0204】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(p−シアノベンゾエート) 20
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.6mmol)および4−シアノベンゾイルクロリド(120mg、0.72mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:4)後に、黄色油状物213mg(81%)を得た。
【0205】
【化55】
【0206】
HRMS(EI)C23H19O8N、[M+H]+ 計算値:438.4068、実測値:438.4183。分析C23H19O8N 計算値C:63.16、H:4.38、N:3.20、実測値C:63.46、H:4.51、N:2.97。
【0207】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(p−フェニルベンゾエート) 21
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.6mmol)および4−フェニルベンゾイルクロリド(156mg、0.72mmol)を反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:4)後に、無色油状物185mg(65%)を得た。
【0208】
【化56】
【0209】
HRMS(EI)C28H24O8、[M+H]+ 計算値:489.4933、実測値:489.5021。分析C28H24O8 計算値C:68.85、H:4.95、実測値C:68.88、H:5.08。
【0210】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(6−クロロニコチネート) 22
イソソルビド−2−アスピリネート 17(250mg、0.8mmol)および6−クロロニコチノイルクロリド(230mg、0.9mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 3:7)後に、白色固形物256mg(70%)を得た。
【0211】
【化57】
【0212】
HRMS(EI)C21H18ClNO8、[M+H]+ 計算値:448.8304、実測値:448.8295。分析C21H18ClNO8 計算値C:56.32、H:4.05、N:3.13、実測値C:56.20、H:4.21、N:3.02。
【0213】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(2−クロロ−6−メチル−ピリジン−4−オエート) 23
イソソルビド−2−アスピリネート 17(250mg、0.8mmol)および2−クロロ−6−メチルピリジン−4−カルバモイルクロリド(247mg、0.9mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 2:6)後に、白色泡状物196mg(53%)を得た。
【0214】
【化58】
【0215】
HRMS(EI)C22H20ClNO8、[M+H]+ 計算値:462.8570、実測値:462.8601。分析C22H20ClNO8 計算値C:57.21、H:4.36、N:3.03、実測値C:56.91、H:4.38、N:2.94。
【0216】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(−3,5−エトキシベンゾエート) 24
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および3,5−エトキシベンゾイルクロリド(157mg、0.72mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:4)後に、粘性黄色油状物296mg(74%)を得た。
【0217】
【化59】
【0218】
HRMS(EI)C26H28O10、[M+H]+ 計算値:500.4945、実測値:500.4932。分析C26H28O10 計算値C:62.39、H:5.64、実測値C:62.45、H:5.79。
【0219】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(−3−メチル−イソキサゾール−4−オエート) 25
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および3−メチル−イソキサゾール−4−カルボン酸(127mg、0.72mmol)をGP1に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:3)後に、白色泡状物228mg(83%)を得た。
【0220】
【化60】
【0221】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(−4−メチル−1,2,3−チアジアゾール−5−オエート) 26
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および4−メチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボン酸を反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:3)後に、淡ピンク色泡状物228mg(83%)を得た。
【0222】
【化61】
【0223】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(N−Boc−イソニペコテート) 27
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および4N−Boc−イソニペコ酸(162mg、0.72mmol)を反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(MeOH:DCM 3:97)後に、灰色がかった白色の泡状物166mg(49%)を得た。
【0224】
【化62】
【0225】
HRMS(EI)C26H33O10N、[M+H]+ 計算値:520.4616、実測値:520.4631。分析C26H33O10N 計算値C:60.11、H:6.40、N:2.69、実測値C:60.15、H:6.79、N:2.76。
【0226】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(m−アセトアミドベンゾエート) 28
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)およびm−アセトアミド安息香酸(128mg、0.72mmol)を反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(MeOH:DCM 3:97)後に、白色固形物202mg(66%)を得た。
【0227】
【化63】
【0228】
HRMS(EI)C24H23O9N、[M+H]+ 計算値:470.4392、実測値:470.4403。分析C24H23O9N 計算値C:61.41、H:4.93、N:2.98、実測値C:61.52、H:5.09、N:2.86。
【0229】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(m−ベンジルオキシベンゾエート) 29
イソソルビド−2−アスピリネート 17(250mg、0.8mmol)およびm−ベンジルオキシ安息香酸(182mg、0.88mmol)をGP1に従って反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:2)後に、白色固形物346mg(85%)を得た。
【0230】
【化64】
【0231】
HRMS(EI)C29H26O9、[M+H]+ 計算値:518.4344、実測値:518.4357。分析C29H26O9 計算値C:67.19、H:5.05、実測値C:67.28、H:5.09。
【0232】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(p−ベンジルオキシベンゾエート) 30
イソソルビド−2−アスピリネート(250mg、0.8mmol)およびm−ベンジルオキシ安息香酸(182mg、0.88mmol)をGP1に従って反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:2)後に、白色固形物346mg(85%)を得た。
【0233】
【化65】
【0234】
HRMS(EI)C29H26O9、[M+H]+ 計算値:518.4344、実測値:518.4338。分析C29H26O9 計算値C:67.19、H:5.05、実測値C:67.35、H:5.18。
【0235】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(2−ニトロキシメチル)ベンゾエート 31
フタリド(分子量134.13g/mol、5.03g=37mmol)およびジクロロトリフェニルホスホラン(分子量333.19g/mol、12.3g=38mmol)を、180℃で4時間、撹拌しながら加熱した[3]。緑色から褐色への色の変化が4時間の間に見られた。TLC(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)は、3つのスポットを示し、NMRによって、上部スポット(Rf 0.77)が2−クロロメチルベンゾイルクロリドのスポットであり、第二スポット(Rf 0.57)がフタリドであり、下部スポット(Rf 0.14)がトリフェニホスホラスであることを確認した。多量のフタリドが未反応であった。2−クロロメチルベンゾイルクロリド(図12)(分子量189.04g/mol、600μL)を、ジクロロメタン(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、600μL=4.3mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。化合物17(分子量308.14g/mol、0.5298g=1.7mmol)を添加し、混合物を、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物(緑色)を、HCl(2M、10mL)、5% NaHCO3(10mL)、および蒸留水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濃縮して、褐色/緑色油状物769.5mgを得た。これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、褐色固形物(Rf 0.38)419.4mgを得た。
【0236】
【化66】
【0237】
400mgをCH3CN/THF(6mL、4/2 v/v)に溶解し、AgNO3(分子量169.87g/mol、0.30g=1.7mmol)で処理し、4時間還流させ、次に、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。これを酢酸エチル(10mL)および水(2mL)で再形成した。有機相を、水(3×2mL)、ブライン(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮して油状物を得、これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、黄色蝋状物質95mgを得た。
【0238】
【化67】
【0239】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート 32
3−クロロメチルベンゾイルクロリド(分子量189.04g/mol、d=1.33g/mL、500μL=3.5mmol)を、ジクロロメタン(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、600μL=4.3mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。化合物17(分子量308.14g/mol、0.511g=1.6mmol)を添加し、混合物を光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を、HCl(2M、10mL)、5% NaHCO3(10mL)および蒸留水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濃縮して、油状物1.18gを得た。これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(3:1)を使用)に付して、油状物(Rf 0.2)903.4mgを得た。
【0240】
【化68】
【0241】
これをCH3CN/THF(6mL、4/2 v/v)に溶解し、AgNO3(分子量169.87g/mol、0.67g=3.9mmol)で処理し、4時間還流させ、次に、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。これを酢酸エチル(10mL)および水(2mL)で再形成した。有機相を、水(3×2mL)、ブライン(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮して油状物を得、これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(1:1)を使用)に付して、黄色蝋状物質184.3mgを得た。
【0242】
【化69】
【0243】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート 33
4−クロロメチルベンゾイルクロリド(分子量189.04g/mol、650μL)を、ジクロロメタン(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、600μL=4.3mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。化合物17(分子量308.14g/mol、0.5320g=1.7mmol)を添加し、混合物を光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を、HCl(2M、10mL)、5% NaHCO3(10mL)および蒸留水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濃縮し、クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、白色固形物100mgを得た。
【0244】
【化70】
【0245】
これをCH3CN/THF(6mL、4/2 v/v)に溶解し、AgNO3(分子量169.87g/mol、75mg=0.4mmol)で処理し、4時間還流させ、次に、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。これを酢酸エチル(10mL)および水(2mL)で再形成した。有機相を、水(3×2mL)、ブライン(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮して油状物を得、これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、灰色がかった白色の固形物28.3mgを得た。
【0246】
【化71】
【0247】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(ニトロキシ)−アセテート 34
ジクロロメタン(10mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.49g、1.6mmol)の溶液に、DCC(0.33g、1.6mmol)、DMAP(0.02g、0.16mmol)およびニトロキシ酢酸(0.19g、1.6mmol)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、次に、濾過し、濾液をHCl(2×10mL、0.1M)、NaHCO3飽和水溶液(2×10mL)および水(2×10mL)で洗浄した。無水Na2SO4で乾燥した後、ジクロロメタンを真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(5:2)を溶離として使用)によって精製して、化合物23(0.38g)を無色油状物として得た。
IRvmax(フィルム)cm−1:1759.0および1727.5(C=O)、1643.6(NO2)、1287.7(NO2)、1256.3(C(O)OR、芳香族)、1193.5(C−O−C)。HRMS:計算値:411.0802(M+)、実測値:(M+)。
【0248】
【化72】
【0249】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−モノニトレート ISMNA
トルエン(100mL)中のIS−5−MN(5g、26.65mmol)の溶液に、0℃で、トリエチルアミン(5.52mL、3.96mmol)およびアセチルサリチロイルクロリド(6.31g、31.74mmol)を添加した。反応物を室温にもどし、6時間撹拌し、次に、水(2×50mL)、HCl(1M、2×50mL)、NaHCO3飽和水溶液(2×50mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を油状物として得た。これをエタノールから結晶化して、生成物5.42gを白色結晶として得た(58.05%)。
融点82〜84℃。IRvmax(KBr):1757.6および1733.4(C=O)、1651.8(NO2)、1261.4(C(O)OR、芳香族)、915.5(ONO2)cm−1。HRMS:計算値:376.0645(M++23)、実測値:376.0640(M++23)。
【0250】
【化73】
【0251】
実験方法:血漿/酵素溶液を使用する加水分解試験
燐酸緩衝液pH7.4を用いた血漿の希釈によって、プール血漿/血清溶液(4mL)を正確な濃度に調製した(例えば、10%溶液の場合、0.4mLの血漿/血清を3.6mLの燐酸緩衝液pH7.4に添加した)。37±0.5℃での血漿/血清試料の平衡後に、アセトニトリル中の試験化合物の保存溶液(1×10−4M)100μLを添加し、250μLのアリコートを所定時間間隔で除去した。nSO4・7H2Oの2%w/v溶液(水:アセトニトリル、1:1)500μLを含有する1.5mLのエッペンドルフ試験管に、試料を移した。試験管を2分間渦撹拌し、次に、10,000rpmにおいて3分間、室温で遠心分離した。上澄みを吸引除去し、HPLCによって分析した。試験化合物および代謝産物の濃度を、同じ濃度範囲および同じ実験条件下で当日に得た校正曲線に関して測定した。腸管吸収後の薬剤の初回通過の間の条件を模倣するために、選択化合物をヒト肝臓(HLM)および腸管上皮(HIM)からのミクロソームの存在下に37℃で燐酸緩衝液中においてインキュベートした。これらの条件下のエステルの代謝運命も、培地中の薬剤および代謝産物の濃度を時間の関数として測定することによって、RPHPLCにより確認した。関与酵素の素性は、血漿(BuChE)の場合は精製酵素を使用することによって、および、エステラーゼ特異性阻害剤(BuChEについてはisoOMPA、およびカルボキシエステラーゼについてはBNPP)の存在下に加水分解実験を繰り返すことによって、確認した。血漿およびミクロソーム試料のBuChE活性は、Ellmanアッセイにより決定された(Ellmanら、1964)。
【0252】
HPLC手順
高速液体クロマトグラフィーは、Empowerソフトウエアによって制御されるWaters600ポンプおよびコントローラー、Waters 717自動試料採取器、およびWaters2996フォトダイオードアレー検出器から成るシステムを使用して行なった。Hichrom Nucleosil C18カラム(4.0×250mm)を使用した。移動相は、使用前に濾過し、アッセイ全体を通してヘリウムを注入した。使用した最終勾配法は下記の通りであった:
【0253】
【表1】
【0254】
該方法は、直線性、精度、ならびにLOQおよびLODの代謝産物に関して承認された。アスピリンおよびサリチル酸の優れた分離を与える方法を開発することは、時間を要する作業であり、なぜなら、緩衝液pH3.19を使用するスフェリソルブ(spherisorb)ODS C18カラムの初期選択が、極度のテーリングおよび低分離を与えたからである(pH3.19の緩衝液は、それらのpKaに近いので選択された(アスピリンは3.5であり、サリチル酸は2.97である)[2])。これは、最終的に、ヒクロムヌクレオシル(hichrom nucleosil)カラムおよび緩衝液pH2.5を使用することによって解決した。アスピリンは3.5のpKaを有する弱酸であるので、緩衝液pHをそのpKaより低くすることは、化合物がより疎水性になるので保持を減少させる。ヌクレオシルカラムは、2つの化合物の優れたピーク形および分離を与えた。最初に、一水和物塩を使用し、これは、18分において大きい緩衝剤ピークを生じた。二水和物塩の使用は、ピークを除去した。しかし、この操作の終わり近くで、いくつかの大きい緩衝剤ピークが再び現れ始めた。
【0255】
主要化合物がアスピリン様活性を有することを立証する血小板凝集阻害、TXB2、血小板GP2B3A発現、MDAおよび対応するデータを測定する方法も存在する。
【0256】
全血凝集試験
血液の500μLアリコートを、生理食塩水500μLと混合し、37℃で10分間、Chrono−Log全血凝集検出計591/592型の培養ウェルにおいて、インキュベートした。次に、試料をアッセイウェルに移し、基線を確定し、適量の前記試薬を添加した。凝集を6分間にわたって監視し、インピーダンス出力をチャート式記録計に記録した。阻害剤を試験する際、刺激剤の添加(撹拌しながら10分間)の前に、全血を、DMSO中の適切な濃度の阻害剤と共に37℃において所定時間にわたってプレインキュベートした。3種類の凝集剤、AA(0.5mM)、ADP(10μM)およびコラーゲン(5μg/mL)を使用した。阻害剤の存在下に凝集反応が観察されなかった場合、対照実験を阻害剤の非存在において行なった。高濃度(0.25%以上)のDMSOは、血小板細胞質イオン化カルシウムにおける濃度依存性変化を誘発しうる。各実験前に、PRPを使用して対照を実験して、正常凝集反応を得た。試料を、37℃で10分間、10μLのDMSOと共にインキュベートして、それが凝集反応への阻害作用を有していないことを確かめた。ISASの2つの代謝産物、サリチル酸およびイソソルビドを、それらが血小板への阻害作用を有するかを確認するために試験した。このモデルにおいて、ISASは、全ての凝集刺激剤に対する血小板凝集の阻害において、アスピリンまたはISDAより有意に高い効力を示した。
【0257】
血小板に富む血漿の血小板凝集
試験前の少なくとも14日間に血小板機能に作用することが公知であるどのような薬剤も服用していない健康なボランティアから、血液を採取した。血小板に富む血漿(PRP)および洗浄血小板懸濁液(2.5×108血小板/mL)を、先に記載した血液から調製した。
先に記載した光凝集測定によって、血小板凝集を測定した。簡単に言えば、凝集剤の添加前に、PRPおよび洗浄血小板試料(2.5×108/mL)を、全血イオン化カルシウム光凝集検出計(Chronolog Corp.、Havertown、PA、U.S.A.)および(BIO/DATA CORPORATION)に配置し、37℃で10分間、900rpmで撹拌しながらインキュベートした。作用物質の添加によって凝集を開始させ、Aggro−Lingソフトウエアによって少なくとも6分間監視した。阻害剤を使用する実験のために、これらの化合物と共に10分間プレインキュベーションした後に、凝集を開始させた。
【0258】
ADPの凝集効力を試験するために、濃度反応(0.3〜10uM)曲線を生成した。種々の濃度(3〜5ug/mL)のコラーゲンも使用して、血小板凝集を誘発した。作用物質の最大下濃度、即ち、最大凝集の約95%を生じる濃度を使用して、凝集阻害剤の作用を試験した。結果を、最大光透過のパーセント変化で示し、100%は血小板培地のみの光透過を表わす。
【0259】
TXB2合成の阻害
アスピリンは、細胞内でトロンボキサンシンターゼによって強力凝集物質TXA2に変換されるPGH2の、シクロオキシゲナーゼ媒介合成を減少させることによって、血小板凝集を阻害する。TXA2は、直接測定に極めて消失性および不安定性であるが、その代謝産物TXB2は、親の有用な指標を与えると一般に考えられている。生体内または生体外での組織のアスピリン処理は、TXB2の抑制に反映される。これに関して本発明化合物とアスピリンとを比較するために、非処理全血を、アスピリンまたは試験化合物の存在下に、37℃で1時間にわたって凝固させた。次に、試料を遠心分離した。血清を収集し、Cayman Chemicalsから得た酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)キットを使用して、TXB2を測定した。その実験は、TXB2合成の完全阻害を与える数値からの下降濃度でアスピリンを使用して行なった。これらのアッセイにおいて、ISASは、より低いIC50に反映されるように、アスピリンより有意に強力であった。
【0260】
フローサイトメトリー
個々の血小板の表面における受容体発現を分析するために、および試料調製手順によって生じる血小板活性を最小限にするために、撹拌または渦撹拌工程は使用しなかった。阻害剤の存在および非存在下の、血小板表面の活性GPIIb/IIIaおよびP−セレクチンの存在量を、フローサイトメトリーによって測定した。血小板試料を、先ず、作用物質、コラーゲンまたはADPで活性化した。血小板凝集が50%最大光透過に達した際に、反応を、生理食塩水での10倍希釈によって停止させた。休止血小板(resting platelets)を対照として使用した。大部分の実験において、血小板を、作用物質の添加前に10分間、阻害剤と共にプレインキュベーションした。次に、血小板試料を、暗所で、飽和濃度(10μg/mL)のP−セレクチン(CD62P−APC)の存在下に室温で5分間、撹拌せずにインキュベートした。活性GPIIb/IIIa血小板受容体は、前記と同じ濃度でPAC−1モノクローナル抗体を使用して測定した。PAC−1は、血小板または血小板付近における、活性血小板の高親和性GPIIb/IIIa複合体上のエピトープを特異的に認識する5。インキュベーション後、試料をFACS Flow液で希釈し、5分以内に、BD FACSArray(BD Biosciences、Oxford、UK)を使用して分析した。フローサイトメトリーを、先に記載したように、単一染色血小板試料において行なった3。大きさ(前方散乱)、粒状度(側方散乱)および細胞蛍光を測定するために器具を構成した。単一血小板を入れ、血小板凝集物および微小粒子を除外するために、前方および側方散乱の二次元分析ゲートを引いた。個々の血小板の蛍光を分析することによって、抗体結合を測定した。細胞自己蛍光についての補正後に、平均蛍光強度を測定した。各試料について、対数尺を使用して、蛍光を分析した。蛍光ヒストグラムを、10,000の各事象に関して得た。Cytometer RXPソフトウエアを使用してデータを分析し、任意単位における対照蛍光のパーセンテージとして表わした。
【0261】
加水分解およびアスピリン放出測定のための生物学的試料の調製
ヒト血液試料は、静脈穿刺によって、Li−Heparin Sarstedt Monovette管に採取した(9mL)。血漿試料は、10,000rpmで5分間の血液の遠心分離によって得、試験に必要になるまでアリコートにして凍結した。プールヒト肝臓ミクロソーム(HLM)は、燐酸緩衝液pH7.4(0.1M)で5mLに希釈して、2mg/mLの保存溶液を得た。試験に必要になるまで、アリコートを凍結した。プールヒト腸ミクロソームは(HIM)は、燐酸緩衝液pH7.4(0.1M)で5mLに希釈して、80μg/mLの保存溶液を得た。試験に必要になるまで、アリコートを凍結した。
【0262】
コリンエステラーゼ活性
HLMおよびHIMにおけるブチリルコリンエステラーゼ(BChE)活性を、37℃で、Ellman法(Ellmanら、1964)によって、分光光度的に(405nm)測定した。ブチリルチオコリンヨージド(BTCI)(0.5mM)を基質として使用した。反応を、最終容量250μLの96ウェルの培養皿で行なった。最初に、燐酸緩衝液pH8.0(0.1M)およびミクロソームを混合し、30分間インキュベートした。DTNB(0.3mM)およびBTCIを添加し、反応を測定した。ミクロソームへの音波破砕(4×5秒)を使用し、中間で氷の上に1分間置いて、アッセイも行なった。これは、ミクロソームが試薬の浸透のために開くことを確実にする[5]。活性を方程式1によって計算した:
【0263】
【数1】
【0264】
表2は、番号付け、および37℃、pH7.4(燐酸緩衝液)の緩衝ヒト血漿への候補エステルの添加後にピークアスピリン生成において測定した初期エステル濃度(モル)のパーセンテージとしてのアスピリンの量と共に、化合物を示す。
【0265】
【表2−1】
【0266】
【表2−2】
【0267】
【表2−3】
【0268】
【表2−4】
【0269】
試験動物からの血漿における試験の結果
Is−2−アスピリネート−5−サリチレート 2(0.1mM)の定量的加水分解スクリーニングは、モルモット、ハムスター、ウサギおよびサル血漿を使用して試験した。この試験の目的は、生物学的試験および臨床前開発に好適な種を決定することであった。結果は、既に同定されているヒト酵素の役割を確認するものであると考えられた(なぜなら、これらは実験動物に多様に分布しているからである)。
【0270】
【表3】
【0271】
いったん勾配法が成功裡に開発されると、ウサギは血小板凝集試験の潜在的モデルであるので、50%ウサギ血漿における2の加水分解を行なった。Ellmanアッセイは、1.1μmol/L/分でのBChE活性を示した。結果は、ハムスターおよびサルが臨床前試験の好適な候補になることを示唆している。これらの種からの血漿は、ヒトと類似したレベルのBuChEを有するので、ヒト代謝におけるその酵素の役割も裏付けられる。
【0272】
腸管または肝臓ミクロソームの存在下のIs−2−アスピリネート−5−サリチレート、ISAS(2)の加水分解結果
ヒト血漿における加水分解試験は、ISAS(2)が成功のアスピリンプロドラッグであることを示した。この研究は、吸収段階の間に他の組織において、主に胃上皮および後に肝臓において、どれぐらいのアスピリン放出が起こるかを評価するために、肝臓および腸ミクロソーム調製物を含むように分析を広げることを意図していた。ヒト肝臓ミクロソームおよびヒト腸ミクロソームの存在下に薬剤をインキュベートした際に、9μMおよび56μMのアスピリンが生成された(それぞれ、図13および図14)。これは、BChEの存在によるのか、または何らかの他の酵素によるのかについて、疑問を生じ、なぜなら、ヒト血液はブチリルコリンエステラーゼのみを含有するが、肝臓および腸管上皮はカルボキシエステラーゼ(CE)(主に、肝臓にCE−1、腸管にCE−2)も含有するからである。従って、プロドラッグの添加前に、ミクロソーム調製物を、iso−OMPA(確立されたBChE阻害剤)と共にプレインキュベートし、それによって、ミクロソーム調製物に存在しうるどのようなBChEも阻害するのに充分な時間を与える。次に、加水分解アッセイを先に記載したように実施して、アスピリン生成において、あるとすればどのような作用があるかを調べた。特異的BChE阻害剤の使用は、アスピリン生成を減少させず、何らかの他の酵素が関与していることを示唆した。Ellmanアッセイを両ミクロソーム調製物において行ない、存在するとすればどのようなレベルのBChEが存在するかを測定した。極少量が見出されたにすぎず(表3.1)、高レベルのアスピリン生成を生じるとは考えられなかった。
【0273】
【表4】
【0274】
ブランク女性血漿=14.98μmol/L/分。血漿は約5mg/L BChEを含有し[5]、従って、これは0.0125μg/mL BChEの等量である。
【0275】
ウサギ肝臓カルボキシラーゼを使用して、薬剤の加水分解を測定し、5.99μMアスピリンが生成された(図18)−HLMと同様のレベル。
【0276】
薬剤の添加前に、BNPP、既知のカルボキシエステラーゼ阻害剤を、HIMおよびHLMと共に10分間インキュベートし、それによってカルボキシエステラーゼ活性をノックアウトした。アスピリン生成の顕著な減少が見られ、60分後、薬剤が消失しなかった。それは、ISASがCE−1およびCE−2ならびにBuChEの基質であると結論付けることができる。これらの酵素は、同じファミリーに属するが、基質特異性において顕著な違いを有する。例えば、CE酵素は、正荷電基質、例えば、コリンエステルを包含するBuChEに好まれる基質の、加水分解において、非効率である。これらの酵素は、通常、一緒のグループに分けられない。意外にも、ISASの場合、HIM試料に存在するCE−2は、BuChEと同じ特異性および有効性を示し、アスピリン放出の同様に適したベクターである。結果は、2つ以上の酵素が、化合物からアスピリンを放出できることを示す。
【0277】
【表5】
【0278】
【表6】
【0279】
Is−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート 22の加水分解結果
【0280】
【表7】
【0281】
非イソソルビド系参考アスピリンエステルの加水分解結果
2つの非イソソルビド系アスピリンエステル、即ち、2−メトキシフェニル−2−アセトキシベンゾエート(グアイコルエステル)および2−アセトキシ安息香酸フェニルエステルの加水分解を、ヒト腸ミクロソーム(40μg/mL)において評価した。これらのエステルはいずれも、ヒト血漿においてアスピリンプロドラッグとして作用せず、即ち、ヒト血漿エステラーゼ作用が、これらのエステルからのアスピリン放出を生じさせない。
【0282】
【表8】
【0283】
フェニルアスピリネートは、ヒト腸ミクロソームと接触して、無視できる量のアスピリンを生成し、これは、これらの基質に対して、CE−2優先度がBuChEとわずかに異なることを示し、それの存在下に加水分解がアスピリン発生なしに起こる。しかし、ISASおよびニトロキシメチル類似体と比較して、アスピリン生成がほとんどなかった。言い換えれば、これらの化合物は、ヒト血漿においてアスピリンプロドラッグではなく、CE−2の存在下に非効率アスピリンプロドラッグである。データは、CE−2と本発明のプロドラッグとの相互作用が、有効なアスピリン生成を生じる点で独特であることを示している。
【0284】
【表9】
【0285】
【数2】
【0286】
【数3】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿分および胃腸管の内腔で遭遇する条件に対して安定であるが、吸収の間および後に急速に分解して、アスピリンおよび/または一酸化窒素(NO)を放出する、強力なアスピリンプロドラッグに関する。
【背景技術】
【0002】
アスピリンは、世界で最も広く使用されている薬剤の1つである。通常の使用は、全ての心臓血管リスク群における死亡リスクの低下に関連している。アスピリンは抗炎症性、鎮痛性および解熱性の薬剤であり、心臓血管疾患の治療に使用されており、結腸直腸癌、食道癌、胃癌および肺癌(例えば、Chan 2005)ならびに脳卒中、アルツハイマー病(Etminanら、2003)および他の形態の認知症を予防することにおいて役割を有することが予測される。いくつかのモデルは、50才より上の人々による毎日のアスピリン消費が、90才代まで生きる可能性を2倍にすると予測している(Morgan,2003)。
【0003】
アスピリン使用に関連した主要副作用は、胃腸管系である。アスピリンは、全患者のほぼ半数において消化不良を生じ、胃腸出血のリスクを3倍にする。内視鏡管理下試験は、心筋梗塞(MI)の予防に使用される全アスピリン用量において高い出血リスクを示し、比較的低用量でさえも示す。1つの試験において、低用量アスピリン(10〜300mg/日)の患者の10%が、12週間後に内視鏡検査による潰瘍を有し、1つの症例は10mg/日で生じた(Cryer & Feldman,1999、Cryer 2002)。いくつかの試験は、出血が治療の開始後5〜30日で始まっていることを示しており、これは適応が生じていないことを示す。重要なことに、胃腸副作用のリスクは、アスピリンの使用を、血栓性事象の高可能性を有する患者グループに限定した:ランダム集団において、重度胃腸損傷のリスクは、アスピリンで予防できる死のリスクより高い。現在のところ、癌におけるアスピリンの予防的使用について信頼できる用量関連データが存在しないが、心臓発作の予防における確立された役割に必要とされる至適用量より高いと考えられ、従って、より高い胃腸毒性の高いリスクの可能性がある。絶対リスクは低い(1〜2%)が、その広範囲かつ急速に増加する消費により、アスピリン誘発胃腸毒性は公衆衛生上の関心事になっている(Morgan,2003;Laheij 2001;Newtonら、2004)。
【0004】
アスピリン胃腸毒性の多くの原因が認識されている。消化管壁は、保護層によって、刺激の強い管腔内容物から保護されている。このバリヤーは、2つのシクロオキシゲナーゼ酵素(COX−1およびCOX−2)によって部分的に維持されている。アスピリンの心臓血管保護作用は、血小板シクロオキシゲナーゼ酵素COX−1の阻害から生じるが、その細胞保護作用は、アラキドン酸を癌プロモーターであるPGE2から癌サプレッサーであるHETEに向かわせるシクロオキシゲナーゼ酵素COX−2をアセチル化するその特有の能力に起因すると考えられる。COX−2は、GITにおける創傷治癒においても役割を担っている。アスピリンは、吸収の間に消化管を通過する際に、これらの酵素を阻害し、それによってそれらの保護機能を減少させる。従って、毒性の生化学的側面は、アスピリンによるCOX−1およびCOX−2の局所阻害に起因し、これは、胃酸分泌および血流を正常に調節するプロスタグランジン(PGE2、PGI2)の抑制を生じる。アスピリン毒性の明らかな化学的側面も存在する。アスピリンは疎水性酸(pKa3.5)である。アスピリンは、低いpH値において脂溶性であり、上皮を覆っている疎水層を崩壊させることができ、それによって、管腔内容物の接近を可能にし、刺激を引き起こし、最終的に潰瘍化を生じる。これは、生化学成分より重大な毒性原因となりうる。最近の1つの研究において、ラットへの経口アスピリン投与は胃病変を生じたが、薬剤を皮下投与した場合は、両経路からのCOXの阻害の形跡にも関わらず、胃損傷がなかった(Mahita,2006)。薬剤誘発胃腸毒性は、極めて複雑であり、頻繁に矛盾する研究結果を有する問題であるが、この特定の研究は、化学毒性が有意であることを示している。
【0005】
胃腸毒性の問題は、長年にわたり薬学的関心の的となっているが、内視鏡的試験は、従来の解決策、例えば、腸溶コーティングまた緩衝化が、充分ではないことを示している(Kellyら、1996、Walkerら、2007)。従って、アスピリンを送達する、またはその胃腸作用に対処する、新しい方法を確立することは、公衆衛生上の重要事であり、有意な商機である。
【0006】
この問題の潜在的に有用な解決策は、血漿に吸収された後まで、胃腸管でのアスピリン放出を遅らせることができるアスピリン誘導体の設計である。そのような誘導体は、正確には、プロドラッグと称すべきである。プロドラッグは、それ自体は不活性であるが、代謝時に活性剤を形成する治療薬である(Albert,1958)。アスピリンプロドラッグは、その胃毒性を抑制する手段として、長年にわたり調査されている(Jones,1985)。
【0007】
初期のアスピリンプロドラッグ理論は、例えばエステルによって、アスピリンカルボン酸をブロッキングすることが、アスピリンカルボン酸と胃粘膜との直接接触によって生じる胃毒性の化学的側面を有効に排除しうることを提示している。このモデルが正しければ、胃腸管上皮を通過する間に活性化されるアスピリンエステルは、薬剤放出が上皮細胞内で起こる場合でも、極めて低い胃毒性を示すと予測される。
【0008】
アスピリン毒性の生化学成分がより広く理解されるようになった際に、このプロドラッグ理論は洗練された。アスピリンと対照的に、そのエステルは、COXを阻害する能力を有していない。従って、それらは、消化管壁を通過する間に、保護的なプロスタグランジンの合成を妨げない。次に、吸収後に、血中のエステラーゼがエステルを分解し、アスピリンを放出させる。後に、薬剤が、体循環によって消化管に到達するが、かなり低い濃度で到達する;アスピリンは、体内で急速に代謝され、たった20分間の半減期を有する。COX依存性粘膜防御システムの有効な遮断は、かなり高濃度のアスピリンを必要とすると考えられる。これは、アスピリンが、一方のCOX酵素(COX−1)の弱い阻害物質であり、もう一方(COX−2)の極めて弱い阻害物質であるからである。言い換えれば、アスピリンは、吸収段階の間に両方の保護酵素を阻害するが、吸収後の全身への分布後に両酵素をブロックするのに必要とされる濃度に達する可能性は低い(同様の薬物動態学議論は、心臓における内皮プロスタサイクリンより血小板トロンボキサンA2に対するアスピリンの選択的阻害を説明している(Pedersen A.K.& FitzGerald G.A.1984)。
【0009】
従って、アスピリンプロドラッグエステルは、局所刺激を生じないので、低い胃腸毒性を有すると推測され、高濃度でのアスピリンの胃腸の第一通過が回避され、第二分布は、COX−2依存性保護機能を損なわずに維持する濃度における分布である可能性がある。そのようなアスピリンエステルプロドラッグの着想は、プロドラッグが保護バリヤーの通過の間は酸性でなく、それを崩壊させないので、魅力的である。さらに、それらは、上皮において活性化されるか、特にその後に血流に入った後に活性されるかに関係なく、バリヤーを調節する生化学的機構に対して小さい影響を有することも予想される。これは、アスピリン関連の有害な胃腸作用が回避されるという利点を有する。薬剤は、胃腸管を通過し終えるまで活性化されないので、より安全である(図1)。
【0010】
臨床的観点からのアスピリンの他の問題は、湿分に対して不安定であり、従って、液剤に配合できないことである。アスピリンの水溶液は、小児および老人用の医薬において特に望ましい。アスピリンの不安定性の主要原因の1つは、JencksおよびPierre(1958)によって最初に記載された自己媒触反応の形態である。アスピリンは、カルボン酸基およびアセチル基を有する。カルボン酸基は、近くの水分子を活性化して水酸化物を生成する能力を有し、該水酸化物はアセチル基を攻撃する。アスピリンのエステルを形成することによって、カルボン酸基はマスクされ、自己触媒反応に係わることができない。アスピリンエステルは、通常、アスピリンより安定であり、従って、アスピリンに適用できない種々の有用な方法で配合される可能性を有する。アスピリンエステルのこの第二の利点は、実験的に充分に確認されている。
【0011】
一方、アスピリン毒性の除去の仮定理論は、好適なアスピリンエステルプロドラッグ候補が存在しなかったので、試験されていない。これは、アスピリンエステルプロドラッグを設計するのが極めて困難だからである。パラセタモール−ベノリレートというアスピリンエステルは、ヒトへのその投与量がアスピリン放出を生じないことが明らかになるまで、約30年間にわたって市販されていた(Williamsら、1989)。
【0012】
アスピリンエステルおよび関連誘導体に関する問題は、代謝の問題である。アスピリンエステルは、体内で、アスピリンではなくサリチル酸に変換される(Nielsen & Bundgaard,1989)。アスピリンエステルは、ヒト組織および血液中で、図2に示されている可能経路によって代謝される。有効なアスピリンプロドラッグは、吸収後にアスピリンを遊離する担体基において、開裂されるべきである。アスピリンエステルの急速な加水分解は、血液および血漿中で起こる(t1/2<1分)が、所望のアスピリン−担体エステル結合(図2のB位置)においてではない。その代わりに、アセチル基が開裂し(図2のA)、得られる生成物は、サリチル酸エステル、最終的にはサリチル酸である。この生化学経路はアスピリンを生成することができない。サリチレート対アスピリンの比率は、担体基がなんであろうと、通常、99:1より大きい(カルボン酸薬剤を有するエステルを形成するのに使用されるプロドラッグのアルコール成分は、プロドラッグの専門用語においては担体として既知である)。エステルを酸薬剤から形成する場合、結合させる部分は、酸化学をブロックするが、それは、新しい存在物上に、いくつかのそれ自身の物理化学的性質をも与える(図2参照)。この問題は、製薬上の難題および商機の両方として、関心を集めている。この分野において、かなり多くの学術的文献および特許文献が存在する(Gilmerら、2002およびその中の参考文献を参照)。しかし、文献においてアスピリンプロドラッグと呼ばれている大多数の化合物は、実際は、生体外または生体内においてアスピリンプロドラッグとして機能せず、その代わりに、対応するサリチル酸エステルを放出する(Nielsen & Bundgaard,1989)。
【0013】
アスピリンエステルがプロドラッグとして機能するために、血液中での加水分解、開裂は、担体エステル結合において起こらなければならない。設計上の問題は、アスピリンをエステル化することによって、ヒト血漿の存在下において誤ったエステル基が加水分解することである。この問題は、Nielsen & Bundgaard,1989によって最初に説明された。アスピリンが血流に入った際に、そのアセチル基が、ヒト血漿における主要エステラーゼ酵素−ブチリルコリンエステラーゼ(BuChE)によって加水分解されて、サリチル酸の生成が生じる。アスピリンは、血液pHにおいて負に荷電され、ブチリルコリンエステラーゼは、負に荷電された基質を処理する際、実際には最も有効ではない。アスピリンをエステル化することによって、負電荷(代謝を抑制する)が除去され、アセチル基が、ブチリルコリンエステラーゼにかなりよく適した基質になる。従って、新しいエステル基の導入は、既存のアセチルエステルの代謝速度をかなり促進させる。例えば、アスピリンは、希薄血漿中で約1時間の半減期を有するが、アスピリンエステルは同じ脱アセチル過程を1分未満の半減期で受ける:中性フェニルアセテート、例えばアスピリンエステルは、ブチリルコリンエステラーゼの、最も効果的に加水分解される基質型に含まれる。基礎酵素学の観点からこれを解釈すれば、アスピリンエステルは、アスピリン自体より、その酵素に適合する。代謝が正確な位置で起こるようにするために、担体基がアセチル基に競合する相補性構造を有さなければならず、即ち、担体基が少なくともアセチル基と同様にBuChE酵素に対して誘引性の基質でなければならないことを、Bundgaardは認識していた。それ自体の加水分解を促進するが、同時に、近接アセチル基の加水分解を抑制するさらに適した担体基が考えられる。ブチリルコリンエステラーゼ酵素は、コリンのエステルの加水分解におけるその有効性から名前を取っている。NeilsenおよびBungaardは、アスピリンのグリコールアミドエステルについて研究し、それにおいて、担体基がコリンに似るように設計し、その分離がアセチル基加水分解とうまく競合できるようにした。グリコールアミドは部分的に成功しているにすぎず、大部分の成功例は、所望方向および非生産的方向の両方において(図2の経路AおよびB)約50%加水分解された。NeilsenおよびBungaardの研究は、成功のアスピリンプロドラッグが、アセチル基への優先度を超えるように、ヒト血漿エステラーゼに適合する担体基を必要とするという重要な原理を確立した。これは、極めて厳しい条件であることが分かり、該条件に対するそれらの反応は部分的に適切であるにすぎなかった。しかし、本明細書中に記載した技術は別にして、グリコールアミドは、部分的にでも、真のアスピリンプロドラッグとして記載することができる唯一の既知化合物である。
【0014】
随時採用されている別の方法は、エステラーゼがアセチル基を攻撃しうる前に分解するように、アスピリン−担体結合が不安定なエステルを設計することである。このアプローチの問題点は、アスピリンが、水に対して、およびそのアセチル基における他の求核物質による加水分解に対して、すでにかなり不安定なことである。第二の化学的に活性なエステルの導入は、アセチル基の反応性を高める作用(および、別の不安定位置を付加する作用)を有する。水のような化学刺激によって開裂を受けることが計画的に意図されたアスピリンエステルは、貯蔵の間にそのような刺激に遭遇する可能性が高く、それによって貯蔵時に分解を受けやすいという明らかな欠点を有する。これは、第一に、アスピリンエステルプロドラッグの利点の1つ(それらは湿分に対してアスピリンより安定である)を無効にする。一般的な化学刺激に反応して開裂するように設計されたプロドラッグも、それらが吸収前に出会うGITに見られる条件下において、分解する傾向がある。
【0015】
アスピリンプロドラッグ分野における関心は、いわゆる一酸化窒素(NO)−アスピリンの出現と共に高まっており、それはアスピリンエステルの一種であるが、NO−放出成分が担体基に結合している。NO−アスピリンの開発の主要な理論的根拠は、NOが粘膜防御を促進し、アスピリンによって生じた損傷を相殺することである(Fiorucci and Del Soldato,2003)。この概念は、現在、生医学界において充分に受け入れられている。一酸化窒素およびアスピリンは、相補的および時に相乗的な薬理学的作用も有し、それによって、その組合せは、アスピリン単独より広い範囲の薬理学的作用を示すと予想される。NO放出は、血流を促進し、白血球粘着を減少させることによって、アスピリン誘発胃糜爛から胃を保護するが、GMP経路によるその抗血栓特性は、アスピリンによるCOX−1阻害から生じる抗血小板作用を高める。従って、アスピリンおよび一酸化窒素の相互プロドラッグを生成するために、それらをエステルとして結合させることは合理的であると考えられる。NCX−4016(NicOx SA、France)は、NO−アスピリン薬剤の原型化合物である(特許文献1、特許文献2、特許文献2、特許文献3)。それは、生体内でNOを生成し、抗血小板作用を有する。NCX−4016は、いくつかの動物モデル(modes)において、アスピリンより高い胃耐容性を示す。NCX−4016は、1996年に前臨床開発が開始され、2002年から、心臓血管障害(例えば、末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)(第II期))の処置、大腸癌予防(第I期)および癌疼痛において評価が行なわれている。
【0016】
NCX−4016は、過去10年間で最も広く推奨されている医薬開発の1つであり、重要な生物医学的進歩と考えられた(例えばLevin,2004参照)。しかし、NO−アスピリンプロドラッグとして、NCX−4016は重大な設計上の欠点を有するとみられる。アスピリンエステルプロドラッグの主要試験は、それがヒト血漿または血液中でインキュベートされた場合に、それがアスピリンまたはそのサリチル酸エステルに加水分解されるかどうかということである。NCX−4016は、置換フェノールのアスピリンエステルである。ヒト血漿におけるNCX−4016の加水分解パターンに関する公表データは存在しないが、類似のエステルであるパラセタモールというアスピリンエステル(ベノリレート、Williamsら、1989)、グイカオールというアスピリンエステル(Quら、1990)、およびフェノールのアスピリンエステル(Nielsen & Bundgaard,1989;表8も参照)については存在する。これらの化合物のいずれもが、関連生物学的マトリックス中でインキュベートされた場合に、0.5%より多いアスピリンを生成しなかった。従って、NCX−4016がアスピリンを生成することができる、または生成するはずであるという直接的根拠がない。該化合物に関する生体内試験および生体内代謝試験は、サリチレート代謝産物のみに言及している(Cariniら、2002)。さらに、NCX−4016によるCOX阻害は、アスピリンにおける場合ほど大きくない。これは重大な欠陥であり、なぜなら、血小板COX阻害は、ヒト血小板凝集を予防するためにかなり完全である必要があるからである。別の最近の研究は、NCX−4016が、アスピリンを放出せずに、その標的に直接的に作用しうることを示唆している(Corazziら、2005)。最近、ヒト組織においてアスピリンおよび一酸化窒素の両方を遊離することができる化合物を設計するために他の多くの努力がなされている。結果は、失望させるものであった。報告されている全ての化合物は、典型的なサリチレート経路によって加水分解を受け、有意量のアスピリンを遊離することができないが、それらは潜在的に一酸化窒素を放出することができる(Gilmerら、2007;Valezquezら、2005;Cenaら、2003)。
【0017】
特許文献4は、臨床的に使用されているイソソルビドニトレートであるISMNのサリチル酸エステルを記載している。記載された該化合物は、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)であり、その経皮貼布での使用可能性が議論されている。
【0018】
【化1】
【0019】
該化合物は、その抗狭心症特性および血小板洗浄特性について有用であると記載されている。化学的加水分解試験は、イソソルビド−モノ−ニトレート(ISMN)、サリチル酸、ならびに血小板洗浄活性および抗狭心症活性を示すアスピリンの生成を伴う分解を示すと報告された。しかし、ISMNAが実行可能なアスピリンプロドラッグとして作用しうるとは予想されない。なぜなら、グリコールアミド以外に他のアスピリンエステルがアスピリンプロドラッグとして作用することが示されておらず、また、これらは血漿BuChEと相補性になるように極めて意図的に設計されているからである。しかし、ISMNAは、生体外のウサギ組織において、血小板凝集の強力な阻害剤であることが分かり、後に、ISMNAがウサギ血漿エステラーゼによってアスピリンに効果的に変換されることが示された。それは、イヌにおける経口試験で試験され、該試験において、それは、下記の2つのアスピリンの薬理学的特徴において、アスピリンと比較された:トロンボキサン(血小板を刺激して凝集させる生化学物質)の生合成の阻害、および血小板凝集の機能阻害。ISMNAは、両マーカーに対して弱い作用を示し、これは、イヌにおいて少量のアスピリンを放出したにすぎないことを示している。ISMNAをイヌ血液中でインキュベートし、その加水分解を監視することによって、本発明者らは、イヌおよびウサギの血液中のエステラーゼの違いにより、それがイヌエステラーゼによってアスピリンに効果的に変換されないことを示すことができた。後に、ISMNAがヒト血漿においても生産的に加水分解されないことが明らかになった。生体外のヒト血漿溶液およびヒト血液中において、ISMNAは、>90%サリチレートおよび<10%アスピリンを生成する。同様に、ISMNAは、ヒト全血およびヒト血小板に富む血漿における血小板凝集の阻害剤として、アスピリンよりかなり低い効力である(そのIC50は、血小板に富む血漿中のアラキドン酸に対するヒト血小板凝集において、アスピリンの5μMと比較して85μMである)。その結果は、アスピリンのエステルに関して、血小板凝集またはトロンボキサン合成を阻害する能力が、アスピリンを生成する能力と相関関係にあることを教示している:非効率なプロドラッグは、血小板凝集の非有効阻害剤になる。低レベルのアスピリン放出および効力の不足は、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)がヒト用の実行可能な薬剤候補になるのを妨げる。
【0020】
特許文献5は、イソソルビドのジ−アスピリネート、およびイソソルビドの2つのモノ−アスピリネートエステル、即ち、イソソルビド−2−アスピリネートおよびイソソルビド−5−アスピリネートを開示している。特許文献5の主要な対象物であるイソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)は、試験された他の多くの以前のエステルプロドラッグ候補物質と表面上はなんら変わりはなかった。
【0021】
【化2】
【0022】
さらに、当業者は、イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)が実行可能なアスピリンプロドラッグとして機能することを予想しておらず、そして、加水分解が、アセチル基開裂、最終的にはサリチル酸以外のものを生じうると考えられる化学的または生化学的根拠を有していなかった。従って、本発明者らが本発明者ら自身の実験室において、ISDAがウサギ血小板に富む血漿中で血小板凝集を阻害することを示せたことは、極めて驚きであった。それは、イヌのグループへの経口投与後に、トロンボキサン合成に対する阻害作用も有していた(Gilmerら、2003)。アスピリン様特性は、血漿中でのISDAの加水分解がいくらかのアスピリンを生じることを示した。ISDAは、燐酸緩衝ヒト血漿溶液中でインキュベートした場合に、急速な加水分解を受けて約60%のアスピリンを生じることが示された(Gilmerら、2002)。残り40%の化合物は、非生産的サリチレート経路に沿って加水分解された。その研究は、ヒト血漿に存在する特定酵素が、イソソルビドジアスピリネート(ISDA)からのアスピリン放出を触媒することを示した。ブチリルコリンエステラーゼが、関与しているヒト血漿酵素であることが確認された。緊密に関係しているウマ血漿ブチリルコリンエステラーゼは、たった11%のアスピリンを生じた。Gilmerら(2001、2002)、は、さらに、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)およびイソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)の加水分解特性および生物学的作用も記載している。
【0023】
ジアスピリネートエステルISDAならびにNielsenおよびBungaardのグリコールアミドエステルは、ヒト血漿中でアスピリンドラッグとして有意な程度に作用することができる化学文献中の唯一のエステルである。アスピリンを加水分解生成物として生成しない化合物は、サリチル酸プロドラッグとしてより適切に分類される。これに関連して、例えば、ISMNAはウサギ組織においてのみアスピリンプロドラッグであるが、ヒト血液中ではサリチル酸プロドラッグである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開公報第95/030641号
【特許文献2】国際公開公報第97/16405号
【特許文献3】国際公開公報第00/44705号
【特許文献4】国際公開公報第94/03421号
【特許文献5】国際公開公報第98/17673号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
本質的な治療的潜在能力により、そして、アスピリンおよび一酸化窒素の両方を放出できる化合物への要求により、よりすぐれたアスピリンプロドラッグ化合物が緊急に必要とされている。一酸化窒素を放出するアスピリンエステルは、第一に、主要な血漿加水分解モデルにおいて、アスピリンへの変換を受けることができるエステルでなければならない。特に、水性加水分解およびα−キモトリプシンに抵抗し、しかも、ヒト血漿の存在下において急速な加水分解を受けて、アスピリンおよび潜在的に他の薬理学的活性成分、特に一酸化窒素を遊離する、アスピリンプロドラッグ化合物を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明により、一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物を提供する:
【0027】
【化3】
【0028】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環である]。
【0029】
本発明は、本明細書に記載されている化合物の薬学的に許容される塩および/または水和物にも関する。
【0030】
本明細書に使用される「アルキル」という用語は、一般式RC(O)R、またはより具体的には−OC(O)CnH2n+1のあらゆる一連の一価の基を包含し、それは脂肪族炭化水素から誘導されるエステルである。アルキルエステル鎖のアルキル鎖は、直鎖または分岐鎖であってよく、それにおいて、メチル基(−CH3)はC1アルキル基を表わし、エチル(−C2H5)はC2アルキル基を表わし、プロピル(−C3H7)はC3アルキル基を表わし、ブチル(−C4H9)はC4アルキル基を表わし、フェニル(−C5H7)はC5アルキル基を表わす。
【0031】
「アルコキシエステル」という用語は、一般式RC(O)OR、またはより具体的には−OC(O)OCnH2n+1を有する基を包含し、ここで、CnH2n+1は直鎖または分岐鎖であってよいアルキル鎖であり、それにおいて、メチル基(−CH3)はC1アルキル基を表わし、エチル(−C2H5)はC2アルキル基を表わし、プロピル(−C3H7)はC3アルキル基を表わし、ブチル(−C4H9)はC4アルキル基を表わし、フェニル(−C5H7)はC5アルキル基を表わす。
【0032】
「シクロアルキルエステル」という用語は、前記の式のCnH2n+1基が、環式アルキル基、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン等であることを意味する。
【0033】
「アリールエステル」という用語は、RC(O)Arを意味し、ここで、Arは、単純芳香族環から誘導される任意の官能基または置換基、例えば、ベンゼン環、トルエン、キシレン、安息香酸、ベンゾエート、ニコチネート、クロロベンゼンまたは他のハロベンゼン基を表わす。
【0034】
「5員複素環のエステル」という用語は、−C(O)ORringによって表わされる任意のエステル官能基を表わし、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環である。好適には、Rringは下記から成る群から選択されうる:チオフェン、チアジアゾリン、ピロール、イミダゾール、チアゾール、ピラゾール、4,5−ジヒドロピロール、イミダゾリジン−2−オン、ピラジン、4,5−ジヒドロチオフェンおよびイミダゾリジン−2−チオン。好ましいRringは、下記の複素環である:
【0035】
【化4】
【0036】
本発明の好ましい−C(O)ORring基は、イソ−オキサゾールオエート、オキサゾールオエート、またはチアジアゾールオエートである。
【0037】
好適には、全てのこれらの化合物は、ヒト血漿において、ある程度、アスピリンを活発に放出する。ある化合物は、他の化合物より高い活性を有することが示されているが、ある化合物はYとして選択される置換基の性質に依存してより低い活性を有する。ある化合物は、アスピリンの他にNOを放出する。
【0038】
好適には、好ましい本発明化合物は、ヒト血漿中で放出される15%アスピリンより高いか、またはそれに等しい活性を有する。
【0039】
本発明化合物の一酸化窒素放出基は、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステル、またはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含みうる。
【0040】
1つの実施形態において、イソソルビドアスピリネート化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有する:
【0041】
【化5】
【0042】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、C1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、アリールエステルまたはC1〜C8アルキルアリールエステル(それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい)である]。
【0043】
しかし、最も好ましいのは、オキサゾールオエート、イソキサゾールエートおよびチアジアゾールオエートから成る群から選択されうる5員複素環を含むエステルを有する化合物である。
【0044】
好ましい実施形態において、イソソルビドアスピリネート化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有する:
【0045】
【化6】
【0046】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0047】
本発明により、一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物を提供する:
【0048】
【化7】
【0049】
[式中、Yは、
−C(O)ORringであり、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい]。
【0050】
好ましい実施形態において、一酸化窒素放出基は、下記から成る群から選択されうる:−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2。
【0051】
特に、好ましい化合物は、一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物を包含する:
【0052】
【化8】
【0053】
[式中、Yは、
【0054】
【化9】
【0055】
であり、ここで、XおよびYは独立に、O、SおよびNから選択される]。
【0056】
他の実施形態において、一般式(I)で示される一般構造を有する化合物を提供する:
【0057】
【化10】
【0058】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0059】
他の好ましい化合物は、一般式(I)で示される一般構造によって示される:
【0060】
【化11】
【0061】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0062】
他の好ましい化合物は、一般式(I)で示される一般構造によって示される:
【0063】
【化12】
【0064】
[式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0065】
さらに他の好ましい化合物は、一般式(I)で示される一般構造によって示される:
【0066】
【化13】
【0067】
[式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0068】
好ましい実施形態において、イソソルビドアスピリネート化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0069】
【化14】
【0070】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。ベンジルオキシ置換基がアリール環上に使用される場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0071】
特に好ましい実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0072】
【化15】
【0073】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。ベンジルオキシ置換基がアリール環上に使用される場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0074】
さらに他の実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0075】
【化16】
【0076】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−(CH2)nONO2(n=1〜8)、C3〜C10シクロアルキルエステルまたはハロアルキルエステルのうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。ベンジルオキシ置換基が化合物上に存在する場合、それはo−ベンジルオキシであるのが好ましい。
【0077】
好適には、本発明化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0078】
【化17】
【0079】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ(alkyoxy)、o−ベンジルオキシ、−(CH2)nONO2(n=1〜8)、C3〜C10シクロアルキルエステルまたはハロアルキルエステルのうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。
【0080】
ハロアルキルエステル基が化合物の一部分である場合、ハロ置換基は、Cl、BrまたはFであってよい。
【0081】
化合物がハロアルキルエステルを含む実施形態において、ハロ置換基は、好適には、Cl、BrまたはFである。塩素および臭素が最も好ましい置換基である。しかし、Br置換基を有するハロアルキルエステルが特に好ましい。
【0082】
好適には、本発明化合物は、ヒトカルボキシエステラーゼの活性部位に高度の相補性を有し、それによって理想的経路に沿って加水分解を進め、アスピリンを遊離する。
【0083】
好都合には、該化合物は、2つ以上のヒト酵素によって特異的に活性化でき、なぜなら、患者が、一方に関して異常酵素機能を有する場合、おそらく他方が補われ、アスピリンを放出するからである。
【0084】
さらにアスピリンプロドラッグ化合物は、胃腸管の内腔に見出される条件下において安定であるが、血流への吸収後にアスピリンに急速に分解される。
【0085】
他の利点がこれらの化合物から得られ、なぜなら、それらは湿分に対して安定であり、従って、湿分に遭遇しうる配合において成功裡に使用できるからである。湿分安定性アスピリンプロドラッグは、溶液および経皮形態における配合の可能性を包含する多くの理由から有利である。アスピリンの経皮送達に関する問題の1つは、皮膚からの湿分が、貼付剤中のアスピリン貯留物の加水分解を生じることである。好適には、湿分安定性化合物は、貯蔵のために保護防湿性薬学的包装を必要としない。
【0086】
好ましい実施形態において、基Yは、下記から成る群から選択されうる:
【0087】
【化18】
【0088】
本発明化合物は、一般式(I)におけるYがこれらの特定構造のいずれかによって表わされる場合、ヒト血漿において、幾分それぞれ異なる程度にアスピリンを放出し、従って、全て活性である。
【0089】
しかし、下記から成る群:
【0090】
【化19】
【0091】
から選択されるY置換基を有する化合物が特に好ましく、なぜなら、これらの基のいずれかを含む化合物は、ヒト血漿において15%アスピリン放出より高いか、またはそれに等しい活性を示すからである。
【0092】
他の好ましい実施形態において、本発明化合物は、15%レベルより高いかまたはそれに等しいアスピリン放出活性を有する化合物を含み、該レベルは、37℃、pH7.4(燐酸緩衝液)の緩衝ヒト血漿への候補エステルの添加後に、ピークアスピリン生成においてHPCLによって測定される初期エステル濃度(モル)のパーセンテージとしてのアスピリンの量に基づく。
【0093】
特定の実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0094】
【化20】
【0095】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、メチル、ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−OAc、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。ベンジルオキシ置換基をアリール環上に使用する場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0096】
特定の実施形態において、化合物は、一般式(I)で示される一般構造を有しうる:
【0097】
【化21】
【0098】
[式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、−Cl、メチル、ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい]。ベンジルオキシ置換基をアリール環上に使用する場合、それはo−ベンジルオキシ置換基であるのが好ましい。
【0099】
最も好ましいイソソルビドアスピリネート化合物は、下記の構造の1つを有する:
【0100】
【化22】
【0101】
【化23】
【0102】
または、イソソルビドアスピリネート化合物は、下記から成る群から選択される任意の1つの構造を有しうる:
【0103】
【化24】
【0104】
本発明の他の態様において、一般式(II)で示される一般構造を有する薬剤用担体化合物を提供する:
【0105】
【化25】
【0106】
[式中、
Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり;
Xは、薬剤分子である]。
【0107】
この態様において、好ましい実施形態は、一般式(II)で示される一般構造を有する薬剤用担体化合物を提供する:
【0108】
【化26】
【0109】
[式中、
Yは、C1〜C8アルキルエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、またはC1〜C8アルキルアリールエステルであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく;
Xは、薬剤分子である]。
【0110】
本発明の好ましい担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0111】
【化27】
【0112】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
【0113】
他の実施形態において、本発明の担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0114】
【化28】
【0115】
[式中、Yは、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
ハロアルキルエステル官能基を含む化合物において、ハロ置換基は、Cl、BrまたはFであってよいが、Brが特に好ましい。
【0116】
好都合にも、本発明のアスピリンプロドラッグ化合物は、水性加水分解およびα−キモトリプシンに抵抗し、しかも、ヒト血漿の存在下に急速加水分解を受けて、アスピリンおよび潜在的に他の薬理学的活性成分を遊離する。好ましい本発明化合物は、アスピリンの他に、一酸化窒素を遊離する。
【0117】
従って、この態様において、本発明化合物は、より適したアスピリンプロドラッグ化合物、特に、アスピリンおよび一酸化窒素の両方を放出することができるプロドラッグ化合物を提供するので有利である。アスピリンおよび一酸化窒素(nitrous oxide)(NO)の両方を放出することができるプロドラッグデバイスが特に有利である。そのような化合物は、それらの個別成分より低い毒性であるが、より広い範囲の薬理学的作用および効能を有する可能性が高く、なぜなら、アスピリンおよび一酸化窒素は、心臓血管疾患および癌用途において相乗効果を有するからである。
【0118】
一酸化窒素放出アスピリンエステルは、まず第一に、主要血漿加水分解モデルまたは類似の生物学的関連モデルにおいて、アスピリンへの変換を受けることができるエステルでなければならない。本発明の担体は、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステルまたはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含む一酸化窒素放出基を有しうる。
【0119】
本発明のプロドラッグが、典型的な消化プロテアーゼの存在下において、および粘膜CACO−2細胞に見られる酵素に対して、安定であるが、ヒトエステラーゼ、特にBuChEおよびCE−2によって、アスピリンに加水分解しうるという事実により、さらなる利点が得られる。この態様において、担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0120】
【化29】
【0121】
[式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10であり;
Xは、薬剤分子である]。
【0122】
好適には、本発明の担体は、それらのヒトエステラーゼ活性部位との相補性により、加水分解を正確な位置に向ける。
【0123】
特に好ましい実施形態において、本発明の担体は、一般式(II)で示される一般構造を有しうる:
【0124】
【化30】
【0125】
[式中、Yは、
C3〜C10シクロアルキルエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);または、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である]。
ハロアルキルエステル官能基を含む好ましい化合物において、ハロ置換基は、Cl、BrまたはFであってよいが、Brが特に好ましい置換基である。
【0126】
他の有利な実施形態において、担体化合物は、下記から成る群から選択されうる:
【0127】
【化31】
【0128】
[式中、Xは、プロドラッグ形態で運搬される薬剤分子である]。
【0129】
本発明の他の態様において、本明細書に記載されている担体化合物を含んで成る薬剤化合物を提供する。
【0130】
さらに他の態様において、本発明は、先に記載した化合物、および少なくとも1つの医薬的に許容される担体または賦形剤を含んで成る医薬組成物を提供する。
【0131】
特定の態様において、本発明の化合物および/または組成物を生体内または生体外で使用して、アスピリンが作用を有しないレベルで構成的血小板グリコール−タンパク質発現を減少させうる。
【0132】
本発明の化合物および/または組成物を、生体内または生体外で使用して、アスピリン様作用を誘発することもできる。アスピリン様作用は、例えば、抗血小板活性の減少、またはCOX生成物、例えば、トロンボキサンA2またはマロンジアルデヒドの阻害である。好都合には、好ましい本発明化合物は、アスピリン自体より強力であり、ヒト血小板凝集のより優れた阻害剤であり、COX下流生成物(例えば、トロンボキサンA2およびマロンジアルデヒド)ならびに構成的血小板グリコ−タンパク質発現のより優れた阻害剤である。
【0133】
他の態様において、本発明化合物は、心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症を包含する疾患または症状または徴候の処置のための医薬の製造に使用できる。
【0134】
アスピリンは、吸収の間に腸壁の細胞を化学的に刺激することによって、およびその保護バリヤーの分泌を妨げることによって、胃出血を生じる。この問題の解決法は、吸収過程において後に除去されるマスキング基を化学的に結合させることによって、アスピリンを一時的に不活性にして、胃腸管の脆弱面から離すことである。この技術の開発における主要課題は、血液中で予想通り正確に除去されるマスキング基を見出すことであり、これは他に誰も克服できていない障害であった。本質的に、本発明は、体によって活性化されるアスピリンの不活性形態を提供する。
【0135】
設計をさらに改良して、一酸化窒素先駆物質を担体基に組み込んで、アスピリンと共にNOを放出することができるさらなる化合物を提供する。従って、そのような二重プロドラッグは、潜在的に、2つの異なるレベルで病理学的過程を妨げる。ニトロ−アスピリン法は広く受け入れられつつあるが、本明細書に記載されている方法は、ヒト組織においてアスピリンおよびNOの両方を立証可能に生成する唯一の方法である。
【0136】
ヒト血液中におけるイソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA、表2の16)の加水分解を、それがどのようにアスピリンを生成するかを見出すために調査した。
【0137】
イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA、16)は4つのエステル基を有し、1つは、2個の各アスピリン成分上に位置し、もう1つは、これらの各成分をイソソルビドコアに結合させている。そのアスピリン生成データの直接的解釈は、位置2または5における2個のアスピリネートエステルの1つが、エステラーゼによって直接的にISDAから分離して、アスピリンを遊離するということであった。これは部分的に真実であるが、実際のメカニズムはより興味深く、予期しないものであることが明らかになった。ISDAにおける4個のエステル基は、潜在的に複雑な一連のエステル代謝産物を伴うエステラーゼによる加水分解を受けやすい。最終的に、これらの全てがイソソルビドおよびサリチル酸に加水分解される。加水分解カスケードをクロマトグラフィーによって追跡することができ、それは、代謝産物が発生し、崩壊するのに伴って、各代謝産物の分離および測定を可能にする。多くの実験を行ない、該実験において、ISDAを生物学的培地に導入し、反応を連続的時点で停止し、代謝産物混合物をHPLCによって測定した。時間経過に伴うこのデータのプロットを、加水分解プログレス曲線と称する。ISDAのプログレス曲線を、図3Aおよび3Bに示す。曲線は、時間の経過に伴うISDAの消失およびアスピリンの出現を示す。これらの曲線の注意深い調査は、次の2つのことを示している:親ISDAが消失した後に、アスピリン濃度が増加し続けた;および、第二に、そのピークが、他の代謝産物の増加および消失後に現れた。これは意外かつ極めて重大な発見であり、なぜなら、それは、ISDAがヒト血漿に添加された後に現れるアスピリンが、IDSA自体からではなくISDAの代謝産物から放出されることを示したからである。従って、ISDAの潜在的代謝産物の全てが独立に合成され、それらを血漿中でインキュベートし、HPLCによってそれらの加水分解を追跡することによって、HPLCによりアスピリンプロドラッグとして評価された。これらの1つであるイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)は、主要ヒト血漿モデルにおいて現在までに知られている最も有効なプロドラッグであることがわかった(図4AおよびB)。ヒト血漿において、それは、担体イソソルビド−5−サリチレートと共に、大部分がアスピリンに変換される。それは、精製BuChE溶液中で、ほぼ排他的にこの経路に沿って、加水分解される(図4B)。
【0138】
これらの結果は全体的に、イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA、16)が、真アスピリンプロドラッグ、その代謝産物イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)の、先駆物質として作用することを示した。
【0139】
ヒト血漿BuChEが、先ず、イソソルビド−ジ−アスピリネート(ISDA)のアスピリネートのアセチル基(位置5に結合している)を選択的に除去し、それによってイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)を生成することが見出された。次に、ヒトBuChEは、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)からアスピリンを効果的に分離する。ISDAは、他の並行経路に沿った加水分解を受け(図5は、明快にするための、これの概略版である)、それはイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)ほど効果的にアスピリンに代謝されず、生物学的アッセイにおいても強力でないことがわかった。ISASは、血漿中で85%のアスピリン放出率(t1/2 2分)を有するが、ISDAは、アスピリン経路に沿って約60%加水分解され、残りの40%は非生産的サリチレート経路に沿って進む。実際には、ISDAは結合した2個のアスピリン分子を有するので、その全体的歩留まりは厳密には30%である。特定の酵素阻害剤および精製酵素溶液を使用して、我々は、ISASの独特に正確な活性化に関与しているヒト血漿中の酵素を、ブチリルコリンエステラーゼとして明解に確定することができた(例えば、図5)。
【0140】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)は、特許文献5に記載されていない。それは潜在的代謝産物であるが、それがプロドラッグになることは誰も予想できなかった。ISDAの他の実際のまたは潜在的な代謝産物(例えば、5−アスピリネート、2−アスピリネートまたは2−サリチレート−5−アスピリネート)をそれぞれ合成し、特性決定した。これらはいずれも、ヒト血漿においてアスピリンプロドラッグとして作用しなかった。
【0141】
好都合には、ISAS(2)は、コラーゲン(図6)、ADPおよびアラキドン酸によって誘発されるヒト血小板凝集の阻害剤としてアスピリンより有意に強力であり、従って、トロンボキサンA2およびマロンジアルデヒドを包含するCOX下流生成物を阻害する。それは、さらに、アスピリンが作用を有しない濃度における構成的グリコ−タンパク質発現を減少させる。イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)のアスピリンより高い効力は、薬剤開発の点から望ましいが、困惑させるものであり、継続的調査の対象である。さらに、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)は、その薬理学的作用を発揮するために、エステラーゼによって活性化される必要があることも示され、それは内因性生物学的活性を有さず、従って、プロドラッグである。ISASはヒト血液中で加水分解を受け、<2分の半減期を有するが、それは、典型的な消化プロテアーゼの存在下において、およびCACO−2細胞に見られるエステラーゼに対して安定である。それは、ヒト全血中においてアラキドン酸に対して血小板凝集を阻害し(インピーダンス法)、17μMのIC50を有する。この方法におけるアスピリンのIC50は、25μMである。ISASは、生体内でのTXA2合成(TXB2/全血)および洗浄血小板によるMDA合成を妨げるのにも有効である。
【0142】
酵素試験は、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)が、次の2つのヒト酵素によって特に活性されることを示している:ヒト血漿中のBuChE、および、それほど急速でないが同じ経路A/B比を有し、腸管上皮ミクロソームに存在するヒトカルボキシエステラーゼ−2(CE−2)。2つの酵素がイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)からアスピリンを放出できるという観察は、臨床的に重要性を持ち、有利である:患者が一方に対して異常酵素機能を有する場合、他方が補ってアスピリンを放出する可能性が高い。設計に関する他の利点は、化合物が胃腸管の内腔に見られる条件下に安定であるが、吸収後に、充分に特性決定された代謝産物(サリチル酸、イソソルビド、そして当然アスピリン)に急速に分解することである。(これに関して、CE−2およびBuChEによる基質選択性の類似は、極めて意外である。)化合物の他の利点は、その担体が最終的にサリチル酸およびイソソルビド(無害の、または医薬的に充分に特性決定された化合物)に代謝されることである。ISASはそれ自体で有意な医薬的長所を有するが、その発見はより一般的に価値のあるものを示す。ISASの発見、および血漿におけるその生成およびアスピリン放出についての動態モデルが、我々の最近のレポート(Moriartyら、2008)に記載されている。
【0143】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)は、アスピリンプロドラッグとして作用し、なぜなら、プロドラッグ分子のイソソルビド−5−サリチレート部分が、ヒトカルボキシエステラーゼの活性部位に高度の相補性を有するからである。それが極めて急速な加水分解を受けるのはこのためである。ISASのイソソルビド−5−サリチレート部分または担体基は、アスピリンからのその分離をうまく促進し、それと同時にアスピリンアセチル基の加水分解を抑制する。それは、新しい極めて有効な担体型を、アスピリンおよび潜在的に他のカルボン酸薬剤に導入する。これは、本発明に重要な洞察である。
【0144】
【化32】
【0145】
イソソルビド−5−サリチレート構造を、そのエステラーゼ相補性を維持しながら、向上した医薬特性のために変えることができるかどうかという疑問が生じた。さらに、ISMNA(それにおいて、5−サリチレートがニトレートで置き換えられている)はヒト血漿においてアスピリンプロドラッグではないので、5位置での置換のパターンがアスピリン放出に重大な意味を持つという根拠があった。結論は、5−ニトレートが生産的ヒトエステラーゼ結合に適合性でないということである。約25の化合物を調製し、それらにおいて、5位置を意図的に変化させて、担体基のアスピリン放出特性における5−基の影響を試験した(図7および表2)。新規アスピリンエステルを、ヒト血漿溶液中でインキュベートし、血漿溶液に添加した化合物のモル量に対して生成されたアスピリンの量を測定することによって試験した。エステルは、特徴的に急速な加水分解を、AおよびB経路に沿って種々の程度に受け、あるものはISASの生産性に近い放出率を有していた(表2および図7)。
【0146】
一連の25のエステルのアスピリン放出特性を表2に示し、構造式としてのいくつかの選択例をアスピリン放出(%)と共に図7に示す。5位置の基が、加水分解の方向に顕著に影響を与えることが示された(図8、および図9中の例)。
【0147】
【化33】
【0148】
非置換化合物(イソソルビド−2−アスピリネート、17)はアスピリンプロドラッグではなく、5−置換がアスピリン放出に必要とされることを示している。一般に、有意なアスピリン放出が、5−ベンゾエートおよびニコチネートエステルによって生じることが見出された。脂肪族エステルで置換された化合物の場合の優性加水分解部位は、通常のアセチルエステルであった(表2の化合物4、5、23参照)。フェニル基が2位および3位で置換されたアリールエステルが、最も生産的であることとも見出された。例えば、化合物1は生産的アスピリン経路に沿って約60%に加水分解を受ける。
【0149】
【化34】
【0150】
見出された最も有効な化合物はISASであり、それは精製ブチリルコリンエステラーゼの存在下にアスピリンへのほぼ完全な変換を受け、ヒト血液中で約80%であった。
【0151】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)、ISDAの代謝産物は、ヒトエステラーゼの存在下にアスピリンプロドラッグとして作用する置換5−芳香族エステル化合物の新しいファミリーに属する。オルトまたはメタ位でさらに置換されたベンゾエート化合物がそのように成功している理由は不明であるが、酵素の活性部位における好都合な配置による可能性が高い。酵素攻撃の位置のこの種の遠隔制御は異例である。
【0152】
【化35】
【0153】
このように、特定のイソソルビド系担体基は、正確な位置で加水分解を促進し、ヒト血液中でのアスピリン遊離を生じることが見出された(上記b)。特定の置換イソソルビド化合物は、ヒト血液中でインキュベートした場合に、アスピリンを有意量で放出する。選択的加水分解は、担体基と、血漿に存在するヒトブチリルコリンエステラーゼ、および腸管上皮におけるCE−2との、極めて特異的な相互作用によって生じる。
【0154】
アスピリンのイソソルビドエステルが、アスピリンプロドラッグとして作用しうることが認識されたことによって、5位置が適切に置換されることが本発明に極めて重要であることが分かった。最も有効な置換基は5−アリールエステルであり、それはベンゼン環の−2または−3位置でさらに置換されている。そのような基は、アセチル基加水分解ではなく、遠隔イソソルビド−2位置でのアスピリン放出を促進する。化合物2は、最も有効であり、プロドラッグについて最も研究され、それは、アスピリンプロドラッグ用の新しい有効担体種の同定に導いている。しかし、本発明は、5位置において異なる置換がなされているが、血漿酵素の存在下に等しく効果的にアスピリンに変換される他の化合物も包含し、予期している。特に、アスピリンおよび一酸化窒素NOの両方を放出することができるプロドラッグに、強い商業的および学術的関心が持たれている。
【0155】
生産的加水分解のための構造的必要条件(またはエステラーゼ部位内の指向)が同定されたので、アスピリンおよび一酸化窒素の両方のプロドラッグを設計する努力が続けられている。SARは、イソソルビド−5−ベンゾエート担体基が、その加水分解指向特性に影響を与えずに、ベンゼン環上で硝酸エステルでのさらなる置換を許容しうることを示唆した。残念なことに、芳香族硝酸エステルは、オルト−ニトロフェノールに容易に不均化を起こす不安定なフェノールの硝酸エステルである。それに代わって、下記のパターンに適合するイソソルビド−2−アスピリネート−5−ベンゾエートの多くのニトロキシメチル誘導体が生成された。これらは、表2の化合物20〜23を包含する。
【0156】
【化36】
【0157】
これらは、主要ヒト血漿加水分解モデルにおいて、ヒト血漿中でアスピリンを生成する能力について試験された。前記のパターンと一致して、オルト−およびメタ−置換ニトロキシメチル化合物は、ヒト血漿においてアスピリンを遊離することが見出された。パラ置換化合物からのアスピリン放出はなかった。成功している化合物は、明らかにCE−2酵素に媒介されて、ヒト腸ミクロソームの存在下においても有意量のアスピリンを放出し、最も重要なISASと同じパターンに従っていた(図9)。これの利点は、患者が低BuChE活性を有している場合に、CE−2が一酸化窒素供与成分と共にアスピリンを放出しうることである。化合物20は、生体外で、コラーゲン誘発血小板凝集について試験され、凝集の阻害においてアスピリンより強力であることが見出された。それは、PRPにおけるADP誘発血小板凝集の、より強力な阻害剤でもある。しかし、それはNOも遊離するので、アスピリンが作用を有しない病理学的刺激に対する凝集を阻害すると予想される。アスピリンは、トロンボキサン依存性凝集、即ち、ただ1つの刺激に対する血小板凝集だけを阻害する。それは、高用量コラーゲン凝集、またはADPに対する凝集において、ほとんど作用を有しない。一酸化窒素は、アスピリンの胃毒性を減少させ、潰瘍治癒を促進することが示されている。アスピリンおよび一酸化窒素の両方を遊離することができる化合物は、癌予防、治療、および心臓血管疾患処置において、有意な潜在能力を有する。糖タンパク質インテグリン受容体GPIIb/IIIaの活性化は、血小板凝集が生じるのに極めて重要である。さらに、α顆粒から血小板表面膜へのP−セレクチンの移動は、それぞれ、血小板接着の基礎となる。我々は、種々の濃度の化合物を使用して、凝集時のこれらの受容体を測定した。図32〜36は、pro−asaおよびニトロ−asaが、GPIIb/IIIaの活性化およびP−セレクチンの移動を有意に減少させたことを示している。GPIIb/IIIaの活性化は、凝集を刺激するかまたは阻害する経路の被制御動的相互作用である。一酸化窒素は、主要阻害剤経路を媒介し、GPIIb/IIIa機能を調節する。アスピリンは、ISAS(2)または硝酸エステル化合物31〜32と同じ濃度において、血小板活性化を阻害できなかった。
【0158】
本発明は、本発明化合物を含んで成る医薬組成物も提供し、該組成物は、経口投与用に、カプセル剤または錠剤として、または経皮投与用に、例えば皮膚貼付剤の形態に適合させうる。該組成物は、坐剤または水性配合物の形態であってもよい。
【0159】
本発明は、抗血小板活性および/または他のアスピリン型活性、例えば、解熱および/または抗炎症活性を達成する化合物の使用も提供する。
【0160】
本発明の特に好ましい実施形態において、組成物は、他の医薬的存在物、特に、治療用油、一般に魚油、例えばタラ肝油、または植物油、例えばイヴニングプリムローズ油を含有する。この場合、組成物は、活性成分を含む充填剤を含有する保持シェルを有するカプセルの形態でありうる。充填剤は、懸濁化剤、例えば、1つまたはそれ以上のコロイド状二酸化珪素、水素化植物油(任意に、蜜蝋との組合せ)、高融点部分グリセリド、および/またはレシチンから選択されるような懸濁化剤を包含しうる。充填剤は、抗酸化剤、例えば、1つまたはそれ以上のD−アルファトコフェロール、D−アルファトコフェロールアセテート、混合トコフェロールおよびアスコルビン酸から選択される抗酸化剤も包含しうる。シェルはゼラチンシェルであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0161】
【図1】図1は、アスピリン毒性除去理論を示す。
【図2】図2は、成功のアスピリンプロドラッグが、エステルBにおいて、O−アセチル基Aより高い率で加水分解を受けなければならないことを示す。
【図3】図3Aは、10%ヒト血漿(pH7.4、37℃)におけるISDAの加水分解についてのプログレス曲線を示す:連続的時点においてHPLCによって測定された親およびいくつかのその代謝産物の濃度を示す:ISDA(●)、アスピリン( )、サリチル酸(○)、イソソルビド−2/5−アスピリネート−2/5−サリチレート(□)、イソソルビドジサリチレート(◇)およびイソソルビド−5−サリチレート(△)。最大アスピリンは親ISDAの消失に関して遅延し、代謝産物がその生成に関与していることを示す。図3Bは、ISDA曲線を除いてプロットを再度示す。
【図4】図4Aは、50%ヒト血漿(pH7.4)中、37℃におけるイソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレートISAS(2)の加水分解についてのプログレス曲線を示す:ISAS(□)、イソソルビドジサリチレート(◇)、イソソルビド−5−サリチレート(△)、アスピリン( )およびサリチル酸(○)。図4Bは、精製ヒト血清BuChE、pH7.4および37℃での、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレートISASの加水分解についてのプログレス曲線を示す:イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(□)、イソソルビド−5−サリチレート(△)、アスピリン( )、サリチル酸(○)およびイソソルビドジサリチレート(◇)。
【図5】図5は、ISDAが、先ず、5−アスピリネートのアセチル基において加水分解を受け(70%)て、ISAS(2)を放出し、これが、主にアスピリンおよびイソソルビド−5−サリチレートへの加水分解を受けることを示す。血漿コリンエステラーゼ(BuChE)による生産的介入の主要点が、赤で示されている。これはエステラーゼに対して比較的安定であることに注目すべきである。ISDAの加水分解は、非生産的並行経路に沿っても進み(30%)、該経路はアスピリンを放出せず、その代わりにイソソルビドおよびサリチル酸を放出する。
【図6A】図6Aは、生体外でのISAS(2)およびアスピリン(ASA)による、コラーゲン誘発ヒト血小板凝集の阻害を示す濃度反応曲線を示す。凝集を50%阻害する薬剤濃度(IC50)も示されている。ISASは、凝集においてASAより有意に強力である(データは平均±SD、p<0.01、n=4)。
【図6B】図6Bは、ISAS(2)、一酸化窒素放出プロドラッグ31、32、33およびアスピリンについての相対阻害曲線を示す。
【図6C】図6は、ISAS、化合物31〜33またはアスピリンと共にインキュベーションした後の、PRPの%凝集を示す。この図は、5つの化合物、アスピリン、ISASおよび3つの異性硝酸塩31、32、33の、異なる3つの濃度での、コラーゲンに対する凝集のパーセント阻害ではなくコラーゲンに対するパーセント凝集を示す(***P<0.05)。
【図7】図7は、表2からの、ヒト血漿溶液中でインキュベートした選択的5−エステルの例を示す。%値は、サリチル酸エステルを遊離する部位A、およびアスピリンを遊離する部位Bで生じた加水分解の量を表わす。この図は、遠隔位置5のエステル構造への、位置2でのアスピリン放出依存性を示す。
【図8】図8は、5−置換基「R」が加水分解経路に決定的に影響を及ぼすことを示す。
【図9】図9は、ヒト腸管上皮からのミクロソームの存在下にインキュベーションした後の、イソソルビド−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)−ベンゾエートの消失、ならびに、アスピリン、サリチル酸、およびニトレート置換イソソルビド担体の遊離を示す。
【図10】図10は、保護サリチル酸へのカップリング、次に脱ベンジル化による、ISMNからのISASの合成を示す。
【図11】図11は、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート21の調製ための合成経路を示す。
【図12】図12は、2−クロロメチルベンゾイルクロリドの調製ための合成経路を示す。
【図13】図13は、ニトレート置換5−エステルの直接合成を示す。
【図14】図14は、クロロメチルベンゾエートでのエステル化、およびハライドの硝酸銀との交換による、イソソルビド−2−アスピリネートの3−ニトロキシベンゾエートエステルの合成を示す。
【図15】図15は、HLM中のIs−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)を示す。9.4μMのアスピリンが生成された。
【図16】図16は、HIM中のIs−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)(1.04×10−4M)を示す。27μMのアスピリンが生成された。
【図17】図17は、Is−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)を添加する前に、強力BChE阻害剤と共に5分間インキュベートされたHLMを示す。16μMのアスピリンが生成された。
【図18】図18は、HLMおよびiso−OMPA(10μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)(1.1×10−4M)を示す。8.5μMのアスピリンが生成された。
【図19】図19は、HIMおよびBNPP(14μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS、2)(1.04×10−4M)を示す。
【図20】図20は、50%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(2.5×10−4M)を示す。26μMのアスピリンが生成された。
【図21】図21は、80%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1×10−4M)を示す。21μMのアスピリンが生成された。
【図22】図22は、HLMおよびiso−OMPA(14.4μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1×10−4M)を示す。1.4μMのアスピリンが生成された。
【図23】図23は、HIM中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1.05×10−4M)を示す。20μMのアスピリンが生成された。
【図24】図24は、HIMおよびiso−OMPA(14μM)中の、Is−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート(21)(1.1×10−4M)を示す。12.7μMのアスピリンが生成された。
【図25】図25は、50%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(2−ニトロキシメチル)ベンゾエート(20)(1×10−4M)を示す。10.3μMのアスピリンが生成された。
【図26】図26は、HIM中の、Is−2−アスピリネート−5−(2−ニトロキシメチル)ベンゾエート(20)(1×10−4M)を示す。21.7μMのアスピリンが生成された。
【図27】図27は、50%ヒト血漿中の、Is−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート(22)(1×10−4M)を示す。2μMのアスピリンが生成された。
【図28】図28は、HIM中の、Is−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート(22)(1×10−4M)を示す。9.97μMのアスピリンが生成された。
【図29】図29は、HIM(40μg/mL)中の、2−アセトキシ安息香酸フェニルエステル(アスピリンのフェノールエステル)(1.09×10−4M)を示す。7.7μMのアスピリンが生成された。
【図30】図30は、HIM(20μg/mL)中の、2−アセトキシ安息香酸フェニルエステル(1.09×10−4M)を示す。5.3μMのアスピリンが生成された。
【図31】図31は、異なる3つの濃度での、5つの試験化合物による、生体外でのADPに反応した血小板凝集の阻害を示す。ゼロ濃度は、賦形剤、DMSOによる阻害である。
【図32】図32は、試験化合物2、31〜33、アスピリンで処理した洗浄血小板における、コラーゲンに反応したPAC−1発現を示す。この図は、洗浄血小板における、パーセントPAC−1糖たんぱく質発現を示す。この調製物においてエステラーゼがほとんど存在せず、従って、データは、本発明のプロドラッグのエステラーゼ活性化が、生体外での血小板機能の阻害前に必要とされることを示す。
【図33】図33は、試験化合物2、31〜33、アスピリンを使用した、血小板に富む血漿におけるコラーゲンに反応したPAC−1発現を示す。この図は、血小板に富む血漿における糖タンパク質発現の程度を示す。糖タンパク質発現は、完全凝集における血小板の架橋に必要とされ、データは、本発明化合物が、血漿調製物におけるこの発現を抑制することにおいて、アスピリンより強力であることを示す。
【図34】図34は、試験化合物2、31〜33、アスピリンを使用した、血小板に富む血漿におけるコラーゲンに対するP−セレクチン発現を示す。P−セレクチンは別の糖タンパク質であり、その発現は血小板活性化と相関する。本発明化合物は、血漿調製物における血小板活性化を阻害することにおいて、アスピリンよりはるかに強力である。
【図35】図35は、試験化合物2、31〜33、アスピリンを使用した、洗浄血小板におけるコラーゲンに対するP−セレクチン発現を示す。ここでも再び、洗浄血小板において、糖タンパク質発現の幾分かの減少が見られる(コラーゲンとの有意な差(***P<0.001))。しかし、エステラーゼが欠乏している洗浄血小板懸濁液において、該化合物はアスピリンほど有効ではない。
【発明を実施するための形態】
【0162】
一般実験法:材料
5−ISMNは、Sifa Ltd.から得た。精製ヒト血清ブチリルコリンエステラーゼ(EC3.1.1.8)、ウサギ肝臓カルボキシルエステラーゼ(EC3.1.1.1)、BNPP(ビス−4−ニトロフェニルホスフェート)、iso−OMPA(テトライソプロピルピロホスホラミド)、プールヒト肝臓ミクロソーム、3−クロロメチルベンゾイルクロリド、4−クロロメチルベンゾイルクロリド、硝酸銀、フタリド、ジクロロトリフェニルホスホラン、およびHPLC用溶媒は、Sigma−Aldricから得た。コラーゲンおよびADPは、Chronolog(Havertown、PA、U.S.A.)から得た。高親和性GPIIb/IIIaに対するアロフィコシアニン(APC)接合モノクローナル抗体(PAC−1−APC)、およびヒト血小板Pセレクチンに対するAPC接合モノクローナル抗体(CD62P)は、BD Biosciences(Oxford、UK)から購入した。
【0163】
他の全ての溶媒および試薬は、分析用であった。プールヒト腸ミクロソームは、UKのBD Gentestから得た。
【0164】
本発明化合物は、イソソルビド−モノ−ニトレートアスピリネート(ISMNA)から容易に調製され、それ自体は、Gilmerら、2001に従って、イソソルビド−モノ−ニトレート(ISMN)のアセチルサリチル(salicoyl)クロリドでのエステル化によって調製される。ニトレートは、水素の雰囲気下に、炭素上パラジウムでの処理によって選択的に除去されて、主要中間体イソソルビド−2−アスピリネートを生じる。該化合物は、イソソルビドの選択的5−エステル化、次に、2位におけるアスピリネート基の結合によっても得られる(イソソルビドにおける5位置は、エンドであるにもかかわらず、アシル化に対して2−エキソ位置より反応性であり、なぜなら、5−OHは分子内H結合によって活性化されるからである)。
【0165】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(ISAS)の場合、サリチル酸での直接アシル化は、サリチレート−OHとイソソルビド−OHとの競合によって難しくなる。従って、ベンジル−エーテル保護サリチル酸を、先ず、標準DCCカップリング法によって導入し、ベンジル保護を還元条件下に除去する(図10)。
【0166】
本発明の他のエステル化合物は、DCCカップリングを使用するか、またはトリエチルアミンのような第三級塩基の存在下に適切な酸塩化物で処理することによる、直接アシル化によって調製できる。ニトロキシ置換エステルは、適切に置換された酸に直接的に結合させることによって調製しうる。または、ニトロキシ置換化合物は、クロリドまたはブロミドを有する酸で先ずエステル化することによっても得られ、次に、それをアセトニトリル中においてAgNO3で処理することによってニトレートと置きかえることができる。
【実施例】
【0167】
実験例:イソソルビド−2−アスピリネート−5−エステルの合成:分子式は図2に示されている。
【0168】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[2−メチルベンゾエート] 1
ジクロロメタン(15mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.11mL、0.98mmol)および2−トルオイルクロリド(0.09mL、0.72mmol)を添加した。反応混合物を室温で24時間撹拌し、次に、水(2×25mL)、HCl(1M、25mL)およびNaHCO3飽和水溶液で洗浄し、次に、無水MgSO4で乾燥した。溶媒を真空除去して、粗生成物0.41gを褐色油状物として得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を溶離剤として使用)によって精製して、生成物を黄色油状物として得た。これをエタノールで再結晶して、化合物1を白色固形物として得た(0.11g、39.6%)。
融点104〜106℃。IRvmax(KBr):2987.1および2922.8(C−H、伸縮)、1762.0および1718.1(C=O)、1259.5および1199.8(C(O)OR、芳香族)、1072.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:449.1212(M++23)、実測値:449.1238(M++23)。
【0169】
【化37】
【0170】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート、ISAS、2
2−ベンジルオキシ安息香酸(364.8mg=1.6mmol)を、無水DCM(20mL)に溶解し、撹拌した。Is−2−asp−5−OH(500mg=1.6mmol)および10% DMAPを添加した。フラスコを0℃に冷却し、DCC(340mg、1.6mmol)を添加した。撹拌を5分間継続し、温度を室温にし、一晩撹拌した。反応物を濾過し、濾液を0.1M HCl、5% NaHCO3および水で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、蒸発させて、油状物を得た。これを、カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1))によって精製して、白色生成物を得た(Rf=0.4、228mg)。これをメタノール/酢酸エチル(1:1)に溶解させた。Pd/Cを添加し、反応物を水素下に一晩撹拌した。反応物を濾過し、濃縮した。油状物をカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(1:1)を使用)によって精製して、白色固形物を得た(107mg、Rf=0.67)。
【0171】
【化38】
【0172】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[3−メチルベンゾエート] 3
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DCC(0.13g、0.65mmol)およびDMAP(0.08g、0.07mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、3−トルイル酸(0.09g)を添加し、24時間撹拌した。HCl(30mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)、飽和ブライン溶液(30mL)および水(3×30mL)で洗浄した後、反応混合物を無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、粗生成物を透明油状物として得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:2)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物3を白色結晶として得た(0.12g、43.2%)。
融点96〜98℃。IRvmax(KBr):2987.1および2922.8(C−H、伸縮)、1762.0および1718.1(C=O)、1259.5および1199.8(C(O)OR、芳香族)、1072.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:449.1212(M++23)、実測値:449.1234)(M++23)。
【0173】
【化39】
【0174】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−アセテート 4
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)の溶液に、トリエチルアミン(0.09mL、0.65mmol)および無水酢酸(0.06mL、0.65mmol)を添加した。反応器を室温で24時間撹拌し、次に、水(2×20mL)、HCl(1M、30mL)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)で洗浄し、MgSO4で乾燥した。溶媒を回転蒸発によって除去して、粗生成物0.52gを得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:2)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物4を白色結晶性物質として得た(0.1g、43.8%)。
融点96〜98℃。IRvmax(KBr):2966.9および2928.6(C−H、伸縮)、1751.6および1734.0(C=O)、1607.8(C=C、伸縮)、1262.0および1193.9(C(O)OR、芳香族)、1082.5(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:373.0899(M++23)、実測値:373.0877(M++23)。
【0175】
【化40】
【0176】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−プロピオネート 5
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.3g、0.98mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解し、無水プロピオン酸(0.14mL、1.07mmol)およびトリエチルアミン(0.09mL、1.07mmol)をそれに添加した。これを室温で24時間撹拌し、次に、HCl(30mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)および水(2×30mL)で洗浄した。反応物を無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、粗生成物を黄色油状物として得た(0.19g)。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(5:2)を溶離剤として使用)によって精製して、生成物を白色結晶として得た(0.3g、84.3%)。
融点54〜56℃。IRvmax(KBr):2989.0および2933.0(C−H、伸縮)、1764.0および1734.5(C=O)、1606.3(C=C、伸縮)、1254.3および1193.6(C(O)OR、芳香族)、1080.6(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:387.1056(M++23)、実測値:387.1069(M++23)。
【0177】
【化41】
【0178】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−ベンゾエート 6
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(1.0g、3.25mmol)の溶液に、安息香酸(0.59g、4.88mmol)、DCC(1.34g、6.49mmol)およびDMAP(0.38g、3.11mmol)を添加した。反応混合物を室温で3時間撹拌し、次に、沈殿物を濾過によって除去し、濾液をHCl(30mL、1M)、Na2HCO3飽和水溶液(30mL)および水(3×30mL)で洗浄した。それを無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、無色油状物を得、これをエタノールで再結晶して、生成物を白色結晶として得た(1.13g、84.3%)。
融点80〜82℃。IRvmax(KBr):2991.1および2932.9(C−H、伸縮)、1762.9および1720.6(C=O)、1275.5および1199.1(C(O)OR、芳香族)、1078.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:435.1056(M++23)、実測値:435.1043(M++23)。
【0179】
【化42】
【0180】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−ニコチネート 7
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.3g、0.98mmol)を、0℃で、DCC(0.2g、0.98mmol)およびDMAP(0.12g、0.98mmol)の存在下に、10分間撹拌した。反応器を室温にもどし、ニコチン酸(0.12g、0.98mmol)を添加し、24時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た(0.95g)。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタンおよび酢酸エチル(95:5)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物7を白色結晶として得た(0.12g、29.7%)。
融点94〜96℃。IRvmax(KBr):3327.6(N=C)、2929.6(C−H、伸縮)、1731.7および1718.7(C=O)、1654.4(C=C、伸縮)、180.7および1195.9(C(O)OR、芳香族)、1090.4(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:436.1008(M++23)、実測値:436.1011(M++23)。
【0181】
【化43】
【0182】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[イソ−ニコチネート] 8
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、ジクロロメタン(20mL)に0℃で溶解し、DCC(0.13g、0.65mmol)およびDMAP(0.08g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、イソ−ニコチン酸(0.08g、0.65mmol)を添加し、24時間撹拌した。反応物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、水(3×20mL)で洗浄し、無水MgSO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、化合物8を白色粉末として得た(0.17g、63.1%)。
融点86〜88℃。IRvmax(KBr):3327.8(N=C)、2929.3(C−H、伸縮)、1751.8および1710.7(C=O)、1628.0(C=C、伸縮)、1249.0および1194.1(C(O)OR、芳香族)、1082.8(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:436.1008(M++23)、実測値:436.1004(M++23)。
【0183】
【化44】
【0184】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−ベンジルオキシベンゾエート 9
ジクロロメタン(20mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.27g、0.87mmol)の溶液に、ベンジルオキシ安息香酸(0.20g、0.87mmol)、DCC(0.18g、0.87mmol)およびDMAP(0.01g、0.09mmol)を添加した。反応器を室温で24時間撹拌し、次に、濾過し、濾液をHCl(30mL、0.1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)および水(2×30mL)で洗浄した。無水Na2SO4で乾燥した後、ジクロロメタンを真空除去して、粗生成物0.7gを無色油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を溶離剤として使用)によって精製して、0.19gの化合物9を白色結晶として得た(41.5%)。
融点76〜78℃。IRvmax(KBr):1772.7および1726.2(C=O)、1276.6(C(O)OR、芳香族)、1078.1(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:541.1457(M++23)、実測値:541.1460(M++23)。
【0185】
【化45】
【0186】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(2−アミノベンゾエート) 10
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.69g、2.2mmol)をDCM(20mL)に溶解し、DCC(0.44g、2.2mmol)およびDMAP(0.05g、0.22mmol)をそれに添加し、反応器を0℃で10分間撹拌した。室温にもどした後、アントラニル酸(0.29g、2.2mmol)を添加し、3時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(2×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗黄色油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(4:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物10を黄色固形物として得た(0.39g、41.5%)。生成物を、試験に必要になるまで0〜4℃で保存した。
融点150〜152℃。IRvmax(KBr):3443.4(N−H、伸縮)、2920.5(C−H、伸縮)、1742.7(C=O)、1548.0(N−H、変角)、1220.9および1158.6(C(O)OR、芳香族)、1047.4(C−O−C)cm−1。
【0187】
【化46】
【0188】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[2’−メトキシ]−ベンゾエート 11
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DMAP(0.08g、0.65mmol)およびDCC(0.13g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、2−アニス酸(2−メトキシ安息香酸、0.10g、0.65mmol)を添加し、12時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物11を白色結晶として得た(0.23g、79.8%)。
融点132〜134℃。IRvmax(KBr):2920.5(C−H、伸縮)、1764.9および1720.4(C=O)、1253.2(C(O)OR、芳香族)、1075.2(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:465.1162(M++23)、実測値:465.1131(M++23)。
【0189】
【化47】
【0190】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[3’−メトキシ]−ベンゾエート 12
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DMAP(0.08g、0.65mmol)およびDCC(0.13g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、3−アニス酸(3−メトキシ安息香酸)(0.10g、0.65mmol)を添加し、12時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物12を白色結晶として得た(0.23g、79.8%)。
融点125〜128℃。IRvmax(KBr):2980.9(C−H、伸縮)、1768.3および1723.8(C=O)、1298.5および1253.5(C(O)OR、芳香族)、1075.9(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:465.1162(M++23)、実測値:465.1168(M++23)。
【0191】
【化48】
【0192】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[4−メトキシ]−ベンゾエート 13
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエン(15mL)に0℃で溶解し、DMAP(0.08g、0.65mmol)およびDCC(0.13g、0.65mmol)をそれに添加した。10分後、反応器を室温にもどし、4−アニス酸(4−メトキシ安息香酸)(0.10g、0.65mmol)を添加し、12時間撹拌した。反応混合物を、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(20mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(3×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(2:1)を溶離剤として使用)によって精製して、生成物を白色結晶として得た(0.17g、58.9%)。
融点141〜144℃。IRvmax(KBr):2994.1および2936.7(C−H、伸縮)、1764.および724.9(C=))、1605.8(C=C、伸縮)、1260.5(C(O)OR、芳香族)、1078.6(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:465.1162(M++23)、実測値:465.1157(M++23)。
【0193】
【化49】
【0194】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−[4−メチルベンゾエート] 14
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、トルエンに0℃で溶解し、トリエチルアミン(0.13mL、0.98mmol)および4−トルオイルクロリド(0.93mL、0.78mmol)を添加した。反応器を室温にもどし、10分間撹拌し、次に、HCl(30mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(30mL)、水(3×30mL)およびNaCl飽和溶液(30mL)で洗浄した。反応物を無水Na2SO4で乾燥し、酢酸エチルを補助溶媒として使用して溶媒を真空除去して、粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(9:1)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物14を白色結晶として得た(0.1g、35.99%)。
融点102〜104℃。IRvmax(KBr):2982.7および2923.6(C−H、伸縮)、1763.9および1717.8(C=O)、1608.5(C=C)、1275.4および1202.0(C(O)OR)、1100.3(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:449.1212(M++23)、実測値:449.1229(M++23)。
【0195】
【化50】
【0196】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(4−ニトロベンゾエート) 15
(化合物16は、この記載に含まれないことに注意)
イソソルビド−2−アスピリネート 17(0.2g、0.65mmol)を、DCM(10mL)に室温で溶解させた。その反応器に4−ニトロベンゾイルクロリド(0.15g、0.78mmol)およびトリエチルアミン(1.12mL、0.78mmol)を添加した。反応物を室温で48時間撹拌し、次に、HCl(20mL、1M)、NaHCO3飽和水溶液(25mL)、飽和ブライン溶液(20mL)および水(2×20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を粗黄色油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(3:2)を溶離剤として使用)によって精製して、化合物15を無色油状物として得、これをエタノールで再結晶した際に、生成物を白色結晶として生じた(0.15g、50.5%)。
融点66〜68℃。IRvmax(KBr):1772.7および1726.2(C=O)、1276.6(C(O)OR、芳香族)、1078.1(C−O−C)cm−1。HRMS:計算値:480.0907(M++23)、実測値:480.0922(M++23)。
【0197】
【化51】
【0198】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−OH 17
ジクロロメタン(160mL)中のアセチルサリチロイルクロリド(分子量198.60g/mol、10.9g=54.9mmol)の撹拌溶液を、トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、9.1mL=65.4mmol)で処理した。混合物を0℃に冷却し、5−ISMN(分子量191.12g/mol、10g=52.3mmol)を添加した。そのフラスコを室温で一晩撹拌し、光から保護した。混合物を、HCl(2M)、5% NaHCO3、および水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮して、油状物を得た。これを、熱いエタノール(結晶化を極めて遅くすることができる)で再結晶して、黄色結晶10gを得た。これをメタノール/酢酸エチル(1:1)に溶解し、Pd/Cを添加し、水素バルーンを取り付けた。一晩撹拌し、TLC(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)によって監視して、反応の終了を確認した。混合物を濾過し、溶媒を除去した。いくらかのジクロロメタンを添加し、濃縮し、ジエチルエーテルを添加し、10〜15分間静置し、濃縮して、白色結晶を得た(7.4g)。
【0199】
【化52】
【0200】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(3−(2−ブロモ−アセトキシ))−ベンゾエート 18
ジクロロメタン(5mL)中の、イソソルビド−2−アスピリネート−5−サリチレート(0.15g、0.35mmol)およびDBU(0.052mL、0.35mmol)の溶液に、ブロモアセチルクロリド(0.03mL、0.35mmol)を添加し、反応混合物を一晩撹拌した。反応物を水(2×5mL)で洗浄し、溶媒を真空除去して、化合物18を無色油状物として得た(0.13g)。
IRvmax(フィルム)cm−1:1765.6および1724.3(C=O)、1608.1(C=O)、1288.4および1251.4(C(O)OR)、1196.9および1135.6(C−O−C)、732.6(C−Br)。HRMS:計算値:531.1013(M+)、実測値:570.4453(M++23)。
【0201】
【化53】
【0202】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−シクロプロパノエート 19
シクロプロパンカルボニルクロリド(分子量104.54g/mol、d=1.152g/mL、250μL=2mmol)を、DCM(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(500μL=6mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。イソソルビド−2−アスピリネート 17(506.2mg=1.6mmol)を添加し、反応物を室温で一晩撹拌した。2M HCl(10mL)、5% NaHCO3(10mL)および水(10mL)で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。カラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)Rf=0.3によって精製して、油状物396mgを得た。
【0203】
【化54】
【0204】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(p−シアノベンゾエート) 20
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.6mmol)および4−シアノベンゾイルクロリド(120mg、0.72mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:4)後に、黄色油状物213mg(81%)を得た。
【0205】
【化55】
【0206】
HRMS(EI)C23H19O8N、[M+H]+ 計算値:438.4068、実測値:438.4183。分析C23H19O8N 計算値C:63.16、H:4.38、N:3.20、実測値C:63.46、H:4.51、N:2.97。
【0207】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(p−フェニルベンゾエート) 21
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.6mmol)および4−フェニルベンゾイルクロリド(156mg、0.72mmol)を反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:4)後に、無色油状物185mg(65%)を得た。
【0208】
【化56】
【0209】
HRMS(EI)C28H24O8、[M+H]+ 計算値:489.4933、実測値:489.5021。分析C28H24O8 計算値C:68.85、H:4.95、実測値C:68.88、H:5.08。
【0210】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(6−クロロニコチネート) 22
イソソルビド−2−アスピリネート 17(250mg、0.8mmol)および6−クロロニコチノイルクロリド(230mg、0.9mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 3:7)後に、白色固形物256mg(70%)を得た。
【0211】
【化57】
【0212】
HRMS(EI)C21H18ClNO8、[M+H]+ 計算値:448.8304、実測値:448.8295。分析C21H18ClNO8 計算値C:56.32、H:4.05、N:3.13、実測値C:56.20、H:4.21、N:3.02。
【0213】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(2−クロロ−6−メチル−ピリジン−4−オエート) 23
イソソルビド−2−アスピリネート 17(250mg、0.8mmol)および2−クロロ−6−メチルピリジン−4−カルバモイルクロリド(247mg、0.9mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 2:6)後に、白色泡状物196mg(53%)を得た。
【0214】
【化58】
【0215】
HRMS(EI)C22H20ClNO8、[M+H]+ 計算値:462.8570、実測値:462.8601。分析C22H20ClNO8 計算値C:57.21、H:4.36、N:3.03、実測値C:56.91、H:4.38、N:2.94。
【0216】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(−3,5−エトキシベンゾエート) 24
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および3,5−エトキシベンゾイルクロリド(157mg、0.72mmol)をGP2に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:4)後に、粘性黄色油状物296mg(74%)を得た。
【0217】
【化59】
【0218】
HRMS(EI)C26H28O10、[M+H]+ 計算値:500.4945、実測値:500.4932。分析C26H28O10 計算値C:62.39、H:5.64、実測値C:62.45、H:5.79。
【0219】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(−3−メチル−イソキサゾール−4−オエート) 25
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および3−メチル−イソキサゾール−4−カルボン酸(127mg、0.72mmol)をGP1に従って反応させ、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:3)後に、白色泡状物228mg(83%)を得た。
【0220】
【化60】
【0221】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(−4−メチル−1,2,3−チアジアゾール−5−オエート) 26
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および4−メチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボン酸を反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:3)後に、淡ピンク色泡状物228mg(83%)を得た。
【0222】
【化61】
【0223】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(N−Boc−イソニペコテート) 27
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)および4N−Boc−イソニペコ酸(162mg、0.72mmol)を反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(MeOH:DCM 3:97)後に、灰色がかった白色の泡状物166mg(49%)を得た。
【0224】
【化62】
【0225】
HRMS(EI)C26H33O10N、[M+H]+ 計算値:520.4616、実測値:520.4631。分析C26H33O10N 計算値C:60.11、H:6.40、N:2.69、実測値C:60.15、H:6.79、N:2.76。
【0226】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(m−アセトアミドベンゾエート) 28
イソソルビド−2−アスピリネート 17(200mg、0.65mmol)およびm−アセトアミド安息香酸(128mg、0.72mmol)を反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(MeOH:DCM 3:97)後に、白色固形物202mg(66%)を得た。
【0227】
【化63】
【0228】
HRMS(EI)C24H23O9N、[M+H]+ 計算値:470.4392、実測値:470.4403。分析C24H23O9N 計算値C:61.41、H:4.93、N:2.98、実測値C:61.52、H:5.09、N:2.86。
【0229】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(m−ベンジルオキシベンゾエート) 29
イソソルビド−2−アスピリネート 17(250mg、0.8mmol)およびm−ベンジルオキシ安息香酸(182mg、0.88mmol)をGP1に従って反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:2)後に、白色固形物346mg(85%)を得た。
【0230】
【化64】
【0231】
HRMS(EI)C29H26O9、[M+H]+ 計算値:518.4344、実測値:518.4357。分析C29H26O9 計算値C:67.19、H:5.05、実測値C:67.28、H:5.09。
【0232】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(p−ベンジルオキシベンゾエート) 30
イソソルビド−2−アスピリネート(250mg、0.8mmol)およびm−ベンジルオキシ安息香酸(182mg、0.88mmol)をGP1に従って反応させて、フラッシュクロマトグラフィー(EtOac:Hex 1:2)後に、白色固形物346mg(85%)を得た。
【0233】
【化65】
【0234】
HRMS(EI)C29H26O9、[M+H]+ 計算値:518.4344、実測値:518.4338。分析C29H26O9 計算値C:67.19、H:5.05、実測値C:67.35、H:5.18。
【0235】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(2−ニトロキシメチル)ベンゾエート 31
フタリド(分子量134.13g/mol、5.03g=37mmol)およびジクロロトリフェニルホスホラン(分子量333.19g/mol、12.3g=38mmol)を、180℃で4時間、撹拌しながら加熱した[3]。緑色から褐色への色の変化が4時間の間に見られた。TLC(ヘキサン/酢酸エチル 2:1)は、3つのスポットを示し、NMRによって、上部スポット(Rf 0.77)が2−クロロメチルベンゾイルクロリドのスポットであり、第二スポット(Rf 0.57)がフタリドであり、下部スポット(Rf 0.14)がトリフェニホスホラスであることを確認した。多量のフタリドが未反応であった。2−クロロメチルベンゾイルクロリド(図12)(分子量189.04g/mol、600μL)を、ジクロロメタン(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、600μL=4.3mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。化合物17(分子量308.14g/mol、0.5298g=1.7mmol)を添加し、混合物を、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物(緑色)を、HCl(2M、10mL)、5% NaHCO3(10mL)、および蒸留水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濃縮して、褐色/緑色油状物769.5mgを得た。これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、褐色固形物(Rf 0.38)419.4mgを得た。
【0236】
【化66】
【0237】
400mgをCH3CN/THF(6mL、4/2 v/v)に溶解し、AgNO3(分子量169.87g/mol、0.30g=1.7mmol)で処理し、4時間還流させ、次に、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。これを酢酸エチル(10mL)および水(2mL)で再形成した。有機相を、水(3×2mL)、ブライン(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮して油状物を得、これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、黄色蝋状物質95mgを得た。
【0238】
【化67】
【0239】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(3−ニトロキシメチル)ベンゾエート 32
3−クロロメチルベンゾイルクロリド(分子量189.04g/mol、d=1.33g/mL、500μL=3.5mmol)を、ジクロロメタン(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、600μL=4.3mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。化合物17(分子量308.14g/mol、0.511g=1.6mmol)を添加し、混合物を光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を、HCl(2M、10mL)、5% NaHCO3(10mL)および蒸留水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濃縮して、油状物1.18gを得た。これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(3:1)を使用)に付して、油状物(Rf 0.2)903.4mgを得た。
【0240】
【化68】
【0241】
これをCH3CN/THF(6mL、4/2 v/v)に溶解し、AgNO3(分子量169.87g/mol、0.67g=3.9mmol)で処理し、4時間還流させ、次に、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。これを酢酸エチル(10mL)および水(2mL)で再形成した。有機相を、水(3×2mL)、ブライン(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮して油状物を得、これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(1:1)を使用)に付して、黄色蝋状物質184.3mgを得た。
【0242】
【化69】
【0243】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート 33
4−クロロメチルベンゾイルクロリド(分子量189.04g/mol、650μL)を、ジクロロメタン(10mL)に溶解させた。トリエチルアミン(分子量101.19g/mol、d=0.726g/mL、600μL=4.3mmol)を添加し、混合物を0℃に冷却した。化合物17(分子量308.14g/mol、0.5320g=1.7mmol)を添加し、混合物を光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を、HCl(2M、10mL)、5% NaHCO3(10mL)および蒸留水(10mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。混合物を濃縮し、クロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、白色固形物100mgを得た。
【0244】
【化70】
【0245】
これをCH3CN/THF(6mL、4/2 v/v)に溶解し、AgNO3(分子量169.87g/mol、75mg=0.4mmol)で処理し、4時間還流させ、次に、光から保護しながら室温で一晩撹拌した。混合物を濾過し、濃縮した。これを酢酸エチル(10mL)および水(2mL)で再形成した。有機相を、水(3×2mL)、ブライン(2mL)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。濃縮して油状物を得、これをクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル(2:1)を使用)に付して、灰色がかった白色の固形物28.3mgを得た。
【0246】
【化71】
【0247】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−(ニトロキシ)−アセテート 34
ジクロロメタン(10mL)中のイソソルビド−2−アスピリネート 17(0.49g、1.6mmol)の溶液に、DCC(0.33g、1.6mmol)、DMAP(0.02g、0.16mmol)およびニトロキシ酢酸(0.19g、1.6mmol)を添加した。混合物を室温で一晩撹拌し、次に、濾過し、濾液をHCl(2×10mL、0.1M)、NaHCO3飽和水溶液(2×10mL)および水(2×10mL)で洗浄した。無水Na2SO4で乾燥した後、ジクロロメタンを真空除去して、生成物を粗油状物として得た。シリカゲル上でのカラムクロマトグラフィー(ヘキサンおよび酢酸エチル(5:2)を溶離として使用)によって精製して、化合物23(0.38g)を無色油状物として得た。
IRvmax(フィルム)cm−1:1759.0および1727.5(C=O)、1643.6(NO2)、1287.7(NO2)、1256.3(C(O)OR、芳香族)、1193.5(C−O−C)。HRMS:計算値:411.0802(M+)、実測値:(M+)。
【0248】
【化72】
【0249】
イソソルビド−2−アスピリネート−5−モノニトレート ISMNA
トルエン(100mL)中のIS−5−MN(5g、26.65mmol)の溶液に、0℃で、トリエチルアミン(5.52mL、3.96mmol)およびアセチルサリチロイルクロリド(6.31g、31.74mmol)を添加した。反応物を室温にもどし、6時間撹拌し、次に、水(2×50mL)、HCl(1M、2×50mL)、NaHCO3飽和水溶液(2×50mL)およびブライン(100mL)で洗浄した。有機相をNa2SO4で乾燥し、溶媒を真空除去して、生成物を油状物として得た。これをエタノールから結晶化して、生成物5.42gを白色結晶として得た(58.05%)。
融点82〜84℃。IRvmax(KBr):1757.6および1733.4(C=O)、1651.8(NO2)、1261.4(C(O)OR、芳香族)、915.5(ONO2)cm−1。HRMS:計算値:376.0645(M++23)、実測値:376.0640(M++23)。
【0250】
【化73】
【0251】
実験方法:血漿/酵素溶液を使用する加水分解試験
燐酸緩衝液pH7.4を用いた血漿の希釈によって、プール血漿/血清溶液(4mL)を正確な濃度に調製した(例えば、10%溶液の場合、0.4mLの血漿/血清を3.6mLの燐酸緩衝液pH7.4に添加した)。37±0.5℃での血漿/血清試料の平衡後に、アセトニトリル中の試験化合物の保存溶液(1×10−4M)100μLを添加し、250μLのアリコートを所定時間間隔で除去した。nSO4・7H2Oの2%w/v溶液(水:アセトニトリル、1:1)500μLを含有する1.5mLのエッペンドルフ試験管に、試料を移した。試験管を2分間渦撹拌し、次に、10,000rpmにおいて3分間、室温で遠心分離した。上澄みを吸引除去し、HPLCによって分析した。試験化合物および代謝産物の濃度を、同じ濃度範囲および同じ実験条件下で当日に得た校正曲線に関して測定した。腸管吸収後の薬剤の初回通過の間の条件を模倣するために、選択化合物をヒト肝臓(HLM)および腸管上皮(HIM)からのミクロソームの存在下に37℃で燐酸緩衝液中においてインキュベートした。これらの条件下のエステルの代謝運命も、培地中の薬剤および代謝産物の濃度を時間の関数として測定することによって、RPHPLCにより確認した。関与酵素の素性は、血漿(BuChE)の場合は精製酵素を使用することによって、および、エステラーゼ特異性阻害剤(BuChEについてはisoOMPA、およびカルボキシエステラーゼについてはBNPP)の存在下に加水分解実験を繰り返すことによって、確認した。血漿およびミクロソーム試料のBuChE活性は、Ellmanアッセイにより決定された(Ellmanら、1964)。
【0252】
HPLC手順
高速液体クロマトグラフィーは、Empowerソフトウエアによって制御されるWaters600ポンプおよびコントローラー、Waters 717自動試料採取器、およびWaters2996フォトダイオードアレー検出器から成るシステムを使用して行なった。Hichrom Nucleosil C18カラム(4.0×250mm)を使用した。移動相は、使用前に濾過し、アッセイ全体を通してヘリウムを注入した。使用した最終勾配法は下記の通りであった:
【0253】
【表1】
【0254】
該方法は、直線性、精度、ならびにLOQおよびLODの代謝産物に関して承認された。アスピリンおよびサリチル酸の優れた分離を与える方法を開発することは、時間を要する作業であり、なぜなら、緩衝液pH3.19を使用するスフェリソルブ(spherisorb)ODS C18カラムの初期選択が、極度のテーリングおよび低分離を与えたからである(pH3.19の緩衝液は、それらのpKaに近いので選択された(アスピリンは3.5であり、サリチル酸は2.97である)[2])。これは、最終的に、ヒクロムヌクレオシル(hichrom nucleosil)カラムおよび緩衝液pH2.5を使用することによって解決した。アスピリンは3.5のpKaを有する弱酸であるので、緩衝液pHをそのpKaより低くすることは、化合物がより疎水性になるので保持を減少させる。ヌクレオシルカラムは、2つの化合物の優れたピーク形および分離を与えた。最初に、一水和物塩を使用し、これは、18分において大きい緩衝剤ピークを生じた。二水和物塩の使用は、ピークを除去した。しかし、この操作の終わり近くで、いくつかの大きい緩衝剤ピークが再び現れ始めた。
【0255】
主要化合物がアスピリン様活性を有することを立証する血小板凝集阻害、TXB2、血小板GP2B3A発現、MDAおよび対応するデータを測定する方法も存在する。
【0256】
全血凝集試験
血液の500μLアリコートを、生理食塩水500μLと混合し、37℃で10分間、Chrono−Log全血凝集検出計591/592型の培養ウェルにおいて、インキュベートした。次に、試料をアッセイウェルに移し、基線を確定し、適量の前記試薬を添加した。凝集を6分間にわたって監視し、インピーダンス出力をチャート式記録計に記録した。阻害剤を試験する際、刺激剤の添加(撹拌しながら10分間)の前に、全血を、DMSO中の適切な濃度の阻害剤と共に37℃において所定時間にわたってプレインキュベートした。3種類の凝集剤、AA(0.5mM)、ADP(10μM)およびコラーゲン(5μg/mL)を使用した。阻害剤の存在下に凝集反応が観察されなかった場合、対照実験を阻害剤の非存在において行なった。高濃度(0.25%以上)のDMSOは、血小板細胞質イオン化カルシウムにおける濃度依存性変化を誘発しうる。各実験前に、PRPを使用して対照を実験して、正常凝集反応を得た。試料を、37℃で10分間、10μLのDMSOと共にインキュベートして、それが凝集反応への阻害作用を有していないことを確かめた。ISASの2つの代謝産物、サリチル酸およびイソソルビドを、それらが血小板への阻害作用を有するかを確認するために試験した。このモデルにおいて、ISASは、全ての凝集刺激剤に対する血小板凝集の阻害において、アスピリンまたはISDAより有意に高い効力を示した。
【0257】
血小板に富む血漿の血小板凝集
試験前の少なくとも14日間に血小板機能に作用することが公知であるどのような薬剤も服用していない健康なボランティアから、血液を採取した。血小板に富む血漿(PRP)および洗浄血小板懸濁液(2.5×108血小板/mL)を、先に記載した血液から調製した。
先に記載した光凝集測定によって、血小板凝集を測定した。簡単に言えば、凝集剤の添加前に、PRPおよび洗浄血小板試料(2.5×108/mL)を、全血イオン化カルシウム光凝集検出計(Chronolog Corp.、Havertown、PA、U.S.A.)および(BIO/DATA CORPORATION)に配置し、37℃で10分間、900rpmで撹拌しながらインキュベートした。作用物質の添加によって凝集を開始させ、Aggro−Lingソフトウエアによって少なくとも6分間監視した。阻害剤を使用する実験のために、これらの化合物と共に10分間プレインキュベーションした後に、凝集を開始させた。
【0258】
ADPの凝集効力を試験するために、濃度反応(0.3〜10uM)曲線を生成した。種々の濃度(3〜5ug/mL)のコラーゲンも使用して、血小板凝集を誘発した。作用物質の最大下濃度、即ち、最大凝集の約95%を生じる濃度を使用して、凝集阻害剤の作用を試験した。結果を、最大光透過のパーセント変化で示し、100%は血小板培地のみの光透過を表わす。
【0259】
TXB2合成の阻害
アスピリンは、細胞内でトロンボキサンシンターゼによって強力凝集物質TXA2に変換されるPGH2の、シクロオキシゲナーゼ媒介合成を減少させることによって、血小板凝集を阻害する。TXA2は、直接測定に極めて消失性および不安定性であるが、その代謝産物TXB2は、親の有用な指標を与えると一般に考えられている。生体内または生体外での組織のアスピリン処理は、TXB2の抑制に反映される。これに関して本発明化合物とアスピリンとを比較するために、非処理全血を、アスピリンまたは試験化合物の存在下に、37℃で1時間にわたって凝固させた。次に、試料を遠心分離した。血清を収集し、Cayman Chemicalsから得た酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)キットを使用して、TXB2を測定した。その実験は、TXB2合成の完全阻害を与える数値からの下降濃度でアスピリンを使用して行なった。これらのアッセイにおいて、ISASは、より低いIC50に反映されるように、アスピリンより有意に強力であった。
【0260】
フローサイトメトリー
個々の血小板の表面における受容体発現を分析するために、および試料調製手順によって生じる血小板活性を最小限にするために、撹拌または渦撹拌工程は使用しなかった。阻害剤の存在および非存在下の、血小板表面の活性GPIIb/IIIaおよびP−セレクチンの存在量を、フローサイトメトリーによって測定した。血小板試料を、先ず、作用物質、コラーゲンまたはADPで活性化した。血小板凝集が50%最大光透過に達した際に、反応を、生理食塩水での10倍希釈によって停止させた。休止血小板(resting platelets)を対照として使用した。大部分の実験において、血小板を、作用物質の添加前に10分間、阻害剤と共にプレインキュベーションした。次に、血小板試料を、暗所で、飽和濃度(10μg/mL)のP−セレクチン(CD62P−APC)の存在下に室温で5分間、撹拌せずにインキュベートした。活性GPIIb/IIIa血小板受容体は、前記と同じ濃度でPAC−1モノクローナル抗体を使用して測定した。PAC−1は、血小板または血小板付近における、活性血小板の高親和性GPIIb/IIIa複合体上のエピトープを特異的に認識する5。インキュベーション後、試料をFACS Flow液で希釈し、5分以内に、BD FACSArray(BD Biosciences、Oxford、UK)を使用して分析した。フローサイトメトリーを、先に記載したように、単一染色血小板試料において行なった3。大きさ(前方散乱)、粒状度(側方散乱)および細胞蛍光を測定するために器具を構成した。単一血小板を入れ、血小板凝集物および微小粒子を除外するために、前方および側方散乱の二次元分析ゲートを引いた。個々の血小板の蛍光を分析することによって、抗体結合を測定した。細胞自己蛍光についての補正後に、平均蛍光強度を測定した。各試料について、対数尺を使用して、蛍光を分析した。蛍光ヒストグラムを、10,000の各事象に関して得た。Cytometer RXPソフトウエアを使用してデータを分析し、任意単位における対照蛍光のパーセンテージとして表わした。
【0261】
加水分解およびアスピリン放出測定のための生物学的試料の調製
ヒト血液試料は、静脈穿刺によって、Li−Heparin Sarstedt Monovette管に採取した(9mL)。血漿試料は、10,000rpmで5分間の血液の遠心分離によって得、試験に必要になるまでアリコートにして凍結した。プールヒト肝臓ミクロソーム(HLM)は、燐酸緩衝液pH7.4(0.1M)で5mLに希釈して、2mg/mLの保存溶液を得た。試験に必要になるまで、アリコートを凍結した。プールヒト腸ミクロソームは(HIM)は、燐酸緩衝液pH7.4(0.1M)で5mLに希釈して、80μg/mLの保存溶液を得た。試験に必要になるまで、アリコートを凍結した。
【0262】
コリンエステラーゼ活性
HLMおよびHIMにおけるブチリルコリンエステラーゼ(BChE)活性を、37℃で、Ellman法(Ellmanら、1964)によって、分光光度的に(405nm)測定した。ブチリルチオコリンヨージド(BTCI)(0.5mM)を基質として使用した。反応を、最終容量250μLの96ウェルの培養皿で行なった。最初に、燐酸緩衝液pH8.0(0.1M)およびミクロソームを混合し、30分間インキュベートした。DTNB(0.3mM)およびBTCIを添加し、反応を測定した。ミクロソームへの音波破砕(4×5秒)を使用し、中間で氷の上に1分間置いて、アッセイも行なった。これは、ミクロソームが試薬の浸透のために開くことを確実にする[5]。活性を方程式1によって計算した:
【0263】
【数1】
【0264】
表2は、番号付け、および37℃、pH7.4(燐酸緩衝液)の緩衝ヒト血漿への候補エステルの添加後にピークアスピリン生成において測定した初期エステル濃度(モル)のパーセンテージとしてのアスピリンの量と共に、化合物を示す。
【0265】
【表2−1】
【0266】
【表2−2】
【0267】
【表2−3】
【0268】
【表2−4】
【0269】
試験動物からの血漿における試験の結果
Is−2−アスピリネート−5−サリチレート 2(0.1mM)の定量的加水分解スクリーニングは、モルモット、ハムスター、ウサギおよびサル血漿を使用して試験した。この試験の目的は、生物学的試験および臨床前開発に好適な種を決定することであった。結果は、既に同定されているヒト酵素の役割を確認するものであると考えられた(なぜなら、これらは実験動物に多様に分布しているからである)。
【0270】
【表3】
【0271】
いったん勾配法が成功裡に開発されると、ウサギは血小板凝集試験の潜在的モデルであるので、50%ウサギ血漿における2の加水分解を行なった。Ellmanアッセイは、1.1μmol/L/分でのBChE活性を示した。結果は、ハムスターおよびサルが臨床前試験の好適な候補になることを示唆している。これらの種からの血漿は、ヒトと類似したレベルのBuChEを有するので、ヒト代謝におけるその酵素の役割も裏付けられる。
【0272】
腸管または肝臓ミクロソームの存在下のIs−2−アスピリネート−5−サリチレート、ISAS(2)の加水分解結果
ヒト血漿における加水分解試験は、ISAS(2)が成功のアスピリンプロドラッグであることを示した。この研究は、吸収段階の間に他の組織において、主に胃上皮および後に肝臓において、どれぐらいのアスピリン放出が起こるかを評価するために、肝臓および腸ミクロソーム調製物を含むように分析を広げることを意図していた。ヒト肝臓ミクロソームおよびヒト腸ミクロソームの存在下に薬剤をインキュベートした際に、9μMおよび56μMのアスピリンが生成された(それぞれ、図13および図14)。これは、BChEの存在によるのか、または何らかの他の酵素によるのかについて、疑問を生じ、なぜなら、ヒト血液はブチリルコリンエステラーゼのみを含有するが、肝臓および腸管上皮はカルボキシエステラーゼ(CE)(主に、肝臓にCE−1、腸管にCE−2)も含有するからである。従って、プロドラッグの添加前に、ミクロソーム調製物を、iso−OMPA(確立されたBChE阻害剤)と共にプレインキュベートし、それによって、ミクロソーム調製物に存在しうるどのようなBChEも阻害するのに充分な時間を与える。次に、加水分解アッセイを先に記載したように実施して、アスピリン生成において、あるとすればどのような作用があるかを調べた。特異的BChE阻害剤の使用は、アスピリン生成を減少させず、何らかの他の酵素が関与していることを示唆した。Ellmanアッセイを両ミクロソーム調製物において行ない、存在するとすればどのようなレベルのBChEが存在するかを測定した。極少量が見出されたにすぎず(表3.1)、高レベルのアスピリン生成を生じるとは考えられなかった。
【0273】
【表4】
【0274】
ブランク女性血漿=14.98μmol/L/分。血漿は約5mg/L BChEを含有し[5]、従って、これは0.0125μg/mL BChEの等量である。
【0275】
ウサギ肝臓カルボキシラーゼを使用して、薬剤の加水分解を測定し、5.99μMアスピリンが生成された(図18)−HLMと同様のレベル。
【0276】
薬剤の添加前に、BNPP、既知のカルボキシエステラーゼ阻害剤を、HIMおよびHLMと共に10分間インキュベートし、それによってカルボキシエステラーゼ活性をノックアウトした。アスピリン生成の顕著な減少が見られ、60分後、薬剤が消失しなかった。それは、ISASがCE−1およびCE−2ならびにBuChEの基質であると結論付けることができる。これらの酵素は、同じファミリーに属するが、基質特異性において顕著な違いを有する。例えば、CE酵素は、正荷電基質、例えば、コリンエステルを包含するBuChEに好まれる基質の、加水分解において、非効率である。これらの酵素は、通常、一緒のグループに分けられない。意外にも、ISASの場合、HIM試料に存在するCE−2は、BuChEと同じ特異性および有効性を示し、アスピリン放出の同様に適したベクターである。結果は、2つ以上の酵素が、化合物からアスピリンを放出できることを示す。
【0277】
【表5】
【0278】
【表6】
【0279】
Is−2−アスピリネート−5−(4−ニトロキシメチル)ベンゾエート 22の加水分解結果
【0280】
【表7】
【0281】
非イソソルビド系参考アスピリンエステルの加水分解結果
2つの非イソソルビド系アスピリンエステル、即ち、2−メトキシフェニル−2−アセトキシベンゾエート(グアイコルエステル)および2−アセトキシ安息香酸フェニルエステルの加水分解を、ヒト腸ミクロソーム(40μg/mL)において評価した。これらのエステルはいずれも、ヒト血漿においてアスピリンプロドラッグとして作用せず、即ち、ヒト血漿エステラーゼ作用が、これらのエステルからのアスピリン放出を生じさせない。
【0282】
【表8】
【0283】
フェニルアスピリネートは、ヒト腸ミクロソームと接触して、無視できる量のアスピリンを生成し、これは、これらの基質に対して、CE−2優先度がBuChEとわずかに異なることを示し、それの存在下に加水分解がアスピリン発生なしに起こる。しかし、ISASおよびニトロキシメチル類似体と比較して、アスピリン生成がほとんどなかった。言い換えれば、これらの化合物は、ヒト血漿においてアスピリンプロドラッグではなく、CE−2の存在下に非効率アスピリンプロドラッグである。データは、CE−2と本発明のプロドラッグとの相互作用が、有効なアスピリン生成を生じる点で独特であることを示している。
【0284】
【表9】
【0285】
【数2】
【0286】
【数3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物:
【化74】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここでRringは環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環である、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項2】
一般式(I)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物:
【化75】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、またはC1〜C8アルキルアリールエステルであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項3】
一酸化窒素放出基が、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステル、またはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含む、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化76】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項5】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1または4に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化77】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項6】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1または4に記載の化合物:
【化78】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である、化合物。
【請求項7】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1または4に記載の化合物:
【化79】
であって、式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−(CH2)nONO2(n=1〜8)、C3〜C10シクロアルキルエステルまたはハロアルキルエステルのうちの少なくとも1つによって置換されてもよい、化合物。
【請求項8】
ハロアルキルエステルのハロ置換基が、Cl、BrまたはFである、請求項4〜7に記載の化合物。
【請求項9】
Yが:
【化80】
から成る群から選択される、先行するいずれかの請求項に記載の化合物。
【請求項10】
Yが:
【化81】
から成る群から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
一般式(I)で示される一般構造を有する、先行するいずれかの請求項に記載の化合物:
【化82】
であって、式中、Yは、非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、−Cl、メチル、o−ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよく、式中、Yは、非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、−Cl、メチル、o−ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい、化合物。
【請求項12】
式(II)で示される構造を有する、先行するいずれかの請求項に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化83】
【請求項13】
式(III)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化84】
【請求項14】
式(IV)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化85】
【請求項15】
式(V)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化86】
【請求項16】
式(VI)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化87】
【請求項17】
式(VII)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化88】
【請求項18】
【化89】
から成る群から選択されるいずれか1つの構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物
【請求項19】
一般式(II)で示される一般構造を有する薬剤用担体化合物:
【化90】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり;
Xは、薬剤分子である、薬剤用担体化合物。
【請求項20】
一般式(II)で示される一般構造を有する、請求項19に記載の薬剤用担体化合物:
【化91】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、C1〜C8シクロアルコキシエステル、アリールエステル、またはC1〜C8アルキルアリールエステルであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく;
Xは、薬剤分子である、薬剤用担体化合物。
【請求項21】
前記一酸化窒素放出基が、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステル、またはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含む、請求項19または20に記載の担体。
【請求項22】
一般式(II)で示される一般構造を有する、請求項19〜21に記載の担体:
【化92】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10であり;
Xは、薬剤分子である、担体。
【請求項23】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1に記載の化合物:
【化93】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10であり;
Xは、薬剤分子である、化合物。
【請求項24】
前記ハロアルキルエステルのハロ置換基が、Cl、BrまたはFである、請求項22または23に記載の担体。
【請求項25】
前記担体が:
【化94】
から成る群から選択される、請求項19〜22に記載の担体化合物であって、式中、Xは薬剤分子である、担体化合物。
【請求項26】
請求項19〜22に記載の担体化合物を含む薬剤化合物。
【請求項27】
請求項1〜25に記載の化合物、および少なくとも1つの医薬的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項28】
アスピリンが作用を有しないレベルで構成的血小板グリコール−タンパク質発現を減少させるための、請求項1〜25に記載の化合物または請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項29】
アスピリン様作用を誘発するための、請求項1〜25に記載の化合物または請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項30】
前記アスピリン様作用が、抗血小板活性の減少、COX生成物の阻害である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記阻害されるCOX生成物が、トロンボキサンA2またはマロンジアルデヒドである、請求項29または30に記載の使用。
【請求項32】
心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症の処置のための医薬の製造における、請求項1〜25に記載の化合物の使用。
【請求項33】
アスピリンを放出するために2位におけるアセチル基の加水分解を促進するために、前記イソソルビド−2−アスピリネート基が、5位においてアルキルまたはアリールエステルで置換されている、請求項1〜25に記載の化合物。
【請求項34】
心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症の処置における、一般式(I*)で示される一般構造を有する化合物の使用:
【化95】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい、使用。
【請求項35】
心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症の処置に使用するための医薬の製造における、一般式(I*)で示される一般構造を有する化合物の使用:
【化96】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい、使用。
【請求項36】
実質的にここに記載されているとおりの、および/または添付の実施例を参考にした、請求項1〜55または33に記載の化合物。
【請求項37】
実質的にここに記載されているとおりの、および/または添付の実施例を参考にした、請求項27に記載の組成物。
【請求項38】
実質的にここに記載されているとおりの、および/または添付の実施例を参考にした、請求項28〜32または34〜35に記載の使用。
【請求項1】
一般式(I*)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物:
【化74】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここでRringは環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環である、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項2】
一般式(I)で示される一般構造を有するイソソルビドアスピリネート化合物:
【化75】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、またはC1〜C8アルキルアリールエステルであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項3】
一酸化窒素放出基が、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステル、またはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含む、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化76】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項5】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1または4に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化77】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエート、ニコチネート、オキサゾールオエート、イソキサゾールエート、チアジアゾールオエート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である、イソソルビドアスピリネート化合物。
【請求項6】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1または4に記載の化合物:
【化78】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、−Cl、−Br、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10である、化合物。
【請求項7】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1または4に記載の化合物:
【化79】
であって、式中、Yは、
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、C1〜C8アルコキシ、o−ベンジルオキシ、−(CH2)nONO2(n=1〜8)、C3〜C10シクロアルキルエステルまたはハロアルキルエステルのうちの少なくとも1つによって置換されてもよい、化合物。
【請求項8】
ハロアルキルエステルのハロ置換基が、Cl、BrまたはFである、請求項4〜7に記載の化合物。
【請求項9】
Yが:
【化80】
から成る群から選択される、先行するいずれかの請求項に記載の化合物。
【請求項10】
Yが:
【化81】
から成る群から選択される、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
一般式(I)で示される一般構造を有する、先行するいずれかの請求項に記載の化合物:
【化82】
であって、式中、Yは、非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、−Cl、メチル、o−ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよく、式中、Yは、非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基であって、それらは、ヒドロキシド、−Cl、メチル、o−ベンジルオキシ、メトキシ、−NHC(O)CH3、−OC(O)CH2Br、−NO2、−CH2ONO2のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい、化合物。
【請求項12】
式(II)で示される構造を有する、先行するいずれかの請求項に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化83】
【請求項13】
式(III)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化84】
【請求項14】
式(IV)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化85】
【請求項15】
式(V)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化86】
【請求項16】
式(VI)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化87】
【請求項17】
式(VII)で示される構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物:
【化88】
【請求項18】
【化89】
から成る群から選択されるいずれか1つの構造を有する、請求項1〜12に記載のイソソルビドアスピリネート化合物
【請求項19】
一般式(II)で示される一般構造を有する薬剤用担体化合物:
【化90】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり;
Xは、薬剤分子である、薬剤用担体化合物。
【請求項20】
一般式(II)で示される一般構造を有する、請求項19に記載の薬剤用担体化合物:
【化91】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、C1〜C8シクロアルコキシエステル、アリールエステル、またはC1〜C8アルキルアリールエステルであり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよく;
Xは、薬剤分子である、薬剤用担体化合物。
【請求項21】
前記一酸化窒素放出基が、硝酸エステル、C1〜C8アルキル硝酸エステル、C3〜C10シクロアルキル硝酸エステル、またはC1〜C8アルキル硝酸エステルを含む、請求項19または20に記載の担体。
【請求項22】
一般式(II)で示される一般構造を有する、請求項19〜21に記載の担体:
【化92】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルキルエステルまたはC1〜C8アルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のアリールエステル、アルキルアリールエステル、ベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10であり;
Xは、薬剤分子である、担体。
【請求項23】
一般式(I)で示される一般構造を有する、請求項1に記載の化合物:
【化93】
であって、式中、Yは、
C1〜C8アルコキシエステル(それは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
C3〜C10シクロアルキルエステルまたはC1〜C8シクロアルコキシエステル(それらは非置換であってもよく、またはONO2で置換されてもよい);あるいは
非置換または置換のベンゾエートまたはニコチネート基(それらは、ヒドロキシド、C1〜C8アルキル、ベンジル、C1〜C8アルコキシ、ベンジルオキシ、−NHC(O)R、−NH2、−NO2、−ONO2、−(CH2)nONO2、−OC(O)[(CH2)m]cyclicONO2、−OCOArONO2、−OCOAr(CH2)nONO2またはC1〜C5ハロアルキルエステルを含む群のうちの少なくとも1つによって置換されてもよい);
であり、
ここで、Rは、C1〜C8アルキルまたはC1〜C8アルコキシ基であり、n=1〜8、m=3〜10であり;
Xは、薬剤分子である、化合物。
【請求項24】
前記ハロアルキルエステルのハロ置換基が、Cl、BrまたはFである、請求項22または23に記載の担体。
【請求項25】
前記担体が:
【化94】
から成る群から選択される、請求項19〜22に記載の担体化合物であって、式中、Xは薬剤分子である、担体化合物。
【請求項26】
請求項19〜22に記載の担体化合物を含む薬剤化合物。
【請求項27】
請求項1〜25に記載の化合物、および少なくとも1つの医薬的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項28】
アスピリンが作用を有しないレベルで構成的血小板グリコール−タンパク質発現を減少させるための、請求項1〜25に記載の化合物または請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項29】
アスピリン様作用を誘発するための、請求項1〜25に記載の化合物または請求項27に記載の組成物の使用。
【請求項30】
前記アスピリン様作用が、抗血小板活性の減少、COX生成物の阻害である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記阻害されるCOX生成物が、トロンボキサンA2またはマロンジアルデヒドである、請求項29または30に記載の使用。
【請求項32】
心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症の処置のための医薬の製造における、請求項1〜25に記載の化合物の使用。
【請求項33】
アスピリンを放出するために2位におけるアセチル基の加水分解を促進するために、前記イソソルビド−2−アスピリネート基が、5位においてアルキルまたはアリールエステルで置換されている、請求項1〜25に記載の化合物。
【請求項34】
心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症の処置における、一般式(I*)で示される一般構造を有する化合物の使用:
【化95】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい、使用。
【請求項35】
心臓血管および脳血管障害、疼痛、発熱、炎症、癌、アルツハイマー病または認知症の処置に使用するための医薬の製造における、一般式(I*)で示される一般構造を有する化合物の使用:
【化96】
であって、式中、Yは、C1〜C8アルキルエステル、C1〜C8アルコキシエステル、C3〜C10シクロアルキルエステル、アリールエステル、C1〜C8アルキルアリールエステル、または−C(O)ORringであり、ここで、Rringは、環系の炭素と置き換えられた少なくとも1個のヘテロ原子を有する5員芳香族環または非芳香族5員環であり、それらは非置換であってもよく、または少なくとも1個の一酸化窒素放出基で置換されてもよい、使用。
【請求項36】
実質的にここに記載されているとおりの、および/または添付の実施例を参考にした、請求項1〜55または33に記載の化合物。
【請求項37】
実質的にここに記載されているとおりの、および/または添付の実施例を参考にした、請求項27に記載の組成物。
【請求項38】
実質的にここに記載されているとおりの、および/または添付の実施例を参考にした、請求項28〜32または34〜35に記載の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【公表番号】特表2011−517657(P2011−517657A)
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−538776(P2010−538776)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068114
【国際公開番号】WO2009/080795
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(310000288)ザ プロボースト,フェローズ アンド スカラーズ オブ ザ カレッジ オブ ザ ホーリー アンド アンディバイディッド トリニティ オブ クイーン エリザベス ニア ダブリン (4)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/068114
【国際公開番号】WO2009/080795
【国際公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【出願人】(310000288)ザ プロボースト,フェローズ アンド スカラーズ オブ ザ カレッジ オブ ザ ホーリー アンド アンディバイディッド トリニティ オブ クイーン エリザベス ニア ダブリン (4)
【Fターム(参考)】
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