説明

動力伝達ベルト

動力伝達ベルト(20)は、弾性部材を含むとともに長手方向に沿った抗張部材(10)を有する本体(11)を含む。本体は、所定の輪郭形状を有するプーリ係合領域(12)を有しており、プーリ係合領域は、繊維による不織布部材(15)であって、その不織布部材の繊維がアクリル繊維を含むことにより特徴付けられるものを含む。アクリル繊維は、好ましくは約1.5dpfよりも細い超極細糸であり、13.5ミクロンあるいはそれよりも小さい平均直径と約1mmから約10mmまでの平均長さを有する。不織布部材は、プーリ係合領域において弾性体部材と混合されていても良い。不織布部材の繊維の約75重量パーセントまでは、他の合成繊維、天然繊維、あるいはセルロース繊維などの非アクリル繊維を含んでも良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理面を備えた動力伝達ベルトに関し、特に、アクリル繊維を含む不織布部材を有する領域を含む被処理面を備えた動力伝達ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
埋設された抗張部材を有する弾性材料から、動力伝達ベルトを作ることが知られている。そのベルトは、マルチリブ、歯付、vベルト、あるいは平坦な輪郭形状を示しても良い。そのベルトは、係合面を有するプーリに掛け回される。
【0003】
背面、側面、プーリ係合面、および/またはリブの側面を含むベルトの表面を、耐摩耗性、摩擦特性、耐クラック性、硬さ、表面および/または弾性領域の下における強度特性を修正するための様々な織物部材または繊維で覆うことが知られている。輪郭を形成するためには、特別な帆布特性および/または工程が必要とされ得る。例えば、帆布は、成型の前に所定の輪郭形状に前もって形づくられるという長い工程を経る。より一般的には、予成型工程を避けるために、歯付きの金型上における流動工程(flow through process)により製造される帆布で覆われた歯付きベルトは、広げられる帆布、例えばとても低いモジュラスを有し、少なくとも一方向に延びやすいといったものを必要とする。形付けられた外側金型により平らなマンドレル上で押圧されて反転された、帆布で覆われたv字型(notched)ベルト、または歯付きvベルト、またはマルチvリブドベルトも同様に、輪郭配置を引き裂いたり、あるいは制限することなしに、初期の平坦形状から最終的な輪郭形状まで延ばすために、高い延び(通常40から100パーセント)と低いモジュラスを有する帆布を必要とする。このような適用のために、様々な繊維物質を含み、満足できるように織られた、および編まれた帆布が知られている。従来技術の代表は、ウェスホフ(Westhoff)に付与された米国特許第5,645,504号であり、そこでは、アラミド、木綿、レーヨン、およびアクリル糸が、ベルトを保護したり、あるいはクラッチへの適用における補強のための、緯編みされた伸張帆布(stretch fabric)に有用たり得ることが示されている。それは、これらの材料が、このような適用物における摩擦熱に耐えるのに十分なほど高い融点を有するからである。唯一、与えられた代表例は、アラミド−レーヨン混合の編み物を有するベルトである。ベルトに適した高い伸張性を有する、編み物、および織られた帆布は比較的高価である。
【0004】
フロッキングプロセス(flocking process)はベルト表面の繊維の量と配向とが非常に制御されたベルトの製造方法として知られている。従来技術の代表は、ウィーゲル(Wegele)に付与された米国特許第6,561,937号であり、そこでは、ベルトの駆動面の帆布が、接着剤の手法により垂直方向に配向された短繊維の一群によって覆われている。アクリル繊維を含む、繊維物質の長いリストにあるものが表向きその一群として使用され得る。しかし、繊維の種類を選択することを助ける合理的なものは提供されておらず、アクリルの例も与えられていない。フロッキング(flocking)は、ベルト製造工程にさらなる工程を加え、そして特別な装置を必要とする。
【0005】
織られていない帆布(しばしば不織布とよばれる)は、輪郭が形成されたベルトの表面を覆うものとして提案される。従来技術の代表は、パターソン(Patterson)らに付与された米国特許第6,793,599号、エドワーズ(Edwards)らに付与された米国特許第6,824,485号、およびコパング(Kopang)に付与された米国特許第6,609,990号である。織られていない帆布は、成型の間に弾性体に容易に浸透される開構造(open structure)、または表面の繊維濃度を高く残すより閉じられた構造(closed structure)を与え、様々な帆布物質が、望ましい摩擦、熱、および機械的特性をベルトにおいて達成するために用いられ得る。不織布は、通常のベルト製造の装置により加工され得るとともに、編み物、および織られた帆布に比べてコストの節減をもたらし得る。
【0006】
しかしながら、実際には、セルロース繊維およびセルロースと合成繊維の混合体に基づいた従来技術の帆布は、一つの、あるいはそれよりも多い望ましくない特性を有する。第一に、セルロース物質は、特に湿った動作環境における耐久性に比較的乏しい。第二に、従来の不織布は、とても限られた収縮性または伸長性を有する。典型的には、引張試験において、不織布は2から10パーセントのみ伸び、そして降伏し、または引き裂かれ、引き続いての拡張は引き裂かれた領域に非常に局地化される。同様に、不織布が成型時に延ばされていると、不規則に配置された繊維は、もし使用されていれば接着剤の結合剤によって繊維間に形成されたいかなる結合をも壊しつつ、単に互いにずれて分離される。織られた、または編まれた帆布とは異なり、不織布の拡張は制御が困難であり、分離される繊維によってしばしば穴や亀裂が形成される。穴と亀裂は、結果として乏しい耐摩耗性、ノイズ、および/または乏しい摩擦抑制を生じる、不規則なベルト表面、過剰なゴムの裏抜け、および/または露出した弾性体のパッチ(patch)を導く。第三に、ゴムの不織布への浸透を、特に亀裂の問題に関する状態において望ましい表面特性を達成するように、制御することは困難である。知られている帆布の変数、例えば多孔度、浸透性、厚さ、および引張強度、あるいは不織布の複合層を用いることなどの工程変数の操作についての広範な調査の後であっても、加工および性能における改良は必要である。
【0007】
多くの数の合成、天然、および混合不織布部材を調査して、前述の欠点から完全に解放されているベルトを生産ものはなかったものの、発明者は、ここに示される発明において、解決策を最終的に見出した。必要とされるのは、下に配置されているベルト本体の弾性体の上にあり、あるいはそれと混合されている不織布の表面部材を含むプーリ係合領域を有する動力伝達ベルトであって、不織布部材が、セルロース繊維などの非アクリル繊維が約75パーセントまで選択的に混合されたアクリル繊維を含むものである。必要とされるのは、マルチリブ形状を有し、不織布のプーリ係合表面層と圧縮層とを有し、約75パーセントまで選択的に非アクリル繊維が混合されたアクリル繊維または超極細糸を含む不織層を有する動力伝達ベルトである。本発明は、これらの条件を満たしている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、弾性体部材を含み、長手方向に沿った抗張部材を有する本体を備え、本体が、所定の輪郭形状を有するプーリ係合領域を有しており、プーリ係合領域が、不織布部材の繊維がアクリル繊維を含むことを特徴とする繊維の不織布部材を有する動力伝達ベルトを供給することである。
【0009】
本発明の他の面においては、不織布部材の繊維が少なくとも25重量パーセントのアクリル繊維を含む。
【0010】
本発明の他の面においては、不織布部材は、プーリ係合領域における本体の弾性体部材に混合されている。
【0011】
本発明の他の面においては、アクリル繊維は、約1.5デニール/フィラメント(dpf)またはそれ未満の繊維径を有するアクリル超極細糸であり、好ましくは約1.0dpfまたはそれ未満であり、あるいは繊維は約13.5ミクロンまたはそれ未満の平均径を有していても良く、好ましくは約11ミクロンまたはそれ未満である。アクリル繊維は、約1mmから約10mmまでの平均長さ、好ましくは約1mmから約6mmまで、もしくは約2mmから約5mmまでの平均長さを有しても良い。
【0012】
本発明の他の面においては、不織布部材の繊維の約75パーセントまでは、他の合成繊維、天然繊維、あるいはセルロース繊維などの非アクリル繊維を含んでも良い。
【0013】
本発明の他の目的は、マルチリブ形状を有し、不織布のプーリ係合表面層と圧縮層とを有し、約75パーセントまで選択的にセルロース繊維が混合されたアクリル繊維または超極細糸を含む不織層を有する動力伝達ベルトを供給することである。
【0014】
本発明の他の目的は、ベルトの改良された製造方法であって、マンドレルの上に組み上げられた、ベルト形成体の第1の弾性体層および/または織物層を横たえる工程と、第1の層の上に抗張コードを横たえる工程と、抗張コード層の上に第2の弾性体層を横たえる工程と、第2の弾性体層の上に繊維の不織布領域を横たえる工程と、成型金型において組まれたベルト形成体を硬化する工程と、不織布領域のためにアクリル不織布を選択する工程とを備える製造方法を供給することである。
【0015】
本発明のその他の目的は、本発明の以下の説明と添付の図面とにより、指摘あるいは明確にされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態のベルト20の横断面図である。ベルト20は、本体11と、長手方向に設けられたプーリ係合リブ12とを含む。ベルト20はまた、動力を伝達し、ベルトの長手軸に平行に設けられた抗張部材10を含む。抗張部材10は、例えば、アラミド、ポリエステル、ナイロン、ガラス、カーボン、ポリビニルアルコール(PVAL)、鋼鉄ワイヤ、レーヨン、ポリ(p−フェニレン−2,6ベンゾビスオキサゾール・PBO)、液晶ポリエステル(liquid crystal polyester)(ベクトラン(Vectran)の商標名で販売されている)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリケトン(POK)および様々な天然繊維を含む従来技術において知られている、あらゆる有機、あるいは無機の繊維抗張コード物質であっても良い。ポリエステル繊維は、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、またはポリエチレンナフタレート(PEN)を含んでも良い。
【0017】
リブ12は、リブ12aにより示されているように、ゴム単体で形成されても良い弾性リブ物質を含む。その代わりに、リブ12は、リブ12bにより示されるように、弾性リブ物質中に分散された繊維18をさらに含んでも良い。弾性物質は、EPDM、EPM、EOM、EBM、SBR、NBR、NR、NHBR、ポリクロロプレン、ミラブル(millable)PU、またはこれらの、およびこれらの等価物の2つあるいはそれよりも多くの混合物を含んでも良い。ベルト20は、背面側において、ジャケット6および/またはオーバーコート7もまた選択的に含んでも良い。ジャケット6は、ナイロン、ポリエステル、綿、または、混合帆布を含む他の適当な同等の帆布を含んでも良い。ジャケット6は、ナイロン、ポリウレタン、ポリエチレン、およびそれらの等価物などの熱可塑性、または熱硬化性の物質を含んでも良い。心線上部7は、いかなる適当な弾性物質であっても良い。ベルトの背面は、例えば、成型、研削、切断により、または織りが施された帆布の使用により、織りが施されていても良い。
【0018】
ベルト20は、ベルトの幅を横切るように抗張部材10に隣接する心線横断層(cross-cord layer)8もまた選択的に含んでも良い。心線横断層8は、実質的に非孔性であっても良く、その場合、成型工程の間に弾性部材が本質的に心線横断層8に浸透せず、抗張部材の位置をベルトの内側に保たれる。心線横断層8は、織布または不織布の部材、例えば非孔性のタイヤコードを含んでも良い。薄いガム層9は、抗張部材10への衝撃を和らげ、そして抗張部材が擦り減ることを防止するために、心線横断層8と抗張部材10との間に選択的に配置されても良い。薄いガム層9は、抗張部材10の間に延びて、抗張部材間にローブ(lobe)17を形成しても良い。さらなるガム層(図示せず)もまた、コードの完全なカプセル化が望ましいのであれば、コードの反対側に設けられても良い。その代わりに、心線横断層8は多孔性であって、そのために心線上部7の部材が成型時に心線横断層間に浸透しても良く、かくして、ローブ17を抗張部材間で、ガム層9を使用して、または使用せずに形成しても良い。
【0019】
リブ12は、いかなる数のリブを含んでも良く、ユーザにより必要とされるいかなる形状であっても良い。図1は、マルチvリブド断面を示す。リブ12bは、本発明の異なる実施形態を説明するためにリブ12aとは異なるように描かれているが、マルチリブドベルトにおけるリブ12は、一般的にはすべて同じ構造であることが理解されるべきである。ベルトはまた、シングルリブvベルト断面を含んでも良い。ベルトはまた、歯の上張りとしての帆布ジャケットを帯びた歯付き同期ベルトを含む、リブまたは歯が交互に配置された歯付き断面を含んでも良い。
【0020】
プーリ係合領域13は、リブ12の部材と混合され、および内部に浸透された不織布部材の不規則な配列を含んで、不織領域15を形成しても良い。かくして、不織領域15は、不織布含有領域とリブ部材との間の明確な境界を有していても、また有さなくても良い。混合の程度により、不織部材と弾性体との両方がプーリ係合表面14に存在しても良く、または、不織部材のみがプーリ係合表面14に存在しても良い。好ましくは、非常に集中したアクリル繊維と最小限の弾性体とがプーリ係合表面に存在する。
【0021】
リブ12bは、下部表面領域16がプーリ係合不織領域15とリブ12の部材との間に存在する代替的な実施形態を示す。下部表面領域16は、本体11とリブ12bのそれとは異なるエラストマー摩擦部材を備える。下部表面領域16の弾性部材は、不織布部材と混合し、そして不織布部材の中に浸透する。下部表面領域16の厚さは、均一でも良く、また図1に示されたように、プーリ係合面の周辺で変化しても良い。厚さの変化は、製造方法の結果たり得る。
【0022】
リブ12の弾性部材、または下部表面領域16は、選択的に摩擦調整剤を含んでも良い。限定するためではなく例を挙げると、摩擦調整剤は、ワックス、オイル、グラファイト、窒化ホウ素、モリブデン酸ジスルフィド、フッ素ポリマー、雲母、滑石、そして様々な混合物およびこれらの等価物である。グラファイトの摩擦調整剤は、粒子または繊維状であっても良い。摩擦調整剤は、ここに参考のために示される米国特許第6,824,485号に開示されているように、カルボン酸の金属塩を含んでも良い。
【0023】
不織領域の厚さは、リブまたはベルトの硬さに対して主として貢献するものであっても良い。柔軟なベルトにとっては、不織領域をできる限り薄くし、そして下部表面領域を、少なくとも予想される摩耗量に適応するのに十分な厚さをもたせることが好ましい。硬いリブ(横方向)および柔軟なベルト(長手方向)にとっては、不織布を配置することにより好ましい繊維配向の方向がベルト長さを横切ることが望ましい。
【0024】
不織領域15は、弾性部材を浸透させた不織部材の単一の層または複数の重ねられた層を含んでも良い。摩擦調整剤は、不織領域の外側表面の摩擦係数(COF)の制御を助けるために、不織領域15において用いられても良い。限定するためではなく例を挙げると、摩擦調整剤は、下部表面領域16に関連して示されるように、ワックス、オイル、グラファイト、窒化ホウ素、モリブデン酸ジスルフィド、フッ素ポリマー、雲母、滑石、カルボン酸の金属塩、そして様々な混合物およびこれらの等価物である。摩擦調整剤は、湿潤または乾燥工程による形成中に、またはベルトの組立ての前の独立した処理工程において不織部材に加えられても良く、かくして、選択的な下部表面領域16の浸透する弾性部材、またはリブ12の部材に含まれるいかなる選択的な摩擦調整剤に加えられても良い。
【0025】
不織部材は、アクリル繊維を含む。慣習によれば、アクリル繊維は、繊維を形成する物質が少なくとも約85重量パーセントのアクリロニトリルモノマー単位から成るいずれかの長分子鎖の合成ポリマーである合成繊維である。繊維を形成する物質が約85パーセントよりも少ないものの、少なくとも35重量パーセントのアクリロニトリル単位から成るいずれかの長分子鎖の合成ポリマーである製造された繊維は、通常、アクリル系繊維と呼ばれる。アクリル、またはアクリル系のいずれも本発明に用いられる。ここでのアクリル繊維について言及すると、これは両方の種類を対象としている。すなわち、ここでのアクリルとは、少なくとも35重量パーセントのアクリロニトリル単位とともに製造されるいかなる繊維をも対象とする。好ましいアクリルは、少なくとも85重量パーセントのアクリロニトリル単位を有する。知られている不織布の製造工程のいずれかにおける使用に適した、麻、人絹、チョップド・ファイバー、パルプ、グラウンド(ground)および同種のものを含むいかなるアクリル繊維も、使用され得る。適当なアクリル繊維は、約1mmから約10mmまでの平均長さ、好ましくは約1mmから約6mmまで、もしくは約2mmから約5mmまでの平均長さを有しても良い。適当なアクリル繊維は、約0.05から約5デニール/フィラメント(dpf)、または好ましくは約0.05から約1.5dpfの短繊維サイズを有しても良い。デニールは、繊維9000メートルごとのグラム重量として定義される。好ましいアクリル繊維は、約1dpfよりも小さい、または約0.05から約1dpfの短繊維サイズを有するアクリル超極細糸である。その繊維は、約13.5ミクロンよりも小さい、または好ましくは約11ミクロンよりも小さい、または約5ミクロンよりも小さい平均径を有しても良い。繊維の直径は、dpfと関連があることが理解されるべきである。
【0026】
不織布は、約4グラム/平方メートルから約90グラム/平方メートルまでの範囲の坪量を有しても良い。適当な不織布は、約10グラム/平方メートルから約50グラム/平方メートルまでの範囲の坪量を有しても良い。好ましい実施形態においては、坪量は、14グラム/平方メートルから約25グラム/平方メートルまでの範囲にあり、2つの毛(pile)または層の不織布が用いられても良い。不織部材の多孔度は、フレイジャー(Frazier Precision Instrument Company, Inc.の登録商標)の圧力差空気浸透測定器(differential pressure air permeability measuring instrument)および/またはASTM D737等の標準化された方法、またはこれと同等のものを用いて表される。不織布部材の多孔度は、約20から約400cm/(秒・cm・水頭12.7mmの圧力差)の範囲(1/2インチの水において約40から約800ft/(分・ft)である。好ましくは、不織布部材の多孔度は、12.7mmの水において約30から約200cm/(秒・cm)の範囲にある。好ましい不織布は、12.7mmの水において約60から約200cm/(秒・cm)の範囲の多孔度を有し、そして2つの層が用いられる。もちろん、現実の多孔度は、実際には不織部材の層を1つよりも多く使用することにより、著しく減少する。好ましくは、複合層の結果的な多孔度(すなわち浸透性)は、特定の範囲にある。
【0027】
不織布は、不規則に配向された繊維の織物を含んでも良く、あるいは、繊維は、加工の条件およびその製造に用いられる設備から生じるある程度の配向を有していても良い。結果として、不織布の引張り強度は、機械加工方向と横方向とで若干異なる。平均引張り強度は、約200から約1500グラム/センチまで、または約400から約700グラム/センチまでの範囲にある。
【0028】
不織領域15の厚さは、約0.025ミリメートルまたはそれよりも大きくても良い。不織部材の厚さは、約0.05から約1.2ミリメートルまでの範囲内にあっても良い。好ましくは、不織部材の厚さは、約0.05から約0.6ミリメートル、または約0.05から約0.3ミリメートルまでの範囲内にある。もし、不織布があまりにも厚いと、弾性体に十分に不織布に浸透せず、または、弾性体の金型への流れに不織布が抵抗して適当な断面形状を設けることに失敗する。もし、不織布があまりにも薄いと、それが引き裂かれたり、またはあまりに多くの弾性体の浸透を許してしまい、ゴムの裏抜けと過剰な表面ゴムを生じる。
【0029】
不織布は、所定量のアクリル繊維に加え、非アクリルの繊維物質を含んでも良い。アクリル繊維とは異なる非アクリルの不織布の処方に加えられる適当なアクリル繊維は、どれだけの量であっても、本発明の1つの実施形態における不織布の性能の1つの面を改良すると信じられている。不織部材のアクリル繊維成分は、不織布の合計繊維成分に対して約25重量パーセントから100重量パーセントまでであっても良い。好ましくは、不織部材のアクリル繊維成分は、約40重量パーセントから100重量パーセントまでである。不織布は、天然繊維、有機繊維、または、例えば針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、木粉、亜麻糸、黄麻の繊維、大麻、ケナフ、綿、カポック、シサル麻、羊毛、絹、またはその他のセルロース繊維、あるいはそれらの混合物を含むセルロース繊維を含んでも良い。不織布は、その他の合成繊維、アラミド、カーボン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、PVAL、レーヨン、ガラス繊維、玄武岩、あるいはナイロンを含む無機繊維を含んでも良い。不織布は、合計繊維成分の約75重量パーセントまで前述の非アクリル繊維あるいはそれらの混合体を含んでも良く、そして合計繊維成分の少なくとも約25パーセントのアクリル繊維を含んでも良い。好ましくは、不織布の約60重量パーセントまでの繊維が非アクリル繊維を含む。
【0030】
不織布は、従来技術において知られている、有益な加工特性あるいは物理特性を不織布に与える付加的な成分もまた含んでいても良い。例えば、不織布は、サイズ剤、化学結合剤、および/またはゴム接着促進剤を含む接着性レジンも含んで良い。化学結合剤は、例えば、界面活性剤、濃化剤、染料、顔料、架橋剤、酸および塩基、充填剤および同種のものとともに処方されても良く、そして結合剤は、典型的に、不織布の合計乾燥重量の約0.5から約35パーセントまで含まれても良い。有用なゴムの接着促進剤は、例えば、ラテックス、ブロック型イソシアネート(blocked isocyanate)、トリアリルシアヌレート、アクリル、ウレタン、エポキシ、レゾルシノールホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、クロロフェノール樹脂、炭化水素樹脂、ロジンエステル、メラミン樹脂、脂肪酸の長鎖モノ、ジ、またはトリエステル、またはアルコール、およびそれらと同種のものやそれらの混合物を含む。有益な接着促進剤は、例えば、米国特許第6,858,664号に開示されている。化学結合に加えて、または化学結合の代わりに、機械的な結合、熱的な結合、紡績による結合(spun-bonding)、または溶剤による結合(solvent bonding)、または前述のものの組み合わせが採用され得る。機械的な結合の技術は、例えば、ニードルパンチ、縫合による結合(stitch bonding)、および水力交絡(hydroentanglement)を含む。結合度は、不織布の強度、多孔度、および比重を決定する重要な要素である。適当な不織布は、限定するためではなく例を挙げると、PVALに基づく結合成分とともに約0.5重量パーセントから約25重量パーセントまでの化学結合剤を含む。適当な不織布は、限定するためではなく例を挙げると、化学結合成分の要素としてゴムの接着促進剤を乾燥重量で約1パーセントから約15パーセントまで含んでも良い。
【0031】
繊維18は、弾性体の本体11の母材および/または心線上部7および/またはリブ12および/または選択的な下部表面領域16の中に含まれても良い。繊維18は、さらに、リブ表面が剥れることや劣化、および/または異音(chatter)あるいは騒音を軽減し得る。繊維は、合成、または天然、有機、または無機であっても良く、そしてアラミド、カーボン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、PVAL、レーヨン、アクリル、ガラス繊維、およびナイロン、そしてそれらの混合物あるいは等価物を含んでも良い。その他の有機繊維は、羊毛、絹、大麻、綿、およびそれらの混合物や等価物を含んでも良い。リブエラストマーに用いられる繊維の量は、ゴムの100重量部当たり(PHR)、0から約25重量部の範囲内であっても良い。好ましい実施形態においては、ゴムの100重量部当たり約0.01から約5重量部用いる。不織領域は、心線下部のリブ部材に必要とされるフロックや繊維の充填量の割合を大幅に減らすことを可能にする。この変化の結果、高められた弾力性と心線下部の構造の曲げとによりベルト性能は向上する。
【0032】
100パーセント木材パルプの不織布、あるいは木材パルプと合成の混合不織布を有する従来技術のベルトに比べ、不織布におけるアクリル繊維の使用は、湿った、および乾燥した試験条件のいずれの下でも、本発明のベルトのプーリ係合面の耐久性とスリップノイズ特性とを著しく改善する。不織布におけるアクリルの使用が、ベルトの摩擦特性を顕著に調整し、ベルトの使用される寿命時間を超えて、ベルトの摩擦係数の安定性を改善する。不織布におけるアクリルの使用は、ベルト製造の容易性と、得られるベルトの不織布表面層の均一性(consistency)を著しく改良する。
【0033】
選択的な下部表面領域、ベルト本体、および心線上部の弾性部材の処方は、選択的に、ただし好ましくは、1つまたはより多くの付加的な通常のエラストマー添加剤であり、一般的なゴム処理の慣例に従ったプロセスおよびエキステンダーオイル、酸化防止剤、ワックス、顔料、可塑剤、軟化剤、粘着性付与剤、充填剤、活性剤、促進剤、スコーチ防止剤、加硫促進剤、潤滑剤、および同種のものを含む。例えば、本願発明の好ましい実施形態において、弾性部材は、カーボンブラック、可塑剤、酸化防止剤、コエージェント(coagent)、過酸化物、および硬化抑制剤も含む。
【0034】
(製造方法)
本発明のベルトは、マンドレルにおいて一連の層として形成され、反転される。ジャケット6は、もし存在するならば、最初に装着される。ベルトにおける弾性体の心線上部7が次に次に装着される。後に続くそれぞれの弾性体の層が、先に装着された層の上に装着される。選択的な心線横断層(cross-cord layer)8が心線上部7の上に装着されても良い。抗張コード10は、もし存在するならば心線横断層8の上に、あるいは適宜、心線上部7またはジャケット6の上に、らせん状に巻いて配置される。ガム層9は、抗張コード10への衝撃緩和のために心線上部7と心線横断層8との間に配置されても良い。弾性体の心線下部または本体11が、それから抗張部材10の上に配置される。選択的な下部表面領域16が、最後から二番目に所定量だけ配置される。下部表面領域16、または心線下部、または本体11の上に装着される最後の層は、領域15を備えた不織部材である。
【0035】
不織布領域は、1つまたはより多い不織部材の層を含んでも良い。好ましい実施形態では、二層のアクリル不織部材が用いられる。不織布の層は、成型工程の間に生じたガスを、排孔から通したり、金型の端部から逃れさせることを可能にするという付加的な利点を有することが知られている。しかしながら、心線下部の弾性部材が不織布部材に適切に浸透して領域15を形成することは、達成が非常に困難である。発明者は、約75パーセントまでセルロースまたは他の繊維を選択的に含んだアクリル繊維に基づく不織布部材が、成型工程の間において、均等かつ再現可能な、不織布への弾性部材の浸透を与えることを見出した。その隠された機構については解明されていないものの、アクリル不織布、好ましくはアクリル超極細糸の不織布は、この工程とベルトへの適用とに比類なく適していると見られる。
【0036】
ベルト形成体は、それから、加硫し、ベルトを成型するのに十分な加硫圧力と加硫温度を受ける。例えば、成型工程は、金型の内側から空気を排気すること、金型の外部の蒸気圧を約2から10分間、約11.9から16.0気圧(175から235psig)の範囲に高めること、それから金型の内部の蒸気圧を、約5.8から14.3気圧(85から210psig)の範囲に高めること、そして約10から20分間加硫させることを含んでも良い。ひとたび冷却されると、加硫されたベルト形成体は、マンドレルから取外され、適当なベルト幅に切り分けられる。最適な断面形状は、適用範囲の上限の加工圧力により達成される。油圧、あるいは他の公知技術の方法(空気圧、電気、および同種のもの)も、蒸気加硫の代わりに現在用いられている電熱加硫と共に、ベルトに圧力を加えるために用いられても良い。油圧が用いられた場合の圧力範囲は、約5.8から34気圧(85から500psig)であっても良い。温度範囲は、約121から260°C(250から500°F)であっても良い。加硫に伴って圧力を加えることを含むこの方法は、多くのスコーチ安全性に比較的乏しいものおよび/または比較的高い粘度のものを含むゴム素材の選択の幅を広げる。
【0037】
圧力は、所定の形状を形成するためにベルト形成体を放射状に内側に向かって押圧する、柔軟な外部形状を有す金型に加えられても良く、かくして形成のための硬い内側マンドレルを利用する。その代わりに、内側マンドレル上の拡張する膜(expanding membrane)の上にベルトが組み上げられ、拡張する膜に加えられた圧力が、ベルトスラブを、リブまたは輪郭が形成された外側金型に押し込んでも良い。弾性部材は、それから、不織布部材を形成する個々の繊維間の隙間を占拠する。この結果として、不織布部材の領域15は、弾性部材に混合され、浸透される。
【0038】
木材パルプと様々な合成繊維を含む従来技術の不織布部材は、あまりにも大きい、あるいはあまりにも乏しい浸透性により、ベルトにおいて利用することが難しい。あまりにも大きい浸透性、あるいは裏抜けは、ゴム表面がベルトとして望ましいとされるよりも低い耐摩耗性、より高い摩擦係数、より大きいスリップノイズおよび/または一般的により不安定な特性を有するという結果を招く。従来技術の不織布部材があまりにも高い多孔度、あまりにも低い多孔度、あまりにも低い強度、あるいはあまりにも高い強度を有する場合、不織布においてあまりにも大きい亀裂あるいは穴が形成されている場合に裏抜けが生じ得ることが注目されており、そしておそらく、他の要素もまた同様に重要であろう。あまりにも高い強度およびあまりにも高い多孔度の不織布は、金型の形状に応じて変形せず、そして弾性部材が単に不織布を通じて流れ、弾性部材のみがプーリ係合面にあるベルトおよび/または不完全な輪郭形状の形成、または未充填のリブといった結果を招く。あまりにも低い強度の不織布は、成型の間に引き裂かれ、あるいは穴を形成し、この場合にもやはり、弾性部材または弾性部材のパッチ(patch)のみがプーリ係合面にあるという結果になる。あまりにも低い多孔度およびあまりにも高い強度の不織布は、裏抜けを妨げるが、成型における適切な輪郭の形成をも妨げる。驚くべきことに、本願発明におけるアクリル不織布の使用は、これらの問題を解決し、望ましい量だけ不織布に浸透した弾性部材と、プーリ係合面において望ましい量の繊維がある均一な成型表面とを有するベルトを提供する。
【0039】
(実施例)
以下の実施例は、本発明の本質を説明する目的で述べられており、その範囲を限定することは意図されていない。
【0040】
実施例の第1セットは、従来技術に対する本発明のベルトの加工における改良を説明する。テストベルトは、心線上部7、心線横断部8、ガム層9、抗張コード10、圧縮部または本体11、および図1に示されたマルチvリブド輪郭上にある不織領域15を含む。テストベルトでは、EPDMベースの弾性部材、ポリエステルの抗張コード、ナイロンの心線横断部、および表1と2に示された様々な構成の二層の不織布を用いた。表1および2における不織布は、湿式レイドプロセス(wet-lay process)による互換処理条件(compatible processing condition)の下で、RVAL結合剤により製造された。記録されている各構成の百分率は、繊維成分のみに対するものであり、不織布の合計重量の約15パーセントから約22パーセントまで含まれる結合剤成分は無視されている。実施例4、6、および8においては、PVAL結合剤は、結合剤の乾燥重量の約5パーセントを占めるゴム接着促進剤であるメラミン・ホルムアルデヒド(MF)樹脂を含んでいた。不織布の厚さと多孔度と基礎重量は、単一の層についてのものが記録されている。表1の例の不織布は、直径が約3.5ミクロンであり、長さが約3mmであり、そしてアクリル成分が85%あるいはそれよりも多い約0.1dpfのアクリル超極細糸を用いた。セルロースは、約25ミクロンから約35ミクロンの繊維径と約2から約4mmの繊維長を有する針葉樹パルプであった。ベルトへの処理工程は、単一層および二層の両方の不織布を用いて評価された。
【0041】
処理工程の結果は、vリブ輪郭形状の品質、または金型への充填、裏抜けの量、そして表面における不織布繊維被覆のパッチネス(patchiness)に基づいて、定性的に評価された。表1におけるアクリル不織布は、常に、優れた輪郭形状と、表面における高度な繊維被覆という結果になった。表1のアクリル不織布においては、概して5パーセントよりも多い裏抜けはなかった。一方、表2における比較例は、使用が困難であることを照明し、そして概ね過剰な裏抜けか、または不完全な輪郭形状(金型への未充填)のいずれかを有した。表1および2から、比較例は、基礎重量、厚さ、多孔度および強度(図示せず)が本発明の実施例と同等であることが示され得る。PETの比較例は超極細糸であり、実施例のアクリル超極細糸よりもわずかに大きい。かくして、不織布のためのアクリル繊維の選択は、これらの優れた処理工程の結果を生じさせるための最も重要な工程であると信じられる。
【0042】
【表1】

【0043】
【表2】

【0044】
実施例の第2セットは、セルロースの不織布を有する従来技術のベルトに対する、アクリル不織布のベルト性能の利点を説明する。表1の実施例3から8のアクリル不織布により構成された理想的なマルチvリブドベルトについて、ノイズ、摩擦、耐久性試験が行われた。同様に、比較例11の従来技術のセルロースの不織布を有する従来技術のベルトもテストした。結果は、本発明のベルトにより生じる不整合ノイズが著しく低減されることを示す。本発明のベルトは、より静かでもあり、時間が経過してもより大幅に安定した摩擦動向を示す。本発明のベルトは、耐水性でもあり、湿った試験条件の下でも安定した摩擦動向を示す。本発明のベルトは、耐久試験機上でも、より少ない摩擦を示す。
【0045】
テストベルトは、心線上部7、心線横断部8、ガム層9、抗張コード10、圧縮部または本体11、および図1に示されたマルチvリブド輪郭上にある不織領域15を含む。テストベルトは、いずれもEPDMベースであり、ポリエステルの抗張コード、ナイロンの心線横断部、および二層の不織布を含む。テストベルトは、6つのリブを有し、21.6mm(0.85inch)の幅で、1200mmの長さであった。
【0046】
ベルトの耐久性能は、強制スリップ試験(forced-slip test)によりテストされた。テスト前と、強制スリップ試験の間に450キロサイクル(kc)の間隔で、ベルトは摩擦係数試験機と不整合ノイズ試験機との上に置かれた。強制スリップ試験は、図3に示された3つのプーリのシステム上で行われた。図3を参照すると、プーリ31、32、33のそれぞれが、60mmの直径と60度のベルト巻き角度(belt wrap)αを有する。駆動プーリ31は約2000RPMで右回りに回転し、駆動プーリ32は駆動プーリ31よりも約4パーセント低い速度で回転する。周囲の温度は23℃である。リブあたり180ニュートンの垂直荷重W’が従動プーリ33に加えられる。
【0047】
摩擦係数(COF)試験は、図4に示されたテストシステム(layout)で行われた。図4を参照すると、テストプーリ43と駆動プーリ41とは、いずれもマルチvリブ輪郭形状と141.5mmの直径を有する。プーリ42、45、47はアイドラである。乾式の摩擦係数試験においては、プーリ44が、プーリ43上の巻き角度が30度を保つように位置決めされ、駆動プーリ41は400rpmで回転される。湿式の摩擦係数試験においては、プーリ42の近くで毎分300ミリリットルの水が吹きつけられる間、プーリ44が、プーリ43上の巻き角度が40度を保つように位置決めされ、駆動プーリ41は800rpmで回転される。180ニュートンのベルト張力Tを与えるために、360ニュートンの重量W’’がプーリ46に加えられる。ゼロトルクからプーリが回転を止めるまで増加するように、テストプーリ43にはトルクが加えられる。摩擦係数は、観測された最大トルクから算出された。テストは、SAE J2432−2000に準じて設計されている。
【0048】
不整合ノイズ試験は、図2に概略的に示されるように、4点駆動(four-point drive)で行われた。図2を参照すると、プーリ21、23、および24はマルチvリブ輪郭と、それぞれ151、101、および61mmの直径を有する。プーリ23は駆動用であり、1000rpmで右回りに回転する。プーリ22は直径80mmのアイドラである。プーリ22は、間隔Lに渡って不整合角度(MA)が生じるように、テストシステムの平面に対して垂直に移動させることが可能である。489ニュートンの死重Wの手法により、およそ267ニュートンの張力がテストベルトに加えられた。それからプーリ22は、ある量までオフセットされ、マイクMによってノイズが測定された。湿式の不整合ノイズ試験においては、水が、ノイズを計測する直前に、不整合角度の設定ごとに3つの噴出部からベルト表面に向かって吹き付けられた。
【0049】
表3および4は、強制スリップ耐久試験(forced slip durability test)の間における乾式および湿式の摩擦係数測定の結果をそれぞれ示す。比較例のベルトが、テストの間を通じて、徐々にかつ大きな摩擦係数の増加を示したことがわかる。以下に示されるように、不整合ノイズは、450キロサイクルで聞かれ、そしてその後に続く不整合ノイズ試験の時間中ずっと聞かれた。対照的に、本発明のベルトの実施例3から8は、耐久試験の進行時に摩擦係数のわずかな変動のみを示し、そしてそれらは耐久試験のいかなる段階においても不整合ノイズ試験において静かに走行した。実施例3から8は、耐久試験の間を通じてアクリル繊維の実質的に全ての表面を保持した。比較例11のセルロースの不織布層は、強制スリップ試験の間に徐々に摩耗し、試験の終了時までには実質的に擦り減ってしまい、その下に配置されたベルト本体の弾性部材のかなりの量が露出した。湿式試験における不織布の摩耗は、比較例のベルトにおいては特に速やかだった。これらの摩擦係数試験の結果は、耐久性に優れ、摩擦係数が制御された繊維のリブ表面を与えることによる、本発明のベルトの低ノイズ特性の長寿化を改善することにおける、アクリル不織布の効能を証明した。
【0050】
実施例3から8の本発明のベルトは、周期的な不整合ノイズ試験において、本質的に同じように作用し(1から3デシベル以内)、単純化のために、平均あるいは典型的なノイズ値のみがデシベルで表5に記録され、比較例11と比較されている。表5から明らかであるように、本発明のベルトは、テストの間、終始一定して静かに走行したのに対し、比較例のベルトは、徐々にかつ非常に騒々しくなった。いくつかのベルトについては、1800キロサイクルにおける最終的な測定は終了しなかったが、その傾向は明らかである。
【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
【表5】

【0054】
本発明のベルトの他の利点は、アクリル不織布のセルロース成分の選択により摩擦係数を選択できることである。表3および4は、摩擦係数におけるセルロース成分の影響を説明する。再び表1を参照すると、実施例3および4は100パーセントアクリル繊維であり、実施例5および6は70パーセントがアクリルで30パーセントがセルロースであり、そして実施例7および8は50対50の混合である。かくして、セルロース成分の増加の効果は、ベルトの良好な耐久性と低ノイズ特性を維持する一方で、摩擦係数を大きくすることである。より高い摩擦係数は、ベルトの許容荷重を増し、またはスリップを低減するために望まれ得る。その代わりとなる等価な利点とは、不織布のアクリル成分の選択により摩擦係数が調整できることであると理解されるべきである。不織布の非アクリル成分に対するアクリル成分の調整は、プーリ係合面の摩擦係数に対し、有益な、または望ましい影響を与え得る。
【0055】
当業者は、本発明の他の有用な実施形態を認識し得る。例えば、ここで開示されたアクリル不織布は、ベルトの背面に望ましい摩擦特性を付与すべく、図1における選択的なジャケット6のために利用されても良い。他の例では、ここで開示されたアクリル不織布は、図1における選択的な心線横断部8のために利用されても良い。他の例では、ここで開示されたアクリル不織布は、集合対面層(flocked surface layer)を有するベルトにおいて、米国特許第6,561,937号にて開示された不織布の帆布に直接、集合体を接着させる手法により、短繊維の集合体によって覆われた内側帆布層としてのアクリル不織布の帆布を用いることにより、有利に利用される。他の例では、アクリル不織布は、ラバーセメント、またはRFL、またはカレンダー工程によるゴム処理により前処理されても良い。この場合、表面が覆われたアクリル不織布は、ベルト本体またはリブの下層ゴムによって浸透され、あるいは下層ゴムと混合される代わりに、米国特許第6,561,937号、あるいは米国特許第4,892,510号にて開示されたように、ベルトの輪郭面に接着される。最後の例としては、ここで開示されたアクリル不織布は、米国特許第5,971,879号、あるいは米国特許第4,895,555号にて開示されたような注型ウレタンのポリマー本体を有する注型タイプの動力伝達ベルトに利用されても良い。
【0056】
ここでは、本発明のある形態についてのみ説明がなされたが、ここで説明された本発明の趣旨と範囲から逸脱することなく、その構造と部材相互の関係において様々な変形がなされ得ることは当業者にとって明らかである。ここに開示された発明は、ここに特別に開示されてはいないいずれかの要素の欠落によって適宜、実施されても良い。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明のベルトの実施形態における横断面図である。
【図2】不整合ノイズ試験のプーリ配置を示す。
【図3】強制スリップ耐久試験のプーリ配置を示す。
【図4】摩擦係数試験のプーリ配置を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性部材を含み、長手方向に沿った抗張部材を有する本体を備え、前記本体が所定の輪郭形状を有するプーリ係合領域を有し、前記プーリ係合領域が、繊維による不織布部材を含むとともに前記不織布部材がアクリル繊維を含むことにより特徴付けられるベルト。
【請求項2】
前記不織布部材が、前記プーリ係合領域において前記弾性部材と混合されている請求項1に記載のベルト。
【請求項3】
前記アクリル繊維が、約1.5dpfあるいはそれ未満のサイズ、または約13.5ミクロンあるいはそれ未満の平均径を有するアクリル超極細糸である請求項1に記載のベルト。
【請求項4】
前記アクリル超極細糸が、約1dpfあるいはそれ未満のサイズ、または約11ミクロンあるいはそれ未満の平均径を有する請求項3に記載のベルト。
【請求項5】
前記アクリル繊維が約1mmから約10mmまでの平均長さを有し、前記アクリル繊維が約5ミクロン未満の直径を有する請求項1に記載のベルト。
【請求項6】
前記不織布部材が、繊維重量の合計に対して少なくとも約25パーセントのアクリル繊維と約75パーセントまでの非アクリル繊維とを含み、前記非アクリル繊維が、合成繊維、天然繊維、セルロース繊維、アラミド、カーボン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイミド、PVAL、レーヨン、ガラス繊維、玄武岩、ナイロン、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、綿、大麻、木粉、羊毛、絹、シサル麻、亜麻糸、黄麻の繊維、ケナフおよびカポックを含む一群の中から選択される請求項1に記載のベルト。
【請求項7】
前記不織布部材が、ゴム接着促進剤を含む請求項1に記載のベルト。
【請求項8】
前記ゴム接着促進剤が、メラミン・ホルムアルデヒド樹脂成分である請求項7に記載のベルト。
【請求項9】
前記不織布部材の繊維の約100パーセントがアクリル繊維である請求項1に記載のベルト。
【請求項10】
前記弾性部材が繊維充填を含み、前記繊維充填がゴムの100重量部当たり約0.01から約20重量部までの範囲にあり、前記繊維充填が、アラミド、カーボン、ポリエステル、ポリオレフィン、アクリル、ポリイミド、PVAL、レーヨン、ガラス繊維、およびナイロン、またはこれらのうち2つ以上を含む一群の中から選択される請求項2に記載のベルト。
【請求項11】
前記プーリ係合領域が、0.025mmから3.0mmまでの厚さを有する請求項2に記載のベルト。
【請求項12】
不織布領域が、少なくとも二層の前記不織布部材を含む請求項2に記載のベルト。
【請求項13】
前記ベルトが、マルチvリブドベルト、vベルト、歯付きベルト、および平ベルトから選択される請求項2に記載のベルト。
【請求項14】
弾性部材を含み、長手方向に沿った抗張部材を有する本体を備え、前記本体が所定の輪郭形状を有するプーリ係合領域を有し、前記プーリ係合領域が、前記弾性部材と混合された繊維による不織布部材であって、前記不織布部材の繊維の少なくとも約40重量パーセントが、約1dph未満で、約11ミクロン未満の平均径を有し、約1から約6mmまでの平均長さを有し、そして少なくとも85重量パーセントのアクリロニトリル成分を有するアクリル繊維を含み、前記不織布部材の繊維の約60重量パーセントまでが非アクリル繊維を含むことにより特徴付けられる前記不織布部材を備えるマルチvリブドベルト。
【請求項15】
ベルト形成体の第1の弾性体層および/または織物層をマンドレルの上に横たえる工程と、
第1の層の上に抗張コードを横たえる工程と、
抗張コード層の上に第2の弾性体層を横たえる工程と、
第2の弾性体層の上に繊維による不織布領域を横たえる工程と、
成型金型においてベルト形成体を硬化する工程と、
不織布領域のためにアクリル不織布を選択する工程とを備えるベルトの製造方法。
【請求項16】
前記アクリル不織布が、約1dpf以下のアクリル超極細糸の繊維成分を少なくとも約25重量パーセント含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記アクリル不織布が、合計繊維成分に対する約75重量パーセントまでの非アクリル繊維を含む請求項15に記載の方法。
【請求項18】
不織布領域が、二層以上の前記アクリル不織布を含む請求項15に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−533609(P2009−533609A)
【公表日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−504351(P2009−504351)
【出願日】平成19年4月6日(2007.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/008744
【国際公開番号】WO2007/117690
【国際公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】