説明

動力伝達機構及びこの動力伝達機構を使用したロボット

【課題】多数のカムやギヤ等を連結しなくとも、回転軸への揺動板の取り付け方により、回転軸の駆動を特殊な揺動運動に変換する動力伝達機構と、これを水中での推進力を得るロボットとしとして提供する。
【解決手段】回転軸5a,5b,5cには、第1の揺動板8が等間隔で配され、この第1の揺動板8が回転軸5a,5b,5cに対する傾斜角度は同じで、回転軸5a,5b,5cに対する取り付け方向(「位相」)が順に規則的にずれて配されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば多足歩行の玩具や水中・水上で使用される玩具の推進力を得るとき等に好適な動力伝達機構及びこの動力伝達機構を使用したロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、さそりや蜘蛛等の多足動物の玩具であって、複数の足部を個別に駆動するための駆動機構を備え、この駆動機構は、多足動物の玩具の胸部から外部へ突出した駆動ローラと、該駆動ローラから駆動力の伝達を受けて回転する複数のカム(いずれも軸に対する取付方向が同じカム)とを有し、該各カムによって該各足部個別に駆動する多足部連動機構が開示されている。
また、特許文献2には、起き上がり動作を、体を屈伸させながら行い、自然な動作で起き上がるようにし、人間の起き上がり動作により近い動作を実現し得るようにした起き上がり歩行玩具として、ギヤG機構には、脚の駆動機構63と、上半体が屈曲、伸長する屈伸機構72及び腕の駆動機構とを切り換える切換機構を備える起き上がり歩行玩具が開示されている。そして、回転軸に設定ピッチで複数の円周軌道が所定角度で斜め方向に形成されていることで(ウオームギヤGを使用)、複数のカム(縦横に組み合わせたカム)が揺動運動する点が開示されている。
また、特許文献3には、第一の板面と第二の板面をV字型に設置し、この各斜板面の中央、平行な位置に回点軸が通る穴を開け、このV字型の対の面の中央部両穴に回転軸を通し、この軸にV字型の内部に、斜に棒状の構造を取り付け、それを斜棒の先端を両斜板面に接しながら、180度回転させると、第二の斜板面に平行に密接する形になると記載され、対向する斜板面の間隔はこのように調整されることで、回転運動と往復運動とを相互に変換する機構と記載されるものが開示されている。
【0003】
一方、機械要素としての動力伝達機構には、巻き掛け伝動装置や、リンク、カム等種々のものがあるが、カムの種類の中に、斜板カムと呼ばれ、その基本的な構造として、互いに密着して滑り合う、シャフトに傾けて取り付けられた2枚の固定用部材構造で、1枚の固定用部材のみがシャフトと共に回り、他方の固定用部材は回転をしないとすれば、回転しない方の固定用部材は、例えばコマが回っている時の「揺れ運動」(みそすり運動と呼ばれる)の動きをする。そして、回転運動を往復運動に変えたり、反対に、往復運動を回転運動を変換する機構を作り出す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭63−22984号公報
【特許文献2】実用新案登録第3136601号公報
【特許文献3】特開平7−22467号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】技能検定 機械・仕上の総合研究(上) 株式会社技術評論社発行第1章 機械要素 7.リンク・カム・ばね・ブレーキ ▲2▼カム
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、シャフト(軸)とカムとが垂直で取り付けられている。駆動力から駆動力を伝達させるギヤG45等も軸に垂直で取り付けられている。これは、動力伝達で一般的な連結であるが、これでは多足動物の玩具としての多足をリアルに駆動させることができないことから、多数の上記カム47により各足を駆動させる。また、特許文献2では、ウオーム59に斜めの溝が形成されているが、ウオーム59は軸57に垂直で取り付けられている。
しかしながら、特許文献1や2では、ムカデのような多足歩行をリアルな動き(地を這うような動き)を作り出すことはできないか、できたとしても多数のカムを連結させなければこれを実現することができないと考えられる。また、水中や水上付近で推進力を得るスクリュー、魚のヒレ又は櫂として使用されるときにおいて、水しぶきを上げないで推進力を得るような動作も期待できないか、できたとしても多数のカムを連結させなければこれを実現することができないと考えられる。
【0007】
一方、非特許文献1の機械要素としての斜板カムでは、駆動力からの駆動により回転する一方側のシャフト(軸)にカムが斜めに取り付けられ、駆動される側(伝達力が伝えられる側)のカム(固定用部材)は固定であり、このカム(固定用部材)により駆動される他方側のシャフト(軸)は、一方側のシャフト(軸)と同じ方向に回転するもので、エンジンやポンプに使用される。つまり、多足歩行の玩具や水中玩具等に適用したものではない。
【0008】
特許文献3には、2つの板の中心を所定角度で斜め方向に軸が貫通するとともに、2つの板の間で摺動する部材が備わる点が開示されている。特許文献3は、エンジンの回転ピストン機関である。したがって、特許文献1や2や上記機械要素としての斜板カムと同様、ムカデの足や蛇のような地を這うようなリアルな動きを作り出すことはできないか、できたとしても多数のカムを連結させなければこれを実現することができないと考えられる。
そこで、本発明の目的は、多数のカムやギヤ等を連結しなくとも、回転軸への揺動板の取り付け方により、回転軸の駆動を特殊な揺動運動に変換する動力伝達機構となることを見出し、これを多足歩行の玩具等に適用したロボットとして提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の動力伝達機構は、貫通穴を有する第1の揺動板が回転軸に垂直以外の角度からなる所定の傾斜角度で取り付けられ、第1の揺動板の回転軸に対する取付状態は、第1の揺動板の貫通穴に回転軸が摺動可能に連結されるとともに、第1の揺動板を挟み込む一対の固定用部材が回転軸に固定され、この回転軸が複数配され、複数の回転軸の第1の揺動板が回転軸に対する傾斜角度は同じで、複数の回転軸に対する取り付け方向が順に規則的にずれて配されていることを特徴とする。また、本発明の動力伝達機構は、貫通穴を有し外周が回転自在なベアリングが回転軸に所定の傾斜角度(垂直以外の角度)で取り付けられ、ベアリングの回転軸に対する取付状態は、ベアリングの貫通穴を回転軸が貫通した状態でその隙間を埋めるように固定して連結され、ベアリングの外周に第2の揺動板が回転可能に取り付けられ、前記ベアリングの回転軸が複数配され、複数の回転軸の第2の揺動板が回転軸に対する傾斜角度は同じで、複数の回転軸に対する取り付け方向が順に規則的にずれて配されていることを特徴とする。
【0010】
これらの発明によれば、回転軸を回転駆動させると、回転軸に斜めに連結された揺動板(第1と第2の揺動板)は、回転軸に対して垂直になることはなく、所定の傾斜角度の状態で所定範囲内(以下「所定の傾斜角度の範囲」とも言う。)で繰り返し運動をする、つまり揺動板は所定の幅間隔内で常に斜めの繰り返しの運動(側面視で8の字を描くような運動)をすることとなる。この運動(揺動運動)は、多数のカムを連結しても得られない動きであり(未だ見たことがない特殊な運動であり)、繰り返しの運動(揺動運動)である。
【0011】
【0012】
この発明によれば、回転軸の1周(360度)に対して、例えば前記揺動板の傾斜角度を90度ずつ、60度ずつ、45度ずつ等、順に規則的にずれて配することで、回転軸に斜めに連結された揺動板が回転軸に対して垂直になることはなく、上記所定の傾斜角度の範囲内で、つまり所定の幅間隔内で常に斜めの繰り返しの揺動運動(回転運動)をすることとなる。この第1又は第2の揺動板の動きを、例えば多足の歩行玩具や、水中駆動玩具やロボット等に適用することで、新たな駆動の駆動力推進構造体を得ることができ、前記複数の第1の揺動板又は第2の揺動板が地面と接触するとともに、ずれて配される第1の揺動板又は第2の揺動板が互いに接触することで地面上で推進力を得る陸上の推進具として使用される動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体(ロボット)を実現することができる。
【0013】
本発明の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体(ロボット)としては、前記第1の揺動板又は第2の揺動板に羽根が取り付けられて、駆動手段を介して前記回転軸を回転駆動させることで水中での推進力を得ることを特徴とする。ここで、前記複数の第1の揺動板又は第2の揺動板に羽根が取り付けられている場合としては、前記複数の第1の揺動板を連結するシート状部材、又は、複数の第2の揺動板を連結するシート状部材を羽根とする場合を含む。
従来の縦横に組み合わせたカムを使用した水中で推進力を得る水中の推進具としては、羽根をバタバタさせるような水しぶきを上げるものになりがちであるが、この発明によれば、羽根や櫂(水中での推進力を得る船の推進具)や魚のヒレのような水になびくような動きの推進具として好適なものとなる。また、前記複数の第1の揺動板を連結するシート状部材、又は、複数の第2の揺動板を連結するシート状部材を有する場合は、より大きな水になびくような動きの推進具である動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体(ロボット)となり、例えば、大きなエイやイカや魚のひれとしての動きの玩具やロボットとして好適なものとなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の動力伝達機構によれば、回転軸に斜めに連結された第1又は第2の揺動板は、所定の幅間隔内で常に斜めの繰り返しの運動(側面視で8の字を描くような運動)をすることとなり、それは従来のカムでは複数の組み合わせたとしても実現できない、一種のカム機構を一つの第1又は第2の揺動板で実現する。
【0015】
また、本発明の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体(ロボット)によれば、回転軸に複数の第1又は第2の揺動板を取り付け駆動させることで、ムカデのような多足歩行の玩具の足駆動に使用すると、所定の幅間隔内で常に斜めの繰り返しの回転運動(揺動運動)をすることとなり、カムを多く使用することなく実現することができる。また、回転軸に第1又は第2の揺動板を取り付け駆動させることで、船の櫂としての使用や玩具としての魚(エイやイカを含む)の尾ひれの動きとして使用することで、水しぶきを抑制した滑らかでスムーズな推進力を得る動力推進構造体(ロボット)を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体の斜視図である。
【図2】上記第1の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体の側面図である。
【図3】上記第1の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体の背面図である。
【図4】上記第1の実施形態の動力伝達機構を説明する斜視図である。
【図5】上記第1の実施形態の第1の揺動板の駆動軸に対する取り付け方向(位相)を説明する図である。
【図6】本発明の第2の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す斜視図である。
【図7】上記第2の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す背面図である。
【図8】上記第2の実施形態の第1の揺動板を示す斜視図である。
【図9】本発明の第3の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す斜視図である。
【図10】上記第3の実施形態のシート状部材の動きを説明する正面図である。
【図11】本発明の第4の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示図であり、(a)はその斜視図であり、(b)はその断面図である。
【図12】本発明の第5の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す正面図である。
【図13】上記各実施の形態の固定用部材に使用可能なベアリングを説明する断面図である。
【図14】上記各実施の形態の固定用部材に使用可能なベアリングの回転軸に対する取付状態を説明する一部断面図である。
【図15】本発明の第5の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す斜視図である。
【図16】本発明の他の使用例を説明する図である。
【図17】本発明の他の使用例を説明する図である。
【図18】本発明の第6の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す斜視図である。
【図19】上記第6の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す斜視図である。
【図20】上記第6の実施形態の複数の第1の揺動板の各駆動軸に対する取り付け方向(位相)を説明する図である。
【図21】本発明の第1の実施形態の他の例を示す斜視図である。
【図22】上記第1の実施形態の他の例を示す斜視図である。
【図23】上記第4の実施形態の他の例を示す斜視図である。
【図24】ベアリング代用の実施例を示す斜視図である。
【図25】ベアリング代用の実施例を示す斜視図である。
【図26】本発明の第6の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す斜視図である。
【図27】上記第6の実施形態の斜視図である。
【図28】上記第6の実施形態の斜視図である。
【図29】本発明の第7の実施形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体を示す斜視図である。
【図30】上記第7の実施形態の斜視図である。
【図31】上記第7の実施形態の斜視図である。
【図32】上記第7の実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
第1の実施の形態は、図1ないし図3に示すように、多足歩行のムカデの玩具に本発明を適用した動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体1であり、上方フレームF1と前後のフレームF2とにより、側面視でコ字状の基台2が構成され、この基台2の前後フレームF2に回転軸5が回転可能に取り付けられ、上方フレームF1には駆動モータ(駆動手段)が内蔵されるボックス3が装着されている。上記中央の回転軸5は、ギヤGを介してモータの駆動軸4と連結されている。また、前後フレームにF2は、上記回転軸5の左右に補助の回転軸6が取り付けられている。上記回転軸5と補助の回転軸6は、前フレームF2側に各々の軸に装着されるギヤGで連結されており、中央の回転軸5が回転駆動すると左右の補助の回転軸6も回転駆動する。
【0019】
上記中央の回転軸5には、第1の揺動板8が等間隔で複数配されている。第1の揺動板8は、その回転軸側に貫通穴8zが形成されており、この貫通穴8zに回転軸が貫通するものであり、円形のカム(傾斜部材である固定用部材9)に沿わせて、そして固定用部材9に挟み込んで取り付けられている。第1の揺動板8と固定用部材9は、回転軸5に等間隔で複数配されるとともに、回転軸5に対する傾斜角度θ1がここでは60度で(図4(b))、回転軸5に対する取り付け方向(「位相」とも言う。)が順に規則的にずれて配されている。これを固定用部材9(図5では、一対の固定用部材9,9のうちの一方のみを示す。)の相対配置で詳しく説明すると、固定用部材9がその傾斜角度をずらしながら順に配されて、5個の固定用部材9にて、回転軸5の1周(360度)に対応する配置とされている。図5(a)に示すように、回転軸5に5個の固定用部材9が所定間隔で取り付けられているとすると、一方先頭側の固定用部材9aが回転軸5に対して傾斜角度θ1が60度で傾斜して取りつけられ(図4(b))、これが90度矢印方向に回転すると、符号9bの状態になり、さらに90度矢印方向に回転すると9cの状態になり、さらに90度矢印方向に回転すると9dの状態になり、さらに90度矢印方向に回転すると9aの状態になる。そしてこれらが繰り返し配置される。
また、図5(b)は、その傾斜角度θ1は60度であるが、これを120度の等間隔で配置させた場合の例であり、図5(c)は、その傾斜角度θ1は60度であるが、これを180度の等間隔で配置させた場合の例である。そして、上記固定用部材9a〜9dの任意の一つは、最大幅H1の範囲内で向ける面を変化させるようにして(視点を同じとすると)回転する。なお、本実施の形態では、回転軸5と第1の揺動板8と一対の固定用部材9,9で構成される機構が動力伝達機構D1である(図5(b))。
上記固定用部材9a〜9dの回転軸5に対する傾斜角度θ1としては、便宜上の説明としていずれも60度であるが(図4(b))、例えば、上記固定用部材9aの傾斜角度θ1は60度であり、上記固定用部材9bの傾斜角度θ1は70度で、上記固定用部材9cの傾斜角度θ1は80度で、上記固定用部材9dの傾斜角度θ1は90度というように異なる傾斜角度に設定してもよい。このように傾斜角度θ1の大きさを異ならせることにより、複数の第1の揺動板8の各々の駆動速度(テンポ)に変化を持たせることができる。これら傾斜角度θ1の数値を用いた説明は、便宜上のものであって、実際とは異なる場合がある。
なお、上記固定用部材9(9a〜9d)は、図4(a)に示すように、その円形の中央の貫通穴9zを回転軸5に接着剤を使用して斜めに取り付けるか、貫通穴9zを斜めに回転軸5を通したときの隙間を埋めるようにして回転軸5に対して斜めに取り付けられている(図13(b)参照)。
【0020】
第1の揺動板8は、くの字(或いはコの字)を呈し、その中央部が回転軸5と連結され、くの字の両先端部(接触部)8sが地面と接触する。第1の揺動板8の回転軸5に対する連結状態は、図14に示すように、第1の揺動板8に回転軸5に対する貫通穴8zが形成されており、この貫通穴8zの内周が摺動可能に、つまり貫通穴8zの方が回転軸5の径よりも大きく形成されている。このため、第1の揺動板8はその斜め姿勢をそのままでは維持できないが、この第1の揺動板8を回転軸5に所定の傾斜角度で固定される一対の固定用部材9で挟み込むことで、第1の揺動板8の回転軸5に対する斜め角度で保持されている。そして、第1の揺動板8は、一対の固定用部材9,9の隙間Sを保った状態で挟み込まれているので、余裕のある駆動を確保している。本実施の形態の各固定用部材9は、円形であるが、楕円形状でも良く、三角形や四角形のような多角形状でも良く、第1の揺動板8を挟み込めれば良い。また、各固定用部材9は、図4(a)に示すように、正円形である円板の中央貫通穴9cに回転軸5を貫通させた状態での取付状態は、接着剤や貫通させたときの隙間を埋める補強部材により斜めに取り付ける(図13、図14参照)。また、本実施の形態の一対の固定用部材9,9は、第1の揺動板8の中央、つまり上記貫通穴8zの外周部分のみならずその下方側8tも十分に挟み込み、第1の揺動板8が傾斜し過ぎないように工夫されている。なお、図17(c)に示すように、円形の一対の固定用部材9,9に対応させて第1の揺動板8の中央部分の全体もほぼ円形状に形成したり、さらに補強部材8qを取り付けて、第1の揺動板8が傾斜し過ぎないようにすることも可能である。
【0021】
前記左右の回転軸6には、前記第1の揺動板8に対応する押下げ部材7が所定間隔で取り付けられており、コ字状の第1の揺動板8の左右の肩部8kを上記押下げ部材7が押下げるようになっている。上記押下げ部材7は、第1の揺動板8のくの字の両先端部8sを確実に地面に接触させるためのもので、上記左右の回転軸6に対してその半筒状の押下げ部材7が所定間隔で取り付けられているが、その取付状態(半筒状の押下げ部材7の回転軸5に対する向き)は異なっている。すなわち、本実施の形態では、上記複数の第1の揺動板8に対応させて、複数の押下げ部材7は、回転軸6に対して90度ずつの4個が2回(2組)繰り返して取り付けられている。必ずしも複数の押下げ部材7は、上記複数の第1の揺動板8に対応させる必要はないが、左右の回転軸6,6が対応することで左右対称な動きをする上で好ましい。なお、上記押下げ部材7は、第1の揺動板8のくの字の両先端部8sを確実に地面に接触させるためのものであるから、フレームF1等に下方に突出する等して設けられるものでもよい。
【0022】
したがって、第1の揺動板8の先端を地面に設置させた状態で駆動モータにより回転軸5を駆動させると、ギヤGを介して左右の回転軸も回転駆動するが、中央の回転軸5の先頭の第1の揺動板8が、回転軸5の軸方向と交差する方向で第1の揺動板8を所定の傾斜角度の範囲H1の繰り返し運動をさせる。各第1の揺動板8a〜8dは回転軸5に所定の傾斜角度θ1で取り付けられ、上記所定幅間隔内で繰り返し移動する。このため、各第1の揺動板8(8a〜8d)の両端の左右の接地部(先端部)8sが地面と交互に接触して、ムカデの玩具である駆動力推進構造体1が前進駆動する(図1)。なお、図中の矢印で「右」は、回転軸5を右回転させることを意味し、この場合は、図中の「前」の方向に移動し、逆に左回転させると、図中の「前」の方向に移動する。
【0023】
ここで、図4(c)に示すように、固定用部材9aと固定用部材9bとの傾斜角度を変更するなどして固定用部材9aと固定用部材9bとの間隔を変更することで、先頭の第1の揺動板8の先端側8sと次の第1の揺動板8の先端側8bとが接触するようにして、この接触により先頭の第1の揺動板8を次の揺動板8を前方に送り出すような働きをさせるものでも良い。このような動きは、図4(c)の例に限らず、図4(b)に示す例でも可能である。つまり、上記隅間Sを広くしたり、又、固定用部材9aと固定用部材9bとの間隔(或いは、第1の揺動板8と第1の揺動板8との間隔でも良い)H2を狭くして(図5(b))、先頭の第1の揺動板8の先端側8sと次の第1の揺動板8の先端側8bとが接触するようにして、この接触により先頭の第1の揺動板8を次の揺動板8が送り出すような働きをさせるものでも良い。この場合は、先頭の第1の揺動板8が後方側に移動する割合を少なくして先に進み易くなる。なお、先頭から次の第1の揺動板8aは、先頭の第1の揺動板8aと8bとは位相が90度ずれて設けられているこのため、先頭の第1の揺動板8の先端側8sと次の第1の揺動板8の先端側8bとは接触(衝突)する可能性は高いものである。
そして、動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体1を幾つか連結させて、各々の駆動力推進構造体1の上記固定用部材9aや第1の揺動板8の回転軸5に対する傾斜角度θ1やθ2を種々変更することにより、ムカデの直線状の動きをジグザグ状にしたり、前後の駆動力推進構造体1を詰まらせたり伸ばしたりするような種々の動きを可能にする。
本実施の形態では、木製の玩具であるが、木製以外にも適用可能である。例えば、図2に示すように、回転軸5も第1の揺動板8も金属製で構成することも可能である(図15の実施の形態参照)。また、固定用部材9は、図13(a)に示すベアリングB1を使用することも可能である(図13(b))。また、図17(b)に示すように、一対の固定用部材9と9との間に第1の揺動板8が所定角度以上に傾かないようにするためにワッシャ(斜めの平ワッシャ)Wを介在させることも可能である。
ここで、第1の実施の形態の他の例としては、図21や図22に示すように、第1の揺動板8の中央部8tが挟みこまれる固定用部材9,9と同じ円形で形成され、確実に固定用部材9に挟みこまれるもので良い。また、第1の揺動板8の形状を略H形状を呈するようにして、足の長さを長く見せるとともに、第1の揺動板8の上方側の肩部8kに上記押下げ部材7が入り込むようにして、第1の揺動板8の両先端部8sを確実に地面に接触させるものでも良い。
【0024】
(第2の実施形態)
第2の実施の形態は、図6と図7に示すように、モータの駆動軸4と連結される回転軸5が2個設けられ、各々の回転軸5に左右の足となる一対の第1の揺動板28A,28Bが各々連結されている動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体(多足歩行の玩具)11である。すなわち、一対の第1の揺動板28A,28Bは、左右の足が別部材として形成され(第1の揺動板28A,28Bは、左右各々くの字状に形成され)、それぞれに回転軸5が貫通する貫通穴8zを介して取り付けられている。また、上記押下げ部材7が左右の足に対応するように各々回転軸10を介して設けられている。一対の第1の揺動板28A,28Bが各々左右の足(多足)になるが、必ずしも両者は対応させる必要はないが、左右対称な動きをする上では対称になる配置が好ましい。なお、本実施の形態では、回転軸5と第1の揺動板28A(或いは28B)と一対の固定用部材9,9で構成される機構が動力伝達機構D1である(図7)。
【0025】
したがって、第2の実施の形態の動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体(多足歩行玩具)11は、第1の実施の形態と同じように前進駆動するが、左右の駆動力推進構造体1A,1Bのいずれかを停止させたり、その回転駆動速度を他方側よりも遅くすると、一方の駆動力推進構造体1Aを中心に多足歩行玩具11が回転(旋回)することとなる。そして、図示しないが、上記多足玩具11をいくつか連結させることで、各々がジグザグ状の駆動をするようにもなる。
【0026】
ここで、第1の揺動板8としては、図8に示すように、上記一対の第1の揺動板29A,29Bがゴム部材30で連結され、中央の軸35にゴム部材30の中央が係止されるものでも良い。ここで、上記ゴム部材30や中央の軸35は、第2の実施の形態の多足歩行玩具11の必須構成要素ではない。また、図8中の符号29gは、上記一対の第1の揺動板29A,29Bの貫通穴であり、上記回転軸5が各々貫通する。
【0027】
(第3の実施形態)
第3の実施の形態は、図9と図10に示すように、魚のヒレ(尾ひれ)等の玩具に本発明を適用した動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体31であり、四周枠から形成される縦長の基台32に、左右方向に連結される回転軸5a〜5cが上下に3個平行に取り付けられ、各回転軸5に上記固定用部材9,9と、一対の固定用部材9,9の間に配される第1の揺動板8が一対取り付けられている。基台32の外側には、上記3個の回転軸5a〜5cを連結するギヤ(ギヤを介してモータ駆動の駆動力を得る)Gが配され、上記3個の回転軸5a〜5cを連結している。3個の回転軸5には、各々第1の揺動板8が回転軸5a〜5cに対する傾斜角度θ1は同じで、傾斜する回転軸5a〜5cに対する取り付け方向が上5aから順に規則的にずれて配されている。このような取り付けは、第1の実施の形態の場合の取り付け例と同じであるから、図9と図10中では同じ符号8a〜8cを用いて説明しているが、これに限らず、3本の回転軸5a〜5cに対する3個の第1の揺動板8a,8b,8cの傾斜角度θ1が各々異なるものや、又、回転軸5a〜5cに対する取り付け方向が上から順に規則的にずれて配されるそのずれ量が異なるようにしたりするものでも良い。なお、本実施の形態では、各回転軸5a〜5cと各第1の揺動板8a〜8cと一対の固定用部材9,9で構成される機構が動力伝達機構D1である(図9)。
そして、3個の第1の揺動板8a〜8cの先端側には、シート状部材33が連結されている。このシート状部材33は、魚の尾ひれや風になびく旗や羽根或いはシートをイメージしたものである。しかし、大きなエイやクラゲやイカそのものの玩具のイメージにも適用可能である。シート状部材33は、薄い合成樹脂シートや紙材が使用可能で、扇子のように折り畳まれるような折り目がつけられているものでも良い。なお、符号32は、第1の揺動板8a〜8cが所定範囲以上に駆動することを抑制する支持軸である。
【0028】
したがって、上記3個の回転軸5の一つを駆動させると、図10(a)(b)(c)に示すように、上下方向にずれて配される第1の揺動板8が順に側面視で8の字を描くような運動をするために、第1の揺動板8に連結されるシート状部材33が側面視で8の字を描くような運動(魚の尾ひれや旗がなびくような運動)をすることとなる。
なお、基台32には、回転軸5から所定距離だけ離れた支持軸34が回転軸と平行に3個取り付けられている。これは、本実施の形態では特に使用しないが、3個の第1の揺動板8が各支持軸34に接触しながら所定範囲内で繰り返し運動(第1の揺動板8が所定の幅間隔内で常に斜めの繰り返しの運動)を行なわせる場合に使用するものである。
【0029】
(第4の実施形態)
第4の実施の形態は、図11に示すように、四周枠から形成される縦長の基台42に、左右方向に連結される回転軸5が取り付けられ、この回転軸5に上記一対の固定用部材9,9と、一対の固定用部材9,9の間に配される第1の揺動板18,18が一対取り付けられている動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体41である。一対の第1の揺動板18,18は、魚の尾ひれ形状を呈して(エイやイカやクラゲそのものの玩具でも良い。)、左右対称になるように配されている。また、基台42には、回転軸5から所定距離だけ離れた支持軸43が回転軸5と平行に取り付けられている。第1の揺動板18の後方側に挿通穴18cが形成され、第1の揺動板18の所定の運動が回転軸5から所定距離だけ離れた支持軸43を前記挿通穴18cの内周に接する状態で挿通させて、挿通穴18cの内周に接しながら第1の揺動板18が所定の運動(揺動運動)をさせるものである。この場合は、第1の揺動板18は回転軸5に形成された挿通穴18cの内周に接しながら第1の揺動板18の後方側が8の字を繰り返すような運動(揺動運動)をすることとなる。すなわち、上記第1の揺動板18の所定範囲内H1での繰り返し運動が更に上記挿通穴18cの内周に接しながらの運動に規制されることとなる。この魚のヒレのような水になびくような動きの推進具として好適なもので、実験により、水しぶきを上げるものではなかった。したがって、船の櫂としての使用も可能である。また、一方の第1の揺動板18だけでも、8の字を繰り返すような運動(揺動運動)をし、それは水しぶきを上げるものではない。
なお、第4の実施形態においても、第3の実施の形態のように、第1の揺動板8は、回転軸5から所定距離だけ離れて平行に配された支持軸43上に支持(載置)された状態で所定の運動(揺動)をさせることも可能である。
ここで、本実施の形態の他の例としては、図23に示すように、上記第1の揺動板18,18が一対の固定用部材9,9の間に配される円板状の本体18d,18d(第1の揺動板18の回転軸5側の部材である円板状の本体18d,18dに上記貫通穴8zが形成されている。)に魚の尾ひれ形状を呈した部材(エイやイカやクラゲのヒレのような羽根でも良い。)18hを有する棒状部材18e,18eが突き刺すように取り付けられるものでも良い。また、基台42には、回転軸5から所定距離だけ離れた支持板43Aが回転軸5と平行に取り付けられている。図23に示す例でも、第1の揺動板18,18が船の櫂としての使用が可能で、第1の揺動板18,18が8の字を繰り返すような運動(揺動運動)をする。なお、図23の例では、回転軸5と第1の揺動板18と一対の固定用部材9,9で構成される機構が動力伝達機構D1である。
【0030】
(第5の実施形態)
本実施の形態は、図18から図20に示すように、玩具としての魚(左右のひれ(或いは羽根)で泳ぐ玩具)に本発明を適用した動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体61であり、上下のフレームFa,Fbからなる縦長の基台62に複数の回転軸65a〜65fが上下方向に取り付けられ(左右に一対の複数列で取り付けられ)、各回転軸65a〜65fに一対の固定用部材69,69が上記一対の固定用部材9,9と同じように取り付けられている(第1の揺動板68a〜68fが一対の一対の固定用部材69,69間に挟みこまれている)。基台62の上面には、複数の回転軸65a〜65fが突出して、この突出した複数の回転軸65a〜65fを回転させるためのベルトVが巻き回されている。ベルトVは左右に一対のもので、基台62の後方側に配されるモータMの駆動力を得て回転する。複数の回転軸65a〜65fには、各々第1の揺動板68a〜68fが回転軸65a〜65fに対する傾斜角度θ1は同じで、傾斜する回転軸65a〜65fに対する取り付け方向が前から順に規則的にずれて配されている(図20)。つまり、第1の揺動板68a〜68fが位相がずれて取り付けられ、本実施の形態では、6枚の第1の揺動板68a〜68fが各回転軸65a〜65fに対して60度ずつ位相がずれて取り付けられている。そして、軸68jを介して第1の揺動板68a〜68fに左右のヒレとしての板状部材63a〜63fが軸68jを介して取り付けられている。本実施の形態では、6枚の第1の揺動板68a〜68fが一組で、左右に各々2組ずつ配置されている。これに限らず、複数本の回転軸65a〜65fに対する第1の揺動板68a〜68fの各々の傾斜角度θ1が各々異なるものや、又、回転軸65a〜65fに対する取り付け方向が前から順に規則的にずれて配されるそのずれ量が異なるものでも良い。なお、本実施の形態では、各回転軸65a〜65fと各第1の揺動板68a〜68cと一対の固定用部材69,69で構成される機構が動力伝達機構D1である(図19)。
また、上記軸68jを通過させるスリット68sが設けられている。スリット68sは、第1の揺動板68a〜68fの各々に設けられ、一対の支柱67,67を上下のフレームFa,Fb間に配することで設けられている。したがって、上記軸68jは、一対の支柱67,67間のスリット68sから全体形状の駆動力推進構造体61の左右側方に突出して、又、上記一対の支柱67,67によりそれ以上の移動が規制されて、上記一対の支柱67,67間の中で移動する。すなわち、第1の実施の形態の第1の揺動板8を所定の傾斜角度の範囲H1が一対の支柱67,67で狭められて、上記軸68jは波打つような動作をする。
ここで、上記第1の揺動板68a〜68fには、第3の実施の形態のように、一枚のシート状部材33が連結されているものでも良い。このシート状部材33は、魚のヒレや風になびく旗或いはシート、更には大きなエイやクラゲやイカそのものの玩具のイメージにも適用可能である。シート状部材33は、薄い合成樹脂シートや紙材が使用可能で、扇子のように折り畳まれるような折り目がつけられているものでも良い。なお、符号67は、第1の揺動板68a〜68fが所定範囲以上に駆動することを抑制する支持軸である。
【0031】
したがって、上記モータMを駆動させて、ベルトVを介して複数の回転軸65a〜65fを駆動させると、図19から図20に示すように、上下方向にずれて配される第1の揺動板68a〜68fが順に側面視で8の字を描くような運動をするために、第1の揺動板68a〜68fに連結される板状部材63a〜63e(73)が順に連続するように揺動して、それはあたかも魚の左右のヒレやエイのヒレ(羽根)のような水になびく運動をすることとなる。すなわち、前の第1の揺動板68aの動きを追いかけるように次の第1の揺動板68bが動作する。なお、モータMは、左右のベルトV,Vを同時にも片側のみでも駆動させることができ、これにより旋回動作が可能である。
【0032】
(第6の実施形態)
本実施の形態は、図27から図29に示すように、玩具としての魚(左右のひれ(或いは羽根)で泳ぐ玩具)に本発明を適用した動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体71であり、縦長の基台72に沿って回転軸75a,75aが左右に取り付けられ、各回転軸75a,75aに一対の固定用部材79,79が上記一対の固定用部材9,9と同じように取り付けられている(第1の揺動板78a〜78fが一対の一対の固定用部材79,79間に挟みこまれている)。基台72の上面には、左右二本の回転軸75a,75aを駆動させる駆動源(モータ)がベルトを介して取り付けられる(図示せず)。
二本の回転軸75a,75aには、各々第1の揺動板78a〜78fが回転軸75a,75aに対する傾斜角度θ1は同じで、傾斜する回転軸75a,75aに対する取り付け方向が前から順に規則的にずれて配されている。つまり、第1の揺動板78a〜78fが位相がずれて取り付けられ、本実施の形態では、7枚の第1の揺動板78a〜78fが各回転軸75aに対して60度ずつ位相がずれて取り付けられている。第1の揺動板78a〜78fにヒレ(羽根)73hが取り付けられている。本実施の形態では、6枚の第1の揺動板78a〜78fが回転軸75a,75aに左右に各々1組ずつ配置されている。これに限らず、複数本の回転軸75a,75aに対する第1の揺動板78a〜78fの各々の傾斜角度θ1が各々異なるものや、又、回転軸75a,75aに対する取り付け方向が前から順に規則的にずれて配されるそのずれ量が異なるものでも良い。なお、本実施の形態では、各回転軸75a,75aと各第1の揺動板78a〜78fと一対の固定用部材79,79で構成される機構が動力伝達機構D1である。
また、基台72には上記78a〜78fを各々通過させるスリット78sが設けられている。本実施の形態のスリット78sは、基台72の左右の各々に設けられ、第1の揺動板78a〜78fの軸部78jが挟まれるようになって、その動きが所定範囲になるように規制されているが、スリット78sを複数設けて、第1の揺動板78a〜78fの軸部78jを一つずつ通されているものでも良い。
ここで、上記第1の揺動板78a〜78fには、第3の実施の形態のように、一枚のシート状部材33が連結されているものでも良い。このシート状部材33は、魚のヒレや風になびく旗や羽根或いはシート、更には大きなエイやクラゲやイカそのものの玩具のイメージにも適用可能である。シート状部材33は、薄い合成樹脂シートや紙材が使用可能で、扇子のように折り畳まれるような折り目がつけられているものでも良い。
【0033】
したがって、上記モータにより回転軸75a,75aを駆動させると、所定間隔でずれて配される上記第1の揺動板78a〜78fが順に側面視で8の字を描くような運動をするために、上記第1の揺動板78a〜78fに連結される板状部材(ひれ状の羽根)が順に連続するように揺動して、それはあたかも魚の左右のヒレやエイのヒレのような水になびく運動をする。すなわち、前の第1の揺動板78aの動きを追いかけるように次の第1の揺動板78bが動作し、前の第1の揺動板78bの動きを追いかけるように次の第1の揺動板78cが動作し、これらが更に続く。なお、モータMは、左右のベルトV,Vを同時にも片側のみでも駆動させることができ、これにより旋回動作が可能である。
【0034】
(ベアリング代用の実施例)
上記各実施形態において、前記固定用部材9に代えて、ベアリングB1,B2を使用することも可能である。このベアリングB1,B2は、中央に貫通穴aを有し外周が回転自在な通常の市販のベアリングB1を使用しているが(図13(a))、これを加工して、斜めの貫通穴Baとして加工、つまり樹脂等でその隙間Bd,Bdを埋めるように固定したものを使用しても良い(図13(b))。すなわち、ベアリングB2の回転軸5に対する取付状態は、ベアリングB1の貫通穴aを回転軸5が貫通した状態でその隙間Bd,Bdを埋めるように固定して回転軸5と連結させたものが図13(b)である。これらの使用例としては、図15に示すように、ベアリングB2の外周に第2の揺動板68を取り付け、このベアリングB1を回転軸5に取り付ける。第2の揺動板68は、金属製の軸68jを有し、上記ベアリングB2の外周に巻き回されるようにして固定部材69で固定され、これにより、上記軸68jを駆動できる動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体51(第5の実施の形態)として構成されている。この駆動力推進構造体51はすべて金属製で構成されている。
したがって、図15の実施の形態51では、一対のベアリング(固定用部材)B2,B2で第2の揺動板68を挟持する必要がなくなる利点がある。なお、本実施の形態では、回転軸5と第2の揺動板68と一つのベアリングB2で構成される機構が動力伝達機構D3である(図15)。
ここで、本実施の形態の他の例としては、図24から図25に示すように、上記第2の揺動板68は、羽根(櫂やヒレでも良い。)68hが取り付けられた金属製の軸68jを有し、金属製の軸68jが輪っか状の取り付け具68Wを介して上記ベアリングB2の外周に巻き回されるようにして固定部材69で固定され、これにより、上記軸68jを駆動できる動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体51としている。そして、第2の揺動板68が玩具としての船の後方に斜め下方に向けて取り付けられている。一対の上記第2の揺動板68は回転軸5に対して左右に開く方向の所定角度(左右が対称)で取り付けられている。また、基台62には、回転軸5から所定距離だけ離れた支持軸63が回転軸5と平行に二本取り付けられ、その間に上記金属製の軸68jが通されている。図24に示す例でも、第2の揺動板68,68が8の字を繰り返すような運動(揺動運動)をする。また、モータを逆回転させると、前進速度と同じくらいの速度で後退移動する。
図24と図25は、上記第2の揺動板68が上記ベアリングB2の外周に巻き回される輪っか状の取り付け具68Wを介して取り付けられたものであるが、図26に示すように、上記軸68jを有する第2の揺動板68が上記回転軸5に対して斜めに配される上記固定用部材9と9に挟持するものとして取り付けられているものでも良い。なお、図26の例では、各回転軸5と第1の揺動板68と一対の固定用部材69,69で構成される機構が動力伝達機構D1である。
【0035】
また、上記各実施の形態において、上記固定用部材9や第1の揺動板28の回転軸5に対する取付状態は、図14に示すように、回転軸5が貫通した状態で、ベアリングB1の貫通穴aに回転軸5が摺動可能になるように、つまりベアリングB1の径の方が回転軸5の外周径よりも大きなものを使用している。図14に示すような状態でのベアリングB1を2個使用して、その間に第1の揺動板28を介在させる(図12)。すなわち、上記ベアリングB1を一対の固定用部材B2とし、一対の固定用部材B2である上記ベアリングB2の斜め姿勢を保持するために、左右一対の傾斜部材(円形のカム)19,19が回転軸5に取り付けられている。傾斜部材19,19は、上記ベアリングB1,B2を回転軸5に対して傾斜角度を持たせて取り付けるための補助部材であり、金属製の他、木製等でも良い。傾斜部材19,19には、挟持するベアリングB1の挙動を確保するために、隙間S,Sが形成されている。なお、傾斜部材19,19には、上記第1ないし第4の実施の形態にも適用することができる。また、図14中の符号nはネジ部分を示す。
【0036】
ここで、上記第1の揺動板28に形状や大きさの異なる貫通穴a1,a2,a3をいくつか形成しておくことも好ましい(図12)。例えば、細長い貫通穴や楕円形の貫通穴等や大きさの異なる貫通穴を形成しておき、それぞれに支持軸22,23がその貫通穴a1,a2,a3の内側を周回することで、第1の揺動板28の揺動状態の変化を楽しむことができるようにするためである。
【0037】
(第7の実施形態)
本実施の形態は、図30から図32に示すように、水中で推進力を得る水中の推進具(玩具やロボットを含む。)に本発明を適用した動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体81であり、中心の回転軸85に一対の固定用部材89,89が上記一対の固定用部材9,9と同じように取り付けられ(第1の揺動板88a,88b,…が一対の一対の固定用部材89,89間に挟みこまれ)、これらが回転軸に連結状態で取り付けられている。回転軸85は駆動させる駆動源(図示せず)と連結され、回転軸85の外周には、支柱87が所定間隔で配され、これによるスリット88sから第1の揺動板88a,88b,…の軸88jが飛び出すように取り付けられ、この軸88jの先端側に羽根(ヒレ)が取り付けられている。その取り付け状態は、第1の揺動板88a,88b,…の回転軸85に対する取り付け傾斜角度を一律にしてその取り付け位置を異ならせるのみで構成され、そして第1の揺動板88a,88b,…が螺旋状に取り付けられている。第1の揺動板88a,88b,…に羽根83hが取り付けられている。しかし、上述した実施の形態のように(第1から第6の実施の形態のように)、上記第1の揺動板88a,88b,…が位相がずれて取り付けられるものでも良い。例えば、本実施の形態では、上記固定用部材89と第1の揺動板88a,88b,…とが一つおきに取り付けられているが、上述した実施の形態のように(第1から第6の実施の形態のように)、第1の揺動板88a,88b,…一対の固定用部材89,89でその一枚ずつが挟み込まれ、これが所定間隔で配される構成でも良い。
したがって、上記第1の揺動板88a,88b,…は、支柱87,87間のスリット88sから突出して、又、上記支柱87,87間によりそれ以上の移動を規制された動きをする。すなわち、第1の揺動板88a,88b,…が波打つような動作をする(或いは、船のスクリューのような動きをする)。なお、上記第1の揺動板88a,88b,…には、第3の実施の形態のように、一枚のシート状部材33が連結させて、これが波打つように動かすものでも良い。
【0038】
以上、本実施の形態では、多数のカムを連結しても得られない動き(揺動運動)を説明する原理的に説明するものであり、玩具やロボットとしての完成品を用いたものではないが、上記各実施の形態の原理が完成品に内蔵されるものである。そして、図16に示すように、回転軸に所定の傾斜角度(垂直以外の角度)で取り付けられる固定用部材9の面9yに対して従動部材101を矢印方向に駆動させることも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1,11,21,31,41,51,61 動力伝達機構を使用した駆動力推進構造体、
5,65a〜65f,75a,85a 回転軸、
6 左右の回転軸、
7 押下げ部材、
8,8a〜8d,18,28,68a〜68f,78a〜78f,88a,88b,… 第1の揺動板、
8s 先端部(接触部)、
8z,18z 第1の揺動板の貫通穴、
9,9a〜9d,69 固定用部材、
9c 固定用部材の揺動板の貫通穴、
10 左右の補助の回転軸、
32,43 支持軸、
67 支柱、
68 第2の揺動板、
68j 軸、
68s,78s,88s スリット、
θ1 傾斜角度、
H1 所定の傾斜角度の範囲、
B1,B2 ベアリング、
Bd 隙間を埋める部材(接着剤等の充填材)、
D1,D2,D3 動力伝達機構、
S 隙間(固定用部材と固定用部材の間の隙間)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通穴を有する第1の揺動板が回転軸に垂直以外の角度からなる所定の傾斜角度で取り付けられ、第1の揺動板の回転軸に対する取付状態は、第1の揺動板の貫通穴に回転軸が摺動可能に連結されるとともに、第1の揺動板を挟み込む一対の固定用部材が回転軸に固定され、
この回転軸が複数配され、複数の回転軸の第1の揺動板が回転軸に対する傾斜角度は同じで、複数の回転軸に対する取り付け方向が順に規則的にずれて配されていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項2】
貫通穴を有し外周が回転自在なベアリングが回転軸に所定の傾斜角度(垂直以外の角度)で取り付けられ、ベアリングの回転軸に対する取付状態は、ベアリングの貫通穴を回転軸が貫通した状態でその隙間を埋めるように固定して連結され、ベアリングの外周に第2の揺動板が回転可能に取り付けられ、
前記ベアリングの回転軸が複数配され、複数の回転軸の第2の揺動板が回転軸に対する傾斜角度は同じで、複数の回転軸に対する取り付け方向が順に規則的にずれて配されていることを特徴とする動力伝達機構。
【請求項3】
前記第1の揺動板又は第2の揺動板に羽根が取り付けられて、駆動手段を介して前記回転軸を回転駆動させることで水中での推進力を得ることを特徴とする請求項1又は2記載の動力伝達機構を使用した水中の推進具としてのロボット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2011−185440(P2011−185440A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103828(P2011−103828)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【分割の表示】特願2010−38247(P2010−38247)の分割
【原出願日】平成22年2月24日(2010.2.24)
【出願人】(509141659)株式会社金井電機製作所 (2)
【Fターム(参考)】