説明

動力伝達系路デバイスを潤滑する、耐摩耗組成物および方法

本発明は、動力伝達系路デバイスに、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を供給することによる、動力伝達系路デバイスの方法に関し、ここで上記耐摩耗パッケージは、以下を含む:(a)カルボン酸(代表的には、ヒドロキシカルボン酸)の誘導体;および(b)リン化合物。本発明は、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物をさらに提供し、ここで上記耐摩耗パッケージは、(a)カルボン酸(代表的には、ヒドロキシカルボン酸)の誘導体;および(b)(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのうちのいずれかであるリン化合物のアミンまたは金属塩を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を提供する。本発明は、機械式デバイスを、上記デバイスを上記潤滑組成物で潤滑することによって、潤滑する方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
動力伝達系路動力伝達デバイス(例えば、ギアもしくはトランスミッション)、特に、車軸フルイド(axle fluid)、オートマチックトランスミッションフルイド(ATF)、およびマニュアルトランスミッションフルイド(MTF))のための潤滑剤は、非常に困難な技術的課題、ならびに耐久性および清潔さを提供すると同時に、複数の、およびしばしば矛盾する潤滑要件を満たすための解決策を示す。耐久性に影響を及ぼす重要なパラメーターのうちの1つは、負荷および速度の種々の条件下での適切な保護をデバイスに提供することにおける、リン耐摩耗剤もしくは極圧添加剤の有効性である。しかし、上記リン耐摩耗剤もしくは極圧添加剤の多くは、硫黄を含む。環境的懸念が増大しつつあることに起因して、耐摩耗剤もしくは極圧添加剤中の硫黄の存在は、望ましくないものになりつつある。さらに、耐摩耗剤もしくは極圧添加剤を含む多くの潤滑組成物は、臭い、ならびに健康および環境にとって有害である可能性を生じる揮発性硫黄種を進化させる。
【0003】
リン耐摩耗剤もしくは極圧添加剤の妥当なバランスを有する潤滑組成物は、動力伝達系路動力伝達デバイスに、長期の寿命および効率と、制御された沈着物形成および酸化安定性を提供する。しかし、使用される上記耐摩耗剤もしくは極圧添加剤の多くは、酸化安定性、発泡性沈着物、もしくは腐食増大を制限した。さらに、多くのリン耐摩耗剤もしくは極圧添加剤は、代表的には、硫黄を含み、これは、上記リン耐摩耗剤もしくは極圧添加剤を含む、臭いのある潤滑組成物を生じる。耐摩耗性化合物を開示する多くの参考文献は、以下で議論される。
【0004】
特許文献1は、クエン酸とアルキルアルコールもしくはアミンとの反応生成物として得られたアルキル化クエン酸誘導体を開示する。上記アルキル化クエン酸誘導体は、耐摩耗剤および摩擦改変剤として有効である。
【0005】
特許文献2は、燃費における改善と同程度によい軋み(squeal)および摩擦の有効な低減のために、潤滑剤および燃料中の添加剤として有用な酒石酸イミド(tartrimide)を開示する。
【0006】
特許文献3は、内燃機関のための潤滑油組成物を開示し、上記組成物は、(A)潤滑粘性の油、(B)スクシンアシル化剤と特定のアミンとを反応させることによって生成されるカルボン酸誘導体、および(C)スルホン酸もしくはカルボン酸の塩基性アルカリ金属塩を含む。
【0007】
特許文献4は、内燃機関の燃費を改善するための潤滑組成物を開示する。上記組成物は、特定の硫化組成物(カルボン酸のエステルに基づく)および塩基性アルカリ金属スルホネートを含む。
【0008】
米国仮特許出願第60/862534号(PCT/US07/082057)は、耐摩耗剤として適切なマロン酸エステルを開示する。
【0009】
特許文献5は、ヒドロキシカルボン酸およびヒドロキシポリカルボン酸エステルを、リン含有添加剤と組み合わせて含む潤滑剤を開示する。上記リン含有添加剤は、亜鉛ジヒドロカルビルジチオホスフェートおよび/もしくは中性リン化合物(例えば、トリラウリルホスフェートもしくはトリフェニルホスホロチオネート)を含む。上記潤滑剤は、エンジン潤滑剤において有用である。
【0010】
特許文献6は、エステル基もしくはアミド基1つあたり、1〜150個の炭素原子を有する酒石酸エステルもしくはアミドを含む、低硫黄、低リン、低灰分の潤滑剤組成物を開示する。上記潤滑剤組成物は、内燃機関を潤滑するのに適している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,338,470号明細書
【特許文献2】米国特許第4,237,022号明細書
【特許文献3】米国特許第4,952,328号明細書
【特許文献4】米国特許第4,326,972号明細書
【特許文献5】国際公開第2005/087904号
【特許文献6】国際公開第2006/044411号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明者らは、本明細書で開示される潤滑組成物および方法が、(i)硫黄(代表的には、廃油からの排出物を低下もしくは防止する)、(ii)燃費/効率(代表的には、燃費/効率を改善する)、(iii)酸化制御(代表的には、酸化を低下もしくは防止する)、(iv)摩擦性能、(v)摩耗および/もしくは極圧性能(代表的には、低下もしくは防止する)、ならびに(vi)沈着物制御のうちの少なくとも1つの受容可能なレベルを提供し得ることを発見した。
【0013】
一実施形態において、本発明は、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を提供し、ここで上記耐摩耗パッケージは、
(a)ヒドロキシカルボン酸の誘導体;および
(b)リン化合物のアミンもしくは金属塩であって、ここで上記金属塩は、1価金属(例えば、ナトリウム、リチウムもしくはカリウム)を含む、リン化合物のアミンもしくは金属塩
を含む。
【0014】
一実施形態において、本発明は、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を提供し、ここで上記耐摩耗パッケージは、
(a)ヒドロキシカルボン酸の誘導体;および
(b)リン化合物のアミン塩(リン化合物の無灰分塩ともいわれ得る)
を含む。
【0015】
一実施形態において、本発明は、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を提供し、ここで上記耐摩耗パッケージは、
(a)ヒドロキシカルボン酸の誘導体;および
(b)(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、もしくは(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのいずれかである、リン化合物のアミンもしくは金属塩
を含む。
【0016】
一実施形態において、本発明は、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を提供し、ここで上記耐摩耗パッケージは、
(a)式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物によって表され得る耐摩耗剤:
【0017】
【化1】

ならびに
(b)(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、もしくは(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのいずれかであり得る、リン化合物のアミンもしくは金属塩、
を含み、ここで
n’は、式(1b)については0〜10であり、式(1a)については1〜10であり;
pは、1〜5であり;
YおよびY’は、独立して、−O−、>NH、>NR、または(1b)におけるY基およびY’基の両方を一緒にするか、もしくは(1a)における2つのY基を一緒にしてかつ2つの>C=O基の間にR−N<基を形成することによって形成される、イミド基であり;
Xは、式(1a)および/もしくは式(1b)の結合価を満たすために、独立して、−CH−、>CHRもしくは>CR、>CHOR、もしくは>C(CO、−CH、−CHもしくはCHR、−CHOR、もしくは−CH(CO、≡C−R(ここで≡は、3価の結合価に等しく、式(1a)にのみ適用される)またはこれらの混合物であり(代表的には、上記式(1a)もしくは式(1b)の化合物は、ヒドロキシ含有(すなわち、>CHOR(ここでRは水素))である)少なくとも1つのXを有する);
およびRは、独立して、ヒドロカルビル基(代表的には、1〜150個の炭素原子を含む)であり;
は、ヒドロカルビル基であり;
およびRは、独立して、ケト含有基(例えば、アシル基)、エステル基もしくはヒドロカルビル基であり;そして
は、独立して、水素もしくはヒドロカルビル基(代表的には、1〜150個の炭素原子を含む)である。
【0018】
Xがヒドロキシル含有である場合、上記式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物は、ヒドロキシカルボン酸(例えば、酒石酸、クエン酸、もしくはこれらの混合物)由来であり得る。
【0019】
Xがヒドロキシル含有でない場合、上記式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物は、マロン酸、シュウ酸、クロロフェニルマロン酸、もしくはこれらの混合物由来であり得る。
【0020】
一実施形態において、本発明は、動力伝達系路デバイスを潤滑する方法を提供し、上記方法は、上記動力伝達系路デバイスに、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を供給する工程を包含し、ここで上記耐摩耗パッケージは、式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物(上記で定義されるとおり)、ならびにリン化合物(例えば、リンの酸(phosphorus acid)もしくはそのエステルもしくはその塩もしくはそのエステルの塩)を含む。代表的には、上記リン化合物は、油溶性である。
【0021】
一実施形態において、本発明は、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を提供し、ここで上記耐摩耗パッケージは、
(a)ヒドロキシカルボン酸の誘導体であって、ここで上記ヒドロキシカルボン酸は酒石酸である、ヒドロキシカルボン酸の誘導体;および
(b)(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのいずれかである、リン化合物のアミンもしくは金属塩
を含む。
【0022】
一実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸の誘導体としては、酒石酸のイミド、ジエステル、ジアミド、エステル−アミドの誘導体が挙げられる。
【0023】
異なる実施形態において、本明細書で開示される潤滑組成物は、0ppm〜500ppm、もしくは5ppm〜300ppm、もしくは20ppm〜250ppmのモリブデンを含む。
【0024】
一実施形態において、本発明は、機械式デバイス(代表的には、動力伝達系路デバイス)を潤滑する方法を提供し、上記方法は、上記機械式デバイスに、本明細書で開示される潤滑組成物を供給する工程を包含する。
【0025】
一実施形態において、本発明は、動力伝達系路デバイスを潤滑する方法を提供し、上記方法は、上記機械式デバイスに、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を供給する工程を包含し、ここで上記耐摩耗パッケージは、
(a)ヒドロキシカルボン酸の誘導体(代表的には、上記ヒドロキシカルボン酸は、酒石酸である);および
(b)リン化合物(代表的には、(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのいずれかであり得る、リン化合物のアミンもしくは金属塩)
を含む。
【0026】
本明細書で開示される潤滑組成物は、上記潤滑組成物のうちの0.3重量%より高いか、または0.4重量%〜5重量%、もしくは0.5重量%〜3重量%、0.8重量%〜2.5重量%、もしくは1重量%〜2重量%の硫黄含有量を有し得る。
【0027】
一実施形態において、本発明は、(i)リン排出物、(ii)硫黄排出物、(iii)燃費/効率、(iv)酸化制御、(v)摩擦性能、(vi)摩耗および/もしくは極圧性能(代表的には、低減もしくは防止)、ならびに(vii)沈着物制御のうちの少なくとも1つの受容可能なレベルを提供するために、本明細書で開示される潤滑組成物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(発明の詳細な説明)
本発明は、上記で開示されるように、機械式デバイスを潤滑するための潤滑組成物および方法を提供する。代表的には、上記機械式デバイスは、動力伝達系路デバイス(ギアもしくはトランスミッションが挙げられる)である。
【0029】
(耐摩耗パッケージ)
上記耐摩耗パッケージは、上記で開示されるように、2種の耐摩耗剤を含む。
【0030】
上記耐摩耗パッケージは、代表的には、(i)ヒドロキシカルボン酸の誘導体、および(ii)リン化合物(代表的には、無灰分リン化合物)を含む。上記リン化合物は、(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのいずれかであり得る、リン化合物のアミンもしくは金属塩を含み得る。
【0031】
上記耐摩耗パッケージは、上記潤滑組成物のうちの0.01重量%〜10重量%、もしくは0.05重量%〜10重量%、もしくは0.05重量%〜5重量%で存在し得る。
【0032】
上記ヒドロキシカルボン酸の誘導体(または式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物によって表される耐摩耗剤)は、上記潤滑組成物のうちの0.005重量%〜10重量%、もしくは0.025重量%〜5重量%、もしくは0.25重量%〜2.5重量%で存在し得る。
【0033】
上記リン化合物は、上記潤滑組成物のうちの0.005重量%〜10重量%、もしくは0.025重量%〜5重量%、もしくは0.05重量%〜2.5重量%で存在し得る。
【0034】
(ヒドロキシカルボン酸の誘導体)
一実施形態において、式(1a)および/もしくは式(1b)由来の1つの耐摩耗剤は、ヒドロキシカルボン酸の誘導体を含む。上記ヒドロキシカルボン酸(代表的には、酒石酸)の誘導体はまた、防錆剤および腐食防止剤、摩擦改変剤、耐摩耗剤および解乳化剤として機能し得る。一実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸の誘導体はまた、摩擦改変特性を有し得る。
【0035】
一実施形態において、上記ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、無灰分(すなわち、夾雑する量と関連するものより大きな量で金属を含まない)であり得る。
【0036】
上記ヒドロキシカルボン酸の誘導体としては、イミド、ジエステル、ジアミド、ジイミド(テトラ酸(tetra−acid)以上に適用可能)、エステル−アミド、エステル−イミド(トリ酸(tri−acid)以上(例えば、クエン酸)に適用可能)、イミド−アミド(トリ酸(tri−acid)以上(例えば、クエン酸)に適用可能)が挙げられる。一実施形態において、上記耐摩耗剤としては、イミド、ジエステル、ジアミド、もしくはエステル−アミドが挙げられる。
【0037】
一実施形態において、上記耐摩耗剤は、ヒドロキシカルボン酸ジエステル、ヒドロキシカルボン酸ジアミド、ヒドロキシカルボン酸ジイミド、ヒドロキシカルボン酸エステル−アミド、ヒドロキシカルボン酸エステル−イミド、およびヒドロキシカルボン酸イミド−アミドのうちの少なくとも1つに由来し得る。一実施形態において、上記耐摩耗剤は、ヒドロキシカルボン酸ジエステル、ヒドロキシカルボン酸ジアミド、およびヒドロキシカルボン酸エステル−アミドからなる群のうちの少なくとも1つに由来し得る。
【0038】
適切なヒドロキシカルボン酸の例としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸(もしくはヒドロキシ−コハク酸)、乳酸、シュウ酸、グリコール酸、ヒドロキシ−プロピオン酸、ヒドロキシグルタル酸、もしくはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記耐摩耗剤は、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシ−コハク酸、ジヒドロキシモノ酸、モノヒドロキシ二酸、もしくはこれらの混合物に由来し得る。一実施形態において、上記耐摩耗剤は、酒石酸に由来する化合物を含む。
【0039】
米国特許出願第2005/198894号は、適切なヒドロキシカルボン酸化合物。およびこれらを調製する方法を開示する。
【0040】
カナダ国特許第1183125号;米国特許出願公開第2006/0183647号およびUS−2006−0079413号;米国仮特許出願第60/867402号;ならびに英国特許第2 105 743 Aは、全て、適切な酒石酸誘導体の例を開示する。
【0041】
適切な酒石酸イミドを(酒石酸と一級アミンとを反応させることによって)調製する方法の詳細な説明は、米国特許第4,237,022号に開示される。
【0042】
一実施形態において、上記耐摩耗剤としては、酒石酸のイミド、ジエステル、ジアミド、エステル−アミドの誘導体が挙げられる。
【0043】
一実施形態において、上記耐摩耗剤は、上記で定義されるように、式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物によって表され得、
ここで
n’は、式(1b)については0〜10、0〜6、もしくは0〜4であり、式(1a)については1〜4、もしくは1〜2であり;
pは、1〜5、もしくは1〜2、または1であり;
YおよびY’は、独立して、−O−、>NH、>NR、またはY基およびY’基の両方を一緒にし、かつ2つの>C=O基の間にR−N<基を形成することによって生成されるイミド基であり;
Xは、式(1a)および/もしくは式(1b)の結合価を満たすために、独立して、−CH−、>CHRもしくは>CR、>CHOR、もしくは>C(CO、−CH、−CHもしくはCHR、−CHOR、もしくは−CH(CO、≡C−R(ここで≡は、3価の結合価に等しく、式(1a)にのみ適用され得る)またはこれらの混合物であり(代表的には、上記式(1a)もしくは式(1b)の化合物は、ヒドロキシル含有(すなわち、>CHOR(ここでRは水素である))である少なくとも1つのXを有する);
およびRは、独立して、ヒドロカルビル基(代表的には、1〜150個、4〜30個、もしくは6〜20個、もしくは10〜20個、もしくは11〜18個の炭素原子を含む)であり;
は、ヒドロカルビル基であり;
およびRは、独立して、ケト含有基(例えば、アシル基)、エステル基もしくはヒドロカルビル基であり;そして
は、独立して、水素もしくはヒドロカルビル基(代表的には、1〜150個、もしくは4〜30個の炭素原子を含む)である。
【0044】
一実施形態において、上記ジエステル、ジアミド、ジイミド(テトラ酸以上に適用可能)、エステル−アミド、エステル−イミド(トリ酸以上(例えば、クエン酸)に適用可能)、イミド−アミド(トリ酸以上(例えば、クエン酸)に適用可能)の化合物は、式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物に由来し得る。一実施形態において、上記ジエステル、ジアミド、エステル−アミドの化合物は、式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物に由来し得る。
【0045】
一実施形態において、上記式(1b)の化合物は、イミド基を含む。上記イミド基は、代表的には、上記Y基およびY’基の両方を一緒にし、かつ2つの>C=O基の間にR−N<基を形成することによって形成される。
【0046】
一実施形態において、上記式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物は、以下のように定義される、n、X、ならびにR、RおよびRを有する:nは、1〜2であり、Xは、>CHORであり;そしてR、およびRは、独立して、4〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、そしてRは、独立して、水素もしくは4〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。
【0047】
一実施形態において、YおよびY’は、ともに−O−である。
【0048】
一実施形態において、上記式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物は、以下のように定義される、n、X、Y、Y’ならびにR、RおよびRを有する:nは、1〜2であり、Xは、>CHORであり;YおよびY’は、ともに−O−であり、そしてR、およびRは、独立して、4〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、そしてRは、独立して、水素もしくは4〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である。
【0049】
上記式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物のジエステル、ジアミド、ジイミド(テトラ酸以上に適用可能)、エステル−アミド、エステル−イミド(トリ酸以上(例えば、クエン酸)に適用可能)、イミド−アミド(トリ酸以上(例えば、クエン酸)に適用可能)は、ジカルボン酸(例えば、酒石酸)と、アミンもしくはアルコールとを、必用に応じて、既知のエステル化触媒の存在下で反応させることによって、調製され得る。上記アミンもしくはアルコールは、代表的には、式(1a)および/もしくは式(1b)において定義されるように、Rおよび/もしくはRの要件を満たすために十分な炭素原子を有する。
【0050】
一実施形態において、RおよびRは、独立して、直線状もしくは分枝状のヒドロカルビル基であり得る。一実施形態において、上記ヒドロカルビル基は分枝状であり得る。一実施形態において、上記ヒドロカルビル基は、直線状であり得る。上記RおよびRは、アミンもしくはアルコールのいずれかによって、式(1a)および/もしくは式(1b)に組み込まれ得る。上記アルコールは、一価アルコールおよび多価アルコールの両方を含む。
【0051】
一実施形態において、上記耐摩耗剤は、式(1b)の化合物に由来し得る。
【0052】
適切な分枝状アルコールの例としては、2−エチルヘキサノール、イソトリデカノール、Guerbetアルコール、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
一価アルコールの例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、エイコサノール、もしくはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記一価アルコールは、5〜20個の炭素原子を含む。
【0054】
上記アルコールは、一価アルコールもしくは多価アルコールのいずれかを含む。適切な多価アルコールの例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、2,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ソルビトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、グルコース、スクロース、メチルグルコシド、もしくはこれらの混合物が挙げられる。一実施形態において、上記多価アルコールは、一価アルコールとともに、混合物中で使用され得る。代表的には、このような組み合わせにおいて、上記一価アルコールは、上記混合物のうちの少なくとも60モル%、もしくは少なくとも90モル%を構成する。
【0055】
一実施形態において、上記耐摩耗剤は、酒石酸由来であり得る。本発明の酒石酸エステルを調製するために使用される上記酒石酸は、市販されている場合があり(例えば、Sargent Welchから得られる)、しばしば、供給源(天然)もしくは合成方法(例えば、マレイン酸から)に依存して、1種以上の異性体形態(例えば、d−酒石酸、l−酒石酸、d,l−酒石酸(ラセミ混合物)もしくはメソ酒石酸)で存在する可能性がある。これら誘導体はまた、当業者に容易に明らかになる二酸に機能的に等価なもの(例えば、エステル、酸クロリド、もしくは無水物)から調製され得る。
【0056】
上記式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物が酒石酸に由来する場合、得られる酒石酸エステルは、上記酒石酸エステルを調製するにおいて使用される特定のアルコールに依存して、固体、半固体、もしくは油状物であり得る。潤滑組成物および燃料組成物を含む油性組成物における添加剤として使用するために、上記酒石酸エステルは、このような油性組成物中に有利には溶解性であり、そして/もしくは安定に分散可能である。例えば、油中での使用が意図された組成物は、代表的には、これらが使用されるべき油中で、油溶性および/もしくは安定に分散可能である。用語「油溶性」とは、本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、全ての問題の組成物が、全ての油中で全ての部分が混和性もしくは溶解であることを、必ずしも意味するわけではない。むしろ、上記組成物が、その溶液が望ましい特性のうちの1つ以上を示すことを可能にする程度に機能するように意図される油(例えば、ミネラルオイル、もしくは合成油)中で溶解性であることを意味することが意図される。同様に、このような「溶液」が、厳密な物理的意味もしくは化学的意味において真の溶液である必要は必ずしもない。それらは、代わりに、本発明の目的で、真の溶液のものに十分に近い特性を示し、実施目的では、本発明の状況内でそれらと交換可能であるマイクロエマルジョンもしくはコロイド性分散物であり得る。
【0057】
(リン化合物のアミンもしくは金属塩)
本明細書で使用される場合、用語「(チオ)リン」とは、硫黄含有リン酸もしくは硫黄非含有リン酸のいずれかを意味する。
【0058】
一実施形態において、リン化合物のアミンもしくは金属塩は、(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのいずれかであり得る。
【0059】
一実施形態において、上記リン化合物のアミンもしくは金属塩は、硫黄非含有である。
【0060】
上記硫黄非含有リン化合物のアミンもしくは金属塩は、式(2)によって表され:
【0061】
【化2】

ここで
AおよびA’は、独立して、H、もしくは1〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;
各R基およびR”基は、独立して、ヒドロカルビル基であり;
各R’は、独立して、R、H、もしくはヒドロキシアルキル基であり;
Yは、独立して、R’、もしくはRO(R’O)P(O)−CH(A’)CH(A)−によって表される基(例えば、RO(R’O)P(O)−CHCH(CH)−)であり;
x’は、0〜1の範囲であり(一実施形態において、x’=0である場合、R’は、ヒドロキシアルキル基である);そして
mおよびnはともに、ゼロでない正数であるが、ただし、(m+n)の和は、4に等しく;
Mは、金属イオンであり;
tは、1から4まで(もしくは1から2まで)変動する整数であり;そして
qおよびeは、有理数であり、その合計は、tを満たすために完全な結合価を提供するが、ただしqは、0.1〜1.5(もしくは0.1〜1)の範囲内であり、そしてeは、0〜0.9の範囲内である。
【0062】
上記硫黄非含有リン化合物のアミン塩は、式(2a)によって表され得:
【0063】
【化3】

ここで
AおよびA’は、独立して、H、もしくは1〜30個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり;
各R基およびR”基は、独立して、ヒドロカルビル基であり;
各R’は、独立して、R、H、もしくはヒドロキシアルキル基であり;
Yは、独立して、R’、もしくはRO(R’O)P(O)−CH(A’)CH(A)−によって表される基(例えば、RO(R’O)P(O)−CHCH(CH)−)であり;
x’は、0〜1の範囲であり(一実施形態において、x’=0である場合、R’は、ヒドロキシアルキル基である);
mおよびnはともに、ゼロでない正数であるが、ただし(m+n)の和は、4に等しい。
【0064】
一実施形態において、上記式(2)もしくは式(2a)によって表される化合物は、1に等しいx’を有する。
【0065】
一実施形態において、上記式(2)もしくは式(2a)によって表される化合物は、0に等しいx’を有する。
【0066】
一実施形態において、上記式(2)もしくは式(2a)によって表される化合物は、2に等しいm;および2に等しいnを有する。
【0067】
一実施形態において、上記式(2)もしくは式(2a)によって表される化合物は、3に等しいm;および1に等しいnを有する。
【0068】
一実施形態において、AおよびA’は、独立して、1〜10個、もしくは2〜6個、もしくは2〜4個の炭素原子を含む。
【0069】
一実施形態において、R、R’およびR”は全て独立して、1〜30個、もしくは1〜20個、もしくは4〜20個の炭素原子を含む。一実施形態において、上記R’基の最大で半分は、水素であり得る。
【0070】
一実施形態において、R”は、8〜26個、もしくは10〜20個、もしくは13〜19個の炭素原子を含む。
【0071】
上記式(2)もしくは式(2a)の化合物は、一級アミン、二級アミン、三級アミン、もしくはこれらの混合物のアミン塩を含む。一実施形態において、上記一級アミンは、三級脂肪族一級アミンを含む。
【0072】
適切な一級アミンの例としては、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、およびドデシルアミン、ならびにn−オクチルアミン、n−デシルアミン、n−ドデシルアミン、n−テトラデシルアミン、n−ヘキサデシルアミン、n−オクタデシルアミンおよびオレイルアミン(oleyamine)のような脂肪アミンが挙げられる。他の有用な脂肪アミンとしては、市販の脂肪アミン(例えば、「Armeen(登録商標)」アミン(Akzo Chemicals,Chicago,Illinoisから市販される製品)(例えば、Armeen C、Armeen O、Armeen OL、Armeen T、Armeen HT、Armeen SおよびArmeen SD)が挙げられ、ここで文字の意味は、脂肪基(例えば、ココ基、オレイル基、タロウ基、もしくはステアリル基)に関連する。
【0073】
適切な二級アミンの例としては、ジメチルアミン、ジエチルアミン、時プロピルアミン、ジブチルアミン、ジアミルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、メチルエチルアミン、エチルブチルアミン、ビス−2−エチルヘキシルアミン、N−メチル−1−アミノ−シクロヘキサン、Armeen(登録商標) 2Cおよびエチルアミルアミンが挙げられる。上記二級アミンは、環式アミン(例えば、ピペリジン、ピペラジンおよびモルホリン)であってもよい。
【0074】
三級アミンの例としては、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリ−デシルアミン、トリ−ラウリルアミン、トリ−ヘキサデシルアミン、およびジメチルオレイルアミン(Armeen(登録商標) DMOD)が挙げられる。
【0075】
一実施形態において、上記アミンは、混合物の形態であり得る。適切なアミン混合物の例としては、以下が挙げられる:(i)三級アルキル一級基上に11〜14個の炭素原子を有するアミン、(ii)三級アルキル一級基上に14〜18個の炭素原子を有するアミン、もしくは(iii)3級アルキル一級基上に18〜22個の炭素原子を有するアミン。三級アルキル一級アミンの他の例としては、tert−ブチルアミン、tert−ヘキシルアミン、tert−オクチルアミン(例えば、1,1−ジメチルヘキシルアミン)、tert−デシルアミン(例えば、1,1−ジメチルオクチルアミン)、tertドデシルアミン、tert−テトラデシルアミン、tert−ヘキサデシルアミン、tert−オクタデシルアミン、tert−テトラコサニルアミン、およびtert−オクタコサニルアミンが挙げられる。
【0076】
一実施形態において、有用なアミン混合物としては、「Primene(登録商標) 81R」もしくは「Primene(登録商標) JMT」が挙げられる。Primene(登録商標) 81RおよびPrimene(登録商標) JMT(ともに、Rohm & Haasが製造および販売)は、それぞれ、C11〜C14の三級アルキル一級アミンの混合物、およびC18〜C22の三級アルキル一級アミンの混合物であり得る。
【0077】
一実施形態において、式(2)の金属イオンは、一価金属、二価金属、もしくはこれらの混合物であり得る。一実施形態において、上記金属イオンは、二価であり得る。
【0078】
一実施形態において、上記金属イオンの金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、銅、ニッケル、スズもしくは亜鉛が挙げられる。
【0079】
一実施形態において、上記金属イオンの金属としては、リチウム、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、もしくは亜鉛が挙げられる。一実施形態において、上記金属イオンの金属は、亜鉛であり得る。
【0080】
一実施形態において、上記式(2)の化合物が、一価金属のアミン塩もしくは金属塩である場合に、tは、1に等しい。
【0081】
一実施形態において、上記式(2)の化合物が、二価金属の金属塩である場合、tは、2に等しい。
【0082】
一実施形態において、qは、0.5〜1の範囲内であり;eは、0〜0.5の範囲内である。
【0083】
一実施形態において、式(2)の化合物は、金属イオンを含まない(eは、ゼロに等しく;qは、1に等しい)。
【0084】
一実施形態において、tは、1に等しく、eは、0に等しく、qは、1に等しい。
【0085】
(式(2)および式(2a)の化合物を調製するためのプロセス)
一実施形態において、上記硫黄非含有のリン化合物のアミン塩は、以下のプロセスによって得られる/得られ得、上記プロセスは、アミンと、(i)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルのいずれかとを反応させる工程を包含する。
【0086】
一実施形態において、上記リン酸のヒドロキシ置換されたジエステルの塩は、以下のプロセスによって調製され得、上記プロセスは、
(i)リン酸処理剤(phosphating agent)(例えば、P、P10、もしくはこれらの等価物)と、アルコールとを反応させて、モノリン酸エステルおよび/もしくはジリン酸エステルを形成する工程;
(ii)上記リン酸エステルと、アルキレンオキシドとを反応させて、リン酸のヒドロキシ置換されたジエステルを形成する工程;および
(iii)上記リン酸のヒドロキシ置換されたジエステルを、アミンおよび/もしくは金属と反応させて、塩形成する工程を包含する。
【0087】
一実施形態において、上記(ii)のリン酸のヒドロキシ置換されたジエステルは、上記工程(i)を反復することによって、アミンおよび/もしくは金属と塩形成する前に(上記工程(iii)におけるように)、リン酸処理剤(代表的には、リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルを形成する)と少なくとももう1回さらに反応させられ得る。
【0088】
異なる実施形態において、工程(i)および工程(ii)は、少なくとももう1回反復させられ得、必要に応じて、続いて、アミンおよび/もしくは金属と塩形成する前に(上記工程(iii)におけるように)、工程(i)が行われる。例えば、上記塩は、上記で定義されるように、上記工程(i)、工程(ii)、および工程(iii);もしくは工程(i)、工程(ii)、工程(i)、および工程(iii);もしくは工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、および工程(iii);工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、工程(i)、および工程(iii)、または工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、および工程(iii)、もしくは工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、工程(i)および工程(iii)、もしくは(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)、工程(i)、工程(ii)および工程(iii)を行う工程を包含するプロセスによって、調製され得る。
【0089】
異なる実施形態において、上記反応生成物は、本発明のリン化合物の硫黄非含有アミン塩のうちの1重量%〜99重量%、もしくは20重量%〜80重量%、もしくは35重量%〜75重量%を生じる。
【0090】
異なる実施形態において、モノホスフェート 対 ジホスフェートの工程(i)におけるモル比は、1:10〜10:1、もしくは1:5〜5:1、もしくは1:2〜2:1、もしくは1:1の範囲を包含する。
【0091】
異なる実施形態において、工程(i)のアルキレンオキシド 対 モノリン酸エステルおよび/もしくはジリン酸エステルに対する、工程(i)における上記モル比(リンの量に基づく)は、0.6:1〜1.5:1、もしくは0.8:1〜1.2:1の範囲を包含する。
【0092】
一実施形態において、アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドもしくはブチレンオキシドを含み;工程(ii)におけるアルキレンオキシド 対 リン酸のヒドロキシ置換されたジエステルのモル比は、1:1を含む。
【0093】
一実施形態において、アルキレンオキシドは、C以上のアルキレンオキシドを含み;工程(ii)におけるアルキレンオキシド 対 上記リン酸のヒドロキシ置換されたジエステルのモル比は、より広い範囲を含む。なぜなら、上記アルキレンオキシドは、反応条件下で揮発性が低いからである。
【0094】
工程(i)〜(iii)において上記に記載されるプロセスは、異なる実施形態において、30℃〜140℃、もしくは40℃〜110℃、もしくは45℃〜90℃の範囲における反応温度で行われ得る。
【0095】
上記プロセスは、減圧下で、大気圧で、もしくは大気圧を上回る圧力で行われ得る。一実施形態において、上記プロセスは、大気圧でもしくは大気圧を上回る圧力で行われ得る。
【0096】
一実施形態において、上記プロセスは、不活性雰囲気中で行われ得る。適切な不活性雰囲気の例としては、窒素、アルゴン、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0097】
異なる実施形態において、上記アルキレンオキシドは、1〜10個、もしくは2〜6個、もしくは2〜4個の炭素原子を含む。一実施形態において、上記アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、もしくはこれらの混合物を含む。一実施形態において、上記アルキレンオキシドは、プロピレンオキシドを含む。
【0098】
異なる実施形態において、上記アルコールは、1〜30個、もしくは4〜24個、もしくは8〜18個の炭素原子を含む。
【0099】
上記アルコールは、直線状であってもよいし、分枝状であってもよい。
【0100】
上記アルコールは、飽和でもよいし、不飽和でもよい。
【0101】
適切なアルコールの例としては、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、ドデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、オクタデカノール(オレイルアルコール)、ノナデカノール、エイコシル−アルコール、もしくはこれらの混合物が挙げられる。適切なアルコールの例としては、例えば、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチルヘキサノール、イソオクタノール、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0102】
市販のアルコールの例としては、MonsantoのAlcohol(登録商標) 7911、Oxo Alcohol(登録商標) 7900およびOxo Alcohol(登録商標) 1100;ICIのAlphanol(登録商標) 79;Condea(現Sasol)のNafol(登録商標) 1620、Alfol(登録商標) 610およびAlfol(登録商標) 810;Ethyl CorporationのEpal(登録商標) 610およびEpal(登録商標) 810;Shell AGのLinevol(登録商標) 79、Linevol(登録商標) 911およびDobanol(登録商標) 25 L;Condea Augusta,MilanのLial(登録商標) 125;Henkel KGaA(現Cognis)のDehydad(登録商標)およびLorol(登録商標)、ならびにUgine KuhlmannのLinopol(登録商標) 7−11およびAcropol(登録商標) 91が挙げられる。
【0103】
有用なアミンとしては、一級アミン、二級アミン、三級アミン、もしくはこれらの混合物のアミン塩が挙げられる。有用なアミンのより詳細な記載は、以下で定義される。
【0104】
(リン酸のアミン塩:調製実施例)
(調製実施例1)
工程A:リンペントキシド(219g,約1.54mol)を、窒素雰囲気中、約60℃〜約70℃において撹拌しながら、約1.5時間にわたってゆっくりと、イソオクチルアルコール(約602g,約4.63mol)を含むフラスコに添加する。次いで、上記混合物を、約90℃へと加熱し、約5時間にわたって保持する。上記生成物を冷却する。上記生成物の分析から、リン含有量が約11.6重量%であることが示される。
【0105】
工程B:約50℃の温度で、(15〜40℃)において攪拌している工程Aの生成物(280g/molの等重量に基づいて約760g,約2.71mol)を含むフラスコを、化学量論的量のプロピレンオキシド(約157.7g,約2.71mol)と、添加用漏斗とを介して滴下して混合する。上記プロピレンオキシドを、約1.5時間にわたって添加して、混合物を形成する。次いで、上記混合物を70℃へと加熱し、約2時間にわたって保持する。上記生成物を冷却する。工程Bの生成物は、約9.6重量%のリン含有量を有する。
【0106】
工程C:工程Bの生成物(約881.5g,%P=9.6に基づいて2.73mol P)を、窒素下で50℃へと加熱し、リンペントキシド(129g,0.91mol)を四等分して、約1時間にわたって添加する。上記添加の間に、その温度を、均質な固体である生成物を提供するように激しく攪拌しながら、約55℃〜約70℃の範囲の間で維持する。上記温度を約80℃に上昇させ;約3時間にわたって保持して、生成物を形成する。冷却すると、上記生成物は、13.7重量%のリンを含む。
【0107】
工程D:工程Cの生成物(約706.7g,約2.24mol)を、フラスコにおいて窒素雰囲気中、約45℃へと加熱する。ビス−(2−エチルヘキシル)アミン(約596g,約2.47mol)を、その温度が約55℃〜約60℃であるように制御しながら、約2時間にわたって添加漏斗を介して、滴下する。次いで、上記フラスコを約75℃へと加熱し、約2時間にわたって保持する。冷却すると、工程Dの生成物は、淡橙色であり、7.7重量%のリン含有量を有する。
【0108】
(調製実施例2)
調製実施例2は、調製実施例1の工程Aおよび工程Bと類似の手順を使用して、調製される。しかし、工程Aに関しては、化学量論的量のプロピレンオキシド(209g,3.60mol)を、イソオクチルリン酸(約952g,約3.43mol)に添加する。次いで、上記混合物を約75℃へと4時間にわたって加熱する。工程Aの得られた生成物は、約9.65重量%のリン含有量を有する。工程Bに関しては、工程Aの生成物(約208g,約0.374mol)を、上記フラスコ中で加熱し、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン(約97.5g,約0.404mol)を、約40分間にわたって滴下漏斗を介して滴下する。次いで、上記反応温度を約75℃へと上昇させ、約5時間にわたって保持する。得られた生成物は、約6.6重量%のリン含有量を有する。
【0109】
(調製実施例3)
調製実施例3は、調製実施例1と類似の手順において調製される。しかし、調製実施例3の工程Aは、リンペントキシド(約189g,約1.33mol)、メチルアミルアルコール(約408g,約4mol)を反応させる。上記リンペントキシドを、約75分にわたって約60℃の温度で添加する。次いで、上記生成物を約70℃へと加熱し、約1.5時間にわたって保持する。得られた生成物は、約13.7重量%のリン含有量を有する。工程Bを、工程Aの生成物(240g/molの等重量に基づいて171.7g,0.719mol)と、約1.1当量のプロピレンオキシド(約46.0g,約0.791mol)とを反応させることによって行う。得られた生成物は、約10.96重量%のリン含有量を有する。工程Cは、工程Bの生成物(約200g,約0.71mol)を約60℃において窒素雰囲気下で加熱し、リンペントキシド(約33g,約0.23mol)と反応させることによって行う。上記反応発熱は、約87℃に達する。約65℃へと冷却して、上記フラスコを、この温度で約1.5時間にわたって保持する。次いで、上記フラスコを、約40℃へと冷却し、続いて、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン(約200g,約0.83mol)を約1.5時間にわたって滴下する。次いで、上記フラスコを約75℃へと加熱し、約2時間にわたって保持する。上記生成物は、約8.6重量%のリン含有量および約2.8重量%の窒素含有量を有する。
【0110】
(調製実施例4)
調製実施例4を調製するプロセスは、調製実施例2のものに類似である。しかし、工程Aに関しては、上記フラスコは、メチルアミルリン酸(約154.4g,約0.647mol)を含み、約25℃において、窒素雰囲気下で、1,2−エポキシヘキサデカン(約163.0g,約0.679mol)を、約1.5時間にわたって添加漏斗を介して滴下する。次いで、上記混合物を約75℃へと加熱し、約4時間にわたって保持する。上記生成物は、約6.7重量%のリン含有量を有する。次いで、工程Aの生成物を、窒素雰囲気下で約60℃へと加熱し、リンペントキシド(約33g,約0.23mol)を2等分して、約1.5時間にわたって添加する。上記温度を、約75℃において約1.5時間にわたって保持した。次いで、上記生成物を窒素下で約40℃へと加熱し、ビス−(2−エチルヘキシル)アミン(約144.8g,約0.596mol)を、1.5時間にわたって添加漏斗を介して滴下した。次いで、上記温度を約70℃へと上昇させ、約2時間にわたって保持する。上記生成物は、約6.6重量%のリン含有量および約2.1重量%の窒素含有量を有する。
【0111】
チオリン酸での調製実施例5:リンペントキシド(144g)を2等分して、1時間間隔をあけて1176gのヒドロキシプロピルO,O−ジ(4−メチル−2−ペンチル)ホスホロジチオエート(ジ(4−メチル−2−ペンチル)−ホスホロジチオ酸と、約1.1モルのプロピレンオキシドとを、54℃において反応させ、過剰なプロピレンオキシドを真空ストリッピングで除去することにより調製)に添加する。上記混合物を、71℃において6時間にわたって加熱して、酸性中間体を得る(1320g)。この中間体を、555gのC12−14−アルキルアミンを49℃において2時間にわたって添加することによって、中和する。77℃へと加熱した後、上記物質を、真空ストリッピングして、生成物を得る。
【0112】
調製実施例6〜8は、上記ビス−(2−エチルヘキシル)アミンを、C12−14三級アルキル一級アミン(Primene(登録商標) 81R)に置き換えることを除いて、調製実施例2〜4に類似の様式で調製する。
【0113】
一実施形態において、上記リン化合物のアミンもしくは金属塩は、米国特許第3,197,405号(例えば、実施例1〜25のうちのいずれか1つ)に記載される硫黄含有リン酸のアミン塩である。
【0114】
一実施形態において、リン化合物のアミンもしくは金属塩は、硫黄含有化合物である。
【0115】
一実施形態において、リン化合物のアミンもしくは金属塩は、硫黄含有化合物以外のものである。
【0116】
硫黄非含有リン化合物の上記アミン塩は、エポキシドもしくはグリコールと反応するジチオリン酸から調製される反応生成物であり得る。この反応生成物は、リンの酸(phosphorus acid)、無水物、もしくは低級エステル(ここで「低級」とは、上記エステルのアルコール由来部分における1〜8個、もしくは1〜6個、もしくは1〜4個、もしくは1〜2個の炭素原子を意味する)とさらに反応させられ得る。上記エポキシドは、脂肪族エポキシドもしくはスチレンオキシドを含む。有用なエポキシドの例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブテンオキシド、オクテンオキシド、ドデセンオキシド、スチレンオキシドなどが挙げられる。一実施形態において、上記エポキシドは、プロピレンオキシドであり得る。上記グリコールは、1〜12個、もしくは2〜6個、もしくは2〜3個の炭素原子を有する脂肪族グリコールを含む。次いで、得られた酸を、アミンと塩形成させる。
【0117】
上記リン化合物のアミンもしくは金属塩は、上記潤滑組成物のうちの0.01重量%〜10重量%、もしくは0.1重量%〜5重量%、もしくは0.2重量%〜3重量%で存在し得る。
【0118】
一実施形態において、上記耐摩耗パッケージは、上記で開示されるもの以外の耐摩耗剤をさらに含む。
【0119】
一実施形態において、上記耐摩耗パッケージは、亜鉛ジアルキルジチオホスフェートを含まない。
【0120】
一実施形態において、上記耐摩耗パッケージは、上記で開示されるもの以外の耐摩耗剤を含まない。
【0121】
他の耐摩耗剤としては、+3の酸化状態を有するリン原子を有する非イオン性リン化合物である、金属ジアルキルジチオホスフェート、金属ジアルキルホスフェート(代表的には、亜鉛ジジアルキルホスフェート(zinc di dialkylphosphate))、金属ジアルキルジチオホスフェート(代表的には、亜鉛ジジアルキルジチオホスフェート(zinc di dialkyldithiophosphate))、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0122】
適切な亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(しばしばZDDP、ZDPもしくはZDTPといわれる)の例としては、亜鉛ジ−(2−メチルプロピル)ジチオホスフェート/ジ−(アミル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(1,3−ジメチルブチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ヘプチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(オクチル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(2−エチルヘキシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ノニル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(デシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ドデシル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ドデシルフェニル)ジチオホスフェート、亜鉛ジ−(ヘプチルフェニル)ジチオホスフェート、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0123】
亜鉛ジアルキルホスフェートの例としては、亜鉛ジ−(2−メチルプロピル)ホスフェート、亜鉛ジ−(アミル)ホスフェート、亜鉛ジ−(1,3−ジメチルブチル)ホスフェート、亜鉛ジ−(ヘプチル)ホスフェート、亜鉛ジ−(オクチル)ホスフェート、亜鉛ジ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、亜鉛ジ−(ノニル)ホスフェート、亜鉛ジ−(デシル)ホスフェート、亜鉛ジ−(ドデシル)ホスフェート、亜鉛ジ−(ドデシルフェニル)ホスフェート、亜鉛ジ−(ヘプチルフェニル)ホスフェート、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0124】
+3の酸化状態を有するリン原子を有する非イオン性リン化合物の例としては、亜リン酸エステル、もしくはこれらの混合物が挙げられる。上記非イオン性リン化合物のより詳細な記載は、米国特許第6,103,673号の第9欄48行目〜第11欄8行目を含む。
【0125】
(有機スルフィド)
一実施形態において、上記潤滑組成物は、有機スルフィド、もしくはその混合物をさらに含む。一実施形態において、上記有機スルフィドは、ポリスルフィド、チアジアゾ−ル化合物、もしくはこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む。
【0126】
異なる実施形態において、上記有機スルフィドは、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜10重量%、もしくは0.01重量%〜10重量%、もしくは0.1重量%〜8重量%、もしくは0.25重量%〜6重量%の範囲において存在し得る。
【0127】
(チアジアゾ−ル化合物)
チアジアゾ−ルの例としては、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾ−ル、もしくはそのオリゴマー、ヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾ−ル、ヒドロカルビルチオ置換された2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾ−ル、もしくはそのオリゴマーが挙げられる。ヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾ−ルのオリゴマーは、代表的には、2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾ−ルユニット間で硫黄−硫黄結合を形成して、上記チアジアゾ−ルユニットの2つ以上のオリゴマーを形成することによって、形成する。
【0128】
適切なチアジアゾ−ル化合物の例としては、ジメルカプトチアジアゾ−ル、2,5−ジメルカプト−[1,3,4]−チアジアゾ−ル、3,5−ジメルカプト−[1,2,4]−チアジアゾ−ル、3,4−ジメルカプト−[1,2,5]−チアジアゾ−ル、もしくは4−5−ジメルカプト−[1,2,3]−チアジアゾ−ル(thiadaizole)のうちの少なくとも1つが挙げられる。代表的には、容易に入手可能な物質(例えば、2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾ−ルもしくはヒドロカルビル置換された2,5−ジメルカプト−1,3−4−チアジアゾ−ルもしくはヒドロカルビルチオ置換された2,5−ジメルカプト−1,3,4−チアジアゾ−ル)は、利用しやすさに起因して最も一般に利用されている2,5−ジメルカプト−[1,3,4]−チアジアゾ−ルとともに、一般に利用され得る。異なる実施形態において、ヒドロカルビル置換基の炭素原子の数としては、1〜30個、2〜25個、4〜20個、6〜16個、もしくは8〜10個が挙げられる。
【0129】
一実施形態において、上記チアジアゾ−ル化合物は、フェノールと、アルデヒドおよびジメルカプトチアジアゾ−ルとの反応生成物であり得る。上記フェノールは、アルキルフェノール(ここで上記アルキル基は、少なくとも6個(例えば、6〜24個、もしくは6(もしくは7)〜12個)の炭素原子を含む。上記アルデヒドは、1〜7個の炭素原子を含むアルデヒド、もしくはアルデヒドシントン(例えば、ホルムアルデヒド)を含む。有用なチアジアゾ−ル化合物としては、2−アルキルジチオ−5−メルカプト−[1,3,4]−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(アルキルジチオ)−[1,3,4]−チアジアゾ−ル、2−アルキルヒドロキシフェニルメチルチオ−5−メルカプト−[1,3,4]−チアジアゾ−ル(例えば、2−[5−ヘプチル−2−ヒドロキシフェニルメチルチオ]−5−メルカプト−[1,3,4]−チアジアゾ−ル)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0130】
一実施形態において、上記チアジアゾ−ル化合物としては、2,5−ビス(tert−オクチルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、もしくは2,5−ビス(tert−デシルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ルのうちの少なくとも1つが挙げられる。
【0131】
(ポリスルフィド)
一実施形態において、上記ポリスルフィド分子のうちの少なくとも50重量%は、トリスルフィドもしくはテトラスルフィドの混合物であり得る。他の実施形態において、上記ポリスルフィド分子のうちの少なくとも55重量%、もしくは少なくとも60重量%は、トリスルフィドもしくはテトラスルフィドの混合物であり得る。
【0132】
上記ポリスルフィドとしては、油、脂肪酸、またはエステル、オレフィンもしくはポリオレフィンに由来する硫化有機ポリスルフィドが挙げられる。
【0133】
硫化され得る油としては、天然油もしくは合成油(例えば、ミネラルオイル、豚脂、脂肪族アルコールと脂肪酸もしくは脂肪族カルボン酸に由来するカルボキシレートエステル(例えば、オレイン酸ミリスチルおよびオレイン酸オレイル)、および合成不飽和エステルもしくはグリセリド)が挙げられる。
【0134】
脂肪酸としては、8〜30個、もしくは12〜24個の炭素原子を含むものが挙げられる。脂肪酸の例としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸およびトールオイルが挙げられる。硫化脂肪酸エステルは、混合不飽和脂肪酸エステル(例えば、動物の脂肪および植物性油(トールオイル、亜麻仁油、大豆油、菜種油、および魚油が挙げられる)から得られる)から調製される。
【0135】
上記ポリスルフィドは、広い範囲のアルケンに由来するオレフィンを含む。上記アルケンは、代表的には、1つ以上の二重結合を有する。上記オレフィンは、一実施形態において、3〜30個の炭素原子を含む。他の実施形態において、オレフィンは、3〜16個、もしくは3〜9個の炭素原子を含む。一実施形態において、上記硫化オレフィンは、プロピレン、イソブチレン、ペンテンもしくはこれらの混合物に由来するオレフィンを含む。
【0136】
一実施形態において、上記ポリスルフィドは、公地の技術による、上記のようなオレフィンの重合から得られるポリオレフィンを含む。
【0137】
一実施形態において、上記ポリスルフィドは、ジブチルテトラスルフィド、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジペンテン、硫化ジシクロペンタジエン、硫化テルペン、および硫化Diels−Alder付加物;ホスホ硫化炭化水素が挙げられる。
【0138】
(摩擦改変剤)
一実施形態において、上記潤滑組成物は、摩擦改変剤をさらに含む。異なる実施形態において、上記摩擦改変剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜5重量%、もしくは0.1重量%〜4重量%、もしくは0.25重量%〜3.5重量%、もしくは0.5重量%〜2.5重量%、もしくは1重量%〜2.5重量%、もしくは0.05重量%〜0.5重量%で存在し得る。
【0139】
上記摩擦改変剤としては、脂肪アミン、ホウ酸化グリセロールエステル、脂肪酸アミド、非ホウ酸化脂肪エポキシド、ホウ酸化脂肪エポキシド、アルコキシル化脂肪アミン、ホウ酸化アルコキシルカ脂肪アミン、脂肪酸の金属塩、脂肪イミダゾリン、アルキルサリチレートの金属塩(界面活性剤としても言及され得る)、スルホネートの金属塩(界面活性剤としても言及され得る)、カルボン酸もしくはポリアルキレン−ポリアミンの縮合生成物、またはヒドロキシアルキル化合物のアミドが挙げられる。
【0140】
一実施形態において、上記摩擦系遍在は、別のタイプに脂肪酸誘導体である。一実施形態において、上記摩擦改変剤は、脂肪酸エステルもしくはグリセロールの部分エステルを含む。このような摩擦改変剤は、金属塩、アミド、イミダゾリン、もしくはこれらの混合物の形態であり得る。上記脂肪酸は、6〜24個、もしくは8〜18個の炭素原子を含み得る。上記脂肪酸は、分枝状であってもよいし、直鎖状であってもよく、飽和であっても不飽和であってもよい。適切な酸としては、2−エチルヘキサン酸、デカン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、ラウリン酸、およびリノレン酸、ならびに天然産物である獣脂、椰子油、オリーブ油、ラッカセイ油、コーン油、およびウシの足の油(Neat’s foot oil)に由来する酸が挙げられる。一実施形態において、上記脂肪酸は、オレイン酸であり得る。金属塩の形態にある場合、代表的には、上記金属は、亜鉛もしくはカルシウムを含み;上記生成物は、過塩基化生成物および非過塩基化生成物を含む。例は、過塩基化カルシウム塩および塩基性オレイン酸−亜鉛塩錯体であり得る。アミドの形態にある場合、上記縮合生成物は、アンモニアで、または一級アミンもしくは二級アミン(例えば、ジエチルアミンおよびジエタノールアミン)で、調製されるものを含む。イミダゾリンの形態にある場合は、酸とジアミンもしくはポリアミン(例えば、ポリエチレンポリアミン)との縮合生成物。一実施形態において、上記摩擦改変剤は、C〜C24原子を有する脂肪酸、およびポリアルキレンポリアミンの縮合生成物、特に、イソステアリン酸とテトラエチレンペンタアミンの生成物であり得る。
【0141】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、式RNR(ここでRおよびRは、各々独立して、少なくとも6個の炭素原子のアルキル基であり、Rは、水素、ヒドロカルビル基、ヒドロキシル含有アルキル基、もしくはアミン含有アルキル基である)によって表される二級アミンもしくは三級アミンを含む。上記摩擦改変剤のより詳細な記載は、米国特許出願第2005/037897号の第8段落および第19〜22段落にに記載される。
【0142】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、上記ヒドロキシアルキル化合物と、アシル化剤もしくはアミンとの縮合によって形成されるものを含む。上記ヒドロキシアルキル化合物のより詳細な説明は、米国仮特許出願第60/725360号(2005年10月11日出願、発明者:Bartley、Lahiri、BakerおよびTipton)の第8段落、第19〜21段落において記載されている。米国仮特許出願第60/725360号で開示される摩擦改変剤は、式RN−C(O)R(ここでRおよびRは、各々独立して、少なくとも6個の炭素原子のヒドロカルビル基であり、Rは、1〜6個の炭素原子のヒドロキシアルキル基、またはそのヒドロキシル基を介して上記ヒドロキシアルキル基と、アシル化剤との縮合によって形成される基である)によって表されるアミドを含む。代表例は、実施例1および2(米国仮特許出願第60/725360号の第68および69段落)に梶井されている。一実施形態において、上記ヒドロキシアルキル化合物のアミドは、グリコール酸(すなわち、ヒドロキシ酢酸、HO−CH−COOH)とアミンとを反応させることによって調製される。
【0143】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、ジ−ココアルキルアミン(もしくはジ−ココアミン)と、グリコール酸との反応生成物を含む。上記摩擦改変剤は、米国仮特許出願第60/820516号の調製実施例1および2において調製される化合物を含む。
【0144】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、カルボン酸もしくはその反応性等価物と、アミノアルコールとの反応生成物から得られるものを包含し、ここで上記摩擦改変剤は、少なくとも2つのヒドロカルビル基(各々は、少なくとも6個の炭素原子を含む)を含む。このような摩擦改変剤の例としては、イソステアリン酸もしくはアルキルコハク酸無水物と、トリス−ヒドロキシメチルアミノメタンとの反応生成物が挙げられる。このような摩擦改変剤のより詳細な説明は、米国特許出願第2003/22000号(もしくは国際公開WO04/007652)の第8および第9〜14段落において開示されている。
【0145】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、アルコキシル化アルコールを含む。適切なアルコキシル化アルコールの詳細な説明は、米国特許出願第2005/0101497号の第19および20段落に記載されている。上記アルコキシル化アミンはまた、米国特許第5,641,732号の第7欄15行目〜第9欄25行目に記載されている。
【0146】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、米国特許第5,534,170号の第37欄19行目〜第39欄38行目に定義されるように、ヒドロキシルアミン化合物を含む。必用に応じて、上記ヒドロキシルアミンは、このような生成物が米国特許第5,534,170号の第39欄39行目〜第40欄8行目に記載されるように、ホウ酸化されたものを含む。
【0147】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、アルコキシル化アミン(例えば、米国特許第5,703,023号の第28欄30〜46行目の実施例Eに記載されるように、1.8% Ethomeen T−12および0.90% Tomah PA−1から得られるエトキシル化アミン)を含む。他の適切なアルコキシル化アミン化合物としては、商標「ETHOMEEN」によって公知であり、Akzo Nobelから市販される、市販のアルコキシル化脂肪アミンが挙げられる。これらETHOMEENTM物質の代表例は、ETHOMEENTM C/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−ココ−アミン);ETHOMEENTM C/20(ポリオキシエチレン[10]ココアミン);ETHOMEENTM S/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−ソイアミン(soyamine));ETHOMEENTM T/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]−タロウ−アミン);ETHOMEENTM T/15(ポリオキシエチレン−[5]タロウアミン);ETHOMEENTM 0/12(ビス[2−ヒドロキシエチル]オレイル−アミン);ETHOMEENTM 18/12(ビス[2-ヒドロキシエチル]−オクタデシルアミン);およびETHOMEENTM 18/25(ポリオキシエチレン[15]オクタデシルアミン)である。脂肪アミンおよびエトキシル化脂肪アミンはまた、米国特許第4,741,848号に記載されている。
【0148】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、米国特許第5,750,476号の第8欄第40行目〜第9欄第28目に記載されるポリオールエステルを含む。
【0149】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、米国特許第5,840,662号の第2欄第28行目〜第3欄第26行目に記載されるように、低い能力の摩擦改変剤を含む。米国特許第5,840,662号は、第3欄第48行目〜第6欄第25行目において、特定の物質および上記低い能力の摩擦改変剤を調製する方法をさらに開示する。
【0150】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、米国特許第5,840,663号の第2欄第18〜43行目に記載されるように、異性化したアルケニル置換されたコハク酸無水物とポリアミンとの反応生成物を含む。米国特許第5,840,663号に記載される上記摩擦改変剤の特定の実施形態は、第3欄第23行目〜第4欄第35行目においてさらに開示されている。調製実施例は、米国特許第5,840,663号の第4欄第45行目〜第5欄第37行目にさらに開示されている。
【0151】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、商標Duraphos(登録商標) DMODPの下でRhodiaによって市販されているアルキルホスホネートモノエステルもしくはアルキルホスホネートジエステルを含む。
【0152】
一実施形態において、上記摩擦改変剤は、カナダ国特許第1,188,704号から公知のホウ酸化脂肪エポキシドもしくはアルキレンオキシドを含む。これら油溶性ホウ素含有組成物は、80℃〜250℃の温度において、ホウ酸もしくは三酸化ホウ素と、少なくとも1つの脂肪エポキシドもしくはアルキレンオキシドとを反応させることによって調製され得る。上記脂肪エポキシドもしくはアルキレンオキシドは、代表的には、上記エポキシドの脂肪基(もしくは上記アルキレンオキシドのアルキレン基)において少なくとも8個の炭素原子を含む。
【0153】
上記ホウ酸化脂肪エポキシドは、2つの物質の反応を包含する上記ホウ酸化脂肪エポキシドを調製する方法によって特徴付けられるものを含む。試薬Aは、三酸化ホウ素またはメタホウ酸(HBO)、オルトホウ酸(HBO)およびテトラホウ酸(H)、もしくはオルトホウ酸を含む、種々の形態のホウ酸のうちのいずれかを含む。試薬Bは、少なくとも1つの脂肪エポキシドを含む。試薬A 対 試薬Bのモル比は、一般に、1:0.25〜1:4、もしくは1:1〜1:3、もしくは1:2であり得る。上記ホウ酸化脂肪エポキシドは、上記2つの試薬をブレンドし、それらを80℃〜250℃、もしくは100℃〜200℃の温度において、反応が生じるに十分な時間にわたって加熱することによって調製される化合物を含む。望ましい場合、上記反応は、実質的に不活性の、通常は液体の有機希釈液の存在下で行われ得る。上記反応の間に、水が放出され、蒸留によって除去され得る。
【0154】
(潤滑粘性の油)
上記潤滑油組成物は、潤滑粘性の天然油もしくは合成油、水素化分解、水素化、水素化仕上げ(hydrofinishing)、および未精製の、精製のおよび再精製の油およびこれらの混合物から得られる油を含む。
【0155】
天然油としては、動物性油、植物性油、ミネラルオイルおよびこれらの混合物が挙げられる。合成油としては、炭化水素油、シリコンベースの油、およびリン含有酸(phosphorus−containing acid)の液体エステルが挙げられる。合成油は、Fischer−Tropsch GTL(gas−to−liquid)合成手順および他のGTL油によって生成され得る。一実施形態において、本発明の組成物は、GTL油中で使用される場合に有用である。しばしば、Fischer−Tropsch炭化水素もしくはワックスは、水素異性化(hydroisomerised)され得る。
【0156】
一実施形態において、ベースオイルは、ポリαオレフィン(PAO−2、PAO−4、PAO−5、PAO−6、PAO−7もしくはPAO−8を含む)を含む。上記ポリαオレフィンは、一実施形態において、ドデセンから調製され、別の実施形態においては、デセンから調製される。
【0157】
一実施形態において、上記潤滑粘性の油は、アジペートのようなエステルである。
【0158】
一実施形態において、上記潤滑粘性の油は、少なくとも一部は、ポリマー(粘性改変剤ともいわれ得る)であり、これらとしては、スチレン−ブタジエンの水素化コポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、アルケニルアリール結合体化ジエンコポリマー、ポリオレフィン、マレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、マレイン酸無水物−オレフィンコポリマーのエステル、およびこれらの混合物が挙げられる。異なる実施形態において、上記ポリマーとしては、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、およびマレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、ポリイソブテンもしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0159】
一実施形態において、上記潤滑組成物は、粘性改変剤およびAPIグループIIIもしくはIVのベースオイルの混合物を含む潤滑粘性の油を含む。一実施形態において、上記潤滑組成物は、合成の潤滑粘性の油を含む。
【0160】
潤滑粘性の油はまた、American Petroleum Institute (API)ベースオイル互換ガイドラインにおいて特定されるように、定義され得る。一実施形態において、上記潤滑粘性の油は、APIグループI、II、III、IV、V、VIのベースオイル、もしくはこれらの混合物、および別の実施形態において、APIグループII、III、IVのベースオイルもしくはこれらの混合物を含む。別の実施形態において、上記潤滑粘性の油は、グループIIIもしくはIVのベースオイル、および別の実施形態において、グループIVのベースオイルである。
【0161】
存在する上記潤滑粘性の油の量は、代表的には、100重量%から、本発明の化合物、上記摩擦改変剤、従来のリン耐摩耗剤および/もしくは極圧剤、上記有機スルフィド、および他の性能添加剤(以下で記載される)の量の合計を差し引いた後に残る差である。
【0162】
一実施形態において、上記潤滑組成物は、濃縮物および/もしくは完全に処方された潤滑剤の形態で存在し得る。上記耐摩耗パッケージ、および他の性能添加剤(これは、さらなる油と合わされて、全体としてもしくは一部として、完成した潤滑剤を形成し得る)が濃縮物の形態であり得る場合、上記潤滑組成物 対 上記潤滑粘性の油および/もしくは 対希釈油の成分比は、1:99〜99:1(重量)、もしくは80:20〜10:90(重量)の範囲を含む。
【0163】
(他の性能添加剤)
本発明の組成物は、必要に応じて、少なくとも1つの他の性能添加剤をさらに含む。上記他の性能添加剤としては、金属不活化剤、界面活性剤、分散剤、粘性改変剤、分散粘性改変剤、抗酸化剤、腐食防止剤、消泡剤、解乳化剤、流動点硬化剤、シール膨潤剤(seal swelling agent)、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0164】
異なる実施形態において、上記他の性能添加剤化合物の合わせた合計量は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜25重量%、もしくは0.1重量%〜15重量%、もしくは0.5重量%〜10重量%において存在し得る。上記他の性能添加剤のうちの1つ以上が存在し得るが、上記他の性能添加剤が、互いに対して異なる量で存在し得ることは、通常のことである。
【0165】
抗酸化剤としては、モリブデン化合物(例えば、モリブデンジチオカルバメート)、硫化オレフィン、ヒンダードフェノール、アミン化合物(例えば、アルキル化ジフェニルアミン(代表的には、ジ−ノニルジフェニルアミン、オクチルジフェニルアミン、もしくはジ−オクチルジフェニルアミン))、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0166】
界面活性剤としては、中性界面活性剤もしくは過塩基化界面活性剤、ニュートン系もしくは非ニュートン系、アルカリ金属、アルカリ土類金属、もしくは遷移金属と、フェネート、硫化フェネート、スルホネート、カルボン酸、リンの酸(phosphorus acid)、モノチオリン酸および/もしくはジチオリン酸のうちの1つ以上との塩基性塩、サリゲニン、アルキルサリチレート、ならびにサリキサレート(salixarate)混合物が挙げられる。
【0167】
分散剤としては、N−置換された長鎖アルケニルスクシンイミド、ならびにMannich縮合生成物、ならびにこれらの処理後バージョンが挙げられる。処理後分散剤としては、尿素、チオ尿素、ジメルカプトチアジアゾ−ル、二硫化炭素、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、炭化水素置換されたコハク酸無水物、ニトリル、エポキシド、ホウ素化合物、およびリン化合物、混合物との反応によるものが挙げられる。
【0168】
一実施形態において、上記分散剤は、ホウ酸化分散剤(代表的には、ホウ酸化ポリイソブチレンスクシンイミド)である。代表的には、上記ポリイソブチレンの数平均分子量は、450〜5000、もしくは550〜2500の範囲である。上記ホウ酸化分散剤はまた、摩擦性能を有し得る。
【0169】
異なる実施形態において、上記分散剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜10重量%、もしくは0.01重量%〜10重量%、もしくは0.1重量%〜5重量%で存在し得る。
【0170】
粘性改変剤としては、スチレン−ブタジエンの水素化コポリマー、エチレン−プロピレンコポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレンポリマー、水素化イソプレンポリマー、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、ポリアルキルスチレン、水素化アルケニルアリール結合体化ジエンコポリマー、ポリオレフィン、マレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、マレイン酸無水物−オレフィンコポリマーのエステル、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0171】
一実施形態において、上記粘性改変剤は、オレフィンコポリマー(代表的には、エチレン−プロピレンコポリマー)以外である。
【0172】
一実施形態において、上記粘性改変剤としては、ポリイソブテン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、マレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、マレイン酸無水物−オレフィンコポリマーのエステル、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0173】
一実施形態において、上記粘性改変剤は、ポリメタクリレートを含む。
【0174】
異なる実施形態において、上記粘性改変剤は、上記潤滑組成物のうちの0重量%〜70重量%、もしくは1重量%〜65重量%、もしくは5重量%〜60重量%、もしくは12重量%より多く55重量%までで存在し得る。
【0175】
低い数平均分子量(すなわち、20,000以下)を有する粘性改変剤が使用される場合、より高い処理速度が、代表的には、必要とされる。いくつかの場合において、上記処理速度は、上記粘性改変剤が、ベースオイル(もしくは上記潤滑粘性の油)の重要な置換物になるほどに十分高い可能性がある。よって、上記粘性改変剤は、合成ベースストックとして、もしくは上記ベースオイルの成分として調べられ得る。
【0176】
分散粘性改変剤(しばしば、DVMといわれる)としては、官能化ポリオレフィン(例えば、マレイン酸無水物とアミンとの反応生成物で官能化されたエチレン−プロピレンコポリマー、アミンで官能化されたポリメタクリレート、もしくはアミンと反応させたスチレン−マレイン酸無水物コポリマーが挙げられ;これらはまた、本発明の組成物において使用され得る。
【0177】
腐食防止剤としては、オクチルアミンオクタノエート、ドデセニルコハク酸もしくはアルデヒドおよび脂肪酸(例えば、オレイン酸)とポリアミンとの縮合生成物、もしくは上記のチアジアゾ−ル化合物が挙げられる。金属不活化剤としては、ベンゾトリアゾール(代表的には、トリルトリアゾール)、1,2,4−トリアゾール、2−アルキルジチオベンゾイミダゾール、2−アルキルジチオベンゾチアゾール、もしくはベンゾイミダゾールの誘導体が挙げられる。
【0178】
消泡剤としては、エチルアクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートおよび必用に応じてビニルアセテートのコポリマーが挙げられる。解乳化剤としては、トリアルキルホスフェート、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシドおよび(エチレンオキシド−プロピレンオキシド)ポリマーが挙げられる。流動点硬化剤としては、マレイン酸無水物−スチレンのエステル、ポリメタクリレート、ポリアクリレートもそくはポリアクリルアミドが挙げられる。シール膨潤剤としては、Exxon Necton−37TM(FN 1380)およびExxon Mineral Seal Oil(FN 3200)が挙げられる。
【0179】
(産業上の利用)
本発明の方法は、種々の動力伝達系路デバイスを潤滑するために有用であり得る。上記動力伝達系路デバイスは、ギア、ギアボックス、車軸ギア、トラクションドライブトランスミッション、オートマチックトランスミッションもしくはマニュアルトランスミッションのうちの少なくとも1つを含む。一実施形態において、上記動力伝達系路デバイスは、マニュアルトランスミッションもしくはギア、ギアボックス、または車軸ギアであり得る。
【0180】
上記オートマチックトランスミッションとしては、無段変速機(CVT)、無段変速機(IVT)、トロイダルトランスミッション(Toroidal transmission)、連続摩擦トルク変換クラッチ(continuously slipping torque converted clutches)(CSTCC)、多段オートマチックトランスミッションもしくはデュアルクラッチトランスミッション(DCT)が挙げられる。
【0181】
以下の実施例は、本発明の例示を提供する。これら実施例は、非網羅的であり、本発明の範囲を限定するとは意図されない。
【実施例】
【0182】
ギアオイル潤滑剤(CE1〜CE3およびEX1〜EX2):一連のギアオイル潤滑剤を調製し、上記潤滑剤は、ベースオイルのブレンド(40重量% Yubase 4、40重量% ポリαオレフィン、10重量% 2−エチルヘキシルアジペート)、およびギアオイル濃縮物を含む。上記ギアオイル濃縮物は、いったんブレンドされると、1.2重量%のホウ酸化分散剤(従来の量の希釈剤を含む)、0.1重量%の2,5−ビス(tert−ノニルジチオ)−1,3,4−チアジアゾ−ル、および3重量%の硫化オレフィンを含む。さらに、上記ギアオイル潤滑剤は、以下にまとめられるような成分を含む。
【0183】
【表1】

脚注:
THPは、調製実施例5の生成物である。
【0184】
HPは、調製実施例1〜4、もしくは調製実施例6〜8(上記の調製実施例を参照のこと)のうちの1つからのリン酸生成物である。
【0185】
上記ギアオイルを、高速、低トルク、続いて、低速、高トルクにおける性能について試験する。その方法論は、ASTMと同じである。
D6121.得られた結果は以下である:
【0186】
【表2】

上記結果全体は、本発明の潤滑組成物が、特に、リングおよびピニオンの両方のためのリッジング保護のために、摩耗性能の受容可能なレベルを有するギアオイルを提供し得ることを示す。さらに、本発明の潤滑組成物は、摩耗保護の受容可能なレベルを有すると同時に、リップリングおよびピッティング/スポーリングに対する保護を維持するギアオイルを提供し得る。
【0187】
上記物質のうちのいずれかは、最終処方物中で相互作用し得るので、上記最終生成物の成分は、最初に添加されるものとは異なる可能性があることは公知である。それによって形成される生成物(その意図されたr用途において本発明の潤滑組成物を使用する際に形成される生成物を含む)は、平易な記載には適さない可能性がある。にもかかわらず、全てのこのような改変および反応生成物は、本発明の範囲内に含まれる;本発明は、上記の成分を混合することによって調製される潤滑組成物を包含する。
【0188】
上記で言及される文書の各々は、本明細書に参考として援用される。実施例におけるものもしくは他に明示的に記載されている箇所を除いて、物質の量、反応条件、分子量、炭素原子数などを特定するこの説明における全ての数量は、語句「約」によって修飾されていると理解されるべきである。別段示されなければ、本明細書で言及される各化学物質もしくは組成物は、商業グレードの物質であると解釈されるべきであり、これら物質は、上記商業グレードにおいて存在すると通常理解されている異性体、副生成物、誘導体および他のこのような物質を含み得る。各化学成分の量は、任意の溶媒もしくは希釈油を含めて示され、これらは、別段示されなければ、市販の物質中に慣用的に存在し得る。本明細書で示される上限および下限の量、範囲、および比の限定は、独立して、組み合わされ得ることが理解されるべきである。同様に、本発明の各要素のための範囲および量は、他の要素のうちのいずれについての範囲もしくは量とともに使用されうる。
【0189】
本明細書で使用される場合、用語「ヒドロカルビル置換基」もしくは「ヒドロカルビル基」とは、その通常の意味で使用され、これは、当業者に周知である。具体的には、ヒドロカルビル置換基もしくはヒドロカルビル基とは、その分子の残りに直接結合した炭素原子を有し、かつ主に炭化水素特徴を有する基をいう。ヒドロカルビル基の例としては、以下が挙げられる:
(i)炭化水素置換基(すなわち、脂肪族(例えば、アルキルもしくはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族置換された、脂肪族置換された、および脂環式で置換された芳香族置換基、ならびに環式置換基)。ここで上記環は、上記分子の別の部分を解して完成している(例えば、2個の置換基が一緒になって環を形成する);
(ii)本発明の文脈において、上記置換基の主に炭化水素性質を変化させない置換された炭化水素置換基(すなわち、非炭化水素基(例えば、ハロ(特に、クロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を含む置換基);
(iii)ヘテロ置換基(すなわち、主に炭化水素特徴を有すると同時に、本発明の文脈において、炭素原子から別に構成される、環もしくは鎖中の炭素以外のものを含む置換基);ならびに
(iv)ヘテロ原子は、硫黄、酸素、窒素を含み、ピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルとして置換基を含む。一般に、わずか2個、好ましくはわずか1個の、非炭化水素置換基が、上記ヒドロカルビル基中の10個の炭素原子ごとに存在し;代表的には、上記ヒドロカルビル基中に非炭化水素置換基は存在しない。
【0190】
本発明は、その好ましい実施形態に関連して説明されてきたが、種々のその改変が、本明細書を読めば当業者に明らかになることは理解されるべきである。従って、本明細書で開示される発明は、添付の特許請求の範囲の範囲内に入るような改変を網羅することが意図されることが、理解されるべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達系路デバイスを潤滑する方法であって、該方法は、該動力伝達系路デバイスに、潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む潤滑組成物を供給する工程を包含し、ここで該耐摩耗パッケージは、
(a)式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物によって表され得る耐摩耗剤:
【化4】

ならびに
(b)リン化合物
を含み、
ここで
n’は、式(1b)については0〜10であり、式(1a)については1〜10であり;
pは、1〜5であり;
YおよびY’は、独立して、−O−、>NH、>NR、または(1b)においてはY基およびY’基の両方を一緒にするか、もしくは(1a)においては2つのY基を一緒にし、かつ2つの>C=O基の間にR−N<基を形成することによって形成されるイミド基であり;
Xは、式(1a)および/もしくは式(1b)の結合価を満たすために、独立して、−CH−、>CHRもしくは>CR、>CHORもしくは>C(CO、−CH、−CHもしくはCHR、−CHORもしくは−CH(CO、≡C−R、またはこれらの混合物であるが、ただし≡C−Rは、式(1a)にのみ適用され;
およびRは、独立して、ヒドロカルビル基であり;
は、ヒドロカルビル基であり;
およびRは、独立して、ケト含有基(例えば、アシル基)、エステル基もしくはヒドロカルビル基であり;そして
は、独立して、水素、もしくは代表的には、1〜150個の炭素原子を含むヒドロカルビル基である、
方法。
【請求項2】
前記リン化合物は、リン化合物のアミンもしくは金属塩であり、該リン化合物のアミンもしくは金属塩は、
(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または
(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステル
のいずれかである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リン化合物のアミンもしくは金属塩は、(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステルである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
前記リン化合物のアミンもしくは金属塩は、(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステルである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記リン化合物は、
(i)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または
(ii)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステル
のいずれかである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
式(1a)および(1b)は、ヒドロキシ含有である少なくとも1つのXを有する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記式(1a)および式(1b)の化合物は、イミド、ジエステル、ジアミド、ジイミド、エステル−アミド、エステル−イミド、イミド−アミドからなる群より選択されるヒドロキシカルボン酸の誘導体である、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、イミド、ジエステル、ジアミド、およびエステル−アミドからなる群より選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、酒石酸由来である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記耐摩耗パッケージは、前記潤滑組成物のうちの0.01重量%〜10重量%、もしくは0.05重量%〜5重量%で存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記式(1a)もしくは式(1b)の化合物は、前記潤滑組成物のうちの0.005重量%〜10重量%、もしくは0.025重量%〜2.5重量%で存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記リン化合物は、前記潤滑組成物のうちの0.005重量%〜10重量%、もしくは0.05重量%〜2.5重量%で存在する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記潤滑組成物は、該潤滑組成物のうちの0.3重量%より高い、もしくは0.4重量%〜5重量%の硫黄含有量を有する、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記動力伝達系路デバイスは、マニュアルトランスミッションもしくはギア、ギアボックス、車軸ギア、またはオートマチックトランスミッションである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記動力伝達系路デバイスは、マニュアルトランスミッション、ギア、もしくはギアボックスである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記動力伝達系路デバイスは、オートマチックトランスミッションもしくは車軸ギアである、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記潤滑組成物は、有機スルフィド、もしくはその混合物をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記有機スルフィドは、ポリスルフィド、チアジアゾール化合物、もしくはこれらの混合物のうちの少なくとも1つを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記潤滑組成物は、ポリイソブテン、ポリメタクリレート、ポリアクリレート、マレイン酸無水物−スチレンコポリマーのエステル、マレイン酸無水物−オレフィンコポリマーのエステル、およびこれらの混合物からなる群より選択される粘性改変剤をさらに含む、前述の請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記粘性改変剤は、ポリメタクリレートである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記粘性改変剤は、前記潤滑組成物のうちの5重量%〜60重量%、もしくは12重量%より多く55重量%までで存在する、請求項19〜20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項22】
潤滑粘性の油および耐摩耗パッケージを含む、潤滑組成物であって、ここで該耐摩耗パッケージは、
(a)式(1a)および/もしくは式(1b)の化合物によって表され得る耐摩耗剤:
【化5】

および
(b)
(i)(チオ)リン酸のヒドロキシ置換されたジエステル、または
(ii)(チオ)リン酸のリン酸化ヒドロキシ置換されたジエステルもしくはトリエステル
のうちのいずれかである、リン化合物のアミンもしくは金属塩:
を含み、
ここで
n’は、式(1b)については0〜10であり、式(1a)については1〜10であり;
pは、1〜5であり;
YおよびY’は、独立して、−O−、>NH、>NR、もしくはY基およびY’基の両方を一緒にし、かつ2つの>C=O基の間にR−N<基を形成することによって形成されるイミド基であり;
Xは、式(1a)および/もしくは式(1b)の結合価を満たすために、独立して、−CH−、>CHRもしくは>CR、>CHOR、もしくは>C(CO、−CH、−CHもしくはCHR、−CHOR、もしくは−CH(CO、≡C−R、またはこれらの混合物であり、ただし、≡C−Rは、式(1a)にのみ適用され;
およびRは、独立して、ヒドロカルビル基であり;
は、ヒドロカルビル基であり;
およびRは、独立して、ケト含有基、エステル基もしくはヒドロカルビル基であり;そして
は、独立して、水素もしくはヒドロカルビル基である、
潤滑組成物。
【請求項23】
前記式(1a)および式(1b)の化合物は、ヒドロキシカルボン酸の誘導体である、請求項22に記載の潤滑組成物。
【請求項24】
前記ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、イミド、ジエステル、ジアミド、およびエステル−アミドからなる群より選択される、請求項23に記載の潤滑組成物。
【請求項25】
前記ヒドロキシカルボン酸の誘導体は、酒石酸由来である、請求項23〜24のいずれか1項に記載の潤滑組成物。

【公表番号】特表2012−520350(P2012−520350A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518741(P2011−518741)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/US2009/036623
【国際公開番号】WO2010/141003
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】