説明

動力伝達装置および車両

【課題】装置が傾いた場合にも油量が不足する部位が発生することが抑制された動力伝達装置を提供する。
【解決手段】リア駆動ユニット4は、カウンタギヤ300やディファレンシャルギヤ400を収納するケーシング200と、ケーシング200内に供給され、該ケーシング200の底部に貯留されるオイルと、ケーシング200内から掻き上げられたオイルを受け入れるキャッチタンク910,930と、キャッチタンク910,930と前後方向に対向するように設けられ、ケーシング内から掻き上げられたオイルを受け入れるキャッチタンク920とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動力伝達装置および車両に関し、特に、ケーシング内にオイルが供給された動力伝達装置および該装置を備えた車両に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシング内にオイルが供給された動力伝達装置が従来から知られている。
たとえば、特開2004−180477号公報(特許文献1)においては、ケーシング本体の底部に形成されたオイル溜まりから差動装置のドリブンギヤが跳ね上げたオイルを貯留するキャッチタンクを備えた車両用駆動装置が開示されている。
【0003】
また、特開2000−179659号公報(特許文献2)においては、5つの潤滑油路を含む歯車装置の油路構造が開示されている。
【特許文献1】特開2004−180477号公報
【特許文献2】特開2000−179659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造では、駆動装置が傾いた際、ケーシング内の各部へのオイルの供給が十分で無くなる場合がある。この結果、駆動装置において、油量が不足する部位が発生することが懸念される。また、特許文献2に記載の歯車装置は、ケーシングの底部にオイルを貯留するものではなく、本発明とは前提および構成が全く異なる。
【0005】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、装置が傾いた場合にも油量が不足する部位が発生することが抑制された動力伝達装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る動力伝達装置は、動力伝達部材を収納するケーシングと、ケーシング内に供給され、該ケーシングの底部に貯留されるオイルと、オイルが流れる第1のオイル流通経路と、第1のオイル流通経路と対向するように設けられ、オイルが流れる第2のオイル流通経路とを備える。
【0007】
上記構成によれば、動力伝達装置が傾いた場合にも、第1と第2のオイル流通経路のいずれかからケーシング内の各部にオイルを安定して供給することができる。したがって、動力伝達装置が傾いた場合にも、動力伝達装置において油量が不足する部分が発生することを抑制することができる。
【0008】
1つの局面では、上記動力伝達装置において、動力伝達部材はケーシングの底部に貯留されたオイルを掻き上げる回転体を含み、第1のオイル流通経路は、回転体により掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルをケーシング内に供給する第1のオイル貯留部を含み、第2のオイル流通経路は、回転体により掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルをケーシング内に供給する第2のオイル貯留部を含む。
【0009】
上記構成によれば、動力伝達装置が傾いた場合にも、第1と第2のオイル貯留部のいずれかからケーシング内の各部にオイルを安定して供給することができる。したがって、動力伝達装置が傾いた場合にも、動力伝達装置において油量が不足する部分が発生することを抑制することができる。
【0010】
この局面において、1つの例として、第1と第2オイル貯留部からケーシング内に供給されるオイルは、動力伝達部材の潤滑に用いられる。この場合、動力伝達装置が傾いた場合にも、動力伝達部材の潤滑用オイルが不足することが抑制される。また、他の例として、上記動力伝達装置は、動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、第1と第2のオイル流通経路を流れるオイルは回転電機に向けて供給される。この場合、オイルは回転電機の温度調整用に用いられる。したがって、動力伝達装置が傾いた場合にも、回転電機の温度調整用のオイルが不足することが抑制される。
【0011】
他の局面では、上記動力伝達装置は、動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、動力伝達部材はディファレンシャルギヤを含み、ケーシングは、回転電機を収納する回転電機室と、ディファレンシャルギヤを収納するディファレンシャルギヤ室とを含み、第1と第2のオイル流通経路の一方は、回転電機室とディファレンシャルギヤ室とを直接連通する油路を含む。
【0012】
この局面において、好ましくは、ケーシングは、回転電機室とディファレンシャルギヤ室との間に位置するカウンタギヤ室をさらに含み、第1と第2のオイル流通経路の他方は、カウンタギヤ室を含む。
【0013】
また、好ましくは、第1と第2のオイル流通経路の少なくとも一方は、回転電機室からカウンタギヤ室またはディファレンシャルギヤ室に向かうオイルの流れを許容する一方でカウンタギヤ室またはディファレンシャルギヤ室から回転電機室に向かうオイルの流れを抑制する逆止弁を有する。
【0014】
上記構成によれば、動力伝達装置が傾いた場合でも、回転電機室からディファレンシャルギヤ室に安定してオイルを流すことができる。また、上記逆止弁を設けることで、カウンタギヤ室またはディファレンシャルギヤ室から回転電機室にオイルが逆流することを抑制することができる。
【0015】
さらに他の局面では、上記動力伝達装置は、動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、動力伝達部材はケーシングの底部に貯留されたオイルを掻き上げるヘリカルギヤを含み、ケーシングは、回転電機を収納する回転電機室とヘリカルギヤを収納するヘリカルギヤ室とを含み、動力伝達装置は、ヘリカルギヤにより掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルをケーシング内の供給するオイル貯留部をさらに備え、ヘリカルギヤの歯の捻れ方向は、正回転時にはオイルを掻き上げるともに、逆回転時には回転電機室からヘリカルギヤ室にオイルを吸い出す方向に設定される。
【0016】
これにより、正逆回転時のいずれにおいても、回転電機室からヘリカルギヤ室にオイルを流すことができる。したがって、回転電機室内の油面高さを低減させ、回転電機室内でオイルが攪拌されることによる攪拌抵抗を低減するとともに、ヘリカルギヤ室内のオイル量およびオイル貯留部のオイル貯留量を安定して確保することができる。この結果、動力伝達装置が傾いた場合にも、動力伝達装置において油量が不足する部分が発生することを抑制することができる。
【0017】
さらに他の局面では、上記動力伝達装置は、動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、動力伝達部材はディファレンシャルギヤを含み、ケーシングは、回転電機を収納する回転電機室と、ディファレンシャルギヤを収納するディファレンシャルギヤ室と、回転電機室とディファレンシャルギヤ室との間に位置するカウンタギヤ室とを含む。ここで、動力伝達装置は、回転電機室、ディファレンシャルギヤ室およびカウンタギヤ室間のオイルの流量を調整する流量調整機構をさらに備える。
【0018】
上記動力伝達装置において、流量調整機構は、オイルポンプ、または、回転電機室、ディファレンシャルギヤ室およびカウンタギヤ室間を互いに連通する油路の径を調整する機構を含む。
【0019】
上記構成によれば、回転電機室、ディファレンシャルギヤ室およびカウンタギヤ室間のオイル流量を調整することで、各室の油面高さを互いに異ならせながら適宜調整することができる。結果として、動力伝達装置の小型化を図ることができる。
【0020】
本発明に係る車両は、上述した動力伝達装置を備える。車両に動力伝達装置を設けた場合、路面勾配等により動力伝達装置が傾くことが考えられる。本発明に係る車両によれば、このような場合にも、動力伝達装置において、油量が不足する部位が発生することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、動力伝達装置が傾いた場合にも、該装置において油量が不足する部位が発生することを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0023】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の特徴部分を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0024】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る動力伝達装置を含む電動車両を示した図である。図1を参照して、「車両」であるハイブリッド車両1は、前輪FWと、後輪RWと、前輪駆動用のフロント駆動ユニット2と、エンジン3と、後輪駆動用のリア駆動ユニット4と、ECU(Electrical Control Unit)5と、アクセルペダル6と、PCU(Power Control Unit)7と、バッテリ8とを備える。
【0025】
エンジン3は、前輪FWの駆動に用いられる。フロント駆動ユニット2は、フロント駆動用モータジェネレータ(図示せず)を内蔵し、エンジン3および/またはフロント駆動用モータジェネレータによって発生したトルクによって、前輪FWを駆動する。フロント駆動用モータジェネレータは、前輪FWあるいはエンジン3によって回転されるときには、発電機として動作させることができる。
【0026】
リア駆動ユニット4は、後輪RWの駆動用の「回転電機」であるモータジェネレータ100と、モータジェネレータ100を収納するケーシング200と、「減速機構」としてのカウンタギヤ300と、ディファレンシャルギヤ400とを含む。モータジェネレータ100による発生トルクが車軸に伝達されて、後輪RWを駆動することができる。また、減速時等において、後輪RWによってモータジェネレータ100が回転されるときには、モータジェネレータ100は発電機として動作する。なお、変形例として、モータジェネレータ100と、後輪RWに接続された車軸との間にクラッチ(図示せず)を設けることが考えられる。この場合、モータジェネレータ100を使用しない時は、攪拌による損失を防止するため、ECU5からの指令によりクラッチを開放する。
【0027】
「制御装置」として設けられるECU5へは、アクセルペダル6に配置された位置センサによって検出されるアクセル踏込み量/踏込み速度を始めとする各種センサからの運転状況・車両状況を示す情報が入力される。運転状況を示す情報には、上記のアクセル位置センサの出力の他に、車輪速度センサ出力、車体勾配センサ出力などが含まれる。さらに、車両状況として、モータジェネレータ100の動作条件を示す、モータジェネレータ100の温度センサ・電流センサ・回転速度センサ出力などが入力される。ECU5は、入力されたこれらの情報に基づき、ハイブリッド車両1に関する種々の制御を統合的に行なう。
【0028】
PCU7は、ハイブリッド車両1内で必要となる電力変換器を総括的に示すものである。すなわち、PCU7は、直流電力を交流電力に変換するインバータ(図示せず)や直流電圧の電圧レベルを変換するDC−DCコンバータ(図示せず)等を含む。特に、このインバータは、バッテリ8から供給される直流電力をモータ駆動のための交流電力に変換し、かつ、エンジン3によってモータジェネレータが駆動された際、あるいはモータジェネレータ自身の回生制動動作の際に発電された交流電圧をバッテリ8を充電する直流電圧に変換する。DC−DCコンバータは、主として、エアコン等補機用の電源電圧に適したレベルへ直流電圧を変換するために用いられる。
【0029】
バッテリ8、フロント駆動ユニット2およびリア駆動ユニット4と、PCU7との間には、給電ケーブル9A,9B,9Cがそれぞれ配設されて電力が伝達される。
【0030】
本実施の形態では、ハイブリッド車両1の走行は、基本的には、フロント駆動ユニット2による前輪FWの駆動(FFモード)によって行なわれる。しかし、たとえば登坂時など高出力が要求される場合や、低摩擦係数路走行時には、4輪駆動走行(4WDモード)が行なわれる。このように、ハイブリッド車両1において、リア駆動ユニット4は間欠的に駆動される。
【0031】
たとえば、上述したクラッチが設けられる場合には、4WDモード時には、ECU5内でクラッチ締結要求フラグがオンされ、これに応答して上記クラッチを締結することにより、モータジェネレータ100の出力トルクを後輪RWの車軸へ伝達して、前輪FWに加えて後輪RWが駆動される。また、減速・制動時にも、上記クラッチを締結することにより、モータジェネレータ100を発電機として作動させて、バッテリ8の充電用のエネルギーを回収することができる。
【0032】
図2は、「駆動装置」としてのリア駆動ユニット4の構成を示した図である。図2を参照して、リア駆動ユニット4は、モータジェネレータ100、ケーシング200、カウンタギヤ300およびディファレンシャルギヤ400の他に、左右のアウトプットシャフト500L,500Rと、オイルシール600と、ドライブシャフト受け部700と、キャッチタンク910,920,930とを含んで構成される。
【0033】
モータジェネレータ100は、回転シャフト110と、ロータ120と、ステータ130とを含んで構成される。回転シャフト110は、左右の軸受100Aを介してケーシング200に対して回転可能に保持されている。また、回転シャフト110は、インプットギヤ150とスプライン嵌合されている。ロータ120は、回転シャフト110に固設されている。ステータ130は、ステータコア131と、ステータコイル132とを含んで構成される。
【0034】
インプットギヤ150は、左右の軸受150Aを介してケーシング200に対して回転可能に保持されている。インプットギヤ150は、カウンタギヤ300と組合わされる。これにより、インプットギヤ150の動力がカウンタギヤ300に伝達される。
【0035】
カウンタギヤ300は、左右の軸受300Aを介してケーシング200に対して回転可能に保持されている。カウンタギヤ300は、ディファレンシャルギヤ400と組合わされる。これにより、カウンタギヤ300の動力がディファレンシャルギヤ400に伝達される。
【0036】
ディファレンシャルギヤ400は、リングギヤ410と、ピニオンギヤ420と、サイドギヤ430とを含んで構成される。ディファレンシャルギヤ400は、軸受400Aを介してケーシング200に対して回転可能に保持されている。
【0037】
ケーシング200には、モータジェネレータ100を収納するモータジェネレータ室210と、カウンタギヤ300におけるインプットギヤ150と噛み合う部分301を収納するカウンタギヤ室220と、ディファレンシャルギヤ400を収納するディファレンシャルギヤ室230とが形成されている。
【0038】
ハイブリッド車両1の前進時において、リア駆動ユニット4が後輪RWを駆動する際、および、リア駆動ユニット4が後輪RWに駆動される際には、モータジェネレータ100の回転シャフト110およびインプットギヤ150は、矢印DR1方向に回転する。インプットギヤ150と噛み合うカウンタギヤ300は、矢印DR2方向に回転する。そして、カウンタギヤ300と噛み合うディファレンシャルギヤ400のリングギヤ410は、矢印DR1方向に回転する。
【0039】
ディファレンシャルギヤ400の左右のサイドギヤ430には、それぞれアウトプットシャフト500L,500Rが接続されている。アウトプットシャフト500L,500Rは、回転シャフト110と同軸上に設けられる。回転シャフト110には軸方向の貫通孔が形成されており、アウトプットシャフト500Lは該貫通孔に挿通される。また、アウトプットシャフト500Lは、軸受500Aを介してケーシング200に対して回転可能に保持されている。
【0040】
アウトプットシャフト500L,500Rは、ドライブシャフト受け部700に接続されている。アウトプットシャフト500L,500Rおよびドライブシャフト受け部700が位置するケーシング200には、オイルシール600が設けられている。ドライブシャフト受け部700はドライブシャフト800を介して後輪RWに接続されている。以上の構成により、モータジェネレータ100に後輪RWを駆動させ、また、後輪RWにモータジェネレータ100を駆動させることができる。
【0041】
ケーシング200の底部には、オイルが貯留されている。ディファレンシャルギヤ400のリングギヤ410やカウンタギヤ300が回転すると、ケーシング200内に貯留されたオイルが掻き上げられる。リア駆動ユニット4は、キャッチタンク910,920,930を有する。キャッチタンク910,930は車両前方側に位置し、キャッチタンク920は車両後方側に位置する。リングギヤ410やカウンタギヤ300により掻き上げられたオイルは、キャッチタンク910,920,930に貯留される。
【0042】
図3は、リア駆動ユニット4におけるオイルの流れ等を説明する図である。図3を参照して、カウンタギヤ室220の底部に貯留されたオイルは、カウンタギヤ300により矢印DR920方向に掻き上げられ、キャッチタンク920内に流入する。また、ディファレンシャルギヤ室230の底部に貯留されたオイルは、リングギヤ410により矢印DR910方向に掻き上げられ、キャッチタンク910に流入する。
【0043】
カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230内のオイルが掻き上げられることで、カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230内のオイル面が低下する。このとき、モータジェネレータ室210内のオイルが矢印DR220方向,DR230方向に流れてカウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230に供給される。この結果、モータジェネレータ室210内のオイル面高さが低下する。
【0044】
キャッチタンク910内に貯留されたオイルは、主として左右(図3中)の軸受300Aおよび右側(図3中)の軸受400Aに向けて供給される。キャッチタンク920に貯留されたオイルは、主として左右(図3中)の軸受150A、左側(図3中)の軸受400Aおよび右側(図3中)の軸受100Aに向けて供給される。また、キャッチタンク910内に貯留されたオイルは、矢印DR930方向に流れてキャッチタンク930に流入する。キャッチタンク930に貯留されたオイルは、主として左側(図3中)の軸受100Aおよび軸受500Aに向けて供給される。キャッチタンク910,920,930から供給されたオイルは、ケーシング200内の各部の潤滑用/冷却用(軸受100A,150A,300A,400A,500Aの潤滑/冷却やモータジェネレータ100の冷却など)に用いられる。なお、キャッチタンク910,920は連通路915を介して互いに連通し、オイルを共用している。
【0045】
キャッチタンク910,920,930からケーシング200内の各部に供給されるオイルの流路、および、キャッチタンク910,920の連通路には、それぞれオリフィス940A〜940Hが設けられており、流量調整が行なわれている。また、図3中の破線矢印はリア駆動ユニット4内のエアの流れを示す。ケーシング200内の圧力が増大した際には、ケーシング200内のエアがブリーザ240を介してケーシング200の外部に排出される。
【0046】
ハイブリッド車両1の登坂時および降坂時等においては、リア駆動ユニット4は前後方向に傾斜する。このように、リア駆動ユニット4が傾斜した場合にも、ケーシング200内の各部に供給されるオイル量を一定の量以上に保つことは重要である。
【0047】
上述したように、本実施の形態に係るリア駆動ユニット4においては、ケーシング200に対して車両の前方側にキャッチタンク910,930が設けられ、ケーシング200に対して車両の後方側にキャッチタンク920が設けられている。このようなリア駆動ユニット4においては、ハイブリッド車両1の登坂時には、カウンタギヤ室220内のオイルレベルが低下し、カウンタギヤ300(301)による掻き上げ量が減少するため、キャッチタンク920からケーシング200内へのオイルの供給量は若干減少するが、ディファレンシャルギヤ室230内のオイルレベルが上昇するため、リングギヤ410による掻き上げ量が増加し、キャッチタンク910,930からケーシング200内へのオイルの供給量は増大する。他方、ハイブリッド車両1の降坂時には、同様に、キャッチタンク910,930からケーシング200内へのオイル供給量は若干減少するが、キャッチタンク920からケーシング200内へのオイル供給量は増大する。
【0048】
このように、本実施の形態に係るハイブリッド車両1においては、リア駆動ユニット4が前後方向に傾いた場合にも、キャッチタンク910〜930のいずれかからケーシング内の各部にオイルを安定して供給することができる。したがって、リア駆動ユニット4が前後方向に傾いた場合にも、ケーシング200内において、各ベアリングなどへの潤滑油量が不足する部分が発生することを抑制することができる。
【0049】
また、本実施の形態によれば、簡単な構成により上記課題を解決することができる。図4に示すように、リア駆動ユニット4は車両のフロアパネル10の下部に設けられる。フロアパネル10の下部のスペースは限られているため、リア駆動ユニット4には小型化が要求される。本実施の形態によれば、リア駆動ユニット4の小型化の要求を満たしながら、リア駆動ユニット4の各部でオイル量が不足することを抑制することができる。
【0050】
上述した構成について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る「動力伝達装置」としてのリア駆動ユニット4は、「動力伝達部材」としてのカウンタギヤ300やディファレンシャルギヤ400を収納するケーシング200と、ケーシング200内に供給されたオイルと、オイルが流れる「第1のオイル流通経路」としてのキャッチタンク910,930と、キャッチタンク910,930と前後方向に対向するように設けられ、オイルが流れる「第2のオイル流通経路」としてのキャッチタンク920とを備える。
【0051】
より具体的には、リア駆動ユニット4において、ケーシング200の底部にはオイルが貯留されている。カウンタギヤ300およびディファレンシャルギヤ400は、ケーシング200の底部に貯留されたオイルを掻き上げる「回転体」を構成する。キャッチタンク910,930は、ディファレンシャルギヤ400により掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルをケーシング200内の各ベアリングなどに供給する「第1のオイル貯留部」を構成する。キャッチタンク920は、カウンタギヤ300により掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルをケーシング200内の各ベアリングなどに供給する「第2のオイル貯留部」を構成する。
【0052】
次に、図5,図6を用いて、本実施の形態に係るリア駆動ユニット4におけるケーシング200の構造についてさらに詳細に説明する。本実施の形態に係るリア駆動ユニット4は、モータジェネレータ室210とカウンタギヤ室220とを連通する連通路220Aと、モータジェネレータ室210とディファレンシャルギヤ室230とを連通する連通路230Aとを備えている。モータジェネレータ室210からディファレンシャルギヤ室230に達するオイル流通経路は、カウンタギヤ室220を介する経路、および、カウンタギヤ室220を介さずに連通路230A内を流れる経路の2経路を有する。なお、連通路230Aは、連通路220Aおよびカウンタギヤ室220に対して車両の後方側に位置する。
【0053】
次に、図7,図8を用いて、本実施の形態に対する比較例に係る構造について説明する。本比較例に係る構造においては、モータジェネレータ室210からディファレンシャルギヤ室230に達するオイル流通経路は、カウンタギヤ室220を介する経路のみである。
【0054】
図5,図7中の「S0」は、ハイブリッド車両1が水平面上にあるときのケーシング200内の油面を示し、図5,図7中の「S1」は、ハイブリッド車両1が登坂面上にあるときのケーシング200内の油面を示している。
【0055】
図7の例では、ハイブリッド車両1が登坂面上にあるとき、連通路220Aが油面「S1」よりも高くなり、モータジェネレータ室210から連通路220Aにオイルが流入しにくくなる。この結果、車両が登坂面上にあるときに、ディファレンシャルギヤ室230に十分なオイルが供給されず、モータジェネレータ室210内にオイルが充満し、攪拌抵抗が増加することが懸念される。
【0056】
他方、図5の例では、ハイブリッド車両1が登坂面上にあるとき、連通路220Aは油面「S1」よりも高くなるが、連通路230Aは依然として油面「S1」よりも低い。したがって、ハイブリッド車両1が登坂面上にあるときにも、連通路230Aを介して十分なオイルをディファレンシャルギヤ室230に供給し、モータジェネレータ室210内のオイルを吸い出すことができる。
【0057】
このように、本実施の形態に係るリア駆動ユニット4においては、ケーシング200は、モータジェネレータ100を収納する「回転電機室」としてのモータジェネレータ室210と、ディファレンシャルギヤ400を収納するディファレンシャルギヤ室230と、モータジェネレータ室210とディファレンシャルギヤ室230との間に位置するカウンタギヤ室220とを含む。ここで、モータジェネレータ室210とディファレンシャルギヤ室230とを直接連通する「油路」としての連通路230Aは「第1のオイル流通経路」を構成し、カウンタギヤ室220は「第2のオイル流通経路」を構成する。なお、カウンタギヤ室220と連通路230Aは、ハイブリッド車両1の前後方向に並ぶように形成される。
【0058】
(実施の形態2)
以下に、実施の形態2に係るリア駆動ユニットについて説明する。本実施の形態に係るリア駆動ユニットは、実施の形態1に係るリア駆動ユニット4の変形例であるため、基本的な構成に関する説明は繰返されない。
【0059】
ケーシング200内に設けられるカウンタギヤ300は、車両の前進時には正方向に回転し、車両の後退時には逆方向に回転する。カウンタギヤ300からキャッチタンク920,910へのオイルの掻き上げは、正回転時に行なわれる。したがって、逆回転時には、モータジェネレータ室210からカウンタギヤ室220へのオイルの流れが生じにくくなる。この結果、モータジェネレータ室210内の油面高さが上昇し、攪拌抵抗が増大することが懸念される。本実施の形態では、このような課題を解決可能な構造の例を示す。
【0060】
まず、図9,図10を用いて、本実施の形態に係るリア駆動ユニットにおけるカウンタギヤ300の正回転時のオイルの流れについて説明する。図10は、図9の構造を矢印Xの方向からみた状態を示す。図9,図10を参照して、車両の前進時には、カウンタギヤ300は矢印DR2方向に回転する。これにより、カウンタギヤ室220内のオイルがキャッチタンク920に向けて矢印DR920方向に掻き上げられる。この結果、カウンタギヤ室220内の油面高さが低減され、モータジェネレータ室210からカウンタギヤ室220に向けて(矢印DR220方向に)オイルが流入する。ここで、カウンタギヤ300はヘリカルギヤである。このヘリカルギヤの回転により、カウンタギヤ室220からモータジェネレータ室210に向かうオイルの流れが形成されるが、カウンタギヤ300によりオイルが掻き上げられ、カウンタギヤ室220内の油面高さが低下するため、カウンタギヤ室220からモータジェネレータ室210にオイルが逆流することが抑制される。
【0061】
次に、図11,図12を用いて、本実施の形態に係るリア駆動ユニットにおけるカウンタギヤ300の逆回転時のオイルの流れについて説明する。図12は、図11の構造を矢印XIIの方向からみた状態を示す。図11,図12を参照して、車両の後退時には、カウンタギヤ300は矢印DR2´方向に回転する。この場合、カウンタギヤ室220内のオイルはキャッチタック920に向けて掻き上げられない。したがって、カウンタギヤ室220内の油面高さは低減されない。しかしながら、ヘリカルギヤの回転によるねじポンプ作用により、モータジェネレータ室210からカウンタギヤ室220に向かうオイルの流れが形成される。この結果、モータジェネレータ室210内のオイルがカウンタギヤ室220に向けて(矢印DR220方向に)吸込まれる。この時、カウンタギヤ300と周囲の壁面との隙間を小さくしておけば、ねじポンプ作用をより大きくすることができる。
【0062】
このように、本実施の形態によれば、カウンタギヤ300の正逆回転時のいずれにおいても、モータジェネレータ室210からカウンタギヤ室220にオイルを流すことができる。したがって、モータジェネレータ室210内の油面高さを低減させ、モータジェネレータ室100内でオイルが攪拌されることによる攪拌抵抗を低減するとともに、カウンタギヤ室220内のオイル量およびキャッチタンク920のオイル貯留量を安定して確保することができる。
【0063】
上述した構成について要約すると、本実施の形態に係るリア駆動ユニット4は、カウンタギヤ300に動力を与えるモータジェネレータ100を備える。ケーシング200の底部にオイルが貯留されている。カウンタギヤ300はケーシング200の底部に貯留されたオイルを掻き上げる「ヘリカルギヤ」を含む。ケーシング200は、モータジェネレータ100を収納するモータジェネレータ室210とヘリカルギヤを収納する「ヘリカルギヤ室」としてのカウンタギヤ室220とを含む。リア駆動ユニット4は、カウンタギヤ300により掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルをケーシング200内の供給するキャッチタンク920を備える。カウンタギヤ300におけるヘリカルギヤの歯の捻れ方向は、正回転時にはカウンタギヤ室220内のオイルを掻き上げるともに、逆回転時にはモータジェネレータ室210からカウンタギヤ室220にオイルを吸い出す方向(本実施の形態では右ねじれ方向)に設定されている。
【0064】
(実施の形態3)
以下に、実施の形態3に係るリア駆動ユニットについて説明する。本実施の形態に係るリア駆動ユニットは、実施の形態1に係るリア駆動ユニット4の変形例であるため、基本的な構成に関する説明は繰返されない。
【0065】
図13は、本実施の形態に係るリア駆動ユニットにおけるオイルの流れを説明する図である。図13を参照して、本実施の形態に係るリア駆動ユニットは、カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230からモータジェネレータ室210へのオイルの逆流を防止する一方向弁1000を有することを特徴とする。すなわち、本実施の形態に係るリア駆動ユニットにおいて、モータジェネレータ室210とカウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230とを連通する連通路220A,230Aは、モータジェネレータ室210からカウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230に向かうオイルの流れを許容する一方でカウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230からモータジェネレータ室210に向かうオイルの流れを抑制する「逆止弁」としての一方向弁1000A,1000Bを有する。なお、一方向弁1000A,1000Bは、連通路220A,230Aの一方のみに設けられてもよい。
【0066】
上記のように一方向弁1000を設けることで、たとえば車両が右旋回する時の遠心力によりカウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230からモータジェネレータ室210にオイルが逆流することを抑制することができる。結果として、モータジェネレータ室210内の油面高さを低減し、オイルの攪拌抵抗を低減することができる。
【0067】
(実施の形態4)
以下に、実施の形態4に係るリア駆動ユニットについて説明する。本実施の形態に係るリア駆動ユニットは、実施の形態1に係るリア駆動ユニット4の変形例であるため、基本的な構成に関する説明は繰返されない。
【0068】
図14は、本実施の形態に係るリア駆動ユニットにおけるオイルの流れの特徴部分を模式的に説明する図である。図14を参照して、本実施の形態に係るリア駆動ユニットは、モータジェネレータ室210、カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230間を流れるオイルの流量を調整する「流量調整機構」としてのオイルポンプ1100A,1100Bを有することを特徴とする。
【0069】
図14に示すように、ロータ120により掻き上げられたオイルは、カウンタギヤ室220内に流入する(矢印DR120)。また、カウンタギヤ300におけるカウンタギヤ室220内に収納される部分301により掻き上げられたオイルは、上述したように、キャッチタンク920に流入する。ここで、本実施の形態に係るリア駆動ユニット4は、カウンタギヤ室220からキャッチタンク920に向かうオイルの一部が、ディファレンシャルギヤ室230に向かうように構成されている。具体的には、図15(図14中のXV部拡大図)に示すように、カウンタギヤ室220からキャッチタンク920に通じる油路9200にディファレンシャルギヤ室230に通じる孔が設けられる。このようにすることで、カウンタギヤ室220からキャッチタンク920に向かって矢印DR920方向に流れるオイルの一部が矢印DR921方向に分岐してディファレンシャルギヤ室230に流入する。
【0070】
典型的な例では、オイルポンプ1100A,1100Bは、ディファレンシャルギヤ室230からカウンタギヤ室220およびモータジェネレータ室210に向かうオイル流量をできるだけ小さくするように制御される。
【0071】
上記のように、ロータ120により掻き上げられたオイルをカウンタギヤ室220に流入させ、カウンタギヤ300により掻き上げられたオイルをディファレンシャルギヤ室230に流入させるとともに、ディファレンシャルギヤ室230内のオイルをカウンタギヤ室220およびモータジェネレータ室210に戻りにくくすることで、ディファレンシャルギヤ室230の油面高さを相対的に上昇させ、ディファレンシャルギヤ室230にオイルを貯留することができる。
【0072】
図16は、本実施の形態に係るリア駆動ユニット4におけるケーシング内の油面高さを説明する図である。図16を参照して、本実施の形態に係るリア駆動ユニット4では、オイルポンプ1100A,1100Bが設けられることで、オイル掻き上げ後のモータジェネレータ室210の油面S210の高さと、カウンタギヤ室220の油面S220の高さと、ディファレンシャルギヤ室230の油面S230の高さとを互いに異ならせることができる。図16においては、オイルを掻き上げ前の油面高さ(H)と、モータジェネレータ室210、カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230の油面高さが一定である場合のオイル掻き上げ後の油面高さ(L)とを併記している。図16に示すように、各室の油面高さS210,S220,S230を異ならせることで、各室の油面高さが一定の場合と比較して、ディファレンシャルギヤ室230およびカウンタギヤ室220の油面S230,S220の高さを比較的高く保ったまま、モータジェネレータ室210の油面S210の高さを低下させることができる。したがって、モータジェネレータ室210の油面高さを下げるために必要なキャッチタンク910,920の容量を低減することができる。
【0073】
上記のように、モータジェネレータ室210、カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230の油面高さをそれぞれ異ならせ、モータジェネレータ室210の油面高さを下げながらディファレンシャルギヤ室230の油面高さを上昇させることで、キャッチタンクの容量が増大することを抑制しながら、ロータ120の攪拌抵抗を低減することができる。結果として、リア駆動ユニット4の大型化を抑制しながら、該ユニットの動作効率を向上させることが可能になる。
【0074】
また、他の実施例として、モータジェネレータ100が高負荷状態にある場合に、オイルポンプ1100A,1100Bにより、ディファレンシャルギヤ室230からカウンタギヤ室220およびモータジェネレータ室210に戻るオイル量を増大させ、モータジェネレータ100の各部の冷却/潤滑を促進するようにしてもよい。また、さらに他の実施例としては、ハイブリッド車両1が登降坂上にあるとき、または、ケーシング200内のオイルが水平方向/鉛直方向の慣性力を受けて油面高さが影響を受けるときに、オイルポンプ1100A,1100Bにより、モータジェネレータ室210、カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230の油面の高さを調整してもよい。
【0075】
また、オイルポンプ1100A,1100Bに代えて、モータジェネレータ室210、カウンタギヤ室220およびディファレンシャルギヤ室230間を繋ぐ通路の径を調整する機構を設けることで、各室間を流れるオイルの流量を調整してもよい。
【0076】
なお、上記の例では、「動力伝達装置」の例としてのリア駆動ユニット4について説明したが、同様の思想は、たとえば「手動変速機」においても適用可能である。
【0077】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の実施の形態1に係る動力伝達装置を含む電動車両を示した図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る動力伝達装置の構成を示した図である。
【図3】図2に示される動力伝達装置におけるオイルの流れを説明する図である。
【図4】本発明の実施の形態1における動力伝達装置の設置位置を説明する図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る動力伝達装置におけるケーシングの構造を説明する図(その1)である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る動力伝達装置におけるケーシングの構造を説明する図(その2)である。
【図7】本発明の実施の形態1に対する比較例に係る動力伝達装置におけるケーシングの構造を説明する図(その1)である。
【図8】本発明の実施の形態1に対する比較例に係る動力伝達装置におけるケーシングの構造を説明する図(その2)である。
【図9】本発明の実施の形態2に係る動力伝達装置におけるカウンタギヤの正回転時のオイルの流れを説明する図(その1)である。
【図10】本発明の実施の形態2に係る動力伝達装置におけるカウンタギヤの正回転時のオイルの流れを説明する図(その2)である。
【図11】本発明の実施の形態2に係る動力伝達装置におけるカウンタギヤの逆回転時のオイルの流れを説明する図(その1)である。
【図12】本発明の実施の形態2に係る動力伝達装置におけるカウンタギヤの逆回転時のオイルの流れを説明する図(その2)である。
【図13】本発明の実施の形態3に係る動力伝達装置におけるオイルの流れを説明する図である。
【図14】本発明の実施の形態4に係る動力伝達装置におけるオイルの流れの特徴部分を模式的に説明する図である。
【図15】図14におけるXV部の構造を説明する図である。
【図16】本発明の実施の形態4に係る動力伝達装置におけるケーシング内の油面高さを説明する図である。
【符号の説明】
【0079】
1 ハイブリッド車両、2 フロント駆動ユニット、3 エンジン、4 リア駆動ユニット、5 ECU、6 アクセルペダル、7 PCU、8 バッテリ、9A,9B,9C 給電ケーブル、10 フロアパネル、100 モータジェネレータ、110 回転シャフト、120 ロータ、130 ステータ、131 ステータコア、132 ステータコイル、150 インプットギヤ、200 ケーシング、210 モータジェネレータ室、220 カウンタギヤ室、220A 連通路、230 ディファレンシャルギヤ室、230A 連通路、240 ブリーザ、300 カウンタギヤ、400 ディファレンシャルギヤ、410 リングギヤ、420 ピニオンギヤ、430 サイドギヤ、500L,500R アウトプットシャフト、600 オイルシール、700 ドライブシャフト受け部、800 ドライブシャフト、910,920,930 キャッチタンク、915 油路、921 オイル通路、940A〜940H オリフィス、1000A,1000B 一方向弁、1100A,1100B オイルポンプ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動力伝達部材を収納するケーシングと、
前記ケーシング内に供給され、該ケーシングの底部に貯留されるオイルと、
前記オイルが流れる第1のオイル流通経路と、
前記第1のオイル流通経路と対向するように設けられ、前記オイルが流れる第2のオイル流通経路とを備えた、動力伝達装置。
【請求項2】
前記動力伝達部材は前記ケーシングの底部に貯留されたオイルを掻き上げる回転体を含み、
前記第1のオイル流通経路は、前記回転体により掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルを前記ケーシング内に供給する第1のオイル貯留部を含み、
前記第2のオイル流通経路は、前記回転体により掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルを前記ケーシング内に供給する第2のオイル貯留部を含む、請求項1に記載の動力伝達装置。
【請求項3】
前記第1と第2オイル貯留部から前記ケーシング内に供給されるオイルは、前記動力伝達部材の潤滑に用いられる、請求項2に記載の動力伝達装置。
【請求項4】
前記動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、
前記第1と第2のオイル流通経路を流れる前記オイルは前記回転電機に向けて供給される、請求項1から請求項3のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項5】
前記動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、
前記動力伝達部材はディファレンシャルギヤを含み、
前記ケーシングは、前記回転電機を収納する回転電機室と、前記ディファレンシャルギヤを収納するディファレンシャルギヤ室とを含み、
前記第1と第2のオイル流通経路の一方は、前記回転電機室と前記ディファレンシャルギヤ室とを直接連通する油路を含む、請求項1から請求項4のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項6】
前記ケーシングは、前記回転電機室と前記ディファレンシャルギヤ室との間に位置するカウンタギヤ室をさらに含み、
前記第1と第2のオイル流通経路の他方は、前記カウンタギヤ室を含む、請求項5に記載の動力伝達装置。
【請求項7】
前記第1と第2のオイル流通経路の少なくとも一方は、前記回転電機室から前記カウンタギヤ室または前記ディファレンシャルギヤ室に向かう前記オイルの流れを許容する一方で前記カウンタギヤ室または前記ディファレンシャルギヤ室から前記回転電機室に向かう前記オイルの流れを抑制する逆止弁を有する、請求項6に記載の動力伝達装置。
【請求項8】
前記動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、
前記動力伝達部材は前記ケーシングの底部に貯留されたオイルを掻き上げるヘリカルギヤを含み、
前記ケーシングは、前記回転電機を収納する回転電機室と前記ヘリカルギヤを収納するヘリカルギヤ室とを含み、
前記動力伝達装置は、前記ヘリカルギヤにより掻き上げられたオイルを受け入れた後該オイルをケーシング内の供給するオイル貯留部をさらに備え、
前記ヘリカルギヤの歯の捻れ方向は、正回転時には前記オイルを掻き上げるともに、逆回転時には前記回転電機室から前記ヘリカルギヤ室に前記オイルを吸い出す方向に設定される、請求項1から請求項7のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項9】
前記動力伝達部材に動力を与える回転電機をさらに備え、
前記動力伝達部材はディファレンシャルギヤを含み、
前記ケーシングは、前記回転電機を収納する回転電機室と、前記ディファレンシャルギヤを収納するディファレンシャルギヤ室と、前記回転電機室と前記ディファレンシャルギヤ室との間に位置するカウンタギヤ室とを含み、
前記回転電機室、前記ディファレンシャルギヤ室および前記カウンタギヤ室間のオイルの流量を調整する流量調整機構をさらに備えた、請求項1から請求項8のいずれかに記載の動力伝達装置。
【請求項10】
前記流量調整機構は、オイルポンプ、または、前記回転電機室、前記ディファレンシャルギヤ室および前記カウンタギヤ室間を互いに連通する油路の径を調整する機構を含む、請求項9に記載の動力伝達装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれかに記載の動力伝達装置を備えた、車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−89016(P2008−89016A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−268054(P2006−268054)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】