説明

動吸振器の取付構造

【課題】構造物に対する加工を低減して、橋梁構造物に動吸振器を取り付ける。
【解決手段】橋梁1は、複数の橋脚(不図示)に掛け渡されて支持される一対のI型桁2,3を備えており、各I型桁2,3は、他方のI型桁3,2と接続された上フランジ部4,5と、上フランジ部4,5から下方に延びる胴部6,7と、胴部6,7の下部に形成されて、他方のI型桁3,2に向かって斜め下方に傾斜し、互いに向い合うように斜め上方を向いた傾斜面10,11が形成された下フランジ部8,9とを備えている。そして、下フランジ部8,9の傾斜面10,11に取付部材15が軸力により固定されており、この取付部材15に動吸振器14が固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物に動吸振器を取り付けて前記構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、橋梁などの構造物の振動を低減させるための手法として、橋梁に動吸振器を固定することが知られている。そして、この手法では、橋梁からの振動を確実に動吸振器に伝達させるために、橋梁躯体に削孔等の加工を行い、動吸振器と橋梁とをボルト締め等により強固に固定している(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−065079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の手法では、橋梁に削孔等の大掛かりな加工を施す必要があるため、加工の如何によっては橋梁の耐荷力を減少させる虞があるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、構造物に対する加工を低減して、橋梁構造物に動吸振器を取り付ける動吸振器の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る動吸振器の取付構造は、構造物に動吸振器を取り付けて、構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、軸力により構造物に固定される取付部材を有し、動吸振器は、取付部材により構造物に固定されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、動吸振器は、構造物の桁に対して軸力により固定される取付部材により固定されるため、構造物に対する加工を低減して、動吸振器を構造物に固定することが可能となる。
【0008】
本発明に係る動吸振器の取付構造は、上フランジ部が互いに接続されて下方に延びる一対の桁を備える構造物に動吸振器を取り付けて、構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、対向する桁間に配置され、横方向の突っ張りによる軸力により桁に固定される取付部材を有し、動吸振器は、取付部材に固定されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、対向する一対の桁の間に配置される取付部材が、対向する桁間で横方向に突っ張り、軸力によって対向する桁に挟み込まれるように固定される。そして、動吸振器はこの取付部材に固定することによって構造物に固定されるため、構造物に対する加工を低減して、動吸振器を構造物に固定することが可能となる。
【0010】
この場合、桁は、下フランジ部を備えるI型桁であって、下フランジ部には、対向するI型桁に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面が形成されており、取付部材は、対向するI型桁の傾斜面の間で突っ張り固定されていることが好ましい。この動吸振器の取付構造によれば、対向するI型桁の各傾斜面は、互いに向き合って斜め上方を向いているため、この傾斜面に突っ張り固定される取付部材は、下方への移動が抑止される。このため、重い動吸振器を取付部材に固定したとしても、取付部材は、下方にずれたり落下したりすることなくI型桁との固定を維持することができ、動吸振器をより確実に構造物に固定することが可能となる。
【0011】
また、傾斜面と上フランジ部との間に配置され、縦方向の突っ張りによる軸力により取付部材が上方に移動するのを拘束する拘束部材を更に備えることが好ましい。この動吸振器の取付構造によれば、拘束部材が、傾斜面と上フランジ部との間で縦方向に突っ張り、軸力によって取付部材が上方に移動するのを拘束することができる。このため、取付部材は、傾斜面間から外れることなく、I型桁との固定をより確実に維持することができ、動吸振器をより確実に構造物に固定することが可能となる。
【0012】
本発明に係る動吸振器の取付構造は、中空構造の箱型桁を備えた構造物に動吸振器を取り付けて、構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、対向する内側側面間で横方向の突っ張りによる軸力により、内側底面に載置された動吸振器を箱型桁に固定する第1の取付部材を有することを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、第1の取付部材が、箱型桁の内部で横方向に突っ張り、対向する内側側面に挟み込まれるように軸力によって動吸振器を箱型桁に押圧固定する。このため、構造物に対する加工を低減して、動吸振器を構造物に固定することが可能となる。
【0014】
この場合、内側上面と内側底面との間で縦方向の突っ張りによる軸力により、動吸振器を箱型桁に固定する第2の取付部材を更に有することが好ましい。この動吸振器の取付構造によれば、第2の取付部材が、内側上面と内側底面との間で縦方向に突っ張り、内側上面と内側底面との間で挟み込まれるように軸力によって動吸振器を箱型桁に押圧固定する。このため、動吸振器が内側底面から浮くのを抑止でき、内側底面に動吸振器をより確実に固定することが可能となる。
【0015】
本発明に係る動吸振器の取付構造は、構造物に動吸振器を取り付けて、構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、構造物との間に動吸振器を挟み込むように構造物に掛け渡され、引張軸力により動吸振器を構造物に固定するケーブルを有することを特徴とする。
【0016】
本発明によれば、引張張力を受けて構造物に掛け渡されたケーブルによって、動吸振器が構造物に挟み込まれるように固定されるため、構造物に対する加工を低減して、動吸振器を構造物に固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、構造物に対する加工を低減して、橋梁構造物に動吸振器を取り付けることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1の実施形態に係る動吸振器の取付構造を示す側面図である。
【図2】第2の実施形態に係る動吸振器の取付構造を示す側面図である。
【図3】第3の実施形態に係る動吸振器の取付構造を示す図であり、(a)は橋梁の正面図、(b)は橋梁の左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、動吸振器の取付構造として、上面に列車が走行する線路が敷設された橋梁に動吸振器を取り付ける場合を例として説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0020】
図1は、第1の実施形態に係る動吸振器の取付構造を示す側面図である。図に示すように、橋梁1は、複数の橋脚(不図示)に掛け渡されて支持される一対のI型桁2,3を備えており、この一対のI型桁2,3の上面には、列車が走行する線路が敷設されている。
【0021】
各I型桁2,3は、他方のI型桁3,2と接続された上フランジ部4,5を備えており、各I型桁2,3は、それぞれ、上フランジ部4,5から下方に延びる胴部6,7と、胴部6,7の下部に形成される下フランジ部8,9とを備えている。そして、胴部6と胴部7と、下フランジ部8と下フランジ部9とは、それぞれ対向するように配置されている。
【0022】
下フランジ部8,9には、他方のI型桁3,2に向かって斜め下方に傾斜し、互いに向い合うように斜め上方を向いた傾斜面10,11が形成されている。そして、この傾斜面10,11には、それぞれ三角柱状の受け部材12,13が当接されている。
【0023】
受け部材12は、傾斜面10に当接される第1の面12aと、第1の面12aが傾斜面10に当接した状態で他方のI型桁3の傾斜面11を向く第2の面12bと、第1の面12aが傾斜面10に当接した状態で上フランジ部4を向いく第3の面12cとが形成された剛体部材である。また、受け部材13は、傾斜面11に当接される第1の面13aと、第1の面13aが傾斜面11に当接した状態で他方のI型桁2の傾斜面10を向いく第2の面13bと、第1の面13aが傾斜面11に当接した状態で上フランジ部5を向いく第3の面13cとが形成された剛体部材である。そして、この受け部材12,13を介して、動吸振器14を固定するための取付部材15が傾斜面10,11間に固定されている。
【0024】
取付部材15は、軸周りに回転させることによって長さが調節可能なキリンジャッキ16を備えた梁で構成されている。この取付部材15は、無負荷状態において受け部材12の第2の面12bから受け部材13の第2の面13bまでの長さよりも僅かに長くなるように、キリンジャッキ16によって長さが調整されており、その一端が、受け部材12の第2の面12bに当接されており、その他端が、受け部材13の第2の面13bに当接されている。そして、取付部材15は、傾斜面10と傾斜面11との間において、横方向の突っ張りによる軸力により、受け部材12及び受け部材13を介して傾斜面10及び傾斜面11を押圧して、I型桁2とI型桁3とに挟まれるように、I型桁2,3に固定されている。
【0025】
一方、傾斜面10及び傾斜面11と上フランジ部4及び上フランジ部5との間には、それぞれ、受け部材12及び受け部材13が上方に移動するのを拘束するための拘束部材17及び拘束部材18が固定されている。
【0026】
拘束部材17は、軸周りに回転させることによって長さが調節可能なキリンジャッキ19を備えた柱状物で構成されており、その一端が、受け部材12の第3の面12cに当接され、その他端が、上フランジ部4に当接されている。この拘束部材17は、無負荷状態において受け部材12の第3の面12cから上フランジ部4までの長さよりも僅かに長くなるように、キリンジャッキ19によって長さが調整されているまた、拘束部材18は、軸周りに回転させることによって長さが調節可能なキリンジャッキ20を備えた柱状物で構成されており、その一端が、受け部材13の第3の面13cに当接され、その他端が、上フランジ部5に当接されている。この拘束部材18は、無負荷状態において受け部材13の第3の面13cから上フランジ部5までの長さよりも僅かに長くなるように、キリンジャッキ20によって長さが調整されている。
【0027】
そして、拘束部材17,18は、傾斜面10,11と上フランジ部4,5との間において、受け部材12,13及び上フランジ部4,5を押圧する縦方向の突っ張りによる軸力の作用により、受け部材12,13を傾斜面10,11に押圧固定している。
【0028】
このようにしてI型桁2に固定された取付部材15の上面に、動吸振器14がボルト締めなどによって強固に固定されている。
【0029】
次に、第1の実施形態に係る動吸振器の取付構造において、橋梁1に動吸振器14を取り付ける方法について説明する。
【0030】
まず、一対のI型桁2,3の傾斜面10,11に、それぞれ、受け部材12,13の第1の面12a,13aを当接させる。このとき、傾斜面10,11と第1の面12a,13aとの間を接着することにより、受け部材12,13が落下するのを防止するようにしても良い。
【0031】
そして、取付部材15のキリンジャッキ16を回転させて、取付部材15の長さが、受け部材12の第2の面12bから受け部材13の第2の面13bまでの長さよりも短くなるようにして、この取付部材15を、受け部材12と受け部材13との間に挿入する。
【0032】
同様に、拘束部材17,18のキリンジャッキ19,20を回転させて、拘束部材17,18の長さが、それぞれ、受け部材12,13の第3の面12b,13bから上フランジ部4,5までの長さよりも短くなるようにして、この拘束部材17,18を受け部材12,13と上フランジ部4,5との間に挿入する。
【0033】
そして、無負荷状態であった場合に、取付部材15の長さが、受け部材12の第2の面12bから受け部材13の第2の面13bまでの長さよりも僅かに長くなるまでキリンジャッキ16を回転させて、I型桁2の傾斜面10とI型桁3の傾斜面11との間で、横方向の突っ張りにより取付部材15をI型桁2,3に固定させる。
【0034】
同様に、無負荷状態であった場合に、拘束部材17,18の長さが、それぞれ、受け部材12,13の第3の面12b,13bから上フランジ部4,5までの長さよりも僅かに長くなるまでキリンジャッキ19,20を回転させて、それぞれ、傾斜面10,11と上フランジ部4,5との間で、縦方向の突っ張りにより受け部材12,13をI型桁2,3に固定させる。
【0035】
その後、取付部材15の上面に、動吸振器14を載置し、ボルト締め等により動吸振器14を取付部材15に固定する。
【0036】
このように、第1の実施形態に係る動吸振器の取付構造によれば、取付部材15が、一対のI型桁2,3間で横方向に突っ張り、軸力によって一対のI型桁2,3に挟み込まれるように押圧固定される。そして、動吸振器14を取付部材15に固定することによって、動吸振器14は橋梁1に固定されるため、橋梁1に対する加工を低減して、動吸振器14を橋梁1に固定することが可能となる。
【0037】
また、第1の実施形態に係る動吸振器の取付構造によれば、一対のI型桁2,3の各傾斜面10,11は互いに向き合って斜め上方を向いているため、傾斜面10,11に突っ張り固定される取付部材15は、下方への移動が抑止される。このため、重い動吸振器14を取付部材15に載置固定したとしても、取付部材15は、下方にずれたり落下したりすることなくI型桁2,3との固定を維持することができ、動吸振器14を橋梁1により確実に固定することが可能となる。
【0038】
また、第1の実施形態に係る動吸振器の取付構造によれば、拘束部材17,18が、傾斜面10,11と上フランジ部4,5との間で縦方向に突っ張り、軸力によって受け部材12,13が上方に移動するのを拘束することができる。このため、取付部材15は、傾斜面10,11間から外れることなく、I型桁2との固定をより確実に維持することができ、動吸振器14を橋梁1により確実に固定することが可能となる。
【0039】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。図2は、第2の実施形態に係る動吸振器の取付構造を示す側面図である。図に示すように、橋梁21は、複数の橋脚(不図示)に掛け渡されて支持される箱型桁22を備えており、この箱型桁22の上面には、列車が走行する線路が敷設されている。
【0040】
箱型桁22は、方筒状の中空構造に形成されており、この中空内部は、略水平方向な面となる内側底面23と、内側底面23の短手方向両端から上方に延びる一対の内側側面24,25と、一対の内側側面24,25の上端に連結されて内側底面23と略平行な面となる内側上面26とにより囲まれている。
【0041】
箱型桁22の内側底面23には、2つの動吸振器27,28が短手方向に並べて載置されている。動吸振器27は、動吸振器28よりも内側側面24側に位置しており、動吸振器28は、動吸振器27と内側側面25との間に位置している。
【0042】
動吸振器27と内側側面24との間には、伸縮不能な支持梁29が配置されており、動吸振器27と動吸振器28との間には、伸縮不能な支持梁32が配置されている。
【0043】
動吸振器28と内側側面25との間には、取付部材33が配置されている。この取付部材33は、軸周りに回転させることによって長さが調節可能なキリンジャッキ34を備えた梁で構成されている。この取付部材33は、無負荷状態において動吸振器28における内側側面25側の側面から内側側面25までの長さよりも僅かに長くなるように、キリンジャッキ34によって長さが調整されており、その一端が、動吸振器28における内側側面25側の側面に当接され、その他端が、内側側面25に当接されている。そして、取付部材33は、内側側面24と内側側面25との間における横方向の突っ張りによる軸力により、支持梁29,32を介して、動吸振器28及び動吸振器27を内側底面23側に押圧して、内側側面24と内側側面25とに挟まれるように動吸振器27及び動吸振器28を箱型桁22に固定している。
【0044】
動吸振器27と内側上面26との間には、取付部材30が配置されている。この取付部材30は、軸周りに回転させることによって長さが調節可能なキリンジャッキ31を備えた柱状物で構成されている。この取付部材30は、無負荷状態において動吸振器27の上面から内側上面26までの長さよりも僅かに長くなるように、キリンジャッキ31によって長さが調整されており、その一端が、動吸振器27の上面に当接され、その他端が、内側上面26に当接されている。そして、取付部材30は、内側底面23と内側上面26との間における縦方向の突っ張りによる軸力により、動吸振器27を内側底面23側に押圧して、内側底面23と内側上面26とに挟まれるように動吸振器27を箱型桁22に固定している。
【0045】
動吸振器28と内側上面26との間には、取付部材35が配置されている。この取付部材35は、軸周りに回転させることによって長さが調節可能なキリンジャッキ36を備えた柱状物で構成されている。この取付部材35は、無負荷状態において動吸振器28の上面から内側上面26までの長さよりも僅かに長くなるように、キリンジャッキ36によって長さが調整されており、その一端が、動吸振器28の上面に当接され、その他端が、内側上面26に当接されている。そして、取付部材35は、内側底面23と内側上面26との間における縦方向の突っ張りによる軸力により、動吸振器28を内側底面23側に押圧して、内側底面23と内側上面26とに挟まれるように動吸振器28を箱型桁22に固定している。
【0046】
なお、支持梁29、支持梁32及び取付部材33は、それぞれ、内側側面24と動吸振器27との間、動吸振器27と動吸振器28との間及び動吸振器28と内側側面25との間において、内側底面23に対して浮いた状態で配置されているが、内側底面23に対して浮かせる必要はなく、これらを内側底面23に載置するように配置してもよい。
【0047】
次に、第2の実施形態に係る動吸振器の取付構造において、橋梁21に動吸振器27及び動吸振器28を取り付ける方法について説明する。
【0048】
まず、箱型桁22の内側底面23に動吸振器27を載置し、内側側面24と動吸振器27との間に支持梁29を挟み込むように配置する。そして、動吸振器27と内側側面25との間の内側底面23に動吸振器28載置し、動吸振器27と動吸振器28との間に支持梁32を挟み込むように配置する。このとき、支持梁29及び支持梁32は、落下防止のために、それぞれ、接着等により仮固定してもよい。
【0049】
そして、取付部材33のキリンジャッキ34を回転させて、取付部材33の長さが、動吸振器28における内側側面25側の側面から内側側面25までの長さよりも短くなるようにして、この取付部材33を、動吸振器28と内側側面25との間に挿入する。
【0050】
同様に、取付部材30,35のキリンジャッキ31,36を回転させて、取付部材30,35の長さが、それぞれ、動吸振器27,28の上面から内側上面26までの長さよりも短くなるようにして、この取付部材30,35を、動吸振器27,28と内側上面26との間に挿入する。
【0051】
そして、無負荷状態であった場合に、取付部材33の長さが、動吸振器28における内側側面25側の側面から内側側面25までの長さよりも僅かに長くなるまでキリンジャッキ34を回転させて、内側側面24と内側側面25との間で横方向の突っ張りにより、取付部材33を箱型桁22に固定させる。
【0052】
同様に、無負荷状態であった場合に、取付部材30,35の長さが、それぞれ、動吸振器27,28の上面から内側上面26までの長さよりも僅かに長くなるまでキリンジャッキ35,36を回転させて、内側底面23と内側上面26との間で、縦方向の突っ張りにより取付部材30,35を箱型桁22に固定させる。
【0053】
このように、第2の実施形態に係る動吸振器の取付構造によれば、取付部材33が、内側側面24と内側側面25との間で横方向に突っ張り、軸力によって内側側面24と内側側面25との間で挟み込まれるように、支持梁29及び支持梁32を介して動吸振器27および動吸振器28を橋梁21の箱型桁22に固定する。このため、橋梁21に対する加工を低減して、動吸振器27及び動吸振器28を橋梁21に固定することが可能となる。
【0054】
更に、取付部材30及び取付部材35が、内側底面23と内側上面26との間で縦方向に突っ張り、内側底面23と内側上面26との間で挟み込まれるように、軸力によって動吸振器27及び動吸振器28を内側底面23に押圧固定する。このため、動吸振器27及び動吸振器28が内側底面23から浮くのを抑止でき、内側底面23に動吸振器27及び動吸振器28をより確実に固定することが可能となる。
【0055】
次に、本発明に係る第3の実施形態について説明する。図3は、第3の実施形態に係る動吸振器の取付構造を示す図であり、(a)は橋梁の正面図、(b)は橋梁の左側面図である橋梁を長手方向から見た正面図である。図に示すように、橋梁41は、第1の実施形態と同様に複数の橋脚(不図示)に掛け渡されて支持される一対のI型桁2,3を備えており、このI型桁2,3の上面には、列車が走行する線路が敷設されている。
【0056】
I型桁2,3の下面側には、I型桁2,3の長手方向に沿って複数のピアノ線などで構成されるPCケーブル43が掛け渡されており、このPCケーブル43とI型桁2,3との間には、動吸振器46,47が挟み込まれている。このPCケーブル43は、I型桁2,3の長手方向両端部であって、上フランジ部4,5が互いに重なり合う短手方向中央部に係止されているフック44及びフック45に結固定されており、所定の引張張力が与えられて軸力が作用している。なお、図3(a)では、分かりやすくするために、動吸振器46,47を図3(b)に対して大きく示している。
【0057】
次に、第3の実施形態に係る動吸振器の取付構造において、橋梁41に動吸振器46及び動吸振器47を取り付ける方法について説明する。
【0058】
まず、フック44,45を、I型桁2,3の長手方向両端部であって、上フランジ部4,5が互いに重なり合う短手方向中央部に係止し、PCケーブル43を、I型桁2,3の下面側を通るようにフック44,45に掛け渡す。
【0059】
そして、PCケーブル43とI型桁2,3との間に挟み込むように、動吸振器46,47をI型桁2,3の下面側に挿入し、この動吸振器46,47をI型桁2,3の下面に接着などで仮固定する。
【0060】
その後、フック44,45に掛け渡したPCケーブル43に所定の引張張力を与えてPCケーブル43とフック44,45とを固定する。このようにして、I型桁2,3に対するPCケーブル43の挟み込み力により、動吸振器46,47をI型桁2,3に固定する。
【0061】
このように、第3の実施形態に係る動吸振器の取付構造によれば、動吸振器46,47は、引張張力を受けてフック44,45間に掛け渡されるケーブルによって、桁2,3に挟み込まれるように固定されるため、橋梁41に対する加工を低減して、動吸振器46,47を橋梁41に固定することが可能となる。
【0062】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、第1の実施形態及び第2の実施形態では、取付部材をI型桁及び箱型桁に配置するために、キリンジャッキを回転させて取付部材を長くすることにより行ったが、取付部材に突っ張りによる軸力が作用するように配置することができれば如何なる方法で取付部材をI型桁及び箱型桁に配置してもよい。そのため、例えば、ジャッキなどでI型桁及び箱型桁を広げておき、取付部材の配置スペースよりも僅かに長い剛体の取付部材を挿入し、ジャッキにより広げたI型桁及び箱型桁を元の状態に戻してI型桁及び箱型桁に固定しても良い。また、取付部材として、突っ張り棒のような弾性伸縮可能な構造であって、自然長がI型桁及び箱型桁に配置する寸法よりも長いものを採用し、この取付部材を縮小させた状態でI型桁及び箱型桁に配置し、その後、取付部材の縮小を解除してI型桁及び箱型桁に固定するようにしても良い。
【0063】
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、キリンジャッキで取付部材の長さを調整する際、無負荷状態における長さを基準に行ったが、キリンジャッキを回転するために加えるトルク等を計測しておき、所定のトルクになるまでキリンジャッキを回転するようにしても良い。
【0064】
なお、取付部材及び支持梁の軸方向と、取付部材及び支持梁との間に隙間が生じる場合は、この隙間に楔などを打ち込むことで、隙間を埋めることができる。
【符号の説明】
【0065】
1…橋梁(構造物)、2,3…I型桁、8,9…下フランジ、10,11…傾斜面、14…動吸振器、15…取付部材、16…拘束部材、21…橋梁(構造物)、22…箱型桁、23…内側底面、24,25…内側側面、26…内側上面、27,28…動吸振器、30,35…取付部材(第2の取付部材)、33…取付部材(第1の取付部材)、41…橋梁(構造物)、43…PCケーブル(ケーブル)、46,47…動吸振器。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に動吸振器を取り付けて、前記構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、
軸力により前記構造物に固定される取付部材を有し、
前記動吸振器は、前記取付部材により構造物に固定されることを特徴とする動吸振器の取付構造。
【請求項2】
上フランジ部が互いに接続されて下方に延びる一対の桁を備える構造物に動吸振器を取り付けて、前記構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、
対向する前記桁間に配置され、横方向の突っ張りによる軸力により前記桁に固定される取付部材を有し、
前記動吸振器は、前記取付部材に固定されることを特徴とする動吸振器の取付構造。
【請求項3】
前記桁は、下フランジ部を備えるI型桁であって、前記下フランジ部には、対向するI型桁に向かって斜め下方に傾斜する傾斜面が形成されており、
前記取付部材は、対向する前記I型桁の前記傾斜面の間で突っ張り固定されていることを特徴とする請求項2に記載の動吸振器の取付構造。
【請求項4】
前記傾斜面と前記上フランジ部との間に配置され、縦方向の突っ張りによる軸力により前記取付部材が上方に移動するのを拘束する拘束部材を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の動吸振器の取付構造。
【請求項5】
中空構造の箱型桁を備えた構造物に動吸振器を取り付けて、前記構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、
対向する内側側面間で横方向の突っ張りによる軸力により、内側底面に載置された前記動吸振器を前記箱型桁に固定する第1の取付部材を有することを特徴とする動吸振器の取付構造。
【請求項6】
内側上面と内側底面との間で縦方向の突っ張りによる軸力により、前記動吸振器を前記箱型桁に固定する第2の取付部材を更に有することを特徴とする請求項5に記載の動吸振器の取付構造。
【請求項7】
構造物に動吸振器を取り付けて、前記構造物の振動を低減させる動吸振器の取付構造であって、
前記構造物との間に前記動吸振器を挟み込むように前記構造物に掛け渡され、引張軸力により前記動吸振器を前記構造物に固定するケーブルを有することを特徴とする動吸振器の取付構造。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−214315(P2011−214315A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83590(P2010−83590)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000221616)東日本旅客鉄道株式会社 (833)
【Fターム(参考)】