説明

動態管理装置

【課題】移動体の最適経路候補をリアルタイムに推定する。
【解決手段】各観測位置で検知される各移動体100の位置情報と各観測位置で検知される各移動体100のIDに基づき、各観測位置における各移動体100の存在確信度を算出し、算出した存在確信度に基づき、各移動体100の経路候補の確信度を算出して最適経路候補を推定する最適経路候補推定手段11と、推定された各移動体100の最適経路候補を保持する最適経路候補保持手段12と、保持された最適経路候補を出力する経路候補出力手段13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、人物等の複数の移動体の最適経路候補を、不確実性を含む複数の観測情報からリアルタイムに推定する動態管理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の動態管理装置として、特許文献1の移動体追跡装置では、識別部が移動体のID番号について部屋等の閉空間の出入り口で認識し、部屋に入った後は、追跡部がID番号は識別できないが、部屋の中の各移動体の位置を追跡し、情報融合部が出入り口で認識したID番号とこの部屋内の位置とを関連付けることによって、結果として、部屋の中における各移動体の位置をID番号と共に識別できることが記載されている。
【0003】
また、従来の動態管理装置として、特許文献2の撮影装置では、侵入物検出部が制御部を通じてメモリ部から読み出した参照画像(移動体がないときの入力画像)の特徴量データと撮影データの特徴量との差分を求め、差分が入力画像中に1個以上の移動体が存在することを示しているか否かを判定するための差分の閾値データ以上であれば、入力画像中に少なくとも1個以上の移動体が存在すると判定し、各移動体の特徴量データ、各移動体のIDデータ及び侵入物検出/識別ルールを制御部を通じて識別し、識別した移動体のIDデータを制御部に出力することが記載されている。
【0004】
また、従来の動態管理装置として、非特許文献1では、複数個所に配置された顔認証システム(ID特定センサ)において、それらの各時刻での認証データを基に、各移動体の動線(経路)を認識することが記載されている。
【0005】
【特許文献1】特開2003−274389号公報(要約 解決手段)
【特許文献2】特開平11−150677号公報(要約 解決手段)
【非特許文献1】平澤 宏祐、鹿毛 裕史、三輪 祥太郎、橋本 学、“時空間的無矛盾性を考慮したマルチポイント顔認証による動線認識”第11回画像センシングシンポジューム予稿集、画像センシング技術研究会、2005年、pp357−360.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の動態管理装置は以上のように構成され、例えば特許文献1では、出入り口に移動体のIDを認識するセンサを置き、移動体が出入り口を通過する瞬間に移動体の位置とIDを対応付けし、その後は移動体の追跡のみに依存してIDと位置を把握しており、また、例えば特許文献2では、陸上競技の中継システムのようなものを想定して、移動体(競技者)の位置とIDを複数の画像等から把握しており、これらの技術は何れも位置及びID検出の不確実性を考慮していない。すなわち、特許文献1では、出入り口でIDが検出できなかった場合や、閉空間内での追跡を失敗した場合に、その後の復帰ができず、また、特許文献2では、競技者のように限られた移動体であれば可能かも知れないが、バリエーションの多い通常の空間では適用が困難であるという課題があった。
【0007】
さらに、非特許文献1では、各箇所に配置された顔認証システム(ID検出センサ)のみを用いた経路認識であり、全ての情報がそろった状態での経路認識であるため、実際のシステムにおいて、次々と入力される情報に対してリアルタイムに結果を返すことができないという課題があった。
【0008】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、センサに存在する誤差や不確実性を許容しながら、移動体の最適経路候補をリアルタイムに推定することができる動態管理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係る動態管理装置は、各観測位置で検知される各移動体の位置情報と各観測位置で検知される各移動体のIDに基づき、各観測位置における各移動体の存在確信度を算出し、算出した各観測位置における各移動体の存在確信度に基づき、各移動体の経路候補の確信度を算出して各移動体の最適経路候補を推定する最適経路候補推定手段と、該最適経路候補推定手段により推定された各移動体の最適経路候補を保持する最適経路候補保持手段と、該最適経路候補保持手段により保持された各移動体の最適経路候補を出力する経路候補出力手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0010】
この発明により、センサに存在する誤差や不確実性を許容しながら、各移動体の最適な経路候補をリアルタイムに推定することができるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による動態管理装置を含む動態管理システムの構成を示す図である。この動態管理システムは、各観測位置に配置され各移動体100の位置を検知する複数の位置検知センサ20と、各観測位置に配置され各移動体100のIDを検知する複数のID検知センサ30と、複数の位置検知センサ20により検知された各移動体100の位置情報と複数のID検知センサ30により検知された各移動体100のIDに基づき、各移動体100の最適経路候補をリアルタイムに推定して出力する動態管理装置10を備えている。
【0012】
また、図1において、動態管理装置10は、複数の位置検知センサ20により検知される各移動体100の位置情報と複数のID検知センサ30により検知される各移動体100のIDに基づき、各移動体100の最適経路候補をリアルタイムに推定する最適経路候補推定手段11と、最適経路候補推定手段11により推定された各移動体100の最適経路候補を保持する最適経路候補保持手段12と、最適経路候補保持手段12により保持された各移動体100の最適経路候補を出力する経路候補出力手段13を備えている。
【0013】
なお、位置検知センサ20及びID検知センサ30は、その機能が達成されれば良いので、それらが一つの検知センサであっても良い。例えば画像センサを用いて、移動体の位置とIDを検知する技術は既に存在する。
【0014】
また、カードリーダーやバイオ認証装置等のその位置でしか移動体のIDを認証できない装置であれば、そのIDを持つ移動体がその時刻にその位置にいたことが分かるという意味で、位置検知センサ20及びID検知センサ30と等価と見て良い。
さらに、経路候補出力手段13の出力先は、計算機であっても、オペレータ等の人物にGUI(Graphical User Interface)形式で出力するものであっても良い。
【0015】
図1において、複数の移動体100が観測位置L1,L2,L3,・・・,Liと移動し、各観測位置L1,L2,L3,・・・,Liに設置された位置検知センサ20やID検知センサ30からの不確実性を含む観測結果O1,O2,O3,・・・,Oiが動態管理装置10の最適経路候補推定手段11に入力される。ここで、Liは観測位置を示すインデックスで、Oiは観測結果を示すインデックスである。
なお、観測位置L2では、位置検知センサ20のみが設置されている。
【0016】
最適経路候補推定手段11は、各観測位置に設置された位置検知センサ20により検知される各移動体100の位置情報と各観測位置に設置されたID検知センサ30により検知される各移動体100のIDに基づき、各観測位置における各移動体100の存在確信度を算出し、算出した各観測位置における各移動体100の存在確信度に基づき、各移動体100の経路候補の確信度を算出することにより、各移動体100の最適な経路候補をリアルタイムに推定する。
【0017】
図2は移動体100が取りうる経路の例を示す図である。図2に示す経路では、各移動体100は観測位置L1から観測位置L2を経由し、観測位置L3又は観測位置L4に移動するものとする。
【0018】
図3は最適経路候補推定手段11により算出され最適経路候補保持手段12に保持される各観測位置における各移動体100の存在確信度と各移動体100の経路候補の確信度の例を示す図であり、図3では、移動体(A)100及び移動体(B)100の複数の経路候補1,2,3,・・・,i,・・・Nについて、各観測位置(観測時刻順)L1,L2,L3,L4・・・における移動体(A)100及び移動体(B)100の存在確信度(例えば存在確率)と経路候補の確信度を示している。
【0019】
ここで、移動体(A)100及び移動体(B)100の経路候補として、例えば図2に示すような単純な経路を想定し、最適経路候補推定手段11により算出された各観測位置における各移動体100の存在確信度と各移動体100の経路候補の確信度が図3に示すような結果になった場合について説明する。
【0020】
まず、移動体(A)100と移動体(B)100がほぼ同時刻に観測位置L1において観測され、位置検知センサ20により移動体(A)100と移動体(B)100の位置が検出され、ID検知センサ30により移動体(A)100と移動体(B)100の各IDが検知されたとする。最適経路候補推定手段11は、観測位置L1に設置された位置検知センサ20により検知された各移動体100の位置情報とID検知センサ30により検知された各移動体100のIDに基づき、後述の方法により移動体(A)100と移動体(B)100の存在確信度を算出し、例えば得られた存在確信度が0.9とする。
【0021】
なお、観測位置L1において、位置検知センサ20及びID検知センサ30による移動体の計測は観測位置L1の入口から出口までの間に複数回行われるものとし、この複数回の計測は他の観測位置でも同様に行われる。図2の例では、移動体(A)100と移動体(B)100の経路として、観測位置L2を経由して観測位置L3又は観測位置L4に移動する経路とする。移動体(A)100と移動体(B)100はもちろん観測位置L1にとどまる可能性もあるが、簡単のためここでは考えない。
【0022】
次に、観測位置L2においては、ID検知センサ30が設置されていないため各移動体100のIDは計測できないが、移動体(A)100と移動体(B)100の観測位置L1における複数回の計測により、例えば、観測位置L1の出口に移動したときの順序を考慮し、最適経路候補推定手段11は、観測位置L2に設置された位置検知センサ20により検知される移動体(A)100の位置情報に基づき、観測位置L1と同様に移動体(A)100の存在確信度を算出する。このとき、最適経路候補推定手段11は、観測位置L2における出口付近の計測により移動体(A)100が観測位置L2から観測位置L3に移動する可能性が高いと判断し、図3における移動体(A)100の経路候補1の観測位置L2における移動体(A)100の存在確信度の欄に0.7と記載する。存在確信度0.7は移動体(A)100が観測位置L2から観測位置L3に移動する確率と考えた場合に、移動体(A)100が観測位置L2から観測位置L4に移動する確率は0.3となるので、最適経路候補推定手段11は、図3における移動体(A)100の経路候補2の観測位置L2における移動体(A)100の存在確信度の欄に0.3と記載する。
【0023】
最適経路候補推定手段11は、観測位置L2において、同様に移動体(B)100についても存在確信度0.8を算出し、図3における移動体(B)100の経路候補2の観測位置L2における存在確信度の欄に0.8と記載し、図3における移動体(B)100の経路候補1の観測位置L2における存在確信度の欄に0.2と記載する。
【0024】
このように、最適経路候補推定手段11は、各観測位置の出口付近における位置検知センサ20による各移動体100の位置の計測により、各移動体100がその観測位置から次にどの観測位置に移動したかを推定することができ、図3に示すように、各移動体100の各経路候補の各観測位置における各移動体100の存在確信度の欄に算出した存在確信度を記載する。
なお、位置検知センサ20が無い等で各移動体100の存在確信度が不明な場合には、最適経路候補推定手段11は、例えば存在確信度を一律に0.5と設定すれば良い。
【0025】
次に観測位置L3において、最適経路候補推定手段11は、観測位置L3に設置された位置検知センサ20により検知される各移動体100の位置情報とID検知センサ30により検知された各移動体100のIDに基づき、移動体(A)100と移動体(B)100の存在確信度を算出し、算出した移動体(A)100の存在確信度0.9と、算出した移動体(B)100の存在確信度0.1を図3に示すようにそれぞれの欄に記載する。
【0026】
さらに観測位置L4において、最適経路候補推定手段11は、同様に移動体(A)100と移動体(B)100の存在確信度を算出し、算出した移動体(A)100の存在確信度0.2と、算出した移動体(B)100の存在確信度0.8を図3に示すようにそれぞれの欄に記載する。
【0027】
次に最適経路候補推定手段11は、算出した各観測位置における移動体100の存在確信度に基づき、各経路候補の確信度を計算する。経路候補の確信度は、各観測位置における移動体100の存在確信度が、例えば存在確率を用いるのであれば、全体の存在確率、すなわち経路候補の確信度は、各存在確率の積、すなわち同時生起確率となる。このときの同時生起確率が図3に示す経路候補の確信度となる。
【0028】
図3において、移動体(A)100では経路候補1が最も経路候補の確信度が高く、移動体(B)100では経路候補2が最も経路候補の確信度が高い。したがって、現時点において、移動体(A)100はL1→L2→L3と移動し、移動体(B)100はL1→L2→L4と移動したと考えられる。
【0029】
次に最適経路候補推定手段11がベイズの定理を用いて各観測位置における移動体100の存在確信度を算出する方法について説明する。
位置検知センサ20が、例えば画像センサを使用して移動体100の有無による背景差分の方法で検出するものとし、画像中の特定の検知位置に対して、追跡対象に大人を想定しているのであれば平均的な大きさの大人が存在する場合に、その位置で観測される画像上のサイズを計算する。このサイズの計算はシミュレーションでも、実測でリアルタイムに計算することも可能であり、事前に計算してテーブル化しておいても良い。
【0030】
このとき、特定の位置(u,v)で計測される面積をS(u,v)とすると、この面積Sは、照明の差込等の外乱により面積Sが増加したり、反対に背景と対象とのコントラストが低くて面積Sが減少する二つの場合が存在する。ここで簡単のために実際に計測される面積Sが上記要因により真の面積Sを中心とするある分散を持つガウス分布を形成すると仮定すると、物体O(移動体100)が存在するときに面積Sが発生する確率P(S|O)を計算することができる。
【0031】
実際にその位置で観測されている追跡対象が持つ面積をS’とし、物体Oが発生する確率をP(O)とすると、ベイズの定理より、位置検知センサ20により面積S’が計測されたときの物体Oが発生する確率(これを確信度とみなす)P(O|S’)は、次の式(1)により算出される。
【数1】

ここで、物体Oが発生する確率P(O)は予め設定された定数で、P(S’)は面積S’が得られる確率で、物理的に拘束条件から予め設定された定数であり、P(S’|O)は物体Oを仮定したときの面積S’が発生する確率である。
【0032】
上記式(1)において、面積S’が得られる確率P(S’)は位置を特定すれば固定値と考えられるので、面積S’が計測されたときの物体Oが発生する確率P(O|S’)は、次の式(2)に示すように、物体Oを仮定したときの面積S’が発生する確率P(S’|O)と物体Oが発生する確率P(O)の積に比例する。
【数2】

なお、物体Oが発生する確率P(O)は事前知識のない状態では一定としても良いが、例えば、観測位置における出入り口に近い場所等、人物が出現する確率の高い場所では大きく、それ以外の場所では小さくして、より精度を高めることも可能である。
【0033】
上記式(1)により算出される面積S’が計測されたときの物体O(移動体100)が発生する確率P(O|S’)は、特定の位置(u,v)における確信度を示すものであり、各観測位置において複数回計測される個々の計測値毎の移動体100が発生する確率を示している。
【0034】
最適経路候補推定手段11は、上記式(1)により得られた面積S’が計測されたときの物体O(移動体100)が発生する確率P(O|S’)に基づき、次の式(3)により追跡開始から終了までの物体iの各観測位置における存在確信度Liを算出する。
【数3】

ここで、Tは追跡時間で、Tmaxはシステムとして扱いうる追跡時間の最大値であり、TがTmaxを超える場合には、T=Tmaxとする。また、Ωiは物体iの追跡開始から終了までの位置集合で、NΩiは集合要素の数である。
上記式(3)に示すように、追跡時間Tが長いほど各観測位置における存在確信度Liは大きな値となり、集合要素の数NΩiにより平均化されている。
【0035】
上記の例では、最適経路候補推定手段11が、位置検知センサ20により検知される各移動体100の位置情報とID検知センサ30により検知される各移動体100のIDに基づき、ベイズの定理を用いて各観測位置における移動体100の存在確信度を算出しているが、ID検知センサ30として例えばIDリーダを使用した場合には、センシングの確信度(信頼性)が装置の性能で決定されているので、最適経路候補推定手段11は、位置検知センサ20により検知される各移動体100の位置情報を使用せずに、ID検知センサ30の装置の性能で決定されるセンシングの確信度を、移動体100の存在確信度として使用する。
【0036】
また、ID検知センサ30としてバイオメトリクス装置を使用した場合には、最適経路候補推定手段11は、装置が公表しているFA(False Accept rate)値とFR(False Rejection rate)値を用いて、移動体100の存在確信度を計算することができ、基本的にIDが受理されたということはFR値については無視できるので、1−FAの確率で本人である(そのIDが正しい)という確信度となり、1−FAの値を移動体100の存在確信度として使用する。
【0037】
移動体100が各観測位置を移動し、新たな観測情報が得られた場合には、既存の経路候補のうち可能性のあるものについては再計算する。再計算は簡単であり、例えば確率であれば既に計算されている確率に観測で得られた確率を掛ければ良い。このようにすることで、次々と観測情報が得られる毎に経路候補を更新していくことが可能となる。
【0038】
経路の生成については、矛盾の無い経路でかつ全ての可能な組み合わせを考える。ただし、より複雑な経路においては、経路候補が多くなり組み合わせが爆発的に増大する。したがって、経路候補の確信度が低いものは削除したり、経路候補の確信度の大きなものを最大でN個だけ保持するといった対策を行う。
【0039】
また、今までに得られている全ての観測情報を用いるのではなく、例えば直近のn個の観測情報のみを用いたり、時間で切って古い観測を無視するという方法で候補を減らすこともできる。
【0040】
なお、上記以外に、リアルタイムに経路を推定する方法であればなんでも良く、例えば単純に最後の存在確信度を信頼する方法、例えば図3に示す移動体(A)100では、観測位置L3の存在確信度がその後でも最も高いので、経路候補1を最適経路候補としても良い。あるいは各観測位置をノードとするベイジアンネットワークを想定し、期待値の近似値を求めるような方法でも良い。
【0041】
図4は経路候補出力手段13による最適経路候補の出力例を示す図であり、図4では、最適経路候補推定手段11により算出され最適経路候補保持手段12に保持される各観測位置における各移動体100の存在確信度と各移動体100の経路候補の確信度の結果により、GUI表示し、ユーザがそれぞれの経路における詳細ボタンをクリックすることにより、最適経路候補保持手段12に保持されている各経路候補の内容詳細を確認できるようにしたものである。
【0042】
図4において、移動体(A)100については、L1→L2→L3の経路候補の確信度が最も高いので実線で表示し、L1→L2→L4の経路候補は点線で表示している。移動体(B)100についてはL1→L2→L4の経路候補の確信度が最も高いので実線で表示し、L1→L2→L3の経路候補は点線で表示している。このように、最適経路候補を一つだけ表示するのではなく、2番目以降の経路候補も複数表示することで、機械的に推定できなかった真の経路をユーザに確認してもらうことが可能となる。確認後、真の経路をユーザに確定してもらうことも可能である。
【0043】
また、最適経路候補をユーザに出力するのではなく、他のサーバにネットワークを経由して情報を送信し、別の処理、例えば経路データベースの作成等を行うこともできる。
【0044】
以上のように、この実施の形態1によれば、最適経路候補推定手段11が、各観測位置に設置された位置検知センサ20により検知される各移動体100の位置情報と各観測位置に設置されたID検知センサ30により検知される各移動体100のIDに基づき、各観測位置における各移動体100の存在確信度を算出し、算出した各観測位置における各移動体100の存在確信度に基づき、各移動体100の経路候補の確信度を算出することにより、センサに存在する誤差や不確実性を許容しながら、各移動体100の最適な経路候補をリアルタイムに推定することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】この発明の実施の形態1による動態管理装置を含む動態管理システムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1において移動体が取りうる経路の例を示す図である。
【図3】この発明の実施の形態1による動態管理装置の最適経路候補推定手段により算出された各観測位置における各移動体の存在確信度と各移動体の経路候補の確信度の例を示す図である。
【図4】この発明の実施の形態1による動態管理装置の経路候補出力手段による最適経路候補の出力例を示す図である。
【符号の説明】
【0046】
10 動態管理装置、11 最適経路候補推定手段、12 最適経路候補保持手段、13 経路候補出力手段、20 位置検知センサ、30 ID検知センサ、100 移動体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各観測位置で検知される各移動体の位置情報と各観測位置で検知される各移動体のIDに基づき、各観測位置における各移動体の存在確信度を算出し、算出した各観測位置における各移動体の存在確信度に基づき、各移動体の経路候補の確信度を算出して各移動体の最適経路候補を推定する最適経路候補推定手段と、
該最適経路候補推定手段により推定された各移動体の最適経路候補を保持する最適経路候補保持手段と、
該最適経路候補保持手段により保持された各移動体の最適経路候補を出力する経路候補出力手段とを備えた動態管理装置。
【請求項2】
最適経路候補推定手段は、各観測位置で検知される各移動体の位置情報として計測される移動体の面積により、面積が計測されるときの各移動体が発生する確率を算出し、各移動体の追跡時間を考慮して各観測位置における各移動体の存在確信度を算出することを特徴とする請求項1記載の動態管理装置。
【請求項3】
各観測位置で検知される各移動体のIDに基づき、各観測位置における各移動体の存在確信度を算出し、算出した各観測位置における各移動体の存在確信度に基づき、各移動体の経路候補の確信度を算出して各移動体の最適経路候補を推定する最適経路候補推定手段と、
該最適経路候補推定手段により推定された各移動体の最適経路候補を保持する最適経路候補保持手段と、
該最適経路候補保持手段により保持された各移動体の最適経路候補を出力する経路候補出力手段とを備えた動態管理装置。
【請求項4】
最適経路候補推定手段は、各移動体のIDを検知する装置で決定されるセンシングの確信度を、各移動体の存在確信度として使用することを特徴とする請求項3記載の動態管理装置。
【請求項5】
最適経路候補推定手段は、各移動体のIDを検知する装置で決定されるFA(False Accept rate)値に基づき、各観測位置における各移動体の存在確信度を算出することを特徴とする請求項3記載の動態管理装置。
【請求項6】
最適経路候補推定手段は、算出した各観測位置における各移動体の存在確信度を乗算して、各移動体の経路候補の確信度を算出することを特徴とする請求項1又は請求項3記載の動態管理装置。
【請求項7】
経路候補出力手段は、最適経路候補保持手段に保持されている各移動体の最適経路候補を参照可能となるように、各移動体の最適経路候補を複数出力することを特徴とする請求項1又は請求項3記載の動態管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−281792(P2007−281792A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104376(P2006−104376)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】