説明

動画像フェード検出装置及びフェード検出プログラム

【課題】従来のフェード検出装置では、総輝度値変化量と画面間差分値を、それぞれに定めた閾値α、閾値βと比較しているだけなので、動画像信号のシーンが水平方向に旋回するパンなどの動きの大きなシーンで誤検出をしてしまう。
【解決手段】フェード判断手段105は、総輝度値変化量算出手段103から入力される総輝度値変化量が予め定めた所定の閾値αより大で、かつ、総輝度値変化量が画面間差分値算出手段104から入力される画面間差分値に所定の比例定数Kを乗算した値よりも大であるという条件を満足する場合はフェード状態であると判定し、上記の条件を満足しない場合はフェード状態ではないと判定する。これにより、画面間差分値が大きいほど総輝度値変化量も大きくなることを考慮したフェード判定を行うことができ、精度の高いフェード検出を行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動画像フェード検出装置及びフェード検出プログラムに係り、特に動画像のフェードイン、フェードアウト、クロスフェードなどのフェード状態を検出するフェード検出装置及びフェード検出プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
動画像信号には、その動画像信号の表示画像を時間の経過と共に徐々に現していくフェードイン、表示画像を時間の経過と共に徐々に薄くしていくフェードアウト、表示画像の2つのシーンを時間の経過と共に徐々に切り替えるクロスフェードなどが含まれている場合がある。このようなフェードイン、フェードアウト、クロスフェードなどのフェード状態を精度良く検出することが、動画像の符号化などにおいて要求される。そこで、動画像信号からフェード状態を検出するフェード検出装置が従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ここで、従来のフェード検出装置について説明する。特許文献1記載の従来のフェード検出装置では、1フレーム分の現画像信号の総輝度値と、1フレーム分の直前画像信号の総輝度値との差分絶対値(以降、総輝度値変化量とする)を比較して、所定閾値αよりも大きく、なおかつ、現画像信号と直前画像信号との間で、空間的に同一位置にある画素の差分絶対値の集合(以降、画面間差分値とする)が所定閾値βよりも小さい場合に、フェード状態であると判断している。
【0004】
つまり、従来のフェード検出装置では、総輝度値変化量と画面間差分値をそれぞれ別々に比較して、図6に示すように、縦軸に総輝度変化量、横軸に画面間差分値で表される図において、閾値α以上の総輝度変化量で、かつ、閾値β以下の画面間差分値の動画像信号がフェード状態であるとするフェード検出を行っている。
【0005】
【特許文献1】特許第3724956号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、動画像信号は一般に画面間差分値が大きいほど総輝度値変化量も大きくなる性質があるが、従来のフェード検出装置では、上記の画面間差分値が大きいほど総輝度値変化量も大きくなることを考慮せず、総輝度値変化量と画面間差分値を、それぞれに定めた閾値α、閾値βと比較しているだけなので、動画像信号のシーンが水平方向に旋回するパンなどの動きの大きなシーンで誤検出をしてしまい、その結果フェード検出精度が低下してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、動きの大きなシーンでも正確にフェード状態を動画像信号から検出し得る動画像フェード検出装置及びフェード検出プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明は、動画像のフェード状態を検出するフェード検出装置において、現時点の動画像を示す現画像信号の一画面内の全画素又は予め定めた特定の複数の画素の輝度値の和である第1の総輝度値を算出する総輝度値算出手段と、現画像信号に対して1フレーム直前の画像信号に対して総輝度値算出手段により算出された第2の総輝度値と、第1の総輝度値との差分絶対値である総輝度値変化量を算出する総輝度値変化量算出手段と、現画像信号と1フレーム直前の画像信号との間で、それぞれ空間的に同一位置にある画素の差分絶対値の集合である画面間差分値を算出する画面間差分値算出手段と、総輝度値変化量が、所定の閾値よりも大で、かつ、画面間差分値をパラメータとして予め定めた単調増加関数Fにより求められた値よりも大であるという条件を満たすときフェード状態であると判定し、総輝度値変化量が条件を満たさないときは、フェード状態ではないと判定するフェード判定手段とを有することを特徴とする。
【0009】
また、上記の目的を達成するため、本発明のフェード検出プログラムは、コンピュータを上記の本発明のフェード検出装置を構成する各手段として機能させることを特徴とする。
【0010】
上記の本発明のフェード検出装置及びフェード検出プログラムは、総輝度値変化量と閾値との大小比較結果だけでフェード状態を判別するのではなく、総輝度値変化量が画面間差分値をパラメータとして予め定めた単調増加関数Fにより求められた値よりも大であるという条件を加えてフェード状態であると判定するようにしたため、画面間差分値が大きいほど総輝度値変化量も大きくなることを考慮したフェード判定が行える。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、画面間差分値が大きいほど総輝度値変化量も大きくなることを考慮したフェード判定を行うようにしたため、総輝度値変化量と閾値との大小比較結果だけでフェード状態を判別する場合に生じる、画面間差分値に比例して総輝度値変化量も大きくなる動きの大きなシーンをフェード状態と誤検出することを防止することができ、演算量が少なく、精度の高いフェード検出を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
次に、本発明の実施の形態について図面と共に説明する。図1は本発明になるフェード検出装置の一実施の形態のブロック図を示す。同図に示すように、本実施の形態のフェード検出装置は、総輝度値算出手段101と、総輝度値メモリ102と、総輝度値変化量算出手段103と、画面間差分値算出手段104と、フェード判断手段105とから構成されている。
【0013】
総輝度値算出手段101は、現画像信号の一画面の総輝度値を算出し、その総輝度値を総輝度値変化量算出手段103に供給すると共に、1フレーム前の直前画像信号の総輝度値として総輝度値メモリ102に記憶する。総輝度値メモリ102は、1フレーム前に総輝度値算出手段101で算出した総輝度値を記憶し、1フレーム毎に新たな総輝度値に更新される。
【0014】
総輝度値変化量算出手段103は、総輝度値算出手段101で算出した現画像信号の総輝度値と、総輝度値メモリ102に記憶している現画像信号に対して1フレーム直前の画像信号の総輝度値とから総輝度値変化量を算出し、その総輝度値変化量をフェード判断手段105に供給する。ここで、「総輝度値変化量」とは、図2に示すように、現画像201の総輝度値をA、1フレーム直前の画像202の総輝度値をBとしたとき、|A−B|で表される。
【0015】
画面間差分値算出手段104は、現画像信号と現画像信号に対して1フレーム直前の直前画像信号とから画面間差分値を算出し、フェード判断手段105に供給する。ここで、「画面間差分値」とは、図3に示すように、現画像信号による現画像301と直前画像信号による直前画像302のそれぞれにおいて、空間的に同一位置にある画素303と304の差分絶対値(SAD)を、画面内のすべての画素について加算した集合値である。なお、現画像301と直前画像302の空間的に同一位置にある画素の差分絶対値を、画面内の全ての画素でなく、予め定めた画素間隔に位置する特定の画素だけについて求めるようにしてもよい。なお、上記の総輝度値変化量も予め定めた特定の複数の画素の輝度値の和として求めてもよい。また、この場合、総輝度値変化量を求める特定の画素と差分絶対値を求める特定の画素とは必ずしも同じ画素である必要はない。
【0016】
また、図1のフェード判断手段105は、総輝度値変化量算出手段103で算出した総輝度値変化量と、画面間差分値算出手段104で算出した画面間差分値に所定の比例係数Kを乗算した値とを比較し、総輝度値変化量の方が大きく、かつ、所定の閾値以上である場合は、フェード状態であると判断し、それ以外の場合は、フェード状態ではないと判断し、その判断結果に基づくフェード判定結果を外部に出力する。
【0017】
次に、フェード判断手段105の動作について図4のフローチャート及び図5を参照して更に詳細に説明する。まず、フェード判断手段105は、総輝度値変化量算出手段103から入力される総輝度値変化量が予め定めた所定の閾値αより大で、かつ、総輝度値変化量が画面間差分値算出手段104から入力される画面間差分値に所定の比例定数Kを乗算した値よりも大であるという条件を満足するかどうか判定する(ステップS11)。上記の条件を満足する場合はフェード状態であると判定し(ステップS12)、上記の条件を満足しない場合はフェード状態ではないと判定する(ステップS13)。なお、上記の比例定数Kの値は、予め実験により求めておく。
【0018】
このフェード判定の条件を図示したのが図5である。図5は、縦軸が総輝度値変化量、横軸が画面間差分値を示しており、斜線Iは、画面間差分値に所定の比例定数Kを乗算した値の変化を示す。従って、上記のステップS11で判定する条件は、図5において、総輝度値変化量が予め定めた所定の閾値αを示す直線IIより総輝度値変化量が大きく、かつ、画面間差分値に所定の比例定数Kを乗算した値の変化を示す斜線Iより総輝度値変化量が大きな、図5にIIIで示す範囲内に総輝度値変化量及び画面間差分値が存在するかどうかを示している。
【0019】
ここで、フェード状態の時には、総輝度値変化量が大きくなるが、フェード状態ではなく、パンなどで動きの大きなシーンの場合にも総輝度値変化量は大きくなる。よって、総輝度値変化量の大小だけではフェード状態を判別することはできない。
【0020】
そこで、本実施の形態では、パンなどで動きの大きなシーンの場合に、総輝度値変化量が大きくなることによるフェード状態誤検出を防止するために、動きの大きなシーンでは、画面間差分値に比例して総輝度値変化量も大きくなることを利用して、図5に示すように、フェード判断手段105は、総輝度値変化量が閾値αより大きく、かつ、画面間差分値に比例係数Kを乗算した値を超える場合にのみ、すなわち、図5にIIIで示す範囲内に総輝度値変化量及び画面間差分値が存在する場合にのみフェード状態であると判断し(ステップS12)、総輝度値変化量が画面間差分値に比例係数Kを乗算した値以下の場合、又は総輝度値変化量が閾値α以下の場合は、フェード状態ではないと判断する(ステップS13)。
【0021】
このように、本実施の形態では、総輝度値変化量が閾値αよりも大きく、なおかつ、画面間差分値に比例係数Kを乗算した値よりも大きい時にフェード状態であると判定することで、画面間差分値が大きいほど総輝度値変化量も大きくなることを考慮した比較が行えるため、フェード検出精度が向上する。
【0022】
なお、本発明は以上の実施の形態に限定されるものではなく、例えば上記の図1に示したフェード検出装置の総輝度値算出手段101、総輝度値変換量算出手段103、画面間差分値算出手段104及びフェード判断手段105の各機能をコンピュータに実現させるためのフェード検出プログラムも含むのである。このフェード検出プログラムは、記録媒体から読み取られてコンピュータに取り込まれてもよいし、通信ネットワークを介して伝送されてコンピュータに取り込まれてもよい。また、比例係数Kは単調増加関数Fであればよく、実施の形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のフェード検出装置の一実施の形態のブロック図である。
【図2】総輝度値変化量の説明図である。
【図3】画面間差分値の説明図である。
【図4】図1中のフェード判断手段の動作説明用フローチャートである。
【図5】図1の実施の形態によるフェード判定の条件を示す図である。
【図6】従来のフェード判定の条件を示す図である。
【符号の説明】
【0024】
101 総輝度値算出手段
102 総輝度値メモリ
103 総輝度値変化量手段
104 画面間差分値算出手段
105 フェード判断手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
動画像のフェード状態を検出するフェード検出装置において、
現時点の前記動画像を示す現画像信号の一画面内の全画素又は予め定めた特定の複数の画素の輝度値の和である第1の総輝度値を算出する総輝度値算出手段と、
前記現画像信号に対して1フレーム直前の画像信号に対して総輝度値算出手段により算出された第2の総輝度値と、前記第1の総輝度値との差分絶対値である総輝度値変化量を算出する総輝度値変化量算出手段と、
前記現画像信号と前記1フレーム直前の画像信号との間で、それぞれ空間的に同一位置にある画素の差分絶対値の集合である画面間差分値を算出する画面間差分値算出手段と、
前記総輝度値変化量が、所定の閾値よりも大で、かつ、前記画面間差分値をパラメータとして予め定めた単調増加関数Fにより求められた値よりも大であるという条件を満たすときフェード状態であると判定し、前記総輝度値変化量が前記条件を満たさないときは、フェード状態ではないと判定するフェード判定手段と、
を有することを特徴とするフェード検出装置。
【請求項2】
動画像のフェード状態をコンピュータにより検出させるフェード検出プログラムにおいて、
前記コンピュータを、
現時点の前記動画像を示す現画像信号の一画面内の全画素又は予め定めた特定の複数の画素の輝度値の和である第1の総輝度値を算出する総輝度値算出手段と、
前記現画像信号に対して1フレーム直前の画像信号に対して前記総輝度値算出手段により算出された第2の総輝度値と、前記第1の総輝度値との差分絶対値である総輝度値変化量を算出する総輝度値変化量算出手段と、
前記現画像信号と前記1フレーム直前の画像信号との間で、それぞれ空間的に同一位置にある画素の差分絶対値の集合である画面間差分値を算出する画面間差分値算出手段と、
前記総輝度値変化量が、所定の閾値よりも大で、かつ、前記画面間差分値をパラメータとして予め定めた単調増加関数Fにより求められた値よりも大であるという条件を満たすときフェード状態であると判定し、前記総輝度値変化量が前記条件を満たさないときは、フェード状態ではないと判定するフェード判定手段と、
して機能させることを特徴とするフェード検出プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−97474(P2008−97474A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280873(P2006−280873)
【出願日】平成18年10月16日(2006.10.16)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】