説明

動画再生装置

【課題】 動画データの早送り再生時、巻き戻し再生時、特殊再生時等において、コンテンツの画面変化の特性に応じて最適な再生画面を提供する。
【解決手段】 MPEGなどの画像データの再生において、空き時間を利用して、画像データを先読みして、管理テーブルを生成し、所定のブロックデータ毎に画像変化量を設定しておく。そして、早送りや巻き戻しの際に、画像変化量の小さな部分は高速早送り再生や高速巻き戻し再生する制御を行うことで、早送り再生や巻き戻し再生においても視聴者がコンテンツを把握しやすいようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動画データの早送り、巻き戻し時の再生に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の動画データの再生技術では、早送り、巻き戻し機能を有しているものが多いが、このような早送り、巻き戻し制御は時間単位で行われたり、一定速度を維持するようになっているため、画面の切り替わりが激しいシーンの場合には、視聴者が早送り時、巻き戻し時には画面を認識できないといった問題があった。
【0003】
このような動画再生に関連した技術として、特開平9−311695号公報(特許文献1)および特開2001−101063号公報(特許文献2)がある。
【0004】
前者(特許文献1)は、半導体メモリに所定の時間長さであるフレーム単位で記録された符号化データを復号化して早送り再生するもので、早送り再生処理のときには、半導体メモリに記録した符号化データを所定のフレーム間隔毎に読み出し、読み出した第1フレームの符号化データと、第1フレームの後に続く第2、第3、第4フレームの符号化データとを用いて時間軸圧縮処理を施して再生したものである。
【0005】
後者(特許文献2)は、データ通信が断続的に発生する通信システムにおいて、通信が切断状態にある場合に、その空き時間を利用して、次に端末から要求される可能性のあるデータを、設定された先読み属性値に基づいて、データ提供側から先読みするようにしたものである。
【特許文献1】特開平9−311695号公報
【特許文献2】特開2001−101063号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前者(特許文献1)は、時間軸圧縮を行うことにより、再生された内容が理解できなくても有音と無音とを区別できるので所望の位置で装置を停止させることができる利点があるものの、視聴者は一般に、音声よりも画面の変化によってその内容を把握するものである。
【0007】
また、後者(特許文献2)は、単にネットワークを介して断続的にデータを受信する際に、切断状態のときにその空き時間を利用してデータをサーバ等から先読みする技術を述べているだけで、これが動画データである場合に、早送り時、巻き戻し時の画面の認識について考慮したものではなかった。
【0008】
本発明は、動画データの再生において、早送り時、巻き戻し時、特殊再生時にもコンテンツの画面変化の特性に応じて最適な再生画面を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明では、以下の手段を採用した。
【0010】
すなわち、圧縮形式の動画データを再生する動画再生装置であって、圧縮形式の動画データを記憶する第1の記憶手段と、前記第1の記憶手段から前記動画データを読み出して、所定時間毎のデータの変化量を変化量情報として記憶する第2の記憶手段と、前記第1の記憶手段から前記動画データを読み出して、復号化する復号化手段と、前記復号化され
た動画データを表示用データに変換する変換手段と、前記第1および第2の記憶手段、復号化手段および変換手段を制御する制御手段とからなり、前記制御手段は、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出するときに、前記第2の記憶手段に記憶された変化量情報を参照して変換手段に送出する動画データを制御するようにしたものである(請求項1)。
【0011】
このように動画データの変化量情報を利用して動画データの再生を行うことにより、その変化量の変化に最適な再生制御を実現することができる。
【0012】
また、前記変化量情報を、単位時間当たりの画面の変化量の大小としたものである(請求項2)。
【0013】
このように単位時間当たりの画面の変化量の大小によって動画データの再生を制御することによって、画面の変化にとって最適な状態で動画データを再生させることが可能となる。
【0014】
また、前記変化量情報は、単位時間当たりの画面の変化量があらかじめ設定された基準値よりも大きいか小さいかの情報であり、該基準値は任意に設定可能としてよい(請求項3)。
【0015】
また、前記基準値を、複数の単位時間あたりのデータが最大のものと最小のものの中間値としたものである(請求項4)。
【0016】
このように、基準値を基準に画面の変化量の大小を峻別することによって、簡易な基準で画面の変化にとって最適な状態で動画データを再生させることが可能となる。
【0017】
また、前記制御手段によって、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を高くして、単位時間当たりのデータ変化量が大きいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を低くして前記復号化された動画データを前記変換手段に送出するようにした(請求項5)。
【0018】
これによって、画像の変化が小さい場面では高速で早送り再生が行われ、画面の変化が大きい場面では低速での早送り再生が行われるため、早送り再生時に視聴者の目が疲れることなくコンテンツの把握が容易となる。
【0019】
また、制御手段によって、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を低くして、単位時間当たりのデータ変化量が大きいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を高くして前記復号化された動画データを前記変換手段に送出するようにしてもよい(請求項6)。
【0020】
この場合には、たとえばドラマのなどのように出演者のセリフ部分が重要であり、移動シーン等は物語のあらすじに関係のないコンテンツにおいて、視聴者にとって、早送り再生でコンテンツ内容を把握することが容易となる。
【0021】
また、前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の小さいデータ部分が、あらかじめ設定された所定時間よりも長くなると当該データ部分の早送り再生(または巻き戻し再生)を途中で中断して、次のデータ変化量の大きい部分から早送り再生(または巻き戻し再生)を再開するようにしてもよい(請求項7)。
【0022】
これによれば、画面の変化量の小さい場面が続く場合には、当該再生を中断して画面の変化量の大きい場面にスキップすることができ、視聴者のコンテンツ内容の把握が容易となる。
【0023】
また、前記制御手段は、前記でスキップ後に再生を再開するときには、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の小さいデータ部分を早送り再生(または巻き戻し再生)するときには、当該早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を高くして前記復号化された動画データを前記変換手段に送出するようにしてもよい(請求項8)。
【0024】
スキップ再生時にも画像の変化が小さい場面では高速で早送り再生が行われ、画面の変化が大きい場面では低速での早送り再生が行われるため、早送り再生時に視聴者の目が疲れることなくコンテンツの把握が容易となる。
【0025】
また、早送り再生または巻き戻し再生を中断するまでの前記設定時間は、任意に設定可能としてよい(請求項9)。
【0026】
また、前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の小さいデータの部分のみについて、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出するようにしてもよい(請求項10)。
【0027】
つまり、早送り再生等において、画面のデータ変化量の大きなデータ部分は再生せずに、画面のデータ変化量の小さなデータ部分のみを再生することによって、画面の過激な変化により視聴者の目を疲れさせることなく、コンテンツ全体を把握させることが可能となる。
【0028】
また、前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の大きいデータの部分のみについて、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出するようにしてもよい(請求項11)。
【0029】
これにより、アクション映画等のように画面の変化のみで内容を把握できるコンテンツの早送り再生が実現できる。
【0030】
また、前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の大きいデータ部分のみが一定時間続くときには、当該大きいデータ部分の中でも単位時間当たりのデータ変化量の小さいデータ部分を抽出して、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出して再生させるものである(請求項12)。
【0031】
これにより画面の変化が長く続くコンテンツであっても、早送り再生時に大きいデータ部分ばかりのために再生画像がまったく抽出されない不都合を防止することができる。
【0032】
また、前記制御手段において、早送り再生を定期的に間引いた動画データを前記変換手段に送出することで行う際に、間引いた後の早送り再生を再開するデータ部分が基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が大きいデータ部分である場合には、その前後のデータ変化量の小さいデータ部分から早送り再生を再開するようにした(請求項13)。
【0033】
これによれば、スキップ再生する場合に、データ再生の再開位置を常に画像の変化量の少ない位置とすることができ、早送り再生時に画像が急激に変化することを防止できる。
【0034】
また、前記制御手段において、早送り再生を定期的に間引いた動画データを前記変換手
段に送出することで行う際に、間引いた後の早送り再生を再開するデータ部分が基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さいデータ部分である場合には、その前後のデータ変化量の大きいデータ部分から早送り再生を再開するようにしてもよい(請求項14)。
【0035】
また、前記制御手段において、巻き戻し再生または特定倍速再生において、定期的に間引いた動画データを前記変換手段に送出することで行う際に、間引いた後の再生を再開するデータ部分が基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さい(または大きい)データ部分である場合には、その前後のデータ変化量の大きい(または小さい)データ部分から再生を再開してもよい(請求項15)。
【0036】
このように、巻き戻し再生または1.5倍速のような特殊再生の場合にも本発明を適用することで、早送り再生と同様の効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、動画データの早送り再生時、巻き戻し再生時、特殊再生時等において、コンテンツの画面変化の特性に応じて最適な再生画面が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
本発明の実施形態を図を用いて説明する。
図1は、本実施形態のシステム構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態は、メインバス1を中心に、中央制御装置10、インターフェース2を介して記憶媒体3、RAM4、ROM5、一時記憶領域6、デコーダ7、表示用データ変換部8等が接続されている。
【0039】
ROM5は初期プログラムや初期データを格納する領域であり、中央制御装置10はこれらのプログラムをメインバス1を介して読み込んで実行処理する。なお、図示は省略してあるが、表示用データ変換部8には、液晶ディスプレイ等の表示装置が接続されている。
【0040】
動画データは記憶媒体3に格納されている。この記憶媒体3は、CD、CD−R、CD−RW、DVD、DVD−RW、DVD−RAM、MO、ハードディスク等の光または磁気記憶媒体、SDカード(商標名)、メモリースティック(商標名)、MMC(商標名)等の小型可搬型メモリ等である。
【0041】
また、これらの記憶媒体3に格納される動画データは、MPEG1、MPEG2、MPEG4、ASF、MOV、AVI、WMV等の形式の動画データである。
【0042】
上記システム構成において、中央制御装置10は、記憶媒体3に格納された動画データをインターフェース2およびメインバス1を介して一時記憶領域6に読み込ませる。この段階で、前記動画データは所定の形式の圧縮状態となっている。
【0043】
そして、次に中央制御装置10は、一時記憶媒体3の動画データをメインバス1を介して順次デコーダ7に読み込ませて、復号させる。復号化された動画データは、RAM4または一時記憶領域6に記憶される。
【0044】
次に、中央制御装置10は、前記一時記憶領域6またはRAM4に記憶された復号済の動画データを、メインバス1を介して表示用データ変換部8に転送する。
【0045】
表示用データ変換部8では、前記復号された動画データを、NTSC信号(Natio
nal TV Standards Committee type signal)に変換して、図示しないディスプレイ装置に送出する。
【0046】
この実施形態では、中央制御装置10は、前記の処理と並行して、その空き時間に記憶媒体3または一時記憶領域6に格納された圧縮状態の動画データを解析することが特徴である。以下、詳しく説明する。
【0047】
図2および図3は、本実施形態における画面の変化量を解析する概念を説明するための図である。
図2は、前記中央制御装置10が記憶媒体3または一時記憶領域6に格納された圧縮状態の動画データを解析する際に、単位時間当たりのデータの変化量の小さいデータを示したものである。
【0048】
ここではあらかじめ、データサイズのしきい値Dsが設定されており、同図に示すようにデータサイズBは、単位時間(a時間)分のデータ量がしきい値Dsよりも小さいために画面変化量の小さい動画データとして中央制御装置10が認識するようになっている。
【0049】
一方、図3は、単位時間当たりのデータの変化量が大きいデータ構造を示したものである。ここでは、データサイズCは、単位時間(a時間)分のデータ量がしきい値Dsよりも大きいために画面変化量の大きい動画データとして中央制御装置10が認識するようになっている。
【0050】
このしきい値Dsは、中央制御装置10が複数の単位時間当たりのデータ量を計算し、このデータ量が最大のものと最小のものとを抽出し、その中間値をしきい値Dsとして設定することができる。すなわち、図2において、データサイズBが最小のもので、データサイズCが最大のものであると仮定した場合、この中間値がしきい値Dsとなる。すなわち、しきい値Ds=(B+C)/2で求めることができる。
【0051】
同図に示した例は、MPEG方式のように前後の画面の差分に着目してデータ圧縮を行う形式の動画データに有効である。
【0052】
記憶媒体3または一時記憶領域6に格納されている動画データに対して、これを管理する管理テーブル11(図15)を前記一時記憶媒体3またはRAM4に設けて、アドレス1A〜1Dのデータが画面変化が大きいデータ部分、アドレス1D〜1Eが画面変化が小さいデータとして管理すればよい。
【0053】
この方法によれば、中央制御装置10は空き時間を利用して管理テーブル11(図15)を生成しておく。そして、記憶媒体3または一時記憶領域6から動画データを読み込む際に、前記管理テーブル11を参照して、そのアドレスに格納された動画データ毎に画面変化の大小を識別することが可能となる。
【0054】
なお、中央制御装置10は、管理テーブル11(図15)を用いることなく、しきい値Dsとの比較をリアルタイムに行いながら、動画データの画面変化量の大小を識別するようにしてもよい。
【0055】
このような処理の手順を示したものが図4の処理フローである。
同図において、まず中央制御装置10は、空き時間が発生すると(START)、記憶媒体3または一時記憶領域6に格納されている動画データ(MPEG)の解析を開始する(401)。ここで解析とは、動画データの単位時間当たりのデータ量を認識する処理である(402)。実際には圧縮状態の動画データをRAM4に記憶してあるプログラムに
よってソフトウエア的に擬似的に復号・再生することによって、単位時間当たりのデータ量を計数する。なお、ハードウエアに余裕があれば、メインバスに解析用のハードウエアデコーダ7を接続して、解析を行ってもよい。
【0056】
そして、中央制御装置10は、このようにして計数された単位時間当たりのデータ量を、あらかじめRAM4または一時記憶領域6に設定されているしきい値Dsと比較する(403)。
【0057】
この結果、しきい値よりも小さければ(データサイズBの場合)、当該動画データ部分は画面変化量の小さいデータ部分であると認識する(404)。また、しきい値よりも大きければ(データサイズAの場合)、当該動画データ部分は画面変化量の大きいデータ部分であると認識する(405)。
【0058】
図5は、前記の結果、データ変化量の大小が識別されたデータの再生方法について説明するための図である。
同図において、中央制御装置10の解析の結果、動画データのアドレス1A〜1D,1E〜2Eは画面変化量が大と判定され、1D〜1E,2E〜は画面変化量が小と判定されている。このような判定結果情報は前述の一時記憶領域6またはRAM4に設定された管理テーブル11(図15の変化量フラグとして)に格納されているものとする。
【0059】
そして、中央制御装置10は、記憶媒体3または一時記憶領域6から圧縮前の動画データを読み込んで、デコーダ7に引き渡す。デコーダ7では前記動画データを復号化して、RAM4または一時記憶領域6に記録する。ここで、中央制御装置10は、前記管理テーブル11(図15)において、復号前(圧縮状態データ)アドレスに対応した復号後のアドレスを登録する。図5の場合、具体的には、復号前(圧縮状態データ)のアドレス1Aに対応してBA、1Dに対応してCA、1Eに対応してDA、2Eに対応してEAがそれぞれ登録されている。
【0060】
同図において、変化量フラグが1のアドレス領域に登録された動画データ部分は、画面の変化量が大であるため、早送り再生時には、通常の早送り速度よりも低速度で再生するよう制御(低速早送り)され、変化量フラグが0のアドレス領域に登録された動画データ部分は、画面の変化量が小さいため、早送り再生時には、通常の早送り速度またはそれよりも高速で再生するよう制御(高速・通常早送り)される。
【0061】
より具体的には、早送り制御は、同図に示すように、定期的に間引いたデータ(1/n)を一時記憶領域6(またはRAM4)から読み出して表示用データ変換部8に送出する処理を行うことで実現されるが、中央制御装置10は、このときに低速早送りの動画像データを再生するときには、間引き率を高くする制御を行う。具体的には、中央制御装置10は、一時記憶領域6(またはRAM4)の復号化された画像データに対して、単位時間当たりに2倍の間引き部分(2×1/n)を挿入しながら表示用データ変換部8に送出する。
【0062】
このような処理により、動画時の画面の変化量の大きい部分は早送り再生時に低速で再生され、画面の変化量が小さい部分は早送り再生時に高速・通常速度で再生されるようになる。
【0063】
このように画面変化量の少ない部分を高速早送りする制御は、特に、アクション映画等のように画面の変化が激しいコンテンツの早送り再生に有効である。
【0064】
図6は、図5とは逆に、動画時の画面の変化量の大きい部分は早送り再生時に高速・通
常速度で再生し、画面の変化量が小さい部分は早送り再生時に低速で再生するようにした例である。管理テーブル11の構成は図5と同じであるが、中央制御装置10の間引き処理が前記図5とは逆になる。
【0065】
すなわち、変化量フラグが1のアドレス領域に登録された動画データ部分は、画面の変化量が大であるため、早送り再生時には、通常の早送り速度よりも高速で再生するよう制御(高速・通常早送り)し、変化量フラグが0のアドレス領域に登録された動画データ部分は、画面の変化量が小さいため、早送り再生時には、通常の早送り速度またはそれよりも高速で再生するよう制御(高速・通常早送り)するものである。
【0066】
このような再生方法は、ドラマなどのように出演者のセリフ部分が重要であり、移動シーン等は物語のあらすじに関係のないコンテンツの早送り再生に有効である。
【0067】
より具体的には、早送り制御は、同図に示すように、定期的に間引いたデータ(1/n)を一時記憶領域6(またはRAM4)から読み出して表示用データ変換部8に送出する処理を行うことで実現されるが、中央制御装置10は、このときに高速早送りの動画像データを再生するときには、間引き率を高くする制御を行う。具体的には、中央制御装置10は、一時記憶領域6(またはRAM4)の復号化された画像データに対して、単位時間当たりに2倍の間引き部分(2×1/n)を挿入しながら表示用データ変換部8に送出することによって行う。
【0068】
図7は、中央制御装置10が、動画データを先読みした結果、単位時間当たりの画面変化量が少ない部分が一定時間以上続くと認識した場合に、画面変化量が少ないデータ部分の早送り再生を途中で中止し、次のデータ変化アドレスまで早送り再生をスキップして再度早送り再生を継続する場合を説明するための図である。
【0069】
中央制御装置10は、管理テーブル11を参照しながら、画面変化量の少ない(変化量フラグ=0)に設定されたアドレスの動画データを早送り再生しているときに、当該早送り再生が基準時間Tcを経過したときに、この早送り再生を一旦中断して、管理テーブル11を参照して次の画面変化量が大きくなる(変化量フラグ=1となる)アドレスを検索し、このアドレスから動画データを読み出して、再度早送り再生を継続する。
【0070】
一方、図8は、中央制御装置10が、動画データを先読みした結果、単位時間当たりの画面変化量が少ない部分が一定時間以上続くと認識した場合に、画面変化量が少ないデータ部分の早送り再生を途中で中止する点は図7と同様であるが、次の画面変化量が大きくなるアドレス(変化量フラグ=1)からのアドレスの動画データの再生を、低速早送り再生(図5参照)にて行う点が異なる。
【0071】
なお、このような基準時間Tcの設定は、たとえば0.5秒、1秒といった固定的なものでなくてもよく、画面変化量の小さいデータ部分の全体再生時間の1/2に設定することも可能である。このような基準時間Tcの設定はユーザが外部入力手段(キーボードや操作ボタン)等を用いて任意に設定できるようにしてもよい。
【0072】
図9は、中央制御装置10が、一時記憶領域6またはRAM4上に読み込んだ動画データ(復号前)を解析して管理テーブル11を生成した段階で、早送り再生中となったときに、画面変化量の小さいデータ部分(変化量フラグ=0のアドレス部分)のみをデコードする例を説明したものである。
【0073】
すなわち、中央制御装置10は、管理テーブル11が生成された後に、管理テーブル11を参照して変化量フラグ=0のアドレス領域にある動画データのみを再度一時記憶媒体
3または一時記憶領域6から読み込んでデコーダ7に引き渡す処理を行う。
【0074】
このような制御を行うことにより、早送り再生時に画面変化量の小さいデータ部分のみが早送り再生されることになり、ドラマ等の画面変化の少ないコンテンツの早送り再生に適した再生制御が可能となる。また、画面変化量の大きなデータ部分をデコードしていないため、視聴者の目を疲労させることのない早送り再生も可能になる。
【0075】
一方、図10は、前記図9とは逆に、中央制御装置10が、一時記憶領域6またはRAM4上に読み込んだ動画データ(復号前)を解析して管理テーブル11を生成した段階で、早送り再生中となったときに、画面変化量の大きいデータ部分(変化量フラグ=1のアドレス部分)のみをデコードする例を説明したものである。
【0076】
すなわち、中央制御装置10は、管理テーブル11が生成された後に、管理テーブル11を参照して変化量フラグ=1のアドレス領域にある動画データのみを再度一時記憶媒体3または一時記憶領域6から読み込んでデコーダ7に引き渡す処理を行う。
【0077】
このような制御を行うことにより、早送り再生時に画面変化量の大きいデータ部分のみが早送り再生されることになり、アクション映画等の画面変化の大きい部分が重要なコンテンツの早送り再生に適した再生制御が可能となる。そして、この画面変化の大きいデータ部分の早送り再生を低速早送り再生(図5参照)すれば、画面変化が激しくても視聴者にとって見やすいデータ再生が可能となる。
【0078】
ところで、図9に示したように、早送り再生時に画像の変化量が大きい部分の再生を行わない制御を実行した場合、常に画像変化量の大きいシーンが連続するコンテンツでは、デコードされるべきデータが存在しない場合が考えられる。
【0079】
そこで、図11では、画面変化量をさらに詳細に解析して、所定時間内Ttの中で画像変化量が大きいブロックの中でもさらにデータ変化量の小さいブロック(左から4番目のブロック)だけをデコードすることを許可するようにしたものである。
【0080】
これを実現するためには、具体的には管理テーブル11に変化量フラグに換えて、所定のデータブロック毎にデータ変化量を数値化して登録して、中央制御装置10がこのデータ変化量を参照してデコードするデータ領域を決定すればよい。
【0081】
また、管理テーブル11の変化量フラグを3〜5段階程度に設定できるようにして、所定のデータ再生時間(Tt)内でその中の最も少ないフラグ値のみをデコードするようにしてもよい。
【0082】
さらに、中央制御装置10は、しきい値Ds(図2参照)を動的に変化させて、一定時間(Tt)内に必ず再生される(フラグ値=0)となるようにしてもよい。また、このしきい値Dsを一時記憶領域6内またはRAM4内に複数保持するようにしてもよい。
【0083】
図12および13は、早送り再生時において、動画データを時間単位で間引いてデコーダ7に転送する場合の例を示す図である。
【0084】
早送り再生においては、図12に示すように、中央制御装置10は、データのA,C,Eのみを再生するようになっている。ここで、たとえば、A〜Eの動画データを21秒分の再生データであるとすると、Aが開始位置から0〜1秒、Bが10〜11秒、Cが20〜21秒の部分となり、合計3秒の早送り再生データとなる。
【0085】
ここで、Aの部分の早送り再生を終了した後、Cの部分の再生を開始する段階(アドレスBBB)で、Cのデータ構成が図13に示すように、画像変化量が大(変化量フラグ=1)のブロックデータが先頭位置となっているときには、中央制御装置10は、その前に存在するBの部分の最後のデータブロックを検証し、この部分の画面変化量が小(変化量フラグ=0)であれば、そのBの部分の最後のブロックの先頭アドレス(アドレスAAA)からの画像データをデコーダ7に送出して、早送り再生を再開する。このとき、中央制御装置10は、管理テーブル11を参照して変化量フラグの値からそのブロックの画像変化量の大小を判定することができるようになっている。
【0086】
この説明では、画面変化量が小となる部分から早送り再生を再開する例で説明したが、これに限られず、逆に画面変化量が大となる部分から早送り再生を再開してもよい。
【0087】
図14は、図13の制御を巻き戻し再生で行った場合の例を説明したものである。
【0088】
図12において、Cの部分の巻き戻し再生を終了した後、Aの部分の巻き戻し再生を開始する段階(アドレスCCC)で、Cのデータ構成が図14に示すように、画像変化量が大(変化量フラグ=1)のブロックデータが巻き戻し再生開始位置となっているときには、中央制御装置10は、その前に存在するBの部分のデータブロック(図ではBの先頭位置)を検証し(管理テーブル11の変化量フラグを参照して)、この部分の画面変化量が小(変化量フラグ=0)であれば、そのBの部分の先頭ブロックの最終アドレス(アドレスDDD)からの画像データをデコーダ7に送出して、巻き戻し再生を再開する。
【0089】
このように、本実施形態では、中央制御装置10は、空き時間に画像データを先読みして、管理テーブル11を生成し、所定のブロックデータ毎に画像変化量フラグを設定しておくことにより、変化量の大小に応じた早送り再生、巻き戻し再生を行うことができる。
【0090】
なお、本実施形態では、早送り再生を例に、高速早送り再生と低速早送り再生とを説明したが、巻き戻し再生であってもよいことは勿論である。この場合、高速早送り再生を高速巻き戻し再生、低速早送り再生を低速巻き戻し再生と読み替えれば同様に実施可能である。
【0091】
また、本実施形態の早送り再生を通常の再生、または特殊再生(1.5倍速再生等)に適用してもよいことは勿論である。この場合、本実施形態中の「早送り再生」を「通常再生」、「特殊再生(たとえば1.5倍速再生等)」と読み替えてもよい。すなわち、通常再生時にも中央制御装置10が管理テーブル11を参照することによって、画面変化量の大きいデータ部分と画面変化量の小さいデータ部分とで再生の仕方を変化させることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、動画データの早送り再生や巻き戻し再生等の特殊再生に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明の動画再生装置のシステム構成を示すブロック図である。
【図2】画面の変化量を説明するためのデータサイズを示す図(1)である。
【図3】画面の変化量を説明するためのデータサイズを示す図(2)である。
【図4】中央制御装置による画面変化量の大小の判断手順を示すフロー図である。
【図5】動画データ(圧縮状態)と復号データとの関係を示す説明図(1)である。
【図6】動画データ(圧縮状態)と復号データとの関係を示す説明図(2)である。
【図7】動画データの早送り再生時のスキップ再生について説明するための図(1)である。
【図8】動画データの早送り再生時のスキップ再生について説明するための図(2)である。
【図9】動画データの早送り再生時に、画面の変化量の小さなデータ部分のみを再生する場合の説明図である。
【図10】動画データの早送り再生時に、画面の変化量の大きなデータ部分のみを再生する場合の説明図である。
【図11】動画データの早送り再生時に、画面の変化量の大きなデータ部分のみが連続する場合の対応を示す図である。
【図12】動画データのスキップ再生について説明するための図である。
【図13】動画データのスキップ再生において再生を再開するときの制御方法を示す図(1)である。
【図14】動画データのスキップ再生において再生を再開するときの制御方法を示す図(2)である。
【図15】管理テーブルの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0094】
1 メインバス
2 インターフェース
3 記憶媒体
4 RAM
5 ROM
6 一時記憶領域
7 デコーダ
8 表示用データ変換部
10 中央制御装置
11 管理テーブル


【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮形式の動画データを再生する動画再生装置であって、
圧縮形式の動画データを記憶する第1の記憶手段と、
前記第1の記憶手段から前記動画データを読み出して、所定時間毎のデータの変化量を変化量情報として記憶する第2の記憶手段と、
前記第1の記憶手段から前記動画データを読み出して、復号化する復号化手段と、
前記復号化された動画データを表示用データに変換する変換手段と、
前記第1および第2の記憶手段、復号化手段および変換手段を制御する制御手段とからなり、
前記制御手段は、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出するときに、前記第2の記憶手段に記憶された変化量情報を参照して変換手段に送出する動画データを制御することを特徴とする動画再生装置。
【請求項2】
前記変化量情報は、単位時間当たりの画面の変化量の大小であることを特徴とする請求項1記載の動画再生装置。
【請求項3】
前記変化量情報は、単位時間当たりの画面の変化量があらかじめ設定された基準値よりも大きいか小さいかの情報であり、該基準値は任意に設定可能であることを特徴とする請求項1または2記載の動画再生装置。
【請求項4】
前記基準値は、複数の単位時間当たりのデータが最大のものと最小のものの中間値であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を高くして、単位時間当たりのデータ変化量が大きいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を低くして前記復号化された動画データを前記変換手段に送出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項6】
前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を低くして、単位時間当たりのデータ変化量が大きいデータ部分では早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を高くして前記復号化された動画データを前記変換手段に送出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間あたりのデータ変化量の小さいデータ部分が、あらかじめ設定された所定時間よりも長くなると当該データ部分の早送り再生(または巻き戻し再生)を途中で中断して、次のデータ変化量の大きい部分から早送り再生(または巻き戻し再生)を再開することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の小さいデータ部分を早送り再生(または巻き戻し再生)するときには、当該早送り再生速度(または巻き戻し再生速度)を高くして前記復号化された動画データを前記変換手段に送出することを特徴とする請求項7記載の動画再生装置。
【請求項9】
前記設定時間は、任意に設定可能であることを特徴とする請求項7または8記載の動画再生装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の小さいデータの部分のみについて、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の大きいデータの部分のみについて、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項12】
前記制御手段は、前記基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量の大きいデータ部分のみが一定時間続くときには、当該大きいデータ部分の中でも単位時間当たりのデータ変化量の小さいデータ部分を抽出して、前記復号化された動画データを前記変換手段に送出して再生させることを特徴とする請求項10記載の動画再生装置。
【請求項13】
前記制御手段は、早送り再生を定期的に間引いた動画データを前記変換手段に送出することで行う際に、間引いた後の早送り再生を再開するデータ部分が基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が大きいデータ部分である場合には、その前後のデータ変化量の小さいデータ部分から早送り再生を再開することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項14】
前記制御手段は、早送り再生を定期的に間引いた動画データを前記変換手段に送出することで行う際に、間引いた後の早送り再生を再開するデータ部分が基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さいデータ部分である場合には、その前後のデータ変化量の大きいデータ部分から早送り再生を再開することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。
【請求項15】
前記制御手段は、巻き戻し再生または特定倍速再生において、定期的に間引いた動画データを前記変換手段に送出することで行う際に、間引いた後の再生を再開するデータ部分が基準値よりも単位時間当たりのデータ変化量が小さい(または大きい)データ部分である場合には、その前後のデータ変化量の大きい(または小さい)データ部分から再生を再開することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の動画再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2006−270829(P2006−270829A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−89063(P2005−89063)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】