説明

動的なサブチャネル割り当てのための方法、送信機、受信機およびシステム

【課題】ブロードバンド無線アクセスシステムの動的なサブチャネル割り当て方法を提供する。
【解決手段】複数のサブチャネルを有する通信チャネルを備えている通信システムにおける送信機と受信機間の通信における動的サブチャネル割り当てのための方法であり、各サブチャネルにおけるビジー信号を複数のサブチャネルから送信機で受信するステップと、受信したビジー信号が所定の第1の閾値に等しいかあるいはそれよりも大きくかつそのサブチャネルが先行の通信間隔において送信機と受信機間の通信に利用された場合に、または受信したビジー信号が所定の第2の閾値に等しいかあるいはそれよりも小さくかつそのサブチャネルが先行の通信間隔において送信機と受信機間の通信に利用されなかった場合に、送信機と受信機間の通信における1つ以上のサブチャネルをその通信のためのサブチャネルを割り当てることで選択するステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばセルラー方式、アドホック方式およびマルチホップ方式のネットワークにおけるマルチユーザーアクセスのための動的なサブチャネル割り当ておよび媒体アクセス制御(MAC)の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
スペクトル拡散技術とは異なり、OFDM(直交周波数分割多重通信)技術には、全周波数あるいはサブチャネルの再利用が可能であるように多重セル環境において使用される内蔵式干渉抵抗メカニズム(in-built interference resistance mechanism)を有していない。したがって、同一チャネル干渉(CCI)を効率的に抑制しようとするために、インテリジェントサブチャネル再利用スキーム(intelligent sub-channel reuse scheme)の有する課題が、公然の問題となる。さらに、アドホック方式あるいはマルチホップ方式のネットワークでは、中央の無線リソース管理あるいはサブチャネル管理の制御の欠如によって、更なる別の問題が加わる。
【0003】
前述の問題に対処することを意図するいくつかのアプローチが存在している。
【0004】
第1として、それぞれが特定の周波数再利用パターンによる異なるセルにおいて利用される副帯域へ全体の無線周波数帯域が再分割されるセルラー方式概念の利用である。大きい帯域幅に左右されるブロードバンド無線アクセスについては、当初は低速回路切換サービス(low rate circuit switched service)のために特化されたこの解決法は、実行不可能であるか、あるいは少なくとも極めて効率の悪い解決法である。
【0005】
第2として、サブチャネル(周波数)ホッピングの利用であるが、このことは、利用可能なリソースの体系的な開発を欠いている。結果として、このアプローチは、低負荷の状況においてだけ良好に機能するものである。調整(シグナリングオーバヘッド)がほとんど必要とされないので、主な利点は複雑性における減少である。
【0006】
第3として、CSMA−CA(キャリア検知多重アクセス−衝突回避)のようなチャネル検知プロトコルあるいはランダムMACプロトコルの使用である。最先端のプロトコルの多くは、結果として、乏しいスペクトル効率、および/または大きいシグナリングオーバヘッドに陥る。
【0007】
非特許文献1において、以下のこと、すなわち[1]ビジー音(busy-tone)を利用するTDDによるエアインターフェースのために特化された新しいMACプロトコルが、短時間枠と組み合わされると、単一キャリア送信において高いスペクトル効率を達成できることを示している。
【非特許文献1】P.Omiyi and H.Haas,「Improving Time−Slot Allocation in 4th Generation OFDM/TDMA TDD Radio Access Networks with Innovative Channel−Sensing」,Proceedings of the International Conference on Communications ICC‘04,vol.6,Paris,France:IEEE,pp.3133−3137,(2004年6月20〜24日)
【0008】
Harald HaasおよびPeter Omiyiによる特許文献1の「Communications Network Using Reservation Indicator」、または特許文献2あるいは特許文献3の「Inter−Cell Interference Mitigation Technique Using Reservation Indicators」は、先に言及したアプローチに基づいている。しかしながら、このアプローチあるいはプロトコルは、ブロードバンド無線アクセスにおいて観察される周波数選択性を満たしていない。
【特許文献1】PCT/EP 2004/011840号
【特許文献2】WO 2005/041494号
【特許文献3】EP 1 526 685号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ブロードバンド無線アクセスシステムについての動的なサブチャネル割り当てのための改善された概念を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本目的は、請求項1に記載の動的なサブチャネル割り当てのための方法、請求項11によるコンピュータプログラム、請求項12に記載の送信機、請求項13に記載の受信機および請求項14に記載の動的なサブチャネル割り当てのためのシステムによって、達成される。
【0011】
本発明によれば、複数のサブチャネルを有する通信チャネルを備えている通信システムにおいて送信機と受信機との間の通信の動的なサブチャネル割り当てのための方法であって、前記通信システム内の各サブチャネルにおける通信を示すそれぞれのビジー信号(busy-signal)を前記複数のサブチャネルから送信機で受信するステップと、前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第1の閾値に等しいかあるいはそれよりも大きく、かつ、前記サブチャネルが、或る先行の通信間隔(communication interval)において前記送信機と前記受信機との間の通信のために使用された場合に、または、前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第2の閾値に等しいかあるいはそれよりも小さく、かつ、前記サブチャネルが、或る先行の通信間隔(期間)において前記送信機と前記受信機との間の通信のために使用されなかった場合に、前記送信機と前記受信機との間の通信における1つ以上のサブチャネルを、前記通信のためのサブチャネルを割り当てることによって選択するステップとを含んでいる動的なサブチャネル割り当てのための方法が提供される。
【0012】
さらにまた、本発明によれば、コンピュータ上で実行される際に本発明に係る方法を実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムが提供される。
【0013】
さらにまた、本発明によれば、複数のサブチャネルを有する通信チャネルを備えている通信システムにおいて受信機との通信の動的なサブチャネル割り当てのための送信機であって、前記複数のサブチャネルから前記通信システム内の各サブチャネルにおける通信を示すそれぞれのビジー信号を受信する手段と、前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第1の閾値に等しいかあるいはそれよりも大きく、かつ、前記サブチャネルが、或る先行の通信間隔において前記送信機と前記受信機との間の通信のために利用された場合に、または、前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第2の閾値に等しいかあるいはそれよりも小さく、かつ、前記サブチャネルが、或る先行の通信間隔において前記送信機と前記受信機との間の通信のために利用されなかった場合に、前記送信機と前記受信機との間の通信についての1つ以上のサブチャネルを、前記通信のための前記サブチャネルを割り当てることによって選択するための制御装置とを備えている動的なサブチャネル割り当てのための送信機が提供される。
【0014】
さらにまた、本発明によれば、複数のサブチャネルを有する通信チャネルを含んでいる通信システムにおいて動的なサブチャネル割り当てのために動作する送信機と通信するための受信機であって、前記送信機による通信のために割り当てられたサブチャネルにわたって信号を受信する手段と、前記割り当てられたサブチャネルにわたって受信された前記信号が、所定の閾値に等しいかあるいはそれよりも大きい場合に、前記送信機による通信のために割り当てられた前記サブチャネルにおいてビジー信号を生成する手段とを備えている送信機との通信のための受信機が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、本発明に係る送信機と本発明に係る受信機とを備える通信のためのシステムが提供される。
【0016】
本発明は、動的なサブチャネル割り当ての改善が通信チャネルを複数のサブチャネルに分割することで達成されるという知見に基づいている。サブチャネルが小さければ小さいほど、周波数選択性は少ないものであり、また、それらのチャネル変換関数は、より良好に近似されるかあるいはモデル化される。したがって、適応性のあるコード化および変調の概念は、本発明に適用することが可能である。
【0017】
したがって、本発明によれば、中央制御を必要としないOFDM−TDD(TDD=時分割二重通信)に基づくネットワークの動的自己組織型サブチャネル選択メカニズム(dynamic self-organizing sub-channel selection mechanism)のための新規なプロトコルが提供される。
【0018】
サブチャネルの干渉の測定に対する完全チャネル(complete channel)の干渉の測定には、二重の不利益がある。第1に、従来技術のアプローチに基づけば、歪みを無視することができるであろう周波数範囲は、チャネルの残りあるいはそのチャネルの大部分の歪みを無視することができないときには利用することができない。有用な周波数帯域あるいはサブチャネルは、不必要に利用されることなく残る。第2に、ある一定の周波数範囲は高い歪みを示すことがあるのに対して、そのチャネルの残りの周波数は、無視することのできる歪みを示す。「多数決」に基づいたチャネルを利用すると、上記の周波数帯域の内部における高い歪みのために、不必要な故障停止および再送信が引き起こされることがある。
【0019】
本発明に係る方法によれば、より精度の高い歪み決定がもたらされるとともに、従来技術と比較してマルチユーザー・マルチセル環境における改善されたスペクトル効率が最終的に達成される。
【0020】
本発明の好ましい実施形態では、OFDM−TDDによるエアインターフェースが使用される。本発明に係る方法では、MAC(媒体アクセス制御)と同様に、TDDにおけるチャネル相互依存性を利用することで、物理層が含まれている動的なサブチャネル選択アルゴリズムが使用されるとともに、時分割多重化サブチャネルにおいてビジー音のシグナリングがさらに利用される。
【0021】
TDDにおけるチャネル相互依存性とは、送信電力が同じであると仮定したときに、例えばデータを送信する第1の移動局MSTxからデータを受信する第2の移動局MSRxへの潜在的な干渉が、データを送信する第2の移動局MSRxがデータを受信する第1の移動局MSTxに加えるであろう干渉と同一である、ということを意味している。
【0022】
本発明に係る方法によれば、1つの周波数再利用、あるいは言い換えると100%の周波数再利用が可能になり、更に、基本的に、OFDMによるエアインターフェースにおいて動的FDMA(周波数分割多重アクセス)コンポーネントになる。サブキャリアのクラスタあるいはチャンクは、これらのサブチャネルが潜在的被害受信機(将来被害を受け得る受信機)への無視することのできる干渉を引き起こす場合に限り、すなわち、干渉リンクが極端に弱まるかあるいは減衰する場合に限り、送信機と受信機との間のデータ送信のために割り当てられる。チャネルの深刻な弱まりを検出するために、ビジー音シグナリング(busy-tone signaling)の手段によるチャネルセンシングが利用される。TDDモードでは送信および受信が同じ無線周波数チャネルにおいて行われるので、例えば、意図された移動局(MS)の受信機によって送信された短い信号は、ビジー信号の送信電力が潜在的干渉送信機(将来干渉を受け得る送信機)によって事前に知られているとすると、その受信機に引き起こされるであろう干渉電力を決定するために、移動された潜在的干渉送信機によって利用することができる。この特定のメカニズムは、本発明に利用される。加えて、そのチャネルがゆっくりと経時変化するときには、適応性のあるサブチャネル割り当てのための対策が行われる。
【0023】
したがって、本発明に係る方法によれば、次の利点、すなわち、ブロードバンド無線アクセスのためのマルチユーザー・マルチセル環境における高いスペクトル効率(ネットワークのための中央無線リソースのための要件なし)がもたらされる。したがって、本発明に係る技術は、セルラー方式、アドホック方式およびマルチホップ方式のネットワークのために適用することができ、また、低いシグナリングオーバヘッドを呈する。
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、図面に関連して詳しく説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
図1は、2つの基地局BSTxとBSRx、および2つの移動局MSRxとMSTxとから構成されている代表的な通信シナリオを示している。BSTxは、サブチャネル#nおよび#mにおいてMSRxへの送信を行うものである。連続的に受信すると、MSRxは、同じチャネルでの短時間枠にビジー信号を送信する(TDDによるために)。具体的には、MSRxは、サブチャネル#nおよび#m(同心円によって表示された)においてビジー信号を送信する。同時に、MSTxは、BSRxへの通信を開始することを必要とする。MSTxが通信を開始する前に、MSTxは、全てのサブチャネルにおいてビジー信号をリスン(listen)する。それは、受信電力を定義済み閾値と比較する(便宜上、受信されたビジー信号は、実線として引かれている−実際には、サブチャネル当りの受信信号は、多重送信ソースのためにより不意に変化することがある)。MSTxは、ビジー信号が閾値未満で受信されるそれらのサブチャネルにおいて送信を開始する。この例では、MSTxは、サブチャネル#nを再利用することができる。同様に、MSTxは、他のいくつかの共存リンクに利用されることがあるサブチャネル#pにおいて送信することができる。送信および受信が同じ無線周波数キャリアにおけるものであるので、潜在的な新しい送信機は、それが送信に先立って他のリンクを引き起こすであろう干渉のレベルを正確に決定することができる。このことは重要な利点として理解される。
【0026】
図2は、1つの周波数再利用およびビジー音アプローチを備えているセルラー方式ネットワークにおける同一チャネル干渉(CCI)問題を示すために、2つの基地局および3つの移動局から構成されている別の代表的で簡単なシナリオを示している。ビジー信号はまた、ビジー音(busy-tone)あるいはビジーバースト(busy-burst)とも呼ばれる。
【0027】
以下において、送信用の基地局(BS)あるいは移動局(MS)は、BSTxあるいはMSTxとして表示されており、受信用の基地局あるいは移動局は、BSRxあるいはMSRxとして表示されている。
【0028】
その例において、移動局
【数1】

は、基地局
【数2】

へ送信する。このシナリオでは、
【数3】

によって、
【数4】

および
【数5】

へのCCIが引き起こされ、基地局
【数6】

によって、基地局
【数7】

へのCCIが引き起こされる。一方では、全周波数再利用を備えているネットワークにおけるCCIのレベルによって、スペクトル効率が著しく減少する。他方では、固定された周波数割り当てスキームによってもまた、高いスペクトル効率が妨げられる。ビジー音コンセプトは、この課題を自己組織型で解決するために構築されている。TDMA(時分割多重アクセス)を備えている単一キャリアによるエアインターフェースが想定されている。それぞれのタイムスロット(TS)は、ビジー音シグナリングのために利用される短いタイムスロットに従う。データパケットを連続的に受信すると、受信機がこの短いタイムスロットでビジー信号をブロードキャストする。この受信機の近傍におけるそれぞれの潜在的な送信機が、その短いタイムスロットをリスンして、その短いタイムスロットでの受信信号電力が閾値を超えていれば、新しい潜在的な送信機は、それが共存する送信へのあまりにも高すぎる干渉を引き起こすおそれのあるときには、送信を見合わせる。明らかに、このことは、TDDの利用のために可能な唯一のものである。
【0029】
図3は、図2にすでに説明されたシナリオに基づいたマルチユーザー型OFDMネットワークのための動的なサブチャネル割り当てメカニズムの、本発明に係る概念を示している。この新しい動的なサブチャネル割り当て法は、ビジー音アプローチを利用するOFDM/TDDによるエアインターフェースのための仮編成済みの新しい動的な、シナリオ依存および自己組織型のチャネル割り当て法である。
【0030】
このプロトコルの性質は、送信機が、データを送る前に、ネットワークにおける他のユーザーへ重大なCCIを引き起こさないサブチャネルをまず選択することである。このことは、そのチャネルを、例えば1つの特定OFDMのシンボルであるビジー音送信のために利用されるビジーチャネル(busy-channel)と称される特別な時間多重化チャネルで検知することによって達成される。「正確な」データ受信があれば、受信機が、ビジーチャネルにおける利用済みのサブチャネルのそれぞれへ、さらに別の送信のためにこれらの特定のサブチャネルを予約しておくために、直ちに信号を送信する。任意の潜在的な新しい送信機が、ビジーチャネルのサブチャネルにおける受信電力に基づいたその送信のためのサブチャネルを選択するであろう。特定のサブチャネルにおける受信電力が、ある一定の閾値を超えていると、このことは、共存する送信が、著しく干渉を受けていることを意味する。逆に、受信電力が、その閾値に満たないときには、チャネル減衰は、このサブチャネルの利用が共存する送信への無視することのできる干渉だけを引き起こすように、充分に大きいものである。例えば図3において、
【数8】

は、
【数9】

および
【数10】

から受信された表示ビジー信号(depicted busy-signal)が与えられたサブチャネル#pおよび#qに送信することができる。
【0031】
無線チャネルに固有の性質のために、個々のチャネルのCTF(チャネル変換関数)は、次善である初期サブチャネル選択と共通する時間にわたって変化することがある。図4には、時間・周波数選択性無線周波数チャネルの典型的な2次元周波数応答あるいはチャネル変換関数が描かれている。チャネルの周波数選択性によってサブチャネル選択が規定される。時間変動性には連続的なサブチャネル選択プロセスが必要であり、これらは両方とも、本発明において満たされている。
【0032】
本発明に係る方法では2つの問題が検討されており、第1の問題は、例えば
【数11】

のどの時間/周波数リソースが、他の移動局および基地局への無視することのできる干渉を有するかを決定するためのアプローチであり、第2の問題は、例えば
【数12】

によって選択され、かつ、選択されたサブチャネルのどれが例えば所望の受信機
【数13】

で干渉を受けないかを決定するための選択サブチャネルの時間/周波数リソースの割り当てである。TDDおよびその固有のチャネル相互依存性のために、移動局
【数14】

および
【数15】

から
【数16】

へ受信されたビジー音は、移動局
【数17】

の潜在的な干渉が移動局
【数18】

および
【数19】

へ引き起こされるであろうということを同時に示している。
【0033】
本発明に係る方法に基づいて、
【数20】

は、他の2つの移動局
【数21】

および
【数22】

への無視することのできる干渉を引き起こすサブチャネルにだけ送信する。或る一定のサブチャネルにおける或る時点への送信が無視することのできる干渉を引き起こすことが考慮されるかどうかの決定は、例えば、信号あるいは信号電力が或る一定の電力閾値に等しいか、あるいはそれ未満でなければならないという閾値決定に基づいている。
【0034】
全体のプロシージャは、2つの段階である(a)リンク初期化段階と(b)連続的で動的なサブチャネル適応段階とに再分割することができる。初期化段階の間には、新しい通信リンクが確立されるとともに、いくつかのサブチャネルが選択されなければならない。適応段階では、目標受信機がデータを受信したが、チャネルおよび干渉の変化によって、送信のための新しいサブチャネルを選択することあるいは利用されたサブチャネルを解除することが必要である。
【0035】
以下において、リンク初期化段階をより詳細に説明する。m番目のBSがリンクを(i−2)番目のMACフレームにおけるk番目のMSへセットアップする必要があること、すなわち、相互着信が(i−2)番目のMACフレームにおけるランダムな時間位置にあることが想定され、そして、したがって、ビジーチャネルをこのMACフレーム時間帯の間に聞くことができるということは保証されない。したがって、BSは、次のMACフレーム、すなわちビジーチャネルをリスンする第1の適正機会を得る(i−1)番目のMACフレームまで、その送信を延期しなければならない。受信されたビジー信号は、前に説明されたように、所定の閾値と比較される。この時点で受信されたビジー信号は、目標受信機がどのようなデータも今なお受信していないので、すなわちビジー信号が送信されていないので、意図されていないMSあるいはBS(送信が開始されると干渉を受けることがある潜在的なエンティティ)からだけ生じることに留意すべきである。このことは、m番目のBSが、これらのサブチャネルにおけるk番目のMSへのデータ送信を開始することを意味している。k番目のMSは、これらのサブチャネルのそれぞれにおけるSINR(信号対干渉・雑音比)を決定する。その特定のサービスについて要求されたQoS(サービス品質)に基づいて、k番目のMSは、それぞれのサブチャネルを「予約する」かどうか、あるいはそれを「解除する」かどうかについて決定する。後者の場合には、k番目のMSは、その対応サブチャネルにおけるビジー信号を送信することはないであろうが、これに対して前者の場合には、それは、ビジー信号を利用してそれを「保護する」ことによってそれぞれのサブチャネルを予約する。明らかに、この保護は、TDDの利用のために極めて実現可能なことである。特定のサブチャネルでのSINRは、所望のリンクにおけるこのサブチャネルのチャネルが著しく弱まっているためかあるいは別の送信に起因する大きい干渉があるためかのいずれかのために、小さくなるということに留意すべきである。したがって、ビジー信号は、次のi番目のMACフレームにおけるこのサブチャネルについてはブロードキャストされない。
【0036】
この作用を数学的にモデル化するために、二元変数である
【数23】

が定義されたが、これは、m番目のBSとk番目のMSとの間のリンクにおける(i−1)番目のMACフレームで特定のサブチャネルlの利用が他の何らかの受信ノードへの耐えられないほど大きい干渉を引き起こすかどうかを示すものである。サブチャネルlが、MACフレーム(i−1)でm番目のBSとk番目のユーザーとの間におけるリンクのために割り当てられているときには、
【数24】

であり、そうでないときには、
【数25】

である。この割り当ての結論、すなわち、この特定のサブチャネルがこの通信リンクのために利用されるかどうかの結論は、受信されたビジー信号を閾値と比較することによって得られる。これは次のような式として表わすことができる。
【数26】

ここで、
【数27】

は、(i−1)番目のMACフレームの中におけるl番目のサブチャネルにおいてm番目のBSで受信されたビジー信号である。閾値は、この送信が他の共存送信を引き起こすであろう干渉についての尺度であるが、Ithr.として表示されている。(i−1)番目のMACフレームで、受信機であるk番目のMSは、SINRを概算するとともに、このサブチャネルが予約されるべきものであるかを決定する。この決定の結論は、
【数28】

によって説明されるが、ここで、概算された
【数29】

が、要求されたSINRγreq.を超えているときには
【数30】

であり、そうでないときには、
【数31】

である。これは式(2)を意味している。
【数32】

【0037】
【数33】

の値についての決定が、CCIを緩和するために送信機によって行われ、これに対して、
【数34】

の値についての決定が、SINR目標を満たさないそれらのサブチャネルを解除するために受信機によって行われる、ことに留意すべきである。
【0038】
以下において、動的なサブチャネル割り当て段階がより詳細に説明される。iよりも大きいか、あるいはそれに等しい任意のMACフレームについては、受信されたビジー信号の電力は、意図されたユーザーであるk番目のMSの信号電力と、潜在的に干渉を受ける他の全てのエンティティにおけるビジー信号電力(busy-signal power)とから構成されている。このことは、利用されたサブチャネルについてのビジー信号電力が、m番目のBSとk番目のMSとの間における通信が初期化され、かつ、意図された受信機であるk番目のMSがビジー信号を送信しなかった(i−1)番目のMACフレームにおけるそれとは異なっている、ということを意味している。
【0039】
i番目のMACフレームのダウンリンクサブフレームにおける受信されたビジー信号は、次のように書くことができる。
【数35】

ここで、
【数36】

および
【数37】

はそれぞれ、k番目のMSとm番目のBSとの間におけるl番目のサブチャネルにおけるi番目のMACフレームでの送信されたビジー信号および受信されたビジー信号である。記号
【数38】

は、m番目のBSとk番目のMSとの間、すなわち所望のリンクにおける送信のl番目のサブチャネルとi番目のMACフレームとについてのCFT係数を表している。同様に、記号
【数39】

は、k番目の端末(それは共存リンクのMSあるいはBSであってよい)とm番目のBSとの間のCFT係数である。送信機は、
【数40】

であるかどうかを、TDDにおいてチャネル相互依存性を利用することで、再び以下のように決定することができる。
【数41】

【0040】
i番目であってiよりも大きい任意のMACフレームについてのm番目のBSとk番目のMSとの間における所望のリンクにおけるサブチャネル割り当てについての条件は、次のように与えられる。
【数42】

ここで、
【数43】

は、aの論理補数である。式(5)において、条件
【数44】

は、サブチャネル1が(i−1)番目のMACフレームにおいて選択されなかったことと、このサブチャネルにおいてi番目のMACフレームのビジー音時間枠で受信されたビジー信号が所定の閾値よりも小さいこととを意味している。この条件が満たされると、このサブチャネルは、次のMACフレームにおけるデータ送信のために選択される。条件
【数45】

は、サブチャネルlが先のMACフレームにおいて選択されたことと、要求されたSINRが維持されていることとを意味している。この場合において、サブチャネルlは、このリンクのために、引き続き選択される。
【0041】
図5は、ダウンリンクおよびアップリンク送信からなるMACフレーム構造の代表的な実施形態を示している。図5の上方部分には、BS視点からの信号の送信および受信が描かれている。同様に、下方部分には、MS視点からの信号の送信および受信が描かれている。アップリンクサブフレームの構造は、ダウンリンクサブフレームの構造に類似している。この類似性のためと、より明確さを保証するために、アップリンクサブフレームはここでは、これ以上、説明しない。それぞれのサブフレームには、ビジー音シグナリングのためのビジーチャネル(1つのOFDMのシンボル)が含まれている。MACフレームの継続時間は、そのチャネルが著しく変化しないように選択される。
【0042】
図5は、基地局と移動局との間における代表的な通信を示しており、ここで、基地局はデータを移動局へ送ることを必要としている。2つの段階である「リンク初期化」および「動的なサブチャネル適応」についての先の説明と同様に、基地局は、この通信リンクを(i−2)番目のMACフレームの移動局へセットアップすることを必要としている。したがって、(i−1)番目のMACフレームで、それはまず、全てのサブチャネルにおけるビジー信号をリスンする。この例では、第1、第3および第4のサブチャネルの受信されたビジー信号の電力は、データ送信のためにその後に選択される所定の閾値よりも低いことが想定されている。ダウンリンクの中の第1サブチャネルにおけるSINRは、意図されたMSでは容認できないこともさらに想定されている。したがって、このMSは、次のi番目のMACフレームにおける第1サブチャネルにビジー信号をブロードキャストすることがなく、すなわち、このMSは、ビジー信号を第3および第4のサブチャネルにだけ送信する。干渉リンクにおけるチャネル変更のために、i番目のMACフレームでの第2サブチャネルにおけるビジー信号は、閾値の下方で受信される。したがって、第2サブチャネルは、i番目のMACフレームにおけるダウンリンク送信のために選択される。第1サブチャネルは、意図されたMSでの要求されたSINRが(i−1)番目のMACフレームにおいて達成されなかったときに解除されるということに留意すべきである。
【0043】
図5では、送信機あるいは送信用基地局が、様々なビジー音を解析し、その解析に基づいて、同じMACフレームにおいてデータを送信する。遅延、例えばビジー音の解析とデータの第1送信との間の遅延についての代わりの概念が可能であるが、一般変換関数の時間依存性と他の送信機による干渉とのために、短い遅延であるか、あるいは遅延のないことが好ましい。
【0044】
図6は、本発明に係る方法の好ましい実施形態のフローチャートを示している。図6には、フローチャートに加えて、説明されたタスクを実行するためのそれぞれのエンティティである、送信機のためのTxおよび受信機のためのRxが示されている。図6の右側には、前記の「初期化」および「動的なサブチャネル適応」の段階についての記載とより容易に比較するために、フレームインデックス(i−2)、(i−1)および(i)が加えられている。
【0045】
図6に対する以下の説明文では、それとは対照的に、図6に示されたように「i」を増加させるステップを含む方法が説明されている。図6には、初期化段階610および適応段階あるいはサブチャネルの連続適応の段階630が示されている。初期化段階610では、MACフレームi(ステップS1、ステップS2)にはこのネットワークにおいて新しい着信があることが想定されている。受信されたビジー信号の平方振幅
【数46】

を閾値と比較することによって、セットのサブチャネルが選択される(ステップS3)。図6では、ユーザーインデックスkおよびmは、簡単にするために無視されている。その比較結果に左右されるが、チャネル割り当てシンボルの換算値al,iが設定される(ステップS4)。この比較は、∀l∈Cについて実行されるが、ここでCは、このシステムにおける全てのサブチャネルのセットである。その後、データシンボルは、選択されたサブチャネルにおいて送信される(ステップS5)。
【0046】
このデータシンボルとともに、どの受信機のためにデータがアドレス指定されるか、また、どの送信機からデータが送信されるかを表すために、指示、例えば一般的な割り当てシンボルal,iが受信機に送信される。この情報に基づいて、それぞれの受信機は、特定のサブチャネルにおけるデータが特定の受信機へアドレス指定されるかどうかを知る。
【0047】
送信機と受信機との間の通信のための初期化段階610は、送信機によるデータの第1の送信で終了する。
【0048】
送信機と受信機との間における通信リンクの適応段階630は、全ての選択されたサブキャリアにおける受信機での第1の干渉電力の概算(interference power estimation)で開始し(ステップS6)、そこからの開始は、このリンクが終わるか、あるいはこの通信が終わるまで受信機および送信機によって連続的に実行される(ステップS14)。
【0049】
データの均等化と検出とに加えて、受信機は、選択されたサブチャネルにおけるSINRを慨算する(ステップS6)。概算されたSINR
【数47】

が、式(2)においてγreq.として表され、かつ、実際にはQoSの制約に左右される要求値γmin.よりも大きいときには、選択されたサブチャネルが次のMACフレーム、すなわちbl,i=1として引き続き利用される。
【0050】
MACフレームのインデックスは、次のMACフレームがi:=i+1であることを示している。ビジー信号は、ビジーチャネルを利用することで、受信機によって、bl,i=1である選択されたサブチャネルに送信される(ステップS9)。
【0051】
このビジーチャネルにおいて、送信機は、それぞれのリンクのために利用されたセットのサブチャネルを適用するために、式(5)の条件を連続的にチェックする(ステップS10〜S12)。
【0052】
特定のリンクにおける通信が、次のMACフレームにおいて引き続き行われる(ステップS13)ときには、ステップS2〜5が繰り返され、もし、そうでないときには、その通信は終了する(ステップS14)。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、送信機が、通常のより多くのデータかあるいは特別により多くのデータを、この選択されたサブチャネルにわたって次のフレームにおける送信機へ送ることを必要としているときには、その送信機はまた、情報を受信機へ送信する。この送信機が、次のフレームにおける選択されたサブチャネルにわたってさらに別のデータがないという信号を発生する場合には、受信機は、たとえその質、あるいはSINRが所定の第4の閾値よりも大きい場合にもビジー信号を送信しない。
【0054】
図7Aは、例えば図3の移動局
【数48】

で受信され、かつ、全てのリンクが時間および周波数の一般的変化を受けることを示す代表的な2次元ビジー信号H(f,t)を示している。
【0055】
図7Bは、図7Aで示されているように
【数49】

で受信されて、黒色の面で描かれた代表的な閾値を有しているビジー音を示している。受信されたビジー音に基づいて、
【数50】

は、黒色の面よりも下にある、送信のためのそれらのサブチャネルを、ただ選択するだけとなる。受信機あるいは受信用基地局
【数51】

は、
【数52】

によって送られたデータを連結的に受信した後にビジー音を送信するが、ここで、受信用基地局
【数53】

は、サブチャネルにおいてビジー音を送信するだけであり、これらのサブチャネルは、送信用移動局
【数54】

によって請求されるかあるいは割り当てられ、かつ、受信用基地局
【数55】

で干渉を受けることがないものである。これらの前提条件に基づいて、適応性のあるコード化・変調法をここで適用することができる。
【0056】
図7Cには、受信用基地局
【数56】

から送信用移動局
【数57】

への代表的なビジー音H’(f,t)が示されている。図7Bと比較すると、受信されたビジー音H’(f,t)は、閾値γreq.よりも高い信号電力値であって、受信されたビジー音H(f,t)における信号電力値が図7Bに示されているように閾値Ithr.よりも低い周波数の信号電力値を示していることが明らかである。2つの閾値があり、ここではこれらの閾値の数値が同じである必要がないことに留意すべきである。
【0057】
図8Aは、本発明に係る方法が、分散型の動的サブチャネル割り当て法(decentralized dynamic sub-channel allocation method)と可能性のある集中型の非動的サブチャネル割り当て法(centralized non-dynamic sub-channel allocation method)とを比較するための代表的なシミュレーション設定を示している。図8は、システム帯域幅がB=20MHzであり、FFT長がNFFT=256であるOFDM/TDDセットアップであって、最大ドップラー周波数が、fD,max=500Hzであり、最大チャネル遅延が、Tmax=6.4μsであることに基づくチャネルモデルを含んでおり、500メートルのセル半径と均一に分配された移動局とが、或るセルラーシステムモデルに基づくOFDM/TDDセットアップを示している。
【0058】
図8Bは、閾値Ithr=−80dBmでの上記両方法についての平均オファードロード(average offered load)に対するこのシステムの平均スループットを示している。両方法のグラフは、平均オファードロードに対する平均スループットのほとんど直線状の増大を示しているが、それにもかかわらず、図8Bは、本発明に係る方法が集中型の非動的サブチャネル割り当て法よりも性能が優れていることを示している。
【0059】
図8Cは、閾値Ithr=−100dBmでの上記両方法についての平均オファードロードに対する平均スループットを示している。この閾値レベルでは、本発明に係る方法は、集中型の非動的サブチャネル割り当て法よりも性能が明らかに優れている。本発明に係る方法についての平均スループットは、平均オファードロードに対して直線状にまだ増大しているが、集中型の非動的サブチャネル割り当て法の平均スループットは、OFDMシンボル当り1.000ビットを超えることがない。
【0060】
本発明に係る方法は、送信装置および受信装置の任意の組み合わせ、例えば送信用移動局と受信用移動局との組み合わせ、送信用移動局と受信用基地局との組み合わせ、送信用基地局と受信用基地局との組み合わせ、および送信用基地局と受信用基地局との組み合わせに対して適用可能であることに留意すべきである。このようにして、本発明に係る方法は、先に説明されたように、本発明に係る通信方法に基づいた通信ネットワークの内部における全てのノード同士の間におけるその分散型・自己組織型の動的サブチャネル割り当て法に起因して、セルラー方式ネットワーク、アドホック方式ネットワークおよびマルチホップ方式ネットワークについての通信方法を提供する。
【0061】
さらにまた、本発明に係る方法は、全ての決定に対して同じ閾値を利用することができること、または、決定が行われる相異なる状況について相異なる閾値、例えば送信機がデータ通信のためのサブチャネルをすでに利用した場合の第1の閾値、そのサブチャネルが先行するフレーム、例えば初期化段階の間あるいは後の適応段階の間におけるデータ通信のために利用されなかった場合の第2あるいは第3の閾値(ビジー信号概算についての第2あるいは第3の閾値)を備えるように実施することができることに留意すべきである。
【0062】
典型的には、絶対電力値(absolute power value)は、調整装置によって付与される。したがって、ペイロードデータの絶対電力値だけでなく、ビジー信号の絶対電力値もまた、調整装置によって特定することができる。ビジー信号の代表的電力値は、送信の時点で−40dBm〜50dBmの範囲にあり、また、ビジー信号の電力値の第1、第2および第3の所定閾値は、−40dBm〜−150dBmの範囲にある。代替として、ビジー信号の電力値は、ペイロードデータの電力レベルに関して、例えば、ビジー信号が20dBだけ高い値と、20dBだけ低い値との間にあるということもまた、明示することができる。
【0063】
要約すれば、ブロードバンド無線アクセスにおいては、無線周波数チャネルは、一般に周波数選択性のものである。加えて、このチャネルは、例えば低いドップラー拡散のために、ゆっくりと弱まるものであると仮定することができる。このことは、マルチセル環境における干渉と同様に、所望のものに適用される。注水(water filling)およびビットローディングのような方法は、単一リンクおよび単一ユーザー送信において良好に作用するが、マルチユーザーおよびマルチセル配置において干渉リンクにおける周波数選択性をも考慮する有効な解決法は存在しない。本発明によれば、物理層と、例えばOFDM−TDDによるセルラーシステムあるいはエアインターフェースのためのMAC層とが含まれている新しい動的なサブチャネル割り当てプロトコルが提供される。本発明に係る方法あるいは関連したプロトコルは、第1の干渉回避と第2のリンク適応との二重のメカニズムを確立するために、例えば時分割多重化サブチャネルにおけるTDDのチャネル相互依存性およびビジー音シグナリングを利用するものである。干渉回避に関しては、このプロトコルが保証するということでまとめることができる。
【0064】
このプロトコルは、現存の送信が保護されるということを保証する。このことは、任意の新しい送信機が干渉のレベルに認識しており、それが現存の送信を引き起し、かつ、適切な決定を行うこと、すなわち、(a)特定のサブチャネルを利用することを、それが共存しているリンクへのあまりにも多い干渉を引き起こすと思われるために、見合わせること、または(b)他のリンクへ引き起こされた干渉を無視することができるために、特定のサブチャネルを利用することができるということを意味している。それによって、OFDMにおける干渉依存型・自己組織型のFDMAメカニズムが達成される。このことは、送信機が他のどこかで引き起こされることのある干渉に基づいてサブチャネルを単独で選択することを意味している。
【0065】
リンク適応については、それらのサブチャネルを送信のために利用することができると一旦認識されると、すなわち、共存している他のリンクを著しく劣化させることがないと一旦認識されると、選択されたサブチャネルの特定のサービスを送信のために利用することのできるそれぞれのQoS要件とともに、受信したSINRに基づいて、目標受信機が決定されることが可能である(受信機での干渉が送信機での干渉とは異なっているということに留意すべきである)。この選択の結果が、実際のリンクにおける送信のために利用することが可能なそれらのサブチャネルに信号電力を送ることによって、ビジーチャネルをまた利用する送信機へ表示される。このことは、受信機が、TDDにおけるビジー音シグナリングを利用することで、サブチャネルの「選択」と「保護」とを同時に行うということを意味している。
【0066】
動的なサブチャネル割り当てのための本発明に係る利点を要約すれば、本発明に係る方法は、ビジーバーストシグナリングを利用することで干渉を動的に管理し、マルチユーザー・マルチセル環境において高いスペクトル効率を達成し、ネットワークのための中央無線リソース制御装置を必要とすることなく、したがって、セルラー方式、アドホック方式およびマルチホップ方式のネットワークのために適用可能であり、また、最終的には低いシグナリングオーバヘッドをもたらすということが言える。
【0067】
本発明に係る方法のある一定の実施要件に左右されるが、本発明に係る方法は、ハードウェアにおいてあるいはソフトウェアにおいて実施することができる。本実施形態は、ディジタル式記憶媒体、特に、その上に記憶された電子的に読み取り可能な制御信号が備わっており、本発明に係る方法が実施されるようにプログラム可能なコンピュータシステムと協働するディスク、DVDあるいはCDを利用して実行することができる。一般に、本発明は、機械読み取り可能なキャリアに記憶されたプログラムコードを含んでいるコンピュータプログラム製品であって、コンピュータ上で実行される際にそのプログラムコードが本発明に係る方法を実行するために動作するコンピュータプログラム製品である。換言すれば、本発明に係る方法は、したがって、コンピュータプログラムであって、このコンピュータプログラムがコンピュータ上で実行される際に本発明に係る方法の少なくとも1つを実行するためのプログラムコードを有するコンピュータプログラムである。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1A】2つの基地局BSTx、BSRxおよび2つの移動局MSRx、MSTxを含んでいる代表的な通信ネットワークのためのシナリオを示している。
【図1B】はなはだしく弱められた2つのサブチャネル#nおよび#pを備えている潜在的送信機で受信された代表的なビジー音を示している。
【図2】2つの基地局および3つの移動局から構成されて1つの周波数再利用を備えているセルラー方式ネットワークにおける同一チャネル干渉を示している代表的なシナリオを示している。
【図3A】図2のシナリオに基づいた100%周波数再利用を備えているOFDM/TDDネットワークのための本発明に係る動的チャネル割り当て機構の概念を示している。
【図3B】移動局
【数58】

での受信されたビジー音電力(busy tone power)を示している。
【図4】無線周波数チャネルの典型的な2次元周波数応答性を示している。
【図5】ダウンリンクおよびアップリンク送信を示している本発明に係るMACフレーム構造の好ましい実施形態を示している。
【図6】本発明に係る方法の好ましい実施形態のフローチャートを示している。
【図7A】初期化段階の間における代表的な2次元ビジー信号を示している。
【図7B】図7Aの代表的な2次元ビジー信号と所定の閾値とを示している。
【図7C】チャネル適応段階の間における図7A〜Bに基づいた第1の送信への代表的な2次元ビジー音の応答性を示している。
【図8A】本発明に係る分散型の動的サブチャネル割り当て法の性能と集中型の非動的サブチャネル割り当て法の性能とを比較するためのシミュレーション設定を示している。
【図8B】閾値ITHR=−80dBmでの図8Aのシミュレーション設定についての平均オファードロードに対する平均スループットを示している。
【図8C】閾値ITHR=−100dBmでの図8Aのシミュレーション設定についての平均オファードロードに対する平均スループットを示している。
【符号の説明】
【0069】
Tx 送信機
Rx 受信機
610 初期化段階
630 適応段階
S1 新しいユーザーがネットワークに入るかあるいは通信が送信機へ要求する
S2 次のMACフレームのビジー音時間枠への遅延
S3 受信されたビジー信号の平方振幅と第3の閾値との比較
S4 チャネル割り当てシンボルal,iの設定
S5 選択されたサブキャリアにおける送信
S6 選択された全てのサブキャリアにおける受信機での干渉電力の概算
S7 選択されたサブチャネルにおけるSINRと所定の第4の閾値との比較
S8 サブチャネル確認シンボルbl,iの設定
S9 選択されて確認されたサブキャリアにおけるビジー信号のブロードキャスト
S10 利用されたサブチャネルの組を適用するための、受信されたビジー信号の平方振幅の比較
S11 チャネル割り当てシンボルal,iの設定
S12 選択されたサブキャリアにおける通信の設定
S13 通信の継続についての決定
S14 通信リンクの終了

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブチャネルを有する通信チャネルを備えている通信システムにおいて送信機と受信機との間の通信の動的なサブチャネル割り当てのための方法であって、
前記通信システム内の各サブチャネルにおける通信を示すそれぞれのビジー信号を前記複数のサブチャネルから送信機が受信するステップと、
前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第1の閾値に等しいかあるいはそれよりも大きく、かつ、前記サブチャネルが、或る先行の通信間隔において前記送信機と前記受信機との間の通信のために使用された場合に、または、
前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第2の閾値に等しいかあるいはそれよりも小さく、かつ、前記サブチャネルが、或る先行の通信間隔において前記送信機と前記受信機との間の通信のために使用されなかった場合に、
前記送信機と前記受信機との間の通信における1つ以上のサブチャネルを、該通信のためにサブチャネルを割り当てる(S4、S11)ことによって選択する(S3、S10)ステップと
を含んでいる方法。
【請求項2】
前記送信機と前記受信機との間の通信を初期化(610)するために、
前記通信システム内の前記各サブチャネルにおける通信を示すそれぞれの前記ビジー信号を前記複数のサブチャネルから送信機が受信するステップと、
前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第3の閾値に等しいかあるいはそれよりも小さい場合に、前記送信機と前記受信機との間の通信における1つ以上のサブチャネルを、該通信のためにサブチャネルを割り当てる(S4)ことによって選択する(S3)ステップと
を更に含んでいる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1つ以上のサブチャネルを選択するステップは、前記ビジー信号の電力値を閾値と比較することに基づいている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ビジー信号の電力値は、送信時点で−40dBm〜50dBmの範囲にあり、かつ、前記ビジー信号の前記電力値の第1、第2および第3の所定閾値は、等しく、かつ、−40dBm〜−150dBmの範囲にある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記受信機は、前記受信機において割り当てられた前記サブチャネルにわたって受信された信号が、第4の閾値に等しいか、または、それよりも大きい場合(S7、S8)に、前記送信機によって、通信のために割り当てられたサブチャネルにおいて前記ビジー信号(S9)を生成するものである、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記受信機は、前記受信機において割り当てられた前記サブチャネルにわたって受信された前記信号のSINR(信号対干渉・雑音比)の値が、前記第4の閾値に等しいか、または、それよりも大きい場合に、前記送信機によって、通信のために割り当てられた前記サブチャネルにおいて前記ビジー信号を生成するものである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第4の閾値は、通信のために要求されたサービスの種別、または、サービスの質に基づいて適用される、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
前記通信システムは、OFDM/TDD(直交周波数分割多重通信/時分割二重通信)に基づいている、請求項1ないし7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記サブチャネルのそれぞれのビジー信号は、前記サブチャネルの特定の時分割多重化チャネルで送信されるものである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記サブチャネルのそれぞれのビジー信号は、特定のOFDMシンボルとして送信されるものである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
コンピュータ上で実行される際に請求項1ないし10のいずれか一項に記載の方法を実行するプログラムコードを有するコンピュータプログラム。
【請求項12】
複数のサブチャネルを有する通信チャネルを備えている通信システムにおいて受信機との通信の動的なサブチャネル割り当てのための送信機であって、
前記複数のサブチャネルから前記通信システム内の各サブチャネルにおける通信を示すそれぞれのビジー信号を受信する手段と、
前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第1の閾値に等しいかあるいはそれよりも大きく、かつ、前記サブチャネルが、先行の通信間隔において前記送信機と前記受信機との間の通信のために利用された場合に、または、
前記サブチャネルから受信された前記ビジー信号が、所定の第2の閾値に等しいかあるいはそれよりも小さく、かつ、前記サブチャネルが、先行の通信間隔において前記送信機と前記受信機との間の通信のために利用されなかった場合に、
前記送信機と前記受信機との間の通信についての1つ以上のサブチャネルを、該通信のためにサブチャネルを割り当てることによって選択する制御装置と
を備える送信機。
【請求項13】
複数のサブチャネルを有する通信チャネルを含んでいる通信システムにおいて動的なサブチャネル割り当てのために動作する送信機と通信するための受信機であって、
前記送信機による通信のために割り当てられたサブチャネルにわたって信号を受信する手段と、
前記割り当てられたサブチャネルにわたって受信された前記信号が、所定の閾値に等しいかあるいはそれよりも大きい場合に、前記送信機による通信のために割り当てられた前記サブチャネルにおいてビジー信号を生成する手段と
を備えている受信機。
【請求項14】
請求項12に記載の送信機と、
請求項13に記載の受信機と
を備えている通信システム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate


【公開番号】特開2007−116674(P2007−116674A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−248317(P2006−248317)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】