説明

動翼およびガスタービン

【課題】ガス曲げ応力や熱応力の集中を軽減することにより、信頼性の向上を図ることができる動翼およびガスタービンを提供する。
【解決手段】ロータに対して着脱可能な翼取付部21およびシャンク22と、シャンク22の外側端部からロータの軸方向および周方向に沿って延びるプラットフォーム23と、プラットフォーム23の外周面から径方向外側に延びる翼形部24と、プラットフォーム23における翼形部24の前縁51との接続部の内周面から径方向内側に、かつ、周方向に延びるとともに、プラットフォーム23に対して着脱可能に配置された側板部61と、側板部61における前縁51側の面から、ロータの軸方向であって、翼形部24の後縁から前縁に向かう方向に、かつ、周方向に延びる動翼側突出部62と、が設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動翼およびガスタービンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ガスタービンの動翼は高温ガスにさらされるため、耐熱性を有する材料から形成されている。その一方で、動翼が取り付けられるロータは製造コストの低減を図るため、耐熱性は劣るものの価格の安い材料から形成されている。
さらに、動翼の上流側、および、下流側には静翼が配置され、動翼と静翼との間には動翼の回転を可能とするために隙間が形成されている。
【0003】
上述の隙間から高温ガスが内部に流入すると、ロータの温度が高温ガスにより上昇して、ロータの強度が低下するおそれがあった。
【0004】
これまでに上述の問題を解決するため、動翼および静翼の間の隙間にシール構造を形成し、高温ガスの流入を防止する技術が提案されている(例えば、特許文献1および2参照。)。
上述の特許文献1に記載の技術では、動翼のシャンク部分における上流側つまり前部に、静翼に向かって延びる板状のシールフィンを複数設けている。このようにすることで、ロータに向かう高温ガスの流れに対する流路抵抗が増大し、ロータまで流入する高温ガスを減少させることができた。
【特許文献1】特開2001−115801号公報
【特許文献2】特開平10−259703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、ガス曲げ応力や熱応力の集中を軽減することにより、信頼性の向上を図ることができる動翼およびガスタービンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は、以下の手段を提供する。
本発明の動翼は、ロータに対して着脱可能に嵌め合わされる翼取付部と、該翼取付部から前記ロータの径方向外側に向かって延びるシャンクと、該シャンクの径方向外側端部から前記ロータの軸方向および周方向に沿って延びるプラットフォームと、該プラットフォームの外周面から前記径方向外側に向かって延びる翼形部と、前記プラットフォームにおける前記翼形部の前縁との接続部の内周面から前記径方向内側に向かって、かつ、前記周方向に沿って延びるとともに、前記プラットフォームに対して着脱可能に配置された側板部と、該側板部における前記前縁側の面から、前記ロータの軸方向に沿う方向であって、前記翼形部の後縁から前縁に向かう方向に、かつ、前記周方向に沿って延びる動翼側突出部と、が設けられていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、プラットフォームに対して動翼側突出部を設けた側板部を着脱可能とするため、プラットフォームに側板部を直接接続する方法と比較して、プラットフォームにおける前縁との接続部と、その他の部分との間の剛性の差が小さくなる。そのため、翼形部の前縁の付け根におけるガス曲げ応力や熱応力の集中が軽減される。
【0008】
上記発明においては、前記側板部における前記突出部よりも前記径方向内側に前記軸方向に流体が流通する流通部が設けられていることが望ましい。
【0009】
本発明によれば、側板部が設けられていても流通部を介して流体、例えば動翼を冷却する冷却用流体や、ロータへの高温流体の流入を防止するシール用流体が軸方向に流通可能となる。
【0010】
本発明のガスタービンは、上記本発明の動翼および静翼が設けられたガスタービンであって、前記静翼側から前記プラットフォームと前記突出部との間に向かって延び、前記動翼側突出部とともにシール構造を構成する静翼側突出部と、が設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、上記本発明の動翼が設けられているため、プラットフォームにおける翼形部の前縁との接続部におけるガス曲げ応力や、熱応力の集中が軽減される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の動翼およびガスタービンによれば、プラットフォームに対して動翼側突出部を設けた側板部を着脱可能とするため、プラットフォームにおける前縁との接続部と、その他の部分との間の剛性の差が小さくなり、翼形部の前縁の付け根におけるガス曲げ応力や熱応力の集中を軽減することができ、信頼性の向上を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
この発明の一実施形態に係るガスタービンについて、図1から図4を参照して説明する。
図1は、本実施形態のガスタービンにおけるタービン動翼およびタービン静翼の周辺構造を説明する模式図である。
本実施形態では、本願の発明をガスタービンのタービン部における一段動翼に適用して説明するが、一段動翼に限られることなく、他の動翼に適用してもよく特に限定するものではない。
【0014】
ガスタービン1には、図1に示すように、タービン部の一段動翼であるタービン動翼(動翼)2と、一段静翼であるタービン静翼(静翼)3と、タービン動翼2が取り付けられるロータ4と、が設けられている。
【0015】
図2および図3は、図1のタービン動翼の構成を説明する部分拡大斜視図である。
タービン動翼2には、図1から図3に示すように、翼取付部21と、シャンク22と、プラットフォーム23と、翼形部24と、フィッシュマウスシール部25と、が設けられている。
【0016】
翼取付部21は、図3に示すように、ロータ4に対して着脱可能に嵌め合わされるものであり、タービン動翼2をロータ4に取り付ける際に用いられる部分である。
なお、翼取付部21の形状としては、いわゆるクリスマスツリー形状などの公知の形状を採用することができ、特に限定するものではない。
【0017】
シャンク22は、図1から図3に示すように、翼取付部21からロータ4の径方向外側(図1の上方向)に延びる略角柱状に形成された部材である。言い換えると、翼取付部21とプラットフォーム23との間に配置された部材である。
【0018】
プラットフォーム23は、図1から図3に示すように、シャンク22における径方向外側の端部に配置され、ロータ4の軸方向(図1の左右方向)および周方向(図1の紙面に対して垂直方向)に延びる略板状の部材である。
プラットフォーム23における軸方向の両端部は、シャンク22よりも突出して形成されている。
【0019】
プラットフォーム23には、凹部23Aと、差込部23Bと、が設けられている。
凹部23Aは、プラットフォーム23の内周面におけるフィッシュマウスシール部25よりも後縁52側の部分の板厚(径方向の寸法)を薄くするものである。
差込部23Bは、後述する側板部61が差し込まれる溝状に形成された部分である。差込部23Bは、プラットフォームプラットフォーム23の内周面における前縁51の付け根に対応した位置に形成されている。
【0020】
翼形部24は、図1から図3に示すように、プラットフォーム23における外周面(図1における上側の面)から、径方向外側に向かって延びる部材である。
翼形部24には、図2および図3に示すように、タービン部を流れる高温流体における上流側(図2の右側)の端部である前縁51と、下流側の端部である後縁52と、前縁51と後縁52との間を繋ぐ凹状の曲面である正圧面53と、凸状の曲面である負圧面54と、が設けられている。
【0021】
フィッシュマウスシール部25は、図1に示すように、隣接するタービン静翼3との間にシール構造を形成し、タービン部を流れる高温流体が、タービン動翼2とタービン静翼3との間からロータ4の近傍まで流入することを防止するものである。
フィッシュマウスシール部25には、図2および図3に示すように、側板部61と、リムシール(動翼側突出部)62と、シールフィン63と、が設けられている。
【0022】
側板部61は、図1から図3に示すように、径方向内側(図1の下側)に向かって延びるとともに、周方向に沿って延びる略板状の部材である。より具体的には、シャンク22における上流側の端面に沿って、径方向内側に向かって延びる略板状の部材である。
さらに、側板部61は、径方向外側の端部がプラットフォーム23の差込部23Bに嵌め合わされる部材である。
【0023】
さらに、側板部61におけるシャンク22と対向する領域、言い換えると、リムシール62よりも径方向内側には、後述するシール用空気が流通する貫通孔である流通部61Aが設けられている。
なお、本実施形態では流通部61Aを側板部61に形成された貫通孔に適用して説明しているが、貫通孔に限られることなく、側板部61の側端部に形成された凹部であってもよく、特に限定するものではない。
【0024】
リムシール62は、図2および図3に示すように、側板部61から上述の高温流体の上流側に向かって、かつ、周方向に沿って延びる略板状の部材である。
【0025】
シールフィン63は、図1に示すように、タービン静翼3における静翼側突出部33との間にシール構造の絞り部を形成するものである。
シールフィン63は、図2および図3に示すように、リムシール62の先端部から径方向外側に向かって、かつ、周方向に沿って延びる部材である。言い換えると、リムシール62の先端部から静翼側突出部33に接近する方向に延びる畝状の部材である。
【0026】
タービン静翼3には、図1に示すように、径方向に沿って延びる翼形部31と、翼形部31の径方向内側の端部に配置された内側シュラウド32と、が設けられている。
さらに、タービン静翼3には、フィッシュマウスシール部25とともにシール構造を形成する静翼側突出部33が設けられている。なお、静翼側突出部33は、タービン静翼3に直接設けられていてもよいし、タービン動翼2を組み合わされる他の部品に設けられていてもよく、特に限定するものではない。
【0027】
翼形部31は、タービン動翼2の翼形部24と同様な構成要素から構成され、各要素の形状がタービン静翼3の機能に適合した形状とされている点が異なるものである。
内側シュラウド32は、軸方向および周方向に延びる略板状の部材であって、プラットフォーム23とともにタービン部における高温流体が流れる流路を構成するものである。
【0028】
静翼側突出部33は、図1に示すように、タービン静翼3からタービン動翼2に向かって延び、かつ、周方向に沿って延びる略板状の部材である。より具体的には、フィッシュマウスシール部25におけるプラットフォーム23とリムシール62との間の空間に向かって延びる略板状の部材である。
静翼側突出部33におけるシールフィン63と対向する部分には、上述のシール構造におけるシール性向上を図るために、ハニカムシールなどの部材を設けてもよく、特に限定するものではない。
【0029】
次に、上記の構成からなるガスタービン1のタービン動翼2およびタービン静翼3の周辺における流れについて説明する。
図4は、図1のタービン動翼およびタービン静翼周辺の流れを説明する模式図である。
【0030】
ガスタービン1のタービン部を流れる高温の流体は、図4の実線矢印で示すように、タービン静翼3およびタービン動翼2の間を下流側(図4の左側)に向かって流れる。この高温流体の一部は、内側シュラウド32と、プラットフォーム23との隙間に流入する。
【0031】
その一方で、ガスタービン1のコンプレッサ(図示せず)などから冷却用およびシール用に抽気された圧縮空気の一部は、図4の点線矢印で示すように、タービン静翼3とタービン動翼2との間の空間にシール用空気および冷却用空気として供給される。
【0032】
このうち、径方向外側(図4の上側)に向かって流れ、フィッシュマウスシール部25および静翼側突出部33により構成されるシール構造に流入する空気はシール用空気として用いられる。
その一方、流通部61Aを通ってタービン動翼2に流入する空気は、冷却用空気として用いられる。
【0033】
シール用空気は、具体的には、シールフィン63および静翼側突出部33により構成された絞り部を介して、リムシール62、側板部61、プラットフォーム23および内側シュラウド32により囲まれた空間に流入する。
【0034】
上述のように、内側シュラウド32とプラットフォーム23との隙間から、この空間に流入した高温流体は、上述のシール用空気と衝突し渦を形成する。そのため、高温流体はこの空間から径方向内側に配置されたロータ4の近傍まで流入することがない。
【0035】
次に、本実施形態の特徴であるタービン動翼2における翼形部24の付け根における応力集中の緩和について説明する。
【0036】
一般に、ガスタービン1の運転中には、タービン動翼2の翼形部24の周囲を高温流体が流れ、タービン動翼2は高温流体により回転駆動される。このとき、翼形部24は高温流体から力を受け、翼形部24などにガス曲げ応力が発生する。
特に、翼形部24とプラットフォーム23とのつなぎ目である翼形部24の付け根には、翼形部24とプラットフォーム23との剛性の差からガス曲げ応力が集中する。
【0037】
さらに、周囲を流れる高温流体からの熱により、翼形部24を含むタービン動翼2も高温になる。タービン動翼2の各部分は熱膨張し、各部分の熱膨張長さの差から熱応力が発生する。
【0038】
本実施形態では、プラットフォーム23の差込部23Bに側板部61を嵌め合わせているため、側板部61とプラットフォーム23とを一体に形成している場合と比較して、翼形部24の前縁51とプラットフォーム23、および、側板部61とプラットフォーム23との接続部における剛性が低下し、他の部分との熱膨張長さの差が小さくなり、熱応力の集中が緩和される。
【0039】
さらに、翼形部24の前縁51とプラットフォーム23との接続部の剛性が低下することから、翼形部24の付け根におけるガス曲げ応力が分散され、応力の集中が緩和される。
【0040】
その一方で、プラットフォーム23に凹部23Aが形成されているため、翼形部24とプラットフォーム23との剛性の差が小さくなり、翼形部24の付け根におけるガス曲げ応力が分散され、応力の集中が緩和される。
【0041】
上記の構成によれば、プラットフォーム23に対してリムシール62を設けた側板部61を着脱可能とするため、プラットフォーム23に側板部61を直接接続する方法と比較して、プラットフォーム23における前縁51との接続部と、その他の部分との間の剛性の差が小さくなる。そのため、翼形部24の前縁51の付け根におけるガス曲げ応力や熱応力の集中を軽減することができる。
【0042】
その結果、前縁51の付け根における構造上の強度に余裕ができるため、翼形部24の内部から冷却用空気を供給する貫通孔、いわゆるシャワーヘッドを前縁51の付け根まで形成することができる。これにより、タービン動翼2の冷却性能の向上を図ることができ、特に高温の作動流体に対する強度上の信頼性向上を図ることができる。
【0043】
その一方で、側板部61が設けられていても流通部61Aを介してタービン動翼2を冷却する冷却用空気が軸方向に流通可能となり、タービン動翼2の冷却性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態のガスタービンにおけるタービン動翼およびタービン静翼の周辺構造を説明する模式図である。
【図2】図1のタービン動翼の構成を説明する部分拡大斜視図である。
【図3】図1のタービン動翼の構成を説明する部分拡大斜視図である。
【図4】図1のタービン動翼およびタービン静翼周辺の流れを説明する模式図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガスタービン
2 タービン動翼(動翼)
3 タービン静翼(静翼)
4 ロータ
21 翼取付部
22 シャンク
23 プラットフォーム
24 翼形部
33 静翼側突出部
61 側板部
61A 流通部
62 リムシール(動翼側突出部)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータに対して着脱可能に嵌め合わされる翼取付部と、
該翼取付部から前記ロータの径方向外側に向かって延びるシャンクと、
該シャンクの径方向外側端部から前記ロータの軸方向および周方向に沿って延びるプラットフォームと、
該プラットフォームの外周面から前記径方向外側に向かって延びる翼形部と、
前記プラットフォームにおける前記翼形部の前縁との接続部の内周面から前記径方向内側に向かって、かつ、前記周方向に沿って延びるとともに、前記プラットフォームに対して着脱可能に配置された側板部と、
該側板部における前記前縁側の面から、前記ロータの軸方向に沿う方向であって、前記翼形部の後縁から前縁に向かう方向に、かつ、前記周方向に沿って延びる動翼側突出部と、
が設けられていることを特徴とする動翼。
【請求項2】
前記側板部における前記突出部よりも前記径方向内側に前記軸方向に流体が流通する流通部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の動翼。
【請求項3】
請求項1または2に記載の動翼および静翼が設けられたガスタービンであって、
前記静翼側から前記プラットフォームと前記突出部との間に向かって延び、前記動翼側突出部とともにシール構造を構成する静翼側突出部と、
が設けられていることを特徴とするガスタービン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−1841(P2010−1841A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162166(P2008−162166)
【出願日】平成20年6月20日(2008.6.20)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】