説明

包装麺の整形装置、及びその整形方法

【課題】縦型包装装置によって包装された麺線を人手によらず整形できる包装麺の整形装置、及びその整形方法を提供する。
【解決手段】包装麺の整形装置1は、縦型包装装置2の下方に配置された袋案内手段3と、袋案内手段3の下端に牽体4を接近させたコンベヤ5と、四角形の包装袋6の幅よりも狭幅の押圧ローラ7と、押圧ローラ7を矢印α方向へ回転させる回転駆動手段8と、押圧ローラ7をコンベヤ5の牽体4の上方に支持する支持手段9とを備える。押圧ローラ7は、回転軸71に円板72を取付け、円板72の周縁に、ウレタンゴムから成る弾性輪材73を取付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装袋に内包された麺線を包装袋の外側から押圧して、ほぐし及び均しを行い、整形する包装麺の整形装置、及びその整形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、焼きそば等の茹で麺や蒸し麺の麺線を一食分ずつ包装するために縦型包装装置が使用されている。縦型包装装置の原理は次の通りである。即ち、帯状の透明フィルムをその両側の縁部が互いに重なるよう湾曲させ、これらの縁部同士を接合して上下方向に延びる筒体を形成する。更に、図6(a)に示すように筒体Pの途中を切断し、この切断によって形成される下縁部61を封止し、筒体Pにシュート21を通して麺線Nを投入する。麺線Nは、この前工程で茹でられ、又は蒸された後に水洗いされた状態のため、筒体Pに投入された時点で麺線Nは柔軟性を有し、表面は水濡れしている。
【0003】
続いて、同図(b),(c)に示すように、筒体Pをこれに投入された麺線Nよりも高い位置で切断することにより、この切断された箇所を上縁部62とする四角形の包装袋6を筒体Pから切り離し、包装袋6の上縁部62を封止する(上縁部62の切断と封止は同時に行われる場合が多い)。この直後、包装袋6は、縦型包装装置2から矢印Aで指した鉛直方向へ落下し次工程に送られる。縦型包装装置2は、以上の工程を高速で繰り返し、麺線Nを内包した多数の包装袋6を形成する。
【特許文献1】実開昭49−128679号公報
【特許文献2】特開平9−86501号公報
【特許文献3】特開2003−11904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
縦型包装装置2によって包装された麺線Nは、包装袋6の下縁部61に片寄った塊になり、包装袋6の四隅63まで達しないので、下縁部61付近の中央が分厚く、上縁部62や隅部には麺線Nの無い状態に麺線Nが内包されやすい。このように歪な包装袋6は、商品としての見栄えが悪く、包装袋6の一部が分厚いために出荷時、陳列時に多数重ねるのに不都合である。また、麺線Nが包装袋6内で分厚い団子状のまま硬化するので、調理時にほぐれにくい麺となる。そこで、包装袋6に内包される麺線Nを包装袋6内に均一に分散させ、包装袋6を扁平に仕上げるために、押圧部材を用いて機械的に圧縮することが考えられる。しかし、平板状の押圧板で麺線Nの内包された包装袋6を圧縮したのでは、包装袋6の隅部まで麺線Nが拡がりにくく、無理な力を掛けて押圧すると麺線Nが潰れて、麺線N同士が結着し、また包装袋6が破袋する等の問題があった。
【0005】
一方、麺類以外の主として粉状、粒状の物質を包装した包装袋6に対しては、前記各引用文献に記載の押圧装置、又はならし装置が公知である。しかし、これらの装置も、本発明が対象とする麺、特に茹で又は蒸されて水濡れした麺に対しては、いずれも充分な効果を有さないか、又は適用できないものである。なぜなら、このような場合には、麺線Nが潰れたり切れたりしては商品価値がなくなってしまうこと、あるいは、麺自体がある程度ゴムひものような弾性を有しているために、押圧しても元の形状に戻ってしまう等の特殊性を有するためである。
【0006】
事実、本発明者らは本発明の完成に至る試行錯誤の段階で、図5(a)(b)に記載のようなローラによって押圧することを考え、実際に作成してみた。しかし、同図(b)の構造では、麺線Nを隅部に押し込むことさえ困難で、ほとんど効果が無かった。一方、同図(a)の場合には、押圧時に一旦は少量の麺線Nが包装袋6の隅部に押し込まれるものの、直ぐに麺が元の位置に戻ってしまい、充分な効果が得られず、さらに隅部に麺線Nを押込むためにコンベヤ5とローラ70の隙間を狭くすると、麺線Nが潰れ、あるいは包装袋6が破袋した。
【0007】
本発明は、上記の実情に鑑みて為されたものであり、縦型包装装置によって包装された麺線を、調理時にほぐれやすい麺となるように、また、包装袋を重ねて積み重ねることができるように、包装袋内に広く均一に分散させ、しかも、麺線が包装袋内で潰れたり切れたりすることがないように整形できる包装麺の整形装置、及びその整形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上縁部及び下縁部を有する四角形の包装袋に茹で又は蒸した麺線を包装する縦型包装装置に取付けられる包装麺の整形装置であって、前記縦型包装装置によって麺線が包装された包装袋を、その下縁部が先行する姿勢で水平方向へ案内する袋案内手段と、前記袋案内手段によって前記包装袋が案内される方向へ向けて牽体を走行させるコンベヤと、前記牽体の走行する方向に直交する幅方向の断面が山形の接触面を有する押圧ローラと、前記押圧ローラを回転させる回転駆動手段と、前記押圧ローラをその山形の接触面の先端が前記牽体上面に接するか又は隙間を有して牽体の上方に支持する支持手段とを備え、前記コンベヤが前記包装袋を前記牽体に載せて搬送し、前記回転駆動手段が、前記押圧ローラをその接触面が前記コンベヤにより搬送される包装袋に転がり接触できる方向に回転させ、前記押圧ローラの接触面が、前記コンベヤにより搬送される包装袋に、その四角形の幾何学的中心を通り、かつ前記幾何学的中心を通る押圧ローラの接触面が前記包装袋の幅の2/3乃至1/4の範囲を押圧することを特徴とする。
【0009】
更に、本発明に係る包装麺の整形装置は、前記押圧ローラの断面山形の接触面が、前記幅方向の両側から内方へ向うに従い径方向に突出することを特徴とする。
【0010】
更に、本発明に係る包装麺の整形装置は、前記押圧ローラの断面山形の接触面が、断面円弧状であることを特徴とする。
【0011】
更に、本発明に係る包装麺の整形装置は、前記押圧ローラの直径が、前記包装袋の上縁部から下縁部までの長さの1乃至4倍の長さを有することを特徴とする。また、前記押圧ローラが、前記コンベアによって搬送される包装袋の進行方向に一台設置されている。
【0012】
更に、本発明に係る包装麺の整形装置は、前記押圧ローラの断面山形の接触面の先端とコンベヤの牽体上面の間に、前記包装袋に内包される茹で又は蒸した麺線の太さ1本分乃至3本分の長さの間隙を有することを特徴とする。
【0013】
更に、本発明に係る包装麺の整形装置は、前記支持手段には、押圧ローラを昇降自在に案内する昇降案内手段と、前記押圧ローラを下向きに付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、縦型包装装置によって上縁部及び下縁部を有する四角形の包装袋に、茹で又は蒸した麺線が包装された包装麺を整形する方法であって、前記麺線が包装された包装袋を、その下縁部が先行する姿勢でコンベアの牽体上を水平方向に搬送し、前記搬送中に、回転駆動する押圧ローラによって、該押圧ローラの接触面が、前記コンベヤにより搬送される包装袋の四角形の幾何学的中心を通り、かつ前記幾何学的中心を通る押圧ローラの接触面が前記包装袋の幅の2/3乃至1/4の範囲を押圧しながら、転がり接触させる。
【0015】
更に、本発明に係る包装麺の整形方法は、前記押圧ローラによって、前記包装袋を押圧しながら、転がり接触させる時の、前記押圧ローラの接触面と前記コンベヤの牽体上面との間隔が、前記麺線の太さの1本分乃至3本分の間隔となるように押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る包装麺の整形装置によれば、縦型包装装置から落下する包装袋を、その下縁部が先行する姿勢でコンベヤの牽体に載置させる。一方、麺線は、縦型包装装置によって包装された時点で、包装袋の下縁部に片寄った塊になるが、茹でまたは蒸され水濡れしているので弾力があり、表面は潤滑な性状である。このため、このような麺線の包装された包装袋が押圧ローラとコンベアの牽体の間を通過する際に、押圧ローラの接触面が、コンベヤに搬送される包装袋の下縁部から上縁部に転がり接触するのに従って、包装袋の下縁部に片寄った麺線は、包装袋の下縁部へ押し戻される力を押圧ローラから受けながら包装袋の内部で均される。
【0017】
しかも、押圧ローラの接触面が、四角形の包装袋の幾何学的中心を通り、かつ前記幾何学的中心を通る押圧ローラの接触面が包装袋の幅の2/3乃至1/4の範囲を押圧ローラの接触面が押圧するので、麺線は、包装袋が搬送される方向に直交する方向へ押される力を押圧ローラから受ける。これにより、麺線が包装袋の四隅に追込まれ、包装袋の四隅が麺線で満たされる。なお、このとき包装袋の幅方向外側には、押圧ローラによる押圧力が掛かっていないため、包装袋の幅方向外側に向って逃げた麺線は、押圧ローラによって押しつぶされることが無い。しかも押圧ローラの接触面が断面山形で、さらに麺線が茹で又は蒸し後の柔軟性を有している状態であることで、押圧時押圧ローラの下部にあって包装袋の幅方向外側に向かって引っ張られる麺線は、包装袋内を移動したり、伸びたりしながら切れてしまうことが無い。
【0018】
特に、押圧ローラの接触面が、その両側の外縁部から内方へ向うに従い径方向に突出する形状、とりわけ断面円弧状である場合、包装袋の四隅に麺線を追込む力が顕著に発生するとともに、麺線が包装袋の幅方向外側に向って逃げ易いので押しつぶされるリスクも少なく好ましい。さらに、押圧ローラの直径(回転軸に対して直交する方向の径)が大きく、好適には包装袋の上縁から下縁に至る長さ(包装袋内部の縦方向の長さ)の1乃至4倍の大きさであれば、又は、複数の押圧ローラを包装体の搬送方向に一列に並べれば、押圧されている時間を長くすることができ、押圧時包装袋の四隅に追込んだ麺線が、押圧後麺線の弾力で元の位置に戻ってしまうことを適度に防止できる。
【0019】
また、特に径の大きい押圧ローラを用いる場合は、押圧ローラとコンベヤの牽体との隙間の角度、すなわち包装袋の進入角が小さくなり、そのため急激な押圧力が麺線にかかることがなく、より麺線の潰れや切断が起こりにくい。このように径の大きな押圧ローラを用いる場合は、各包装袋はコンベアの牽体上を搬送中に一回の押圧を受けるようにすればよく、従って、ロール径の大きい押圧ローラを、コンベアによって搬送される包装袋の進行方向に対して一台設置することが好ましい。
【0020】
また、前述したように、茹で又は蒸された麺線は、粉状物や粒状物等と違って、弾性に富むため押圧後、押圧力を解除すると直ぐに元の状態に戻ろうとする。そのため、強い押圧を行うのが好ましく、包装袋を押圧している際の押圧ローラとコンベヤの牽体との間隔(押圧ローラの接触面の先端と牽体上面の隙間)を、同包装袋に内包される茹で又は蒸し麺線の麺厚(麺の太さ)の1本分乃至3本分、より好ましくは1本分乃至2本分の長さの間隔とするのが好ましい。このような強い押圧が可能なのは、麺線表面が潤滑であること、麺線が弾力を有すること等の茹で麺、蒸し麺における特殊性と、本発明の押圧ローラが包装袋を押圧する時に、内包されている麺線や空気が逃げるスペースが、包装袋の幅方向外側に確保されること等の、本発明の独自の構成によるものである。このような押圧ローラとコンベヤの牽体との狭い隙間の構成は、1回の押圧動作で包装袋を均そうとする場合において特に有効である。
【0021】
以上のように、本発明に係る包装麺の各整形装置によれば、いずれの整形装置においても、包装袋が搬送される過程で、麺線が潰れたり切れたりすることが無いか、又はほとんど無い状態で、包装袋に内包された麺線を平らに均し、包装袋を扁平に整形できる。また、縦型包装機による充填後のような団子状の形状に麺塊が固まってしまわないことで、加えて、本発明に係る各整形装置による押圧時の麺線の挙動が、包装袋内で結着しかかった麺線をほぐす動作となることによって、調理時の麺線のほぐれが改良される。以上に述べた効果は、本発明に係る包装麺の整形方法により達成することができる。
【0022】
更に、本発明に係る包装麺の整形装置は、押圧ローラを付勢手段で下向きに付勢することで、包装袋と共に麺線が押圧ローラの接触面とコンベヤの牽体との間隙を通過するときに、押圧ローラが麺線から受ける反力を逃すことができる。これにより、押圧ローラとコンベヤとの間で麺線が過度に圧迫されるのを予防することができる。また、押圧ローラは付勢手段に抗して上昇できるので、押圧ローラとコンベヤとの間を包装袋が通過できなくなる事態を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下に、本発明の最良の実施形態と、更に具体的な形態として実施例を示すが、本発明はその発明の主旨を逸脱しない範囲において適宜設定、選択できるものである。なお、従来の技術と共通する要素には、以下でも同じ呼称又は同じ符号を用いるものとし、その詳細な説明又は図示を省略する。また、図面について特に断らない限り、図1乃至図3を参照する。
【0024】
包装麺の整形装置1は、縦型包装装置2の下方に配置された袋案内手段3と、袋案内手段3の下端に牽体4を接近させたコンベヤ5と、四角形の包装袋6の幅に比較して狭幅でかつ直径の大きな押圧ローラ7と、押圧ローラ7を矢印α方向へ回転させる回転駆動手段8と、押圧ローラ7をコンベヤ5の牽体4に対して垂直に、かつ押圧ローラ7の回転方向と牽体4の走行方向が、互いに対向する位置で同じになるように押圧ローラ7を支持する支持手段9とを備え、該支持手段9によって押圧ローラ7と牽体4は間隙tを隔てる高さに支持されている。
【0025】
袋案内手段3は、縦型包装装置2から落下する包装袋6をコンベヤ5まで導く傾斜板、ガイドシュート、又は溝形レールである。コンベヤ5は、無端状のベルトから成る牽体4を2つの回転輪51,52に巻掛けし、回転輪51をモータ等で回転させることにより、牽体4の上弦を矢印C方向へ走行させるものである。コンベヤ5の筐体53には、牽体4の上弦を支持する底板54が取付けられている。
【0026】
押圧ローラ7は、矢印C方向に直交する幅方向に延びる回転軸71に円板72を取付け、円板72の周縁に、ウレタンゴムから成る弾性輪材73を取付けたものである。図4は、弾性輪材73の幅方向の断面を表している。弾性輪材73の幅wは、包装袋6の幅の2/3乃至1/4である。弾性輪材73はその周面を接触面としており、この接触面は断面山形、特に中央部(w/2の位置)が最も突出した形状がよく、接触面が断面円弧状、すなわち円環(トーラス)面を形成することが好ましい。寸法線rは円環面の幅方向の曲率半径を表している。
【0027】
回転駆動手段8は、その出力軸81を自在継手82、及びギアボックス83に収納されたギア列を介して回転軸71に接続したモータである。支持手段9は、回転軸71の両端部を軸受けするベアリング91を、コンベヤ5の筐体53の両側に設けた一対のステー92で各々支持したものである。ベアリング91をステー92に直に固定してもよいが、ベアリング91とステー92との間に、次に述べる昇降案内手段11を設けるようにしても良い。
【0028】
昇降案内手段11は、ステー92に縦溝部材12を取付け、縦溝部材12にスライドレール13を係合し、スライドレール13をベアリング91に接続部材14を介して接続したものである。スライドレール13は、縦溝部材12に対して上下方向に滑動できるので、図中にドットを付した要素と共に押圧ローラ7は、コンベヤ5の牽体4に対して自由に昇降することができる。このような昇降案内手段11を用いることで、包装袋6に内包される麺の太さが異なる場合にも対応でき、例えば、焼きそばとうどん等、それぞれの麺の種類に適した間隙tの広さを麺の種類ごとに調整可能とすることができる。
【0029】
また、押圧ローラ7が自重で下降する下限を、図に表れていないストッパで規定することにより、弾性輪材73の接触面とコンベヤ5の牽体4との間隙tを所望の広さに保つようにしても良い。一方、押圧ローラ7を下方へ押す付勢手段を設ける場合は、押圧ローラ7の重さに依存しても良いが、接続部材14を押し下げるスプリング等を付勢手段として適用しても良い。
【実施例1】
【0030】
包装袋6は包装袋内一辺を150mmとした略正方形である。これに一食分にカットされ、茹で又は蒸し後すぐに水洗した中華麺(切刃番手20番、水洗後麺厚約2mm)150gが投入されている。包装方法は、縦型ピロー包装機によって包装されたものであって、包装時の麺は包装体中に図6の(c)のように下縁部61側寄りに、平面視略ホームベースのような形状に包装されることが多く、空気も一緒に内包される。
【0031】
コンベヤ5は40m/minの速度で牽体4を走行させる。押圧ローラ7は、弾性輪材73の接触面の曲率半径rを25mmとしている。弾性輪材73の接触面の直径(押圧ローラ7の直径)は200mmであり、弾性輪材73の幅wは50mmである。押圧ローラ7は、コンベア5の牽体4との間で包装袋6が詰まる等の異常な力が掛かった時以外は間隙tが所定の広さに保たれるように、付勢手段と図示されないストッパによって略固定されている。間隙tは約3mmの広さである。押圧ローラ7が回転する速度は、弾性輪材73の接触面先端の周速度が約40m/minになるよう設定されていて、弾性輪材73の接触面の周速度とコンベヤ5の牽体4の走行する速度と一致する。
【0032】
先ず、縦型包装装置2から落下する包装袋6は、その下縁部61を先行させた姿勢で、袋案内手段3を矢印B方向へ滑降し、コンベヤ5の牽体4の上面に載せられる。この状態で、コンベヤ5が包装袋6を矢印B方向の前途へ搬送するので、包装袋6は下縁部61から先に押圧ローラ7とコンベア5の牽体4の隙間、間隙tへ進入する。弾性輪材73の接触面が、コンベヤ5に搬送される包装袋6の下縁部61から上縁部62に転がり接触するのに従って、包装袋6の下縁部61に片寄った麺線Nは、包装袋6の下縁部61へ押し戻される力を押圧ローラ7から受ける。
【0033】
麺線Nは、縦型包装装置2によって包装された時点で柔軟性を有し水濡れしているので、上記の力を受けると包装袋6の上縁部62、四隅63へ向って滑らかに移動できる。これにより、包装袋6の内部で麺線Nが包装袋6の隅部まで行き渡り、一方、押圧ローラ7と接触した部分は麺線Nが追いやられ、一旦は反って凹んだ状態となる。しかし、間隙tよりも内包される麺線厚(麺の太さ)が薄いため、あるいは麺線Nが引っ張られて細くなることで、麺線Nは潰れたり切れたりしていない状態で存在している。次に、押圧ローラ7との接触から包装袋6が抜けると、包装袋6内の麺線Nは元に戻ろうとする力で、押圧時に凹んだ箇所が復元され、包装袋6は概ね平に均された状態となった。この押圧ローラ7の通過後の包装袋6の厚みは、平均15mmでほぼ平らに均されていた。
【0034】
本装置においては、弾性輪材73の接触面が包装袋6に転がり接触する過程で、弾性輪材73の接触面の幅を2等分する位置が、四角形の包装袋6のほぼ幾何学的中心を通るため、麺線Nは、包装袋6の幾何学的中心から幅方向へ向けて押される力を押圧ローラ7から受ける。また、弾性輪材73の接触面は、両側の外縁部74から内方へ向うに従い径方向へ突出する。言い換えると、外縁部74から弾性輪材73の接触面の幅を2等分する位置へ向うに従い弾性輪材73の接触面が牽体4に接近するので、麺線Nは、弾性輪材73の接触面の幅を2等分する位置(接触面の最も突出している部位)で最も強く押し下げられる。これにより幅方向へ逃げようとする麺線Nが包装袋6の四隅63に追込まれ、包装袋6の四隅63は麺線Nで満たされることになる。
【0035】
また、本装置においては押圧ローラ7の径が大きいため、包装袋6に接触している時間が長く、充分に麺線Nを包装袋6の隅部63に追込むことができ、また、押圧時間が長いことで、押圧後に麺線Nの弾性によって麺線Nが元の状態に戻ってしまうことを適度に防止することができる。さらに、押圧ローラ7の径が大きいために、押圧ローラ7とコンベヤ5の牽体4との間隔が徐々に狭まる構造となるので、包装袋6と内包される麺Nが急激に押圧されず、麺線Nに与えるダメージが少ない。
【0036】
以上の効果は、押圧ローラ7による特異なものであり、図5(a)に示すように、包装袋6との幅方向の接触面積の大きい樽形の押圧ローラ70によっては達成できるものでない。また、同図(b)に示すように、回転軸71に幅方向に複数のごく薄い押圧ローラ75を取付けた場合も、押圧ローラ7による特異な効果を達成することはできない。
【0037】
なお、上記実施例の包装麺の整形装置1においては、押圧ローラ7は付勢手段によって異常な力が掛かった場合に上昇可能に支持されている。すなわち、包装袋6と共に麺線Nが間隙tを通過するときに、押圧ローラ7が麺線Nから受ける反力が所定の力を上回れば、この荷重を上方へ逃すことができる。これにより、弾性輪材73の接触面と牽体4との間で麺線Nが過度に圧迫されることを防止し、あるいは包装袋6が弾性輪材73の接触面と牽体4との間を通過できなくなる事態を回避することができる。
[その他の実施形態]
【0038】
なお、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々なる改良、修正、又は変形を加えた態様で実施できる。例えば、縦型包装機2は包装袋6の下縁部61側に偏って麺が充填されるタイプの装置であれば、縦型ピロー包装機以外でも、重力を利用して麺を投入する装置であれば、例えば縦型の三方あるいは四方の包装機等でもかまわない。
【0039】
また、包装袋6の下縁部61を進行方向に向けてコンベヤ5の牽体4上に案内する袋案内手段3として傾斜板等を例示したが、コンベヤ5上又はコンベヤ5の手前において包装袋6の向きを調整する整列装置や、整列する型枠に投入する装置、あるいはマニプレータによって整列させても良く、このような手段を袋案内手段としてもよい。要は、コンベヤ5の進行方向に向けて包装袋6の下縁部61が前になるような手段を講じれば良い。ただし、包装袋6の幅と合致させ、姿勢が変わらないようにしながら移送できるようにしたガイドレール等の袋案内手段3が、装置的に簡単で、しかも確実で、人手もかからず好ましい。
【0040】
また、前記実施例ではコンベヤ5として牽体4を有するベルトコンベヤを例示したが、チェーンコンベヤでも良い。また、牽体4がたわまないように牽体4を支持する底板54を設定したが、底板54がない構造でも良いことは言うまでもない。牽体4がたわむようにすれば、牽体4自身が付勢手段に類する効果を得ることもでき、あるいは、押圧ローラ7とコンベヤ5の牽体4との間隙tを非押圧時において0とすることもできる。また押圧ローラ7は直径が大きく、狭幅の円盤状のロールとしたが、包装袋6に接触する部分の幅が包装袋6の幅の2/3〜1/4、最も好ましくは1/2〜1/3程度とすればよく、従って、当該条件を満たせば、図示以外の形状も可能である。
【0041】
一方、直径が大きい押圧ローラ7を用いることで、包装袋6と押圧ローラ7との接触時間を長くでき、押圧後に麺線Nが包装袋6内で押圧前の状態に戻ってしまうことを抑制できるため、直径が大きい方が好ましいと記載したが、このような主旨からすると、必ずしも直径の大きいとは言えない押圧ローラ7であっても、包装袋6の移送経路上(包装袋6の幾何学的中心を通る箇所)にこのようなローラを直列に複数個一列に並べて、同じ位置を何度も押圧するようにしても良い。ただし、前述したように、麺線Nに与えるダメージからすれば、径の大きい押圧ローラ7が最も好ましい。そして、最も好ましい押圧ローラの直径としては、押圧される包装袋6内における上縁部62から下縁部61の長さの1〜4倍程度とするのがよく、このような押圧ローラ7を一つの包装袋6に対して一回押圧するように設置するのが特に好ましい。
【0042】
上記実施例では、押圧ローラ7の接触面は断面円弧状のものを図示し、説明文においてコンベア5の牽体4に向って突出する山形の形状でも良いと記載した。このような形状としては具体的には、断面略三角形状、台形状等のものが可能であるが、麺線Nや包装袋6への影響を考えれば、好ましくは先端部に角部のない丸い形状とするのが良い。また、接触面にはウレタンゴムからなる弾性輪材73を設けたが、このように適度に滑らない弾性材を接触面に設けることで、包装袋6が牽体4と同方向に回転する押圧ローラ7との間に引き込まれるようにして押圧できるため、包装袋6が間隙tに詰まる等の問題を起こしにくく、好ましい。しかし、このような押圧が可能であれば、弾性材としてウレタンゴム以外の素材を用いることも可能であり、また場合によっては弾性輪材73を有さない円板72のみの構造でもかまわない。
【0043】
なお、押圧ローラ7は前記狭幅(接触する部分の幅が包装袋幅の2/3〜1/4)のロールを包装袋6の移送経路上に、包装袋6の幾何学的中心を通る箇所に少なくとも一つ設置する必要がある。この場合、包装袋6の搬送方向(コンベア5の牽体4の進行方向)については、前述したように、一つの包装袋6に対して径の大きい押圧ローラ7が1回押圧するように、包装袋の移送経路上に該押圧ローラを一台設置するのが好ましいが、麺線の弾力性が強く1回の押圧では麺線が均一に均せない場合等は、複数回押圧するように、一つの包装袋6の移送経路上に押圧ローラ7を複数個設置してもよい。
【0044】
一方、包装袋6の移送方向に対して横方向(コンベヤ5の幅方向)については、一つの包装袋6に対して同時に複数の押圧ローラで押圧すると(例えば図5(b)の形状)、包装袋6の外側に接触するローラが麺線Nの包装袋6の隅部への追込みを邪魔するので、一つの包装袋6に対して横方向には押圧ローラ7は一つ設置するべきである。従って、一つの包装袋6に対して横方向に別の押圧ロールを設置したい場合には、移送経路上の移送方向に位置(軸)を違えて設置する。ただし、麺線Nの包装袋6の隅部への追込みを邪魔しないような形態のものであれば、さらに補助的なローラを幅方向に付加することも可能である。
【0045】
また、前記実施例においては、押圧ローラ7の外周の速度がコンベヤ5の速度と同一としたが、押圧ローラ7は搬送されてくる包装袋6を、押圧ローラ7とコンベヤ5の牽体4の間隙tに引き込むように、コンベヤ5の牽体4と同方向(α、C方向)に回転すれば、その速度は違っていてもかまわない。
【0046】
また、押圧ローラ7とコンベヤ5の牽体4の間隙tは、前記実施例では3mmの広さとしたが、間隙tが固定の間隔である場合、麺線Nが太い麺の場合で麺線Nの太さ(麺厚)の略1本分から2本分、麺線Nが細い場合は麺線Nの太さ(麺厚)の略1本分から3本分が最適である。具体的には、麺の種類によっても異なるが、焼きそばのような中華麺の場合、約1.5〜4mm、うどんの場合5〜15mm程度が特に好ましい。
【0047】
コンベヤ5の牽体4がたわむようなものの場合や、付勢手段によって押圧ローラ7が上下する場合、あるいは押圧ローラ7の接触面(包装袋への接触箇所)がスポンジ状等の伸縮可能な素材の場合には、前記、押圧ローラ7とコンベヤ5の牽体4との間隙tは、非押圧時は0、すなわち接していてもかまわない。ただし、このような構造の場合でも、包装袋6を押圧している時の押圧ローラ7とコンベア5の牽体4との間隙tは、麺線Nが潰れたり包装袋6が詰まってしまうような過大な力が掛かる場合以外、前記同様、麺線Nの太さの1本分から2本分又は1本分から3本分の間隔となるように押圧するのが良い。従って、押圧ローラ7とコンベア5の牽体4の間隙tが変動する場合、間隙tが上記した間隔以上に広がらないようなストッパを設置する等の手段を付加することもできる。
【0048】
しかし、間隙tが上記した間隔以上に広がらない構造としてしまうと、極端に集塊した麺線Nが搬送されてきた場合等に対応できず、間隙tに包装袋6が詰まってしまう等のトラブルが生じる場合も考えられるので、このような過大な負荷が掛かった場合にのみ押圧ローラ7が上昇して逃げるような、付勢手段を設けることが好ましい。具体的に特に好ましい構造としては、前記実施例のように、付勢手段が過大な力が掛かった場合のみ上昇するような押圧力で押圧ローラ7を下方に付勢し、常時(トラブル時以外の押圧時、非押圧時)は間隙tの間隔が固定されているような構造であることが好ましい。
【0049】
以上の説明では1つの包装袋6に注目したが、複数の包装袋6を幅方向に並べてコンベヤ5で同時に搬送し、これらの包装袋6に各々転がり接触する複数の押圧ローラ7を回転軸71に設けても良い。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は、弾性を有する麺類の包装に有益な技術である。また、包装袋6は、変形の容易なものであれば、その材質又は寸法について何ら限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の実施形態に係る包装麺の整形装置の概略を示す側面図。
【図2】本発明の実施形態に係る包装麺の整形装置の一部を破断した側面図。
【図3】本発明の実施形態に係る包装麺の整形装置の平面図。
【図4】本発明の実施形態に係る包装麺の整形装置の要部の断面図。
【図5】(a)は押圧ローラの比較例の正面図、(b)はその他の比較例の正面図。
【図6】(a)は縦型包装装置の原理を説明する側面図、(b)は縦型包装装置によって形成された包装袋6の側面図、(c)はその正面図。
【符号の説明】
【0052】
1:包装麺の整形装置
2:縦型包装装置
3:袋案内手段
4:牽体
5:コンベヤ
6:包装袋
7:押圧ローラ
8:回転駆動手段
9:支持手段
11:昇降案内手段
61:下縁部
74:外縁部
t:間隙
N:麺線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上縁部及び下縁部を有する四角形の包装袋に茹で又は蒸した麺線を包装する縦型包装装置に取付けられる包装麺の整形装置であって、
前記縦型包装装置によって麺線が包装された包装袋を、その下縁部が先行する姿勢で水平方向へ案内する袋案内手段と、前記袋案内手段によって前記包装袋が案内される方向へ向けて牽体を走行させるコンベヤと、前記牽体の走行する方向に直交する幅方向の断面が山形の接触面を有する押圧ローラと、前記押圧ローラを回転させる回転駆動手段と、前記押圧ローラをその山形の接触面の先端が前記牽体上面に接するか又は隙間を有して牽体の上方に支持する支持手段とを備え、
前記コンベヤが前記包装袋を前記牽体に載せて搬送し、前記回転駆動手段が、前記押圧ローラをその接触面が前記コンベヤにより搬送される包装袋に転がり接触できる方向に回転させ、前記押圧ローラの接触面が、前記コンベヤにより搬送される包装袋に、その四角形の幾何学的中心を通り、かつ前記幾何学的中心を通る押圧ローラの接触面が前記包装袋の幅の2/3乃至1/4の範囲を押圧することを特徴とする包装麺の整形装置。
【請求項2】
前記押圧ローラの断面山形の接触面が、前記幅方向の両側から内方へ向うに従い径方向に突出することを特徴とする請求項1に記載の包装麺の整形装置。
【請求項3】
前記押圧ローラの断面山形の接触面が、断面円弧状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の包装麺の整形装置。
【請求項4】
前記押圧ローラの直径が、前記包装袋の上縁部から下縁部までの長さの1乃至4倍の長さを有することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の包装麺の整形装置。
【請求項5】
前記押圧ローラが、前記コンベアによって搬送される包装袋の進行方向に一台設置されている請求項4に記載の包装麺の整形装置。
【請求項6】
前記押圧ローラの断面山形の接触面の先端とコンベヤの牽体上面の間に、前記包装袋に内包される茹で又は蒸した麺線の太さ1本分乃至3本分の長さの間隙を有することを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の包装麺の整形装置。
【請求項7】
前記支持手段には、押圧ローラを昇降自在に案内する昇降案内手段と、前記押圧ローラを下向きに付勢する付勢手段とを備えることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の包装麺の整形装置。
【請求項8】
縦型包装装置によって上縁部及び下縁部を有する四角形の包装袋に、茹で又は蒸した麺線が包装された包装麺を整形する方法であって、
前記麺線が包装された包装袋を、その下縁部が先行する姿勢でコンベアの牽体上を水平方向に搬送し、
前記搬送中に、回転駆動する押圧ローラによって、該押圧ローラの接触面が、前記コンベヤにより搬送される包装袋の四角形の幾何学的中心を通り、かつ前記幾何学的中心を通る押圧ローラの接触面が前記包装袋の幅の2/3乃至1/4の範囲を押圧しながら、転がり接触させる包装麺の整形方法。
【請求項9】
前記押圧ローラによって、前記包装袋を押圧しながら、転がり接触させる時の、前記押圧ローラの接触面と前記コンベヤの牽体上面との間隔が、前記麺線の太さの1本分乃至3本分の間隔となるように押圧することを特徴とする請求項8に記載の包装麺の整形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−196653(P2009−196653A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−38112(P2008−38112)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【出願人】(307036801)株式会社 ダイケン (2)
【Fターム(参考)】