説明

化合物

本発明は種々の治療用途のある新規化合物を開示する。より詳細には本発明は選択的エストロゲン受容体モジュレーションに特に有用な新規対称性トリフェニル化合物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の治療用途を有する新規化合物、より詳細には選択的エストロゲン受容体モジュレーション (SERM)に特に有用な対称性トリフェニル化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロゲンは、生殖器系の発達と維持に関わる細胞プロセスにおける周知の内分泌調節因子である。エストロゲンは、多くの非生殖組織、例えば骨、肝臓、心臓血管系、および中枢神経系に重要な影響を及ぼすことも示されている。エストロゲンがどのようにその効果を発揮するのかについての最も広く受け入れられている仮説は、細胞内ステロイドホルモン受容体に結合することによるというものである。該受容体とそれに結合したリガンドが細胞核に輸送された後、この複合体はDNA中の認識部位に結合し、これが特定の遺伝子のモジュレーションを可能にする。さらに、エストロゲンが膜開始型シグナル伝達カスケードを介してその効果を仲介しうることが今や明らかになりつつあるが、この研究の多くは依然として試験的なものである(Kousteni ら, Journal of Clinical Investigation, (2003), 111, 1651-1664、かかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる)。
【0003】
特定の物質については、その生物学的活性が「組織選択的」な様式で発揮される能力が有ることが実証されている。言い換えると、組織選択性は、特定の組織においてエストロゲンアゴニストとして機能する一方で、別の組織ではエストロゲンアンタゴニストとして作用することを可能にする。こうした分子には「選択的エストロゲン受容体モジュレーター」(SERM)という用語が与えられた。SERMの例としては、タモキシフェン、ラロキシフェン、ラソフォキシフェン、クロミフェン、およびナフォキシジンが挙げられる。この組織選択的活性の分子的機序は完全に理解されているわけではない。特定の理論に限定されるものではないが、エストロゲン受容体を異なるコンホメーション状態にし、コアクチベーターおよびコリプレッサータンパク質ならびに転写調節に関わる他の重要なタンパク質をリクルートするに当たっての異なる機能を可能にするリガンドの能力が役割を果たすと考えられている。McDonnell, D. P., The Molecular Pharmacology of SERMs, Trends Endocrinol. Metab. 1999, 301-311を参照されたい。かかる記載に関して参照により本明細書に組み入れる。
【0004】
歴史的にはエストロゲンは単一のエストロゲン受容体(今日ではエストロゲン受容体アルファ (ERα)と命名されている)を介してその生物学的活性を示すと考えられていた。しかし最近、エストロゲン受容体の第2のサブタイプが発見され、エストロゲン受容体ベータ (ERβ)と命名された。Kuiper ら, WO 97/09348およびKuiper ら, Cloning of a Novel Estrogen Receptor Expressed in Rat Prostate and Ovary, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 1996, pp. 5925-5930を参照されたい。かかるサブタイプに関して参照により本明細書に組み入れる。ERβはヒトにおいて発現されている。Mosselman ら, ERβ: Identification and Characterization of a Novel Human Estrogen Receptor, FEBR S Lett., 1996, pp. 49-53を参照されたい。かかる発現に関して参照により本明細書に組み入れる。このエストロゲン受容体の第2のサブタイプの発見によりエストロゲンシグナル伝達の生物学的複雑性は著しく増大し、これは現在入手可能なSERMの組織選択的作用の一部に関与している可能性がある。
【0005】
上に記載のように、エストロゲンは多くの非生殖組織において重要な影響がある。したがって、エストロゲンモジュレーションは、かかる組織 (骨、肝臓および中枢神経系を含む)に関連する疾患および症状の治療および/または予防に有用であると考えられている。例えば骨粗鬆症は単位容積当たりの骨量の純喪失を特徴とする。かかる骨喪失により、結果として骨格は身体のために適切な構造的支持を提供することができず、そのことにより骨折のリスクが高くなる。最も一般的な種類の骨粗鬆症は閉経後骨粗鬆症であり、これは女性における月経の停止および内在性エストロゲンレベルの減少に続く骨喪失の加速に関連している。エストロゲンレベルの低下による急激な骨喪失の過程にある閉経期前後のおよび閉経後の女性については、骨密度の測定値と骨折リスクの間に反比例関係が見られる。Slemenda, ら, Predictors of Bone Mass in Perimenopausal Women, A Prospective Study of Clinical Data Using Photon Abr sorptiometry, Ann. Intern. Med., 1990, pp. 96-101およびMarshall, ら, Meta-Analysis of How Well Measures of Bone Mineral Density Predict Occurrence of Osteoporotic Fractures, Br Med. J., 1996, pp. 1254-1259を参照されたい。これらの各文献をかかる関係性に関して参照により本明細書に組み入れる。現在高齢の女性には約75%という骨折の生涯リスクがある。さらに米国では50歳以上の白人女性について約40%の股関節の骨折リスクがある。入院の必要性ゆえに骨粗鬆症性骨折による経済的負担は大きい。さらに、骨粗鬆症は一般に命を脅かすと考えられていないが股関節の骨折から4カ月以内の死亡率は現在約20〜30%である。閉経後骨粗鬆症の現在の治療としては、ホルモン補充療法または他の再吸収阻害剤(ビスホスホネートまたはカルシトニンなど)を用いた治療が挙げられる。同様に、SERMSが閉経後骨粗鬆症の治療において有効であることが示されている(Lindsay, R.: Sex steroids in the pathogenesis and prevention of osteoporosis. In: Osteoporosis 1988. Etiology, Diagnosis and Management. Riggs BL (編)l, Raven Press, New York, USA (1988):333-358; Barzel US: Estrogens in the prevention and treatment of postmenopausal osteoporosis: a review. Am J. Med (1988) 85:847-850; およびEttinger, B., Black, D.M., ら, Reduction of Vertebral Fracture Risk in Postmenopausal Women with Osteoporosis Treated with Raloxifene, JAMA, 1999, 282, 637-645を参照されたい。これらの各文献をかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる)。
【0006】
別の例として、エストロゲンの乳房組織、とくに乳癌に対する効果は詳細に実証されている。例えば以前に同定されたSERMであるタモキシフェンは、再発性の乳癌、対側乳癌のリスクと死亡率を減少させるとともに、乳癌の様々な段階にある患者の無病生存率を高める。Cosman, F., Lindsay, R. Selective Estrogen Receptor Modulators: Clinical Spectrum, Endocrine Rev., 1999, pp. 418-434を参照のこと。かかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。ただし、タモキシフェンの特性は、生殖組織(子宮組織など)に対する相互作用特性の可能性ゆえに理想的なものではない。このような癌の治療のための療法には改善の余地があり、すなわち生殖組織に対するアゴニスト特性の低いSERMという改善の余地がある。
【0007】
閉経後の女性では心臓血管疾患が主要な死亡原因である。最近までは、多数のデータは、閉経後の女性におけるエストロゲン補充療法が心臓血管疾患のリスクを低減させることを示唆していたが、一部の研究は全体としての死亡率には有益な効果がないと報告した。Barrett-Connor, E. ら, The Potential of SERMs for Reducing the Risk of Coronary Heart Disease, Trends Endocrinol. Metab., 1999, pp. 320-325を参照のこと。参照により本明細書に組み入れる。エストロゲンが心臓血管系に対して有益な効果を発揮すると考えられる機構は完全には明らかになっていない。可能性としてエストロゲンによる、血清コレステロールおよびリポタンパク質、抗酸化特性、血管平滑筋増殖、ならびに動脈コレステロール蓄積の阻害に対する影響が役割を果たすと考えられていた。同上。またCosman, F., Lindsay, R. Selective Estrogen Receptor Modulators: Clinical Spectrum, Endocrine Rev., 1999, pp. 418-434も参照されたい。これを参照により本明細書に組み入れる。しかしながらHERS IIおよびWHI研究の最近の報告によると、継続的な併用ホルモン療法、すなわちCEE+MPA [コンジュゲート化ウマエストロゲン+メドロキシプロゲステロンアセテート]は閉経後の女性の心臓血管に何ら恩恵をもたらさない。Hulley S., Grady, D., Bush, T., ら, Randomized trial of estrogen plus progestin for secondary prevention of coronary heart disease in postmenopausal women. Heart and Estrogen/progestin Replacement Study (HERS) Research Group. J. Am. Med. Assoc. (1998) 280:605-613およびWassertheil-Smoller S., Hendrix, S.L., Limacher, M., ら, for the WHI Investigators. Effect of estrogen plus progestin on stroke in postmenopausal women: the Women’s Health Initiative: a randomized trial. JAMA (2003) 289, 2673-2684を参照されたい。各文献をかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。こうした知見をどこまでSERMについて適用できるかは、これから明らかにされるべき事項である。
【0008】
他の治療上の代替手段としてはエストロゲン補充療法および/またはホルモン補充療法が挙げられ、これらは血管運動症状、尿生殖器萎縮、うつ病および糖尿病の治療に有用でありうる。女性の75%以上が閉経期において血管運動症状を経験する。血管運動症状や尿生殖器萎縮のような臨床的兆候はエストロゲン補充療法を用いた治療により和らぐ。Sagraves, R., J. Clin. Pharmacol. (1995), 35(9 Suppl):2S-10S、かかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。予備データは、エストラジオールが閉経期においてうつを緩和し、エストロゲンおよび選択的セロトニン再吸収阻害剤の併用が閉経後にうつを緩和しうることを示唆している。Soares, C. N., Poitras, J. R., and Prouty, J., Drugs Aging, (2003), 20(2), 85-100, かかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。さらにホルモン補充療法は、糖尿病の女性における血糖コントロールを改善しうる。Palin, S.L. ら, Diabetes Research and Clinical Practice, (2001), 54, 67-77; Ferrara, A. ら, Diabetes Care, (2001), 24(7), 1144-1150)、各文献をかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。しかしながら、よりよい副作用特性をもたらす改善された治療法が必要とされている。
【発明の開示】
【0009】
発明の概要
本発明者らはエストロゲン受容体アルファおよびエストロゲン受容体ベータに結合しそれらをモジュレートする対称性トリフェニル化合物の新規な一群を見出した。SERMSとして、これらの化合物は、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、女性性機能障害、乳癌、抑うつ症状、糖尿病、骨脱灰のような症状の治療および/または予防ならびに骨粗鬆症の治療および/または予防に有用であると考えられる。
【0010】
本発明は、式Iの化合物
【化1】

【0011】
[式中、
各々のR3は、同一であり、かつ、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
R4は-OCH2C(O)OHであり; かつ
R1はC1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5はヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される;
あるいは、
R1はC1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される;
あるいは、
R1はC3-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される]
またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0012】
ある実施形態によると、式Iの化合物はいずれかの実施例に記載のように調製する。
【0013】
別の実施形態において本発明は、活性な治療用物質としての式Iの化合物、その塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0014】
別の実施形態において本発明は、式Iの化合物、その塩もしくは溶媒和物、および製薬上許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0015】
別の実施形態において本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレーションの影響を受ける症状または障害の予防を含む治療に使用するための式Iの化合物、その塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0016】
別の実施形態において本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレーションの影響を受ける症状または障害の治療(これは予防を含んでもよい)における式Iの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0017】
別の実施形態において本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレーションの影響を受ける症状または障害の治療(以後これは予防も含むように用いる)のための医薬の製造における、式Iの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物の使用を提供する。
【0018】
別の実施形態において本発明は、式Iの化合物、またはその塩もしくは溶媒和物を用いる、治療を必要とする哺乳動物における選択的エストロゲン受容体モジュレーションの影響を受ける症状または障害の治療(これは予防も含みうる)方法を提供する。
【0019】
別の実施形態において本発明は、症状、例えば更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、子宮内膜症、女性性機能障害、乳癌、抑うつ症状、糖尿病、骨脱灰、および骨粗鬆症から選択される症状の治療方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
発明の詳細な説明
本明細書中では本発明を、当業者に知られ理解されている用語を用いて説明する。わかりやすくするために特定の用語については定義する。しかしながら特定の用語について定義したからといって、定義されていない用語が不明確であることを示唆するものと解釈されてはならない。そうではなく、使用するすべての用語は、当業者が本発明の範囲を理解しそれを実施することができる用語で本発明を説明するものと考えられる。
【0021】
本明細書において用いる「アルキル」という用語は、1〜12個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の炭化水素を言う。本明細書において用いる「アルキル」の例としては、限定するものではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、n-ペンチルなどが挙げられる。
【0022】
本明細書において用いる「アルキレン」という用語は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖の二価炭化水素基を言う。本明細書において用いる「アルキレン」の例としては、限定するものではないが、メチレン、エチレン、n-プロピレン、n-ブチレンなどが挙げられる。
【0023】
本明細書において用いる「ハロゲン」と言う用語はフッ素、塩素、臭素またはヨウ素を言う。
【0024】
本明細書において用いる「ハロアルキル」という用語は、少なくとも1つのハロゲンで置換された(本明細書に定義の)アルキル基を言う。本発明に有用な直鎖または分枝鎖の「ハロアルキル」基の例としては、限定するものではないが1以上のハロゲン(例えばフルオロ、クロロ、ブロモおよびヨード)で独立に置換されたメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、およびt-ブチルが挙げられる。「ハロアルキル」という用語には、パーフルオロアルキル基(すなわちトリフルオロメチル)などの置換基も含まれると解釈すべきである。
【0025】
本明細書において用いる「アルコキシ」という用語は-OR基を言い、ここでRは上に定義したアルキルである。
【0026】
本明細書において用いる「アシル」と言う用語は-C(O)R基を言い、ここでRはアルキル、アリール、ヘテロアリール、またはヘテロシクリル(それぞれ本明細書に定義)である。
【0027】
本明細書において用いる「ヒドロキシ」という用語は-OH基を言う。
【0028】
本明細書において用いる「カルボキシ」と言う用語は-C(O)OH基を言う。
【0029】
本明細書において用いる「ニトロ」と言う用語は-NO2基を言う。
【0030】
本明細書において用いる「アミノ」と言う用語は-NH2基を言うか、または置換アミノ基を言うときにはアルキル基で置換されたアミノ基を言う。
【0031】
本明細書において用いる「シクロアルキル」と言う用語は、3〜10個の炭素原子を有する、非芳香族性の、飽和または不飽和の、単環式または二環式炭化水素環を言う。典型的な「シクロアルキル」基としては、限定するものではないがシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、およびシクロヘプチルが挙げられる。
【0032】
本明細書において用いる「アリール」と言う用語は、フェニル環、または1以上の追加のフェニル環と縮合して、例えばアントラセン、フェナントレン、もしくはナフタレン環系を形成する、フェニル環系を言う。「アリール」基の例としては、限定するものではないが、フェニル、2-ナフチル、1-ナフチル、ビフェニルなどが挙げられる。
【0033】
本明細書において用いる「ヘテロアリール」と言う用語は、単環式5〜7員芳香族環、またはかかる単環式5〜7員芳香族環を2つ含む縮合二環式芳香族環系を言う。こうしたヘテロアリール環は、N、O、およびSから選択される1〜4個のヘテロ原子を有し、このときN-酸化物、硫黄酸化物および二酸化物は許容されるヘテロ原子置換である。本明細書において用いる「ヘテロアリール」基の例としては、限定するものではないが、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、テトラゾール、チアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、ピリジン、ピリダジン、ピラジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、インダゾールなどが挙げられる。
【0034】
本明細書において用いる「複素環」または「複素環式」と言う用語は、1以上の不飽和度を有してもよく、かつ1〜4個のN、Oおよび/またはSから選択されるヘテロ原子を含む非芳香族、単環式または二環式環系を言う。「複素環」および「複素環式」にはまた、ヘテロ原子であるNまたはSがオキソにより置換されてN-酸化物および硫黄酸化物となるその変形化合物も含まれる。好ましいヘテロ原子としてはN、O、またはその両方が挙げられる。好ましくは環は3〜10員環であり、飽和しているかまたは1以上の不飽和度を有する。かかる環は場合により1以上の別の「複素環式」環、ヘテロアリール環、アリール環、またはシクロアルキル環に縮合していてもよい。「複素環式」基の例としては、限定するものではないが、テトラヒドロフラン、ピラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキサン、ピペリジン、ピロリジン、モルホリン、テトラヒドロチオピランおよびテトラヒドロチオフェンが挙げられる。
【0035】
典型的には、本発明の塩は製薬上許容される塩である。「製薬上許容される塩」という用語の包含する塩は、本発明の化合物の無毒性の塩を言う。本発明の化合物の塩には、酸付加塩も含まれうる。代表的な塩としては、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物塩、エデト酸カルシウム塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物塩、クラブラン酸塩、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート、エシレート、フマル酸塩、グルセプテート、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニレート、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物塩、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシレート、臭化メチル塩、硝酸メチル塩、硫酸メチル塩、マレイン酸一カリウム塩、粘液酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミン、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、カリウム塩、サリチル酸塩、ナトリウム塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート、トシレート、トリエチオジド、トリメチルアンモニウム塩、および吉草酸塩が挙げられる。製薬上許容されない他の塩は本発明の化合物の調製に有用である可能性があり、これらは本発明のさらなる態様をなすと見なされるべきである。
【0036】
本明細書において用いる「溶媒和物」と言う用語は、溶質 (本発明では式Iの化合物またはその塩もしくは生理学的に機能性の誘導体)と溶媒から形成される、さまざまな化学量論的量の複合体を指す。かかる溶媒は、本発明においては、溶質の生物学的活性を妨害するものであってはならない。適当な溶媒の非限定的な例としては、水、メタノール、エタノールおよび酢酸が挙げられるがこれに限らない。好ましくは使用する溶媒は製薬上許容される溶媒である。適当な製薬上許容される溶媒の非限定的な例としては、水、エタノールおよび酢酸が挙げられる。最も好ましくは使用する溶媒は水である。
【0037】
本明細書において用いるとおり、置換基が環構造に結合していることは、以下の表し方を用いて表すことができる:
【化2】

【0038】
この表し方は、R置換基が、特定された置換基または基により占有されていない、環構造上のどの位置にあってもよいことを表す。
【0039】
本発明は、式Iの化合物
【化3】

【0040】
[式中、
各々のR3は、同一であり、かつ、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
R4は-OCH2C(O)OHであり; かつ
R1は、C1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される;
あるいは、
R1は、C1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される;
あるいは、
R1は、C3-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される]
またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物を提供する。
【0041】
本発明の第1の実施形態において、R1はC1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;各々のR2は、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつR5は、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される。有利に第1の実施形態のR1はC2-C6アルキルから選択される。有利に第1の実施形態のR2はヒドロキシである。
【0042】
本発明の第2の実施形態において、R1は、C1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;各々のR2は、同一であり、かつC1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつR5は、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される。有利に第2の実施形態のR1 はC2-C6アルキルから選択される。有利に第2の実施形態のR5は水素である。
【0043】
本発明の第3の実施形態において、R1はC3-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;各々のR2は、同一であり、かつヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつR5は水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される。有利に、第3の実施形態のR1 は、C3-C6アルキルから選択される。有利に、第3の実施形態のR2はヒドロキシである。有利に第3の実施形態のR5は水素である。
【0044】
本発明の特に好ましい化合物としては以下のものが挙げられる:
({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]フェニル}オキシ)酢酸;
({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]フェニル}オキシ)酢酸;
[(4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル}フェニル)オキシ]酢酸;および
{[4-[1-エチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}酢酸。
【0045】
式(I)の化合物は1以上の形態で結晶化する可能性があり、これは多形と呼ばれる性質であるが、このような多形(多形体)は式(I)の範囲内にある。多形は一般的に、温度、圧力またはその両方の変化に応答して生じうる。多形はまた結晶化方法の変法の結果生じうる。多形は当技術分野で知られている種々の物理的性質(例えば粉末X線回折パターン、赤外線スペクトル、可溶性および融点など)により識別することができる。
【0046】
本明細書に記載の化合物の一部は1以上のキラル中心を有するか、さもなくば複数の立体異性体として存在しうる。本発明の範囲には、立体異性体の混合物ならびに純化されたエナンチオマーまたはエナンチオ/ジアステレオ富化された混合物も含まれる。また、式 (I)で表される化合物の個々の異性体、ならびにその全体的にまたは部分的に平衡化された混合物も本発明の範囲に含まれる。本発明にはまた、上の式で表される化合物の個々の異性体を、1以上のキラル中心が反転したその異性体との混合物として含む。
【0047】
別の実施形態において、それぞれの出現位置において、各々のアルキル、アルコキシ、ハロアルキル、およびアルキレンは場合により置換されていてもよい。本明細書をとおして用いる「場合により置換されていてもよい」という句またはその変形句は1以上の置換基での、任意選択の置換(これには複数度の置換も含まれる)を表す。この句は、本明細書に記載したもしくは具体的に示された置換パターンについて不明確であるまたはそれと重複すると解釈されてはならない。そうではなく当業者であれば、この句が特許請求の範囲内にある自明な改変を提供するためにあると理解するであろう。
【0048】
本発明は、治療を必要とする哺乳動物(例えばヒト)における選択的エストロゲン受容体モジュレーションの影響を受ける症状または障害の治療用の1種以上の式Iの化合物を含む。ある実施形態において本発明は、リストAから選択される症状または障害の治療方法を提供する:
リストA (選択的エストロゲン受容体モジュレーションの影響を受け、かつ式Iの化合物により治療することのできる症状または障害):骨粗鬆症、骨脱灰、骨量、骨密度もしくは骨成長の減少、変形性関節症、骨折の修復と治癒の促進、関節置換術の治癒の促進、歯周病、歯の修復もしくは成長の促進、パジェット病、骨軟骨異形成症、筋肉の萎縮、筋力や筋機能の維持と増強、もろさもしくは加齢性機能低下 (「ARFD」)、筋肉減弱症、慢性疲労症候群、慢性筋肉痛、急性疲労症候群、創傷治癒の促進、感覚機能の維持、慢性肝疾患、AIDS、無重量感、熱傷および外傷の回復、血小板減少症、短腸症候群、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎、肥満、悪液質もしくは加齢に関連した食欲不振を含む摂食障害、副腎皮質機能亢進症およびクッシング症候群、心臓血管疾患もしくは心機能異常、うっ血性心不全、高血圧、乳癌、乳腺、脳、皮膚、卵巣、膀胱、リンパ管、肝臓、腎臓、子宮、膵臓、子宮内膜、肺、結腸、および前立腺の細胞を含むアンドロゲン受容体を有する悪性腫瘍細胞、前立腺肥大、多毛症、ざ瘡、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、貧血症、高有毛症(hyperpilosity)、前立腺の腺腫と新生物形成、高インスリン血症、インスリン耐性、糖尿病、X症候群、脂質異常症、尿失禁、アテローム性動脈硬化症、性欲増強、性機能障害、うつ病、抑うつ症状、神経質、興奮性、ストレス、低下した精神力と低い自尊心、認知機能の改善、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症の中和、月経前症候群、避妊、子宮筋腫症、および/もしくは大動脈平滑筋細胞増殖、膣の乾燥、掻痒、性交疼痛、排尿障害、頻尿、尿路感染症、高コレステロール血症、高脂血症、末梢血管疾患、再狭窄、血管けいれん、免疫応答に起因した血管壁損傷、アルツハイマー病、骨疾患、加齢、炎症、慢性関節リウマチ、呼吸器系疾患、肺気腫、再灌流傷害、ウイルス性肝炎、結核症、乾癬、全身性エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、中枢神経系トラウマ、認知症、神経変性、乳房痛と月経困難症、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、女性性機能障害、性欲を増強するため、性的低下障害、性的興奮障害の治療のため、オルガズムの頻度と強度を増強すること、膣痙、骨減少症、子宮内膜症、BPH (良性前立腺肥大症)、月経困難症、自己免疫疾患、橋本甲状腺炎、SLE (全身性エリテマトーデス)、重症筋無力症、あるいは虚血心筋の再灌流損傷。より好ましくは治療は、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、子宮内膜症、女性性機能障害、乳癌、抑うつ症状、糖尿病、骨脱灰、または骨粗鬆症に関する。
【0049】
また本発明は、選択的エストロゲン受容体モジュレーションに関連する症状または障害の治療用の医薬の製造における1以上の式Iの化合物の使用を含む。好ましくは該医薬は上のリストAの症状および障害の治療のためである。
【0050】
本発明は、少なくとも1種の式Iの化合物を投与することを含む、選択的エストロゲン受容体モジュレーションに関連する症状または障害の治療方法を含む。好ましくは治療は上のリストAの症状および障害に関連する。
【0051】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は更年期障害もしくは閉経後障害の治療に有利であり得る。
【0052】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は血管運動症状の治療に有利であり得る。
【0053】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮の治療に有利であり得る。
【0054】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は萎縮性膣炎の治療に有利であり得る。
【0055】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は子宮内膜症の治療に有利であり得る。
【0056】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は女性性機能障害の治療に有利であり得る。
【0057】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は乳癌の治療に有利であり得る。
【0058】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は抑うつ症状の治療に有利であり得る。
【0059】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は糖尿病の治療に有利であり得る。
【0060】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は骨脱灰の治療に有利であり得る。
【0061】
式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物は骨粗鬆症の治療に有利であり得る。
【0062】
特に本発明の化合物は、単独でも他の薬剤と併用しても、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、女性性機能障害、乳癌、抑うつ症状、糖尿病、骨脱灰および骨粗鬆症の治療に有用であると考えられる。
【0063】
本明細書において用いる「有効な量」という用語は、例えば研究者または臨床医が求めようとしている、組織、系、動物またはヒトの生物学的または医学的応答を引き出す薬物または薬剤の量を言う。「治療に有効な量」という用語は、かかる量を受容していない対応する被験体と比較して、疾患、障害または副作用の治療、治癒、予防、もしくは改善あるいは疾患もしくは障害の進行速度の低下をもたらす量を言う。この用語の範囲にはまた、正常な生理学的機能を増強するのに有効な量も含まれる。
【0064】
本発明の化合物の治療に有効な量はいくつかの要因に依存する。例えば動物の年齢および体重、治療を要する当該特定の症状およびその重症度、製剤の性質、および投与の経路はいずれも考慮すべき要因である。治療に有効な量は最終的には掛かり付けの医師または獣医の判断によるべきである。例えば骨粗鬆症を罹患しているヒトの治療のための有効な量の式1の化合物は、一般に、1日当たり0.1〜100 mg/kg(受容者(哺乳動物)の体重)の範囲であろう。より一般的には有効な量は1日当たり1〜10 mg/kg(体重)の範囲であろう。したがって、70 kgの成体哺乳動物にとって1日当たりの実際の量は通常70〜700 mgとなる。この量は、1日当たりの1回量として、または1日の合計量が同じになるように1日当たりいくつか(例えば、2回、3回、4回、5回またはそれ以上)の分割用量としてとして施すことができる。化合物の塩または溶媒和物の有効な量は、式1の化合物それ自体の有効量に対する割合として決定することができる。エストロゲンにより仲介される、本明細書に記載の他の症状の治療には同じ様な用量が妥当であろう。
【0065】
治療に使用するために、治療に有効な量の式Iの化合物、ならびにその塩および溶媒和物はそのままの化学物質として投与することができる。さらに、活性成分を医薬組成物として提供することもできる。したがって本発明はさらに、有効な量の式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物、および1以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を提供する。式Iの化合物およびその塩または溶媒和物は上に記載したとおりである。担体、希釈剤、または賦形剤は、製剤の他の成分と適合可能であり、かつ医薬組成物の受容者に有害ではないという意味で許容されるものでなければならない。
【0066】
本発明の別の態様において、式Iの化合物またはその塩および溶媒和物を1以上の製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤と混合することを含む、医薬製剤の調製方法を提供する。
【0067】
医薬製剤は、単位用量当たりに所定量の活性成分を含む単位投与剤形として提供することができる。かかる単位は、非限定的な例として、治療すべき症状、投与経路、ならびに患者の年齢、体重および状態に応じて0.5mg〜1gの式1の化合物を含みうる。好ましい単位用量製剤は、上記のような、活性成分の1日用量もしくは分割用量、またはその適当な一部を含むものである。かかる医薬製剤は製薬分野で周知のどのような方法により調製してもよい。
【0068】
医薬製剤は、任意の適当な経路で投与するために適合させることができ、該経路には例えば経口(バッカルまたは舌下を含む)、直腸、鼻、局所(バッカル、舌下、または経皮を含む)、膣、または非経口(皮下、筋内、静脈内、皮内を含む) 経路がある。かかる製剤は、製薬の技術分野で公知のどのような方法により調製してもよく、例えば活性成分を担体または賦形剤と一緒にすることにより調製することができる。
【0069】
経口投与に適合させた医薬製剤は、分離した単位として、例えばカプセル剤または錠剤;粉剤または顆粒剤;溶液剤または懸濁液剤(それぞれ水性または非水性液体を使用);可食性のフォーム剤またはホイップ剤:水中油型液体エマルジョンまたは油中水型液体エマルジョンとして提供することができる。例えば、錠剤またはカプセル剤の形態での経口投与のためには、有効薬物成分を、経口用の、無毒性の製薬上許容される不活性担体(エタノール、グリセロール、水など)と組み合わせることができる。一般に粉剤は、化合物を適当な微細な大きさに細かく砕き、その後適当な製薬上の担体(可食性の炭化水素、例えばデンプンまたはマンニトール)と混合することにより調製する。香味剤、保存剤、分散化剤、および着色剤も存在してよい。
【0070】
カプセル剤は、粉剤、液体または懸濁混合物を調製し、それをゼラチンまたは何らかの別の適当な外皮材料を用いてカプセル化することにより製造する。流動化剤および滑沢剤、例えばコロイド状のシリカ、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、または固形ポリエチレングリコールなどを混合物に加えてからカプセル化を行ってもよい。カプセルが摂取されたときの医薬のアベイラビリティを改善するために、崩壊剤または可溶化剤、例えば寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムを添加することもできる。その上、所望によりまたは必要であれば、適当な結合剤、滑沢剤、崩壊剤および着色剤を混合物に組み込むこともできる。適当な結合剤の例としては、デンプン、ゼラチン、グルコースやβ-ラクトースのような天然糖、トウモロコシ甘味料、天然および合成ゴム、例えばアカシア、トラガカント、またはアルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。こうした剤形に有用な滑沢剤としては、例えばオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、限定するものではないが、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられる。錠剤は例えば、粉末混合物を調製し、顆粒またはスラッグを形成し、滑沢剤と崩壊剤を加え、ついで打錠することにより製剤化する。粉末混合物は、適当に細かく砕いた混合物を上に記載の希釈剤または基剤と混合することにより調製することができる。任意選択的な成分としては、結合剤(例えばカルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチンまたはポリビニルピロリドン)、溶解遅延剤 (例えばパラフィン)、再吸収促進剤(例えば四級塩)および/または吸収剤(例えばベントナイト、カオリンまたはリン酸二カルシウム)が挙げられる。粉末混合物は、結合剤(例えばシロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液またはセルロース材料もしくはポリマー材料の液剤)などを使用し、ついでふるいを強制通過させることにより湿式顆粒化することができる。顆粒化の代替方法として、粉末混合物を打錠機にかけることも可能であり、その結果得られるのは不完全に形成されたスラッグであり、これを破壊して顆粒とする。顆粒は、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたはミネラルオイルを添加することにより滑らかにして、錠剤成形金型への付着を防止することができる。次いで滑らかにした混合物を打錠する。本発明の化合物はまた、自由流動性の不活性担体と混合して、顆粒化またはスラッグ形成工程を経ることなく、直接打錠することもできる。シェラックのシーリングコート、糖またはポリマー材料のコーティング、およびワックスの光沢コーティングからなる透明または半透明の保護コーティングを施してもよい。異なる単位用量を区別するためにこうしたコーティングに着色料を添加してもよい。
【0071】
経口用の流動液剤(例えば溶液剤、シロップ剤およびエリキシル剤)は、その所定量があらかじめ決められた量の化合物を含有するように、単位投与剤形に調製することができる。シロップ剤は例えば、化合物を適当に香味付けした水溶液に溶解させることにより調製することができ、またエリキシル剤は無毒性のアルコール性ビヒクルを使用することにより調製する。懸濁液剤は一般に、化合物を無毒性のビヒクル中に分散させることにより配合することができる。可溶化剤および乳化剤(例えばエトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテル)、保存剤、香味添加剤(ペパーミント油もしくは天然甘味料、サッカリンまたは他の人工甘味料)などを添加してもよい。
【0072】
適当であれば、経口投与用の単位投与製剤をマイクロカプセル化することもできる。製剤はまた、放出が延長されるまたは持続するように調製することができ、これは例えば微粒子材料をポリマーやワックスなどでコーティングしたり、その中に包埋することにより行う。
【0073】
式Iの化合物ならびにその塩および溶媒和物はまた、リポソーム送達システム、例えば小さな一枚膜リポソーム、大きな一枚膜リポソームおよび多重膜リポソームの形態で投与することができる。リポソームは種々のリン脂質、例えばコレステロール、ステアリルアミン、またはホスファチジルコリンなどから形成することができる。
【0074】
式Iの化合物およびその塩または溶媒和物はまた、モノクローナル抗体を個々のキャリアー(これに該化合物分子がカップリングされる)として使用することにより送達することができる。本発明の化合物はまた、標的化することのできる薬物キャリアーとしての可溶性ポリマーにカップリングさせることもできる。かかるポリマーには、ポリビニルピロリドン (PVP)、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピルメタクリルアミド-フェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはパルミトイル残基で置換されたポリエチレンオキシドポリリシンが含まれうる。その上、本発明の化合物は、薬物の制御放出をもたらすのに有用な生分解性ポリマーの一群、例えばポリ乳酸、ポリεカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロピラン、ポリシアノアクリレート、およびヒドロゲルの架橋型または両親媒性ブロックコポリマーにカップリングさせることもできる。
【0075】
経皮投与に適合させた医薬製剤は、分離したパッチ(受容者の表皮と長時間にわたり密着することを意図したもの)として提供することができる。例えば、活性成分はPharmaceutical Research, 3(6), 318 (1986)(かかる送達システムに関連して本明細書に組み入れる)に一般的に記載されているように、イオントフォレシスによりパッチから送達され得る。
【0076】
局所用途用に適合させた医薬製剤は、軟膏剤、クリーム剤、懸濁液剤、ローション剤、粉剤、溶液剤、ペースト剤、ゲル剤、スプレー剤、エアロゾル剤、またはオイル剤として製剤化することができる。
【0077】
眼や他の外部組織(口や皮膚など)の処置のためには、製剤を局所用の軟膏剤またはクリーム剤として塗布することができる。軟膏剤として製剤化する場合、活性成分をパラフィン系または水混和性の軟膏基剤のいずれかと共に使用することができる。あるいはまた、活性成分を、水中油型クリーム基剤または油中水型基剤を用いてクリーム剤として製剤化することができる。眼への局所適用に適合させた医薬製剤としては点眼剤が挙げられ、この場合活性成分は適当な担体(特に水性溶媒)に溶解または懸濁される。口への局所適用に適合させた医薬製剤としてはロゼンジ剤、芳香錠、および洗口剤が挙げられる。
【0078】
鼻への投与に適合させた医薬製剤としては、担体が固形物の場合、例えば20〜500ミクロンの範囲の粒径を有する粗末剤が挙げられる。粉剤は鼻から吸い込む様式で(すなわち鼻に近づけて保持した粉剤容器から鼻孔への急激な吸入により)投与される。担体が液体の場合には、経鼻スプレーまたは点鼻剤として投与するための適当な製剤には、活性成分の水性溶液剤または油性溶液剤が含まれる。
【0079】
吸入による投与に適合させた医薬製剤としては、微粒子の散剤またはミストが挙げられ、これらは種々のタイプの加圧式定量噴霧器、ネブライザーまたは吸入器により生成させることができる。
【0080】
直腸投与に適合させた医薬製剤は坐剤または浣腸剤として提供することができる。
【0081】
膣投与に適合させた医薬製剤はペッサリー、タンポン、クリーム剤、ゲル剤、ペースト剤、フォーム剤またはスプレー剤として提供することができる。
【0082】
非経口投与用に適合させた医薬製剤としては、水性および非水性の滅菌注射溶液剤(これは抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および該製剤を意図する受容者の血液と等張にする溶質を含みうる)、ならびに水性および非水性の滅菌懸濁液剤(これは懸濁化剤および増粘剤を含みうる)が挙げられる。製剤は、単回用量または複数回用量容器、例えば密封されたアンプルやバイアル中に提供することができ、また、使用の直前に無菌液体担体(例えば注射用の水)を加えるだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態で貯蔵することができる。即座の注射溶液および懸濁液は滅菌散剤、顆粒剤および錠剤から調製することができる。
【0083】
上に具体的に挙げた成分の他に、製剤は対象の製剤の種類を考慮して当技術分野で慣用の他の添加剤を含んでもよい。例えば経口投与に適した製剤は、香味剤を含んでもよい。
【0084】
本発明の化合物およびその塩またはその溶媒和物は単独で、または上のリストAに記載の症状の治療のための他の薬剤と併用して用いることができる。例えば骨粗鬆症治療においては、他の骨粗鬆症治療剤との併用が考慮される。したがって本明細書における骨粗鬆症併用療法は、少なくとも1種の式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物の投与、および少なくとも1種の他の骨粗鬆症治療法の使用を含む。好ましくは、本発明の併用療法は、少なくとも1種の式Iの化合物またはその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1種の他の骨粗鬆症治療剤、例えば骨を形成させる薬剤の投与を含む。さらなる例として、本発明の併用療法には、少なくとも1種の本発明の化合物またはその塩もしくは溶媒和物、および少なくとも1種の他の骨粗鬆症治療剤、例えば抗骨再吸収剤を投与することが含まれる。記載したように、ある可能性のある追加の骨粗鬆症治療剤は骨を形成させる薬剤(同化作用性薬剤)である。骨を形成させる薬剤は、抗再吸収剤により達成することのできるパラメーター(骨密度など)よりも高い該パラメーターの上昇をもたらし得るものである。一部の事例では、かかる同化作用性薬剤は骨梁の連結性を増大させることができ、骨の構造的完全性の増大をもたらす。
【0085】
式Iの化合物および他の製薬上活性な薬剤は一緒にまたは別々に投与することができ、別々に投与するときには投与は同時にまたは逐次的にどのような順で行ってもよい。式Iの化合物および他の製薬上活性な薬剤のそれぞれの量と投与の相対的なタイミングは所望の併用治療効果を達成するように選択する。式Iの化合物、その塩もしくは溶媒和物と他の骨粗鬆症治療剤との併用投与は、 (1) 各々の化合物を含む単一の医薬組成物;または(2) それぞれが1種の化合物を含む、別々の医薬組成物としての併用投与でありうる。あるいは併用は、一方の治療剤を最初に投与し、他方の治療剤を次に投与する(またはその逆も可能)逐次的な様式で別々に投与することもできる。かかる逐次投与は時間が接近していてもよくまたは時間が離れていてもよい。
【0086】
他の可能性のある併用療法としては、本発明の化合物と、本発明の他の化合物、成長促進剤、成長ホルモン分泌促進剤、成長ホルモン放出因子とそのアナログ、成長ホルモンとそのアナログ、ソマトメジン、α-アドレナリン作用性アゴニスト、セロトニン5-HTD アゴニスト、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ソマトスタチンもしくはその放出を阻害する薬剤、5-α-レダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、GnRH阻害剤、副甲状腺ホルモン、ビスホスフォネート、エストロゲン、テストステロン、SERM類、プロゲステロン受容体アゴニストと、および/または核ホルモン受容体の他のモジュレーターとの併用が挙げられる。
【0087】
上に記載した種々の疾患の治療において、本発明の化合物は、治療することが本発明の目的である症状または疾患に伴いうるまたはそれと共に存在しうる、他の症状または病状の治療のために選択された他の治療剤と併用することができる。例えば本発明の化合物は、以下のものと併用することができる:抗糖尿病薬、抗骨粗鬆症薬、抗肥満薬、抗炎症薬、抗不安薬、抗うつ薬、抗高血圧薬、抗血小板薬、抗血栓薬および血栓溶解薬、強心配糖体、コレステロールまたは脂質低下薬、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、キナーゼ阻害剤、甲状腺機能模倣薬、同化作用薬、ウイルス療法、認知障害治療、睡眠障害治療、性機能障害治療、避妊薬、細胞毒性薬剤、放射線治療、抗増殖薬、および抗腫瘍薬。さらに、本発明の化合物は、栄養補給剤、例えばアミノ酸、トリグリセリド、ビタミン、ミネラル、クレアチン、ピロ酸、カルニチン、または補酵素Q10と併用することができる。
【0088】
本発明の化合物は、周知の標準的な合成法を含む種々の方法により製造することができる。例示的な一般的合成法を以下で説明し、その後、本発明の具体的な化合物を実施例にて提供する。
【0089】
以下に説明するすべての実施例において、合成化学の一般原則にしたがい必要に応じて感受性のまたは反応性の基の保護基を使用する。保護基は有機合成の標準法 (T. W. Green and P. G. M. Wuts (1991) Protecting Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons、保護基について参照により本明細書に組み入れる)にしたがい操作する。こうした保護基は、化合物合成の適当な段階で当業者に自明の方法を用いて除去する。方法ならびにそれらを実施するための反応条件と順序の選択は、式Iの化合物の調製と一致するであろう。
【0090】
当業者であれば、式Iの化合物にキラル中心が存在するか判断できるであろう。したがって本発明には、あらゆる可能な立体異性体が含まれ、ラセミ化合物のみならず個々のエナンチオマー(鏡像異性体)も含まれる。ある化合物を単一種のエナンチオマーとして所望であれば、それを当技術分野で公知の立体特異的合成により、最終生成物もしくは任意の適当な中間体の分割により、またはキラルクロマトグラフィー方法により得ることができる。最終生成物、中間体、または出発物質の分割は当技術分野で公知のどのような適当な方法で行ってもよい。例えばStereochemistry of Organic Compounds by E. L. Eliel, S. H. Wilen, and L. N. Mander (Wiley-Interscience, 1994)(立体化学について参照により本明細書に組み入れる)を参照されたい。
【0091】
実験の項
略語:
本明細書では、これらの方法、スキームおよび実施例中で用いる記号および表記は、現代の科学文献、例えばthe Journal of the American Chemical Societyまたはthe Journal of Biological Chemistry、に使用されているものに従う。特に、以下の略語を実施例および明細書全体にわたり用いることがある:
g (グラム); mg (ミリグラム);
L (リットル); mL (ミリリットル);
μL (マイクロリットル); psi (平方インチ当たりのポンド数);
M (モル濃度); mM (ミリモル濃度);
Hz (ヘルツ); MHz (メガヘルツ);
mol (モル); mmol (ミリモル);
RT (室温); h (時間);
d (日); EI (電子衝撃);
min (分); TLC (薄層クロマトグラフィー);
mp (融点); RP (逆相);
Tr (保持時間); TFA (トリフルオロ酢酸);
TEA (トリエチルアミン); THF (テトラヒドロフラン);
TFAA (トリフルオロ酢酸無水物); CD3OD (重水素化メタノール);
CDCl3 (重水素化クロロホルム); DMSO (ジメチルスルホキシド);
SiO2 (シリカ); atm (気圧);
EtOAc (EtOAc); CHCl3 (クロロホルム);
HCl (塩酸); Ac (アセチル);
DMF (N,N-ジメチルホルムアミド); Me (メチル);
Cs2CO3 (炭酸セシウム); EtOH (エタノール);
Et (エチル); tBu (tert-ブチル);
MeOH (メタノール); CH2Cl2 (ジクロロメタン);
MgSO4 (硫化マグネシウム); CH3CN (アセトニトリル);
K2CO3 (炭酸カリウム); TiCl4 (四塩化チタン);
EtOAc (EtOAc); CO2 (二酸化炭素);
Pd(OAc)2 (酢酸パラジウム); Et2O (ジエチルエーテル);
P(o-tolyl)3 (トリ-o-トリルホスフィン); Na2SO4 (硫酸ナトリウム);
NaH (水素化ナトリウム); DME (1,2-ジメトキシエタン);
NaI (ヨウ化ナトリウム); NaOH (水酸化ナトリウム);
NH4Cl (塩化アンモニウム); NaHCO3 (重炭酸ナトリウム);
AlCl3 (塩化アルミニウム); (C2H5O)2P(O)H (亜リン酸ジエチル);
NaN3 (アジ化ナトリウム); CBr4 (四臭化炭素);
PPh3 (トリフェニルホスフィン); CuI (ヨウ化銅(I) );
Pd(Ph3P)4 (テトラキス (トリフェニルホスフィン)パラジウム(0) );
CuCN (シアン化銅); (iPrO)3B (ホウ酸トリイソプロピル);
nBuLi (ブチルリチウム); Na2CO3 (炭酸ナトリウム);
DMAP (4-(ジメチルアミノ)ピリジン); eq (当量);
HRMS (高分解能質量分析);
LCMS (液体クロマトグラフィー質量分析);
LRMS (低分解能質量分析);
APCI (大気圧化学イオン化);
LiHMDS (リチウムビス(トリメチルシリル)アミド);
Pd(Ph3P)2Cl2 (ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II) );
EDC (N-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチル-カルボジイミド;
dpppe (1,5-ビス(ジフェニルホスファニル)ペンタン;
DMAc (N,N-ジメチルアセトアミド);
HPLC (高速液体クロマトグラフィー);
tmeda (N,N,N’,N’,-テトラメチルエチレンジアミン);
Pd2(dba)3 (ジパラジウムトリス(ジベンジリデンアセトン))。
【0092】
特に断らない限り、試薬と溶媒は販売業者から入手し、さらに精製することなく使用した。特に断らない限り、すべての反応は室温で行い、すべての温度は℃ (摂氏温度)で表す。
【0093】
薄層クロマトグラフィー (TLC)はシリカゲル60 F254 プレコート済みプレートを用いて行った。検出はUV光 (254 nm)に露光することにより行った。フラッシュ(Flash)およびフラッシュ(flush)カラムクロマトグラフィーは、Silica Gel 60を用いて行った。逆相分取HPLCおよび分析HPLCは、C18カラムを使用し、アセトニトリル:水濃度勾配と調整剤としての0.05% TFA を用いて行った。
【0094】
化合物の純度と特徴付けは、1H-NMR、液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)、高分解能質量分析 (HRMS)、燃焼分析 (元素分析)、HPLCおよび融点により決定した。一般式Iの化合物は典型的には純度が>90%であった。
【0095】
1H NMRスペクトルは、Varian INOVA-300およびVarian INOVA-400装置を用いて記録した。化学シフトは100万分の1 (ppm、δ単位)で表す。結合定数はヘルツ (Hz)単位で表す。分裂パターンは見かけ上の多重度を表し、s (一重項)、d (二重項)、dd (二重項の二重項)、t (三重項)、q (四重項)、m (多重項)、またはbr (ブロード)と命名する。
【0096】
低分解能質量スペクトルは、Micromass Ltd.社, Altricham, UKからのMicromass ZQ、Micromass ZMD、Micromass QuattroMicro、およびMicromass GCT 装置を使用し、大気圧化学イオン化 (APCI)またはESI イオン化 (ESI)のいずれかを用いて得た。
【0097】
高分解能質量スペクトルデータ(HRMS)はMicromass LCTおよびMicromass GCT 装置を用いて記録した。
【0098】
燃焼分析はAtlantic Microlab, Inc. (Norcross, Georgia)が行った。
【0099】
融点は開放型毛細管で記録し、補正していない。
【0100】
太字の数字は、以下のスキームにおいて示す化合物を表す。以下のスキームについて、後続の化学および官能基の適合性に応じて、特定の中間体のフェノール基を、当業者に知られている合成法を用いて保護しなければならないことがある。
【0101】
合成スキーム
【化4】

【0102】
対称性トリフェニルアルケン化合物Iは、スキーム1に例示する経路にしたがい調製することができる。置換されたベンゾフェノンIIIと置換されたフェニルアルキルケトンIIとのマクマリーカップリングからトリフェニルアルケンIが得られる。マクマリー反応条件については、Mukaiyama ら, Chem. Lett. (1973), 1041; Lenoir, Synthesis, (1977), 553; Lenoir and Burghard, J. Chem. Res. (S) (1980), 396; McMurry, Chem. Rev. (1989), 89, 1513-1524; McMurry, Acc. Chem. Res. (1983) 16, 405-511; およびS. Gauthier ら, J. Org. Chem., (1996), 61, 3890-3893を参照のこと。各文献をかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。
【0103】
ケトンIIおよびIIIは市販されているかまたは当業者に知られている合成法(例えばスキーム2および3)により調製することができる。
【化5】

【0104】
酸IVを酸塩化物へと変換し、次いでN, O-ジメチルヒドロキシルアミン塩酸塩で処理すると、WeinrebアミドVが得られる。このときの酸塩化物は、当業者に知られている詳細に記載された手法を用いて調製することができる。アミドVをグリニャール試薬で処理し、次いで脱メチル化/脱保護することにより化合物VIが得られる。一般的な反応条件については、S. Nahm and S.M. Weinreb Tetrahedron Lett. (1981), 22, 3815. B.M. Kim, ら, Tetrahedron Lett. (1994), 35, 5153を参照されたい。総説についてはM.P. Sibi, Org. prep. Proc. Intl. (1993), 25, 15を参照されたい。各文献をかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。
【0105】
トリフェニルアルケンIはまた、スキーム4に例示した手法を用いて調製することができる。中間体1, 1-ジブロモ-1-アルケンVIIは、スキーム4に示すように、CoreyとFuchsが報告した手法(E.J. Corey and P.L. Fuchs, Tetrahedron Lett. (1972), 3769を参照されたい。参照により本明細書に組み入れる)を用いてアルキルフェニルケトンIIから調製することができる。あるいはまた、ジブロモ化合物VIIは、V.G.Nenajdenko, ら J.Chem.Soc., Perkin Trans. I, (2002), 883, J.F.Normant ら Synthesis (2000),109(参照により本明細書に組み入れる)の報告した手法を用いて調製することもできる。鈴木反応条件を使用し、ジブロモアルケンVIIを種々のアリールボロン酸VIIIとカップリングさせることによりトリフェニルアルケンIを得ることができる。一般的な鈴木カップリング反応条件については、Miyaura, N., Suzuki, A. Chem. Rev. (1995), 95, 2457-2483; Suzuki, A., J. Organometallic Chem. (1999), 576, 147-168; およびSuzuki, A. in Metal-catalyzed Cross-coupling Reactions, Diederich, F., and Stang, P. J., 編; Wiley-VCH: New York, (1998), pp. 49-97を参照されたい。各文献をかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。1,1-ジブロモ-1-アルケンの鈴木カップリング反応条件についてはM.W. Miller ら, Synlett (2001), 254を参照されたい。これをかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。ジブロモアルケン VII はまた1,1-ジボリル-1-アルケン中間体へと変換することができ、ついでこれがアリールハライドとの反応により1,1,2-トリアリール-アルケンIを生じうる。関連する変換については、M. Shimizu ら, J. Am. Chem. Soc., (2005), 127, 12506を参照されたい。これをかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。
【化6】

【0106】
化合物IXをアルキルハライドでO-アルキル化する(スキーム6)と、化合物Xが得られる。化合物XおよびXIを用いてさらなるアナログの調製を行うことができる。例えば、スキームに示すR基がEtであるときには、化合物Xの加水分解から、対応するアルカン酸であるXIが得られる。
【化7】

【0107】
多目的用の中間体XIII (スキーム7)を用いて、種々の置換された対称性トリフェニルアルケンを調製することができる。化合物XIIIは、当技術分野で記載されている文献の手法にしたがい化合物XIIから調製することができる。反応条件については、M. Kodomari ら Tetrahedron Lett. (2001), 3105-3107を参照されたい。これをかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。当技術分野で記載されている遷移金属触媒交差カップリング炭素−炭素結合形成反応を用いて、化合物XIIから化合物Iを作製することができる。
【化8】

【0108】
トリアリール化された化合物Iはまた、スキーム8に示すように、二段階手順を用いて調製することができる。ケトンIIおよびIIIは、ピナコールカップリング法を用いてカップリングさせて隣に示されているジオールXIVを得ることができる。ジオール化合物XIVは、当技術分野で詳細に記載されている脱酸素条件を用いてオレフィンIへと変換することができる。ピナコールカップリング反応については、T. Wirth ら Angew. Chem. Int. Ed. Engl. (1996), 35, 61, X. Xu ら J. Org. Chem. (2005), 70, 8594およびそこに引用されている主要な文献を参照されたい。また、脱酸素条件によるオレフィン合成についてはE. Block in Organic Reactions (1984), 30, 457を参照されたい。これらをかかる教示に関して参照により本明細書に組み入れる。
【実施例】
【0109】
以下の具体的な実施例は例示のために記載されるものであり、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【0110】
実施例1 (3): ({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]フェニル}オキシ)酢酸 (3)
【化9】

【0111】
工程1:エチル[(4-ペンタノイルフェニル)オキシ]アセテート (1)
丸底フラスコに、1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-ペンタノン (5.34 g, 30.0 mmol)、エチルブロモアセテート(8.3 mL, 75.0 mmol)、K2CO3 (8.3 g, 60 mmol)、およびアセトン(200 mL)をN2下にて加えた。反応混合物を4時間にわたり還流した。室温に冷却後に、反応混合物を濾過し、濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物は、ヘキサン: EtOAc (19: 1〜4:1)を用いるフラッシュSiO2 カラムクロマトグラフィーにより精製し、7.90 g (約100%)の表題の化合物1 を白色の固形物として得た。 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.96 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.32 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.43 (app. sextet, J = 7.6 Hz, 1 H), 1.72 (app. quintet, J = 7.6 Hz, 1 H), 2.93 (t, J = 7.6Hz, 2 H), 4.30 (q, J = 7.0 Hz, 2 H), 4.69 (s, 2 H), 6.95 (d, J = 8.7 Hz, 2 H), 7.96 (d, J = 8.7 Hz, 2 H). LCMS (ESI): m/z 265 (M + H) +
【0112】
工程2:エチル({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]フェニル}オキシ)アセテート (2)
THF (100 mL)中の亜鉛粉末 (3.3 g, 50 mmol)の撹拌懸濁物に、室温で窒素雰囲気下にて、TiCl4 (2.7 mL, 25 mmol)を徐々に加えた(滴下した)。得られた反応混合物を1時間にわたり加熱還流した。ついでTHF (mL)中のビス(4-ヒドロキシフェニル)メタノン (1.07 g, 5.0 mmol)およびケトン1 (4.0 g、15.13 mmol) の混合物を加え、ついでさらに2時間還流した。反応混合物を室温に冷却し、10% K2CO3 水溶液(300 mL)に徐々に加えた。反応混合物をセライトに通して濾過し、固形物をEtOAcで洗浄した。濾液をEtOAc (4×150 mL)で抽出した。合わせた有機層を、ブラインで洗浄し、乾燥させ、濾過し、次いで濾液を減圧下で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物は、ヘキサン:酢酸エチル(100: 0〜1:1)を用いるSiO2によるフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、1.60 g (72 %)の表題の化合物2 を灰白色の泡状物として得た。 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 0.73 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 1.89 (m, 7H), 2.33 (br t, J = 7.6 Hz, 2 H), 4.15 (q, J = 7.2 Hz, 2 H), 4.70 (s, 2 H), 6.41(d, J = 8.8 Hz, 2 H), 6.60 ( (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.71 (d, J = 3.0 Hz, 2 H), 6.74 (d, J = 2.4 Hz, 2 H), 6.94 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.99 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 9.13 (s, 1 H), 9.36 (s, 1 H). LCMS (ESI): m/z 445 (M - H) -
【0113】
工程3: ({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]フェニル}オキシ)酢酸 (3)
エチル({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]フェニル}オキシ)アセテート 2 (0.218 g, 0.488 mmol)およびTHF/ EtOH (1: 1、4 mL)の溶液に、1N NaOH水溶液 (2 mL)を加えた。反応混合物を70℃で1時間撹拌した。反応混合物を室温に冷却し、20% HCl水溶液 (50 mL)に加え、次いで混合物をEtOAc (3×30 mL)で抽出した。合わせた有機層をブライン(1×15 mL)で洗浄し、Na2SO4で乾燥させ、濾過した。濾液を減圧下で濃縮し、粗生成物を得た。粗生成物は、CHCl3: MeOH (19: 1〜4: 1)を使用するフラッシュSiO2 カラムクロマトグラフィーにより精製し、150 mg (74%)の表題の化合物3 を灰白色の泡状物として得た。 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 0.73 (t, J = 7.0 Hz, 3 H), 1.18 (br m, 4H), 2.32 (br s, 2 H), 4.32 (s, 2 H), 6.41 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.60 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.65 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.72 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.93 (d, J = 6.0 Hz, 2 H), 6.96 (d, J = 7.8 Hz, 2 H). LCMS (APCI): m/z 417.(M - H) -
【0114】
実施例2 (6): ({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]フェニル}オキシ)酢酸 (6)
【化10】

【0115】
工程1:エチル[(4-ブタノイルフェニル)オキシ]アセテート (4)
化合物1について記載した一般的なO-アルキル化手法(実施例1、工程1)を、1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-ブタノン (5.0 g, 30.5 mmol)およびエチルブロモアセテート (8.7 g, 61.0 mmol)を用いて行った。標準的な後処理およびそれに続く精製により、7.6 g (99%)の表題の化合物4 を白色の固形物として得た。 1H NMR (300 MHz, CDCl3)): δ 1.00 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 1.32 (t, J = 7.0 Hz, 3 H), 1.77 (app. sextet, J = 7.6 Hz, 2 H), 2.91 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 6.95 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.96 (d, J = 9.0 Hz, 2 H). LCMS (ESI): m/z 251 (M + H) +
【0116】
工程2:エチル({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]フェニル}オキシ)アセテート (5)
化合物2 (実施例1、工程2)について説明した一般的なマクマリーカップリング手法を、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタノン (1.43 g, 6.67 mmol)およびエステル4 (5.0 g, 20.0 mmol)を用いて行った。標準的な後処理およびそれに続く精製により、2.56 g (89 %)の表題の化合物5 を灰白色の泡状物として得た。 1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 0.75 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.26 - 1.15 (m, 5H), 2.32 (t, J = 7.2 Hz, 2 H), 4.15 (q, J = 7.0 Hz, 2 H), 6.41 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.60 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 6.71 (d, J = 4.2 Hz, 2 H), 6.74 (d, J = 4.0 Hz, 2 H), 6.95 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.99 (d, J = 8.8 Hz, 2 H). LCMS (ESI): m/z 431 (M - H) -
【0117】
工程3: ({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]フェニル}オキシ)酢酸 (6)
化合物3について記載した一般的な鹸化手法(実施例1、工程3)を、1:1 THF:EtOH (20 mL)中の1N NaOH (11.5 mL, 11.27 mmol)およびエチルエステル 5 (0.325 g, 0.751 mmol) を用いて行った。標準的な酸後処理およびそれに続く精製により、0.240 g (79 %)の表題の化合物6 を灰白色の泡状物として得た。 1H NMR (400 MHz, アセトン-d6): δ 0.76 (t, J = 5.4 Hz, 3 H), 1.28 (br s, 2 H), 2.38 (br s, 2 H), 2.85 (br s, 2 H), 4.56 (br s, 2 H), 6.52 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 6.74 (app, t, J = 8.0 Hz, 4H), 6.85 (d, J = 8.4 Hz, 2 H). LCMS (APCI): m/z 403 (M - H) -
【0118】
実施例3 (9): [(4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル}フェニル)オキシ]酢酸(9)
【化11】

【0119】
工程1: 4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル}フェノール (7)
化合物2 について説明した一般的なマクマリーカップリング手法(実施例1、工程2)を、ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]メタノン (4.84 g, 20.0 mmol)および1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロパノン(9.0 g, 60.0 mmol)を用いて行った。標準的な後処理およびそれに続く精製により、3.60 g (50%)の表題の生成物7 を白色の固形物として得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 0.92 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 2.44 (q, J = 7.2 Hz, 2 H), 3.69 (s, 3 H), 3.82 (s, 3 H), 6.56 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.63 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.77 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.87 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 6.97 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.13 (d, J = 8.4 Hz, 2 H). LCMS (ESI): m/z 361 (M + H) +
【0120】
工程2:エチル[(4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル} フェニル)オキシ]アセテート (8)
化合物1について記載したO-アルキル化手法 (実施例1、工程1) を、4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル}フェノール7 (0.850 g, 2.36 mmol)、エチルブロモアセテート (0.326 mL, 2.95 mmol)、K2CO3 (0.490 g, 3.54 mmol)、およびアセトン(50 mL)を用いて行った。標準的な後処理およびそれに続く精製により、0.880 g (83%)の表題の化合物8 を白色の固形物として得た。 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.94 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.30 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 2.47 (q, J = 7.6 Hz, 2 H), 3.71 (s, 3 H), 3.84 (s, 3 H), 4.28 (q, J = 7.2 H, 2 H), 4.58 (s, 2 H), 6.57 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 6.74 (d, J = 8.7 Hz, 2 H), 6.78 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 6.89 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.05 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 7.15 (d, J = 8.8 Hz, 2 H). LCMS (ESI): m/z 469 (M + Na) +
【0121】
工程3: [(4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル}フェニル)オキシ]酢酸 (9)
化合物3について記載した一般的な加水分解条件 (実施例1、工程3)を、1:1 THF:EtOH (10 mL)中の1N NaOH水溶液 (5 mL)およびエチル[(4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル} フェニル)オキシ]アセテート 8 (0.200 g, 0.45 mmol)を用いて行った。通常の酸後処理およびそれに続く精製により、0.115 g (62%)の表題の化合物9を白色の固形物として得た。 1H NMR (300 MHz, CDCl3): δ 0.85 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 2.37 (q, J = 6.6 Hz, 2 H), 3.63 (s, 3 H), 3.76 (s, 3 H), 4.60 (s, 2 H), 6.61 (d, J = 7.8 Hz, 2 H), 6.72 (d, J = 7.8 Hz, 4 H), 6.92 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 7.02 (d, J = 8.0 Hz, 2 H), 7.08 (d, J = 7.8 Hz, 2 H). LCMS (ESI): m/z 441 (M + Na) + および417 (M - H) -
【0122】
実施例4 (12): {[4-[1-エチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}酢酸 (12)
【化12】

【0123】
工程1:エチル{[4-ブタノイル-2-(メチルオキシ)}アセテート (10)
化合物1について記載した一般的なO-アルキル化手法 (実施例1、工程1)を、1-[4-ヒドロキシ-3-(メチルオキシ)フェニル]-1-プロパノン(2.60 g, 14.44 mmol) およびエチルブロモアセテート (6.0 mL, 43.33 mmol)を用いて行った。標準的な後処理およびそれに続く精製により、3.710 g (96%)の表題の化合物10 を白色の固形物として得た。 1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 1.20 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.27 (t, J = 6.8 Hz, 3 H), 2.94 (q, J = 7.2 Hz, 2 H), 4.25 (q, J = 7.2 Hz, 2 H), 4.74 (s, 2 H), 6.87 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 7.52 (d, J = 2.0 Hz, 1 H), 7.55および7.53 (dd, J1 = 8.4 Hz, J2 = 2.0 Hz, 1 H)。
【0124】
工程2:エチル{[4-[1-エチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}アセテート (11)
化合物2について記載した一般的なマクマリーカップリング手法(実施例2、工程2) を、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタノン (0.885 g, 4.13 mmol)、エチル{[4-ブタノイル-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}アセテート 11 (3.30 g, 12.4 mmol)、TiCl4・2THF錯体(8.276 g, 24.78 mmol) (注:この実験ではそのままのTiCl4 の代わりに固形TiCl4・2THFを用いた)を用いて行った。標準的な後処理およびそれに続く精製により、1.668 g (90%)の表題の化合物11 を灰白色の固形物として得た。 1H NMR (400 MHz, DMSO-d6): δ 0.84 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 1.16 (t, J = 7.2 Hz, 3 H), 2.37 (q, J = 7.6 Hz, 2 H), 3.49 (s, 3 H), 4.12 (q, J = 7.2 Hz, 2 H), 4.65 (s, 2 H), 6.40 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 6.60 - 6.58 (m, 4 H), 6.65 (d, J = 8.8 Hz, 1 H), 6.71 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.93 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 9.14 (s, 1 H), 9.36 (s, 1 H). LCMS (APCI): m/z 471. (M + Na) + および449 (M + H) +
【0125】
工程3: {[4-[1-エチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}酢酸 (12)
化合物3 (実施例1、工程3)について説明した一般的な鹸化手法を、1:1 THF:EtOH (6 mL)中の1N NaOH (2 mL)およびエチルエステル 11 (0.140 g, 0.312 mmol)を用いて行った。標準的な酸後処理およびそれに続く精製により、0.110 g (84%)の表題の化合物12 を灰白色の固形物として得た。 融点253〜254 ℃。 1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 0.92 (t, J = 7.6 Hz, 3 H), 2.48 (q, J = 7.6 Hz, 2 H), 3.52 (s, 3 H), 4.32 (s, 2 H), 6.42 (d, J = 8.4 Hz, 2 H), 6.62 (br s, 1 H), 6.67 (d, J = 8.4 Hz, 1 H), 6.70 (d, J = 8.8 Hz, 2 H), 6.75 (d, J = 8.4 Hz, 3 H), 7.00 (d, J = 8.4 Hz, 2 H). LCMS (APCI): m/z 419.(M - H) -および421.03 (M + H) +
【0126】
予言的実施例
以下の実施例は本明細書に記載の方法と類似の方法により調製することができる。
【0127】
実施例5 (#):{[4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}酢酸
【化13】

【0128】
実施例6 (#):{[4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}酢酸
【化14】

【0129】
実施例7 (#):{[4-[1-エチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(トリフルオロメチル)フェニル]オキシ}酢酸
【化15】

【0130】
実施例8 (#):{[4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]-2-(トリフルオロメチル)フェニル]オキシ}酢酸
【化16】

【0131】
実施例9 (#):{[4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(トリフルオロメチル)フェニル]オキシ}酢酸
【化17】

【0132】
実施例10 (#):({4-[1-エチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-フルオロフェニル}オキシ)酢酸
【化18】

【0133】
実施例11 (#):({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]-2-フルオロフェニル}オキシ)酢酸
【化19】

【0134】
実施例12 (#):({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-フルオロフェニル}オキシ)酢酸
【化20】

【0135】
実施例13 (#):2-({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]フェニル}オキシ)-2-メチルプロパン酸
【化21】

【0136】
実施例14: ({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ペンチルエテニル]フェニル}オキシ)酢酸
【化22】

【0137】
実施例15: ({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ペンチルエテニル]-2-フルオロフェニル}オキシ)酢酸
【化23】

【0138】
生物学的データ
ERアルファ蛍光偏光アッセイ
アッセイは、全長タンパク質およびリガンド結合ドメインタンパク質の両方を用いて行った。
【0139】
全長ERアルファ− このアッセイは市販キット(P3029, Invitrogen, Carlsbad, California)を用いて行った。アッセイは製造業者のプロトコルに従いつつ、微調整を施して行った。すなわち、15 nM ERαおよび1nM Fluormone EL Redを完全ERレッドバッファーに溶解させ混合した。ジメチルスルホキシド (DMSO)中に10-5 〜 10-12Mの濃度範囲の化合物を含有する、Greiner低容積プレート(黒一色低容積384-ウェルプレート)(Greiner - 製品番号784076)の各ウェルに、混合物10μLを分配した。プレートを200gにて1分回転させ、試薬を光から保護するために覆い、次いで室温にて2時間インキュベートした。プレートは、Acquest, LJL Biosystems, Sunnyvale, CAを使用し、530〜25nm励起および580〜10nm発光干渉フィルターと561 nm二色性ミラーを用いて読み取った。
【0140】
ERαLBDの発現と精製
ヒトERα(登録番号 NP_000116.2)の残基297〜555に対応するcDNA配列を、N-末端ヘキサヒスチジンタグとともにpET24ベクター (Novagen, San Diego, CA)にクローニングした。このプラスミドを大腸菌(E. Coli) BL21-DE3細胞に形質転換した。細胞を23℃で18時間増殖させ、温度を18℃に下げてから、250 μMの IPTGを添加した。細胞をさらに24時間増殖させてから回収した。細胞を50 mM TRIS pH 8.0/250 mM NaCl/2 Mウレアで溶菌させ、遠心して落とした。上清を50 mMイミダゾールで調製し、Niキレート形成セファロースカラム (Pharmicia)に充填し、50〜500 mMイミダゾールの線形濃度勾配により溶出させた。ERαLBDを含有する画分をプールし、50 mM TRIS pH 8.0/250 mM NaCl/5 mM DTTおよび10%グリセロールで透析した。サンプルを分注し−70℃にて冷凍した。
【0141】
アッセイは、15nM ERアルファLBDを、アッセイバッファー(Tris-HCl (50mM; pH8)、KCl (500mM)、ジチオトレイトール (1mM)、エチレンジアミン四酢酸 (1mM)、グリセロール (10% v/v)、 3コラミドプロピル-ジメチルアンモニオ1-プロパンスルホネート (2mM)、オルトバナジン酸ナトリウム (1mM −これは、蒸留水に溶解し、2回連続でpHを10に調整し沸騰させ冷却する工程を繰り返えすことにより100mMストックとして調製した)) 中の1nM Fluormone-EL-Red (Invitrogen No. P3030)と混合することにより行った。ジメチルスルホキシド (DMSO)中に10-5 〜 10-12Mの濃度範囲の化合物を含有する、Greiner低容積プレート−黒一色低容積384ウェルプレート(Greiner, Longwood, FL - 製品番号784076)の各ウェルに、混合物10μLを分配した。プレートを200gにて1分回転させ、試薬を光から保護するために覆い、次いで室温にて2時間インキュベートした。プレートは、Acquestを使用し、530〜25nm励起および580〜10nm発光干渉フィルターと561 nm二色性ミラーを用いて読み取った。
【0142】
ERベータ蛍光偏光アッセイ
アッセイは、全長タンパク質およびリガンド結合ドメインタンパク質の両方を用いて行った。
【0143】
全長ERベータ − このアッセイは市販キット(P3032, Invitrogen)を用いて行った。アッセイは製造業者のプロトコルに従いつつ、微調整を加えて行った。すなわち、30 nM ERβおよび 1nM Fluormone EL Redを完全ERレッドバッファーに溶解させ混合した。ジメチルスルホキシド (DMSO)中に10-5 〜 10-12Mの濃度範囲の化合物を含有する、Greiner低容積プレート(黒一色低容積384ウェルプレート) (784076, Greiner)の各ウェルに、混合物10μLを分配した。プレートを200gにて1分回転させ、試薬を光から保護するために覆い、次いで室温にて2時間インキュベートした。プレートは、Acquest (Acquest/Biosystems)を使用し、530〜25nm励起および580〜10nm発光干渉フィルターと561 nm二色性ミラーを用いて読み取った。
【0144】
ERβLBDの発現と精製
ヒトERβ (登録番号NP_001428.1)の残基257〜530に対応するcDNA配列をN末端ヘキサヒスチジンタグと共にpRSETa (Novagen)ベクターにクローニングした。このプラスミドを大腸菌(E. Coli) BL21-DE3細胞に形質転換した。細胞を23℃にて18時間増殖させ、温度を18℃に下げてから、250 μMの IPTGを添加した。細胞をさらに24時間増殖させてから回収した。細胞を50 mM TRIS pH 8.0/250 mM NaClで溶菌させ、遠心して落とした。上清を50 mMイミダゾールで調製し、Niキレート形成セファロースカラム (Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, N.J.)に充填し、50〜500 mMイミダゾールの線形濃度勾配により溶出させた。ERβ LBDを含有する画分をプールし、50 mM NaClで希釈して、50 mM TRIS pH 8.0/50 mM NaCl/5 mM DTT および10% グリセロールで平衡化したQ-セファロースカラム (Pharmacia) に充填した。ERβを50 mM〜500 mM NaClの線形濃度勾配を用いて溶出させた。ERβ LBDを含有する画分をプールし50 mM TRIS pH 8.0/250 mM NaCl/5 mM DTTおよび10%グリセロールで透析した。サンプルを分注し、−70℃にて冷凍した。
【0145】
このアッセイは、30nM ERベータLBDを、アッセイバッファー(Tris-HCl (50mM; pH8) 、KCl (500mM)、ジチオトレイトール (1mM)、エチレンジアミン四酢酸 (1mM)、グリセロール(10% v/v)、3 コラミドプロピル-ジメチルアンモニオ1-プロパンスルホネート (2mM)、オルトバナジン酸ナトリウム(1mM - これは蒸留水に溶解し、2回連続でpHを10に調整し沸騰させ冷却する工程を繰り返えすことにより100mMストックとして調製した)) 中の1nM Fluormone-EL-Red (Invitrogen No. P3030)と混合することにより行った。ジメチルスルホキシド (DMSO)中に10-5 〜 10-12Mの濃度範囲の化合物を含有する、黒一色低容積384ウェルプレート(784076, Greiner)の各ウェルに、混合物10μLを分配した。プレートを200gにて1分回転させ、試薬を光から保護するために覆い、次いで室温にて2時間インキュベートした。プレートは、Acquestを使用し、530〜25nm励起および580〜10nm発光干渉フィルターと561 nm二色性ミラーを用いて読み取った。
【0146】
データ分析
すべてのデータを、各プレート上の16個の高対照ウェルおよび16個の低対照ウェルの平均に対して正規化した。次に以下の数式の4パラメーター曲線フィットを適用した:
【数1】

【0147】
式中、aは最小値であり、bはHill傾斜であり、cはIC50 でありdは最大値である。データはn回の実験の平均の標準偏差を用いた平均pIC50として提供する。
【0148】
上の実施例の化合物は6〜8.5の範囲のpIC50値を示した。
【0149】
本明細書において本発明の特定の実施形態を例示し詳細に記載したが、本発明はそれに限定されるものではない。上の詳細な説明は本発明の例として提供されたものであり、本発明の限定を構成すると解釈されてはならない。改変は当業者に自明であり、本発明の精神を逸脱しないすべての改変は特許請求の範囲内にあることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

[式中、
各々のR3は、同一であり、かつ、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
R4は-OCH2C(O)OHであり; かつ
R1は、C1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される;
あるいは、
R1は、C1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される;
あるいは、
R1は、C3-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2は、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5は、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される]
またはその製薬上許容される塩もしくは溶媒和物。
【請求項2】
R1が、C1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2が、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5が、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
R1 がC2-C6アルキルより選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
R2 がヒドロキシである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項5】
R1が、C1-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2が、同一であり、かつ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5が、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
R1 がC2-C6アルキルより選択される、請求項5または6に記載の化合物。
【請求項7】
R5 が水素である、請求項5または6に記載の化合物。
【請求項8】
R1が、C3-C6アルキルおよびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択され;
各々のR2が、同一であり、かつ、ヒドロキシ、C1-C4アルコキシ、およびハロゲンからなる群より選択され;かつ
R5が、水素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル、ハロゲン、C1-C6アルコキシ、およびC1-C6ハロアルキルからなる群より選択される、
請求項1に記載の化合物。
【請求項9】
R1がC3-C6アルキルより選択される、請求項8に記載の化合物。
【請求項10】
R2がヒドロキシである、請求項8または9に記載の化合物。
【請求項11】
R5が水素である、請求項8〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項12】
R5がトリフルオロメチルである、請求項1〜10のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項13】
({4-[1-ブチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]フェニル}オキシ)酢酸;
({4-[2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-プロピルエテニル]フェニル}オキシ)酢酸;
[(4-{1-エチル-2,2-ビス[4-(メチルオキシ)フェニル]エテニル}フェニル)オキシ]酢酸;および
{[4-[1-エチル-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エテニル]-2-(メチルオキシ)フェニル]オキシ}酢酸、
より選択される化合物。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物および製薬上許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
活性な治療用物質として使用するための、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項16】
治療を必要とする哺乳動物における選択的エストロゲン受容体モジュレーションの影響を受ける症状または障害の治療用の、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物。
【請求項17】
症状または障害が以下からなる群の症状または障害から選択される、請求項16に記載の化合物:骨粗鬆症、骨脱灰、骨量、骨密度もしくは骨成長の減少、変形性関節症、骨折の修復と治癒の促進、関節置換術の治癒の促進、歯周病、歯の修復もしくは成長の促進、パジェット病、骨軟骨異形成症、筋肉の萎縮、筋力や筋機能の維持と増強、もろさもしくは加齢性機能低下 (「ARFD」)、筋肉減弱症、慢性疲労症候群、慢性筋肉痛、急性疲労症候群、創傷治癒の促進、感覚機能の維持、慢性肝疾患、AIDS、無重量感、熱傷および外傷の回復、血小板減少症、短腸症候群、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎、肥満、悪液質もしくは加齢に関連した食欲不振を含む摂食障害、副腎皮質機能亢進症およびクッシング症候群、心臓血管疾患もしくは心機能異常、うっ血性心不全、高血圧、乳癌、乳腺、脳、皮膚、卵巣、膀胱、リンパ管、肝臓、腎臓、子宮、膵臓、子宮内膜、肺、結腸、および前立腺の細胞を含むアンドロゲン受容体を有する悪性腫瘍細胞、前立腺肥大、多毛症、ざ瘡、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、貧血症、高有毛症(hyperpilosity)、前立腺の腺腫と新生物形成、高インスリン血症、インスリン耐性、糖尿病、X症候群、脂質異常症、尿失禁、アテローム性動脈硬化症、性欲増強、性機能障害、うつ病、抑うつ症状、神経質、興奮性、ストレス、低下した精神力と低い自尊心、認知機能の改善、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症の中和、月経前症候群、避妊、子宮筋腫症、および/もしくは大動脈平滑筋細胞増殖、膣の乾燥、掻痒、性交疼痛、排尿障害、頻尿、尿路感染症、高コレステロール血症、高脂血症、末梢血管疾患、再狭窄、血管けいれん、免疫応答に起因した血管壁損傷、アルツハイマー病、骨疾患、加齢、炎症、慢性関節リウマチ、呼吸器系疾患、肺気腫、再灌流傷害、ウイルス性肝炎、結核症、乾癬、全身性エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、中枢神経系トラウマ、認知症、神経変性、乳房痛と月経困難症、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、女性性機能障害、性欲を増強するため、性的低下障害、性的興奮障害の治療のため、オルガズムの頻度と強度を増強すること、膣痙、骨減少症、子宮内膜症、BPH (良性前立腺肥大症)、月経困難症、自己免疫疾患、橋本甲状腺炎、SLE (全身性エリテマトーデス)、重症筋無力症、ならびに虚血心筋の再灌流損傷。
【請求項18】
障害または症状が、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、子宮内膜症、女性性機能障害、乳癌、抑うつ症状、糖尿病、骨脱灰、および骨粗鬆症からなる群より選択される、請求項17に記載の化合物。
【請求項19】
少なくとも1種の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物と、骨形成薬剤、抗骨再吸収剤、成長促進剤、成長ホルモン分泌促進剤、成長ホルモン放出因子とそのアナログ、成長ホルモンとそのアナログ、ソマトメジン、α-アドレナリン作用性アゴニスト、セロトニン5-HTD アゴニスト、選択的セロトニン再取り込み阻害剤、ソマトスタチンもしくはその放出を阻害する薬剤、5-α-レダクターゼ阻害剤、アロマターゼ阻害剤、GnRH阻害剤、副甲状腺ホルモン、ビスホスフォネート、エストロゲン、テストステロン、SERM類、プロゲステロン受容体アゴニスト、および核ホルモン受容体の他のモジュレーターから選択される他の治療剤とを組み合わせて含んでなる医薬組成物。
【請求項20】
以下からなる群より選択される症状または障害の治療用の医薬の製造における、請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物の使用:骨粗鬆症、骨脱灰、骨量、骨密度もしくは骨成長の減少、変形性関節症、骨折の修復と治癒の促進、関節置換術の治癒の促進、歯周病、歯の修復もしくは成長の促進、パジェット病、骨軟骨異形成症、筋肉の萎縮、筋力や筋機能の維持と増強、もろさもしくは加齢性機能低下 (「ARFD」)、筋肉減弱症、慢性疲労症候群、慢性筋肉痛、急性疲労症候群、創傷治癒の促進、感覚機能の維持、慢性肝疾患、AIDS、無重量感、熱傷および外傷の回復、血小板減少症、短腸症候群、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎、肥満、悪液質もしくは加齢に関連した食欲不振を含む摂食障害、副腎皮質機能亢進症およびクッシング症候群、心臓血管疾患もしくは心機能異常、うっ血性心不全、高血圧、乳癌、乳腺、脳、皮膚、卵巣、膀胱、リンパ管、肝臓、腎臓、子宮、膵臓、子宮内膜、肺、結腸、および前立腺の細胞を含むアンドロゲン受容体を有する悪性腫瘍細胞、前立腺肥大、多毛症、ざ瘡、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、貧血症、高有毛症(hyperpilosity)、前立腺の腺腫と新生物形成、高インスリン血症、インスリン耐性、糖尿病、X症候群、脂質異常症、尿失禁、アテローム性動脈硬化症、性欲増強、性機能障害、うつ病、抑うつ症状、神経質、興奮性、ストレス、低下した精神力と低い自尊心、認知機能の改善、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症の中和、月経前症候群、避妊、子宮筋腫症、および/もしくは大動脈平滑筋細胞増殖、膣の乾燥、掻痒、性交疼痛、排尿障害、頻尿、尿路感染症、高コレステロール血症、高脂血症、末梢血管疾患、再狭窄、血管けいれん、免疫応答に起因した血管壁損傷、アルツハイマー病、骨疾患、加齢、炎症、慢性関節リウマチ、呼吸器系疾患、肺気腫、再灌流傷害、ウイルス性肝炎、結核症、乾癬、全身性エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、中枢神経系トラウマ、認知症、神経変性、乳房痛と月経困難症、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、女性性機能障害、性欲を増強するため、性的低下障害、性的興奮障害の治療のため、オルガズムの頻度と強度を増強すること、膣痙、骨減少症、子宮内膜症、BPH (良性前立腺肥大症)、月経困難症、自己免疫疾患、橋本甲状腺炎、SLE (全身性エリテマトーデス)、重症筋無力症、ならびに虚血心筋の再灌流損傷。
【請求項21】
治療が、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、子宮内膜症、女性性機能障害、乳癌、抑うつ症状、糖尿病、骨脱灰、および骨粗鬆症からなる群より選択される障害または症状の治療である、請求項20に記載の化合物の使用。
【請求項22】
治療に有効な量の請求項1〜12のいずれか1項に記載の化合物を投与することを含む、治療を必要とする哺乳動物における選択的エストロゲン調節因子モジュレーションの影響を受ける症状または障害の治療方法であって、症状または障害が以下から選択される前記方法:骨粗鬆症、骨脱灰、骨量、骨密度もしくは骨成長の減少、変形性関節症、骨折の修復と治癒の促進、関節置換術の治癒の促進、歯周病、歯の修復もしくは成長の促進、パジェット病、骨軟骨異形成症、筋肉の萎縮、筋力や筋機能の維持と増強、もろさもしくは加齢性機能低下 (「ARFD」)、筋肉減弱症、慢性疲労症候群、慢性筋肉痛、急性疲労症候群、創傷治癒の促進、感覚機能の維持、慢性肝疾患、AIDS、無重量感、熱傷および外傷の回復、血小板減少症、短腸症候群、過敏性腸症候群、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎、肥満、悪液質もしくは加齢に関連した食欲不振を含む摂食障害、副腎皮質機能亢進症およびクッシング症候群、心臓血管疾患もしくは心機能異常、うっ血性心不全、高血圧、乳癌、乳腺、脳、皮膚、卵巣、膀胱、リンパ管、肝臓、腎臓、子宮、膵臓、子宮内膜、肺、結腸、および前立腺の細胞を含むアンドロゲン受容体を有する悪性腫瘍細胞、前立腺肥大、多毛症、ざ瘡、脂漏症、男性ホルモン性脱毛症、貧血症、高有毛症(hyperpilosity)、前立腺の腺腫と新生物形成、高インスリン血症、インスリン耐性、糖尿病、X症候群、脂質異常症、尿失禁、アテローム性動脈硬化症、性欲増強、性機能障害、うつ病、抑うつ症状、神経質、興奮性、ストレス、低下した精神力と低い自尊心、認知機能の改善、子宮内膜症、多嚢胞性卵巣症候群、子癇前症の中和、月経前症候群、避妊、子宮筋腫症、および/もしくは大動脈平滑筋細胞増殖、膣の乾燥、掻痒、性交疼痛、排尿障害、頻尿、尿路感染症、高コレステロール血症、高脂血症、末梢血管疾患、再狭窄、血管けいれん、免疫応答に起因した血管壁損傷、アルツハイマー病、骨疾患、加齢、炎症、慢性関節リウマチ、呼吸器系疾患、肺気腫、再灌流傷害、ウイルス性肝炎、結核症、乾癬、全身性エリテマトーデス、筋萎縮性側索硬化症、脳卒中、中枢神経系トラウマ、認知症、神経変性、乳房痛と月経困難症、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、女性性機能障害、性欲を増強するため、性的低下障害、性的興奮障害の治療のため、オルガズムの頻度と強度を増強すること、膣痙、骨減少症、子宮内膜症、BPH (良性前立腺肥大症)、月経困難症、自己免疫疾患、橋本甲状腺炎、SLE (全身性エリテマトーデス)、重症筋無力症、あるいは虚血心筋の再灌流損傷。
【請求項23】
障害または症状が、更年期障害もしくは閉経後障害、血管運動症状、尿生殖器のもしくは外陰の膣萎縮、萎縮性膣炎、子宮内膜症、女性性機能障害、乳癌、抑うつ症状、糖尿病、骨脱灰、および骨粗鬆症から選択される、請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2009−516746(P2009−516746A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−542421(P2008−542421)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【国際出願番号】PCT/US2006/045111
【国際公開番号】WO2007/062067
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】