説明

化学作用を有する放射線により硬化可能な基を含む低粘度アロファネートの製造方法

【課題】0.5重量%より少ない残留モノマー含有量及び1重量%より少ないNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートの製造方法を提供する。
【解決手段】イソシアネート基含有化合物(A)、化学作用を有する放射線に暴露するとエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基(放射線硬化性基)を含むヒドロキシ官能性化合物(B)及び場合により更にNCO反応性基を含む化合物(C)を、場合により触媒の存在下用いて、放射線硬化性基を有するNCO基含有ウレタンを形成した後、イソシアネート基含有化合物を更に追加することなく、アロファネート化触媒の存在下反応させる製造方法であり、A)からの化合物のNCO基とB)及び使用した場合C)からの化合物のOH基との比は、1.45:1.0〜1.1:1.0である製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
化学作用(又は化学線作用)を有する放射線に暴露すると、エチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する活性化される基を含むポリイソシアネートの低粘度反応生成物の簡単な製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
UV光、IR放射線又は他の電子線等の化学作用を有する放射線によって活性化される二重結合を有するコーティング系(又はシステム)の硬化は、既知であり、商業上確立されている。それはコーティング技術において最も迅速な硬化方法の一つである。従って、この原理に基づくコーティング組成物は、放射線又は化学作用による硬化又は硬化可能系と呼ばれる。
【0003】
粘度を調節するために、できる限り有機溶媒をほとんど使用するべきでない、又は全く使用するべきではないという最近のコーティング系に課せられた環境的及び経済的要求のため、既に低粘度であるコーティング原材料を用いることが望ましい。長い間、この目的のために既知のものは、とりわけ、EP-A 0 682 012 に記載されたようなアロファネート構造を有するポリイソシアネートであった。
【0004】
商業上、これらの物質は、一価又は多価アルコールと、大量の過剰の脂肪族及び/又は脂環式ジイソシアネートとを反応させることで製造する(GB-A 994 890、EP-A 0 000 194 又は EP-A 0 712 840 参照)。その後、減圧下、蒸留によって未反応ジイソシアネートを除去する。DE-A 198 60 041 に基づいて、ヒドロキシアルキルアクリレート等の活性化された二重結合を有するOH官能性化合物を用いて、この手順を行うこともできるが、特に低モノマー含有量生成物の製造に関して困難がある。残留イソシアネート含有量を十分に低くするために(残留モノマー重量%<0.5重量%)、蒸留工程は、135℃までの温度で行わなければならないので、精製工程の間にさえ、二重結合は熱開始反応により重合を伴って反応することができ、これは理想的生成物はもはや得られないことを意味する。
【0005】
低モノマー含有量、アロファネート含有ポリウレタン系放射線硬化バインダーの製造は、EP-A 0 867 457 及び US-A 5 739 251 に記載されている。しかし、これらのバインダーは、活性された二重結合を有さないが、その代わり非反応性のアリルエーテル基(R−O−CH−CH=CH構造)を有する。従って、必要なUV反応性を導入する反応性希釈剤(低分子量アクリル酸エステル)を加えることが必要である。
【0006】
他のイソシアネート誘導体、ウレタン及びイソシアネートから、間接的にアロファネートを製造する少しの試みもない。例えば、EP-A 0 825 211 は、オキサジアジントリオンからアロファネート構造の製造方法を開示するが、活性化された二重結合を含む放射線硬化性誘導体には、何ら言及していない。放射線硬化系の特定の環境への移動がドイツ国出願番号10246512.6 に記載されているが、本願の優先日には、未刊行である。
【0007】
もう一つのルートは、ウレトジオンの開環でアロファネート構造を与えることであり、それは既に放射線硬化系に成功裏に入れ替えられている(ドイツ国出願番号102004012903 に記載されているが、本願の優先日には、未刊行である)。
【0008】
両方のルートは、出発材料としてグレードが高い原材料を要求し、副生成物に富むアロファネート生成物のみをもたらす。
【0009】
US-A 5 777 024 は、活性化された二重結合を有するヒドロキシ官能性モノマーと、アロファネート変性イソシアヌレートポリイソアネートのイソシアネート基とを反応させることによる、低粘度放射線硬化性アロファネートの製造を開示する。アロファネート基を介して結合する基は、飽和であり、いずれかの可能な高次の官能性は、先のものである。
【0010】
EP-B 694 531 は、放射線硬化性基を含む親水化アロファネートの多段階製造方法を開示する。しかし、この場合、まずNCO−及びアクリレート−官能性ウレタンを製造し、その後、親水化され、更にNCO−及びアクリレート−官能性ウレタンを加えてアロファネート化される。アロファネート化反応温度として、100〜110℃の温度が例示される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、容易に利用できる原材料に基づいて、一回の操作で、100℃以下の適当な温度で、蒸留工程無しに、放射線硬化性バインダーとして、化学作用を有する放射線によって架橋可能な基(放射線硬化性基)を含む、NCO−基を有さない高官能性アロファネート混合物を提供することであって、その意図は、本バインダーは、0.5重量%より少ない残留ジイソシアネートモノマー含有量を有することである。この生成物の粘度は、たとえ溶媒を加えなくても、室温で処理することができるように、十分低く、即ち、23℃で200000mPa・s以下であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要約
本発明の目的である上述の要求に合致するこの種の放射線硬化性アロファネートは、製造の間あるNCO/OH比を維持すると明確に製造できることが、今回見出された。
【0013】
本発明は、0.5重量%より少ない残留モノマー含有量を有し、1重量%より少ないNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートの製造方法であって、
A)イソシアネート基含有化合物、
B)化学作用を有する放射線に暴露すると、エチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基(放射線硬化性基)を含むヒドロキシ官能性化合物及び
C)場合により、更にNCO反応性基を含む化合物を
D)場合により、触媒の存在下用いて、
放射線硬化性基を有するNCO基含有ウレタンを形成し、
更にイソシアネート基含有化合物を加えることなく、
E)アロファネート化触媒の存在下、反応させる製造方法であり、
A)からの化合物のNCO基と、B)及び使用した場合C)からの化合物のOH基との比は、1.45:1.0〜1.1:1.0である製造方法を提供する。
【0014】
本発明は、更に、本発明の製造方法により得られるバインダーを提供する。
【0015】
本発明は、更に、
a)本発明の一又はそれ以上の放射線硬化性アロファネート
b)場合により、化学作用を有する放射線に暴露すると、エチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有さない、遊離の又はブロックイソシアネート基を含む、一又はそれ以上のポリイソシアネート、
c)場合により、化学作用を有する放射線に暴露すると、エチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含み、及び場合により遊離の又はブロックイソシアネート基を含む、a)のものと異なる他の化合物、
d)場合により、活性水素を含む一又はそれ以上のイソシアネート−反応性化合物、
e)開始剤、
f)場合により、溶媒及び
g)場合により助剤及び添加剤
を含んで成るコーティング組成物を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
好ましい態様の詳細な説明
実施例で用いるように又は他に明示的に記載されていないならば、本明細書において用語「約」が、たとえ明記されていなくとも、まるで前に記載されているように、全ての数字を読んでよい。更に本発明のいずれかの数値範囲は、それが包含する全ての部分的範囲を含むことを意図する。
【0017】
A)からの化合物のNCO基と、B)及び用いる場合C)からの化合物のOH基との比は、好ましくは1.43:1.0〜1.2:1.0、より好ましくは1.35;1.0〜1.3:1.0である。
【0018】
適するイソシアネート含有化合物A)は、芳香族、脂肪族及び脂環式ポリイソシアネートを含む。適するポリイソシアネートは、800g/モル以下の数平均分子量を有する式Q(NCO)の化合物であり、但し、nは2〜4の数及びQはC〜C15の芳香族炭化水素基、C〜C12の脂肪族炭化水素基又はC〜C15の脂環式炭化水素である。下記の一連のジイソソシアネートを好ましく例示できる:2,4−/2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)、メチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)、トリイソシアナトノナン(TIN)、ナフチルジイソシアネート(NDI)、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン、3−イソシアナトメチル−3,3,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート=IPDI)、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2−メチルペンタメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(THDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアナトシクロヘキサン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルジシクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−イソシアナトシクロヘキシル)プロパン、3−イソシアナトメチル−1−メチル−1−イソシアナト−シクロヘキサン(MCI)、1,3−ジイソオクチルシアナト−4−メチルシクロヘキサン、1,3−ジイソシアナト−2−メチルシクロヘキサン及びα,α,α’,α’−テトラメチル−m−又は−p−キシリレンジイソシアネート(TMXDI)及びこれらの化合物から成る混合物。
【0019】
同様に、イソシアネート含有化合物A)として適するものは、ウレトジオン又はイソシアヌレートを形成する上述のイソシアネートとそれ自身又は他のものとの反応生成物である。デスモジュール(Desmodur)(登録商標)N3300、デスモジュール(登録商標)N3400又はデスモジュール(登録商標)N3600(全てバイエルマテリアルサイエンス社(Bayer MarerialScience)製、レーフェルクーゼン(Leverkusen)、ドイツ)を例示することができる。
【0020】
イソシアネート含有化合物A)として更に上述のイソシアネートと、イソシアネート反応性化合物との反応生成物が、プレポリマーを形成し適する。そのようなイソシアネート反応性化合物は、特にポリオール、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及び多価アルコールである。ポリオールとして、比較的高分子量のヒドロキシ化合物と少量の低分子量のヒドロキシ化合物を用いることが好ましい。
【0021】
従って、成分A)の化合物は、本発明の方法に直接入れることができる、又は任意の前駆体から開始して、本発明の方法を行う前に、予備的反応により製造することができる。
【0022】
成分(A)としてモノマーのジイソシアネートを使用することが好ましい。ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及び/又は4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを用いることが特に好ましい。
【0023】
化学作用を有する放射線とは、電磁放射線、電離放射線、特に、電子線、UV放射線及び可視光を意味する(Roche Lexikon Medizin, 4th edition; Urban & Fischer Verlag, Munich 1999)。
【0024】
化学作用を有する放射線に暴露するとエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基(放射線硬化性基)は、本発明の目的のために、ビニルエーテル、マレイル、フマリル、マレイミド、ジシクロペンタジエニル、アクリルアミド、アクリル及びメタクリル基であり、ビニルエーテル、アクリレート及び/又はメタクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0025】
成分B)のヒドロキシ含有化合物に適する例は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンオキサイドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEA6/PEM6、ラポルテ・パフォーマンス・ケミカルズ社(Laporte Performance Chemicals Ltd.)、英国))、ポリプロピレンオキサイドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PPA6、PPM5S、ラポルテ・パフォーマンス・ケミカルズ社、英国)、ポリアルキレンオキサイドモノ(メタ)アクリレート(例えば、PEM63P、ラポルテ・パフォーマンス・ケミカルズ社、英国)、ポリ(ε−カプロラクトン)モノ(メタ)アクリレート、例えば、Tone M100(登録商標)(ダウ社、シュバルバッハ(Schwalbach)、ドイツ)、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシ−2,2−ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ−官能性モノ−、ジ−又は可能な場合より高次のアクリレート、例えば、グリセリルジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート又はジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートであり、それらは、多価アルコール、場合によりアルコキシル化アルコール、例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールを反応させることで得られる。
【0026】
同様に、B)の成分として適するものには、二重結合を含む酸と、場合により二重結合を含むエポキシ化合物との反応により得られるアルコールが含まれ、例えば、(メタ)アクリル酸とグリシジル(メタ)アクリレート又はビスフェノールAジグリシジルエーテルとの反応生成物が例示される。
【0027】
更に、場合により不飽和酸無水物と場合によりアクリレート基を含むエポキサイド化合物及びヒドロキシ化合物との反応から得られる不飽和アルコールを用いることもできる。無水マレイン酸と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アクリレートとの反応生成物を例示できる。
【0028】
成分B)の化合物として、上述の種類に対応し、0.9〜1.1のOH官能性を有するものが特に好ましい。
【0029】
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。ヒドロキシエチルアクリレート及びヒドロキシプロピルアクリレートが特に好ましい。
【0030】
成分B)のOH官能性不飽和化合物の他に、本発明の製造方法で更に化合物C)を用いることができ、それは、例えばOH、SH又はNH等のNCO反応性基を含み、B)のものと異なるものである。
これらは、化学作用を有する放射線に暴露した際、エチレン性不飽和化合物と重合を伴い反応する基を含むNH−又はSH−官能性化合物であり得る。
【0031】
化学作用を有する放射線に暴露する条件で非反応性である化合物、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール及び多価アルコール等を、成分C)として生成物の性質に影響を与えるために更に用いることができる。ポリオールとして、比較的高分子量のヒドロキシ化合物と、少量の低分子量のヒドロキシ化合物を用いることができる。
【0032】
比較的高分子量のヒドロキシ化合物には、ヒドロキシポリエステル、ヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリチオエーテル、ヒドロキシポリアセタール、ヒドロキシポリカーボネート、二量化脂肪アルコール及び/又はエステルアミド(ポリウレタンの化学で常套のもの)が含まれ、各々の場合、平均分子量は400〜8000g/モルであるが、500〜6500g/モルの平均分子量を有することが好ましい。比較的高分子量のヒドロキシ化合物は、ヒドロキシポリエーテル、ヒドロキシポリエステル及びヒドロキシポリカーボネートが好ましい。
【0033】
使用され得る低分子量ポリヒドロキシ化合物は、ポリウレタン化学で常套のポリオールであって、62〜399の分子量を有するポリオールであり、下記のものを例示できる:エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール及び1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール及び−1,3−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン又は1,4−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、グリセロール、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール−ブタン−1,2,4−トリオール、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシド及び4,3,6−ジアンヒドロヘキシトール。
【0034】
適するポリエーテルポリオールは、2〜6価の開始剤分子、例えば、水又は上述のポリオール又は1〜4のNH結合を含むアミンを用いて製造される、ポリウレタン化学で常套のポリエーテル、例えば、テトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はエピクロルヒドリン等からの例えば、付加化合物又は混合付加化合物であり、特にエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイドからのものである。平均2〜4の水酸基を含み、50重量%以下の組み込まれたポリエチレンオキサイド単位を含んでよいプロピレンオキサイドポリエーテルが好ましい。
【0035】
適するポリエステルポリオールの例には、多価アルコール、好ましくはジアルコール及び場合により追加のトリアルコールと、多カルボン酸、好ましくはジカルボン酸との反応生成物を含む。ポリエステルを製造するために、遊離のカルボン酸の代わりに、対応する無水多カルボン酸又は対応する多カルボン酸の低級アルコールエステル又はそれらの混合物を用いることもできる。多カルボン酸は、本質的に脂肪族、脂環式、芳香族及び/又は複素環式であってよく、適する場合、例えば、ハロゲン原子で置換されていてよく及び/又は不飽和であってよい。例として、アジピン酸、フタル酸、イソフタル酸、コハク酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、トリメリット酸、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水グルタル酸、無水テトラクロロフタル酸、無水エンドメチレンテトラヒドロフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、脂肪酸の二量体及び三量体、例えばオレイン酸、場合によりモノマー脂肪酸との混合物の中のオレイン酸の二量体及び三量体、ジメチルテレフタレート又はビス−グリコールテレフタレートが例示される。60℃以下で溶解し2又は3の末端OH基を有するヒドロキシポリエステルが好ましい。
【0036】
検討中のポリカーボネートポリオールは、炭酸誘導体、例えばジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート又はホスゲンと、ジオールとの反応によって得ることができる。適するそのようなジオールの例には、エチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール及び−1,3−ジオール、ブタン−1,4−ジオール及び−1,3−ジオール、ペンタン−1,5−ジオール、ヘキサン−1,6−ジオール、オクタン−1,8−ジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン又は1,4−(ヒドロキシエトキシ)−ベンゼン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチルペンタンジオール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジブチレングリコール、ポリブチレングリコール、ビスフェノールA及びテトラブロモビスフェノールA又は該ジオールの混合物が含まれる。ジオール成分は、40〜100重量%のヘキサンジオール、好ましくはヘキサン−1,6−ジオール、及び/又はヘキサンジオール誘導体、好ましくは末端OH基に加えてエーテル基又はエステル基を含むもの、例えば1モルのヘキサンジオールと、少なくとも1モル好ましくは1〜2モルのカプロラクトンとの反応により得られる生成物(DE-A 1 770 245 に基づく)、又はジ−又はトリヘキシレングリコールを得るためにヘキサンジオールとそれ自身とのエーテル化により得られる生成物が好ましい。そのような誘導体の製造は、DE-A 1 570 540 に例示されている。DE-A 3 717 060 に記載のポリエーテルポリカーボネートジオールを、極めて良好に使用することもできる。
【0037】
ヒドロキシポリカーボネートは、実質的に鎖状でなければならない。しかし、多官能価成分、特に低分子量ポリオールを組み込む結果、場合によりわずかに分枝してもよい。この目的のために適する化合物の例には、トリメチロールプロパン、ヘキサン−1,2,6−トリオール、グリセロール、ブタン−1,2,4−トリオール、ペンタエリスリトール、キニトール、マンニトール、ソルビトール、メチルグリコシド及び4,3,6−ジアンヒドロヘキシトールが含まれる。
【0038】
更に、特に水系媒体の使用、例えば水系コーティング材料中での使用を構想するならば、親水化作用を有する基を組み込むことができる。親水化作用を有する基は、イオン基、本質的にカチオン又はアニオンであってよく、及び/又は非イオン親水基であってよい。カチオン性、アニオン性又は非イオン性分散化合物には、例えば、スルホニウム、アンモニウム、ホスホニウム、カルボキシレート、スルホネート又はホスホネート基又は塩を形成することによって上述の基に変換可能な基(潜在的なイオン基)又はポリエーテル基を含み、存在するイソシアネート反応性基によって組み込み可能なものが含まれる。好ましく適するイソシアネート反応基は、ヒドロキシ及びアミノ基である。
【0039】
イオン基又は潜在的イオン基を含む適する化合物の例には、モノ−及びジヒドロキシカルボン酸、モノ−及びジアミノカルボン酸、モノ−及びジヒドロキシスルホン酸、モノ−及びジアミノスルホン酸及びモノ−及びジヒドロキシホスホン酸又はモノ−及びジアミノホスホン酸及びそれらの塩、例えば、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、ヒドロキシピバル酸、N−(2−アミノエチル)−β−アラニン、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸、エチレンジアミン−プロピル−又はブチルスルホン酸、1,2−又は1,3−プロピレンジアミン−β−エチルスルホン酸、リンゴ酸、クエン酸、グリコール酸、乳酸、グリシン、アラニン、タウリン、リジン、3,5−ジアミノ安息香酸、IPDIとアクリル酸との付加物(EP-A 0 916 647、実施例1)及びそのアルカリ金属及び/又はアンモニウム塩;亜硫酸水素ナトリムと2−ブテン−1,4−ジオールとの付加物、ポリエーテルスルホネート、2−ブテンジオールとNaHSOとのプロポキシル化付加物、例えば、DE-A 2 446 440(第5頁〜第9頁、式I〜III)に記載のもの及び親水性合成成分として、カチオン基、例えばN−メチルジエタノールアミンに変換可能な構造単位も含まれる。好ましいイオン又は潜在的イオン化合物は、カルボキシル基、カルボキシレート基及び/又はスルホネート基及び/又はアンモニウム基を有するものである。
【0040】
特に好ましいイオン化合物は、イオン又は潜在的イオン基として、カルボキシル基及び/又はスルホネート基を含むもの、例えば、N−(2−アミノエチル)−β−アラニンの塩、2−(2−アミノエチルアミノ)エタンスルホン酸の塩又はIPDIとアクリル酸との付加物の塩(EP-A-0 916 647、実施例1)及びジメチルプロピオン酸の塩である。
【0041】
適する非イオン親水化化合物は、例えば、水酸基又はアミノ基の少なくとも一を含むポリオキシアルキレンエーテルである。これらのポリエーテルは、エチレンオキサイドから誘導される単位を30重量%〜100重量%の成分で含む。適する化合物には、1〜3の官能価を有する鎖状構造のポリエーテルが含まれるが、一般式(I)、
【化1】

[ただし、
及びRは、各々独立して、1〜18の炭素原子を有する二価の脂肪族、脂環式又は芳香族基であり、酸素及び/又は窒素が割り込んでいてもよく、及び
は、アルコキシ末端ポリエチレンオキサイド基である。]
の化合物も含まれる。
【0042】
非イオン親水化化合物として、例えば、平均5〜70、好ましくは7〜55のエチレンオキサイド単位を一分子当たりに含む一価ポリアルキレンオキサイドポリエーテルアルコールも例示でき、適する開始剤をアルコキシル化することによって、常套の方法等で得ることができる(例えば、Ullmanns Encyclopaedie der technischen Chemie, 4th edition, volume 19, Verlag Chemie, Weinheim pp.31-38)。
【0043】
適する開始剤分子の例には、飽和モノアルコール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、異性体の(又は異性の)ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール及びノナノール、n−デカノール、n−ドデカノール、n−テトラデカノール、n−ヘキサデカノール、n−オクタデカノール、シクロヘキサノール、異性体のメチルシクロヘキサノール又はヒドロキシメチルシクロヘキサン、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン又はテトラハイドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、例えば、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、不飽和アルコール、例えば、アリルアルコール、1,1−ジメチルアリルアルコール又はオレイルアルコール、芳香族アルコール、例えば、フェノール、異性体のクレゾール又はメトキシフェノール、芳香脂肪族アルコール、例えば、ベンジルアルコール、アニシルアルコール又はシンナミルアルコール、二級モノアミン、例えば、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、N−メチル−及びN−エチルシクロヘキシルアミン又はジシクロヘキシルアミン及び複素環式二級アミン、例えば、モルフォリン、ピロリジン、ピペリジン又は1H−ピラゾールが含まれる。好ましい開始剤分子は、飽和モノアルコールである。開始剤分子として、ジエチレングリコールモノブチルエーテルを用いることが特に好ましい。
【0044】
アルコキシル化反応に適するアルキレンオキサイドは、特にエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドであり、それらは、アルコキシル化反応においていずれかの順序で又は混合物で使用することができる。
【0045】
ポリアルキレンオキサイドポリエーテルアルコールは、直鎖状ポリエチレンオキサイドポリエーテルである又はアルキレンオキサイド単位の少なくとも30モル%、好ましくは少なくとも40モル%は、エチレンオキサイド単位を含んで成る混合ポリアルキレンオキサイドポリエーテルである。好ましい非イオン化合物は、少なくとも40モル%のエチレンオキサイド単位及び60モル%以下のプロピレンオキサイド単位を含む単官能価混合ポリアルキレンオキサイドポリエーテルである。
【0046】
特にイオン基を含む親水化剤を用いる場合、触媒D)及びE)の作用への影響を調べることが必要である。この理由から、親水化剤として非イオン化合物が好ましい。
【0047】
触媒成分D)に適する化合物には、当業者に自体既知のウレタン化触媒、例えば有機スズ化合物又はアミンの触媒が含まれる。例として考慮し得る有機スズ化合物には、下記のものが含まれる:ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズビスアセトアセトネート及びスズカルボキシレート例えばスズオクトエート。上述のスズ触媒は、場合により、アミン触媒例えばアミノシラン又は1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンと組み合わせて用いてよい。
【0048】
D)のウレタン化触媒として、ジブチルスズジラウレートを用いることが、特に好ましい。
【0049】
本発明の方法において、もし使用するならば、方法の生成物の固形分を基準として、0.001〜5.0重量%、好ましくは0.001〜0.1重量%及びより好ましくは0.005〜0.05重量%の量で触媒D)を用いることが好ましい。
【0050】
触媒E)として、当業者に自体既知のアロファネート化触媒、例えば、亜鉛の塩、亜鉛オクトエート、亜鉛アセチルアセトネート及び亜鉛2−エチルカプロエート、又はテトラアルキルアンモニウム化合物、例えばN,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウムハイドロオキサイド、N,N,N−トリメチル−N−2−ヒドロキシプロピルアンモニウム 2−エチルヘキサノエート又はコリン2−エチルヘキサノエートを用いることができる。アロファネート化触媒としてテトラアルキルアンモニウム化合物を使用することが好ましく、テトラアルキルアンモニウムアルカノエートを使用することがより好ましく、コリン2−エチルヘキサノエートを使用することが特に好ましい。
【0051】
アロファネート化触媒は、本発明の方法の生成物の固形分を基準として、0.001〜5.0重量%、好ましくは0.01〜1.0重量%、より好ましくは0.05〜0.5重量%の量で使用される。
【0052】
原則として、D)中のウレタン化反応を考慮に入れてもアロファネート化触媒E)を用いて、二段階の手順を一段階反応に単純化することができる。しかし、これは好ましいことではなく、ウレタン基の全部又は一部が反応してアロファネート基になるまで、アロファネート化触媒を加えない。
【0053】
触媒E)を、全てを一度に又は多くの部分にして又は連続的に加えることができる。温度ピークの発生とその後の放射線硬化性基の望ましくない重合反応を回避するために、部分的に加えること又は連続的に加えることが好ましい。触媒E)を200〜600ppm/hの速度で加えて、アロファネーションを完了するために、最終生成物の所望のNCO含有量に達するまで、反応混合物を攪拌することが特に好ましい。
【0054】
アロファネート化反応は、生成物のNCO含有量が0.5重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下になるまで行うことが好ましい。
【0055】
原則として、残留NCO基と、NCO−反応性化合物、例えば、アルコールとを、アロファネート化反応の終了後反応させることができる。これは、特に低NCO含有量を有する生成物を与える。
【0056】
当業者に既知の方法によって、触媒D)及び/又はE)を支持材料(又は担体)に適用することができ、不均一触媒として使用することもできる。
【0057】
場合により、溶媒又は反応性希釈剤をいずれかの所望のポイントで用いることができる。
【0058】
適する溶媒は、それらを加えたときから方法の終了まで、方法の生成物中に存在する官能基に対して不活性なものである。適する溶媒は、例えば、塗料工業で用いられているものであり、炭化水素、ケトン及びエステルであり、例えば、トルエン、キシレン、イソオクタン、アセトン、ブタノン、メチルイソブチルケトン、エチルアセテート、ブチルアセテート、テトラヒドロフラン、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド及びジメチルホルムアミドを例示できるが、いずれの溶媒も加えないことが好ましい。
【0059】
反応性希釈剤としてUV硬化の過程において、同様に(共)重合し、ポリマーネットワーク中に組み込まれるがNCO基に対して不活性な化合物を用いることが可能である。そのような反応性希釈剤は、例えば、P.K.T. Oldring (ed.), Chemistry & Technology of UV & EB Formulations For Coatings, Inks & Paints, Vol. 2, 1991, SITA Technology, London, pp. 237-285 に例示されている。それらは、アクリル酸又はメタクリル酸、好ましくはアクリル酸と、一価又は多価アルコールとのエステルであってよい。適するアルコールの例には、異性体のブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール及びデカノール、脂環式アルコール、例えば、イソボルノール、シクロヘキサノール及びアルキル化シクロヘキサノール、ジシクロペンタノール、芳香脂肪族アルコール、例えば、フェノキシエタノール及びノニルフェニルエタノール、及びテトラハイドロフルフリルアルコールが含まれる。更に、これらのアルコールのアルコキシル化誘導体を用いることができる。適する二価アルコールは、例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、異性体のブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ヘキサン−1,6−ジオール、2−エチルヘキサンジオール及びトリプロピレングリコール又はこれらのアルコールのアルコキシル化誘導体等である。好ましい二価アルコールは、ヘキサン−1,6−ジオール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコールである。適する三価のアルコールは、グリセロール又はトリメチロールプロパン又はそれらのアルコキシル化誘導体である。四価のアルコールは、ペンタエリスリトール又はそれのアルコキシル化誘導体である。
【0060】
本発明のバインダーは、早まった(又は時期尚早の)重合に対して安定化されていなければならない。従って、成分A)又はB)の要素として、反応の前及び/又は間に、重合を抑制する安定剤を添加する。本発明では、フェノチアジンを使用することが好ましい。可能な他の安定剤は、例えば、p−メトキシフェニル、2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン又は2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール等のフェノールである。安定化するために、例えば、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキサイド(TEMPO)又はその誘導体等のN−オキシ化合物も適する。安定剤をバインダー内に化学的に組み込むことができる。本明細書において、上述の種類の化合物が適切であり、特に、遊離の脂肪族アルコール基又は一級又は二級アミノ基を有し、それ故にウレタン基又は尿素基によって成分A)の化合物に化学的に結合できるものが適切である。この目的のために特に適するものは、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンN−オキサイドである。
【0061】
例えば、HALS(HALS=ヒンダード・アミン光安定剤:hindered amine light stabilizers)の種類に含まれる化合物等の他の安定剤は、E)中で好ましく用いられない。それらは、効果的に安定化することができないことが知られており、その代わりに、「徐々に進行する」不飽和基のラジカル重合をもたらし得るからである。
【0062】
安定剤は、触媒D)とE)の影響下で安定であり、反応条件下で本発明の方法の成分と反応しないように選択する。これは、安定化特性の損失をもたらし得る。早まった重合に対して反応混合物、特に不飽和基を安定化するために、反応混合物中及び/又は上に、酸素含有ガス、好ましくは空気を通すことができる。イソシアネートの存在下で望ましくない反応を防止するために、そのガスは、極めて低い湿気含有量を有することが好ましい。
【0063】
一般に、安定剤は本発明のバインダーを製造する間加えられ、終わりに、長期安定性を達成するために、フェノール系安定剤を用いて安定化を繰り返し、場合により、空気を用いて反応生成物を飽和する。
【0064】
本発明の方法では、安定剤成分は、本方法の生成物の固形分を基準として、典型的には0.001重量%〜5.0重量%の量で、好ましくは0.01重量%〜2.0重量%の量で、より好ましくは0.05重量%〜1.0重量%の量で用いられる。
【0065】
本発明の方法は、100℃を超えない温度で、好ましくは20〜100℃で、より好ましくは40〜100℃、特に60〜90℃で行われる。
【0066】
本発明の一方又は両方の工程を、例えばスタティックミキサー、押出機又は配合機等の中で連続的に行うか否か、又は例えば攪拌反応器中でバッチ式で行うか否かは、重要ではない。
【0067】
本発明の方法は、攪拌反応器中で行うことが好ましい。
【0068】
反応の経過は、反応器内に備えた適切な測定装置を用いて及び/又は取り出した試料の分析に基づいてモニターすることができる。適する技術は、当業者に既知のものであり、それには、例えば、粘度測定、NCO含有量の測定、屈折率の測定、OH含有量の測定、ガスクロマトグラフィー(GC)、核磁気共鳴スペクトル(NMR)、赤外線スペクトル(IR)及び近赤外線スペクトル(NIR)が含まれる。遊離のNCO基の存在に対するIRによるチェック(脂肪族NCO基に対する吸収帯はニュー=約2272cm−1)及びA)、B)及び使用した場合C)からの未反応化合物に対するGC分析が好ましい。
【0069】
原則として、ウレタン化反応とアロファネート化反応の両方を触媒する触媒又は触媒混合物を用いて操作して、一段階で本発明の方法を行うことができる。その場合、ウレタン化とアロファネート化を、平行して行うが、この手順は、好ましくない。
【0070】
本発明の方法によって得ることができる不飽和アロファネート、特に使用されるHDIに基づくものを好ましく用いることができるが、23℃で150000mPa・s以下のせん断粘度を有することが好ましく、80000mPa・s以下のせん断粘度を有することがより好ましい。
【0071】
本発明の方法によって得ることができる不飽和アロファネート、特に使用されるHDIに基づくものを好ましく用いることができるが、600〜3000g/molの数平均分子量Mnを有することが好ましく、650〜1500g/molの数平均分子量Mnを有することがより好ましい。
【0072】
本発明の方法によって得ることができる不飽和アロファネートは、好ましくは0.5重量%より少ない、より好ましくは0.1重量%より少ない遊離のジ−及び/又はトリイソシアネートモノマーを含む。
【0073】
本発明の放射線硬化性アロファネートは、コーティング、塗料(又はペンキ)、接着剤、印刷用インク、注型用樹脂(又はキャスティング樹脂)、歯科配合物、サイズ(陶砂、のり剤、サイズ剤、目止め剤又は下塗り剤)、フォトレジスト、ステレオリソグラフィーシステム、複合材料用樹脂及び封止剤(又はシーラント)を製造するために用いることができる。しかし、接着剤又は封止剤の場合、UV放射線硬化をする場合に、互いに結合又は封止すべき二つの基材の少なくとも一つは、UV放射線に対して透過性であるということ、言い換えれば、一般的に、透明でなければならないということが要求される。電子線の場合、電子線に対する十分な透過性が確保させるべきである。塗料及びコーティングに用いることが好ましい。
【0074】
本発明は、更に
a)本発明の一又はそれ以上の放射線硬化性アロファネート、
b)場合により、化学作用を有する放射線に暴露すると、エチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含まない、遊離の又はブロックイソシアネート基を含む一又はそれ以上のポリイソシアネート、
c)場合により、化学作用を有する放射線に暴露すると、エチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含み、場合により遊離の又はブロックNCO基を含む、a)の化合物と異なる、他の化合物、
d)場合により、活性水素を含む一又はそれ以上のイソシアネート反応性化合物、
e)開始剤、
f)場合により、溶媒及び
g)場合により、助剤及び添加剤
を含んで成るコーティング組成物を提供する。
【0075】
化合物b)のポリイソシアネートは、それ自体当業者に既知である。場合によりイソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン及び/又はイミノオキサジアジントリオン基によって修飾され及びヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン及び/又はトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づく化合物を用いることが好ましい。
【0076】
この場合、NCO基もブロックされていてよく、用いられるブロック剤は、成分A)の記載に関連して既に上述した化合物であってよい。
成分c)の化合物には、例えば、特に、ウレタンアクリレートであって、好ましくはヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン及び/又はトリメチルヘキサメチレンジイソシアネートに基づくもの、場合により、イソシアヌレート、アロファネート、ビウレット、ウレトジオン及び/又はイミノオキサジアジントリオン基で修飾されてよく、及び活性水素を含むイソシアネート基反応性機能を有さないものが含まれる。
【0077】
NCO含有ウレタンアクリレートは、バイエル社(レーフェルクーゼン、ドイツ)から、例えばRoskydal(登録商標)UA VP LS 2337、Roskydal(登録商標)UA VP LS 2396又はRoskydal(登録商標)UA XP 2510として市販されている。
【0078】
更に、既に上述し、放射線硬化性コーティング技術で既知の反応性希釈剤を、それらがNCO反応性基を全く含まないという条件で、c)の成分として使用してよい。
【0079】
成分d)の化合物は、飽和でも不飽和でもよい。NCO基と反応する化学的官能性は、例えば、ヒドロキシル、アミン又はチオール等の活性水素原子を含む官能性である。
【0080】
飽和ポリヒドロキシ化合物が好ましい。ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリ(メタ)アクリレートポリオール及び/又はポリウレタンポリオールであって、コーティング、接着剤、印刷インク又は封止剤の技術から既知であり、化学作用を有する放射線に暴露すると、エチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含まないものを例示できる。
【0081】
不飽和ヒドロキシ官能性化合物として、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート及びアクリレート化ポリアクリレートであって、放射線硬化性コーティングの技術で既知であり、30〜300mgKOH/gのOH価を有するものを例示できる。
【0082】
更に、NCO反応性基を含むという条件で、d)の成分として、既に上述し、放射線硬化性コーティングの技術で既知の反応性希釈剤を用いることができる。
【0083】
フリーラジカル重合用の成分e)の開始剤として、熱的に及び/又は放射線によって活性化され得る開始剤を用いることができる。本発明においてUV又は可視光によって活性化される光開始剤が好ましい。光開始剤は、それ自体既知の化合物であって、市販されており、単分子(タイプI)と二分子(タイプII)の開始剤で区別される。適する系(タイプI)は、芳香族ケトン化合物、例えば、三級アミンと組み合わせたベンゾフェノン、アルキルベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン:Michler's ketone)、アントロン及びハロゲン化ベンゾフェノン又は上述のタイプの混合物である。更に適するものは、例えば、ベンゾイン及びその誘導体、ベンジルケタール、アシルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイド、フェニルグリオキシル酸エステル、カンファーキノン、α−アミノアルキルフェノン、α,α−ジアルコキシアセトフェノン及びα−ヒドロキシアルキルフェノン等の開始剤(タイプII)である。
【0084】
フィルム形成バインダーの重量を基準として、0.1〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%の量で使用される開始剤を、個々の物質で又はしばしは有利な相乗効果を理由として互いに他のものと組み合わせて使用することができる。
【0085】
UV放射線の代わりに電子線を用いる場合、光開始剤を用いる必要はない。当業者には既知のように、電子線を、熱放射によって発生させ、電位差によって加速する。高エネルギーの電子は、チタン箔を通過し、硬化すべきバインダーへ導かれる。電子線硬化の一般的な原理は、「Chemistry & Technology of UV & EB Formulations for Coatings, Inks & Paints」, Vol. 1, P K T Oldring (Ed.), SITA Technology, London, England, pp. 101-157, 1991 に詳細に記載されている。
【0086】
活性化された二重結合を熱的に硬化する場合、これは、熱的に分解するフリーラジカル開始剤を加えることで行うことができる。適するものには、当業者に既知のような、例えばパーオキシ化合物、例えばジアルコキシジカーボネート、例えばビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等、ジアルキルパーオキサイド、例えばジラウリルパーオキサイド等、芳香族又は脂肪族の酸のパーエステル、例えばtert−ブチルパーベンゾエート又はtert−アミルパーオキシ2−エチルヘキサノエート等、無機パーオキサイド、例えば、アンモニウムパーオキソジサルフェート、カリウムパーオキソジサルフェート等、有機パーオキサイド、例えば、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、ジクミルパーオキサイド、tert−ブチルハイドロパーオキサイド等又はアゾ化合物、例えば、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、1−[(シアノ−1−メチルエチル)アゾ]ホルムアミド、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチル−プロピオンアミド)、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミドが含まれる。高度に置換された1,2−ジフェニルエタン(ベンズピナコール類)、例えば、3,4−ジメチル−3,4−ジフェニルヘキサン、1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール又はそれらのシリル化誘導体等も使用できる。
【0087】
UV光及び熱的に活性化可能な開始剤の組み合わせを使用することもできる。
成分e)の助剤及び添加剤は、上述の特定のタイプの溶媒を含む。
【0088】
更に、硬化したコーティングフィルムの耐候性を増加させるために、e)は、UV吸収剤及び/又はHALS安定剤を含むことができる。組み合わせが好ましい。前者は390nm以下の吸収範囲を有さなければならず、例えばトリフェニルトリアジンタイプ(例えば、チヌビン(Tinuvin)(登録商標)400(チバ・シュペツィアリテーテンヘミー社(又はチバ・スペシャルティー・ケミカルズ社:Ciba Spezialitaetenchemie GmbH)、ランペルトハイム(Lampertheim)、ドイツ)、ベンゾトリアゾール、例えばチヌビン(登録商標)622(チバ・シュペツィアリテーテンヘミー社、ランペルトハイム、ドイツ)又はシュウ酸ジアニリド(例えば、サンジュバー(Sanduvor)(登録商標)3206(クラリアント社(Clariant)、ムッテンズ(Muttenz)、スイス)であり、樹脂固形分を基準として、0.5〜3.5重量%加えられる。適するHALS安定剤は、市販されている(チヌビン(登録商標)292又はチヌビン(登録商標)123(チバ・シュペツィアリテーテンヘミー社、ランペルトハイム、ドイツ)又はサンジュバー(登録商標)3258(クラリアント社、ムッテンズ、スイス))。好ましい量は、樹脂固形分を基準として、0.5〜2.5重量%である。
同様にe)は、色素、染料、顔料、充填剤、レベル剤及び揮発分除去剤を含むことができる。
【0089】
更に、必要であれば、NCO/OH反応を促進するために、ポリウレタン化学から既知の触媒を、e)内に存在させることができる。これらは、例えば、スズ塩又は亜鉛塩又は有機スズ化合物、スズ石鹸及び/又は亜鉛石鹸、例えば、スズオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズオキサイド又は三級アミン、例えば、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)等である。
【0090】
コートすべき材料への本発明のコーティング組成物の適用(又は塗工)は、例えば、噴霧、ナイフ塗布、ロール塗り、流し込み、浸せき、スピンコーティング、はけ塗り又は噴出等のコーティング技術で既知であり常套の方法、又は例えばスクリーン、グラビア、フレキソ印刷又はオフセット印刷等の印刷技術及びトランスファー法(又は転写法:transfer method)等によって行う。
【0091】
適する基材は、例えば、木材、金属であり、特に、ワイヤーエナメル塗装、コイル被覆、カン塗装又はコンテナ塗装等の応用に用いられる金属が含まれ、更にプラスチックであり、フィルム(又は膜)形態のプラスチックを含み、特に、ABS、AMMA、ASA、CA、CAB、EP、UF、CF、MF、MPF、PF、PAN、PA、PE、HDPE、LDPE、LLDPE、UHMWPE、PET、PMMA、PP、PS、SB、PUR、PVC、RF、SAN、PBT、PPE、POM、PUR−RIM、SMC、BMC、PP−EPDM、及びUP(略語はDIN7728T1に基づく)を含み、紙、革、織物、フェルト、ガラス、木材、木質材料、コルク、無機的に結合した材料、例えば、木質ボード及びファイバーセメントスラブ、電子アセンブリ又は鉱物基材を含む。上述の種々の材料から成る基材をコートすることもでき、又は既にコートされた基材、例えば自動車、飛行機又はボート及びそれらの部品、特に自動車の車体又は外装用部品をコートすることもできる。コーティング組成物を基材に一時的に適用し、その後部分的に又は十分に硬化させ及び場合により例えばフィルムを生成するために再び引き離すこともできる。
【0092】
硬化するために、存在する溶媒を、例えば完全に又は部分的に蒸発分離することによって除去することができる。
【0093】
順次に又は同時に、場合により必要な熱及び光化学硬化操作を、連続して又は同時に行うことができる。
【0094】
必要であれば、熱硬化を室温で又は加熱して、好ましくは40〜160℃で、より好ましくは60〜130℃で、特に好ましくは80〜110℃で行うことができる。
【0095】
d)中で光開始剤を用いる場合、高エネルギー放射線、言い換えれば、UV放射線又は日光、例えば200〜700nmの波長の光に暴露することによって、又は高エネルギーの電子(150〜300keVの電子線)で衝撃を与えることによって、放射線硬化を行うことが好ましい。使用される光又はUV光の放射源は、例えば、高圧又は中圧水銀灯であり、水銀蒸気は、ガリウム又は鉄等の他の元素を用いてドープして変性してよい。レーザー、パルスランプ(UVフラッシュランプの表示の下で既知)、ハロゲンランプ又はエキシマーエミッターが同様に可能である。それらの設計の本質的な部分として、又は特別なフィルター及び/又は反射鏡の使用を介して、UVスペクトルの部分の放射を防止するようにエミッターを備えてもよい。一例として、職業衛生学の理由から、例えば、UV−Cに又はUV−C及びUV−Bに割り当てられる放射線は、フィルターで取り除いてよい。エミッターは、動かない状態で設けてよく、その結果照射用材料は、機械装置を用いて放射源を通って運ばれてよく、又はエミッターが移動可能であり、照射用材料が硬化の過程で固定された状態であってよい。UV硬化の場合、架橋するために通常十分な放射線量は、80〜5000mJ/cmの範囲にある。
【0096】
必要であれば、酸素不存在下で、例えば、不活性ガスの雰囲気下又は酸素を減らした雰囲気下で、照射(又は放射)を行うことができる。適する不活性ガスは、好ましくは窒素、二酸化炭素、希ガス又は燃焼ガスである。更に、放射線に対して透明な媒体を用いてコーティングを被覆することで、照射を行ってよい。そのようなものの例は、例えば、ポリマーフィルム、ガラス又は水等の液体である。
【0097】
放射線量と硬化条件に応じて、当業者に既知の方法で、使用する開始剤のタイプ及び濃度を種々変えることができる。
【0098】
固定装置内の高圧水銀ランプを用いて硬化を行うことが特に好ましい。コーティングの固形分を基準として、0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜3.0重量%の濃度で、光開始剤を用いることが好ましい。このコーティングを硬化するために、200〜600nmの波長範囲で測定して、200〜3000mJ/cmの線量を用いることが好ましい。
【0099】
d)に熱的に活性化可能な開始剤を使用する場合、温度を高くすることで硬化を行うことができる。この場合、放射線、熱伝導及び/又は熱対流によって、コーティング中に、熱エネルギーを入れることができ、コーティング技術で常套のオーブン、近赤外ランプ及び/又は赤外ランプを用いることが通常である。
【0100】
適用されたフィルムの厚さ(硬化前)は、典型的には0.5〜5000μm、好ましくは5〜1000μm、より好ましくは15〜200μmである。溶媒を用いる場合、適用前及び硬化後に、常套の方法を用いて除去する。
【実施例】
【0101】
もし他に記載がなければ、全てのパーセントは、重量パーセントである。
NCO含有量(%)の測定は、DIN EN ISO 11909に基づいて、ブチルアミンとの反応後、0.1モル/Lの塩酸を用いる逆滴定により行った。
粘度測定は、ISO/DIS3219:1990に基づいて、プレート−プレート粘度計 ロト・ビスコ1(Roto Visco 1)(ハーケ社(Haake)、ドイツ)を用いて行った。
実験を行ったときに一般的な周囲の温度23℃をRTとして示した。
【0102】
コリン2−エチルヘキサノエートの製造
攪拌機を備えた1000mLのガラスフラスコ中で、600mLのメタノールに室温で、83gのナトリウム2−エチルヘキサノエートを溶かした。次に、69.8gの塩化コリンを少しずつ加え、混合物を室温で更に10時間攪拌した。生成した沈殿を濾過で除き、再び沈殿が形成するまで、ロータリーエバポレーターで減圧して、約3分の1に溶液を濃縮した。約400mLのアセトンで希釈後、再び濾過し、再び、減圧して溶媒をストリップした。残った残渣を約400mLのアセトンで再び処理し、その後濾過し、溶媒をストリップした。これにより117gの結晶化に安定な液体生成物を得た。これは、アロファネート化触媒としてこの形態で用いられる。
【0103】
例1:
本発明のアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.33:1)
還流冷却器、加熱可能オイルバス、メカニカルスタラー、空気管(1/h)、内部温度計及び滴下漏斗を設けた500mL四口ガラスフラスコに、231.16gのヘキサメチレンジイソシアネート(デスモジュール(登録商標)H、バイエルマテリアルサイエンス社、レーフェルクーゼン)と50mgのフェノチアジンを仕込み、この最初の仕込みを70℃に加熱した。25mgのジブチルスズジラウレート(デスモラピッド(Desmorapid)Z、バイエルマテリアルサイエンス社、レーフェルクーゼン)を加え、268.01gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないような速度で滴下して加えた。その後、5.77%の理論的なNCO値に達するまで攪拌を続けた。その後、80℃に温度を上げた後、6時間かけて0.75gのコリン2−エチルヘキサノエートを徐々に秤量して加えた。そのときのおよそ半分以降に明瞭な発熱を観察し、それによって混合物の冷却が必要であった。これにもかかわらず、秤量は完了し、更に2時間攪拌を続けた。これにより、0.1%の残留NCO含有量を有し、75,400mPa・s(23℃)の粘度を有する無色の樹脂を得た。
【0104】
例2
本発明のアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.25:1)
還流冷却器、加熱可能オイルバス、メカニカルスタラー、空気管(1/h)、内部温度計及び滴下漏斗を設けた500mL四口ガラスフラスコに、223.18gのヘキサメチレンジイソシアネートと50mgのフェノチアジンを仕込み、この最初の仕込みを70℃に加熱した。25mgのジブチルスズジラウレートを加え、276.00gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないような速度で滴下して加えた。その後、4.46%の理論的なNCO値に達するまで攪拌を続けた。その後、70℃で6時間かけて0.75gのコリン2−エチルヘキサノエートを徐々に秤量して加えた。その終わりに向かって明瞭な発熱を観察し、それによって混合物の冷却が必要であった。これにもかかわらず、秤量は完了し、更に2時間攪拌を続けた。これにより、0.05%の残留NCO含有量を有し、35,800mPa・s(23℃)の粘度を有する無色の樹脂を得た。
【0105】
例3
本発明のアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.43:1)
還流冷却器、加熱可能オイルバス、メカニカルスタラー、空気管(1/h)、内部温度計及び滴下漏斗を設けた500mL四口ガラスフラスコに、239.74gのヘキサメチレンジイソシアネートと50mgのフェノチアジンを仕込み、この最初の仕込みを70℃に加熱した。25mgのジブチルスズジラウレートを加え、259.43gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないような速度で滴下して加えた。その後、7.18%の理論的なNCO値に達するまで攪拌を続けた。その後、70℃で6時間かけて0.75gのコリン2−エチルヘキサノエート徐々に秤量して加えた。そのときのおよそ半分以降に明瞭な発熱を観察し、それによって混合物の冷却が必要であった。これにもかかわらず、秤量は完了し、更に1時間攪拌を続けた。これにより、0.0%の残留NCO含有量を有し、125,000mPa・s(23℃)の粘度を有する無色の樹脂を得た。
【0106】
例1〜3に対する比較例
本発明のものではないアロファネート含有バインダー(NCO/OH=1.6:1)
還流冷却器、加熱可能オイルバス、メカニカルスタラー、空気管(1/h)、内部温度計及び滴下漏斗を設けた500mL四口ガラスフラスコに、268.8gのヘキサメチレンジイソシアネートと50mgのフェノチアジンを仕込み、この最初の仕込みを70℃に加熱した。25mgのジブチルスズジラウレートを加え、260.0gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないような速度で滴下して加えた。その後、9.53%の理論的なNCO値に達するまで攪拌を続けた。その後、70℃で6時間かけて0.75gのコリン2−エチルヘキサノエートを徐々に秤量して加えた。そのときの終わりに向かって明瞭な発熱を観察し、それによって混合物の冷却が必要であった。これにもかかわらず、秤量は完了し、更に2時間攪拌を続けた。これにより、0.05%の残留NCO含有量を有し、測定が著しく困難な約650,000mPa・s(23℃)の粘度を有する無色の樹脂を得た。
【0107】
例4
本発明のアロファネート含有バインダー(複合型、NCO/OH=1.33:1)
還流冷却器、加熱可能オイルバス、メカニカルスタラー、空気管(1/h)、内部温度計及び滴下漏斗を設けた500mL四口ガラスフラスコに、107.59gのヘキサメチレンジイソシアネートと142.02gのイソホロンジイソシアネート(デスモジュール(登録商標)I、バイエルマテリアルサイエンス社、レーフェルクーゼン)との混合物と、250mgのフェノチアジンとを仕込み、この最初の仕込みを70℃に加熱した。50mgのジブチルスズジラウレートを加え、249.49gのヒドロキシプロピルアクリレートを温度が80℃を超えないような速度で滴下して加えた。その後、5.37%の理論的なNCO値に達するまで攪拌を続けた。その後、温度を80℃に加熱し、4時間かけて0.75gのコリン2−エチルヘキサノエート徐々に秤量して加えた。そのときのおよそ半分以降に明瞭な発熱を観察し、それによって混合物の冷却が必要であった。秤量の終了後、更に2時間攪拌を続けた。125gのヘキサンジオールジアクリレート(ラロマー(Laromer)(登録商標)HDDA、BASF(BASF)社、ルードビッヒシャフェン(Ludwigshafen)、ドイツ)を用いて希釈した。これにより、0.17%の残留NCO含有量を有し、20,500mPa・s(23℃)の粘度を有する黄色みがかった樹脂を得た。
【0108】
例5
コーティング配合物及びコーティング材料
例1からの生成物の一部を3.0%の光開始剤ダロキュア(Darocur)(登録商標)1173(光開始剤、チバ・シュペツィアリテーテンヘミー社からの市販品、ランペルトハイム、ドイツ)と十分に混合した。90μmのギャップを有するボーン・ドクター・ブレード(bone doctor blade)を用いて、その混合物を、ガラスプレート上で薄いフィルムの形態にした。UV照射(中圧水銀ランプ、ISTメッツ社(IST Metz GmbH)、ネルティンゲン(Nuertingen)、ドイツ、750mJ/cm)によって、フィルム上に向けられた500gの力でスチールウール(グレード0/0/0)を用いて10回前後に動かして引っ掻くことによって、ほとんど損傷を受けない、硬質で透明なコーティングを得た。
【0109】
本発明を説明することを目的として、詳細に説明したが、そのような詳細な説明は、単にそのような目的のためのものであり、特許請求の範囲によって制限され得ることを除いて、本発明の精神と範囲から離れることなく、当業者であれば種々の変更を行うことができることを、理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.5重量%より少ない残留モノマー含有量及び1重量%より少ないNCO含有量を有する放射線硬化性アロファネートの製造方法であって、

A)イソシアネート基を含む化合物、
B)化学作用を有する放射線に暴露するとエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含むヒドロキシ官能性化合物及び
C)場合により、更にNCO−反応性基を含む化合物を
D)場合により、触媒の存在下で使用して、
放射線硬化性基を有するNCO−基含有ウレタンを形成した後、

イソシアネート基を含む化合物を更に加えることなく
E)アロファネート化触媒の存在下で
反応させる製造方法であり、

A)からの化合物のNCO基と、B)及び使用した場合C)からの化合物のOH基との比は、1.45:1.0〜1.1:1.0である製造方法。
【請求項2】
成分A)中に、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及び/又は4,4’−ジイソシアナトジシクロヘキシルメタンを用いる請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項3】
成分B)中に、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及び/又はヒドロキシブチル(メタ)アクリレートを用いる請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項4】
A)からの化合物のNCO基と、B)及び使用した場合C)からの化合物のOH基との比は、1.35:1.0〜1.3:1.0である請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項5】
触媒E)を、200〜600ppm/hの速度で加える請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項6】
最終生成物が0.1重量%より低いNCO含有量を有するまで、アロファネート化を行う請求項1に記載の放射線硬化性アロファネートの製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の製造方法によって得られる放射線硬化性アロファネート。
【請求項8】
コーティング、コーティング材料、接着剤、印刷用インク、注型用樹脂、歯科配合物、サイズ、フォトレジスト、ステレオリソグラフィーシステム、複合材料用樹脂及び封止材を製造するときの請求項7に記載の放射線硬化性アロファネートの使用。
【請求項9】
a)請求項7に記載の一又はそれ以上の放射線硬化性アロファネート、
b)場合により、化学作用を有する放射線に暴露するとエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を有さず、遊離の又はブロックNCO基を含む一又はそれ以上のポリイソシアネート、
c)場合により、化学作用を有する放射線に暴露するとエチレン性不飽和化合物と重合を伴って反応する基を含み、場合により、遊離又はブロックNCO基を含む、a)のものと異なる他の化合物、
d)場合により、活性水素を含む一又はそれ以上のイソシアネート反応性化合物、
e)開始剤、
f)場合により、溶媒、並びに
g)場合により、助剤及び添加剤、
を含んで成るコーティング組成物。
【請求項10】
請求項7に記載の放射線硬化性アロファネートを用いて得られるコーティングを用いてコートされた基材。

【公開番号】特開2006−111876(P2006−111876A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2005−292104(P2005−292104)
【出願日】平成17年10月5日(2005.10.5)
【出願人】(504037346)バイエル・マテリアルサイエンス・アクチェンゲゼルシャフト (728)
【氏名又は名称原語表記】Bayer MaterialScience AG
【Fターム(参考)】