説明

化学療法に対する応答を予測するための遺伝子発現マーカー

本発明は、遺伝子のセットを提供する。これらの遺伝子のセットの発現は、癌患者が化学療法に対して有益な処置応答を有する可能性があるか否かを予測する。さらに、本発明は、複数遺伝子のRNA分析を用いた、化学療法に応答する患者を予測する臨床的に有効な癌試験を提供する。本発明は、関連する遺伝子セットにおける全てのマーカーのアッセイのための、保存されたパラフィン包埋生検材料の使用を提供し、したがって、最も広く入手可能な型の生検材料に適合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、その発現が癌の予後診断において重要な、遺伝子のセットを提供する。特に、本発明は、癌患者が化学療法に対する有益な処置応答を有するか否かを予測するための、有用な遺伝子発現情報を提供する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
癌専門医は、彼らに利用可能な多くの処置上の選択肢を有する。これらの選択肢としては、「治療標準」として特徴付けられている化学療法薬と、特定の癌に関する効能を持たないがその癌における有効性の証拠が存在する多くの薬物との、種々の組合せが挙げられる。良好な治療結果の可能性を最大にするには、患者が最適な利用できる癌処置を与えられること、およびこの処置が、診断後可能な限り迅速になされることを必要とする。特に、「治療標準」の化学療法に対する患者の応答を決定することが重要である。なぜなら、化学療法薬(例えば、アントラサイクリンおよびタキサン)は、効力が限られており、かつ毒性だからである。したがって、応答の可能性が最も高い患者もしくは最も低い患者の同定は、より理にかなった患者の選択を経て、提供しなければならないこれらの薬物の正味の利益を増し得、かつ正味の罹患率および毒性を減少させ得る。
【0003】
現在のところ、治療で使用される診断試験は、単一の検体であり、ゆえに、多くの異なるマーカー間での公知の関係の潜在的価値を捕捉していない。さらに、診断試験は、多くの場合定量的でなく、免疫組織化学に依存している。この方法は、多くの場合、異なる研究室において異なる結果を生じる。これは、一部には、試薬が標準化されていないためであり、一部には、解釈が主観的で、容易に定量化できないからである。RNAベースの試験は、多くの場合使用されてこなかった。なぜなら、経時的なRNA分解の問題、および分析対象の患者から新鮮な組織サンプルを得ることが困難であるという事実のためである。固定パラフィン包埋組織は、より容易に入手可能であり、固定組織からRNAを検出するための方法が確立されている。しかし、これらの方法は、代表的に、少量の材料からの多数の遺伝子(DNAもしくはRNA)の研究を可能にしていない。したがって、伝統的固定組織は、タンパク質の免疫組織化学検出のため以外には、稀にしか使用されてこなかった。
【0004】
近年、いくつかのグループが、マイクロアレイ遺伝子発現分析による種々の癌の型の分類に関する研究を発表した(例えば、Golubら、Science 286:531−537(1999);Bhattacharjaeら、Proc Natl.Acad.Sci.USA 98:13790−13795(2001);Chen−Hsiangら、Bioinformatics 17(Suppl 1):S316−S322(2001);Ramaswamyら、Proc Natl.Acad.Sci.USA 98:15149−15154(2001)を参照のこと)。遺伝子発現パターンに基づくヒト乳癌の特定の分類もまた、報告されている(Martinら、Cancer Res.60:2232−2238(2000);Westら、Proc Natl.Acad.Sci.USA 98:11462−11467(2001);Sorlieら、Proc Natl.Acad.Sci.USA 98:10869−10874(2001);Yanら、Cancer Res.61:8375−8380(2001))。しかし、これらの研究は主に、種々の型の癌(乳癌が挙げられる)の既に確立された分類を改善および精緻化することに焦点を当てており、そして全般的に、差次的に発現された遺伝子の関係への新しい見識を提供しておらず、かつ癌治療の臨床結果を改善するための処理戦略に対する知見に結び付いていない。
【0005】
現代の分子生物学および生化学は、その活性が腫瘍細胞の挙動、腫瘍細胞の分化の状態、ならびに腫瘍細胞の特定の治療薬に対する感受性および抵抗性に影響を及ぼす何百もの遺伝子を明らかにしたが、いくつかの例外を除いて、これらの遺伝子の状態は、薬物治療についての臨床的判断を慣習的に行う目的のために開発されてこなかった。1つの明らかな例外は、乳癌における、抗エストロゲン薬(例えば、タモキシフェン)による処置に供する患者を選択するための、エストロゲンレセプター(ER)タンパク質発現の使用である。他の例外は、乳癌における、Her2アンタゴニスト薬Herceptin(登録商標)(Genentech,Inc.,South San Francisco,CA)を用いる患者を選択するための、ErbB2(Her2)タンパク質発現の使用である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年の進歩にもかかわらず、癌処置への課題は、病原によって区別された腫瘍型に対する特異的処置レジメンを目標とすること、および最大の結果を得るために、腫瘍処置を最終的に個人化することにとどまっている。ゆえに、種々の処置選択肢に対する患者の応答についての予測情報を同時に提供する試験に対する必要性が存在する。これは、その生物学がほとんど理解されていない乳癌について、特にあてはまる。ErbB2陽性下位群、ならびにエストロゲンレセプター(ER)およびいくつかのさらなる転写因子の発現が低い〜発現がないことによって特徴付けられる下位群(Perouら、Nature 406:747−752(2000)))のようないくつかの下位群への乳癌の分類は、乳癌の細胞および分子の異種性を反映せず、かつ患者の応答を最大限にする処置戦略の設計を可能にしない。
【0007】
乳癌は、米国内の女性の間で最も一般的な癌の型であり、40〜59歳の女性の間に癌を原因とする死をもたらしている。したがって、化学療法に応答する患者を予測する臨床的に検証された乳癌試験に対する、特に高い必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(発明の要旨)
本発明は、化学療法に対する癌(例えば、乳癌)患者の応答を予測するのに有用な遺伝子セットを提供する。さらに、本発明は、複数遺伝子のRNA分析を用いた、化学療法に応答する患者を予測する臨床的に有効な癌(例えば、乳癌)試験を提供する。本発明は、関連する遺伝子セットにおける全てのマーカーのアッセイのための、保存されたパラフィン包埋生検材料の使用を提供し、したがって、最も広く入手可能な型の生検材料に適合する。
【0009】
一局面において、本発明は、癌と診断された被験体の、化学療法に対する応答を予測するための方法に関する。この方法は、以下の工程を包含する:
上記被験体から得られた癌細胞を包含する生物学的サンプルにおいて、1つ以上の予後診断用RNA転写物またはこれらの発現産物の発現レベルを決定するための工程。ここで、上記予後診断用RNA転写物は、以下からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物であり:
【0010】
【化16】

ここで、
(a)以下の1つ以上:
【0011】
【化17】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、上記被験体が、増大した応答の可能性を有すると予測され:そして
(b)以下の1つ以上:
【0012】
【化18】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、上記被験体が、低下した応答の可能性を有すると予測される。
【0013】
特定の実施形態において、応答は臨床応答であり、上記予後診断用RNA転写物は、以下からなる群より選択される遺伝子のうちの1つ以上の転写物であり、
【0014】
【化19】

そして、
(a)以下の1つ以上:
【0015】
【化20】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、上記被験体が、増大した臨床応答の可能性を有すると予測され:そして
(b)以下の1つ以上:
【0016】
【化21】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、上記被験体が、低下した臨床応答の可能性を有すると予測される。
【0017】
別の実施形態において、上記応答は病原性応答であり、上記予後診断用RNA転写物は、以下からなる群より選択される遺伝子のうちの1つ以上の転写物であり、
【0018】
【化22】

そして、
(a)以下の1つ以上:
【0019】
【化23】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、上記被験体が、増大した病原性応答の可能性を有すると予測され:そして
(b)以下の1つ以上:
【0020】
【化24】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、上記被験体が、低下した病原性応答の可能性を有すると予測される。
【0021】
本方法の特定の実施形態において、少なくとも2、もしくは少なくとも5、もしくは少なくとも105、もしくは少なくとも15の予測用RNA転写物、またはそれらの発現産物の発現レベルが予測される。
【0022】
別の実施形態において、RNAは、上記被験体の、固定されたパラフィン包埋癌組織標本から得られる。この被験体は、好ましくは、ヒト被験体である。
【0023】
上記癌は、任意の種類の癌であり得、これらの癌は、例えば、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、膵臓癌、前立腺癌、および肺癌を包含し、特に、乳癌(例えば、浸潤性乳癌)を包含する。
【0024】
別の局面において、本発明は、固体表面上に固定された以下の遺伝子の1つ以上にハイブリダイズしたポリヌクレオチドを含むアレイに関する:
【0025】
【化25】


【0026】
なお別の局面において、本発明は、固体表面上に固定された以下の遺伝子の1つ以上にハイブリダイズしたポリヌクレオチドを含むアレイに関する:
【0027】
【化26】


【0028】
さらなる実施形態において、本発明は、固体表面上に固定された以下の遺伝子の1つ以上にハイブリダイズしたポリヌクレオチドを含むアレイに関する:
【0029】
【化27】


【0030】
全ての実施形態において、上記アレイは、上記列挙された遺伝子にハイブリダイズした複数のポリヌクレオチドを含む。ここで、「複数」とは、1つ以上の任意の数を意味する。上記ポリヌクレオチドは、イントロンベースの配列を含み得、その発現は、対応するエキソンの発現に相関する。
【0031】
全ての局面において、上記ポリヌクレオチドは、代表的に、約500〜5000塩基長のcDNA(“cDNAアレイ)であり得る。しかし、より短いdDNAもしくはより長いcDNAもまた使用可能であり、これらも本発明の範囲内である。あるいは、上記ポリヌクレオチドは、オリゴヌクレオチド(DNAマイクロアレイ)であり得、このオリゴヌクレオチドは、代表的に、約20〜80塩基長であり得る。しかしより短いオリゴヌクレオチドもしくはより長いオリゴヌクレオチドもまた適当であり、これらも本発明の範囲内である。固体表面は、例えば、ガラスもしくはナイロンであるか、またはアレイ(例えば、マイクロアレイ)を調製するために代表的に使用される任意の他の固体表面であり得、そして代表的には、ガラスである。ハイブリダイゼーションは、代表的に、ストリンジェント条件下で実施されるか、または中間的にストリンジェントな条件下で実施される。種々の実施形態において、上記アレイは、上記に列挙された遺伝子のうちの少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7などにハイブリダイズしたポリヌクレオチドを含む。あれ以上に存在する遺伝子から選択される任意の数の遺伝子への、任意の組合せでのハイブリダイゼーションが包含される。
【0032】
別の局面において、本方法は、患者についての個人化された遺伝子プロフィールを作成する方法に関する。この方法は、以下の工程を包含する。
(a)上記患者から得られた癌細胞から抽出されたRNAを、遺伝子発現分析に供する工程;
(b)以下からなる群より選択される遺伝子うちの少なくとも一つの発現レベルを決定する工程:
【0033】
【化28】

ここで、上記発現レベルは、対照遺伝子(単数もしくは複数)に対して正規化され、そして必要に応じて、対応する癌参照組織セットにおいて見出された量と比較される。
(c)上記遺伝子発現分析によって得られたデータをまとめた報告を作成する工程。
【0034】
胸部組織は、乳癌細胞を含み得、そしてそのRNAは、この組織の解剖された部分の、このような乳癌細胞が豊富な部分から得ることができる。対照遺伝子としては、例えば、任意の公知の参照遺伝子が使用され得る。これらの遺伝子としては、例えば、グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)、β−アクチン、U−snRNP関連シクロフィリン(USA−CYP)、およびリボゾームタンパク質LPOが挙げられる。あるいは、試験された遺伝子セットの全シグナルの総量の間での差異を補正することによって正規化が行われ得る(全体正規化法(global normalization strategy))。上記報告は、上記患者の処置結果についての予後診断を含み得る。本方法は、さらに、良好な予後診断が示された場合に上記被験体(例えば、ヒト被験体)を処置する工程を包含し得る。
【0035】
さらなる局面において、本発明は、表3に列挙されたPCRプライマー−プローブセット、および表4に列挙されたPCRアンプリコンに関する。
【0036】
(図面の簡単な説明)
表1は、遺伝子のリストである。これらの遺伝子の発現は、化学療法剤アドリアマイシンおよびタキサンに対する乳癌の応答と正もしくは負の相関がある。遡及的な治験からの結果。病理学的応答指標による二元的統計分析。
【0037】
表2は、遺伝子のリストである。これらの遺伝子の発現は、化学療法剤アドリアマイシンおよびタキサンに対する乳癌の応答と正もしくは負の相関がある。遡及的な治験からの結果。臨床応答指標による二元的統計分析。
【0038】
表3は、遺伝子のリストである。これらの遺伝子の発現は、化学療法に対する乳癌の応答を予測する。遡及的な治験からの結果。この表は、遺伝子についての受託番号、そしてPCR増幅に使用されたフォワードプライマーおよびリバースプライマーの配列(それぞれ、「f」および「r」で示される)ならびにプローブの配列(「p」で示される)を含む。
【0039】
表4は、表示された遺伝子のPCR増幅に使用されたアンプリコン配列を示す。
【0040】
(詳細な説明)
(A.定義)
他に定義されない限り、本明細書において使用される科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。Singtonら、Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(第2版),J.Wiliey&Sons(NewYork,NY 1994)、およびMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure(第4版),John Wiley&Sons(NewYork,NY 1992)は、本出願に使用される多くの用語に対する一般的指針を当業者に提供する。
【0041】
当業者は、本発明の実施に使用され得る、本明細書において記載される方法および材料と類似もしくは等価な、多くの方法および材料を認識する。実際、本発明は、記載された方法および材料に決して制限されない。本発明の目的のために、以下の用語が、下記で定義される。
【0042】
用語「マイクロアレイ」とは、基材上の、ハイブリダイゼーション可能なアレイ要素(好ましくはポリヌクレオチドプローブ)の秩序正しい配列を指す。
【0043】
用語「ポリヌクレオチド」とは、単数もしくは複数で使用される場合、一般的に、ポリリボヌクレオチドもしくはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、これらは、非改変RNAもしくは非改変DNA、または改変RNAもしくは改変DNAであり得る。したがって、例えば本明細書において定義される場合、ポリヌクレオチドとしては、1本鎖および2本鎖DNA、1本鎖領域および2本鎖領域を含むDNA、1本鎖および2本鎖RNA、ならびに1本鎖領域および2本鎖領域を含むRNA、DNAおよびRNAを含むハイブリッド分子(これは、1本鎖であり得、より代表的には2本鎖であり得、または1本鎖領域および2本鎖領域を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、用語「ポリヌクレオチド」とは、本明細書中で使用される場合、DNAもしくはRNA、またはその両方を含む3本鎖領域を指す。このような領域中の鎖は、同じ分子由来であり得るか、または異なる分子由来であり得る。この領域は、上記分子の一つ以上の全てを含み得るが、より代表的には、その分子の一部の領域のみを含む。3重螺旋領域の分子の1つは、多くの場合、オリゴヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」としては、具体的には、cDNAが挙げられる。この用語は、1つ以上の改変された塩基を含むDNA(cDNAを含む)およびRNAを包含する。したがって、安定性または他の理由のために改変された骨格を有するDNAまたはRNAは、本明細書において意図される用語としての「ポリヌクレオチド」である。さらに、通常でない塩基(例えば、イノシンもしくはトリチウム化塩基のような改変塩基)を含有するDNAまたはRNAは、本明細書において定義される用語「ポリヌクレオチド」のうちに含まれる。一般的に、用語「ポリヌクレオチド」は、非改変ポリヌクレオチドの化学的、酵素的、および/または代謝性に改変された形態の全て、ならびにウイルスおよび細胞(単純細胞および複雑細胞を含む)に特有のDNAおよびRNAの化学形態を包含する。
【0044】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短いポリヌクレオチドを指し、これらとしては、1本鎖デオキシリボヌクレオチド、1本鎖もしくは2本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、ならびに2本鎖DNAが挙げられるが、これらに限定されない。オリゴヌクレオチド(例えば、1本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチド)は、多くの場合、化学的方法(例えば、市販の自動オリゴヌクレオチド合成機)によって合成される。しかし、オリゴヌクレオチドは、他の種々の方法(インビトロ組み換えDNAを介した技術が挙げられる)ならびに細胞および生体中におけるDNA発現によって合成され得る。
【0045】
用語「差次的に発現される遺伝子」、「差次的遺伝子発現」およびそれらの同義語は、本明細書において交換可能に使用されて、その発現が、正常被験体もしくは対照被験体における発現と比較して、疾患(特に、癌、例えば乳癌)に罹患する被験体内においてより高いレベルもしくはより低いレベルへと活性化される遺伝子を指す。この用語はまた、その発現が、同じ疾患の異なる病期においてより高いレベルもしくはより低いレベルへと活性化される遺伝子を指す。差次的に発現される遺伝子が、核酸レベルもしくはタンパク質レベルで活性化されるか阻害されるかのいずれかであり得、また異なるポリペプチド産物を生じる代替的スプライシングに供され得ることもまた理解される。このような差は、例えば、mRNAレベル、ポリペプチドの表面発現、分泌、または他の区分の変化によって証明され得る。差次的遺伝子発現は、2以上の遺伝子間もしくはそれらの遺伝子産物間での発現の比較、または2以上の遺伝子間もしくはそれらの遺伝子産物間での発現の比の比較、さらに同じ遺伝子の、異なる処理をされた2つの産物の比較を包含し得る。これらは、正常被験体と疾患(特に、癌)に罹患した被験体との間、または同じ疾患の異なる病期の間で異なる。差次的発現は、例えば、正常細胞と疾患細胞との間、または異なる疾患事象もしくは疾患の病期にある細胞間での、遺伝子もしくはその発現産物における定量的および定性的な、時間的もしくは細胞の発現パターンにおける差を包含する。本発明の目的に関して、「差次的遺伝子発現」は、正常被験体と疾患被験体における所与の遺伝子の発現の間、または疾患被験体の疾患発症の種々の病期において、少なくとも約2倍、好ましくは少なくとも約4倍、より好ましくは少なくとも約6倍、最も好ましくは少なくとも約10倍の差が存在することであるとみなされる。
【0046】
語句「遺伝子増幅」とは、複数の遺伝子もしくは遺伝子フラグメントのコピーが特定の細胞もしくは細胞株中で形成されるプロセスを指す。重複領域(増幅されたDNAの伸長部分)は、多くの場合、「アンプリコン」と呼ばれる。通常、生成されたメッセンジャーRNA(mRNA)の量(すなわち、遺伝子発現のレベル)もまた、発現された特定の遺伝子からなるコピーの数に比例して、増加する。
【0047】
RNA転写物に関する用語「過剰発現」は、参照mRNA(標本中で測定された転写物の全て、またはmRNAの特定の参照セットであり得る)のレベルに対して正規化することで決定される転写物の量を指すために使用される。
【0048】
用語「予後判定」とは、本明細書中では、新生物疾患(例えば、乳癌)の再発、転移性拡散および薬物耐性を含む癌に起因する死または経過の可能性の予測をいう。用語「予測」とは、本明細書中では、患者が薬物または一連の薬物に対して、好都合に、または好ましくなく、応答する可能性をいうため、およびその応答の程度をいうためか、または初期腫瘍の外科的除去および/もしくは化学治療の後、特定の期間癌の再発がなく、患者が生存する可能性をいうために使用される。本発明の予測方法は、任意の特定の患者に対する最も適切な処置様式を選択することにより処置判断を行うために臨床的に使用され得る。本発明の予測方法は、患者が、処置レジメン(例えば、外科的介入、所定の薬物もしくは薬物の組合せを用いた化学療法および/または放射線療法)に好都合に応答するか否かを予測するのに、あるいは、外科手術後および/または化学療法もしくは他の処置様式の終結後、患者の長期生存が有望か否かを予測するのに有用なツールである。
【0049】
用語「長期」生存とは、本明細書中では、外科手術または他の処置後、少なくとも3年間、好ましくは少なくとも8年間、最も好ましくは少なくとも10年間生存することをいう。
【0050】
用語「腫瘍」とは、本明細書中で使用される場合、悪性であっても良性であってもよいが、全ての新生物細胞成長および細胞増殖、ならびに、全ての前癌および癌の細胞および組織をいう。
【0051】
用語「癌」および「癌性」とは、調節されていない細胞成長によって代表的に特徴付けられる哺乳動物における生理学的条件をいうか、またはそれらを記載する。癌の例としては、乳癌、結腸直腸癌、肺癌、前立腺癌、肝細胞癌、胃癌、膵臓癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、尿路の癌、甲状腺癌、腎臓癌、癌腫、黒色腫、および脳癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
癌の「病理」は、患者の健康を損なう全ての減少を含む。これらとしては、限定せずに、異常な細胞成長もしくは制御されていない細胞成長、転移、周辺の細胞の正常な機能の妨害、異常なレベルでのサイトカインまたは他の分泌産物の放出、炎症反応または免疫応答の抑制または悪化、腫瘍形成、前悪性、悪性、周囲もしくは離れた組織もしくは器官(例えば、リンパ節など)への浸潤が挙げられる。
【0053】
「患者の応答」は、患者に対して利益を示す任意の終点を用いて評価され得、これらとしては、限定せずに、以下:(1)成長の遅延および完全な停止を示すことを含む腫瘍成長のある程度までの阻害;(2)腫瘍細胞の数の減少;(3)腫瘍の大きさの減少;(4)隣接する周辺器官および/または組織への腫瘍細胞の浸潤の阻害(すなわち、減少、遅延または完全な停止);(5)転移の阻害(すなわち、減少、遅延または完全な停止);(6)抗腫瘍免疫応答の増強、これは、そうでなくてもよいが、腫瘍の後退または排除を生じ得る;(7)腫瘍と関連する一種異常の症状のある程度までの軽減;(8)処置後の生存の長さの増加;および/または(9)処置後所定の時点での死亡率の減少が挙げられる。
【0054】
用語「(リンパ)節陰性」癌(例えば、「(リンパ)節陰性」乳癌)とは、本明細書中で使用される場合、リンパ節に拡散しない癌をいう。
【0055】
用語「遺伝子発現プロファイリング」とは、最も広い意味で使用され、生物学的サンプルにおけるmRNAレベルおよび/またはタンパク質レベルの定量の方法を含む。
【0056】
「新補助(neoadjuvant)療法」は、初期の(主要な)治療の前に行なわれる付属的な、または補助的な治療である。新補助療法としては、例えば、化学療法、放射腺療法およびホルモン療法が挙げられる。従って、化学療法は、腫瘍を縮小するための外科手術の前に施され得る、従って、外科手術は、より効果的になり得るか、以前には手術不可能な腫瘍の場合に、手術が可能になり得る。
【0057】
用語「癌に関連する生物学的機能」とは、本明細書中では、宿主に対して癌の成功に影響する分子活性をいうのに使用され、その活性としては、限定せずに、細胞増殖、プログラム細胞死(アポトーシス)、分化、浸潤、転移、腫瘍抑制、免疫監視機構に対する感受性、新脈管形成、不死の維持または獲得を調節する活性が挙げられる。
【0058】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当業者によって容易に決定可能であり、概して、プローブの長さ、洗浄温度および塩濃度に依存する経験的な計算である。概して、より長いプローブは、適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とするのに対して、より短いプローブは、より低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは概して、その融解温度以下の環境で、相補的な鎖が存在する場合、変性したDNAの再アニーリングする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高ければ、使用され得る相対的な温度はより高くなる。結果として、相対的に高い温度は、反応条件をよりストリンジェントにする傾向があり、相対的に低い温度は、あまりそうではない傾向がある。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、Ausubelら、Current Protocols in Molecular Biology、Wiley Interscience Publishers(1985)を参照のこと。
【0059】
本明細書中で定義される「ストリンジェントな条件」または「高いストリンジェンシーの条件」は代表的に、以下:(1)洗浄に低イオン強度および高温を使用する(例えば、50℃で、0.015M 塩化ナトリウム/0.0015M クエン酸ナトリウム/0.1% ドデシル硫酸ナトリウム);(2)ハイブリダイゼーションの間に、変性剤(例えば、0.1%ウシ血清アルブミン/0.1% Ficoll/0.1%ポリビニルピロリドン/750mM塩化ナトリウムでpH6.5にした50mMリン酸ナトリウム緩衝液、含む50%(v/v)ホルムアミドなどのホルムアミド)、75mMクエン酸ナトリウムを42℃で使用する;または(3)50% ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075M クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1% ピロリン酸ナトリウム、5×Denhardt溶液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1% SDSおよび10% 硫酸デキストランを42℃で使用し、42℃で0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)および55℃で50%ホルムアミドで洗浄し、その後、55℃で、EDTAを含有する0.1×SSCからなる高ストリンジェンシーの洗浄を行なう。
【0060】
「中程度のストリンジェントな条件」は、Sambrookら、Molecular Cloning:A Laboratory Manual、New York:Cold Spring Harbor Press、1989に記載されるとおりに特定され、上記よりストリンジェントではない洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度およびSDS%)の使用を包含する。中程度のストリンジェントな条件の例は、以下:20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mM クエン酸三ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH7.6)、5×Denhardt溶液、10%硫酸デキストランおよび20mg/mlの変性し、剪断したサケ精子DNAを含有する溶液中での37℃での一晩のインキュベーション、その後、約37〜50℃での1×SSC中でのフィルターの洗浄である。当業者は、プローブ長などのような因子を適応させるために必要な温度、イオン強度などをどのように調節するかを理解する。
【0061】
本発明の文脈において、任意の特定の遺伝子セットに列挙した遺伝子の「少なくとも1つ」、「少なくとも2つ」、「少なくとも5つ」などの言及は、列挙した遺伝子の任意の一つ、または任意の数および全ての組合せを意味する。
【0062】
遺伝子転写産物または遺伝子発現産物に関して、用語「正規化された」とは、一連の参照遺伝子の転写産物/発現産物の平均レベルに比較した転写産物または遺伝子発現産物のレベルをいい、ここで、参照遺伝子は、患者、組織または処置を通した最小限の変化に基づいて選択される(「ハウスキーピング遺伝子」)か、または参照遺伝子は、試験した遺伝子の全体である。後者の場合、それは、一般に「全体的正規化」といわれ、試験した遺伝子の総数が、比較的大きいこと、好ましくは50より大きいことが重要である。特に、RNA転写産物に関して用語「正規化された」とは、一連の参照遺伝子の転写レベルの平均に対する転写レベルをいう。より詳細には、TaqMan(登録商標)RT−PCRにより測定したRNA転写産物の平均レベルは、Ct値から一連の参照遺伝子転写産物の平均Ct値を引いたものをいう。
【0063】
用語「発現閾値」および「規定された発現閾値」は、相互変換可能に使用され、どの遺伝子または遺伝子産物が、患者の薬物に対する応答または耐性についての予測マーカーとして役立つかという上記問題における遺伝子または遺伝子産物のレベルをいう。閾値は、代表的に、臨床研究から実験的に定義される。発現閾値は、最大感受性(例えば、薬物に対する全ての応答者を検出するため)または最大選択性(例えば、薬物に対する応答者のみを検出するため)または最少誤差のいずれかについて選択され得る。
【0064】
(B.詳細な説明)
本発明の実施は、他に示されない限り、従来の分子生物学の技術(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学および生化学を使用し、これらは、当業者の範囲内である。このような技術は、文献、例えば、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第2版(Sambroolら、1989);「Oligonucleotide Synthesis」(M.J.Gait編、1984);「Animal Cell Culture」(R.I.Freshney編、1987);「Methods in Enzymology」(Academic Press,Inc.);「Handbook of Experimental Immunology」、第4版(D.M.WeirおよびC.C.Blackwell編、Blackwell Science Inc.,1987);「Gene Transfer Vectors for Mammalian Cells」(J.M.MillerおよびM.P.Calos編、1987);「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら編、1987)および「PCR:The Polymerase Chain Reaction」(Mullisら編、1994)中に十分に説明される。
【0065】
(1.遺伝子発現プロファイリング)
遺伝子発現プロファイリングの方法としては、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析に基づいた方法、ポリヌクレオチドの配列決定に基づいた方法、およびプロテオミクスに基づいた方法が挙げられる。サンプル中のmRNA発現の定量についての当該分野で公知の最も一般的に使用される方法としては、ノーザンブロッティングおよびインサイチュハイブリダイゼーション(ParkerおよびBarnes、Methods in Molecular Biology 106:247〜283(1999));RNAse保護アッセイ(Hod、Biotechniques 13:852〜854(1992));およびPCRに基づいた方法(例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Weisら、Trends in Genetics 8:263〜264(1992))が挙げられる。あるいは、特定の2本鎖(DNA2本鎖、RNA2本鎖およびDNA−RNAハイブリッド2本鎖またはDNA−タンパク質2本鎖を含む)を認識し得る抗体が使用され得る。配列決定に基づいた遺伝子発現分析のための代表的な方法としては、遺伝子発現の連続分析(Serial Analysis of Gene Expression)(SAGE)、および大規模平行シグネチャー配列決定(massively parallel signature sequencing)(MPSS)による遺伝子発現分析が挙げられる。
【0066】
(2.PCRに基づいた遺伝子発現プロファイル法)
(a.逆転写PCR(RT−PCR))
最も感度が良く、最も適応性のある定量的PCRベースの遺伝子発現プロファイル法の一つは、RT−PCRであり、この方法は、遺伝子発現のパターンを特徴付けるために、密接に関連したmRNA間を識別するために、およびRNA構造を分析するために、異なるサンプル集団(正常組織と腫瘍組織、薬物処理ありまたはなし)におけるmRNAレベルを比較して使用され得る。
【0067】
第一の工程は、標的サンプルからのmRNAの単離である。出発物質は、代表的に、ヒト腫瘍または腫瘍細胞株、およびそれぞれに対応する正常組織または正常細胞株から単離された総RNAである。従って、RNAは、健常なドナーからプールしたDNAを有する種々の一次腫瘍(乳房、肺、結腸直腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮などの腫瘍または腫瘍細胞株を含む)から単離され得る。mRNAの源が、一次腫瘍である場合、mRNAは、例えば、凍結するか、保管したパラフィン包埋して固定した(例えば、ホルマリン固定した)組織サンプルから抽出され得る。
【0068】
mRNA抽出に対する一般的方法は、当該分野で周知であって、分子生物学の標準的な教科書(Ausubelら、Current Protocols of Molecular Biology、John Wiley and Sons(1997))に開示される。パラフィン包埋組織からRNAを抽出するための方法は、例えば、RuppおよびLocker、Lab Invest.56:A67(1987)およびDe Andresら、BioTechniques 18:42044(1995)に開示される。特に、RNA単離は、例えば、Qiagenから市販される精製キット、緩衝液セットおよびプロテアーゼを使用して、製造者の指示書に従って行われ得る。例えば、培養した細胞由来の前RNAは、Qiagen RNeasyミニカラムを使用して単離され得る。他の市販の利用可能なRNA単離キットとしては、MasterPureTM Complete DNA and RNA Purification Kit(EPICENTRE(登録商標)、Madison、WI)およびParaffin Block RNA Isolation Kit(Ambion、Inc.)が挙げられる。組織サンプル由来の総RNAは、RNA Stat−60(Tel−Test)を使用して単離され得る。腫瘍から調製したRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離によって単離され得る。
【0069】
RNAは、PCRのためのテンプレートとしての役目を果たさないので、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングにおける第一工程は、RNAテンプレートのcDNAへの逆転写、その後のPCR反応におけるその指数関数的な増加である。2つの最も一般的に使用される逆転写酵素は、avilo myeloblastosisウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびMoloneyマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写工程は、代表的に、発言プロファイリングの状況および目的に依存して、特定のプライマー、ランダムヘキサマーまたはオリゴdTプライマーを用いてプライミングされる。例えば、抽出されたRNAは、製造者の指示書に従って、GeneAmp RNA PCRキット(Perkin Elmer、CA、USA)を使用して逆転写され得る。次いで、生成されたcDNAは、その後のPCR反応においてテンプレートとして使用され得る。
【0070】
PCR工程は、種々の熱安定性のDNA依存性DNAポリメラーゼを使用し得るが、代表的にTaq DNAポリメラーゼを使用する。これは、5’−3’ヌクレアーゼ活性を有するが、3’−5’校正エンドヌクレアーゼ活性は欠如する。従って、TaqMan(登録商標)PCRは、代表的に、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブにハイブリダイズするTaqポリメラーゼまたはTthポリメラーゼまたはTthポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性を利用するが、等価な5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素が使用され得る。PCR反応の代表的なアンプリコンを生成するために、2つのオリゴヌクレオチドプライマーが使用される。第3のオリゴヌクレオチドまたはプローブは、2つのPCRプライマーの間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計される。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素により伸長されず、レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素で標識される。レポーター色素からの任意のレーザー誘導性発光は、2つの色素が、それらがプローブ上に存在し、近接して位置する場合、色素をクエンチすることによりクエンチされる。増幅反応の間、Taq DNAポリメラーゼ酵素は、テンプレート依存様式でプローブを切断する。生じたプローブフラグメントは、溶液中で解離し、放出されたレポーター色素からのシグナルは、第2のフルオロフォアのクエンチ効果を受けない。レポーター色素の一分子は、合成された各新規分子を解放し、クエンチされていないリポーター色素の検出は、データの定量的解釈のための根拠を提供する。
【0071】
Taqman(登録商標)RT−PCRは、市販の装置(例えば、ABI PRISM7700TMSequence Detection SystemTM(Perkin−Elmer−Applied Biosystems、Foster City、CA、USA)またはLightcycler(Roche Molecular Biochemicals、Mannheim、Germany))を使用して行われ得る。好ましい実施形態において、5’ヌクレアーゼ手順を、リアルタイム定量PCRデバイス(例えば、ABI PRISM 7700TMSequence Detection SystemTM)で行なう。このシステムは、サーモサイクラー、レーザー、電荷結合素子(CCD)カメラおよびコンピュータからなる。このシステムは、サーモサイクラー上で、96ウェル形式でサンプルを増幅する。増幅の間、レーザー誘導性蛍光シグナルは、光ファイバーケーブルを通して、96個の全てのウェルに対してリアルタイムで収集され、CCDで検出される。このシステムは、機器を作動させ、データを分析するためのソフトウェアを備える。
【0072】
5’ヌクレアーゼアッセイデータは、最初にCt、すなわち閾値周期として表される。上で議論されたように、蛍光値は、全ての周期の間記録され、増幅反応のその時点までに増幅された生成物の量を表す。蛍光シグナルが、統計的に有意として最初に記録される点は、閾値周期(Ct)である。誤差およびサンプル−サンプルの偏差の効果を最少化するために、RT−PCRは通常内標を用いて実施される。同一の内標は、異なる組織の間で一定のレベルで発現され、実験処理によって影響を受けない。遺伝子発現のパターンを正規化するために最も頻繁に使用されるRNAは、ハウスキーピング遺伝子グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)およびβ−アクチンに対するmRNAである。
【0073】
RT−PCR技術のより最近の変化は、リアルタイム定量PCRであり、これは、二重標識蛍光(fluorigenic)プローブ(すなわち、TaqMan(登録商標)プローブ)を介してPCR産物蓄積を測定する。リアルタイムPCRは、定量的拮抗PCRに適合性であり、ここで、各標的配列に対する内部コンペティターは正規化のために使用され、そして、定量的比較PCRに適合性であり、定量的比較PCRは、サンプル中に含まれる正規化遺伝子またはRT−PCRのためのハウスキーピング遺伝子を使用する。さらなる詳細については、例えば、Heldら、Genome Research 6:986〜994(1996)を参照のこと。
【0074】
(b.MassARRAYシステム)
Sequenom,Inc.(San Diego、CA)によって開発されたMassARRAYベースの遺伝子発現プロファイリング方法において、RNAの単離および逆転写の後に、得られたcDNAを合成DNA分子(コンペティター)でスパイク(spike)する。この合成DNA分子は、一つの塩基を除いて全ての位置で標的化cDNA領域に適合し、内標として役立つ。cDNA/コンペティター混合物をPCR増幅し、PCR後シュリンプアルカリホスファターゼ(SAP)酵素処理に供し、それにより、残るヌクレオチドの脱リン酸化を生じる。アルカリホスファターゼの不活性化後、コンペティター由来のPCR産物およびcDNAをプライマー伸長に供し、それにより、コンペティターに由来するPCR産物およびcDNAに由来するPCR産物に対する異なる量のシグナルが生じる。精製後、これらのサンプルを、チップアレイに分配し、これを、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF MS)を用いた分析に必要な成分で前処理する。次いで、この反応に存在するcDNAは、生成した質量分析におけるピーク面積の比を分析することにより定量化される。さらなる詳細については、例えば、DingおよびCantor、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 100:3059〜3064(2003)を参照のこと。
【0075】
(c.他のPCRに基づいた方法)
さらなるPCRに基づいた技術としては、例えば、ディファレンシャルディスプレイ(LiangおよびPardee、Science 257:967〜971(1992);増幅断片長多型(iAFLP)(Kawamotoら、Genome Res.12:1305〜1312(1999));BeadArrayTM技術(Illumina、San Diego、CA;Oliphantら、Discovery of Markers for Disease(Biotechniquesに対する補遺)、2002年6月;Fergusonら、Analytical Chemistry 72:5618(2000));遺伝子発現のための迅速なアッセイにおいて市販のLuminex100LabMAPシステムおよび多色でコードされたミクロスフェアを使用する遺伝子発現の検出のためのビーズアレイ(BADGE)(Yangら、Genome Res.11:1888〜1898(2001);ならびに広範囲発現プロファイリング(HiCEP)分析(Fukumuraら、Nucl.Acids.Res.31(16)e94(2003))が挙げられる。
【0076】
(3.マイクロアレイ)
差次的遺伝子発現はまた、マイクロアレイ技術を使用して同定され、確認され得る。従って、乳癌関連遺伝子の発現プロフィールは、新鮮な腫瘍組織またはパラフィン包埋腫瘍組織において、マイクロアレイ技術を使用して測定され得る。この方法において、目的のポリヌクレオチド配列(cDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)は、マイクロチップ基材上に配置され、整列される。次いで、この整列された配列は、目的の細胞または組織由来の特異的なDNAプローブとハイブリダイズされる。RT−PCR法と同様に、mRNAの源は代表的に、ヒト腫瘍または腫瘍細胞株および対応する正常組織または正常細胞株から単離された全RNAである。従って、RNAは、種々の一次腫瘍または腫瘍細胞株から単離され得る。mRNAの源が一次腫瘍である場合、mRNAは、例えば、凍結するか、保管したパラフィン包埋して固定した(例えば、ホルマリン固定した)組織サンプルから抽出され得る。これらの組織サンプルは、日常的に調製され、毎日の臨床業務において保存される。
【0077】
マイクロアレイ技術の特定の実施形態において、cDNAクローンのPCR増幅した挿入部分は、密度の高いアレイの基材に適用される。好ましくは、少なくとも約10,000個のヌクレオチド配列が、その基材に適用される。10,000個の各要素でマイクロチップ上に固定されたマイクロアレイ化された遺伝子は、ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーションに適している。蛍光標識したcDNAプローブは、目的の組織からのRNA抽出物の逆転写により、蛍光ヌクレオチドの組込みを介して作製され得る。チップに適用された標識されたcDNAプローブは、アレイ上のDNAの各スポットに対して特異性を伴ってハイブリダイズする。非特異的な結合プローブを除去するためのストリンジェントな洗浄の後、そのチップは、共焦点レーザー顕微鏡または別の検出方法(例えば、CCDカメラ)により走査される。整列したそれぞれの要素のハイブリダイゼーションの定量は、対応するmRNAの量の評価を可能にする。2色蛍光を用いて、RNAの2つの源から作製した別々に標識したcDNAプローブは、2つ一組でアレイにハイブリダイズされる。従って、それぞれの特定の遺伝子に対応する2つの源からの転写産物の相対量は、同時に決定される。小型化した規模のハイブリダイゼーションは、簡便性および多数の遺伝子に対する発現パターンの迅速な評価を提供する。このような方法は、稀な転写残物(これは、細胞あたり数コピーで発現され、発現レベルの少なくとも約2倍の差で再現性を持って検出される。)を検出するために必要とされる感度を有することが示されている(Schenaら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA93(2):106〜149(1996))。マイクロアレイ分析は、例えば、Affimetrix GenChip技術またはIncyteのマイクロアレイ技術を使用して製造者のプロトコルに従って、市販の装置により実施され得る。
【0078】
遺伝子発現の大規模な分析のためのマイクロアレイ方法の開発は、癌分類の分子マーカーについての体系的な探索を可能にさせ、種々の腫瘍型の結果予測を可能にさせる。
【0079】
(4.遺伝子発現の連続分析(SAGE))
遺伝子発現の連続分析(SAGE)は、各転写産物に対する個々のハイブリダイゼーションプローブを提供する必要がなく、多数の遺伝子転写産物の同時かつ定量的分析を可能にする方法である。第一に、転写産物を独自に同定するための十分な情報を含む短い配列タグ(約10〜14bp)を生成し、但し、タグは、各転写産物内の固有の位置から得られる。次いで、多くの転写産物が、一緒に連結され、長い連続する分子を形成し、それは、配列決定され得、複数のタグの同一性を同時に明らかにする。転写産物の任意の集団の発現パターンは、個々のタグの量を決定し、各タグに対応する遺伝子を同定することにより定量的に評価され得る。より詳細については、例えば、Velculescuら、Science 270:484〜487(1995)およびVelculescuら、Cell 88:243〜51(1997)を参照のこと。
【0080】
(5.大規模平行シグネチャー配列決定(MPSS)による遺伝子発現分析)
この方法(Brennerら、Nature Biotechnology 18:630〜634(2000)に記載される)は、非ゲルベースのシグネチャー配列決定を、別個の直径5μmのマイクロビーズ上の数百万のテンプレートのインビトロクローニングと合わせる配列決定アプローチである。第一に、DNAテンプレートのミクロビーズライブラリーは、インビトロクローニングにより構築される。これに続いて、フローセル中に高密度(代表的には、3×10マイクロビーズ/cmより大きい)でテンプレートを含むマイクロビーズのプレーナーアレイのアセンブリが構築される。各マイクロビーズ上のクローニングしたテンプレートの遊離末端は、DNAフラグメント分離を必要としない蛍光に基づいたシグネチャー配列決定方法を用いて同時に分析される。この方法は、一回の操作で、酵母cDNAライブラリー由来の数百から数千の遺伝子シグネチャー配列を同時かつ性格に提供することが示されている。
【0081】
(6.免疫組織化学)
免疫組織化学法はまた、本発明の予後判定マーカーの発現レベルを検出するのに適している。従って、発現を検出するために、抗体または抗血清、好ましくはポリクローナル抗血清、および最も好ましくは各マーカーに特異的なモノクローナル抗体が、使用され得る。この抗体は、抗体自体を、例えば、放射性標識、蛍光標識、ハプテン標識(例えば、ビオチン)または酵素(例えば、ホースラディッシュペルオキシダーゼまたはアルカリホスファターゼ)で直接標識することにより検出され得る。あるいは、標識していない一次抗体は、標識した二次抗体と結合して使用され、この二次抗体は、一次抗体に特異的な抗血清、ポリクローナル抗血清またはモノクローナル抗体を含む。免疫組織化学プロトコルおよびキットは、当該分野で周知であり、市販されている。
【0082】
(7.プロテオミクス)
用語「プロテオーム」は、特定の時点におけるサンプル(例えば、組織、生体または細胞培養物)に存在するタンパク質の全体として定義される。プロテオミクスとしては、特に、サンプルにおけるタンパク質発現の全体的な変化の研究(「発現プロテオミクス」とも呼ばれる)が挙げられる。プロテオミクスは、代表的には、以下の工程を包含する:(1)サンプル中の個々のタンパク質の2−Dゲル電気泳動(2−D PAGE)による分離;(2)上記ゲルから回収された個々のタンパク質の同定(例えば、質量分析またはN末端配列決定)、および(3)バイオインフォマティクスを使用してのデータの分析。プロテオミクス法は、他の遺伝子発現プロファイリング方法に対する有用な補完であり、単独かまたは他の方法と組み合わせて使用され、本発明の予後マーカーの産物を検出し得る。
【0083】
(8.mRNAの単離、精製および増幅の一般的説明)
RNA供給源としての固定パラフィン包埋組織を使用して遺伝子発現をプロファイリングするための代表的なプロトコルの工程(mRNAの単離、精製、プライマー伸長および増幅を含む)は、種々の刊行された雑誌文献(例えば:T.E.Godfreyら J.Molec.Diagnostics 2:84−91[2000];K.Spechtら,Am.J.Pathol.158:419−29[2001])に提供されている。手短に言うと、代表的なプロセスは、パラフィン包埋組織サンプルの約10μm厚さの切片を切り出す工程により開始する。次いで、RNAが抽出され、そしてタンパク質およびDNAが取り除かれる。RNA濃度の分析の後、必要に応じて、RNAの修復および/または増幅工程が包含され得、そしてRNAは、遺伝子特異的プロモーターを使用して逆転写され、これにRT−PCRが続く。最後に、このデータを分析して、試験された腫瘍サンプルにおいて同定された特徴的な遺伝子発現パターンに基づいて、患者に利用可能な最良の処置選択肢を同定する。
【0084】
(9.癌化学療法)
癌処置に使用される化学療法剤は、それらの作用機構に依存して、いくつかの群に分けられ得る。いくつかの化学療法剤は、DNAおよびRNAを直接的に損傷する。DNAの複製を中断することによって、このような化学療法剤は、複製を完全に中止させるか、またはナンセンスDNAもしくはナンセンスRNAの産生を生じるかのいずれかである。この分類としては、例えば、以下が挙げられる:シスプラチン(Platinol(登録商標))、ダウノルビシン(Cerubidine(登録商標))、ドキソルビシン(Adriamycin(登録商標))、およびエトポシド(VePesid(登録商標))。癌治療剤の他の群は、ヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドの形成を阻害し、その結果、RNA合成および細胞複製が遮断される。このクラスにおける薬物の例としては、メトトレキセート(Abitrexate(登録商標))、メルカプトプリン(Purinethol(登録商標))、フルオロウラシル(Adrucil(登録商標))、およびヒドロキシ尿素(Hydrea(登録商標))が挙げられる。化学療法剤の第3のクラスは、紡錘体の合成または分解に影響を与え、結果として、細胞分裂を阻害する。このクラスにおける薬物の例としては、ビンブラスチン(Velban(登録商標))、ビンクリスチン(Oncovin(登録商標))、ならびにタキセン(例えば、パシタキセル(Taxol(登録商標))およびトセタキセル(Toxatere(登録商標))が挙げられる。トセタキセルは、現在米国で、先の化学療法が失敗した後の局所的に進行したかまたは転移性の乳癌を有する患者、および先の白金ベースの化学療法が失敗した後の局所的に進行したかまたは転移性の非小細胞肺癌を有する患者を処置することに認証されている。これらの化学療法剤および他の化学療法剤の全てに応答する患者の予測は、詳細には、本発明の範囲内である。
【0085】
特定の実施形態において、化学療法としては、タキサン誘導体での処置が挙げられる。タキサンとしては、パクリタキセル(Taxol(登録商標))およびドセタキセル(Taxotere(登録商標))が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、癌の処置に広範に使用される。上で考察したように、タキサンは、微小管(これは、細胞機能において重要な役割を果たす)と呼ばれる細胞構造に影響を与える。正常な細胞増殖において、微小管は、細胞が分裂し始めるときに形成される。一旦細胞が分裂をやめると、微小管は分解または破壊される。タキサンは、微小管が分解することを停止させ;癌細胞は、微小管でいっぱいになって増殖および分裂できないようになる。別の特定の実施形態において、化学療法としては、アントラサイクリン誘導体(例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシンおよびアクラシノマイシン)での処置が挙げられる。
【0086】
さらなる特定の実施形態において、化学療法としては、トポイソメラーゼインヒビター(例えば、カンプトセシン、トポテカン、イリノテカン、20−S−カンプトセシン、9−ニトロ−カンプトセシン、9−アミノ−カンプトセシン、またはGI147211)での処置が挙げられる。
【0087】
これらの化学療法薬および他の化学療法薬の任意の組み合わせでの処置は、詳細に企図される。
【0088】
大部分の患者は、腫瘍の外科手術的除去の直後に化学療法を受ける。このアプローチは、一般的に、補助(adjuvant)治療と呼ばれる。しかし、化学療法は、外科的手術の前にも施され得、そのような場合、新補助(neoadjuvant)処置と呼ばれる。新補助化学療法の使用は、進行した乳癌または手術が不可能な乳癌の処置に起因するが、同様に他の型の癌の処置において承認を得ている。新補療化学療法の効力は、いくつかの臨床試験において試験されている。多施設における、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project B−18(NSAB B−18)試験(Fisherら,J Clin.Oiicology 15:2002−2004(1997);Fisherら,J.Clin.Oncology 16:2672−2685(1998))において、新補助治療を、アドリアマイシンおよびシクロホスファミドの組み合わせを使用して行った(「ACレジメン」)。別の臨床試験において、新補助治療を、5−フルオロウラシル、エピルビシンおよびシクロホスファミドの組み合わせを使用して施した(「FECレジメン」)(van Der Hageら,J.Clin.Oncol.19:4224−4237(2001))。より新しい臨床試験もまた、タキサン含有新補助処置レジメンを使用した。例えば、Holmesら,J.Natl.Cancer Inst.83:1797−1805(1991)およびMoliterniら,Seminars in Oncology,24:S17−10−S−17−14(1999)を参照のこと。乳癌のための新補助化学療法についてのさらなる情報に関しては、Cleatorら,Endocrine−Related Cancer 9:183−195(2002)を参照のこと。
【0089】
(10.遺伝子発現データの、癌遺伝子セット、アッセイされた遺伝子配列、および臨床適用)
本発明の重要な局面は、乳癌組織による特定の遺伝子の測定された発現を使用して、予後情報を提供することである。この目的のために、アッセイされたRNAの量の差異、使用されたRNAの品質の可変性の両方を補正(正規化)することを必要とする。従って、上記アッセイは、代表的には、特定の正規化遺伝子(周知のハウスキーピング遺伝子(例えば、GAPDHおよびCyp1)を含む)の発現を測定して取り入れる。あるいは、正規化は、アッセイされた遺伝子またはその大きなサブセットの全ての平均シグナルまたは中央値シグナル(Ct)に基づき得る(全体的正規化アプローチ)。遺伝子ごとの基礎について、患者の腫瘍mRNAの、測定されて正規化された量は、乳癌組織基準セットに見出される量と比較される。この基準セットにおける乳癌組織の数(N)は、異なる基準セットが(全体として)本質的に同じ挙動をとることを確かめるために十分に多くあるべきである。この条件が満たされる場合、特定のセットに存在する個々の乳癌組織の同一性は、アッセイされた遺伝子の相対的な量に対して有意な影響を有さない。通常、乳癌組織基準セットは、少なくとも約30個、好ましくは少なくとも約40個の異なるFPE乳癌組織標本からなる。他で特に述べられない限り、患者1人の試験された腫瘍1つあたりの各mRNAについての正規化された発現レベルは、基準セットにおいて測定された発現レベルの百分率として表される。より詳細には、十分に多い(例えば、40個)の腫瘍の基準セットは、各mRNA種の正規化レベルの分布を生じる。分析される特定の腫瘍サンプルにおいて測定されるレベルは、ある%にてこの範囲内であり、これは、当該分野で周知の方法によって決定され得る。以下、他で特に述べられない限り、遺伝子発現レベルへの言及は、基準セットに対する正規化された発現レベルと仮定するが、これは、必ずしも明確に述べられるとは限らない。
【0090】
(11.再発スコア)
同時係属の出願番号第60/486,302は、癌再発の可能性および/または患者が処置様式に良好に応答する可能性を決定するためのアルゴリズムベースの予後判定試験を記載する。上記予後判定試験を他の癌予後試験と区別するこのアルゴリズムの特徴としては、以下が挙げられる:1)再発可能性を決定するために使用されるmRNA(または対応する遺伝子発現産物)の独特のセット、2)発現データを式に合わせるために使用される特定の重量、ならびに3)患者を異なる危険性レベルの群(例えば、危険性が低い群、危険性が中間の群、および危険性が高い群)に分けるために使用される閾値。上記アルゴリズムは、数値的な再発スコア(RS)を生じるか、または処置に応答する患者がアッセイされる場合、治療スコア(RTS)を生じる。
【0091】
上記試験は、特定のmRNAまたはそれらの発現産物のレベルを測定する実験室アッセイを必要とするが、上記試験は、新鮮な組織、またはすでに患者から必然的に収集されて記録された凍結組織もしくは固定パラフィン包埋腫瘍生検試料のいずれかの非常に少量を利用し得る。従って、上記試験は、非浸潤性であり得る。上記試験はまた、例えば、コア生検または細針吸引による、いくつかの異なる腫瘍組織回収方法に適合する。
【0092】
上記方法に従って、癌再発スコア(RS)は、以下によって決定される:
(a)上記被験体から得られた癌細胞を含む生物学的サンプルを、遺伝子またはタンパク質の発現プロファイリングに供する工程;
(b)複数の個々の遺伝子の発現レベル(例えば、mRNAのレベルまたはタンパク質のレベル)を、各遺伝子の発現値を決定するように定量する工程;
(c)遺伝子発現値のサブセットを作製する工程であって、各サブセットは、癌に関連する生物学的機能および/または同時発現によって関連する遺伝子についての発現レベルを含む、工程;
(d)サブセット内の各遺伝子の発現レベルと、そのサブセット内の癌再発または治療応答へのその相対的寄与を反映する係数とを掛けて、その掛け算の積を足して、上記サブセットについての項を得る工程;
(e)各サブセットの項と、癌再発または治療応答へのその寄与を反映する因子とを掛ける工程;ならびに
(f)上記因子を掛けられた各サブセットについての項の合計を得て、再発スコア(RS)または治療応答(RTS)スコアを得る工程
(ここで、癌再発または治療応答と線形の相関を示さない各サブセットの寄与は、事前決定された閾値レベルの上でのみ含まれ、そして
特定の遺伝子発現の増加が癌再発の危険性を低下させるサブセットは、負の値を割り当てられ、特定の遺伝子発現が癌再発の危険性を増加させるサブセットは、正の値が割り当てられる)。
【0093】
特定の実施形態において、RSは、以下によって決定される:
(a)上記被験体から得られた腫瘍細胞を含む生物学的サンプルにおける、GRB7、HER2、EstRl、PR,Bcl2、CEGP1、SURV、Ki.67、MYBL2、CCNB1,STK15、CTSL2、STMY3、CD68,GSTM1、およびBAG1,またはこれらの発現産物の発現レベルを決定する工程;ならびに
(b)以下の式によって再発スコア(RS)を計算する工程:
RS=(0.23〜0.70)×GRB7軸閾値(axisthresh)−(0.17〜0.51)×ER軸+(0.53〜1.56)×増殖軸閾値(prolifaxisthresh)+(0.07〜0.21)×浸潤性軸(invasionaxis)+(0.03〜0.15)×CD68−(0.04〜0.25)×GSTM1−(0.05〜0.22)×BAG1であって、
ここで
(i)GRB7軸=(0.45〜1.35×GRB7+(0.05〜0.15)×HER2であり;
(ii)GRB7軸<−2の場合、GRB7軸閾値=−2であり、そしてGRB7軸≧−2の場合、GRB7軸閾値=GRB7軸であり;
(iii)ER軸=(Estl+PR+Bcl2+CEGP1)/4であり;
(iv)増殖軸=(SURV+Ki.67+MYBL2+CCNB1+STK15)/5であり;
(v)増殖軸<−3.5の場合、増殖軸閾値=−3.5であり、増殖軸≧−3.5の場合、増殖軸閾値=増殖軸であり;そして
(vi)浸潤性軸=(CTSL2+STMY3)/2である
(ここで、範囲が詳細に示されていない個々の遺伝子全てについての項は、約0.5〜1.5であり、より大きなRSは、癌再発の可能性の増加を表す)。
【0094】
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的な実施例に記載される。
【実施例】
【0095】
(浸潤性乳癌における新補療法化学療法の遡及研究:パラフィン包埋コア生検組織の遺伝子発現プロファイリング)
遺伝子発現研究を、浸潤性の乳房腺管癌のパラフィン包埋固定組織サンプルにおける遺伝子発現を分子的に特徴付け、そしてこのような分子プロフィールと化学療法に対する患者の応答との間の相関を調査することを第1の目標として、設計して行った。
【0096】
(研究設計)
前処置を行うことなく、第II段階または第III段階の乳癌と新たに診断された70人の患者を、研究に登録した。登録された70人の患者のうち、45人の個々の患者由来の腫瘍組織が、評価に対して利用可能であった。患者の平均年齢は、49±9歳(29歳と64歳との間)であった。平均腫瘍サイズは、6.8±4.0cm(2.3cmと21cmとの間)であった。材料および方法の節に記載されるように実行した組織病理学的評価が、適切な量の腫瘍組織および同種病原を示した場合にのみ、患者を研究に含めた。
【0097】
登録の後、上記患者を、ドキソルビシン75mg/m2 q2 wks×3(+G−CSF、2〜11日)およびドセタキセル40mg/m2(毎週)×6を連続的に投与する、化学療法処置に供した。処置の順番を、ランダムに割り当てた。45人の患者のうち20人(44%)を、最初にドキソルビシンで処置し、続いてドセタキセルで処置した。他方、45人の患者のうち25人(56%)を、最初にドセタキセルで処置し、続いてドキソルビシンで処置した。
【0098】
(材料および方法)
生検からの固定パラフィン包埋(FPE)腫瘍組織を、化学療法の前後に得た。病理学者は、最も代表的な一次腫瘍ブロックを選択し、そして6個の10ミクロン切片をRNA分析のために提出した。詳細には、全部で6個の切片(各々、厚さが10ミクロン)の全部を作製して、2つのCostar Brand Microcentrifuge Tube(ポリプロピレン、1.7mLチューブ、透明;各チューブ中に3個の切片)中に配置した。腫瘍が、標本面積全体の30%未満を構成した場合、サンプルは、病理学者によって、粗い顕微解剖(gross microdissection)を使用して、腫瘍組織をCostarチューブに直接入れたまま、粗く解剖された。
【0099】
mRNAを抽出し、そしてRiboGreen(登録商標)蛍光法(Molecular probe)によって定量した。定量的遺伝子発現の分子アッセイを、RT−PCRによって、ABI PRISM 7900TM Sequence Detection SystemTM(Perkin−Elmer−Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)を使用して行った。ABI PRISM 7900TMは、サーモサイクラー、電荷結合素子(CCD)、カメラおよびコンピュータから構成される。このシステムは、384ウェル形式のサンプルを、サーモサイクラーで増幅する。増幅の間、レーザー誘導蛍光シグナルは、384ウェルの全てについて光ファイバーケーブルを通ってリアルタイムで収集され、そしてCCDにおいて検出される。上記システムは、機器を稼動するため、およびデータを分析するためのソフトウエアを備える。
【0100】
(分析および結果)
腫瘍組織を、187個の癌関連遺伝子および5個の参照遺伝子について分析した。各患者についての閾値周期(CT)値を、特定の患者についての5個の参照遺伝子の中央値に基づいて正規化した。化学療法に有利に応答した患者を、2つの異なる二元的方法(病理学的完全寛解および臨床完全寛解)によって評価した。患者を、6週間後および12週間後(化学療法の完了時)の応答について正式に評価した。
【0101】
臨床完全寛解(cCR)は、物理的検査または診断的乳房画像化のいずれかによる、臨床的に検出可能な疾患全ての完全な消失を必要とする。
【0102】
病理学的完全寛解(pCR)は、初期の化学療法の後の、生検乳房組織の組織学的検査、乳腺腫瘤摘出標本、または乳房切除標本に対して、残存の乳癌がないことを必要とする。残存のDCISは、存在し得る。局所的結節における残存の癌は、存在し得ない。
【0103】
部分的な臨床寛解を、腫瘍面積(最長の垂直直径の積和)における≧50%の減少、または乳房および腋窩における多病巣の、最長の垂直直径の積和において≧50%と定義した。疾患面積は25%より多くは増加し得ず、新たな病巣は出現し得ない。
【0104】
病理学的寛解データと臨床的寛解データとが、遺伝子の予測的影響の方向性に対して矛盾した場合(すなわち、陰性対陽性)、病理学的寛解データを使用した。なぜなら、病理学的寛解は、化学療法に対する応答の、より厳密な指標であるからである。
【0105】
病理学的寛解のカテゴリーは、以下である:
0 外科手術的切除の後の検出可能な腫瘍の存在{CRなし}
1 外科手術的切除の後の検出可能な腫瘍の非存在{CR}。
【0106】
完全臨床寛解のカテゴリーは、以下である:
0 処置終了時における塊の存在{CRなし}
1 処置終了時における塊の非存在{CR}。
【0107】
分析を、以下によって行った:正規化された遺伝子発現と0または1の二元的結果との間の相関の分析。定量的遺伝子発現データを、単変量解析(t検定)に供した。
【0108】
表1は、遺伝子発現との病理学的寛解の相関を表し、そして群間の差異についてのp値が<0.111であった40個の遺伝子を列挙する。一列目の、平均正規化発現{C}値は、病理学的完全寛解を有しなかった患者に関する。二列目の、平均正規化発現{C}値は、病理学的完全寛解を有した患者に関する。頭書き「p」および「N」は、それぞれ、統計学的p値、および患者の数を表す。
【0109】
(表1 遺伝子発現および病理学的寛解)
【0110】
【表1−1】

【0111】
【表1−2】

【0112】
【表1−3】

上記の表1において、CRなしの患者に対して、CR患者において発現の増加を示す遺伝子は、処置に対する有利な応答の可能性が増加することについての指標であり、CR患者に対して、CRなしの患者において発現の増加を示す遺伝子は、処置に対する有利な応答の可能性が減少することについての指標である。例えば、VEGFCの発現は、{CRなしの腫瘍における、より陰性でない正規化されたC値によって示されるように}CR患者の腫瘍に対してCRなしの患者の腫瘍においてより高く、従って、VEGEF遺伝子の発現の増加{正確には、VEGFC mRNAのより高いレベル}は、化学療法に対する患者の有利な応答の可能性が減少することを予測する。
【0113】
表1に示されるデータに基づいて、以下の遺伝子の発現の増加は、処置に対する病理学的完全寛解の可能性が上昇することに相関する:MMP9;FLJ20354;RAD54L;SURV;CYP2C8;STK15;NEK2;C20 orf1;CDC20;MCM2;CCNB1;Chk2;Ki−67;TOP2A。以下の遺伝子の発現が増加することは、処置に対する病理学的完全寛解の可能性が減少することに相関する:VEGFC;B−カテニン;MMP2;CNN;TGFB3;PDGFRb;PLAUR;KRT19;ID1;RIZ1;RB1;EIF4EL3;ACTG2;cMet;TIMP2;DR5;CD31;BIN1;COL1A2;HIF1A;VIM;ID2;MYH11;G−カテニン;HER2;GSN。
【0114】
表2は、遺伝子発現に相関する臨床的寛解を表し、群間の差異についてのp値が<0.095であった遺伝子を列挙する。一列目の、平均正規化発現{CT}値は、臨床完全寛解を有しなかった患者に関する。二列目の、平均正規化発現値は、臨床完全寛解を有した患者に関する。頭書き「p」および「N」は、それぞれ、統計学的p値、および患者の数を表す。
【0115】
(表2 遺伝子発現および臨床寛解)
【0116】
【表2−1】

【0117】
【表2−2】

【0118】
【表2−3】

表2に示されるデータに基づいて、以下の遺伝子の発現の増加は、処置に対する臨床完全寛解の可能性が上昇することに相関する:CCND1;EstR1;KRT18;GATA3;RAB27B;IGF1R;HNF3A;STMY3;NPD009;BAD;BBC3;CD9;AKT1;Bcl2;BECN1;DIABLO;MVP;VEGFB;ErbB3;MDM2;Bclx;CDH1;PR;IRS1;NFKBp65;IGFBP2;RPS6KB1;DHPS;TIMP3;ZNF217;CYP2C8;pS2;BRK;CEGP1;EPHX1;TP53BP1;COL1A1;およびFGFR1。
【0119】
以下の遺伝子の発現が増加することは、処置に対する臨床完全寛解の可能性が減少することに相関する:cIAP2;KRT5;CA9;MCM3;EGFR;CD3z;KRT14;DKFZp564;KLK10;HLA−DPB1;KRT17;GSTp;BIN1;CD31;KIAA1209;COX2;VEGF;およびCTSL2。
【0120】
本開示の全体を通して記載される全ての参考文献は、本明細書中で明確に参照として援用される。
【0121】
本発明は、ある特定の実施形態について強調して記載されたが、特定の方法および技術において改変および変更が可能であることは、当業者に明らかである。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲によって定義されるような、本発明の精神および範囲内に包含される変更の全てを含む。
【0122】
【表3−1】

【0123】
【表3−2】

【0124】
【表3−3】

【0125】
【表3−4】

【0126】
【表3−5】

【0127】
【表3−6】

【0128】
【表3−7】

【0129】
【表4−1】

【0130】
【表4−2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌と診断された被験体の、化学療法に対する応答を予測するための方法であって、以下:
該被検体から得られた癌細胞を含む生物学的サンプルにおいて、1つ以上の予後診断用RNA転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程であって、ここで該予後診断用RNA転写物が、以下:
【化1】

からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物であり、ここで、
(a)以下の1つ以上:
【化2】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、該被検体が、増大した応答の可能性を有すると予測され;そして
(b)以下の1つ以上:
【化3】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、該被検体が、低下した応答の可能性を有すると予測される
工程を包含する、方法。
【請求項2】
前記応答が臨床応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
請求項2に記載の方法であって、前記予後診断用RNA転写物が、以下:
【化4】

からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物であり、ここで:
(a)以下の1つ以上:
【化5】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、前記被検体が、増大した応答の可能性を有すると予測され;そして
(b)以下の1つ以上:
【化6】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、前記被検体が、低下した応答の可能性を有すると予測される、
方法。
【請求項4】
前記応答が病原性応答である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、前記予後診断用RNA転写物が、以下:
【化7】

からなる群より選択される1つ以上の遺伝子の転写物であり;そして
(a)以下の1つ以上:
【化8】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、前記被検体が、増大した応答の可能性を有すると予測され;そして
(b)以下の1つ以上:
【化9】

またはその対応する発現産物の、あらゆる単位の発現の増加に対して、前記被検体が、低下した応答の可能性を有すると予測される、
方法。
【請求項6】
前記被検体がヒトの患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記癌が、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、前立腺癌、膵臓癌、および肺癌からなる群より選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記癌が乳癌である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記癌が浸潤性乳癌である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記癌が、病期II期または病期III期の乳癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記化学療法が新補助化学療法である、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記化学療法が、タキサン誘導体の投与を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記タキサンが、ドセタキセルまたはパクリタキセルである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記タキサンがドセタキセルである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記化学療法が、アントラサイクリン誘導体の投与を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記アントラサイクリン誘導体がドキソルビシンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記化学療法が、トポイソメラーゼインヒビターの投与を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
前記トポイソメラーゼインヒビターが、カンプトテシン、トポテカン、イリノテカン、20−S−カンプトテシン、9−ニトロ−カンプトテシン、9−アミノ−カンプトテシン、およびGI147211からなる群より選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記化学療法が、少なくとも2つの化学療法剤の投与を包含する、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
前記化学療法剤が、タキサン誘導体、アントラサイクリン誘導体およびトポイソメラーゼインヒビターからなる群より選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
少なくとも2つの前記予後診断用転写物、またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも5つの前記予後診断用転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
全ての前記予後診断用転写物またはそれらの発現産物の発現レベルを決定する工程を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記生物学的サンプルが、癌細胞を含有する組織サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記組織が、固定されて、パラフィン包理されているか、または新鮮であるか、または凍結している、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記組織が、細針生検、コア生検、または他の型の生検由来である、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記組織サンプルが、微細針吸引、気管支洗浄、または経気管支生検によって得られる、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
前記予後診断用RNA転写物の発現レベルが、RT−PCRによって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記発現産物の発現レベルが、免疫組織化学によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項30】
前記発現産物の発現レベルが、プロテオミクス技術によって決定される、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記予後診断用RNA転写物またはそれらの発現産物の測定のためのアッセイが、キットの形態で提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
アレイであって、固体表面上に固定化された以下の遺伝子:
【化10】

の1つ以上にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、アレイ。
【請求項33】
複数の前記遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項32に記載のアレイ。
【請求項34】
アレイであって、固体表面上に固定化された以下の遺伝子:
【化11】

の1つ以上にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、アレイ。
【請求項35】
複数の前記遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項34に記載のアレイ。
【請求項36】
アレイであって、固体表面上に固定化された以下の遺伝子:
【化12】

の1つ以上にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、アレイ。
【請求項37】
複数の前記遺伝子にハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項36に記載のアレイ。
【請求項38】
前記ポリヌクレオチドがcDNAである、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項39】
前記ポリヌクレオチドがオリゴヌクレオチドである、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項40】
少なくとも5つの前記ポリヌクレオチドを含む、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項41】
少なくとも10個の前期ポリヌクレオチドを含む、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項42】
少なくとも15個の前期ポリヌクレオチドを含む、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項43】
全ての前記遺伝子の全てとハイブリダイズするポリヌクレオチドを含む、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項44】
同一遺伝子にハイブリダイズする2つ以上のポリヌクレオチドを含む、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項45】
少なくとも1つの前記ポリヌクレオチドが、対応するエキソン配列の発現に相関して発現するイントロンベースの配列を含む、請求項32、34、または36のいずれか1項に記載のアレイ。
【請求項46】
患者についての個人化されたゲノムプロフィールを作成する方法であって、以下の工程:
(a)該患者から得られた癌細胞から抽出されたRNAを遺伝子発現分析に供する工程;
(b)以下:
【化13】

からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子の発現レベルを決定する工程であって、ここで該発現レベルは、対照遺伝子に対して正規化され、そして必要に応じて、対応する癌参照組織セットにおいて見出された量と比較される、工程;そして
(c)該遺伝子発現分析によって得られたデータをまとめた報告を作成する工程
を包含する、方法。
【請求項47】
前記癌細胞が固形腫瘍から得られる、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記固形腫瘍が、乳癌、卵巣癌、胃癌、結腸直腸癌、膵臓癌、および肺癌からなる群より選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記癌細胞が、固定され、パラフィン包理された前期腫瘍の生検サンプルから得られる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記RNAが断片化されている、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記報告が、前記患者に対する処置様式における推奨を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項52】
請求項51に記載の方法であって、ここで以下の1つ以上:
【化14】

またはその対応する発現産物のうちの発現の増加が決定された場合に、前記報告が、前記被検体が化学療法に対して増大した応答の可能性を有するという予測を含む、方法。
【請求項53】
前記患者を化学療法剤で処置する工程をさらに含む、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記患者が、補助的化学療法に供される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記患者が、新補助化学療法に供される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記新補助化学療法が、タキサン誘導体の投与を包含する、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記タキサンが、ドセタキセルまたはパクリタキセルである、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記化学療法が、付加的な抗癌剤の投与をさらに包含する、請求項56に記載の方法。
【請求項59】
前記付加的な抗癌剤が、アントラサイクリン系の抗癌剤の一種である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記付加的な抗癌剤がドキソルビシンである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記付加的な抗癌剤がトポイソメラーゼインヒビターである、請求項58に記載の方法。
【請求項62】
請求項51に記載の方法であって、ここで以下の1つ以上:
【化15】

またはその対応する発現産物の発現の増加が決定された場合に、前記報告が、前記被検体が化学療法に対して低下した応答の可能性を有するという予測を含む、方法。
【請求項63】
表3に列挙されるPCRプライマー−プローブセット。
【請求項64】
表4に列挙されるPCRアンプリコン。

【公表番号】特表2007−507222(P2007−507222A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533426(P2006−533426)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2004/016553
【国際公開番号】WO2004/111603
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【出願人】(505175858)ゲノミック ヘルス, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】