説明

化学的機械的平坦化パッド

本開示は、化学剤と結合剤とを含有する研磨パッドに関する。化学剤は、化学的機械的平坦化中に、水性研磨剤粒子研磨媒体に放出され、且つ、溶解するのに十分な量で存在し、研磨剤粒子の凝集を低減する。パッドは、パッドが摩滅するにつれて表面が再び新しい状態にされ、化学剤の少なくとも一部が露出されるような、表面を有する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本願は、2007年12月31日に出願された米国仮特許出願第61/017,872号の利益を主張するものであり、当該米国仮特許出願は、参照することによって本明細書中にその全内容が援用される。
[発明の分野]
本発明は、化学的機械的平坦化パッドに関し、具体的には、化学剤を含有する化学的機械的平坦化パッドに関する。
[背景]
化学的機械的平坦化(CMP)においては、半導体基板の平坦化処理の向上、安定化、および制御を目的として、多様な化学物質が使用される。金属研磨時にCMPを施すための研磨剤の存在下で、過酸化水素および一過硫酸塩のような酸化剤が、硝酸第二鉄と共に使用され得る。機械的研磨および除去を促進する目的で、半導体ウェーハにおいて、二酸化シリコン層を加水分解するために、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムのようなアルカリ性溶液が使用され得る。さらに、二酸化シリコン膜の速い除去速度、および、下層にある窒化シリコン膜の遅い除去速度に作用するために、カルボン酸、硝酸塩、および可溶性セリウムの使用が可能であり、それにより、窒化シリコン膜の侵食が防止される。
【0002】
CMPに用いられる他種の化学物質には、界面活性剤および腐食防止剤が含まれ得る。研磨剤粒子を安定化し、それにより研磨剤粒子の凝集を防止するために、例えば、ポリビニル・アルコール(PVOH)が添加され得る。同様に、ポリエチレン・グリコールおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが、分散剤として利用され得る。さらに、銅研磨における腐食防止剤として、トリアゾール化合物が使用され得る。
[概要]
本開示の一局面は、研磨パッドに関する。研磨パッドは、結合剤と化学剤とを含有してもよく、化学剤は、化学的機械的平坦化中に、水性研磨剤粒子研磨媒体に放出され、且つ、溶解するのに十分な量で存在し、研磨剤粒子の凝集を低減する。パッドは表面を有してもよく、パッドが摩滅するにつれて表面は再び新しい状態にされ、化学剤の少なくとも一部を露出し得る。
【0003】
本開示の更なる局面は、研磨パッドの形成方法に関する。当該方法は、化学剤を結合剤に化合させる工程を備えてもよく、化学剤は、化学的機械的平坦化中に、水性研磨剤粒子研磨媒体に放出され、且つ、溶解するのに十分な量で存在し、研磨剤粒子の凝集を低減する。さらに上記方法は、結合剤および化学剤を、化学的機械的平坦化研磨パッドの形態に成形する工程を備えてもよい。
【0004】
本開示の更に別の局面は、研磨パッドを用いた研磨方法に関する。当該方法は、表面を有する研磨パッドを基板に接触させる工程を備えてもよい。パッドは、結合剤に化合させた化学剤を含有してもよく、化学剤は、化学的機械的平坦化中に、水性研磨剤粒子研磨媒体に放出され、且つ、溶解するのに十分な量で存在してもよく、研磨剤粒子の凝集を低減し得る。上記方法は、パッドを摩滅させて、化学剤の少なくとも一部を露出させる工程を備えてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本明細書において意図するCMPパッドの一実施形態を示す図である。
【図2】本明細書において意図するCMPパッドの別の実施形態を示す図である。
【図3】本明細書において意図するCMPパッドの更なる実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の、上述およびその他の特徴、ならびにそれらを実現する方法は、添付の図面と併せて本明細書に記述される、実施形態の以下の説明を参照することによって、より明らかになるとともに、よりよく理解されるであろう。
【0007】
本発明は、化学的機械的研磨中に、研磨媒体中に放出されるための1以上の有機化学物質および/またはポリマーをCMPパッドに含有させる態様による、CMPパッドとその使用方法に関する。そのように放出されることにより、半導体基板の平坦化処理の向上、安定化、および/または制御が可能となる。
【0008】
本明細書に記載された化学剤に限定されるものではないが、それらを含む多様な化学剤が、CMPパッドに含有され得る。CMPパッドに化学剤を含有させることは、製造時に、液体状または固体粒子状の化学剤をパッド材料に分散させることによって、実現可能である。また、パッドの製造に先立って、パッドの1以上の個々の成分に化学剤が加えられてもよい。
【0009】
図1に示されるCMPパッドの一実施例には、高分子繊維12(成分1)をポリウレタン・プレポリマーのような結合剤樹脂(成分2)と混合してCMPパッド10を形成する前に、ポリビニル・アルコール(PVOH)として公知である化学剤を、成分1の三次元網目構造の表面に被覆することが含まれ得る。様々なレベルのアルコール(−OH)官能性、すなわち加水分解率、および/または、様々な分子量(数平均)を有するポリ(ビニルアルコール)を選択することが可能であり、それによって、例えば水性研磨媒体中で、様々なレベルの溶解度が示されることが、本明細書において認識され得る。実施例によっては、ポリ(ビニルアルコール)は、ポリ(酢酸ビニル)前駆体の50%を超える加水分解率を示し得るが、そこには、加水分解率75%〜99.9%等のような、加水分解率50〜99.9%の範囲の全ての数値および増分が含まれる。さらに、分子量は、10,000〜500,000の範囲で変動可能であり、100,000〜300,000等のような、全ての数値および増分がそこに含まれる。製造工程中、被覆された高分子繊維は、続いてポリウレタン・プレポリマーに混合され得る。高分子繊維12は、可溶性または不溶性の繊維を含有し得るが、それらは、繊維形成処理中に、または繊維形成処理後に、ポリビニル・アルコールで被覆され得る。溶解度は、繊維が、水溶液中に少なくとも部分的に、または完全に溶解する能力として、理解され得る。
【0010】
上記で略述したように、工程中、繊維上のポリビニル・アルコール被膜は、続いてのCMP中に、所定の水性研磨媒体中に溶解および分散して、研磨剤粒子の凝集を防止および/または低減し得る。それにより、半導体ウェーハ上の引っかき傷が削減され得る。さらに、所定のスラリー環境において、繊維自体が可溶性である場合、あるいは選択的に可溶性となっている場合、当該繊維もまた、水性研磨媒体に露出されると溶解し得ることが認識可能である。水性研磨媒体へのポリビニル・アルコールの放出速度は、被覆量、被覆厚、および/もしくは被覆重量、ならびに/または、CMP中にパッド表面に露出される繊維数によって、必要に応じて制御され得る。これは、ポリビニル・アルコールが水性研磨媒体に露出された際に、当該媒体中にのみ溶解し得る場合に、当てはまるであろう。
【0011】
図2に示されるCMPパッドの別の実施例には、液体状または粒子状のポリビニル・アルコールを、成分2であるポリウレタン・プレポリマーに混合することが含まれ得る。図示されるように、ポリビニル・アルコールは、CMPパッド20内に不連続領域24を形成し得る。パッドの加工中、パッド表面に露出したポリビニル・アルコールは溶解し得るが、一方、残存する露出していないポリビニル・アルコールは、パッドの大部分の内に保持され得る。CMP処理中にパッドが摩滅するにつれて、真新しい表面が露出され得る。このようにして、新しいポリビニル・アルコール、すなわち、それまで露出していなかったポリビニル・アルコールは、水性研磨媒体中に溶解および放出され得る。上記実施形態のように、ポリビニル・アルコールの放出は、成分2に混合されたポリビニル・アルコールの量、およびパッドの摩耗(摩滅)速度によって、制御され得る。
【0012】
図3に示される第三の実施例には、成分1を供給する単独成分として、ポリビニル・アルコールを使用することが含まれ得る。製造工程中、ポリビニル・アルコール繊維の三次元網目構造、および/または、ポリビニル・アルコールの粒子34が、CMPパッド30内の上述の成分2に、続いて混合され得る。また、ポリビニル・アルコールの溶解速度および放出速度は、三次元網目構造の大きさ、またはパッド内のポリビニル・アルコール粒子の重さによって、制御され得る。
【0013】
更なる実施形態において、CMPパッドに含有される化学剤は、水性研磨媒体に溶解および放出されなくてもよいことが認識され得る。1以上の化学剤は、したがって、CMP処理中に、比較的拘束的または定置的なものとして、パッド表面に維持され得る。そのような化学剤はまた、CMPの成果にも有益な役割を果たし得る。例えば、パッド表面上の拘束的または定置的な化学剤は、パッド表面に、所望のレベルの親水性または疎水性を付与するのに利用され得る。親水性または疎水性は、水に対する物質の親和性として理解可能であり、例えば、表面における水の接触角によって示され得る。実施例によっては、90度を超える接触角は、比較的疎水性の物質であることを表し得るし、90度以下の接触角は、比較的親水性の物質であることを表し得る。
【0014】
パッド表面に親水性または疎水性を付与する実施例には、カルボン酸の有機エステルおよびステアリン酸の有機エステルのような、表面湿潤剤を配合することが含まれ得る。そのような表面湿潤剤は、パッドに親水性を付与し、水性研磨媒体、パッド、および半導体の間の接触を促進し得る。上記のような親水性または疎水性の化学剤をCMPパッドに含有させるために、多様な方法が用いられ得る。当該方法には、化学的および/もしくは照射グラフト、ならびに/または、親水性もしくは疎水性の化学剤をパッドの1以上の成分に混合することを含むが、それらに限定されるものではない。
【0015】
さらに、上述したように、金属研磨時にCMPを施すための研磨剤の存在下で、過酸化水素および一過硫酸塩のような酸化剤が、硝酸第二鉄と共に使用され得る。機械的研磨および除去を促進する目的で、半導体ウェーハにおいて、二酸化シリコン層を加水分解するために、水酸化カリウムおよび水酸化アンモニウムのようなアルカリ性溶液が使用され得る。さらに、二酸化シリコン膜の速い除去速度、および、下層にある窒化シリコン膜の遅い除去速度に作用するために、カルボン酸、硝酸塩、および可溶性セリウムの使用が可能であり、それにより、窒化シリコン膜の侵食が防止される。
【0016】
CMPに用いられる他種の化学物質には、界面活性剤および腐食防止剤が含まれ得る。研磨剤粒子を安定化し、それにより研磨剤粒子の凝集を防止するために、例えば、ポリビニル・アルコール(PVOH)が添加され得る。同様に、ポリエチレン・グリコールおよびドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが、分散剤として利用され得る。さらに、銅研磨における腐食防止剤として、トリアゾール化合物が使用され得る。
【0017】
本明細書における化学剤は、CMPパッドの約0.1〜50.0容量%の範囲で存在可能であり、全ての数値および1.0%単位の増分がそれに含まれる。また、局所的な相対濃度を付与するために、化学剤をパッドの所定の領域に局在化させてもよい。例えば、パッドの中心部、および/または、パッドの外側の領域に、化学剤を備えることも可能である。さらに、パッド全体にわたって比較的均一に化学剤を分散させてもよく、その場合、化学剤の比較的一定である所定の体積分率が、全体にわたって存在し得る。
【0018】
研磨剤を含有する液状媒体、または研磨剤を含有しない液状媒体の存在下で、半導体基板を研磨する際のCMPパッドの使用方法には、半導体基板、パッド、および液状媒体を、CMP研磨装置に配置することが含まれ得る。研磨装置は、研磨時間、圧力、温度、基板上でのパッドの相対速度、および液状媒体の流量等のような、1以上の処理パラメータを制御し得る。CMP処理の結果は、研磨または除去速度、基板表面全体にわたっての除去の均一性(ウェーハ内不均一性、WIWNU)、平坦性(平坦化効率)、基板表面の瑕疵、およびCMPパッドの耐用年数の観点から、表すことが可能である。
【0019】
それぞれの方法および実施形態についての上記説明は、例示目的でなされたものである。網羅的であること、または、開示されているものと全く同一な工程および/または形態に特許請求の範囲を限定することは、意図されておらず、上記の教示を踏まえて多くの変更および変形が可能であることは明らかである。本発明の範囲は、本明細書に添付する特許請求の範囲によって定義されることが、意図されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドであって、
化学的機械的平坦化中に、水性研磨剤粒子研磨媒体に放出され、且つ、溶解するのに十分な量で存在する化学剤であって、研磨剤粒子の凝集を低減する化学剤と、
前記パッドの形態に成形される結合剤と、
を備え、
前記パッドは表面を有し、前記パッドが摩滅するにつれて前記表面は再び新しい状態にされ、前記化学剤の少なくとも一部を露出させる
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項2】
請求項1に記載の研磨パッドであって、
前記化学剤は、ポリ(酢酸ビニル)由来のポリ(ビニルアルコール)を含有し、且つ、前記ポリ(酢酸ビニル)の前駆体の50%を超える加水分解率を示し、前記ポリ(ビニルアルコール)は、前記パッドの0.1〜50.0容量%の範囲で存在する
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項3】
請求項1に記載の研磨パッドであって、
前記化学剤は、前記パッド内に三次元網目構造を形成する
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項4】
請求項1に記載の研磨パッドであって、
前記化学剤は、繊維に被覆される
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項5】
請求項3に記載の研磨パッドであって、
前記繊維は、可溶性である
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項6】
請求項3に記載の研磨パッドであって、
前記繊維は、不溶性である
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項7】
請求項1に記載の研磨パッドであって、
前記化学剤は、前記パッド内に分散される粒子を含有する
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項8】
請求項2に記載の研磨パッドであって、
前記ポリビニル・アルコールは、繊維を含有する
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項9】
請求項1に記載の研磨パッドであって、
前記水性研磨剤粒子研磨媒体に溶解しない、第二の化学剤を含有し、該第二の化学剤は、前記パッドの表面に、所望のレベルの親水性または疎水性を付与する
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項10】
請求項1に記載の研磨パッドであって、
前記化学剤を前記パッドの一部領域に局在化させ、局所的な相対濃度を付与する
ことを特徴とする研磨パッド。
【請求項11】
研磨パッドを形成する方法であって、
化学剤を結合剤に化合させる工程であって、前記化学剤が、化学的機械的平坦化中に、水性研磨剤粒子研磨媒体に放出され、且つ、溶解するのに十分な量で存在し、研磨剤粒子の凝集を低減する工程と、
前記結合剤および前記化学剤を、化学的機械的平坦化研磨パッドの形態に成形する工程と、
を備えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法であって、
前記化学剤は、ポリ(酢酸ビニル)由来のポリ(ビニルアルコール)を含有し、且つ、前記ポリ(酢酸ビニル)の前駆体の50%を超える加水分解率を示し、前記ポリ(ビニルアルコール)は、前記パッドの0.1〜50.0容量%の範囲で存在する
ことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項11に記載の方法であって、
前記化学剤は、前記パッド内に三次元網目構造を形成する
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項11に記載の方法であって、
前記化学剤は、繊維に被覆される
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、
前記繊維は、可溶性である
ことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項14に記載の方法であって、
前記繊維は、不溶性である
ことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項11に記載の方法であって、
前記化学剤は、前記パッド内に分散される粒子を含有する
ことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項12に記載の方法であって、
前記ポリビニル・アルコールは、繊維を含有する
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項11に記載の方法であって、
前記水性研磨剤粒子研磨媒体に溶解しない、第二の化学剤を含有し、該第二の化学剤は、前記パッドの表面に、所望のレベルの親水性または疎水性を付与する
ことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項11に記載の方法であって、
前記化学剤を前記パッドの一部領域に局在化させ、局所的な相対濃度を付与する
ことを特徴とする方法。
【請求項21】
研磨パッドを用いた研磨方法であって、
表面を有する研磨パッドを基板に接触させる工程であって、前記パッドが、結合剤に化合させた化学剤を含有し、該化学剤が、化学的機械的平坦化中に、水性研磨剤粒子研磨媒体に放出され、且つ、溶解するのに十分な量で存在し、研磨剤粒子の凝集を低減する工程と、
前記パッドを摩滅させ、前記化学剤の少なくとも一部を露出させる工程と、
を備えることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−508462(P2011−508462A)
【公表日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−541541(P2010−541541)
【出願日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【国際出願番号】PCT/US2008/088669
【国際公開番号】WO2009/088945
【国際公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(507255732)イノパッド,インコーポレイテッド (10)
【Fターム(参考)】