説明

化粧シート及び該化粧シートを用いた化粧板

【課題】耐加水分解性を低下させることなく、炭酸ガスの排出量を抑制し得る、環境保護の観点から好適な化粧シートを提供する。
【解決手段】基材2上に隠蔽層3及び/又は絵柄層4を積層し、その上に中間層5を積層し、該中間層5の上に表面保護層6を積層してなる化粧シート1であって、基材2がポリ乳酸樹脂からなり、中間層5がポリオレフィン樹脂からなり、且つ表面保護層6が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものからなることを特徴とする化粧シート及びその化粧シートを基板に貼付した化粧板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化粧シートに関し、詳しくは基材としてポリ乳酸樹脂を用いる化粧シート及び該化粧シートを用いた化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、化粧シートとしては、ポリ塩化ビニル系樹脂からなるシートを利用したものが主に用いられてきた。ポリ塩化ビニル系のシートは印刷適正、エンボス加工適正に優れ、化粧シートに加工しやすいだけでなく、Vカット、ラッピング等の後加工性にも優れており、また安価であるという利点がある。
一方、耐熱性や表面の耐汚染性を向上させる目的で、ポリ塩化ビニル系樹脂に代わる素材としてスチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリアミド系、エステル系等の熱可塑性エラストマーやEVA(エチレンビニルアルコール共重合体)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、アクリル樹脂等を用いた化粧シートが用いられてきた。
【0003】
しかしながら、これらの素材を使用した化粧シートは、廃棄処分した際に樹脂がそのままゴミとして永久に残ってしまい、自然環境保護の観点から好ましくないという問題点があり、廃棄処分して放置しても自然に消滅し得る化粧シートとして、ポリ−L−乳酸を主成分とするポリ乳酸系樹脂シートからなる基材シートに装飾処理を施し、該基材シートに表面保護層を積層した化粧シートが提案されている(例えば、特許文献1又は特許文献2参照)。
【0004】
ところで、近年、炭酸ガス排出量増加に伴う地球温暖化といった環境問題の観点から、石油を原料としない、上述のポリ乳酸系樹脂等の非石油系の樹脂が注目されている。すなわち、これらはバイオマスを利用したプラスチックであり、開発当初は生分解性樹脂として注目を集めたものが、最近では植物由来樹脂との観点から見直されている。植物由来の樹脂は、その樹脂中の炭素が、大気中の炭酸ガスを光合成によって固定化した炭素であり、その後焼却廃棄しても、炭酸ガスの総量を増加させるものではなく、いわゆる「カーボンニュートラル」な材料である。
このような植物由来の樹脂のうち、各種物性と量産化の可能性等を考慮すると上記ポリ乳酸樹脂が有望であり、ポリ乳酸樹脂又はポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物を用いた化粧シート等が提案されている(例えば、特許文献3〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−129426号公報
【特許文献2】特開平11−227147号公報
【特許文献3】特開2006−7728号公報
【特許文献4】特開2008−73998号公報
【特許文献5】特開2008−80703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ポリ乳酸樹脂は加水分解され易いので、従来の石油化学製品である樹脂フィルムを単純にポリ乳酸樹脂又はポリ乳酸系熱可塑性樹脂組成物に置換すると、化粧シートの耐加水分解性の低下により化粧シートの耐久性が低くなる恐れもある。
本発明は、このような状況下で、耐加水分解性を低下させることなく、炭酸ガスの排出量を抑制し得る、環境保護の観点から好適な化粧シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、基材としてポリ乳酸樹脂を用い、中間層としてポリオレフィン樹脂を用い、且つ基材と中間層との間に隠蔽層及び/又は絵柄層を配置することによって、前記課題を解決し得ることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)基材上に隠蔽層及び/又は絵柄層を積層し、その上に中間層を積層してなる化粧シートであって、基材がポリ乳酸樹脂からなり、中間層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする化粧シート、
(2)前記中間層の基材の反対側の面に、表面保護層を積層してなることを特徴とする上記(1)に記載の化粧シート、
(3)前記表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである上記(2)に記載の化粧シート、
(4)前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である上記(3)に記載の化粧シート、
(5)前記隠蔽層及び/又は絵柄層と前記中間層との間に接着層を有する上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化粧シート、
(6)前記基材の裏面にプライマー層を有する上記(1)〜(5)のいずれかに記載の化粧シート、及び
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の化粧シートを基板に貼付した化粧板、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐加水分解性を低下させることなく、炭酸ガスの排出量を抑制し得る、環境保護の観点から好適な化粧シートを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の化粧シートは、基材上に隠蔽層及び/又は絵柄層を積層し、その上に中間層を積層してなる化粧シートであって、基材がポリ乳酸樹脂からなり、中間層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする。
本発明の化粧シートの典型的な構造を、図1を用いて説明する。図1は本発明の化粧シート1の一例を示す断面模式図である。図1に示す例では、基材2上に、隠蔽層3、絵柄層4、所望により隠蔽層3及び/又は絵柄層4の全面を被覆する接着層7a、中間層5、所望により中間層5の全面を被覆する接着層7b並びに所望により電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものからなる表面保護層6がこの順に積層されたものである。また、基材2の裏面には所望によりプライマー層8が積層される。
【0011】
本発明で用いられる基材2はポリ乳酸樹脂からなる。該ポリ乳酸樹脂は、トウモロコシやジャガイモ等の植物原料や植物性の食品廃棄物等から得たデンプンを発酵等の方法によって乳酸とし、該乳酸を重合して得られるものである。
本発明において使用されるポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸又はDL−乳酸単位を主成分とする重合体又はこれらの重合体の混合物であり、乳酸の光学異性体を共重合したものであっても良い。すなわち、L−乳酸に対してD−乳酸を、D−乳酸に対してL−乳酸を共重合したものでも良い。また、該ポリ乳酸は、少量の共重合成分として他のヒドロキシカルボン酸等を含んでいても良い。
なお、本発明における基材2はポリ乳酸樹脂から本質的になり、他の樹脂を含まないものであるが、本発明の効果を阻害しない範囲で少量の他の樹脂が混入することを妨げるものではない。
また、ポリ乳酸樹脂には、必要に応じて、紫外線吸収剤、光安定剤、難燃剤等の各種の添加剤を加えることができる。
【0012】
ポリ乳酸樹脂の重合方法としては特に限定されず、例えば縮合重合法、開環重合法等により製造することができる。縮合重合法では、上記L−乳酸、D−乳酸又はこれらの混合物を直接脱水縮合重合してポリ乳酸樹脂を得る。また、開環重合法では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用してポリ乳酸樹脂を得る。
【0013】
本発明で使用されるポリ乳酸樹脂は、重量平均分子量が10万〜40万の範囲であることが好ましい。重量平均分子量が10万以上であると、耐熱性等において良好な物性を得ることができ、40万以下であると良好な成形加工性を得ることができる。重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によりポリスチレン換算値として算出する。
【0014】
本発明の化粧シートにおける基材2は、上記ポリ乳酸樹脂を、例えば溶融押出法によりフィルム状基材として製造することができる。該基材は延伸しても、また無延伸でも良い。延伸する場合は1軸延伸のもの及び2軸延伸のもののいずれも用いることができるが、通常は2軸延伸したものが、耐久性の観点から好ましい。すなわち、2軸延伸した基材は弾性が強まり、引張強度や伸度に優れる。更に、80〜120℃程度で加熱処理(アニーリング)して耐熱性、耐熱収縮性を付与することもできる。また、2軸延伸した基材は、透明度も高い。なお、延伸倍率は2〜4倍程度が好ましい。一方、無延伸の基材は塑性変形し易く成形性が良好である。
本発明で使用する基材2の厚さは、通常20〜100μm程度であり、加工性等を考慮すると30〜70μmの範囲が好ましい。
【0015】
また、該基材2には、隠蔽性を付与する目的で、顔料及び/又は染料を配合しても良い。顔料としては、無機顔料と有機顔料とに分類することができ、無機顔料としては、酸化チタン白、亜鉛華、鉛白、カーボンブラック、弁柄、朱、黄鉛、群青、コバルト青、コバルト紫、ジンククロメート等が挙げられる。有機顔料としては、フタロシアニン系、ジオキサジン系、アントラキノン系等の顔料が挙げられ、代表的なものとして、キナクリドン、ウォッチアングレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
また染料としては、天然染料と合成染料に分類することができ、天然染料としては、インジゴ(藍)等が代表される。合成染料としては、アゾ染料、インジゴイド染料、硫化染料、ニトロ染料、ニトロソ染料等が挙げられる。これらの顔料及び染料は、1種又は2種以上併用して使用することができ、耐光性に優れ、基材に隠蔽性を持たせるようにするためには、無機顔料が最適である。
【0016】
また、本発明における基材2は、その上に設けられる層又は所望により設けられる裏面の層との密着性を向上させるために、所望により、片面又は両面に酸化法や凹凸化法等の易接着処理(物理的又は化学的表面処理)を施すことができる。
上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線処理法等が挙げられ、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法等が挙げられる。これらの表面処理のうち、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性等の面から好ましく用いられる。
【0017】
本発明の化粧シート1において、隠蔽層3を、絵柄層4に代えて、又は絵柄層4と共に基材2の上に設けることができる。
本発明における隠蔽層3は基材2の色を隠蔽する全面ベタ層であり、化粧シート1に意匠性を与える装飾層として機能する場合もある。
隠蔽層3は基材2上の表面の色を整えることで、基材2が着色している場合や色ムラがある場合に形成して、基材2の表面に意図した色彩を与えるものである。通常、不透明色で形成することが多いが、着色透明色で形成し、下地が持っている模様を活かす場合もある。基材2が白色であることを活かす場合や、基材2が適切に着色されている場合には隠蔽層3を積層しなくても良い。
隠蔽層3は、グラビアコート、バーコート、グラビアリバースコート、グラビアオフセットコート、スピンナーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート、キスコート、ホイラーコート、ディップコート、シルクスクリーン等の公知の塗工方法、又はグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法により形成される。
【0018】
また、本発明における絵柄層4は化粧シート1に意匠性を与えるものである。この絵柄層4は、隠蔽層3に代えて、又は隠蔽層3と共に設ける。
本発明の化粧シート1において、絵柄層4を隠蔽層3と共に設ける場合は、通常基材2の上に隠蔽層3、絵柄層4の順に設ける。
本発明において、基材2と中間層5との間に隠蔽層3及び/又は絵柄層4を配置することにより、絵柄模様等に深みを与えるばかりでなく後述するエンボス加工による意匠性をも高める効果を奏する。
【0019】
絵柄層4は、種々の模様をインキと印刷機を使用してグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷等の公知の印刷方法により形成される。模様としては、オーク、チーク、ウォルナット等の柾目又は板目状の木目模様、大理石模様(例えばトラバーチン大理石模様)等の岩石の表面を模した石目模様、布目や布状の模様を模した布地模様、タイル貼模様、煉瓦積模様等があり、これらを複合した寄木、パッチワーク等の模様もある。これらの模様は通常の黄色、赤色、青色、及び黒色のプロセスカラーによる多色印刷によって形成される他、模様を構成する個々の色の版を用意して行う特色による多色印刷等によっても形成される。
【0020】
本発明における隠蔽層3及び/又は絵柄層4の形成に用いられるインキとしては、バインダーに顔料、染料等の着色剤、体質顔料、溶剤、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等を適宜混合したものが使用される。該バインダーとしては特に制限はなく、例えば、ポリウレタン系樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル系共重合体樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル/アクリル系共重合体樹脂、塩素化ポリプロピレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ブチラール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、酢酸セルロース系樹脂等の中から任意のものが、1種単独で又は2種以上を混合して用いられる。
着色剤としては、カーボンブラック(墨)、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等が用いられる。特に木目の「照り」をよく表現するためには、パール顔料や金属顔料等の光輝性顔料を添加することが好ましい。
【0021】
本発明における中間層5はポリオレフィン樹脂からなる層である。ポリオレフィン樹脂を用いることにより、化粧シート1の透湿度を抑え、耐加水分解性を向上させることが好適にできる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリブテン樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、又はこれらの混合物等が挙げられる。これらのうち、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂又はこれらの混合物が好ましく、ポリプロピレン樹脂が特に好ましい。
このポリプロピレン樹脂としては、アイソタクチックポリプロピレン樹脂、アタクチックポリプロピレン樹脂、アイソタクチックポリプロピレンからなるハードセグメントとアタクチックポリプロピレンからなるソフトセグメントとを質量比(10:90)〜(90:10)、好ましくは質量比(60:40)〜(90:10)、例えば質量比(75:25)又は(80:20)で混合したポリプロピレン樹脂、ブロックポリプロピレン樹脂等が挙げられる。
また、ポリエチレン樹脂としては、低密度ポリエチレン樹脂、高密度ポリエチレン樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂、又はこれらの混合物等が挙げられる。
ポリオレフィン樹脂は通常無色透明なものが用いられるが、絵柄層4の色を引き立てる等の場合によっては有色透明や半透明であっても良い。
【0022】
中間層5に用いられるポリオレフィン樹脂は、例えば、カレンダー法、インフレーション法、Tダイ押し出し法等によりフィルム状にすれば良い。
上記ポリオレフィン樹脂は、延伸しても、また無延伸でも良い。延伸する場合は1軸延伸のもの及び2軸延伸のもののいずれも用いることができるが、通常は2軸延伸したものが、耐久性の観点から好ましい。特に、無延伸ポリプロピレン樹脂はTダイ押し出し法により好適にフィルム状にできる。
【0023】
本発明において、ポリ乳酸樹脂からなる基材2の上に中間層5を配置することにより化粧シート1の透湿度を抑え、耐加水分解性を向上させることができる。
中間層5の厚さは、化粧シート1の透湿度を抑え、耐加水分解性を向上させる観点から適宜選択されれば良いが、好ましくは20〜100μmである。20μm以上であれば耐加水分解性を好適に確保でき、100μm以下であれば曲げ加工性が良好である。
【0024】
本発明における中間層5は、その上に設けられる層又は裏面の層との密着性を向上させるために、基材2と同様に、所望により片面又は両面に上記の酸化法や凹凸化法等の易接着処理(物理的又は化学的表面処理)を施すことができる。
【0025】
本発明において、中間層の基材の反対側の面に、所望により積層される表面保護層6は、電離放射線硬化性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成されることが好ましく、表面性能を向上させるためには電離放射線硬化性樹脂組成物が架橋硬化したもので構成されることが特に好ましい。
ここで、熱硬化性樹脂組成物に使用する熱硬化型樹脂としては、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂(2液硬化型ポリウレタンも含む)、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等を挙げることができる。上記樹脂には必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、または、重合促進剤を添加して用いる。たとえば、硬化剤としては、イソシアネートまたは有機スルホン酸塩等が不飽和ポリエステル樹脂やポリウレタン樹脂等に添加され、有機アミン等がエポキシ樹脂に添加され、メチルエチルケトンパーオキサイド等の過酸化物やアゾイソブチルニトリル等のラジカル開始剤は不飽和ポリエステル樹脂に添加される。
また、電離放射線硬化性樹脂組成物とは、電磁波又は荷電粒子線の中で分子を架橋、重合させ得るエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線又は電子線等を照射することにより、架橋、硬化する樹脂組成物を指す。具体的には、従来電離放射線硬化性樹脂組成物として慣用されている重合性モノマー及び重合性オリゴマーないしはプレポリマーの中から適宜選択して用いることができる。
【0026】
代表的には、重合性モノマーとして、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つ(メタ)アクリレート系モノマーが好適であり、中でも多官能性(メタ)アクリレートが好ましい。なお、ここで「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。多官能性(メタ)アクリレートとしては、分子内にエチレン性不飽和結合を2個以上有する(メタ)アクリレートであれば良く、特に制限はない。具体的にはエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの多官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0027】
本発明においては、前記多官能性(メタ)アクリレートとともに、その粘度を低下させる等の目的で、単官能性(メタ)アクリレートを、本発明の目的を損なわない範囲で適宜併用することができる。単官能性(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単官能性(メタ)アクリレートは1種を単独で用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0028】
次に、重合性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えばエポキシ(メタ)アクリレート系、ウレタン(メタ)アクリレート系、ポリエステル(メタ)アクリレート系、ポリエーテル(メタ)アクリレート系等が挙げられる。ここで、エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。また、このエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを部分的に二塩基性カルボン酸無水物で変性したカルボキシル変性型のエポキシ(メタ)アクリレートオリゴマーも用いることができる。ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。ポリエーテル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
【0029】
更に、重合性オリゴマーとしては、他にポリブタジエンオリゴマーの側鎖に(メタ)アクリレート基をもつ疎水性の高いポリブタジエン(メタ)アクリレート系オリゴマー、主鎖にポリシロキサン結合をもつシリコーン(メタ)アクリレート系オリゴマー、小さな分子内に多くの反応性基をもつアミノプラスト樹脂を変性したアミノプラスト樹脂(メタ)アクリレート系オリゴマー、あるいはノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、脂肪族ビニルエーテル、芳香族ビニルエーテル等の分子中にカチオン重合性官能基を有するオリゴマー等がある。
【0030】
電離放射線硬化性樹脂組成物として紫外線硬化性樹脂組成物を用いる場合には、光重合用開始剤を樹脂組成物100質量部に対して、0.1〜5質量部程度添加することが望ましい。光重合用開始剤としては、従来慣用されているものから適宜選択することができ、特に限定されず、例えば、分子中にラジカル重合性不飽和基を有する重合性モノマーや重合性オリゴマーに対しては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4’−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリーブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール等が挙げられる。
また、分子中にカチオン重合性官能基を有する重合性オリゴマー等に対しては、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等が挙げられる。
また、光増感剤としては、例えばp−ジメチル安息香酸エステル、第三級アミン類、チオール系増感剤等を用いることができる。
本発明においては、電離放射線硬化性樹脂組成物として電子線硬化性樹脂組成物を用いることが好ましい。電子線硬化性樹脂組成物は無溶剤化が可能であって、環境や健康の観点からより好ましく、また光重合用開始剤を必要とせず、安定な硬化特性が得られるからである。
本発明において、後に詳述するように、表面保護層を構成する未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。
【0031】
また本発明における電離放射線硬化性樹脂組成物には、得られる硬化樹脂層の所望物性に応じて、各種添加剤を配合することができる。この添加剤としては、例えば耐候性改善剤、耐摩耗性向上剤、重合禁止剤、架橋剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤、溶剤、着色剤等が挙げられる。
ここで、耐候性改善剤としては、紫外線吸収剤や光安定剤を用いることができる。紫外線吸収剤は、無機系、有機系のいずれでも良く、無機系紫外線吸収剤としては、平均粒径が5〜120nm程度の二酸化チタン、酸化セリウム、酸化亜鉛等を好ましく用いることができる。また、有機系紫外線吸収剤としては、例えばベンゾトリアゾール系、具体的には、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、ポリエチレングリコールの3−[3−(ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル]プロピオン酸エステル等が挙げられる。一方、光安定剤としては、例えばヒンダードアミン系、具体的には2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2’−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート等が挙げられる。また、紫外線吸収剤や光安定剤として、分子内に(メタ)アクリロイル基等の重合性基を有する反応性の紫外線吸収剤や光安定剤を用いることもできる。
【0032】
耐摩耗性向上剤としては、例えば無機物ではα−アルミナ、シリカ、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド、炭化ケイ素等の球状粒子が挙げられる。粒子形状は、球、楕円体、多面体、鱗片形等が挙げられ、特に制限はないが、球状が好ましい。有機物では架橋アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の合成樹脂ビーズが挙げられる。粒径は、通常膜厚の30〜200%程度とする。これらの中でも球状のα−アルミナは、硬度が高く、耐摩耗性の向上に対する効果が大きいこと、また、球状の粒子を比較的得やすい点で特に好ましいものである。
重合禁止剤としては、例えばハイドロキノン、p−ベンゾキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、t−ブチルカテコール等が、架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、金属キレート化合物、アジリジン化合物、オキサゾリン化合物等が用いられる。
充填剤としては、例えば硫酸バリウム、タルク、クレー、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等が用いられる。
着色剤としては、例えばキナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、酸化チタン、カーボンブラック等の公知の着色用顔料等が用いられる。
赤外線吸収剤としては、例えば、ジチオール系金属錯体、フタロシアニン系化合物、ジインモニウム化合物等が用いられる。
【0033】
本発明に係る表面保護層6においては、前記の熱硬化性樹脂組成物又は前記の電離放射線硬化成分である重合性モノマーや重合性オリゴマー及び各種添加剤を、それぞれ所定の割合で均質に混合し、塗工液を調製する。この塗工液の粘度は、後述の塗工方式により、中間層5又は所望により積層される接着層7bの表面に未硬化樹脂層を形成し得る粘度であれば良く、特に制限はない。
本発明においては、このようにして調製された塗工液を、隠蔽層3及び/又は絵柄層4の表面に、硬化後の厚さが1〜20μmになるように、グラビアコート、バーコート、ロールコート、リバースロールコート、コンマコート等の公知の方式、好ましくはグラビアコートにより塗工し、未硬化樹脂層を形成させる。硬化後の厚さが1μm以上であると所望の機能を有する硬化樹脂層が得られる。硬化後の表面保護層の厚さは、好ましくは2〜20μm程度である。
【0034】
本発明に係る表面保護層6においては、上述のようにして形成された電離放射線硬化性樹脂組成物からなる未硬化樹脂層に、電子線、紫外線等の電離放射線を照射して該未硬化樹脂層を硬化させる。ここで、電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚みに応じて適宜選定し得るが、通常加速電圧70〜300kV程度で未硬化樹脂層を硬化させることが好ましい。
なお、電子線の照射においては、加速電圧が高いほど透過能力が増加するため、基材として電子線により劣化する基材を使用する場合には、電子線の透過深さと樹脂層の厚みが実質的に等しくなるように、加速電圧を選定することにより、基材への余分の電子線の照射を抑制することができ、過剰電子線による基材の劣化を最小限にとどめることができる。
また、照射線量は、樹脂層の架橋密度が飽和する量が好ましく、通常5〜300kGy(0.5〜30Mrad)、好ましくは10〜70kGy(1〜7Mrad)の範囲で選定される。
【0035】
更に、電子線源としては、特に制限はなく、例えばコックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用いることができる。
電離放射線として紫外線を用いる場合には、波長190〜380nmの紫外線を含むものを放射する。紫外線源としては特に制限はなく、例えば高圧水銀燈、低圧水銀燈、メタルハライドランプ、カーボンアーク燈等が用いられる。
このようにして、形成された硬化樹脂層には、各種の添加剤を添加して各種の機能、例えば、高硬度で耐擦傷性を有する、いわゆるハードコート機能、防曇コート機能、防汚コート機能、防眩コート機能、反射防止コート機能、紫外線遮蔽コート機能、赤外線遮蔽コート機能等を付与することもできる。
【0036】
図1に示される接着層7(隠蔽層3及び/又は絵柄層4の全面を被覆する接着層7a並びに中間層5の全面を被覆する接着層7b)は、基材2と隠蔽層3及び/又は絵柄層4との密着性や中間層5と表面保護層6との密着性を向上させる目的で、所望により設けられる層である。接着層7を構成する材料としては、上述の層間の接着性の向上が図られるものであれば特に限定されないが、通常はポリエステル系ウレタン樹脂(ポリエステル変性ポリウレタン樹脂等)、ポリウレタン樹脂、アクリル/ウレタン共重合系樹脂、アクリル樹脂等が好適に用いられる。
なお、接着層7aと接着層7bとは同じ材料を用いても良いし、異なる材料を用いても良い。
【0037】
本発明の化粧シート1は、各種基板に貼着して化粧板として使用することができる。従って、化粧シート1と各種基板との接着を強固にするため、所望により基材2の裏面にプライマー層8が設けられる。このプライマー層8は、公知のプライマー剤を塗布することにより形成できる。プライマー剤としては、例えば、アクリル変性ウレタン樹脂等からなるウレタン樹脂系プライマー剤、ウレタン−セルロース系樹脂(例えば、ウレタンと硝化綿の混合物にヘキサメチレンジイソシアネートを添加してなる樹脂)からなるプライマー剤等が挙げられる。
プライマー層の厚さは特に限定されないが、通常0.01〜10μm、好ましくは0.5〜5μm程度である。
【0038】
本発明の化粧シート1は、所望により更に基材2の裏面にフィルム層を設けても良い。このポリ乳酸樹脂からなる基材2を中間層5とフィルム層とで挟んだサンドイッチ構造により、更に透湿性が抑えられ、耐加水分解性がより向上することとなる。この場合所望により基材2とフィルム層との間に接着層7を設けても良く、フィルム層の裏面にプライマー層8を設けても良い。
フィルム層としては、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂(PET樹脂等)が好適に用いられる。
【0039】
本発明の化粧シート1は、所望により適宜エンボス模様を付しても良い。この場合、表面保護層6の上からエンボス加工すれば良い。エンボス加工は、エンボス版の押圧等、公知の手段により実施することができる。例えば、表面保護層6のおもて面を加熱軟化後、エンボス版を押圧することにより所望のエンボス模様を賦型できる。エンボス模様としては、例えば木目板導管溝、石板表面凹凸、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等がある。
エンボス加工条件は、表面保護層6、中間層5等の材料により適宜選択すれば良い。通常、シート加熱温度として80〜260℃、より好ましくは80〜160℃、特に好ましくは100〜140℃で、且つエンボス版温度として60〜160℃、より好ましくは60〜120℃、特に好ましくは80〜100℃で押圧が行われる。
【0040】
本発明の化粧板は、化粧シート1が各種基板に貼着されて形成される。ここで、被着体となる基板は、特に限定されず、木材等の木質系の板、窯業系素材、プラスチックシート、金属板等を用途に応じて適宜選択することができる。これらの基板、特にプラスチックシートを基板として用いる場合には、化粧シート1との密着性を向上させるために、基材2や中間層5と同様に、所望により、片面又は両面に上記の酸化法や凹凸化法等の易接着処理(物理的又は化学的表面処理)を施すことができる。
【0041】
木質系の板としては、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等各種素材の突板、木材単板、木材合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)等の木質材等が挙げられる。これらは単独で、又は積層して用いることもできる。なお、木質系の板には、木質板に限らず、紙粉入りのプラスチック板や、補強され強度を有する紙類も包含される。
窯業系素材としては、石膏板、珪酸カルシウム板、木片セメント板等の窯業系建材、陶磁器、ガラス、琺瑯、焼成タイル、火山灰を主原料とした板等が例示される。
これらの他、繊維強化プラスチック(FRP)の板、ペーパーハニカムの両面に鉄板を貼ったもの、2枚のアルミニウム板でポリエチレン樹脂を挟んだもの等、各種の素材の複合体も基材として使用できる。
【0042】
プラスチックシートとしては、各種の合成樹脂からなるものが挙げられる。合成樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート−イソフタレート共重合樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリメタクリル酸エチル樹脂、ポリアクリル酸ブチル樹脂、ナイロン6又はナイロン66等で代表されるポリアミド樹脂、三酢酸セルロース樹脂、セロファン、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂、又はポリイミド樹脂等が挙げられる。
金属板としては、例えばアルミニウム、鉄、ステンレス鋼、又は銅等からなるものを用いることができ、またこれらの金属をめっき等によって施したものを使用することもできる。
【0043】
また該基板はプライマー層を形成する等の処理を施しても良いし、色彩を整えるための塗装や、デザイン的な観点での模様があらかじめ形成されていても良い。被着体となる基板としては各種素材の平板、曲面板等の板材、或いは上記素材が単体か或いは複合された立体形状物品(成形品)が対象となる。
【0044】
化粧シートに、和紙、洋紙、合成紙、不織布、織布、寒冷紗、含浸紙、合成樹脂シート等の裏打ち材を貼着して用いても良い。裏打ち材を貼着することにより、化粧シート自体の補強、化粧シートの割れや破け防止、接着剤の化粧シート表面への染み出し防止等の作用がなされ、不良品の発生が防止されると共に、取り扱いが容易となることとなり、生産性を向上することができる。
【0045】
このようにして接着剤を介して毎葉ごとにあるいは連続して化粧シートが載置された基板を、コールドプレス、ホットプレス、ロールプレス、ラミネーター、ラッピング、縁貼り機,真空プレス等の貼着装置を用いて圧締して、化粧シートを基板表面に接着し、化粧板とする。
【0046】
接着剤はスプレー、スプレッダー、バーコーター等の塗布装置を用いて塗布する。この接着剤には、酢酸ビニル樹脂系、ユリア樹脂系、メラミン樹脂系、フェノール樹脂系、イソシアネート系等の接着剤又はウレタン系反応型ホットメルト接着剤(PUR)を、単独であるいは任意混合した混合型接着剤として用いられる。接着剤には、必要に応じてタルク、炭酸カルシウム、クレー、チタン白等の無機質粉末、小麦粉、木粉、プラスチック粉、着色剤、防虫剤、防カビ剤等を添加混合して用いることができる。一般に、接着剤は固形分を35〜100質量%とし、塗布量50〜300g/m2の範囲で基板表面に塗布される。
化粧シートの基板上への貼着は、通常、本発明の化粧シートの裏面に接着層を形成し、基板を貼着するか基板の上に接着剤を塗布し、化粧シートを貼着する等の方法による。
【0047】
以上のようにして製造される化粧板は、また、該化粧板を任意切断し、表面や木口部にルーター、カッター等の切削加工機を用いて溝加工、面取加工等の任意加飾を施すことができる。
【実施例】
【0048】
次に、本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明は、この例によってなんら限定されるものではない。
(評価方法)
実施例、比較例及び参考例で得られた化粧シートについて、以下の方法で評価した。
(1)表面強度
JAS摩耗A試験に準拠し、摩耗輪としてCS−17を用い、総荷重1000gfで200回擦った後の化粧シート表面状態を以下の基準で評価した。
○: 絵柄が100%残っている(絵柄の取られが全くない)。
△: 絵柄が100%未満、かつ50%超残っている。
×: 絵柄が50〜0%残っている。
(2)耐久性(耐加水分解性)
SMOM試験(サンシャイン・ウェザー・オ・メーター試験)により以下の基準で評価した。
○: 2,000時間経過時に外観変化がなかった。
△: 2,000時間経過時に軽微な外観変化が認められた。
×: 2,000時間経過時に外観変化が認められた。
(3)「バイオマスプラ」JBPA識別表示基準準拠
「バイオマスプラ」JBPA識別表示基準を満足するか否かで評価した。( )内にポリ乳酸含有率(質量%)を示す。
○: JBPA識別表示基準を満足する。
×: JBPA識別表示基準を満足しない。
【0049】
実施例1
厚さ60μmの白色ポリ乳酸樹脂フィルムよりなる基材の表面に、ポリウレタン樹脂(重量平均分子量(Mw);55000、Tg;−30℃)に白色顔料としてチタニアをP/V比2.4となるように加え、硬化剤としてヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネートを加えたポリウレタン樹脂組成物を、4g/m2(乾燥質量、以下「ドライ」という)塗布することにより隠蔽層を形成した。この隠蔽層の上に、ウレタン系樹脂からなるインキを使用して木目模様の絵柄層をグラビア印刷した。
次に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を5g/m2(ドライ)塗布することにより接着層7aを形成した。この接着層7aの上に厚さ60μmの無延伸透明ポリプロピレン樹脂フィルムをドライラミネートし中間層を形成した。
次いで、中間層の上に、透明ポリエステル系ウレタン樹脂を5g/m2(ドライ)塗布することにより接着層7bを形成した後、この接着層7bの上に3官能アクリレートモノマーであるエチレンオキサイド変性トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリアクリレートを60質量部と6官能アクリレートモノマーであるジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを40質量部、平均粒子径5μmのシリカ粒子15質量部及びシリコーンアクリレートプレポリマー1質量部よりなる電子線硬化性樹脂組成物を5g/m2 でグラビアオフセットコータ法により塗工した。塗工後、加速電圧175kV、照射線量50kGy(5Mrad)の電子線を照射して、電子線硬化性樹脂組成物を硬化させて、表面保護層を形成した。次いで、40℃で48時間の養生を行った。その後、得られた積層シートの基材の裏面にアクリル変性ウレタン樹脂からなるプライマー剤を3g/m2(ドライ)塗布することによりプライマー層を形成し、化粧シートを得た。
この化粧シートについて上記方法にて評価した。その結果を第1表に示す。
【0050】
比較例1
実施例1の基材を厚さ60μmの無延伸白色ポリプロピレン樹脂フィルムに変更した以外は実施例1と同様にして比較例1の化粧シートを得た。この化粧シートについて上記方法にて評価した。その結果を第1表に示す。
【0051】
比較例2
実施例1の基材を厚さ60μmの無延伸白色ポリプロピレン樹脂フィルムに変更し、且つ中間層を厚さ60μmの透明ポリ乳酸樹脂フィルムに変更した以外は、実施例1と同様にして化粧シートを得た。この化粧シートについて上記方法にて評価した。その結果を第1表に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
第1表から明らかなように、実施例1の化粧シートは、比較例1と比較して炭酸ガスの排出量を抑制し得る、環境保護の観点から好適な化粧シートであった。また、実施例1の化粧シートは、比較例2と比較して耐加水分解性が大幅に向上し、ポリ乳酸樹脂を用いない比較例1と同等の耐加水分解性を有することができた。
なお、実施例1の化粧シートをシート加熱温度125℃で表面保護層6のおもて面を加熱軟化後、エンボス版温度100℃にて木目板導管溝模様のエンボス版を押圧し賦型したところ、エンボス加工性が良好であり優れた意匠効果を有する化粧シートが得られた。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の化粧シートは、基材としていわゆるカーボンニュートラルな材料を用いているので、環境に配慮した化粧シートである。しかも、基材としてポリオレフィン樹脂フィルムを用いた場合と同等の耐加水分解性を有するため、化粧板として種々の用途、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装又は外装材、窓枠、扉、手すり、幅木、廻り縁、モール等の建具の表面化粧板、キッチン、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板、車両の内装、外装等に用いることができる。特に、室内ドア、収納扉、戸棚、家具、キッチン、キャビネット等の内装扉や表面化粧板、内装用の壁等の種々の建材用途に好適に使用し得る。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の化粧シートの一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0056】
1 化粧シート
2 基材
3 隠蔽層
4 絵柄層
5 中間層
6 表面保護層
7、7a、7b 接着層
8 プライマー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に隠蔽層及び/又は絵柄層を積層し、その上に中間層を積層してなる化粧シートであって、基材がポリ乳酸樹脂からなり、中間層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする化粧シート。
【請求項2】
前記中間層の基材の反対側の面に、表面保護層を積層してなることを特徴とする請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
前記表面保護層が電離放射線硬化性樹脂組成物の架橋硬化したものである請求項2に記載の化粧シート。
【請求項4】
前記電離放射線硬化性樹脂組成物が電子線硬化性樹脂組成物である請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
前記隠蔽層及び/又は絵柄層と前記中間層との間に接着層を有する請求項1〜4のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項6】
前記基材の裏面にプライマー層を有する請求項1〜5のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の化粧シートを基板に貼付した化粧板。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−234766(P2010−234766A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−88065(P2009−88065)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】