説明

化粧シート

【課題】家具、建具等の建材の表面装飾材料として効果的な絵柄が施された化粧シート、該化粧シートが積層された化粧板に関して、最表面層の耐傷性ないしは耐擦傷性が改善された化粧シートを提供する。
【解決手段】被着材に積層して用いるための化粧シートであって、化粧シート表面の十点平均粗さRzが10μm以上である化粧シートに係る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、家具、建具等の建材の表面装飾材料として効果的な絵柄が施された化粧シート及び当該化粧シートが積層された化粧板に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧シート(例えば木質化粧シート)は、木質板の表面の保護、装飾等を目的として、木質板の表面に貼着することにより用いられている。そして、これによって得られた化粧板は、各種の建材、家具等に使用されている。
【0003】
このような化粧シート及び化粧板としては、例えば透明基材シート上に透明アクリル系樹脂シートが積層され、前記透明基材シート又は前記透明アクリル樹脂シートの少なくとも一方のシート表面に裏面が透視可能に木目絵柄層が設けられている化粧シートであって、前記透明基材シートは、高密度ポリエチレン又はアイソタクチックポリプロピレン、ゴム及び無機充填剤を含有することを特徴とする化粧シート及び木質板上に、前記化粧シートが貼着された木質化粧板(特許文献1)等が知られている。
【0004】
このような化粧シートは、一般に最表面層にキズが付き易く、耐傷性、耐擦傷性等の点においてさらなる改善が必要とされている。
【特許文献1】特開平11−240113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明は、最表面層の耐傷性ないしは耐擦傷性が改善された化粧シートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、従来技術の問題点に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、特定の表面性状(表面粗さ)を有する化粧シートとすることによって上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の化粧シートに係る。
【0008】
1. 被着材に積層して用いるための化粧シートであって、化粧シート表面の十点平均粗さRzが10μm以上である化粧シート。
【0009】
2. Rzが10μm以上25μm以下である、上記項1に記載の化粧シート。
【0010】
3. 最表面層として、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を少なくとも有する、上記項1又は2に記載の化粧シート。
【0011】
4. 化粧シートは、被着材に対して少なくとも基材シート、絵柄層、透明性樹脂層及び表面保護層を順に有する、上記項3に記載の化粧シート。
【0012】
5. 透明性樹脂層と表面保護層との間にプライマー層が形成されている、上記項4に記載の化粧シート。
【0013】
6. 透明性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂である、上記項4又は5に記載の化粧シート。
【0014】
7. 透明性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂の溶融押出により隣接する層上に塗工されて形成されている、上記項4〜6のいずれかに記載の化粧シート。
【0015】
8. 絵柄層と透明性樹脂層との間に接着剤層が介在する、上記項4〜7のいずれかに記載の化粧シート。
【0016】
9. 上記項1〜8のいずれかに記載の化粧シートの表面保護層が最表面層となるように当該シートが被着材上に積層されてなる化粧板。
【0017】
10. 被着材が、木質材料である、上記項9に記載の化粧板。
【発明の効果】
【0018】
本発明の化粧シートによれば、特定の表面性状(表面粗さ)を有する化粧シートとすることにより、従来品の化粧シートよりも優れた耐傷性を発揮することができる。即ち、表面粗さが特定範囲に制御されている場合は、より優れた耐傷性ないしは耐擦傷性を発揮することができる。このため、表面にキズ等がつきにくく、長期にわたって良好な外観を維持することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の化粧シートは、被着材に積層して用いるための化粧シートであって、化粧シート表面の十点平均粗さRzが10μm以上であることを特徴とする。
【0020】
このように化粧シート表面の十点平均粗さRzを10μm以上、好ましくは10μm以上25μm以下に制御することにより、化粧シート表面に傷がつき難く、且つ目立ち難くなるため、優れた耐傷性、耐擦傷性等が発揮される。
【0021】
化粧シート表面のRzを所定範囲に制御するためには、例えば、エンボス加工を用いる。具体的には、化粧シートの最表面層をエンボス加工することにより所定のRzを得る。
【0022】
エンボス加工により所定のRzを得る場合には、エンボス版としてはサンドブラスト状模様を有するものを使用する。このようなエンボス版は、例えば、公知の腐食法、サンドブラスト処理法等により作製できる。
【0023】
腐食法によりサンドブラスト状模様を形成する方法は、公知の腐食法を用いることによって実施することができる。例えば、所定のサンドブラスト状模様(気泡模様、散点模様等)のパターンをコンピュータ画面上で作成する。次いで、前記パターンの画像をエンボス版のシリンダーの円周長でエンドレスになるようエンドレスファイルを作成する。このためには、エンドレスパターン発生のソフトを設計しても良いし、ファイル接合部分を市販のレタッチソフトで修正しても良い。このようにして得られたエンドレスファイルからデータをレジスト感光液を塗布したエンボスシリンダー上にレーザーストリーム製版装置を用いて直接出力して焼き付ける。この場合、シリンダー幅方向には、レーザーストリーム製版装置の幅送り機能を利用することができる。次いで、シリンダーの現像、腐食、レジスト剥離、クロムメッキを行えば、所定のエンボスパターンを賦型することができるエンボス版が得られる。
【0024】
エンボス版の模様は、一定の方向性を有しないサンドブラスト状模様(換言すれば無配向性又はランダムの模様)であれば良く、例えば気泡状模様(ドット模様)、雲状模様、砂粒状模様等のいずれであっても良い。
【0025】
また、エンボス版に対して上記サンドブラスト模様を形成する前に、他の模様(例えば木目導管模様、浮出した年輪の凹凸模様、ヘアライン等)をエンボス版に対して形成してもよい。この場合には、化粧シートの表面には、Rzが10μm以上(好ましくは10μm以上25μm以下)の領域と他の模様の領域とが同時に形成される。他の模様の領域は、Rzの測定には考慮しない。なお、エンボス版をサンドブラスト処理により形成する場合には、木目導管模様とサンドブラスト状模様とを同一版上で明瞭に形成することは困難な場合がある。その場合には、腐食法によってエンボス版を形成することが好ましい。
【0026】
エンボス版のサンドブラスト状模様の表面粗さは、所望の耐傷性、表面手触り感、木目導管等の意匠性等に応じて適宜設定できるが、十点平均粗さRzが15μm以上(特に15〜35μm)とすることが望ましい。かかる表面粗さに設定することによって、十点平均粗さRzが10μm以上(好ましくは10〜25μm)の化粧シートを効率的に得ることができる。そして、このような化粧シートは、より優れた耐傷性ないしは耐擦傷性を得ることができる。
【0027】
エンボス加工は、化粧シートの表面を加熱軟化させた後、エンボス板で加圧、賦形し、冷却固定することにより施せる。エンボス機としては、公知の枚葉又は輪転式のエンボス機を使用すれば良い。
【0028】
次に、化粧シートの構成について説明する。
【0029】
化粧シート
本発明の化粧シートは、その構成は限定的でなく、公知の化粧シートの構成を採用することもできる。特に、本発明では、最表面層として、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を少なくとも有する化粧シートが好ましい。すなわち、所定のRzを有する層が電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層になるので、より優れた耐傷性等を発揮することができる。
【0030】
化粧シートの好ましい態様を挙げると、例えば被着材に対して少なくとも基材シート、絵柄層、透明性樹脂層及び表面保護層を順に有する化粧シートが挙げられる。以下、これらの各層について説明する。
【0031】
基材シート及び透明性樹脂層
基材シート及び透明性樹脂層は、後者が透明性であるほかは、公知の化粧シートで使用される材質(樹脂)を用いることができる。
【0032】
これらの層の形成に使用される樹脂としては、例えば熱可塑性樹脂を好適に使用することができる。具体的には、軟質、半硬質又は硬質ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル等を挙げることができる。本発明では、特に透明性樹脂層として、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂が好ましい。
【0033】
これらの層は、必要に応じて着色されていても良い。この場合は、上記のような熱可塑性樹脂に着色材(顔料又は染料)を配合することにより着色することができる。着色材としては、例えばチタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー、インダスレンブルーRS、アニンリンブラック等の有機顔料(染料も含む。)、アルミニウム、真鍮等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の箔粉からなる真珠光沢(パール)顔料等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。また、着色材の添加量も、所望の色合い等に応じて適宜設定すれば良い。
【0034】
また、これらの層には、必要に応じて充填剤、艶消し剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、ラジカル捕捉剤、軟質成分(例えばゴム)等の各種の添加剤が含まれていても良い。
【0035】
難燃剤は、耐燃性を付与するために添加される。例えば、塩化パラフィン、トリクレジルホスフェート、塩素化油、テトラクロロ無水フタル酸、テトラブロモ無水フタル酸、テトラブロモビスフェノールA、ジブロモプロピルホスフェート、トリ(2,3−ジブロモプロピル)ホスフェート、酸化アンチモン、含水アルミナ、ホウ酸バリウム等を好適に用いることができる。
【0036】
酸化防止剤は、酸化分解を抑制ないしは防止するために添加される。例えば、アルキルフェノール類、アミン類、キノン類等が好適である。
【0037】
紫外線吸収剤は、樹脂(特にポリオレフィン系樹脂)の劣化を招く波長280〜450nmの領域の紫外線を吸収するものである。例えば、ベンゾフェノン系、サリチレート系、ベンゾトリアゾール系、アクリロニトリル系等の各紫外線吸収剤を挙げることができる。例えば、分子中にOH基を有する有機系の化合物を使用することができる。具体的には、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−アミル−5’−イソブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−イソブチル−5’−プロピルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等の2’−ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤類等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2、2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン等の2−ヒドロキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤類等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸フェニル、4−tert−ブチルフェニルサリチレート等のサリチル酸エステル系紫外線吸収剤等が挙げられる。その他にも、ベンゾトリアゾール骨格にアクリロイル基又はメタクリロイル基が導入された反応型紫外線吸収剤等を用いることもできる。これらのうち、吸収波長と着色性の問題を考慮してベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が特に好ましい。
【0038】
ラジカル捕捉剤は、日光による変褪色、亀裂、白化、強度劣化等を防止して耐候性を向上させるために添加される。ラジカル捕捉剤としては、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケートのほか、例えば特公平4−82625号公報に開示されている化合物等のヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピペリジル系ラジカル捕捉剤等が使用される。
【0039】
これらの層の形成方法は限定的でなく、例えば予め形成されたシート又はフィルムを隣接する層に積層する方法、前記樹脂を含む樹脂組成物を溶融押出することにより隣接する層上に塗工する方法、隣接する層と一緒にラミネートする方法等のいずれも採用することができる。本発明では、特に溶融押出により層形成することが好ましく、特にポリオレフィン系樹脂を溶融押出によって形成することが望ましい。具体的には、絵柄層上に予め接着剤層を形成し、当該接着剤層上にポリプロピレン系熱可塑性エラストマーを溶融押出して塗工することにより好適に形成することができる。溶融押出の方法は、例えばTダイ等を用いる公知の方法に従って実施すれば良い。
【0040】
これらの層の厚みは、最終製品の用途、使用方法等により適宜設定できるが、一般的には50〜250μmの範囲とすることが好ましい。特に、透明性樹脂層は、20〜200μm程度とすることが好ましい。
【0041】
基材シートの表面(おもて面)及び/又は裏面には、隣接する層との接着性を高めるために、必要に応じてコロナ放電処理を行うこともできる。コロナ放電処理の方法・条件は、公知の方法に従えば良い。
【0042】
また、基材シートの表面(おもて面)及び/又は裏面には、プライマー層を形成することもできる。プライマー層を形成するための材料としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ニトロセルロース樹脂等の樹脂類のほか、アルキルチタネート、エチレンイミン等の化合物も使用することができる。特に、プライマー層としては、2液硬化型のウレタン系樹脂の使用が好ましい。イソシアネートとしてヘキサメチレンジイソシアネート(HMDI)等の脂肪酸イソシアネート(脂肪族イソシアネート)、ポリオールとしてアクリルポリオールをそれぞれ使用する場合には、より優れた耐候性、密着性等が得られるので好ましい。
【0043】
プライマー層の形成は、これらをそのままで又は溶媒に溶解若しくは分散させた状態で用い、公知の印刷方法、塗布方法等に従ってプライマー層を形成することができる。
【0044】
絵柄層
絵柄層(印刷層)は、木目、節目等の天然素材が有する柄のほか、文字、記号、図等も表わすことができる。
【0045】
絵柄層は、着色材及び樹脂バインダーを含むインキを用いて形成できる。バインダーとしては、例えば塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を用いることができ、これらの1種又は2種以上を使用することができる。着色材としては、公知のもの又は市販品が使用できる。具体的には、前記の着色材を用いることができる。
【0046】
絵柄層の形成は、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印刷、転写シートからの転写印刷等の公知の印刷法により好適に実施することができる。例えば、絵柄層が木目の基調色になるように、顔料(又は染料)添加により着色されたインキを用いて印刷すれば良い。
【0047】
接着剤層
本発明化粧シートでは、好ましくは絵柄層と透明性樹脂層との間に接着剤層が介在する。
【0048】
接着剤層で使用する接着剤は、公知又は市販の接着剤の中から、絵柄層又は透明性樹脂層を構成する成分等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂のほか、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0049】
この中でも、本発明では、耐熱性等をより高めることができるという点でウレタン系樹脂接着剤が好ましい。ウレタン系樹脂接着剤は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とする2液硬化型ウレタン樹脂が挙げられる。
【0050】
上記ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するものである。例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール等が用いられる。
【0051】
また、上記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート類、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環族)イソシアネートが用いられる。また、上記各種イソシアネートの付加体又は多量体を用いることもできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネートの3量体等が挙げられる。
【0052】
なお、必要に応じ、接着面に、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を施すこともできる。
【0053】
接着方法としては、用いる接着剤の種類等に応じて公知の方法に従って実施すれば良い。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂を用い、溶融押出(エクストルージョンコート法)で絵柄層上に塗工する方法、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂にイソシアネート、アミン等の架橋剤、メチルエチルケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、アザビスイソブチロニトリル等の重合開始剤、ナフテン酸コバルト、ジメチルアニリン等の重合促進剤等を必要により添加した接着剤を塗工し、ドライラミネートする方法を採用することができる。また、本発明では、熱圧着できる接着剤を使用し、熱圧着によって絵柄層と透明性樹脂層とを積層することもできる。
【0054】
なお、本発明では、必要に応じ、コロナ放電処理、プラズマ処理、脱脂処理、表面粗面化処理等の公知の易接着処理を接着面に施すこともできる。
【0055】
接着剤層の厚さは、表面保護層、使用する接着剤の種類等に応じて異なるが、通常は0.1〜30μm程度とすれば良い。
【0056】
表面保護層
本発明において、表面保護層は最表面層として設けられている。表面保護層は、透明である限り、着色されていても良い。また、絵柄層が視認できる範囲内で半透明であっても良い。表面保護層の形成により、化粧シート表面の傷のつきやすさをカバーし、耐擦傷性を向上させることができる。
【0057】
本発明では、表面保護層として電離放射線硬化型樹脂を用いる。電離放射線硬化型樹脂を使用することによって、より優れた耐擦傷性、耐候性等を得ることができる。
【0058】
電離放射性硬化型樹脂は、公知のもの又は市販品を使用することができる。具体的には、分子中に重合性不飽和結合又はエポキシ基をもつプレポリマー、オリゴマー及び単量体の少なくとも1種を含む組成物を用いる。
【0059】
前記のプレポリマー又はオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルメタアクリレート、ポリエーテルメタアクリレート、ポリオールメタアクリレート、メラミンメタアクリレート等のメタアクリレート類、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリオールアクリレート、メラミンアクリレート等のアクリレート類等がある。
【0060】
単量体としては、スチレン、αーメチルスチレン等のスチレン系単量体、アクリル酸メチル、2ーエチルヘキシルアクリレート、アクリル酸メトキシエチル、アクリル酸ブトキシエチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸フェニル等のアクリル酸エステル類、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸プロピル、メタアクリル酸エトキシメチル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸ラウリル等メタアクリル酸エステル類がある。
【0061】
不飽和酸の置換アミノアルコ−ルエステルとしては、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、メタアクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)エチル、アクリル酸−2−(N,N−ジベンジルアミノ)メチル、アクリル酸−2−(N,N−ジエチルアミノ)プロピル等がある。
【0062】
その他にも、アクリルアミド、メタアクリルアミド等の不飽和カルボン酸アミド、エチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオベンジルグリコールジアクリレート、1,6ーヘキサンジオールジアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート等の化合物、ジプロピレングリコールジアクリレート、エチレングリコールアクリレート、ジエチレングリコールジメタアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート等の多官能性物、及び/又は、分子中に2個以上のチオール基をもつポリチオール化合物、例えばトリメチロールプロパントリチオグリコレート、トリメチロールプロパントリチオプロピオレート、ジペンタエリスリトールテトラチオグリコール等がある。また、3官能基以上のアクリレート系単量体には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタアクリレート等がある。
【0063】
電離放射線硬化型樹脂による表面保護層の形成方法も公知の方法に従えば良く、例えば電離放射線硬化型樹脂を含む組成物(塗料)を調製し、これを用いて塗膜を形成し、公知の使用条件(175keV及び5Mrad(50kGy))で電子線照射して塗膜を架橋硬化させれば良い。電離放射線硬化型樹脂を使用する場合は、予め下地としてプライマー層(特にウレタン系樹脂によるプライマー層)を透明性樹脂層上に設けることが望ましい。
【0064】
表面保護層(すなわち、化粧シートの最表面)は、サンドブラスト状模様を有することにより、所定のRz(10μm以上、好ましくは10〜25μm)を有する。
【0065】
木目導管模様凹部内には、着色インキを充填するワイピング加工を施しても良い。
【0066】
ワイピング加工とは、エンボス加工で設けた凹部にドクターブレードで表面をかきながらインキを充填する加工をいう。ワイピングインキとしては、通常は2液硬化型のウレタン樹脂をバインダーとするインキを用いることができる。ワイピング加工では、特に木目導管溝凹凸に対して行うことによって、より実際の木目に近い意匠を表現することにより商品価値を高めることができる。
【0067】
被着材
本発明化粧シートが適用される被着材は、限定的でなく、公知の化粧シートと同様のものを用いることができる。例えば、木質材、金属、セラミックス、プラスチックス、ガラス等が挙げられる。特に、本発明化粧シートは、木質材に好適に使用することができる。木質材としては、具体的には、杉、檜、欅、松、ラワン、チーク、メラピー等の各種素材から作られた突板、木材単板、木材合板、パティクルボード、中密度繊維板(MDF)等が挙げられる。
【0068】
被着材への積層
本発明の化粧シートは、各種の被着材等に積層され、化粧板として使用される。具体的には、基材シートでは、その表面(おもて面)には絵柄層等が順次積層され、その裏面には被着材が積層される。
【0069】
積層方法は限定的でなく、例えば接着剤により化粧シートを被着材に貼着する方法等を採用することができる。接着剤は、被着材の種類等に応じて公知の接着剤から適宜選択すれば良い。例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、アイオノマー等のほか、ブタジエン・アクリルニトリルゴム、ネオプレンゴム、天然ゴム等が挙げられる。
【0070】
このようにして製造された化粧板は、例えば、壁、天井、床等の建築物の内装材、窓枠、扉、手すり等の建具の表面化粧板、家具又は弱電、OA機器等のキャビネットの表面化粧板等に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0071】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確に説明する。ただし、本発明は、実施例の範囲に限定されない。
【0072】
実施例1〜9及び比較例1〜5
図1に示す構成を有する化粧シートを作製した。着色材により着色した基材シート1として、ポリプロピレン系樹脂フィルム(厚み60μm)を用意した。この表面及び裏面にコロナ放電処理を施した後、表面にウレタン系樹脂をバインダーとしたプライマー層をグラビア印刷により形成した。次に、2液硬化型ウレタン樹脂をバインダーとするインキをグラビア印刷にて印刷層2(厚み2μm)を形成した。一方、裏面には、ウレタン系樹脂をバインダーとしたプライマー層をグラビア印刷により形成した。
【0073】
次いで、前記の絵柄層の上に2液硬化型ウレタン樹脂からなる塗液を塗工して接着剤層(厚み3μm)を形成した。その上から、ポリプロピレン系熱可塑性エラストマーをTダイで溶融押し出し塗工することによって、透明性樹脂層3(厚み80μm)を形成した。透明性樹脂層の上に、2液硬化型ウレタン系樹脂を塗工し、プライマー層(厚さ2μm)を形成した。
【0074】
次に、ウレタンアクリレート系の電離放射線硬化型樹脂をグラビアコートにて塗膜を形成した後、175keV及び5Mrad(50kGy)の条件で電子線を照射して塗膜を架橋硬化させることにより、表面保護層4(厚さ5μm又は15μm)を形成した。
【0075】
最後に、表面保護層の側を赤外線非接触方式のヒーターで加熱し、表面保護層及び透明性樹脂層を柔らかくした後、直ちに表面保護層の面から熱圧によるエンボス加工を行い、図2(気泡模様)又は図3(雲形模様)を賦形することにより、所定の化粧シートを得た。なお、表面保護層の厚みが5μmのものをa、15μmのものをbと表記する。
【0076】
エンボス版は、市販のエンボスシリンダーを用いて、実施例1〜8及び比較例1〜4においては公知の腐食法に従って図2〜図3のようなエンボス模様を付与した後、クロムメッキを施して仕上げ、作製した。他方、実施例9及び比較例5においては公知のサンドブラスト処理により、作製した。
【0077】
試験例1
各実施例で得られた化粧シートの下記の物性についてそれぞれ調べた。その結果を表1に示す。なお、測定方法は、下記のようにして実施した。
(1)表面粗さ
十点平均粗さ(Rz)に従って測定した。
(2)耐傷性
ホフマンスクラッチ試験により調べた。具体的には、ホフマンスクラッチテスター(カードナー社製)を用いて測定した。
(3)耐擦傷性
スチールウール(粗さ#0000)を荷重300g/cm2でラビングすることにより
評価した。「○」はほとんど変化がないもの、「△」は少し変化が見られるもの、「×」はかなり傷が目立つものと評価した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1の結果より、実施例に示す表面保護層厚みaの各シートの耐傷性は300g以上と高く、比較例1、2及び5の従来品(約200g程度)よりも優れた性能であると分かる。同様に表面保護層厚みbの各シートの耐傷性は600g以上と高く、比較例3、4の従来品(約500g程度)よりも優れた性能と分かる。また、耐擦傷性の観点からは擦り傷が生じ難いものであると分かる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施例で作製された化粧シートの構成を示す図である。
【図2】実施例で使用されたエンボス版の模様を示す図である。
【図3】実施例で使用されたエンボス版の模様を示す図である。
【符号の説明】
【0081】
1 基材シート
2 絵柄層
3 透明性樹脂層
4 表面保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被着材に積層して用いるための化粧シートであって、化粧シート表面の十点平均粗さRzが10μm以上である化粧シート。
【請求項2】
Rzが10μm以上25μm以下である、請求項1に記載の化粧シート。
【請求項3】
最表面層として、電離放射線硬化型樹脂からなる表面保護層を少なくとも有する、請求項1又は2に記載の化粧シート。
【請求項4】
化粧シートは、被着材に対して少なくとも基材シート、絵柄層、透明性樹脂層及び表面保護層を順に有する、請求項3に記載の化粧シート。
【請求項5】
透明性樹脂層と表面保護層との間にプライマー層が形成されている、請求項4に記載の化粧シート。
【請求項6】
透明性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂である、請求項4又は5に記載の化粧シート。
【請求項7】
透明性樹脂層が、ポリオレフィン系樹脂の溶融押出により隣接する層上に塗工されて形成されている、請求項4〜6のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項8】
絵柄層と透明性樹脂層との間に接着剤層が介在する、請求項4〜7のいずれかに記載の化粧シート。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の化粧シートの表面保護層が最表面層となるように当該シートが被着材上に積層されてなる化粧板。
【請求項10】
被着材が、木質材料である、請求項9に記載の化粧板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−123543(P2006−123543A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−288974(P2005−288974)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】