説明

化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法ならびにそれに用いる目地形成部材

【課題】施工が極めて容易で良好な外観のコンクリート構造物を得ることができる化粧型枠を提供する。
【解決手段】コンクリート材料3が打設されてコンクリート構造物3aの表面に模様を転写するための化粧型枠1であって、化粧型枠1同士の継目を形成する端辺部同士が継ぎ合わされる部分に、コンクリート中に埋設されてコンクリート構造物3aの表面に目地状部12を形成する目地形成部材2が着脱可能に取り付けられる目地形成部材取付部15が形成されるように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の基礎等のコンクリート構造物の表面に、凹凸模様を転写する化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法ならびにそれに用いる目地形成部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の土台となる基礎は、建物の外部に露出する表面が平滑なものがつくられていた。このような表面が平滑な基礎では、変化に欠しく見栄えが悪くなりがちであった。このため、コンクリートの基礎を打設したのち、その表面に、モルタルを吹きつけて凹凸模様を付与したり、タイル貼りを行い、基礎の見栄えを良くすることが行われてきた。ところが、上記のようなモルタル塗布やタイル貼りを施した基礎では、それだけ施工工程が増え、コスト高になるうえ、工期も長くなるという問題があった。
【0003】
そこで、基礎の表面に凹凸模様を形成させるものとして、例えば、下記の特許文献1に開示されたコンクリート型枠用模様板が考案され、実施されている。このコンクリート型枠用模様板は、表裏面に凹凸模様や溝を形成させる突条を有する薄板からなる。そして、所定間隔を隔てて対峙させた型枠の、コンクリート構造物の外側面に位置する型枠の内面に並べて沿わせ、上記両型枠間の空間にコンクリートを打設することにより、基礎の表面に、上記模様板の凹凸模様や溝を転写させるものである。
【0004】
ところが、上記模様板では、コンクリート製の基礎の表面に直接凹凸模様や溝を形成するため、溝に沿ってクラックが入りやすい。このようなクラックが生じると、風雨や塵芥の侵入によって黒ずんだり周囲に目立つしみができたりして外観上好ましくない。また、上記模様板では、コンクリートの表面に直接溝が形成されるだけであるため、例えば、目地状の模様を形成してレンガ積みや石積み風の外観をだすためには、表面に形成された溝にあらためて漆喰等を注入する必要があり、施工工程が増えてコスト高になるうえ、工期も長くなるという問題があった。
【0005】
また、上記模様板では、型枠内面に複数の模様板を並べて沿わせなければならないため、隣接する模様板の間に継ぎ目が生じるのが避けられない。このように、模様板同士の間に継ぎ目があると、温度変化やコンクリート材料の養生硬化の過程で生じる伸縮により、上記継ぎ目が広くなり、広がった継ぎ目が基礎等のコンクリート構造物の表面に転写されてしまう。このような継ぎ目が表面に形成されると、美観上好ましくないうえ、継ぎ目部分をはつりや左官作業等で修復する極めて煩雑な後処理作業の必要が生じるという問題があった。
【0006】
そこで、コンクリート構造物に継ぎ目形成させずに目地状の模様を形成することができるものとして下記の特許文献2に示す化粧シートが開示されている。
【特許文献1】特開平8−218625号
【特許文献2】特開2002−115394号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記化粧シートでは、コンクリート型枠を組み立てる施工を行なったのち、その型枠の内面に化粧シートを沿わせて貼設する施工を行なわなければならず、施工の手間がかかっていた。また、凹凸模様の模様転写面を形成しただけの型枠では、型枠同士を継ぎ合わせたときに継目まで転写されてしまい、結果的に良好な外観が得られないという問題がある。
【0008】
一方、コンクリート構造物に目地状の溝を形成した場合、目地の底部には雨水の浸入を防止するためにシーリング等を施工したりブチルゴムシート等を貼り付けたりすることが行なわれている。
【0009】
ところが、コンクリートを打設して養生硬化させた後に改めてシーリングを打つ作業を行なわねばならないうえ、シーリングにも養生期間が必要で、それだけ工程が増え、工期も長くなるという問題がある。また、シーリングを行なうにしても適切に施工を行なわないと、施工後のシーリングに膨れや切れが発生することがあり、作業に熟練を要することも問題になっている。さらに、屋外での施工となるため、天候によっては作業ができず、工期が延長してしまうおそれがあり、工期が不安定になってしまう問題もある。また、ブチルゴムシートを使用する場合は、ブチルゴムシート自体が高価なものであるため、コストアップの要因となっている。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、施工が極めて容易で、良好な外観のコンクリート構造物を得ることができる化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法ならびにそれに用いる目地形成部材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明の化粧型枠は、コンクリート材料が打設されてコンクリート構造物の表面に模様を転写するための化粧型枠であって、型枠同士の継目を形成する端辺部同士が継ぎ合わされる部分に、コンクリート中に埋設されてコンクリート構造物の表面に目地状部を形成する目地形成部材が着脱可能に取り付けられる目地形成部材取付部が形成されるように構成されたことを要旨とする。
【0012】
また、本発明のコンクリート構造物の製造方法は、コンクリート材料を打設してコンクリート構造物の表面に模様を転写するコンクリート構造物の製造方法であって、模様形成面が形成された化粧型枠同士の継目を形成する端辺部同士が継ぎ合わされる部分に、コンクリート中に埋設される目地形成部材が取り付けられる目地形成部材取付部を形成し、上記化粧型枠を継ぎ合わせるとともに、上記継目部分に形成された目地形成部材取付部に目地形成部材を着脱可能に取り付け、この状態でコンクリート材料を打設してコンクリート構造物の表面に凹凸模様を転写するとともに、目地形成部材が埋設された目地状部を形成することを要旨とする。
【0013】
また、本発明の目地形成部材は、コンクリート材料が打設される際にコンクリート中に埋設されてコンクリート構造物の表面に目地状部を形成する目地形成部材であって、当該目地形成部材を埋設するコンクリート材料が養生硬化によって収縮したときに、当該収縮によってコンクリート材料と密着して止水する止水部材が長手方向にわたって形成されていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
すなわち、本発明の化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法では、化粧型枠同士を継ぎ合わせるよう組み立てて施工すると継目部分に目地形成部材取付部が形成される。この目地形成部材取付部にコンクリート中に埋設されてコンクリート構造物の表面に目地状部を形成する目地形成部材を着脱可能に取り付け、この状態でコンクリート材料を打設する。そして、養生硬化させたのち化粧型枠を除去すると、コンクリート構造物の表面部分に目地形成部材が埋設された状態で残り、その部分に目地状の模様が形成される。このように、施工は化粧型枠を組み合わせ、継ぎ合わせ部に形成された目地形成部材取付部に目地形成部材を取り付ければ完了するため、従来に比べて格段に施工作業が簡略化され、作業性が大幅に向上され、コストが削減されるうえ工期も短縮される。しかも、得られたコンクリート構造物には継目が転写されることなく、その部分には目地形成部材が埋設された状態で残るため、そのままで美しい外観のコンクリート構造物を得ることができる。また、コンクリート中に目地形成部材が埋設された状態で残るため、コンクリートの養生硬化等の過程で生じうるクラックは、目地形成部材が埋設された内部に生じやすく、たとえクラックが入ったとしても目地形成部材に隠れてほとんど目立たなくなる。したがって、従来のようにクラックの黒ずみが目立つようなことがほとんどなく、外観が著しく改善される。
【0015】
本発明の化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法において、上記端辺部同士の間の模様転写面に、目地形成部材が着脱可能に取り付けられる目地形成部材取付部が形成されている場合には、クラックを吸収する目地形成部材の埋設間隔を短縮し、コンクリート構造物の表面にクラックが現れることを防止し、外観を著しく改善する。
【0016】
本発明の化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法において、上記目地形成部材取付部は、型枠の両端辺において模様転写面側に形成された突条から構成され、型枠の端辺部同士が継ぎ合わされて突き合わされた2つの突条を挟持するよう目地形成部材が取り付けられるようになっている場合には、化粧型枠の端辺部同士の継目が、目地形成部材を取り付けることにより完全に隠れるため、コンクリート構造物の表面に継目が転写されることを完全に防止する。また、目地形成部材を突き合わされた2つの突条を挟持するよう取り付ることにより、化粧型枠同士が継ぎ合わされた部分のずれや離間を防止し、施工された化粧型枠の位置修正等の作業が省略するとともに、コンクリート構造物の外観の悪化を防止する。
【0017】
本発明の化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法において、上記目地形成部材は、当該目地形成部材を埋設するコンクリート材料が養生硬化によって収縮したときに、当該収縮によってコンクリート材料と密着して止水する止水部材が長手方向にわたって形成されている場合には、目地形成部材をコンクリート中に埋設してコンクリート材料が養生硬化することにより、コンクリート材料が収縮して止水部材に密着し、目地形成部材の止水部材とコンクリートとの間に隙間がほとんどできず、雨水等がほとんど浸入しなくなる。このように、コンクリートを打設して養生硬化させれば止水が完了するため、従来のように、その後に改めて熟練を要するシーリング作業を行う必要がなく、工程が少なくなって工期も大幅に短縮され、天候によって工期が延長されることもない。また、ブチルゴムシートのような高価な部品を使用する必要もないことから、コストアップにもならない。
【0018】
本発明の目地形成部材では、当該目地形成部材を埋設するコンクリート材料が養生硬化によって収縮したときに、当該収縮によってコンクリート材料と密着して止水する止水部材が長手方向にわたって形成されている。このため、目地形成部材をコンクリート中に埋設してコンクリート材料が養生硬化することにより、コンクリート材料が収縮して止水部材に密着し、目地形成部材の止水部材とコンクリートとの間に隙間がほとんどできず、雨水等がほとんど浸入しなくなる。このように、コンクリートを打設して養生硬化させれば止水が完了するため、従来のように、その後に改めて熟練を要するシーリング作業を行う必要がなく、工程が少なくなって工期も大幅に短縮され、天候によって工期が延長されることもない。また、ブチルゴムシートのような高価な部品を使用する必要もないことから、コストアップにもならない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
つぎに、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0020】
図1〜4は、本発明の化粧型枠の一実施の形態を示す。この化粧型枠1は、コンクリート材料3(図7参照)が打設されてコンクリート構造物3aの表面に凹凸模様面11(いずれも図8参照)を転写するための化粧型枠1である。この例では、上記化粧型枠1は、長方形状を呈しており、短辺同士を継ぎ合わせて横長に施工してコンクリート構造物として住宅の基礎を形成するためのものである。
【0021】
上記化粧型枠1は、片面にコンクリート構造物3aの表面に凹凸模様面11を転写するための模様転写面5が形成されている。上記化粧型枠1は、型枠同士の継目を形成する端辺部同士が継ぎ合わされる部分、すなわち両端辺の模様転写面5側に、それぞれ分割突条6a,6bが短辺の全長にわたって形成されている。
【0022】
また、上記化粧型枠1の分割突条6a,6bの間には、上記分割突条6a,6bが形成される端辺部同士の間の模様転写面5に突条6が形成されている。上記突条6は、後述する目地形成部材2が着脱可能に取り付けられる本発明の目地形成部材取付部15として機能するものである。また、上記化粧型枠1が長手方向に継ぎ合わされたときに、突き合わせられた2つの分割突条6a,6bが合わさって、目地形成部材2を取り付けるための目地形成部材取付部15が形成されるようになっている。
【0023】
また、上記化粧型枠1の分割突条6a,6bの内側に隣接する細長い帯状部分、および突条6の両側に隣接する細長い帯状部分には、凹凸状の模様転写面5が形成されるのではなく、それぞれ後述する目地形成部材2のコ字状の端面17が当接する当接面16が形成されている。これにより、分割突条6a,6bおよび突条6による目地形成部材取付部15に目地形成部材2が取り付けられた状態で目地形成部材2の取付姿勢が安定し、コンクリート構造物3aに目地形成部材2が埋設されたときの埋設姿勢が安定する。したがって、コンクリート構造物3aに形成される目地状部12の外観状態が均一に揃い、美観的に優れたものとなる。
【0024】
また、上記化粧型枠1の裏面(模様転写面5の反対面)には、両短辺および両短辺の中間部にそれぞれ短辺の全長に渡って延びる補強用の縦リブ8a,8b,8cが形成されている。さらに、上記化粧型枠1の裏面には、両長辺および両長辺の中間部にそれぞれ長辺の全長に渡って延びる補強用の横リブ7a,7b,7cが形成されている。
【0025】
上記両端の縦リブ8a,8bには、複数の化粧型枠1を短辺同士を突き合わせるように継ぎ合わせたときに合致するよう貫通穴9a,9bが形成されている。この貫通穴9a,9bは、複数の化粧型枠1を短辺同士を突き合わせるように継ぎ合わせた際に両化粧型枠1が外れないように結合部材10を通すための穴である。
【0026】
図5は、目地形成部材2の一例を示す図である。
【0027】
この目地形成部材2は、断面略コ字状に形成され、コ字状の内側が目地形成部材取付部15を挟持するよう取り付けられるようになっている。また、型枠の端辺部同士が継ぎ合わされて突き合わされた2つの分割突条6a,6bからなる突条6を挟持して取り付けられるようになっている。
【0028】
したがって、詳細は後述するが、この例では、上記目地形成部材2は、戸建て建築の基礎のような壁状のコンクリート構造物の表面部に埋設されて、コ字状の内側が縦溝状の目地状部12(図8参照)を形成するようになっている。この状態で、目地形成部材2が埋設されるコンクリート構造物は左右方向に延びる壁状であり、コ字状の内側が縦溝状の目地状部12を形成したときに、養生硬化により主として左右方向に収縮する。
【0029】
また、上記目地形成部材2のコ字状の両外側においてコンクリート材料内に埋設される部分には、両外側に突出するように延びる延設部18が長手方向の全長にわたって形成され、上記延設部18の両先端縁には、コ字状の両壁部と略平行となるように止水部材14が長手方向の全長にわたって形成されている。上記止水部材14は、延設部18の両先端縁から埋設するコンクリート構造物の表面側に向かって延びるように形成されている。上記止水部材14および延設部18は、コンクリート材料内に打ち込まれたときに目地形成部材2の抜けを防止する抜け止め部材としても機能する。
【0030】
上記構造により、目地形成部材2を埋設するコンクリート材料が養生硬化によって収縮したときに、上記止水部材14は、上記収縮によってコンクリート材料と密着して止水するよう機能する。
【0031】
上記目地形成部材2は、コ字状の内側が突条6を挟持するように化粧型枠1の模様転写面5側に取り付けられた状態で打設されたコンクリート材料3中に埋設される。このとき、上記目地形成部材2のコ字状の背面側に複数の縦溝19が形成されていることから、コ字状が撓みやすく、目地形成部材2を突条6に取り付けやすいようになっている。そして、化粧型枠1が取り外された後に、目地形成部材2のコ字状の内側が目地状部12(図8参照)に形成される。
【0032】
図6は、複数の化粧型枠1が長手方向に継ぎ合わせられ、さらに各突条6に目地形成部材2が取り付けられた状態を示す。
【0033】
このように、上記化粧型枠1が長手方向に継ぎ合わされた状態で、突き合わせられた2つの分割突条6a,6bが合わさって、目地形成部材2を取り付けるための突条6が形成される。また、分割突条6a,6bの間にも突条6が形成されている。これにより、化粧型枠1を長手方向に継ぎ合わせたときに、複数の目地形成部材取付部15が所定間隔で形成されるようになっている。すなわち、上記突条6は、コンクリート中に埋設されてコンクリート構造物3aの表面に目地状部12を形成する目地形成部材2が着脱可能に取り付けられる本発明の目地形成部材取付部15として機能する。
【0034】
そして、隣接する化粧型枠1の突き合わせられた分割突条6a,6bからなる突条6を挟持するように目地形成部材2が取り付けられている。これにより、コンクリート材料3を打設したときに、隣接する化粧型枠1の模様転写面5が位置ずれを起すのを防止するとともに、隣接する化粧型枠1同士の継目がコンクリート構造物3aに転写されてしまうのが防止される。
【0035】
図7は、上記化粧型枠1を用いてコンクリート材料3を打設した状態を示す。
【0036】
長手方向に継ぎ合わされるとともに目地形成部材2が取り付けられた化粧型枠1の模様転写面5側に、所定間隔を隔てて模様転写面5および突条6のない型枠4が継ぎ合わされて配置されている。型枠4同士は結合部材10によって連結されている。そして、化粧型枠1と型枠4との間の隙間にコンクリート材料3が打設される。
【0037】
そして、所定時間の養生硬化の後、図8に示すように、化粧型枠1および型枠4を外し、コンクリート構造物3aを得る。上記コンクリート構造物3aには、模様転写面5の凹凸模様が転写された凹凸模様面11が形成されるとともに、所定間隔で目地形成部材2が埋設されることによる目地状部12が形成される。
【0038】
図9は、上記目地形成部材2を埋設するコンクリート材料3が養生硬化によって収縮した状態を示す図である。当該収縮は壁状のコンクリート構造物3aの左右方向すなわち矢印A方向に生じるので、両止水部材14の内側に存在するコンクリートが矢印Bで示すように止水部材14の内面を押すように密着し、この部分の隙間が限りなく小さくなり、収縮によって仮に目地形成部材2の両側に隙間20が出来たとしても、上記止水部材14の内面がコンクリートと密着することによって水の浸入が防止される。
【0039】
以上のように、本発明の化粧型枠およびコンクリート構造物の製造方法によれば、化粧型枠1同士を継ぎ合わせるよう組み立てて施工すると継目部分に目地形成部材取付部15が形成される。この突条6にコンクリート中に埋設されてコンクリート構造物3aの表面に目地状部12を形成する目地形成部材2を着脱可能に取り付け、この状態でコンクリート材料3を打設する。そして、養生硬化させたのち化粧型枠1を除去すると、コンクリート構造物3aの表面部分に目地形成部材2が埋設された状態で残り、その部分に目地状部12が形成される。このように、施工は化粧型枠1を組み合わせ、継ぎ合わせ部に形成された目地形成部材取付部15に目地形成部材2を取り付ければ完了するため、従来に比べて格段に施工作業が簡略化され、作業性が大幅に向上され、コストが削減されるうえ工期も短縮される。しかも、得られたコンクリート構造物3aには継目が転写されることなく、その部分には目地形成部材2が埋設された状態で残るため、そのままで美しい外観のコンクリート構造物3aを得ることができる。また、コンクリート中に目地形成部材2が埋設された状態で残るため、コンクリートの養生硬化等の過程で生じうるクラックは、目地形成部材2が埋設された内部に生じやすく、たとえクラックが入ったとしても目地形成部材2に隠れてほとんど目立たなくなる。したがって、従来のようにクラックの黒ずみが目立つようなことがほとんどなく、外観が著しく改善される。
【0040】
また、上記端辺部同士の間の模様転写面5に、目地形成部材2が着脱可能に取り付けられる目地形成部材取付部15が形成されているため、クラックを吸収する目地形成部材2の埋設間隔を短縮し、コンクリート構造物3aの表面にクラックが現れることを防止し、外観を著しく改善する。
【0041】
また、上記目地形成部材取付部15は、化粧型枠1の両端辺において模様転写面側に形成された分割突条6a,6bから構成され、型枠4の端辺部同士が継ぎ合わされて突き合わされた2つの分割突条6a,6bを挟持するよう目地形成部材2が取り付けられるようになっている場合には、化粧型枠1の端辺部同士の継目が、目地形成部材2を取り付けることにより完全に隠れるため、コンクリート構造物3aの表面に継目が転写されることを完全に防止する。また、目地形成部材2を突き合わされた2つの分割突条6a,6bを挟持するよう取り付ることにより、化粧型枠1同士が継ぎ合わされた部分のずれや離間を防止し、施工された化粧型枠1の位置修正等の作業が省略するとともに、コンクリート構造物3aの外観の悪化を防止する。
【0042】
また、上記目地形成部材2は、当該目地形成部材2を埋設するコンクリート材料3が養生硬化によって収縮したときに、当該収縮によってコンクリート材料3と密着して止水する止水部材14が長手方向にわたって形成されているため、目地形成部材2をコンクリート中に埋設してコンクリート材料3が養生硬化することにより、コンクリート材料3が収縮して止水部材14に密着し、目地形成部材2の止水部材14とコンクリートとの間に隙間がほとんどできず、雨水等がほとんど浸入しなくなる。このように、コンクリートを打設して養生硬化させれば止水が完了するため、従来のように、その後に改めて熟練を要するシーリング作業を行う必要がなく、工程が少なくなって工期も大幅に短縮され、天候によって工期が延長されることもない。また、ブチルゴムシートのような高価な部品を使用する必要もないことから、コストアップにもならない。
【0043】
図10は、本発明の第2の実施形態を示す。
【0044】
この例では、化粧型枠1の模様転写面5側の一端部に、模様転写面5側に突出するとともに側面方向にも突出するよう目地形成部材取付部15が形成されている。そして、化粧型枠1の模様転写面5側の他端部には、上記目地形成部材取付部15を受ける受け面13が形成されている。
【0045】
複数の化粧型枠1を継ぎ合わせるときには、隣接する化粧型枠1の受け面13に目地形成部材取付部15が乗るように継ぎ合わせ、目地形成部材取付部15に目地形成部材2を取り付ける。これにより、化粧型枠1同士の継目が転写されてしまうのを防止している。なお、この例において、目地形成部材取付部15と受け面13との間に上述した突条6を形成させることも可能である。それ以外は、上記実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。
【0046】
図11は、本発明の目地形成部材の第2例を示す図である。この例では、コ字状の両側に設けられた延設部18にそれぞれ複数(図示した例では3つ)の止水部材14を設け、止水効果を高くしたものである。それ以外は、上記実施形態と同様であり、同様の作用効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態の化粧型枠を示す背面図である。
【図2】上記化粧型枠を示す横断面図である。
【図3】上記化粧型枠を示す正面図である。
【図4】上記化粧型枠を示す側面図である。
【図5】目地形成部材の一例を示す斜視図である。
【図6】上記化粧型枠を施工した状態を示す説明図である。
【図7】上記化粧型枠を用いてコンクリート材料を打設した状態を示す図である。
【図8】上記化粧型枠を用いてコンクリート構造物を形成した状態を示す図である。
【図9】目地形成部材を埋設するコンクリート材料が養生硬化によって収縮した状態を示す図である。
【図10】本発明の第2実施の形態の化粧型枠を示す図である。
【図11】本発明の目地形成部材の第2例を示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1:化粧型枠
2:目地形成部材
3:コンクリート材料
3a:コンクリート構造物
4:型枠
5:模様転写面
6:突条
6a,6b:分割突条
7a,7b,7c:横リブ
8a,8b,8c:縦リブ
9a,9b:貫通穴
10:結合部材
11:凹凸模様面
12:目地状部
13:受け面
14:止水部材
15:目地形成部材取付部
16:当接面
17:端面
18:延設部
19:縦溝
20:隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート材料が打設されてコンクリート構造物の表面に模様を転写するための化粧型枠であって、型枠同士の継目を形成する端辺部同士が継ぎ合わされる部分に、コンクリート中に埋設されてコンクリート構造物の表面に目地状部を形成する目地形成部材が着脱可能に取り付けられる目地形成部材取付部が形成されるように構成されたことを特徴とする化粧型枠。
【請求項2】
上記端辺部同士の間の模様転写面に、目地形成部材が着脱可能に取り付けられる目地形成部材取付部が形成されている請求項1記載の化粧型枠。
【請求項3】
上記目地形成部材取付部は、型枠の両端辺において模様転写面側に形成された突条から構成され、型枠の端辺部同士が継ぎ合わされて突き合わされた2つの突条を挟持するよう目地形成部材が取り付けられるようになっている請求項1または2記載の化粧型枠。
【請求項4】
上記目地形成部材は、当該目地形成部材を埋設するコンクリート材料が養生硬化によって収縮したときに、当該収縮によってコンクリート材料と密着して止水する止水部材が長手方向にわたって形成されている請求項1〜3のいずれか一項に記載の化粧型枠。
【請求項5】
コンクリート材料を打設してコンクリート構造物の表面に模様を転写するコンクリート構造物の製造方法であって、模様形成面が形成された化粧型枠同士の継目を形成する端辺部同士が継ぎ合わされる部分に、コンクリート中に埋設される目地形成部材が取り付けられる目地形成部材取付部を形成し、上記化粧型枠を継ぎ合わせるとともに、上記継目部分に形成された目地形成部材取付部に目地形成部材を着脱可能に取り付け、この状態でコンクリート材料を打設してコンクリート構造物の表面に凹凸模様を転写するとともに、目地形成部材が埋設された目地状部を形成することを特徴とするコンクリート構造物の製造方法。
【請求項6】
コンクリート材料が打設される際にコンクリート中に埋設されてコンクリート構造物の表面に目地状部を形成する目地形成部材であって、当該目地形成部材を埋設するコンクリート材料が養生硬化によって収縮したときに、当該収縮によってコンクリート材料と密着して止水する止水部材が長手方向にわたって形成されていることを特徴とする目地形成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−19458(P2009−19458A)
【公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−184537(P2007−184537)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(596156129)株式会社ミツマル (2)
【出願人】(390037154)大和ハウス工業株式会社 (946)
【出願人】(507238735)昇信化成株式会社 (1)
【Fターム(参考)】