説明

化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体および、それを含む化粧料

【課題】電解質の存在下でも高い粘度と透過率を有する中和粘稠液が得られ、化粧料に用いれば、塗布したときの伸びに優れる化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体、およびそれを含む化粧料を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸100重量部と、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5重量部と、0〜0.1重量部のエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させて得られるカルボキシル基含有水溶性重合体であって、当該重合体の1重量%中和粘稠液100重量部に対して0.25重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、透過率が90%以上であり、0.25〜5重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、最高粘度を示した中和粘稠液について、次式で示すTI値が6.0以上である化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体。
TI値=せん断速度100(1/s)の粘度÷せん断速度1000(1/s)の粘度

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料の増粘剤として好適に使用できる化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体および、それを含む化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料の増粘剤としては、例えば、キサンタンガム等の天然物系、ヒドロキシエチルセルロース等の半合成物系およびカルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等の合成物系等が幅広く使用されている。特に、カルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等のカルボキシル基含有水溶性重合体は、少量の使用量で優れた増粘性を示し、化粧品等の使用感をコントロールできることから、種々の化粧料に使用されている。
【0003】
カルボキシル基含有水溶性重合体としては、アクリル酸と架橋剤としてのペンタエリスリトールアリルエーテルとを特定の混合溶媒中で反応させたカルボキシビニルポリマー(特許文献1参照)や、特定量のオレフィン系不飽和カルボン酸単量体と特定量の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が10〜30)とを反応させた共重合体(特許文献2参照)、特定量のオレフィン系不飽和カルボン酸単量体と特定量の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が10〜30)と架橋剤とを反応させた共重合体(特許文献3参照)、オレフィン系不飽和カルボン酸単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が8〜30)とを反応させた共重合体(特許文献4参照)等のアルキル変性カルボキシビニルポリマーが知られている。これらカルボキシル基含有水溶性重合体は、通常、水等に溶解させた後、アルカリで中和して0.1〜1重量%程度の中和粘稠液とすることにより、化粧料に用いられる。
【0004】
この中和粘稠液は、製品を構成する種々の原料や添加物として用いられる電解質が共存する場合、それらが比較的低濃度であっても、粘度や透過率が低下したり、重合体の一部が析出するといった問題があった。特に近年、化粧料の分野においては、透明感等の見栄えの良さやべたつきのない使用感といった種々の特性に加え、ミネラル成分等の電解質を配合した化粧料が注目を浴びており、比較的高濃度の電解質の存在下であっても、高粘度で高い透過率を有する中和粘稠液を得ることができる増粘剤が望まれている。
【0005】
また、化粧料の中でも、例えば、スキンケア用途等の設計においては、皮膚に塗布したときの感触や皮膚上で伸ばしたときの感触、いわゆる使用感が重要視される。中でも、クリーム等の乳化型化粧料の場合、その使用形態から使用者に与える使用感に影響しやすい。しかし、従来のカルボキシビニルポリマーやアルキル変性カルボキシビニルポリマー等を使用した化粧料は、皮膚に塗布したときの伸びにかかわる使用感が十分でなく改良が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5342911号公報
【特許文献2】特開昭51−6190号公報
【特許文献3】特開昭59−232107号公報
【特許文献4】米国特許第5004598号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、化粧料に好適な増粘剤であって、比較的高濃度の電解質の存在下であっても高い粘度と高い透過率を有し、べたつきのない質感を有する中和粘稠液を得ることができ、化粧料の増粘剤として用いると、当該化粧料を皮膚に塗布したときの伸びにかかわる使用感に優れる化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示すとおりの化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体および、それを含む化粧料に関する。
【0009】
項1.(メタ)アクリル酸100重量部と、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5重量部と、0〜0.1重量部のエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させて得られるカルボキシル基含有水溶性重合体であって、前記カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液100重量部に対して0.25重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、透過率が90%以上であり、かつ、前記カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液100重量部に対して0.25〜5重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、最高粘度を示した中和粘稠液について、レオメーターによる粘度測定において、次式より得られるチキソトロピックインデックス(TI値)が6.0以上である化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体。
TI値=せん断速度100(1/s)の粘度÷せん断速度1000(1/s)の粘度
【0010】
項2.カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液の粘度が1500mPa・s以下であり透過率が90%以上、かつ、当該中和粘稠液100重量部に対して0.25〜5重量部の塩化ナトリウムを添加したときの最高粘度が15000〜40000mPa・sであり、そのときの透過率が90%以上である項1に記載の化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体。
【0011】
項3.エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、ペンタエリトリトールアリルエーテル、ジエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテルおよびポリアリルサッカロースからなる群より選ばれた少なくとも1種である、項1または2に記載の化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体。
【0012】
項4.項1〜3のいずれかに記載の化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体を含む化粧料。
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
なお、本発明において、アクリル酸およびメタクリル酸を総称して(メタ)アクリル酸という。
【0015】
また、本発明において、中和粘稠液の中和とは、当該液のpHが6.5〜7.5であることを意味する。中和粘稠液を調製する方法としては、例えば、カルボキシ基含有水溶性重合体を水に溶解させた後、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン等のアミン類等のアルカリで中和すればよい。
【0016】
本発明のカルボキシル基含有水溶性重合体は、(メタ)アクリル酸とアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと必要に応じてエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させて得られるものである。
【0017】
本発明に用いられる、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステルおよび(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらの中でも、得られるカルボキシル基含有水溶性重合体の中和粘稠液および電解質存在下における当該液の粘度特性や質感が優れていることから、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニルおよびメタクリル酸テトラコサニルが好適に用いられる。なお、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0018】
本発明に用いられる(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとの組み合わせは、それぞれ単独のものを組み合わせてもよいし、どちらか一方、または両者について2種以上のものを併用して組み合わせてもよい。
【0019】
本発明におけるアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、(メタ)アクリル酸100重量部に対して0.5〜5重量部であり、より好ましくは1〜3重量部である。アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量が、(メタ)アクリル酸100重量部に対して0.5重量部未満である場合には、得られるカルボキシル基含有水溶性重合体におけるTI値が低くなるおそれがあるとともに、当該重合体を使用した化粧料の増粘性が不十分であり、一方、5重量部を超える場合には、得られるカルボキシル基含有水溶性重合体の中和粘稠液における透過率が低くなるおそれがあり、化粧料に用いた場合、べとつき感が現れ、使用感を損なうおそれがある。
【0020】
本発明において必要に応じて用いられるエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、特に限定されるものではないが、例えば、ペンタエリトリトールジアリルエーテル、ペンタエリトリトールトリアリルエーテルおよびペンタエリトリトールテトラアリルエーテル等のペンタエリトリトールアリルエーテルや、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル並びにポリアリルサッカロースがさらに好ましい。なお、これらアリル基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を併用してもよい。
【0021】
本発明において、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物を使用する場合の使用量は、(メタ)アクリル酸100重量部に対して0.1重量部以下であり、好ましくは0.0001〜0.05重量部、より好ましくは0.001〜0.044重量部である。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が0.1重量部を超える場合、得られるカルボキシル基含有水溶性重合体におけるTI値が低くなりすく、当該重合体を使用した化粧料の使用感を損なうおそれがある。
【0022】
本発明において、(メタ)アクリル酸と、(メタ)アクリル酸100重量部に対して0.5〜5重量部の、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じて(メタ)アクリル酸100重量部に対して0〜0.1重量部の、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させてカルボキシル基含有水溶性重合体を得る方法は、特に限定されず、これらの原料を不活性ガス雰囲気下、溶媒中で攪拌し、重合開始剤を用いて重合させる方法等の通常の方法を用いることができる。
【0023】
不活性ガス雰囲気を得るための不活性ガスとしては、例えば、窒素ガスやアルゴンガス等を挙げることができる。
【0024】
前記溶媒は、(メタ)アクリル酸、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルやアリル基を2個以上有する化合物を溶解するが、得られるカルボキシル基含有水溶性重合体を溶解しないものであって、当該反応を阻害しないものであれば特に限定されるものではない。溶媒の具体例としては、例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロペンタンおよびシクロヘキサン等の炭化水素溶媒、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルおよび酢酸ブチル等のエステル系溶媒等が挙げられ、これらの中でもノルマルヘキサン、ノルマルペプタンおよび酢酸エチルの単独、あるいは2種以上の混合溶媒が好適に用いられる。溶媒の使用量は、攪拌操作性を向上させる観点および経済性の観点から、(メタ)アクリル酸100重量部に対して、300〜5000重量部であることが好ましい。
【0025】
前記重合開始剤は、例えば、ラジカル重合開始剤が好ましく、具体例としては、α,α’−アゾイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート等を挙げることができる。これらの中でも、高分子量のカルボキシル基含有水溶性重合体が得られる観点から、2,2’−アゾビスメチルイソブチレートが好適に用いられる。
【0026】
重合開始剤の使用量は、(メタ)アクリル酸1モルに対して0.00003〜0.002モルであることが望ましい。重合開始剤の使用量が0.00003モル未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。また、重合開始剤の使用量が0.002モルを超える場合、重合が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがある。
【0027】
反応温度は、50〜90℃であるのが好ましく、55℃〜75℃であるのがより好ましい。反応温度が50℃未満の場合、反応溶液の粘度が上昇し、均一に攪拌することが困難になるおそれがある。また、反応温度が90℃を超える場合、反応が急激に進行し、反応の制御が困難になるおそれがある。反応時間は、反応温度によって異なるので一概にはいえないが、通常、0.5〜5時間である。
【0028】
反応終了後、反応溶液を例えば80〜130℃に加熱して前記溶媒を揮散除去することにより、カルボキシル基含有水溶性重合体を得ることができる。加熱温度が80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られるカルボキシル基含有水溶性重合体の水への溶解性を損なうおそれがある。
【0029】
かくして得られるカルボキシル基含有水溶性重合体は、前記カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液100重量部に対して0.25重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、透過率が90%以上であり、かつ、前記カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液に0.25〜5重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、最高粘度を示した中和粘稠液について、レオメーターによる粘度測定において、次式より得られるチキソトロピックインデックス(TI値と略す。)が6.0以上であり、より好ましくは7.0以上である。なお、当該TI値は高い方がよく、特に限定されないが、上限値としては、化粧料としての実用上の観点から、例えば15.0以下であることが好ましく、9.0以下であることがより好ましい。
TI値=せん断速度100(1/s)の粘度÷せん断速度1000(1/s)の粘度
【0030】
前記TI値が高ければ、低せん断速度における粘度が高いにもかかわらず、高せん断速度における粘度が低くなりやすい。このような特性を有する増粘剤を化粧料に使用すれば、例えば、皮膚に塗布して伸ばすときのように、高せん断速度が加わるときに伸びがよく、塗布された後は、所望の効果が発現できる使用感に優れた化粧料の設計が可能となる。
【0031】
また、本発明においてカルボキシル基含有水溶性重合体は、1重量%中和粘稠液の粘度が1500mPa・s以下であり透過率が90%以上、かつ、当該中和粘稠液100重量部に対して0.25〜5重量部の塩化ナトリウムを添加したときの最高粘度が15000〜40000mPa・sであり、そのときの透過率が90%以上であることが好ましい。
【0032】
このような特性を有するカルボキシル基含有水溶性重合体は、比較的高濃度の電解質の存在下であっても高い粘度と高い透過率を有し、べたつきのない質感を有する中和粘稠液を得ることができ、化粧料の増粘剤として用いると、電解質を含む他の配合成分が共存しても、優れた粘性と美感を有する化粧料を調製することができる。
【0033】
本発明にかかるカルボキシル基含有水溶性重合体の中和粘稠液におけるレオロジー特性が、低せん断速度域で高粘性を示すにもかかわらず、高せん断速度域で低粘性を示す理由は詳らかではないが、アクリル酸と、特定比率で共重合されたアルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルに含まれるアルキル基が、低せん断速度域では、それらの疎水性相互作用により会合体を形成し、高せん断速度域では、その会合体が解離することが、かかわっているものと推察される。
【0034】
したがって、本発明にかかるカルボキシル基含有水溶性重合体を用いた化粧料は、増粘性が高いにもかかわらず、皮膚等に塗布ときに伸びのよい使用感に優れたものとなる。
【0035】
前記カルボキシル基含有水溶性重合体の使用量は、用途や目的等により異なるため、特に限定されないが、例えば、化粧料における含有率として、0.01〜5.0重量%であることが好ましく、0.1〜2.0重量%であることがより好ましい。
【0036】
本発明のカルボキシル基含有水溶性重合体は、ミネラル、他の増粘剤、アルコール類、pH調整剤、保湿剤、油剤、塩類、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、キレート剤、防腐剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素および香料等を配合して化粧料とすることができる。このような化粧料としては、例えば、化粧水、乳液、美容液、クリームパック、マッサージクリーム、クレンジングクリーム、クレンジングジェル、洗顔フォーム、日焼け止め、スタイリングジェル、アイライナー、マスカラ、口紅およびファンデーション等が挙げられる。これら化粧料の中でも、乳化型の化粧料に好適に用いることができ、特にクリームタイプに用いれば、使用感がよくなり商品価値を高めることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によると、電解質の存在下であっても高い粘度と高い透過率を有する中和粘稠液を得ることができ、化粧料の増粘剤として用いれば、当該化粧料を皮膚に塗布したときの伸びにかかわる使用感に優れた化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体、およびそれを含む化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0038】
以下に実施例、比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0039】
[カルボキシル基含有水溶性重合体の特性評価]
(1)評価試料の調製
評価試料としての重合体について3g毎の所定個数を量りとり、それぞれ脱イオン水280gに、攪拌下、徐々に投入して溶解させた後、さらに攪拌しながら6重量%水酸化ナトリウム17gを加えて均一溶液として重合体の1重量%中和粘稠液とした。これら中和粘稠液はpH6.5〜7.5であった。また、前記中和粘稠液の各300gに、塩化ナトリウム0.75〜15gを添加し、攪拌、溶解して、塩化ナトリウム濃度として0.25、0.5、0.75、1、2、3、4および5重量%の電解質添加溶液を調製した。なお、下記評価では、前記1重量%中和粘稠液および各塩化ナトリウム濃度の電解質添加溶液を1時間静置したものを評価試料として用いた。
【0040】
(2)粘度測定
各評価試料について、BH型回転粘度計を用いて、25℃でスピンドルローターNo.6の回転速度を毎分20回転として1分後の粘度を測定した。
【0041】
(3)透過率測定
各評価試料について、遠心分離器にて毎分2000回転(739G)で5分間の操作により脱泡した後、光路長1cmのセルを用いて、測定波長を425nmとして透過率を測定した。通常、透過率が90%以上であれば目視において透明であるといえる。
【0042】
(4)TI値測定
前記粘度測定において、各塩化ナトリウム濃度の電解質添加溶液について、最高粘度を示した評価試料を用いて、以下の測定条件において、レオメーターによる定常流の粘度を測定し、TI値を求めた。
測定条件
レオメーター:HAAKE社製 MARSII
プレート:35mm、1°コーンプレート
測定温度:25℃
せん断速度:0.0001(1/s)から1000(1/s)の範囲
TI値=せん断速度100(1/s)の粘度÷せん断速度1000(1/s)の粘度
【0043】
実施例1
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしてのブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製:
メタクリル酸ステアリルが10〜20重量部、メタクリル酸エイコサニルが10〜20重量部、メタクリル酸ベヘニルが59〜80重量部およびメタクリル酸テトラコサニルの含有量が1重量部以下の混合物)0.45g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一に攪拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体43gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表1に、TI値の評価結果を表7に示す。
【0044】
実施例2
実施例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.35gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体44gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表1に、TI値の評価結果を表7示す。
【0045】
実施例3
実施例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を2.25gに変更した以外は、実施例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体45gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表2に、TI値の評価結果を表7示す。
【0046】
実施例4
実施例1において、アクリル酸45g(0.625モル)、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)0.45g、ノルマルヘキサン150g、2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)に加えて、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.02gを用いた以外は実施例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体43gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表2に、TI値の評価結果を表7示す。
【0047】
実施例5
実施例4において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.35gに変更した以外は、実施例4と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体44gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表3に、TI値の評価結果を表7示す。
【0048】
実施例6
実施例4において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を2.25gに変更した以外は、実施例4と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体45gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表3に、TI値の評価結果を表7示す。
【0049】
比較例1
攪拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500mL容の四つ口フラスコに、アクリル酸45g(0.625モル)、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.02g、ノルマルヘキサン150gおよび2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)を仕込んだ。引き続き、均一に攪拌、混合した後、反応容器の上部空間、原料および溶媒中に存在している酸素を除去するために、溶液中に窒素ガスを吹き込んだ。次いで、窒素雰囲気下、60〜65℃に保持して4時間反応させた。反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、ノルマルヘキサンを留去し、さらに、110℃、10mmHgにて8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体42gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表4に、TI値の評価結果を表7示す。
【0050】
比較例2
比較例1において、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.135gに変更した以外は比較例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体42gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表4に、TI値の評価結果を表7示す。
【0051】
比較例3
比較例1において、ペンタエリトリトールアリルエーテルの使用量を0.27gに変更した以外は比較例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体42gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表5に、TI値の評価結果を表7示す。
【0052】
比較例4
実施例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)の使用量を1.125gに変更し、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.135gを加えた以外は実施例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体44gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表5に、TI値の評価結果を表7示す。
【0053】
比較例5
比較例1において、ペンタエリトリトールアリルエーテル0.02gを0.09gに変更し、アクリル酸45g(0.625モル)、ノルマルヘキサン150g、2,2’−アゾビスメチルイソブチレート0.081g(0.00035モル)に加えて、メタクリル酸ステアリル0.9gを用いた以外は比較例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体43gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表6に、TI値の評価結果を表7示す。
【0054】
比較例6
実施例1において、ブレンマーVMA70(日本油脂株式会社製)0.45gに代えてメタクリル酸ステアリル0.42g、メタクリル酸エイコサニル0.42gおよびメタクリル酸ベヘニル1.86gを用いた以外は実施例1と同様にして、白色微粉末状のカルボキシル基含有水溶性重合体46gを得た。得られた重合体について粘度および透過率の評価結果を表6に、TI値の評価結果を表7示す。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
【表3】

【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
【表6】

【0061】
【表7】

【0062】
[カルボキシル基含有水溶性重合体を含有する化粧料の特性評価]
実施例7
下記化粧料の配合割合に従って、配合成分1〜5をそれぞれの割合で加えて78℃に加温して均一な混合液とし、該混合液を、配合成分6〜11をそれぞれの割合で加えて75℃に加温した混合液に添加、攪拌した後、配合成分12のトリエタノールアミンを添加、攪拌して乳化型の化粧料(マッサージクリーム)を調製した。
【0063】
得られた化粧料について、下記評価方法に従って、実使用における化粧料の伸びを質感官能試験により評価した。また、得られた化粧料のレオロジー特性について、下記評価方法に従って、せん断速度の測定上限値およびチキソ面積値を測定した。質感官能試験の評価結果を表8に、せん断速度の測定上限値およびチキソ面積値の測定結果を表9に示す。
【0064】
[化粧料の配合割合]
1.流動パラフィン 25
2.ワセリン 10
3.パラフィン 5
4.パルミチン酸イソプロピル 10
5.メチルパラベン(防腐剤) 0.3
6.ポリエチレングリコール4000 8
7.実施例5で得られたカルボキシル基含有水溶性重合体 0.4
8.モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(20EO) 5
9.プロピルパラベン(防腐剤) 0.3
10.食塩 0.2
11.精製水 35.2
12.トリエタノールアミン 0.6
合計で100%となる割合
【0065】
[質感官能試験]
男女各5人の試験者によって、適量の化粧料を手の甲に塗布し、指で伸ばしたときの伸びを質感として、以下の基準で評価した。なお、化粧料の伸びが良好であれば、本発明の効果が認められる優れた化粧料である。
【0066】
○:伸びが良好
△:伸びが普通
×:伸びが悪い
【0067】
[せん断速度の測定上限値]
化粧料のせん断速度の測定上限値は、レオメーターを用いて以下の測定条件で評価した。なお、せん断速度の測定上限値が高い方が、クリーム等の化粧料を塗布したとき、高いせん断速度まで滑らかに伸びることを示しており、せん断速度の測定上限値が低い方が、化粧料の伸びが、せん断速度に追いつかず、滑らかでない質感となる。
【0068】
前記せん断速度の測定上限値は、用途や目的によって異なるため、特に限定されないが、例えば、500(1/s)以上であれば好ましく、1000(1/s)以上であれば、さらに好ましく、化粧料の伸びが良いものと評価できる。
測定条件
レオメーター:HAAKE社製 MARSII
使用コーンプレート:60mm、2°コーンプレート
測定温度:25℃
せん断速度:0.0001(1/s)から1000(1/s)の範囲
【0069】
[チキソ面積値]
化粧料のチキソ面積値は、レオメーターを用いて以下の測定条件で評価した。チキソ面積値は、チキソトロピック性を評価する指標とすることが可能であり、せん段速度を増加させるときの粘度との関係を示す上昇曲線と、せん断速度を減少させるときの粘度との関係を示す下降曲線と、せん段速度0(1/s)における粘度軸とに囲まれる面積値(単位:Pa/s)で表され、レオメーターにより測定できる。なお、チキソ面積値が大きな値を示す方が、高いチキソトロピック性を有するものと考えられ、化粧料の使用感、特に塗布したときの伸びが良いものと評価できる。
測定条件
レオメーター:HAAKE社製 MARSII
使用コーンプレート:35mm、1°コーンプレート
測定温度:25℃
上昇曲線のせん断速度:0(1/s)から712(1/s)、スイープ時間2分
下降曲線のせん断速度:712(1/s)から0(1/s)、スイープ時間2分
【0070】
比較例7
実施例7において、実施例5で得られたカルボキシル基含有水溶性重合体に代えて、比較例2で得られた重合体を用いた以外は、実施例7と同様にして乳化型の化粧料(マッサージクリーム)を調製した。得られた化粧料の質感官能試験の評価結果を表8に、せん断速度の上限値およびチキソ面積値の測定結果を表9に示す。
【0071】
比較例8
実施例7において、実施例5で得られたカルボキシル基含有水溶性重合体に代えて、比較例3で得られた重合体を用いた以外は、実施例7と同様にして乳化型の化粧料(マッサージクリーム)を調製した。得られた化粧料の質感官能試験の評価結果を表8に、せん断速度の上限値およびチキソ面積値の測定結果を表9に示す。
【0072】
【表8】

【0073】
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸100重量部と、アルキル基の炭素数が18〜24である(メタ)アクリル酸アルキルエステル0.5〜5重量部と、0〜0.1重量部のエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させて得られるカルボキシル基含有水溶性重合体であって、前記カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液100重量部に対して0.25重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、透過率が90%以上であり、かつ、前記カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液100重量部に対して0.25〜5重量部の塩化ナトリウムを添加したとき、最高粘度を示した中和粘稠液について、レオメーターによる粘度測定において、次式より得られるチキソトロピックインデックス(TI値)が6.0以上である化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体。
TI値=せん断速度100(1/s)の粘度÷せん断速度1000(1/s)の粘度
【請求項2】
カルボキシル基含有水溶性重合体の1重量%中和粘稠液の粘度が1500mPa・s以下であり透過率が90%以上、かつ、当該中和粘稠液100重量部に対して0.25〜5重量部の塩化ナトリウムを添加したときの最高粘度が15000〜40000mPa・s
であり、そのときの透過率が90%以上である、請求項1に記載の化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体。
【請求項3】
エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物が、ペンタエリトリトールアリルエーテル、ジエチレングリコールアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテルおよびポリアリルサッカロースからなる群より選ばれた少なくとも1種である、請求項1または2に記載の化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の化粧料用カルボキシル基含有水溶性重合体を含む化粧料。

【公開番号】特開2010−209156(P2010−209156A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−54195(P2009−54195)
【出願日】平成21年3月6日(2009.3.6)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】