説明

化粧料用リポソーム

【課題】従来品よりも優れた化粧料用リポソームを提供すること。
【解決手段】式[I]で表される環状ホスファチジン酸(式中の各記号は明細書中に定義したとおり)がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする化粧料用リポソーム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構造を有する環状ホスファチジン酸がリポソームの構成成分として配合されている化粧料用リポソーム及び当該化粧料用リポソームを含有する化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線やストレス、あるいは加齢などによって皮膚が老化すると、肌のハリが失われ、乾燥してなめらかさを失ったり、肌がざらついた感触となったりするなどの現象が生じ、やがて、しわ、たるみ、シミなどが生じることとなる。さらに、加齢とともに毛穴の開きが目立ち、肌のきめの細かさが失われるようになる。
皮膚のハリや瑞々しさには、細胞間の水分保持や柔軟性を保つ機能を有するヒアルロン酸が寄与していることから、上記したような皮膚の老化現象には、表皮や真皮中のヒアルロン酸の減少が影響しているとされている。そのため、皮膚の老化対策として、体外からのヒアルロン酸の補給や、ヒアルロン酸の産生能を向上させるための物質の補給などの試みがなされている。
そのうち、特許文献1には、環状ホスファチジン酸が老化した肌のヒアルロン酸産生を促進し、肌のハリを改善する効果を奏することが記載されている。しかし、環状ホスファチジン酸は、水への溶解性が低いため、少量でも水系ではオーロラが生じ、水の多い系へ多量に配合することは困難であった。
【0003】
特許文献2及びその分割出願である特許文献3には、肌に対する抗しわなどの改善効果を期待して、1−O−アシルリゾホスファチジン酸や環状ホスファチジン酸エステルなどを皮膚に外用する技術が開示されている。しかしながら、これらの文献においては、1−O−アシルリゾホスファチジン酸及び環状ホスファチジン酸エステルは、リポソーム化されていないため、さらさらとした感触が得られていない。
【特許文献1】特開2002−363081号公報
【特許文献2】米国特許第5238965号明細書
【特許文献3】米国特許第5521223号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
環状ホスファチジン酸は、水への溶解性が低く、水の多い系から構成される化粧料には多量に配合することが困難であった。また、従来の環状ホスファチジン酸を使用した化粧料は、環状ホスファチジン酸が有する特性であるさらさらとした感触が生かされておらず、使用時の感触の点で改良の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、化粧料としての使用感に優れかつ安定な環状ホスファチジン酸含有化粧料を得るべく鋭意研究した結果、特定の構造を有する環状ホスファチジン酸をリポソームの構成成分として配合してリポソームを作製し、これを化粧料に配合したところ、使用感に優れかつ安定な化粧料が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の要旨は以下のとおりである。
(1) 以下の式[I]で表される環状ホスファチジン酸がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする化粧料用リポソーム:
【0007】
【化1】

【0008】
(式中、
Rは、炭素数10〜22のアシル基を示し、
Mは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、置換又は無置換のアンモニウム基を示す。)。
(2) さらに、リン脂質がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする、上記(1)に記載の化粧料用リポソーム。
(3) さらに、ステロール類がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の化粧料用リポソーム。
(4) 上記(1)〜(3)のいずれかに記載の化粧料用リポソームを含有する化粧料。
【発明の効果】
【0009】
本発明の化粧料用リポソームは、特定の構造を有する環状ホスファチジン酸がリポソームの構成成分として配合されていることにより、化粧料として使用した場合、肌あれを改善し、ふっくらとした潤いのあるなめらかな肌へと導くことができるだけでなく、従来品に比べ、経時安定性が良く(オーロラが生じない)、べたつき感がないさらさらとした使用感を有する化粧料を得ることができる。また、本発明の化粧料用リポソームを含有する化粧料は、肌のハリ改善効果及び毛穴の引き締め効果があり、保湿性が高く、使用感のよい化粧料である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の化粧料用リポソームは、下記の式[I]で表される環状ホスファチジン酸がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする。
【0011】
【化2】

【0012】
(式中、
Rは、炭素数10〜22のアシル基を示し、
Mは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、置換又は無置換のアンモニウム基を示す。)
【0013】
本発明の化粧料用リポソームは、式[I]の環状ホスファチジン酸が、リポソーム製造時の原料全体の0.000001〜5%配合されていることが好ましく、0.00001〜3%配合されていることがさらに好ましい。式[I]の環状ホスファチジン酸の配合割合が全体の5%を超えると、式[I]の環状ホスファチジン酸が直鎖型の界面活性剤としての性質を有するため、リポソームの構造を壊してしまう可能性がある。また、この配合割合が全体の0.000001%未満であると、式[I]の環状ホスファチジン酸が有する特性であるさらさらとした感触が、その他の成分の影響により弱まってしまう可能性がある。
【0014】
式[I]におけるアシル基としては、炭素数10〜22の飽和アシル基、及び、炭素数10〜22で1〜6個の不飽和結合を有するアシル基が挙げられ、炭素数10〜22の飽和アシル基が好ましく、炭素数14〜18の飽和アシル基がさらに好ましい。酸化などの劣化が生じにくく、色やにおいなどの経時変化も起こりにくいため、飽和アシル基が好ましい。
炭素数10〜22の飽和アシル基としては、カプリン酸(C10:0)、ラウリン酸(C12:0)、ミリスチン酸(C14:0)、ペンタデカン酸(C15:0)、パルミチン酸(C16:0)、マルガリン酸(C17:0)、ステアリン酸(C18:0)、ノナデカン酸(C19:0)、アラキジン酸(C20:0)、ヘネイコサン酸(C21:0)、ベヘニン酸(C22:0)等に由来する残基が挙げられる。なかでも、取扱いのしやすさ、および活性の強さなどの点からミリスチン酸(C14:0)、ペンタデカン酸(C15:0)、パルミチン酸(C16:0)、ステアリン酸(C18:0)に由来する残基などの炭素数14〜18の飽和アシル基が好ましい。
炭素数10〜22で1〜6個の不飽和結合を有するアシル基としては、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(C18:1)、バクセン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)、アラキドン酸(C20:4)、エイコサペンタエン酸(C20:5)、エルカ酸(C22:1)、ドコサヘキサエン酸(C22:6)等に由来する残基が挙げられる。なかでも、ミリストレイン酸(C14:1)、パルミトレイン酸(C16:1)、オレイン酸(C18:1)、エライジン酸(C18:1)、リノール酸(C18:2)、リノレン酸(C18:3)に由来する残基が好ましい。
【0015】
式[I]におけるアルカリ金属原子としては、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。
式[I]におけるアルカリ土類金属原子としてはマグネシウム、カルシウム等が挙げられる。
式[I]におけるアンモニウム基とは、NHで表される原子団であり、置換基を有するものであっても無置換のものであってもよい。
上記アンモニウム基の置換基の例としては、トリエタノールアミン塩が挙げられる。
式[I]におけるMとしては、式[I]で表される環状ホスファチジン酸のリン酸エステル誘導体としての入手のし易さなどの点から、ナトリウム、カリウムが最も好ましい。
【0016】
本発明に用いられる式[I]の環状ホスファチジン酸は、公知の製造方法で合成することができる。例えば、−O−アシルグリセロールをリン酸化剤と反応させ、加水分解させる全合成で得ることができる(特開平6−2281691号公報参照)。また、特許第3195833号公報に記載のような酵素反応により得たものを使用することもできる。
【0017】
具体的には、例えば、水素添加大豆リン脂質由来のリゾホスファチジルコリンと酵素ホスホリパーゼDを、酢酸緩衝液(pH5〜6程度)中で1〜20時間程度反応させることによって、水素添加大豆由来の式[I]の環状ホスファチジン酸を得ることができる。また、生成した式[I]の環状ホスファチジン酸は、常法に準じて、抽出、カラムクロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー(TLC)などにより精製することができる。
【0018】
本発明における化粧料用リポソームが、リン脂質を含む場合、大豆リン脂質、卵黄リン脂質、水素添加大豆リン脂質、水素添加卵黄リン脂質などの天然由来のリン脂質や、その他ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、スフィンゴミエリンなどを用いることができる。天然由来のリン脂質の場合、なかでも、ホスファチジルコリン含量が60重量%以上である水素添加大豆リン脂質が好ましく、ホスファチジルコリン含量が80重量%以上である水素添加大豆リン脂質がさらに好ましい。
【0019】
上記水素添加大豆リン脂質は、例えば、水とヘキサンやアルコールなどとの2相分配により大豆リン脂質を抽出精製し、その後、水素添加をすることにより得ることができる。また、水素添加された大豆リン脂質を、アセトンやアルコールなどの溶媒を用いて晶析精製して得てもよいし、液体クロマトグラフィーなどにより分離精製して得てもよい。
【0020】
本発明の化粧料用リポソームは、リポソームの構成成分としてリン脂質を配合することが好ましい。配合量としては、リポソーム製造時の原料全体の0.001〜20重量%配合するのが好ましく、0.005〜10重量%配合するのがより好ましく、0.01〜5重量%配合するのがさらに好ましい。リン脂質を0.001重量%以上含有させることでリポソーム特有の感触と保湿効果を得ることができ、また、20重量%含有させれば十分な保湿効果を保有することができるので、これを超えての配合はコスト面で不利になる。
【0021】
本発明の化粧料用リポソームは、膜の流動性を抑制し、経時安定性を高めることができるので、リポソームの構成成分としてステロール類を配合することが好ましい。ステロール類としては、例えば、コレステロール、フィトステロール、ジヒドロコレステロール、ステアリン酸コレステリル、オレイン酸コレステリル、ノナン酸コレステリル、ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸ジヒドロコレステリル等が挙げられ、なかでも、コレステロール、フィトステロール、オレイン酸コレステリル、ステアリン酸コレステリルが好ましい。本発明の化粧料用リポソームは、ステロール類をリン脂質に対して1〜50重量%の量で配合することがより好ましい。
【0022】
本発明の化粧料用リポソームが、式[I]の環状ホスファチジン酸、リン脂質、ステロール類から構成されるとき、リン脂質とステロール類との比率は、重量比で5/5〜9.9/0.1であるのが好ましく、6/4〜9/1であるのがより好ましく、7/3〜8/2であるのがさらに好ましい。
【0023】
本発明の化粧料用リポソームには、本発明が奏する効果を妨げない限り、これまでに特記した構成成分の他に、化粧料への配合が認可されているような成分、例えば、水性成分(例えば、水など)、アルコール(例えば、エタノール、グリセリンなど)、油剤、界面活性剤、水溶性高分子、動植物由来の天然エキス、各種栄養成分、保湿剤、細胞賦活剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、香料、無機塩、目的に応じた各種薬剤など、を配合してもよい。その製造方法は、化粧料を製造するのに通常用いられる方法を使用すればよく、特に限定されない。
上記特記した構成成分及びこれらの追加成分は、リポソームの内水相でも外水相でも、またその両側に存在してもよいし、リポソーム膜の一部となっていてもよい。
【0024】
本発明の化粧料用リポソームは、例えば、式[I]の環状ホスファチジン酸と、脂質(例えば、リン脂質)及びその他配合成分を、リポソームを作製するための公知の技術により混合し、超音波処理法、フレンチプレス法、逆相蒸発法、界面活性剤法、エクストルージョン法、カルシウム−EDTAキレート法、凍結融解法などの方法や、真空乳化機、高圧ホモミキサー、マイクロフルイダイザー、マントンゴーリンなどの乳化機で処理することにより、製造することができる。また、これらのリポソームをフィルターやゲルろ過などのサイジング操作を行うことにより、粒子径のそろったリポソームを選択的に得ることができ、それによりリポソームの安定性をさらに高めることもできる。
【0025】
リポソームの粒径は安定性や感触にも影響を与えるため、本発明の化粧料用リポソームは、粒径をそろえることが望ましい。リポソームの粒子径の表示方法には、重量平均粒子径と個数平均粒子径が一般に用いられるが、リポソームの保持容量の観点からは重量平均粒子径で表わすことが望ましい。本発明の化粧料用リポソームの重量平均粒子径は一般に20nm〜800nm、好ましくは50〜500nm、より好ましくは100nm〜400nmである。上記の所望の粒径を得るためには、予め決められたポアサイズを有するフィルターを通して大きい粒径のリポソームを濾過する押出濾過法などを使用すればよい。
【0026】
本発明の化粧料用リポソームは、化粧水などの低粘性のものから、クリームなどの高粘性のものまで、化粧料の原料として広範に使用することができる。本発明の化粧料用リポソームは安定性が良好であるため、低粘性の化粧水に配合しても問題がない。
【0027】
本発明の化粧料用リポソームは、化粧料の形態によっても異なるため一概に規定することはできないが、化粧料全体の0.001〜20重量%配合するのが好ましく、0.005〜10重量%配合するのがより好ましく、0.01〜5重量%配合するのがさらに好ましい。0.001重量%未満である場合、本発明の化粧料用リポソームが有する肌のなめらかさ改善や保湿性の効果が化粧料に反映されにくい。また、20重量%配合させればこれらの効果を十分に発揮することができるので、20重量%を超えての配合は費用対効果の面から不利である。
本発明の化粧料用リポソームは様々な種類の化粧料に含有させることができ、化粧料の形態は特に限定されない。
【0028】
本発明の化粧料用リポソームを含有する化粧料は、さらさらとした使用感であり、あれ肌を改善し、ふっくらとした潤いのあるなめらかな肌へと導くことができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を記載して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例におけるそれぞれの成分の配合量は、特に記載がない場合すべて重量%である。
【0030】
合成例
リゾホスファチジルコリンの合成
水素添加大豆由来リン脂質(ホスファチジルコリン含量96%、脂肪酸組成:パルミチン酸11.5%、マルガリン酸0.2%、ステアリン酸87.8%、リノール酸0.3%、その他微量成分0.2%;比較例4においても使用)20gにクロロホルム300gを加え十分に溶解させた。pH8.5の1M Tris−HCl緩衝液120g、2M塩化カルシウム10mL、ホスホリパーゼA2(レシターゼ、ノボザイムズ社製)2gを添加し、50℃で加温した。24時間後にメタノール600gを添加し、激しく混合した。混合後、静置し下層を回収し溶媒を留去し、固体15gを得た。この固体15gを酢酸エチル200gに添加し、45℃で1時間撹拌した後、ろ過を行い、固体14gを得た。さらにこの操作を繰り返して行い、固体11g(水素添加大豆由来リゾホスファチジルコリン)を得た。
得られた水素添加大豆由来リゾホスファチジルコリンの脂肪酸組成:パルミチン酸19.3%、ステアリン酸80%、マルガリン酸0.2%、リノール酸0.3%、その他0.2%
【0031】
環状ホスファチジン酸ナトリウムの合成
上記で得られた水素添加大豆由来リゾホスファチジルコリン(LPC)10gに水250gを加え十分に溶解させた。pH5.5の1M酢酸ナトリウム緩衝液100g、2M塩化ナトリウム10mL、ホスホリパーゼD(PL−D、名糖産業)100mgを添加し、55℃で加温した。18時間後に、10M水酸化ナトリウム水溶液でpH6.5まで中和した後、クロロホルム650gとメタノール700gを添加し、激しく混合した。さらにクロロホルム650gを加えて混合後、静置し下層を回収し溶媒を留去し、環状ホスファチジン酸ナトリウム8gを得た。この環状ホスファチジン酸ナトリウムを以下の実施例及び比較例において使用した。
得られた環状ホスファチジン酸ナトリウムの脂肪酸組成:パルミチン酸19.3%、ステアリン酸80%、マルガリン酸0.2%、リノール酸0.3%、その他0.2%
【0032】
実施例1
表1に示す量の配合成分1〜7を混合し、60℃で加熱融解した後、成分8(精製水)を添加し、60℃で30分間撹拌を行った。得られた分散液に孔径0.4μmのポリカーボネートフィルターによるエクストルージョンを行い、実施例1のリポソーム液を得た。
【0033】
実施例2〜4
表1に示す実施例2〜4のリポソーム液を実施例1と同様にして製造したが、エクストルージョンについては、実施例2及び3においては0.3μm、実施例4においては0.2μmの孔径のポリカーボネートフィルターを使用した。
【0034】
実施例5及び6
表1に示す量の配合成分1〜7を混合し、60℃で加熱融解した後、成分8(精製水)を添加し、60℃で30分間ホモジナイズを行い、実施例5及び6のリポソーム液を得た。
【0035】
比較例1
表2に示す量の配合成分1〜10を混合し、60℃で加熱融解した後、成分11(精製水)を添加し、60℃で10分間ホモジナイズを行い、比較例1の環状ホスファチジン酸水溶液を得た。
【0036】
比較例2及び3
表2に示す量の配合成分1〜10を混合し、60℃で加熱融解した後、成分11(精製水)を添加し、高圧乳化機により乳化し、比較例2及び3の環状ホスファチジン酸乳液を得た。
比較例4
表2に示す量の配合成分1〜10を混合し、60℃で加熱融解した後、成分11(精製水)を添加し、60℃で30分間撹拌を行った。得られた分散液に孔径0.4μmのポリカーボネートフィルターによるエクストルージョンを行い、比較例4のリポソーム液を得た。
【0037】
実施例及び比較例で得られたサンプル液について以下の評価を行い、結果も表1及び2に併記した。なお、表1の成分1〜3はリポソームを構成する成分となる物質である。また、表2の成分5及び6はリポソームの構成成分として主要なものであり、脂質二分子膜を形成する。表2において、成分1〜6はリポソームの構成成分となりうる成分であるが、成分5及び6がなければ、成分1〜4は脂質二分子膜を形成しないため、比較例4以外はリポソーム形態をとっていない。
【0038】
〔安定性〕
実施例1〜6又は比較例1〜4のサンプル液を透明なガラスバイアルへ入れ密封し、遮光して40℃の恒温槽に静置した。40℃での保存における溶液のオーロラの有無について調べた。それぞれの評価は以下の基準に従って行った。
<基準A>
○:1カ月以上オーロラが認められない。
△:2週間までは、変化が認められないが、その後オーロラが見られた。
×:2週間でオーロラが認められた。
【0039】
〔使用感の評価〕
実施例1〜6又は比較例1〜4のサンプル液を皮膚に塗布した際の使用感(べたつき感のなさ、しっとり感)について、女性10名により下記の5段階にて評価し、その平均点を基準Bに従い判定した。◎又は○を効果があると判定した。
<評価>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
<基準B>
◎:平均点4.5点以上
○:平均点3.5点以上4.5点未満
△:平均点2.5点以上3.5点未満
×:平均点2.5点未満
【0040】
〔効果感〕
荒れ肌、乾燥を気にしている女性(25〜55才)5名ずつに1日2回(朝、夕)、左右の頬に実施例1と比較例1、実施例2と比較例1、実施例3と比較例2、実施例4と比較例2、実施例5と比較例3、実施例6と比較例4の組み合わせでそれぞれを片頬ずつ塗布し、左右の肌の改善効果について評価した。塗布後1ヵ月後の肌の状態の「肌のなめらかさ」、「肌のハリ」について改善効果を下記評価基準により評価し、その平均点を基準Cに従い判定した。◎又は○を効果があると判定した。
<評価>
3点:非常に効果が感じられた
2点:効果が感じられた
1点:どちらともいえない
0点:効果を感じられなかった
<基準C>
◎:平均点2.5点以上
○:平均点1.5点以上2.5点未満
△:平均点0.5点以上1.5点未満
×:平均点0.5点未満
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
実施例1〜6のリポソーム液は、安定性、使用感、効果感すべての性能を満足するものであった。
比較例1の水溶液は、調製後放冷した時点で、オーロラが生じた。また、比較例2及び3の乳液並びに比較例4のリポソーム液は、実施例のリポソーム液に比べ、使用感及び/又は効果感が劣っていた。
【0044】
〔肌のハリ及び毛穴の引き締め効果の比較〕
毛穴の開きを気にしている女性5名に対し、実施例又は比較例のサンプル液の1日2回(朝、夕)の顔全体への塗布を、2ヵ月間行った。
被験者5名の2ヵ月後の肌状態を、肌の写真及びマイクロスコープ画像を3名の評価者が肉眼で観察することにより評価した。肌のハリについては、肌の写真を使用して、頬丘の位置が高くなった場合の改善効果を下記評価基準により評価し、さらにその平均点を求め表3に示した。毛穴の引き締めについては、マイクロスコープ画像を使用して、毛穴の形状、凹凸、表面のなめらかさに着目し、連用前と比較して、その改善効果を下記評価基準により評価し、その平均点を求め表3に示した。
<評価>
5点:非常に効果が感じられた
3点:効果が感じられた
1点:どちらともいえない
0点:効果を感じられなかった
【0045】
【表3】

【0046】
実施例のリポソーム液が、肌のハリ及び毛穴の引き締めの点でも優れた改善効果を有することが分かった。
【0047】
実施例7〜10、比較例5〜8
上記実施例又は比較例のサンプル液を用いて、表4に示す化粧水(実施例7及び8、比較例5及び6)及び表5に示すクリーム(実施例9及び10、比較例7及び8)を作製した。
〔化粧水の製造法〕
1) 表4に示す成分8(精製水)に成分1、2及び6を室温にて溶解した。
2) 1)の混合物に、成分3〜5及び7を混合し可溶化した。
【0048】
【表4】

【0049】
〔クリームの製造法〕
1)表5に示す成分1〜8を80℃に加温し、よく混練りした。
2)成分9〜19も80℃に加温し、よく混練りした。
3) 1)と2)を混合分散させ、室温まで冷却してクリームを得た。
【0050】
【表5】

【0051】
上記化粧水及びクリームについて、使用感及び肌の状態の改善効果をそれぞれ評価した。結果をそれぞれ表6及び7に示す。
【0052】
〔使用感の評価〕
実施例7〜10、比較例5〜8の化粧料を皮膚に塗布した際の使用感(べたつき感のなさ・肌のなめらかさ)について、パネル10名により下記の5段階にて評価し、その平均点を基準Dに従い判定した。◎又は○を効果があると判定した。
<評価>
5点:非常に良好
4点:良好
3点:普通
2点:不良
1点:非常に不良
【0053】
〔肌の状態の改善効果感〕
荒れ肌及び乾燥を気にしている女性(25〜55才)5名ずつに1日2回(朝、夕)、左右の頬に実施例7と比較例4、実施例8と比較例5、実施例9と比較例6といった組み合わせでそれぞれを片頬ずつ塗布し、左右の肌の改善効果について評価した。塗布後1ヵ月後の「肌のなめらかさ」及び「肌のハリ」の点での改善効果を下記評価基準により評価し、その平均点を基準Dに従い判定した。◎又は○を効果があると判定した。
<評価>
3点:非常に効果が感じられた
2点:効果が感じられた
1点:どちらともいえない
0点:効果を感じられなかった
<基準D>
◎:平均点2.5点以上
○:平均点1.5点以上2.5点未満
△:平均点0.5点以上1.5点未満
×:平均点0.5点未満
【0054】
【表6】

【0055】
実施例のサンプル液を使用して作製した化粧水は使用感及び効果感すべての性能を満足するものであった。
一方、比較例のサンプル液を使用して作製した化粧水は使用感及び/又は肌への効果感が劣っていた。
【0056】
【表7】

【0057】
実施例のサンプル液を使用して作製したクリームは使用感及び効果感すべての性能を満足するものであった。
比較例のサンプル液を使用して作製したクリームはべたつきが強く感じられ、また肌への効果感も劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式[I]で表される環状ホスファチジン酸がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする化粧料用リポソーム:
【化1】


(式中、
Rは、炭素数10〜22のアシル基を示し、
Mは、水素原子、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、置換又は無置換のアンモニウム基を示す。)。
【請求項2】
さらに、リン脂質がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする、請求項1に記載の化粧料用リポソーム。
【請求項3】
さらに、ステロール類がリポソームの構成成分として配合されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧料用リポソーム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の化粧料用リポソームを含有する化粧料。

【公開番号】特開2008−222643(P2008−222643A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64150(P2007−64150)
【出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(000004341)日油株式会社 (896)
【Fターム(参考)】