説明

化粧料用組成物及び化粧料

【課題】低粘度のシリコーン油に膨潤性を有し、他の化粧品油剤との親和性が良い化粧料用組成物及び該組成物を含有してなる化粧料を提供する。
【解決手段】(A)〜(C)成分のオルガノポリシロキサンを付加重合させることによって得られる含フッ素シリコーン三次元架橋構造の重合体生成物を含有する化粧料。(A)下記式(1)で示されるビニル基含有ポリシロキサン;


(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン;(C)片末端反応性オルガノポリシロキサン;(A)成分及び(B)成分は、シロキサン単位を含んでいても、含まなくてもよいが、含フッ素シリコーン重合物は、(A)成分及び(B)成分中のフッ素原子の合計質量が(A)〜(C)成分の合計質量に対し10質量%〜30質量%、好ましくは15質量%〜27質量%となる量でフッ素原子を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、他の化粧料材料との親和性が良く、非常に軽くなめらかな感触を与える化粧料を提供する化粧料用組成物に関し、詳細には低粘度のシリコーン油に対し膨潤性を有するシリコーン重合物を含む化粧料用組成物及び、該組成物を含有してなる化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーン油は、さらっとした感触で伸びが良く、撥水性が良いなどの優れた特性から化粧料用油剤として用いられている。なかでも低粘度シリコーン油は、べたつきが無く感触が軽い化粧料を構成するために多用されている。
【0003】
シリコーン油は一般の油剤との相溶性、及び増粘剤との相性が悪いため低粘度シリコーン油の粘度コントロールは比較的難しいが、これらのシリコーン油剤の粘度コントロールを行ったり、膜感の調整を行う為の素材として、特定のシリコーンゲルによってシリコーン油などの油剤をペースト状にした原料が市販されている。例えばこれらの原料としては、KSG−15、KSG−16、KSG−045Z等(信越化学工業製)が市販されている。これらの素材は化粧料の粘度コントロールをしたり、パウダー原料では得られないような連続的な独特の膜感を演出する事ができるため、様々な化粧料で広く利用されている。
【0004】
しかしながら、化粧の膜感を十分に発揮する為これらの素材を多量に添加すると、化粧料にわずかにベタつきを与えてしまうため、よりべた付きの少ない素材の開発が求められている。また、低粘度シリコーン油の増粘剤として、特定のシリコーンゲルを増粘剤とし、該重合物を低粘度シリコーン油とを剪断力下で処理することにより、均一なペースト状組成物を得る方法が提案されている(特許文献1〜4)が化粧料への添加量を多くすると、皮膚へ塗布したときのべたつきを伴う。また、シリコーン増粘剤の製造方法と増粘効果に関する研究によれば(非特許文献1)、シリコーン重合物を得る工程で、該重合物と反応性のないシリコーン油を添加すると、その添加量に比例して増粘効果が著しく向上することが知られている。しかしながら、添加量を多くすると、得られた重合物を皮膚へ塗布したときのべたつき感も増加してしまう。
【0005】
このべた付きを改善するために、架橋構造の一部に側鎖を持たせたシリコーン重合物があるが(特許文献7)、十分な対策にはなっていない。さらに、化粧料に配合した場合、撥油性には極めて乏しく、皮脂などにより皮膜の強度が低下し、十分な色移り防止機能などが得られなかった。また、耐摩擦性の点でも満足できるものではなかった。特許文献6では、フッ素基含有化合物、特に分子量5000〜1000000の高分子化合物を上記ペースト状シリコーン組成物とともに化粧料に添加するという方法が提案されているが、このような高分子量のフッ素化合物は、他材料との親和性が著しく乏しいため、化粧料に配合しても経時で分離したり、化粧料の増粘を引き起こしたり、配合量や他の配合材料の選定に制限が生じてしまう。
【0006】
特許文献5には、フッ素置換アルキル基含有量の高いフッ素変性シリコーン油(ペンタ−3,3,3−トリフルオロプロピルペンタメチルシクロペンタシロキサンなど)に対して膨潤性を有し、撥水性、撥油性に優れた均一なペースト状組成物が開示されている。しかし、この組成物は化粧品に配合した際にさっぱり感を与えるものの、フッ素置換アルキル基を含まないシリコーン材料や、他の化粧品材料に対する親和性に乏しく、また経時での安定性が良くないため、化粧品への配合に際し、配合量や他の配合材料の選定に制限が生じてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公平6−55897号公報
【特許文献2】特公平8−6035号公報
【特許文献3】特許2582275号公報
【特許文献4】特許3242874号公報
【特許文献5】特許4341871号公報
【特許文献6】特開2000−327528号公報
【特許文献7】特開2008−115358号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Soc.Cosmet.Chem.Jpn.,27(3),480−483(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記のようなシリコーンゲルを用いる他に、例えば、シリコーンゴムパウダーや、疎水性シリカ等の低粘度シリコーンを吸油するパウダーを添加して粘度コントロールや化粧膜コントロールをする方法が知られているが、これらは化粧料にキシミ感、よれなど余計なパウダー感を与えてしまう場合がある。よって、化粧料に余計なパウダー感を与えず、べた付きの少ないシリコーンゲル素材の開発が求められている。
【0010】
本発明は、低粘度のシリコーン油に膨潤性を有し、他の化粧品油剤との親和性が良い化粧料用組成物及び該組成物を含有してなる化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定構造の含フッ素シリコーン重合物が低粘度シリコーン油に対して優れた膨潤性を有し、均一な化粧料用組成物を与えることができ、かつ、保存安定性、撥水性、撥油性に優れ、べたつきを抑えた良好な化粧料を提供できることを見出し本発明に至った。
【0012】
即ち、本発明は、
(A)下記式(1)で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン;
【化1】

(式中、Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、もしくは炭素数3〜30のパーフルオロポリエーテル基、Rは互いに独立に、炭素数1〜10の、脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、Rは互いに独立に、ビニル基または、炭素数1〜10の、脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、kは0〜10の整数であり、但し、1分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有し、Xは2価の有機基であり、mは0〜200の整数、nは0〜100の整数である)
(B)下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
【化2】

(式中、Rは互いに独立に、水素原子または炭素数1〜10の、脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、pは0〜10の整数であり、但し、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有し、qは0〜200の整数、rは0〜100の整数であり、ただし、式(1)のn及び式(2)のrは同時に0とならず、式(1)中のケイ素原子に結合したビニル基あるいは式(2)中のケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも一方が3以上であり、Rf、X、Rは前記と同じ基を意味する)
(C)下記式(3)で示される片末端反応性オルガノポリシロキサン;
【化3】

(式中、Rは水素原子またはビニル基であり、xは0〜100の整数であり、Rは前記と同じ基を意味する)
を付加重合させて得られ、(A)〜(C)成分の合計質量に対し10質量%〜30質量%のフッ素原子を含有することを特徴とする、三次元架橋構造を有する含フッ素シリコーン重合物と、
(D)25℃における動粘度が50mm/s以下の低粘度シリコーン油
を含有する化粧料用組成物、及び該組成物を含有して成る化粧料、さらには、特定の構造を有する分岐型シリコーン界面活性剤を含有する化粧料に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化粧料用組成物は、低粘度のシリコーン油に対し膨潤性を有するシリコーン重合物を含むことにより、他の化粧料材料との親和性が良く、非常に軽くなめらかな感触を与える化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
含フッ素シリコーン重合物
本発明の含フッ素シリコーン重合物は、下記に示す(A)〜(C)成分のオルガノポリシロキサンを付加重合させることによって得られる、三次元架橋構造を有する重合体生成物であり、分子中に所定量のフッ素原子、及び、所定量のシリコーン側鎖を有することを特徴とする。
【0015】
(A)成分及び(B)成分は、それぞれ上記式(1)及び(2)においてRfで示す基を有するシロキサン単位を含んでいても、含まなくてもよいが、本発明の含フッ素シリコーン重合物は、(A)成分及び(B)成分中のフッ素原子の合計質量が(A)〜(C)成分の合計質量に対し10質量%〜30質量%、好ましくは15質量%〜27質量%となる量でフッ素原子を含有する。前記下限値よりフッ素含有率が低いと、含フッ素置換基で変性した効果が発現しにくく、フッ素化合物特有の軽さやすべり性などが得られにくくなってしまう。また、前記上限値よりフッ素含有率が高いと、(D)成分の低粘度シリコーン油との親和性が低下してしまうため、付加重合後の三次元架橋構造中に低粘度シリコーン油が包蔵されにくくなり、低粘度シリコーン油の分離排出が起こりやすくなってしまう。
【0016】
以下、各成分について詳述する。
【0017】
(A)ビニル基含有オルガノポリシロキサン
(A)成分は、下記式(1)で示され、1分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有するオルガノポリシロキサンである。
【化4】

【0018】
上記式(1)において、Rfは炭素数1〜10、好ましくは3〜6のパーフルオロアルキル基もしくは炭素数3〜30、好ましくは8〜20のパーフルオロポリエーテル基である。パーフルオロアルキル基としては、トリフルオロプロピル基、ノナフルオロブチル基、トリデカフルオロヘキシル基、ヘプタデカフルオロオクチル基などが挙げられ、特に好ましくは、ノナフルオロブチル基とトリデカフルオロヘキシル基が挙げられる。パーフルオロポリエーテル基としては、下記式(4)及び(5)に示すものが挙げられ、特に式(4)で示すパーフルオロポリエーテル基であることが好ましい。
【化5】

(式中、s及びtはそれぞれ1〜9の整数であり、好ましくは2〜5の整数である。)
【0019】
上記式(1)において、kは0〜10、mは0〜200、nは0〜100の整数であり、好ましくは、kは1〜5、mは50〜120、nは5〜30の整数である。
【0020】
上記式(1)中、Xは2価の有機基である。特に、炭素数2〜12、好ましくは2〜8の、酸素原子または窒素原子を有していてもよい2価の有機基であり、このようなXの具体例としては、下記に示すものが挙げられる。
【化6】

【化7】

【0021】
上記式(1)中、Rは互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは1〜4の、脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、このような一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、等が挙げられる。好ましくはメチル基、n−ブチル基などが挙げられる。
【0022】
は、互いに独立に、ビニル基、あるいは炭素数1〜10、好ましくは1〜4の、脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、このような一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、等が挙げられる。Rは、好ましくはビニル基であり、上記kが0の場合にはRはいずれもビニル基であり、kが1の場合にはRの少なくとも1はビニル基である。
【0023】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
(B)成分は、下記式(2)で示され、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有する化合物であり、(A)成分と付加重合反応することによって架橋構造を形成する。
【化8】

【0024】
上記式(2)中、pは0〜10の整数、qは0〜200の整数、rは0〜100の整数であり、好ましくは、pは2〜5の整数、qは1〜50の整数、rは0〜20の整数である。ただし、上記式(1)のn及び上記式(2)のrは同時に0とならない。Rは互いに独立に、水素原子あるいは炭素数1〜10、好ましくは1〜4の脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、好ましくはメチル基である。但し、pが0の時、Rはいずれも水素原子であり、pが1の時はRの少なくとも1は水素原子である。ただし、式(1)中のケイ素原子に結合したビニル基あるいは式(2)中のケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも一方は3以上である。R、X及びRfは(A)成分の為に上述したものと同じ基を意味する。
【0025】
(C)片末端反応性オルガノポリシロキサン
(C)成分は側鎖形成用オルガノポリシロキサンであり、(A)成分及び/または(B)成分に結合してシリコーン側鎖を形成する。含フッ素シリコーン重合物がシリコーン側鎖を有することにより、低粘度シリコーン油に対するシリコーン重合物の膨潤性(増粘性)を向上させ、化粧料用組成物の安定性を向上させることができる。本発明の(C)成分は、下記式(3)で示され、ケイ素原子に結合した水素原子またはビニル基のいずれか一方を有する片末端反応性オルガノポリシロキサンである。
【化9】

【0026】
式中、Rは水素原子またはビニル基である。Rは互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは 1〜4の、脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基であり、このような一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の低級アルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基、等が挙げられる。好ましくはメチル基、n−ブチル基などが挙げられる。xは0〜100、好ましくは5〜30の整数である。
【0027】
シリコーン側鎖は、(A)成分あるいは(B)成分のうち、フッ素含有量の高い方のオルガノポリシロキサンに導入することが好ましい。これにより、(D)低粘度シリコーン油に不溶であるが十分膨潤する性質を有するシリコーン重合物となり、(D)低粘度シリコーン油を良好に包蔵した化粧料用組成物を得ることができる。シリコーン側鎖を(A)成分に導入する場合は、上記式(3)においてRが水素原子である(C)成分を(A)成分中のビニル基1モルに対し、(C)成分中のSiH基が0.1〜0.4モル、好ましくは0.15〜0.3モルとなる量で使用する。また、シリコーン側鎖を(B)成分に導入する場合は、上記式(3)においてRがビニル基である(C)成分を(B)成分中のSiH基1モルに対し、(C)成分中のビニル基が0.1〜0.4モル、好ましくは0.15〜0.3モルとなる量で使用する。(C)成分中の反応性基の量が前記下限値未満では、低粘度シリコーン油に対するシリコーン重合物の膨潤性が劣り、保存安定性が下がる。また、前記上限値超では、シリコーン側鎖を導入した後の(A)成分または(B)成分に十分な量の反応性基が残らず、三次元架橋構造の形成が不十分となり、(D)低粘度シリコーン油が三次元架橋構造中に包蔵されにくくなる。これによって、(D)低粘度シリコーン油の使用量が比較的多い場合や、化粧料用組成物を剪断力下で処理する上で(D)低粘度シリコーン油と共に用いる場合に、化粧料用組成物が(D)低粘度シリコーン油に溶解しやすくなり、得られる化粧料用組成物が十分な増粘性を獲得できなくなる為好ましくない。
【0028】
(A)成分と(B)成分は、シリコーン側鎖を導入した後の(A)成分及び/または(B)成分において、(A)成分が有するビニル基1モルに対し、(B)成分が有するSiH基が0.7〜1.3モル、好ましくは0.8〜1.1モルとなる量で反応させるのがよい。これにより所望の三次元架橋構造をとることができる。(A)成分または(B)成分は各成分中にビニル基またはSiH基を0.5〜50モル%で含有するのが望ましい。反応性基の含有量が前記上限値より多いと重合生成物の三次元架橋構造の架橋密度が高くなりすぎるため、(D)低粘度シリコーン油が三次元架橋構造中に包蔵されにくくなり、表面にブリードし易く安定性が低下するため好ましくない。
【0029】
化粧料用組成物
(A)〜(C)成分の付加重合反応は、下記に示す(D)低粘度シリコーン油の存在下で行うことができる。本発明の化粧料用組成物は、(A)〜(C)成分を付加重合反応して得られるシリコーン重合物と該(D)低粘度シリコーン油よりなる組成物である。また、本発明の化粧料用組成物は、反応に使用した(D)低粘度シリコーン油とは別の(D)低粘度シリコーン油を、付加重合反応後に得られる組成物にさらに添加して得られる組成物であってもよい。
【0030】
(D)低粘度シリコーン油
(D)成分は、25℃における動粘度が50mm/s以下、好ましくは50mm/s〜0.65mm/s、より好ましくは10mm/s〜0.65mm/sの低粘度シリコーン油である。前記動粘度が50mm/sを超えると、表面にブリードし易い安定性の低い組成物となり、また、ベタツキ感が現れさっぱり感が低下するため好ましくない。低粘度シリコーン油は、無官能性の(即ち、ヒドロシリル化付加反応に関与し得るケイ素原子結合アルケニル基及びSiH基を分子中に含有しない)オルガノポリシロキサンであり、このような低粘度シリコーン油としては、低重合度の鎖状、または分岐状のメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、エチルポリシロキサン、エチルメチルポリシロキサン、エチルフェニルポリシロキサン、環状のオクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等があげられ、必要に応じてこれらの1種または2種以上が適宜選択して用いられる。
【0031】
(D)成分は、(A)〜(C)成分の合計量100質量部に対して、10〜1000質量部、好ましくは20〜700質量部、より好ましくは50〜500質量部で使用するのがよい。低粘度シリコーン油の配合量が10質量部より少ないと、低粘度シリコーン油を共存させた効果が小さくなり得られる組成物の増粘性が低くなる。また、ゴム、プラスチックに配合する場合に柔軟性付与効果、潤滑性付与効果が低下するため好ましくない。さらに、得られるペースト状組成物の透明性が失われ易くなる。また、(D)低粘度シリコーン油の割合が1000質量部より多いと、(A)〜(C)成分の反応率が低下し十分な増粘性を有する組成物が得られなくなる。特に、(A)〜(C)成分の合計重量100質量部に対し、10〜200質量部、特に20〜100質量部を用いて付加重合反応することが好ましく、(D)低粘度シリコーン油を前記範囲の量で用いることにより、重合反応が進行するに従って反応生成物は次第に液状から軟かい塊状を経て粉末状となる。
【0032】
(D)低粘度シリコーン油存在下での(A)〜(C)成分の付加重合反応は、従来公知の方法を用いればよく、例えば、有機溶剤に可溶性の白金化合物(例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸−ビニルシロキサン錯体等)又はロジウム化合物の存在下、室温あるいは加温下(約50〜150℃)で反応させればよい。有機溶剤としては、メタノール、エタノール、2−プロパノール、ブタノール等の脂肪族アルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、n−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の脂肪族もしくは脂環式炭化水素、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエタン、トリクロロエチレン、フッ化塩化炭化水素等のハロゲン化炭化水素を使用することができる。
【0033】
触媒として、特に好ましくは、塩化白金酸、米国特許第3,159,601号、同第3,159,662号、同第3,775,452号明細書などに記載されているヒドロシリル化反応に用いられる白金化合物、例えば〔Pt(PPh 〕などが例示されるが、これは例えばビニルシロキサンと白金化合物との錯化合物、さらにこれをアルコール変性化したものが良い。その中でも特に、特公昭33−9969号公報記載の塩化白金酸、あるいはビニルシロキサンと塩化白金酸との錯化合物がより好ましい。
【0034】
付加重合の具体的な方法としては、例えば、撹拌装置を備えたプラネタリーミキサー等の反応器を用いて、所要量の(A)〜(D)成分を配合した後、さらに触媒を添加し、約50〜150℃程度の適当な温度で撹拌すればよい。その際に、まず、(A)成分及び(B)成分のうちフッ素含有率の高い方の成分と、(C)成分とを付加反応させてどちらか一方のオルガノポリシロキサン鎖にシリコーン側鎖を導入した後に、該オルガノポリシロキサンをもう一方のオルガノポリシロキサンと付加重合させることが好適である。このような2段階での方法を採ることにより(A)〜(C)成分の相溶性を損なうことがなく、付加重合反応を円滑に進めることができる。(A)成分と(B)成分を先に付加重合するとシリコーン側鎖形成の反応性が著しく低下し、(A)〜(C)成分を同時に仕込み一括で反応を行なうと、主鎖となるオルガノポリシロキサン骨格に所望量のシリコーン側鎖が導入される前に架橋結合が形成されてしまうため、シリコーン側鎖の特性が十分に発揮できなくなる傾向がある。
【0035】
本発明の組成物は重合反応が進行するに従って次第に液状から軟かい塊状を経て粉末状となる。微粉末状組成物を得る場合には、粉末状で得られた組成物を剪断力下で処理すればよい。この処理により、粉末状組成物はさらに粉砕され、微粉末状組成物を得ることができる。この微粉末状組成物は、表面にブリードが認められず均一な組成からなり、感触が滑らかで適度の柔軟性を備えた白色の粉体となる。
【0036】
また、ペースト状組成物またはグリース状組成物を得る場合には、塊状あるいは粉末状で得られた組成物に、さらに(D)低粘度シリコーン油を加え剪断力下で処理すればよい。当該低粘度シリコーン油は、化粧料用組成物に含まれる低粘度シリコーン油の合計量が、(A)〜(C)成分の合計重量100質量部に対し、10〜1000質量部、好ましくは20〜500質量部となる量で添加する。前記処理により、混練された均一な化粧料用組成物が得られる。低粘度シリコーン油が10質量部未満であると均一なペースト状とならず、また、1000質量部を超えると、最終生成物は十分な増粘性を獲得できず、良好なペースト状ないしグリース状にはならない。
【0037】
組成物を前記剪断力下で処理することにより、比較的高粘度で均一、かつ外観が滑らかなペースト状の組成物を得ることができる。剪断力が加わらない、あるいは不十分であると、低粘度シリコーン油への溶解が不十分となり、含フッ素シリコーン重合物と低粘度シリコーン油が混和せず不均一な組成物となるため、低粘度となり十分な増粘性を獲得することができない。また、膨潤不十分な含フッ素シリコーン重合物が最終組成物中に残留することから、ざらついた感触となり、外観に滑らかさがなくなる。剪断力下で行なう処理は、例えば、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドグラインダー、コロイドミル、ガウリンホモジナイザーなどで行うことができ、被処理物の性状等に応じて選択すればよい。なかでも、通常、三本ロールミルによる方法が好ましい。
【0038】
また、本発明は、上記化粧料用組成物を配合してなる化粧料である。本発明の化粧料用組成物は低粘度シリコーン油に対し膨潤性を有し、他材料との親和性がよく、べたつきのない化粧料用組成物であるため、化粧料に配合する事により軽い感触でべたつきの少ない化粧料の提供が可能になる。本発明の化粧料中の化粧料用組成物の含有率は0.1〜70質量%、好ましくは1.0〜50質量%である。0.1質量%未満ではそれらを用いた化粧料に保存安定性が得られず、70質量%を超えると皮膚へ塗布した時にさっぱり感が得られなくなる。
【0039】
分岐型シリコーン活性剤
本発明の化粧料は、特定の分岐型シリコーン活性剤をさらに含有することにより乳化に伴うべたつき感を低減する。分岐型シリコーン活性剤とは、疎水基として分岐型のシリコーン骨格を、親水基としてポリオキシアルキレン基又はポリグリセリン基の骨格を有する界面活性剤である。これらは、PEG−9ポリシロキシエチルジメチコン、ラウリルPEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ラウリルポリグリセリル−3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ポリグリセリル−3ジシロキサンジメチコンの名称で知られており市販品が使用できる。市販品の例としては、KF−6028、KF−6028P、KF−6038、KF−6100、KF−6104、KF−6105(何れも信越化学工業(株)製)がある。また上記活性剤でポリグリセリン鎖を有する活性剤は、顔料の分散性にも優れている事が知られている。配合量は、作製する化粧料にもよるが化粧料中に0.05〜6質量%、より好ましくは0.05〜4質量%となる量で含有することがよい。
【0040】
化粧料に配合すべき他の成分としては、化粧品に通常用いられる成分、例えば油剤、粉体成分、界面活性剤、増粘剤、皮膜剤、紫外線吸収剤、薬剤等、を用いることができる。これらの配合量は本発明の効果を損なわない範囲の量であればよい。また、本発明の化粧料の構成成分としてはさらに必要に応じて水を加えることができる。本発明中の化粧料中の水の含有率は0.1〜90質量%であり、化粧料形態により増減して配合される。水を含有する化粧料は、水溶液、水中油型エマルション(O/W型)、油中水型エマルション(W/O型)の他、O/W/O型、W/O/W型エマルションの形態をとることができる。
【0041】
(a)油剤
油剤としては、特に限定されず広く化粧料に用いられる室温で液体状、半固体状もしくは固体状の油剤が挙げられる。該油剤としては、例えば炭化水素油、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、動植物油、フッ素系油、シリコーン油を挙げることができる。なお、本明細書において「室温」は25±5℃を意味する。本発明の化粧料中の(a)油剤の含有率は化粧料の剤型によって異なり、本発明の効果を損なわない範囲の量であればよいが、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは1〜30質量%であるのがよい。0.1質量%未満では油剤の滑り性、保湿性等の効果が発揮できないことがあり、50質量%を越えると保存安定性が低下する傾向がある。
【0042】
炭化水素油としては、オゾケライト、α−オレフィンオリゴマー、パラフィン、イソパラフィン、イソドデカン、スクワラン、セレシン、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス、ポリイソブチレン、水添ポリイソブテン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン等が挙げられる。これらの炭化水素油のうち室温で揮発性のものは、その揮発後に皮膚上に皮膜を形成させ、もしくはさっぱりとした感触を与える。不揮発性の液状油は感触や艶の向上のために使用され、固形油は他の油剤を増粘や固化させる目的等に使用される。
【0043】
高級脂肪酸としては、直鎖状、分岐状、飽和、不飽和のいずれであってもよく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。これらは、乳化、乳化の補助剤や油の増粘剤等化粧料の安定化の目的等で使用される。特に分岐脂肪酸であるイソステアリン酸は、乳化の補助剤として有用である。
【0044】
高級アルコールとしては、ミリスチルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、オクチルドデカノール、セチルアルコール、コレステロール、フィトステロール、バチルアルコール、セラキルアルコール等が挙げられる。これらは、乳化の補助剤として有用である。
【0045】
エステル油としては、2−エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシルパルミチン酸2−エチルヘキシル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール等のモノエステル;セバシン酸ジイソプロピル、リンゴ酸ジイソステアリル等の二塩基酸エステル;トリエチルヘキサノイン等のトリグリセライド;トリイソステアリン酸ポリグリセリル−2等のポリグリセリンエステル;トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、トリ−2−エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン等のトリメチロールプロパン誘導体;12−ヒドロキシステアリン酸フィトステリル、イソステアリン酸フィトステリル等のフィトステロールエステル;N−ラウロイル−L−グルタミン酸−2−オクチルドデシル等のアミノ酸系エステル;(ヒドロキシステアリン酸・ステアリン酸・ロジン酸)ジペンタエリスリトール等のヒドロキシステアリン酸やロジン酸等の脂肪酸ペンタエリスリトールエステル等が挙げられ、感触調整、成分の相溶化、顔料分散性の向上、つやの向上、エモリエント・保湿性の向上等の効果を奏する。
【0046】
動植物油としては、アボカド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、イボタロウ、カカオ脂、カルナウバロウ、キャンデリラロウ、小麦胚芽油、ゴマ油、コメ胚芽油、コメヌカ油、サフラワー油、シアバター、ホホバ油、スクワラン、大豆油、ツバキ油、月見草油、トウモロコシ油、ナタネ油、米ヌカロウ、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、マカデミアナッツ油、ミツロウ、メドウフォーム油、綿実油、モクロウ、モンタンロウ、落花生油、ラノリン、液状ラノリン、卵黄油を精製して得られる動植物油が挙げられる。また、これらを水素添加品としたホホバロウ、硬化ヒマシ油、硬化ナタネ油、還元ラノリン等が挙げられる。
【0047】
フッ素系油としては、パーフルオロポリオキシアルキレン、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0048】
シリコーン油としては、ジメチルポリシロキサン、カプリリルメチコン、セチルジメチコン、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルヘキシルポリシロキサン等の直鎖シリコーン油;オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン等の環状オルガノポリシロキサン;トリストリメチルシロキシメチルシラン、テトラキストリメチルシロキシシラン等の分岐状オルガノポリシロキサン;アミノ変性オルガノポリシロキサン、高重合度のガム状ジメチルポリシロキサン、ガム状アミノ変性オルガノポリシロキサン、ガム状のジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体等のシリコーンゴム、及び高級脂肪酸変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、長鎖アルキル変性オルガノポリシロキサン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、フッ素変性オルガノポリシロキサンが挙げられる。中でも、トリエチルヘキサノイン、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、イソノナン酸イソトリデシル等の分岐構造を有するエステル油、及び室温における動粘度が1.5〜10mm/sであるシリコーン油は、べたつきが少なくさらっとした感触のため好ましい。
【0049】
(b)粉体成分
粉体成分としては、化粧料に通常用いられるものであれば、その形状(球状、針状、板状、樹状、繊維状、不定形等)や粒子径、粒子構造(多孔質、無孔質、中空、中空多孔質等)を問わず、使用することができる。このような粉体としては、例えば無機粉体、有機粉体、金属石鹸、着色用粉体等が挙げられる。これらの粉体成分は、表面活性を抑える為、分散性を向上するため、化粧料塗布時の感触の改善等の目的で、金属石鹸、シリカ、酸化アルミ、水酸化アルミその他の公知の方法によって表面処理されたものであっても良く複合化粉体としても良い。粉体成分を用いる場合の配合量としては、化粧料の剤型によって異なり、本発明の効果を損なわない範囲の量であればよいが、化粧料の総量に対して0.1〜99質量%、好ましくは0.1〜50質量%、さらに好ましくは0.5〜40質量%であるのがよい。
【0050】
無機粉体の例としては、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化セリウム等の紫外線吸収散乱剤、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、合成金雲母、シリカ、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素等の体質顔料が挙げられる。上記の紫外線吸収散乱剤は、あらかじめ油剤に分散させた分散物を用いることもできる。これらの市販品としては、SPD−T5,SPD−Z5(何れも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0051】
有機粉体の例としては、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、メチルメタクリレートクロスポリマー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロン等のナイロンパウダー、または、これらの繊維状パウダー、ジメチルポリシロキサンを架橋した構造を持つ架橋型シリコーン微粉末、架橋型球状ポリメチルシルセスキオキサン微粉末、架橋型球状オルガノポリシロキサンゴム表面をポリメチルシルセスキオキサン粒子で被覆してなる微粉末、樹脂の積層末、デンプン末、脂肪酸デンプン誘導体末、ラウロイルリジン等が挙げられる。
【0052】
特に、粉体の一部に(ビニルジメチコン/メチコンシルセスキオキサン)クロスポリマー、(ジフェニルジメチコン/ビニルジフェニルジメチコン/シルセスキオキサン)クロスポリマーのような架橋型球状オルガノポリシロキサンゴム表面をポリメチルシルセスキオキサン粒子で被覆した粉末を用いる事により、分散性が良くさらっとしたやわらかい優れた感触を化粧料に付与することができる。これらの市販品としては、KSP−100、KSP−101、KSP−102、KSP−105、KSP−300(何れも信越化学工業(株)製)等がある。
【0053】
金属石鹸(界面活性剤金属塩粉体)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
【0054】
着色用の粉体としては、酸化チタン、酸化鉄、チタンブラック、カーボンブラック、水酸化クロム、酸化クロム、紺青、群青、アルミニウムパウダー等の無機着色顔料や、赤色226号、黄色4号等のタール色素、カルミン等の天然色素、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆合成金雲母等のパール顔料等がある。
【0055】
これらの粉体は本発明の効果を妨げない範囲で、市販の皮膜形成剤や表面処理剤を必要に応じて一種、又は二種以上用いて表面処理して使用することができる。表面処理剤としては例えばKF−9908、KF−9909、KP−574(何れも信越化学工業(株)製)等が目的に応じて優れた分散性を示す。
【0056】
(c)界面活性剤
化粧料成分のうち界面活性剤としては通常の化粧料に使用されるものであれば特に制限されるものではなくいずれのものも使用することができる。このような界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、非イオン性及び両性の活性剤がある。界面活性剤を用いる場合の配合量は本発明の効果を損なわない範囲の量であればよいが、化粧料の総量に対して好ましくは0.1〜20質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0057】
アニオン性界面活性剤としては、例えばステアリン酸Na等の脂肪酸石鹸は、O/W型の乳化剤として知られており、またイソステアリン酸Na等分岐脂肪酸石鹸は、W/Oの安定性向上に使用される場合がある。両性界面活性剤としては、ベタイン、ホスファチジルコリン、アミノカルボン酸塩、イミダゾリン誘導体、アミドアミン型等が挙げられる。
【0058】
非イオン性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、メチルグルコシド脂肪酸エステル、アルキルポリグルコシド、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等、疎水基が炭化水素系活性剤や、本発明以外のシリコーン系活性剤がよく知られている。
【0059】
(d)増粘剤
増粘剤は化粧品に通常用いられているものであれば特に限定されない。このような増粘剤は水性タイプ、油性タイプに分ける事ができる。増粘剤を用いる場合の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲の量であればよいが、化粧料の総量に対して好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.1〜10質量%である。
【0060】
水性タイプの増粘剤としては、微粒子シリカ;ベントナイト、ヘクトライト等の無機粉体;アラビアゴム、グアーガム、カラギーナン、寒天、クインスシード、ローカストビーンガム、キサンタンガム、プルラン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシビニルポリマー等のビニル系高分子、(アクロイルジメチルタウリンアンモニウム/VP)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa) コポリマー、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子等の水溶性高分子が使用できる。上記アクリル系高分子を用いる事により比較的容易にO/W型乳化の安定化を図る事が可能である。
【0061】
油性タイプの増粘剤としては、シリル化シリカ等の疎水化微粒子シリカ、ジステアルジモニウムヘクトライト等の有機変性粘土鉱物、アルミニウムステアレート等の金属セッケン、(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリン、ステアリン酸イヌリン等の多糖脂肪酸エステル、酢酸ステアリン酸スクロース等のショ糖脂肪酸エステル、架橋型オルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0062】
疎水化微粒子シリカは、少量で多量の油性成分を吸収するため、また有機変性粘土鉱物は界面活性剤との併用により乳化安定性を向上したり、極性の添加物例えば炭酸プロピレン等の添加により増粘させる事ができるため、さらに(パルミチン酸/2−エチルヘキサン酸)デキストリンは、離しょうを抑えた増粘ゲルを形成できるため、それぞれ油性又はW/O化粧料の増粘、安定化に有用である。
【0063】
架橋型オルガノポリシロキサンとしては、液状油に対し、自重以上の該液状油を含んで膨潤するもので、分子中に親水基を含有していてもいなくても良い。これらの市販品としては、油剤でペースト状にしたKSGシリーズ(信越化学工業(株)製)等がある。これらの架橋型オルガノポリシロキサンは本発明の化粧料用組成物と併用する事が出来る。
【0064】
(e)皮膜剤
皮膜剤は化粧料に通常用いられているものであれば特に限定されない。このような皮膜剤としては、水性タイプと油性タイプに分ける事ができる。水性タイプの皮膜剤としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニル・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸系共重合体のエマルション等が使用できる。皮膜剤を用いる場合の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲の量であればよいが、化粧料の総量に対して好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜20質量%である。
【0065】
油性タイプの皮膜剤としては、エイコセン・ビニルピロリドン共重合体等のα−オレフィン・ビニルピロリドン共重合体、アクリル酸/アルキルアクリレート共重合体、トリメチルシロキシケイ酸等のシリコーン網状樹脂、(アクリル酸アルキル/ジメチコン)ポリマー等のアクリル/シリコーングラフト又はブロック共重合体のアクリルシリコーン樹脂、さらにアクリルシリコーン樹脂及びシリコーン網状樹脂はその分子内にさらに、ピロリドン部分、長鎖アルキル部分、ポリオキシアルキレン部分及びフルオロアルキル部分、カルボン酸などのアニオン部分を含有しているものも使用できる。これらの皮膜剤の市販品としてはKP−543、KP−545、KP−550(何れも信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0066】
(f)紫外線吸収剤
紫外線吸収剤は通常の化粧料に使用されるものであれば特に制限されない。紫外線吸収剤としては、例えばポリシリコーン−15、オクトクリレン、メトキシケイ皮酸エチルヘキシル、t−ブチルメトキシジベンゾイルメタン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、サリチル酸オクチル、ホモサレート、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、ヒドロキシメトキシベンゾフェノンスルホン酸、ジメチルPABAオクチル(パラジメチルアミノ安息香酸2−エチルへキシル)等が挙げられる。
【0067】
(g)薬剤
薬剤は、例えばアルミニウムクロロハイドレート等の制汗剤;トコフェロール等の酸化防止剤;グリシン、セリン、アルギニン、グルタミン酸等のアミノ酸類及びその誘導体;ビタミンA油、レチノール等のビタミンA類、ピリドキシン塩酸塩、パンテノール、パントテニルエチルエーテル、ニコチン酸アミド、シアノコバラミン等のビタミンB類、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸グルコシド等のビタミンC類、α−トコフェロール等のビタミンE類、等のニコチン酸類その他ビタミン類及びその誘導体;グリチルリチン酸K2塩等の抗炎症剤等が挙げられる。
【0068】
本発明の化粧料用組成物は、スキンケア製品、メークアップ製品、頭髪製品、制汗剤製品、紫外線防御製品等の種々の化粧料に配合することができる。化粧料の形態としては特に限定されず、固体、粉体、液体、油中水型エマルション、水中油型エマルション、非水エマルション等のエマルション、などであってよい。本発明の化粧料の具体的な用途としては特に限定はないが、例えば化粧水、乳液、クリーム、クレンジング、パック、マッサージ料、美容液、美容オイル、洗浄剤、ハンドクリーム、リップクリーム、しわ隠し化粧料、メークアップ下地、コンシーラー、白粉、パウダーファンデーション、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、油性ファンデーション、頬紅、アイシャドウ、マスカラ、アイライナー、アイブロウ、口紅、美爪料、シャンプ−、リンス、トリートメント、ヘアセット剤、制汗剤化粧料、日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム等が挙げられる。
【実施例】
【0069】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を詳細に説明する。但し、本発明は下記実施例に制限されるものではない。
【0070】
[実施例1]
プラネタリーミキサーに下記式(6)
【化10】

で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン100.0g(フッ素含有率25.5質量%、ビニル基含有量2.96×10-2mol/100g)と、
下記式(7)
【化11】

で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5.27g(SiH基含有量5.64×10−3mol/5.27g)、及びジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)165.8gを仕込む。白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.017g(Pt:0.17mg相当)を加えて80℃で1時間撹拌した。
【0071】
次に、前記反応生成物に下記式(8)
【化12】

で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン5.26g(フッ素含有率18.4質量%、SiH基含有量2.26×10−2mol/5.26g)と上記と同様の白金錯体0.017gを添加し、80℃でさらに1時間攪拌して、シリコーン重合物のジメチルポリシロキサン分散物を得た。得られた該シリコーン重合物の分散物は白色の柔軟性を備えた粉体であった(シリコーン重合物1、ジメチルポリシロキサンを除く該シリコーン重合物中のフッ素基含有量23.9質量%)。
【0072】
前記シリコーン重合物1を100.0質量部、及びジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)150.0質量部を分散混合し、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をジメチルポリシロキサンに膨潤させて無色透明のペースト状化粧料用組成物を得た。
【0073】
[実施例2]
プラネタリーミキサーに下記式(9)
【化13】

で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン100.0g(フッ素含有率20.6質量%、ビニル基含有量3.61×10−2mol/100g)と前記式(7)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン6.43g(SiH基含有量6.88×10−3mol/6.43g)、デカメチルシクロペンタシロキサン(動粘度4mm/s)110.3gを仕込み、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.017g(Pt:0.17mg相当)を加えて80℃で1時間撹拌した。
【0074】
次に、前記反応生成物に下記式(10)
【化14】

で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.83g(SiH基含有量2.75×10−2mol/3.83g)と上記白金錯体0.017gを加え、80℃でさらに1時間攪拌して、シリコーン重合物のデカメチルシクロペンタシロキサン分散物を得た。得られた該シリコーン重合物の分散物は白色の柔軟性を備えた粉体であった(シリコーン重合物2、デカメチルシクロペンタシロキサンを除く該シリコーン重合物中のフッ素基含有量18.7質量%)
【0075】
シリコーン重合物2を100.0質量部と、デカメチルシクロペンタシロキサン200.0質量部を分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をデカメチルシクロペンタシロキサンに膨潤させて無色透明のペースト状化粧料用組成物を得た。
【0076】
[実施例3]
プラネタリーミキサーに下記式(11)
【化15】

で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン100.0g(フッ素含有率24.9質量%、SiH基含有量6.03×10−2mol/100g)と下記式(12)
【化16】

で示されるオルガノポリシロキサン8.90g(ビニル基含有量1.09×10−2mol/8.90g)、及びトリストリメチルシロキシメチルシラン(動粘度1.5mm/s)188.4gを仕込む。白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.028g(Pt:0.28mg相当)を加えて80℃で1時間撹拌した。
【0077】
次に、前記反応生成物に下記式(13)
【化17】

で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン79.5g(フッ素含有率20.4質量%、ビニル基含有量4.38×10−2mol/79.5g)と上記白金錯体0.028gを追加し、80℃でさらに1時間攪拌して、シリコーン重合物のトリストリメチルシロキシメチルシラン分散物を得た。得られた該シリコーン重合物の分散物は白色の柔軟性を備えた粉体であった(シリコーン重合物3、トリストリメチルシロキシメチルシランを除く該シリコーン重合物中のフッ素基含有量21.8質量%)
【0078】
前記シリコーン重合物3を100.0質量部と、トリストリメチルシロキシメチルシラン250.0質量部とを分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をトリストリメチルシロキシメチルシランに膨潤させて無色透明のペースト状化粧料用組成物を得た。
【0079】
[実施例4]
プラネタリーミキサーに下記式(14)
【化18】

で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン100.0g(フッ素含有率25.9質量%、ビニル基含有量3.25×10−2mol/100.0g)と前記式(7)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン6.57g(SiH基含有量6.88×10−3mol/6.57g)、ジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)109.9gを仕込み、白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.017g(Pt:0.17mg相当)を加えて80℃で1時間撹拌した。
【0080】
次に、前記反応生成物に前記式(10)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.36g(SiH基含有量2.42×10−2mol/3.36g)と上記白金錯体0.017gを加え、80℃でさらに1時間攪拌して、シリコーン重合物のジメチルポリシロキサン分散物を得た。得られた該シリコーン重合物の分散物は白色の柔軟性を備えた粉体であった(シリコーン重合物4、ジメチルポリシロキサンを除く該シリコーン重合物中のフッ素基含有量23.6質量%)
【0081】
シリコーン重合物4を100.0質量部と、ジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)185.7質量部を分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をジメチルポリシロキサンに膨潤させて無色透明のペースト状化粧料用組成物を得た。
【0082】
[比較例1]
プラネタリーミキサーに下記式(15)
【化19】

で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン100.0g(フッ素含有率20.6質量%、ビニル基含有量2.41×10−2mol/100.0g)と、上記式(10)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.19g(SiH基含有量2.29×10−2mol/3.19g)、デカメチルシクロペンタシロキサン(動粘度4mm/s)113.2gを仕込む。白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.034g(Pt:0.34mg相当)を加えて80℃でさらに1時間攪拌して、シリコーン重合物のデカメチルシクロペンタン分散物を得た。得られた該シリコーン重合物の分散物は白色の柔軟性を備えた粉体であった(シリコーン重合物5、デカメチルシクロペンタシロキサンを除く該シリコーン重合物中のフッ素基含有量20.0質量%)
【0083】
シリコーン重合物5を100.0質量部と、デカメチルシクロペンタシロキサン200.0質量部とを分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をデカメチルシクロペンタシロキサンに膨潤させて無色透明のペースト状化粧料用組成物を得た。
【0084】
[比較例2]
プラネタリーミキサーに下記式(16)
【化20】

で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン100.0g(フッ素含有率35.4質量%、ビニル基含有量2.19×10−2mol/100g)と、上記式(7)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.90g(SiH基含有量4.17×10−3mol/3.90g)、ジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)159.3gを仕込む。白金/ビニルシロキサン錯体トルエン溶液0.016g(Pt:0.16mg相当)を加えて80℃で1時間撹拌した。次に、上記式(10)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン2.32g(SiH基含有量1.67×10−2mol/2.32g)と上記白金錯体0.016gを追加し、80℃でさらに1時間攪拌して、シリコーン重合物のジメチルポリシロキサン分散物を得た。得られた該シリコーン重合物の分散物は白色の柔軟性を備えた粉体であった(シリコーン重合物6、ジメチルポリシロキサンを除く該シリコーン重合物中のフッ素基含有量33.3質量%)
【0085】
シリコーン重合物6を100.0質量部と、ジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)150.0質量部とを分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をジメチルポリシロキサンに膨潤させて無色半透明のペースト状化粧料用組成物を得た。
【0086】
[比較例3]
ジメチルポリシロキサン重合物とデカメチルシクロペンタシロキサンとを混練・膨潤させたシリコーン組成物(信越化学工業製、商品名:KSG−15)。
【0087】
[比較例4]
プラネタリーミキサーに前記式(16)で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン100.0g(フッ素含有率35.4質量%、ビニル基含有量2.19×10−2mol/100g)と上記式(10)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン3.05g(SiH基含有量2.19×10−2mol/3.05g)、ジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)102.9gを仕込み、上記白金錯体0.012g(Pt:0.12mg相当)を加えて、80℃でさらに1時間攪拌して、シリコーン重合物のジメチルポリシロキサン分散物を得た。得られた該シリコーン重合物の分散物は白色の柔軟性を備えた粉体であった(シリコーン重合物7、ジメチルポリシロキサンを除く該シリコーン重合物中のフッ素基含有量34.4質量%)
【0088】
シリコーン重合物7を100.0質量部と、ジメチルポリシロキサン(動粘度2mm/s)150.0質量部とを分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をジメチルポリシロキサンに膨潤させようとしたが、該重合物は膨潤せずにジメチルポリシロキサンに粉体が分散したような状態のままであった。そのため、以下の評価の対象からは除外した。
【0089】
[撥水性・撥油性]
スライドガラス(26mm×76mm)に該化粧料用組成物0.20gを均一に塗布し、150℃で1時間加熱乾燥させる。乾燥後、室温まで放冷し、接触角計を用いて水に対する接触角を測定し、撥水性の評価とした。また、水のかわりにn-ヘキサデカンを用いて同様に接触角を測定し、撥油性の評価とした。
【0090】
[分散性]
該化粧料用組成物20.0gとデカメチルシクロペンタシロキサン80.0gを200ccビーカーに入れる。15分間ホモディスパー(プライミクス社製2.5型)で分散させ、その後30分間ビーカーを静置して、分散状態を目視観察して分散性の評価とした。
【0091】
[保存安定性]
化粧料用組成物を密閉した容器に入れ、40℃で1週間保管後の組成物の外観を目視観察し、保存安定性の評価とした。
【0092】
[感触]
軽さ及びべたつき感について、パネラー20名により、該化粧料用組成物を手の甲に塗布した時の感触を以下の指標にて評価した。
・軽さ:塗布時の塗布の軽さを1(重い)〜5(軽い)段階で評価し、パネラーの平均について、4点以上を◎、3〜4点未満を○、2〜3点未満を△、2点未満を×とした。
・べたつき感:塗布時のべたつき感を1(べたつく)〜5(べたつかない)の5段階で評価しパネラーの平均について4点以上を◎、3〜4点未満を○、2〜3点未満を△、2点未満を×とした。
【0093】
【表1】

【0094】
表1より、本発明の化粧料用組成物は、保存安定性が良好でありかつ均一なペースト状組成物であり、非常に軽く滑らかな感触を与えることがわかる。
【0095】
[実施例5]
上記で調製したシリコーン重合物2を100.0質量部とデカメチルシクロペンタシロキサン100.0質量部を分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をデカメチルシクロペンタシロキサンに膨潤させ化粧料用組成物を調製した。
【0096】
[実施例6]
実施例2においてデカメチルペンタシロキサンをジメチルポリシロキサン(KF−96L−2cs)に変えてシリコーン重合物を製造し、該シリコーン重合物100質量部とKF−96L−2cs 100.0質量部を分散混合した後、三本ロールミルにより剪断力下で十分混練し、シリコーン重合物をKF−96L−2csに膨潤させ化粧料組成物を調製した。化粧料は、KF−96L−2csを使用することにより、デカメチルシクロペンタシロキサンを用いた時以上にさらに軽くべたつきの少ないペースト状化粧料用組成物となった。
【0097】
本発明の化粧料用組成物は低粘度シリコーン油と膨潤し、べたつきのない化粧料用組成物となる。このため、本発明の化粧料用組成物を化粧料に添加する事により、よりべたつき感がなく、軽い感触の非水系化粧料を提供することができる。
【0098】
また、化粧料の油性原料中に添加した時に、水との相互作用、例えば乳化等によりべたつきが生じる場合がある。そこで乳化した時のべたつきについて実施例6〜9で評価した。
【0099】
[実施例7、8、比較例5、6]
下記の配合により、成分1〜6を混合して均一に分散した後、成分7〜10からなる溶液をディスパーで攪拌しながら添加して、W/Oエマルションを得た。実施例7及び比較例5はW/O乳液となり、実施例8及び比較例6はW/Oクリームとなった。
【0100】
【表2】

(注1)KSG−16(デカメチルシクロペンタシロキサンで膨潤させたペースト状シリコーン組成物)(信越化学工業(株)製)
(注2)ジメチコン/(PEG−10/15)クロスポリマー(信越化学工業(株)製)
(注3)PEG−9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(信越化学工業(株)製)
(注4)メチルポリシロキサン(6cs):信越化学工業(株)製
【0101】
[実施例9]
表2中の成分4(KF−6028)をKF−6017(PEG−10ジメチコン)に置き換えた他は実施例7と同様の組成及び方法で調製してW/O乳液を得た。
【0102】
[実施例10]
表2中の成分4(KF−6028)をKF−6017(PEG−10ジメチコン)に置き換えた他は実施例8と同様の組成及び方法で調製してW/Oクリームを得た。
【0103】
上記の実施例7〜10及び比較例5、6について、調整した乳液及びクリームの使用時のべたつき感について、パネラー20人について官能評価を行った。実施例7及び9は比較例5を基準とし、実施例8及び10は比較例6を基準としてべたつきの改善の有無について評価した。結果を表3に示す。
【0104】
【表3】

【0105】
表3より、本発明の化粧料用組成物より成る化粧料は、従来の化粧料用組成物より成る化粧料に比べ、水を含有した乳化処方によってもべたつきが低減されることが確認された。
【0106】
以下に、本発明の化粧料用組成物を含む化粧料の実施例を示す。各実施例において各表に示す処方で化粧料を調製した。
【0107】
[実施例11]
しわ隠しクリーム
下記成分1〜8を混合して、均一な分散物を形成した後、別途、均一な混合物とした下記成分9〜13を、高速攪拌機で攪拌しながら添加し、目的の皺かくしクリームを得た。得られた皺かくしクリームは、化粧もちが良く、べた付きが無く、伸びが良いものであった。

(成分) 質量%
1 実施例5の化粧料用組成物 22.0
2 KSG−210(注2) 3.0
3 KF−6028(注3) 1.0
4 デカメチルシクロペンタシロキサン 23.0
5 KF−96A−6cs(注4) 1.0
6 KSG−15(注5) 9.0
7 KSP−101(注6) 7.0
8 トリエチルヘキサノイン 3.0
9 1,3−ブチレングリコール 3.0
10 クエン酸Na 0.2
11 塩化ナトリウム 0.5
12 精製水 28.0
13 防腐剤 適量
(注5)架橋型ジメチルポリシロキサンの膨潤物:信越化学工業(株)製
(注6)ハイブリッドシリコーンパウダー:信越化学工業(株)
【0108】
[実施例12]
パウダーファンデーション
下記成分4〜10を粉砕して均一な混合物とし、予め室温で混合した下記成分1〜3を加え、均一な分散物を形成した後、金型にプレス成型してパウダーファンデーションを得た。得られたパウダーファンデーションは、さらっとして伸びがよく、化粧持ちが良好であった。

(成分) 質量%
1 スクワラン 1.0
2 実施例3の化粧料用組成物 4.0
3 KF−96A−6cs(注4) 2.0
4 ポリエチレン粉体 1.5
5 KMP−590(注7) 4.5
6 KSP−300(注8) 3.0
7 硫酸バリウム 10.0
8 疎水化処理セリサイト(注9) 40.0
9 疎水化処理タルク(注9) 23.2
10 疎水化処理着色剤(注9) 10.8
(注7)ポリメチルシルセスキオキサン:信越化学工業(株)製
(注8)フェニル変性ハイブリッドシリコーン複合粉体:信越化学工業(株)製
(注9)信越化学工業(株)製:KF−9909処理
【0109】
[実施例13]
トリートメントクリーム
下記成分1〜6を混合して、均一な分散物を形成した後、別途、均一な混合物とした下記成分7〜13を、高速攪拌機で攪拌しながら添加し、目的のトリートメントクリームを得た。トリートメントクリームは、しっとりとして、べた付きが無く、伸びが良いものが得られた。

(成分) 質量%
1 実施例5の化粧料用組成物 4.0
2 KSG−210(注2) 4.0
3 KF−6028(注3) 0.2
4 スクワラン 5.0
5 ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール 7.6
6 ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.0
7 KSG−15(注5) 3.0
8 キサンタンガム2%水溶液 4.0
9 1,3−ブチレングリコール 5.0
10 クエン酸Na 0.2
11 塩化ナトリウム 0.5
12 精製水 65.2
13 防腐剤 適量
【0110】
[実施例14]
サンカット乳液
下記成分1〜6を均一な混合物にした後、下記成分9〜12を混合して得られた溶液を添加して乳化し、得られた乳化物に下記成分7〜8を加えてサンカット乳液を得た。得られたサンカット乳液は、べたつきや油っぽさがなく、のび広がりが軽く皮膚上での耐水性が良好であった。

(成分) 質量%
1 KSG−210(注2) 3.0
2 KSG−15(注5 2.0
3 KF−6028(注3) 1.0
4 実施例5の化粧料用組成物 6.0
5 デカメチルシクロペンタシロキサン 4.0
6 イソノナン酸イソトリデシル 4.0
7 SPD−T5(注10) 25.0
8 SPD−Z5(注11) 35.0
9 ジプロピレングリコール 2.0
10 クエン酸ナトリウム 0.2
11 塩化ナトリウム 1.0
12 精製水 16.8
(注10)微粒子酸化チタン分散物:信越化学工業(株)製:
(注11)微粒子酸化亜鉛分散物:信越化学工業(株)製
【0111】
[実施例15]
サンカットクリーム
下記成分1〜8を均一な混合物にした後、下記成分9〜12を混合して得られた溶液を添加して乳化し、サンカットクリームを得た。得られたサンカット乳液は、べたつきや油っぽさがなく、のび広がりが軽く、皮膚上での耐水性が良好であり、油っぽさがなく持ちがよかった。

(成分) 重量%
1 KSG−210(注2) 2.0
2 KSG−15(注5 3.0
3 KF−6028(注3) 1.5
4 実施例1の化粧料用組成物 4.0
5 デカメチルシクロペンタシロキサン 6.3
6 ジメチルジステアリルアンモニウムヘクトライト 1.2
7 SPD−T5(注10) 20.0
8 SPD−Z5(注11) 15.0
9 1,3−ブチレングリコール 5.0
10 クエン酸ナトリウム 0.2
11 塩化ナトリウム 0.5
12 精製水 41.3
【0112】
[実施例16]
リップスティック
下記成分1〜11を加熱し、均一に混合後、下記成分12〜13を加えて、均一な混合物を得、気密性の高い所定の容器に充填して、リップスティックを得た。得られたリップスティックは、べたつきや油っぽさがなく、唇上に施与された際に、にじみ等もなく、化粧持ちもよいことが確認された。

(成分) 質量%
1 キャンデリラロウ 4.0
2 ポリエチレン 2.0
3 マイクロクリスタリンワックス 3.0
4 実施例2の化粧料用組成物 8.5
5 KP−561P(注12) 13.5
6 KF−54(注13) 20.0
7 KP−545(注14) 10.0
8 KF−6105(注15) 3.0
9 マカダデミアナッツ油 20.0
10 水添ポリイソブテン 10.0
11 イソノナン酸イソトリデシル 6.0
12 着色剤 適量
13 マイカ 適量
(注12)ステアリル変性アクリルシリコーン樹脂:信越化学工業(株)製
(注13)ジフェニルジメチコン:信越化学工業(株)製
(注14)アクリルシリコーンのD5溶解品:信越化学工業(株)製
(注15)アルキル変性分岐型ポリグリセリン変性シリコーン:信越化学工業(株)製
【0113】
[実施例17]
W/Oリキッドファンデーション
下記成分1〜10を均一な混合物にした後、下記成分11〜16を混合して得られた溶液を添加して乳化し、リキッドファンデーションを得た。得られたW/Oリキッドファンデーションはべたつきや油っぽさがなく、のび広がりが軽く化粧持ちが良かった。

(成分) 質量%
1 KSG−210(注2) 3.5
2 KSG−15(注5 3.0
3 KF−6028(注3) 3.0
4 デカメチルシクロペンタシロキサン 9.0
5 実施例2の化粧料用組成物 4.0
6 KF−96A−6cs(注4) 1.0
7 トリオクタノイン 7.0
8 KSP−100(注16) 2.0
9 KF−7312J(注17) 2.0
10 疎水化処理着色剤(注9) 10.0
11 1,3−ブチレングリコ−ル 5.0
12 キサンタンガム 0.1
13 クエン酸ナトリウム 0.2
14 塩化ナトリウム 0.5
15 防腐剤 適量
16 精製水 49.4
(注16)ハイブリッドシリコーンパウダー:信越化学工業(株)製
(注17)トリメチルシロキシケイ酸のD5溶解品:信越化学工業(株)製
【0114】
[実施例18]
O/Wクリーム
下記成分1〜3を均一に混合し、均一に分散した下記成分4〜10に攪拌しながら徐添して乳化後、O/Wクリームを得た。得られたO/Wクリームは、べたつきや油っぽさがなく、サラッとした使用感を与えた。

(成分) 質量%
1 KSG−15(注5) 8.0
2 デカメチルシクロペンタシロキサン 10.0
3 実施例6の化粧料用組成物 30.0
4 1,3−ブチレングリコール 3.0
5 KF−6100(注18) 0.6
6 KF−6104(注19) 0.3
7 SIMULGEL600(注20) 0.6
8 塩化ナトリウム 1%水溶液 8.0
9 精製水 26.5
10 AristoflexAVC(注21)の5%水溶液 13.0
(注18)分岐型ポリグリセリン変性シリコーン HLB中:信越化学工業(株)製
(注19)分岐型ポリグリセリン変性シリコーン HLB高:信越化学工業(株)製
(注20)アクリル系増粘剤混合物:セピック社製
(注21)アクリル系水溶性高分子:クライアント社製
【産業上の利用可能性】
【0115】
本発明は低粘度シリコーン油に対し膨潤性を有するシリコーン重合物と低粘度シリコーン油より成る化粧料用組成物である。本発明の化粧料用組成物は、べたつきを抑えた化粧料を調製することができ、該化粧料用組成物を含有することによって、化粧持ちの向上に優れ、伸び、滑り等の感触に優れ、かつ製品の製造が容易であり、保存安定性に優れた化粧料を提供することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式(1)で示されるビニル基含有オルガノポリシロキサン;
【化1】

(式中、Rfは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基、もしくは炭素数3〜30のパーフルオロポリエーテル基、Rは互いに独立に、炭素数1〜10の、脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、Rは互いに独立に、ビニル基または、炭素数1〜10の、脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、kは0〜10の整数であり、但し、1分子中にケイ素原子に結合したビニル基を少なくとも2個有し、Xは2価の有機基であり、mは0〜200の整数、nは0〜100の整数である)
(B)下記式(2)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
【化2】

(式中、Rは互いに独立に、水素原子または炭素数1〜10の、脂肪族不飽和結合を有しない1価炭化水素基であり、pは0〜10の整数であり、但し、1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個有し、qは0〜200の整数、rは0〜100の整数であり、ただし、式(1)のn及び式(2)のrは同時に0とならず、式(1)中のケイ素原子に結合したビニル基あるいは式(2)中のケイ素原子に結合した水素原子の少なくとも一方が3以上であり、Rf、X、Rは前記と同じ基を意味する)
(C)下記式(3)で示される片末端反応性オルガノポリシロキサン;
【化3】

(式中、Rは水素原子またはビニル基であり、xは0〜100の整数であり、Rは前記と同じ基を意味する)
を付加重合させて得られ、(A)〜(C)成分の合計質量に対し10質量%〜30質量%のフッ素原子を含有することを特徴とする、三次元架橋構造を有する含フッ素シリコーン重合物と、
(D)25℃における動粘度が50mm/s以下の低粘度シリコーン油
を含有する化粧料用組成物。
【請求項2】
微粉末状、ペースト状又はグリース状である、請求項1に記載の化粧料用組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化粧料用組成物を配合してなる化粧料。
【請求項4】
さらに、分岐型シリコーン活性剤を含有する請求項3に記載の化粧料。

【公開番号】特開2011−184334(P2011−184334A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49644(P2010−49644)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】