説明

化粧料

【課題】 細菌、ウィルスなどのあるいは皮脂から出る老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつ、キシミ感の抑制された化粧料の提供を課題としている。
【解決手段】 タルク粒子を非晶質リン酸カルシウムで被覆した非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が0.1〜50質量%配合され、且つ、前記非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が酸処理工程、洗浄工程、アルカリ工程、リン酸カルシウム被覆工程が実施される製造方法により製造されたものであることを特徴とする化粧料を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非晶質リン酸カルシウム複合粒子を用いた化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鱗片状または板状の粒子形状を有する、タルク、カオリン(白土)、ベントナイト、雲母族鉱物(セリサイト、白雲母、金雲母、黒雲母)、焼成カオリンなどの、天然または人造の粘土鉱物やその加工品、あるいは表面処理品(以下、これらを総称する場合は「粘土鉱物類」とする)は、その粒子形状ゆえに肌に対するすべり感にすぐれることから、粉白粉、固形白粉、ファンデーションなどの、いわゆる粉物のベースメーク化粧料の主原料として、詳しくは着色顔料の色を薄める体質顔料や、あるいは肌からの分泌物である皮脂(油分)や汗(水分)を吸着する吸着剤などの数種の機能を兼ね備えた成分として、多用されてきた。
【0003】
このうちタルクは透明感があり、また肌に塗り伸ばす際の感触がとくに滑らかで、かつ付着性にすぐれるという特性を有している。またカオリンは、タルクに比べて滑らかさの点で劣るものの、肌からの分泌物を吸着する吸着力や、下地を隠ぺいする隠ぺい力が比較的大きい上、肌の健康に適した弱酸性を示すという特性を有している。
【0004】
このタルクを化粧料原料に用いる場合には、通常、鉱石からの乾式粉砕により、化粧料原料に適した平均粒径である2〜50μmの大きさの粒子に加工されている。また近年、この乾式粉砕に代えて、鉱石を水中にて粉砕する湿式粉砕が行われたりもしている。
【0005】
またセリサイトについては、粘土鉱物類の中でも人気が高く、国内産の純度の高い原料が不足をきたしたり、高価であったりし、海外産の純度の低い原料を輸入して、精製して使用しているのが現状である。そのため、通常、セリサイトと他の雲母族鉱物とは“セリサイト”と“マイカ”との呼び名で区別されて用いられている。
またチタン雲母などの酸化チタン被覆粒子は、白雲母、金雲母などの粉砕物や、タルク、セリサイト、合成雲母などの表面に、屈折率の高い酸化チタンの細かな粒子を被覆した加工品で、チタン層の厚みによって多様な干渉色を生じ、それが真珠光沢として好まれている。さらに、近年、酸化チタンに代えて酸化鉄や酸化クロムなどを被覆したものや、酸化チタンにさらに酸化鉄や酸化クロムなどを被覆したもの、もしくはこれらに染料、顔料が複合されたものなどが開発され、それを称してパール顔料もしくはパール光沢顔料といわれている。このパール顔料は、チタン雲母、ベンガラ被覆雲母、ベンガラ被覆チタン雲母、黒酸化鉄被覆チタン雲母、カルミン被覆チタン雲母、コンジョウ被覆チタン雲母、カルミン・コンジョウ被覆チタン雲母、酸化クロム被覆チタン雲母、ベンガラ・黒酸化鉄被覆チタン雲母、黒酸化鉄カルミン被覆チタン雲母、黒酸化鉄コンジョウ被覆チタン雲母、チタン雲母+黄色4号、チタン雲母+赤色202号、チタン雲母+青色1号、チタン雲母+青色1号+黄色4号などがあげられる。
【0006】
実際の使用に際しては、これらの粘土鉱物類、即ち、鱗片状または板状の粒子形状を有する鉱物粒子が、その目的に応じて適宜、配合された上、少量の油性成分や着色顔料などの他の成分と混合されて、ベースメーク化粧料が製造される。
【0007】
先に発明者は、肌の過剰な皮脂やそこに生息する細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能にすぐれた非晶質リン酸カルシウムを配合することで、ニキビなどによる肌荒れや炎症などを抑制して、肌を正常な状態に維持するとともに、老廃物による化粧くずれを抑制してメイクアップを長持ちさせる効果を付与した化粧料を提案している(特許文献1)。
また、特許文献2には、顔料を分散させた水系中で、水可溶性カルシウム塩と水可溶性リン酸または水可溶性リン酸塩とを徐々に反応させて顔料表面に水酸化アパタイト及び/またはリン酸三カルシウムを沈着させる被覆顔料と該被覆顔料を用いた化粧料が記載されている。
【0008】
しかし非晶質リン酸カルシウム粒子は、とくに前述したベースメーク化粧料や、あるいはアイシャドウ、口紅などの、肌に塗り伸ばす化粧料に用いた場合に、キシミ感を生じて感触が悪くなることがあり、多量に配合できない場合がある。
そこで、発明者は、セリサイトなどの鱗片状または板状の基体粒子の表面を、非晶質リン酸カルシウムの微粒子で被覆したことを特徴とする非晶質リン酸カルシウム複合粒子およびこれを用いた化粧料を提案している(特許文献3)。
しかし、このような非晶質リン酸カルシウム複合粒子も基体粒子のみの場合に比べてキシミ感を発生させ易く、化粧料に多量に配合するとキシミ感が生じてしまうという問題を有している。一方、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能については、このような非晶質リン酸カルシウム複合粒子を化粧料に多く配合しなければ、十分満足するものとならないおそれを有している。
即ち、従来の化粧料においては、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつ、キシミ感を抑制することが困難であるという問題を有している。
【0009】
【特許文献1】特開平8−133942号公報
【特許文献2】特許第2914460号公報
【特許文献3】特開平2000−169122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつ、キシミ感の抑制された化粧料の提供を課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、非晶質リン酸カルシウム被覆粒子の表面が非晶質リン酸カルシウムに被覆されている被覆状態とキシミ感とが関係していること、即ち、非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分があるなど基体粒子の表面を覆う非晶質リン酸カルシウムが不均一となることを抑制することで、キシミ感を抑制し得ることを見出した。また、基体粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムによって均一に被覆させることで、均一に被覆されていないものに比べて吸着性能も向上させ得ることを見出した。
そこで、タルクなど鱗片状または板状の基体粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムの微粒子で、より均一に被覆することについて鋭意検討を行った結果、タルクに所定の方法で非晶質リン酸カルシウムを被覆することで、従来の非晶質リン酸カルシウム複合粒子に比べて非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分を減少させ得ることを見出し、本発明の完成に到ったのである。
【0012】
すなわち、本発明は、前記課題を解決すべく、タルク粒子を非晶質リン酸カルシウムで被覆した非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が0.1〜50質量%配合され、且つ、前記非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が(1)タルク粒子とpH1.5以下の酸とを混合することにより、前記タルク粒子の表面をpH1.5以下の酸で洗浄処理する酸処理工程、(2)タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたタルク粒子を洗浄する洗浄工程、(3)該洗浄工程により洗浄されたタルク粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、(4)該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりタルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程、が実施される製造方法により製造されたものであることを特徴とする化粧料を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が、タルク粒子とpH1.5以下の酸とを混合することにより、前記タルク粒子の表面をpH1.5以下の酸で洗浄処理する酸処理工程、タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたタルク粒子を洗浄する洗浄工程、該洗浄工程により洗浄されたタルク粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりタルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程が実施され製造されていることから非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分が発生することを抑制することができる。
したがって、この非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が配合される化粧料を、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつキシミ感の抑制されたものとし得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
まず本実施形態の化粧料に用いる非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の製造方法について説明する。
本実施形態における非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の基体粒子としては、タルク粒子が用いられる。
また、本実施形態の非晶質リン酸カルシウム被覆粒子の製造方法においては、前記タルク粒子とタルク粒子の0.1〜3倍の重量の水とを混練する水練り工程、前記タルク粒子と酸とを混合してタルク粒子の表面をpH1.5以下の酸で洗浄処理する酸処理工程、タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように前記酸処理工程にて処理されたタルク粒子を洗浄する洗浄工程、該洗浄工程により洗浄されたタルク粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、および、該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりタルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程を実施して、タルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させる。
【0015】
前記水練り工程においては、タルク粒子と水とを混練させてタルク粒子の親水性を高め、酸処理工程における酸性液体へのタルク粒子の分散性を高めて酸処理工程の作業性を向上させる。すなわち、酸処理工程におけるタルク粒子の凝集を抑制し、酸性液体にタルク粒子をすばやく分散させて、酸処理工程の作業時間を短縮させる。このようにタルク粒子の凝集が抑制されることから、酸処理工程においてタルク粒子と酸との接触面積を増大させることができタルク粒子の表面に付着している鉄、チタン、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、カリウム、マグネシウムなどの付着物をより確実に除去させることができる。
なお、この水練り工程には、通常、スラリーなどの混練に一般的に用いられる混練機を用いることができる。このとき、タルク粒子に対する水の量は、タルク粒子の重量に対する0.1〜3倍とされることが好ましい。
タルク粒子にこのような水練り工程を実施するのは、タルク粒子は、通常、鉱石から乾式粉砕により製造され、撥水性を呈する状態となっているため、このような水練り工程を実施することで親水性を高めて酸処理工程における酸性液体へのタルク粒子の分散性を高めることができるためである。
なお、湿式粉砕により製造されたタルク粒子は、通常、乾式粉砕により製造されたタルク粒子に比べて親水性が高められていることから、湿式粉砕により製造されたタルク粒子を用いることで、水練り工程を省略しつつ酸処理工程の作業性を向上させ得る。この湿式粉砕により製造されたタルクとしては、例えば、株式会社山口雲母工業所製のフィットパウダーFK−500S、FK−300S、FKG−30、CT−30、CT−35、AT−350EXなどの商品名で市販されているものを使用することができる。
また、この水練り工程が行われた乾式粉砕タルクや湿式粉砕により製造されたタルクが酸処理工程の作業性向上効果を奏するような親水性が備えられているか否かについては、例えば、常温で静置されたイオン交換水の水面に、乾燥状体のタルクを0.5g程度浮かべて、1時間経過後にその90%以上が水没するかどうかを確認することで判定できる。
【0016】
前記酸処理工程においては、酸によりタルク粒子表面に付着している鉄、チタン、カルシウム、ケイ素、アルミニウム、カリウム、マグネシウムなどの付着物をタルク粒子の表面から付着物イオンなどとして除去するとともに、タルク粒子どうしの凝集を抑制させる。この酸処理工程としては、タルク粒子に酸性液体をシャワーリングする方法や、酸性液体にタルク粒子を漬け洗いする方法など、一般の粒状物の洗浄処理方法を採用することができるが、タルク粒子を全体的に均一かつ十分に処理し得る点から、酸性液体にタルク粒子を漬け洗いする方法を行うことが好ましい。
なお、このような点において、漬け洗い時の酸に分散させるタルク粒子の固形分濃度としては、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜50質量%であることがより好ましく、5〜30質量%であることがさらに好ましい。この固形分濃度がこのような範囲であることが好ましいのは、固形分濃度が50質量%を超えると、前述の付着物イオン除去、凝集の抑制などの効果が基体材料全体に均一かつ十分に得られないおそれを有し、0.1質量%未満の固形分濃度としても、前述の効果を、それ以上、均一かつ十分とすることが期待できないばかりでなく、使用する設備が大掛かりとなることや使用する酸の量に対して得られる非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の量が少なくなることなど生産性が低下するおそれを有するためである。
【0017】
この酸性液体にタルク粒子を漬け洗いする方法に用いる酸としては、特に限定されるものではないが、通常、脱鉄などに用いられる塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの強酸類、クエン酸、りんご酸、酢酸、シュウ酸などの弱酸類を単独または複数組み合わせて使用することができる。また、これらの酸は、そのままの濃度あるいは希釈して用いることができる。なお、このような酸としては、後段のアルカリ工程で添加されるカルシウムイオンが、リン酸イオン以外のアニオンにより消費されることを抑制することができ、リン酸カルシウム被覆工程において、タルク粒子の表面に、より効率良く非晶質リン酸カルシウムを生成させ得る点においてリン酸を用いることが好ましい。
さらに、リン酸を用いる場合には、リン酸以外の酸を用いた場合に比べてタルクの表面をより細かな非晶質リン酸カルシウムで被覆することができ、しかも、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を被覆する非晶質リン酸カルシウムの構造を球に近い形とすることができキシミ感をさらに低減(すべり性を向上)させ得る点において好ましいものとなる。
【0018】
前記タルク粒子としては、前述のように、一般的な乾式粉砕されて製造されたタルク粒子や、株式会社山口雲母工業所製の商品名「フィットパウダーFK−500S」、「FK−300S」、「FKG−30」、「CT−30」、「CT−35」、「AT−350EX」などの湿式粉砕により製造されたタルク粒子を使用することができる。さらには、表面に酸化チタン、アルミナ、シリカなどが被覆されて親水性が高められた、例えば、触媒化成工業社より商品名「カバーリーフ AR」、「JS−T」、「2055T」として市販されているものなどを使用することができる。
また、このようなタルク粒子としては、通常、平均粒径が1〜100μmのものを用いることができる。なお、本明細書中における、前記平均粒径とは、レーザ回折法により求められる累積粒度分布を示す曲線の50vol%の値を意味し、例えば、日本レーザー株式会社から「ロドス」の商品名にて市販のレーザ回折式粒度分布測定装置などにより測定することができる。
また、このようなタルク粒子は、その寸法については特に限定されないが、前述した肌に対するすべり感を維持して、化粧料に使用した際にキシミ感を生じず良好な感触を持たせるためには、その平板平面における長径の平均値が1〜1000μm程度、短径の平均値が上記長径の平均値の1/2倍以上で、かつ厚みが、上記長径の平均値の1/1000倍以上、1/2倍未満程度であるのが好ましい。
なお長径の平均値は、上記の範囲内でも特に3〜500μm程度であるのが好ましい。また短径の比率の上限は、言うまでもなく長径の1倍である。さらに厚みは、上記の範囲内でも特に、長径の平均値の1/100〜1/5倍程度であるのが好ましい。平板平面における長径の平均値が上記の範囲未満では、全体としてのサイズが小さすぎて、たとえ全体形状として鱗片状、板状を維持していても、かかるタルク粒子を使用して製造された非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を化粧料に使用すると、肌に対するすべり感が不十分になるおそれがある。また逆にこの範囲を超えた場合には、大きくなりすぎたタルク粒子が割れたり折れたりして却ってそのサイズが小さくなりやすく、しかも割れたり折れたりしたものは、長径に対する短径および厚みの比率が前記の範囲を外れて、もはや鱗片状、板状とは言いがたいものとなってしまうために、かかるタルク粒子を使用して製造された複合粒子を化粧料に使用すると、やはり肌に対するすべり感が不十分になるおそれがある。
【0019】
なお、通常、このようなタルク粒子は、市販品をそのまま使用することができるが、要すれば、分級などを行ってもよい。上記タルク粒子の表面を被覆する非晶質リン酸カルシウムとは、一般式:Ca3(PO42・nH2Oで表されるように結晶水を含んだリン酸三カルシウムであって、特にその結晶構造が非晶質のものを言う。なお、結晶構造が非晶質であることは、非晶質リン酸カルシウムは、結晶水を多く保有しているため、粉末X線回折法のパターンが図4に例示のごとく結晶質リン酸カルシウムに比べてブロードとなることから確認することができる。
また、本発明の効果を損ねない限りにおいては、上記非晶質リン酸カルシウムのカルシウムの一部に、例えば、バリウム、ストロンチウム、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、鉄、アルミニウム、チタンなどの元素が固溶していたり、あるいは、イオン交換または置換されていたりしてもよく、PO4の一部が、例えば、VO4、SiO4、CO2などの原子団の1種で置換されていても良い。
さらに、リン酸カルシウムが、1種または2種以上の金属酸化物と複合してもよい。金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウムなどがあげられる。
【0020】
前記洗浄工程においては、前述の酸処理時にタルク粒子の表面から除去された付着物イオンの濃度を低下させて、後段のリン酸カルシウム被覆工程においてこの付着物イオンがタルク粒子表面への非晶質リン酸カルシウムの被覆を阻害することを抑制させる。
このとき、洗浄後のタルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%、好ましくは1〜50質量%で水に分散させた懸濁液がpH2.0以上となるよう洗浄する。
この洗浄工程における洗浄方法としては、前述の漬け洗い状態のタルク粒子に単に水を加えることで洗浄してもよく、漬け洗い状態のタルク粒子から遠心脱水法などにより酸性液体とともに前述のような付着物イオンを系外に排出させ脱水した後にタルク粒子を分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるまで水を加えてすすぐ方法などを用いることができ、要すれば、脱水/すすぎを繰り返し行う方法を採用することもできる。
【0021】
なお、前記酸として、塩酸、硝酸、硫酸または、クエン酸などが用いられる場合には、塩素イオン、硫酸イオンなどのリン酸イオン以外のアニオンによりカルシウムイオンが消費されることを抑制し得る点において、この洗浄工程は、タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%、好ましくは1〜50質量%で水に分散させた懸濁液がpH6.0以上となるまで実施することが好ましい。
前記アルカリ工程においては、前述の洗浄工程で洗浄されたタルク粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成する。ここで、タルク粒子と水酸化カルシウムとを混合して懸濁液をアルカリ性とするのは、酸性状態で後段のリン酸カルシウム被覆工程を行った場合には、加えたリン酸がリン酸水素カルシウムの形成に消費されて、タルク粒子表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆することが困難となるためである。
【0022】
前記リン酸カルシウム被覆工程においては、アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりタルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆する。このとき、前述のごとく懸濁液が酸性状態、特に、pH5.0未満の状態となればリン酸水素カルシウムの形成が生じるおそれを有することから、このリン酸カルシウム被覆工程におけるアルカリ性懸濁液へのリン酸の添加は、pHが5.0以上に維持された状体で行うことが好ましい。なお、要すれば、アルカリ工程とリン酸カルシウム被覆工程とを交互に実施しつつ、pHを5.0以上に維持させてリン酸水素カルシウムの形成を抑制させてもよい。なお、リン酸カルシウム被覆工程においては、液温を50℃以下に維持することが好ましい。このとき液温が50℃を超えるとリン酸カルシウムの結晶性が高くなって結晶水が脱落する結果、得られる非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の老廃物の吸着性能などの活性が低下するおそれがあるからである。
【0023】
以上のごとく、製造された非晶質リン酸カルシウム被覆粒子は、噴霧乾燥やケーキ乾燥など一般的な乾燥手段を採用することができるが、解砕などの工程を必要とせず、解砕時に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子同士が擦れあって、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の表面から非晶質リン酸カルシウムが脱落してしまうことを抑制し得る点から、噴霧乾燥による乾燥手段を採用することが好ましい。
【0024】
次いで、このように製造された非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が配合された化粧料について説明する。
本実施形態の化粧料としては、たとえば乳化ファンデーション、パウダーファンデーション、油性ファンデーション、固形乳化ファンデーション、口紅、アイシャドウなどの他、チーク、ネイルカラーなどのメイクアップ化粧料、シャンプー、リンス、コンディショナー、ヘアートリートメントなどの頭髪化粧料、ボディパウダー、パフュームパウダー、ベビーパウダー、フェースパウダーなどのパウダー化粧料、乳液、ローション、クリーム、クレンジング、パック、サンスクリーン剤、化粧下地料などの基礎化粧料があげられる。
また、これらの化粧料には、前記非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が0.1〜50質量%配合される。
【0025】
なお非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の配合量がこのような範囲とされるのは、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の配合量が0.1質量%未満場合には、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する効果が得られず、50質量%を超えて配合した場合には、化粧料にキシミ感が発生してしまうためである。
【0026】
上記化粧料に配合する非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子は、事前に表面処理されていてもよい。表面処理の例としては、たとえばフッ素化合物処理、シリコーン処理、金属石鹸処理、アシル化リジン処理、油剤処理、シラン処理、アミノ酸処理、ワックス処理、金属酸化物処理などがあげられるが、化粧料で従来用いられている処理であればいずれも採用できる。もちろん、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子は、表面処理せずに化粧料に使用してもよい。
【0027】
前記化粧料には、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子以外に、化粧料に通常に使用される油剤、粉体(顔料、色素)、樹脂、界面活性剤、粘剤、防腐剤、香料、紫外線吸収剤(有機系、無機系を含む)、保湿剤、生理活性成分、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤などの種々の成分を配合することができる。油剤の例としては、たとえばセチルアルコール、イソステアリルアルコール、ラウリルアルコール、ヘキサデシルアルコール、オクチルドデカノールなどの高級アルコール類、イソステアリン酸、ウンデシレン酸、オレイン酸などの脂肪酸類、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどの多価アルコール類、ミリスチン酸ミリスチル、ラウリン酸ヘキシル、オレイン酸デシル、ミリスチン酸イソプロピル、ジメチルオクタン酸ヘキシルデシル、モノステアリン酸グリセリン、フタル酸ジエチル、モノステアリン酸エチレングリコール、オキシステアリン酸オクチルなどのエステル類、流動パラフィン、イソパラフィン、ワセリン、スクワランなどの炭化水素類、ラノリン、還元ラノリン、カルナバロウなどのロウ、ミンク油、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ツバキ油、ゴマ油、ヒマシ油、オリーブ油などの油脂類があげられる。
【0028】
また、別の形態の油剤の例としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性オルガノポリシロキサン、アルキル変性オルガノポリシロキサン、糖変性シリコーン、グリセリル変性シリコーン、アモジメチコーン、アミノ変性オルガノポリシロキサン、シリコーンゲル、アクリルシリコーン、トリメチルシロキシケイ酸、シリコーンRTVゴムなどのシリコーン化合物があげられる。
【0029】
さらにフッ素系油剤の例としては、たとえばパーフルオロデカリンなどのフルオロカーボン類、パーフルオロポリエーテル、フッ化ピッチ、パーフルオロアルキル鎖を有するフルオロアルコールなどのアルコール類、パーフルオロアルキルリン酸エステルトリエタノールアミン塩などのリン酸エステル類、フルオロアルキル鎖を有するカルボン酸類、フルオロアルキル変性シリコーン、フッ素・ポリエーテル共変性シリコーン、フッ素化シリコーン樹脂などがあげられる。
【0030】
粉体類の例としては、セリサイト、マイカ(白雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、合成雲母)、タルク、カオリン、バーミキュライト、スメクタイト、酸化チタン被覆雲母(チタン雲母)、酸化チタン被覆セリサイトなどのパール顔料や、あるいは魚鱗箔、窒化ホウ素などの他、ナイロンビーズ、シリコーンビーズ、PTFEパウダー、シリコーンエラストマーなどの樹脂粉体や、黄酸化鉄、赤色酸化鉄、黒酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト、カーボンブラツク、群青、紺青、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化セリウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭化珪素、有機色素、レーキ、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、微粒子酸化鉄、板状硫酸バリウムなどがあげられる。
【0031】
これらの粉体類は、フッ素化合物処理、シリコーン処理、金属石鹸処理、アシル化リジン処理、油剤処理、シラン処理、アミノ酸処理、ワックス処理、金属酸化物処理、シランカップリング剤処理、有機チタネート処理、脂肪酸処理などの表面処理を施した状態で使用してもよい。界面活性剤としては、アニオン型界面活性剤、カチオン型界面活性剤、ノニオン型界面活性剤、ベタイン型界面活性剤のいずれを用いることもできる。
【0032】
生理活性成分の例としては、たとえば抗炎症剤、血行促進剤、ビタミン類、チロシナーゼ活性阻害剤、尿素などがあげられる。溶媒の例としては、たとえば精製水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エーテル、LPG、揮発性シリコーン、軽質流動イソパラフィン、代替フロンなどがあげられる。なお精製水の代わりにミネラルウォーターを使用することもできる。
【0033】
なお、このような化粧料として、粉白粉、固形白粉、ファンデーションにおいては、配合される前記非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の平均粒径は、1〜50μmであることが、感触面において好ましく、アイシャドウ、チーク、口紅、ネイルカラーにおいては、それらの化粧が施された部位にきらめきを与え美観を向上させ得る点において、配合される非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の平均粒径は、50〜100μmであることが好ましい。
【実施例】
【0034】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の製造)
(製造例1)
イオン交換水1リットルに、湿式粉砕により製造されたタルク(株式会社山口雲母工業所製「フィットパウダーFK−300S」:平均粒径約15.40μm)を450g入れ、攪拌下で7.5質量%リン酸水溶液を1500g加えて10分間攪拌して懸濁液とした後に、この懸濁液を一昼夜静置することにより酸処理工程を実施した。このときの懸濁液のpHをpHメーターにて測定したところ、pH0.93であった。
さらに、吸引ろ過によりタルクをろ別し、固形分濃度20%でpHが2.0以上となるまでイオン交換水を加えて再懸濁液を作成することにより洗浄工程を実施した。
次いで、ホモミキサーを用いて水酸化カルシウム37.3gをイオン交換水1リットルに分散させた水酸化カルシウム懸濁液を作成し、前記再懸濁液に対して、該再懸濁液のpHが12.5となるまでこの水酸化カルシウム懸濁液を加えてアルカリ工程を実施しアルカリ懸濁液を作成した。
さらに、このアルカリ懸濁液の液温を、50℃以下になるよう維持しつつ、7.5質量%リン酸水溶液を最終的なpHが6.5となるまで加え30分間攪拌しリン酸カルシウム被覆工程を実施した。
さらに、前述のアルカリ工程とこのリン酸カルシウム被覆工程とを交互に2回ずつ(合計3回ずつ)実施したものをスプレードライヤー(大川原化工機械株式会社製「L−8」)を用いて、噴霧乾燥造粒を行い、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を製造した。
【0035】
(製造例2)
イオン交換水0.9リットルに、乾式粉砕により製造されたタルク(浅田製粉株式会社製「JA−46R」:平均粒径約15.40μm)450g入れ、混練機にて10分間の混練を行い、水練り工程を実施したタルク粒子を湿式粉砕により製造されたタルク粒子に代えて用いた以外は、製造例1と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を製造した。なお、酸処理工程における懸濁液のpHをpHメーターにて測定したところ、0.9であった。
【0036】
(製造例3)
酸処理工程を実施せず、リン酸カルシウム被覆工程において、8.5質量%のリン酸水溶液を用い最終的なpHが9.0〜10.0のとなるまで加えた事以外は、製造例1と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を製造した。
【0037】
(製造例4)
酸処理工程をpH2.0で実施した以外は、製造例1と同様に非晶質リン酸カルシウム被覆粒子を製造した。
【0038】
(オレイン酸吸着量)
まず、ブランク試料として非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を350℃×1hの条件で乾燥させたものを準備した。次にこのブランク試料0.5gにオレイン酸4.5gを加え、37℃×24h静置しオレイン酸を吸着させた。さらに、ジエチルエーテル15mlで3回洗浄して風乾し吸着試料とした。
このブランク試料と吸着試料とを、それぞれ14〜17mg程度採取し、窒素ガス気流中にて30℃から600℃までの昇温速度20℃/minでのTG−DTA測定を行い吸油量を求めた。
【0039】
より具体的には、30〜600℃における加熱残率(%)と30〜150℃における加熱残率(%)との差を減量率(%)として求め、ブランク試料と吸着試料とのそれぞれの減量率(%)の差を吸着率(%)とし、さらにこの吸着率(%)に10を乗じて油分吸着量(mg/g)を求めた。結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
(キシミ試験)
被験者10人に対して、製造例1〜4にて作成した非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を顔に塗り伸ばした際の感触を下記の3段階で評価してもらった結果を表2に示す。
良好:キシミ感がなく、感触が良好である。
不良:キシミ感があり、感触が悪い。
普通:良好、不良のどちらでもなく、その中間。
【0042】
【表2】

【0043】
(顕微鏡観察)
製造例1、2、4の走査型電子顕微鏡写真を図1〜3に示す。
この図から、製造例1および製造例2の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子には、タルク粒子の表面全体に均一に付着しているが、製造例4では、タルク粒子が露出している露出部が多く見られることがわかる。また、ここでは図を示してはいないが、製造例3の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の表面も製造例4の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子と同様に露出部が多く見られた。
さらに、製造例2の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の表面についても、製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の表面と同様であることからここでは図を示してはいないが、製造例1、2の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の表面を拡大観察すると両者とも図1bのように細かな球状の非晶質リン酸カルシウムで均質に被覆されていた。
以上のように、製造例1、2で得られた非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子は、製造例3、4で得られた非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子に比べて、表面の非晶質リン酸カルシウムが均一で、吸着性能(老廃物を吸着、除去する機能)も高く、キシミ感も低下していることがわかる。即ち、タルク粒子とpH1.5以下の酸とを混合することにより、前記タルク粒子の表面をpH1.5以下の酸で処理させる酸処理工程、タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたタルク粒子を洗浄する洗浄工程、該洗浄工程により洗浄されたタルク粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりタルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程、が実施される製造方法により製造された非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を用いることで、化粧料を皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能が低下することを抑制しつつキシミ感の抑制されたものとし得ることがわかる。
【0044】
(実施例1)
製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を用いて以下の配合1によりファンデーションを製造した。
(配合1)
成分 質量%
非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子 18
酸化鉄 4.5
セリサイト 15
板状硫酸バリウム 34
酸化チタン 8
タルク(無処理品) 10
パーフルオロポリエーテル 7
フッ素変成シリコーン 3
防腐剤および香料 0.5
上記ファンデーションは、感触に優れており、肌に塗り伸ばす際にキシミ感を生じなかった。
【0045】
(実施例2)
製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を用いて以下の配合2によりファンデーションを製造した。なお、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子含めて全ての無機粉体は、該無機粉体100重量部に対して、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩3重量部を用いて処理したものである。
(配合2)
成分 質量%
非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子 20
酸化鉄 4.5
セリサイト 12
板状硫酸バリウム 32
酸化チタン 8
微粒子酸化チタン 2
タルク(無処理品) 10
シリコーンエラストマー 3
有機系紫外線吸収剤 3
パーフルオロポリエーテル 5.5
グリセリン 0.5
白色ワセリン 1
防腐剤および香料 0.5
上記ファンデーションは、紫外線防止効果に優れるとともに、感触に優れており、肌に塗り伸ばす際にキシミ感を生じなかった。
【0046】
(実施例3)
製造例2の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を用いて以下の配合3によりファンデーションを製造した。なお、はじめに成分Aと成分Bとを混合し、次いで成分Cを加えてさらに混合し、混合物を粉砕して金型を用いて金皿に打型して製品とした。
また、成分Aは、各々100重量部に対して、パーフルオロアルキルリン酸エステル塩3重量部を用いて処理したものである。
(配合3)
成分A 質量%
非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子 10
酸化鉄 4.5
セリサイト 20
板状硫酸バリウム 34
酸化チタン 8
タルク(無処理品) 10

成分B 質量%
シリコーンエラストマー 3

成分C 質量%
パーフルオロポリエーテル 7
フッ素変成シリコーン 3
防腐剤および香料 0.5
上記ファンデーションは、紫外線防止効果、耐皮脂性(化粧持続性)に優れるとともに、感触に優れており、肌に塗り伸ばす際にキシミ感を生じなかった。
【0047】
(実施例4)
製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子を用いて以下の配合4によりボディーパウダーフォームを製造した。なお、はじめに成分Aを混合し、次いで成分Bを加えてさらに混合し、成分Cの混合ガスを加えて容器に充填し製品とした。
(配合4)
成分A 質量%
スクワラン 1
ポリオキシエチレンセチルエーテル 3
1,3−ブチレングリコール 1
エチルアルコール 12
ポリメチルシルセスキオキサン末 5

成分B 質量%
水 33
非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子 15

成分C 質量%
代替フロン 22
LPG 8
上記ボディーパウダーフォームは、とくにさっぱり感に優れており、且つ皮脂吸着効果に優れていた。
以上のように、非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が、タルク粒子とpH1.5以下の酸とを混合することにより、前記タルク粒子の表面をpH1.5以下の酸で洗浄処理する酸処理工程、タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたタルク粒子を洗浄する洗浄工程、該洗浄工程により洗浄されたタルク粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりタルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程が実施され製造されていることから非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の表面に非晶質リン酸カルシウムで被覆されない部分が発生することを抑制することができ、この非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が配合される化粧料を、皮脂や細菌、ウィルスなどのいわゆる老廃物を吸着、除去する機能を維持しつつキシミ感の抑制されたものとし得ることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1a】製造例1の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図1b】図1aの拡大写真。
【図2】製造例2の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図3】製造例4の非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子の走査型電子顕微鏡写真。
【図4】非晶質リン酸カルシウムと結晶質リン酸カルシウムとの粉末X線回折チャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タルク粒子を非晶質リン酸カルシウムで被覆した非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が0.1〜50質量%配合され、且つ、前記非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が
(1)タルク粒子とpH1.5以下の酸とを混合することにより、前記タルク粒子の表面をpH1.5以下の酸で洗浄処理する酸処理工程、
(2)タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが2.0以上となるように、前記酸処理工程にて処理されたタルク粒子を洗浄する洗浄工程、
(3)該洗浄工程により洗浄されたタルク粒子と水酸化カルシウムとを混合したアルカリ性の懸濁液を作成するアルカリ工程、
(4)該アルカリ工程において作成されたアルカリ性懸濁液にリン酸を加えることによりタルク粒子の表面を非晶質リン酸カルシウムで被覆させるリン酸カルシウム被覆工程、
が実施されることにより製造されてなることを特徴とする化粧料。
【請求項2】
前記酸処理工程の酸としてリン酸が用いられている請求項1記載の化粧料。
【請求項3】
前記酸処理工程の酸として塩酸、硝酸、硫酸または、クエン酸の何れかを用い、且つ、前記洗浄工程の洗浄として、タルク粒子を固形分濃度0.1〜50質量%で水に分散させた懸濁液のpHが6.0以上となるように洗浄が行われている請求項1記載の化粧料。
【請求項4】
前記非晶質リン酸カルシウム被覆タルク粒子が、前記酸処理工程前に前記タルク粒子とタルク粒子の0.1〜3倍の重量の水とを混練する水練り工程が実施されて製造されている請求項1乃至3のいずれかに記載の化粧料。

【図4】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−112771(P2007−112771A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308428(P2005−308428)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】