説明

化粧料

【課題】官能特性に優れ、肌への密着性に優れ、皮脂による色変化が少なく、彩度が高いなどの機能に優れた特性を有する化粧料を得ること。
【解決手段】低級アルコールと、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に顔料を分散させた懸濁液であって、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩と顔料の混合質量比が0.1〜0.5:100の範囲にある懸濁液に、塩化カルシウムの水溶液またはエタノール溶液を攪拌下に加えた後、さらに有機チタネートを顔料の質量に対して1.0〜2.5質量%の比率で加え、ついで濾過して得られる固形分を、加熱乾燥して得られる処理顔料を配合することを特徴とする化粧料を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌への密着性に優れ、皮脂による色変化が少なく、彩度が高いことを特長とする化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アシル化アミノ酸塩で顔料を表面処理することが行われている(特許文献1,2)。また、顔料をアシル化アミノ酸処理した後、片末端変性シリコーンやシランや分岐脂肪酸で処理した例(特許文献3)、フッ素化合物とアシル化アミノ酸で表面処理した例(特許文献4)など複合化処理の例も知られている。さらに、本発明人が出願した特許文献5では、顔料の表面をアシル化アミノ酸亜鉛塩で被覆し、さらにメチルハドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン・メチルハイドロジェンポリシロキサン共重合体、トリメチルシロキシケイ酸、フッ素置換トリメチルシロキシケイ酸、有機チタネートから選択される1種以上の処理剤にて被覆処理した後、加熱乾燥して得られる処理顔料を配合することにより、アシル化アミノ酸の密着性や感触を残したまま、汗や皮脂に対しても急激な摩擦変化が抑制された処理顔料を得、それを配合することで肌への密着性に優れ、なめらかな感触を持ち、毛穴やキメが目立たないことを特徴とする化粧料が得られることが示されている。
【0003】
【特許文献1】特開平3−200879号公報
【特許文献2】特開昭58−72512号公報
【特許文献3】特開2001−72527号公報
【特許文献4】特開平5−285369号公報
【特許文献5】特開2007−23017号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、欧州においては、アシル化アミノ酸と塩を形成する亜鉛はあまり消費者のイメージが良くないこともあり、他の金属塩を用いた上で、官能特性に優れ、さらに新たな機能を有する処理顔料を開発し、感触、機能に優れた化粧料を開発することが求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本発明人は鋭意検討した結果、低級アルコールと、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に顔料を分散させた懸濁液であって、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩と顔料の混合質量比が0.1〜0.5:100の範囲にある懸濁液に、塩化カルシウムの水溶液またはエタノール溶液を攪拌下に加えた後、さらに有機チタネートを顔料の質量に対して1.0〜2.5質量%の比率で加え、ついで濾過して得られる固形分を、加熱乾燥して得られる処理顔料を配合した化粧料が、官能特性に優れ、肌への密着性に優れ、皮脂による色変化が少なく、彩度が高いなどの機能に優れた特性を示すことを見出した。
【0006】
すなわち、第1の本発明は、低級アルコールと、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に顔料を分散させた懸濁液であって、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩と顔料の混合質量比が0.1〜0.5:100の範囲にある懸濁液に、塩化カルシウムの水溶液またはエタノール溶液を攪拌下に加えた後、さらに有機チタネートを顔料の質量に対して1.0〜2.5質量%の比率で加え、ついで濾過して得られる固形分を、加熱乾燥して得られる処理顔料を配合することを特徴とする化粧料にある。
【0007】
第2の本発明は、有機チタネートが、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートであることを特徴とする上記の化粧料にある。
【0008】
第3の本発明は、低級アルコールがイソプロピルアルコールであることを特徴とする上記の化粧料にある。
【発明の効果】
【0009】
以上説明するように、本発明は、低級アルコールと、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に顔料を分散させた懸濁液であって、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩と顔料の混合質量比が0.1〜0.5:100の範囲にある懸濁液に、塩化カルシウムの水溶液またはエタノール溶液を攪拌下に加えた後、さらに有機チタネートを顔料の質量に対して1.0〜2.5質量%の比率で加え、ついで濾過して得られる固形分を、加熱乾燥して得られる処理顔料を配合することを特徴とする化粧料が得られることは明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、上記本発明を詳細に説明する。
本発明の化粧料は、低級アルコールと、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に顔料を分散させた懸濁液であって、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩と顔料の混合質量比が0.1〜0.5:100の範囲にある懸濁液に、塩化カルシウムの水溶液またはエタノール溶液を攪拌下に加えた後、さらに有機チタネートを顔料の質量に対して1.0〜2.5質量%の比率で加え、ついで濾過して得られる固形分を、加熱乾燥して得られる処理顔料を配合することを特徴とする。
【0011】
本発明で用いる低級アルコールとしては、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノール、プロピルアルコール、ブタノールが挙げられるが、顔料の官能特性を良くできる特性が高いイソプロピルアルコールが最も好ましい。本発明で用いる低級アルコールの量としては、用いる水に対する質量比率で3〜25質量%の範囲が好ましく、特に10〜20質量%の範囲が好ましい。この範囲であると、有機チタネートが分離して処理ができなくなったりする問題が起こりにくい。
【0012】
本発明のN−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩としては、ナトリウム塩またはカリウム塩を用いる。N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩は、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩と顔料の質量比が0.1〜0.5:100の範囲にあることが官能特性上必要である。N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩の質量比が0.1未満の場合では、セリサイトなどの顔料を用いた場合には、有機チタネートの分離が発生する問題があり、0.5を超えると、感触が重くなり、伸びが悪くなる問題がある。
【0013】
本発明では、低級アルコール、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に顔料を分散させた懸濁液を用いるが、この時の顔料の濃度は、顔料の種類、比表面積にも左右されるが、水溶液の質量に対して5〜25質量%が好ましい。この範囲であると、顔料の表面処理時に粘度が異常に上がったり、処理が不均一になったりする問題が起こりにくい。懸濁液の作製はプロペラ攪拌機、ホモミキサー、ディスパー、スタテックミキサーや、ビーズミルなどの湿式媒体粉砕機などを用いても構わない。また、懸濁液の温度は30〜50℃の範囲が好ましい。この範囲であると、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩が均一に溶解しているので処理が均一にできる。30℃未満の場合、処理が不均一になり、有機チタネートが分離して、処理ができなくなる場合がある。また、50℃を超えるとアルコールの蒸発量が増えて、工場では危険性が増す問題がある。
【0014】
本発明で用いる顔料とは、化粧料で使用可能な顔料であれば特に限定されず、一次粒子径が1nm〜1mmの範囲にある顔料が該当し、その形状は球状、棒状、略球状、紡錘状、不定形状又は板状などのものが挙げられる。顔料の例としては、例えば無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料、タール色素、天然色素などがあげられ、具体的には、無機粉体としては、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、マイカ、カオリン、セリサイト、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、バーミキュライト、ハイジライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ヘクトライト、ゼオライト、セラミックスパウダー、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン又はシリカなどがある。有機粉体としては、ポリアミドパウダー、ポリエステルパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリプロピレンパウダー、ポリスチレンパウダー、ポリウレタンパウダー、ベンゾグアナミンパウダー、ポリメチルベンゾグアナミンパウダー、ポリテトラフルオロエチレンパウダー、ポリメチルメタクリレートパウダー、セルロースパウダー、シルクパウダー、12ナイロンや6ナイロンなどのナイロンパウダー、ポリアクリルパウダー、ポリアクリルエラストマー、スチレン・アクリル酸共重合体、ジビニルベンゼン・スチレン共重合体、ビニル樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネイト樹脂、微結晶繊維粉体、デンプン末又はラウロイルリジンなどがある。界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)としては、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸マグネシウム、セチルリン酸亜鉛、セチルリン酸カルシウム、セチルリン酸亜鉛ナトリウムなどがある。有色顔料としては、酸化鉄、水酸化鉄、チタン酸鉄の無機赤色顔料、γ−酸化鉄などの無機褐色系顔料、黄酸化鉄、黄土などの無機黄色系顔料、黒酸化鉄、カーボンブラックなどの無機黒色顔料、マンガンバイオレット、コバルトバイオレットなどの無機紫色顔料、水酸化クロム、酸化クロム、酸化コバルト、チタン酸コバルトなどの無機緑色顔料、紺青、群青などの無機青色系顔料、タール系色素をレーキ化したもの、天然色素をレーキ化したもの、及びこれらの粉体を複合化した合成樹脂粉体などある。パール顔料としては、酸化チタン被覆雲母、酸化チタン被覆マイカ、オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化チタン被覆タルク、魚鱗箔、酸化チタン被覆着色雲母、酸化チタン・酸化鉄被覆マイカなど;金属粉末顔料としては、アルミニウムパウダー、カッパーパウダー、ステンレスパウダーなど;タール色素としては、赤色3号、赤色104号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色204号、黄色401号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、緑色205号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色206号、橙色207号など;天然色素としては、カルミン酸、ラッカイン酸、カルサミン、ブラジリン又はクロシンなどから選ばれる顔料が挙げられる。水溶性の色素を用いる場合では事前に層状粘土鉱物などに包摂して水不溶化したものや、金属塩にてレーキ化したものを用いる必要がある。
【0015】
これらの顔料は、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のカルシウム塩の顔料表面への付着を妨げない範囲で各種の表面処理がされていても構わない。表面処理は撥水性処理であっても親水性処理であっても構わない。
【0016】
本発明では、上記の懸濁液に塩化カルシウムの水溶液またはエタノール溶液を攪拌下に加え、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のカルシウム塩を形成させる。N−ラウロイル−L−グルタミン酸のカルシウム塩は水及び本発明の範囲の低級アルコール水溶液に難溶性であるので、本発明で用いるような懸濁液の中では顔料の表面に付着する。但し、本発明で用いるN−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩の顔料に対する処理濃度は大変低いため、カルシウム塩濃度が局所的に濃くなると、顔料の処理が不均一になる問題がある。そのため、懸濁液の量が100Kgを超えるような場合では、塩化カルシウムの水溶液またはエタノール水溶液中の塩化カルシウムの濃度は1質量%以下であることが好ましい。
【0017】
本発明では、上記N−ラウロイル−L−グルタミン酸のカルシウム塩を形成させた後、有機チタネートにて被覆処理する。有機チタネートとしては、長鎖カルボン酸型のアルキルチタネートとして、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等が挙げられ、ピロリン酸型アルキルチタネートとして、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート等が挙げられ、亜リン酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルピロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられ、アミノ酸型アルキルチタネートとして、イソプロピルトリ(N−アミドエチル・アミノエチル)チタネート等の1種以上が挙げられるが、特にイソプロピルトリイソステアロイルチタネート(Tris(Isooctadecanoato−O)(2−Propanolate)Titanium)が感触調整効果に優れるため、最も好ましい。有機チタネートの被覆処理量としては、顔料の質量に対して1.0〜2.5質量%の比率が挙げられる。被覆処理量が1.0質量%未満では、皮脂による色変化が少なく、彩度が高いなどの機能が低下する問題がある。また、2.5質量%を超えると感触が重くなり、伸びが悪くなる問題がある。有機チタネートは単独で投入してもいいが、攪拌が弱い場合や、処理量が多い場合では有機チタネートに相溶性のある揮発性溶媒と一緒に混合し、粘度を下げてから投入すると処理が均一にできるメリットがある。この場合の揮発性溶媒としては、揮発性シリコーンが最も好ましく、混合比率としては、有機チタネートと揮発性溶媒の質量比率で2:1〜1:2の範囲が好ましい。
【0018】
本発明では、上記の工程で作製したスラリーを濾過する。また、少量ではあるが、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの塩類も混ざっているため、濾過後の固形分はさらに水洗することが好ましい。水洗は濾過後の固形分と水を混合し、再度濾過する方法や、吸引濾過法を用いているならばケーキの上から水を加える方法が適当である。
【0019】
本発明では、こうして得られた固形分を加熱乾燥する。加熱乾燥の温度は110〜150℃が好ましく、特に125〜135℃の範囲が好ましい。110℃未満では、有機チタネートの反応が不完全になり、リクイドファンデーションなどの剤型に配合されると未反応の有機チタネートが分離してくる場合がある。また、150℃を超えると顔料に変臭が発生するなど、品質上の問題が発生する場合がある。また、加熱時間は加熱温度にもよるが、6〜48時間の範囲が好ましい。加熱時間が6時間未満では、含まれている水が無くなるまでに時間がかかり、有機チタネートの反応が不十分になる場合がある。また、加熱時間が48時間以上では、場合によっては変臭や変色などが発生する場合がある。
【0020】
本発明では、上記の加熱処理後の顔料を粉砕することが好ましい。また、さらに篩を通すことが好ましい。この操作により、粉体化粧料においては官能特性が向上するメリットがある。
【0021】
本発明の化粧料では、上記方法により作製した処理顔料を、化粧料の質量に対して0.1〜99.9質量%の範囲で配合することが可能であるが、より好ましくは10〜90質量%の範囲が挙げられる。この範囲では、処理顔料の特性を発揮した化粧料が作製しやすい。
【0022】
本発明の化粧料は、上記の処理顔料以外に、化粧料で使用される各種の素材、例えば顔料、紫外線吸収剤、油剤、界面活性剤、フッ素化合物、樹脂、粘剤、防腐剤、香料、保湿剤、塩類、溶媒、酸化防止剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、昆虫忌避剤、生理活性成分等の成分を使用することができる。
【0023】
本発明の化粧料では、上記方法により作製した処理顔料と共に、化粧料で通常用いられる各種の表面処理顔料と組み合わせて化粧料を作製することが可能である。特にフッ素化シラン処理顔料、有機チタネート処理顔料、アルキルシラン処理顔料、金属石鹸処理と組み合わせることが好ましい。
【0024】
本発明の化粧料としては、メイクアップ化粧料、基礎化粧料、頭髪化粧料、香料、ボディ化粧料など各種の化粧料が該当するが、特にファンデーション、頬紅、白粉、フェースパウダー、口紅、アイシャドウ、アイブロー、マスカラ、ネイルカラー、ボディパウダー、サンスクリーン、デオドラント料に好適である。
【0025】
本発明の化粧料の形態としては、パウダー状、乳液状、クリーム状、スティック状、固型状、スプレー、多層分離型などいずれの剤型を用いても構わない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下に実施例を挙げ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
〔製造実施例1〕
有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理タルクの製造
イソプロピルアルコール40質量部と精製水670質量部を混合した後、42℃に加温した。ここに、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム0.1質量部を42℃の精製水40質量部に溶解させた溶液を加えた。ついで、タルク100質量部を、攪拌下に加え、良く攪拌した。上記タルク懸濁液を攪拌しながら、塩化カルシウム0.02質量部を10質量部の精製水に溶解させた溶液をゆっくりと投入し、さらに攪拌した。イソプロピルトリイソステアロイルチタネート2.0質量部と、揮発性シリコーンの一種であるデカメチルシクロペンタシロキサン2.0質量部との混合溶液を攪拌下の上記溶液に除々に滴下し、良く攪拌した。上記攪拌はプロペラを用いて実施した。次いで、ろ過、水洗した後、ステンレスバットに移し、送風型乾燥器を用いて130℃にて6時間加熱した。この処理品をミキサーを用いて粉砕し、さらにメッシュを通して有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理タルクを得た。
同様にして、酸化チタン、ベンガラ、黒酸化鉄を処理した。
【0028】
〔製造実施例2〕
有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理セリサイトの製造
イソプロピルアルコール70質量部と精製水630質量部を混合した後、42℃に加温した。ここに、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム0.2質量部を42℃の精製水40質量部に溶解させた溶液を加えた。ついで、セリサイト100質量部を、攪拌下に加え、良く攪拌した。上記セリサイト懸濁液を攪拌しながら、塩化カルシウム0.1質量部を10質量部の精製水に溶解させた溶液をゆっくりと投入し、さらに攪拌した。イソプロピルトリイソステアロイルチタネート1.5質量部と、揮発性シリコーンの一種であるデカメチルシクロペンタシロキサン1.5質量部との混合溶液を攪拌下の上記溶液に除々に滴下し、良く攪拌した。上記攪拌はプロペラを用いて実施した。次いで、ろ過、水洗した後、ステンレスパットに移し、送風型乾燥器を用いて130℃にて6時間加熱した。この処理品をミキサーを用いて粉砕し、さらにメッシュを通して有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理セリサイトを得た。
【0029】
〔製造実施例3〕
有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理マイカの製造
エチルアルコール50質量部と精製水670質量部を混合した後、46℃に加温した。ここに、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム0.1質量部を46℃の精製水40質量部に溶解させた溶液を加えた。ついで、マイカ100質量部を、攪拌下に加え、良く攪拌した。上記マイカ懸濁液を攪拌しながら、塩化カルシウム0.02質量部を10質量部の精製水に溶解させた溶液をゆっくりと投入し、さらに攪拌した。イソプロピルトリイソステアロイルチタネート1.5質量部と、揮発性シリコーンの一種であるメチルトリメチコン1.5質量部との混合溶液を攪拌下の上記溶液に除々に滴下し、良く攪拌した。上記攪拌はプロペラを用いて実施した。次いで、ろ過、水洗した後、ステンレスバットに移し、送風型乾燥器を用いて130℃にて12時間加熱した。この処理品をミキサーを用いて粉砕し、さらにメッシュを通して有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理マイカを得た。
【0030】
〔製造実施例4〕
有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理黄酸化鉄の製造
イソプロピルアルコール40質量部と精製水650質量部を混合した後、40℃に加温した。ここに、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム0.5質量部を40℃の精製水50質量部に溶解させた溶液を加えた。ついで、黄酸化鉄100質量部を、攪拌下に加え、良く攪拌した。上記黄酸化鉄懸濁液を攪拌しながら、塩化カルシウム0.25質量部を20質量部の精製水に溶解させた溶液をゆっくりと投入し、さらに攪拌した。イソプロピルトリイソステアロイルチタネート2.0質量部と、揮発性シリコーンの一種であるメチルトリメチコン2.0質量部との混合溶液を攪拌下の上記溶液に除々に滴下し、良く攪拌した。上記攪拌はプロペラを用いて実施した。次いで、ろ過、水洗した後、ステンレスバットに移し、送風型乾燥器を用いて125℃にて24時間加熱した。この処理品をミキサーを用いて粉砕し、さらにメッシュを通して有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理黄酸化鉄を得た。
【0031】
〔製造比較例1〕
製造実施例1のN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムの代わりに、N−ラウロイル−L−アスパラギン酸ナトリウムを用いた他は全て製造実施例1と同様にしたところ、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが分離し、複合処理顔料は得られなかった。
【0032】
〔製造比較例2〕
製造実施例2のN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムの代わりに、ヤシ油脂肪酸グルタミン酸エステルナトリウムを用いた他は全て製造実施例2と同様にしたところ、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが分離し、複合処理顔料は得られなかった。
【0033】
〔製造比較例3〕
製造実施例2のN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムの代わりに、ミリスチルグルタミン酸ナトリウムを用いた他は全て製造実施例2と同様にしたところ、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが分離しやすく、均一に処理された複合処理顔料は得られなかった。
【0034】
〔製造比較例4〕
製造実施例2のN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムの代わりに、ステアリルグルタミン酸ナトリウムを用いた他は全て製造実施例2と同様にしたところ、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが分離しやすく、均一に処理された複合処理顔料は得られなかった。
【0035】
〔製造比較例5〕
製造実施例2のN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムの代わりに、ココイルグリシンナトリウムを用いた他は全て製造実施例2と同様にしたところ、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが分離しやすく、均一に処理された複合処理顔料は得られなかった。
【0036】
〔製造比較例6〕
製造実施例2のN−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウムと塩化カルシウムを用いない他は全て製造実施例2と同様にしたところ、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが分離し、複合処理顔料は得られなかった。
【0037】
〔製造比較例7〕
イソプロピルアルコール70質量部と精製水630質量部を混合した後、42℃に加温した。ここに、N−ラウロイル−L−グルタミン酸ナトリウム1.0質量部を42℃の精製水50質量部に溶解させた溶液を加えた。ついで、セリサイト100質量部を、攪拌下に加え、良く攪拌した。上記セリサイト懸濁液を攪拌しながら、塩化カルシウム0.5質量部を20質量部の精製水に溶解させた溶液をゆっくりと投入し、さらに攪拌した。イソプロピルトリイソステアロイルチタネート1.5質量部と、揮発性シリコーンの一種であるデカメチルシクロペンタシロキサン1.5質量部との混合溶液を攪拌下の上記溶液に除々に滴下し、良く攪拌した。上記攪拌はプロペラを用いて実施した。次いで、ろ過、水洗した後、ステンレスバットに移し、送風型乾燥器を用いて130℃にて6時間加熱した。この処理品をミキサーを用いて粉砕し、さらにメッシュを通して比較用有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理セリサイトを得た。
【0038】
〔製造比較例8〕
製造実施例2のイソプロピルトリイソステアロイルチタネート1.5質量部とデカメチルシクロペンタシロキサン1.5質量部の混合溶液を、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート3.0質量部と、揮発性シリコーンの一種であるデカメチルシクロペンタシロキサン3.0質量部との混合溶液に変更した他は全て製造実施例2と同様にしたところ、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートが分離し、複合処理顔料は得られなかった。
【0039】
製造実施例と製造比較例1〜5との比較より、カルシウム塩を形成させる場合では、N−ラウロイル−L−グルタミン酸塩を用いないと、他のアミノ酸系界面活性剤を用いた場合では処理自体ができないか不安定になることが判る。これは塩としてアルミニウム塩を形成させた場合、多くのアミノ酸系界面活性剤で顔料の処理が可能であることと比べて大きな違いである。
【0040】
製造実施例と製造比較例6、8との比較から、本発明の濃度範囲外で処理を行うと、複合処理顔料が得られない場合があることが判る。また、製造比較例7は顔料の処理自体は可能であったが、感触が重く、伸びが悪く、肌の上や化粧用スポンジの表面にケーキ状の塊を形成しやすく、化粧料用の原料としては適切でない特性を有していた。
【0041】
製造実施例1で作製した有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理ベンガラと、化粧品に使用されているオクチルシリル化処理ベンガラ、シリコーン処理ベンガラ、ステアリン酸アルミニウム処理ベンガラについて、それぞれ5質量部を95質量部の流動パラフィンに超音波を用いて分散させ、色を観察した。その結果、有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理ベンガラは他の3つの処理顔料と比較して明らかに色の変化が少なく、かつ彩度が高かった。このことから、有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理ベンガラは色ぐすみがしにくい特性を有していることが判った。
【0042】
〔実施例1〕
パウダーファンデーションの製造
表1に示す処方および製造方法によりファンデーションを製造した。尚、複合処理顔料は製造実施例の有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理顔料(表中では複合処理と記載)を用いた。シリコーンビーズとしては、モメンティブ社製のトスパール145Aを使用した。また、表中の単位は質量%である。
【0043】
【表1】

【0044】
製造方法
顔料成分を粗混合した後、ミキサーを用いて均一に混合した。次に、均一に加熱溶解させた油性成分を除々に滴下し、均一になるように混合した。次いで、メッシュを通した後、金皿を用いて金型に打型して製品を得た。
【0045】
〔比較例1〕
パウダーファンデーションの製造
実施例1で用いた製造実施例の複合処理顔料の代わりに、対応する顔料について、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート1.5質量部を、揮発性シリコーンの一種であるデカメチルシクロペンタシロキサン1.5質量部に溶解させたものを顔料100質量部とミキサーを用いて混合し、ついで130℃で6時間加熱処理し、粉砕した後、メッシュを通して得られるイソプロピルトリイソステアロイルチタネート単独処理顔料を作製した。この顔料を用いた他は全て実施例1と同様にしてファンデーションを作製した。
【0046】
〔比較例2〕
パウダーファンデーションの製造
実施例1で用いた製造実施例の複合処理顔料の代わりに、対応する顔料について、シリコーン処理顔料を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0047】
〔比較例3〕
パウダーファンデーションの製造
実施例1で用いた製造実施例の複合処理顔料の代わりに、対応する顔料について、ステアリン酸アルミニウム処理顔料を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0048】
〔比較例4〕
パウダーファンデーションの製造
実施例1で用いた製造実施例の複合処理顔料の代わりに、対応する顔料について、N−ラウロイル−L−リジン処理顔料を用いた他は全て実施例1と同様にして製品を得た。
【0049】
〔実施例2〕
リクイドファンデーションの製造
表2に示す処方および製造方法によりファンデーションを製造した。尚、有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理顔料は製造実施例に記載したものを用いた。(表中では上記同様に本表面処理を複合処理と表記する)また、表中の単位は質量%である。
【0050】
【表2】

【0051】
油性成分を70℃に加熱し、ここに事前に混合しておいた顔料成分を加え、よく混合した。次いで、ここに70℃に加熱した水性成分を除々に加え、攪拌下に室温まで冷却した後、容器に充填して製品を得た。
【0052】
〔比較例5〕
実施例2の複合処理顔料の代わりに、ステアリン酸アルミニウム処理顔料を用いた他は全て実施例2と同様にして製品を得た。
【0053】
〔比較例6〕
実施例2の複合処理顔料の代わりに、製造実施例1に準じて、N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウムのみで0.1質量%処理したN−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム処理顔料を用いた他は全て実施例2と同様にして製品を得た。
【0054】
実施例および比較例で作製した各化粧料について、女性パネラー10名を使用して、使用感に関する官能評価試験を実施した。試験はアンケート形式で実施し、各項目ごとに0から5点の間の点数をつけ、0点は評価が悪い、5点は評価が優れるとして数値化し、結果を全パネラーの平均点として表した。従って、点数が高い程評価が優れていることを示す。尚、化粧料は乳液状の化粧下地を使用してから塗布する形式で実施した。結果を表3に示す。
【0055】
【表3】

【0056】
表3の結果から、本発明の実施例は比較例と比べて各項目において優れた性能を示していることが判る。比較例1は複合化していない有機チタネート単独処理顔料で作製したファンデーションであるが、実施例1と比べて全ての評価項目で性能が劣っていた。比較例2は化粧品で多用されているシリコーン処理顔料との比較であるが、色ぐすみが強く見られ、実施例1と比べて全ての評価項目で性能が劣っていた。比較例3は金属石鹸処理顔料の一種であるステアリン酸アルミニウム処理顔料を用いた場合の例であるが、化粧くずれ、色ぐすみがしやすかった。また、感触が悪いとの意見が多かった。比較例4はアミノ酸系表面処理顔料の一種である、N−ラウロイル−L−リジン処理顔料を用いた場合の例であるが、評価はまあまあ良い結果であったが、実施例2と比べると化粧くずれが起こりやすく、色ぐすみもより強く認められた。比較例5はステアリン酸アルミニウム処理顔料を用いた場合の例であるが、実施例2と比べて、色ぐすみが強く、肌色があまりきれいにでなかったことが判る。比較例6は複合化していない、N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム0.1質量%処理顔料を用いた場合の例であるが、実施例2と比べて、全ての評価項目において品質が劣っていた。
【0057】
〔実施例3〕
表3に示す処方および製造方法によりアイシャドウを製造した。尚、有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理顔料は製造実施例に記載したもの、及び製造実施例2に準じ、セリサイトの代わりに雲母チタンを用いた他は全て製造実施例2に準じて作製した有機チタネート・N−ラウロイル−L−グルタミン酸カルシウム複合処理雲母チタンを用いた。(表中では上記同様に本表面処理を複合処理と表記する)また、表中の単位は質量%である。
【0058】
【表3】

【0059】
顔料成分を粗混合した後、ミキサーを用いて均一に混合した。次に、均一に加熱溶解させた油性成分を除々に滴下し、均一になるように混合した。次いで、メッシュを通した後、金皿を用いて金型に打型して製品を得た。
【0060】
本製品は発色があざやかで、化粧料のつき、もちが大変良く、経時で雲母チタンが目の周りから顔面全体に飛び散ることが少ない特徴を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低級アルコールと、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩を含む水溶液に顔料を分散させた懸濁液であって、N−ラウロイル−L−グルタミン酸のアルカリ金属塩と顔料の混合質量比が0.1〜0.5:100の範囲にある懸濁液に、塩化カルシウムの水溶液またはエタノール溶液を攪拌下に加えた後、さらに有機チタネートを顔料の質量に対して1.0〜2.5質量%の比率で加え、ついで濾過して得られる固形分を、加熱乾燥して得られる処理顔料を配合することを特徴とする化粧料。
【請求項2】
有機チタネートが、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートであることを特徴とする請求項1に記載の化粧料。
【請求項3】
低級アルコールがイソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の化粧料。

【公開番号】特開2009−298763(P2009−298763A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−182026(P2008−182026)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(500034941)株式会社コスメテクノ (16)
【Fターム(参考)】