説明

医用画像データベース

【課題】医用画像データベースの運用において、利用者の操作手順の簡易化、操作にかかる時間の短縮、更には、管理者による画像管理やセキュリティ対策の簡易化を図る。
【解決手段】医用画像データベースは、医用画像診断装置(2)により収集された医用画像を保管する保管手段(3)と、医用画像の種類毎、且つ、当該医用画像にアクセスする複数のグループのグループ毎の組み合わせに応じて当該アクセスの許可/不許可を示すフラグを通信ネットワーク上で参照可能に保持するフラグ保持手段(4/12)と、このフラグ保持手段に保持されているフラグを用いて医用画像に対するアクセスの許可及び不許可を管理する管理手段(4/11)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医用画像データベースに係り、とくに、X線診断装置、X線CT装置、磁気共鳴診断装置、核医学診断装置、超音波診断装置等の医用画像診断装置、医用画像処理装置、医用ワークステーション、医療情報装置等で扱われる画像をネットワークを利用して管理及び保管する医用画像データベースに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の情報産業の発展に伴う医療技術の革新には著しいものがある。この技術革新は、新たな診断情報を提供し、高度な医療行為を容易ならしめ、サービスとしての医療業務の質を向上させ、医療行為及び医療事務を含めた医療業務を効率化する等、多方面に影響を与えている。
【0003】
具体的には、新たな診断情報の提供や高度な医療行為を容易にする技術の例として、各種の医用画像診断装置(X線診断装置、X線CT装置、磁気共鳴診断装置、核医学診断装置、超音波診断装置)、超音波治療装置等が挙がられる。また、医療業務を効率化させる技術として、医療業務に関する情報を統括的に管理するためのシステムが挙げられる。病院内の事務的な情報を統括的に管理する病院情報システム(Hospital Information System:以下、「HIS」と称する)、放射線部門内における医療情報を統括的に管理する放射線部門情報管理システム(Radiology Information System:以下、「RIS」と称する)等は、その代表的な例である。これらの一例は、例えば特許文献1に示されている。
【0004】
各種の画像診断装置にて撮影された画像は、医用画像保管管理システム(Picture Archiving and Communication System:以下、「PACS」と称する)や各種の保存媒体に転送、保管され、そこから情報システムや画像ビューワに転送されて閲覧に供される。また、画像は、各依頼科部門の医用データベースや、HISやRISなどの情報システムにも画像として、あるいは、電子カルテや診断レポートに添付されて転送される。PACSの一例は、例えば特許文献2に示されている。
【特許文献1】特開平08−007013号公報
【特許文献2】特開2005−218847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の医用画像診断装置の技術革新によって、撮影される画像の枚数やサイズ、及び、その撮影画像から作成される画像(MPR、3次元画像など)の枚数も増加傾向にある。しかしながら、その画像容量の増大がネットワーク転送時間の増大や保管容量の圧迫を招くことが大きな問題となっている。
【0006】
また、依頼科によって、必要な画像種や画像枚数は異なる。例えば、内科では、通常、患部が映し出された数枚程度の画像のみを必要とするが、医用画像処理ワークステーションを有する科、例えば脳神経外科などでは、細部を見るために、薄い再構成厚さの画像の全て、例えば数百枚程度の画像が要求される。
【0007】
この内科の例の場合、医師の診断や、カルテとして保管に必要な画像が数枚程度であるにもかかわらず、場合によって、膨大な枚数の画像を放射線科から依頼科に送られる。このため、データベースの容量を圧迫したり、その必要な画像を検索したりする手間がかかるという問題がある。
【0008】
これらの画像をそれぞれの科に転送するのではなく、放射線科のPACS(Picture Archiving and Communication System:医用画像保管管理システム)にて撮影画像を一元管理する場合であっても、検索の手間や時間の問題、更には、画像管理、セキュリティ上の脆弱さが指摘されている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、医用画像データベースの運用において、利用者の操作手順の簡易化、操作にかかる時間の短縮、更には、管理者による画像管理やセキュリティ対策の簡易化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した目的を達成するために、本発明に係る医用画像データベースによれば、医用画像診断装置により収集された医用画像を保管する保管手段と、前記医用画像の種類毎、且つ、当該医用画像にアクセスする複数のグループのグループ毎の組み合わせに応じて当該アクセスの許可/不許可を示すフラグを通信ネットワーク上で参照可能に保持するフラグ保持手段と、このフラグ保持手段に保持されているフラグを用いて前記医用画像に対するアクセスの許可及び不許可を管理する管理手段と、を備えたことを主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る医用画像データベースによれば、利用者の操作手順の簡易化、操作にかかる時間の短縮、更には、管理者による画像管理やセキュリティ対策の簡易化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図1〜3を参照して、本発明に係る医用画像データベースの1つの実施の形態を説明する。
【0013】
図1には、本実施形態に係る医用画像データベースの概要を、主として、機能的に示している。
【0014】
この図1に示すシステムは、通信ネットワーク1を介して、医用画像診断装置(モダリティ)2及び管理装置3、記憶装置4が相互に通信可能に接続されている。このうち、画像記憶装置3及び管理装置4により、本実施形態に係る医用画像データベースが構成される。通信ネットワーク1は、他の医用画像診断装置、医用画像データベース、医用情報システム、及び医用画像ビューワを含む前記医用画像を扱うシステムに接続されている。これらのシステムは、本実施形態の特徴である、後述するフラグを共有するようになっている。
【0015】
画像記憶装置3は、医用画像診断装置2によって収集された画像データをその付帯情報と共に格納・保存する大容量の記憶媒体を有する。管理装置4は、画像記憶装置3への画像データのアクセスを管理・運用するコンピュータとして構成されている。このため、管理装置4は、コンピュータとしての構成を成すCPU(中央演算処理装置)、メモリ(ROM、RAMなど)、クロックなどを有し、メモリに予め格納されたプログラムの起動に伴って図1に示す機能ブロックを形成する。
【0016】
この機能ブロックとしては、図示の如く、転送・アクセス制御部11、フラグ制御部12、フラグテンプレート保持部13、診断装置情報保持部14、DB(データベース)情報保持部15、及び職種情報保持部16を含む。なお、管理装置4は、操作者が操作するための操作器5及びモニタ6をも備える。
【0017】
ここで、各機能ブロックの機能を説明する。転送・アクセス制御部11は、医用機器、データベース間の転送または医用機器や操作者グループのアクセスを制御する。フラグ保持部12には、かかるアクセス制御を行なうためのフラグが保管され、転送・アクセス制御部11を介して参照される。また、フラグテンプレート保持部13には、フラグのテンプレートが保管され、必要に応じて、この中のテンプレートがフラグ保持部12にコピーされる。このテンプレートは、操作者がプリセット選択又はマニュアル操作で記載内容を設定又は変更可能になっている。
【0018】
さらに、診断装置情報保持部14及びDB情報保持部15は、転送及びアクセスを行なう機器の情報を保管している。このため、転送・アクセス制御部11は、かかる機器情報に基づいてフラグ保持部12が保持しているフラグ情報を参照し、画像記憶装置3に保管している医用画像及びその付帯情報の転送又はアクセスを制御する。
【0019】
さらに、職種情報保持部16は、操作者グループの情報を保管している。このため、転送・アクセス制御部11は、操作グループの情報に基づいてフラグ情報保持部12に保持されているフラグ情報を参照し、画像記憶装置3に保管している医用画像について、その付帯情報と共に、転送又はアクセスの制御に付す。
【0020】
図2は、フラグテンプレート保持部13を介して設定され且つフラグ保持部12に保持されているフラグ付けの例を示す。この例において、横軸には医用画像を扱う技師・医師のグループを示し、縦軸には画像の項目(種類)を示す。放射線科Aは撮影担当技師を、放射線科Bは読影医師をそれぞれ示す。A,Bはそれぞれに科に属する技師全体(グループ)を表す。また、内科は内科医(依頼科医師)のグループを示し、この内科医は、図3のHISで画像を参照するものとする。さらに、能神経外科は脳神経外科医のグループを示す、内科医が依頼した検査画像を参照する例として挙がられている。
【0021】
このフラグ付けの例において、丸印はアクセス許可を、×印はアクセス不許可(リストの載せる)を、更に横棒印はアクセス不許可(リストに載せないが)を示す。つまり、×印及び横棒印に該当する者には医用画像を「見せない(見せたくない)」のである。
【0022】
図3は、医用画像診断装置(モダリティ)と医用画像データベース間の転送・参照の例である。
【0023】
これらの図2,3に示す条件に基づく撮影及びその画像管理の例を以下に示す。例えば、放射線科のX線CT装置(スキャナ)を用いて放射線科技師がCT画像を撮影する。撮影枚数は例えば300枚であるので、このCT画像を用いて患部を分かり易く見せるためのMPR(断面再構成)画像及び3D(三次元)画像が作成される。この操作も放射線科技師によって行なわれる。
【0024】
かかる撮影に際して、同じ患者の過去画像を参照する場合がある。例えば、その検査が、手術後の経過を見るためのものである場合、手術前の画像を参照して、同じ撮影条件、撮影位置、同じ角度及び位置のMPR画像の作成を行なうなどのためである。これらの作業を行なうため、図2の例では、放射線科技師に対して、撮影画像(2D画像)、MPR画像、3D画像、及び過去画像に対するアクセスを示すフラグがON(許可)になっている。
【0025】
これら撮影画像、MPR画像、及び3D画像を用いて、放射線科医師が読影を行なう。この読影に際しては、撮影時と同様に、過去画像を参照する場合がある。治療の経過や結果を確認する場合のほか、読影に際して、典型症例の画像を参考にする場合などである。そして、読影の結果をレポートに記載する。このとき、レポートに添付する画像や、結果が分かり易い画像を選抜して、登録したり、選抜画像としてフラグをつけたりする。
【0026】
レポートや画像は、依頼科に送られるか、あるいは、PACSなどの医用画像データベースへの参照ポインタが送られる。これらの作業のため、放射線科医師は、ほぼ全ての画像種に対するアクセス権が与えられる(フラグ=許可(ON))。もちろん、医療施設によっては、担当患者や担当課ごとにアクセス権を設ける場合がある。
【0027】
依頼科(内科)では、レポートと画像を受領し、その検査結果をもとに診断を行なう。このとき、例えば内科のような場合、診断に必要な画像しか使用しないケースが殆どである。つまり、放射線科医師により選抜された画像(10枚以下程度)のみで足りる。逆に、HISを利用して、医用画像データベースをPACSとは別のデータベースにアクセスする場合には、画像自身を転送することになる。この場合、通常、不要な画像も転送することになり、データベースの容量の圧迫やネットワーク転送量を増やすことにつながる。
【0028】
また、医用画像処理ワークステーションを保有し、自ら画像処理を行なったり、検査画像を詳細に診たりする部門の場合は、撮影画像(2D画像、例えば300枚)をそのまま利用することになるので、選抜画像のほか、2D画像のフラグもONとしている。図2と図3では、このような部門の例として、脳神経外科で記載している。
【0029】
医用画像データベースには、画像以外にも、ワークスペースファイルなどの非画像ファイルも登録されるケースがある。ワークスペースファイルの例としては、画像表示条件(ウインドウ条件、MPRの位置、角度、3Dの位置、角度、オパシティ、カラーなど)、表示レイアウト(1x1、2x2、3+1などのフレームレイアウトなど)、3Dのセグメント情報などの画像表示・画像処理のパラメータや、ワークフロー状態などの情報が収められたファイルがある。このファイルは、作業条件の再現や連携を行うために使用される。
【0030】
図2では、このワークスペースファイルを放射線科だけで運用する例を示している。図2では、放射線科以外は、その依頼科にしか画像を見せないようにした例を示している。
【0031】
図3は、モダリティ(医用画像診断装置)、PACS、HIS,その他(脳神経外科)で構成されたネットワークにおいて、参照、操作、及び転送を行なう例を示している。
【0032】
このように、物理的に接続されたデータベース、ネットワークにおいて、データベース間でのアクセス制御を従来技術でも行うことは可能であるが、本実施形態に係るフラグ制御により、医用画像の種類と操作者グループ単位でのアクセス制御を行なうことができる。これにより、ネットワーク上のデータベースを等価的にアクセスできるシステムにおいても、かかるフラグの使用により、各課、各グループからのアクセス範囲の限定、あるいは、転送画像の限定を行なうことができる。この結果、検索の手間と時間の削減、ネットワーク転送量の削減、セキュリティ確保をアシストすることができる。
【0033】
なお、上述した実施形態にあっては、図1に示した1つの医用画像データベースについて説明したが、通信ネットワーク1に接続されている複数の医用画像データベースについても同様に、操作・システム側のグループ単位と画像の種類とを対応付け、それらの組み合わせに応じてON(アクセス許可)/OFF(アクセス不許可)を示すフラグ付けすればよい。これより、前述と同様に、かかるフラグは、医用画像診断装置、医用画像データベース、医用情報システム、医用画像ビューワなど、通信ネットワーク1に接続された画像を扱う全システムにより共有でき、フラグがOFFの組み合わせに対しては画像の転送や閲覧を禁止できる。したがって、前述と同様に、不必要な画像転送や参照の抑制、ネットワーク転送量の軽減、画像検索時の手間軽減、転送の高速化、画像管理のセキュリティの向上に寄与大となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る医用画像データベースの一実施形態の機能を中心として説明する機能ブロック図。
【図2】医用画像データベースのフラグ保持部により保持された、複数グループと画像種の組み合わせに対するフラグ付けの例を示すリスト。
【図3】アクセス(転送、参照)制御の動作例を説明する図。
【符号の説明】
【0035】
1 通信ネットワーク
2 医用画像診断装置(モダリティ)
3 画像記憶装置
4 管理装置
11 転送・アクセス制御部
12 フラグ保持部
13 フラグテンプレート保持部
14 診断装置情報保持部
15 DB情報保持部
16 職種情報保持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像診断装置により収集された医用画像を保管する保管手段と、
前記医用画像の種類毎、且つ、当該医用画像にアクセスする複数のグループのグループ毎の組み合わせに応じて当該アクセスの許可/不許可を示すフラグを通信ネットワーク上で参照可能に保持するフラグ保持手段と、
このフラグ保持手段に保持されているフラグを用いて前記医用画像に対するアクセスの許可及び不許可を管理する管理手段と、を備えたことを特徴とする医用画像データベース。
【請求項2】
前記通信ネットワークは、医用画像診断装置、医用画像データベース、医用情報システム、及び医用画像ビューワを含む前記医用画像を扱うシステムであって、前記フラグを共有するシステムに接続されている請求項1に記載の医用画像データベース。
【請求項3】
前記管理手段は、前記フラグがアクセスの不許可を示す場合には、前記医用画像の転送及び閲覧を含む前記グループのアクセスを禁止する手段を有する請求項1に記載の医用画像データベース。
【請求項4】
前記フラグをプリセット選択又はマニュアルで設定又は変更可能なフラグ設定手段を更に備える請求項1に記載の医用画像データベース。
【請求項5】
前記複数のグループは、当該医用画像データベースとは異なる別の医用画像データベース、依頼科単位のグルーピング、並びに、医師、技師、及び事務スタッフを含む職種グルーピングを含む請求項1に記載の医用画像データベース。
【請求項6】
前記アクセスの一態様は前記医用画像の表示の要求であり、前記フラグが示す当該表示要求に対する不許可は、前記フラグを示すリストに載せる不許可と当該リストに載せない不許可とを含む請求項1に記載の医用画像データベース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−111433(P2007−111433A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−308565(P2005−308565)
【出願日】平成17年10月24日(2005.10.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】